不登校や引きこもりに悩む子どもたちと向き合う児童心理司をしております、藤原と申します。これまで、数多くの不登校の子どもたちとその保護者の方々に寄り添い、サポートを続けてまいりました。不登校という現象は、子どもと保護者、双方にとって非常に深刻で、人生の中で避けて通りたくない道のりだと感じる方が多いと思います。その道のりを少しでも和らげられるよう、今日お話しするのは、「フリースクール」という選択肢と「再登校」という二つの選択肢についてです。それぞれの特徴を冷静に分析し、どのように向き合うべきかを考えていきたいと思います。
不登校は家庭だけの問題ではない
不登校のお子さんを抱えるお母さまにとって、その現状は想像以上に辛いものでしょう。なぜ学校に行けないのか、どうして他の子と同じように振る舞えないのか、時にはお子さんを責めたくなる気持ちが生まれることもあるかもしれません。
しかし、まず最初にお伝えしたいのは、不登校という現象は決してお母さまやお子さんだけの問題ではないということです。学校という環境は、多くの子どもたちにとって楽しく成長できる学びの場である一方で、一部の子どもにとっては過酷なストレスの温床になることもあります。この現象は、日本全体の社会構造や教育制度の問題も含んでいるため、誰か一人のせいにすることでは解決できないのです。
文部科学省のデータによると、現在日本では小中学生のうちおよそ1.8%の子どもが不登校状態にあるとされています。これは年々増加傾向にあり、教育現場でも深刻な課題として捉えられています。不登校の原因は、学業不振、友人関係のトラブル、教師との相性、さらには家庭環境の影響など多岐にわたります。この中で、保護者ができることは限られているように感じるかもしれませんが、実際には子どもにとって親の理解やサポートが最も重要な要素の一つです。
フリースクールとは何か
さて、不登校の子どもたちにとっての支援の場として「フリースクール」という選択肢があります。フリースクールとは、学校に通うことが難しい子どもたちのために設立された教育施設であり、学業だけでなく、心理的な支援や社会性の育成を目的としています。ここではまず、フリースクールの特徴を具体的にお伝えし、どのような子どもに適しているのかを考えていきます。
フリースクールの現状
日本には現在、約500以上のフリースクールが存在しています。地域によって設置数には差がありますが、都市部を中心に多くの施設が展開されています。フリースクールの運営母体は、民間のNPO法人や個人経営のものが多く、学校法人として認可を受けた施設は非常に限られています。そのため、施設ごとに教育方針や運営スタイルが大きく異なるのが特徴です。
料金についても様々で、1か月あたり数万円程度のところもあれば、より専門的な支援を提供する施設では10万円を超えることもあります。一見高額に感じるかもしれませんが、少人数制や個別指導、専門的なカウンセリングが含まれることを考えると、これも一つの投資と捉えられるでしょう。ただし、自治体によってはフリースクールに通う費用を一部補助する制度を設けているところもありますので、情報収集が重要です。
フリースクールのメリットとデメリット
フリースクールの最大のメリットは、学校に行けない子どもたちにとっての「安全な場所」であることです。学校では感じることの多い競争や集団生活のストレスを取り除き、一人ひとりのペースに合わせた学びが可能になります。例えば、友人関係で悩んでいた子どもがフリースクールで新たな友人を作り、自己肯定感を取り戻すケースも珍しくありません。また、自由な雰囲気の中で、自分の興味関心に基づいた活動を通して自己成長を促すことができるのも大きな魅力です。
一方で、デメリットも存在します。一つは、学びの質や量が学校教育に比べて十分でない場合があることです。フリースクールでは必ずしも文部科学省のカリキュラムに沿った授業が行われるわけではないため、高校や大学への進学を目指す場合、追加の学習が必要になることがあります。また、運営母体の質や方針によっては、サービスの内容が安定しないこともあります。信頼できるフリースクールを見極めるためには、実際に訪問し、スタッフや子どもたちの様子を確認することが重要です。
フリースクールと再登校の比較
それでは不登校の子どもにとって、フリースクールに通うことと学校への再登校、どちらが望ましいのでしょうか。この問いに対する答えは、お子さん一人ひとりの状況によって異なりますが、私自身の立場から少し踏み込んだ見解をお伝えします。
再登校の重要性
私は、お子様に学校に通いたいという気持ちがあるのであれば、再登校を目指すことを最優先に考えるべきだと思っています。それは、学校という環境が子どもたちにとって非常に特別な場であるからです。同年代の子どもたちと共に学び、遊び、時に衝突しながら成長していく経験は、学校以外ではなかなか得ることができません。特に小中学生の時期は、友人との友情や競争を通じて自己を確立していく非常に重要な時間です。この期間を学校という場で過ごすことは、後から取り戻すことは出来ない、かけがえのない経験となります。
学校は単なる学びの場ではありません。同年代の子どもたちとの日々のやり取りを通して、社会性やコミュニケーション能力を育む場でもあります。例えば、グループ活動や体育祭、文化祭などで役割を分担し、仲間と一緒に目標を達成する経験は、社会で生きていく上で欠かせない能力を身に付ける土台になります。こうした体験を通じて培われる「他者との協力」や「自己の役割を果たす責任感」は、フリースクールや家庭だけでは代替しにくいものです。
