不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因に焦点を当て、子どもたちが再び学校に戻れるようになるための支援を行っています。本日は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、最後のリスクである「周囲への過敏性(HSP)」についてお話しします。
周囲への過敏性、いわゆる「Highly Sensitive Person(HSP)」の特性は、今、多くの子どもたちに見られる傾向の一つです。この特性を持つ子どもは、刺激に対して敏感に反応し、特に学校生活の中での些細なことが心に強い負荷をかける場合があります。その結果、不登校や登校への抵抗といった形で現れることが少なくありません。今回は、このリスクについて深掘りし、不登校を防ぐための具体的な方法を考えていきたいと思います。
目次
周囲への過敏性(HSP)の背景と特性
HSPとは何か?
HSPとは、心理学者エレイン・アーロン博士によって提唱された概念で、感受性が強く、周囲の刺激に対して敏感に反応する特性を持つ人々を指します。これは病気や障害ではなく、あくまで生まれつきの性質です。HSPの特性を持つ人々は全人口の15〜20%ほどいると言われ、子どもの中にも一定数存在します。
HSPの特性を持つ子どもたちは、以下のような特徴を示すことが多いです:
- 周囲の音、光、匂い、温度などの感覚刺激に過敏に反応する。
- 他人の感情や言葉、表情に強く影響を受ける。
- 新しい環境や突然の変化に対して不安や恐怖を感じやすい。
- 細かいことに気付きやすいが、それが逆に負担となる場合がある。
これらの特性を持つ子どもたちは、学校という多様な刺激が集まる場において、特に大きなストレスを感じることがあります。そのため、HSPの特性を理解し、適切にサポートすることが不登校を未然に防ぐためには非常に重要です。
HSPの特性が不登校につながる理由
HSPの特性を持つ子どもたちにとって、学校生活は過酷な環境になることがあります。たとえば、以下のような状況が考えられます。
- 感覚過敏によるストレス
体育の授業で使うマットの埃臭さや鉄棒の金属の匂い、教室のざわめきや蛍光灯の明るさなど、学校ではさまざまな感覚刺激があります。これらがHSPの子どもにとっては非常に強い不快感やストレスの原因となることがあります。 - 人間関係の過剰な負担
他人の表情や言葉に敏感なHSPの子どもたちは、友達との些細な言い合いや教師からの指摘に深く傷つくことがあります。また、教室内の人間関係における緊張感や圧力を過剰に感じることもあります。 - 新しい環境への不安
学年が変わったり、クラス替えがあったりするたびに、新しい環境に適応するための負担が非常に大きくなります。HSPの子どもは「慣れるまで」のハードルが高いため、これが登校しぶりや不登校につながることがあります。
感覚過敏と回避行動の関係
感覚過敏とその影響
感覚過敏は、HSPの特性を持つ子どもたちに共通する課題です。具体的には、以下のような感覚が問題になることが多いです:
- 音:教室内のざわめきや、授業開始のチャイム、運動会のピストル音など。
- 匂い:給食の匂いや校庭で使う道具の匂い、体育館の靴の匂い。
- 触覚:制服のタグの感触や、体育の授業で使う道具の感触。
これらの感覚刺激が強すぎると、子どもは無意識のうちにその場を避けるようになります。最初は「嫌だな」と感じる程度かもしれませんが、それが続くと「行きたくない」という気持ちに変わり、最終的には「行けない」と感じるようになります。
回避行動の強化
不快な状況から逃れたいという気持ちは、人間として当然の反応です。しかし、この回避行動が習慣化してしまうと、不登校という形で現れることがあります。たとえば、以下のような流れです:
- 体育の授業で鉄棒の匂いが気になり、それが嫌で体育を休む。
- 体育の授業を休んでいると、クラスメートからの視線が気になるようになる。
- 体育だけでなく、教室全体に対しても居心地の悪さを感じるようになる。
- 最終的に学校全体を避けるようになり、不登校につながる。
このように、感覚過敏と回避行動の連鎖が、不登校を引き起こすリスクを高めてしまうのです。
HSPの子どもに適した家庭環境の整え方
HSPの特性を持つ子どもたちにとって、家庭は「心の安定を保つ場所」であることが何よりも重要です。学校生活で受ける刺激やストレスを家庭で適切に緩和できれば、不登校や登校しぶりを防ぐことにつながります。
1. 子どもの感覚に寄り添う環境作り
HSPの子どもたちは、周囲の刺激に対して敏感であるため、自分にとって心地よい環境を持つことが必要です。家庭で以下のような工夫を取り入れると良いでしょう。
- 静かな空間の確保
子どもが刺激を感じやすい場合、自分の部屋やリビングの一角に、静かで安心できる空間を用意することが大切です。余計な音や光を排除し、自分のペースでリラックスできる場所を作りましょう。 - 柔らかい素材や心地よい感触のアイテム
感覚過敏を持つ子どもは、肌触りの悪い服や寝具にストレスを感じることがあります。子どもが「これなら気持ちいい」と感じる素材のものを選ぶことが大切です。 - 家庭の匂いを見直す
