新学期にスムーズに登校するための接し方とは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、数多くの保護者の方々と向き合いながら、子どもたちの学校復帰をサポートしてきました。

新学期が始まるとき、お子さんがスムーズに登校できるかどうかは、多くの親御さんにとって重要な関心事です。特に、過去に不登校の経験があったり、学校に対する不安を強く感じているお子さんをお持ちのご家庭では、「どうすれば新学期を乗り越えられるのか」と悩まれることも多いでしょう。

本稿では、新学期に対する子どもの心理と対策について、データを交えながら詳しく説明していきます。


目次


第一章:新学期が不安になる子どもの心理

1.1 新学期が子どもに与える心理的負担

新学期は、子どもにとって環境の変化が大きい時期です。クラス替えや担任の変更、授業内容の進行、新しい友人関係の構築など、さまざまな要素が絡み合いながら、子どもたちに影響を与えます。こうした環境の変化に不安を感じること自体は自然なことですが、特に不登校の経験がある子どもにとっては、その不安がより強く表れやすく、場合によっては「学校に行きたくない」「登校が怖い」といった強い拒否感を示すこともあります。

文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査(令和5年度)」によると、小中学生の不登校児童生徒数は約35万人と過去最多を更新しており、その背景として以下の要因が指摘されています。

  1. 無気力・不安(約49%)
  2. 生活リズムの乱れ(約16%)
  3. 対人関係の不適応(約12%)
  4. 学業不振(約5%)
不登校児童生徒について把握した事実
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

このデータからも分かるように、不登校は単なる「怠け」ではなく、深刻な心理的要因が関わっていることが多いのです。特に「無気力・不安」に分類されるケースが約半数を占めており、新学期においては「うまくやれるだろうか」「また失敗したらどうしよう」といった不安感が強く影響することがわかります。

また、国立教育政策研究所の報告によると、不登校の子どもが学校復帰を考える際、最も大きな障害となるのは 「再び学校に行けるかどうか分からないという不安」 だとされています。これは、「登校しても大丈夫なのか」「また辛くなってしまうのではないか」という自己疑念が、学校復帰の足かせになっていることを意味します。

このことから、新学期の不安を軽減し、登校のハードルを下げるためには、「行こうと思えば行ける」という感覚を持たせること が重要になります。

1.2 不登校経験のある子どもに特有の心理的特徴

不登校経験のある子どもたちは、以下のような心理的特徴を持ちやすいことが知られています。

① 自信の喪失と自己評価の低下

不登校を経験した子どもは、過去に「行けなかった」「途中でやめてしまった」という経験を持つため、自信を失いやすくなります。「どうせ自分はまた行けなくなる」「みんなと同じようにできない」と考え、自己評価が低くなってしまうのです。

日本心理学会の研究(2023年)によると、不登校経験者の約70%が「自分に自信が持てない」と回答しており、その理由として「学校に行けなかったことが影響している」と述べています。

② 環境変化に対する強い抵抗感

不登校の経験がある子どもは、学校に対して「慣れ親しんだ場所ではない」という意識を持ちやすくなります。そのため、新学期のような環境の変化には特に敏感になり、ストレスを感じやすくなります。
このような子どもにとっては、新学期が「未知の環境」になってしまうため、不安が倍増するのです。

③ 先延ばし思考と回避行動

「行かなきゃいけないとは思うけど、怖い」
「明日から頑張ればいいや」

このように、不安が大きすぎると、人は目の前の課題を先延ばしにする傾向があります。これを心理学では「回避行動」と呼びます。

回避行動が続くと、「行かないことが当たり前」になり、再登校のハードルがどんどん上がってしまいます。こうした思考の癖を変えるためには、「少しずつ慣らしていく」「行動を習慣化する」といった対策が必要になります。

1.3 親が気づくべき「新学期のサイン」

子どもが新学期に対して不安を抱えている場合、いくつかのサインを出すことがあります。例えば、

  • 「学校の話題を避ける」 → 新学期の話をすると黙り込む、話を逸らす
  • 「体調不良を訴える」 → 朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と言う
  • 「イライラしやすくなる」 → ちょっとしたことで怒る、反抗的になる
  • 「夜更かしが増える」 → 生活リズムが乱れ、朝起きられなくなる

こうしたサインを見逃さず、適切なサポートを行うことが大切です。

第二章:新学期に向けた心構え

不登校経験のある子どもが新学期を迎える際、親の対応が登校の成否を大きく左右します。ここで重要なのは、「共感」と「具体的な準備」のバランスをとること です。
ただし、「子どもの気持ちに寄り添う」ことと、「行かなくてもいいよ」と受け入れることは異なります。不登校を長期化させないためには、親の言葉がけや行動が決定的な役割を果たします。本章では、親ができる適切な接し方 について詳しく解説します。

2.1 子どもの不安に寄り添うことの重要性

不登校経験のある子どもは、学校に対して「怖い」「失敗するかもしれない」という強い不安を抱いています。この不安を無視したり、否定したりすると、かえってプレッシャーになり、登校意欲がさらに低下してしまいます。

例えば、次のような対応は避けるべきです。

  • 「また学校休むの?」と責める → 自己否定感を強め、親との信頼関係を損なう
  • 「頑張れば行けるよ」と励ます → 子どもにとっては「頑張れない自分はダメ」というメッセージに聞こえる
  • 「行かなくてもいいよ」と逃げ道を与える → 登校するための努力を放棄するきっかけになる

では、どのように声をかけるのが適切なのでしょうか?

共感のある声かけの例

「新しいクラス、ちょっと不安だよね」 → 子どもが「そうだよね」と気持ちを整理しやすくなる
「最初は緊張するよね。でも、去年も頑張ってたよね」 → 以前の成功体験を思い出させる
「どうしたら行きやすくなると思う?」 → 子ども自身に考えさせることで、自主性を育む

このように、「不安な気持ちを認めつつ、解決策を探る」スタンスが重要です。

2.2 「生活リズムの安定」が登校の鍵

不登校の子どもに共通する特徴の一つとして、「生活リズムの乱れ」があります。文部科学省の調査でも、不登校の約16%が「生活リズムの崩れ」を理由として挙げています。夜更かしや昼夜逆転が続くと、朝起きられず、結果的に登校の機会を失ってしまうのです。

したがって、新学期に向けては、以下のようなリズム調整が必要になります。

  1. 朝決まった時間に起きる → 休み中でも、登校時間に合わせて起床する
  2. 夜のスマホ・ゲームの時間を短縮する → 睡眠の質を向上させる
  3. 学校の時間割に近い生活を送る → 昼寝を避け、日中の活動を増やす

特に、「朝起きられない」問題は、登校を妨げる大きな要因になります。親が「学校に行く前提」の生活習慣を意識的に作ることが重要です。

2.3 「学校に行く流れ」とは?

登校のハードルを下げるためには、「学校に行くことが自然な流れ」となる環境作りが不可欠です。例えば、以下のような準備を整えておくと、子どもがスムーズに動き出しやすくなります。

  • 「制服を用意する」 → 親が手伝うことで、「学校に行く前提」の空気を作る
  • 「通学路を一緒に歩いてみる」 → 事前にルートを確認することで、登校のハードルを下げる
  • 「仲の良い友達と約束をする」 → 誰かと一緒に行くことで、安心感を持たせる

このとき、「〇〇しておきなさい」と指示するのではなく、「一緒にやろうか?」 という形で関わることがポイントです。

2.4 親が意識すべき「適度な距離感」

不登校からの再登校では、親がどこまで介入すべきか が大きな課題となります。関わりすぎると子どもが自立できなくなり、放任すると再び登校意欲が低下するという難しいバランスが求められます。

適切な距離感を保つために、以下のようなスタンスを意識しましょう。

「助けが必要なときは手を貸す」 → 例えば「準備を手伝う」「送迎をする」など、最小限のサポートを行う
「行動は子ども自身に決めさせる」 → 「どうしたい?」と問いかけることで、登校の決定権を本人に持たせる
「結果にこだわりすぎない」 → 1日行けなかったとしても、次の日に再挑戦できるよう励ます

「学校に行くこと」は大切ですが、「その過程」も同じくらい重要 です。親が焦ると、子どももプレッシャーを感じ、逆効果になります。

第三章:新学期にスムーズに登校するための接し方

新学期は、子どもにとって大きな環境の変化があるタイミングです。不登校の経験がある子どもにとっては、「また学校に行けなくなるのではないか」「クラスに馴染めるだろうか」など、不安が増す時期でもあります。そのため、新学期をスムーズに迎えるためには、親の適切な関わり方 が欠かせません。

本章では、新学期に向けて親ができる具体的なサポート方法を詳しく解説します。


3.1 新学期の不安を減らすための準備

「学校が遠い存在」にならないようにする

長期の不登校や長期休暇の間、学校との関わりが薄れると、子どもにとって学校が「遠い存在」になり、再登校のハードルが高くなります。新学期に向けて、以下のような準備をしておくと、登校への心理的負担を減らせます。

  1. 学校の話題を日常に取り入れる
    • 「新しい先生、どんな人かな?」
    • 「夏休みの宿題はどんなのがあった?」
    • 「○○くん(友達)、元気かな?」
  2. 事前に学校へ足を運ぶ機会を作る
    • 始業式の前に登校し、校舎の雰囲気に慣れる
    • 担任の先生と事前に話しておく
    • 学校の近くを散歩し、通学の感覚を取り戻す
  3. 生活リズムを学校モードに戻す
    • 朝起きる時間、食事のタイミング、勉強の時間を整える
    • 夜更かしを避け、登校時間にスムーズに起きられるようにする

学校に行くことが「特別なこと」ではなく、「当たり前の日常の一部」だと感じられるように準備をしていくことが大切です。


3.2 「行きたくない」と言われたときの対応

新学期が近づくと、子どもが「学校に行きたくない」と口にすることがあります。このとき、「どうして?」「行かないとダメだよ」と無理に説得すると、子どもはさらにプレッシャーを感じてしまいます。

■ 「行きたくない」の裏にある本当の気持ちを探る

子どもが「行きたくない」と言うとき、実際には「行けない」「どうしていいかわからない」という心理が隠れています。

例えば、次のような不安を抱えていることが多いです。

  • 「クラスに馴染めるか不安」 → 「先生や友達と話せるかな…」
  • 「勉強についていけるか心配」 → 「みんなより遅れてるかも…」
  • 「学校のルールが怖い」 → 「宿題や決まりごとが守れないかも…」
  • 「そもそも学校に行く意味が分からない」 → 「どうして行かなきゃいけないの?」

これらの不安に寄り添うために、次のような言葉をかけるのが効果的です。

  • 「久しぶりだから不安だよね。でも、一緒にできることを考えてみようか。」
  • 「どんなことが不安なのか、少しずつ話してくれると嬉しいな。」
  • 「学校に行くかどうかはまだ決めなくてもいいから、まずは準備だけしてみようか。」

親が「解決しなきゃ!」と思いすぎると、子どもは余計に追い詰められます。焦らず、不安を一つずつ整理していくことが重要です。


3.3 新学期の朝、スムーズに登校するための工夫

■ 朝の支度をスムーズにするためのポイント

新学期初日は、登校への緊張がピークになります。朝の準備をスムーズにするために、次のポイントを押さえましょう。

  1. 前日の夜に準備を済ませる
    • 制服や持ち物を整える
    • 明日のスケジュールを確認する(何時に家を出るかなど)
  2. 朝は時間に余裕を持つ
    • バタバタするとストレスが増すので、普段より少し早めに起こす
    • 「早くしなさい!」ではなく、「ゆっくりでいいよ」と声をかける
  3. 登校のハードルを低くする
    • 「今日は途中まで一緒に行こうか?」
    • 「まずは学校の門まで行ってみようか」
    • 「一日全部じゃなくてもいいから、午前中だけ行ってみる?」

いきなり「フルで登校しなければならない」と思うとプレッシャーになるので、「まずは学校に向かうこと」 を目標にするのがポイントです。


3.4 まとめ:親の適切なサポートが「新学期のスムーズな登校」につながる

新学期にスムーズに登校するために、親ができるサポートとして、次のようなポイントが重要です。

・「学校を遠い存在にしない」ために、事前準備をする
「行きたくない」と言われたときは、不安の原因を探る
朝の準備をスムーズにし、登校のハードルを下げる

親が「新学期をどう迎えるか」に焦点を当て、事前の準備や登校のサポートを行うことで、子どもが少しずつ学校に向かいやすくなります。

不登校経験のある子どもにとって、新学期は大きなハードルですが、「少しずつでも前に進めるように」と考えることが、親子にとって最も大切な視点です。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

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学校に不登校を相談する前の準備とは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの子どもたちと保護者の方々に関わってきました。不登校の問題は、家庭だけでなく学校との関係性が大きな鍵を握っています。

しかし、保護者の方々の中には、「学校とどう連携すればいいのか分からない」「学校に相談しても状況が変わらない」と感じている方も少なくありません。今回は「不登校の子のために親が知っておくべき学校との連携」というテーマで、具体的なポイントをお伝えします。


目次


第1章 不登校の背景を学校と共有する重要性とは?

不登校の背景には、子ども自身の心理的負担や学校内での人間関係、学業のつまずきなど、さまざまな要因が絡み合っています。しかし、その要因が学校側に十分に伝わっていない場合、適切な支援が行われず、状況が長期化してしまうことがあります。学校と保護者が正確な情報を共有し、現状を共通理解することが、再登校への第一歩です。

1.1 学校は「子どもの現状」を正確に把握できているか

学校側は、子どもが登校していない間の様子を把握することが難しい状況にあります。特に長期間の不登校の場合、担任や学年主任が「子どもが今、どのような状態なのか」「何を不安に感じているのか」を把握していないケースが多いです。そのため、保護者が学校に対して、子どもの状況を具体的かつ継続的に伝えることが求められます。

例えば、以下の情報は学校との共有が重要です。

  • 子どもが不安に感じていること(友人関係、授業の進度、教師との関係など)
  • 自宅での生活リズムや学習状況
  • 心理的な状態(無気力、焦燥感、強い不安など)

これらの情報が学校側に伝わることで、子どもにとって適切な関わり方が見えてきます。

1.2 「問題点」より「子どもの願い」を伝える

学校に状況を伝える際、つい「学校の対応が悪かった」「クラスの雰囲気が合わない」といった問題点にフォーカスしてしまうことがあります。しかし、学校側に改善を求める場合も、子どもの「願い」や「望んでいること」を伝える方が、建設的な関係を築きやすくなります。

例えば、「〇〇先生の授業が分かりづらい」と伝えるより、「子どもは授業内容について、もう少しゆっくり進めてもらえると安心できると言っています」と伝える方が、学校側も柔軟に対応しやすくなります。子どもの立場に立った「前向きな希望」として伝えることが、学校との良好な連携につながります。

学校での三者面談

1.3 「学校に期待すること」を具体的に伝える

学校側も不登校の子どもへの対応に苦慮していることが多く、「どう関わればよいか分からない」という戸惑いを抱えています。そのため、保護者が「何を学校に期待しているのか」を具体的に伝えることで、学校側はより的確な対応ができます。

例えば、「週に1回、担任の先生から手紙をもらえると安心するようです」や「オンラインで少しでも授業の様子が分かると、復帰へのハードルが下がるかもしれません」といった具体的な提案は、学校側も動きやすくなります。

1.4 担任任せにせず、複数の教職員とつながる

不登校の子どもへの対応は、担任だけに任せてしまうと限界があります。担任の先生が熱心であっても、多忙な業務の中で十分に関わる時間を取れないこともあります。そのため、スクールカウンセラーや学年主任、特別支援コーディネーターなど、複数の教職員と情報共有を進めることが望ましいです。

「誰がどの役割を果たしてくれるのか」「どの先生が子どもと気が合うか」を見極めながら、複数の関係者と連携していくことで、より多角的なサポートが可能になります。況が変わればまた調整する」といった姿勢で、焦らず段階的に進めていくことが大切です。


第2章 学校との連携がうまくいかない時の原因とは?

学校との連携を試みても、思うように進まないケースもあります。学校側の対応が消極的であったり、子どもの状況に対する理解が不足している場合、保護者としては「どうして学校は動いてくれないのか」と不安や不満を抱くこともあります。この章では、学校との連携がうまくいかない原因と、それを解消するための具体的な対策について説明します。

2.1 学校側の「不登校に対する理解不足」

学校側は「不登校は家庭の問題」と捉えてしまう傾向があります。また、子どもが学校を拒否している理由を十分に理解せず、「本人がそのうち戻ってくるだろう」と様子見を続けてしまうケースもあります。このような状況では、保護者が学校に対して「我が子の状況は特別な配慮が必要である」ということを丁寧に説明する必要があります。

2.2 保護者が「学校に遠慮しすぎている」

一方で、保護者の方が学校との関係を悪化させたくないあまり、意見を伝えにくく感じてしまうケースもあります。しかし、不登校の解決には学校との連携が不可欠であり、「学校にお願いして申し訳ない」と感じる必要はありません。むしろ、子どものために必要なサポートを求めることは、親の当然の役割です。

2.3 「学校の限界」を見極めたうえでの関わり方

学校にもできることとできないことがあります。学校の対応が不十分であっても、全面的に依存するのではなく、「学校に求めること」と「家庭でできること」のバランスを見極めることが大切です。学校側が対応できない部分については、家庭で補完する形で支えていくことで、子どもの安心感が高まります。

第3章 再登校に向けた学校との具体的な連携ステップ

学校との連携が進むことで、子どもの不登校状態からの回復は大きく前進します。しかし、再登校に向けた支援は単に「学校に戻ること」をゴールとせず、「子どもが学校で安心して過ごせる環境を整えること」に焦点を当てる必要があります。ここでは、再登校に向けた学校との具体的な連携ステップについて、実践的な方法を解説します。


3.1 再登校の「タイミング」は子ども主体で決める

再登校に向けた連携で最も重要なのは、「いつ学校に戻るか」を子どもの気持ちを軸に決めることです。親としては「早く戻ってほしい」という焦りが生まれがちですが、子どもがまだ心理的に準備ができていない段階で無理に登校を促すと、再登校が長続きせず、再び不登校状態に戻ってしまうことが多いのです。

しかし、「子どもが戻りたいと言うまで待つ」という姿勢だけでは、状況が長期化してしまう恐れがあります。そこで、学校との連携では、「子どもがどの段階で戻れそうか」「どのような条件が整えば戻りやすいか」を見極めることが重要です。

具体的なステップ:

  • 担任の先生やスクールカウンセラーと定期的に情報交換を行い、子どもの心理状態や意欲の変化を把握する。
  • 子どもと「学校に戻ったときに不安に感じること」を具体的に話し合い、不安要素を一つずつ減らす取り組みを学校と共有する。
  • 「別室登校」「短時間登校」「放課後の個別対応」など、子どもが段階的に学校に慣れる方法について、学校と柔軟に調整する。

3.2 「復帰後の環境」を事前に整える

再登校がスムーズに進むかどうかは、学校側の「受け入れ態勢」が整っているかに大きく左右されます。子どもが不安を感じる要素を取り除き、「戻っても大丈夫」と思える環境を学校と共に整えることが不可欠です。

環境調整の具体的なポイント:

  • 学習面の配慮
    長期間の不登校の場合、授業の進度についていけるかどうかが子どもの大きな不安材料です。学校側と相談して、復帰後の学習サポート体制(補講、個別指導、プリント補助など)を整える必要があります。ただし、無理に「遅れを取り戻す」ことを目的とせず、「自分のペースで学び直せる」という安心感を与えることが大切です。
  • 人間関係の調整
    不登校のきっかけが友人関係の場合、復帰後に同じクラスで過ごすことへの抵抗感があります。この場合、学校側と「席替えの配慮」「グループ活動の調整」「特定の友人との距離の確保」など、子どもが少しずつ人間関係を再構築できる環境を作ることが求められます。
  • 教職員の理解と関わり方の調整
    子どもが戻った時に、担任だけでなく教科担当の先生や学年主任が「今の子どもの心理状態」を正しく理解していることが大切です。保護者は、学校側に対して「どのような声かけが有効か」「子どもが安心して話せる教職員は誰か」といった情報を共有し、復帰後の関わり方を事前にすり合わせる必要があります。
学校側との面談

3.3 再登校の「初期段階」を丁寧にサポートする

再登校の初期段階は、子どもにとって非常に大きな心理的ハードルです。この段階でのサポートが不十分だと、せっかく再登校してもすぐに「もう無理だ」と感じてしまい、再度の不登校につながることがあります。学校側と密に連携し、再登校の初期段階を丁寧にサポートすることが、長期的な安定につながります。

再登校初期のサポートポイント:

  • 「登校日数」にこだわらず、学校との接点を増やす
    最初は「毎日登校する」ことを目標にせず、「週に1回でも登校できたら十分」と考え、子ども自身が「できた」という達成感を積み重ねることが重要です。学校側には「登校日数よりも、まずは学校との関係を取り戻すこと」を目的とするよう伝え、柔軟な対応をお願いしましょう。
  • 「教室に入れない場合」も想定したプランを準備
    再登校した直後、教室に入れずに保健室や別室で過ごすこともよくあります。この場合も「教室に入れない=失敗」と捉えず、「学校の空間に慣れるステップ」として位置づけることが大切です。学校側と「教室以外の安心できる場所」「特定の先生が見守る時間帯」などをあらかじめ調整しておくことで、子どもは「万が一の逃げ場がある」と安心できます。

3.4 「親の役割」はあくまで伴走者

再登校に向けた過程では、親が「子どもを引っ張る役割」を担おうとすると、かえって子どもにプレッシャーを与えることになります。親はあくまで「伴走者」として、子どもが安心して学校に戻れる環境を整える役割に徹することが大切です。

伴走者としての関わり方:

  • 学校側と子どもの間に立って、双方の思いを丁寧に伝えながら橋渡し役を務める。
  • 「登校できたかどうか」ではなく、「学校に行こうと考えたこと」を評価する。
  • 子どもが不安を口にした時は、否定せずに「それは大変だったね」と共感する。

第4章 学校との連携を長期的に維持するポイント

再登校が実現しても、そこから安定した学校生活を継続するには、学校との連携を長期的に維持していくことが不可欠です。再登校直後は、子ども自身も不安を抱えながら環境に慣れようとしています。しかし、登校が続くことで少しずつ安心感が芽生える一方で、些細な出来事で再び心のバランスを崩してしまうことも少なくありません。そのような時に、保護者と学校が継続的に情報を共有し、柔軟に対応していくことで、子どもは「困った時には守ってもらえる」という安心感を持つことができます。


4.1 「再登校後の不調」を想定して備える

再登校後、最初の数週間は順調に見えても、子どもが新たなストレスを感じ始めるのは少し時間が経ってからです。友人関係の微妙な変化、学業へのプレッシャー、教師との関係性など、さまざまな要因が重なることで、子どもは「やっぱり無理かもしれない」と感じ始めることがあります。

この「再登校後の不調」は、保護者と学校が見逃しがちなポイントです。しかし、ここで迅速かつ丁寧に対応することで、再度の不登校を防ぎ、安定した学校生活を継続できる可能性が高まります。

不調のサインに気づくポイント:

  • 「朝、登校準備に時間がかかるようになった」「お腹が痛い、頭が痛いと言い出す」など身体症状の増加。
  • 学校から帰宅後、以前よりも疲れやすくなり、何も話したがらなくなる。
  • 学校での出来事に対して否定的な発言が増え、再登校前のネガティブな気持ちが戻ってきている。

不調を感じた時の対応:

  • 早めに担任やスクールカウンセラーに状況を伝え、「しばらく様子を見ましょう」ではなく、具体的な対策を一緒に検討する。
  • 一時的に別室登校や短時間登校を取り入れるなど、柔軟な選択肢を提示する。
  • 子ども自身にも「調子が悪い時は、学校と相談して無理をしない方法がある」と伝え、不安を和らげる。

4.2 「担任任せ」にならない関係づくり

再登校後は、どうしても担任の先生との関係が中心になりますが、長期的な連携を維持するためには、担任だけに依存せず、複数の教職員と関係を築いておくことが重要です。担任の異動や学年の変化によって状況が変わった場合も、子どもの状況を理解している複数の教職員とつながっていることで、継続的な支援が途切れることを防げます。

関係構築のポイント:

  • スクールカウンセラーとの定期面談
     担任だけでなく、スクールカウンセラーとも定期的に面談を行い、子どもの状況を共有しておくと、担任が変わった場合にも継続的なフォローが期待できます。
  • 特別支援コーディネーターとの連携
     学校には特別支援コーディネーターが配置されていることが多く、学習面や心理的配慮が必要な子どもへのサポート体制について相談することができます。担任が多忙な時にも、コーディネーターが間に入ることで、スムーズな対応が可能になります。
  • 学年主任や管理職とも関係を築く
     学年主任や校長・教頭とも定期的に情報を共有しておくことで、学校全体の方針として子どもへの配慮が継続されやすくなります。

4.3 「学校からの情報」を積極的に引き出す

再登校後も、子どもは家庭で学校の出来事を細かく話すことは少なくなります。特に、うまくいっていない時ほど、自分の気持ちを言葉にできずに抱え込んでしまうケースが多いです。そのため、保護者としては、学校側から積極的に情報を引き出し、子どもの状況を把握することが重要です。

情報共有の方法:

  • 定期的な面談や電話連絡の依頼
     再登校後も「順調そうだから大丈夫」と思わず、定期的に担任やスクールカウンセラーと面談を行い、子どもの様子を確認します。必要があれば、電話連絡やメールで簡単に状況を把握するだけでも、安心材料になります。
  • 「困った時のサイン」を学校側と共有
     子どもが再び不安を抱え始めた時に現れるサイン(疲れやすくなる、教室に入れなくなる、授業中にぼんやりしているなど)を学校側に伝え、「このような様子が見られたら早めに知らせてほしい」と依頼しておくことで、早期対応が可能になります。
  • 子どもと話す「きっかけづくり」
     学校での出来事について子どもから話を引き出すために、「今日は〇〇先生と話せた?」「お昼は誰と食べた?」など、具体的で答えやすい質問を心がけることで、子ども自身の思いを少しずつ言葉にできるようになります。

4.4 「学校との関係」が途切れそうな時の対応

再登校が軌道に乗ると、学校側も「もう大丈夫だろう」と安心してしまい、連携が途切れがちになります。しかし、長期的に安定した学校生活を送るためには、学校との関係を意図的に維持し続けることが重要です。

関係を維持する工夫:

  • 定期的に短い面談を申し込む
     「特に問題はなさそうでも、今の状況を知りたい」という理由で、短時間の面談や電話連絡を依頼することで、学校側にも「引き続き気にかけている」という姿勢が伝わります。
  • 学校行事や保護者会への積極的な参加
     学校行事や保護者会への参加を続けることで、担任だけでなく他の教職員とも顔を合わせ、子どもの状況について自然な形で情報交換ができます。
  • 「困った時だけ連絡する」のではなく、ポジティブな情報も共有
     子どもが学校で「うまくいったこと」「前よりも成長したこと」を学校側に伝えることで、教職員も子どもの変化をポジティブに捉え、さらなるサポートへのモチベーションが高まります。

第5章 子どもと学校との「信頼関係」を築くための支援とは?

学校との信頼関係を築くことは、再登校後の安定した学校生活を維持するための重要な要素です。不登校を経験した子どもは、学校に対して「自分の気持ちを分かってもらえなかった」「助けてもらえなかった」というネガティブな記憶を抱えていることが多く、再登校後も「また同じことが起きるのではないか」と心のどこかで不安を感じています。その不安を和らげ、学校との信頼関係を再構築するには、保護者の適切な関わりとサポートが欠かせません。


5.1 「学校での安心感」を少しずつ積み重ねる

再登校後の子どもは、学校にいるだけで大きなエネルギーを消耗しています。そのため、最初のうちは「頑張って登校している」というだけで十分です。保護者としては、「教室で過ごせた」「授業を最後まで受けられた」といった成果を求めるのではなく、「学校に行けた」「先生と目を合わせられた」といった小さな成功体験を積み重ねることを大切にしてください。

安心感を積み重ねるための具体的な方法:

  • 「学校で頑張れたこと」を子ども自身に気づかせる
     「今日は教室に入れたね」「友達と少し話せたね」といったポジティブな声かけを意識することで、子ども自身が「自分は頑張れている」と自覚できます。
     ただし、「頑張ったね」「偉いね」といった単純な褒め方ではなく、「〇〇ができたこと、すごいと思うよ」と、具体的に認める言葉をかけることで、子どもの達成感はより深まります。
  • 学校側と「子どもの頑張り」を共有する
     担任の先生に「今日は〇〇ができたと話していました」と伝えることで、学校側も子どもの努力に気づき、よりきめ細かいサポートを続けやすくなります。また、学校側からも「最近〇〇ができるようになりました」とフィードバックがあると、子どもは「学校も自分のことを見てくれている」と感じ、安心感が増します。
  • 「学校外での成功体験」を学校に伝える
     学校での成功体験だけでなく、家や習い事での小さな達成も学校側と共有することで、教職員は子どものポジティブな変化に気づきやすくなります。「最近、家で読書を始めた」「習い事で友達と話せるようになった」といった情報は、学校での関わり方のヒントになります。

5.2 「子ども自身の気持ち」を学校に伝え続ける

再登校後も、子どもは自分の気持ちを学校の先生にうまく伝えられないことが多いです。「学校で困っていること」「苦手なこと」「安心できること」を先生に伝えられず、心の中でモヤモヤを抱えたまま過ごしているケースは少なくありません。
そこで、保護者が「子どもの気持ちの代弁者」として、学校側に子どもの内面を丁寧に伝え続けることが、信頼関係の構築につながります。

子どもの気持ちを伝える際のポイント:

  • 「子どもの言葉」をそのまま伝える
     「〇〇ちゃんは、最近〇〇について少し不安に感じていると言っていました」「〇〇先生の授業が少し速く感じるみたいです」と、子どもの言葉をできるだけそのまま伝えることで、教職員は子どもの気持ちをよりリアルに理解できます。
  • 「要望」ではなく「気持ち」として伝える
     「〇〇してほしい」と学校側に要望を伝えるのではなく、「子どもは〇〇に不安を感じている」といった事実として伝えることで、学校側も柔軟に対応しやすくなります。
  • 子どもの「良い変化」も積極的に共有する
     「最近、〇〇が少しずつできるようになっています」とポジティブな変化を学校側に伝えることで、先生たちも「子どもは頑張っている」と感じ、信頼関係が深まります。

5.3 「学校で困った時の逃げ場」を確保する

学校での信頼関係がまだ十分に築かれていない段階では、子どもは「困った時にどこに行けばいいのか分からない」という不安を抱えています。この「逃げ場がない」という感覚が、再び不登校に戻ってしまう要因になりかねません。
そこで、学校側と連携して、子どもが「困った時に頼れる場所」を確保しておくことで、安心感を高めることができます。

逃げ場を確保する具体的な方法:

  • 「保健室登校」や「別室対応」の選択肢を残しておく
     再登校後も、教室で過ごすことが難しくなった時に、保健室や別室で過ごせる選択肢があると、子どもは「無理しなくていい」と感じられます。
     ただし、「保健室に行く=失敗」と子どもが感じないように、「ちょっと休憩する場所」「気持ちを落ち着ける場所」としてポジティブに位置づけることが大切です。
  • 「特定の先生」を避難先に設定する
     子どもが信頼できる先生がいる場合、「何かあったら〇〇先生のところに行ってもいいよ」と伝えておくことで、子どもは「いざという時の避難先」を持てます。
     学校側とも事前に「〇〇先生が避難先として対応する」という共通認識を持っておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。

5.4 「子どもの意見」を学校生活に反映させる

子どもが学校に対して信頼感を持つためには、「自分の意見が尊重されている」と感じることが重要です。不登校を経験した子どもは、「学校は自分の気持ちを分かってくれない」と感じることで、さらに心を閉ざしてしまうことがあります。
そこで、学校との連携では「子どもの意見を学校生活に反映させる」という視点を持つことで、子ども自身が「学校は自分を大切にしてくれている」と感じやすくなります。

意見を反映させるための方法:

「困った時のサイン」を子どもと共有しておく
 「教室にいられなくなった時は、保健室に行ってもいいよ」「先生にサインを出していいよ」といったルールをあらかじめ決めておくことで、子どもは「自分で状況をコントロールできる」という自信を持てます。

「登校スケジュール」を子どもと一緒に決める
 再登校の際、登校日数や時間帯、別室で過ごすかどうかなどの選択肢を子どもと一緒に考え、「自分で決めた」という感覚を持たせることが大切です。

「授業の受け方」を柔軟に調整する
 「全部の授業を受けるのがしんどい」と感じている場合は、「まずは1時間目だけ参加」「得意な教科から入る」といった方法を、子どもと話し合いながら決めます。
 学校側にも「〇〇は、今のところこのスタイルでやってみたいそうです」と伝えることで、子どもの意思が尊重されていると感じやすくなります。

まとめ:親と学校の「協働」が子どもの継続登校を支える

各章要点必要な行動
第1章 不登校の背景共有学校に子どもの状況・心理状態を具体的に伝え、共通理解を深めることが再登校への第一歩。子どもの不安、生活リズム、心理状態を正確に学校へ伝え、希望するサポート方法を明確に伝える。
第2章 連携がうまくいかない時学校側の不登校への理解不足や、保護者の遠慮が連携を妨げる原因になる。学校の限界を見極めつつ、具体的なサポートを求め、複数の教職員との関係構築を図る。
第3章 再登校へのステップ再登校は子どもの心理的準備を見極めながら、段階的かつ柔軟に進める必要がある。無理のないスケジュールで段階的に復帰し、学習・人間関係・教職員の関わり方の環境調整を進める。
第4章 連携の維持再登校後も継続的な情報共有と複数の教職員との関係構築が、安定した学校生活を支える。定期的な面談や情報共有を続け、子どもの変化に気づきやすい関係を維持する。
第5章 信頼関係の構築子どもが「学校は自分を理解している」と感じることで、長期的な安心感につながる。子どもの気持ちを代弁し、学校との関係を築き、安心できる逃げ場の確保や意見の反映を促す。

再登校後の安定した学校生活は、保護者と学校が継続的に連携し、子どもを支え続けることで実現します。
子どもが「学校は自分を理解してくれている」「困った時には助けてくれる」と信じられる環境を整えることが、不登校の再発を防ぎ、将来的に子どもが自信を持って社会に踏み出すための土台となります。

最後に強調したいのは、保護者と学校の関係は「親が学校にお願いする立場」ではなく、「子どもを一緒に支えるパートナー」という協働の姿勢であるべきだということです。お互いの立場や意見を尊重しながら、子どもが安心して自分らしく成長できる環境を整えていくことが、私たち大人の大切な役割です。

再登校はゴールではなく、子どもの未来につながる新たなスタートです。学校と連携しながら、子どもが自分のペースで前に進めるよう、温かく見守っていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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不登校と発達障害:知っておきたい基礎知識と、家庭で出来るサポート

不登校と発達障害-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問を務めております。近年、小中学生の不登校と発達障害の関連性が注目されています。不登校の背景にはさまざまな要因がありますが、その中でも発達障害の特性が関係するケースは少なくありません。

本稿では、不登校と発達障害に関する基礎知識を整理し、家庭でできる具体的なサポートについて詳しく解説していきます。お子さんが不登校の状態にあるご家庭では、日々の対応に悩みや戸惑いを感じていることと思います。
しかし、適切な理解とサポートによって、お子さんの状況は変わる可能性があります。ぜひ最後までお読みいただき、実践できる部分から取り入れてみてください。


目次


第1章:不登校と発達障害の関係性とは?

不登校が増加傾向にあることは、多くの保護者の方も耳にされているのではないでしょうか。文部科学省の調査によると、2023年度の小中学校の不登校生徒数は34万6482人に達し、過去最多となりました。特に小学生の不登校は近年急増しており、学校生活に適応することが難しい子どもが増えている実態が浮き彫りになっています。

不登校の背景には、学業不振やいじめ、家庭環境の変化などさまざまな要因が挙げられます。その中でも、発達障害を抱える子どもが不登校になるケースは珍しくありません。
発達障害とは、脳の機能的な特性によって学習や行動、対人関係などに困難を抱える状態を指します。発達障害には、主に以下のような種類があります。

1. 自閉スペクトラム症(ASD)

ASD(Autism Spectrum Disorder)は、対人関係やコミュニケーションの難しさ、こだわりの強さ、感覚過敏などの特性を持つ発達障害です。

ASDの子どもは、集団生活においてさまざまな困難を抱えやすい傾向があります。例えば、以下のような場面で学校生活に適応しにくくなることがあります。

  • 暗黙のルールが理解しにくい:「空気を読む」ことが苦手で、友人関係にトラブルを抱えやすい
  • 予定の変更に対応しづらい:急な時間割変更や行事の予定が変わると強いストレスを感じる
  • 感覚過敏がある:教室の騒音や蛍光灯の光、体育の授業の汗の匂いなどが強い不快感を引き起こす

こうした困難が積み重なると、学校に行くこと自体が大きなストレスとなり、不登校につながることがあります。

2. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。

ADHDの子どもは、学校生活において次のような困難を抱えることがあります。

  • 授業中にじっと座っていられない:周囲の子どもと比べて落ち着きがなく、教師から注意を受けることが多い
  • 忘れ物が多い:宿題や持ち物を忘れやすく、自己管理が苦手
  • 感情のコントロールが難しい:カッとなりやすく、衝動的な発言や行動をしてしまう

ADHDの子どもは「やる気がない」と誤解されやすく、叱責を受けることで自己肯定感が低下し、学校に行く意欲を失ってしまうことがあります。

3. 学習障害(LD)

LD(Learning Disability)は、知的発達には問題がないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習分野に著しい困難を抱える発達障害です。

LDの子どもは、以下のような困難を経験することがあります。

  • 文章を読むのが極端に遅い(読字障害)
  • 板書をノートに写すのに時間がかかる(書字障害)
  • 簡単な計算問題でもミスが多い(算数障害)

学習に対する苦手意識が強くなると、「どうせやってもできない」と考えるようになり、登校意欲が低下してしまうことがあります。


発達障害がある子どもが不登校になりやすい理由

発達障害を持つ子どもが不登校になる背景には、いくつかの共通する要因があります。

1. 学校環境が合わない

学校は「集団行動が基本」となる場であり、発達障害の特性を持つ子どもにとっては過酷な環境になりやすいです。授業の進め方やルールが一律であるため、柔軟な対応が求められる場面で適応しにくくなります。

2. 失敗体験が積み重なる

発達障害の子どもは、「努力しても報われない」という経験を繰り返すことが多くなります。特に、ASDの子どもは友達との関係がうまくいかない、ADHDの子どもは授業中に注意を受けることが多いなど、周囲と比べて劣等感を抱きやすいです。こうした経験が蓄積すると、「学校に行くこと自体が苦痛」と感じるようになります。

3. 過度なストレスによる身体的な不調

強いストレスがかかると、頭痛や腹痛、吐き気などの身体症状が現れることがあります。発達障害の子どもは、自分の気持ちを言葉で表現することが難しい場合があり、ストレスを体調不良として訴えることが多くなります。この状態が続くと、保護者は「本当に体調が悪いのか、それとも学校に行きたくないだけなのか」と判断に迷うことになります。

以上のように、発達障害の特性が不登校につながるケースは少なくありません。では、家庭でどのようにサポートすればよいのでしょうか?

第2章:家庭でできる不登校の子どもへの実践的なサポート

ここでは、発達障害が関係する不登校のケースにおいて、家庭で具体的にできる対応を解説します。どこにでも書かれているような「生活リズムを整える」「見守る」では解決しません。お子さんの状況に応じて、実際に成果を上げやすい方法を詳しくご紹介します。


1. 「不登校の原因」を正しく見極めるためのポイント

発達障害のあるお子さんが学校を休むようになると、多くの親御さんは「いじめがあったのか?」「先生との関係が悪いのか?」と外部要因を探しがちです。しかし、発達障害の特性による不登校は、「本人の特性」と「学校環境」のミスマッチによって生じることが多く、他者とのトラブルが直接的な原因ではない場合もあります。

チェックすべきポイント

以下のような視点から、お子さんが学校に行けなくなった背景を整理してみてください。

① 学校環境の負担が大きすぎる

  • 音や光に過敏で、教室が苦痛(蛍光灯のチカチカ、騒音、匂いが耐えられない)
  • 時間割の変更や行事ごとが極端にストレスになる(予定変更に適応しにくい)
  • 先生の指示が抽象的で、何をすればいいのかわからず怒られる

② 人間関係の困難がある

  • クラスメイトとの会話がかみ合わず、孤立しやすい
  • 友達を作ろうとすると過度に執着し、トラブルになりやすい(ASD傾向)
  • すぐに感情的になり、喧嘩をしてしまう(ADHD傾向)

③ 学習面での苦手意識が強い

  • 板書のスピードについていけず、ノートがとれない(LDの可能性)
  • 計算や漢字の暗記が極端に苦手で、授業が苦痛
  • 先生の話を聞きながら理解することが難しく、内容が頭に入らない

実践的なアクション

お子さんが「学校に行きたくない」と言ったとき、「なぜ?」と聞いても本当の理由が出てこないことがほとんどです。本人も、何が苦痛なのか正確に説明できないからです。

そこで、親御さんがすべきことは以下の2つです。

  1. 学校生活を具体的にイメージさせる質問をする
    • 「休み時間はどこで過ごしていたの?」
    • 「今日の授業で一番嫌だったのはどこ?」
    • 「先生にどんなことを言われるとつらい?」
    • 「給食の時間はどんな気持ちだった?」
  2. 記録を取る
    • 学校に行けた日と行けなかった日で、前日や朝の様子に違いはあったか?
    • 体調不良を訴える頻度やタイミングにパターンはあるか?
    • どんな話題を振ると急に機嫌が悪くなるか?

親御さんが「お子さんのストレスポイント」を客観的に把握することで、適切なサポートが見えてきます。


2. 不登校を長期化させないための家庭での接し方

発達障害を持つ子どもの不登校は、適切な対応ができないと長期化しやすい特徴があります。「とりあえず様子を見よう」と受け身の対応をすると、家での居心地が良くなりすぎて学校への戻り方がわからなくなってしまいます。

では、どのように接すればよいのでしょうか?

①「学校に行くかどうか」を議論の中心にしない

  • 「いつになったら行くの?」は禁句
  • 代わりに「今日はどんな気持ち?」と、その日の状態に目を向ける
  • 「じゃあ明日はどうする?」と1日単位で考えさせる

② 家庭での生活リズムを「学校に近い形」に整える

  • 朝は決まった時間に起こす(学校がない日でも)
  • 日中は家でダラダラさせない(寝転んでスマホを見続けるのは避ける)
  • 昼食の時間を固定する(生活リズムの軸を作る)
  • ゲームや動画のルールを決める(夜更かしを防ぐため)

③ 「家にいることが心地よすぎる状態」にしない

不登校が続くと、家が「最も安心できる場所」となり、外に出ること自体が困難になっていきます。そのため、意識的に以下のような行動を取り入れましょう。

  • 毎日外に出る機会を作る(買い物、散歩、図書館など)
  • 学校以外の人と接する機会を持つ(親戚、習い事、支援機関など)
  • 好きなことをする時間を、家の外でも作る(例えばカフェで読書など)

家の中に閉じこもる時間が長くなるほど、学校復帰のハードルが上がります。


3. 学校復帰に向けたステップの作り方

発達障害のある子どもは、いきなり「明日から普通に学校に行く」のは難しいです。そのため、段階的に学校に戻る「ステップ」を作ることが重要になります。

実践的なステップの例

  1. 学校に関する話題を増やす(「今日は○○先生から連絡があったよ」など)
  2. 学校の宿題を少しだけやる(完全に学習を止めないため)
  3. 登校時間に近い時間に起きる習慣をつける
  4. 「学校に寄る」だけの機会を作る(校門まで行く、先生に会うなど)
  5. 短時間だけ学校に行く(まずは1時間、次に半日など)

このように、一歩ずつ「学校に行くこと」への抵抗感を減らすことが大切です。

まとめ

発達障害のあるお子さんの不登校は、環境のミスマッチによるものが多く、単に「甘え」や「怠け」ではない可能性があります。
そして、発達障害だからどうしようもないのではなく、家庭での対応次第で状況を変えていくことが可能です。「何が問題なのか」を正しく把握し、適切なサポートを行うことで、学校復帰の可能性を高めることができます。焦らず、お子さんに合った方法を試してみてください。

要点具体的な行動
不登校の原因を見極めるお子さんの困りごとを把握し、「学校環境の負担」「人間関係」「学習面」のどこに問題があるのか整理する。具体的な質問をして、本音を引き出す。
「学校に行くかどうか」の議論を避ける「いつ行くの?」とプレッシャーをかけず、その日の気持ちを確認しながら、少しずつ学校の話題に触れる。
生活リズムを学校に近づける朝決まった時間に起こし、日中に活動時間を確保する。昼食の時間を一定にし、夜更かしを防ぐためにゲームや動画のルールを設定する。
家庭を「心地よすぎる場所」にしない毎日外出する習慣をつける(散歩、買い物など)。学校以外の人との交流機会を増やし、家の外で楽しい時間を持つ。
学校復帰のためのステップを作るまずは学校に関する話を増やし、次に短時間の登校を試すなど、段階的に慣れさせる。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

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不登校の子と親の「心の距離」を縮める、今日からできるコミュニケーション術

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

不登校に直面する保護者の多くが、「どう接したらよいのかわからない」「子どもと話す機会が減ってしまった」と悩みを抱えています。
しかし、親子のコミュニケーションが途絶えると、不登校の長期化や家庭内での孤立を招くリスクが高まります。本稿では、今日から実践できる「心の距離」を縮めるコミュニケーション術について、具体的な方法とその心理的背景を詳しく解説していきます。


目次


第1章:子どもの感情を理解し、受け止めることの重要性

不登校の子どもの心理

不登校の子どもたちは、学校に行けないことへの罪悪感や、親に迷惑をかけているという後ろめたさを抱えていることが少なくありません。特に、もともと真面目で頑張り屋の子ほど、「行かなければならないのに行けない」という自己否定のループに陥りやすい傾向があります。その結果、「自分はダメな人間だ」と感じ、自信を失い、家にこもる状態が続いてしまうのです。

こうした子どもの心理状態を理解せずに、「どうして学校に行かないの?」「いつまでこのままなの?」と問い詰めると、子どもはますます追い詰められ、親との心の距離が広がってしまいます。

子どもが抱えている本当の気持ちを知るためには、まず「親が子どもの感情を受け止めること」が欠かせません。ここで大切なのは、「なぜ行かないのか」と理由を問い詰めるのではなく、「今どんな気持ちでいるのか」に焦点を当てることです。

たとえば、子どもが言葉少なげにしている場合、「最近、なんとなく気分が沈んでいる?」とそっと尋ねてみるのもよいでしょう。もし子どもがうなずいたなら、「そうなんだね。ずっとつらかったね」と共感の言葉をかけることで、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じ、少しずつ話しやすくなります。

不安を大きくしないための言語化

また、不登校の子どもたちは、自分の気持ちをうまく言語化できないことがよくあります。特に小学生の子どもは、「学校が嫌だ」とは言うものの、具体的に何が嫌なのか説明できないことが多いのです。
こうした場合、「学校のどんなことがしんどいのかな?」「教室に入るのがつらいの?」「勉強が大変なの?」と、いくつかの選択肢を示してあげると、子どもが自分の気持ちを整理しやすくなります。もし、どの質問にも答えられないようであれば、「話したくないときは、無理に話さなくてもいいからね」と伝え、無理に聞き出そうとしないことも大切です。

さらに、子どもの話を聞く際には、「否定しない・アドバイスをしない」ことを意識しましょう。例えば、子どもが「学校に行くのが怖い」と話したときに、「そんなの気の持ちようだよ」「みんな頑張っているんだから、あなたも頑張りなさい」といった言葉をかけると、子どもは「この人にはわかってもらえない」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

親としては励ましたい気持ちがあるかもしれませんが、不登校の子どもにとって、もっとも必要なのは「共感されること」です。「怖いんだね」「毎朝、学校のことを考えると胸が苦しくなるのかな」と子どもの感情に寄り添いながら話すことで、子どもは安心して気持ちを話せるようになります。

また、言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションも大切です。親の表情や態度は、子どもに大きな影響を与えます。例えば、親が険しい顔をしていたり、ため息をついたりしていると、子どもは「自分のせいで親がこんなに疲れている」と感じ、さらにプレッシャーを感じてしまいます。逆に、穏やかな表情で、落ち着いた声のトーンで話すと、子どもは安心して自分の気持ちを伝えやすくなります。親が子どもの話を聞くときには、意識的に表情を柔らかくし、「あなたのことを大切に思っているよ」という気持ちを伝えることが重要です。

このように、子どもの感情を理解し、受け止めることは、不登校から抜け出すための第一歩となります。子どもが「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じることで、親子の信頼関係が深まり、少しずつ前向きな行動へとつながっていきます。

第2章:日常生活の中でのコミュニケーションの工夫

不登校の子どもとの「心の距離」を縮めるには、特別な場面での対話だけでなく、日常生活の中での関わり方が大きな影響を与えます。多くの保護者は、子どもとしっかり話そうとして「時間を作って真剣に向き合う」ことを考えがちですが、それが逆にプレッシャーとなり、子どもが話しづらくなってしまうこともあります。不登校の子どもにとっては、「向き合う対話」よりも「自然な会話」が重要なのです。

共通の時間を増やすことの大切さ

不登校の子どもは、学校に行かないことで「親と顔を合わせるのが気まずい」と感じたり、「どうせ叱られるのではないか」と警戒心を抱いていたりすることがあります。そのため、親子の関係を改善するためには、意識的に「同じ空間で過ごす時間」を増やすことが大切です。ただし、「話すこと」を目的にするのではなく、「一緒に何かをする」ことに重点を置くのがポイントです。

例えば、一緒に食事をする時間を増やすことは有効な手段のひとつです。食卓を囲むことは、言葉を交わさなくても「家族としてのつながり」を感じられる大切な時間です。無理に会話をしようとせず、同じ空間で食事をすること自体を大事にするだけでも、子どもに安心感を与えます。また、子どもが自分から話し出したときに、さりげなく相槌を打つことで、「親は自分を受け入れてくれている」という感覚を持たせることができます。

また、子どもの好きなことに親が関心を示すのも、自然なコミュニケーションのきっかけになります。不登校の子どもは、ゲームやアニメ、動画視聴などに没頭していることが多いですが、それを「時間の無駄」などと否定せず、「どんなゲームをしているの?」「このキャラクター、どんなところが好き?」といった形で興味を持って話しかけることで、子どもは「親に認められた」と感じやすくなります。このような日常的な関わりを続けることで、親子の信頼関係が深まり、子どもが自分の気持ちを話しやすくなる土台ができます。

親からの一方的な会話にならない工夫

子どもとの会話では、「親が話す時間を短くし、子どもが話す時間を長くする」ことが理想的です。しかし、不登校の子どもは自分から話し出すことが難しいため、親が主導で会話を進める場面も出てくるでしょう。その際に気をつけるべきなのは、「問い詰めるような話し方をしない」「アドバイスを押しつけない」ことです。

例えば、「学校に行かない理由を教えて」と直接聞いてしまうと、子どもは「正しい答えを言わなければならない」と感じ、余計に口を閉ざしてしまいます。そのため、「最近、家で過ごす時間が増えたけど、何か楽しいことはあった?」といったように、答えやすい話題から入るのが効果的です。まずは子どもがリラックスして話せる環境を作り、徐々に心を開いてもらうことを意識しましょう。

また、親が「こうしたほうがいい」「こうすればうまくいく」とアドバイスをするのも避けたほうがよいでしょう。たとえば、「朝早く起きる習慣をつけたほうがいいよ」と言うと、子どもは「できていない自分はダメなんだ」と感じてしまいます。
代わりに、「朝起きるのがしんどいのは、夜なかなか眠れないのかな?」と、子どもがどう感じているかを尋ねる形にすることで、プレッシャーを与えずに話を深めることができます。

「会話がなくてもOK」という安心感を持たせる

不登校の子どもは、親と話すこと自体に緊張を感じることがあります。特に、長期間学校に行っていない場合、「親と話すと学校の話になってしまうのでは」と警戒し、できるだけ会話を避けようとする子もいます。このような場合、「話さなくてもいい」「会話がなくても大丈夫」という空気を作ることが大切です。

具体的には、子どもがリビングに来たときに、無理に話しかけるのではなく、親が普段通りに過ごしている姿を見せることが有効です。例えば、親が新聞を読んでいたり、料理をしていたりすると、子どもは「何か話さなければならない」というプレッシャーを感じずに済みます。そして、もし子どもが何か話し始めたときには、手を止めてしっかり耳を傾けることで、「親は自分の話をちゃんと聞いてくれる」と感じるようになります。

