友だち100人から解き放たれよう

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こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。

今日は「友だち100人から解き放たれよう」というテーマでお話ししたいと思います。

きっかけは、ある保護者の方との会話でした。
「スーパーで流れてるあの歌を聞くと、なんだか胸がざわざわするんです」
——そんな一言から始まりました。

おそらく、多くの方が耳にしたことがあると思います。
「ともだち100人できるかな♪」という、あの有名な子どもの歌「一年生になったら」です。
お買い物中やテレビのCM、運動会のBGMなんかにも使われたりして、ふとした瞬間に流れてくる曲です。

でも、よく考えてみると、この歌。
本当に素敵な歌でしょうか?

今日は、この歌に込められたメッセージを、ちょっと立ち止まって考えてみたいと思います。


目次



「友だち100人できるかな」という無言のプレッシャー

この歌が初めて登場したのは1966年。
当時の日本は高度経済成長の真っ只中で、「集団」「協調」「みんなで同じ方向を向く」ことが良しとされる時代でした。

そんな時代背景の中で、「友だちは多いほうがいい」「たくさんの人と仲良くするのが正しい」という価値観が、無意識のうちに子どもたちに刷り込まれていきました。

もちろん、友だちが多いこと自体を否定するわけではありません。
誰かと関われること、つながりを持てることは、大人になってもとても大事です。

ただ、この「100人できるかな」というフレーズ。
少し冷静に考えてみると、なかなかに重たいんですよね。


「みんなと仲良くしよう」がもたらす心のひずみ

よく学校で言われる「みんなと仲良くしよう」という言葉も、実は似た構造を持っています。

この言葉、悪気はないんです。
先生たちも善意で言っているし、「いじめをなくしたい」という願いから出てきたものだったりします。

でも、言われる側の子どもたちはどう感じるでしょうか?

本当は苦手な子がいるのに、それを我慢して笑わなきゃいけない。
「仲良くしなきゃいけない」から、距離を取ることもできない。

その結果、自分の心を押し殺すようになります。
そして少しずつ、自分がどう感じているのかが分からなくなってしまうのです。


「友だちが多い=いいこと」という呪縛

「うちの子、友だちが少ないんです」
「学校に行っても一人でいることが多くて……」

そんな声を聞くたびに思うのは、
「それって、本当に問題なんでしょうか?」という疑問です。

もちろん、親として心配になる気持ちはとてもよく分かります。
私も我が子が一人でいると聞けば、何かトラブルがあるんじゃないかと不安になります。

でも、それは私たち大人が、
「友だちはたくさんいるべき」
「ひとりぼっちはかわいそう」
という“常識”を疑っていないからこそ、湧いてくる感情なのかもしれません。


ひとりでいること=悪ではない

一人で過ごす時間が好きな子。
静かに本を読んでいるほうが安心する子。
深く関われる一人の友だちがいれば、それで十分な子。

そんな子どもたちにとって、「100人の友だち」は必要ないどころか、むしろ重荷になります。

実際、友だちが多すぎることで疲れてしまったり、トラブルが増えてしまったりすることもあります。
中には「人間関係を回すこと」に精一杯で、自分自身を見失ってしまう子もいます。

それでも、「ひとりでいるのは変」とされてしまうのが、今の社会です。


子どもの「ひとり時間」を大人がどう見るか

ここで一度、立ち止まって考えてみてください。

「この子はひとりでいるけれど、困っているのかな?」
「それとも、自分なりのペースで安心して過ごしているのかな?」

同じ“ひとり”でも、その背景は全然違います。

そして、前者と後者を見分けられるかどうかは、親や大人のまなざしにかかっています。
「寂しそうだから」「かわいそうだから」と思い込んで、無理に友だちを作らせようとすると、子どもはますます混乱してしまいます。


「100人」より「たった一人」の安心

「友だちは多いほうがいい」と言われる一方で、実際に子どもたちの口からよく聞くのは、
「一人だけでも、ちゃんと話せる子がいればいい」
という声です。

大人でもそうですよね。

知り合いは多くても、本音で話せる相手って、そう何人もいないと思います。
むしろ、たった一人でも「自分のことを分かってくれる」と思える人がいれば、すごく心強いものです。

にもかかわらず、子どもにだけ「広く・浅く・みんなと仲良く」という無理をさせるのは、少し違う気がしています。

小学生の登校画像

「友だちを作る」は目標じゃなく、結果

不登校や登校しぶりがあると、保護者の方が「まずは友だちを作って」と考えることがあります。
けれど、私はこの順番に、少し疑問を感じています。

友だちは、「作る」ものというより、「できる」ものです。
何かに夢中になっているときや、好きなことに取り組んでいるとき。
同じ空間で自然に時間を過ごしているうちに、気が合う相手が現れて、少しずつ関係ができていく。

それが本来の友だち関係なのではないでしょうか。

つまり、「友だちを作る」は目的ではなく、何かに取り組んだ“結果”なのです。


目的を「友だち」から「安心」に変える

では、不登校の子どもが学校に行けるようになるには、どうしたらいいのでしょうか?

私は、「安心できること」が最優先だと思っています。

たとえば、教室に入らなくても大丈夫な場所がある。
無理に人と話さなくても、自分のペースで過ごせる。
わかってくれる大人が一人でもいる。

そういう「安心の土台」があると、少しずつ心がほぐれていきます。

その結果、「誰かとちょっと話してみようかな」と思えるようになる。
そうやって、自分から関わろうとする気持ちが芽生える瞬間がやってきます。


「友だちがいないと不安」なのは、子どもじゃなくて親かもしれない

ここまで読んでくださった方の中には、もしかするとこんな気持ちになっている方もいるかもしれません。

「でも、うちの子は本当に一人ぼっちで大丈夫なの?」
「子どもの将来を考えると、やっぱり人間関係が心配です」

すごくよくわかります。
私も、保護者として同じように感じることがあります。

でも、だからこそ一度だけ、自分に問いかけてみてください。

「この不安は、本当に“子ども自身”のものだろうか?」
「それとも、“自分”が抱えている不安かもしれない?」

子どもがひとりでいても、落ち着いた表情をしている。
好きなことを楽しんでいる。
そんな姿があるなら、きっと大丈夫です。


解き放たれるということ

「友だち100人できるかな」という歌は、明るくて、元気で、無邪気な印象があります。

でも、その裏には「みんなと仲良くするのが正しい」「孤立するのは悪いこと」という、見えないメッセージが含まれているようにも思えます。

その価値観から、少しだけ距離をとってみる。
「友だちが少ない=ダメなこと」ではなく、
「自分らしくいられる関係があれば、それでいい」と考えてみる。

それは、子どもだけでなく、大人自身が抱えていた思い込みから「解き放たれる」ことでもあります。


まとめ

「友だち100人できるかな」という歌が投げかけてくる価値観は、時に子どもたちを縛るものにもなり得ます。

子どもが本当に必要としているのは、「たくさんの友だち」ではなく、「安心していられる空間」と「わかってくれる人」です。

そして、その安心があってこそ、自然な形で人との関係が築かれていきます。

焦らなくて大丈夫です。
「ひとりでいる子」を見たとき、「かわいそう」と感じる気持ちが湧いたら、少し立ち止まってみてください。

もしかしたらその子は、「たくさんの誰か」ではなく、「たった一人の自分」を、大切にしているのかもしれません。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも、子どもたちが「自分のままでいていい」と思える社会のために、発信を続けていきます。

— 竹宮(ToCo 不登校カウンセラー)


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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友達を作らなくてもいい

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目次


「友達がいない」という不安を抱える親子へ

春になると、街のあちこちに真新しいランドセルや制服を身にまとった子どもたちの姿が見られるようになります。親としては、その姿に微笑ましさとともに不安も感じるのではないでしょうか。子どもが新しい環境にうまく馴染めるか、友達ができるか、先生とうまくいくか。そのような心配は、子育て中の親にとって避けられないものです。

特に「友達ができるかどうか」は、多くの親が強く気にするポイントです。自分の子どもが休み時間に一人でいたらどうしよう。グループに入れなくて、お昼ご飯をひとりで食べていたら辛いんじゃないか。誰かと一緒に下校していなかったら、仲間外れにされているのでは……。そういう思いが、子どもの様子を観察するたびに頭をよぎるかもしれません。

実際、「友達ができたか?」という質問を新学期の数日以内に投げかけてしまう親は少なくありません。ある意味それは当然のことです。学校という場所は、勉強だけでなく社会性を学ぶ場でもあるという認識が強くあり、そこに「友達」が関係してくるのは自然な流れです。

しかし、必要な言葉は「友達を作らなくてもいい」かもしれません。

これは決して人間関係を否定する意図でもありません。むしろ、心の安全と成長を守るためのメッセージです。
「誰とでも仲良くしなさい」の言葉の裏に、どれほど大きなプレッシャーが潜んでいるのか。無理に友達を作ろうとして、自分をすり減らしてしまう子どもがどれほど多いのか。私はそれを、親として、そしてカウンセラーとして、日々目にしています。

新しい環境で不安を抱える子どもたちを、どう支えればいいのか。どんな言葉をかければ、自分らしくいられるのか。そして、何より親自身がどのような視点で子どもの「人間関係」と向き合うべきか。そのヒントを、一緒に探していきましょう。

参考データ:文部科学省「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」

「友達づくり」は学校生活の一部にすぎない

小学校でも中学校でも、学校という場所は何より「学びの場」であるということを、まずは再確認しておきたいと思います。先生の話を聞いて、自分で考える力を養う。そうした教育活動こそが、本来の学校生活の核です。

ところが、実際の学校生活では「友達関係」に注目が集まりがちです。先生も保護者も、「友達を大切に」「友達と協力して」と繰り返します。運動会も、修学旅行も、合唱コンクールも、ほとんどの行事は「仲間との協力」が前提となっています。それ自体は悪いことではありません。むしろ、協調性やコミュニケーション能力を養うには最適です。

ただ、ここにひとつ大きな落とし穴があります。それは、「友達ができない子は、学校生活がうまくいっていない」という誤解です。

実際には、ひとりでいることを好む子どももいます。自分の世界を大切にしたい子もいます。グループに入って無理に笑うより、一人で本を読んでいる方が心が穏やかになる子もいるのです。それにも関わらず、「友達がいない=問題がある」と判断されてしまうことが非常に多いのが現状です。

このような誤解の中で苦しむのは、ほかならぬ子どもたち自身です。周囲の目を気にして、無理に誰かと関わろうとしてしまう。自分を押し殺してでも輪に入ろうとしてしまう。その結果、疲弊し、自己肯定感を失っていくのです。

「友達がいない」と聞いても、すぐに問題視しないこと。そこに焦りを感じる必要はありません。学校は本来、「自分らしさを育む場」であるべきです。そして、その「自分らしさ」は、必ずしも友達という枠の中で育まれるものではありません。

だからこそ、私は繰り返し伝えます。「友達を作らなくてもいい」。それは、子どもの世界を狭める言葉ではなく、むしろ可能性を開くための言葉なのです。

「友達ができない=劣っている」は幻想

新学期が始まって数日が経つと、子どもたちの間で自然と“序列”のようなものが生まれ始めます。目立つ子、人気のある子、誰とでもすぐ仲良くなれる子――そうした子どもたちが早々に友達の輪を築いていく様子を見て、親も子も、無意識のうちに「友達が多いことが正しい」「友達が少ない=劣っている」と感じてしまいがちです。

しかし、それは完全に幻想です。

そもそも、「友達が多い=人間的に優れている」といった価値観は、一体誰が決めたのでしょうか?学校の中で目立つ子が、必ずしも心の豊かな子とは限りません。友達が少ない子が、劣っているわけでもありません。むしろ、慎重で観察力があり、自分のペースで人との距離を測れる子こそ、将来にわたって安定した人間関係を築ける資質を持っているとも言えるのです。

「友達がなかなかできない」という現象には、いくつかの要素が関係しています。性格の問題だけではありません。周囲の環境、同じクラスにどんな子がいるか、先生の指導方針、学校の雰囲気など、多くの要素が影響しています。そして何より、「相性」があります。たとえ良い子同士であっても、相性が合わなければ、無理に仲良くする必要はありません。

ですが、子どもたちの間では「仲良し=善」「ひとり=悪」という空気が強く存在しています。これは、アニメやドラマなどの影響もありますし、大人たちの会話の中にも無意識の偏見が含まれていることが多いのです。

たとえば、親同士がこんな会話をしていたらどうでしょうか。

「うちの子、もう友達ができて毎日遊んでいるんですよ」 「え〜すごい!うちはまだみたいで心配で…」

この一言が、子どもにとってどれほどプレッシャーになるか。友達の有無を成績のように比較されると、子どもは「できなかった自分」を否定的に受け止めてしまいます。まるで「友達がいないことは失敗」のように感じてしまうのです。

しかし、人との関係はテストの点数のように評価できるものではありません。何人と話したか、何人と連絡先を交換したか、それは本質ではありません。もっと大事なのは、その関係の中に「安心感」があるか、「尊重」があるかということです。

また、友達ができないことで落ち込んでしまう子どもに、こんな声かけをしてしまう親もいます。

「もっと自分から話しかけなさいよ」 「挨拶くらいちゃんとしないと、友達できないよ」

こういった言葉は、子どもにとって“ダメ出し”に聞こえます。もちろん、社会性を育てるための助言として意図されているのでしょう。でも、傷ついている子どもに必要なのは、戦い方のアドバイスではなく、安心して休める場所です。

「無理して友達作らなくていいよ」 「ひとりでいても、何も悪くないよ」

そんな風に伝えてもらえたら、どれほど救われる子がいるでしょうか。

「友達になろう」という言葉の裏にあるプレッシャー

新年度、特に入学やクラス替え直後には、先生や親が子どもに頻繁に投げかける言葉があります。

「新しい友達作ってね」 「まずは誰かに声をかけてみよう」 「困っている子がいたら声かけようね」

このようなフレーズは、一見優しさと善意に満ちた言葉に思えます。実際、悪意が込められているわけではありませんし、社会性を育てる教育の一環としても機能しています。

しかし、それがノルマやミッションのように聞こえてしまうこともあるのです。

子どもにとって、見知らぬ人に話しかけるという行為は、想像以上にエネルギーのいることです。自分がどう思われるか、変に思われないか、嫌がられないか……そうした不安を抱えながら「友達になろう」と声をかけるのは、心の強さが求められます。

しかも、それがうまくいかないと、「やっぱり自分はダメなんだ」と自己否定につながりやすいのです。つまり、「友達を作ろう」という言葉は、子どもによっては「作らなければならない」「作れない自分は失格」というプレッシャーになり得るのです。

特に、集団において自分のポジションを探るのが苦手な子や、敏感で繊細な子にとっては、「友達を作ることが当然」とされる空気は非常に息苦しいものです。大人でも、初対面の人に話しかけるのが苦手な人はたくさんいますよね。それを子どもにだけ「できて当たり前」と押しつけるのは、少し乱暴ではないでしょうか。

また、先生が子どもたちに「みんなで仲良くしよう」「友達100人作ろうね」と言うと、それを文字通り受け取ってしまう子どももいます。人によっては、その期待に応えようと必死になり、自分の本心を無視して関係を築こうとしてしまいます。自分に合わない子とも無理に仲良くしようとし、心がすり減っていくのです。

だからこそ、「友達になろう」という言葉は慎重に使うべきです。友達づくりを推奨するのではなく、「一人でいても悪くない」「誰かと話さなくても、そのままで大丈夫」というメッセージを、同時に伝える必要があります。