家庭内の匂いも子どもに影響を与えることがあります。香りの強い柔軟剤や芳香剤がストレスの原因になる場合もあるため、できるだけ無香料のものを使用するなど、配慮が必要です。
2. HSP特有の感情を尊重した声かけ
HSPの子どもたちは、親の何気ない一言にも敏感に反応します。そのため、家庭での声かけや会話の仕方には注意が必要です。
- 肯定的な言葉を意識する
子どもがミスをしたり、苦手なことに直面したりしたときは、「どうしてできないの?」ではなく、「挑戦しようとしたことがすごいね」「次は少しずつやっていこうね」といった肯定的な言葉をかけましょう。 - 子どもの感情を言葉で受け止める
HSPの子どもは、感情を自分でうまく処理できないことがあります。たとえば、「学校でみんなが大きな声で話してて疲れた」と言ったときには、「そうだったんだね。疲れるよね」と共感の言葉を返すことで、子どもは安心感を得られます。 - 過剰に心配しすぎない
HSPの子どもは親の感情にも敏感です。お母さまが不安そうな表情や言葉を見せると、それを敏感に感じ取り、さらに不安を抱えることがあります。心配する気持ちは自然なものですが、それを子どもに直接伝えすぎないよう注意しましょう。
3. 楽しい体験で刺激に慣れさせる
HSPの子どもにとって、苦手な刺激に慣れることは非常に難しいことです。しかし、「楽しい体験」を通じて徐々に慣れていくことができれば、不登校リスクの軽減につながります。
- 苦手な状況に段階的に触れる
たとえば、体育の授業で使う鉄棒の匂いや感触が苦手な場合、まずは鉄棒に軽く触れるところから始め、次に短時間ぶら下がってみる、といった具合に段階的に慣れていくことを目指します。 - 興味を引き出すアプローチ
子どもの好きなキャラクターや趣味を取り入れたアプローチを試みることも効果的です。たとえば、鉄棒が苦手な場合でも、好きなキャラクターが描かれた手袋を使うと抵抗が減ることがあります。 - ポジティブな結果を共有する
苦手な状況に少しでも触れられた場合は、「よく頑張ったね」と伝え、成功体験として記憶させるようにします。これは、次回以降の挑戦を後押しするモチベーションとなります。
学校との協力でHSPの子どもを支える
家庭だけでなく、学校とも協力しながらHSPの子どもを支えていくことが重要です。
1. 学校との情報共有
HSPの特性について、学校側としっかり情報を共有することで、子どもに適した配慮がしやすくなります。
- 子どもの特性を伝える
具体的にどのような刺激に対して敏感なのかを、担任の先生やスクールカウンセラーに伝えることが重要です。たとえば、「体育の授業で使うマットの埃が苦手」といった具体例を挙げると、先生も配慮しやすくなります。 - 柔軟な対応をお願いする
子どもが特定の教科や状況で苦手意識を抱えている場合、一時的に授業を見学させたり、別の活動に参加させたりする柔軟な対応をお願いしましょう。
2. 学校全体での支援体制
HSPの特性を持つ子どもに対する支援は、担任の先生だけではなく、学校全体で取り組むべき課題です。
- 教職員の理解を深める
HSPについての研修や勉強会を行い、教職員がこの特性を理解することで、学校全体での支援がスムーズになります。 - 安心感のある環境づくり
教室内の音量や照明など、子どもが安心して過ごせる環境を整える努力を、学校全体で進めることが重要です。
最後に:HSPの特性に寄り添う
HSPの特性を持つ子どもたちは、確かに周囲の刺激に敏感で、不登校のリスクを抱えやすい側面があります。しかし、その敏感さは、同時に他者への気遣いや、芸術的な才能、繊細な観察力といった「強み」にもつながります。
お母さまが子どもの特性を受け入れ、その良さを認めることで、子どもは自信を持って学校生活を乗り越えられるようになります。不登校リスクを未然に防ぐために、今日から少しずつできることに取り組んでみてください。
ポイント | 要点 | 必要な行動 |
---|---|---|
周囲への過敏性(HSP) | HSPの子どもは感覚刺激や人間関係に敏感で、不登校リスクが高まる傾向がある。 | 感覚過敏を理解し、苦手な刺激を減らす環境作りを行う。段階的に慣れさせ、成功体験を積ませる。 |
感覚過敏の影響 | 音、光、匂いなどの刺激が強いと、子どもが学校を避ける要因となり得る。 | 教室の環境や学校生活での刺激を減らす工夫を行い、子どもの負担を軽減する。 |
人間関係の負担 | 他人の言葉や態度に敏感なHSPの子どもは、些細なトラブルでも深く傷つきやすい。 | トラブルが起きた際には共感を示し、子どもの気持ちを受け止め、安心感を与える。 |
回避行動の強化 | 過敏さから回避行動を取ると、それが習慣化し、不登校につながりやすくなる。 | 苦手な状況に段階的に触れさせ、無理のない範囲で少しずつ慣れさせる。 |
学校との情報共有 | 子どものHSP特性を学校に伝えることで、きめ細やかな支援が可能になる。 | 子どもが特に苦手とする刺激や状況を担任に共有し、適切な配慮をお願いする。 |
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