また、散歩やドライブなど、横並びの状態で過ごす時間を増やすのも良い方法です。面と向かって話すのが苦手な子どもでも、並んで歩いていると自然と会話が生まれやすくなります。「天気がいいね」「この道、前に通ったことある?」といった些細な話題から始めることで、子どもが会話に参加しやすくなるのです。

このように、日常生活の中で自然な形で関わりを持つことが、子どもとの「心の距離」を縮める上で非常に重要です。親が「会話をしなければならない」と意気込むと、子どもは逆に緊張してしまうため、「同じ空間にいること自体が大事」と考え、ゆるやかに関わっていくことが大切です。

第3章:親自身の心のケアとサポートの重要性

不登校の子どもと向き合うことは、親にとっても精神的な負担が大きいものです。多くの保護者が「このままでいいのか」「何か間違ったことをしているのではないか」と悩み続けています。また、周囲の目や親族からの心ない言葉に傷つき、自分を責めてしまうことも少なくありません。しかし、親が不安や焦りを抱えたままだと、それは必ず子どもにも伝わり、状況を悪化させる要因となってしまいます。子どものためにも、まずは親自身が心のケアを意識することが大切です。

親の不安が子どもに与える影響

不登校の子どもは、親の感情を敏感に感じ取ります。特に、小学生の子どもは親の表情や態度の変化を直感的に察知する能力が高いため、親が焦りや不安を抱えていると、それを「自分のせいだ」と受け止めてしまうことがよくあります。

例えば、親が「なんとかして学校に行かせなければ」と思っていると、その緊張感が日常の何気ないやり取りにも表れます。たとえば、「今日はどうするの?」「そろそろ学校のこと考えようか?」といった言葉が、知らず知らずのうちにプレッシャーになってしまうのです。子どもは親を悲しませたくない、怒らせたくないという思いを持っているため、「学校に行かなければ」と焦りながらも動けない状況に追い込まれ、ますます心を閉ざしてしまうことがあります。

また、親自身が落ち込んでいたり、疲れ果てていたりすると、子どもは「自分のせいで親がこんなに苦しんでいる」と感じ、余計に自己肯定感が低下してしまいます。そのため、親が心の安定を保つことは、子どもの回復にも大きく影響するのです。

親自身のメンタルケアの方法

不登校の子どもと向き合うには、親自身が心の余裕を持つことが不可欠です。とはいえ、「ストレスを溜めないようにしよう」と考えても、現実的には難しいものです。そこで、親自身が気持ちを整理し、適切にケアをするための具体的な方法を紹介します。

① 一人で抱え込まない
不登校の問題は、親一人で解決できるものではありません。親だけで何とかしようとすると、どうしても視野が狭くなり、冷静な判断ができなくなってしまいます。信頼できる専門家や、不登校の子どもを持つ親同士のコミュニティなどに相談し、「一人ではない」と感じることが重要です。

② 生活リズムを整える
子どもの不登校が続くと、親自身の生活リズムも乱れがちになります。例えば、夜遅くまでインターネットで不登校に関する情報を調べ続けたり、朝の登校時間に合わせて過度に神経を使ったりすることで、親自身が疲弊してしまうケースも少なくありません。しかし、親が健康的な生活を送ることは、子どもに安心感を与えるためにも重要です。

特に、食事や睡眠の質を意識することが大切です。親が食事をきちんと摂り、規則正しい生活をしていると、子どもも自然とそのリズムに影響を受けます。逆に、親が疲れ果てた様子でいると、子どもも「家の中が落ち着かない」と感じ、余計に部屋にこもってしまうことがあります。

③ 「今できること」に目を向ける
不登校の子どもを持つ親は、「どうすれば学校に戻れるのか」「いつになったら元の生活に戻るのか」と将来のことばかり考えてしまいがちです。しかし、先のことを考えすぎると、不安が増し、焦りが強くなります。そのため、「今できること」に意識を向けることが大切です。

例えば、「今日は子どもと一言でも会話ができた」「一緒にご飯を食べられた」といった小さな積み重ねを大切にすることで、少しずつ前向きな気持ちを持つことができます。「学校に行かせなければならない」というプレッシャーを手放し、「今の子どもを受け入れる」という視点に切り替えることで、親自身の心の負担も軽くなります。

第4章:親子の信頼関係が回復した先にあるもの

不登校からの回復には時間がかかります。その過程で大切なのは、「親子の信頼関係を回復すること」です。子どもが安心して親と話せるようになり、自分の気持ちを素直に表現できるようになれば、少しずつ前向きな行動が増えていきます。

多くの保護者が「子どもを学校に戻したい」と思うのは当然ですが、大切なのは「子どもが自分の力で一歩を踏み出せる状態を作ること」です。そのためには、「親が子どもに安心感を与えられる存在であること」が何よりも重要です。

不登校の子どもは、「自分はダメな人間だ」「どうせ理解してもらえない」と思い込んでしまうことがよくあります。しかし、親が適切に関わることで、子どもは「自分は大丈夫だ」「受け入れてもらえている」と感じることができるようになります。そうした積み重ねが、最終的には学校復帰や社会との関わりを再構築する力へとつながっていくのです。

これまで述べてきたように、不登校の子どもと親の「心の距離」を縮めるためには、焦らず、日常の中で少しずつ信頼関係を築いていくことが大切です。そして、そのためには、親自身が冷静で、穏やかな気持ちでいられることが不可欠です。「子どもが学校に行くこと」だけを目標にするのではなく、「親子の関係を良くすること」を大切にすることで、子どもは安心して前に進むことができるようになります。

最後に、不登校は決して親のせいではありません。そして、どの子どもにも必ず回復のタイミングが訪れます。親が適切に関わり、支えていくことで、そのタイミングを早めることができるのです。本稿が、少しでもその手助けになれば幸いです。

要点必要な行動
子どもの感情を理解する子どもが感じている不安やプレッシャーに寄り添い、「なぜ行かないのか」ではなく「今どんな気持ちか」を聞く。共感の言葉をかけ、安心できる環境を作る。
自然なコミュニケーションを増やす向き合う対話より、食事や散歩などを通じた「さりげない会話」を大切にする。子どもの興味に関心を持ち、一緒に過ごす時間を増やす。
親の不安を子どもに伝えない焦りやストレスを子どもに押しつけないようにし、親自身が心の余裕を持つ。生活リズムを整え、相談できる場を確保する。
今できることに目を向ける「学校に行かせる」ことにとらわれず、「今日は会話できた」「一緒に食事できた」といった小さな前進を喜び、積み重ねる。
子どもが前向きになる環境を作る無理に学校を勧めず、子どもが「安心できる場所」で自信を回復できるようサポートする。親子の信頼関係を最優先に考える。

ToCo(トーコ)について

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学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

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【不登校タイプ別診断】不登校の4つの原因と今日からできる対応策

【不登校タイプ別診断】不登校の4つの原因と今日からできる対応策-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
不登校は単なる怠けや甘えではなく、必ず何らかの要因が存在します。その要因を見極め、適切に対応することで、再び学校へ向かうきっかけを作ることができます。本稿では、不登校の子どもに見られるタイプごとに原因を整理し、それぞれに適した対応策を詳しく解説します。


目次


不登校のタイプとそれぞれの特徴

不登校の要因は子どもによって異なりますが、大きく以下の4つのタイプに分類できます。

  1. 環境適応が難しいタイプ
  2. 心のエネルギーが低下しているタイプ
  3. 家庭環境の影響を受けているタイプ
  4. 自由志向が強いタイプ
タイプ特徴必要な行動
環境適応が難しい学校の人間関係や学習の負担が原因で、登校がストレスになっている。具体的な負担を特定し、学習支援や人間関係の調整を行う。短時間の登校から始める。
心のエネルギーが低下精神的な疲労が蓄積し、学校に行く気力がなくなっている。無理に登校を促さず、生活リズムを整えながら回復を優先。学校とのつながりを維持する。
家庭環境の影響を受けている親との関係や家庭の雰囲気が不登校に影響している。親子の会話を増やし、見守るだけでなく適切な働きかけを行う。外出の習慣をつける。
自由志向が強い学校に行く必要性を感じず、家庭での生活に満足している。学校に行く意義を説明し、家庭のルールを工夫する。外での活動時間を増やす。

それぞれのタイプごとに、具体的な特徴と対応策を説明します。

1. 環境適応が難しいタイプ

このタイプの子どもは、学校という集団生活の場に適応しにくく、強いストレスを感じています。例えば、以下のような特徴が見られることが多いです。

  • 友人関係がうまくいかず、学校で孤立しがち
  • 授業についていくのが難しく、自己肯定感が低下している
  • 音や匂い、人の多さに敏感で、学校の環境に強い疲労を感じる

こうした子どもは、環境への適応に困難を抱え、その負担が蓄積することで登校が難しくなります。特に、学校内でのトラブルが明確な場合は、それが登校拒否の直接的な原因になっていることが多いです。

対応策

このタイプの子どもの場合、「なぜ学校に行けないのか」を明確にすることが最優先です。「学校が嫌」という言葉だけで終わらせず、子どもの心情に配慮しながら、何が負担になっているのかを具体的に言語化することが重要になります。

例えば、授業が理解できないことで苦しんでいる場合、学習サポートを行うことで負担を軽減できるかもしれません。一方で、人間関係が原因の場合は、学校と連携して席替えや関わる人を調整するだけでも状況が改善することがあります。

また、環境の変化に対する不安が強い子どもには、いきなり再登校を促すのではなく、少しずつ学校との接点を増やしていく方法が効果的です。保健室登校や、短時間の登校を取り入れることで、負担を軽減しながら学校生活に戻る準備ができます。

2. 心のエネルギーが低下しているタイプ

このタイプの子どもは、精神的な疲労が蓄積し、学校へ行く気力そのものがなくなっている状態です。以下のような特徴が見られます。

  • 朝起きるのが極端に難しい
  • 家でも無気力で、好きだったことにも興味を示さない
  • 「学校に行かなければ」とは思っているが、体が動かない

この場合、学校へ行かないこと自体が問題というよりも、まず「なぜ心のエネルギーが低下しているのか」を探ることが重要です。長期間のストレス、過去の挫折経験、プレッシャーによる精神的な疲労などが背景にあることが多く、焦って登校を促すことで逆効果になる場合もあります。

対応策

このタイプの子どもの場合、まずは心のエネルギーを回復させることが最優先です。ただし、単に「休ませる」だけでは、回復の目処が立たないこともあります。

重要なのは、子どもの心の状態を観察しながら、少しずつ「生活リズムを整える」「外の世界との接点を作る」といった段階を踏むことです。朝のリズムを整えるために、最初は家の中での簡単なルーティン(食事の時間を決める、軽い運動をするなど)から始めるのがよいでしょう。

また、無理のない範囲で「学校に行くことへの心理的なハードル」を下げることも重要です。例えば、担任の先生と定期的に連絡を取る、プリントや宿題を自宅で取り組むといった方法で、学校と完全に切り離された状態を作らないことが回復への近道になります。

3. 家庭環境の影響を受けているタイプ

このタイプの子どもは、家庭の状況や親との関係が不登校に影響しているケースです。決して親が悪いというわけではなく、家庭の雰囲気や親の関わり方が、子どもの学校生活に影響を与えることは珍しくありません。

  • 家庭での会話が少なく、気持ちを話せる環境がない
  • 兄弟姉妹との関係にストレスを感じている
  • 親が過度に心配し、学校に行かないことを受け入れすぎている
  • 家が快適すぎて、学校に行く必要性を感じなくなっている

このタイプの場合、不登校の直接的な原因が家庭にあるため、子ども本人の意思だけで解決することが難しい傾向があります。親の接し方を少し変えるだけで、状況が改善することもあります。

対応策

家庭環境が影響している場合、まずは「親子の関係性」を見直すことが重要です。親が良かれと思ってやっていることが、かえって子どもにとって負担になっていることもあります。

例えば、子どもが不登校になると、多くの親は「無理に学校へ行かせるのは逆効果」と考え、見守る姿勢をとります。しかし、ただ受け入れるだけでは、「このままでいいんだ」と思わせてしまい、結果的に長期化することがあります。不登校から抜け出すためには、見守るだけではなく、適切なタイミングで「学校に戻る方向へ導く」働きかけが必要です。

また、家庭内の会話が不足している場合は、まず「学校の話ではない会話」を増やしてみることが効果的です。いきなり「学校に行こう」と言われるとプレッシャーを感じますが、日常的な雑談が増えることで、子どもが心を開きやすくなります。信頼関係ができれば、登校に向けた話し合いもスムーズになります。

さらに、家の中が快適すぎることで不登校が長引いている場合は、少しずつ「外に出る習慣」を作ることも大切です。短時間でも外の空気に触れることで、生活リズムが整い、学校へ行くきっかけを作りやすくなります。

4. 自由志向が強いタイプ

このタイプの子どもは、学校に行く意味を見出せず、自分の好きなことに時間を使いたいという意識が強い傾向があります。いわゆる「学校に行く必要性を感じない」状態です。

  • 「学校に行かなくても困らない」と考えている
  • 家でゲームや動画視聴、創作活動などに没頭している
  • 規則や集団行動を窮屈に感じる

こうした子どもは、特定の強いストレスがあるわけではなく、「学校よりも家のほうが楽しい」と感じていることが多いです。しかし、このままでは社会的な経験が不足し、将来的に困難を感じる場面が増える可能性があります。

対応策

このタイプの子どもに対しては、「学校に行かなければダメ」という圧力をかけるのではなく、「学校に行くことの意味」を納得させることが重要です。

例えば、学校では勉強だけでなく、人との関わり方や集団の中での適応力を学ぶ場でもあります。将来的に好きなことを仕事にするにしても、最低限の学力や対人スキルは必要になります。そうした「学校に行くことで得られるもの」を、子どもの関心に合わせて伝えると、納得しやすくなります。

また、家庭でのルールを工夫することも効果的です。例えば、「昼間は動画やゲームを制限する」「外に出る時間を増やす」など、家の環境を少しずつ変えることで、「家にいるより学校に行くほうがいいかも」と思わせることができます。

まとめ

不登校の原因は子どもによって異なり、それぞれに合った対応が必要です。

  • 環境適応が難しい子どもには、ストレスの原因を特定し、負担を軽減する
  • 心のエネルギーが低下している子どもには、回復を優先しながら少しずつ学校との接点を作る
  • 家庭環境の影響がある場合は、親の関わり方を見直し、適切な働きかけをする
  • 自由志向が強い子どもには、学校へ行く意味を理解させ、生活習慣を整える

不登校は、適切な対応をすれば改善できるケースが多くあります。大切なのは、子どもの状況を冷静に見極め、段階的に学校へ戻るための環境を整えていくことです。焦らず、しかし現状を放置せず、一歩ずつ前に進めるように支援していきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

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親ができる、子どもの学校ストレスへの対策5点

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの保護者の方々と向き合いながら、子どもたちの学校ストレスとその対策について考えてきました。

本稿では、学校という環境の特殊性とストレス、その危険性と親にできる5つの対策について紹介していきます。


目次


学校が強いる集団生活のメリット・デメリット

学校は、子どもたちが学力を身につける場であると同時に、社会性を育む場所でもあります。集団生活を通じて、子どもたちは人間関係を学び、協調性や責任感を養っていきます。しかし、その一方で、学校という環境がすべての子どもにとって適切とは限らず、集団生活のあり方が子どもにとって大きなストレスとなることもあります。

学校生活のメリット

  1. 社会性の発達
    学校は、家族以外の人と長時間過ごす最初の社会です。ここでは、友達と協力したり、意見を調整したりする経験を積むことができます。これにより、子どもは相手の気持ちを考える力や、トラブルを解決するスキルを身につけることが期待されます。
  2. ルールや規律を学ぶ
    学校には、時間割、校則、学級活動など、一定のルールが存在します。これらを守ることを通じて、子どもは社会に出たときに必要となる規律を身につけることができます。例えば、「時間を守る」「順番を待つ」「集団のルールを尊重する」といった基本的な社会的行動は、学校での経験を通じて学ぶことが多いです。
  3. 挑戦する機会が増える
    学校では、勉強以外にも運動会、合唱コンクール、修学旅行など、さまざまな活動があります。これらのイベントを通じて、子どもは努力することの大切さや、成功・失敗から学ぶ機会を得ることができます。特に、普段はあまり目立たない子でも、特定の活動で才能を発揮することがあります。
  4. 学習の機会
    もちろん、学校は学力を身につける場でもあります。授業を通じて、読み書き計算の基礎から、論理的思考や問題解決の能力まで、多くの知識を得ることができます。先生がいる環境で学ぶことで、自宅学習だけでは得られない指導を受けることができます。

学校生活のデメリット

  1. 集団のルールが個人に合わないことがある
    学校は、多くの子どもを一律に指導する場であるため、個々の特性に配慮しきれないことがあります。例えば、じっと座っているのが苦手な子や、静かな環境で集中したい子にとっては、学校のルールが過度なストレスになることがあります。また、体育や音楽のような特定の授業が苦手な子どもは、劣等感を抱きやすくなります。
  2. いじめや人間関係のストレス
    学校では、さまざまな性格や価値観を持つ子どもたちが共に生活します。その中で、いじめや仲間外れといった問題が発生することがあります。特に、クラスの固定された人間関係の中では、一度トラブルが起こると逃げ場がなくなり、ストレスが慢性的になることがあります。
  3. 学習のペースが合わないことによるストレス
    学校の授業は、平均的な進度に合わせて進められるため、理解が遅い子には難しく、逆に先に進みたい子には退屈に感じることがあります。どちらのケースでも、学校での学びが苦痛になり、勉強に対するモチベーションが低下する要因となります。
  4. 教師の対応の影響
    教師の指導方法が子どもに合わない場合、それが大きなストレスになることがあります。例えば、厳しい指導を受けることで萎縮してしまったり、逆に放任されることで不安を抱えたりすることもあります。また、教師の価値観が強く押し付けられる環境では、個性が尊重されにくくなります。
  5. 家庭と学校の価値観のギャップ
    家庭で育てられた価値観と、学校の方針が大きく異なる場合、子どもは戸惑いを感じることがあります。例えば、「家では自由に意見を言えるのに、学校では先生の言うことが絶対」という環境では、自己表現の仕方が分からなくなることがあります。

集団生活が合わない子どもの特徴

これらのメリット・デメリットを考えると、学校の集団生活がすべての子どもに適しているわけではないことが分かります。実際、集団生活が苦手な子どもにとっては、学校のルールや人間関係が大きな負担となり、不登校につながることもあります。

特に、以下のようなタイプの子どもは、学校生活のデメリットの影響を受けやすい傾向があります。

  • 繊細で感受性が強い子
  • 一人でいることを好む子
  • 競争や比較を苦手とする子
  • 自分のペースで学びたい子
  • ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

このような子どもにとって、学校の集団生活はストレスの原因となり、不登校や引きこもりにつながるリスクが高くなります。そのため、親としては、学校が子どもに与えている影響を慎重に観察し、子どもにとっての適切な環境を考える必要があります。


学校によるストレスの種類

学校は、子どもたちにとって学びや成長の場であると同時に、さまざまなストレスの要因を含む環境でもあります。すべての子どもが同じように学校を楽しめるわけではなく、学校での生活が大きな負担となるケースも少なくありません。本章では、学校において子どもが感じるストレスの種類について詳しく解説し、その影響について考えていきます。

1. 学業に関するストレス

① 授業の進度や内容の難易度の不一致
学校の授業は、多くの子どもにとって適度な難易度になるよう設計されていますが、すべての子どもにとって「ちょうどいい」わけではありません。授業の進度が速すぎて理解が追いつかない子どもは、学習に対する自信を失い、自己肯定感が低下していきます。一方で、授業が簡単すぎる子どもは退屈を感じ、学習意欲を失うことがあります。どちらのケースでも、学校が「学ぶ楽しさを感じる場」ではなく、「苦痛を感じる場」になってしまう可能性があります。

② テストや成績のプレッシャー
小学校高学年になると、成績が本格的に評価されるようになり、中学では定期テストの結果が内申点にも影響します。このように、学業に対するプレッシャーが年々増していくことで、子どもは「良い成績を取らなければならない」という重圧を感じるようになります。特に、完璧主義傾向が強い子や親の期待を強く感じる子は、テスト前に極度の不安を抱えたり、失敗を恐れて挑戦を避けるようになったりすることがあります。

2. 人間関係によるストレス

① いじめや対人トラブル
学校における最大のストレス要因の一つが、いじめや友人関係のトラブルです。いじめには、暴力や暴言といった目に見えるものだけでなく、無視や仲間外れといった陰湿なものもあります。こうした問題が発生すると、子どもは学校に行くこと自体が苦痛になり、不登校につながることがあります。

② 先生との相性
学校生活において、子どもが最も長く接する大人は担任の先生です。教師の態度や指導方法が、子どもの心理に大きな影響を与えることは言うまでもありません。厳しすぎる指導や理不尽な叱責、逆に放任されすぎることで不安を感じることもあります。また、先生が特定の生徒をひいきしているように見えると、子どもは不公平感を抱き、学校への不信感を強めることもあります。

3. 学校のルールや環境によるストレス

① 校則や規律の厳しさ
学校では、一定の秩序を維持するためにルールが設けられています。しかし、そのルールが厳しすぎたり、合理性に欠けたりする場合、子どもにとって強いストレスになります。たとえば、「前髪の長さが決められている」「靴下の色に指定がある」「休み時間の過ごし方が制限されている」といった校則に対し、納得できない子どももいます。「なぜ守らなければならないのか」が理解できないルールを押し付けられることで、学校に対する不信感や反発心が生じることがあります。

② 集団行動の負担
日本の学校では、「みんなで一緒に行動すること」が重視される傾向があります。たとえば、給食当番、清掃当番、班行動など、さまざまな場面で協調性が求められます。しかし、一人で静かに過ごすことを好む子や、自分のペースで動きたい子にとっては、これが大きなストレスになることがあります。「集団のペースに合わせなければならない」という圧力が、学校生活そのものを苦痛に感じさせる原因になり得ます。

4. 身体的ストレス

① 朝の早起きと生活リズムの強制
学校の始業時間は多くの場合8時台であり、これに間に合うためには早起きをしなければなりません。特に低学年のうちは、まだ生活リズムが安定していない子どもも多く、朝早く起きること自体がストレスになっていることがあります。さらに、部活動や宿題によって夜遅くまで活動を強いられると、慢性的な睡眠不足につながり、心身の不調を引き起こす原因にもなります。

② 長時間の座学と運動不足
学校では1日に5~6時間、座って授業を受けることが求められます。しかし、じっと座っていることが苦手な子どもにとっては、これが大きな負担になります。また、最近は休み時間に自由に遊べる時間が減っている学校もあり、身体を動かす機会が少なくなることでストレスが蓄積することもあります。

5. 家庭とのギャップによるストレス

学校と家庭の考え方や価値観が異なると、子どもは「どちらに合わせればいいのか」と悩むことがあります。例えば、家では「自分の好きなことを大切にしていい」と言われていても、学校では「みんなと同じように行動しなさい」と求められることがあります。こうしたギャップが大きくなると、子どもはアイデンティティの揺らぎを感じることがあり、精神的な負担となることがあります。

このように学校にはさまざまなストレスの要因が存在します。もちろん、すべての子どもがこれらのストレスを感じるわけではありませんが、特定の要因が強く影響すると不登校のきっかけとなることがあります。


学校ストレスを強く感じてしまう子どもの特徴

学校生活は多くの子どもにとって、学びや成長の場となる一方で、強いストレスを感じる場にもなり得ます。しかし、すべての子どもが同じようにストレスを感じるわけではありません。特に学校の環境や人間関係が負担になりやすいタイプの子どもは、不登校のリスクが高くなることがあります。本章では、学校ストレスを強く感じやすい子どもの特徴を詳しく解説し、それぞれの子どもがどのような状況で困難を抱えやすいのかを考えていきます。

1. 繊細で感受性が強い子

① 小さなことでも深く考え込んでしまう
繊細な子どもは、周囲の状況や他人の言葉に対する感受性が高いため、些細な出来事でも心に大きな影響を受けます。たとえば、先生のちょっとした注意や、友達の何気ない一言でも、「自分は嫌われているのではないか」「もう学校に行きたくない」と感じてしまうことがあります。

② 周囲の期待に敏感
「親や先生の期待に応えなければ」と強く感じる子どもほど、学校でのプレッシャーを抱え込みやすくなります。完璧主義の傾向がある場合、「うまくやらなければならない」という気持ちが強まり、失敗を過度に恐れるようになります。その結果、学校生活がストレスの源になり、不安が高まることがあります。

2. 一人でいることを好む子

① 集団行動が負担になる
学校では、授業や給食、清掃活動など、多くの時間を集団で過ごすことが求められます。しかし、一人でいることを好む子どもにとっては、これが大きな負担になります。特に、常にグループで行動しなければならない環境では、自分のペースを保つことが難しくなり、ストレスを感じやすくなります。

② 友達付き合いが苦手
学校生活では、友達関係の維持が重要視される場面が多くあります。しかし、人と話すことが苦手だったり、特定の友人がいなかったりする子どもは、「友達を作らなければならない」というプレッシャーを感じやすくなります。その結果、無理に人付き合いをしようとして疲れたり、孤独感を深めたりすることがあります。

3. 競争や比較を苦手とする子

① テストや成績のプレッシャーに弱い
学校では、定期的にテストが行われ、成績によって評価が決まります。競争心が強い子どもにとっては、これはモチベーションになることもありますが、競争や比較を苦手とする子どもにとっては、強いストレス要因になります。特に、努力しても成績が伸びにくいと感じると、「どうせやっても無駄だ」と考えてしまい、意欲を失うことがあります。

② 体育や発表など、人前に出ることへの抵抗感
学校では、体育の授業や学芸会、発表の場面など、多くの人の前で何かをする機会が頻繁にあります。こうした場面で「失敗したらどうしよう」と不安を感じる子どもは、学校に行くこと自体が怖くなり、不登校の引き金になることがあります。

4. 自分のペースで学びたい子

① 授業の進め方が合わない
学校の授業は、多くの子どもが理解できるペースで進められますが、それがすべての子どもに合っているわけではありません。学ぶスピードが速い子にとっては「退屈」、遅い子にとっては「ついていけない」と感じることがあり、それがストレスの原因になります。

② 興味のあることに集中したい
自分の興味のあることに没頭したい子どもにとっては、学校の授業が「やりたくないことをやらされる時間」と感じられることがあります。その結果、学校生活への意欲が低下し、不登校につながることがあります。

5. ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

① 学校の規則に納得できない
学校のルールに対して、「なぜ守らなければならないのか?」と疑問を抱く子どももいます。特に、自分の考えをしっかり持っている子は、納得できない規則に従うことをストレスに感じることがあります。たとえば、「髪型の自由がない」「服装の細かい決まりがある」といった校則が、自分の価値観と合わないと感じることで、学校への不満が蓄積していくことがあります。

② 自由に考えることが制限されることへの違和感
自分の意見を持ち、独自の考えを大切にしたい子どもにとって、学校の「先生の指示に従うことが基本」というルールは窮屈に感じられることがあります。その結果、「自分の考えを抑えなければならない環境」に強いストレスを感じ、学校生活が苦痛になることがあります。

以上のように、学校ストレスを強く感じる子どもには、それぞれ異なる特性があります。しかし、共通しているのは、「その子にとって学校が合わない要因がある」ということです。学校に適応しにくい子どもを「弱い」とか「甘えている」と考えるのではなく、「どの部分で負担を感じているのか?」を理解することが大切です。


親ができる対策①「情報を得る」

学校のストレスが子どもに大きな影響を与えていると感じたとき、親として何ができるでしょうか。不登校や学校ストレスへの対応でまず重要なのは、「正しい情報を得る」ことです。

親が学校の仕組みや不登校の現状を知らないまま、感情的に対応してしまうと、かえって子どもの負担を増やしてしまうことがあります。そこで、本章では、親が知っておくべき情報と、その活用方法について詳しく説明していきます。

1. 不登校に関する正しい知識を持つ

不登校についての理解がないまま、「学校に行かないと将来困る」「今のうちに立ち直らせないとダメになる」と考えてしまうと、親自身が焦り、不適切な対応を取ってしまうことがあります。しかし、近年の研究やデータから、不登校の子どもすべてが将来困るわけではないことが分かっています。

① 不登校の子どもの数は増えている
文部科学省の調査によると、不登校の小中学生の数は年々増加し、35万人を超えています。特にコロナ禍以降、その傾向は加速しており、学校の環境が合わない子どもが増えていることが分かります。このような状況の中で、不登校は決して珍しいことではなく、特定の家庭や子どもに限った問題ではないことを理解することが重要です。

② 不登校の原因は多様
「学校に行きたくない」という気持ちの背景には、さまざまな要因が関係しています。いじめや学業のプレッシャー、人間関係のストレスなど、子どもによって理由は異なります。そのため、「なぜ学校に行けないのか」を単純に判断せず、多角的に考えることが大切です。

③ 「不登校=逃げ」ではない
「学校に行かないことは逃げだ」と考える親は少なくありません。しかし、子ども自身が「学校に行きたいのに行けない」状態であることが多く、その背景には強いストレスや心理的な負担が隠れています。大切なのは、「どうすれば子どもが安心して学校に行けるようになるのか」を考えることであり、単に「無理やり行かせること」ではないのです。

2. 学校の制度や支援について知る

不登校や学校ストレスの問題を考える際には、学校がどのような対応を取れるのかを知ることも重要です。

① 学校は不登校の子どもへの対応を求められている
文部科学省は、不登校の子どもに対して適切な支援を行うよう、各学校に指示を出しています。学校側が「不登校は家庭の責任」と考える時代は終わりつつあり、適切な支援策を講じることが求められています。そのため、学校と建設的に話し合いながら、子どもにとって最善の方法を探ることが可能です。

② 学校外のサポート機関を活用する
不登校支援を行う機関やサービスは増えています。たとえば、ToCo(トーコ)株式会社では、子どもがスムーズに再登校できるようサポートを提供しています。こうした専門的な支援を受けることで、親だけで抱え込むのではなく、適切な対応を取ることができます。

3. 情報を得た上で、親ができること

① 子どもの状態を把握する
情報を集めたら、まずは自分の子どもがどのような状況にあるのかを客観的に分析することが重要です。学校でのストレスの原因は何か、どのようなことに悩んでいるのかを理解することで、適切な対応が見えてきます。

② 学校との連携を考える
情報をもとに、学校とどのように話し合うかを考えます。いきなり「学校を休ませます」と伝えるのではなく、「どのような対応が可能か」を相談することで、子どもにとって最適な環境を整えることができます。

③ 再登校に向けた準備をする
不登校が長引くと、再登校へのハードルが高くなります。そのため、子どもが学校に戻る際に負担を感じにくい方法を考え、必要であれば専門的な支援を活用することも検討します。ToCoでは、再登校をスムーズに進めるためのプログラムを提供しており、親だけでは難しい対応もサポートしています。

「情報を得ること」は、不登校対応の第一歩です。感情的にならず、正しい知識をもとに冷静に対応することで、子どもにとって最適な方法を見つけることができます。

親ができる対策②「相談相手になる」

不登校や学校ストレスに直面した子どもにとって、親の存在は非常に大きな意味を持ちます。特に、子どもが自分の気持ちを打ち明けられる「相談相手」になれるかどうかは、その後の対応に大きな影響を与えます。

多くの親御さんが、「うちの子は何も話してくれない」「何を考えているのか分からない」と悩まれます。しかし、それは子どもが何も考えていないのではなく、「どう話せばいいのか分からない」「話しても理解してもらえないのではないか」と思っている場合が多いのです。本章では、親が相談相手として信頼されるためにできることを具体的に解説していきます。

1. 子どもが相談しにくい理由を知る

子どもが学校での悩みを親に話せない理由はいくつかあります。

①「心配をかけたくない」と思っている
子どもは、親に心配をかけたくないという気持ちを強く持っています。特に、普段から「頑張りなさい」「学校は行くものだ」と言われている場合、「学校がつらい」と話すことで親をがっかりさせてしまうのではないかと不安になります。そのため、親の前では何もなかったように振る舞うことがあります。

②「否定されるのではないか」と不安を抱えている
「甘えているだけじゃないの?」「みんな頑張っているんだから」など、子どもの気持ちを否定するような言葉をかけられた経験があると、それ以降、話しにくくなってしまいます。特に、子ども自身が「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいる場合、親からの否定的な言葉はさらに追い詰めることになります。

③「どう話せばいいか分からない」と感じている
子ども自身も、自分の気持ちを整理できていないことがあります。「なぜ学校に行きたくないのか分からない」「言葉にすると余計につらくなる」と思っている場合、あえて話さない選択をすることがあります。

これらの背景を理解したうえで、親が「安心して話せる環境」を作ることが重要です。

2. 相談しやすい雰囲気を作るために

子どもが自然に相談できる環境を整えるには、次のポイントを意識することが大切です。

① すぐに解決しようとしない
親としては、子どもの悩みを聞いたら「どうすれば解決できるか」を考えてしまいがちです。しかし、子どもが求めているのは「アドバイス」ではなく、「ただ話を聞いてもらうこと」である場合が多いです。特に、初めて悩みを打ち明けるときには、親が「どうすればいいか」よりも「そうだったんだね」「大変だったね」と共感する姿勢を示すことが大切です。

② 子どものペースに合わせる
無理に「話しなさい」と迫ると、かえって口を閉ざしてしまうことがあります。子どもが話したいときに話せるよう、自然な雰囲気を作ることが大切です。例えば、「今日はどうだった?」と軽く聞くだけにしたり、食事中や散歩中などリラックスできる環境で会話をするのも効果的です。

③ 親自身の気持ちを伝える
「あなたのことを心配しているよ」「何があっても味方だからね」と伝えることで、子どもは安心感を持つことができます。ただし、「学校に行かないと将来大変になるよ」「早く行ってほしいと思っているよ」といったプレッシャーを感じさせる言葉は逆効果になるため注意が必要です。

3. 相談しやすい親になるためにできること

① 普段から子どもの話に耳を傾ける
学校のことに限らず、普段から子どもの話をしっかり聞く姿勢を持つことが大切です。「学校どうだった?」と聞いても「別に」としか返ってこない場合でも、子どもが好きなこと(ゲームや趣味など)についての話を聞くことで、会話のきっかけを作ることができます。

② 否定せずに受け止める
「それはおかしいよ」「そんなことで悩んでいるの?」といった否定的な言葉は、子どもの気持ちを閉ざしてしまいます。子どもの話がどんな内容であっても、まずは「そうなんだね」と受け止めることを意識しましょう。

③ 親も相談する姿を見せる
子どもは、「相談することは恥ずかしいこと」「弱い人がすること」と思っている場合があります。親自身が「今日はこんなことがあってちょっと落ち込んじゃったんだ」「お母さんもこういうことで悩むことがあるよ」と話すことで、相談することは自然なことだと伝えることができます。

「相談相手になる」ということは、すぐに解決策を提示することではなく、「子どもが安心して話せる存在になる」ということです。子どもが悩みを打ち明けやすい環境を作ることで、少しずつ前向きな変化が生まれます。

親ができる対策③「初動を大切にする」

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親がどのように対応するかによって、その後の展開が大きく変わります。最初の対応次第で、不登校が長期化するか、それとも適切なサポートを受けながら再登校につなげられるかが決まることもあります。

この章では、親が初めにどのように対応すべきか、また避けるべき対応について詳しく解説していきます。

1. 最初の対応が不登校の長期化を左右する

「学校に行きたくない」と子どもが言い出したとき、親は戸惑いや不安を感じるものです。しかし、最初の対応を間違えると、子どもはさらに追い詰められ、不登校が長期化する可能性が高まります。

① 感情的にならないことが最も重要
親としては、「どうして急に?」「甘えているだけでは?」と焦りを感じるかもしれません。しかし、そこで感情的になってしまうと、子どもは「話しても分かってもらえない」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

② すぐに「学校に行きなさい」と言わない
「行きたくない」と言った子どもに対して、すぐに「そんなこと言わずに行きなさい」と返してしまうと、「親には分かってもらえない」と思い込み、以降本当の気持ちを話さなくなってしまいます。また、学校のストレスが強い状態で無理に登校させると、かえって状況が悪化することもあります。

③ まずは話を聞く姿勢を持つ
最初にやるべきことは、「なぜ学校に行きたくないのか」を聞くことです。ただし、無理に理由を聞き出そうとすると、かえって子どもは話したがらなくなるため、落ち着いた雰囲気で「何かあったの?」と優しく問いかけることが大切です。

2. 子どもの気持ちを尊重する姿勢を持つ

不登校の子どもは、「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいることが多いです。親が「どうして行けないの?」「みんな頑張っているのに」と責めるような言葉をかけると、子どもの自己肯定感はさらに低下し、学校への恐怖心が強まってしまいます。

① 「学校に行けないのは弱いことではない」と伝える
「今は少し休んでもいいんだよ」と安心させる言葉をかけることで、子どもは落ち着きを取り戻します。不登校の原因を探る前に、まずは「大丈夫だよ」と受け止めることが重要です。

② 「休むこと=悪いこと」ではないことを理解する
「1日休んだからといって、大きな問題になるわけではない」ということを親が理解し、それを子どもにも伝えることが大切です。無理に登校を促すよりも、「今日はゆっくり考えよう」と話すことで、子どもは安心します。

3. 避けるべき対応

初動対応で避けるべき対応について、具体的に説明します。

①「甘え」「怠け」と決めつける
「ただの甘えでしょ?」「みんなも同じように頑張っているよ」といった言葉は、子どもを追い詰める原因になります。子どもにとっては、学校のストレスは親が想像する以上に大きなものです。決して「怠け」ではなく、「行きたくても行けない」状態であることを理解しましょう。

②「昔はこうだった」と比較する
「お母さんの時代は、こんなことで休まなかった」など、過去の話を持ち出すのは逆効果です。子どもは「自分が弱いせいだ」と思い込み、さらにプレッシャーを感じてしまいます。

③ 無理に理由を聞き出そうとする
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、すぐに「どうして?」と詰問すると、かえって話しにくくなります。「話せる範囲でいいよ」と伝え、焦らず待つことが大切です。

4. 初動の対応が落ち着いた後の進め方

最初の対応で子どもが安心したら、次のステップとして、学校への対応や今後の方針を考えます。

① 学校との連絡をどうするか決める
欠席する場合は、学校に連絡が必要になります。子どもが「親に言ってほしい」と望む場合は、親が学校と連絡を取るようにしましょう。「今日は体調が悪いのでお休みします」と伝えるだけでも大丈夫です。

② 無理のない範囲で子どもと話し合う
ある程度落ち着いたら、「これからどうしていくか」を子どもと話し合います。ただし、「いつまでに復帰するか」を決める必要はありません。まずは、「今どう感じているか」を聞くことが大切です。

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親の対応次第でその後の展開が大きく変わります。感情的にならず、まずは子どもの気持ちを尊重しながら話を聞くことが大切です。最初の対応を間違えなければ、子どもは「話してもいいんだ」と安心し、解決への道筋が見えてきます。

親ができる対策④「学校との適切な交渉」

不登校や学校ストレスに直面したとき、親がどのように学校と関わるかは、子どもの状況を改善するうえで重要なポイントになります。しかし、学校と適切に交渉することは、決して簡単ではありません。「先生にどう伝えればいいのか分からない」「相談しても真剣に取り合ってもらえない」と感じる保護者も少なくありません。

本章では、学校と適切に交渉し、子どもにとってより良い環境を整えるための具体的な方法について解説します。

1. 学校と話し合う目的を明確にする

学校との交渉において最も大切なのは、「何を目的とするか」を明確にすることです。漠然と「子どもが学校に行きたがらない」と伝えるのではなく、「どうすれば子どもが安心して通えるようになるか」を話し合う姿勢が求められます。

①「学校に復帰させること」が目的ではない
学校との話し合いの場では、「すぐに登校を再開させる」ことを目標にしないことが大切です。学校側も、「とにかく学校に戻すこと」が目的になってしまうと、子どもにとって逆効果になる可能性があります。大切なのは、「学校への不安を減らし、少しずつ適応できる環境を整えること」です。

② 具体的な課題を整理する
学校と交渉する前に、親として「子どもが何に困っているのか」「どのようなサポートが必要なのか」を整理しておくことが重要です。たとえば、

  • 授業の進度についていけない
  • 特定のクラスメートとの関係が負担になっている
  • 先生の対応が厳しく、萎縮してしまう
  • 朝の登校が特にストレスになっている

など、具体的に課題を把握することで、学校に対して適切な対応を求めやすくなります。

2. 学校との話し合いの進め方

学校と適切に話し合うためには、いくつかのポイントがあります。

①「敵対的な態度」は避ける
「学校が悪い」「先生の対応が間違っている」といった敵対的な姿勢で話を始めると、学校側も防御的になり、建設的な話し合いが難しくなります。あくまで「協力して子どものためにできることを考える」というスタンスで臨むことが大切です。

② 担任だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも話す
担任の先生だけに相談しても、状況が改善しない場合があります。そのような場合は、スクールカウンセラー、学年主任、教頭や校長といった他のスタッフとも話し合うことを検討しましょう。特にスクールカウンセラーは、不登校の子どもへの支援経験があることが多く、親身になって相談に乗ってくれるケースが多いです。

③ 学校側が対応可能な範囲を理解する
学校には学校の事情があり、すべての要求を受け入れることは難しい場合があります。そのため、あらかじめ「どこまで対応が可能なのか」を確認しつつ、無理のない範囲で調整することが大切です。

3. 学校に伝えるべき具体的な要望

学校との話し合いでは、以下のような要望を伝えることが考えられます。

① 登校のハードルを下げる
「いきなりフルタイムで登校するのは難しい」という場合、

  • 午前中だけ登校する
  • 保健室登校を認めてもらう
  • 放課後に先生と個別に面談する

といった段階的な対応を提案するのも一つの方法です。

② 学習のサポートを求める
学校を休んでいる間、学習の遅れを取り戻すために、

  • 宿題の量を調整してもらう
  • プリントや授業内容を共有してもらう
  • 家庭学習の方法についてアドバイスをもらう

といった支援を求めることができます。

③ 人間関係に関する配慮
もしクラス内の人間関係がストレスの原因になっている場合、

  • クラス替えを検討してもらう
  • 座席の配置を調整してもらう
  • グループワークの組み合わせに配慮してもらう

といった対応を相談することが可能です。

4. 学校に期待しすぎないことも大切

学校と話し合いを重ねても、必ずしも希望通りの対応をしてもらえるとは限りません。学校の体制や先生の考え方によっては、「これ以上の対応は難しい」と言われることもあります。その場合、学校だけに頼るのではなく、他の選択肢を検討することも必要です。

① 再登校支援の専門機関を活用する
ToCo(トーコ)株式会社では、学校と家庭の間に立ち、子どもの再登校をサポートするプログラムを提供しています。学校が十分な対応をしてくれない場合でも、専門的な支援を受けることで、親子の負担を軽減しながら再登校を目指すことができます。

② 学校以外の学びの場を考える
一時的に学校を休んでいる間も、学びの機会を失わないよう、オンライン学習や家庭学習を活用することができます。「勉強が遅れるのが不安」という子どもに対して、「自分のペースで学習できる場」を用意することで、安心感を持たせることができます。

学校との適切な交渉は、子どもが安心して学校に戻るための重要なステップです。感情的にならず、具体的な課題を整理し、協力的な姿勢で話し合うことが大切です。学校側が十分な対応をしてくれない場合は、専門機関のサポートを活用することで、より適切な支援を受けることが可能です。

親ができる対策⑤「家庭を安全地帯にする」

学校がストレスの原因となっている子どもにとって、家庭がどのような環境であるかは非常に重要です。不登校や学校ストレスを抱える子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であるかどうかが、その後の回復や再登校に大きく影響します。逆に、家庭がプレッシャーの場になってしまうと、子どもはますます心を閉ざしてしまうことになります。

1. 家庭が「安全地帯」であることの重要性

不登校の子どもにとって、学校はストレスの源となっています。そのため、学校以外に安心して過ごせる場所が必要になります。それが家庭です。

① 「逃げ場」があることで安心できる
学校で強いストレスを感じているとき、家庭まで居心地の悪い場所になってしまうと、子どもは心を休めることができません。「学校では頑張らなきゃいけない、家でも怒られる」となると、ますます追い詰められます。しかし、「家では安心していられる」と思えるだけで、心の負担が軽減されることがあります。

② 自己肯定感を回復する場になる
学校での人間関係や学業のプレッシャーによって、自己肯定感が低下している子どもは多いです。家庭で「ありのままの自分を受け入れてもらえる」と感じることで、自己肯定感を回復し、次の一歩を踏み出すエネルギーを蓄えることができます。

③ 安心できる環境が再登校の第一歩になる
不登校の子どもが再登校するためには、まず「外の世界は怖くない」と感じることが大切です。そのためには、家庭の中でまず安心感を得ることが必要になります。家庭がプレッシャーの場ではなく、リラックスできる場であることが、学校復帰への第一歩になります。

2. 子どもが安心できる家庭環境を作るために

では、具体的にどのように家庭を「安全地帯」にすればよいのでしょうか?