本当に優しさを持った人間とは、誰に対しても敬意を持って接することができる人です。無理に誰かとつながるのではなく、心が自然と近づく相手と、時間をかけて関係を築いていく。それが、本来の「友達」であるべきです。

「友達の輪」は、ときに壁にもなる

学校生活において、「友達の輪」という言葉はポジティブなイメージで語られることがほとんどです。「友達の輪が広がる」「輪の中で楽しむ」など、何かと良いことの象徴として扱われます。

しかし、輪は内側と外側を分ける構造となります。

つまり、誰かが輪をつくるということは、同時に「その外にいる誰か」が必ず生まれるということなのです。子どもたちはその構造を直感的に理解しています。輪の中に入っているか、弾かれているか、あるいは入っていてもいつ出されるかわからない。そんな不安定な立場の中で、多くの子どもが神経をすり減らしています。

新学期の4月、特にこの「輪」が急速にできあがっていく時期です。最初の数日で誰と一緒にいるかによって、その後の人間関係がある程度決まってしまうような空気があるのです。これは高校生、中学生、小学生でも共通です。

そのため、子どもたちは焦ります。「どこかのグループに入らないと」と。まるで椅子取りゲームのように、居場所が限られているかのような感覚に襲われ、誰かと早くつながらなければ、自分の居場所がなくなってしまうと思い込むのです。

ここで問題なのは、「輪に入ることがゴール」になってしまうことです。本来、友達とは信頼関係を築き、気の合う人同士が自然にできるものです。しかし、輪に入りたいという気持ちが強くなりすぎると、「誰でもいいから一緒にいたい」「嫌われてもいいからついていくしかない」といった依存的な関係を生み出しやすくなります。

さらに怖いのは、一度輪ができると、それを守ろうとする心理が働くことです。その結果、輪の外にいる子に対して無意識に壁をつくってしまう。「この子は違うグループの子」「あの子はちょっと変わってるから…」という線引きが生まれます。そしてそれが、無視や排除といった形で表面化していくこともあります。

また、輪の中にいる子どもも安心ではいられません。常に「この輪から外されないように」という緊張感の中で過ごすことになります。何か意見を言うと嫌われるかもしれない。違う行動を取ると裏切り者扱いされるかもしれない。そういった不安が、輪の中にいるはずの子どもたちをも苦しめているのです。

つまり、「友達の輪」というものは、うまく機能すれば支え合いの場になりますが、構造としてはとても不安定で、排他的になりやすい面を持っています。

だからこそ、私たち大人は「輪に入ること」を目標にしない姿勢を子どもに伝える必要があります。「無理に入らなくていい」「一人でいることも素敵だよ」という価値観を共有することで、輪の“外”を恐れない心を育てていくことができるのです。

人間関係で大切なことは「敬意」

では、友達を作ることよりも本当に大切なこととは何でしょうか?

それは「敬意」です。誰かを尊重する気持ち、違いを認める態度、自分自身を過小評価しない誇り。これらがあってこそ、人との関係が健全に成り立ちます。そしてこれは、友達かどうかに関係なく、すべての人間関係に共通する軸なのです。

友達になる、ならないというのは、一種の“選択”です。しかし、敬意を持って接することは基本となります。好き嫌いとは関係なく、目の前の人に対して最低限の礼儀と配慮を持って接する。それができる子どもは、たとえ友達が少なくても、必ず誰かから信頼されます。

反対に、「仲良し」だけれど敬意がない関係は、すぐに壊れます。たとえば、いじめの加害者はよく「遊びだった」「仲良かったから冗談のつもりだった」と言います。しかし、それは敬意のない関係です。「嫌だ」と感じている相手の気持ちを無視している時点で、それは友情ではありません。

私たち親が子どもに教えるべきなのは、「友達と仲良くすること」ではなく、「すべての人に敬意を持つこと」です。たとえクラスメイトと距離を置いていたとしても、その子の考えや好み、家庭環境を馬鹿にしないこと。表面的に仲良くするのではなく、心の奥で他者を尊重すること。

そして同じくらい大切なのは、自分自身に対しても敬意を持つことです。自分の感じ方や考え方を大切にし、「一人でいたい」という気持ちも否定しない。それができるようになると、無理に輪に入る必要もなくなり、自分らしさを守れるようになります。

「友達がいてもいなくても、自分を大事にできているなら、それで充分立派だよ」

このメッセージを、ぜひ子どもたちに届けてあげてください。誰かに合わせるより、自分に敬意を持てることの方が、よほど難しくて、価値のあることなのです。

居場所はひとつじゃない

学校という場所は、子どもたちにとって社会の最初の縮図です。そしてその中で、子どもたちは「居場所」を求めます。誰かと笑い合える場所、安心できる空間、自分の存在が認められていると感じられる環境。それが「居場所」です。

ですが、現実には、学校という一つの場所の中だけで、すべての子どもが安心して過ごせるわけではありません。クラスの中に自分と合う人がいないこともあります。部活に馴染めないこともあります。先生と相性が悪いことだって、当然あります。

それなのに、多くの子どもは「学校の中で居場所がない=自分が悪い」と考えてしまいます。周りにうまく溶け込めないことを、自分の性格のせいにしてしまうのです。

そして親もまた、無意識のうちに「学校でうまくやれているか」を基準に子どもの社会性を判断してしまいがちです。「クラスに友達いるの?」「今日は誰と遊んだの?」そんな会話が続くと、子どもは「学校の中で居場所をつくらなきゃいけないんだ」というプレッシャーを背負い込んでいきます。

でも、本当に大切なことは、ひとつの場所で全てを完結させないことです。居場所は、たくさんあっていい。むしろ、たくさんあったほうがいいのです。

家が居場所であること。家族との時間が心を守ってくれること。それだけでも、十分かけがえのない支えです。親が「学校だけが全てじゃないよ」と本気で思えていれば、子どもはずっと楽になれます。

また、習い事や地域の活動、趣味のコミュニティ、ネット上の健全な関係など、学校とは違う場所に安心できるつながりを持っている子は、学校で孤立しそうになっても心が折れにくくなります。選択肢があるというのは、心の逃げ道があるということ。どこかでつまずいても、別の場所で自分を取り戻せるからです。

特に今の時代は、リアルだけでなくオンラインの世界でも、自分と似た価値観を持つ人とつながれるようになりました。昔のように「学校が世界の全て」ではなくなっています。だからこそ、私たち大人が視野を広げ、「学校の中だけで居場所をつくらなきゃ」という呪縛を解いてあげることが必要です。

学校はあくまでひとつの環境です。向いていない子もいて当然です。そういう子にこそ、「学校に馴染めなくても大丈夫」「君にはもっと別の居場所がある」と伝えてあげること。それが、本当に必要な親の支援だと思うのです。

子どもが安心して戻ってこられる場所、それが家庭であること。その信頼があれば、学校で居場所が見つからなくても、子どもは折れずにいられます。

おわりに:誰のものでもない、自分のペースで歩ける子へ

ここまで、「友達を作らなくてもいい」というテーマで、学校生活や人間関係、親の関わり方についてお話してきました。しかし「友達がいらない」と言いたいのではありません。友達ができること、それ自体は素晴らしいことです。

ただ、「作らなきゃダメ」という空気に支配されて、自分を曲げたり、心を削ったりしてしまうことの方が、ずっと問題だと思っているのです。

4月というのは、子どもたちにとってとても特別で、同時にとても繊細な時期です。まわりは新しい友達を作っているように見えて、自分だけが取り残されているように感じる子もたくさんいます。無理にグループに入ろうとして傷つくこともあります。ちょっとした言葉や態度で、大きく自信を失ってしまうこともあります。

そんな時、子どもが帰ってくる場所である私たち大人が、何を言ってあげられるか。それがすべてだと思うのです。

「ひとりでも大丈夫だよ」 「ゆっくりでいいよ」 「無理しなくていい」

そう言ってあげられるだけで、子どもは少し楽になります。親が自分を否定せず、信じてくれている。それだけで、また明日、学校へ行こうと思えるのです。

この春、すぐに友達ができる子もいれば、なかなか関係が築けない子もいます。でもそれは、勝ち負けではありません。どちらが偉いわけでも、どちらが間違っているわけでもない。それぞれが、それぞれのペースで、少しずつ居場所を見つけていけばいいのです。

そして子ども自身が、自分の「心地よい距離感」を知り、誰にも合わせすぎず、自分らしく生きていけるようになること。それこそが、人生における本当の強さだと私は信じています。

だから、無理して輪に入らなくてもいい。 気の合う人がいなければ、一人でいてもいい。 居場所は、ひとつじゃなくていい。

大人がこの価値観をしっかり持っていれば、子どもはもっと自由になれます。もっと自分を肯定できるようになります。そして、そういう子どもこそ、いつか本当に信頼できる友達と出会えたときに、深く、あたたかい関係を築けるようになるのです。

どうかこの春、自分のペースでゆっくり歩いているすべての子どもたちに、あたたかい目を向けてあげてください。彼らが「誰かになる」ことではなく、「自分である」ことに誇りを持てるように。私たち大人は、焦らず、寄り添い続けましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

学校に不登校を相談する前の準備とは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの子どもたちと保護者の方々に関わってきました。不登校の問題は、家庭だけでなく学校との関係性が大きな鍵を握っています。

しかし、保護者の方々の中には、「学校とどう連携すればいいのか分からない」「学校に相談しても状況が変わらない」と感じている方も少なくありません。今回は「不登校の子のために親が知っておくべき学校との連携」というテーマで、具体的なポイントをお伝えします。


目次


参考:文部科学省「不登校への対応について」

第1章 不登校の背景を学校と共有する重要性とは?

不登校の背景には、子ども自身の心理的負担や学校内での人間関係、学業のつまずきなど、さまざまな要因が絡み合っています。しかし、その要因が学校側に十分に伝わっていない場合、適切な支援が行われず、状況が長期化してしまうことがあります。学校と保護者が正確な情報を共有し、現状を共通理解することが、再登校への第一歩です。

1.1 学校は「子どもの現状」を正確に把握できているか

学校側は、子どもが登校していない間の様子を把握することが難しい状況にあります。特に長期間の不登校の場合、担任や学年主任が「子どもが今、どのような状態なのか」「何を不安に感じているのか」を把握していないケースが多いです。そのため、保護者が学校に対して、子どもの状況を具体的かつ継続的に伝えることが求められます。

例えば、以下の情報は学校との共有が重要です。

  • 子どもが不安に感じていること(友人関係、授業の進度、教師との関係など)
  • 自宅での生活リズムや学習状況
  • 心理的な状態(無気力、焦燥感、強い不安など)

これらの情報が学校側に伝わることで、子どもにとって適切な関わり方が見えてきます。

1.2 「問題点」より「子どもの願い」を伝える

学校に状況を伝える際、つい「学校の対応が悪かった」「クラスの雰囲気が合わない」といった問題点にフォーカスしてしまうことがあります。しかし、学校側に改善を求める場合も、子どもの「願い」や「望んでいること」を伝える方が、建設的な関係を築きやすくなります。

例えば、「〇〇先生の授業が分かりづらい」と伝えるより、「子どもは授業内容について、もう少しゆっくり進めてもらえると安心できると言っています」と伝える方が、学校側も柔軟に対応しやすくなります。子どもの立場に立った「前向きな希望」として伝えることが、学校との良好な連携につながります。

学校での三者面談

1.3 「学校に期待すること」を具体的に伝える

学校側も不登校の子どもへの対応に苦慮していることが多く、「どう関わればよいか分からない」という戸惑いを抱えています。そのため、保護者が「何を学校に期待しているのか」を具体的に伝えることで、学校側はより的確な対応ができます。

例えば、「週に1回、担任の先生から手紙をもらえると安心するようです」や「オンラインで少しでも授業の様子が分かると、復帰へのハードルが下がるかもしれません」といった具体的な提案は、学校側も動きやすくなります。

1.4 担任任せにせず、複数の教職員とつながる

不登校の子どもへの対応は、担任だけに任せてしまうと限界があります。担任の先生が熱心であっても、多忙な業務の中で十分に関わる時間を取れないこともあります。そのため、スクールカウンセラーや学年主任、特別支援コーディネーターなど、複数の教職員と情報共有を進めることが望ましいです。

「誰がどの役割を果たしてくれるのか」「どの先生が子どもと気が合うか」を見極めながら、複数の関係者と連携していくことで、より多角的なサポートが可能になります。況が変わればまた調整する」といった姿勢で、焦らず段階的に進めていくことが大切です。


第2章 学校との連携がうまくいかない時の原因とは?

学校との連携を試みても、思うように進まないケースもあります。学校側の対応が消極的であったり、子どもの状況に対する理解が不足している場合、保護者としては「どうして学校は動いてくれないのか」と不安や不満を抱くこともあります。この章では、学校との連携がうまくいかない原因と、それを解消するための具体的な対策について説明します。

2.1 学校側の「不登校に対する理解不足」

学校側は「不登校は家庭の問題」と捉えてしまう傾向があります。また、子どもが学校を拒否している理由を十分に理解せず、「本人がそのうち戻ってくるだろう」と様子見を続けてしまうケースもあります。このような状況では、保護者が学校に対して「我が子の状況は特別な配慮が必要である」ということを丁寧に説明する必要があります。

2.2 保護者が「学校に遠慮しすぎている」

一方で、保護者の方が学校との関係を悪化させたくないあまり、意見を伝えにくく感じてしまうケースもあります。しかし、不登校の解決には学校との連携が不可欠であり、「学校にお願いして申し訳ない」と感じる必要はありません。むしろ、子どものために必要なサポートを求めることは、親の当然の役割です。

2.3 「学校の限界」を見極めたうえでの関わり方

学校にもできることとできないことがあります。学校の対応が不十分であっても、全面的に依存するのではなく、「学校に求めること」と「家庭でできること」のバランスを見極めることが大切です。学校側が対応できない部分については、家庭で補完する形で支えていくことで、子どもの安心感が高まります。

第3章 再登校に向けた学校との具体的な連携ステップ

学校との連携が進むことで、子どもの不登校状態からの回復は大きく前進します。しかし、再登校に向けた支援は単に「学校に戻ること」をゴールとせず、「子どもが学校で安心して過ごせる環境を整えること」に焦点を当てる必要があります。ここでは、再登校に向けた学校との具体的な連携ステップについて、実践的な方法を解説します。


3.1 再登校の「タイミング」は子ども主体で決める

再登校に向けた連携で最も重要なのは、「いつ学校に戻るか」を子どもの気持ちを軸に決めることです。親としては「早く戻ってほしい」という焦りが生まれがちですが、子どもがまだ心理的に準備ができていない段階で無理に登校を促すと、再登校が長続きせず、再び不登校状態に戻ってしまうことが多いのです。

しかし、「子どもが戻りたいと言うまで待つ」という姿勢だけでは、状況が長期化してしまう恐れがあります。そこで、学校との連携では、「子どもがどの段階で戻れそうか」「どのような条件が整えば戻りやすいか」を見極めることが重要です。

具体的なステップ:

  • 担任の先生やスクールカウンセラーと定期的に情報交換を行い、子どもの心理状態や意欲の変化を把握する。
  • 子どもと「学校に戻ったときに不安に感じること」を具体的に話し合い、不安要素を一つずつ減らす取り組みを学校と共有する。
  • 「別室登校」「短時間登校」「放課後の個別対応」など、子どもが段階的に学校に慣れる方法について、学校と柔軟に調整する。

