こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。
今日は「不登校から抜け出すためにはアウトプットが必要」というテーマでお話ししたいと思います。
不登校のお子さんを持つ保護者の方とお話をしていると、よく出てくる言葉があります。
それは、「どうすればこの子が変わるんでしょうか」というものです。
もちろん、答えは一つではありません。
ですが、今回はその“変わる”ための一つのヒントとして、「アウトプット」という視点をご紹介してみたいと思います。
参考:文部科学省「今後の不登校への対応の在り方について(報告骨子)」
目次
- 「休ませるのが大事」と言われるけれど…
- インプットばかりだと、心は動かない
- 「話す」は最強のアウトプット
- アウトプットが「現状維持のレール」を外れる理由
- 「やったほうがいいのはわかるけど、うちの子には難しい」
- 親が「見えない変化」に気づけると、大きな力になる
- まとめ
「休ませるのが大事」と言われるけれど…
不登校の初期対応として、「まずはとにかく休ませましょう」「無理をさせないで見守りましょう」と言われることが多いです。
このアドバイスには、大切な意味があります。
心がすり減っている時に、さらに外からプレッシャーをかけても、良くなるどころか逆効果になることが多いからです。
ただ、ここで少し立ち止まって考えてみたいのが、“休む”という状態が長引いた時の話です。
例えば、家でゲームをして、動画を見て、お菓子を食べて、寝る。
外に出ない日が続き、人と話す機会も減る。
そんな生活が何ヶ月も続いたとき、子どもたちの表情に、少しずつ変化が見えてきます。
はじめのうちは「学校に行かなくていい」という安心感で、明るさが戻ることもあります。
けれど、それが半年、1年と続くと、なんとなく目の力が弱くなるような感じを受けることがあります。
何もしていないわけではないんです。
YouTubeで知識を得たり、SNSで流れてくる情報を見たり、ゲームの中で戦略を考えたりしている。
つまり、インプットはしているんです。
でも——アウトプットはどうでしょうか。
インプットばかりだと、心は動かない
「アウトプット」という言葉は、少し堅く聞こえるかもしれません。
簡単に言えば、「自分の内側から外に出すこと」です。
たとえば、
- 誰かと話すこと
- 散歩に出てみること
- 絵を描いてみること
- 自分に手紙を書くこと
これらは全部、アウトプットです。
頭や心の中にあるものを、外に向けて出す行動です。
人は、インプットだけを続けていると、なかなか現実が動きません。
新しい情報が入ってくるばかりで、それが自分の中で消化されずに滞ってしまうんです。
まるで、食べ物をどんどん口に入れているのに、体を全く動かさない状態に似ています。
「話す」は最強のアウトプット
中でも効果が高いと感じるのが、「話す」というアウトプットです。
これは、言葉を使って自分の考えや感情を整理することになります。
「うちの子は全然話さないんです」とおっしゃる保護者の方も多いです。
それも無理はありません。子どもにとっては、話すこと自体がストレスになることもあるからです。
ただ、「話す」と言っても、誰かと向き合って会話をしなくてもいいんです。
例えば、
- 一人でブツブツつぶやく
- 鏡の前で独り言を言う
- 空想の相手に語りかける
こういう形でも、効果はあります。
言葉に出すという行為が、心をほぐしてくれるからです。
心理学ではこれを「言語化」と呼びます。
自分の気持ちや状態を言葉にすることで、曖昧なモヤモヤが少しずつ整理されていくんです。
散歩やちょっとした外出も立派なアウトプット
もう一つ、取り入れやすいアウトプットが「身体を動かすこと」です。
中でも、散歩はかなりおすすめです。
歩くことで、呼吸が深くなります。
景色が変わることで、脳が刺激を受けます。
それだけでも気分が少しだけ上向くことがあります。
もちろん、いきなり外に出るのはハードルが高いと感じる子もいます。
そんなときは、ベランダに出てみる、窓を開けて外の空気を吸ってみる、でもいいと思います。
少しだけ、外の世界と自分の間に接点を作る。
これが大事です。
「自分に手紙を書く」という方法
これは少し珍しく聞こえるかもしれませんが、私が時々おすすめする方法に「自分に手紙を書く」というものがあります。
用意するのは紙とペンだけ。スマホのメモアプリでも構いません。
書き方に決まりはありません。
今日思ったこと、イライラしたこと、嬉しかったこと、何でもいいです。
たとえば、 「今日は何もしていない気がするけど、なんか疲れてる」 「ゲームのストーリーが面白かった」 「明日ちょっとだけ外に出てみようかな…無理かな」
こんなふうに、正直な気持ちを書いてみるだけで、少しだけ心が軽くなることがあります。
誰にも見せる必要はありません。
むしろ、見せないつもりで書くほうが、自由になれます。

アウトプットが「現状維持のレール」を外れる理由
ではなぜ、アウトプットをすると現状が動き始めるのでしょうか。
これには、脳と心のはたらきが関係しています。
人間の脳は、刺激を受けるとその都度、反応を変えます。
インプットだけの状態では、この反応が単調になります。
たとえば、
- 同じ動画を毎日見る
- 毎日似たようなゲームをする