① 「学校に行かないこと」を責めない
子どもが学校に行けない状態のときに、「どうして行かないの?」「いつになったら行くの?」と責めることは逆効果です。不登校の子どもは、「行かなきゃいけない」と頭では分かっていても、心と体が動かない状態になっています。そこにプレッシャーをかけると、ますます状況が悪化してしまいます。

② ルールを押し付けすぎない
「何時に起きなさい」「勉強しなさい」など、過度なルールを設けることも、子どもにとってはストレスになります。もちろん、生活リズムを整えることは大切ですが、最初から厳しく管理しすぎると、家庭でも居心地が悪くなってしまいます。まずは、子どもがリラックスできる環境を優先し、少しずつ生活リズムを整えていくことが大切です。

③ 子どもの好きなことを尊重する
不登校の子どもは、自己肯定感が低くなっていることが多いため、「好きなこと」や「得意なこと」に集中できる時間を作ることが重要です。たとえば、ゲームや読書、絵を描くことなど、何かに没頭できる時間があることで、少しずつ「自分にはできることがある」と感じることができます。

④ 会話の機会を増やす
子どもが安心して話せる環境を作るために、親子の会話を増やすことも大切です。ただし、「学校の話をしなさい」と無理に話題を限定するのではなく、日常的なことや子どもの興味のあることについて話すことで、自然とコミュニケーションを取ることができます。

3. 親自身の心のケアも重要

親が「家庭を安全地帯にしよう」と思っていても、親自身が疲れてしまっていては、子どもにとって安心できる環境を作ることは難しくなります。そのため、親自身の心のケアも重要です。

① 一人で抱え込まない
不登校の問題は、親だけで解決しようとすると大きな負担になります。学校や専門機関に相談しながら、親自身の気持ちを整理することも大切です。

② 完璧を求めすぎない
「ちゃんとサポートしなければ」と思いすぎると、親自身がプレッシャーを感じてしまいます。親も「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

③ 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門家に相談したりすることで、親自身の不安を軽減することができます。たとえば、ToCo(トーコ)では、親のサポートも含めた支援を行っており、不登校の子どもを持つ親がどのように対応すればよいかを具体的にアドバイスしています。

不登校の子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であることは非常に重要です。家庭が安全地帯であれば、子どもは少しずつ自己肯定感を取り戻し、再登校に向けた準備を進めることができます。

親が無理をしすぎず、子どもの気持ちを尊重しながらサポートすることで、子どもは安心感を得て、自分のペースで前に進むことができます。


まとめ

ここまで、学校ストレスに対する親の対応として、具体的な5つの対策を詳しく解説してきました。最後に、それぞれのポイントを振り返りながら、改めて「親ができること」について整理していきます。

学校ストレスの正体を知ることが大切

学校は、子どもにとって学びの場であると同時に、大きなストレスの要因にもなり得ます。学校によるストレスには、学業のプレッシャー、人間関係のトラブル、学校のルールへの適応、身体的な負担など、さまざまなものがあります。特に、繊細で感受性が強い子、一人でいることを好む子、競争や比較を苦手とする子にとって、学校の環境は大きな負担になりやすいことが分かっています。

このような子どもの特性を理解し、**「なぜ学校がつらいのか?」**を冷静に分析することが、適切な対応の第一歩になります。

親ができる5つの対策のポイント

情報を得る
不登校や学校ストレスについて、正しい知識を持つことが大切です。「不登校=悪いこと」「学校に行かないと将来困る」といった思い込みを捨て、冷静に現状を把握しましょう。学校の制度や支援機関の活用方法についても知識を得ることで、より適切な対応が可能になります。

相談相手になる
子どもが悩みを抱えているとき、親が最も信頼できる相談相手になることが重要です。子どもが安心して話せる環境を作り、無理に解決策を押し付けるのではなく、「話を聞くこと」に徹することが大切です。

初動を大切にする
「学校に行きたくない」と子どもが言い出したときの対応が、その後の展開を左右します。焦らず、感情的にならず、「まずは話を聞く」ことを最優先にしましょう。「とりあえず今日は休もう」と伝え、安心感を与えることが大切です。

学校との適切な交渉
学校と話し合う際には、感情的にならず、「子どもが安心して学校に戻れる環境を整えるために、どのような対応が可能か」を具体的に相談することが重要です。担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも連携し、無理のない形で調整を進めていきましょう。

家庭を安全地帯にする
学校がストレスの原因になっている場合、家庭が「安心できる場所」であることが重要です。「学校に行けないこと」を責めず、子どもの好きなことを尊重しながら、少しずつ自己肯定感を回復させていくことが大切です。

再登校のために親が意識すべきこと

不登校が長引くと、子ども自身が「学校に戻るのが怖い」と感じるようになり、再登校のハードルが高くなってしまいます。そのため、早い段階から「どうすればスムーズに学校に戻れるか」を考えておくことが重要です。

学校との連携を続ける
学校と連携しながら、子どもが少しずつ学校に戻るための環境を整えていくことも大切です。いきなり通常登校を目指すのではなく、保健室登校や短時間登校など、段階的に慣らしていく方法を検討しましょう。

子どものペースを尊重する
「いつまでに学校に戻るか」を決めるのではなく、「子どもが安心して学校に行けるようになること」を目標にしましょう。無理に急がせるのではなく、子ども自身が「行ってみようかな」と思えるタイミングを見極めることが重要です。

親自身も無理をしないことが大切

不登校の問題に向き合うことは、親にとっても大きな負担になります。「なんとかしなければ」と焦るあまり、親自身がストレスを抱えてしまうことも少なくありません。しかし、親が疲れ切ってしまっては、子どもにとってもよい影響を与えません。

① 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門機関に相談したりすることで、親自身の気持ちを整理することができます。一人で抱え込まず、サポートを受けながら対応していきましょう。

②「完璧な対応」を求めない
親としては、「正しい対応をしなければ」と思いがちですが、完璧な対応をすることは誰にもできません。「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

学校ストレスや不登校の問題は、一朝一夕で解決できるものではありません。しかし、親が適切な対応を取ることで、子どもは少しずつ前向きな気持ちを取り戻し、再び学校に向かう力を蓄えていくことができます。

焦らず、子どもの気持ちを尊重しながら、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。そして、必要に応じて専門的な支援を活用することで、親子の負担を軽減しながら、より良い方向へ進むことができます。

学校ストレスに悩む子どもたちが、自分のペースで安心して歩んでいけるように、親としてできることを考えながら、温かくサポートしていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

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不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策

不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防および再登校支援事業を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの不登校の子どもと向き合い、その原因や解決策を探ってきました。

不登校が長引く要因の一つとして「勉強の遅れ」が挙げられます。勉強の遅れは、単に学力の問題ではなく、子どもの心理状態や自己評価にも大きな影響を及ぼし、再登校を阻む大きな壁となるのです。本稿では、「なぜ勉強が不登校を長引かせるのか」「その結果、どのような悪循環が生まれるのか」「それを解決するためにはどのような方法があるのか」について詳しく論じていきます。

まずは、不登校が続く要因としての「勉強」に焦点を当て、その影響について詳しく見ていきましょう。


目次


勉強が不登校の続いてしまう要因となる理由

不登校の子どもにとって、「勉強」は単なる学習課題ではなく、大きな心理的負担となることが少なくありません。学校に行かないことで授業についていけなくなると、その遅れが焦りや劣等感を生み、さらなる不安や自己否定感につながるのです。では、具体的にどのようなメカニズムで「勉強」が不登校を長引かせるのかを見ていきます。

1. 学習の遅れによる自己肯定の低下

不登校が続くと、当然ながら学校の授業は進みます。特に、小学校高学年から中学生にかけては、学習内容がより抽象的になり、前提となる基礎知識がないと理解が難しくなる単元が増えていきます。例えば、小学校で分数や割合に苦手意識がある子は、中学数学の方程式を理解することが困難になります。同じように、国語の読解力が不足していると、社会や理科の教科書の内容すら難しく感じるようになります。

この「ついていけない」という感覚が積み重なることで、子どもは次第に「自分は勉強ができない」「学校に戻っても授業についていけない」と考えるようになります。そして、「どうせ頑張っても追いつけない」「もう手遅れだ」といった思考に陥り、学習意欲そのものを失ってしまうのです。

2. 周囲との差を意識することによる劣等感の増幅

子どもたちは、想像以上に「周囲との比較」を意識しています。不登校の期間が長くなるほど、学校にいる同級生と自分との差が開いていることを痛感する機会が増えていきます。

例えば、学校にいる友達が「今日の授業、難しかったけど何とか理解できたよ」と話しているのを聞いたとき、不登校の子どもは「そもそも何の授業をしているのかもわからない」と強く意識してしまいます。また、久しぶりに登校した際に、先生が「この問題、簡単だよね」と発言しただけでも、「自分にとっては簡単ではない」と感じ、ますます自信を失うことになります。

こうした経験が重なることで、「自分は他の子より劣っている」という意識が強まり、それが再登校の妨げになるのです。

3. 「勉強しなければならないのに、できない」というジレンマ

不登校の子どもたちは、多くの場合、「勉強しなければいけない」という意識を持っています。親や教師からの言葉だけでなく、社会全体の価値観として「勉強は大切」「勉強しないと将来が不安」という認識があるからです。しかし、不登校の状態が続くと、「やらなければいけないのに、やれない」「やる気が起きない」というジレンマに苦しむことになります。

このジレンマがストレスとなり、勉強に対する苦手意識をさらに強めてしまうことがあります。親が「勉強しなさい」と強く促したり、「このままでは将来が大変だ」と不安を煽るような言葉をかけたりすると、子どもはより強いプレッシャーを感じるようになります。その結果、勉強をすることそのものがストレスになり、「学校に戻ること=嫌なこと」と認識してしまうのです。

4. テストや成績による不安

不登校の子どもたちにとって、定期テストや成績評価は非常に大きなプレッシャーになります。仮に学校に戻りたいという気持ちがあっても、「テストで悪い点を取ったらどうしよう」「赤点を取ったら親に怒られるかもしれない」といった不安が頭をよぎることが多いのです。

特に、中学に入ると高校受験が意識されるようになり、学校の成績が重要視されます。「不登校の期間が長かったから、受験に不利になるのではないか」という不安を抱えることで、学校に戻ること自体を諦めてしまうケースもあります。

このように、学習の遅れが単なる知識の不足ではなく、心理的な負担として積み重なり、不登校を長引かせる原因になっているのです。


以上のように、「勉強ができない」「勉強の遅れが取り戻せない」「周囲との差が大きくなりすぎた」という意識が、不登校の継続につながっています。こうした状況に対処するためには、単に学習の機会を与えるだけではなく、子どもの心理的負担を軽減しながら、段階的に学習習慣を取り戻すことが重要です。

不登校が長引くほど、勉強による再登校のハードルは高まる

不登校の期間が長くなるほど、勉強が再登校の大きな障壁となってしまいます。それは単に「勉強が遅れるから」という理由だけではありません。時間の経過とともに、学習の遅れが子どもの自己評価や人間関係に影響を与え、結果的に学校に戻ることをより困難にしてしまうのです。ここでは、不登校の長期化が勉強面に与える影響と、それがどのように再登校の妨げになるのかを詳しく見ていきます。

1. 学習の遅れが加速度的に広がる

不登校の初期段階では、子ども自身も「少し休んでから戻るつもりだった」「数日分の授業なら何とかなる」と思っていることが多いです。しかし、1週間、1か月と時間が経つにつれて、授業の進度との差が広がり、取り戻すべき内容が膨大になっていきます。

特に、中学校に入ると、授業のスピードは小学校よりも速くなり、科目ごとに専門性が増します。例えば、数学では一次関数や方程式といった内容が基礎となり、それが理解できないと後の単元も理解しにくくなります。同じように、英語では文法や単語の積み重ねが重要になるため、一度遅れるとキャッチアップするのが非常に難しくなります。

また、学校のカリキュラムは、過去の学習内容を前提に進むため、一度でも「わからない」状態になると、その先の内容も理解しづらくなるという負のスパイラルに陥ります。このように、学習の遅れは単なる「取り戻すべき量」の問題ではなく、「理解するための基盤」が崩れてしまうという問題を引き起こすのです。

2. 「今さら戻ってもついていけない」という心理的ハードル

不登校が数か月以上続いた場合、子どもが抱える心理的なハードルはさらに高まります。単純な学習の遅れに加え、「戻ったときに授業についていけるのか」「周りの友達にどう思われるか」といった不安が膨らんでいくのです。

例えば、国語の授業で「この前の文章、みんな覚えてるよね?」と先生が発言したとき、不登校の子どもは「何の話をしているのかわからない」と感じます。それが一度や二度ではなく、授業のたびに続くことで、「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、次第に学校へ戻る意欲を失ってしまうのです。

また、定期テストや小テストがあると、「どうせ点が取れないから行きたくない」と思うようになります。実際に、学校に戻った子どもたちの中には「テストで名前を書くだけだった」「提出物も出せず、成績がつけられなかった」という経験をした子もいます。こうした状況は、「学校に戻った後の困難」をイメージさせ、ますます再登校を遠ざける要因となります。

3. 勉強の遅れが人間関係にも影響を及ぼす

不登校の子どもが学校に戻った際、最も恐れることの一つが「周囲の反応」です。特に、勉強に関する話題は、クラスメイトとの距離を感じやすい場面の一つです。

例えば、休み時間に友達が「数学の宿題、難しかったね」と話しているとき、不登校だった子どもは「そもそもその宿題が何なのかも知らない」と感じます。また、グループワークなどで先生から「この前の授業でやったことを復習して」と指示されたとき、他の子がスムーズに取り組んでいるのに対し、自分だけ何をすればいいのかわからない状況になることもあります。

このような場面を経験すると、「友達と話が合わない」「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、再登校に対する不安がますます大きくなります。学校は勉強をする場であると同時に、友人関係を築く場でもあります。そのため、勉強の遅れが人間関係にも影響を与え、「学校に戻りたくない」という気持ちを強めてしまうのです。

4. 長期化すると「不登校の生活が当たり前」になってしまう

不登校が長引くと、子どもの中で「学校に行くこと」よりも「家で過ごすこと」が当たり前の生活になっていきます。最初の頃は「また学校に戻るつもりだった」と思っていた子どもも、数か月が経過すると「どうやって戻ればいいのかわからない」「もうこのままでいいのではないか」と考えるようになります。

この状態が続くと、勉強に対する意欲も徐々に薄れていきます。「どうせ学校に行かないのだから、勉強しなくてもいい」「今さら頑張っても意味がない」という考えが強まり、学習習慣そのものが崩れてしまうのです。

また、学習の遅れが「学校復帰のための課題」ではなく、「自分の価値を測るもの」として感じられるようになると、「勉強ができない=自分には価値がない」という自己否定につながることもあります。このような状態では、学校に戻るための一歩を踏み出すことがますます難しくなってしまいます。

学習の遅れが再登校を難しくする悪循環を断ち切るために

不登校が長引けば長引くほど、勉強が再登校の妨げになることは明らかです。しかし、「このままではいけない」と焦って無理に勉強を押し付けることは逆効果です。重要なのは、子どもが勉強に対して「できない」「ついていけない」というネガティブな感情を抱かずに済むような環境を整えることです。

塾よりも学校連携が優先される理由

不登校が続く中で、「学習の遅れを取り戻すために塾に通わせるべきか」と考える保護者の方は少なくありません。確かに、塾は学力向上を目的とした場であり、学校に戻る前に学習を補う手段として魅力的に映ることもあるでしょう。しかし、不登校の子どもにとって、塾が必ずしも最適な選択肢とは限りません。むしろ、塾よりも学校との連携を優先することが、不登校からの回復において重要なポイントになります。

では、なぜ塾よりも学校との関わりを重視すべきなのか、その理由について詳しく説明していきます。

1. 不登校の本質的な問題は「学力不足」ではなく「学校適応」

不登校が続く要因の一つとして「勉強」が挙げられることは確かですが、学力不足そのものが不登校の主原因というわけではありません。むしろ、「学校に行くことへの不安」「友人関係の悩み」「先生との関係の問題」などが根本的な理由となっていることが多いのです。

そのため、学力を塾で補えばすぐに学校へ戻れるかというと、そう単純な話ではありません。たとえ塾で学習の遅れを取り戻したとしても、「学校へ行くことへの抵抗感」や「学校の環境に適応する力」が育まれなければ、再登校は難しいのです。

例えば、塾で勉強を頑張った子どもが「勉強は少しできるようになったけれど、学校に行くのは怖い」と感じるケースは少なくありません。塾は学習指導が中心であり、学校生活への適応をサポートする仕組みは整っていないため、学校復帰に必要な「集団生活への慣れ」や「学校との関係を再構築する力」を養うことができないのです。

2. 塾は「勉強ができる子」を前提とした環境である

塾は基本的に「学習を進める場」であり、「学習の遅れを取り戻す場」として設計されているわけではありません。特に集団指導の塾では、ある程度の学力があることを前提に授業が進められるため、長期間不登校だった子どもがいきなり塾に入ると、ついていけずに挫折する可能性が高くなります。

また、塾には学校と異なり「成績向上」や「受験対策」に特化した競争的な環境があります。これが不登校の子どもにとってストレスとなることもあります。例えば、塾では定期的に確認テストが実施されることが多く、「勉強ができるかどうか」が可視化される場面が増えます。不登校の期間が長く、学習の遅れがある子どもにとっては、こうした環境が「できない自分」を強く意識させてしまい、学習への意欲を失わせることにもつながります。

また、塾の講師は「勉強を教えるプロ」ではあっても、「不登校支援の専門家」ではありません。不登校の子どもが抱える心理的な課題に対する理解が不足していることも多く、子どもの気持ちに寄り添った適切な対応ができないこともあります。

3. 学校との関係を再構築することが重要

不登校からの回復には、「学校との関係を再構築すること」が非常に重要です。つまり、学習の遅れを取り戻すこと以上に、「学校に戻りやすい環境を整えること」が求められます。そのためには、学校と適切な形でつながりを持ち続けることが不可欠です。

学校との関係が切れてしまうと、復帰のタイミングを見失い、「戻るべき場所がない」と感じてしまうこともあります。しかし、学校と定期的にコミュニケーションを取りながら進めることで、「いつでも戻れる場所がある」という安心感を持つことができるのです。

4. 塾の利用が有効なのは「居場所」としての機能を果たす場合

ここまで、塾の限界について述べてきましたが、すべての塾が不登校の子どもにとって不適切というわけではありません。塾の中には、学習指導だけでなく、子どもの居場所としての役割を果たすものもあります。例えば、少人数制や個別指導の塾で、学習のサポートと同時に心理的なケアを行っている場合、子どもにとって安心できる環境になることもあります。

しかし、その場合でも、塾の利用を「学校復帰の手段」として捉えるのではなく、「子どもの社会的な居場所の一つ」として考えることが重要です。学校に戻るための準備として塾を活用するのではなく、「外部の人と関わる機会を作る」「生活リズムを整える」といった目的で利用する方が、子どもにとってプラスになるケースが多いです。

学校との連携を重視し、適切な学習支援を行うことが鍵

不登校の子どもにとって、学習の遅れを取り戻すことは重要ですが、それ以上に「学校に戻れる環境を整えること」が最優先事項です。塾は学習指導の場としては有効ですが、「不登校支援」には向いていません。学力向上だけでなく、学校への適応を促すためには、学校との関係を維持しながら進めていくことが必要不可欠です。

勉強のハードルを下げるための親の接し方、行動

不登校が続く中で、保護者の方が特に気にされるのが「勉強の遅れ」についてです。

「このままで将来は大丈夫なのか」「学校に戻ったとき、ついていけるのか」といった不安を抱えるのは、ごく自然なことです。しかし、その不安が強すぎると、子どもに対して「勉強しなさい」とプレッシャーをかけてしまったり、「勉強をしないと将来困るよ」と無意識のうちに不安を煽ってしまったりすることがあります。

不登校の子どもはすでに、「勉強が遅れている」「授業についていけるか不安」という気持ちを抱えていることが多いです。そんなときに、親からのプレッシャーが加わると、勉強に対する抵抗感がさらに強まり、ますます手をつけなくなってしまうことがあります。

では、どうすれば子どもが勉強に対する抵抗感を減らし、少しずつ学習の習慣を取り戻せるのでしょうか。ここでは、親ができる具体的な接し方や行動について詳しく説明していきます。

1. 「今すぐ取り戻さなければならない」という意識を手放す

保護者の方がまず意識すべきことは、「今すぐに勉強の遅れを取り戻す必要はない」ということです。不登校が長引いた子どもにとって、「勉強しなければならない」という気持ちがストレスになり、それが逆に学習への意欲を削いでしまうことがあります。

勉強ができないことを責めたり、急いでキャッチアップさせようとすると、子どもは「勉強は苦しいもの」と認識し、ますます避けるようになってしまいます。重要なのは、「まずは勉強に対する心理的なハードルを下げること」です。そのためには、「少しずつでもいいからやってみよう」というスタンスで関わることが大切です。

2. 「勉強しなさい」と言わず、環境を整える

不登校の子どもに対して、「勉強しなさい」と言うことは逆効果になりやすいです。親から勉強を強制されることで、かえって反発心が生まれ、勉強そのものを避けるようになるケースが多いからです。

大切なのは、「勉強をやるかやらないかは本人に委ねる」ことです。ただし、完全に放置するのではなく、「勉強しやすい環境」を整えることが重要になります。例えば、以下のような工夫が考えられます。

  • リビングに勉強できるスペースを作る
    勉強部屋にこもることがプレッシャーになる子も多いため、リビングやダイニングなどで気軽に勉強できる環境を用意する。
  • 親が本を読んだり、一緒に学ぶ姿勢を見せる
    親がスマホやテレビばかり見ていると、子どもも同じように過ごしがちです。親自身が読書や資格の勉強をする姿を見せることで、「学ぶことは自然なこと」と思えるようになります。
  • 勉強の話題をプレッシャーにならない形で出す
    「勉強しなさい」ではなく、「今日はどんなことをした?」と軽く話を振る程度に留める。興味を持てる話題を出し、学ぶことを自然な流れにする。

3. 「小さな成功体験」を積ませる

勉強への抵抗感を減らすには、「できた!」という成功体験を積ませることが重要です。いきなり難しい問題を解かせるのではなく、簡単な問題から始め、「少しずつできる」という感覚を持たせることが大切です。

例えば、以下のような工夫が有効です。

  • 子どもが好きな分野から始める
    算数や英語が苦手なら、好きな歴史の本を読むだけでも学習になります。「興味が持てることから学ぶ」ことで、学習のハードルを下げることができます。
  • 問題を解くのではなく、動画や本で学ぶ
    「勉強=問題を解くこと」と考えるとハードルが上がります。まずは教育系のYouTube動画や、学習漫画などを活用して、知識を増やすところから始めるのも有効です。
  • できたことをしっかり褒める
    「たった1問しか解いてない」「こんな簡単なことができただけ」と思わずに、「やろうとしたこと」そのものを褒めることが大切です。「少しでもやったことがすごい」「昨日よりも進んだね」と声をかけることで、子どもは「やってよかった」と感じ、勉強への抵抗感を減らすことができます。

まとめ:勉強を再登校への妨げとしないために

不登校の子どもにとって、「勉強」は大きな心理的負担になりやすいものです。しかし、親が焦って勉強を強要すると、かえって逆効果になってしまうこともあります。重要なのは、子どもが「学ぶことに対してポジティブな気持ちを持てるようになること」です。そのためには、無理に勉強を押し付けるのではなく、子どもが少しずつでも学習習慣を取り戻せるように環境を整えることが大切です。

不登校は決して「そのまま放置すれば解決する問題」ではありません。適切な学習支援と環境調整を行いながら、子どもが再び学校に戻るための準備を整えていくことが、何よりも重要なのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

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小学校の不登校、中学校の不登校の特徴

小学校の不登校、中学校の不登校の特徴-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

日本では近年、不登校の児童生徒が増加し続けており、小学校と中学校ではその特徴や背景に違いがあります。本記事では、データをもとに不登校の現状を整理し、小学校と中学校それぞれに多い不登校のきっかけを詳しく分析していきます。さらに、新学期に向けた注意点や、日常的にできる不登校対策についても具体的にお伝えします。

不登校の問題は一朝一夕で解決するものではありません。しかし、適切な対応をすれば、子どもが再び学校へ戻れる可能性は十分にあります。まずは現状を正しく理解し、親として何ができるのかを一緒に見ていきましょう。


目次


データで見る小・中学校の不登校

日本の小・中学校における不登校児童生徒数は、年々増加傾向にあります。文部科学省の統計によれば、2023年度の不登校児童生徒数は346,482人に達し、これは小・中学校在籍者数全体の約3.72%を占めています。特に中学校における不登校の割合は顕著で、中学生216,112人、小学生130,370人という内訳になっています。

この数字を10年前と比較すると、その増加率は驚異的です。2010年度の不登校児童生徒数は119,891人でしたが、2023年度には346,482人と、約2.9倍に増加しています。特に近年は、毎年1万人単位で増え続けており、今後もこの傾向は続くと考えられます。

また、不登校の期間について見ると、90日以上欠席する長期不登校が全体の約44.5%を占めています。中でも、1年間の出席日数が0日の児童生徒は約3.1%に達しており、完全に学校と接点を失ってしまっているケースも少なくありません。

出典:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)

学年別の不登校傾向

学年ごとに不登校の発生率を分析すると、以下のような傾向が見えてきます。

  • 小学校では高学年(特に5・6年生)で不登校が増える
  • 中学校では1年生から増加し、2年生でピークを迎える

小学校では環境の変化に適応できないことが主な原因となることが多く、中学校では学業や人間関係のストレスが不登校につながることが多いです。

このデータから分かることは、不登校の問題は決して一部の子どもだけに起こる特異なものではなく、どの家庭にも起こりうるということです。では、なぜ小学生や中学生が不登校になるのか、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

小学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校のきっかけは、中学生の不登校とは異なり、比較的曖昧で漠然とした理由で始まることが多いです。中学生のように「勉強についていけない」「人間関係のトラブルが深刻化した」という明確な原因があるというよりも、「なんとなく学校に行きたくない」「朝になるとお腹が痛くなる」といった形で、本人も自覚できないまま不登校へ移行してしまうことが少なくありません。

では、具体的にどのような要因が小学生の不登校につながるのでしょうか。

1. 環境の変化によるストレス

小学生の不登校の大きなきっかけの一つが、環境の変化です。小学生は精神的にまだ未熟であり、環境の変化に対する適応能力も大人ほど発達していません。そのため、ちょっとした変化でも大きなストレスとなり、不登校につながることがあります。

具体的には、以下のような環境の変化が影響を与えることが多いです。

  • 入学や進級に伴うクラス替え
  • 担任の先生の交代
  • 親の転勤や引っ越し
  • 親の離婚や家庭内の不和

特に、担任の先生との相性が合わないことが、不登校のきっかけとなることが多くあります。小学生にとって、担任の先生は学校生活の中で大きな存在です。その先生が厳しかったり、自分を理解してくれないと感じたりすると、「学校が怖い」「行きたくない」という気持ちにつながることがあります。

また、家庭環境の変化も不登校に大きく影響します。親の転勤や離婚があった場合、子どもは大きなストレスを感じます。子どもは大人のように感情を言語化することが難しいため、「学校に行きたくない」という形でストレスを表現することがあるのです。

2. 友人関係のトラブル

小学生の不登校のきっかけとして、友人関係のトラブルも大きな要因の一つです。

小学生の段階では、まだコミュニケーション能力が十分に発達していないため、ちょっとした言い争いや意見の食い違いが大きなストレスになりやすいという特徴があります。特に低学年では、「昨日までは仲が良かったのに、今日は無視される」といったことが頻繁に起こります。

また、最近ではSNSやオンラインゲームを通じたコミュニケーションの増加により、学校以外の場でのトラブルが学校生活に影響を及ぼすケースも増えています。例えば、ゲーム内でのトラブルがきっかけで友人関係が悪化し、学校へ行きづらくなることもあります。

3. 学校生活への適応の難しさ

小学校のカリキュラムは、学年が上がるにつれて徐々に厳しくなります。そのため、勉強や集団生活に適応できない子どもは、不登校になりやすい傾向があります。

特に以下のような要因を持つ子どもは、学校生活に適応することが難しくなり、不登校につながることがあります。

  • 集団行動が苦手(発達特性の影響など)
  • 聴覚過敏や感覚過敏があり、学校の音や刺激がつらい
  • ルールや指示に従うことが難しい

発達特性を持つ子どもは、普通の授業や学校生活のルールに適応するのが難しいことがあります。例えば、「大勢の人と一緒にいるのが苦手」「音に敏感で教室のざわざわした雰囲気が耐えられない」といった理由で、学校に行きづらくなることもあります。

また、小学4年生~6年生頃になると、学習内容が難しくなり、勉強についていけなくなることが原因で不登校になる子どもも増えます。特に「みんなの前で当てられるのが怖い」「テストの点数が悪くて恥ずかしい」といった感情が、不登校につながることも少なくありません。

小学生の不登校の特徴まとめ

  • 環境の変化(クラス替え、先生の交代、親の転勤や離婚など)が大きな影響を与える
  • 友人関係のトラブルが直接的な不登校のきっかけになることが多い
  • 学習面のつまずき集団生活の苦手さが原因になることもある
  • 「なんとなく行きたくない」という曖昧な形で始まることが多く、早期の対応が重要

小学生の不登校は、最初は「ちょっと休みたい」程度の気持ちから始まり、気づけば長期化してしまうことが少なくありません。そのため、「何となく休みがちになっている」と感じた時点で、早めに対応をすることが重要です。

親子-向き合う

中学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校が「なんとなく行きたくない」「環境の変化に適応できない」という比較的漠然とした理由で始まることが多いのに対し、中学生の不登校はより明確な要因や深刻なストレスが背景にあることが多いのが特徴です。

中学生になると、学業の難易度が上がり、対人関係が複雑化し、自己意識が高まるため、小学生の頃にはなかった新たな悩みが生じます。また、思春期特有の心理的変化も影響し、不登校がより長期化しやすくなる傾向があります。

では、中学生の不登校の主なきっかけを詳しく見ていきましょう。

1. 学業の負担が増大し、ついていけなくなる

中学生の不登校の最も大きな要因の一つが、学習内容の難化によるストレスです。小学校の頃は比較的ゆるやかだった学習進度も、中学校に入ると一気にレベルが上がります。

特に、以下のような場面でつまずきを感じる生徒が多いです。

  • 授業のスピードが速くなり、理解が追いつかなくなる
  • 数学や英語など、苦手科目が明確になり、成績が低下する
  • テストや成績表による評価が厳しくなり、自己肯定感が下がる
  • 授業で当てられるのが怖くなり、授業に出ることが不安になる

中学生は「自分はできるのか」「周りと比べて劣っていないか」を強く意識する年齢です。そのため、小学校では「まぁ何とかなる」と思っていた勉強も、中学校では「もう無理だ」「学校に行っても意味がない」と感じ、不登校につながるケースが増えます。

また、中学校の先生は科目ごとに変わるため、「先生との相性が悪い」「分からないところを質問しにくい」といった問題も発生しやすくなります。授業についていけなくなり、学校に行くのが嫌になる――こうした流れで不登校に至るケースは非常に多いのです。

2. 対人関係の悩みが深刻化する

小学校の頃は、友人関係のトラブルがあっても、その日のうちに仲直りするケースが多いですが、中学生になると関係性がより複雑になり、トラブルが解決しにくくなります。

特に以下のようなケースで不登校になる生徒が増えます。

  • いじめや仲間外れに遭う(直接的な暴力だけでなく、無視や陰口も含む)
  • グループの中での立ち位置に悩む(クラスや部活動内での孤立)
  • 友人関係の変化についていけない(小学校時代の友達と疎遠になる)
  • SNSやオンラインゲーム上でのトラブル(LINEグループから外される、悪口を言われるなど)

中学生は小学生よりも「人間関係の軋轢」に敏感になります。「無視された」「仲間に入れてもらえなかった」など、小さなことでも大きなショックを受け、それが学校に行きたくない理由になることがよくあります。

また、最近では、学校内だけでなく、SNSやオンラインゲーム上でのトラブルが不登校の引き金となるケースも増えています。「学校では普通に接しているのに、ネット上では悪口を言われる」というような、表と裏の顔を使い分けるケースもあり、親や先生が気づかないうちに子どもが傷ついていることも少なくありません。

3. 部活動や学校行事によるプレッシャー

中学校に入ると、多くの生徒が部活動に参加します。部活動は友人関係を深めたり、自己成長の機会を得たりする場にもなりますが、「厳しすぎる指導」や「上下関係のストレス」が不登校のきっかけになることもあります。

特に以下のような状況に当てはまる場合、不登校になるリスクが高まります。

  • 顧問や先輩からの厳しい指導が耐えられない
  • 部活の練習が過度に厳しく、疲労がたまりすぎる
  • 試合やコンクールで結果を出さなければならないプレッシャーが強い
  • 部活動と勉強の両立ができず、ストレスを抱える

また、体育祭や文化祭といった学校行事が大きな負担になることもあります。目立つのが苦手な子どもにとって、学校行事は「避けたいイベント」になりやすく、その時期に一度休むと、そのまま不登校に移行してしまうことがあります。

4. 思春期特有の心理的要因

中学生は、精神的に大きく成長する時期です。しかし、その分だけ「自分はどう思われているのか」「このままでいいのか」といった悩みも増え、不登校につながるケースが多くなります。

具体的には、以下のような心理的変化が関係します。

  • 「完璧主義」で、失敗を極度に恐れる
  • 「過敏性」が強く、ちょっとしたことで深く傷つく
  • 「反抗期」があり、大人の言うことに反発したくなる
  • 「将来への不安」が強まり、学校に行く意味を見出せなくなる

特に「完璧主義」の子どもは、ちょっとした失敗でも強い挫折感を味わい、学校に行くこと自体が苦痛になりやすいです。また、思春期の不安定な心理状態の中で、親や先生とのコミュニケーションが上手くいかず、不登校に拍車をかけることもあります。

中学生の不登校の特徴まとめ

  • 学業の負担が増え、授業についていけなくなることが原因になる
  • 友人関係の悩みが深刻化し、解決しにくくなる
  • 部活動や学校行事によるストレスが影響を与えることがある
  • 思春期特有の心理的変化が、不登校の引き金となる

中学生の不登校は、小学生の不登校よりも長期化しやすいという特徴があります。そのため、できるだけ早い段階で不登校の兆候に気づき、適切な対応を取ることが重要です。

母と中学生の娘の会話

新学期に向けて注意すべき点

新学期は、不登校の子どもにとって大きなストレスがかかるタイミングです。特に4月の新学期や9月の2学期開始時は、「環境が変わる」「新しい人間関係が始まる」「学習内容が進む」などの要因が重なり、精神的な負担が増します。

すでに不登校気味の子どもにとっては、「新しいスタートを切らなければならない」というプレッシャーが大きく、さらに不登校が進行してしまうこともあります。また、これまで問題なく通学していた子どもでも、新学期を機に学校への違和感を強く感じ、不登校を引き起こすことがあります。

では、新学期に向けてどのような点に注意し、どのようなサポートができるのかを詳しく見ていきましょう。

1. 「新学期だから頑張ろう」というプレッシャーをかけすぎない

親としては、「せっかくの新学期だから、気持ちを切り替えて頑張ってほしい」と思うかもしれません。しかし、「頑張って行こうね」「そろそろ学校行かないとね」といった言葉が、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。

不登校の子どもは、すでに「学校に行かないといけない」という気持ちをどこかで持っています。それでも行けないのは、「行こうとすると不安やストレスで体調が悪くなる」「学校に対する恐怖心がある」などの理由があるからです。

そのため、新学期に向けては、無理に学校に行かせようとするのではなく、まずは子どもの気持ちに寄り添い、話を聞くことが大切です。

✔ NGな声かけ

  • 「新学期からはちゃんと行こうね」 → プレッシャーになり、不安が増す
  • 「みんな頑張ってるんだから、あなたも頑張らないと」 → 他人と比較されることで自己肯定感が下がる
  • 「いつまでも休んでいたら、将来困るよ」 → 長期的な不安を煽ることで余計に動けなくなる

✔ 望ましい声かけ

  • 「新学期、不安なことはある?」 → 子どもが抱えている気持ちを引き出す
  • 「学校に行くことだけが大事なんじゃなくて、どうすれば安心して過ごせるか考えようね」 → 子どもに寄り添いながら、前向きな選択肢を一緒に探す

2. 生活リズムを整えることを優先する

新学期が始まる直前になって、「学校に行く準備をしなさい」「朝起きられるようにしなさい」と急に言われても、子どもにとっては大きな負担になります。特に、長期間の不登校で生活リズムが崩れている場合、新学期直前に無理に元に戻そうとすると、かえって不安定になってしまうことがあります。

そのため、新学期の2週間ほど前から、少しずつ朝の時間を整えることを意識すると良いでしょう。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

  • 起きる時間を少しずつ早める(いきなり学校の時間に合わせるのではなく、15~30分ずつ調整)
  • 朝日を浴びる習慣をつける(体内時計を整えるために、起きたらカーテンを開ける)
  • 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす(急に禁止するのではなく、少しずつ短縮していく)

「学校に行けるかどうか」よりも、まずは朝起きる習慣をつけることが最優先です。朝のリズムが整ってくると、自然と気持ちも安定しやすくなります。

3. 学校に関する不安を具体的にする

新学期が近づくと、子どもは漠然とした不安を感じやすくなります。しかし、その不安を「学校に行きたくない」という形でしか表現できないことが多いです。

そこで、「何が一番不安なのか?」を具体的にしていくことが大切です。

✔ 不安を具体化するための質問

  • 「先生との相性が心配?」
  • 「友達とうまくやれるか不安?」
  • 「授業についていけるかどうかが気になる?」

不登校の子どもは、「とにかく学校が怖い」という気持ちを持っていることが多いですが、その「怖さ」の正体を探ることで、具体的な対策を立てることができます。

例えば、「授業についていけるか不安」という場合は、最初の1週間は無理に授業を受けさせるのではなく、まずは登校して雰囲気に慣れることを目標にするといった調整が可能です。

また、「友達とうまくやれるか不安」という場合は、事前に学校の先生と相談し、サポートしてもらうという対応ができます。

まとめ

新学期は、不登校の子どもにとって大きな転機となる時期です。しかし、焦って登校を促してしまうと、かえって子どもにプレッシャーを与え、不登校が悪化することもあります。

  • 「頑張って行こうね」とプレッシャーをかけない
  • 生活リズムを少しずつ整える
  • 不安を具体化し、解決策を探る

こうしたポイントを意識しながら、子どものペースに寄り添っていくことが何よりも大切です。

母と娘の会話のイメージ

日常的にできる不登校対策

不登校の子どもが再び学校へ行くためには、日々の生活の積み重ねが重要になります。不登校の対応は「学校に行かせること」だけが目的ではなく、子どもが安心できる環境を整え、再登校に向けた準備をしていくことが大切です。

特に、日常的に意識してほしいのは次の3点です。

  1. 生活リズムを整えること
  2. 家族の時間を大切にすること
  3. 夫婦喧嘩に注意すること

これらは、すぐに効果が出るものではありません。しかし、時間をかけて意識していくことで、子どもが少しずつ前向きになり、「学校に行ってみようかな」と思える環境をつくることができます。では、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

1. 生活リズムを整えること

不登校の子どもは、学校に行かなくなることで昼夜逆転しやすくなります。朝起きる時間が遅くなると、自然と夜も眠れなくなり、生活リズムが崩れてしまいます。そして、「朝起きられないから学校に行けない」という状態が続くと、ますます不登校が長期化してしまうのです。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

① いきなり「早起きしなさい」と言わない
「明日からちゃんと朝7時に起きなさい!」と言っても、急に生活リズムを変えるのは難しいものです。いきなり理想の時間に戻そうとすると、子どもはプレッシャーを感じ、余計に朝起きられなくなってしまいます。

そこで、15分ずつ起きる時間を早めるなど、少しずつ調整していくのが効果的です。例えば、今朝9時に起きているなら、次の週は8時45分、その次の週は8時30分といった具合に、ゆるやかに改善していきましょう。

② 朝起きたらカーテンを開ける
人間の体内時計は、朝日を浴びることでリセットされる仕組みになっています。朝になったらカーテンを開けて日光を浴びるだけでも、少しずつ生活リズムを整える助けになります。

③ 昼間に軽い運動をする
不登校の子どもは家の中で過ごす時間が長くなりがちですが、日中に体を動かすことが夜の快眠につながります。散歩に誘ったり、買い物についてきてもらったりするだけでも、体内リズムが整いやすくなります。

④ 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす
スマホやゲームの長時間使用は、寝る時間が遅くなる原因の一つです。しかし、いきなり「夜のスマホは禁止!」とすると、かえって反発を招くこともあります。まずは「30分だけ短くする」など、少しずつ調整していくことを意識しましょう。

2. 家族の時間を大切にすること

不登校の子どもは、「学校に行っていない自分はダメなんじゃないか」と自己否定感を持ちやすくなります。そのため、「家では安心して過ごせる」と感じられるような家庭環境を作ることが大切です。

✔ 家族の時間を増やすための工夫

① 一緒に食事をする
家族そろって食事をする時間は、子どもが安心感を得る大切な時間になります。不登校の子どもは、食事の時間がバラバラになりがちですが、できる限り「一緒にご飯を食べる習慣」を作ることで、家庭内のつながりが深まります。

② 子どもが好きなことに親も関心を持つ
例えば、子どもがゲームやアニメに夢中になっているなら、「何をやってるの?」「一緒にやってみてもいい?」と興味を示してみるのも良い方法です。親が子どもの趣味に関心を持つことで、子どもは「自分のことを理解してくれている」と感じ、親子関係が良くなります。

③ 週末に軽いお出かけをする
遠くに行く必要はありません。近所の公園に散歩に行く、カフェでお茶をするなど、ちょっとした外出が気分転換になります。特に、長期間家にこもっていると気分が落ち込みやすくなるため、「学校に行く前に、まずは外に出ることに慣れる」という意味でも効果的です。


3. 夫婦喧嘩に注意すること

意外に思われるかもしれませんが、家庭内の雰囲気は、不登校の子どもの心理状態に大きな影響を与えます

✔ 子どもは親の雰囲気を敏感に感じ取る

子どもは、親の表情や言葉のトーンから、「お父さんとお母さんの仲が悪い」「家の中がピリピリしている」と感じ取ります。そして、それがストレスになり、不登校が長引いてしまうことがあります。

特に、親が夫婦喧嘩をしている場面を子どもが目にすると、次のような気持ちを抱くことがあります。

  • 「自分が不登校だから、親がケンカしているんじゃないか」(罪悪感)
  • 「家の中が居心地悪い」(安心感の欠如)
  • 「親に相談しづらい」(気持ちを話せなくなる)

これが積み重なると、子どもはますます閉じこもりがちになり、不登校の解決が遠のいてしまいます。

✔ 夫婦間の意見の違いを子どもの前で見せすぎない

不登校の対応について、夫婦で意見が違うこともあるでしょう。例えば、

  • 父親:「厳しくしないとダメだ」
  • 母親:「無理に行かせず、まずは見守るべきだ」

こうした意見の違いはよくあります。しかし、それを子どもの前でぶつけ合うと、子どもは「どちらの親の言うことを聞けばいいの?」と混乱してしまいます。

夫婦で意見が合わないときは、子どものいない場所で話し合い、意見のすり合わせをすることを心がけましょう。

まとめ

日常的な積み重ねが、不登校の改善につながります。

  • 生活リズムを少しずつ整える(急に変えようとせず、徐々に調整)
  • 家族の時間を大切にし、安心できる環境を作る
  • 夫婦喧嘩を避け、子どもに不安を与えないようにする

子どもが学校に行くためには、まず「家が安心できる場所であること」が何よりも大切です。できることから少しずつ始め、子どもが「学校に行ってみようかな」と思える環境を整えていきましょう。


ToCo(トーコ)について

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子どもが学校に行きたくないと言った時の初動

子どもが学校に行きたくないと言った時の初動についての記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
「学校に行きたくない」と子どもが訴えたとき、親としては戸惑いを感じると思います。昨日まで普通に登校していたのに突然拒否するケースもあれば、以前から不安そうな様子が見えていたケースもあるでしょう。

この時、保護者の対応次第で子どもの心理状態は大きく変わります。適切な初動をとることで、問題の長期化を防ぐことができます。


目次


第1章:初回は休ませる

「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、最も避けたいのは 焦って無理に登校させること です。
もちろん、理由が単なる気分的なものであれば登校したほうが良い場合もあります。しかし、強いストレスを抱えたまま無理に登校させると、状況が悪化しやすくなります。

では、なぜ初回は休ませたほうが良いのでしょうか?


1. 休ませることの目的を理解する

初めて「行きたくない」と言ったときに休ませるのは、「登校のハードルを下げるため」ではなく、「子どもが抱えている問題を整理する時間を確保するため」です。

休むこと自体を「特別なこと」にはせず、以下のような目的意識を持つことが重要です。

  • 子どもの状態を観察する
    → 何が原因なのかを整理し、状況を把握する時間を作る。
  • ストレスが蓄積するのを防ぐ
    → 無理に行かせることで悪化する可能性があるストレスを、一時的にリセットする。
  • 長期化を防ぐための対策を考える
    → 休むことを一つのきっかけとして、今後の対応を計画する。

このように、単に「休ませる」のではなく、目的を持った「適切な休息」をとることが大切です。


2. 休ませるべきケースと休ませないほうが良いケース

全ての「学校に行きたくない」が同じ重さを持つわけではありません。そのため、休ませるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

休ませたほうが良いケース

  • 学校の話題を出すと涙ぐむ、またはパニックを起こす
    → 強い不安や恐怖がある可能性が高い。
  • 身体症状(頭痛、腹痛、吐き気など)が頻発する
    → ストレスによる身体反応の可能性がある。
  • 理由を聞いても、明確な説明ができず苦しそうにしている
    → 本人も整理できていない状態。時間をかけて話をする必要がある。
  • 登校を強く促すと、家の中で暴れる、塞ぎ込むなどの行動が見られる
    → 無理に行かせると逆効果になる可能性がある。

こうした場合、無理に登校させるのは逆効果です。一旦休ませ、冷静に状況を整理する時間を確保しましょう。

登校を促したほうが良いケース

  • 宿題が終わっていない、テストが嫌だなど、明確な理由がある
    → 単なる回避行動の可能性が高い。
  • 友達とケンカしたが、大きな問題ではなさそう
    → 一時的な対人関係のトラブルは、むしろ学校で解決することが望ましい。
  • 「なんとなく行きたくない」と言うが、気分的なものに見える
    → 休むことで「行かなくてもいい」と思うリスクがある。

このようなケースでは、できるだけ登校を促しつつ、「行けば何とかなる」という経験を積ませることが重要です。


3. 休むことが「楽な選択」にならないようにする

ここで注意したいのは、「休むことが当たり前になると、登校がさらに難しくなる」という点です。

特に、「休んだ日は好きなことをしてOK」という雰囲気になってしまうと、子どもは 「休んだほうが楽だ」と学習 してしまいます。

そのため、休んだ日は以下の点を意識しましょう。

  • 生活リズムを崩さない(朝食は通常どおり、日中はリビングで過ごす)
  • 宿題を先生に確認して取り組ませる
  • 休むことを「解決のための時間」と位置づける

「今日は休むけど、これからどうしていくか考える時間にしようね」と声をかけることで、休むことが「目的」ではなく「手段」だと理解しやすくなります。


4. 親の姿勢が子どもの安心感を左右する

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親が慌てると、その不安が子どもに伝染します。

親が焦って「どうして?何があったの?」と詰め寄ると、子どもは余計にプレッシャーを感じ、口を閉ざしてしまうことがあります。

逆に、「そうか、今日は行きたくないんだね」と一度受け止めることで、子どもは安心し、自分の気持ちを整理しやすくなります。

大切なのは、休むことを特別扱いせず、冷静に対応することです。


5. 学校との連携の準備をする

子どもが「行きたくない」と言った時点で、保護者がすべきことの一つが 学校との連携を考えること です。

初回の段階では、学校に対して「今朝、子どもが学校に行きたくないと言っています。今日は休ませる予定ですが、担任の先生と少しお話しできればと思います」と簡単に連絡を入れておくと良いでしょう。

この時点で、子どもにとって負担にならない範囲で 学校での様子を知ること が重要です。
たとえば、

  • 最近の授業の様子
  • クラスで何かトラブルがあったか
  • 先生が気づいている変化

こうした情報を集めることで、次の対応が取りやすくなります。

第2章:当日の時間の使い方

ここまでで「初回は休ませる」ことの理由についてお話ししました。ただし、学校を休ませることは「問題を解決する手段」であり、「最終的な目的」ではありません。

子どもが休んだその日を どのように過ごすか が、今後の登校を左右する重要なポイントとなります。

もし、何もせずに一日が終わると、「休んだら楽だった」「また休んでもいいかも」という気持ちが芽生えやすくなります。一方で、「学校に行けなくなった自分はダメだ」と思い込み、より気持ちが沈んでしまうこともあります。

休むこと自体は悪いことではありませんが、休んだ日の過ごし方を工夫しなければ、不登校の長期化に繋がる可能性が高まります。

では、当日の時間をどのように使うべきか、具体的に見ていきましょう。


「学校に行きたくない」と言って休んだ日は、子どもにとって 「自分の気持ちと向き合う時間」 です。

ただし、子どもに「今日は自分の気持ちを整理してね」と言っても、うまくできるわけではありません。そこで、親が適切にサポートすることが大切です。

ここでは、当日を 午前・午後・夜 の時間帯に分けて、適切な対応を考えていきます。

1. 午前:気持ちを落ち着ける時間

朝、学校に行かないと決まると、子どもは「ほっとしたような」「罪悪感があるような」複雑な気持ちを抱えます。

この時間帯にやるべきことは、次の3つです。

① 生活リズムを崩さない

休んだ日は 「いつも通りの朝を過ごす」 ことが重要です。

  • 朝ごはんを食べる(できれば家族と一緒に)
  • 着替える(パジャマのまま一日を過ごさない)
  • 布団やベッドにこもらない

「せっかく休んだんだから、ゆっくり寝かせておこう」と思うかもしれませんが、ダラダラと寝続けると、頭が働かず気持ちの整理もうまくいきません。

「今日は家にいるけど、普通の生活をしようね」と伝え、学校に行く日と大きく変わらない朝の習慣を続けましょう。

② 子どもの気持ちを整理する時間を作る

子どもは「何が嫌で学校に行きたくなかったのか」を 自分でも整理できていないことが多い です。

そのため、親が「どうして行きたくないの?」と問い詰めても、うまく言葉にできないことがほとんどです。

そこで、次のような方法を試してみましょう。

  • 「今の気持ちを書き出してみようか?」と提案する
    → 文字にすることで、漠然とした不安が整理しやすくなる。
  • 「どんなことがあると、学校に行きたくないと思う?」と具体的に聞く
    → 「先生が怖い」「友達が冷たい」「授業が分からない」など、何が原因なのか探る。
  • 「昨日までは普通に行けていたけど、今日はどうだった?」と前日との違いを考えさせる
    → 急に登校できなくなった背景を探るヒントになる。

このとき、子どもが「分からない」と言ったら無理に答えを出そうとしないことも大切です。 「そうだよね、まだ整理できてないかもしれないね」 と寄り添うことで、子どもが安心して考えられる環境を作れます。

③ 学校に連絡を入れる(親が対応)

休むと決めた場合、 学校には必ず連絡を入れる ことが大切です。

この際、「体調不良」とだけ伝えるのではなく、できるだけ 担任の先生と直接話す のが望ましいです。

伝えるべき内容の例:

  • 「今朝、子どもが学校に行きたくないと言い出しました。」
  • 「本人に理由を聞いていますが、まだ整理できていないようです。」
  • 「今日一日は家で様子を見ますが、何か学校で気になることはありましたか?」

先生からの情報が、子どもの状況を理解する手がかりになることもあります。


2. 午後:具体的な対策を考える時間

午前中は「気持ちを落ち着ける時間」でしたが、午後は 「これからどうするかを考える時間」 です。

ここで重要なのは、休むことを特別なことにしないこと です。

① 「休めば楽になる」と思わせない工夫

子どもが「休むこと=自由に過ごせること」と認識すると、登校のハードルが一気に上がります。

そのため、午後は次のようなルールを作るとよいでしょう。

  • ゲームやスマホの使用時間を制限する
    → 「学校に行かない日だからこそ、使う時間を考えよう」と伝える。
  • 学校の課題を少しでもやる
    → 宿題や教科書を開くだけでも、「学校と完全に切り離される」ことを防げる。
  • リビングで過ごす時間を作る
    → 一日中自室にこもると、「外に出る」ことがより苦痛になる。

② 子どもと一緒に対処法を考える

子ども自身に「これからどうするか」を考えさせることが大切です。

  • 「明日、学校に行けそう?」
  • 「もし行くとしたら、何が不安?」
  • 「先生に相談できたら少し楽になる?」

ここで 無理に登校を約束させる必要はありません
ただし、「どうすれば行けそうか」を一緒に考えることが重要です。


3. 夜:翌日の準備と安心感を与える時間

夜は、「明日どうするか」を整理する時間です。

  • 「明日はどうする?」と確認する(プレッシャーをかけすぎないように)
  • 準備だけはしておく(ランドセルや制服を揃えておく)
  • 「いつでも相談していいよ」と伝える(親が味方であると感じさせる)

ここで改めて確認したいのは、休むこと自体は問題ではなく、休んだ後の対応が不登校に繋がるかどうかを決める という点です。

1日休んだらスッキリして、翌日から普通に行けた場合は問題ありません。しかし休んだことで安心して、翌日も「また行きたくない」と言い始めた場合は、早めの対策が必要です。

なぜなら、不登校は 「急に起こるもの」ではなく、「少しずつ登校が難しくなっていくプロセス」 を経て長期化することが多いからです。

では、不登校に繋がらないようにするためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?

第3章:不登校に繋げないための工夫

不登校を防ぐためには、「休み方」を間違えないことが最も重要です。

  • 「休めば解決する」思考にならないようにする
  • 「登校しやすい環境」を少しずつ整えていく
  • 「親も一緒に考える」という姿勢を持つ

これらを意識しながら、具体的な工夫を見ていきましょう。


1. 「休めば解決する」という誤解を防ぐ

子どもが「行きたくない」と言ったとき、すぐに休ませることで「嫌なら休んでもいいんだ」と学習してしまうと、登校のハードルがどんどん高くなってしまいます。

これは、子どもが「休むことの快適さ」に慣れてしまうためです。

そのため、次のような意識を持つことが大切です。

① 休むことを「解決策」ではなく「一時的な対応」と伝える

「休むのはいいけれど、それで問題がなくなるわけじゃないよね」と、子どもが 「休めばすべてが解決するわけではない」と理解する ように促しましょう。

たとえば、こんな声かけが効果的です。

  • 「今日はお休みして気持ちを落ち着けるのはいいけれど、学校のことは考えないままでいいのかな?」
  • 「休んだことで少し落ち着いたら、どうすれば行きやすくなるか考えてみようね。」

「休む=問題を先送りにしているだけ」ということを、無理のない範囲で伝えることが大切です。

② 休むことのルールを決める

休むことが続くと、不登校になりやすくなります。そのため、「休むことのルール」を決めておくと、ズルズルと長引くのを防げます。

たとえば、次のようなルールを設定すると良いでしょう。

  • 昼間はリビングで過ごす(自室にこもらない)
    → 自室に閉じこもると、気持ちの整理が難しくなるため。
  • 休んでも、学校の時間割に沿って何かする(勉強・読書など)
    → 何もせずに過ごすと、「休む=楽になる」という意識が強くなるため。
  • ゲームやスマホの使用時間は学校が終わる時間までは制限する
    → 「休んだ方が楽しい」と思わないようにするため。

このように、「休むことを無条件に快適なものにしない」という工夫が、不登校を防ぐポイントになります。


2. 登校しやすい環境を整える

「行きたくない」と言った背景には、必ず何かしらのストレスがあります。

そのため、「学校に行くことのハードルを下げる」工夫をすることで、登校を促しやすくなります。

① 「全部行くのは無理」なら「少しだけ行く」を目標にする

「朝から夕方まで学校にいるのが無理」なら、まずは「午前中だけ」「3時間目から行く」などの選択肢を作ると良いでしょう。

  • 「午前中だけ行って、給食を食べずに帰ってきてもいいよ。」
  • 「今日は3時間目から行ってみようか?」

このように 「全部登校するのは無理でも、一部だけならできるかも」 という視点を持たせることが重要です。

② 「学校がつまらない」「意味がない」と言う場合の対応

「学校が嫌」という理由が、単純に「つまらない」「行く意味がない」といったものである場合、次のようなアプローチが有効です。

  • 「学校に行くことには、今すぐは分からないけど、将来のためになることがあるよ。」
  • 「今は楽しくないかもしれないけど、大人になったときに『行ってよかった』と思うことがあるかもしれないよ。」

また、「学校の何が嫌なのか」を一緒に整理するのも効果的です。

  • 授業がつまらないのか
  • 先生が苦手なのか
  • 友達との関係が難しいのか

原因を特定し、それぞれの対策を考えることが、登校を後押しするカギになります。


3. 親の関わり方がカギを握る

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親の対応次第で状況が大きく変わります。

① 「見守る」だけではなく、一緒に解決策を考える

「子どもが行きたくないなら、無理に行かせない」という考えは、一見優しさのように思えます。

しかし、「そのまま何もしない」=「問題を放置する」ことになりやすい ため、適切な対応とは言えません。

親として大切なのは、「どうすれば学校に行けるようになるか、一緒に考える」 姿勢を持つことです。

② 「大丈夫だよ」と言いすぎない

「学校に行きたくない」と言われると、つい「大丈夫だよ」と言って安心させたくなるかもしれません。

しかし、子どもにとっては「何が大丈夫なの?」と逆に不安が増してしまうことがあります。

代わりに、次のような声かけを意識してみましょう。

  • 「大丈夫かどうか、一緒に考えてみようか?」
  • 「何が不安か分からないままだと、もっとしんどくなるかもしれないね。」

「親が一緒に考えてくれる」という安心感 を持たせることが、不登校を防ぐカギになります。

「学校に行きたくない」という子どもの言葉は、単なる気まぐれではなく、何かしらのサインです。そのため、初回は冷静に受け止め、一時的な休息を認めつつ適切な対応を進めることが重要です。

その日の過ごし方や親の関わり方次第で、不登校に繋がるかどうかが決まります。「休めば解決する」という誤解を防ぎ、登校しやすい環境を整えながら、子どもと一緒に前向きな解決策を考えていきましょう。焦らず、一歩ずつ対応することが大切です。

各章のまとめ

各章要点必要な行動
初回は休ませる「学校に行きたくない」と言われたら、無理に登校させず、一時的に休ませる。ただし、休むこと自体を目的にせず、問題を整理する時間とする。休む理由を整理し、子どもの状態を観察する。学校に連絡し、状況を共有する。生活リズムを崩さず、休むことを特別視しない。
当日の時間の使い方休んだ日をどう過ごすかが、今後の登校を左右する。何もせずに終わると「休むほうが楽」と感じ、不登校に繋がりやすくなる。朝は普段通りに起きて朝食をとる。気持ちを整理する時間を作り、学校と連絡を取る。午後は今後の対策を話し合い、ゲームや動画の時間を制限する。
不登校に繋げないための工夫「休めば解決する」と思わせないようにし、登校のハードルを下げる工夫が必要。親が「見守る」だけではなく、一緒に解決策を考える姿勢が重要。休むルールを決め、昼間はリビングで過ごさせる。部分登校の選択肢を考える。子どもが不安に感じるポイントを整理し、少しずつ解決策を見つける。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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新学期に向けた家庭で出来る不登校対策とは?