3.2 「復帰後の環境」を事前に整える

再登校がスムーズに進むかどうかは、学校側の「受け入れ態勢」が整っているかに大きく左右されます。子どもが不安を感じる要素を取り除き、「戻っても大丈夫」と思える環境を学校と共に整えることが不可欠です。

環境調整の具体的なポイント:

  • 学習面の配慮
    長期間の不登校の場合、授業の進度についていけるかどうかが子どもの大きな不安材料です。学校側と相談して、復帰後の学習サポート体制(補講、個別指導、プリント補助など)を整える必要があります。ただし、無理に「遅れを取り戻す」ことを目的とせず、「自分のペースで学び直せる」という安心感を与えることが大切です。
  • 人間関係の調整
    不登校のきっかけが友人関係の場合、復帰後に同じクラスで過ごすことへの抵抗感があります。この場合、学校側と「席替えの配慮」「グループ活動の調整」「特定の友人との距離の確保」など、子どもが少しずつ人間関係を再構築できる環境を作ることが求められます。
  • 教職員の理解と関わり方の調整
    子どもが戻った時に、担任だけでなく教科担当の先生や学年主任が「今の子どもの心理状態」を正しく理解していることが大切です。保護者は、学校側に対して「どのような声かけが有効か」「子どもが安心して話せる教職員は誰か」といった情報を共有し、復帰後の関わり方を事前にすり合わせる必要があります。
学校側との面談

3.3 再登校の「初期段階」を丁寧にサポートする

再登校の初期段階は、子どもにとって非常に大きな心理的ハードルです。この段階でのサポートが不十分だと、せっかく再登校してもすぐに「もう無理だ」と感じてしまい、再度の不登校につながることがあります。学校側と密に連携し、再登校の初期段階を丁寧にサポートすることが、長期的な安定につながります。

再登校初期のサポートポイント:

  • 「登校日数」にこだわらず、学校との接点を増やす
    最初は「毎日登校する」ことを目標にせず、「週に1回でも登校できたら十分」と考え、子ども自身が「できた」という達成感を積み重ねることが重要です。学校側には「登校日数よりも、まずは学校との関係を取り戻すこと」を目的とするよう伝え、柔軟な対応をお願いしましょう。
  • 「教室に入れない場合」も想定したプランを準備
    再登校した直後、教室に入れずに保健室や別室で過ごすこともよくあります。この場合も「教室に入れない=失敗」と捉えず、「学校の空間に慣れるステップ」として位置づけることが大切です。学校側と「教室以外の安心できる場所」「特定の先生が見守る時間帯」などをあらかじめ調整しておくことで、子どもは「万が一の逃げ場がある」と安心できます。

3.4 「親の役割」はあくまで伴走者

再登校に向けた過程では、親が「子どもを引っ張る役割」を担おうとすると、かえって子どもにプレッシャーを与えることになります。親はあくまで「伴走者」として、子どもが安心して学校に戻れる環境を整える役割に徹することが大切です。

伴走者としての関わり方:

  • 学校側と子どもの間に立って、双方の思いを丁寧に伝えながら橋渡し役を務める。
  • 「登校できたかどうか」ではなく、「学校に行こうと考えたこと」を評価する。
  • 子どもが不安を口にした時は、否定せずに「それは大変だったね」と共感する。

第4章 学校との連携を長期的に維持するポイント

再登校が実現しても、そこから安定した学校生活を継続するには、学校との連携を長期的に維持していくことが不可欠です。再登校直後は、子ども自身も不安を抱えながら環境に慣れようとしています。しかし、登校が続くことで少しずつ安心感が芽生える一方で、些細な出来事で再び心のバランスを崩してしまうことも少なくありません。そのような時に、保護者と学校が継続的に情報を共有し、柔軟に対応していくことで、子どもは「困った時には守ってもらえる」という安心感を持つことができます。


4.1 「再登校後の不調」を想定して備える

再登校後、最初の数週間は順調に見えても、子どもが新たなストレスを感じ始めるのは少し時間が経ってからです。友人関係の微妙な変化、学業へのプレッシャー、教師との関係性など、さまざまな要因が重なることで、子どもは「やっぱり無理かもしれない」と感じ始めることがあります。

この「再登校後の不調」は、保護者と学校が見逃しがちなポイントです。しかし、ここで迅速かつ丁寧に対応することで、再度の不登校を防ぎ、安定した学校生活を継続できる可能性が高まります。

不調のサインに気づくポイント:

  • 「朝、登校準備に時間がかかるようになった」「お腹が痛い、頭が痛いと言い出す」など身体症状の増加。
  • 学校から帰宅後、以前よりも疲れやすくなり、何も話したがらなくなる。
  • 学校での出来事に対して否定的な発言が増え、再登校前のネガティブな気持ちが戻ってきている。

不調を感じた時の対応:

  • 早めに担任やスクールカウンセラーに状況を伝え、「しばらく様子を見ましょう」ではなく、具体的な対策を一緒に検討する。
  • 一時的に別室登校や短時間登校を取り入れるなど、柔軟な選択肢を提示する。
  • 子ども自身にも「調子が悪い時は、学校と相談して無理をしない方法がある」と伝え、不安を和らげる。

4.2 「担任任せ」にならない関係づくり

再登校後は、どうしても担任の先生との関係が中心になりますが、長期的な連携を維持するためには、担任だけに依存せず、複数の教職員と関係を築いておくことが重要です。担任の異動や学年の変化によって状況が変わった場合も、子どもの状況を理解している複数の教職員とつながっていることで、継続的な支援が途切れることを防げます。

関係構築のポイント:

  • スクールカウンセラーとの定期面談
     担任だけでなく、スクールカウンセラーとも定期的に面談を行い、子どもの状況を共有しておくと、担任が変わった場合にも継続的なフォローが期待できます。
  • 特別支援コーディネーターとの連携
     学校には特別支援コーディネーターが配置されていることが多く、学習面や心理的配慮が必要な子どもへのサポート体制について相談することができます。担任が多忙な時にも、コーディネーターが間に入ることで、スムーズな対応が可能になります。
  • 学年主任や管理職とも関係を築く
     学年主任や校長・教頭とも定期的に情報を共有しておくことで、学校全体の方針として子どもへの配慮が継続されやすくなります。

4.3 「学校からの情報」を積極的に引き出す

再登校後も、子どもは家庭で学校の出来事を細かく話すことは少なくなります。特に、うまくいっていない時ほど、自分の気持ちを言葉にできずに抱え込んでしまうケースが多いです。そのため、保護者としては、学校側から積極的に情報を引き出し、子どもの状況を把握することが重要です。

情報共有の方法:

  • 定期的な面談や電話連絡の依頼
     再登校後も「順調そうだから大丈夫」と思わず、定期的に担任やスクールカウンセラーと面談を行い、子どもの様子を確認します。必要があれば、電話連絡やメールで簡単に状況を把握するだけでも、安心材料になります。
  • 「困った時のサイン」を学校側と共有
     子どもが再び不安を抱え始めた時に現れるサイン(疲れやすくなる、教室に入れなくなる、授業中にぼんやりしているなど)を学校側に伝え、「このような様子が見られたら早めに知らせてほしい」と依頼しておくことで、早期対応が可能になります。
  • 子どもと話す「きっかけづくり」
     学校での出来事について子どもから話を引き出すために、「今日は〇〇先生と話せた?」「お昼は誰と食べた?」など、具体的で答えやすい質問を心がけることで、子ども自身の思いを少しずつ言葉にできるようになります。

4.4 「学校との関係」が途切れそうな時の対応

再登校が軌道に乗ると、学校側も「もう大丈夫だろう」と安心してしまい、連携が途切れがちになります。しかし、長期的に安定した学校生活を送るためには、学校との関係を意図的に維持し続けることが重要です。

関係を維持する工夫:

  • 定期的に短い面談を申し込む
     「特に問題はなさそうでも、今の状況を知りたい」という理由で、短時間の面談や電話連絡を依頼することで、学校側にも「引き続き気にかけている」という姿勢が伝わります。
  • 学校行事や保護者会への積極的な参加
     学校行事や保護者会への参加を続けることで、担任だけでなく他の教職員とも顔を合わせ、子どもの状況について自然な形で情報交換ができます。
  • 「困った時だけ連絡する」のではなく、ポジティブな情報も共有
     子どもが学校で「うまくいったこと」「前よりも成長したこと」を学校側に伝えることで、教職員も子どもの変化をポジティブに捉え、さらなるサポートへのモチベーションが高まります。

第5章 子どもと学校との「信頼関係」を築くための支援とは?

学校との信頼関係を築くことは、再登校後の安定した学校生活を維持するための重要な要素です。不登校を経験した子どもは、学校に対して「自分の気持ちを分かってもらえなかった」「助けてもらえなかった」というネガティブな記憶を抱えていることが多く、再登校後も「また同じことが起きるのではないか」と心のどこかで不安を感じています。その不安を和らげ、学校との信頼関係を再構築するには、保護者の適切な関わりとサポートが欠かせません。


5.1 「学校での安心感」を少しずつ積み重ねる

再登校後の子どもは、学校にいるだけで大きなエネルギーを消耗しています。そのため、最初のうちは「頑張って登校している」というだけで十分です。保護者としては、「教室で過ごせた」「授業を最後まで受けられた」といった成果を求めるのではなく、「学校に行けた」「先生と目を合わせられた」といった小さな成功体験を積み重ねることを大切にしてください。

安心感を積み重ねるための具体的な方法:

  • 「学校で頑張れたこと」を子ども自身に気づかせる
     「今日は教室に入れたね」「友達と少し話せたね」といったポジティブな声かけを意識することで、子ども自身が「自分は頑張れている」と自覚できます。
     ただし、「頑張ったね」「偉いね」といった単純な褒め方ではなく、「〇〇ができたこと、すごいと思うよ」と、具体的に認める言葉をかけることで、子どもの達成感はより深まります。
  • 学校側と「子どもの頑張り」を共有する
     担任の先生に「今日は〇〇ができたと話していました」と伝えることで、学校側も子どもの努力に気づき、よりきめ細かいサポートを続けやすくなります。また、学校側からも「最近〇〇ができるようになりました」とフィードバックがあると、子どもは「学校も自分のことを見てくれている」と感じ、安心感が増します。
  • 「学校外での成功体験」を学校に伝える
     学校での成功体験だけでなく、家や習い事での小さな達成も学校側と共有することで、教職員は子どものポジティブな変化に気づきやすくなります。「最近、家で読書を始めた」「習い事で友達と話せるようになった」といった情報は、学校での関わり方のヒントになります。

5.2 「子ども自身の気持ち」を学校に伝え続ける

再登校後も、子どもは自分の気持ちを学校の先生にうまく伝えられないことが多いです。「学校で困っていること」「苦手なこと」「安心できること」を先生に伝えられず、心の中でモヤモヤを抱えたまま過ごしているケースは少なくありません。
そこで、保護者が「子どもの気持ちの代弁者」として、学校側に子どもの内面を丁寧に伝え続けることが、信頼関係の構築につながります。

子どもの気持ちを伝える際のポイント:

  • 「子どもの言葉」をそのまま伝える
     「〇〇ちゃんは、最近〇〇について少し不安に感じていると言っていました」「〇〇先生の授業が少し速く感じるみたいです」と、子どもの言葉をできるだけそのまま伝えることで、教職員は子どもの気持ちをよりリアルに理解できます。
  • 「要望」ではなく「気持ち」として伝える
     「〇〇してほしい」と学校側に要望を伝えるのではなく、「子どもは〇〇に不安を感じている」といった事実として伝えることで、学校側も柔軟に対応しやすくなります。
  • 子どもの「良い変化」も積極的に共有する
     「最近、〇〇が少しずつできるようになっています」とポジティブな変化を学校側に伝えることで、先生たちも「子どもは頑張っている」と感じ、信頼関係が深まります。

5.3 「学校で困った時の逃げ場」を確保する

学校での信頼関係がまだ十分に築かれていない段階では、子どもは「困った時にどこに行けばいいのか分からない」という不安を抱えています。この「逃げ場がない」という感覚が、再び不登校に戻ってしまう要因になりかねません。
そこで、学校側と連携して、子どもが「困った時に頼れる場所」を確保しておくことで、安心感を高めることができます。

逃げ場を確保する具体的な方法:

  • 「保健室登校」や「別室対応」の選択肢を残しておく
     再登校後も、教室で過ごすことが難しくなった時に、保健室や別室で過ごせる選択肢があると、子どもは「無理しなくていい」と感じられます。
     ただし、「保健室に行く=失敗」と子どもが感じないように、「ちょっと休憩する場所」「気持ちを落ち着ける場所」としてポジティブに位置づけることが大切です。
  • 「特定の先生」を避難先に設定する
     子どもが信頼できる先生がいる場合、「何かあったら〇〇先生のところに行ってもいいよ」と伝えておくことで、子どもは「いざという時の避難先」を持てます。
     学校側とも事前に「〇〇先生が避難先として対応する」という共通認識を持っておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。

5.4 「子どもの意見」を学校生活に反映させる

子どもが学校に対して信頼感を持つためには、「自分の意見が尊重されている」と感じることが重要です。不登校を経験した子どもは、「学校は自分の気持ちを分かってくれない」と感じることで、さらに心を閉ざしてしまうことがあります。
そこで、学校との連携では「子どもの意見を学校生活に反映させる」という視点を持つことで、子ども自身が「学校は自分を大切にしてくれている」と感じやすくなります。

意見を反映させるための方法:

「困った時のサイン」を子どもと共有しておく
 「教室にいられなくなった時は、保健室に行ってもいいよ」「先生にサインを出していいよ」といったルールをあらかじめ決めておくことで、子どもは「自分で状況をコントロールできる」という自信を持てます。

「登校スケジュール」を子どもと一緒に決める
 再登校の際、登校日数や時間帯、別室で過ごすかどうかなどの選択肢を子どもと一緒に考え、「自分で決めた」という感覚を持たせることが大切です。

「授業の受け方」を柔軟に調整する
 「全部の授業を受けるのがしんどい」と感じている場合は、「まずは1時間目だけ参加」「得意な教科から入る」といった方法を、子どもと話し合いながら決めます。
 学校側にも「〇〇は、今のところこのスタイルでやってみたいそうです」と伝えることで、子どもの意思が尊重されていると感じやすくなります。

まとめ:親と学校の「協働」が子どもの継続登校を支える

各章要点必要な行動
不登校の背景共有学校に子どもの状況・心理状態を具体的に伝え、共通理解を深めることが再登校への第一歩。子どもの不安、生活リズム、心理状態を正確に学校へ伝え、希望するサポート方法を明確に伝える。
連携がうまくいかない時学校側の不登校への理解不足や、保護者の遠慮が連携を妨げる原因になる。学校の限界を見極めつつ、具体的なサポートを求め、複数の教職員との関係構築を図る。
再登校へのステップ再登校は子どもの心理的準備を見極めながら、段階的かつ柔軟に進める必要がある。無理のないスケジュールで段階的に復帰し、学習・人間関係・教職員の関わり方の環境調整を進める。
連携の維持再登校後も継続的な情報共有と複数の教職員との関係構築が、安定した学校生活を支える。定期的な面談や情報共有を続け、子どもの変化に気づきやすい関係を維持する。
信頼関係の構築子どもが「学校は自分を理解している」と感じることで、長期的な安心感につながる。子どもの気持ちを代弁し、学校との関係を築き、安心できる逃げ場の確保や意見の反映を促す。

再登校後の安定した学校生活は、保護者と学校が継続的に連携し、子どもを支え続けることで実現します。
子どもが「学校は自分を理解してくれている」「困った時には助けてくれる」と信じられる環境を整えることが、不登校の再発を防ぎ、将来的に子どもが自信を持って社会に踏み出すための土台となります。

最後に強調したいのは、保護者と学校の関係は「親が学校にお願いする立場」ではなく、「子どもを一緒に支えるパートナー」という協働の姿勢であるべきだということです。お互いの立場や意見を尊重しながら、子どもが安心して自分らしく成長できる環境を整えていくことが、私たち大人の大切な役割です。

再登校はゴールではなく、子どもの未来につながる新たなスタートです。学校と連携しながら、子どもが自分のペースで前に進めるよう、温かく見守っていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校の子どもの進路選択ガイド:高校・大学・就職、後悔しないための道筋とは?