こうした生活の中では、脳の中の回路は少しずつ固定化していきます。
そして、「いつも通り」が繰り返されていくんです。
しかし、アウトプットがあると、そこに“変化”が生まれます。
自分の考えを言葉にしてみる。
ちょっと外に出てみる。
誰かと目を合わせる。
それだけで、脳は「おや?」と反応します。
新しい経験として、処理が始まります。
この「小さな変化」が、今までのパターンから外れる第一歩になるのです。
「やったほうがいいのはわかるけど、うちの子には難しい」
ここまで読んでくださった方の中には、こう思った方もいるかもしれません。
「話すのがいいのは分かった。散歩もいいと思う。でも、うちの子にはそれが難しいんです」
——このお気持ち、本当によく分かります。
無理にやらせようとしても、反発されてしまう。
機嫌を損ねて、親子関係が悪くなるのが怖い。
そんな経験を、私もたくさんのご家庭から伺ってきました。
このとき大切なのは、「何をするか」よりも「どんな風に関わるか」です。
たとえば、話すことを促したいなら、「今日は何か話したいことある?」と聞くよりも、
「さっきYouTubeで変なCM見たんだけどさ」と、親が何でもない話をしてみる方が効果的なことがあります。
散歩も、「外に出てきたら?」と誘うより、
「ちょっと郵便ポストまで付き合ってくれる?」と軽く声をかける方が、子どもは動きやすかったりします。
要するに、きっかけは“小さくて、ゆるいもの”の方が成功しやすいのです。
成功体験は「頑張って何かを成し遂げたこと」じゃなくてもいい
もう一つ、誤解されがちなことがあります。
それは、「動き出すには、成功体験が必要」という考え方です。
たしかに、成功体験は自信につながります。
でも、それが「大きな成功」である必要はないのです。
- 朝起きて顔を洗えた
- 外に出て5分歩いた
- 自分の気持ちをメモに書けた
こうした小さなことでも、「今日はできたな」と思えるだけで、心の中に変化が起きます。
とても地味なことですが、こういう変化が積み重なることで、「動ける自分」という実感が少しずつ育っていくんです。
「また戻ってしまうんじゃないか」という不安も自然なこと
もうひとつ、保護者の方がよく感じるのが、「少し動き出したと思ったら、また元に戻ってしまった」という不安です。
でも、これは“後退”ではありません。
むしろ“自然な波”です。
気分や体調、外部の刺激などで、状態が日によって変わるのは当たり前です。
それを「せっかく良くなったのに…」と捉えると、お互いに苦しくなってしまいます。
少し進んで、戻って、またちょっと進む。
そんな風に、階段をゆっくり上るように考えてみてください。
「何もしない時間」にも意味がある
ここまでアウトプットの大切さをお伝えしてきましたが、誤解してほしくないこともあります。
それは、「何もしない時間=悪い時間」ではないということです。
アウトプットは大事。でも、それが“義務”になってしまっては意味がありません。
本人の中で、「少しやってみようかな」という気持ちが育ってくるタイミングが大切です。
その種が育つには、「何もしない時間」も必要なんです。
植物の種も、土の中でじっとしている時期があります。
見た目には変化がなくても、水を吸い、温度を感じ、少しずつ発芽の準備をしています。
お子さんの心の中でも、同じようなことが起きているかもしれません。
親が「見えない変化」に気づけると、大きな力になる
私がカウンセリングをしていて感じるのは、
「目に見える変化」よりも、「見えにくい変化」の方が、実は重要なことが多いということです。
- 自分からお風呂に入るようになった
- イライラした後に、自分で部屋にこもるようになった
- 何も言わずに、ふと散歩についてきた
こうした些細な変化に、親が「気づいて」「認めて」あげるだけで、子どもはふっと楽になることがあります。
「変わろうとしている自分に、気づいてくれてるんだ」と感じられるからです。
ToCoの支援でも大切にしていること
私たちToCo(トーコ)でも、アウトプットの機会を大切にしています。
子ども自身が「話す」「自分の考えを言語化する」ことで、少しずつ自己理解が深まり、
家族との関わりもスムーズになっていく事例が多くあります。
また、保護者の方も「ただ見守るだけではなく、何を意識していけばいいのか」を具体的に学びながら、無理のない関わり方を見つけていくことができます。
まとめ
不登校から抜け出すためには、「アウトプット」がひとつの鍵になるというお話をしました。
人は、インプットだけでは変化しにくく、心が少しずつ停滞してしまうことがあります。
だからこそ、小さなアウトプット——話すこと、動くこと、書くこと——を習慣にすることで、
“今の状態”から外へ向かうレールを、自分の中に引いていくことができます。
でも、それを無理にやらせようとする必要はありません。
親ができるのは、「きっかけ」を与えることと、「変化に気づくこと」です。
最終的には、子どもが自分のペースで、ゆっくりと外に向かっていくこと。
それが、もっとも確かな回復のサインです。
ToCo(トーコ)について
私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。
学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。