新学期に向けた家庭で出来る不登校対策とは-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防と再登校支援を専門とし、ToCo(トーコ)株式会社の顧問として多くの家庭が抱える課題に寄り添いながら解決策を提案してきました。

新学期が近づくにつれ、不登校に関するご相談が増える傾向にあります。「うちの子は大丈夫だろうか」「また学校に行けなくなってしまうのではないか」と不安を抱える保護者の方々に向けて、家庭でできる不登校対策を詳しくお伝えしていきます。

本記事では、新学期における不登校の実態と傾向、不登校になりやすい理由、子どもの兆候の見つけ方、そして具体的に家庭で実践できる予防策について解説します。これまでの経験から導き出した実践的なアドバイスを盛り込みながら、保護者の皆さまにとって役立つ情報を提供することを目指しました。


目次


第一章:新学期における不登校の傾向と実態

新学期が始まると小中学生の不登校が急増することは、学校界隈ではよく知られている事実です。特に、夏休み明けや春休み明けのタイミングでは、不登校の子どもが一気に増える傾向にあります。では、なぜこの時期に不登校が増えるのでしょうか?

文部科学省の調査によると、小中学生の不登校の発生率は年々上昇しています。かつては「不登校=特殊なケース」と考えられていましたが、現在では決して珍しいことではなくなりました。特に新学期は、これまで普通に通っていた子どもが突然学校へ行けなくなるケースが多発する時期です。

1.1 休み明けに急増する不登校

夏休みや冬休みが終わると、一部の子どもは登校を渋るようになります。これは単なる「休みボケ」ではなく、心理的なハードルが一気に高まるためです。

長期休暇中、子どもは学校のストレスから解放され、自分のペースで過ごせます。しかし、休みが終わると、そのストレスが再び襲ってきます。「あの先生とまた顔を合わせるのか」「クラスメイトにどう思われるだろう」「勉強についていけるか不安だ」といった不安が膨れ上がり、登校が難しくなるのです。

特に、前学期の終わりに何らかのトラブルを抱えていた場合、その不安はさらに強まります。例えば、学級内の人間関係に悩んでいた子どもや、成績の低下にショックを受けた子どもは、「新学期に行くのが怖い」という感情を抱えがちです。

1.2 「4月と9月」は不登校の壁ができる時期

新学期に不登校が増える理由の一つに、「環境の変化による心理的な負担」があります。

・4月の新学期は、クラス替えや担任の変更があり、新しい環境に適応しなければなりません。「また一から友達を作らなければならない」「新しい先生とうまくやれるだろうか」という不安が、不登校につながるケースが多いです。

・9月の二学期は、夏休み中の生活リズムの乱れが影響します。長期休暇中は遅寝遅起きの習慣がついてしまい、朝早く起きて登校すること自体が負担になりやすくなります。また、学習面での遅れが気になり、授業についていけるかどうかの不安が強まる時期でもあります。

1.3 親が「うちの子は大丈夫」と思っていても油断できない

「うちの子はこれまで学校に行けていたから、新学期も問題ないだろう」と思っていると、突然不登校の兆候が現れることがあります。不登校の原因は、目に見える問題だけではなく、子どもの内面で静かに進行していることも多いのです。

例えば、前年度は何とか頑張っていた子どもが、新学期を迎えた途端に気持ちが折れてしまうケースがあります。これは、「もう頑張れない」「これ以上は無理だ」と感じる限界点が、新学期のタイミングで訪れるためです。

また、不登校経験のない子どもでも、突然「学校に行きたくない」と言い出すことがあります。これは、長期休暇中に「学校がない生活」の快適さを知り、再び学校へ戻ることが苦痛に感じるためです。

第二章:新学期に不登校になりやすい理由

では、新学期になると不登校が増える理由は具体的に何なのでしょうか?

新学期に不登校が発生しやすい理由は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

2.1 環境の変化によるストレス

新学期は、子どもにとって大きな環境の変化を伴います。クラス替え、新しい担任、新しい友人関係——これらの要素は、子どもにとって大きな心理的負担となります。

特に、内向的な性格の子どもは、新しい環境への適応に時間がかかるため、新学期は極度のストレスを感じやすくなります。また、「去年うまくいったから今年も大丈夫」とは限らず、些細なきっかけで不登校になってしまうことも少なくありません。

2.2 学業の負担と自己肯定感の低下

新学期が始まると、学習内容が難しくなるため、勉強についていけなくなる子どもが増えます。「授業が分からない」「テストの点数が悪い」といった状況が続くと、子どもは自信を失い、登校を避けるようになります。

特に、「完璧主義」の傾向がある子どもは、少しの失敗でも「自分はダメだ」と思い込みやすく、不登校へとつながりやすいです。

2.3 友人関係の不安

新学期になると、「誰と一緒にいるか」という問題が再び浮上します。仲の良い友人とクラスが分かれてしまったり、新しい友人関係を築かなければならなかったりすることで、子どもは大きなストレスを抱えます。

特に、過去にいじめやトラブルを経験した子どもは、「また同じことが起きるのではないか」と恐怖心を抱き、不登校に陥るケースが少なくありません。

第三章:子どもの不登校兆候の見つけ方

新学期に向けて、不登校の兆候を見つけることは非常に重要です。多くの保護者は、子どもが「学校に行きたくない」と口にするまで気づかないことが多いですが、実はその前から様々なサインが現れています。早期に兆候を察知し、適切な対応を取ることで、不登校を未然に防ぐことが可能です。ここでは、子どもが発する「心のSOS」に気づくためのポイントをお伝えします。

3.1 身体的なサインを見逃さない

子どもが不登校になりかけているとき、まず表れるのは「体調の変化」です。これは心理的ストレスが身体的な症状として現れるためで、以下のような兆候が見られることが多いです。

  • 朝になると腹痛や頭痛を訴える
    夜は元気に過ごしているのに、登校時間が近づくと突然「お腹が痛い」「頭が痛い」と言い出す場合は要注意です。これが週に数回続く場合、不登校の前兆である可能性が高くなります。
  • 食欲の変化
    ストレスが強いと、食欲が極端に増減します。「急に食べなくなった」「好きだった食べ物を残すようになった」「お菓子ばかり食べるようになった」などの変化が見られたら、子どもが心理的なストレスを抱えている可能性があります。
  • 睡眠の乱れ
    不登校の兆候として多いのが「睡眠障害」です。夜更かしが増え、朝起きるのがつらくなると、登校がますます困難になります。また、夜中に何度も目を覚ます、悪夢をよく見る、寝る前に不安そうにするなどの様子があれば、学校へのストレスが関係している可能性が高いです。
  • 疲れやすい、だるそうにしている
    心理的な負担が大きくなると、子どもは常に「疲れた」と感じるようになります。特に、休日は元気に遊んでいるのに、平日になると「疲れた」「だるい」と言い出す場合、学校生活への不安やストレスが影響しているかもしれません。

3.2 行動の変化に注意する

子どもが不登校になりかけているとき、日常の行動に微妙な変化が現れます。特に以下のような行動は、子どもが「学校に行くのがつらい」と感じているサインかもしれません。

  • 学校の話を避ける
    以前は「今日、学校でこんなことがあったよ」と話していたのに、急に学校の話題を避けるようになった場合、何かしらの悩みを抱えている可能性があります。特に、「先生はどう?」と聞いたときに曖昧な返事をする、あるいは「別に」「普通」としか答えなくなる場合は要注意です。
  • 準備をしなくなる、忘れ物が増える
    学校へ行くことへの関心が薄れると、宿題をやらなくなったり、持ち物の準備を後回しにしたりするようになります。これまできちんとしていた子どもが、急に「忘れ物が多くなる」「宿題をやらなくなる」といった変化を見せた場合、学校への意欲が低下している可能性があります。
  • 登校時間が近づくと不機嫌になる
    朝になるとイライラしたり、些細なことで怒ったりするのも、不登校の兆候の一つです。学校へ行くことを考えるだけでストレスを感じているため、登校前に機嫌が悪くなることがよくあります。

3.3 子どもの「心の声」を聞く方法

子どもが不登校の兆候を見せているとき、一番大切なのは「無理に問い詰めないこと」です。「どうして行きたくないの?」と問い詰めると、子どもは「責められている」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

代わりに、子どもが話しやすい雰囲気を作ることが大切です。例えば、学校とは関係のない話題から始め、リラックスした状態で「最近どう?」とさりげなく尋ねると、子どもは少しずつ本音を話し始めることがあります。また、親が「学校に行かせなければ」という気持ちを抑え、「あなたが大切だよ」というメッセージを伝えることが、子どもに安心感を与えるポイントです。

第四章:家庭で実践できる不登校予防

不登校を未然に防ぐためには、家庭でのサポートが非常に重要です。ここでは、具体的な予防策について詳しくお伝えします。

4.1 朝の習慣を整える

新学期に向けて最も効果的な対策の一つが、「朝の習慣を整えること」です。夏休みや春休みの間に夜更かしや寝坊の習慣がついてしまうと、学校が始まったときに登校が苦痛になりやすくなります。

具体的な対策:

  • 休み中でも「平日と同じ時間に起きる」習慣を作る
  • 朝ごはんをしっかり食べることで体内リズムを整える
  • 午後は外に出て日光を浴びる(体内時計をリセットする効果がある)

4.2 子どもの不安を和らげる

新学期が近づくと、多くの子どもが「ちゃんとやっていけるかな」「友達と仲良くできるかな」と不安を抱きます。こうした不安を和らげるために、親ができることは何でしょうか?

  • 「大丈夫だよ」と言葉で安心させる
    「新学期、楽しみだね!」とポジティブな声かけをすることで、子どもは「大丈夫なんだ」と思えるようになります。
  • 学校の話を楽しい話題にする
    「今年はどんなことが楽しみ?」と聞くと、子どもは前向きな気持ちを持ちやすくなります。
  • 小さな成功体験を積ませる
    夏休みの間に「できた!」という経験を増やしておくと、新学期に対する自信がつきます。

4.3 「行くのが当たり前」にしない

「学校に行くのが当たり前」と思わせるのではなく、「学校に行くことで楽しいことがある」と感じられる環境を作ることが大切です。そのためには、子どもの気持ちに寄り添いながらも、少しずつ登校に向けた準備を進めていくことが重要です。

第五章:家庭での具体的なサポート方法

ここまで、新学期に不登校が増える理由やその兆候、そして予防のための基本的な対応についてお伝えしてきました。しかし、「兆候に気づいたけれど、実際にどう対応すればいいのかわからない」「すでに学校を休みがちになっているけれど、どうすれば登校を促せるのか」と悩む保護者の方も多いでしょう。

そこで本章では、家庭でできる具体的なサポート方法について詳しくお伝えします。不登校を防ぐためには、子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつ前向きな変化を促していくことが重要です。

5.1 「無理に行かせる」のではなく、「行きやすい環境」を作る

不登校の兆候がある子どもに対して、「明日は絶対に学校に行きなさい!」と強制することは逆効果です。子どもは「行かなきゃいけない」というプレッシャーに押しつぶされ、ますます登校が難しくなってしまいます。

そこで大切なのは、「学校に行くこと」をゴールにするのではなく、「学校に行きやすい環境を作る」ことです。そのために、次のようなアプローチが有効です。

まずは学校の話をしすぎない
「学校はどう?」と何度も聞かれると、子どもはプレッシャーを感じます。学校について話すよりも、日常の楽しい話題を増やし、子どもが安心できる雰囲気を作ることが大切です。

「行かなくてもいい」とは言わないが、「行かないとダメ」とも言わない
「別に行かなくてもいいよ」と言ってしまうと、子どもは「もう行かなくていいんだ」と思い込んでしまいます。一方で、「行かないとダメ!」と強く言うのもプレッシャーになります。「どうしたら行きやすくなるかな?」と、子どもの気持ちを引き出すような声かけが効果的です。

学校とつながりを持ち続ける
完全に学校と断絶すると、復帰のハードルが高くなります。担任の先生と連携しながら、「宿題だけ提出する」「放課後に先生と少し話す」など、少しでも学校とつながりを持ち続けることが重要です。

5.2 「朝の支度」がスムーズにできる工夫

登校を渋る子どもの多くは、「朝の準備」そのものに心理的な負担を感じています。

例えば、制服を着るだけで「学校へ行かなければならない」とプレッシャーを感じたり、ランドセルを背負うと「今日も嫌なことがあるかもしれない」と不安になったりすることがあります。

そこで、朝の支度をスムーズにするために、次のような工夫を取り入れてみてください。

朝起きる時間を一定にする
生活リズムを整えることは、不登校予防において非常に重要です。休日も含め、毎日同じ時間に起床する習慣をつけましょう。

制服を着るのを手伝う
制服を着ることが負担になっている場合は、「一緒に着替えようか?」と声をかけ、少し手伝ってあげるのも効果的です。「今日はとりあえず着替えるだけでもいいよ」と、ハードルを下げることも大切です。

朝食の時間を楽しみにする
「朝起きたら好きなパンがあるよ」「朝ごはんの後に少しゲームしよう」など、朝起きること自体をポジティブなものにする工夫をしてみましょう。

家の中の動線を変える
登校を嫌がる子どもの中には、「玄関を通ること」自体にストレスを感じている場合もあります。例えば、登校時間になったらリビングでしばらく過ごすなど、いつもと違う動線を作ることで、心理的な負担を和らげることができます。

5.3 「小さな成功体験」を積み重ねる

子どもが学校に行くことを不安に感じている場合は、「登校=大きな負担」と思い込んでいることが多いです。そこで、学校に関する「小さな成功体験」を積み重ねることで、「行けるかもしれない」と思えるようにすることが大切です。

「校門まで行ってみる」「教室の前まで行く」など、段階的に進める
「最初から1日フルで登校しなければならない」と思うと、子どもは大きなプレッシャーを感じます。「まずは校門まで行く」「保健室にだけ行ってみる」など、ハードルを低く設定することで、少しずつ慣れていくことができます。

友達と一緒に登校する機会を作る
仲の良い友達と一緒に登校することで、学校への不安が和らぐことがあります。可能であれば、登校前に近所の友達と合流できるような環境を作るのも良いでしょう。

学校以外の「成功体験」を増やす
「学校に行けなかった」という経験が積み重なると、子どもは「自分はダメだ」と思い込んでしまいます。そのため、学校以外の場で小さな成功体験を積むことも大切です。例えば、「料理を手伝った」「好きな本を1冊読んだ」「習い事で先生に褒められた」といった経験が、自信につながります。

第六章:まとめ 〜家庭での関わり方が不登校を左右する

新学期は、不登校が増えやすい時期です。しかし、子どもの小さなサインに早く気づき、適切なサポートをすることで、学校へ行くことへのハードルを下げることができます。

  • 不登校の兆候を見逃さないこと
  • 無理に行かせるのではなく、「行きやすい環境」を作ること
  • 朝の習慣を整え、心理的な負担を減らすこと
  • 小さな成功体験を積み重ねること

こうした工夫をすることで、子どもが「学校に行けるかもしれない」と思えるようになり、不登校を防ぐことができます。

不登校に悩むと、親も「どうすればいいの?」と不安になってしまいます。しかし、焦らず子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつサポートしていくことが何よりも大切です。

お子さんが新学期を迎えるにあたって、少しでも前向きな気持ちになれるよう、この記事が参考になれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

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不登校解決にどれくらいの費用と時間をかけるべきか?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。また、不登校予防や再登校支援を専門とするToCo株式会社の顧問も務めております。
本日は、「不登校解決にどれくらいの費用と時間をかけるべきか?」というテーマについて、お話しさせていただきます。


目次


不登校業界における金銭トラブル

近年、不登校支援をうたう業者との間で、金銭トラブルが増加しています。無料相談を受けた後、高額なサービスを強引に勧められたり、効果が見られないにもかかわらず返金に応じてもらえなかったりといった事例が報告されています。例えば、ある保護者の方は、無料相談に参加した後、数十万円のプログラムを契約するよう強く勧められ、断りきれずに契約してしまったものの、期待した効果が得られず、返金もされなかったといいます。このようなトラブルは、保護者の焦りや不安につけ込む悪質な業者によって引き起こされることが多いのです。

また、料金体系が不明瞭なまま契約を迫られるケースも見受けられます。具体的なサービス内容や料金が明示されていない場合、後になって予想外の高額請求を受ける可能性があります。不透明な料金設定や強引な勧誘には、十分な警戒が必要です。

さらに、効果を誇大に宣伝し、実際には期待した成果が得られないケースも報告されているため、過度な宣伝文句に惑わされないよう冷静な判断が求められます。不登校の解決には、各家庭やお子様の状況に応じた適切な支援が必要であり、万能な解決策は存在しません。

このような金銭トラブルを避けるためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 料金体系の明確化:サービスを受ける前に、具体的な料金や追加費用の有無を確認しましょう。
  • 契約内容の確認:契約書や利用規約をしっかりと読み、不明点は質問し、納得してから契約を結ぶことが大切です。
  • 第三者の評価を参考にする:口コミや評判、第三者機関の評価などを調べ、信頼性のある業者を選ぶよう心がけましょう。

お子様のために最善の支援を求めるあまり、焦って判断してしまうこともあるかもしれません。しかし、冷静に情報を収集し、信頼できる支援を選ぶことが、お子様の未来にとって最も重要です。

費用ではなく、企業を見よう

不登校支援を選ぶ際、費用の多寡だけで判断するのは危険です。高額なサービスが必ずしも高品質であるとは限らず、逆に低価格でも効果的な支援を提供している企業も存在します。重要なのは、提供されるサービスの内容や企業の信頼性です。

消費者庁も、「サービス価格が明示されていない場合は十分に注意しましょう」と注意喚起を行っています。料金を公開していない企業にはその理由があると考え、慎重に判断することが求められます。例えば、料金を明示しないことで、個別に高額な料金を請求する可能性や、サービス内容に自信がないために詳細を隠している場合も考えられます。Topページやサービスページが事例や無料相談などで占められていて、料金の記述が無い場合は注意が必要です。

また、企業の実績や支援内容を確認することも重要です。具体的な支援事例や成功率、専門家の資格や経験などを調べることで、その企業が信頼に足るかどうかを判断できます。例えば、ToCo株式会社では、再登校支援サービスの詳細や料金を公式サイトで明示しています。さらに、具体的な支援事例や導入効果も公開しており、透明性の高い情報提供を行っています。

さらに、第三者機関の評価や口コミも参考になります。実際にサービスを利用した保護者の声や、専門家からの推薦など、多角的な情報を集めることで、より客観的な判断が可能となります。ただし、口コミだけに頼らず、公式な情報や直接の問い合わせを通じて確認することも大切です。

最終的には、費用対効果を考慮しつつ、お子様やご家庭の状況に最適な支援を提供してくれる企業を選ぶことが重要です。費用だけでなく、企業の信頼性や支援内容、透明性など、多角的な視点から判断し、後悔のない選択をしていただくことが推奨されます。

不登校解決と時間の関係

不登校の問題を考えるうえで、費用と並んで重要なのが「時間」です。お子様が学校に行かなくなったとき、「しばらく様子を見よう」「本人が落ち着くまで待とう」と考える保護者の方も多いかもしれません。しかし、不登校が長引くほど、解決の難易度は格段に上がることが証明されています。

お子様にとって、最初の数週間は「学校に行かない」という状態が非日常です。しかし、それが何カ月も続くと、「家にいるのが普通」という状態に変わり、それが「コンフォートゾーン(快適領域)」になってしまいます。人間は基本的に、現状を維持しようとする心理が働くため、一度コンフォートゾーンが確立されると、そこから抜け出すことが非常に難しくなります。

特に、不登校が半年以上続くと、次のような心理的変化が起こることが知られています。

  • 「学校に行く」こと自体が非現実的に思える
    学校に行くことが「遠い過去の出来事」のように感じられ、登校すること自体に強い抵抗感を抱くようになります。
  • 社会的スキルが低下し、友達との関係が薄れる
    長期間、人と関わらない生活が続くと、コミュニケーションの機会が減り、対人関係に自信がなくなります。
  • 自己肯定感が低下し、「自分はダメな人間だ」と思い込む
    「学校に行けない自分」を責めるようになり、自己否定が強まることでますます外の世界に出にくくなります。

このような悪循環に陥ると、「子どもが自分から行きたいと言うまで待つ」という選択肢は、現実的ではなくなってしまいます。もちろん、お子様の気持ちを無視して無理に学校に連れて行くことは逆効果ですが、保護者が「どうすれば登校へのハードルを少しでも下げられるか」を常に考え、働きかけることが重要です。

早期解決の重要性

ここで、一つ考えてみていただきたいのは、「不登校が始まったばかりの時期」と「不登校が長期化した後」では、解決にかかる時間が大きく異なるという点です。

例えば、不登校になって1カ月以内の段階で適切な介入を行えば、多くの場合、3カ月以内に登校を再開できる可能性があります。しかし、1年以上続いた場合、元の生活に戻るまでに数年を要することも少なくありません。それほど、時間の経過は大きな影響を与えるのです。

では、なぜ早い対応が効果的なのでしょうか?その理由は、人間の心理と環境の変化にあります。次の章では、行動心理学の観点から、短期間での解決がなぜ有効なのかを解説します。

行動心理学から見た短期解決の利点

人間の行動は、環境に強く影響を受けます。例えば、初めて職場に出勤した日を思い出してください。慣れない環境に緊張し、ストレスを感じたかもしれません。しかし、1カ月もすると、その環境に慣れ、違和感がなくなっていたのではないでしょうか?

この現象は「環境適応」と呼ばれ、人は1カ月ほどで新しい状況に順応する性質を持っています。これは、不登校の解決にも大きく関わります。例えば、以下のようなステップを踏むことで、お子様の環境を変え、登校へのハードルを下げることが可能になります。

  • 家庭内のルールを変える
    学校に行かない状態が続くと、昼夜逆転やゲーム漬けといった生活リズムの乱れが生じやすくなります。まずは「朝起きる」「外に出る」といった基本的なルールを設定し、学校に行かない間も規則正しい生活を送ることが大切です。
  • 外に出る習慣をつくる
    学校に行かない日が続くと、家の外に出ること自体が大きなストレスになります。そのため、まずは「週に1回、親と一緒に散歩する」「図書館やカフェに行く」といった、小さな変化を加えることが有効です。

「慣れ」の前に動く

行動心理学の観点から見ても、不登校が長引くと、それ自体が「日常」になり、変化を起こすのが難しくなります。そのため、短期間のうちに適切な働きかけを行い、環境を少しずつ変えることが、不登校解決のカギとなります。

まとめ:不登校解決にかけるべき費用と時間

不登校の解決には、「どれだけ費用をかけるか」ではなく、「どのように正しく投資するか」が重要です。そして、それと同じくらい「どれだけ早く行動できるか」が結果を大きく左右します。

  • 不透明な料金体系の業者には注意し、信頼できる企業を選ぶ
  • 長引けば長引くほど解決が難しくなるため、早期対応を心がける
  • 行動心理学を活用し、少しずつ環境を変えることが効果的

「子どもが行く気になるまで待とう」と思っている間に、不登校は固定化してしまいます。かといって、無理に学校に行かせることも逆効果です。重要なのは、親が適切なサポートを行い、お子様が自然に学校に戻れるような環境を整えることです。

ToCo株式会社では、こうした問題に直面しているご家庭向けに、具体的な解決策を提供しています。お子様の状況に合わせた支援を行い、スムーズな再登校をサポートすることが可能です。お悩みの際は、ぜひご相談ください。


ToCo(トーコ)について

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私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問も務めております。
本日は、「私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?」というテーマについてお話しします。

多くの保護者の方々は、私立中学校に通うお子様が不登校になる可能性を低く見積もりがちです。「せっかく頑張って合格したのだから、楽しく通えるはず」「優秀な子が集まっているのだから、不登校になる子は少ないだろう」──このように考えている方も多いのではないでしょうか?
しかし、実態としては、私立中学校でも不登校の問題は深刻です。

2023年度の日本の私立中学校における不登校児童数8,120人に上ります。これは、公立中学校に比べて割合としては少ないものの、「不登校になりにくい」と思われている私立中学校でも、相当数の子どもが学校に通えなくなっていることを意味します。

私立中学校での不登校は、公立中学校とは異なる要因が絡んでいることが多く、対策も異なります。本稿では、私立中学校で不登校になりやすい理由を具体的に掘り下げ、保護者がどのように対応すればよいかを詳しく解説していきます。


目次


私立中学にも不登校はある――「まさかうちの子が」とならないために

「私立だから大丈夫」という誤解

「私立に入れたのだから、不登校の心配はない」と考えていませんか?
実は、この考えが落とし穴です。多くの保護者が、私立中学校における不登校の実態を知らず、「うちの子は大丈夫」と思い込んでしまう傾向にあります。しかし、これは大きな誤解です。

私立中学校では、生徒の質が高い=不登校が少ないというイメージが先行しがちですが、現実には、むしろ私立特有の環境が子どもにとって過度なプレッシャーとなり、不登校を引き起こしてしまうことがあるのです。

例えば、私立中学校に通う生徒の多くは、小学生の頃から厳しい受験勉強を経験しています。長い期間、勉強中心の生活を送り、ようやく合格を勝ち取った子どもたちは、「入学することがゴール」となりがちです。その結果、入学後の学習環境についていけなくなり、燃え尽き症候群のような状態になってしまうこともあります。

また、私立中学校では、同じレベルの学力を持つ子どもたちが集まるため、小学生時代に「学力が武器」だった子どもが、自信を失いやすくなるという問題もあります。「小学校では成績トップだったのに、中学校に入ったら普通になってしまった……」と感じる子どもは少なくありません。このようにして、学力をアイデンティティの拠り所にしていた子どもほど、不登校になりやすい傾向があるのです。

さらに、私立中学校の校風や指導方針が、必ずしも全ての子どもに合うとは限りません。偏差値の高さだけで学校を選んだ場合、入学後に「思っていた雰囲気と違う」「人間関係がうまくいかない」といった悩みを抱え、不登校に繋がるケースもあります。

「私立でも不登校になる可能性はある」と考えることが重要

「私立だから大丈夫」と思い込んでしまうと、子どもの小さなサインを見落としやすくなります。

  • 「最近、学校の話をしなくなった」
  • 「朝、起きるのが極端につらそうになった」
  • 「成績が悪くなったわけではないのに、学校を休みたがる」

こうした変化は、子どもが学校に対してストレスを感じ始めているサインかもしれません。

不登校は、ある日突然起こるわけではなく、徐々に進行していくものです。「私立だから」という理由で安心せず、日々の子どもの様子を注意深く見守ることが大切です。


不登校になりやすい理由①「受験ゴールで燃え尽きてしまう」

受験後に「燃え尽きる」子どもたち

小学生の頃から塾に通い、毎晩遅くまで勉強し、休日もほとんど塾の授業や宿題に追われる生活。こうした努力の末、私立中学校に合格した子どもたちは、「合格」という目標を達成した途端に、エネルギーが尽きてしまうことがあります。

これは、いわゆる「燃え尽き症候群」の一種です。受験勉強のプレッシャーから解放されると同時に、「もう頑張らなくてもいい」という気持ちになり、学校生活に対する意欲を失ってしまうのです。

文部科学省の調査では、中学生の不登校の理由のトップが「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった(32.2%)」という結果になっています。このデータからも分かるように、受験がゴールとなり、その後の目標を見失ってしまうことが、不登校の原因の一つになっているのです。

対策:「受験合格」がゴールではないことを伝える

この問題に対処するには、受験の段階から「合格が最終目的ではない」ことを子どもに伝えることが重要です。

具体的には、以下のような点を意識するとよいでしょう。

  1. 「受験の先」に目を向ける習慣をつける
    受験は、あくまでも人生の通過点であり、そこからさらに成長していくためのステップの一つに過ぎません。「合格したら終わり」ではなく、「その先にどんな楽しいことが待っているか」を親子で話し合うことが大切です。
  2. 入学後の生活を具体的に想像させる
    「どんな部活に入りたいか?」「どんな友達を作りたいか?」など、合格後の生活を具体的に考えさせることで、受験だけに集中しすぎることを防げます。
  3. 成功体験を「受験」以外にも持たせる
    受験以外にも、小さな成功体験を積み重ねることで、「勉強以外にも楽しいことがある」と思えるようになります。

このように、受験がゴールではなく、新たなスタートであることを伝え、受験後のモチベーション低下を防ぐことが、不登校を防ぐ上で重要です。

不登校になりやすい理由②「勉強面のアイデンティティが崩れる」

「小学校では優秀だったのに……」という現実

私立中学校に進学する子どもたちは、小学生時代に塾通いを経験し、学力で高い評価を得ていた子が多いです。「勉強が得意」「テストで良い点を取ることが誇りだった」「クラスで一番だった」という経験は、彼らの自尊心を形作る重要な要素となります。

しかし、私立中学校に入ると状況は一変します。今まで「学年トップ」だった子も、周囲を見渡せば同じレベルの生徒ばかり。自分の「強み」だった勉強が通用しないと気づいた瞬間、アイデンティティが崩れ、精神的に大きなダメージを受けるのです。

たとえば、こんなケースがあります。

  • 小学校時代は「勉強が得意な自分」が誇りだったのに、中学校では普通レベルになってしまった。
  • どんなに頑張っても、学年トップの座には届かない。
  • それまで親や先生に褒められてきた「成績」という評価基準がなくなり、自分が価値のない人間に思えてしまう。

これらの経験は、子どもの自己肯定感を大きく傷つけ、「どうせ自分はダメなんだ」「頑張っても意味がない」と思い込ませてしまいます。そして、勉強への意欲を失い、学校そのものに行く意味を感じられなくなるのです。

対策:「勉強ができる=価値がある」という考えを変える

この問題に対処するためには、「勉強ができること=人間として優れていること」ではないという価値観を、親子で共有することが重要です。

  1. 「努力の過程」を評価する習慣をつける
    点数や順位ではなく、「どれだけ頑張ったか」を認めるようにしましょう。たとえば、「結果よりも、コツコツ勉強したことがすごい」といった声かけを意識することで、子どもは結果に一喜一憂せず、努力そのものを大切にするようになります。
  2. 「できること」を広げる機会を作る
    勉強だけが子どもの価値ではありません。スポーツ、音楽、アート、プログラミングなど、他の分野にも目を向けることで、「自分には勉強以外にも強みがある」と気づくことができます。
  3. 「勉強ができるのは能力ではなく、適性の問題」だと伝える
    学力は、生まれ持った才能ではなく、環境や努力の積み重ねによるものです。「今まで塾の勉強が合っていただけで、中学の勉強はまた違うもの」と考えることで、「できなくなった自分=価値がない」とは思わなくなります。

このような考え方を身につけることで、「勉強が得意」というアイデンティティが揺らいでも、他の部分で自信を持つことができるようになります。


不登校になりやすい理由③「偏差値重視で校風が合わない」

「偏差値の高い学校=良い学校」ではない

私立中学校の選び方として、「偏差値の高い学校に行くことが成功」という考え方が一般的です。しかし、この価値観に従って学校を選んだ結果、子どもが不登校になってしまうケースが少なくありません。

特に、以下のようなケースでは注意が必要です。

  • 「とにかく偏差値の高い学校を目指そう」と親が決めた
  • 「友達が受験するから、自分も同じ学校に行きたい」と決めた
  • 学校の特色や校風を十分に調べず、学園祭やパンフレットの印象だけで決めた

子どもはまだ、「自分に合う環境とは何か」を正しく判断するのが難しい年齢です。親が「良い学校」と思って選んでも、子どもにとっては「合わない学校」だったということは珍しくありません。

対策:「偏差値」よりも「子どもに合う環境」を優先する

  1. 学校選びの際、実際の雰囲気を確認する
    偏差値だけでなく、学校の雰囲気を肌で感じることが重要です。最近では、学校の口コミを確認できるサイト(https://school-reviews.com/)などもあるため、事前に調査するのもおすすめです。
  2. 「どういう学校なら楽しく通えるか?」を話し合う
    「校則が厳しすぎると辛い」「競争が激しい学校は合わないかも」など、事前に子どもの性格と学校の特色が合うかを考えておくことが大切です。
  3. 入学後に「合わない」と感じたら、転校を検討するのも選択肢
    どうしても学校が合わない場合は、無理に通わせ続けるのではなく、転校を視野に入れることも一つの手です。しかし、環境の変化はデメリットが大きいため事前の学校選択がより重要です。

学校選びの段階から、「偏差値」よりも「子どもにとって相性が良いかどうか」を優先することが、不登校を防ぐための大きなポイントとなります。


私立中学校で不登校にならないために

私立中学校は、公立に比べて教育環境が整っている反面、「受験ゴールによる燃え尽き」「学力アイデンティティの喪失」「偏差値重視のミスマッチ」といった独自の不登校リスクが存在します。

では、親としては何を意識すればよいのでしょうか?

  1. 受験はゴールではなく、スタートであることを伝える
    → 受験の成功にとらわれず、その後の学校生活を楽しむことを意識させる。
  2. 勉強以外の成功体験を持たせる
    → 学業以外の分野でも「自分には価値がある」と感じられる機会を作る。
  3. 学校選びは「偏差値」よりも「相性」を重視する
    → 校風や雰囲気が子どもに合っているかをしっかり確認する。

不登校は突然起こるものではなく、小さなサインの積み重ねによって生じます。早めに気づき、適切な対応をすることで、未然に防ぐことができます。

「私立だから安心」ではなく、「私立だからこそ注意すべき点がある」と認識し、お子様の変化を見逃さないようにしましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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ソーシャル・エモーショナル学習 〜社会を生き抜く力を育む〜

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの子どもたちとその保護者の方々と向き合ってきました。不登校は決して珍しいことではなく、日本の小中学生の中でも増加傾向にあります。しかし、親としてどのように子どもを支えればよいのか、その答えを見つけることは容易ではありません。

今回お伝えしたいのは、子どもが社会の中で生き抜く力を身につけるために有効な「ソーシャル・エモーショナル学習(SEL)」についてです。これは、単なる学力や知識ではなく、感情や対人関係を適切に理解し、管理しながら社会と関わっていく力を養う学習法です。不登校の背景には、対人関係の悩みや自信の喪失、感情のコントロールの難しさがある場合が多く、SELを学ぶことが状況改善の大きな助けになると考えています。


目次


ソーシャル・エモーショナル学習(SEL)とは?

ソーシャル・エモーショナル学習(Social Emotional Learning、以下SEL)は、1960年代にイェール大学の研究プロジェクトとして始まりました。その後、アメリカのCASEL(Collaborative for Academic, Social, and Emotional Learning)が中心となり、学校教育の中にSELを取り入れることを推進しています。SELは単なる「情緒教育」ではなく、自己理解、感情のコントロール、対人スキル、意思決定能力を統合的に育むプログラムです。

日本ではまだ広く浸透していませんが、欧米では教育現場だけでなく、企業研修や社会人向けのプログラムにも取り入れられています。なぜなら、どんなに優れた知識や技術を持っていても、感情を適切に扱えず、人間関係を築けなければ、社会の中で成功することが難しいからです。

特に、不登校の子どもたちにとってSELは重要な学習要素です。学校に行けなくなった背景には、対人関係でのストレスや自己肯定感の低下、感情のコントロールの難しさがあることが多いため、それらを改善するための具体的な手段としてSELが有効なのです。


SELの5能力

① Self Awareness(自己の理解)

自己の理解とは、自分の感情や思考、強みや弱みを客観的に認識する力のことです。不登校の子どもたちは、自分の気持ちをうまく言葉にできなかったり、「なぜ学校に行きたくないのか」が分からなかったりすることが多くあります。

例えば、ある日突然「学校に行きたくない」と子どもが言ったとしても、その理由が明確に説明されることは少ないでしょう。しかし、よく話を聞いてみると、「友達との関係がうまくいかない」「授業が分からないことで自信をなくしている」「先生に怒られるのが怖い」といった背景が見えてくることがあります。

親としてできることは、子どもの感情に寄り添いながら「今、どんな気持ちなのか」を言語化するサポートをすることです。「何が嫌なの?」と問い詰めるのではなく、「最近、学校でどんなことがあった?」と出来事を話しやすい形で聞くことが大切です。子ども自身が自分の感情を理解し、それを適切に表現できるようになることで、不登校の原因の一端を明らかにし、解決に向けた第一歩を踏み出せるのです。

② Self Management(セルフマネジメント)

セルフマネジメントとは、自分の感情をコントロールし、ストレスに適応する力のことです。不登校の子どもたちは、ストレスに対処する手段を持たないまま問題に直面し、結果的に「学校に行かない」という選択をしてしまうことがあります。

ここで重要なのは、「感情をコントロールする力」は生まれつき備わっているものではなく、学習によって身につけられるということです。例えば、大人でも仕事で失敗したときに「もうダメだ」と落ち込むことがありますが、「次はこうしよう」と前向きに切り替えられる人もいます。その違いは、生まれつきの性格ではなく、これまでに培った「感情の管理スキル」によるものなのです。

親ができるサポートの一つとして、「感情の整理法」を教えることが挙げられます。例えば、「気持ちが落ち込んだときは、深呼吸をしてからお気に入りのノートに気持ちを書き出す」「嫌なことがあった日は、お風呂に入ってリラックスする」など、具体的な対処法を一緒に考えることで、子ども自身が感情をコントロールする力を育むことができます。

③ Social Awareness(社会や他者の理解)

社会や他者の理解とは、自分以外の人々の感情や立場を理解し、共感する力のことです。不登校の子どもたちにとって、この力は特に重要です。なぜなら、不登校に至る原因の多くは、他者との関係性の中で生まれる「分かってもらえない」「どう接していいか分からない」といった悩みだからです。

学校は、勉強を学ぶ場であると同時に、集団の中で人間関係を築く場でもあります。しかし、クラスの中で「空気が読めないと言われる」「友達と話が合わない」「先生が何を考えているのか分からない」と感じる子どもにとって、学校は居心地の悪い場所になりがちです。その結果、「学校に行かなくていいなら、楽だ」と思い、不登校が長期化することもあります。

では、どうすれば社会や他者の理解を深めることができるのでしょうか?

まず、親ができることは「共感の経験を積ませる」ことです。たとえば、「友達が怒っていたら、どんな気持ちになっているのかな?」「先生が厳しく指導するのは、どんな理由があると思う?」と、日常の出来事を一緒に考える時間を持つのも有効です。ポイントは、子どもが自分の意見を言いやすい雰囲気を作ること。正しい答えを求めるのではなく、「そんなふうに感じたんだね」と受け止めることが大切です。

また、映画や本を活用するのもおすすめです。フィクションの世界には、さまざまな立場の人々が登場します。たとえば、『ズートピア』のような映画は、「偏見を持たれる側」「誤解をされる側」の視点を学ぶのに最適です。物語を通じて「もし自分がこの立場だったら?」と考える習慣をつけることで、子どもは少しずつ他者の気持ちを理解する力を養っていくのです。

④ Relationship Skills(対人関係スキル)

対人関係スキルとは、人と適切にコミュニケーションをとり、良好な関係を築く能力です。不登校の子どもたちは、「どう話せばいいのか分からない」「話しかけてもらえないと、自分からは話せない」という悩みを抱えていることが多いです。

ここで重要なのは、「コミュニケーション能力は、生まれつきの才能ではなく、学習できるスキルである」ということです。たとえば、人と会話をするときの基本として「相手の話をよく聞く」「自分の気持ちをシンプルに伝える」といったことを、練習によって身につけることができます。

親ができるサポートとしては、「会話の練習をする」ことが挙げられます。たとえば、子どもが友達と話すのが苦手なら、「どうやって話しかければいいか、一緒に考えてみよう」とロールプレイをするのも有効です。「〇〇君が好きなスポーツの話をしてみるのはどう?」と具体的なアドバイスをすることで、子どもは会話の糸口をつかみやすくなります。

また、「あいづちの打ち方」や「相手の話を広げる質問の仕方」を学ぶことも大切です。「へえ、そうなんだ!」と相手の話に興味を持つ姿勢を示すだけで、会話はスムーズに進むようになります。こうしたスキルは、学校だけでなく将来の職場や社会生活でも役立つ重要な能力です。

⑤ Responsible Decision Making(責任ある意思決定)

責任ある意思決定とは、自分の選択が周囲にどのような影響を与えるかを考え、適切な判断を下す力のことです。不登校の子どもたちにとって、このスキルは「学校に行くかどうか」を自分で考える上で非常に重要です。

「学校に行きたくない」という気持ちは、決して否定されるべきものではありません。しかし、「行かない」という選択を続けることで、将来的にどんな影響があるのかを、子ども自身が理解することも必要です。

ここで大切なのは、「子どもに考えさせる機会を作る」ことです。たとえば、「学校に行かないことで、困ることは何があるかな?」「行った場合、少しでも楽になる方法はある?」と、一緒に選択肢を考える時間を持つことが効果的です。「どうしたい?」と問いかけることで、子どもは自分の行動について責任を持つ意識が芽生えます。

また、小さな成功体験を積むことも重要です。「今日は玄関まで行けた」「学校の前まで行けた」という一歩一歩の成功を積み重ねることで、「やればできる」という自信につながります。この積み重ねが、最終的に再登校への道を開くことになるのです。


「成長マインドセット」の重要性

不登校の子どもたちが再び社会に向き合い、自分の未来に希望を持つためには、「成長マインドセット(Growth Mindset)」の獲得が欠かせません。これは、アメリカの心理学者キャロル・ドゥエックが提唱した概念で、「能力や才能は生まれつき決まっているものではなく、努力と工夫によって成長できる」という考え方を指します。

この考え方の対極にあるのが「固定マインドセット(Fixed Mindset)」です。これは、「自分の能力には限界があり、努力しても変わらない」という思い込みのことを指します。不登校の子どもたちは、過去の失敗体験や他者との比較の中で、「どうせ自分はできない」「頑張っても意味がない」と感じてしまい、固定マインドセットに陥っていることが多いのです。

この章では、不登校の子どもに「成長マインドセット」を持たせることの重要性と、それを育むための親の関わり方について詳しく解説します。


なぜ「成長マインドセット」が不登校の克服に必要なのか?

不登校になる理由はさまざまですが、多くの子どもが「失敗の恐怖」「自信の喪失」「周囲との比較」によって学校に行くことをためらっています。

例えば、学校の授業についていけなくなった子どもは、「自分は勉強ができない」「もう取り返しがつかない」と考え、努力する気力を失います。また、友人関係でのトラブルを経験した子どもは、「自分は人と関わるのが下手だ」「どうせまた傷つく」と思い込み、新しい関係を築くことを避けるようになります。

しかし、成長マインドセットを持つことで、こうした思考を「今はできなくても、努力すれば変わる」「失敗は学びのチャンス」というポジティブなものに変えることができます。これにより、不登校の子どもが「少しずつでも前に進んでみよう」と思えるようになるのです。

「成長マインドセット」を持つ子どもと持たない子どもの違い

固定マインドセット成長マインドセット
「自分には才能がない」「今はできないけれど、努力すればできるようになる」
「勉強しても意味がない」「勉強を続ければ少しずつ成長できる」
「友達ができなかったから、もうダメだ」「前はうまくいかなかったけれど、次は違う方法を試してみよう」
「失敗は恥ずかしいこと」「失敗は成長のために必要な経験」

この違いが、長期的な行動の変化を生み出します。

では、親として子どもに「成長マインドセット」を育むためには、どのような関わり方をすればよいのでしょうか?


親ができる「成長マインドセット」の育成方法

① 結果ではなく「努力のプロセス」を認める

不登校の子どもは、「結果」によって評価されることに敏感です。学校のテストの点数や、友人関係の成功・失敗ばかりが重要視されると、「自分はうまくできないからダメなんだ」と思い込んでしまいます。

親として意識すべきことは、結果ではなく、努力の過程を認めることです。

例えば、テストの点数が悪かったとしても、「この問題に挑戦したことがすごいね」「前回よりも少し解ける問題が増えたね」と、努力したことに目を向ける声かけをしましょう。これによって、子どもは「自分の頑張りには意味がある」と感じられるようになります。

② 失敗を「学びの機会」として捉える

不登校の子どもたちは、過去の失敗経験によって「もう傷つきたくない」と思い、新しいことに挑戦するのを避けることがあります。

このとき親ができるのは、「失敗を否定しないこと」です。「なぜこんなこともできないの?」と責めるのではなく、「うまくいかなかったけれど、次はどうすればいいと思う?」と、解決策を一緒に考える姿勢を持ちましょう。

また、「親自身が失敗をポジティブに捉える姿勢を見せる」ことも大切です。「今日、仕事でミスをしちゃったけど、次はこうしようと思うんだ」と話すことで、子どもも「失敗しても大丈夫なんだ」と感じることができます。

③ 「まだできない」を受け入れる習慣をつける

「できない」という言葉を「まだできない(yet)」という言葉に変えるだけで、子どもの捉え方は大きく変わります。

例えば、「算数が苦手だ」と言う子どもには、「今は苦手かもしれないけど、練習すれば得意になるかもしれないね」と伝えてみましょう。こうすることで、「できない自分」ではなく、「成長途中の自分」として、自分自身を受け入れられるようになります。

④ 小さな成功体験を積み重ねる

成長マインドセットを持つためには、「できた!」という経験を積み重ねることが重要です。

不登校の子どもにとっては、「学校に行くこと」自体のハードルが高いため、いきなり再登校を目指すのではなく、「少しずつの成功」を重ねていくことがポイントです。

例えば、
✅ 今日は朝、制服を着ることができた
✅ 学校の近くまで行ってみた
✅ 友達にLINEでメッセージを送れた

このような「小さな成功」を認めることで、子どもは「やればできる」という感覚を持つようになります。


成長マインドセットがもたらす変化

成長マインドセットを持つことで、不登校の子どもたちには次のような変化が生まれます。

  1. 「どうせ無理」が「やってみよう」に変わる
  2. 失敗を怖がらなくなり、新しいことに挑戦できる
  3. 小さな成功体験が積み重なり、自信が生まれる

この考え方が根付けば、学校復帰だけでなく、将来の仕事や人間関係の中でも、「挑戦する力」を持ち続けることができます。


まとめ

SELを家庭で育むためには、特別な教育プログラムが必要なわけではありません。親が日常の中で「感情を言葉にする」「小さな成功体験を積ませる」「共感を大切にする」「成長マインドセットを意識する」ことが、SELの能力を伸ばすカギになります。

そして、SELが育まれることで、不登校の子どもたちは「自分の気持ちを理解できるようになる」「他人との関係を築く力が身につく」「挑戦する勇気が持てる」といった変化を経験し、少しずつ社会と向き合う力をつけていきます。

焦らず、一歩ずつ。子どもが安心して成長できる環境を作ることこそ、親ができる最も大切なサポートです。

最後に、不登校の克服には「親だけで抱え込まないこと」も大切です。家族だけでは難しいと感じるときは、専門家の力を借りながら、子どもに合った支援を見つけていきましょう。ToCo株式会社では、不登校の子どもたちが少しずつ社会との接点を持てるようサポートを行っています。一人で悩まず、ぜひ相談してください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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不登校のワクチンとなる自尊心とは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの保護者や子どもたちと向き合ってきました。

不登校の原因はさまざまですが、その根底に共通して見られるのが「自己評価の低さ」です。子どもが「自分には価値がない」「どうせ自分なんてダメだ」と思い込んでしまうと、学校生活の中で感じるストレスが大きくなり、そのストレスを乗り越えることが難しくなります。そして、次第に学校に行くことへの抵抗感が強まり、不登校へとつながってしまうのです。

では、なぜ不登校の子どもは自己評価が低くなりやすいのでしょうか? そして、自己評価の低さを克服し、自尊心を育てるために、親としてどのように関わることができるのでしょうか? 本稿では、不登校を防ぐための「自尊心の育み方」について、具体的な方法をお伝えしていきます。


目次


第一章:不登校の子どもの自己評価の低さ

不登校の子どもたちは、驚くほど自己評価が低い傾向にあります。「どうせ自分なんて」「また失敗するに決まっている」「自分は何をやってもダメだ」といった言葉が口癖になっていることが多く、物事に対して消極的になりがちです。こうした思考が続くと、子どもは自分に対する信頼を失い、新しいことに挑戦する気力をなくしてしまいます。

1-1. 自己評価とは何か?

「自己評価」とは、簡単に言えば「自分の能力や価値に対する認識」のことです。たとえば、「自分は数学が得意だ」と思っている子どもは、数学の問題に自信を持って取り組めます。しかし、「自分は計算が苦手だ」と思っている子どもは、問題を見るだけで不安を感じ、解く前から「どうせできない」と決めつけてしまうことがあります。

自己評価には、二つの側面があります。

  1. 能力に対する評価:「自分は何ができるのか?」という認識。勉強ができる、スポーツが得意、人付き合いが上手など。
  2. 存在に対する評価:「自分には価値があるのか?」という認識。誰かに愛されている、必要とされている、役に立っているなど。

自己評価が低い子どもは、このどちらの側面でも否定的な考えを持ちやすくなります。たとえば、成績が下がると「自分は勉強ができないダメな人間だ」と思い込み、友達とのトラブルがあると「自分は嫌われている」と感じてしまいます。

1-2. 自己評価の低さが不登校につながる理由

自己評価の低い子どもは、学校生活でのさまざまな場面で不安を感じやすくなります。たとえば、以下のような状況が考えられます。

こうした不安が積み重なることで、学校に行くこと自体が大きなストレスになり、「学校に行きたくない」「休みたい」という気持ちが強くなっていきます。

さらに、自己評価が低い子どもは、失敗を極端に恐れる傾向にあります。「失敗=自分の価値の低下」と感じてしまうため、失敗するくらいなら何もしないほうがマシだと考えてしまうのです。その結果、新しいことに挑戦する機会が減り、さらに自己評価が低くなるという悪循環に陥ります。

1-3. 自己評価の低さから不登校になった子どもの例

Aくん(小学5年生)は、もともと勉強が得意で、クラスでも目立つ存在でした。しかし、ある日、国語の授業で意見を求められたとき、答えた内容がクラスメートに笑われてしまいました。先生は特に気にする様子もなく授業を進めましたが、Aくんにとっては大きなショックでした。

「自分の考えは間違っているのかもしれない」
「もう発言しないほうがいい」

そう思うようになったAくんは、それ以来、授業で手を挙げなくなりました。すると、テストの点数が少しずつ下がり始め、「自分は勉強ができないんだ」と思うようになりました。それが積み重なり、最終的には「学校に行きたくない」と言い出すようになったのです。

Aくんのように、ちょっとした出来事がきっかけで自己評価が低くなり、それが不登校につながるケースは非常に多いです。特に、真面目で責任感の強い子どもほど、自己評価の低下が大きな影響を及ぼしやすいのです。

1-4. 子どものサイン

子どもが自己評価を低くしているとき、以下のような言動が見られることが多くなります。

こうしたサインに気づいたら、親は早めに子どもの気持ちに寄り添い、サポートしていくことが大切です。自己評価の低さは放っておくとどんどん悪化し、不登校が長期化する原因になってしまうからです。


第二章:自己評価が低いとストレスが増え、乗り越えにくくなる

2-1. ストレスとは何か?

ストレスとは、心や体にかかる負担のことです。人は日常生活の中でさまざまなストレスを受けますが、適度なストレスは成長の糧にもなります。しかし、過度なストレスが続くと、心が疲れ果ててしまい、行動する気力を失ってしまうのです。

特に、子どもにとって学校はストレスが発生しやすい環境です。授業、宿題、友達付き合い、先生との関係、部活動――学校生活のあらゆる場面でストレスが生じる可能性があります。

ストレスを受けやすい子と受けにくい子の違い

同じ出来事が起こっても、子どもによってストレスの感じ方は大きく異なります。たとえば、授業で答えを間違えたときの反応を見てみましょう。

  • 自己評価が高い子:「間違えちゃったけど、次は気をつけよう!」
  • 自己評価が低い子:「やっぱり自分はダメだ……もう二度と発言したくない」

自己評価が高い子は、ミスを「一時的なもの」として受け止め、前向きに考えることができます。しかし、自己評価が低い子は、「間違えた自分は価値がない」と極端に考えてしまい、深いダメージを受けてしまうのです。


2-2. 自己評価が低いとストレスを感じやすくなる理由

自己評価の低い子どもは、学校生活の中で遭遇するさまざまな出来事を「自分に対する否定」として受け止めがちです。その結果、通常なら軽く受け流せるようなことでも、大きなストレスとなってしまいます。

1. 他人の言動を過剰に気にする

自己評価が低い子どもは、周囲の評価を過剰に気にする傾向があります。友達が何気なく言った一言を「自分は嫌われている」と解釈したり、先生のちょっとした指摘を「怒られた」「見放された」と受け取ってしまうことがあります。

2. 小さな失敗を「致命的なミス」だと考える

自己評価が低い子どもは、「失敗=価値がない」と考えてしまいがちです。そのため、小さなミスでも大きなショックを受け、必要以上に落ち込んでしまいます。


2-3. 自己評価が低いとストレスを乗り越えにくくなる理由

自己評価が低い子どもは、ストレスを乗り越える力も弱くなります。なぜなら、「自分にはできる」という自己信頼がないため、困難に直面したときに「無理だ」とすぐに諦めてしまうからです。

1. 「どうせ無理」と思い込み、行動できない

自己評価が低い子どもは、新しいことに挑戦する前から「どうせできない」と決めつけてしまいます。そのため、何か問題が起こったときに、解決しようとする前に諦めてしまうことが多いのです。

2. 「自分の力で解決できる」という感覚がない

自己評価が低い子どもは、「困難な状況に直面したときに、自分の力で乗り越えられる」という感覚(自己効力感)が低くなっています。そのため、少しでも難しい問題にぶつかると、すぐに助けを求めたり、逃げてしまうことが多くなります。


では、どうすれば自己評価を高め、ストレスを乗り越えやすい子になるのでしょうか? その鍵を握るのが「自尊心」です。


第三章:自己評価と自尊心の関係

3-1. 自己評価と自尊心の違いとは?