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

お子様が不登校の状態にあると、進路についての悩みは尽きないことと思われます。「このままでは高校に行けないのでは?」「大学進学や就職はできるのだろうか?」と、不安を感じる保護者の方も多いはずです。しかし、焦って誤った選択をすると、お子様の将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本稿では、不登校のお子様の進路選択について、後悔しないための道筋を詳しく解説します。高校・大学・就職のそれぞれの選択肢と、不登校からの回復を前提とした進路の選び方について、具体的なアプローチをお伝えします。

参考:文部科学省「不登校に関する基礎資料」


目次


1. 不登校が進路選択に与える影響

まず、不登校の経験が進路選択にどのような影響を及ぼすのかを正しく理解することが重要です。不登校の期間が長引くと、学力の遅れ、対人関係の困難、自己肯定感の低下など、さまざまな問題が生じます。これらが進路選択にどのように関わるのか、具体的に見ていきましょう。

1-1. 学力の遅れと進学への影響

不登校の間は学校の授業を受けていないため、学力が低下することが多く、特に主要科目(国語・数学・英語など)において大きな影響を受けることがあります。

たとえば、中学時代に不登校だった生徒が高校進学を考えた際、内申点の不足や学力試験のハードルが問題になります。全日制高校は一定の学力を求めるため、学習の遅れを取り戻さなければ選択肢が狭まります。また、大学進学を考える場合、高校時代の成績や受験勉強の影響を受けるため、不登校の影響が長期にわたって残る可能性があります。

1-2. 社会性の発達と就職への影響

学校に通わない期間が長くなると、対人関係の構築が難しくなることがあります。特に、集団生活に適応する力が低下し、コミュニケーションを避ける傾向が強まることが多いです。

就職の際には、学歴だけでなく「コミュニケーション能力」や「協調性」などが重視されます。不登校の影響で人間関係を築くのが苦手になっていると、就職活動や職場での適応に苦労するケースもあります。

1-3. 自己肯定感の低下と選択肢の制限

長期間の不登校経験があると、「自分は何をやってもダメだ」と感じ、自己肯定感が低下しやすくなります。すると、新しい挑戦を避ける傾向が強まり、進学や就職に対して消極的になってしまうことがあります。

進路選択は、本人が「やってみよう」と思えるかどうかが重要です。自己肯定感が低い状態では、挑戦する意欲が湧かず、結果として選択肢が狭まってしまうのです。

このように、不登校は進路選択にさまざまな影響を及ぼします。しかし、適切な支援を受けながら準備を進めることで、不登校の影響を最小限に抑え、希望する進路を目指すことが可能です。

2. 不登校の子どもが高校進学を目指す際の選択肢

不登校のお子様が高校進学を目指す場合、大きく分けて「全日制高校への進学」「通信制・定時制高校への進学」の2つの選択肢があります。それぞれの特徴と、お子様の状況に応じた適切な選び方について解説します。

2-1. 全日制高校への進学

多くの保護者の方がまず考えるのが、一般的な全日制高校への進学でしょう。不登校経験があっても、全日制高校に進学することは十分に可能です。ただし、学校選びと準備が非常に重要になります。

(1)進学のためのハードル

  • 内申点の影響
    中学時代に不登校が長引くと、成績がつけられず、内申点が低くなりがちです。多くの公立高校では内申点を重視するため、不登校期間が長かった場合、一般入試の選択肢が狭まることがあります。
  • 学力試験への対応
    受験科目の学習が十分に進んでいない場合、一般入試での合格が難しくなります。そのため、学習の遅れを取り戻すことが必要になります。
  • 面接や作文の重要性
    不登校経験がある場合、面接や作文試験で「なぜ不登校だったのか」「高校でどのように過ごしたいか」を問われることがあります。ここでしっかりとした回答ができるよう準備が必要です。

(2)不登校生を受け入れやすい高校の特徴

最近では、不登校経験者を積極的に受け入れる高校も増えてきています。こうした高校には、以下のような特徴があります。

  • 特別支援体制が整っている
    カウンセリングや個別指導が充実しており、不登校経験者が安心して通学できる環境を提供している。
  • 出席扱い制度を活用できる
    たとえば、フリースクールや家庭学習の一部を「出席」として認める制度を採用している学校もあります。
  • 学び直し支援が充実している
    学力補充のための特別クラスや、個別指導のプログラムがある。

2-2. 通信制高校・定時制高校への進学

不登校経験が長く、全日制高校への進学が難しい場合、通信制高校や定時制高校を選ぶケースもあります。

(1)通信制高校の特徴

通信制高校は、通学の負担を減らしながら高校卒業資格を取得できる仕組みになっています。

  • 自宅学習が基本:レポート提出やオンライン授業で単位を取得する形式。
  • スクーリング(登校日)が少ない:週1回程度の登校が求められる学校もあるが、全日制よりは負担が軽い。
  • 学習のペースを自分で調整可能:不登校経験がある生徒でも、無理なく学習を進められる。

ただし、通信制高校は自主学習が基本のため、自己管理能力が求められます。「学習のモチベーションが続かない」「誰かのサポートがないと勉強が進まない」といったタイプのお子様には、十分なサポート体制があるかを確認することが大切です。

(2)定時制高校の特徴

定時制高校は、夕方から夜にかけて授業が行われるスタイルの高校です。

  • 対面授業が中心:通信制と異なり、基本的には学校に通いながら授業を受ける。
  • 学力不問で入学できる学校もある:一部の公立定時制高校は、学力試験なしで入学できる。
  • 社会人や年齢の異なる生徒と学ぶ機会がある:異年齢の人と交流できるため、社会性を身につける場にもなる。

2-3. 進学のために必要な準備

お子様が高校進学を希望する場合、不登校の状況から抜け出し、学習のリズムを取り戻すことが必要不可欠です。そのために、以下のような取り組みが有効です。

  1. 学習習慣をつける
    • まずは1日30分でも良いので、学習時間を確保する。
    • 不登校期間が長い場合、基礎学力(小学校レベルからの復習)を重視する。
  2. 再登校の準備をする
    • 高校進学後の環境変化に適応できるよう、徐々に外出や他者との交流機会を増やしていく。
    • 再登校支援サービスを活用し、無理のない形で学校生活へ戻る準備を進める。
  3. 志望校の情報を集める
    • 学校説明会やオープンキャンパスに積極的に参加し、お子様に合う環境かどうかを確認する。
    • 進学後に続けられるかどうかを第一に考え、通学時間やサポート体制を重視する。

不登校の期間が長くても、高校進学は十分に可能です。ただし、進学後に再び学校に行けなくなるケースを防ぐために、「高校に入ること」ではなく「高校生活を続けること」を意識した準備が必要です。

3. 不登校からの大学進学

不登校を経験したお子様が大学進学を目指す場合、高校以上に「自分に合った学びの環境」を見極めることが重要になります。不登校経験があるからといって大学進学が難しいわけではありませんが、適切な準備をしないと、進学後に授業に出られなくなるなどの問題が生じる可能性があります。本章では、不登校経験者の大学進学の選択肢と、成功するためのポイントを解説します。


3-1. 不登校経験者が大学進学を目指す際のハードル

大学進学に向けた道のりは、不登校の期間や理由によって異なりますが、以下のような共通する課題があります。

  • 学力不足の問題
    高校時代の不登校期間が長かった場合、受験科目の学習が十分にできていない可能性があります。特に、一般入試では高校3年間の内容を問われるため、基礎学力が不足していると合格が難しくなります。
  • 受験方式の選択
    不登校経験者の場合、一般入試よりも総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試を活用したほうが合格しやすいことがあります。これらの入試では、学力試験よりも面接や志望理由書が重視されるため、不登校経験を前向きに伝えることができれば有利になる可能性があります。
  • 大学進学後の適応
    高校と異なり、大学は自主的に学ぶ場です。不登校経験があると、「講義に出席できない」「課題を計画的に進められない」などの問題に直面することがあります。そのため、進学前に学習習慣や生活リズムを整えておく必要があります。

3-2. 大学進学の選択肢

不登校を経験したお子様が大学進学を目指す場合、以下のようなルートがあります。

(1)一般入試(学力試験)

一般入試は、共通テストや各大学の個別試験を受けて合格を目指す方法です。

  • メリット:受験対策をしっかり行えば、どの大学にも挑戦できる。
  • デメリット:学力試験がメインのため、不登校期間が長く学習が遅れている場合は不利。

(2)総合型選抜(旧AO入試)

学力試験よりも「学ぶ意欲」や「将来の目標」を重視する入試方式です。

  • メリット:不登校経験を逆に強みに変えられる。面接や志望理由書で「なぜ大学で学びたいのか」をしっかり伝えることができれば合格の可能性が高まる。
  • デメリット:志望理由の記載難易度が高い。面接の準備に時間がかかる。

(3)推薦入試(学校推薦型選抜)

高校の推薦を受けて出願する入試方式。公募制推薦(学力試験あり)と指定校推薦(試験なし)の2種類がある。

  • メリット:指定校推薦であれば、基本的に合格が保証される。
  • デメリット:内申点や高校での成績が重視されるため、不登校期間が長かった場合は選択肢が限られる。

(4)オンライン大学・通信制大学

通学が難しい場合、オンラインで学位を取得できる大学を選ぶという方法もある。

  • メリット:自宅で学習できるため、不登校経験があっても無理なく進学できる。
  • デメリット:自主的に学習を進める必要があるため、自己管理能力が求められる。

3-3. 大学進学のために必要な準備

大学進学を成功させるためには、単に合格するだけでなく、入学後に継続して学べる環境を整えることが重要です。

  1. 学習習慣を取り戻す
    • まずは、毎日決まった時間に学習する習慣をつける。
    • 大学受験を考える場合、高校の基礎科目を重点的に復習する。
  2. 志望理由を明確にする
    • 特に総合型選抜を利用する場合、「なぜこの大学で学びたいのか?」を具体的に言語化できるようにする。
    • 過去の不登校経験をどのように乗り越え、今後に生かしたいかを整理する。
  3. 再登校支援を活用する
    • 大学進学後に学び続けるためには、生活リズムを整え、通学への不安を解消することが重要。
    • 一部の民間サービスや塾では、大学進学を見据えた学習サポートや生活改善のプログラムを提供している。

4. 不登校経験者の就職

高校や大学に進学せず、直接就職を目指す場合、不登校経験が社会での適応に影響を及ぼすことがあります。不登校経験者の就職活動には特有の課題があり、これを理解し適切な準備をすることが重要です。


4-1. 不登校経験者が就職で直面する課題

不登校のまま社会に出る場合、次のような課題に直面しやすくなります。

  1. 履歴書の空白期間の説明が必要
    就職活動では、履歴書や面接で「なぜ高校や大学に通わなかったのか?」を問われることが多く、不登校の期間をどのように説明するかが重要になります。正直に話すことは大切ですが、単に「学校に行けなかった」と伝えるだけでは不利になりやすいため、「その期間に何をしていたのか」「今はどう向き合っているのか」を前向きに説明する準備が必要です。
  2. 対人スキルの不足
    学校生活を通じて培われる「人と関わる経験」が不足しているため、職場での人間関係に不安を感じることが多いです。特に、上下関係のある環境に馴染めず、職場のルールやコミュニケーションの壁を感じるケースが少なくありません。
  3. 継続的に働くことが難しくなる可能性がある
    不登校が長引いた場合、「継続的に働くこと」そのものに心理的なハードルを感じることがあります。たとえば、「決まった時間に出社するのが苦痛」「仕事のストレスに耐えられない」「同僚と馴染めずに孤立する」といった問題が発生することがあります。

4-2. 不登校経験者の就職に向けたフォローアップ

上記の課題を持っていても、適切な準備をすれば就職の道は開かれています。ここでは、主な就職ルートについて詳しく説明します。

(1)職業訓練校を活用する

職業訓練校(ハロートレーニング)は、実践的なスキルを身につけながら、就職に必要な知識を学べる機関です。特に、不登校経験者にとって、専門スキルを身につけることで「学歴」ではなく「能力」で評価される道を作ることができます。

  • メリット:学歴が不問で、実践的なスキルを短期間で習得できる。
  • デメリット:受講期間中のモチベーション維持が必要。

特に、IT、介護、調理、デザイン、製造業など、手に職をつけられる分野は、不登校経験があっても成果を出しやすい仕事が多く、就職に結びつきやすい傾向があります。

(2)インターンシップやアルバイトから始める

いきなり正社員として働くことが難しい場合、アルバイトやインターンシップを通じて、仕事に慣れていく方法があります。

  • メリット:社会経験を積みながら、自分に合った仕事を見極めることができる。
  • デメリット:正社員への道が保証されるわけではないため、キャリアアップの道を考える必要がある。

コンビニや飲食店、工場、倉庫作業など、比較的ハードルの低い職種から始め、徐々に社会での適応力を高めていくのが有効です。また、アルバイト先で評価され、正社員登用されるケースもあります。

(3)就労支援サービスを利用する

不登校経験者や引きこもり状態にある若者向けの就労支援サービスを活用することで、段階的に社会復帰することが可能です。

  • メリット:専門家のサポートを受けながら、無理なく就職活動を進められる。
  • デメリット:支援機関によってサービス内容に差があるため、自分に合ったプログラムを選ぶ必要がある。

ToCoでは、再登校支援だけでなく、社会復帰に向けたサポートも行っています。たとえば、「企業訪問」や「職場体験」などを通じて、実際の職場環境を知り、仕事への不安を軽減するプログラムを提供しています。

(4)資格取得を目指す

学歴ではなく、資格を武器にすることで、就職の選択肢を広げることができます。特に、不登校経験がある方には、以下のような資格取得を目指すのがおすすめです。

  • IT系資格(ITパスポート、基本情報技術者試験など):オンラインで学べるため、自宅学習でも取得可能。
  • 医療・介護系資格(介護職員初任者研修、登録販売者など):資格を取得すれば、未経験からでも就職しやすい。
  • クリエイティブ系資格(Webデザイン、動画編集、イラスト制作など):フリーランスや在宅ワークの道も開ける。

4-3. 就職成功のために必要な準備

不登校経験者が就職を成功させるためには、単に「仕事を探す」だけでなく、社会に適応するための準備が不可欠です。

  1. 生活リズムを整える
    • 毎朝決まった時間に起きる習慣をつける。
    • 週に数回でも外出する機会を増やし、人と接することに慣れる。
  2. コミュニケーション能力を向上させる
    • 家族や信頼できる人と積極的に会話する。
    • ボランティア活動や地域のイベントに参加し、人と関わる機会を作る。
  3. 履歴書・面接対策を行う
    • 不登校期間について、前向きに説明できるようにする。
    • 模擬面接を受けて、話し方や表情に慣れる。