また、学業面でも学校の強みは明確です。学校は文部科学省のカリキュラムに基づいて授業を進めていくため、学力を体系的に身に付けることができます。特に、高校受験や大学受験を控えた子どもにとって、学校の授業が提供する内容は極めて重要です。フリースクールで学びながら受験勉強をすることは可能ですが、その場合、追加で塾や個別指導に通う必要が出てくるため、子どもにかかる負担が増えることも考えられます。
しかし、再登校を勧めるにあたって重要なのは、子どもが「無理をしていないか」をしっかり見極めることです。学校に戻りたいという気持ちがある場合でも、急激に環境を変えることでストレスが大きくなり、結果的に登校が続かなくなるケースも少なくありません。そのため、子どもの気持ちやペースを最優先に考え、少しずつ環境に慣れていけるようなサポートが必要です。
フリースクールの役割
一方、フリースクールには学校とは異なる重要な役割があります。それは、「心の安全基地」としての機能です。不登校の子どもたちは、学校に対する不安やストレスが非常に強く、家から出ることすら難しい状態にあることが多いです。このような状態で無理に学校へ戻そうとすると、かえって不安が悪化し、家庭内でのトラブルに発展することもあります。フリースクールは、そうした子どもたちが外の世界に一歩踏み出すための中間地点として機能します。
例えば、あるフリースクールでは、午前中はスタッフと一緒に好きな本を読むだけの時間を設け、午後からは少人数でのグループ活動を行うという柔軟なプログラムを取り入れています。このような環境では、子どもたちは自分のペースで外の世界に馴染んでいくことができます。また、フリースクールのスタッフは多くの場合、子どもの心のケアに特化した専門知識を持っており、子どもが抱える不安や悩みに寄り添うことが可能です。
さらに、フリースクールでは、子どもたちが自分の興味や関心を中心に学べる時間が多いのも特徴です。例えば、プログラミングやアート、料理など、学校では十分に取り組むことが難しい分野に触れることで、自信や自己肯定感を取り戻す子どももいます。こうした活動を通じて「やりたいこと」を見つけられると、将来に対する意欲も少しずつ育まれるようになります。
再登校とフリースクールのバランスを取る
ここまでお話ししてきたように、再登校とフリースクールにはそれぞれ独自のメリットがあります。そして重要なのは、どちらか一方に偏るのではなく、お子さんの状況に応じて柔軟に選択肢を活用していくことです。
例えば、「今すぐ学校には戻れないけれど、家にいるだけでは先に進めない」という場合、まずフリースクールに通うことで社会生活のリズムを取り戻し、その後再登校を目指すというステップも考えられます。逆に、学校での学業を諦めたくないお子さんには、家庭でのサポートを続けながら少しずつ学校へ通う準備を進めるのがよいでしょう。その際、フリースクールを一時的なサポート拠点として利用することもできます。
私がこれまで関わってきたお子さんの中には、最初はフリースクールでスタッフと1対1で話すことさえ困難だった子どもが、数か月後には他の子どもたちと一緒に工作を楽しめるようになり、最終的には学校へ戻ることを選んだケースもありました。一方で、学校には戻らず、フリースクールでの学びを続けながら、高校進学や専門学校への道を選んだお子さんもいます。
保護者の役割と心構え
最後に、不登校のお子さんを抱える保護者の方に向けて、いくつか心構えをお伝えしたいと思います。不登校という状況は、子どもだけでなく保護者にとっても大きな試練です。しかし、この試練を乗り越えるためには、保護者自身が冷静に、そして柔軟に対応することが何よりも重要です。
まず、「子どもを信じる」ということを忘れないでください。不登校の状況にある子どもは、親からの信頼を感じることで大きな安心感を得ます。一方で、親が焦りや苛立ちを強く抱えていると、それが子どもに伝わり、不安を増幅させることがあります。子どもが自分のペースで一歩ずつ進めるよう、長い目で見守ることが大切です。
次に、「情報を集める」ということも大切です。不登校への対応は一律ではなく、お子さんに最適な選択肢を見つけるためには、多くの情報を集めて検討する必要があります。学校やフリースクール、地域の支援団体など、多くの機関が提供する情報を活用し、納得のいく判断をしてください。
そして最後に、「親自身が無理をしない」ということです。不登校は親子にとって非常に重いテーマですが、親が無理をするとその影響が家庭全体に広がります。時には信頼できる相談相手を見つけ、適切に頼ることも必要です。
フリースクールと再登校のどちらが良いかという問いに、明確な答えを出すのは難しいことです。しかし、重要なのはお子さんの気持ちに寄り添いながら、適切なサポートを選び取ることです。お子さんが今抱えている不安を少しずつ解消し、安心して社会の中で成長できるよう、保護者としてできることを考え続けてください。私もまた、不登校に悩むお子さんとその保護者の方々の力になれるよう、これからもサポートを続けていきたいと思います。
ToCo(トーコ)株式会社について
私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するにサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
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