「自己評価」と「自尊心」は似ているようで異なる概念です。簡単に言うと、

  • 自己評価:「自分は何ができるか?」(能力に対する評価)
  • 自尊心:「自分には価値があるか?」(存在に対する評価)

たとえば、テストで良い点を取ったとき、自己評価の高い子は「自分は勉強が得意だ」と考えます。一方で、自尊心の高い子は「点数が悪くても、自分には価値がある」と考えることができます。

つまり、自己評価が高くても、自尊心が低ければ「うまくいかないと自分には価値がない」と思い込んでしまいますし、逆に自尊心が高ければ「失敗しても、自分は大切な存在だ」と思えるのです。


3-2. 自己評価が高くても自尊心が低いとどうなるか?

ここで重要なのは、「自己評価が高い=自尊心が高い」というわけではないということです。たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。

ケース1:優等生タイプの子ども

成績優秀で、先生や親からも「すごいね」「頑張り屋だね」と褒められることが多く、自己評価は比較的高い。しかし、「良い成績を取らないと自分には価値がない」と考えている。そのため、少しでも成績が下がると「自分はダメだ」と強く落ち込み、自己否定の感情に襲われてしまう。

ケース2:スポーツが得意な子ども

運動が得意で、リレーの選手にも選ばれるほど。しかし、運動会当日、緊張で思うように走れず、チームが負けてしまいまった。「私は足が速いから価値がある」と思っていたため、失敗した途端に「私なんていらない」と極端に落ち込んでしまう。

こうした子どもたちは、一見すると自己評価が高そうに見えますが、実際には「条件付きの自己評価」になっており、根本的な自尊心が育っていないことがわかります。


3-3. 自尊心が低いとどうなるか?

自尊心が低いと、どんなに頑張って成果を出しても、自分を肯定できなくなります。その結果、以下のような思考に陥りがちです。

このような状態が続くと、学校での小さな出来事が大きなダメージになり、やがて不登校につながってしまうのです。


3-4. 自己評価よりも自尊心を育てることが大切

ここまでの話をまとめると、不登校を防ぐためには、自己評価を高めるだけでなく、「自尊心を育てる」ことが最も重要だと言えます。自尊心がしっかりと育っていれば、子どもはたとえ失敗しても「それでも自分には価値がある」と思えるようになり、ストレスを乗り越える力がつくのです。

では、どうすれば自尊心を育てることができるのでしょうか?


第四章:自尊心の発育は、親が鍵

子どもの自尊心を育てるためには、どのようなことが必要なのでしょうか?その鍵を握っているのは「親の関わり方」です。

親の何気ない言葉や行動が、子どもの自尊心を育てる土台を作ります。この章では、自尊心を育むために親ができる具体的な関わり方を詳しく解説していきます。


4-1. 親の関わりが自尊心を決める理由

子どもの自尊心は、生まれつき決まっているわけではありません。それは「人との関わりの中で育まれるもの」です。そして、子どもにとって最も身近な存在が「親」なのです。

子どもは、幼少期から親の言葉や態度を通じて「自分はどんな存在なのか?」を学んでいきます。

たとえば、次のような関わりをされた子どもは、それぞれ異なる自尊心を持つようになります。

  • 親が「あなたは大切な存在だよ」と伝えて育てた子 → 「自分には価値がある」と感じる
  • 親がいつも否定的な言葉を使って育てた子 → 「自分なんてダメだ」と思い込む

子どもがどのように自分を捉えるかは、親の関わり方によって大きく左右されるのです。


4-2. 子どもの自尊心を傷つける親の言動

まず、気をつけたいのは「自尊心を傷つける親の言葉や態度」です。親が悪気なく発した言葉でも、子どもは深く傷つき、「自分には価値がない」と感じてしまうことがあります。

1. 否定的な言葉を頻繁に使う

こうした言葉を頻繁に聞かされた子どもは、「自分はダメな人間だ」と思い込むようになります。特に「○○ちゃんと比べて…」という言葉は、子どもの自己評価を下げる大きな要因となります。

2. 結果だけを評価する

結果だけを評価され続けると、子どもは「良い結果を出さなければ、自分には価値がない」と思うようになります。その結果、失敗を恐れ、新しいことに挑戦する意欲を失ってしまうのです。

3. 子どもの話を途中で遮る

子どもが話しているときに、親が途中で話を遮ったり、否定的な言葉を返したりすると、「自分の話は聞いてもらえない」と感じるようになります。これが続くと、子どもは「どうせ話しても無駄だ」と思い、自分の気持ちを表現することをやめてしまうのです。


4-3. 自尊心を育てるための親の関わり方

では、子どもの自尊心を育てるためには、どのような関わり方が必要なのでしょうか?

1. 子どもの存在そのものを肯定する

子どもは、何かができるから価値があるのではなく、「存在そのものに価値がある」という感覚を持つことが大切です。そのためには、日常的に「あなたがいてくれるだけで嬉しい」というメッセージを伝えることが重要です。

たとえば、次のような言葉を使いましょう。

  • 「○○がいてくれると、お母さん(お父さん)は嬉しいよ」
  • 「大好きだよ」

こうした言葉は、子どもにとって「自分は愛されている」「自分には価値がある」という安心感につながります。そして、言葉をかけなくても、愛情を持って見つめることも大きな効果を生みます。

2. 失敗しても肯定的な声かけをする

子どもが何かに失敗したとき、どのように声をかけるかが重要です。

✔ 良い声かけの例

  • 「失敗しても大丈夫だよ」
  • 「やってみたことが素晴らしいよ」
  • 「次はどうしたらうまくいくかな?」

このように、失敗を責めるのではなく、「次につなげる考え方」を伝えることが、自尊心の成長につながります。

3. 子どもの話を最後まで聞く

子どもが話をするときは、途中で口を挟まず、最後までしっかり聞いてあげることが大切です。

「うんうん」「そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の気持ちは大切にされている」と感じるようになります。

また、「どう思ったの?」「それで、○○はどうしたの?」と質問を投げかけることで、子ども自身が自分の気持ちを整理する力を育てることもできます。

「もううちの子は自信をなくしてしまっている」と感じている親御さんもいるかもしれません。しかし、安心してください。親の関わり方を少しずつ変えていくことで、子どもの自尊心は確実に回復していきます。


第五章:自尊心は今からでも回復できる

「うちの子はもう自尊心が低くなってしまっている」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。しかし、自尊心は何歳からでも回復させることができます。たとえ今、子どもが「自分なんて」と思い込んでいたとしても、親の関わり方次第で徐々に自尊心を取り戻すことができます。

この章では、自尊心を回復させる具体的な方法について解説していきます。


5-1. 自尊心を回復させるために親ができること

1. 「結果」ではなく「過程」を褒める

「テストで100点を取ったね、すごい!」といった結果を褒めるのではなく、努力や工夫を褒めるようにしましょう。

例:「一生懸命勉強していたね、その頑張りが素晴らしいよ」

結果だけを褒めてしまうと、子どもは「良い結果を出さなければ価値がない」と思い込んでしまいます。しかし、努力や工夫を褒めることで、「頑張ることそのものが大切だ」と学び、自尊心が回復していきます。

2. 小さな成功体験を積ませる

大きな目標ではなく、日常の小さな成功体験を積み重ねることが重要です。たとえば、

  • 「今日は食器を運んでくれて助かったよ」
  • 「お風呂掃除してくれたんだね、ありがとう!」

こうした些細な成功体験を通じて、「自分は役に立つ存在だ」と実感させることが大切です。

3. 子どもの話を「最後まで」聞く

子どもが話をしているとき、「でもね」「それは違うよ」と途中で遮っていないでしょうか? 自尊心が低い子どもほど、「自分の話なんて聞いてもらえない」と感じやすいため、話を最後まで聞いてあげることが大切です。

「うんうん、そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の考えを大切にしてもらえている」と感じられるようになります。


5-3. 親の変化が子どもに与える影響

親がポジティブな言葉を使い、自分自身の価値を認めている姿を見せることで、子どもも自然と同じ考え方を身につけます。

たとえば、親自身が失敗したときに「もうダメだ」と言ってしまうと、子どもも「失敗=価値がない」と思ってしまいます。逆に、「まあ、失敗しても次頑張ればいいよね」と前向きな姿勢を見せると、子どもも同じように考えるようになります。

子どもの自尊心を回復させるためには、親自身がまず「ありのままの自分を認めること」も大切なのです。


第六章:自尊心を高めやすい家庭とは?

前章では、子どもの自尊心は今からでも回復できること、そして親の関わり方が大きな鍵を握ることをお話ししました。しかし、子どもは家庭という環境の中で育つため、親がどれだけ頑張っても、家庭全体の雰囲気が自尊心を育みやすいものでなければ、根本的な改善は難しくなります。

そこで、次に「自尊心を高めやすい家庭の特徴」について詳しく掘り下げていきます。普段の生活の中で取り入れられる小さな工夫から、家族関係の見直しまで、具体的なポイントを解説します。


6-1. 甘やかさず、褒めることができる家庭

自尊心を育てるためには、褒め方が非常に重要です。ただし、何でもかんでも褒めればよいわけではありません。「甘やかし」と「適切な褒め方」はまったく別のものです。

1. 甘やかしとは何か?

「甘やかし」とは、子どもが本来向き合うべき問題や課題を親がすべて取り除いてしまうことです。たとえば、

  • 「宿題をやらなくてもいいよ」と言ってしまう
  • できなかったことをすぐに親が手助けしてしまう
  • 失敗しても、子どもに責任を負わせずに周囲のせいにする

こうした対応を続けていると、子どもは「努力しなくても何とかなる」「自分は何もしなくても親が守ってくれる」と学習し、自己肯定感が育たなくなります。

2. 正しい褒め方とは?

自尊心を育てるためには、結果だけでなく「努力や工夫」を褒めることが重要です。

✔ 良い褒め方の例

  • 「最後まで頑張ったね!」(努力を認める)
  • 「工夫してやってみたんだね」(プロセスを評価する)
  • 「失敗しても挑戦したのがすごい!」(チャレンジ精神を認める)

✖ 良くない褒め方の例

  • 「すごい!天才!」(漠然と褒める)
  • 「なんでもできるね!」(現実的でない評価)

褒めることで自尊心は高まりますが、それが「条件付きの評価」になってしまうと逆効果です。たとえば、「100点を取ったから偉いね」と言われ続けると、「100点を取らないと自分の価値がない」と思い込んでしまいます。そうではなく、「一生懸命勉強したことが素晴らしい」といったプロセスを評価することが大切なのです。


6-2. 家族で食事を一緒に取ることの重要性

「食事を一緒に取ること」が、自尊心の発育に深く関わっていることをご存じでしょうか? 実は、家庭での食事回数が多い子どもほど自己肯定感が高いという研究結果があります。

1. 食事がもたらす安心感

食事の時間は、家族がリラックスして会話できる貴重な時間です。子どもは、「家族と一緒に食卓を囲む」ことで「自分は受け入れられている」「安心できる場所がある」と感じることができます。

たとえば、毎日「今日、学校でどんなことがあった?」と聞かれるだけでも、子どもは「自分は話を聞いてもらえる存在なんだ」と思えるようになります。こうした小さな積み重ねが、自尊心を高める要因となるのです。

2. 食事中の会話が子どもの心を開く

不登校の子どもは、「どうせ自分の話なんて誰も聞いてくれない」と思い込んでいることが少なくありません。そのため、食事の時間を活用して、少しずつ子どもの話を引き出すことが大切です。

たとえば、以下のような質問をしてみてください。

  • 「今日はどんなことがあった?」
  • 「最近、気になっていることはある?」
  • 「学校の○○先生ってどんな先生?」

子どもが話しやすい雰囲気を作ることで、「自分の気持ちを話してもいいんだ」と感じるようになり、少しずつ自尊心が回復していきます。


6-3. 夫婦仲が険悪ではない(シングルの場合は親の安定が重要)

家庭の雰囲気が、子どもの自尊心に与える影響は計り知れません。特に、夫婦仲が険悪な家庭では、子どもが「自分のせいで喧嘩しているのでは?」と感じ、深い自己否定感を抱くことがあります。

1. 夫婦仲が険悪な場合の影響

夫婦喧嘩が多い家庭では、子どもは次のような感情を抱きやすくなります。

  • 「お母さん(お父さん)が苦しそうなのは、自分のせいかもしれない」
  • 「自分さえいなければ、もっと仲良くなるのかな」
  • 「家庭が不安定だから、学校にも安心して行けない」

このように、家庭の不安定さが子どもの自尊心を低下させる大きな要因になってしまいます。

2. シングル家庭の場合のポイント

一方、シングル家庭では「親の安定」が子どもの安心感に直結します。親が疲れ果てていたり、不安を抱え込んでいたりすると、子どもはそれを敏感に感じ取ってしまいます。

そのため、シングル家庭の場合は「親自身が心を安定させること」が非常に重要になります。たとえば、

  • 親が自分の趣味や楽しみを持つ
  • 「子どもを守らなきゃ」と思いすぎず、肩の力を抜く

親が笑顔でいることが、子どもにとって最大の安心材料なのです。


6-4. 自尊心を高めるために今日からできること

ここまで、自尊心を高めやすい家庭の特徴についてお話ししてきました。最後に、今日から実践できる具体的な方法をいくつかご紹介します。

今日からできることリスト

  1. 毎日、子どもに「おはよう」「おやすみ」を笑顔で伝える
  2. 結果ではなく過程を褒める(努力や工夫を認める)
  3. 1日1回は子どもの話をじっくり聞く(途中で口を挟まない)
  4. 一緒に食事を取る時間を増やす
  5. 親自身も「失敗しても大丈夫」と前向きな姿勢を見せる

自尊心を高めやすい家庭とは、特別なことをする必要はありません。大切なのは「子どもが安心できる環境を作ること」です。

「うちの子はもう自信をなくしてしまっている」と感じている方も、今日から少しずつ変えていけば、必ず子どもの心に届きます。焦らず、一歩ずつ取り組んでみてください。


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不登校の日々(中学2年生の体験)

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。今回は、ToCoで支援させていただいた中学2年生のKさんから、不登校中の生活について語っていただきました。


目次


不登校のきっかけ

私は、中学2年生のときに学校に行けなくなりました。

それまでは、ごく普通の生徒だったと思います。小学生のころは友達とも仲がよく、特に大きな悩みもありませんでした。成績も平均的で、先生や親から怒られるようなこともなく日々を送っていました。

でも、中学に上がってから、少しずつ学校が嫌な場所になっていきました。

きっかけは、部活動の人間関係でした。私は運動が得意ではなかったけれど、友達に誘われて運動部に入りました。1年生のときは、先輩の言うことを聞いていればよかったし、そこまできついと感じることはありませんでした。でも、2年生になって後輩が入ってくると、私たちが指導する立場になりました。

「Kって真面目すぎるよな」

「いちいち細かいんだよ」

最初は冗談だと思いました。みんなが笑っていたし、私も「そうかな?」と苦笑いで流していました。でも、それが毎日のように続くようになり、次第に雰囲気が変わっていきました。

練習中にわざと私にだけきつい指示が飛んできたり、準備や片付けの仕事を押し付けられたりするようになりました。ロッカーに入れておいた靴がなくなっていたこともありました。あとでゴミ箱の中から見つかったけれど、そのとき私は何も言えませんでした。

「気のせいかもしれない」

「ただのふざけあいかもしれない」

そう思って、できるだけ気にしないようにしていました。でも、あるとき気づいたんです。私が話しかけても、みんな目を合わせようとしない。ふとした瞬間に、クスクスと笑われることが増えたことに。

「私、嫌われてるのかもしれない」

そう思ったとき、胸がぎゅっと締めつけられるような感覚がしました。

教室でも同じようなことが起きるようになりました。朝、教室に入ると、誰とも目を合わせられない。私が近づくと、急に会話が止まる。プリントを配ると、私のだけ机に投げられる。

友達だと思っていた子たちも、最初は普通に話してくれていました。でも、いじめが続くうちに、みんなが少しずつ距離を取るようになっていきました。目が合うとすぐにそらされます。

このままではだめだと思い、私は担任の先生に相談しました。

勇気を振り絞って、休み時間に職員室へ行きました。

「先生、ちょっといいですか?」

声が震えていたと思います。先生は書類に目を通しながら、「どうした?」と顔を上げました。

「…私、最近クラスで無視されたり、持ち物を隠されたりしてて…。その、部活でも…」

先生はしばらく黙っていました。そして、少し考えるようなそぶりを見せたあと、ため息をついて言いました。

「Kは気にしすぎなんじゃないか?」

私は言葉を失いました。

「そんなの、みんな経験することだよ。これくらいのことで落ち込んでたら、社会に出たときに大変だよ」

先生は軽く笑いました。冗談のつもりだったのかもしれません。でも、私には笑えませんでした。

「もっと強くならないとダメだよ。Kは真面目だから、ちょっとしたことで気にしちゃうんだろう?」

私は何も言えませんでした。先生に相談すれば、何か変わるかもしれないと思っていたのに。「先生も助けてくれないんだ」と思ったら、体の力が抜けていきました。

「…はい」

それだけ言って、私は職員室を出ました。

次の日から、私は誰にも相談しなくなりました。もう、どうしようもないんだと思いました。私はただ、耐えるしかないんだと。

でも、耐えることができませんでした。

ある朝、学校に行こうと玄関に立ったとき、体が動かなくなりました。

「行かなきゃ」と思うのに、足が前に出ません。心臓がドキドキして、息が苦しくなって、涙があふれてきました。お母さんが「大丈夫?」と心配そうに私の肩に手を置きました。

「…お腹が痛い」

私はそう言うのが精一杯でした。

「今日は休んでいいよ」

お母さんの言葉に、ほっとした気持ちと、罪悪感が入り混じりました。でも、その日は一日中布団の中にいて、何も考えたくなかった。

翌日も、またその翌日も、私は学校に行くことができませんでした。

「学校に行かなきゃ」と思えば思うほど、体が動かなくなりました。制服に着替えることすらできない。時計の針が進むたびに、焦りと不安でいっぱいになって、最終的には布団の中に逃げ込んでしまう。

お母さんは、「もう少し休んでいいよ」と言ってくれました。でも、お父さんは何も言いませんでした。私は、その無言の圧力が怖くて、家の中でもリビングに出るのが嫌になりました。

そうして私は、部屋に閉じこもるようになりました。

部屋から出れない日々

私は、ある日突然、部屋から出られなくなりました。

最初の頃は、学校を休んでしまった罪悪感がありました。でも、どうしても行く気になれなかったんです。朝になると気持ちが悪くなって、お腹が痛くなって、制服に着替えることすらできない。お母さんは「今日は休んでいいよ」と言ってくれました。でも、何日も続くうちに、私はリビングにいるのも辛くなって、自然と部屋に閉じこもるようになりました。

お母さんは、最初のうちは毎日「大丈夫?」「何か食べる?」と優しく声をかけてくれました。でも、お父さんは何も言いませんでした。学校に行かない私のことをどう思っていたのか、表情からは読み取れませんでした。

お父さんと目が合うと、何も言われなくても責められているような気がしました。だから、リビングに行くのが怖くなって、部屋の中だけで過ごすようになりました。

お腹がすいたら、夜中にこっそりキッチンへ行って、冷蔵庫の中のものをつまんでいました。夜の方が家族と顔を合わせることがなくて安心できたし、そのうち夜更かしをして、朝になったら眠る。そんな毎日を繰り返していました。

ある夜、布団にくるまってスマホをいじっていると、リビングから両親の喧嘩する声が聞こえてきました。

「あなたがもっとちゃんと関わってあげないから!」

「甘やかしてるのはお前だろ!」

私は耳を塞ぎました。心臓がドキドキして、体が硬くなるのがわかりました。私のせいで、家族が喧嘩している。私は家族の重荷になっている。

そう思うと、どこにも居場所がない気がして、涙がこぼれました。でも、泣いたところで何も変わらない。だから、ただひたすら目を閉じて、この時間が早く過ぎるのを待つしかありませんでした。

部屋で考えていたこと

部屋の中でひとりでいる時間が増えると、私は自分のことばかり考えるようになりました。

「どうして私は普通に学校に行けないんだろう?」

「どうして、いじめられても言い返せなかったんだろう?」

「なんで、周りの人みたいに、何も気にせず過ごせないんだろう?」

そんなことをずっと考えていました。考えたところで答えは出ないのに、頭の中ではずっと同じことがぐるぐる回っていました。

「私が弱いからだ」

「私がダメな人間だから、こうなったんだ」

「こんなことで悩んでるのは、私だけかもしれない」

そう思うたびに、どんどん自分が嫌いになりました。私がもっと強ければ、こんなふうにならなかったのに。私がもっとちゃんとできていれば、家族にも迷惑をかけずに済んだのに。

時々、スマホで「不登校」について検索しました。自分と同じように学校に行けなくなった人がいないか知りたかったんです。

いろいろな人の体験談を読んで、「私と同じだ」と思うこともあれば、「この人は頑張って学校に戻れたのに、私はダメなままだ」と落ち込むこともありました。

「もうこのままでいいや」と思うことも増えてきました。学校に行かなくても、スマホを見ていれば時間は過ぎる。現実を見なければ、嫌なことを考えなくて済む。でも、そんな生活を続けていると、ふとした瞬間に「このままで本当にいいのか?」と思うこともありました。

何かを変えなきゃいけない。でも、どうしたらいいのかわからない。

部屋の中で、私はただ時間が過ぎていくのを眺めていました。

親の呼びかけ

そんなある日、部屋にこもっている私に、お父さんが声をかけてきました。

「とりあえず、ご飯は一緒に食べよう」

それまで、ほとんど私に何も言わなかったお父さんが、急にそんなことを言うなんて驚きました。でも、不思議と「嫌だ」とは思いませんでした。

リビングに行くと、お母さんもいました。二人は特に何も言わず、いつも通りの食卓でした。私は黙ってご飯を食べました。

何か話さなきゃ、と思ったけれど、うまく言葉が出てこなくて、結局何も言えませんでした。でも、誰かと一緒にご飯を食べることが、こんなに安心するものなんだと、そのとき初めて気づきました。

それから、毎日、家族とご飯を食べるようになりました。最初はただ食べるだけだったけど、少しずつ、お母さんやお父さんと話をするようになりました。

ある日、お母さんが「学校の先生と話をしたの」と言いました。

「先生、Kにちゃんと謝りたいって言ってたよ」

先生が謝る? あのとき、「気にしないで強くなれ」って言った先生が?

驚いたけど、心のどこかで「そんなの意味がない」とも思いました。今さら謝られたって、もう私は学校には戻れない。

でも、お母さんは続けました。

「先生ね、いじめた子たちにも話をしたんだって。今、その子たちは処罰を受けて、自宅謹慎中で、復帰したら別のクラスに移るって」

私は何も言えませんでした。罰して欲しかった訳ではないという思いと、もういじめられることはないんだという安心がありました。

私はまだ、学校に戻れる気がしませんでした。でも、お父さんとお母さんが、私のために動いてくれていたことがわかって、心が軽くなった気がしました。

再登校の日

私は、それでもまだ学校が怖かったです。でも、お父さんもお母さんも、何も言わずに、私のことを見守ってくれていました。

そんなある日、ふと思いました。

「学校が全部じゃないんだ」

お父さんとお母さんがいて、話をして、ご飯を食べて。そんな毎日がある。そう思うと、少し気が楽になりました。

そして、ある朝、「ちょっと行ってみようかな」と思ったんです。

まだ不安だったけれど、お母さんが「行ってらっしゃい」と笑顔で言ってくれて、それだけで少し安心しました。

学校の門の前で、深呼吸をして、一歩踏み出しました。

高校生の後ろ姿

まとめ

Kさんのお話を聞いて、不登校という問題の本質について改めて考えさせられました。

Kさんのケースのように、いじめがきっかけで学校に行けなくなる子どもは少なくありません。さらに、勇気を出して相談した先生が真剣に受け止めてくれなかったことは、Kさんの心に深い傷を残しました。学校に限らず、相談を受ける側がどれだけ子どもの気持ちを受け止められるかによって、その後の選択肢は大きく変わります。

また、家庭の対応も子どもにとって大きな影響を与えます。Kさんのお母さんは、最初からKさんの気持ちに寄り添い続けましたが、お父さんは最初は無関心のように見えました。
しかし、弊社の再登校支援プログラムの一環で、「とりあえずご飯を一緒に食べよう」と声をかけていただくようになり、Kさんの再出発のきっかけになりました。このように、言葉少なであっても、関わり方次第で子どもの心に届くことはあります。

また、学校と家庭の連携も非常に重要です。Kさんのケースでは、最初は先生が問題を軽く見ていましたが、お母さんが学校と話し合いを続けたことで、最終的には学校側がいじめの事実を認め、対応をしてくれました。学校との話し合いは負担に感じるかもしれませんが、お子さんのために必要なサポートを求めることは、とても大切なことです。

親御さんにとって、不登校は不安なことが多いと思います。しかし、お子さんの気持ちに寄り添い、少しずつでもできることから始めることで、必ず何かが変わっていきます。焦らず、無理をせず、お子さんのペースを尊重しながら、一緒に歩んでいってほしいと思います。

ToCo株式会社では、不登校のお子さんやご家族のサポートを行っています。困ったときには、ぜひ専門家の力を借りながら、一緒に考えていきましょう。お子さんが安心できる未来のために、できることは必ずあります。


ToCo(トーコ)について

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優秀な親ほど間違えやすい子育てとは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。

多くの親御さんが「子どものために」と思って日々努力をされていることと思います。
特に社会で成功を収めてきた親ほど、子育てにおいてもベストを尽くそうとし、優秀さゆえに細部にまで気を配ることができるかもしれません。しかし、その「優秀さ」が時に子育てにおいて落とし穴になることがあるのです。本稿では、特に不登校の問題に直面した親御さんに向けて、「優秀な親ほど間違えやすい子育て」について考えていきたいと思います。


目次


第一章:優秀な人の落とし穴

一般的に、IQ(知能指数)やEQ(感情知能)が高い人は、社会において成功を収めやすいとされています。論理的思考力があり、問題解決能力が高く、目標達成に向けて計画的に行動することができるからです。そのため、職場や社会において高く評価され、リーダーシップを発揮する場面も多いでしょう。

しかし、こうした能力が子育てにおいて必ずしもプラスに働くとは限りません。むしろ、「優秀さ」が逆に子どもの自立を妨げたり、親子関係をこじれさせたりすることもあるのです。特に、不登校の問題が発生したとき、親の対応次第で子どもの状態が長引くこともあれば、改善することもあります。その分岐点になるのが、親が「子どもに任せられるかどうか」です。

「子どもに任せられない」親は、無意識のうちに次のような特徴を持っています。

  1. 何事も効率よく進めたい
  2. 失敗をできるだけ避けたい
  3. 共同作業よりも単独で成果を上げることが得意

これらの特徴は、ビジネスの世界では大きな武器になります。プロジェクトを効率的に管理し、問題が起こる前に先回りして対策を講じ、リスクを最小限に抑えることができる。こうした能力があるからこそ、社会で高い成果を上げられるのです。

しかし、これをそのまま子育てに適用するとどうなるでしょうか? 親がすべての問題を先回りして解決してしまうと、子どもは自分で考え、判断し、行動する機会を失ってしまいます。その結果、失敗に対する耐性が育たず、小さな困難にも対処できなくなってしまうのです。不登校になったときも、自ら状況を変える力が弱くなり、親がどれだけ手を尽くしても、子ども自身が動き出すことが難しくなってしまうのです。

「子どものために」と思ってやってきたことが、実は子どもにとっては足かせになっているかもしれません。では、「任せられない」親には、具体的にどのような傾向があるのでしょうか? 次章では、その特徴について詳しく見ていきましょう。


第二章:「任せられない」人の特徴

「子どもに任せられない」親は、一般的に以下のような特徴を持っています。

1. 何事も効率が良い

優秀な人は、限られた時間の中で最大の成果を出すことが得意です。仕事でも家庭でも、できるだけ無駄を省き、最短ルートで物事を進めようとします。例えば、朝の支度が遅い子どもに対して、「自分でやらせると時間がかかるから」と、親がランドセルの準備をしたり、洋服を着せたりすることはないでしょうか?

確かに、そうすることで朝のバタバタを防ぐことはできます。しかし、これは長期的に見れば、子どもにとっての「学びの機会」を奪っていることになります。子どもは試行錯誤しながら、自分で支度の段取りを学びます。時間がかかるのは当然なのです。でも、親がすべてを代わりにやってしまうと、子どもは「自分で考えて動く」経験を積むことができなくなります。その結果、「自分でやる」意識が育たず、何か問題が起こったときも「誰かが解決してくれる」と考えてしまうようになります。

2. 失敗が少ない

優秀な人は、過去の経験から失敗しない方法を知っています。ミスを最小限に抑えることで、成功率を高めることができるからです。しかし、子どもは失敗を通じて学ぶものです。

例えば、テストの前に「この範囲をやっておけば大丈夫」と親が予想を立て、最適な勉強方法を指示する。すると、確かに点数は上がるかもしれません。でも、その過程で「自分で考えて勉強する」力が育たなくなります。子どもは「親が言うことをやっていればいい」と思い込み、自主的に学ぶ習慣がつきません。

また、不登校の子どもの中には「失敗を極端に恐れる」タイプが多くいます。「間違えたらどうしよう」「完璧にできなかったら恥ずかしい」といった気持ちが強くなり、学校に行くこと自体がプレッシャーになってしまうのです。こうした子どもにとって、親の「失敗させない」姿勢は、さらに自信を失わせる要因になりかねません。

3. 共同作業よりも単独で成果を上げるのが得意

優秀な人の多くは、一人で完結できるスキルを持っています。誰かに頼るよりも、自分でやった方が早いし、正確だからです。しかし、子育てにおいては、この「一人でできる能力」がマイナスに働くことがあります。

例えば、子どもが何かを手伝いたがったとき、「自分でやった方が早いから」と断ったことはないでしょうか? 食器を運ぶ、料理を手伝う、掃除をする。どれも子どもにとっては成長の機会です。しかし、親が「自分でやった方が効率的」と考え、子どもに任せることをしないと、子どもは「自分がやらなくてもいいんだ」と学習してしまいます。その結果、主体性が育たず、不登校になったときにも「どうしたらいいかわからない」となってしまうのです。


第三章:「任せられない」人がしてしまいがちな子育て

「子どもに任せられない」親は、日常生活の中で無意識に以下のような行動をとってしまうことがあります。

1. 先回りして準備してしまう

不登校の子どもを持つ親の多くは、「この子の負担を少しでも減らしてあげたい」「できるだけスムーズに学校に戻れるようにしたい」と考えます。その結果、親が必要以上に手を差し伸べてしまうことがよくあります。

例えば、子どもが学校に行く準備をする前に、親がすべて整えてしまう。持ち物の準備、時間割のチェック、場合によっては先生との連絡まで、すべて親が先回りしてやってしまうのです。「子どもに任せると不安だから」「子どもが忘れ物をしてしまうと余計にストレスになるから」といった理由から、このような行動をとってしまうこともあるでしょう。

しかし、このような先回りは、結果的に子どもが「自分で考えて動く力」を奪ってしまいます。何も準備しなくてもすべてが整っている状態に慣れてしまうと、子どもは「自分でやらなくてもなんとかなる」と思ってしまい、自主的に動く意欲が低下してしまいます。

2. 子どもができないことが理解できない

「なんでこんなこともできないの?」と感じたことはありませんか?

親が優秀であるほど、子どもの「できない」という状況が理解しづらくなります。特に、自分が子どもの頃に「普通にできていたこと」に対して、我が子が苦戦しているのを見ると、「なぜ?」という疑問が湧いてくるのは当然です。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、「親と子どもは違う」ということです。親がすんなりできたことでも、子どもにとっては大きなハードルかもしれません。また、不登校の子どもは特に、自信を失っている状態にあるため、「できない」と思い込んでいることが多くあります。

このとき、親が「なんでやらないの?」「ちょっと頑張ればできるでしょ?」と声をかけると、子どもは「できない自分」を責めてしまい、ますます動けなくなってしまいます。結果的に、不登校の状態が長引く原因になってしまうのです。

3. 子どもの手伝いを嫌がる

子どもが何かをやりたがったとき、「いや、それはまだ早い」「時間がかかるから、今はいいよ」と言ってしまったことはありませんか?

例えば、料理をしたがる子どもに対して、「危ないからダメ」「面倒だからやめて」と言ってしまう。掃除を手伝いたがっても、「ちゃんとできないからやらなくていい」と止めてしまう。

これは、親自身が「自分でやった方が早い」と思っていることが原因です。しかし、子どもにとって、こうした日常の手伝いは「自分の存在意義」を感じる大切な機会です。親が「必要ない」と判断してしまうと、子どもは「自分は役に立たない存在なんだ」と思い込んでしまうことがあります。

特に、不登校の子どもは「自分の存在意義」を強く意識します。「自分なんていなくてもいいんじゃないか」「どうせ自分は何をやってもダメだ」といった自己否定の感情を抱えがちです。だからこそ、小さなことであっても「できた!」という経験を積み重ねることが重要なのです。


第四章:子どもの成長の機会を奪わないために

ここまで、「優秀な親が無意識にしてしまう子育ての落とし穴」についてお話ししてきました。それでは、どうすれば子どもが自信を持ち、少しずつ前に進めるようになるのでしょうか?

大切なのは、「できるだけ子どもに任せる」ことです。

1. 「できること」から任せてみる

いきなりすべてを子どもに任せるのは難しいかもしれません。しかし、小さなことから「自分でやる」経験を積ませていくことが重要です。

例えば、学校に行く準備を親がすべてやっていた場合、「明日の持ち物を確認するのは子どもに任せる」というステップから始めてみる。最初は忘れ物をするかもしれませんが、それも学びの一つです。大事なのは、「忘れ物をしないようにすること」ではなく、「自分で考えて準備すること」です。

2. 失敗を前提に考える

「うちの子は失敗したら立ち直れないのではないか」と不安に思うかもしれません。しかし、失敗の経験がないまま成長すると、かえって「失敗への恐怖」が強くなり、ますます動けなくなってしまいます。

親がすべきなのは、「失敗を防ぐこと」ではなく、「失敗しても大丈夫だと思える環境を作ること」です。例えば、「失敗しても親が怒らない」「何がダメだったか一緒に考える時間を作る」といった工夫が効果的です。

3. 「できないこと」ではなく「できたこと」に目を向ける

不登校の子どもは、できないことばかりに目を向けがちです。親もまた、「学校に行けていない」「宿題ができていない」といった「できていない部分」に目が行ってしまいがちです。

しかし、それでは子どもは「自分はダメな存在だ」と思い込んでしまいます。だからこそ、「できたこと」を意識的に見つけてあげることが大切です。

例えば、

  • 朝、少し早く起きられた
  • 一度も外に出なかった子が、コンビニに行く気になった
  • 親と一緒に夕飯を作ることができた

こうした小さな「できた」を積み重ねることで、子どもは少しずつ自信を取り戻していきます。

社会的に優秀な親ほど、「子どもに任せること」が苦手です。しかし、子どもが本当に成長するのは、「自分でやってみる」経験を積んだときです。親が少しずつ「任せる姿勢」を持つことで、子どももまた「自分でやってみよう」と思えるようになっていきます。

最初は不安かもしれません。でも、「子どもを信じること」が、子どもが再び前に進むための第一歩になるのです。

各章内容必要な行動
優秀な人の落とし穴優秀な親は効率的に物事を進めるが、子どもに任せることが苦手。その結果、子どもの自立を妨げることがある。子どもが自分で考える機会を作る。完璧を求めず、子どものペースを尊重する。
「任せられない」人の特徴先回りしがちで、失敗を避け、単独で成果を上げることを好む。そのため、子どもが自分で考える機会を失いがち。すぐに手を出さず、子どもが試行錯誤する時間を確保する。失敗を受け入れる姿勢を持つ。
「任せられない」人がしてしまいがちな子育て親が準備を整えすぎたり、子どもの「できない」を理解できなかったりすると、子どもは動けなくなる。できることは子どもに任せ、小さな成功体験を増やす。親の価値観を押しつけない。
子どもの成長の機会を奪わないために失敗を恐れず、小さなことでも「できた!」を積み重ねることが大切。「できたこと」に注目し、親も子どももプレッシャーを減らす。任せる勇気を持つ。
子どもに任せる勇気を持つ親が「信じる」ことで、子どもも「やってみよう」と思える。失敗も成長の一部と考え、子どもを信じる姿勢を大切にする。

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家庭で出来る不登校対応とは?

家庭で出来る不登校対応とは-記事見出し

目次


第1章:情報が錯綜する不登校対応

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。

現在、多くの保護者の方々が、お子様の不登校に対してどのように対応すべきか、情報の洪水の中で迷われていることと思います。特に、インターネットや書籍、専門家の意見など、さまざまな情報が飛び交う中で、何が正しいのか、どの方法が効果的なのかを判断するのは容易ではありません。

例えば、「ゲームが不登校の原因だ」という意見もあれば、「ゲームは関係ない」という全く逆の主張も存在します。このように、情報が錯綜している現状では、保護者の方々が混乱し、適切な対応を見つけることが難しくなっています。

しかし、不登校の問題は各家庭やお子様の状況によって異なるため、一般的な情報だけでは十分な対応ができません。そのため、実績のある対応法を知り、家庭でどのように実践していくかを考えることが重要です。

本稿では、情報が錯綜する不登校対応の現状を踏まえ、効果が証明されている認知行動療法(CBT)について詳しく解説し、家庭でどのように実践できるかを具体的にご紹介いたします。


第2章:不登校への効果が証明されている認知行動療法(CBT)

認知行動療法(CBT)とは?

認知行動療法(CBT)は、心理療法の一種であり、思考(認知)と行動に焦点を当て、問題の解決や症状の改善を図るアプローチです。具体的には、ネガティブな思考パターンや非適応的な行動を特定し、それらをより適応的なものに変えることで、感情や行動の改善を目指します。

CBTは、うつ病や不安障害など、さまざまな心理的問題に効果があるとされており、その効果は多くの研究で実証されています。不登校の問題においても、CBTは有効なアプローチとされています。例えば、ネガティブな思考パターンを持つお子様が、学校に対する不安や恐怖を感じている場合、その思考を現実的で前向きなものに変えることで、学校への適応を促進することができます。

認知行動療法(CBT)による不登校支援の試み「不登校の子どもを抱える保護者へのグループワーク」の研究

また、CBTでは、段階的な暴露療法を用いることがあります。これは、恐怖や不安を引き起こす状況に徐々に慣れることで、感情的な反応を和らげる方法です。不登校のお子様の場合、学校や教室に対する不安が強いことが多いため、段階的に学校環境に慣れさせることで、再登校へのハードルを下げることが可能です。

さらに、CBTは問題解決スキルの向上にも役立ちます。お子様が学校で直面するさまざまな問題や課題に対して、効果的な対処法を学ぶことで、自己効力感が高まり、学校に対する抵抗感を減らすことができます。


第3章:認知行動療法を家庭で実践するための第一歩

認知行動療法(CBT)が不登校の解決に有効であることを説明しましたが、保護者の方々が最も知りたいのは、「実際に家庭でどのように取り組めばよいのか」という点だと想います。
ここでは、不登校の子どもに対して親が何をすればよいのか、どのように関われば効果があるのかを具体的に解説していきます。

1. 不登校の子どもが抱えている「認知の歪み」を知る

CBTの基本は、「認知の歪み」を修正することにあります。認知の歪みとは、物事の受け取り方や考え方に偏りがあり、その偏りが感情や行動に影響を与えてしまう状態です。不登校の子どもは、しばしば以下のような認知の歪みを持っています。

  • 「自分はダメな人間だ」(全か無かの思考)
  • 「学校に行ったら絶対にまた嫌なことが起こる」(悲観的予測)
  • 「友達はみんな自分を嫌っている」(根拠のない決めつけ)
  • 「先生に怒られるかもしれないから学校に行けない」(過度のリスク予測)

このような歪んだ認知があるため、子どもは学校に対して強い不安を抱き、登校することを避けるようになります。親ができる第一歩は、「子どもの考え方に歪みがあるかもしれない」という視点を持つことです。

2. 「安心感」を与えるのではなく、「適応力」を育てる

不登校の子どもに対して、「家にいれば安心できる」「無理に学校に行かなくていいよ」と言うことは、一見すると優しさのように思えます。しかし、このアプローチには大きな落とし穴があります。

子どもは「安心できる環境」に長くいるほど、不安を感じる場面を避けるようになります。これは「回避行動」と呼ばれ、不安を増大させる要因になります。例えば、「学校に行くのが怖いから行かない」という行動を続けると、学校に対する恐怖はどんどん大きくなります。これは、不安障害やパニック障害の治療でもよく見られるパターンです。

そのため、家庭では「安心感を与える」ことよりも、「適応力を育てる」ことを優先すべきです。具体的には、次のような取り組みが有効です。

  • 小さな成功体験を積み重ねる
    • 「学校の教科書を読み進めてみる」「学校のプリントを解いてみる」
      • 勉強面での引け目を減らしていく。
    • 「制服を着てみる」「ランドセルを準備してみる」
      • 学校に行く準備を少しずつ進めることで、登校への心理的なハードルを下げる。
    • 「登校時間に家の近くを散歩してみる」「学校まで一緒に歩いてみる」
      • 登校時間帯に外に出ることで、学校へ行くリズムを少しずつ取り戻す。
  • 不安の分解を行う。
    • 子どもが抱えている不安を具体的に言語化し、それが本当に現実的な恐怖なのかを親子で話し合う。
      • 「嫌なことが起きるとしたら、どんなことだと思う?」などと質問し、漠然とした不安を具体的な内容に落とし込む。
      • 「先生に怒られるのが怖い」と言えば、「怒られる理由は何か?」と掘り下げて現実的な対応を考える。
    • ネガティブな面ばかり考えないよう、ポジティブな側面も考える。
      • 「学校に行くことで何か良いことが起きるとしたら、どんなこと?」とポジティブな側面も一緒に考える。
      • 「友達が話しかけてくれるかも」のような前向きな予想を引き出すことで、不安な予測ばかりしてしまうことを避ける。

3. 「学校に戻る」という目的をブレさせない

不登校の対応において、最も重要なのは「最終的に学校に戻る」という目的を親がブレさせないことです。

よくある失敗例は、

  • 「子どもが家で楽しく過ごしているから、無理に学校に行かなくてもいいのでは?」と考えてしまう。
  • 「子どもが学校の話を嫌がるから、一切触れないようにする」という対応をとる。

これは、長期的に見ると子どもにとって良い影響を与えません。子ども自身が「自分はこのままでいいのか?」と不安になってしまうためです。親は「今は難しくても、学校に戻る方法を一緒に考えようね」という姿勢を崩さないことが大切です。


第4章:ToCoの再登校支援について

1. ToCoのアプローチとは?

再登校支援を行っているToCo(トーコ)株式会社は、不登校の「原因」ではなく「継続してしまう要因」に着目した支援を行っています。一般的な不登校支援では、「学校の環境を変える」「親の接し方を見直す」といったアプローチが取られますが、ToCoは「なぜ不登校が続いてしまうのか?」に焦点を当てています。

2. CBTを基盤にした支援プログラム

ToCoの再登校支援は、CBTの理論を基盤にしたプログラムになっています。特徴的なのは、日本の家庭環境や学校制度に最適化されている点です。一般的なCBTは欧米の心理学を元にしており、日本の不登校の子どもにそのまま適用するのは難しい場合があります。しかし、ToCoは日本の子どもたちに合った形でCBTを実践できるようにしています。

3. 平均2週間で再登校を実現

ToCoのプログラムは、平均2週間で再登校を達成する実績を持っています。その理由は、単なる「カウンセリング」ではなく、「行動変容」に重点を置いているからです。

一般的なカウンセリングでは、

  • 「子どもの気持ちを尊重する」
  • 「自己肯定感を高める」
    といったアプローチが取られますが、これだけでは再登校には繋がりません。ToCoでは、
  • 「実際に行動を変える」
  • 「小さなステップを積み重ねる」
    という方法を取り入れ、親子が具体的に取り組めるようにしています。

4. 親の負担を減らすサポート

不登校の対応は、親にとって大きな負担となります。「自分の関わり方が間違っていたのではないか?」「子どもの気持ちを尊重しすぎて甘やかしてしまったのでは?」といった悩みを抱えている親御さんも多いでしょう。

ToCoでは、親が無理なく実践できる形でのサポートを提供しており、具体的な声かけの方法や、子どもへの働きかけを一緒に考えていきます。

不登校は、「待てば解決する」というものではありません。家庭で出来る対応を適切に行うことで、子どもが再登校する可能性は大きく高まります。本記事を参考に、ぜひ家庭での関わり方を見直してみてください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

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不登校は子どもの甘え?