5. まとめ——後悔しない進路選択のために

不登校からの進路選択は、「どこに進むか」だけでなく、「その進路をどのように進んでいくか」が重要です。そのために、以下の点を意識してください。

  • 現在の状態を正しく把握し、焦らずに進路を考える
  • 短期的な目標と長期的な目標を分けて考える
  • お子様の得意なことや興味のあることを活かす
  • 進路を決めた後の準備をしっかり行う

大切なのは、「お子様がなるべく後悔しない選択をすること」です。一歩ずつ着実に前に進めるよう、環境を整え、支援を活用しながら、お子様と一緒に最適な選択を見つけていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

親ができる、子どもの学校ストレスへの対策5点

親ができる、子どもの学校ストレスへの対策5点-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの保護者の方々と向き合いながら、子どもたちの学校ストレスとその対策について考えてきました。

本稿では、学校という環境の特殊性とストレス、その危険性と親にできる5つの対策について紹介していきます。

参考:文部科学省「学校における子供の心のケア-サインを見逃さないために


目次


学校が強いる集団生活のメリット・デメリット

学校は、子どもたちが学力を身につける場であると同時に、社会性を育む場所でもあります。集団生活を通じて、子どもたちは人間関係を学び、協調性や責任感を養っていきます。しかし、その一方で、学校という環境がすべての子どもにとって適切とは限らず、集団生活のあり方が子どもにとって大きなストレスとなることもあります。

学校生活のメリット

  1. 社会性の発達
    学校は、家族以外の人と長時間過ごす最初の社会です。ここでは、友達と協力したり、意見を調整したりする経験を積むことができます。これにより、子どもは相手の気持ちを考える力や、トラブルを解決するスキルを身につけることが期待されます。
  2. ルールや規律を学ぶ
    学校には、時間割、校則、学級活動など、一定のルールが存在します。これらを守ることを通じて、子どもは社会に出たときに必要となる規律を身につけることができます。例えば、「時間を守る」「順番を待つ」「集団のルールを尊重する」といった基本的な社会的行動は、学校での経験を通じて学ぶことが多いです。
  3. 挑戦する機会が増える
    学校では、勉強以外にも運動会、合唱コンクール、修学旅行など、さまざまな活動があります。これらのイベントを通じて、子どもは努力することの大切さや、成功・失敗から学ぶ機会を得ることができます。特に、普段はあまり目立たない子でも、特定の活動で才能を発揮することがあります。
  4. 学習の機会
    もちろん、学校は学力を身につける場でもあります。授業を通じて、読み書き計算の基礎から、論理的思考や問題解決の能力まで、多くの知識を得ることができます。先生がいる環境で学ぶことで、自宅学習だけでは得られない指導を受けることができます。

学校生活のデメリット

  1. 集団のルールが個人に合わないことがある
    学校は、多くの子どもを一律に指導する場であるため、個々の特性に配慮しきれないことがあります。例えば、じっと座っているのが苦手な子や、静かな環境で集中したい子にとっては、学校のルールが過度なストレスになることがあります。また、体育や音楽のような特定の授業が苦手な子どもは、劣等感を抱きやすくなります。
  2. いじめや人間関係のストレス
    学校では、さまざまな性格や価値観を持つ子どもたちが共に生活します。その中で、いじめや仲間外れといった問題が発生することがあります。特に、クラスの固定された人間関係の中では、一度トラブルが起こると逃げ場がなくなり、ストレスが慢性的になることがあります。
  3. 学習のペースが合わないことによるストレス
    学校の授業は、平均的な進度に合わせて進められるため、理解が遅い子には難しく、逆に先に進みたい子には退屈に感じることがあります。どちらのケースでも、学校での学びが苦痛になり、勉強に対するモチベーションが低下する要因となります。
  4. 教師の対応の影響
    教師の指導方法が子どもに合わない場合、それが大きなストレスになることがあります。例えば、厳しい指導を受けることで萎縮してしまったり、逆に放任されることで不安を抱えたりすることもあります。また、教師の価値観が強く押し付けられる環境では、個性が尊重されにくくなります。
  5. 家庭と学校の価値観のギャップ
    家庭で育てられた価値観と、学校の方針が大きく異なる場合、子どもは戸惑いを感じることがあります。例えば、「家では自由に意見を言えるのに、学校では先生の言うことが絶対」という環境では、自己表現の仕方が分からなくなることがあります。

集団生活が合わない子どもの特徴

これらのメリット・デメリットを考えると、学校の集団生活がすべての子どもに適しているわけではないことが分かります。実際、集団生活が苦手な子どもにとっては、学校のルールや人間関係が大きな負担となり、不登校につながることもあります。

特に、以下のようなタイプの子どもは、学校生活のデメリットの影響を受けやすい傾向があります。

  • 繊細で感受性が強い子
  • 一人でいることを好む子
  • 競争や比較を苦手とする子
  • 自分のペースで学びたい子
  • ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

このような子どもにとって、学校の集団生活はストレスの原因となり、不登校や引きこもりにつながるリスクが高くなります。そのため、親としては、学校が子どもに与えている影響を慎重に観察し、子どもにとっての適切な環境を考える必要があります。


学校によるストレスの種類

学校は、子どもたちにとって学びや成長の場であると同時に、さまざまなストレスの要因を含む環境でもあります。すべての子どもが同じように学校を楽しめるわけではなく、学校での生活が大きな負担となるケースも少なくありません。本章では、学校において子どもが感じるストレスの種類について詳しく解説し、その影響について考えていきます。

1. 学業に関するストレス

① 授業の進度や内容の難易度の不一致
学校の授業は、多くの子どもにとって適度な難易度になるよう設計されていますが、すべての子どもにとって「ちょうどいい」わけではありません。授業の進度が速すぎて理解が追いつかない子どもは、学習に対する自信を失い、自己肯定感が低下していきます。一方で、授業が簡単すぎる子どもは退屈を感じ、学習意欲を失うことがあります。どちらのケースでも、学校が「学ぶ楽しさを感じる場」ではなく、「苦痛を感じる場」になってしまう可能性があります。

② テストや成績のプレッシャー
小学校高学年になると、成績が本格的に評価されるようになり、中学では定期テストの結果が内申点にも影響します。このように、学業に対するプレッシャーが年々増していくことで、子どもは「良い成績を取らなければならない」という重圧を感じるようになります。特に、完璧主義傾向が強い子や親の期待を強く感じる子は、テスト前に極度の不安を抱えたり、失敗を恐れて挑戦を避けるようになったりすることがあります。

2. 人間関係によるストレス

① いじめや対人トラブル
学校における最大のストレス要因の一つが、いじめや友人関係のトラブルです。いじめには、暴力や暴言といった目に見えるものだけでなく、無視や仲間外れといった陰湿なものもあります。こうした問題が発生すると、子どもは学校に行くこと自体が苦痛になり、不登校につながることがあります。

② 先生との相性
学校生活において、子どもが最も長く接する大人は担任の先生です。教師の態度や指導方法が、子どもの心理に大きな影響を与えることは言うまでもありません。厳しすぎる指導や理不尽な叱責、逆に放任されすぎることで不安を感じることもあります。また、先生が特定の生徒をひいきしているように見えると、子どもは不公平感を抱き、学校への不信感を強めることもあります。

3. 学校のルールや環境によるストレス

① 校則や規律の厳しさ
学校では、一定の秩序を維持するためにルールが設けられています。しかし、そのルールが厳しすぎたり、合理性に欠けたりする場合、子どもにとって強いストレスになります。たとえば、「前髪の長さが決められている」「靴下の色に指定がある」「休み時間の過ごし方が制限されている」といった校則に対し、納得できない子どももいます。「なぜ守らなければならないのか」が理解できないルールを押し付けられることで、学校に対する不信感や反発心が生じることがあります。

② 集団行動の負担
日本の学校では、「みんなで一緒に行動すること」が重視される傾向があります。たとえば、給食当番、清掃当番、班行動など、さまざまな場面で協調性が求められます。しかし、一人で静かに過ごすことを好む子や、自分のペースで動きたい子にとっては、これが大きなストレスになることがあります。「集団のペースに合わせなければならない」という圧力が、学校生活そのものを苦痛に感じさせる原因になり得ます。

4. 身体的ストレス

① 朝の早起きと生活リズムの強制
学校の始業時間は多くの場合8時台であり、これに間に合うためには早起きをしなければなりません。特に低学年のうちは、まだ生活リズムが安定していない子どもも多く、朝早く起きること自体がストレスになっていることがあります。さらに、部活動や宿題によって夜遅くまで活動を強いられると、慢性的な睡眠不足につながり、心身の不調を引き起こす原因にもなります。

② 長時間の座学と運動不足
学校では1日に5~6時間、座って授業を受けることが求められます。しかし、じっと座っていることが苦手な子どもにとっては、これが大きな負担になります。また、最近は休み時間に自由に遊べる時間が減っている学校もあり、身体を動かす機会が少なくなることでストレスが蓄積することもあります。

5. 家庭とのギャップによるストレス

学校と家庭の考え方や価値観が異なると、子どもは「どちらに合わせればいいのか」と悩むことがあります。例えば、家では「自分の好きなことを大切にしていい」と言われていても、学校では「みんなと同じように行動しなさい」と求められることがあります。こうしたギャップが大きくなると、子どもはアイデンティティの揺らぎを感じることがあり、精神的な負担となることがあります。

このように学校にはさまざまなストレスの要因が存在します。もちろん、すべての子どもがこれらのストレスを感じるわけではありませんが、特定の要因が強く影響すると不登校のきっかけとなることがあります。


学校ストレスを強く感じてしまう子どもの特徴

学校生活は多くの子どもにとって、学びや成長の場となる一方で、強いストレスを感じる場にもなり得ます。しかし、すべての子どもが同じようにストレスを感じるわけではありません。特に学校の環境や人間関係が負担になりやすいタイプの子どもは、不登校のリスクが高くなることがあります。本章では、学校ストレスを強く感じやすい子どもの特徴を詳しく解説し、それぞれの子どもがどのような状況で困難を抱えやすいのかを考えていきます。

1. 繊細で感受性が強い子

① 小さなことでも深く考え込んでしまう
繊細な子どもは、周囲の状況や他人の言葉に対する感受性が高いため、些細な出来事でも心に大きな影響を受けます。たとえば、先生のちょっとした注意や、友達の何気ない一言でも、「自分は嫌われているのではないか」「もう学校に行きたくない」と感じてしまうことがあります。

② 周囲の期待に敏感
「親や先生の期待に応えなければ」と強く感じる子どもほど、学校でのプレッシャーを抱え込みやすくなります。完璧主義の傾向がある場合、「うまくやらなければならない」という気持ちが強まり、失敗を過度に恐れるようになります。その結果、学校生活がストレスの源になり、不安が高まることがあります。

2. 一人でいることを好む子

① 集団行動が負担になる
学校では、授業や給食、清掃活動など、多くの時間を集団で過ごすことが求められます。しかし、一人でいることを好む子どもにとっては、これが大きな負担になります。特に、常にグループで行動しなければならない環境では、自分のペースを保つことが難しくなり、ストレスを感じやすくなります。

② 友達付き合いが苦手
学校生活では、友達関係の維持が重要視される場面が多くあります。しかし、人と話すことが苦手だったり、特定の友人がいなかったりする子どもは、「友達を作らなければならない」というプレッシャーを感じやすくなります。その結果、無理に人付き合いをしようとして疲れたり、孤独感を深めたりすることがあります。

3. 競争や比較を苦手とする子

① テストや成績のプレッシャーに弱い
学校では、定期的にテストが行われ、成績によって評価が決まります。競争心が強い子どもにとっては、これはモチベーションになることもありますが、競争や比較を苦手とする子どもにとっては、強いストレス要因になります。特に、努力しても成績が伸びにくいと感じると、「どうせやっても無駄だ」と考えてしまい、意欲を失うことがあります。

② 体育や発表など、人前に出ることへの抵抗感
学校では、体育の授業や学芸会、発表の場面など、多くの人の前で何かをする機会が頻繁にあります。こうした場面で「失敗したらどうしよう」と不安を感じる子どもは、学校に行くこと自体が怖くなり、不登校の引き金になることがあります。

4. 自分のペースで学びたい子

① 授業の進め方が合わない
学校の授業は、多くの子どもが理解できるペースで進められますが、それがすべての子どもに合っているわけではありません。学ぶスピードが速い子にとっては「退屈」、遅い子にとっては「ついていけない」と感じることがあり、それがストレスの原因になります。

② 興味のあることに集中したい
自分の興味のあることに没頭したい子どもにとっては、学校の授業が「やりたくないことをやらされる時間」と感じられることがあります。その結果、学校生活への意欲が低下し、不登校につながることがあります。

5. ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

① 学校の規則に納得できない
学校のルールに対して、「なぜ守らなければならないのか?」と疑問を抱く子どももいます。特に、自分の考えをしっかり持っている子は、納得できない規則に従うことをストレスに感じることがあります。たとえば、「髪型の自由がない」「服装の細かい決まりがある」といった校則が、自分の価値観と合わないと感じることで、学校への不満が蓄積していくことがあります。

② 自由に考えることが制限されることへの違和感
自分の意見を持ち、独自の考えを大切にしたい子どもにとって、学校の「先生の指示に従うことが基本」というルールは窮屈に感じられることがあります。その結果、「自分の考えを抑えなければならない環境」に強いストレスを感じ、学校生活が苦痛になることがあります。

以上のように、学校ストレスを強く感じる子どもには、それぞれ異なる特性があります。しかし、共通しているのは、「その子にとって学校が合わない要因がある」ということです。学校に適応しにくい子どもを「弱い」とか「甘えている」と考えるのではなく、「どの部分で負担を感じているのか?」を理解することが大切です。


親ができる対策①「情報を得る」

学校のストレスが子どもに大きな影響を与えていると感じたとき、親として何ができるでしょうか。不登校や学校ストレスへの対応でまず重要なのは、「正しい情報を得る」ことです。

親が学校の仕組みや不登校の現状を知らないまま、感情的に対応してしまうと、かえって子どもの負担を増やしてしまうことがあります。そこで、本章では、親が知っておくべき情報と、その活用方法について詳しく説明していきます。

1. 不登校に関する正しい知識を持つ

不登校についての理解がないまま、「学校に行かないと将来困る」「今のうちに立ち直らせないとダメになる」と考えてしまうと、親自身が焦り、不適切な対応を取ってしまうことがあります。しかし、近年の研究やデータから、不登校の子どもすべてが将来困るわけではないことが分かっています。

① 不登校の子どもの数は増えている
文部科学省の調査によると、不登校の小中学生の数は年々増加し、35万人を超えています。特にコロナ禍以降、その傾向は加速しており、学校の環境が合わない子どもが増えていることが分かります。このような状況の中で、不登校は決して珍しいことではなく、特定の家庭や子どもに限った問題ではないことを理解することが重要です。

② 不登校の原因は多様
「学校に行きたくない」という気持ちの背景には、さまざまな要因が関係しています。いじめや学業のプレッシャー、人間関係のストレスなど、子どもによって理由は異なります。そのため、「なぜ学校に行けないのか」を単純に判断せず、多角的に考えることが大切です。