不登校は子どもの甘えか-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。また、私はToCo株式会社の顧問として、不登校が長期化する要因を解消し、子どもたちが再び学校に通えるようサポートするサービスに関わっています。本日は、「不登校は子どもの甘え?」というテーマについて、私の経験や知見をもとにお話ししたいと思います。

不登校を「甘え」と非難する声

不登校を経験するお子さんを持つ保護者の方々が、世間から心ない声を受けて心を痛めているという話を耳にすることは少なくありません。「学校に行かないなんて、甘えている」「少し厳しくした方がいいのでは」という意見を受けるたびに、親としての責任を問われているように感じ、苦しくなることもあるでしょう。こうした言葉は時に、家庭そのもののあり方や子どもとの関係性を否定するかのように響きます。

確かに、学校に行くことが社会でのルールのように捉えられる中で、そこから外れる行動をとるお子さんを「怠惰」や「甘え」と片付けてしまう声は根強いです。しかし、こうした声の背景には、不登校という現象に対する無理解があることが多いのです。不登校は単なる「サボり」や「わがまま」ではなく、子どもがさまざまな要因に押しつぶされそうになりながら出したSOSの形なのです。

私が相談を受ける中で感じるのは、学校生活が子どもにとっていかに大きな負荷になるかということです。人間関係、成績のプレッシャー、教師との相性、さらには日々繰り返される規律やルール。これらは、特に繊細で感受性の強い子どもたちにとっては耐え難いストレスになることがあります。そうした中で、子どもが学校に行けなくなるのは、単なる「甘え」ではなく、心身のバランスを守るための重要な自己防衛の手段であると言えるのです。

ではなぜ、「甘え」という言葉がこれほどまでに使われるのでしょうか。それは、世間が不登校という問題に対して持つ「厳しさ」が関係しているように思います。現代社会では「努力」や「競争」が重視される傾向があります。そのため、「学校に行かない」という行動が、あたかも「努力を放棄した」かのように見られがちです。ですが、適切な見方でしょうか?努力とは何か、成長とは何か、その意味を改めて問い直す必要があります。

ここで一つ、私が以前担当したケースをご紹介します。そのお子さんは、中学校1年生の時に突然不登校になりました。それまで元気に通学していた彼は、同級生の些細な言葉に傷つき、次第に学校に足を向けられなくなったのです。しかし、家族や周囲から「もう少し頑張れば」「逃げてはいけない」と言われるたびに、彼はさらに自分を追い詰めていきました。「頑張れ」という言葉が、逆にその子どもの心を蝕む結果となったのです。このようなケースを目の当たりにすると、社会が押し付ける「甘え」というレッテルがどれほど危険であるかを痛感せざるを得ません。

不登校になってしまう子どもは「甘え」なのか

不登校の子どもたちは本当に「甘え」なのでしょうか。私の答えは明確です。それは「違う」ということです。不登校になる子どもたちは、甘えているわけではなく、自分の中で何らかの困難や苦しみに直面し、それを乗り越える術を見つけられずにいるのです。

例えば、学校生活の中で繰り返される些細なトラブルやいじめは、大人から見れば取るに足らないことのように思えるかもしれません。しかし、子どもにとっては、それが世界のすべてを覆すほどの大きな問題に感じられることがあります。さらには、教師からの指導や親からの期待、友人関係のストレスなど、多くの要因が重なり合い、学校という場そのものが「安全ではない場所」に変わってしまうのです。

こうした状況に直面した子どもたちは、必死に自分を守るために行動します。それが学校を休むという形で現れるのです。これを「甘え」と呼ぶのはあまりにも酷です。むしろ、自分の心の声に耳を傾け、限界を超えないように自らを守ることができるという点で、その子たちは非常に賢明な選択をしていると言えます。

ここで理解しておきたいのは、不登校は一種の「警告サイン」であるということです。子どもたちは、自分自身では言葉にできない苦しみや不安を、その行動を通じて表現しているのです。親御さんがこのサインを見逃さず、適切に応じることが、子どもを救うための第一歩となります。

また、最近の研究では、不登校の背景に発達特性や感覚過敏、あるいは認知の特徴などが関与しているケースも多いことが分かっています。これらは決して「甘え」ではなく、子ども自身の特性であり、それに適したサポートが求められるものです。例えば、学校の騒がしさや、明確な指示がなく曖昧な場面が多い環境がストレスになる場合もあります。このような特性を理解しないまま、「甘え」と片付けることは、子どもの気持ちをさらに追い詰めるだけです。

親御さんが抱える葛藤も理解できます。「甘えを許していいのか」という不安や、「もっと頑張らせるべきなのではないか」という葛藤。しかし、これらの不安に向き合うことは決して簡単なことではありません。特に、世間の目や他の保護者との比較の中で悩むこともあるでしょう。それでも、子どもの心の声に耳を傾け、その苦しみを理解しようとする姿勢が、子どもにとって何よりも大きな救いとなるのです。

傷ついた時に甘えられないことのリスク

不登校の子どもを「甘え」と非難する声がある一方で、甘えを許されない環境に置かれた子どもたちがどのようなリスクを抱えるのかについて考える必要があります。甘えることができない状況、それは言い換えれば「助けを求めることができない環境」とも言えます。このような環境は、子どもたちにとってどれほど過酷なものなのでしょうか。

ある中学生の事例を挙げてみます。

彼女は小学校低学年の頃から家族に対して何も相談できなくなり、抱える問題をすべて一人で解決しようとしていました。テストで失敗した時も、友人関係で傷ついた時も、彼は親に助けを求めることをせず、「もっと頑張らなければならない」と自分を追い詰めました。しかし、努力すればするほど結果がついてこない状況に苛立ち、やがて自己評価を極端に低くするようになりました。そして最終的には学校にも行けなくなり、部屋に閉じこもるようになったのです。

このケースで重要なのは、「助けを求める」という基本的な行為が、この子にとってできないことになっていた点です。親としては「何かあれば言ってほしい」と思っていたかもしれません。しかし、子どもにとってそれが叶わない理由があったのです。それは、「自分が弱さを見せることで、親を失望させてしまうのではないか」という恐れでした。

甘えられない環境にいる子どもは、自分の弱さを隠し、表面的には何事もないように振る舞います。そのため、一見すると親は「何の問題もない」と思い込んでしまうことがあります。しかし、内面では絶えず孤独や不安、自己否定といった感情を抱えていることが多いのです。その結果、子どもの精神的なエネルギーは次第に枯渇し、自律神経のバランスを崩したり、うつ病のような症状に発展することも珍しくありません。

ここで考えたいのは、「甘え」とは本来どのような行為であるかという点です。甘えるという行動は、実は人間が持つ自然な自己防衛反応であり、困難に直面した際に誰かに助けを求め、状況を乗り越えるための重要な手段です。幼少期には親に対して甘えることが基盤となりますが、その基盤がしっかりと育まれることで、将来的には友人や同僚、パートナーといった他者に対しても適切に頼ることができるようになります。

甘える力は、子どもにとって成長のために欠かせない力です。それを奪われた環境にいる子どもは、周囲とのつながりを感じられず、自分一人で問題を抱え込むようになります。そして、何よりも危険なのは、「助けを求めても無駄だ」という学習をしてしまうことです。この学びは、人生のあらゆる場面で子どもを苦しめる大きな要因となります。

親御さんにとって、「甘え」をどのように受け止めるかは非常に難しい課題です。「甘えさせすぎてはいけない」という思いが強くなると、子どもが本当に助けを必要としているタイミングを見逃してしまうことがあります。逆に、適度な甘えを許し、子どもが心を開いて頼れる環境を作ることで、子ども自身が安心感を得られるだけでなく、親子の信頼関係もより深まるのです。

子どもの将来を思った「甘やかし」にするために

では、「甘えの容認」と「甘やかし」の違いについて、親としてどのように向き合えばよいのでしょうか。不登校を経験する子どもに対して、「甘え」を許す姿勢が必要だと述べましたが、それが過剰な「甘やかし」につながるのではないかと不安に思われる方もいるでしょう。この章では、「甘え」を子どもの将来にとって有益なものにする方法について考えます。

まず最初に、「甘やかし」とは何かを整理しましょう。甘やかしとは、子どもの要求に無条件で応じ続けることで、子どもが自分で考えたり努力したりする機会を奪ってしまう行為です。これに対して、「甘え」を受け入れることは、子どもが困難に直面した時に適切に手を差し伸べ、必要なサポートを提供することです。この違いは非常に重要です。

たとえば、不登校の子どもが「学校に行きたくない」と言った時、その言葉の背後にどのような感情や状況があるのかを親が理解しようとすることが「甘え」を受け入れる姿勢です。一方で、子どもの「学校に行きたくない」という言葉をそのまま受け止め、何の対策も取らずにその状態を放置してしまうことは、「甘やかし」に近い行動と言えます。

ここで、親ができることは、「子どもの気持ちに寄り添いながらも、再び前を向けるようなサポートを提供する」ことです。そのためには、まず子どもの話をしっかりと聞くことが大切です。親御さんが「学校に行かなければならない」と焦る気持ちをぐっと抑え、子どもが今抱えている悩みや苦しみを丁寧に聞き取ることで、子どもは「自分を受け入れてもらえた」という安心感を持つことができます。

また、親が子どもを支える際には、小さな目標を一緒に立てることが効果的です。たとえば、「学校に行くこと」をゴールにするのではなく、「朝、制服に着替えること」「リビングに出てくること」といった、子どもが無理なく達成できる小さなステップを積み重ねていくのです。このプロセスを通じて、子どもは少しずつ自信を取り戻し、自分の力で困難を乗り越えられる感覚を身につけることができます。

項目甘えへの適切な対応甘やかし
基本的な姿勢子どもの気持ちや困難を受け止め、共感しながら解決へのサポートを行う。子どもの全ての要求に無条件で応じ、問題解決の責任をすべて親が負担してしまう。
目標子どもが自分の力で課題を乗り越えられるようになることを目指す。子どもが快適さだけを求める習慣を強化し、自分で考える力や責任感を育てない。
子どもへの接し方子どもの不安や苦しみに耳を傾け、適度な支援を提供する。「一緒に考える」姿勢を重視する。子どもの言い分を全面的に受け入れ、必要以上に手を貸すことで、子どもを依存的にさせる。
境界線サポートの範囲を明確にし、親としてのルールや価値観を示す。境界線を設けず、子どもの要求に従いすぎて家庭内の秩序が崩れる。
例1: 不登校の場合子どもの学校に行きたくない理由を丁寧に聞き取り、「今日1時間だけ教室に入ってみる」など小さな目標を一緒に設定する。「学校に行きたくないなら行かなくていい」と、そのまま放置するか、過剰に擁護して学校側への不満を子ども以上に主張する。
例2: 勉強の課題勉強ができない理由を探り、「苦手な部分だけ一緒にやろう」と具体的な手助けを提案し、自信を育てる。勉強を完全に代わりにやってしまったり、課題をなかったことにする。
親の心の持ち方子どもが困難を乗り越える力を信じ、「見守りつつ支える」というバランスを意識する。子どもに嫌われることを恐れたり、子どもが失敗することを避けるために過剰に干渉する。
子どもの成長への影響子どもが安心して親に頼ることができる一方、自分で課題を解決する力を育てられる。自分で努力する力が育たず、失敗や困難を回避し続けることで、長期的な成長を妨げる。

さらに、親御さん自身もサポートを受けることを検討してください。不登校という問題は、家庭全体に影響を及ぼします。親が孤立したり、自分だけで解決しようと抱え込むと、かえって状況を悪化させることがあります。信頼できる専門家やサービスを活用し、親御さん自身も安心できる場を見つけることが重要です。

ToCo株式会社が提供するサービスもその一つです。私たちは、親御さんとお子さんが共に不登校という状況を乗り越えるためのサポートを提供しています。子どもが抱える具体的な課題に合わせたアプローチを提案し、家庭と学校の橋渡し役として機能することを目指しています。

「甘え」を許す社会を目指したい

不登校を「甘え」と見なす社会的な風潮は、親御さんや子どもたちを苦しめる大きな要因です。しかし、私たち一人ひとりがその捉え方を変え、子どもの「甘え」を自然な感情として受け止めることができれば、不登校に対する理解は大きく進むでしょう。

「甘えを許す社会」とは、助けを求める行為を恥ずかしいことだと思わず、むしろ称賛すべき行動と捉える社会です。子どもが学校生活に困難を感じた時、それを率直に表現できる環境があれば、深刻な不登校に発展する前に解決策を見つけることができるかもしれません。

親御さんもまた、この新しい価値観を受け入れることで、お子さんに対して柔軟で優しい対応ができるようになるでしょう。


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私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

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不登校はずるい?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私はこれまで、多くの不登校や引きこもりのお子さんやそのご家族と向き合ってきました。また、ToCo株式会社という、不登校が長期化してしまう要因にアプローチすることで、再登校の道筋を提供するサービスに携わる顧問も務めております。

本稿では、「不登校はずるい?」というテーマについて掘り下げ、不登校に悩む方や、不登校を甘えやずるいと感じる方へ、新たな視点や気づきを提供したいと思います。


目次


第1章 学校に通っている子どもの保護者が、不登校の家庭を「ずるい」と思う理由

「不登校はずるい」「不登校は甘えだ」という言葉を耳にした経験はありませんか?また、SNS上で投げかけられた投稿を見たことがあるかもしれません。
不登校のお子さんを持つ親御さんも、直接そのように言われたことはなくても、学校に通うお子さんの保護者からの視線や態度に、どこかそういったニュアンスを感じ取ったことがあるかもしれません。この「ずるい」という感情の背景には、一体何があるのでしょうか?それを紐解いていきます。

まず、「学校に通うのが当たり前」という固定観念が根底にあります。日本では、学校に通うことが義務であり、また社会全体でそれを強く推奨する文化が根付いています。そのため、「学校に行く」という行為が美徳とされ、子ども自身だけでなく、その親の努力や忍耐も称賛される傾向があります。これに対して、不登校のお子さんやその親御さんが「学校に行っていない」となると、「努力していない」とみなされがちです。この思い込みが、「ずるい」という感情に直結するのです。

集団登校のイメージ。

特に、学校に通う子どもの親御さんは、日々の生活の中で様々なストレスや葛藤を抱えながら、何とか子どもを学校に通わせています。朝の忙しい時間に子どもを起こし、時には泣きながら抵抗する子どもをなだめたり叱ったりしながら学校へ送り出すこともあるでしょう。それだけの努力をしているからこそ、不登校のお子さんを持つ家庭がその努力をしていないように見えると、無意識に「ずるい」と感じてしまうのです。

また、日本社会特有の同調圧力も、こうした感情を助長しています。「みんなが頑張っているのだから、あなたも頑張りなさい」という同調の空気が、日本の学校や家庭には根強く存在します。この圧力の中で、不登校のお子さんやそのご家族が「特別な例外」として見られることで、不公平感を覚える人がいるのです。「ずるい」という感情は、この同調圧力の裏返しでもあります。

しかし、ここで重要なのは、この「ずるい」という感情が、実は誤解や偏見に基づいていることが多いという点です。不登校という状態は決して「楽」なものではありませんし、その家庭にいる親御さんもまた、別の形で多大な努力をしています。

第2章 不登校を「ずるい」と思う社会が、不登校の家庭に与える影響

「ずるい」という感情や偏見が、不登校のご家庭にどのような影響を及ぼすのかを考えてみましょう。社会全体の視線は、不登校のお子さんやそのご家族に様々な重圧を与えています。

まず、不登校の家庭は、周囲からの「楽しむ姿を見せてはいけない」という暗黙の圧力にさらされています。たとえば、学校を休んでいる間に家族で旅行に行ったり、外でレジャーを楽しんだりすることが、まるで「罪」であるかのように感じさせられることがあります。「学校に行っていないのだから楽をしている」「遊んでいる場合ではない」という目が、親御さんにも子どもにも向けられるのです。このため、楽しむどころか、家族全体が罪悪感に苛まれるような生活を強いられることも少なくありません。

こうしたプレッシャーの結果、不登校の家庭は次第に孤立し、家庭内に閉じこもりがちになります。親御さん自身も周囲の目を気にするあまり、他の保護者との付き合いを避けるようになり、社会との繋がりを失ってしまうことがあります。そして、それが子どもにも影響を与え、外出の機会や人と接する機会が減り、長期間の引きこもりへと繋がるケースも少なくありません。

さらに、このような状況下で子どもが感じるのは、社会からの否定的な視線だけではありません。「自分はダメな人間なんだ」「自分の存在が迷惑をかけている」といった自己否定感が強まり、学校に戻る気力をますます失ってしまうのです。もともと学校生活の中で感じたプレッシャーや孤立感から不登校になった子どもにとって、社会全体からのこうした圧力は、さらなる追い打ちをかけるものとなります。数日の欠席で済んだかもしれないお子さんが、社会の非難によって何年も部屋から出れなくなってしまうのです。

このように、「ずるい」という社会的な視線は、不登校のお子さんやそのご家族を精神的に追い詰め、結果として不登校の状態を長引かせる要因となっています。ここで必要なのは、偏見や誤解に基づいた評価ではなく、不登校の背景やその家庭の現状を理解し、支援する視点です。

第3章 不登校は「楽」なのか?

不登校のお子さんやその家庭に対して、「楽をしている」というイメージを持つ方は少なくありません。しかし、不登校の現実は、本当に「楽」なのでしょうか。この章では、不登校の家庭が抱える実態について掘り下げていきます。

不登校は、一見「学校に行かない自由」を得ているように見えるかもしれません。しかし、その裏側には、非常に大きな葛藤やプレッシャーが隠れています。不登校のお子さんが抱える最大の問題の一つは、「罪悪感」です。学校に行けない自分を責める気持ち、友達や先生に迷惑をかけているのではないかという不安、そして家族に申し訳ないという思いが、子ども自身を重くのしかかるように蝕んでいきます。中には、「自分なんていない方がいい」と思い詰めるケースもあります。このような状況にある子どもにとって、不登校は決して「楽」ではありません

さらに、不登校の家庭には、親御さんにも大きな負担がかかります。「どうしてうちの子だけが」という不安や、「何か自分の育て方が間違っていたのではないか」という自己批判に苦しむ親御さんが多くいらっしゃいます。また、周囲からの「学校に行かせなさい」というプレッシャーに対抗し続ける精神的なストレスは、計り知れないものがあります。学校や行政から支援が得られにくい状況にある場合、親御さんがすべてを背負い込む形になり、疲弊してしまうことも少なくありません。

また、不登校の子どもが「楽をしている」と思われがちな原因の一つに、「表面的な姿」があります。家でゲームをしたり、スマートフォンを使ったりしている姿を見て、「好きなことをしているだけ」と考える人もいるでしょう。しかし、こうした行動の裏には、現実逃避や自己防衛の心理が働いていることが多いのです。たとえば、学校に行くというプレッシャーを感じる時間帯にゲームをすることで、その不安を一時的に忘れようとしているケースもあります。また、外の世界との繋がりを断つことで、傷つくことを避けようとしているのかもしれません。

さらに、社会からの誤解や偏見が、不登校の家庭の苦しみを増幅させています。「怠けている」という目で見られることで、親御さんも子どもも孤立しやすくなります。結果的に、支援の手が届かず、問題が複雑化していくのです。このような状況下で、不登校の子どもたちが「楽」だと感じることはまずありません。むしろ、心の中では深い葛藤と戦っているのです。

ここで重要なのは、不登校の現実を正しく理解し、その背景にある苦しみや努力を認めることです。子どもが「楽をしている」と感じることがあるとしても、それは一時的なものであり、その根底には多くの問題が隠れています。不登校の状態を理解しようとすることが、子どもたちへの最初の一歩になります。

そして、不登校の子どもや家庭がどのような事情であるにしても、周囲から石を投げられる理由にはならないのです。

第4章 不登校は、誰にでも起こり得る状態

不登校は一部の子どもたちだけが経験する特別なものではありません。どの家庭にも起こり得る状況であり、この認識を持つことが非常に重要です。

例えば、「うちの子は明るい性格だから」「うちは家族関係が良好だから」という理由で、不登校とは無縁だと思っているご家庭も多いかもしれません。しかし、実際には、不登校になる子どもたちの多くが、かつては学校生活に問題なく適応していたケースが少なくありません。学校でのいじめや友人関係のトラブル、先生との摩擦、あるいは家庭での些細な変化など、どれも不登校を引き起こすきっかけとなり得ます。これらの問題は、どの家庭にも発生する可能性があります。

また、近年の日本の教育環境や社会的な変化も、不登校の増加に影響を与えています。過度な学力競争やSNSを通じた人間関係の複雑化、さらにはコロナ禍による生活環境の変化など、子どもたちを取り巻く状況はますます厳しくなっています。このような状況の中で、不登校は「特別な子ども」に起こるのではなく、むしろ「誰にでも起こり得る状態」へと変化しているのです。

さらに、子どもたちの性格や特性によっても、不登校のリスクは異なります。例えば、完璧主義の傾向がある子どもは、ちょっとした失敗でも「自分はダメな人間だ」と感じやすく、不登校になるリスクが高まります。また、感受性が強く、他人の言葉や態度に敏感な子どもは、些細な出来事でも深く傷つき、不登校に繋がることがあります。

このように、不登校は決して特別な問題ではありません。そして、それを認識することは、不登校のお子さんを持つ親御さんにとっても大きな救いとなるはずです。「自分の子どもだけが特別なのではない」と知ることで、孤独感や罪悪感が少し和らぐこともあるでしょう。また、この認識が広まることで、不登校に対する社会的な偏見も徐々に解消されていく可能性があります。

不登校は誰にでも起こり得る状態であり、その背景には多様な要因が絡んでいます。親御さんも、「うちの子に限って」という思い込みを捨て、どの家庭にも起こり得る問題として、不登校に対する偏見を減らしていく準備をすることが大切です。

第5章 不登校を放置しない社会に

ここまで、不登校を巡る社会の偏見や、その現実についてお話してきました。では、不登校という問題に対して、社会全体がどのように向き合うべきなのでしょうか。

まず重要なのは、不登校のお子さんやそのご家庭を「腫れ物扱い」しないことです。不登校は、社会全体で支援すべき課題であり、特定の家庭や個人だけが解決すべき問題ではありません。それにもかかわらず、不登校の家庭は、どこか特殊な存在として見られることが多くあります。このような扱いが、親御さんや子どもたちを孤立させ、不登校を長期化させる一因となっています。

また、不登校を「時間が解決する」と考えるのも危険です。確かに、時間の経過によって状況が改善する場合もありますが、何もしないままでいると、子どもが引きこもり状態に陥ったり、心の問題が深刻化したりするリスクが高まります。そのため、親御さんが「見守る」だけではなく、少しずつでも子どもに関わり続けることが大切です。専門機関や支援サービスを利用することも、選択肢の一つです。

さらに、社会全体で「学校に戻ること」だけがゴールではないという認識を広めることも重要です。学校以外にも、子どもたちが成長し、学び、自信を取り戻せる場は数多く存在します。不登校からの再出発は、一人ひとりに合ったペースで進めるべきです。

最後に、親御さんにお伝えしたいのは、「あなた一人で頑張る必要はない」ということです。不登校という問題は、家庭だけで解決するものではありません。学校や専門家、支援サービスなど、さまざまなリソースを活用しながら、一歩ずつ前進することが大切です。

不登校を放置しない社会を実現するためには、私たち一人ひとりが偏見を捨て、理解と支援の手を差し伸べることが必要です。不登校のお子さんとそのご家庭が孤立せず、未来に希望を持てるような社会に変われるよう、当社も活動を続けていきます。


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【2023年度】不登校に関する政府統計データ(文部科学省)

不登校の文部科学省統計データ見出し

※データソース:令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
※下記のデータを引用される場合は、引用元として当URLを記載ください。


目次


1. 小・中学校における理由別長期欠席者数の推移 | 2010〜2023年度

年度在籍者数不登校割合増減率病気割合増減率経済的理由その他割合増減率割合増減率
201010,566,028 119,891 1.13%***36,421 0.34%***129 20,929 0.20%***177,370 1.68%***
201110,477,066 117,458 1.12%▲ 2.036,523 0.35%0.3119 22,573 0.22%7.9176,673 1.69%▲ 0.4
201210,333,629 112,689 1.09%▲ 4.138,916 0.38%6.691 24,073 0.23%6.6175,769 1.70%▲ 0.5
201310,229,375 119,617 1.17%6.137,431 0.37%▲ 3.885 24,187 0.24%0.5181,320 1.77%3.2
201410,120,736 122,897 1.21%2.737,851 0.37%1.164 24,239 0.24%0.2185,051 1.83%2.1
201510,024,943 125,991 1.26%2.541,064 0.41%8.549 27,794 0.28%14.7194,898 1.94%5.3
20169,918,796 133,683 1.35%6.142,813 0.43%4.329 29,768 0.30%7.1206,293 2.08%5.8
20179,820,851 144,031 1.47%7.745,362 0.46%6.027 27,620 0.28%▲ 7.2217,040 2.21%5.2
20189,730,373 164,528 1.69%14.249,624 0.51%9.424 25,863 0.27%▲ 6.4240,039 2.47%10.6
20199,643,935 181,272 1.88%10.246,734 0.48%▲ 5.830 24,789 0.26%▲ 4.2252,825 2.62%5.3
20209,578,674 196,127 2.05%8.244,427 0.46%▲ 4.933 26,255 0.27%5.9287,747 3.00%13.8
20219,529,152 244,940 2.57%24.956,959 0.60%28.219 52,516 0.55%100.0413,750 4.34%43.8
20229,442,083 299,048 3.17%22.175,597 0.80%32.736 62,307 0.66%18.6460,648 4.88%11.3
20239,321,243 346,482 3.72%15.9105,838 1.14%40.034 41,086 0.44%▲ 34.1493,440 5.29%7.1
(注1) 在籍者数は、2023年5月1日現在
(注2) 調査対象:国公私立小・中学校(小学校には義務教育学校前期課程,中学校には義務教育学校後期課程及び中等教育学校前期課程を含む。以下同じ。)
(注3) 「児童・生徒指導要録」の「欠席日数」欄の合計の日数により,年度間に30日以上欠席した児童生徒数を理由別に調査。なお,「児童・生徒指導要録」の「出欠の記録」欄のうち,「備考」欄に,校長が出席扱いとした日数が記載されている場合は,その日数についても欠席日数として含める。

グラフ

小・中学校における理由別長期欠席者数の推移-政府統計

考察

日本の小・中学校における長期欠席者数の推移を分析した結果、特に注目すべきは不登校による欠席者数の増加です。統計によれば、不登校は長期欠席の主要な理由であり、年度ごとに一定の増減を繰り返しながらも全体的には増加傾向を示しています。一方で、病気や経済的理由による欠席者数は比較的安定しており、その他の理由も緩やかに増加している状況です。

まず、不登校が増加している背景として、現代の子どもたちを取り巻く環境の変化が挙げられます。教育現場ではいじめや友人関係の問題、学業への過度なプレッシャーが要因となるケースが多く報告されています。また、家庭環境の変化や、インターネットやSNSの普及により、人間関係が複雑化していることも要因と考えられます。さらに、コロナ禍における生活の変化が子どもたちの精神的な負担を増大させ、不登校の増加に拍車をかけた可能性があります。

病気による欠席は一定の割合を保ちながらも、年によって多少の増減があります。これは、感染症の流行や医療の進展による影響を反映していると考えられます。特に季節性のインフルエンザや、新型コロナウイルスの影響が統計に表れている可能性があります。

経済的理由による欠席は全体として非常に少なく、横ばいの状態が続いています。これは、日本の公教育制度が比較的安価であることや、義務教育期間中において学費負担が軽減されていることが要因と考えられます。しかし、少数ながらも経済的理由による欠席が存在するという事実は、貧困家庭が抱える課題の深刻さを浮き彫りにしています。

その他の理由による欠席者数は緩やかな増加を示しています。このカテゴリには、家族の事情や特別な教育的ニーズ、児童・生徒本人の個別の状況が含まれると推測されます。


2. 不登校児童生徒の欠席期間別実人数 | 2023年度

学校種別国公私立不登校児童生徒数欠席30~49日割合欠席50~89日割合欠席90日以上で出席11日以上割合欠席90日以上で出席1~10日割合欠席90日以上で出席0日割合
小学校国立366 124 33.9%122 33.3%90 24.6%18 4.9%12 3.3%
小学校公立129,410 38,331 29.6%33,802 26.1%47,374 36.6%6,568 5.1%3,335 2.6%
小学校私立594 185 31.1%195 32.8%190 32.0%20 3.4%0.7%
小学校130,370 38,640 29.6%34,119 26.2%47,654 36.6%6,606 5.1%3,351 2.6%
中学校国立979 227 23.2%225 23.0%457 46.7%53 5.4%17 1.7%
中学校公立207,013 36,666 17.7%42,284 20.4%102,529 49.5%18,366 8.9%7,168 3.5%
中学校私立8,120 1,893 23.3%2,036 25.1%3,484 42.9%512 6.3%195 2.4%
中学校216,112 38,786 17.9%44,545 20.6%106,470 49.3%18,931 8.8%7,380 3.4%
小・中合計国立1,345 351 26.1%347 25.8%547 40.7%71 5.3%29 2.2%
小・中合計公立336,423 74,997 22.3%76,086 22.6%149,903 44.6%24,934 7.4%10,503 3.1%
小・中合計私立8,714 2,078 23.8%2,231 25.6%3,674 42.2%532 6.1%199 2.3%
小・中合計346,482 77,426 22.3%78,664 22.7%154,124 44.5%25,537 7.4%10,731 3.1%

考察

2023年度の日本の小中学校における不登校の総数は346,482人に達し、特に中学校の不登校の数は216,112人と、全体の6割以上を占めています。この数字が指し示すのは、非常に多くの学生が学校との関係が弱まっている実態です。

「不登校」と一句に言っても、具体的な状況は異なります。小中合計でみると、最も多いのは「欠席90日以上」の154,124人で、この中でも「出席0日」という、学校との縁が完全に切れた状況の学生は10,731人にのぼります。

中学校では特に長期的な欠席が盛んでおり、「欠席90日以上」は106,470人に達します。一方、小学校では「欠席30〜89日」の中期的な欠席が目立つのが特徴です。

不登校の背景には、さまざまな要因が存在します。学校内の人間関係やいじめなどの問題に加え、家庭の状況や学生自身の心理的ケアの問題が見過ごされないことが必要です。これに加え、コロナ禍の影響による学校生活の調和が困難になった事例も増えています。


3-1. 小中学校別・不登校児童生徒について把握した事実 | 2023年度

事実小学校割合中学校割合
いじめの被害の情報や相談があった。2,350 1.8%2,113 1.0%
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった。14,951 11.5%31,021 14.4%
教職員との関係をめぐる問題の情報や相談があった。5,735 4.4%4,548 2.1%
学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた。19,124 14.7%33,423 15.5%
学校のきまり等に関する相談があった。 2,622 2.0%4,223 2.0%
転編入学、進級時の不適応による相談があった。4,288 3.3%9,693 4.5%
家庭生活の変化に関する情報や相談があった。12,130 9.3%12,822 5.9%
親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった。22,116 17.0%20,854 9.6%
生活リズムの不調に関する相談があった。31,937 24.5%47,701 22.1%
あそび、非行に関する情報や相談があった。2,992 2.3%8,630 4.0%
学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった。42,014 32.2%69,617 32.2%
不安・抑うつの相談があった。29,549 22.7%50,643 23.4%
障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった。11,454 8.8%12,676 5.9%
個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。11,096 8.5%11,871 5.5%
不登校児童生徒数130,370 100%216,112 100%

(注1) 複数選択可。「1.長期欠席者の状況」における「不登校」と回答した不登校児童生徒全員につき,当てはまるものをすべて回答。
(注2)「個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。」は、障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援以外の個別の配慮を指す。

考察

2023年度の小中学校における不登校問題について文部科学省が発表した統計によれば、小学校と中学校で異なる要因が見られるものの、共通していじめ、友人関係、教職員との関係、学業不振が主な要因として挙げられています。

まず、いじめの被害に関するデータを見ると、小学校で2,350件(1.8%)、中学校で2,113件(1.0%)が報告されています。いじめは児童生徒の精神的な健康に深刻な影響を及ぼし、不登校の引き金となることが多いです。学校現場では防止策が講じられているものの、根本的な解決にはまだ課題が残されています。

次に、友人関係をめぐる問題が小学校で14,951件(11.5%)、中学校で31,021件(14.4%)報告されています。これは、不登校児童生徒の最大の要因となっており、特に中学校では割合が高くなっています。思春期特有の人間関係の複雑さやソーシャルメディアの普及が、この背景にあると考えられます。

また、教職員との関係をめぐる問題も無視できません。小学校で5,735件(4.4%)、中学校で4,548件(2.1%)の事例がありました。生徒と教師の間の信頼関係が損なわれると、生徒が学校に通う意欲を失う原因となります。教職員の研修やコミュニケーションの向上が必要です。

最後に、学業の不振や宿題の未提出は、小学校で19,124件(14.7%)、中学校で33,423件(15.5%)と最多の報告数を記録しました。学力格差や学習習慣の欠如が、この課題の背後にある可能性があります。個別指導や学習支援体制の充実が求められます。


3-2. 小中学校、国公私立別・不登校児童生徒について把握した事実 | 2023年度

国公私立小学校・国立割合小学校・公立割合小学校・私立割合中学校・国立割合中学校・公立割合中学校・私立割合
いじめの被害の情報や相談があった。36 9.8%2,264 1.7%50 8.4%21 2.1%1,967 1.0%125 1.5%
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった。52 14.2%14,795 11.4%104 17.5%151 15.4%29,870 14.4%1,000 12.3%
教職員との関係をめぐる問題の情報や相談があった。37 10.1%5,643 4.4%55 9.3%20 2.0%4,365 2.1%163 2.0%
学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた。43 11.7%18,988 14.7%93 15.7%162 16.5%31,735 15.3%1,526 18.8%
学校のきまり等に関する相談があった。 14 3.8%2,589 2.0%19 3.2%18 1.8%4,059 2.0%146 1.8%
転編入学、進級時の不適応による相談があった。1.6%4,249 3.3%33 5.6%28 2.9%9,216 4.5%449 5.5%
家庭生活の変化に関する情報や相談があった。35 9.6%12,025 9.3%70 11.8%79 8.1%12,317 5.9%426 5.2%
親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった。63 17.2%21,920 16.9%133 22.4%140 14.3%19,847 9.6%867 10.7%
生活リズムの不調に関する相談があった。110 30.1%31,666 24.5%161 27.1%314 32.1%44,795 21.6%2,592 31.9%
あそび、非行に関する情報や相談があった。10 2.7%2,977 2.3%0.8%16 1.6%8,527 4.1%87 1.1%
学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった。110 30.1%41,730 32.2%174 29.3%285 29.1%67,207 32.5%2,125 26.2%
不安・抑うつの相談があった。106 29.0%29,284 22.6%159 26.8%207 21.1%48,387 23.4%2,049 25.2%
障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった。38 10.4%11,381 8.8%35 5.9%40 4.1%12,246 5.9%390 4.8%
個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。33 9.0%10,979 8.5%84 14.1%68 6.9%11,341 5.5%462 5.7%
不登校児童数366100%129,410 100%594100%979100%207,013 100%8,120 100%

(注1) 複数選択可。「1.長期欠席者の状況」における「不登校」と回答した不登校児童生徒全員につき,当てはまるものをすべて回答。
(注2)「個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。」は、障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援以外の個別の配慮を指す。

考察

文部科学省の統計によると、2023年度における小中学校の不登校児童生徒数は引き続き高水準で推移しています。特に、公立小中学校における不登校児童生徒の数が圧倒的に多く、いじめや友人関係、教職員との関係といった問題が原因として浮き彫りになりました。

公立小学校では約12万9千人、公立中学校では約20万7千人が不登校となっています。この数字は、全体の大多数を占めており、同じく国立や私立学校と比較しても非常に高い割合です。特に中学校においては、不登校の背景にいじめが関連しているケースが顕著であり、その割合は14.4%になります。また、友人関係をめぐる問題も中学校で15.4%と高く、小学校と比較して生徒同士の関係性がより複雑化していることが伺えます。

一方で、私立学校における不登校の割合は公立と比較して低い傾向が見られます。例えば、私立小学校では不登校割合が1.7%に留まっており、中学校でも1.5%と抑えられています。この背景には、私立学校が提供するきめ細やかな指導や少人数制、家庭と学校の緊密な連携が寄与している可能性が考えられます。


4. 不登校児童生徒への指導結果 | 2023年度

学校種別国立・不登校児童生徒数国立・指導の結果、登校できた児童生徒国立・指導中の児童生徒公立・不登校児童生徒数公立・指導の結果、登校できた児童生徒公立・指導中の児童生徒私立・不登校児童生徒数私立・指導の結果、登校できた児童生徒私立・指導中の児童生徒計・不登校児童生徒数計・指導の結果、登校できた児童生徒計・指導中の児童生徒        
小学校366 129 237 129,410 39,553 89,857 594 196 398 130,370 39,878 90,492 
割合100.0%35.2%64.8%100.0%30.6%69.4%100.0%33.0%67.0%100.0%30.6%69.4%
中学校979 374 605 207,013 62,083 144,930 8,120 2,332 5,788 216,112 64,789 151,323 
割合100.0%38.2%61.8%100.0%30.0%70.0%100.0%28.7%71.3%100.0%30.0%70.0%
1,345 503 842 336,423 101,636 234,787 8,714 2,528 6,186 346,482 104,667 241,815 
割合100.0%37.4%62.6%100.0%30.2%69.8%100.0%29.0%71.0%100.0%30.2%69.8%

考察

2023年度の政府統計データによれば、公立学校では不登校児童生徒数が圧倒的に多く、全体の大部分を占めています。一方で、国立学校における不登校児童生徒数は小学校で366人、中学校で979人と公立に比べて少数ですが、指導の結果登校できた割合が高いことが注目されます。具体的には、国立小学校では35.2%、中学校では38.2%が指導の結果登校に至っています。

一方、公立学校では登校できた児童生徒の割合が全体で30.2%にとどまり、指導が継続中の児童生徒が69.8%を占めています。この差は、学校種別ごとの支援体制やリソースの違いを反映している可能性があります。国立学校では児童生徒数が少ない分、個別指導が行き届きやすい環境にあると考えられる一方、公立学校では多数の児童生徒を対象に支援を行うため、対応が困難になるケースが多いと推測されます。

また、不登校児童生徒の増加傾向は、教育現場における支援の課題を如実に示しています。たとえば、2023年度のデータでは、小学校よりも中学校で不登校の割合が高く、特に思春期の子どもたちに対する精神的なサポートが必要とされています。

これらのデータから読み取れるのは、不登校問題において「一律の解決策」が存在しないという現実です。国公私立それぞれの状況や特徴に応じた柔軟な対応が求められます。同時に、指導の効果を最大化するためには、学校だけでなく地域や家庭との連携が不可欠です。

さらに、国公私立間のデータを比較することで、不登校児童生徒の支援策における成功事例や課題点が浮き彫りになります。たとえば、国立学校の指導成功率の高さは、他の学校種別においても参考になる可能性があります。一方、公立学校では、より広範囲の児童生徒に対応するためのリソース増強が急務です。


5. 都道府県別・理由別長期欠席者数 | 2023年度

都道府県在籍児童生徒数不登校うち,50日以上の欠席うち,90日以上の欠席うち,出席10日以下うち,出席0日病気経済的理由その他
北海道344,81414,36111,9728,8631,7364744,469287319,705
青森県80,9782,8272,0611,437200518622833,774
岩手県82,6852,4591,9001,258191415520723,083
宮城県167,8127,8405,7963,8536261242,190047810,508
秋田県57,6101,9471,5791,1242225962901562,732
山形県73,8632,3391,7181,221168484800962,915
福島県128,9384,3383,4952,5434261191,45023886,178
茨城県212,7767,9876,3204,4397441804,35821,20013,547
栃木県142,8975,8504,6313,2836181921,73206098,191
群馬県140,4824,7803,9102,8555441291,10602386,124
埼玉県541,48117,05413,62310,0441,9486087,03302,99827,085
千葉県458,00114,59211,3488,1721,5404977,46412,78424,841
東京都950,06634,19927,02319,7404,3721,34510,43014,84249,472
神奈川県668,64324,63119,41613,9302,6397807,04912,77934,460
新潟県153,8195,6174,2312,89344213365111046,373
富山県71,5672,6411,9911,3922408236802163,225
石川県84,5463,3362,5831,8274401725280803,944
福井県58,8541,5671,2599141373259601312,294
山梨県57,6792,2611,7601,2392186764204203,323
長野県152,3417,0605,0533,3765001441,11704958,672
岐阜県151,9325,7414,4643,0914741471,50608828,129
静岡県271,66011,7428,6596,0061,2623321,765660714,120
愛知県604,14024,05117,56011,9052,0527133,22432,16729,445
三重県133,6114,6963,6942,5584421241,36205596,617
滋賀県119,4484,0873,0982,031266641,19507856,067
京都府184,4396,2105,0013,5376171831,36911,0538,633
大阪府634,35823,00618,34913,1152,64285610,58503,96337,554
兵庫県416,31916,28312,0218,4971,7514545,50802,62924,420
奈良県99,3113,6912,8752,076380951,81408886,393
和歌山県65,9152,4051,9031,3202489730301522,860
鳥取県42,1131,6561,2928811445939901972,252
島根県50,7332,3151,6581,156213731491922,557
岡山県145,2404,1733,4322,5114791362,85001,1788,201
広島県219,5758,7426,6894,6349723222,07301,13311,948
山口県95,5753,5702,7641,92143513465812144,443
徳島県50,6191,7621,298908203672670632,092
香川県72,6112,2051,7731,2192657558313693,158
愛媛県98,0353,4752,9142,1784431411,1513934,722
高知県46,7381,6041,3189471863875713392,701
福岡県418,48618,14813,7769,4981,7914804,99611,87225,017
佐賀県68,2372,1801,8111,3263108868201132,975
長崎県101,7813,6922,9232,03736010480201714,665
熊本県143,4245,8484,6193,1525241571,82923798,058
大分県85,1363,1582,5201,8144008393802374,333
宮崎県88,3282,6912,3231,7453871497390963,526
鹿児島県132,6714,6523,7362,6375151092,06404317,147
沖縄県150,9567,0134,9173,2895561742,56421,38210,961
全国9,321,243346,482269,056190,39236,26810,731105,8383441,086493,440

考察

2023年度における都道府県別・理由別の長期欠席情勢を表したデータを解析すると、日本全国の情勢が見えてきます。最初に全国の評価として、在籍児童生徒数約930万人の中、不登校者数は約35万人に上り、不登校率は約3.7% となります。更に、50日以上の欠席者が約27万人、そのうち、90日以上の欠席者は約20万人と、長期の欠席者の情勢が大きな課題であることを示しています。

欠席の理由に目を向けると、病気による欠席者は約10万人にのぼり、全体の長期欠席の大きな割合を占めています。一方で経済的理由での欠席者はごく少なく、全国で34人という結果が出ています。

地域別の調査では、不登校率が最も高いのは宮城県で、4.67%を超えています。これは全国平均を大きく上回っています。一方で、不登校率の地域差は解釈されておらず、地域独特の要因が含まれていると考えられます。たとえば、経済的状況、社会的環境や地域の協力体制など、記録には表れない要素が伸びている可能性が考えられます。

不登校に繋がる4つのリスク: ④周囲への過敏性(HSP)

不登校に繋がる4つのリスク4周囲への過敏性(HSP)-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因に焦点を当て、子どもたちが再び学校に戻れるようになるための支援を行っています。本日は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、最後のリスクである「周囲への過敏性(HSP)」についてお話しします。

周囲への過敏性、いわゆる「Highly Sensitive Person(HSP)」の特性は、今、多くの子どもたちに見られる傾向の一つです。この特性を持つ子どもは、刺激に対して敏感に反応し、特に学校生活の中での些細なことが心に強い負荷をかける場合があります。その結果、不登校や登校への抵抗といった形で現れることが少なくありません。今回は、このリスクについて深掘りし、不登校を防ぐための具体的な方法を考えていきたいと思います。


目次


周囲への過敏性(HSP)の背景と特性

HSPとは何か?

HSPとは、心理学者エレイン・アーロン博士によって提唱された概念で、感受性が強く、周囲の刺激に対して敏感に反応する特性を持つ人々を指します。これは病気や障害ではなく、あくまで生まれつきの性質です。HSPの特性を持つ人々は全人口の15〜20%ほどいると言われ、子どもの中にも一定数存在します。

HSPの特性を持つ子どもたちは、以下のような特徴を示すことが多いです:

  • 周囲の音、光、匂い、温度などの感覚刺激に過敏に反応する。
  • 他人の感情や言葉、表情に強く影響を受ける。
  • 新しい環境や突然の変化に対して不安や恐怖を感じやすい。
  • 細かいことに気付きやすいが、それが逆に負担となる場合がある。

これらの特性を持つ子どもたちは、学校という多様な刺激が集まる場において、特に大きなストレスを感じることがあります。そのため、HSPの特性を理解し、適切にサポートすることが不登校を未然に防ぐためには非常に重要です。

HSPの特性が不登校につながる理由

HSPの特性を持つ子どもたちにとって、学校生活は過酷な環境になることがあります。たとえば、以下のような状況が考えられます。

  • 感覚過敏によるストレス
    体育の授業で使うマットの埃臭さや鉄棒の金属の匂い、教室のざわめきや蛍光灯の明るさなど、学校ではさまざまな感覚刺激があります。これらがHSPの子どもにとっては非常に強い不快感やストレスの原因となることがあります。
  • 人間関係の過剰な負担
    他人の表情や言葉に敏感なHSPの子どもたちは、友達との些細な言い合いや教師からの指摘に深く傷つくことがあります。また、教室内の人間関係における緊張感や圧力を過剰に感じることもあります。
  • 新しい環境への不安
    学年が変わったり、クラス替えがあったりするたびに、新しい環境に適応するための負担が非常に大きくなります。HSPの子どもは「慣れるまで」のハードルが高いため、これが登校しぶりや不登校につながることがあります。

感覚過敏と回避行動の関係

感覚過敏とその影響

感覚過敏は、HSPの特性を持つ子どもたちに共通する課題です。具体的には、以下のような感覚が問題になることが多いです:

  • 音:教室内のざわめきや、授業開始のチャイム、運動会のピストル音など。
  • 匂い:給食の匂いや校庭で使う道具の匂い、体育館の靴の匂い。
  • 触覚:制服のタグの感触や、体育の授業で使う道具の感触。

これらの感覚刺激が強すぎると、子どもは無意識のうちにその場を避けるようになります。最初は「嫌だな」と感じる程度かもしれませんが、それが続くと「行きたくない」という気持ちに変わり、最終的には「行けない」と感じるようになります。

回避行動の強化

不快な状況から逃れたいという気持ちは、人間として当然の反応です。しかし、この回避行動が習慣化してしまうと、不登校という形で現れることがあります。たとえば、以下のような流れです:

  1. 体育の授業で鉄棒の匂いが気になり、それが嫌で体育を休む。
  2. 体育の授業を休んでいると、クラスメートからの視線が気になるようになる。
  3. 体育だけでなく、教室全体に対しても居心地の悪さを感じるようになる。
  4. 最終的に学校全体を避けるようになり、不登校につながる。

このように、感覚過敏と回避行動の連鎖が、不登校を引き起こすリスクを高めてしまうのです。

HSPの子どもに適した家庭環境の整え方

HSPの特性を持つ子どもたちにとって、家庭は「心の安定を保つ場所」であることが何よりも重要です。学校生活で受ける刺激やストレスを家庭で適切に緩和できれば、不登校や登校しぶりを防ぐことにつながります。

1. 子どもの感覚に寄り添う環境作り

HSPの子どもたちは、周囲の刺激に対して敏感であるため、自分にとって心地よい環境を持つことが必要です。家庭で以下のような工夫を取り入れると良いでしょう。

  • 静かな空間の確保
    子どもが刺激を感じやすい場合、自分の部屋やリビングの一角に、静かで安心できる空間を用意することが大切です。余計な音や光を排除し、自分のペースでリラックスできる場所を作りましょう。
  • 柔らかい素材や心地よい感触のアイテム
    感覚過敏を持つ子どもは、肌触りの悪い服や寝具にストレスを感じることがあります。子どもが「これなら気持ちいい」と感じる素材のものを選ぶことが大切です。
  • 家庭の匂いを見直す
    家庭内の匂いも子どもに影響を与えることがあります。香りの強い柔軟剤や芳香剤がストレスの原因になる場合もあるため、できるだけ無香料のものを使用するなど、配慮が必要です。

2. HSP特有の感情を尊重した声かけ

HSPの子どもたちは、親の何気ない一言にも敏感に反応します。そのため、家庭での声かけや会話の仕方には注意が必要です。

  • 肯定的な言葉を意識する
    子どもがミスをしたり、苦手なことに直面したりしたときは、「どうしてできないの?」ではなく、「挑戦しようとしたことがすごいね」「次は少しずつやっていこうね」といった肯定的な言葉をかけましょう。
  • 子どもの感情を言葉で受け止める
    HSPの子どもは、感情を自分でうまく処理できないことがあります。たとえば、「学校でみんなが大きな声で話してて疲れた」と言ったときには、「そうだったんだね。疲れるよね」と共感の言葉を返すことで、子どもは安心感を得られます。
  • 過剰に心配しすぎない
    HSPの子どもは親の感情にも敏感です。お母さまが不安そうな表情や言葉を見せると、それを敏感に感じ取り、さらに不安を抱えることがあります。心配する気持ちは自然なものですが、それを子どもに直接伝えすぎないよう注意しましょう。

3. 楽しい体験で刺激に慣れさせる

HSPの子どもにとって、苦手な刺激に慣れることは非常に難しいことです。しかし、「楽しい体験」を通じて徐々に慣れていくことができれば、不登校リスクの軽減につながります。

  • 苦手な状況に段階的に触れる
    たとえば、体育の授業で使う鉄棒の匂いや感触が苦手な場合、まずは鉄棒に軽く触れるところから始め、次に短時間ぶら下がってみる、といった具合に段階的に慣れていくことを目指します。
  • 興味を引き出すアプローチ
    子どもの好きなキャラクターや趣味を取り入れたアプローチを試みることも効果的です。たとえば、鉄棒が苦手な場合でも、好きなキャラクターが描かれた手袋を使うと抵抗が減ることがあります。
  • ポジティブな結果を共有する
    苦手な状況に少しでも触れられた場合は、「よく頑張ったね」と伝え、成功体験として記憶させるようにします。これは、次回以降の挑戦を後押しするモチベーションとなります。

学校との協力でHSPの子どもを支える

家庭だけでなく、学校とも協力しながらHSPの子どもを支えていくことが重要です。

1. 学校との情報共有

HSPの特性について、学校側としっかり情報を共有することで、子どもに適した配慮がしやすくなります。

  • 子どもの特性を伝える
    具体的にどのような刺激に対して敏感なのかを、担任の先生やスクールカウンセラーに伝えることが重要です。たとえば、「体育の授業で使うマットの埃が苦手」といった具体例を挙げると、先生も配慮しやすくなります。
  • 柔軟な対応をお願いする
    子どもが特定の教科や状況で苦手意識を抱えている場合、一時的に授業を見学させたり、別の活動に参加させたりする柔軟な対応をお願いしましょう。

2. 学校全体での支援体制

HSPの特性を持つ子どもに対する支援は、担任の先生だけではなく、学校全体で取り組むべき課題です。

  • 教職員の理解を深める
    HSPについての研修や勉強会を行い、教職員がこの特性を理解することで、学校全体での支援がスムーズになります。
  • 安心感のある環境づくり
    教室内の音量や照明など、子どもが安心して過ごせる環境を整える努力を、学校全体で進めることが重要です。

最後に:HSPの特性に寄り添う

HSPの特性を持つ子どもたちは、確かに周囲の刺激に敏感で、不登校のリスクを抱えやすい側面があります。しかし、その敏感さは、同時に他者への気遣いや、芸術的な才能、繊細な観察力といった「強み」にもつながります。

お母さまが子どもの特性を受け入れ、その良さを認めることで、子どもは自信を持って学校生活を乗り越えられるようになります。不登校リスクを未然に防ぐために、今日から少しずつできることに取り組んでみてください。

ポイント要点必要な行動
周囲への過敏性(HSP)HSPの子どもは感覚刺激や人間関係に敏感で、不登校リスクが高まる傾向がある。感覚過敏を理解し、苦手な刺激を減らす環境作りを行う。段階的に慣れさせ、成功体験を積ませる。
感覚過敏の影響音、光、匂いなどの刺激が強いと、子どもが学校を避ける要因となり得る。教室の環境や学校生活での刺激を減らす工夫を行い、子どもの負担を軽減する。
人間関係の負担他人の言葉や態度に敏感なHSPの子どもは、些細なトラブルでも深く傷つきやすい。トラブルが起きた際には共感を示し、子どもの気持ちを受け止め、安心感を与える。
回避行動の強化過敏さから回避行動を取ると、それが習慣化し、不登校につながりやすくなる。苦手な状況に段階的に触れさせ、無理のない範囲で少しずつ慣れさせる。
学校との情報共有子どものHSP特性を学校に伝えることで、きめ細やかな支援が可能になる。子どもが特に苦手とする刺激や状況を担任に共有し、適切な配慮をお願いする。

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私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

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不登校に繋がる4つのリスク: ③兄弟姉妹が不登校

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因に焦点を当て、子どもたちが再び学校に戻れるようになるための支援を行っています。本日は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、3つ目のリスクである「兄弟姉妹が不登校である」場合についてお話しします。

このテーマは、不登校に悩む保護者の方にとって特に敏感な話題ではないでしょうか。兄弟姉妹の不登校が連鎖するケースは決して珍しいものではなく、多くの家庭で共通する課題です。この問題について深く掘り下げることで、少しでも気づきや不安の軽減に繋がればと思います。


目次


不登校の「兄弟姉妹間の連鎖」という現象

不登校が兄弟姉妹間で連鎖する現象は、学校現場や心理支援の現場でも広く知られています。一人の子どもが不登校になると、家族内での雰囲気や環境、さらには家族全体の心理的な影響が、他の兄弟姉妹にも波及することがあるのです。

例えば、不登校の兄や姉と生活を共にする中で、「学校に行かない」という行動が身近に感じられ、それを模倣する形で弟や妹も不登校になるケースがあります。このような場合、不登校という選択肢が家庭内で「あり得ること」として無意識的に受け入れられてしまい、結果として兄弟姉妹間の連鎖が起きやすくなるのです。

また、保護者の対応にも影響が出ることがあります。上の子どもが不登校を経験した場合、保護者は「以前に試したアプローチが効かなかった」という記憶を持つため、次の子どもが不登校になったときに「どうせ無駄だ」と感じてしまい、初期段階での対応が弱くなることがあります。これは決して保護者の怠慢ではなく、過去の経験から来る自然な心理的反応です。しかし、この「対応の弱化」が結果として兄弟姉妹間の不登校の連鎖を助長してしまうことがあります。


「兄弟姉妹間の連鎖」による保護者の悩み

兄弟姉妹の間で不登校が連鎖すると、多くの保護者は自責の念を抱くことになります。「親としての育て方が間違っていたのではないか」「家庭環境が原因ではないか」といった思いが、日々の生活の中で心に重くのしかかるのです。

さらに、周囲からの視線や無理解も保護者を追い詰めます。学校の先生や相談機関のスタッフから「家庭に問題があるのでは?」と暗に示唆されたり、親戚や近所の人々から心無い言葉をかけられたりすることもあります。そのような中で、保護者が「自分が悪い」「自分のせいで子どもがこうなった」と感じてしまうのは当然のことです。

一方で、自責の念が強すぎると、逆に支援を受け入れる意欲が低下するケースもあります。保護者が「自分はもう十分苦しんでいる」と感じるあまり、「これ以上は何もしなくてもいいのではないか」と思い込んでしまうこともあるのです。このような心理的なジレンマが、兄弟姉妹間の不登校の連鎖をより深刻なものにしてしまう可能性があります。


兄弟姉妹の不登校連鎖が起こる理由

兄弟姉妹間で不登校が連鎖する理由には、いくつかの要因が考えられます。ここでは、その主要な理由を詳しく掘り下げてみます。

1. 模倣と学習の影響

子どもたちは、日常生活の中で家族の行動や態度を観察し、それを無意識に模倣する傾向があります。不登校の兄や姉がいる場合、弟や妹は「学校に行かない」という選択肢が現実的なものとして目に映ります。それは単なる模倣行動ではなく、「休むことが許される」という価値観を共有してしまうことにも繋がります。

この模倣の影響は、特に家庭内で不登校の子どもがどのように扱われているかによって大きく異なります。不登校の兄や姉が家族から温かく受け入れられている場合、それを見た弟や妹は「自分も学校に行かなくても大丈夫なのだ」と感じることがあります。一方で、兄や姉が不登校で強く叱責されている場合でも、「学校に行かない」という行動自体が頭に残り、ストレスや不安を感じたときに同じ選択肢を取る可能性があります。

2. 家庭内の雰囲気の影響

不登校の子どもがいる家庭では、自然とその子どもに焦点が当たるようになります。親がその子どもに多くの時間やエネルギーを割くことで、他の兄弟姉妹が心理的に疎外感を覚えることもあります。この疎外感が、不登校の兄や姉への嫉妬や無力感となり、結果的に「自分も学校に行かない」という行動を選択する要因になることがあります。

また、不登校の子どもがいる家庭では、家族全体の雰囲気が不安定になりがちです。親が抱えるストレスや不安が家庭内に伝わり、それが他の兄弟姉妹にも影響を与えることで、不登校が連鎖するリスクを高めます。

3. 保護者の対応の変化

上の子どもが不登校になった経験を持つ親は、次の子どもに対して異なる対応をすることがあります。過去の経験があるために、過度に慎重になったり、逆に諦めが早くなったりすることがあります。この「対応の変化」が、兄弟姉妹間の不登校の連鎖を助長する可能性があります。

たとえば、上の子どもの不登校が長引いた経験から、「無理に登校させても逆効果だ」という思い込みが強くなると、次の子どもが不登校になった際にも早い段階で支援を諦めてしまうことがあります。一方で、過去の経験から「不登校はなんとしても防がなければならない」と強く感じるあまり、子どもに過度なプレッシャーを与えてしまい、それが逆効果となるケースもあります。


兄弟姉妹間の違いを見つめる重要性

兄弟姉妹の不登校が連鎖するケースにおいて、特に重要なのは「個々の子どもの違い」に目を向けることです。同じ家庭で育っていても、兄弟姉妹はそれぞれ異なる性格や価値観、経験を持っています。そのため、一人ひとりの状況や心理的背景を丁寧に見つめることが、支援の第一歩となります。

たとえば、保護者が学校の先生や支援者と話す際、「上の子もこうだった」という話題に触れることがあります。このような場合、支援者は「兄弟姉妹の違い」に意識を向けることで、より個別的な対応が可能になります。「上の子の場合はこうでしたね。では、今回の子どもさんはどうでしょうか?」という問いかけを通じて、兄弟姉妹それぞれの状況を把握することができます。

兄弟姉妹の不登校リスクにどう向き合うか

不登校が兄弟姉妹間で連鎖するリスクを防ぐためには、家庭環境や保護者の対応において意識的なアプローチが求められます。以下に、家庭や学校、そして保護者自身が取り組むべき具体的な方法を詳しく解説します。