③ 「不登校=逃げ」ではない
「学校に行かないことは逃げだ」と考える親は少なくありません。しかし、子ども自身が「学校に行きたいのに行けない」状態であることが多く、その背景には強いストレスや心理的な負担が隠れています。大切なのは、「どうすれば子どもが安心して学校に行けるようになるのか」を考えることであり、単に「無理やり行かせること」ではないのです。

2. 学校の制度や支援について知る

不登校や学校ストレスの問題を考える際には、学校がどのような対応を取れるのかを知ることも重要です。

① 学校は不登校の子どもへの対応を求められている
文部科学省は、不登校の子どもに対して適切な支援を行うよう、各学校に指示を出しています。学校側が「不登校は家庭の責任」と考える時代は終わりつつあり、適切な支援策を講じることが求められています。そのため、学校と建設的に話し合いながら、子どもにとって最善の方法を探ることが可能です。

② 学校外のサポート機関を活用する
不登校支援を行う機関やサービスは増えています。たとえば、ToCo(トーコ)株式会社では、子どもがスムーズに再登校できるようサポートを提供しています。こうした専門的な支援を受けることで、親だけで抱え込むのではなく、適切な対応を取ることができます。

3. 情報を得た上で、親ができること

① 子どもの状態を把握する
情報を集めたら、まずは自分の子どもがどのような状況にあるのかを客観的に分析することが重要です。学校でのストレスの原因は何か、どのようなことに悩んでいるのかを理解することで、適切な対応が見えてきます。

② 学校との連携を考える
情報をもとに、学校とどのように話し合うかを考えます。いきなり「学校を休ませます」と伝えるのではなく、「どのような対応が可能か」を相談することで、子どもにとって最適な環境を整えることができます。

③ 再登校に向けた準備をする
不登校が長引くと、再登校へのハードルが高くなります。そのため、子どもが学校に戻る際に負担を感じにくい方法を考え、必要であれば専門的な支援を活用することも検討します。ToCoでは、再登校をスムーズに進めるためのプログラムを提供しており、親だけでは難しい対応もサポートしています。

「情報を得ること」は、不登校対応の第一歩です。感情的にならず、正しい知識をもとに冷静に対応することで、子どもにとって最適な方法を見つけることができます。

親ができる対策②「相談相手になる」

不登校や学校ストレスに直面した子どもにとって、親の存在は非常に大きな意味を持ちます。特に、子どもが自分の気持ちを打ち明けられる「相談相手」になれるかどうかは、その後の対応に大きな影響を与えます。

多くの親御さんが、「うちの子は何も話してくれない」「何を考えているのか分からない」と悩まれます。しかし、それは子どもが何も考えていないのではなく、「どう話せばいいのか分からない」「話しても理解してもらえないのではないか」と思っている場合が多いのです。本章では、親が相談相手として信頼されるためにできることを具体的に解説していきます。

1. 子どもが相談しにくい理由を知る

子どもが学校での悩みを親に話せない理由はいくつかあります。

①「心配をかけたくない」と思っている
子どもは、親に心配をかけたくないという気持ちを強く持っています。特に、普段から「頑張りなさい」「学校は行くものだ」と言われている場合、「学校がつらい」と話すことで親をがっかりさせてしまうのではないかと不安になります。そのため、親の前では何もなかったように振る舞うことがあります。

②「否定されるのではないか」と不安を抱えている
「甘えているだけじゃないの?」「みんな頑張っているんだから」など、子どもの気持ちを否定するような言葉をかけられた経験があると、それ以降、話しにくくなってしまいます。特に、子ども自身が「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいる場合、親からの否定的な言葉はさらに追い詰めることになります。

③「どう話せばいいか分からない」と感じている
子ども自身も、自分の気持ちを整理できていないことがあります。「なぜ学校に行きたくないのか分からない」「言葉にすると余計につらくなる」と思っている場合、あえて話さない選択をすることがあります。

これらの背景を理解したうえで、親が「安心して話せる環境」を作ることが重要です。

2. 相談しやすい雰囲気を作るために

子どもが自然に相談できる環境を整えるには、次のポイントを意識することが大切です。

① すぐに解決しようとしない
親としては、子どもの悩みを聞いたら「どうすれば解決できるか」を考えてしまいがちです。しかし、子どもが求めているのは「アドバイス」ではなく、「ただ話を聞いてもらうこと」である場合が多いです。特に、初めて悩みを打ち明けるときには、親が「どうすればいいか」よりも「そうだったんだね」「大変だったね」と共感する姿勢を示すことが大切です。

② 子どものペースに合わせる
無理に「話しなさい」と迫ると、かえって口を閉ざしてしまうことがあります。子どもが話したいときに話せるよう、自然な雰囲気を作ることが大切です。例えば、「今日はどうだった?」と軽く聞くだけにしたり、食事中や散歩中などリラックスできる環境で会話をするのも効果的です。

③ 親自身の気持ちを伝える
「あなたのことを心配しているよ」「何があっても味方だからね」と伝えることで、子どもは安心感を持つことができます。ただし、「学校に行かないと将来大変になるよ」「早く行ってほしいと思っているよ」といったプレッシャーを感じさせる言葉は逆効果になるため注意が必要です。

3. 相談しやすい親になるためにできること

① 普段から子どもの話に耳を傾ける
学校のことに限らず、普段から子どもの話をしっかり聞く姿勢を持つことが大切です。「学校どうだった?」と聞いても「別に」としか返ってこない場合でも、子どもが好きなこと(ゲームや趣味など)についての話を聞くことで、会話のきっかけを作ることができます。

② 否定せずに受け止める
「それはおかしいよ」「そんなことで悩んでいるの?」といった否定的な言葉は、子どもの気持ちを閉ざしてしまいます。子どもの話がどんな内容であっても、まずは「そうなんだね」と受け止めることを意識しましょう。

③ 親も相談する姿を見せる
子どもは、「相談することは恥ずかしいこと」「弱い人がすること」と思っている場合があります。親自身が「今日はこんなことがあってちょっと落ち込んじゃったんだ」「お母さんもこういうことで悩むことがあるよ」と話すことで、相談することは自然なことだと伝えることができます。

「相談相手になる」ということは、すぐに解決策を提示することではなく、「子どもが安心して話せる存在になる」ということです。子どもが悩みを打ち明けやすい環境を作ることで、少しずつ前向きな変化が生まれます。

親ができる対策③「初動を大切にする」

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親がどのように対応するかによって、その後の展開が大きく変わります。最初の対応次第で、不登校が長期化するか、それとも適切なサポートを受けながら再登校につなげられるかが決まることもあります。

この章では、親が初めにどのように対応すべきか、また避けるべき対応について詳しく解説していきます。

1. 最初の対応が不登校の長期化を左右する

「学校に行きたくない」と子どもが言い出したとき、親は戸惑いや不安を感じるものです。しかし、最初の対応を間違えると、子どもはさらに追い詰められ、不登校が長期化する可能性が高まります。

① 感情的にならないことが最も重要
親としては、「どうして急に?」「甘えているだけでは?」と焦りを感じるかもしれません。しかし、そこで感情的になってしまうと、子どもは「話しても分かってもらえない」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

② すぐに「学校に行きなさい」と言わない
「行きたくない」と言った子どもに対して、すぐに「そんなこと言わずに行きなさい」と返してしまうと、「親には分かってもらえない」と思い込み、以降本当の気持ちを話さなくなってしまいます。また、学校のストレスが強い状態で無理に登校させると、かえって状況が悪化することもあります。

③ まずは話を聞く姿勢を持つ
最初にやるべきことは、「なぜ学校に行きたくないのか」を聞くことです。ただし、無理に理由を聞き出そうとすると、かえって子どもは話したがらなくなるため、落ち着いた雰囲気で「何かあったの?」と優しく問いかけることが大切です。

2. 子どもの気持ちを尊重する姿勢を持つ

不登校の子どもは、「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいることが多いです。親が「どうして行けないの?」「みんな頑張っているのに」と責めるような言葉をかけると、子どもの自己肯定感はさらに低下し、学校への恐怖心が強まってしまいます。

① 「学校に行けないのは弱いことではない」と伝える
「今は少し休んでもいいんだよ」と安心させる言葉をかけることで、子どもは落ち着きを取り戻します。不登校の原因を探る前に、まずは「大丈夫だよ」と受け止めることが重要です。

② 「休むこと=悪いこと」ではないことを理解する
「1日休んだからといって、大きな問題になるわけではない」ということを親が理解し、それを子どもにも伝えることが大切です。無理に登校を促すよりも、「今日はゆっくり考えよう」と話すことで、子どもは安心します。

3. 避けるべき対応

初動対応で避けるべき対応について、具体的に説明します。

①「甘え」「怠け」と決めつける
「ただの甘えでしょ?」「みんなも同じように頑張っているよ」といった言葉は、子どもを追い詰める原因になります。子どもにとっては、学校のストレスは親が想像する以上に大きなものです。決して「怠け」ではなく、「行きたくても行けない」状態であることを理解しましょう。

②「昔はこうだった」と比較する
「お母さんの時代は、こんなことで休まなかった」など、過去の話を持ち出すのは逆効果です。子どもは「自分が弱いせいだ」と思い込み、さらにプレッシャーを感じてしまいます。

③ 無理に理由を聞き出そうとする
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、すぐに「どうして?」と詰問すると、かえって話しにくくなります。「話せる範囲でいいよ」と伝え、焦らず待つことが大切です。

4. 初動の対応が落ち着いた後の進め方

最初の対応で子どもが安心したら、次のステップとして、学校への対応や今後の方針を考えます。

① 学校との連絡をどうするか決める
欠席する場合は、学校に連絡が必要になります。子どもが「親に言ってほしい」と望む場合は、親が学校と連絡を取るようにしましょう。「今日は体調が悪いのでお休みします」と伝えるだけでも大丈夫です。

② 無理のない範囲で子どもと話し合う
ある程度落ち着いたら、「これからどうしていくか」を子どもと話し合います。ただし、「いつまでに復帰するか」を決める必要はありません。まずは、「今どう感じているか」を聞くことが大切です。

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親の対応次第でその後の展開が大きく変わります。感情的にならず、まずは子どもの気持ちを尊重しながら話を聞くことが大切です。最初の対応を間違えなければ、子どもは「話してもいいんだ」と安心し、解決への道筋が見えてきます。

親ができる対策④「学校との適切な交渉」

不登校や学校ストレスに直面したとき、親がどのように学校と関わるかは、子どもの状況を改善するうえで重要なポイントになります。しかし、学校と適切に交渉することは、決して簡単ではありません。「先生にどう伝えればいいのか分からない」「相談しても真剣に取り合ってもらえない」と感じる保護者も少なくありません。

本章では、学校と適切に交渉し、子どもにとってより良い環境を整えるための具体的な方法について解説します。

1. 学校と話し合う目的を明確にする

学校との交渉において最も大切なのは、「何を目的とするか」を明確にすることです。漠然と「子どもが学校に行きたがらない」と伝えるのではなく、「どうすれば子どもが安心して通えるようになるか」を話し合う姿勢が求められます。

①「学校に復帰させること」が目的ではない
学校との話し合いの場では、「すぐに登校を再開させる」ことを目標にしないことが大切です。学校側も、「とにかく学校に戻すこと」が目的になってしまうと、子どもにとって逆効果になる可能性があります。大切なのは、「学校への不安を減らし、少しずつ適応できる環境を整えること」です。

② 具体的な課題を整理する
学校と交渉する前に、親として「子どもが何に困っているのか」「どのようなサポートが必要なのか」を整理しておくことが重要です。たとえば、

  • 授業の進度についていけない
  • 特定のクラスメートとの関係が負担になっている
  • 先生の対応が厳しく、萎縮してしまう
  • 朝の登校が特にストレスになっている

など、具体的に課題を把握することで、学校に対して適切な対応を求めやすくなります。

2. 学校との話し合いの進め方

学校と適切に話し合うためには、いくつかのポイントがあります。

①「敵対的な態度」は避ける
「学校が悪い」「先生の対応が間違っている」といった敵対的な姿勢で話を始めると、学校側も防御的になり、建設的な話し合いが難しくなります。あくまで「協力して子どものためにできることを考える」というスタンスで臨むことが大切です。

② 担任だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも話す
担任の先生だけに相談しても、状況が改善しない場合があります。そのような場合は、スクールカウンセラー、学年主任、教頭や校長といった他のスタッフとも話し合うことを検討しましょう。特にスクールカウンセラーは、不登校の子どもへの支援経験があることが多く、親身になって相談に乗ってくれるケースが多いです。

③ 学校側が対応可能な範囲を理解する
学校には学校の事情があり、すべての要求を受け入れることは難しい場合があります。そのため、あらかじめ「どこまで対応が可能なのか」を確認しつつ、無理のない範囲で調整することが大切です。

3. 学校に伝えるべき具体的な要望

学校との話し合いでは、以下のような要望を伝えることが考えられます。

① 登校のハードルを下げる
「いきなりフルタイムで登校するのは難しい」という場合、

  • 午前中だけ登校する
  • 保健室登校を認めてもらう
  • 放課後に先生と個別に面談する

といった段階的な対応を提案するのも一つの方法です。

② 学習のサポートを求める
学校を休んでいる間、学習の遅れを取り戻すために、

  • 宿題の量を調整してもらう
  • プリントや授業内容を共有してもらう
  • 家庭学習の方法についてアドバイスをもらう

といった支援を求めることができます。

③ 人間関係に関する配慮
もしクラス内の人間関係がストレスの原因になっている場合、

  • クラス替えを検討してもらう
  • 座席の配置を調整してもらう
  • グループワークの組み合わせに配慮してもらう

といった対応を相談することが可能です。

4. 学校に期待しすぎないことも大切

学校と話し合いを重ねても、必ずしも希望通りの対応をしてもらえるとは限りません。学校の体制や先生の考え方によっては、「これ以上の対応は難しい」と言われることもあります。その場合、学校だけに頼るのではなく、他の選択肢を検討することも必要です。

① 再登校支援の専門機関を活用する
ToCo(トーコ)株式会社では、学校と家庭の間に立ち、子どもの再登校をサポートするプログラムを提供しています。学校が十分な対応をしてくれない場合でも、専門的な支援を受けることで、親子の負担を軽減しながら再登校を目指すことができます。

② 学校以外の学びの場を考える
一時的に学校を休んでいる間も、学びの機会を失わないよう、オンライン学習や家庭学習を活用することができます。「勉強が遅れるのが不安」という子どもに対して、「自分のペースで学習できる場」を用意することで、安心感を持たせることができます。

学校との適切な交渉は、子どもが安心して学校に戻るための重要なステップです。感情的にならず、具体的な課題を整理し、協力的な姿勢で話し合うことが大切です。学校側が十分な対応をしてくれない場合は、専門機関のサポートを活用することで、より適切な支援を受けることが可能です。

親ができる対策⑤「家庭を安全地帯にする」

学校がストレスの原因となっている子どもにとって、家庭がどのような環境であるかは非常に重要です。不登校や学校ストレスを抱える子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であるかどうかが、その後の回復や再登校に大きく影響します。逆に、家庭がプレッシャーの場になってしまうと、子どもはますます心を閉ざしてしまうことになります。

1. 家庭が「安全地帯」であることの重要性

不登校の子どもにとって、学校はストレスの源となっています。そのため、学校以外に安心して過ごせる場所が必要になります。それが家庭です。

① 「逃げ場」があることで安心できる
学校で強いストレスを感じているとき、家庭まで居心地の悪い場所になってしまうと、子どもは心を休めることができません。「学校では頑張らなきゃいけない、家でも怒られる」となると、ますます追い詰められます。しかし、「家では安心していられる」と思えるだけで、心の負担が軽減されることがあります。

② 自己肯定感を回復する場になる
学校での人間関係や学業のプレッシャーによって、自己肯定感が低下している子どもは多いです。家庭で「ありのままの自分を受け入れてもらえる」と感じることで、自己肯定感を回復し、次の一歩を踏み出すエネルギーを蓄えることができます。

③ 安心できる環境が再登校の第一歩になる
不登校の子どもが再登校するためには、まず「外の世界は怖くない」と感じることが大切です。そのためには、家庭の中でまず安心感を得ることが必要になります。家庭がプレッシャーの場ではなく、リラックスできる場であることが、学校復帰への第一歩になります。

2. 子どもが安心できる家庭環境を作るために

では、具体的にどのように家庭を「安全地帯」にすればよいのでしょうか?

① 「学校に行かないこと」を責めない
子どもが学校に行けない状態のときに、「どうして行かないの?」「いつになったら行くの?」と責めることは逆効果です。不登校の子どもは、「行かなきゃいけない」と頭では分かっていても、心と体が動かない状態になっています。そこにプレッシャーをかけると、ますます状況が悪化してしまいます。

② ルールを押し付けすぎない
「何時に起きなさい」「勉強しなさい」など、過度なルールを設けることも、子どもにとってはストレスになります。もちろん、生活リズムを整えることは大切ですが、最初から厳しく管理しすぎると、家庭でも居心地が悪くなってしまいます。まずは、子どもがリラックスできる環境を優先し、少しずつ生活リズムを整えていくことが大切です。

③ 子どもの好きなことを尊重する
不登校の子どもは、自己肯定感が低くなっていることが多いため、「好きなこと」や「得意なこと」に集中できる時間を作ることが重要です。たとえば、ゲームや読書、絵を描くことなど、何かに没頭できる時間があることで、少しずつ「自分にはできることがある」と感じることができます。

④ 会話の機会を増やす
子どもが安心して話せる環境を作るために、親子の会話を増やすことも大切です。ただし、「学校の話をしなさい」と無理に話題を限定するのではなく、日常的なことや子どもの興味のあることについて話すことで、自然とコミュニケーションを取ることができます。

3. 親自身の心のケアも重要

親が「家庭を安全地帯にしよう」と思っていても、親自身が疲れてしまっていては、子どもにとって安心できる環境を作ることは難しくなります。そのため、親自身の心のケアも重要です。

① 一人で抱え込まない
不登校の問題は、親だけで解決しようとすると大きな負担になります。学校や専門機関に相談しながら、親自身の気持ちを整理することも大切です。

② 完璧を求めすぎない
「ちゃんとサポートしなければ」と思いすぎると、親自身がプレッシャーを感じてしまいます。親も「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

③ 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門家に相談したりすることで、親自身の不安を軽減することができます。たとえば、ToCo(トーコ)では、親のサポートも含めた支援を行っており、不登校の子どもを持つ親がどのように対応すればよいかを具体的にアドバイスしています。

不登校の子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であることは非常に重要です。家庭が安全地帯であれば、子どもは少しずつ自己肯定感を取り戻し、再登校に向けた準備を進めることができます。

親が無理をしすぎず、子どもの気持ちを尊重しながらサポートすることで、子どもは安心感を得て、自分のペースで前に進むことができます。


まとめ

ここまで、学校ストレスに対する親の対応として、具体的な5つの対策を詳しく解説してきました。最後に、それぞれのポイントを振り返りながら、改めて「親ができること」について整理していきます。

学校ストレスの正体を知ることが大切

学校は、子どもにとって学びの場であると同時に、大きなストレスの要因にもなり得ます。学校によるストレスには、学業のプレッシャー、人間関係のトラブル、学校のルールへの適応、身体的な負担など、さまざまなものがあります。特に、繊細で感受性が強い子、一人でいることを好む子、競争や比較を苦手とする子にとって、学校の環境は大きな負担になりやすいことが分かっています。

このような子どもの特性を理解し、**「なぜ学校がつらいのか?」**を冷静に分析することが、適切な対応の第一歩になります。

親ができる5つの対策のポイント

情報を得る
不登校や学校ストレスについて、正しい知識を持つことが大切です。「不登校=悪いこと」「学校に行かないと将来困る」といった思い込みを捨て、冷静に現状を把握しましょう。学校の制度や支援機関の活用方法についても知識を得ることで、より適切な対応が可能になります。

相談相手になる
子どもが悩みを抱えているとき、親が最も信頼できる相談相手になることが重要です。子どもが安心して話せる環境を作り、無理に解決策を押し付けるのではなく、「話を聞くこと」に徹することが大切です。

初動を大切にする
「学校に行きたくない」と子どもが言い出したときの対応が、その後の展開を左右します。焦らず、感情的にならず、「まずは話を聞く」ことを最優先にしましょう。「とりあえず今日は休もう」と伝え、安心感を与えることが大切です。

学校との適切な交渉
学校と話し合う際には、感情的にならず、「子どもが安心して学校に戻れる環境を整えるために、どのような対応が可能か」を具体的に相談することが重要です。担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも連携し、無理のない形で調整を進めていきましょう。

家庭を安全地帯にする
学校がストレスの原因になっている場合、家庭が「安心できる場所」であることが重要です。「学校に行けないこと」を責めず、子どもの好きなことを尊重しながら、少しずつ自己肯定感を回復させていくことが大切です。

再登校のために親が意識すべきこと

不登校が長引くと、子ども自身が「学校に戻るのが怖い」と感じるようになり、再登校のハードルが高くなってしまいます。そのため、早い段階から「どうすればスムーズに学校に戻れるか」を考えておくことが重要です。

学校との連携を続ける
学校と連携しながら、子どもが少しずつ学校に戻るための環境を整えていくことも大切です。いきなり通常登校を目指すのではなく、保健室登校や短時間登校など、段階的に慣らしていく方法を検討しましょう。

子どものペースを尊重する
「いつまでに学校に戻るか」を決めるのではなく、「子どもが安心して学校に行けるようになること」を目標にしましょう。無理に急がせるのではなく、子ども自身が「行ってみようかな」と思えるタイミングを見極めることが重要です。

親自身も無理をしないことが大切

不登校の問題に向き合うことは、親にとっても大きな負担になります。「なんとかしなければ」と焦るあまり、親自身がストレスを抱えてしまうことも少なくありません。しかし、親が疲れ切ってしまっては、子どもにとってもよい影響を与えません。

① 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門機関に相談したりすることで、親自身の気持ちを整理することができます。一人で抱え込まず、サポートを受けながら対応していきましょう。

②「完璧な対応」を求めない
親としては、「正しい対応をしなければ」と思いがちですが、完璧な対応をすることは誰にもできません。「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

学校ストレスや不登校の問題は、一朝一夕で解決できるものではありません。しかし、親が適切な対応を取ることで、子どもは少しずつ前向きな気持ちを取り戻し、再び学校に向かう力を蓄えていくことができます。

焦らず、子どもの気持ちを尊重しながら、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。そして、必要に応じて専門的な支援を活用することで、親子の負担を軽減しながら、より良い方向へ進むことができます。

学校ストレスに悩む子どもたちが、自分のペースで安心して歩んでいけるように、親としてできることを考えながら、温かくサポートしていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策

不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防および再登校支援事業を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの不登校の子どもと向き合い、その原因や解決策を探ってきました。

不登校が長引く要因の一つとして「勉強の遅れ」が挙げられます。勉強の遅れは、単に学力の問題ではなく、子どもの心理状態や自己評価にも大きな影響を及ぼし、再登校を阻む大きな壁となるのです。本稿では、「なぜ勉強が不登校を長引かせるのか」「その結果、どのような悪循環が生まれるのか」「それを解決するためにはどのような方法があるのか」について詳しく論じていきます。

まずは、不登校が続く要因としての「勉強」に焦点を当て、その影響について詳しく見ていきましょう。

参考:文部科学省「令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要


目次


勉強が不登校の続いてしまう要因となる理由

不登校の子どもにとって、「勉強」は単なる学習課題ではなく、大きな心理的負担となることが少なくありません。学校に行かないことで授業についていけなくなると、その遅れが焦りや劣等感を生み、さらなる不安や自己否定感につながるのです。では、具体的にどのようなメカニズムで「勉強」が不登校を長引かせるのかを見ていきます。

1. 学習の遅れによる自己肯定の低下

不登校が続くと、当然ながら学校の授業は進みます。特に、小学校高学年から中学生にかけては、学習内容がより抽象的になり、前提となる基礎知識がないと理解が難しくなる単元が増えていきます。例えば、小学校で分数や割合に苦手意識がある子は、中学数学の方程式を理解することが困難になります。同じように、国語の読解力が不足していると、社会や理科の教科書の内容すら難しく感じるようになります。

この「ついていけない」という感覚が積み重なることで、子どもは次第に「自分は勉強ができない」「学校に戻っても授業についていけない」と考えるようになります。そして、「どうせ頑張っても追いつけない」「もう手遅れだ」といった思考に陥り、学習意欲そのものを失ってしまうのです。

2. 周囲との差を意識することによる劣等感の増幅

子どもたちは、想像以上に「周囲との比較」を意識しています。不登校の期間が長くなるほど、学校にいる同級生と自分との差が開いていることを痛感する機会が増えていきます。

例えば、学校にいる友達が「今日の授業、難しかったけど何とか理解できたよ」と話しているのを聞いたとき、不登校の子どもは「そもそも何の授業をしているのかもわからない」と強く意識してしまいます。また、久しぶりに登校した際に、先生が「この問題、簡単だよね」と発言しただけでも、「自分にとっては簡単ではない」と感じ、ますます自信を失うことになります。

こうした経験が重なることで、「自分は他の子より劣っている」という意識が強まり、それが再登校の妨げになるのです。

3. 「勉強しなければならないのに、できない」というジレンマ

不登校の子どもたちは、多くの場合、「勉強しなければいけない」という意識を持っています。親や教師からの言葉だけでなく、社会全体の価値観として「勉強は大切」「勉強しないと将来が不安」という認識があるからです。しかし、不登校の状態が続くと、「やらなければいけないのに、やれない」「やる気が起きない」というジレンマに苦しむことになります。

このジレンマがストレスとなり、勉強に対する苦手意識をさらに強めてしまうことがあります。親が「勉強しなさい」と強く促したり、「このままでは将来が大変だ」と不安を煽るような言葉をかけたりすると、子どもはより強いプレッシャーを感じるようになります。その結果、勉強をすることそのものがストレスになり、「学校に戻ること=嫌なこと」と認識してしまうのです。

4. テストや成績による不安

不登校の子どもたちにとって、定期テストや成績評価は非常に大きなプレッシャーになります。仮に学校に戻りたいという気持ちがあっても、「テストで悪い点を取ったらどうしよう」「赤点を取ったら親に怒られるかもしれない」といった不安が頭をよぎることが多いのです。

特に、中学に入ると高校受験が意識されるようになり、学校の成績が重要視されます。「不登校の期間が長かったから、受験に不利になるのではないか」という不安を抱えることで、学校に戻ること自体を諦めてしまうケースもあります。

このように、学習の遅れが単なる知識の不足ではなく、心理的な負担として積み重なり、不登校を長引かせる原因になっているのです。


以上のように、「勉強ができない」「勉強の遅れが取り戻せない」「周囲との差が大きくなりすぎた」という意識が、不登校の継続につながっています。こうした状況に対処するためには、単に学習の機会を与えるだけではなく、子どもの心理的負担を軽減しながら、段階的に学習習慣を取り戻すことが重要です。

不登校が長引くほど、勉強による再登校のハードルは高まる

不登校の期間が長くなるほど、勉強が再登校の大きな障壁となってしまいます。それは単に「勉強が遅れるから」という理由だけではありません。時間の経過とともに、学習の遅れが子どもの自己評価や人間関係に影響を与え、結果的に学校に戻ることをより困難にしてしまうのです。ここでは、不登校の長期化が勉強面に与える影響と、それがどのように再登校の妨げになるのかを詳しく見ていきます。

1. 学習の遅れが加速度的に広がる

不登校の初期段階では、子ども自身も「少し休んでから戻るつもりだった」「数日分の授業なら何とかなる」と思っていることが多いです。しかし、1週間、1か月と時間が経つにつれて、授業の進度との差が広がり、取り戻すべき内容が膨大になっていきます。

特に、中学校に入ると、授業のスピードは小学校よりも速くなり、科目ごとに専門性が増します。例えば、数学では一次関数や方程式といった内容が基礎となり、それが理解できないと後の単元も理解しにくくなります。同じように、英語では文法や単語の積み重ねが重要になるため、一度遅れるとキャッチアップするのが非常に難しくなります。

また、学校のカリキュラムは、過去の学習内容を前提に進むため、一度でも「わからない」状態になると、その先の内容も理解しづらくなるという負のスパイラルに陥ります。このように、学習の遅れは単なる「取り戻すべき量」の問題ではなく、「理解するための基盤」が崩れてしまうという問題を引き起こすのです。

2. 「今さら戻ってもついていけない」という心理的ハードル

不登校が数か月以上続いた場合、子どもが抱える心理的なハードルはさらに高まります。単純な学習の遅れに加え、「戻ったときに授業についていけるのか」「周りの友達にどう思われるか」といった不安が膨らんでいくのです。

例えば、国語の授業で「この前の文章、みんな覚えてるよね?」と先生が発言したとき、不登校の子どもは「何の話をしているのかわからない」と感じます。それが一度や二度ではなく、授業のたびに続くことで、「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、次第に学校へ戻る意欲を失ってしまうのです。

また、定期テストや小テストがあると、「どうせ点が取れないから行きたくない」と思うようになります。実際に、学校に戻った子どもたちの中には「テストで名前を書くだけだった」「提出物も出せず、成績がつけられなかった」という経験をした子もいます。こうした状況は、「学校に戻った後の困難」をイメージさせ、ますます再登校を遠ざける要因となります。

3. 勉強の遅れが人間関係にも影響を及ぼす

不登校の子どもが学校に戻った際、最も恐れることの一つが「周囲の反応」です。特に、勉強に関する話題は、クラスメイトとの距離を感じやすい場面の一つです。

例えば、休み時間に友達が「数学の宿題、難しかったね」と話しているとき、不登校だった子どもは「そもそもその宿題が何なのかも知らない」と感じます。また、グループワークなどで先生から「この前の授業でやったことを復習して」と指示されたとき、他の子がスムーズに取り組んでいるのに対し、自分だけ何をすればいいのかわからない状況になることもあります。

このような場面を経験すると、「友達と話が合わない」「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、再登校に対する不安がますます大きくなります。学校は勉強をする場であると同時に、友人関係を築く場でもあります。そのため、勉強の遅れが人間関係にも影響を与え、「学校に戻りたくない」という気持ちを強めてしまうのです。

4. 長期化すると「不登校の生活が当たり前」になってしまう

不登校が長引くと、子どもの中で「学校に行くこと」よりも「家で過ごすこと」が当たり前の生活になっていきます。最初の頃は「また学校に戻るつもりだった」と思っていた子どもも、数か月が経過すると「どうやって戻ればいいのかわからない」「もうこのままでいいのではないか」と考えるようになります。