1. 家庭での雰囲気づくり

家庭内での雰囲気が、不登校の連鎖に大きな影響を及ぼすことは先述した通りです。したがって、家庭で「安心感」を生み出す雰囲気づくりが重要です。

  • 一人ひとりの子どもに寄り添う
    兄弟姉妹の中で一人が不登校になった場合、親の関心がその子に偏りがちです。これは仕方のないことですが、他の兄弟姉妹が「自分は見てもらえていない」と感じると、心理的な不安定さが生まれる可能性があります。意識的に他の兄弟姉妹とも向き合い、「あなたも大切だ」というメッセージを伝えることが大切です。
    • ポジティブなコミュニケーション
      家庭内での会話が「学校に行くべきかどうか」といったテーマばかりに集中すると、兄弟姉妹全員がプレッシャーを感じることがあります。家族全員がリラックスできる話題を意識的に取り入れ、ポジティブなコミュニケーションを増やす努力が必要です。
    • 家庭のルールを柔軟に保つ
      不登校の子どもに特別な配慮をする必要がある場合でも、家庭全体のルールが極端に変わってしまうと、他の兄弟姉妹が混乱することがあります。たとえば、家事や宿題の取り組み方、食事の時間など、家族全体で共有するルールは、できるだけ公平に保つことが理想的です。
  • 家庭内での「役割分担」を意識する
    不登校の子どもがいる場合、その子どもへの対応に時間やエネルギーが集中することは避けられません。しかし、その結果として他の兄弟姉妹が心理的に孤立してしまうリスクがあります。そこで、家庭内での「役割分担」を意識することが重要です。
    たとえば、次のような対応が効果的です。
    • 兄弟姉妹に役割を与える
      不登校の兄や姉がいる場合、弟や妹に小さな家事や家族の一員としての役割を与えることで、「自分は家庭の中で必要とされている」という実感を持たせることができます。これは、不登校の連鎖を防ぐための心理的な支えになります。
    • 全員が平等に評価される環境を作る
      家庭内で、どの子どもも平等に扱われていると感じられる環境を作ることが大切です。不登校の子どもに対する特別な配慮が必要な場合でも、他の兄弟姉妹にも「あなたも大切な存在だよ」というメッセージを伝えるよう意識しましょう。
  • 兄弟姉妹間の違いを理解し、尊重する
    兄弟姉妹が不登校に陥った場合、保護者はその共通点ばかりに目が行きがちです。しかし、不登校という同じ行動を取ったとしても、その背景にある理由や心理的な動機はそれぞれ異なることがほとんどです。具体的には次のような点に注意を払いましょう。
    • 子どもごとの不安やストレスの要因を探る
      兄が不登校になった理由と、弟が不登校になる理由は必ずしも同じではありません。それぞれの子どもが抱える不安やストレスを丁寧に掘り下げることで、より適切な支援が可能になります。
    • 一人ひとりのペースを尊重する
      兄弟姉妹であっても、性格やペースは異なります。ある子どもには効果的だったアプローチが、別の子どもには逆効果となる場合もあります。そのため、固定観念にとらわれず、柔軟な対応を心がけることが大切です。
  • 兄弟姉妹の「成功体験」を大切にする
    兄弟姉妹間で不登校が連鎖するリスクを防ぐためには、子どもたちが「自分にはできる」という成功体験を持つことが重要です。不登校の子どもに焦点を当てるだけでなく、他の兄弟姉妹にも成功体験を提供する機会を意識的に作りましょう。
    • 得意分野を伸ばすサポートをする
      たとえば、スポーツや芸術、学習など、子どもが興味を持っている分野をサポートすることで、自信を育むことができます。
    • 小さな成功を褒める
      どんなに小さなことでも、子どもが達成感を感じられるような成功体験を見つけ、それを褒めることが大切です。

2. 学校との連携

兄弟姉妹の不登校が連鎖するケースでは、学校との連携も重要なポイントです。学校が家庭の状況を理解し、適切なサポートを提供することで、連鎖を防ぐことができます。

  • 兄弟姉妹ごとの個別対応
    学校が兄弟姉妹を一括りにして対応するのではなく、それぞれの子どもに合わせた支援を提供することが重要です。たとえば、「上の子の場合はこうだったので、同じように対応する」といった固定観念を持たず、一人ひとりの性格やニーズを丁寧に把握する必要があります。
  • 担任と保護者の定期的な連絡
    担任の先生と保護者が定期的に連絡を取り合うことで、家庭の状況を学校が把握しやすくなります。これにより、学校側もより適切な支援を提供できるようになります。
  • 学校全体での理解と協力
    不登校は、個々の担任の先生だけではなく、学校全体で取り組むべき課題です。不登校に対する理解を深めるための研修や勉強会を定期的に実施し、教職員全体で子どもたちを支える体制を整えることが大切です。

3. 保護者自身のケア

兄弟姉妹間の不登校が連鎖するリスクに向き合う中で、保護者自身が心身ともに疲弊してしまうことがあります。お母さま自身のケアも、家族全体の安定に欠かせない要素です。

  • 一人で抱え込まない
    不登校の問題は、一人で解決することが難しい課題です。信頼できる支援者や相談窓口を活用し、気軽に相談できる環境を整えることが大切です。
  • 「完璧な親」である必要はない
    保護者が「すべてを解決しなければならない」と感じてしまうと、かえって家庭内の雰囲気が硬直化することがあります。「自分なりにできることをしている」というスタンスで、少し肩の力を抜くことも必要です。
  • リフレッシュの時間を確保する
    お母さまが自分自身のための時間を持つことも大切です。短い時間でも良いので、趣味やリラックスできる活動を取り入れることで、家庭での対応に前向きな気持ちを保つことができます。

不登校リスクの「連鎖」を防ぐ家庭の力

兄弟姉妹間での不登校の連鎖を防ぐためには、家庭内での支え合いと、柔軟な対応が鍵となります。兄弟姉妹がそれぞれの個性を尊重され、自分の価値を感じられる環境を整えることで、不登校のリスクを大きく軽減することができます。

また、保護者が自分自身を責めすぎないことも重要です。子どもたちの未来は、今日の小さな積み重ねによって変わる可能性があります。焦らず、じっくりと向き合うことで、連鎖を断ち切り、子どもたちがそれぞれの道を前向きに歩むことを支えることができるのです。

ポイント要点必要な行動
兄弟姉妹が不登校である兄弟姉妹間で不登校が連鎖することが多い。模倣や家庭内の対応の影響が大きな要因となる。兄弟姉妹ごとの違いを意識し、それぞれに合った対応を取る。家庭内の役割分担や公平な接し方を心がける。
模倣行動の影響不登校の兄弟姉妹を見て「休むことが許される」という意識が生じ、不登校が広がる可能性がある。不登校の子どもに必要な配慮を行いつつ、他の兄弟姉妹への関心も分散させ、孤立感を抱かせない。
保護者の対応の変化一人目の不登校経験が次の子どもへの対応に影響を与え、早期の支援を躊躇することがある。保護者が自責の念を抱きすぎないよう意識し、専門家や学校のサポートを受けながら柔軟に対応する。
家庭内の雰囲気の影響家庭が不登校の兄弟姉妹に集中すると、他の子どもが心理的に疎外感を抱く可能性がある。家庭内で全ての子どもに公平な関心を向け、ポジティブなコミュニケーションを増やす。
学校との連携の重要性学校が兄弟姉妹それぞれの状況を把握し、適切な支援を提供することが不登校リスク軽減の鍵となる。学校に兄弟姉妹の特性や状況を詳細に伝え、一人ひとりに合った対応を相談する。

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学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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不登校に繋がる4つのリスク: ②欠席の経験が多い

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因にアプローチすることで、子どもたちが再び学校に戻れるようになるためのサポートを行っています。

今回は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、2つ目の「欠席の経験が多い」ことについて詳しくお話しします。

不登校を単なる「出来事」として捉えるのではなく、その背景にある心の動きや環境要因を冷静に理解することが、不登校の未然防止に繋がります。


目次


「過去の欠席歴」の心理的影響

人間は、どのような理由であれ「自分だけが長期間休む」という状況に直面すると、不安や孤独感を覚えやすくなります。それは大人でも同じことですが、小さな子どもにとっては、こうした経験が心に残す影響は計り知れません。

たとえば、長期間学校を休んだ理由が病気やけがであった場合でも、子どもたちは「自分はずる休みをしてしまった」「他の子のような”普通”ではなくなった」という感覚を持ちやすくなります。そして、復帰する際に、周囲の目や反応を過剰に気にすることが多くなります。この不安感が、「また同じ状況になったらどうしよう」という恐れを生み、さらなる不安を抱かせるのです。

一方で、不登校の直接的な原因が人間関係のトラブルや学校生活への不適応である場合は、「学校に行かない」という選択肢が心の中でより強く根付くことがあります。この選択肢は、最初こそ本人にとって「非常手段」だったかもしれませんが、一度それが功を奏したと感じれば、次回以降は容易に同じ道を選ぶようになります。

これらの心理的な動きは、子どもにとって必ずしも意識的なものではありません。むしろ無意識のうちに、過去の経験が現在の行動に影響を与えているケースがほとんどです。したがって、「過去の欠席歴がある」というリスクは、その子どもの持つ内面的な傾向を理解するための重要な手がかりとなります。


一度不登校を経験した場合の特有の課題

よく頂く質問の一つに、「長期欠席となったことは、その後の学校生活にどう影響しますか?」というものがあります。多くの場合、子どもたちは再登校に成功することで自信を取り戻します。しかしながら、ここで注意すべきは、過去の不登校経験が完全に「リセット」されるわけではないということです。

不登校の経験をした子どもは、再び困難な状況に直面したときに「学校に行かない」という選択肢を容易に思い浮かべる傾向があります。これには心理的なメカニズムが関係しています。人間はストレスを感じると、過去にとった行動を無意識のうちに繰り返しやすくなる性質を持っています。たとえば、大声をあげて不安を解消する人は、次回も同じ行動をとる可能性が高いのです。同じように、「学校を休む」という選択肢が一度でも心に根付いた子どもは、その後も同じ手段を取りがちになるのです。

この傾向は、特に小学校から中学校、そして高校といった新しい環境に移行する際に顕著になります。環境が変わるたびに適応が求められるため、過去の不登校経験が「次もそうなるかもしれない」という不安を呼び起こしやすくなるのです。これは不登校経験のある子どもたちが、新しい環境でつまずきやすい理由の一つとも言えます。


家庭や学校ができる具体的な対策

では、「過去の欠席歴がある」子どもをどうサポートすれば良いのでしょうか?ここでは、家庭と学校で実践できるいくつかの具体的な方法を紹介します。

1. 家庭での対応

お母さまがまず取り組むべきなのは、子どもが「安心感」を持てる環境を整えることです。たとえば、次のような取り組みが効果的です。

  • 肯定的な声かけを習慣化する
    「学校に行かないと将来困る」という脅しではなく、「休むのは悪いことではないけれど、どのように戻るかが大切だよ」といったポジティブなメッセージを伝えることが重要です。
  • 過去の欠席経験について話し合う
    子どもが過去に欠席していた理由や、そのときの気持ちを振り返る機会を持つことで、次に同じ状況になった際の対策を一緒に考えることができます。
  • 失敗を恐れない姿勢を伝える
    子どもが学校生活で失敗することを過剰に恐れないよう、「失敗は成長の一部」という考え方を伝えることも効果的です。

2. 学校での対応

一方で、学校側も過去の欠席歴を考慮した対応が求められます。

  • 復帰支援の計画を立てる
    例えば、長期欠席明けの子どもが徐々に登校日数を増やせるよう、柔軟なスケジュールを組むことが考えられます。
  • 担任の先生のサポート体制
    担任の先生が、子どもの過去の欠席歴や家庭環境についてしっかり把握し、復帰時に積極的なフォローを行うことが大切です。
  • クラスメートの理解を促す
    周囲の生徒に、復帰してきた子どもを受け入れる姿勢を育むための教育を行うことも、再登校を支える上で欠かせません。

最後に

「欠席の経験が多い」というリスクを抱える子どもにとって、最も重要なのは家庭と学校の連携による支援体制です。不登校は決して悪いことではありませんが、その経験を適切に理解し、将来に向けて活かすための努力が必要です。家族が子どもたちの心に寄り添って、安心して自分のペースで前進できる環境を提供することで、不登校という問題を乗り越える道が見えてきます。

ポイント要点必要な行動
過去に多い欠席歴がある過去に長期間の欠席経験がある子どもは、不登校を選択しやすくなる。休むことが「できる選択肢」として心に根付く場合が多い。過去の欠席経験を学校と共有し、復帰時のフォローを丁寧に行う。少しずつ学校生活に慣れる支援を続ける。
欠席が心に与える影響長期間の欠席経験が「再び休むのも簡単」との認識を強化し、不登校を選びやすい心理状態を作る。過去の欠席経験を否定せず、それを乗り越えたことを子どもと共に振り返り、前向きな経験として活用する。
欠席経験の連鎖のリスク休むことに対する心理的なハードルが低くなるため、再度の欠席が起こりやすくなる傾向がある。欠席が続く場合でも、日常生活のリズムを維持するよう促し、登校再開への準備を整える。
学校との情報共有の重要性欠席経験がある場合、担任や支援者に情報を共有することで、きめ細やかなフォローが可能になる。登校再開前の面談や電話連絡を通じて、子どもが安心して学校に戻れる準備を整える。
安心感を与える環境作り長期欠席を経験した子どもが学校に戻る際、安心感を与える環境が重要となる。友人関係やクラスでの過ごし方に配慮し、最初は短時間から徐々に登校時間を延ばしていく。

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不登校に繋がる4つのリスク: ①不十分な睡眠

不登校に繋がる4つのリスク1不十分な睡眠-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因に焦点を当て、子どもたちが再び学校に戻れるようになるための支援を行っています。本日は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、最初の「不十分な睡眠」に関するリスクについてお話しします。

「睡眠不足」や「睡眠の質の低下」は、不登校のリスクに大きく関わる要因です。子どもの心身の発達にとって睡眠は不可欠であり、そのバランスが崩れると、学業や人間関係、そして何よりも子どもの意欲や自信に深刻な影響を与えます。本稿では、このリスクの背景と、その対策について詳しく考えていきたいと思います。


目次


睡眠と不登校の関係性

1. 子どもの「睡眠」の重要性

子ども時代の睡眠は、大人以上に重要な役割を果たします。睡眠中、脳は日中に受けた刺激を整理し、情報を記憶として定着させるだけでなく、体の成長や免疫力の維持にも関わっています。小中学生の子どもたちは、成長ホルモンが夜間に活発に分泌されるため、十分な睡眠が確保されていないと、心身両面での健康に支障をきたすことがあります。

しかしながら、現代の子どもたちは「十分な睡眠」が得られていないケースが少なくありません。理由はさまざまですが、主に以下のような点が挙げられます:

  • スマホやゲームなど、夜遅くまでのデジタル機器使用。
  • 学校や塾の宿題、部活動による過密スケジュール。
  • 家庭の夜型化による就寝時間の遅延。

特にデジタル機器の影響は大きく、夜間にスマホやタブレットを使用すると、ブルーライトが脳の覚醒状態を維持してしまい、入眠を妨げます。その結果、子どもたちは夜更かしが常態化し、翌朝の起床が困難になり、登校が難しくなるのです。


2. 不十分な睡眠が不登校に与える影響

十分な睡眠が取れていないと、以下のような影響が子どもたちに現れることがあります:

  • 気分の不安定さ
    睡眠不足は脳の感情をコントロールする部分に直接影響を与えるため、イライラしやすくなったり、悲観的になったりします。これにより、学校生活における人間関係のトラブルが増える可能性があります。
  • 集中力や記憶力の低下
    学業成績の低下につながり、「学校に行きたくない」という気持ちを引き起こす原因となります。
  • 身体的不調
    睡眠不足は免疫力を低下させ、体調を崩しやすくします。これが繰り返されると、「体調が悪いから学校を休む」というパターンができ、登校意欲の低下につながります。
  • 生活リズムの乱れ
    一度生活リズムが崩れると、元に戻すのは難しくなります。夜更かしと昼夜逆転が習慣化すると、朝起きるのが苦痛になり、不登校のリスクが一気に高まります。

「不十分な睡眠」の背景にある現代的課題

1. スマホやゲームが子どもたちに与える影響

現代の子どもたちは、スマホやゲームといったデジタル機器に囲まれて生活しています。それ自体が悪いわけではありませんが、使用時間や使い方が適切でない場合、睡眠不足を引き起こす要因になります。特に、以下のような影響が指摘されています:

  • 夜間の使用による入眠障害
    スマホやタブレットのブルーライトは、脳内のメラトニン(眠気を誘発するホルモン)の分泌を抑制します。その結果、夜遅くまで覚醒状態が続き、自然な眠気が来にくくなります。
  • 過剰な刺激による興奮状態
    アクションゲームやSNSでのやり取りは、子どもの脳を興奮状態にします。この影響で、ベッドに入ってもなかなか眠れない、という子どもが増えています。

2. 家庭の夜型化と生活リズムの乱れ

家族全体が夜型の生活を送っている場合、子どももそのリズムに引きずられることがあります。たとえば、夜遅くまでテレビを見ていたり、親が夜更かししている姿を見たりすることで、子どもにとって「遅くまで起きていること」が当たり前になります。このような環境では、規則正しい生活リズムを維持するのが難しくなります。


不十分な睡眠を防ぐための具体的アプローチ

睡眠不足が不登校のリスクを高めることを考えると、家庭内で睡眠環境を整え、生活リズムを改善することが重要です。ここでは、具体的なアプローチをいくつかご紹介します。


1. 睡眠環境を整える

子どもがリラックスして眠れる環境を作ることが大切です。

  • 寝室の照明を見直す
    就寝前は、蛍光灯ではなく暖色系の間接照明に切り替えることで、脳がリラックスしやすくなります。
  • デジタル機器の使用制限
    寝る1時間前にはスマホやタブレットの使用を控えるルールを設けることが有効です。リビングに充電スペースを設け、子どもの枕元にスマホを持ち込ませないようにするのも良いでしょう。
  • 快適な寝具を用意する
    マットレスや枕の硬さ、肌触りなどを見直し、子どもに合った寝具を選びます。

2. 規則正しい生活リズムを促す

生活リズムを整えることで、自然と睡眠の質が向上します。

  • 朝日を浴びる
    起床後に太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされ、1日のリズムが整いやすくなります。
  • 食事のタイミングを一定にする
    朝食をしっかりとることで、体が活動モードに切り替わりやすくなります。また、夜遅い時間の食事は避けるようにしましょう。
  • 寝る時間と起きる時間を固定する
    平日と休日で大きく睡眠時間が異ならないようにすることが重要です。

3. 睡眠の大切さを学ばせる

子ども自身が睡眠の重要性を理解することで、主体的に生活を改善する意欲が高まります。科学的なデータを使って、「十分な睡眠が取れていると集中力が上がる」「成績が良くなる」といったメリットを伝えるのも効果的です。


最後に

「不十分な睡眠」というリスクは、不登校の背後に隠れがちな要因の一つですが、実際には非常に大きな影響を及ぼします。子どもたちが十分に眠れる環境を整え、生活リズムを見直すことで、不登校のリスクを大幅に減らすことが可能です。

睡眠は、体と心を整える基盤です。お母さまが家庭全体の生活リズムを見直し、子どもたちが安心して休める環境を整えることが、不登校の予防につながります。まずは、今日からできる小さな一歩を始めてみてください。

ポイント要点必要な行動
不十分な睡眠睡眠不足は気分や集中力の低下、生活リズムの乱れを引き起こし、不登校の大きな要因となる。デジタル機器の使用制限や規則正しい生活リズムを整え、朝日を浴びるなどして睡眠の質を向上させる。
睡眠不足の影響睡眠不足は学業成績や人間関係に悪影響を与え、不登校リスクを高める。規則正しい睡眠習慣を家庭全体で共有し、子どもが十分な休息を取れる環境を整える。
デジタル機器の影響夜間のスマホ使用が睡眠を妨げる要因となり、昼夜逆転の生活を招く可能性がある。スマホやタブレットの使用時間を制限し、寝る1時間前にはデジタル機器を使用しない習慣をつける。
家庭の夜型化家族全体が夜型の生活を送ると、子どももその影響を受けやすくなる。家庭全体で規則正しい生活を心がけ、親が睡眠習慣の良いロールモデルとなる。
睡眠の質の改善時間だけでなく睡眠の質も重要で、環境やリズムが整わないと十分な休息が得られない。寝室の環境を整え、暗く静かな空間を用意する。寝具や照明にも気を配り、快適な睡眠をサポートする。

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不登校の子どもとの対話法とは?

不登校の子どもとの対話法-記事の見出し画像

児童心理司の藤原です。ToCo株式会社の顧問として、不登校問題に向き合うための支援プログラムの開発に携わっています。本記事では、「不登校の子どもとの対話法」をテーマに、具体的な方法と心がけるべき点について深掘りします。不登校に悩む保護者の方がこの記事を通じて、新たな視点やアプローチを得て、子どもとの関係を前向きに構築する助けとなれば幸いです。


目次


第一章:声をかけることの意義と基盤

不登校の問題に直面したとき、多くの親御さんは「どう接したらいいのかわからない」という不安や戸惑いを抱えています。特に、子どもに声をかけることすら怖いと感じ、「何を言えば傷つけないのか」「どこまで踏み込んでいいのか」と悩むケースも少なくありません。しかし、親からの声かけは、子どもの孤独感を和らげ、再び周囲とつながるきっかけを作る重要な役割を果たします。

声をかける行為は、単にコミュニケーションを取るだけでなく、子どもの心に寄り添い、安心感を与えるための大切な行動です。不登校の子どもは、外の世界との接触を断ち、心を閉ざしていることが多いため、親が積極的に「君を見ているよ」「君の味方だよ」というメッセージを伝えることが、第一歩となります。

とはいえ、声をかける際に「学校に行こう」「どうして行けないの?」といった言葉をかけると、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。そのため、適切な声かけの方法を知り、子どもの気持ちを尊重する姿勢が不可欠です。

親子の会話のイメージ。

声かけの意義

声をかけることが子どもに与える影響は多岐にわたります。

  • 自己存在の肯定感: 「親は自分を気にかけている」と感じられることで、自分の存在意義を再確認できます。
  • 安心感: 自分の感情が否定されることなく受け止められると、不安や緊張が軽減されます。
  • 問題解決の土台: 自分の気持ちを言葉にする過程で、自身の悩みを整理しやすくなります。

これらの感覚が積み重なることで、子どもは親との会話を心地よく感じ、心の扉を開きやすくなります。

声かけの基盤となる姿勢

声をかける際に特に大切なのは、「子どもの感情に寄り添う姿勢」です。ただし、共感を誤った形で示すと、子どもが親に依存しすぎるリスクもあります。適切な共感とは、子どもの気持ちを理解しながらも、次の一歩をサポートする姿勢です。具体的には、以下を心がけましょう。

  1. 子どもの言葉を最後まで聞く: 話を遮らず、全体を理解する努力をしましょう。
  2. 感情を否定しない: 子どもが何を感じていても、それが自然な反応であると受け入れることが重要です。
  3. 前向きな視点を共有する: 子どもの気持ちに共感しつつ、その中に潜む希望を引き出す言葉をかけましょう。

第二章:子どもの感情を理解し受け止める

不登校の子どもたちは、心の中に様々な葛藤や不安を抱えています。それは、「学校に行けない」という結果として表れるだけでなく、日常の中で小さな行動にも影響を与えています。しかし、彼ら自身がその感情を的確に言葉にすることは難しく、親にうまく伝えられないことがほとんどです。その結果、親子の間で誤解やすれ違いが生じ、子どもの孤立感がさらに深まってしまう場合もあります。

このような状況で、親が最初にすべきことは「子どもの感情を深く理解し、受け止めること」です。子どもが何を感じ、何に悩んでいるのかを知るためには、焦らず、根気よく対話を続ける必要があります。重要なのは、子どもが感じていることを「正しい」「間違い」とジャッジするのではなく、そのままの形で受け入れる姿勢を示すことです。

親が「話を聞いてくれる」「自分を責めない」と感じられると、子どもは少しずつ心を開くようになります。

感情を引き出すための声かけ

直接的に「どうして学校に行かないの?」と問うことは、プレッシャーとなる可能性が高いです。その代わり、以下のような柔らかい表現を使うと良いでしょう。

  • 「どんなことが気になっているのかな?一緒に考えよう。」
  • 「学校のこと、もし話したくなったら教えてね。」
  • 「今日の朝はどんな気持ちだった?」

これらの言葉は、子どもに「親は自分の味方だ」と感じさせる効果があります。

【親子の会話例】

親: 「最近、学校に行くのが辛そうだね。朝起きたとき、どんな気持ちだった?」
子: 「お腹が痛かった。」
親: 「お腹が痛かったんだね。何か気になることがあったのかな?」
子: 「宿題を忘れたのが怖くて…」
親: 「宿題のことが気になっていたんだね。教えてくれてありがとう。」

このように、気持ちを丁寧に聞き出し、否定せず受け止めることで、子どもの不安を少しずつ解消できます。


第三章:自己肯定感を高めるための声かけ

不登校の子どもたちは、多くの場合「自分はダメだ」「何をやってもうまくいかない」という自己否定感に苦しんでいます。この自己否定感は、学校生活の中での失敗体験や、親や先生からの無意識のプレッシャーによって強化されることがあります。例えば、友人関係のトラブルや勉強でのつまずきがきっかけで、「自分は他の子より劣っている」と感じるようになり、そこから抜け出せなくなるケースも少なくありません。

子どもに寄り添う母親のイメージ

自己肯定感が低下すると、子どもは「どうせ何をやっても無駄だ」と考え、次第に新しいことに挑戦する意欲を失います。親として、この負のスパイラルを断ち切るためには、子どもの小さな成功や努力を見つけ、それを具体的に認めることが必要です。特に、不登校の子どもにとって「家でできた小さなこと」を褒めることは、自己肯定感を取り戻す大きな一歩となります。

努力を認める具体的な声かけ

どんなに小さな努力でも、それを肯定し、褒めることが大切です。子どもが気付いていない成長や変化を見逃さず、具体的に伝えるよう心がけましょう。

  • 「昨日は自分で起きられたね!すごいよ。」
  • 「今日は少し元気そうだね。きっと自分で頑張ったんだね。」
  • 「自分の気持ちを教えてくれてありがとう。それがすごく大事なことなんだよ。」

このように、行動や気持ちを具体的に認めることで、「自分にもできることがある」という前向きな意識を育むことができます。

【親子の会話例】

親: 「今日はちゃんと朝ごはんを食べられたね。」
子: 「うん、でも学校には行けなかった…。」
親: 「学校に行けなかったかもしれないけど、朝ごはんを食べるってすごく大事なことだよ。それだけでも一歩前進だね。」
子: 「そうかな…?」
親: 「そうだよ。毎日少しずつでいいんだから、一緒に頑張ろうね。」

子どもは親から具体的な努力を認められることで、自信を持ちやすくなります。


第四章:不安を分解する声かけ

不登校の子どもたちが抱える不安は、単純なものではありません。漠然とした「学校が怖い」「友達に会いたくない」という思いの背後には、複数の小さな不安が絡み合っています。例えば、「先生に怒られるかもしれない」「友達に嫌われている気がする」「宿題を忘れたらどうしよう」など、具体的な恐怖が積み重なり、一つの大きな不安として感じられていることが多いのです。

こうした不安をそのままにしておくと、子どもは「自分にはどうしようもない」と感じ、さらに閉じこもってしまう可能性があります。そのため、不安を「分解」して具体的な要素に切り分けることが重要です。一つひとつの要素を明確にし、「何が怖いのか」「どこから始めればいいのか」を子どもと一緒に整理することで、解決への道筋を見つけやすくなります。

不安を分解するためのフレームワーク

「感覚」「思考」「行動」のフレームワークは、親子で不安を整理する際にも役立ちます。例えば、次のように進めます。

  1. 感覚: 「何が怖いと感じる?」(身体や心の反応)
  2. 思考: 「どんなことを考えてしまう?」(頭に浮かぶ具体的なイメージ)
  3. 行動: 「そのとき、どんな行動をとっている?」(具体的な反応や行動)

これにより、不安がより具体化し、解決の糸口が見えてきます。

【親子の会話例:不安を分解する】

親: 「学校に行くのが怖いんだね。どんなところが怖いと思う?」
子: 「先生に怒られるのが怖い…。あと、友達に何か言われるのも嫌だ。」
親: 「そうなんだね。先生に怒られるのと、友達に何か言われるの、どっちが一番辛い?」
子: 「うーん、友達かな…。」
親: 「友達のことが気になるんだね。そこから少しずつ一緒に考えてみようか。」

このように、子どもの不安を分解することで、具体的な対処が可能になります。


第五章:状況に応じた声かけのアプローチ

不登校の原因や背景は、子どもによって大きく異なります。学校生活への恐怖、友人関係のトラブル、家庭内でのストレスなど、さまざまな要因が絡み合っている場合が多いです。また、同じ原因があっても、子どもの感じ方や受け止め方は一人ひとり異なるため、親が適切に対応するためには、子どもの状況を正確に理解し、それに合わせたアプローチを取る必要があります。

例えば、学校生活への恐怖心が強い子どもには、無理に学校に行かせようとするのではなく、少しずつその恐怖と向き合えるような声かけが必要です。一方で、友人関係の問題を抱える場合は、子どもがその経験を整理できるような質問や励ましが有効です。このように、状況に応じた柔軟な対応が、子どもをサポートする上で不可欠となります。

1. 学校生活への恐怖心が強い場合

学校への恐怖心が強い子どもには、無理に克服を促すのではなく、恐怖と少しずつ向き合う機会を作ることが重要です。

  • 「学校のこと、少しだけでも話してくれると嬉しいよ。」
  • 「どんなことが怖かったのか、一緒に考えてみようか?」

2. 対人関係の問題が原因の場合

友達や先生との関係が不登校の原因である場合、子どもの感情を受け止めつつ、自分の気持ちを整理できるよう手助けをします。

  • 「友達と何かあったのかな?どんなことが気になる?」
  • 「話したくなったら、いつでも教えてね。」

3. 親への依存が強い場合

親への過度な依存が背景にある場合は、子どもが少しずつ自立できるよう促します。

  • 「自分でできること、試してみるのはどう?」
  • 「少しだけ挑戦してみたら、できたことを教えてね。」

【親子の会話例1:学校生活への恐怖心が強い場合】

親: 「学校のことを思い出すと、どんな気持ちになるのかな?」
子: 「うーん…怖いし、嫌だ。」
親: 「怖いって感じるんだね。どんなところが一番怖いと思う?」
子: 「先生が怒るのが怖い…。あと、みんなに何か言われそうで…。」
親: 「先生のことと、みんなに何か言われそうなことが気になるんだね。どうしたら少しでも安心できるか、一緒に考えてみる?」
子: 「…うん、ちょっと考えてみる。」
親: 「ありがとう。少しずつでいいから、何でも話してくれると嬉しいよ。」

【親子の会話例2:対人関係の問題が原因の場合】

親: 「最近、学校で何か気になることがあった?」
子: 「友達とうまくいってない気がする…。」
親: 「そっか、友達のことが気になるんだね。どんなことがあったのか、もし話せたら教えてくれる?」
子: 「うーん…〇〇ちゃんとケンカして、仲直りしたけど気まずい…。」
親: 「〇〇ちゃんとケンカしたんだね。仲直りできたのはすごいことだけど、まだ気まずい感じがするんだね。」
子: 「うん…。どうしたらいいかわからなくて…。」
親: 「無理に解決しなくても大丈夫だよ。でも、少しずつ自分の気持ちを伝えてみるのもいいかもしれないね。何か手伝えることがあったら言ってね。」

第六章:声かけを続けることの重要性

不登校の解消には時間がかかることが多く、一朝一夕に状況が変わることはありません。そのため、親が継続的に声をかけ、子どもを支え続けることが大切です。特に、不登校が長期化している場合、親が焦りや苛立ちを感じることもありますが、それを子どもにぶつけてしまうと、逆効果になる可能性があります。

声かけを続けることは、子どもにとって「親はいつでも自分を見守ってくれている」という安心感を与えます。また、継続的な声かけを通じて、少しずつ親子間の信頼関係が深まり、子どもが再び心を開く土台を作ることができます。

母と娘の会話のイメージ

継続的な声かけのポイント

  1. 一貫性を保つ: 毎日ポジティブな言葉をかける習慣を作りましょう。
  2. 小さな変化を見逃さない: 子どもの小さな努力や変化を認めることが大切です。
  3. 否定的な言葉を避ける: 「どうしてできないの?」ではなく、「どこが難しいと思う?」といった前向きな表現を意識しましょう。

【親子の会話例1:小さな変化を見逃さない】

親: 「最近、朝は少し早く起きられるようになったね。」
子: 「うん、でも別に学校に行けるわけじゃないし…。」
親: 「学校に行けることも大事だけど、朝早く起きられるってすごいことだよ。一歩前に進んでいる感じがするな。」
子: 「そうかな…。」
親: 「そうだよ。少しずつでいいんだから、進んでいることを一緒に喜ぼうね。」

【親子の会話例2:否定的な言葉を避ける】

親: 「今日はどうしていたの?」
子: 「ゲームしてた…。」
親: 「そっか、ゲームを楽しんでたんだね。どんなゲームだったの?」
子: 「新しいやつ。少し難しかったけど、クリアできた!」
親: 「難しいのにクリアできたんだ!すごいね。それ、きっと集中して頑張ったからだよ。」
子: 「うん…。」
親: 「その集中力、他のことにも活かせたらすごいと思うな。何か挑戦してみたいことがあったら教えてね。」

第七章:親自身のケアも大切に

不登校のお子さんを支える親御さんにとって、子どもの状況や気持ちを受け止めながら日々を過ごすことは、時に大きな精神的・身体的負担となることがあります。親自身が疲れ切ってしまうと、知らず知らずのうちに子どもへの接し方が硬直的になったり、焦りや苛立ちが子どもに伝わってしまうことがあります。子どもと向き合うためには、まず親自身が心に余裕を持つことが大切です。

親のケアが必要な理由

親がストレスを感じている状態では、子どもの気持ちや行動を冷静に受け止めることが難しくなる場合があります。その結果、子どもに「理解されていない」「責められている」と感じさせる可能性が生じるのです。一方で、親が自分を大切にする姿勢を持つことで、家庭全体がより落ち着いた雰囲気になり、子どもも安心して過ごせる環境が整います。

親自身をケアする姿勢が子どもに与える影響

親が自分を大切にしている姿を見せることは、子どもに「自分も大事にしていいんだ」というメッセージを伝えることにつながります。親が心の余裕を持つことで、子どももリラックスした状態で親との会話や時間を楽しむことができるようになるのです。


結論:声かけは未来を切り開くカギ

不登校のお子さんを支える親の役割は、子どもの心を温かく包み込み、社会とのつながりを取り戻すための架け橋となることです。しかし、その過程は決して平坦ではなく、時間と忍耐が必要です。

声かけがもたらす変化

親の声かけは、子どもの心に響き、孤独感を和らげると同時に、再び自分自身の力を信じるきっかけとなります。たとえ小さな一歩であっても、その積み重ねが子どもの未来を明るく照らす礎となるのです。

親自身も成長する機会として

また、不登校の経験は親自身にとっても、子どもとの絆を深め、自己成長を促す貴重な機会となるでしょう。親も子どもも無理をせず、それぞれのペースで歩んでいくことが、長い目で見て最善の結果を生むはずです。

最後に、本記事でご紹介した声かけの方法や考え方が、少しでもお役に立つことを願っています。焦らず、子どもの心に寄り添いながら、日々の対話を大切にしてください。その積み重ねが大きな一歩となるでしょう。

各章要点必要な行動
声をかける意義と基盤声をかけることは、信頼関係の構築と不登校解消の第一歩。孤立感を和らげ、自己肯定感を高める役割を持つ。子どもの感情に寄り添い、否定せず受け止める。共感を示しつつ、前向きな声かけを続ける。一貫してポジティブな態度を心がける。
感情の理解と受容子どもは感情を言葉にするのが難しいため、親が適切に感情を引き出し受け止めることが重要。プレッシャーを与えない表現が効果的。「どんなことが辛い?」など、柔らかい言葉で感情を引き出す。話を遮らず、最後まで聞き、子どもの気持ちを肯定する。安心感を与える対話を心がける。
自己肯定感を高める子どもは自己否定感を抱きがち。小さな努力や行動を具体的に認めることで、前向きな意識と自己肯定感を育てる。努力を褒める際は具体的に伝える。「朝起きられたね」など、小さな成功体験を認める。結果ではなく過程に目を向け、前向きな変化を励ます。
不安の分解不安は漠然とした大きな塊ではなく、複数の要素から成る。これを分解することで、子どもが具体的に向き合いやすくなる。「どんなところが怖い?」と不安を分解し、具体化する。フレームワーク(感覚・思考・行動)を活用して、一つずつ取り組む。子どものペースに合わせる。
状況別の対応不登校の原因は子どもごとに異なる。学校生活の恐怖、対人関係、親への依存など、それぞれに応じた柔軟な対応が必要。子どもの状況を観察し、適切な声かけを選ぶ。例えば、学校生活への恐怖心が強い場合は無理をさせず、対人関係の問題には感情を丁寧に整理するサポートをする。
声かけの継続声かけの効果はすぐには現れないが、継続することで子どもの心の支えとなる。一貫性と忍耐が重要。日々ポジティブな言葉をかける習慣を作る。小さな変化を見逃さずに認め、前向きな声かけを心がける。否定的な表現を避け、子どものペースに寄り添う。
親自身のケア親が心に余裕を持つことも重要。無理をすると、子どもへの接し方に影響が出るため、自分自身を労る習慣を持つ。一人で抱え込まず、家族や専門機関に相談する。趣味やリラックスできる時間を持つ。同じ悩みを持つ親たちとの交流を通じて孤独感を軽減する。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

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不登校を「解決」する、ということ

不登校を「解決」するということの記事見出し画像。

目次


ToCo株式会社のCEO、青山登と申します。私たちの会社は、不登校のお子さんやご家庭を支援する活動をしています。

あなたは、不登校を「解決」すると聞いて、どう感じますか?

私の子どもが不登校になった時、「不登校を解決したい」という気持ちは一切起こりませんでした。ただ、「この苦しんでいる状態を何とかしてあげたい」という思いだけがぐるぐると巡っていました。
「不登校を解決する」とは、一見すると「子どもが学校に戻ること」や「学校生活を普通に送ること」を指しているように聞こえます。けれども、不登校という状態を「何かを直す」という視点から見てしまうと大事なものが見えなくなってしまいます。

思い返せば、私は当初、自分の子どもを理解していないどころか、自分自身の行いすら分かっていませんでした。不登校が始まった当初、私は何度も「なぜこうなってしまったのか?」と自分に問いかけました。
今だから分かりますが、答えは実にシンプルで、同時に胸が締めつけられるものでした。問題の大きな原因は、他ならぬ「私自身」にあったのです。

私は当時、子どもの中学入学という大きな環境の変化に対して、親として何一つ向き合えていませんでした。新しい環境でどのような思いをしているのか、学校生活についての話を聞くこともありませんでした。「もう中学生だから、一人でやれるはずだ」と勝手に思い込み、適切なサポートを怠っていたのです。さらに、うまくいかないことがあれば「努力が足りないからだ」と、まるで根性論のような言葉をぶつけていました。その一言一言が、どれだけ子どもの心を傷つけていたのかを考えると、今でも悔やんでも悔やみきれません。

子どもの不登校をきっかけに、私は「親」という存在について深く考え直すようになりました。私は親である以上、子どもを育てる責任があります。しかし、その責任を勘違いしていました。「育てる」とは、子どもに目標を押し付け、親の価値観を無理に伝えることではありません。それは、子どもと共に歩み、共に悩み、共に成長していく過程を共有することなのです。

再登校の支援を通じて多くの家庭から学ぶ

各ご家庭の支援をさせていただく中で、考え方の軸を一つ持つようになりました。
それは、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味は、学校に戻ることではなく、不登校も含めて、子どもが抱える悩みや苦しみを共有し、親子で話し合える関係性を築くことだということです。子どもの状態がどんなものであれ、その存在を受け入れ、共に歩む姿勢こそが大切なのです。

不登校の経験は、私の価値観を変えました。それまでは、学校に通うことが当たり前で、通えない状態が「問題」とみなされる風潮に、無意識のうちに染まっていたのです。しかし、子どもの不登校と向き合う中で、「当たり前」と信じていたものがどれほどの重荷を子どもに背負わせていたのかを知りました。それは、社会や学校、さらには親である私自身の固定観念が作り上げたものに過ぎなかったのです。

ある日、私の子どもがぽつりと口にした言葉がありました。「学校に行けない自分はダメな人間だと思う」。この言葉は、私の胸に鋭く突き刺さりました。学校という一つの枠組みに収まらないことが、なぜ「ダメな人間」へと繋がってしまうのでしょうか?そして、それを子ども自身にそう感じさせてしまったのは、私だったのです。

私は親として無意識のうちに「学校に通うこと」「良い成績を取ること」「ルールを守ること」を絶対的な価値観として子どもに示してしまいがちでした。そして、それが達成できない子どもを見たとき、「努力が足りない」「何かが間違っている」と考えてしまうのです。しかし、本当にそうでしょうか? そもそも「学校に通うこと」や「社会の枠組みに適応すること」が、子ども一人ひとりの幸せを保証してくれるのでしょうか? 

私は、この問いに向き合う中で、「不登校を解決」という言葉自体に対する違和感を抱くようになりました。不登校を「解決する」という表現には、どこか「問題を直す」というニュアンスが含まれています。しかし、不登校は本当に「直すべき問題」なのでしょうか? もしもそれが子ども自身の助けを求めるサインだとしたら、その声を無視して無理やり「直す」ことは、本質的な解決ではなく、むしろ事態を悪化させるだけではないでしょうか。

私自身の子どもとの関係は、不登校という経験を経て大きく変わりました。以前の私は、親として子どもの成長を見守るどころか、自分の理想を押し付け、子どもを「型にはめる」ことにばかり意識を向けていました。しかし、子どもが学校に行けなくなり、心の中に抱えていた悩みを少しずつ打ち明けてくれるようになった時、初めて「親としての本当の役割」を考えるようになったのです。

親の役割とは

親が子どもを育てる目的は、子どもを「成功させる」ことではありません。子どもがどんな状況にあってもその存在を受け入れ、一緒に歩むことです。たとえ学校に行かなくても、将来の進路がどうであっても、子どもが自分自身を肯定できるような関係を築くことが大切なのです。

再登校支援の現場では、さまざまなご家庭の状況や子どもたちの声を耳にします。「親が自分の気持ちを理解してくれない」と感じる子どもがいれば、「子どもにどう接していいのか分からない」と悩む親御さんもいます。どちらの声にも共通しているのは、互いに相手の気持ちを知りたい、理解したいという思いがあることです。しかし、その思いが伝わらないことで、家族の中に深い溝が生じてしまうのです。

大人は時に、自分の方が「正しい」と思い込んでしまいます。特に、子どもが何か問題を抱えているように見えるとき、それを「直さなければならない」と考え、子どもの声に耳を傾ける前に解決策を押し付けてしまうのです。しかし、子どもの気持ちを聞くことなく、一方的に「正しさ」を伝えることは、子どもに「自分の気持ちは無視されている」と感じさせてしまいます。それは、親子の関係を崩壊させる大きな原因になり得るのです。

私の子どもが不登校を経て、少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになったとき、私は子どもの「言葉にできない声」に耳を傾ける姿勢を持つことの大切さに気づきました。子どもは、必ずしも自分の感情や悩みを明確な言葉で表現できるわけではありません。そのため、親である私たちが、子どもの言葉の裏にある本当の気持ちをくみ取ろうとする努力が必要なのです。

私は、ToCoの活動を通じて、これまで以上に多くの家庭や子どもたちを支援していきたいと考えています。そして、その活動を通じて、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味を、社会全体に問いかけていきたいのです。不登校という状況が、単なる「問題」ではなく、親子の新たな可能性を見出すための現れであることを、多くの人に知っていただけたらと思っています。

「学校に行けない」の底にあるもの

不登校という状況は、表面的には「学校に行けない」という形で現れます。しかし、その背後には、子ども自身が抱えるさまざまな葛藤や悩みが存在します。親である私たちが本当に向き合うべきなのは、この表面的な「学校に行けない」という事実ではなく、子どもの内面で何が起きているのかを理解しようとする姿勢です。

私の子どもが不登校になった頃、私は「何とかしなくては」という焦りに駆られていました。子どもをカウンセリングに連れて行ったり、無理に学校に行かせようとしたりしました。しかし、これらの行動が子どもにとってどれほどの負担を強いていたのかに気付くのに、時間がかかりました。子どもは、親である私の期待や圧力に押しつぶされそうになっていたのです。

その後、私は無理に何かを変えようとするのをやめました。子どもが話したい時に話を聞き、黙っていたい時にはそっと寄り添うことを心がけるようになりました。すると、子どもは少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになりました。彼が語ったのは、自分がいかに孤独を感じ、誰にも理解されないと思っていたかということでした。そして、その孤独感の大きな原因は、私が彼を「学校に行ける普通の子ども」としてしか見ていなかったことにあると気付かされました。

親は、子どもを「普通」であることに縛りつけてはいけないと考えています。それは、子どもの個性や可能性を否定する行為と同じです。私たちは子どもを「型」に当てはめるのではなく、一人の人間として尊重し、その子どもがどんな人生を歩むべきかを共に考えるべきなのです。その過程で、子どもが学校に行くことが必要だと思えば、それを支援すれば良いですし、別の道を選ぶのであれば、その道を全力で応援することが親の役割だと思います。

不登校は、決して親や子どもの失敗ではありません。それは、これまでのやり方や価値観を見直し、新たな関係を築くためのきっかけです。私たち親がその事実に気付き、子どもと共に前に進む覚悟を持つことができれば、不登校という状況は単なる「問題」ではなく、大きな成長の機会となり得ます。

ToCoを立ち上げた理由の一つは、カウンセラーや児童心理司たちとからの学びを経て、このような視点の大切さを多くの家庭に届けたいという想いがあったからです。不登校に直面するご家庭は、孤独や不安を抱えることが多いです。しかし、同じ経験を持つ人々が繋がり、支え合うことで、その孤独感や不安感は大きく軽減されます。そして、子どもとの関係を一度見直してみることで、子どもにとっての安心できる居場所が増えることを願っています。

私たちは、親としての役割に対する考えを一度見直し、「不登校を解決する」とは何を意味するのかを問い直す必要があります。それは、親子の新しい可能性を見出し、子どもが自分らしく生きられる道を模索するプロセスなのです。ToCo株式会社を通じて、そのプロセスを支援し、多くの家庭が笑顔を取り戻すお手伝いができればと願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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論文紹介:不登校の実情と対応-第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会

不登校の実情と対応-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。今回は、不登校に関する論文、「第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会2023年 教育講演『不登校の実情と対応』(藤田光江著)」をもとに、不登校の実情や対応策について考察を加えながらお話しいたします。この文章では、特に小中学生のお子様が不登校であるお母様に向けて、具体的な視点や助けとなるアプローチをお届けします。


第1章 不登校という現実とその定義

日本では、不登校が子どもたちやその家族にとって深刻な社会的問題となっています。藤田光江氏の論文によると、文部科学省は不登校を以下のように定義しています。

「心理的、情緒的、身体的、または社会的な要因や背景により、児童生徒が30日以上学校を欠席し、登校しない、またはしたくてもできない状況」

さらに、2024年の文部科学省の統計によれば、不登校児童生徒の数は34万6482人に上りました。この数字は、不登校が「特殊なケース」ではなく、「どの家庭にも起こり得る現象」であることを示しています。この認識を持つことが、最初の一歩です。


第2章 子どもの「小さなサイン」を見逃さない

不登校は突然始まるものではなく、多くの場合、小さなサインが積み重なっていく過程があります。藤田氏の論文によれば、不登校の初期徴候として以下のような身体症状が多く見られるとされています。

「学校がある日の朝に頭痛や腹痛を訴える」「朝起きられない」「生活リズムの乱れ」などの身体的な訴え

これらは単なる体調不良ではなく、心理的な負担が身体に現れた可能性を示唆しています。また、藤田氏の分析によると、不登校のきっかけとして、子どもが「先生のこと」「友人関係」「生活の乱れ」「身体の不調」を挙げるケースが多いとされています。

これに対して保護者の方ができる第一歩は、子どもの発言や行動を注意深く観察し、サインを見逃さないことです。例えば、以下のような点に着目してください。

  • 頻繁に体調不良を訴えるタイミングや状況を記録する。
  • 学校や友人関係の話題に対する子どもの反応を観察する。
  • 食欲や睡眠の質が以前と比べて変化していないか確認する。

こうした観察は、子どもが抱える問題を早期に発見するだけでなく、後に専門家へ相談する際の重要な資料にもなります。


第3章 不登校の背景にある複雑な要因

不登校の原因は、単一の要因だけで説明できるものではありません。藤田氏の論文では、以下のような複数の要因が不登校の背景にあると指摘されています。

「心理的要因(自己評価の低下、友人関係のトラブル)」「身体的要因(起立性調節障害、慢性緊張型頭痛、過敏性腸症候群など)」が複雑に絡み合っている

例えば、起立性調節障害により朝起きるのが困難になり、それが学校への遅刻や欠席を引き起こすことがあります。また、慢性緊張型頭痛は、子どもが感じるストレスが頭痛として現れることが多いとされています。

親が最も気をつけるべきなのは、子どもの「仮病」と決めつけないことです。不登校に関連する身体症状は、子どものストレスや不安の「SOSサイン」であり、親がこれを理解し、適切に対応することが子どもを救う第一歩となります。

子どもに寄り添う母親のイメージ

第4章 専門家との連携とその活用法

不登校に直面した場合、保護者がどのタイミングでどこに相談すればよいのか迷うことが多いでしょう。藤田氏は、医療機関や学校のカウンセラー、地域の支援機関との連携の重要性を強調しています。

「初期の段階ではかかりつけ医が身体症状を確認し、器質的な疾患がない場合は心理的要因に着目する」ことが推奨される

また、学校内では養護教諭やスクールカウンセラーとの連携が、不登校の子どもを支えるうえで重要な役割を果たします。もし子どもが学校に行くこと自体を拒否する場合、地域の適応指導教室やフリースクールなどの利用が効果的とされています。

こうした専門家や支援機関を利用する際には、親が「完璧な解決策を求める」よりも、「子どもに合った小さな改善を見つける」姿勢で臨むことが大切です。小さな成功体験を積み重ねることで、子ども自身が少しずつ自信を取り戻すことにつながります。


第5章 支援的対話と子どもへの寄り添い方

不登校の子どもと接するうえで、お母様が果たす役割は非常に大きいものです。藤田氏の論文では、支援的精神療法の重要性が繰り返し強調されています。

「治療者が子どもの悩みや不安を傾聴し、その気持ちを理解しながら、子どもの存在や努力を支持することが基本である」

この姿勢は、お母様にも当てはまる重要な心構えです。具体的には、子どもの言葉を否定せず、批判せず、まずはその気持ちに寄り添うことが求められます。たとえば、次のような対話を心がけると良いでしょう。

  • 子どもが「学校に行きたくない」と言った場合:「そうなんだね。どうしてそう思うのか、話してみてくれる?」と優しく問いかける。
  • 子どもが「先生が嫌い」と言った場合:「先生にどんなことをされて嫌だったの?」と具体的な感情を引き出す。
  • 子どもが「誰にも話したくない」と言った場合:「分かったよ。話したくなったらいつでも言ってね」と受け入れる姿勢を示す。

藤田氏も述べているように、不登校の子どもに「頑張れ」という言葉をかけるのは逆効果になることが多いです。代わりに、「どんな状態でも、あなたは大切な存在だよ」というメッセージを伝えることが重要です。


第6章 行動療法と子どもの自信を引き出すアプローチ

藤田氏の論文では、行動療法の一環として「登校カレンダー」や「頭痛ダイアリー」の利用が挙げられています。

「登校カレンダーは、少しでも登校したらお気に入りのシールを貼る方法で、モチベーションの向上につながる」
「頭痛ダイアリーは身体症状を記録するだけでなく、生活リズムの把握にも役立つ」

これらの方法は、子どもが達成感を得られるような仕組みを作ることが目的です。特に、何らかの形で「成功体験」を積み重ねることが、不登校解決への大きな一歩となります。

これを家庭でも応用する方法として、以下のような工夫が考えられます。

  • 目標の分解:例えば「週1回登校する」という大きな目標を、「朝制服に着替える」「学校まで行ってみる」といった小さな行動に分解する。
  • 成功の視覚化:カレンダーやノートに、できたことを記録し、本人が目で見て成長を実感できるようにする。
  • 子どものペースを尊重:無理に進めるのではなく、子どもが自分の意思で一歩を踏み出せるように環境を整える。
Fig. 1 不登校児・不規則登校児への対応

第7章 親の葛藤と向き合うために

お母様方にとって、子どもの不登校は時に「どうしてうちの子だけが」と感じさせるものかもしれません。ですが、この苦しい状況の中で、お母様ご自身の感情に向き合うことも忘れてはいけません。藤田氏も指摘しているように、不登校の対応では、親が「子どもを治さなければ」という強迫観念にとらわれることで、かえって子どもの状態を悪化させてしまうケースが見られます。

「保護者は子どもの症状を治そうと躍起になるほど、子どもの訴えが強くなることがある」

この状況を避けるためには、親が自身の心を保つための方法を見つけることも重要です。以下のようなアプローチが役立つでしょう。

  • 信頼できる人に相談する:親自身の不安を共有できる友人や家族、専門家の存在が心の支えとなります。
  • 情報収集をしすぎない:不登校についての情報を集めすぎることで、かえってプレッシャーを感じる場合もあります。情報は必要最低限に留めましょう。
  • 自分を責めない:子どもの不登校は親の責任ではありません。この点を強く意識してください。

第8章 不登校に向き合う「長期的視点」

不登校の解決には短期的な成功を期待するのではなく、長期的な視点を持つことが求められます。藤田氏も、不登校解決の目標として次のように述べています。

「最終目標は、子どもが元気になり、打ち込める何かを見つけ、将来社会に出ていくこと」

この言葉は、不登校そのものを「解決」することがゴールではないことを示しています。むしろ、「子どもが自分らしく生きる力を育むこと」が最終的な目標と言えます。

親としてできることは、目先の「学校復帰」にこだわるのではなく、以下のような目標を念頭に置くことです。

  • 子どもが自信を取り戻すプロセスを見守る。
  • 子どもが安心できる環境を家庭内外に作る。
  • 子どもが新しい興味や関心を見つけられるよう支援する。

第9章 おわりに:親と子どもの未来のために

不登校は、一朝一夕で解決する問題ではありません。それでも、親が子どもの変化を受け入れ、小さな一歩を共に歩むことで、未来への扉が少しずつ開いていくのです。藤田氏も以下のように結論づけています。

「不登校は誰にでも起こりうることであり、子どものあるがままを受け止め、支え続けることが重要」

お母様方が子どもと共に過ごすこの時間は、確かに試練の時期かもしれません。しかし、どうか焦らず、子どもの未来を信じて寄り添い続けてください。

参考URL

教育講演-不登校の実情と対応 藤田 光江


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学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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論文紹介:不登校児童生徒の再登校傾向に応じた教師による支援


目次


第一章:はじめに ― 不登校問題と教育現場の挑戦

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、ToCo株式会社という学校における不登校予防サービスを提供する企業で顧問を務めております。

不登校という現象は、単に教育の遅れを生むだけではなく、当事者の精神的・社会的な成長にも深刻な影響を及ぼす問題です。それゆえ、この課題をどう乗り越え、当事者を支援していくかは、教育界全体の喫緊の課題であると言えます。

不登校は特定の環境や性格による単純な問題ではなく、多様な要因が複雑に絡み合っています。そのため、対応策も一律ではなく、児童生徒の個別の状況に応じた柔軟な支援が求められます。本稿では、山本奬氏による論文「不登校児童生徒の再登校傾向に応じた教師による支援」[岩手大学大学院教育学研究科研究年報 第8巻 (2024. 3) 159-173]を基に、不登校の児童生徒に向き合うための具体的な知見を共有するとともに、学校現場での実践に役立てていただくことを目的としています。

山本氏の研究は、不登校児童生徒の心理的な状態や再登校に向けた準備段階を、教師の視点から詳細に分析し、支援の在り方を明らかにしたものです。この研究が重要なのは、単なる一般論に留まらず、現場の教師が直面する課題を具体的に掘り下げ、それに応じた実践可能な解決策を提案している点です。本稿では、同論文の内容を詳細に解説するとともに、その知見を教育現場でどのように活用できるのかを議論します。

本稿のまとめ

要点必要な行動
混乱と受容の評価が重要不登校児童生徒の心理状態を「混乱」と「受容」の二軸で評価し、それに基づいた支援を計画する。
受容が高い段階で支援を強化「受容」が高まった児童生徒には、意欲喚起や人間関係の再構築を通じて再登校への準備を進める。
混乱が高い場合は安全基地を提供「混乱」が高い場合は、無理に登校を促さず、保健室や別室など安心して過ごせる環境を整える。
家庭との協力が重要保護者と連携し、児童生徒の心理状態や支援計画を共有しながら、家庭内での支援体制を構築する。
再登校後も持続的支援を再登校後も心理状態をモニタリングし、フォローアップを行うことで再発を防ぐ。
教師間・学校全体で連携を取る支援チームを組織し、学級担任、養護教諭、教務主任が役割を分担しながら児童生徒をサポートする。
外部機関や地域と協力専門家や地域コミュニティと連携し、児童生徒が社会とのつながりを持てるよう支援する。

第二章:不登校児童生徒の多様性と再登校のステップ

不登校の背景には、実に多様な要因が存在します。家族関係の問題、学業の困難、人間関係のトラブル、さらには発達障害や精神的疾患など、その原因は一人ひとり異なります。さらに興味深いことに、不登校の児童生徒がその状況に至る経過も多種多様です。一部の生徒は、特定のトラウマや出来事をきっかけに突然学校へ行かなくなります。一方で、じわじわと学校生活への適応が困難になり、最終的に不登校に至るケースもあります。

山本氏は、不登校の児童生徒が学校に戻るまでのプロセスを「再登校傾向」と呼び、これを測定するための方法論を研究しています。同氏の研究によれば、再登校傾向を正確に評価するためには、以下の二つの心理的因子に注目する必要があるとされています。

  1. 混乱
    児童生徒が自身の不登校状況を認識し、将来への不安や後悔、自己否定的な感情に直面している状態を指します。たとえば、「どうして学校に行けなくなったのだろう」と考えたり、「これからどうなるのか」という恐怖感を抱く状態がこれに該当します。
  2. 受容
    自らの不登校という現実を受け入れ、それに向き合おうとする姿勢を表します。具体的には、「今の自分を認めて、できることから始めよう」と考えたり、前向きな態度を取り戻す段階が含まれます。

この二つの因子は、矛盾しているように見えるかもしれませんが、実際には児童生徒の再登校への道筋において極めて重要な役割を果たします。たとえば、「混乱」が高まり、「受容」が低い場合、児童生徒は不安定な状態にあり、支援を試みても効果が現れにくいことが示されています。一方、「混乱」が高い状態でも「受容」が伴っている場合は、再登校への可能性が高まることがわかっています。

この研究結果は、不登校児童生徒の支援における一つの重要な指針を示しています。つまり、支援を行う際には、児童生徒がどの段階にいるのかを正確に把握し、それに応じたアプローチを選択する必要があるのです。


第三章:再登校傾向を測定するための実践的アプローチ

山本氏の研究では、再登校傾向を測定するための具体的な手法が提案されています。同氏は、多くの教師を対象としたアンケート調査を実施し、不登校児童生徒の心理状態や行動特性を測定するための質問項目を開発しました。その結果、再登校傾向を評価するための14の質問項目が選定されました。

山本氏が提案する14項目の質問
1. 最近、自分の不登校について考えることが多いですか?
2. 将来のことを考えると不安になりますか?
3. 現在の状況について後悔する気持ちがありますか?
4. 「学校に行けていたら」と思うことがありますか?
5. 今の自分を受け入れようとしていますか?
6. 目の前の課題に集中しようとしていますか?
7. 不登校の原因について冷静に考えられるようになりましたか?
8. 自分が学校に戻るイメージを描けますか?
9. 不安なことを誰かに話すことができますか?
10.学校生活に対する興味や意欲が戻りつつありますか?
11. 自分自身について前向きに考えられることが増えましたか?
12. 再登校への計画を少しずつ立てられていますか?
13. 家族や周囲の人々の支えを感じていますか?
14. 将来的な自分の目標について話せるようになっていますか?

これらの項目は、児童生徒の「混乱」と「受容」の度合いを把握するために設計されており、教師が簡便に活用できるよう工夫されています。たとえば、「最近、自分の不登校についてどのように感じていますか?」という質問に対して、5段階評価で回答を求める形式が採用されています。このような評価方法は、児童生徒の心理状態を客観的かつ定量的に把握する上で非常に有用です。

さらに興味深い点は、再登校傾向が「混乱」と「受容」のバランスによって大きく左右されるという発見です。たとえば、「混乱」が低く「受容」が高い児童生徒は、比較的スムーズに学校生活へ戻ることができる一方で、「混乱」と「受容」のいずれも低い場合は、支援の効果がほとんど見られないことが判明しています。この結果は、教師が支援方針を決定する際の重要な指針となるでしょう。


第四章:具体的な支援方法 ― 再登校傾向に基づく実践

不登校児童生徒の再登校支援において、最も重要な点は、「混乱」と「受容」の状態を正確に評価し、それに応じた支援を実施することです。本章では、山本氏の研究に基づき、それぞれの状態に適した具体的な支援方法について詳しく述べます。

1. 「混乱」が高く、「受容」が低い場合

この状態の児童生徒は、自分の不登校について深く考えることを避けているか、問題を認識しつつもその解決に向けた意欲が見られない状況にあります。こうした児童生徒に対して無理に登校を促すことは逆効果になり得ます。むしろ、次のようなアプローチが求められます。

  • 心理的安全基地の提供
    児童生徒が安心して過ごせる環境を整えることが重要です。例えば、保健室や学校内の別室、あるいは家庭での支援が考えられます。この段階では、登校を直接促すのではなく、学校や教育活動に対する恐怖心や抵抗感を和らげることを優先します。
  • 関係構築のための家庭訪問
    教師が児童生徒の家庭を訪問し、保護者と協力しながら信頼関係を築くことが有効です。ただし、この際には児童生徒のプライバシーに配慮し、訪問がプレッシャーにならないよう工夫する必要があります。
  • 自己表現の支援
    児童生徒が自分の気持ちを言葉にすることが難しい場合、絵や日記など、言語以外の手段で感情を表現できる機会を提供します。これにより、混乱の原因を少しずつ明らかにすることができます。

2. 「混乱」と「受容」が共に高い場合

この状態は、再登校への可能性が最も高い段階です。児童生徒が現状を受け入れつつ、内面的な葛藤に直面しているため、教師の適切な介入が大きな成果をもたらします。

  • 積極的な意欲喚起
    学校生活において達成感を味わえるようなタスクや役割を提供します。例えば、学級活動の小さな役割を任せたり、得意な教科の課題を出したりすることで、自信を取り戻す手助けを行います。
  • 目標の共有と段階的な計画作成
    教師と児童生徒が一緒に目標を設定し、それを達成するための具体的な計画を立てます。例えば、まずは週に1回登校する目標を設定し、その後段階的に頻度を増やす方法が有効です。
  • 友人関係の再構築
    児童生徒が信頼できる友人と再び関わる機会を作ります。例えば、グループ学習や校外活動を通じて自然な形で関係を再構築できるよう支援します。

3. 「混乱」が低く、「受容」が高い場合

この段階の児童生徒は、比較的安定しており、再登校が現実的な目標となります。ただし、学校生活への完全な適応には時間がかかる場合もあるため、慎重なアプローチが求められます。

  • 学習支援の強化
    学校での学習に遅れが生じている場合は、補習や個別指導を通じてサポートします。学力の向上は児童生徒にとって重要な自己肯定感の源となります。
  • 日常的な登校習慣の確立
    学校生活に必要なルーティンを再構築します。例えば、登校時間に合わせて家庭で準備を進める習慣をつけたり、短時間の登校から始めて徐々に時間を延ばす方法が効果的です。
  • 自己評価の促進
    児童生徒が自らの成長を実感できるような仕組みを導入します。例えば、達成した目標を振り返る「自己チェックリスト」を作成することで、再登校への自信を育むことができます。

4. 「混乱」と「受容」が共に低い場合

この段階の児童生徒は、再登校に向けた準備が整っていないため、長期的な視点での支援が必要です。この場合、無理に登校を促すのではなく、まず児童生徒の状態を安定させることが優先されます。

  • 専門機関との連携
    心理カウンセラーや医療機関と協力し、児童生徒の心理的問題を専門的にサポートします。学校だけで対応しきれないケースでは、外部の支援が欠かせません。
  • 家庭での支援の強化
    保護者に対して適切な支援方法を指導します。特に、児童生徒の感情に寄り添い、プレッシャーを与えない環境を作ることが重要です。
  • 無理のない交流機会の提供
    学校外のイベントや地域活動など、気軽に参加できる場を通じて、社会とのつながりを徐々に回復させます。
受容が高い受容が低い
混乱が高い[積極的支援段階]
・意欲喚起や目標設定を行い、再登校の計画を具体化する。
・友人関係や教師との関係を再構築する場を提供する。
・自信を育むための小さな成功体験を積ませる。
[不安定支援段階]
・心理的安全基地を提供し、無理に登校を促さない。
・家庭訪問や保護者との連携を強化し、児童生徒の状態を安定させる。
・児童生徒が自分の不安や感情を少しずつ表現できるよう支援する。
混乱が低い[安定した再登校段階]
・学習指導や日常生活のルーティンを整え、学校生活への完全な適応を目指す。
・学校内外での役割や活動を通じて、自己効力感を高める。
・教師間や学校全体で連携し、フォローアップを続ける。
[停滞段階]
・再登校の準備が整っていないため、急激な支援を避け、心理的安全を優先する。
・専門機関と連携し、児童生徒の状態を見極めた上で段階的な支援を開始する。
・家庭での過ごし方や心の安定を支援し、児童生徒が自分の状況を徐々に受け入れる環境を整える。

第五章:教育現場での実践例 ― 山本氏の提言の活用

前章では、不登校児童生徒の心理状態に応じた支援方法について述べました。本章では、それらを実際に教育現場でどのように活用するか、具体的な事例や取り組みを通じて解説します。不登校支援は一人の教師だけで完結するものではなく、学校全体として連携する必要があります。その中で、山本氏の研究がどのように役立つのか、考察を深めていきます。

1. 個別支援計画の作成

不登校児童生徒に対する支援は、個別性を尊重することが何よりも重要です。山本氏の研究を活用することで、再登校傾向を定量的に評価し、それに基づいて効果的な個別支援計画を策定できます。以下はその具体的なプロセスです。

  • 初期アセスメント
    まず、山本氏が提案する14項目の質問を活用し、児童生徒の心理状態を評価します。これにより、「混乱」と「受容」のレベルを客観的に把握します。
  • 支援目標の設定
    児童生徒の状態に応じて、短期的・中期的な目標を設定します。例えば、「毎週1回の登校を目指す」や「まずは友人とオンラインで交流する」といった具体的な目標を掲げます。
  • 支援方法の選択
    前章で述べたように、「混乱」と「受容」の状態に応じた適切な支援方法を選択します。例えば、「混乱」が高い場合は心理的安全基地を提供し、「受容」が高い場合は意欲喚起を行うといった形です。
  • 進捗のモニタリング
    定期的にアセスメントを繰り返し、支援の効果を確認します。必要に応じて計画を見直し、柔軟に対応します。

2. 教師間の連携と役割分担

不登校児童生徒を支援する際、担任教師一人だけでは対応が困難な場合があります。山本氏の提言を学校全体で共有し、役割分担を明確にすることで、支援の質を高めることが可能です。

  • 学級担任の役割
    学級担任は、児童生徒との日常的な関わりを通じて信頼関係を築きます。また、アセスメント結果に基づいて支援計画を策定し、他の教師や保護者と連携します。
  • 養護教諭の役割
    養護教諭は、心理的安全基地を提供する役割を果たします。保健室で児童生徒が安心して過ごせる環境を整え、必要に応じて心理的なケアを行います。
  • 教務主任の役割
    教務主任は、支援計画を学校全体で共有し、教員間の連携を促進します。また、外部機関との調整役を務めることもあります。
  • 学校全体での支援体制の構築
    学校内で「不登校支援チーム」を組織し、定期的にケース会議を開催することで、児童生徒一人ひとりに対する支援を継続的に行います。

3. 家庭との協力関係の構築

不登校の問題を解決するには、家庭との連携も欠かせません。山本氏の研究は、家庭環境が児童生徒の「混乱」と「受容」に大きな影響を与えることを示唆しています。以下は具体的な家庭支援の方法です。

  • 保護者への説明
    山本氏の研究結果を基に、児童生徒の心理状態をわかりやすく保護者に説明します。保護者が現状を正確に理解し、適切な対応ができるようサポートします。
  • 家庭での役割作り
    児童生徒が家庭内で自信を持てるような役割を与えます。例えば、簡単な家事を任せたり、家族との会話を増やす工夫を行います。
  • 登校準備の支援
    朝の準備や通学のサポートを保護者と協力して行います。特に、登校へのプレッシャーを軽減しつつ、少しずつ学校生活への適応を促します。

4. 成功事例から学ぶ

山本氏の研究は、多くの成功事例に基づいています。以下はその一例です。

  • ケース1:中学2年生の男子生徒
    この生徒は、学校生活への不安から不登校になりました。アセスメントの結果、「混乱」が高く「受容」が低い状態であることが判明しました。教師はまず、安全な環境を提供しつつ、少しずつ自己表現を促しました。その後、「混乱」がやや低下し「受容」が高まった段階で、意欲喚起と目標設定を行い、最終的に週3日の登校が可能となりました。
  • ケース2:小学5年生の女子生徒
    この生徒は、「受容」が高く「混乱」が低い状態にありました。教師は、学習支援を強化しつつ、クラスメイトとの交流の場を設けました。その結果、生徒は2か月後に通常の登校を再開することができました。

第六章:不登校支援の長期的視点と未来への展望

不登校問題は、短期間で完全に解決することが難しい場合が多く、支援には長期的な視点が求められます。山本氏の研究に基づくと、児童生徒の再登校傾向を適切に捉えながらも、急激な変化を期待せず、着実に前進するための支援が必要であることが示唆されています。本章では、不登校支援の持続的な取り組みや、今後の教育現場における課題と可能性について考察します。

1. 持続的支援の重要性

不登校は、一時的に学校へ戻ることができたとしても、その後再び登校が難しくなる「再発」が少なくありません。そのため、再登校後のフォローアップや持続的な支援体制が必要です。以下はその具体的な方策です。

  • 再登校後の観察期間
    児童生徒が再登校を開始した後も、定期的に「混乱」と「受容」のレベルを評価し、問題が再燃する兆候を早期に発見します。これにより、再発を未然に防ぐことが可能になります。
  • 段階的な目標設定
    再登校ができたことを「ゴール」とせず、その後の学校生活における目標を段階的に設定します。例えば、「クラスの発表会に参加する」「クラブ活動に加わる」など、児童生徒が新たなチャレンジを楽しめるよう支援します。
  • 心理的サポートの継続
    再登校後も、養護教諭やスクールカウンセラーによる定期的な面談を通じて、心理的な安定を保つためのサポートを続けます。

2. 教育現場における課題

不登校支援を行うにあたり、教育現場にはいくつかの課題が存在します。以下に代表的なものを挙げ、それぞれに対する解決策を検討します。

  • リソースの不足
    教師が不登校児童生徒への支援に割ける時間やエネルギーは限られています。この問題を解決するためには、支援スタッフの増員やToCoの不登校予防サービスなど外部機関との連携が不可欠です。また、教師が利用可能なリソース(マニュアル、研修プログラムなど)を充実させる必要があります。
  • 教師の心理的負担
    不登校支援には、教師自身の心理的な負担が伴います。支援がうまくいかない場合、教師が自責の念を抱くことも少なくありません。この課題に対処するためには、教師同士の連携を深め、困難を共有する機会を設けることが有効です。また、教師自身のメンタルヘルスを支えるプログラムの導入も必要です。
  • 保護者との連携不足
    不登校支援では、家庭との協力が欠かせませんが、保護者との意思疎通がうまくいかない場合もあります。この問題に対しては、保護者向けの説明会やワークショップを開催し、不登校に関する知識や対応方法を共有することが効果的です。

3. 社会全体での不登校支援の推進

不登校の問題は学校だけの課題ではなく、社会全体で取り組むべき問題です。山本氏の研究が示すように、再登校を促進するには、学校外のサポートが重要な役割を果たします。以下はその具体例です。

  • 地域コミュニティとの連携
    地域の支援団体やボランティアグループと協力し、児童生徒が学校外で社会とのつながりを持てるよう支援します。たとえば、学習塾や地域活動への参加を奨励することで、児童生徒の孤立感を軽減します。
  • オンライン学習の活用
    学校に通うことが難しい児童生徒に対して、オンライン学習を通じて学びの場を提供します。特に、コロナ禍以降、オンライン教育の可能性が広がっており、不登校支援にも応用できる領域が増えています。
  • 行政による支援の強化
    不登校支援のための予算を増やし、学校が専門的なリソースを利用できるようにすることが求められます。具体的には、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置を進めるべきです。

4. 山本氏の研究が示す未来への展望

山本氏の研究は、不登校支援の新たな可能性を切り開きました。「混乱」と「受容」という視点を活用することで、児童生徒の心理状態をより正確に捉え、適切な支援を提供することが可能になります。この知見を広く普及させることで、教育現場全体の不登校対応能力が向上すると考えられます。


結論として

不登校支援は、多様な要因と長期的な取り組みを要する複雑な課題です。しかし、山本氏の研究が示す知見を活用することで、教師が自信を持って児童生徒を支援するための具体的な手がかりが得られます。教育現場の皆様が、今回の論文紹介を通じて新たなヒントを得られ、児童生徒一人ひとりの成長を支える手助けとなれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

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自閉スペクトラム症と不登校の関係とは?

自閉スペクトラム症と不登校の関係・対処-記事の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さまをお持ちの親御さんにとって、この状況は決して簡単なものではなく、日々さまざまな思いや葛藤を抱えておられることでしょう。そのような中で、「自閉スペクトラム症(ASD)」という特性が、不登校の背景にどのように関与しているのかを深掘りしながら、適切な対処法についてお伝えできればと思います。

自閉スペクトラム症と不登校の複雑なつながり

自閉スペクトラム症という言葉に触れると、ある種の誤解や偏見が伴うことがあります。しかし、ASDは決して「障害」として固定的に捉えるべきではなく、一人ひとりの異なる特性としての多様性の一環と考えることが重要です。その特性が、学校生活という集団環境において、時として困難さを生むことがあります。不登校はその結果として表面化しているにすぎません。

ASDの子どもたちは、主に以下のような困難を抱えることが多いです:

  • 感覚過敏:教室内の騒音、他人の話し声、蛍光灯の明るさなどが過剰にストレスとなる。
  • 社会的コミュニケーションの課題:友達との会話がうまくいかない、先生の指示の真意が理解しづらい。
  • ルールや予測可能性のこだわり:予定外の変更や、曖昧な指示に対する過剰な不安。

これらの要因が重なり、結果として学校への不安感や拒否感を強めてしまうのです。加えて、「理解されない」という感覚が強まると、自尊心が大きく傷つき、不登校が長期化する可能性が高まります。

保護者としての最初の一歩:気づきと受け入れ

まず親御さんにお伝えしたいのは、ASDの特性に由来する不登校である可能性を冷静に見極めることです。お子さまが学校に行けない理由を探るとき、多くの親御さんは「甘え」「怠け」という観点に目が行きがちです。しかし、ASDの特性が絡んでいる場合、こうした見方は当てはまらないどころか、かえってお子さまを追い詰めてしまう結果になります。

例えば、お子さまが以下のようなサインを見せている場合、ASDの可能性を考慮することが有益です:

  • 朝起きるたびに頭痛や腹痛を訴える:これはストレスが身体的な症状として現れることが多いASDの特徴です。
  • 細かいルールや順序にこだわる:例えば、朝食の順番が違うだけでパニックになることもあります。
  • 学校に行く以前に、準備段階で極度に疲弊する:制服を着る、教科書をそろえるといった日常的な準備が大きなハードルになります。

これらの特性を理解することで、「子どもに何が起きているのか」という視点を持つことができます。そして、お子さまの行動が「学校に行きたくない」ではなく、「行けない」という状態にあることを認識することが、最初の一歩です。

再登校の第一歩を支える親のアプローチ

ASDのお子さまにとって、再登校への道のりは、短期間で解決できるものではありません。ただし、親御さんのサポート次第でそのプロセスが大きく変わることも事実です。重要なのは、以下のポイントを意識したケアを行うことです。

  1. 予測可能性を高める環境作り
    お子さまが安心して日常を過ごせるよう、生活の中で予測可能性を意識的に高めることが大切です。例えば、毎日のスケジュールを視覚的に示したり、事前に次の日の予定を詳しく伝えたりする工夫が有効です。
  2. 小さな成功体験を積み重ねる
    お子さまが「できた」という実感を持つことが再登校への第一歩です。たとえば、登校ではなく、近所の公園に出かけることから始めるのも一つの方法です。その際、無理のない範囲で「ここまでできた」という達成感を味わえる工夫をしてください。
  3. 「励まし」ではなく「具体的なサポート」を
    「頑張って」「行けるよ」という励ましは、ASDのお子さまにとって逆効果になる場合が多いです。代わりに、「今日はランドセルを背負ってみよう」「学校の門の前まで行ってみよう」といった、具体的な行動目標を一緒に考える方が実際的です。
微笑む子どものイメージ

ASD特有のサポートが必要な理由

再登校の支援において、ASDの特性に寄り添ったアプローチが必要不可欠です。フリースクールや特別支援学級などの選択肢も考えられますが、これらはASDのお子さまにとっては慎重に検討すべき場合があります。ASDの特性を持つお子さまは、新しい環境への適応に時間がかかったり、特定の刺激に過敏に反応したりすることが多いため、必ずしもこれらの選択肢がストレス軽減や不安解消に繋がるとは限らないのです。

例えば、フリースクールは自由度が高い反面、活動内容が予測しにくかったり、集団の中での柔軟な対応が求められたりするため、ASDのお子さまにとって混乱や負担を増やす場合があります。また、特別支援学級もASDのお子さま全員に適しているわけではなく、他の特性を持つ子どもとのやり取りが逆にストレスとなることもあります。

そのため、ASDのお子さまには、特性やニーズに応じた個別の支援が適しています。特化したサポートを提供できる専門機関や家庭での計画的な支援の方が、再登校への道をより確実にする可能性が高いと言えます。

不登校が長期化した場合のリスクとその回避法

不登校が長期化することによるリスクは、単に学業の遅れにとどまりません。特に自閉スペクトラム症(ASD)のお子さまの場合、長期間の不登校がさらなる心理的な負担や社会的な孤立感を生む可能性があります。この状態を放置すると、「学校への拒否感」が強まり、再登校へ必要なエネルギー(閾値)が飛躍的に上昇してしまいます。

長期化に伴う主なリスクには以下のようなものがあります:

  1. 自己評価の低下
     ASDの特性を持つお子さまは、もともと自己評価を下げやすい傾向があります。「学校に行けない自分」という感覚が長期間続くことで、「自分には価値がない」「自分は周りと違う」といった否定的な自己イメージが固定化される恐れがあります。
  2. 社会的スキルの発達の遅れ
     学校生活は学業だけでなく、他者との関わり方を学ぶ重要な場です。不登校が続くと、日常的なコミュニケーションの機会が減少し、友達や先生との接し方がますます分からなくなってしまいます。
  3. 新たな心理的問題の発生
     長期間の不登校による孤立感は、さらに不安症やうつ症状を引き起こす可能性があります。特にASDの子どもは感覚的なストレスに敏感なため、孤立による不安がより深刻化しやすい傾向があります。

リスク回避のための親の役割

これらのリスクを避けるためには、親御さんの積極的なサポートが必要不可欠です。具体的には、次のような取り組みを意識してみてください。

  1. 日常生活での「繋がり」を意識する
     たとえ学校に行けなくても、他者と接する機会を意図的に作ることが大切です。親御さん自身が積極的に子どもの話を聞き、共感を示すことも「繋がり」を育む第一歩になります。また、学校の先生との継続的な連携を意識しましょう。
  2. 子どもの「やりたいこと」に寄り添う
     ASDのお子さまは特定の興味や得意分野に没頭する傾向があります。その興味を活かして学びや社会との接点を増やすことができれば、不登校中でも成長の機会を確保できます。例えば、プログラミングやアート、読書など、興味に基づいた学びを家庭内でサポートするのも効果的です。
  3. 早期の専門支援の活用
     ASDを伴う不登校では、親御さんだけで解決しようとするのは難しい場合があります。再登校への具体的なステップについて0から取り組むのではなく、実績のあるToCoのようなプロフェッショナルの力を借りる選択肢も検討ください。支援を受けることで、お子さまが感じる安心感も高まり、親御さんご自身の負担も軽減されます。

ASDのお子さまの感情や思考パターンを理解する

もしASDのお子さまが不登校になった場合、その感情や思考パターンを深く理解することが解決の糸口となります。ASDの特性を持つお子さまの多くは、表面的な行動の裏に繊細で複雑な感情を抱えています。これを理解しないまま表面的な対処に終始すると、かえって逆効果となることも少なくありません。

「行けない」気持ちの背景にあるもの

ASDのお子さまが学校に行けない理由はさまざまですが、主に以下のような心理的な背景が考えられます:

  1. 過去の失敗体験がトラウマ化している
     例えば、授業中に自分だけ答えられなかった、友達とのやりとりで誤解が生じた、先生から厳しい指摘を受けたといった経験が、ASDのお子さまにとって非常に大きなトラウマとなることがあります。
  2. 「完璧にやらなければならない」という思い込み
     ASDの特性上、「こうあるべき」という思い込みが強い場合があります。そのため、ほんの少しのミスや変更で「自分はダメだ」という感覚に陥りやすいのです。
  3. 感覚的なストレスの蓄積
     教室の騒がしさ、体育の時間の匂い、休み時間の喧騒など、通常の子どもにとって気にならない刺激が、ASDのお子さまには大きなストレスとなっていることがあります。

これらの感情や思考パターンを理解することで、親御さんは「なぜ行けないのか」の理由をより正確に把握することができます。そして、これに基づいた具体的な対応策を取ることが可能になるのです。

「行ける」を引き出すための心がけ

ASDのお子さまにとって、再登校への道は段階的なプロセスが必要です。以下の心がけがその助けになります。

  1. 小さな一歩を大切にする
     最初の目標を「学校に行くこと」ではなく、「ランドセルを準備する」「学校の周りを歩いてみる」といった小さなステップに設定してください。その成功を褒めることで、次の一歩へのモチベーションが生まれます。
  2. 感情を否定しない
     お子さまが「怖い」「行きたくない」と言ったとき、その感情を否定せず、「そう感じているんだね」と受け止めることが重要です。それにより、お子さまが安心感を得て、「次はどうすればいいか」を一緒に考えることが可能になります。
  3. 柔軟な学び方を取り入れる
     ASDのお子さまは学校の形態に馴染みにくい場合もありますが、自宅での学びや趣味を通じた知識の吸収には興味を持つことがあります。お子さまの特性や興味を活かした活動(オンライン学習、図鑑での調べ物、実験キットの使用など)を日常生活に取り入れることで、学びの楽しさを実感でき、学校への興味を少しずつ取り戻すきっかけになります。

不登校や自閉スペクトラム症を一緒に乗り越えるためには、まずお子さまを理解し、寄り添い、専門家のサポートを受けながら段階的に取り組むことが大切です。

まとめ

要点必要な行動
ASDは不登校の背景に影響を与える特性があるお子さまの感覚過敏やコミュニケーションの課題を理解し、行動の理由を冷静に見極める。
不登校が長期化すると心理的負担が増大する早期に適切な支援を受け、子どもに無理のない範囲で社会との接点を作る。
小さな成功体験が再登校の鍵になるランドセルの準備や学校周辺を歩くなど、小さな目標を設定し、達成を一緒に喜ぶ。
親の具体的なサポートが重要抽象的な励ましではなく、具体的な行動計画や段階的なステップを共有する。

親御さんにとって、不登校の問題は非常に辛いものかもしれません。しかし、焦らず、正しいステップを踏めば必ず解決への道は開けます。そして、その道を一緒に歩む存在として、私たちToCoがいます。ぜひ、一人で抱え込まずに、いつでも私たちを頼っていただければと思います。不登校の問題に向き合い、解決に向けた一歩を共に歩めることを願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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子どもへの傾聴の意味とは?

子どもへの傾聴の意味と難しさ-記事の見出し画像

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さんを抱える保護者の方々にとって、日々の生活の中で「子どもの話をどう聞くか」というのは極めて大きなテーマだと思います。特に、不登校のような状況では、親と子どもの間でのコミュニケーションが希薄になりがちです。「話をしてくれない」「何を考えているかわからない」という声を、私もこれまで何度も耳にしてきました。しかし、だからこそ「傾聴」のスキルが非常に重要となります。

「傾聴」という言葉はよく使われますが、これは単に「耳を傾ける」という行為以上の深い意味を持っています。傾聴の本質は、子どもの言葉に真摯に向き合い、心の中で何が起きているのかを共に理解しようとする姿勢にあります。ここで大切なのは、「受け入れること」と「解決しようとしないこと」です。親として、問題を早く解決してあげたいという気持ちは自然なことです。しかし、傾聴の場では、解決を急がず、ただその瞬間の子どもの感情や考えに寄り添うことが重要なのです。

傾聴が生む信頼関係

傾聴の最大の効果のひとつは、子どもとの間に信頼関係を築くことです。不登校のお子さんにとって、自分の存在や感情が「親にとって重要だ」と感じられる瞬間は非常に貴重です。日々の生活の中で、「どうして学校に行けないの?」といった問いかけが繰り返されると、子どもは自分が問題視されているように感じ、心を閉ざしてしまうことがあります。しかし、「どうしたいと思っているの?」や「最近、どんなことが気になる?」というような、否定や評価を含まない問いかけがあると、少しずつ自分の気持ちを言葉にする勇気が湧いてきます。

これは単に親子関係の改善に留まらず、子どもの内面的な成長にもつながります。自分の気持ちや考えを言葉にするという行為は、対話力や思考力を育む重要なステップです。例えば、「友達と喧嘩したけど、本当は仲直りしたい」「学校に行きたい気持ちと、怖い気持ちが両方ある」といった心情を親に伝えられることで、子ども自身が自分の感情を整理し、前向きな一歩を踏み出すきっかけになるのです。

見過ごされがちな傾聴の価値

多くの方が誤解しているのは、「話を聞いても、何も解決しない」という認識です。確かに、傾聴は直接的な解決策を提示するものではありません。しかし、子どもの内面を理解するための土台を築くプロセスとして、極めて重要です。例えば、子どもが不安を抱えている理由を知ることができれば、その後の対応策を考える際のヒントになります。また、子ども自身が自分の気持ちを言葉にすることで、次第に自己理解を深め、問題解決の糸口を見つけることもあります。

傾聴は、単なる「聞く」ことではなく、親子間の対話の質を高める行為です。これを意識的に実践することで、親子関係に変化が訪れるのは間違いありません。

子どもとの対話のイメージ

子どもへの傾聴が難しい理由

子どもの話を聞くことが重要だと分かっていても、実際に実践するとなると難しさを感じる保護者の方は少なくありません。その背景には、さまざまな心理的・実践的な障壁があります。本章では、特に子どもへの傾聴が難しいとされる理由を、以下の三つの観点から掘り下げて考えていきます。

1. 子どもなりの意見や論理を尊重する必要がある

まず一つ目は、子どもなりの意見や論理を尊重するという点です。親としては、どうしても子どもの言葉が稚拙に思えたり、現実的でないと感じたりすることがあります。「どうしてそんなことを考えるの?」と疑問に思うこともあるでしょう。しかし、子どもの意見を否定したり論破したりすることは、傾聴の本質から外れてしまいます。

子どもが「学校の先生が嫌いだから行きたくない」と言った場合を考えてみましょう。大人から見れば、「先生が嫌いな理由が何なのか」を具体的に聞き出し、その原因を解決すればいいのではないかと思うかもしれません。しかし、このアプローチでは子どもの心に触れることはできません。子どもが本当に伝えたいのは、「自分が感じている違和感や不安を分かってほしい」ということです。そのためには、まず「嫌い」という感情そのものを受け止める必要があります。「嫌だと思うんだね。その気持ち、もう少し教えてくれる?」と問いかけることで、子どもは少しずつ心を開いていきます。

大切なのは、子どもの言葉の背景にある気持ちを理解しようと努めることです。例えその意見が論理的でなくても、そこに至るまでの感情を尊重することで、子どもは「自分の考えを聞いてくれる大人がいる」と感じ、安心感を得ることができます。


2. 親として適切な方向へ育てたいという思い

二つ目の理由は、親としての「正しい方向へ導きたい」という思いの強さです。これは親として当然の感情です。子どもが不登校になったり、社会的なルールから外れる行動を取ったりすると、「このままでは将来が不安だ」という気持ちが強くなるのは無理もありません。そのため、つい「こうすべきだ」「こうあるべきだ」とアドバイスを与えたり、方向性を示したりしたくなります。

しかし、このような指導的なアプローチは、傾聴の場面では逆効果になることがあります。子どもが「もう学校に行かなくてもいい」と言ったとき、親としては「そんなことを言ってはいけない」「学校には行くべきだ」と反論したくなるかもしれません。けれども、こうした言葉は子どもにとって、自分の気持ちが否定されたと感じさせる原因になります。その結果、子どもはさらに心を閉ざし、親との対話を避けるようになるのです。

親の役割は、子どもが安全に自分の気持ちを表現できる環境を整えることです。傾聴の場面では、正解を求めるのではなく、子どもの気持ちや考えに寄り添い、共に考える姿勢を持つことが求められます。


3. 子どもへの甘やかしと混同しやすい

三つ目は、傾聴と甘やかしを混同しやすいという点です。特に日本の文化では、「子どもを厳しく育てることが親の務め」という考えが根強いこともあり、子どもの話を丁寧に聞くことが「甘やかし」だと捉えられることがあります。この認識が、傾聴を実践する上での障壁となることが多いのです。

しかし、傾聴は甘やかしとは根本的に異なります。甘やかしとは、子どもの要求を全て受け入れることや、問題に対して親が代わりに責任を負うことを指します。一方、傾聴は、子どもの気持ちや考えを尊重しつつも、必要な場面では親としての適切なガイドラインを示すことを含みます。例えば、「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、「行かなくてもいいよ」と安易に答えるのではなく、「そう思うんだね。その理由を教えてもらえる?」と深掘りすることで、子ども自身が自分の考えを整理する手助けをすることができます。

また、甘やかしとの混同を避けるためには、親自身が傾聴の目的を明確に理解することが大切です。傾聴は、子どもの気持ちや考えを受け入れることで、子どもの内面的な成長や自己肯定感を促す行為です。そのため、親が一方的に譲歩するものではなく、子どもの自主性を育むためのプロセスだという意識を持つことが重要です。


傾聴を実践するための具体的な方法

傾聴の重要性を理解していても、「具体的にどうやって実践すればいいのかわからない」というお悩みをよく耳にします。子どもへの傾聴は、大人同士の会話とは異なるスキルを要するため、意識的な準備や練習が必要です。本章では、傾聴を日常で実践するための具体的な方法とポイントについて詳しく解説します。


1. まずは「聞く環境」を整える

傾聴を実践する上で最初に大切なのは、「子どもが安心して話せる環境」を整えることです。環境とは、物理的な空間だけでなく、親子間の心理的な雰囲気も含まれます。以下のような工夫が効果的です。

  • 静かで落ち着ける場所を選ぶ
    テレビやスマホの音が鳴り響くリビングでは、子どもは集中して話すことができません。話を聞くときには、できるだけ静かな場所を選び、子どもと向き合う時間を確保しましょう。
  • 親の態度をフラットに保つ
    子どもが話し始めたとき、驚いたり怒ったりする反応は禁物です。どんな内容でも、「そうなんだね」とまず受け止める姿勢を見せることが大切です。
  • 時間を作る努力をする
    傾聴は、短い時間で済ませるものではありません。忙しい日々の中でも、意識的に子どもと向き合う時間を作ることが必要です。「今ちょっと忙しいから」と話を中断してしまうと、子どもは「自分の話は大したことではないのかもしれない」と感じてしまうことがあります。

2. 子どものペースを尊重する

子どもが話すスピードや内容は、大人にとって物足りなく感じることもあるかもしれません。しかし、傾聴の場では、子どものペースを尊重することが最優先です。子どもが言葉を探しながら話しているときは、焦らずに待つことが大切です。たとえ沈黙が訪れても、それを埋めようとせず、子どもが考える時間を与えましょう。

例えば、子どもが「学校で嫌なことがあった」と話し始めたとします。このとき、「どんなこと?」と急かすのではなく、「そうだったんだね」と応じて、次の言葉を引き出す時間を与えることが効果的です。相手が話すリズムに合わせることで、子どもは「急かされない」「プレッシャーを感じない」と思い、より深い話をしやすくなります。


3. 「聞き方」の技術を身につける

傾聴のスキルには、いくつかの具体的なテクニックがあります。これらを意識的に取り入れることで、子どもとの対話の質が向上します。

  • オウム返し
    子どもが言った言葉をそのまま繰り返すことで、「自分の話がちゃんと聞かれている」と感じてもらうことができます。例えば、子どもが「学校が怖い」と言ったときに、「学校が怖いんだね」と返すことで、相手がさらに深く話すきっかけを作ります。
  • 感情の代弁
    子どもが言葉にしきれない感情を代わりに表現してあげることも有効です。「友達に無視されるのが辛い」と言った場合、「無視されると悲しい気持ちになるよね」と感情に寄り添うことで、子どもが安心感を持ちます。
  • 具体的な質問を避ける
    「どうして?」「なぜ?」といった質問は、子どもにプレッシャーを与えることがあります。代わりに、「そう思ったのはどんなことがあったからかな?」と柔らかく尋ねると、子どもが話しやすくなります。
母と娘の会話のイメージ

4. 親自身の心構えを整える

傾聴を成功させるためには、親自身の心の準備も重要です。特に以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 完璧を目指さない
    傾聴は一朝一夕で身につくスキルではありません。「子どもの話をきちんと聞けなかった」と感じた日があっても、それに後悔ばかりしないで少しずつ改善していく姿勢が大切です。
  • 自分の感情をコントロールする
    子どもの話を聞く中で、親自身が感情的になってしまうことがあります。しかし、傾聴の場では、親が冷静さを保つことが必要です。もし感情が高ぶってしまった場合は、一度深呼吸をしてから話を続けると良いでしょう。
  • 期待を手放す
    傾聴の目的は、子どもに「正しい答え」を導かせることではありません。子どもが自分の感情を表現できる場を提供することそのものが、大きな成果なのです。話を聞く中で何かを得られなくても、「今日はこれで十分だった」と自分を納得させることが大切です。

傾聴がもたらす変化と効果

傾聴を日常的に実践することで、子ども自身だけでなく、親子関係や家庭全体にもさまざまなポジティブな変化が現れます。この章では、傾聴を通じて得られる具体的な効果を三つの観点からご紹介します。


1. 子どもの自己肯定感の向上

傾聴の最大の恩恵の一つは、子どもの自己肯定感を高めることです。自己肯定感とは、「自分は価値がある存在だ」と感じる力であり、子どもの精神的な安定や社会的な適応能力に直結します。特に、不登校や引きこもりの子どもたちは、自己否定感や孤立感を抱えやすい傾向があります。そのような状況で、親が真剣に話を聞いてくれるだけで、子どもは「自分の存在を認められている」と実感し、自信を取り戻すきっかけとなります。

例えば、子どもが「みんなに嫌われている気がする」と話した場合、親が「そんなことはない」と否定するのではなく、「嫌われていると感じるんだね。その理由、教えてもらえる?」と受け止めるだけで、子どもは「自分の気持ちは価値がある」と感じられます。この感覚の積み重ねが、子どもの自己肯定感を徐々に育てていくのです。


2. 親子の信頼関係の強化

傾聴を続けることで、親子の信頼関係がより深く強固になることが期待されます。不登校や引きこもりの問題を抱える家庭では、親子間のコミュニケーションが断絶されがちです。「どうして学校に行かないの?」と問い詰めたり、「もっと頑張りなさい」と励ましたりするアプローチは、子どもにとってプレッシャーとなり、親子間の距離をさらに広げることがあります。

傾聴を通じて、「親は自分を責めたり否定したりしない」「自分の話をちゃんと聞いてくれる」という安心感を子どもが得られるようになると、親子間の信頼が深まります。この信頼関係は、子どもが困難に直面した際に親に相談しやすくなる土台となります。例えば、学校復帰や社会復帰を目指す際にも、この信頼があることでスムーズに進めることができます。


3. 子どもの問題解決能力の向上

傾聴は、子どもが自分で問題解決する力を育む手助けとなります。親が話を聞いてくれる環境の中で、子どもは自分の気持ちや考えを言葉にし、整理することを学びます。この過程は、子どもが自分で問題を解決するための重要なトレーニングとなります。

例えば、「友達とケンカをしてしまった」と話す子どもに対し、親が解決策を提示するのではなく、「どうしたら仲直りできると思う?」と問いかけることで、子ども自身が行動の選択肢を考え始めます。このように、自分の感情を表現し、それをもとに行動を選ぶ力を育むことが、子どもの成長にとって重要です。


傾聴がもたらす「家庭全体」の変化

傾聴は、子どもや親子関係にとどまらず、家庭全体の雰囲気にも影響を与えます。子どもの話を丁寧に聞くことで、家庭内に「安心感」や「理解のある雰囲気」が生まれます。このような家庭環境は、子どもの精神的な安定に寄与するだけでなく、家族全員のストレスを軽減する効果もあります。

例えば、子どもの傾聴を通じて親自身が「子どもの成長を急がず見守る姿勢」を学ぶことができます。また、兄弟姉妹がいる場合、親が傾聴を実践する姿を見せることで、子どもたち同士のコミュニケーションにも良い影響を及ぼします。

仲の良い兄弟のイメージ

傾聴を妨げる障害とその克服法

傾聴を実践したいと考えていても、日々の生活の中でうまくいかないと感じることがあるかもしれません。これは、私たちが傾聴を妨げるいくつかの要因に直面しているからです。ここでは、傾聴を妨げる具体的な障害を三つに分け、それぞれの克服法について解説します。


1. 親自身の感情のコントロールが難しい

親が子どもの話を聞くとき、自分自身の感情が邪魔をすることがあります。例えば、子どもが「学校なんて意味がない」と言ったとき、親としては「何を言っているの?」とイライラしたり、不安を感じたりしてしまうことがあります。このような感情が出てくると、傾聴の基本である「相手を受け止める姿勢」が崩れてしまいます。

克服法:感情を整理する時間を持つ
まず、自分自身の感情を受け止め、冷静になる時間を作りましょう。子どもが話を始めたときに感情が湧き上がるのを感じたら、「ちょっと待ってね」と一呼吸置くことも大切です。また、日常的に自分の感情をノートに書き出すなどして整理することで、子どもとの対話の場面でも冷静さを保ちやすくなります。


2. 子どもが話すことを避ける

子どもが心を閉ざしてしまい、話したがらないことも傾聴の障害となります。特に、不登校や引きこもりの子どもは、「話をしてもどうせ理解してもらえない」と感じている場合があります。その結果、親がいくら話を聞こうとしても、「別に」「何でもない」と言われてしまうことが少なくありません。

克服法:非言語的なコミュニケーションを活用する
子どもが言葉で話すのが難しいときには、非言語的なコミュニケーションを試してみましょう。一緒に料理をしたり、ゲームをしたりする中で、少しずつ子どもが気持ちを表現しやすい状況を作ることができます。また、言葉を引き出すためにプレッシャーをかけるのではなく、「いつでも話したいときに話していいよ」と伝え、子どもが安心感を持てるようにします。


3. 時間やエネルギーの不足

忙しい日常の中で、子どもの話をじっくり聞く時間やエネルギーが取れないことも、大きな障害となります。仕事や家事に追われる中で、「傾聴したい気持ちはあるけれど余裕がない」と感じる親も多いでしょう。

克服法:短い時間でも質を高める工夫
時間が限られている場合でも、少しの工夫で傾聴の質を高めることができます。例えば、家事をしながら子どもと会話をするのではなく、数分でもいいので子どもと向き合う時間を取るようにしましょう。また、疲れているときは、「今日はちょっと疲れているけど、話を聞きたい気持ちはあるよ」と伝えることで、親の誠実さが伝わります。

傾聴の実践例とその成果

傾聴が具体的にどのように効果をもたらすのか、実際のエピソードを交えてお話ししたいと思います。不登校や引きこもりに悩む家庭の中で、傾聴を通じて親子関係が改善した事例や、子ども自身が変化を見せた事例は数多くあります。これらのエピソードを通じて、傾聴の重要性をさらに深く理解していただければと思います。


1. 「何も言わない」子どもの心が動いた瞬間

小学5年生の男の子A君は、不登校が始まってから親とほとんど会話をしなくなりました。母親が「どうしたの?」と尋ねても、「別に」とそっけない返事ばかり。ある日、母親は「どうせ話しても無駄だ」と諦めかけていましたが、児童心理司として私がアドバイスしたのは「何も言わなくても、子どものそばに寄り添う時間を作る」ことでした。
そこで、A君の母親は毎晩A君の部屋に行き、「今日はこんなことがあったよ」と自分の日常を一方的に話す時間を取りました。そして、最後に「あなたの話もいつか聞けたら嬉しいな」とだけ伝えるのを続けました。1か月後、A君が初めて自分から「今日はゲームでこんなに強い敵を倒した」と話し始めたそうです。それを聞いた母親は涙が出るほど嬉しかったと言います。

このエピソードが示しているのは、子どもが話さないときでも親が根気よく安心感を提供し続けることが重要であるということです。「話さない=拒絶」ではなく、子どもにとっては「まだ心の準備ができていない」だけの場合が多いのです。


2. 傾聴がもたらした親子の信頼関係の再構築

中学2年生の女の子Bさんは、学校でのいじめが原因で引きこもり状態に陥っていました。母親はBさんの状況を心配し、「学校に相談したほうがいいんじゃない?」と提案しましたが、Bさんは「そんなことされたら余計に辛い」と怒りをあらわにしました。この時、母親は自分の行動が「子どものためにならない」と感じ、私に相談に来られました。
私は母親に、「まずはBさんが何を考えているのかを徹底的に聞くことに集中しましょう」と提案しました。具体的には、Bさんが自分の部屋から出てきたタイミングで「どうしてそんなに学校が嫌なのか教えてほしいな」と穏やかに話しかけてもらいました。最初は無視されたそうですが、何度か同じことを続けるうちに、Bさんがポツリと「学校が怖い」と言ったそうです。
その言葉を聞いた母親は、「怖いと思うんだね」と繰り返し、それ以上は聞かずにその場を終えました。それから少しずつ、Bさんは学校での出来事や気持ちを話すようになり、半年後には母親と一緒に学校のカウンセラーと相談することに前向きになったのです。

このケースでは、親が解決策を急がず、子どもの感情に寄り添うことが、子ども自身が行動を起こすきっかけとなった好例です。


3. 傾聴を通じて子どもが自分を見つめ直した例

高校1年生のC君は、成績優秀で生徒会長を務めていましたが、ある日突然登校を拒否しました。親は「何があったの?」と詰問しましたが、C君は「疲れた」とだけ言って部屋に閉じこもりました。親としては、学校に行くことが大切だと感じ、C君に「これ以上休んだら取り返しがつかなくなるよ」と説得を試みましたが、逆効果でした。
そこで、私が提案したのは、C君の「疲れた」という言葉を深く掘り下げるための傾聴です。母親はC君に「どうしてそんなに疲れているのかな?」と優しく尋ねるようにしました。最初は「別に」とかわされましたが、「本当に辛いときは話してね」と繰り返し伝えることで、C君が「自分の気持ちを受け入れられる場所がある」と感じ始めました。
1か月後、C君は初めて「もう何も頑張りたくない」と本音を話しました。母親はそれを受け止め、「頑張らなくていいんだよ」と伝えると、C君は涙を流しながら「そう言ってくれてありがとう」と言いました。その後、C君は徐々に自分のペースで日常を取り戻していきました。

このエピソードが示すのは、傾聴は子どもが自分の本音に気づき、受け入れるプロセスを促進する力を持つということです。


最後に:傾聴を続ける価値

ここまで述べてきた通り、傾聴は子どもの心に寄り添い、信頼関係を築き、自分自身の力で前に進むきっかけを作るための強力な手段です。しかし、それは簡単なことではありません。親自身が感情をコントロールし、時間を作り、忍耐強く続ける必要があります。

大切なのは、「完璧を目指さない」ことです。上手に聞けない日があっても、気に病まずに、次の日からまた続ければいいのです。傾聴は一瞬で効果が出るものではなく、小さな積み重ねによって、いつか大きな変化をもたらします。

どうか、今日もお子さんの気持ちに耳を傾ける時間を作ってみてください。たとえ小さな一言でも、それが親子の絆を深める大きな一歩となるのです。


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