この状態が続くと、勉強に対する意欲も徐々に薄れていきます。「どうせ学校に行かないのだから、勉強しなくてもいい」「今さら頑張っても意味がない」という考えが強まり、学習習慣そのものが崩れてしまうのです。

また、学習の遅れが「学校復帰のための課題」ではなく、「自分の価値を測るもの」として感じられるようになると、「勉強ができない=自分には価値がない」という自己否定につながることもあります。このような状態では、学校に戻るための一歩を踏み出すことがますます難しくなってしまいます。

学習の遅れが再登校を難しくする悪循環を断ち切るために

不登校が長引けば長引くほど、勉強が再登校の妨げになることは明らかです。しかし、「このままではいけない」と焦って無理に勉強を押し付けることは逆効果です。重要なのは、子どもが勉強に対して「できない」「ついていけない」というネガティブな感情を抱かずに済むような環境を整えることです。

塾よりも学校連携が優先される理由

不登校が続く中で、「学習の遅れを取り戻すために塾に通わせるべきか」と考える保護者の方は少なくありません。確かに、塾は学力向上を目的とした場であり、学校に戻る前に学習を補う手段として魅力的に映ることもあるでしょう。しかし、不登校の子どもにとって、塾が必ずしも最適な選択肢とは限りません。むしろ、塾よりも学校との連携を優先することが、不登校からの回復において重要なポイントになります。

では、なぜ塾よりも学校との関わりを重視すべきなのか、その理由について詳しく説明していきます。

1. 不登校の本質的な問題は「学力不足」ではなく「学校適応」

不登校が続く要因の一つとして「勉強」が挙げられることは確かですが、学力不足そのものが不登校の主原因というわけではありません。むしろ、「学校に行くことへの不安」「友人関係の悩み」「先生との関係の問題」などが根本的な理由となっていることが多いのです。

そのため、学力を塾で補えばすぐに学校へ戻れるかというと、そう単純な話ではありません。たとえ塾で学習の遅れを取り戻したとしても、「学校へ行くことへの抵抗感」や「学校の環境に適応する力」が育まれなければ、再登校は難しいのです。

例えば、塾で勉強を頑張った子どもが「勉強は少しできるようになったけれど、学校に行くのは怖い」と感じるケースは少なくありません。塾は学習指導が中心であり、学校生活への適応をサポートする仕組みは整っていないため、学校復帰に必要な「集団生活への慣れ」や「学校との関係を再構築する力」を養うことができないのです。

2. 塾は「勉強ができる子」を前提とした環境である

塾は基本的に「学習を進める場」であり、「学習の遅れを取り戻す場」として設計されているわけではありません。特に集団指導の塾では、ある程度の学力があることを前提に授業が進められるため、長期間不登校だった子どもがいきなり塾に入ると、ついていけずに挫折する可能性が高くなります。

また、塾には学校と異なり「成績向上」や「受験対策」に特化した競争的な環境があります。これが不登校の子どもにとってストレスとなることもあります。例えば、塾では定期的に確認テストが実施されることが多く、「勉強ができるかどうか」が可視化される場面が増えます。不登校の期間が長く、学習の遅れがある子どもにとっては、こうした環境が「できない自分」を強く意識させてしまい、学習への意欲を失わせることにもつながります。

また、塾の講師は「勉強を教えるプロ」ではあっても、「不登校支援の専門家」ではありません。不登校の子どもが抱える心理的な課題に対する理解が不足していることも多く、子どもの気持ちに寄り添った適切な対応ができないこともあります。

3. 学校との関係を再構築することが重要

不登校からの回復には、「学校との関係を再構築すること」が非常に重要です。つまり、学習の遅れを取り戻すこと以上に、「学校に戻りやすい環境を整えること」が求められます。そのためには、学校と適切な形でつながりを持ち続けることが不可欠です。

学校との関係が切れてしまうと、復帰のタイミングを見失い、「戻るべき場所がない」と感じてしまうこともあります。しかし、学校と定期的にコミュニケーションを取りながら進めることで、「いつでも戻れる場所がある」という安心感を持つことができるのです。

4. 塾の利用が有効なのは「居場所」としての機能を果たす場合

ここまで、塾の限界について述べてきましたが、すべての塾が不登校の子どもにとって不適切というわけではありません。塾の中には、学習指導だけでなく、子どもの居場所としての役割を果たすものもあります。例えば、少人数制や個別指導の塾で、学習のサポートと同時に心理的なケアを行っている場合、子どもにとって安心できる環境になることもあります。

しかし、その場合でも、塾の利用を「学校復帰の手段」として捉えるのではなく、「子どもの社会的な居場所の一つ」として考えることが重要です。学校に戻るための準備として塾を活用するのではなく、「外部の人と関わる機会を作る」「生活リズムを整える」といった目的で利用する方が、子どもにとってプラスになるケースが多いです。

学校との連携を重視し、適切な学習支援を行うことが鍵

不登校の子どもにとって、学習の遅れを取り戻すことは重要ですが、それ以上に「学校に戻れる環境を整えること」が最優先事項です。塾は学習指導の場としては有効ですが、「不登校支援」には向いていません。学力向上だけでなく、学校への適応を促すためには、学校との関係を維持しながら進めていくことが必要不可欠です。

勉強のハードルを下げるための親の接し方、行動

不登校が続く中で、保護者の方が特に気にされるのが「勉強の遅れ」についてです。

「このままで将来は大丈夫なのか」「学校に戻ったとき、ついていけるのか」といった不安を抱えるのは、ごく自然なことです。しかし、その不安が強すぎると、子どもに対して「勉強しなさい」とプレッシャーをかけてしまったり、「勉強をしないと将来困るよ」と無意識のうちに不安を煽ってしまったりすることがあります。

不登校の子どもはすでに、「勉強が遅れている」「授業についていけるか不安」という気持ちを抱えていることが多いです。そんなときに、親からのプレッシャーが加わると、勉強に対する抵抗感がさらに強まり、ますます手をつけなくなってしまうことがあります。

では、どうすれば子どもが勉強に対する抵抗感を減らし、少しずつ学習の習慣を取り戻せるのでしょうか。ここでは、親ができる具体的な接し方や行動について詳しく説明していきます。

1. 「今すぐ取り戻さなければならない」という意識を手放す

保護者の方がまず意識すべきことは、「今すぐに勉強の遅れを取り戻す必要はない」ということです。不登校が長引いた子どもにとって、「勉強しなければならない」という気持ちがストレスになり、それが逆に学習への意欲を削いでしまうことがあります。

勉強ができないことを責めたり、急いでキャッチアップさせようとすると、子どもは「勉強は苦しいもの」と認識し、ますます避けるようになってしまいます。重要なのは、「まずは勉強に対する心理的なハードルを下げること」です。そのためには、「少しずつでもいいからやってみよう」というスタンスで関わることが大切です。

2. 「勉強しなさい」と言わず、環境を整える

不登校の子どもに対して、「勉強しなさい」と言うことは逆効果になりやすいです。親から勉強を強制されることで、かえって反発心が生まれ、勉強そのものを避けるようになるケースが多いからです。

大切なのは、「勉強をやるかやらないかは本人に委ねる」ことです。ただし、完全に放置するのではなく、「勉強しやすい環境」を整えることが重要になります。例えば、以下のような工夫が考えられます。

  • リビングに勉強できるスペースを作る
    勉強部屋にこもることがプレッシャーになる子も多いため、リビングやダイニングなどで気軽に勉強できる環境を用意する。
  • 親が本を読んだり、一緒に学ぶ姿勢を見せる
    親がスマホやテレビばかり見ていると、子どもも同じように過ごしがちです。親自身が読書や資格の勉強をする姿を見せることで、「学ぶことは自然なこと」と思えるようになります。
  • 勉強の話題をプレッシャーにならない形で出す
    「勉強しなさい」ではなく、「今日はどんなことをした?」と軽く話を振る程度に留める。興味を持てる話題を出し、学ぶことを自然な流れにする。

3. 「小さな成功体験」を積ませる

勉強への抵抗感を減らすには、「できた!」という成功体験を積ませることが重要です。いきなり難しい問題を解かせるのではなく、簡単な問題から始め、「少しずつできる」という感覚を持たせることが大切です。

例えば、以下のような工夫が有効です。

  • 子どもが好きな分野から始める
    算数や英語が苦手なら、好きな歴史の本を読むだけでも学習になります。「興味が持てることから学ぶ」ことで、学習のハードルを下げることができます。
  • 問題を解くのではなく、動画や本で学ぶ
    「勉強=問題を解くこと」と考えるとハードルが上がります。まずは教育系のYouTube動画や、学習漫画などを活用して、知識を増やすところから始めるのも有効です。
  • できたことをしっかり褒める
    「たった1問しか解いてない」「こんな簡単なことができただけ」と思わずに、「やろうとしたこと」そのものを褒めることが大切です。「少しでもやったことがすごい」「昨日よりも進んだね」と声をかけることで、子どもは「やってよかった」と感じ、勉強への抵抗感を減らすことができます。

まとめ:勉強を再登校への妨げとしないために

不登校の子どもにとって、「勉強」は大きな心理的負担になりやすいものです。しかし、親が焦って勉強を強要すると、かえって逆効果になってしまうこともあります。重要なのは、子どもが「学ぶことに対してポジティブな気持ちを持てるようになること」です。そのためには、無理に勉強を押し付けるのではなく、子どもが少しずつでも学習習慣を取り戻せるように環境を整えることが大切です。

不登校は決して「そのまま放置すれば解決する問題」ではありません。適切な学習支援と環境調整を行いながら、子どもが再び学校に戻るための準備を整えていくことが、何よりも重要なのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

小学校の不登校、中学校の不登校の特徴

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

日本では近年、不登校の児童生徒が増加し続けており、小学校と中学校ではその特徴や背景に違いがあります。本記事では、データをもとに不登校の現状を整理し、小学校と中学校それぞれに多い不登校のきっかけを詳しく分析していきます。さらに、新学期に向けた注意点や、日常的にできる不登校対策についても具体的にお伝えします。

不登校の問題は一朝一夕で解決するものではありません。しかし、適切な対応をすれば、子どもが再び学校へ戻れる可能性は十分にあります。まずは現状を正しく理解し、親として何ができるのかを一緒に見ていきましょう。


目次


データで見る小・中学校の不登校

日本の小・中学校における不登校児童生徒数は、年々増加傾向にあります。文部科学省の統計によれば、2023年度の不登校児童生徒数は346,482人に達し、これは小・中学校在籍者数全体の約3.72%を占めています。特に中学校における不登校の割合は顕著で、中学生216,112人、小学生130,370人という内訳になっています。

この数字を10年前と比較すると、その増加率は驚異的です。2010年度の不登校児童生徒数は119,891人でしたが、2023年度には346,482人と、約2.9倍に増加しています。特に近年は、毎年1万人単位で増え続けており、今後もこの傾向は続くと考えられます。

また、不登校の期間について見ると、90日以上欠席する長期不登校が全体の約44.5%を占めています。中でも、1年間の出席日数が0日の児童生徒は約3.1%に達しており、完全に学校と接点を失ってしまっているケースも少なくありません。

出典:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)

学年別の不登校傾向

学年ごとに不登校の発生率を分析すると、以下のような傾向が見えてきます。

  • 小学校では高学年(特に5・6年生)で不登校が増える
  • 中学校では1年生から増加し、2年生でピークを迎える

小学校では環境の変化に適応できないことが主な原因となることが多く、中学校では学業や人間関係のストレスが不登校につながることが多いです。

このデータから分かることは、不登校の問題は決して一部の子どもだけに起こる特異なものではなく、どの家庭にも起こりうるということです。では、なぜ小学生や中学生が不登校になるのか、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

小学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校のきっかけは、中学生の不登校とは異なり、比較的曖昧で漠然とした理由で始まることが多いです。中学生のように「勉強についていけない」「人間関係のトラブルが深刻化した」という明確な原因があるというよりも、「なんとなく学校に行きたくない」「朝になるとお腹が痛くなる」といった形で、本人も自覚できないまま不登校へ移行してしまうことが少なくありません。

では、具体的にどのような要因が小学生の不登校につながるのでしょうか。

1. 環境の変化によるストレス

小学生の不登校の大きなきっかけの一つが、環境の変化です。小学生は精神的にまだ未熟であり、環境の変化に対する適応能力も大人ほど発達していません。そのため、ちょっとした変化でも大きなストレスとなり、不登校につながることがあります。

具体的には、以下のような環境の変化が影響を与えることが多いです。

  • 入学や進級に伴うクラス替え
  • 担任の先生の交代
  • 親の転勤や引っ越し
  • 親の離婚や家庭内の不和

特に、担任の先生との相性が合わないことが、不登校のきっかけとなることが多くあります。小学生にとって、担任の先生は学校生活の中で大きな存在です。その先生が厳しかったり、自分を理解してくれないと感じたりすると、「学校が怖い」「行きたくない」という気持ちにつながることがあります。

また、家庭環境の変化も不登校に大きく影響します。親の転勤や離婚があった場合、子どもは大きなストレスを感じます。子どもは大人のように感情を言語化することが難しいため、「学校に行きたくない」という形でストレスを表現することがあるのです。

2. 友人関係のトラブル

小学生の不登校のきっかけとして、友人関係のトラブルも大きな要因の一つです。

小学生の段階では、まだコミュニケーション能力が十分に発達していないため、ちょっとした言い争いや意見の食い違いが大きなストレスになりやすいという特徴があります。特に低学年では、「昨日までは仲が良かったのに、今日は無視される」といったことが頻繁に起こります。

また、最近ではSNSやオンラインゲームを通じたコミュニケーションの増加により、学校以外の場でのトラブルが学校生活に影響を及ぼすケースも増えています。例えば、ゲーム内でのトラブルがきっかけで友人関係が悪化し、学校へ行きづらくなることもあります。

3. 学校生活への適応の難しさ

小学校のカリキュラムは、学年が上がるにつれて徐々に厳しくなります。そのため、勉強や集団生活に適応できない子どもは、不登校になりやすい傾向があります。

特に以下のような要因を持つ子どもは、学校生活に適応することが難しくなり、不登校につながることがあります。

  • 集団行動が苦手(発達特性の影響など)
  • 聴覚過敏や感覚過敏があり、学校の音や刺激がつらい
  • ルールや指示に従うことが難しい

発達特性を持つ子どもは、普通の授業や学校生活のルールに適応するのが難しいことがあります。例えば、「大勢の人と一緒にいるのが苦手」「音に敏感で教室のざわざわした雰囲気が耐えられない」といった理由で、学校に行きづらくなることもあります。

また、小学4年生~6年生頃になると、学習内容が難しくなり、勉強についていけなくなることが原因で不登校になる子どもも増えます。特に「みんなの前で当てられるのが怖い」「テストの点数が悪くて恥ずかしい」といった感情が、不登校につながることも少なくありません。

小学生の不登校の特徴まとめ

  • 環境の変化(クラス替え、先生の交代、親の転勤や離婚など)が大きな影響を与える
  • 友人関係のトラブルが直接的な不登校のきっかけになることが多い
  • 学習面のつまずき集団生活の苦手さが原因になることもある
  • 「なんとなく行きたくない」という曖昧な形で始まることが多く、早期の対応が重要

小学生の不登校は、最初は「ちょっと休みたい」程度の気持ちから始まり、気づけば長期化してしまうことが少なくありません。そのため、「何となく休みがちになっている」と感じた時点で、早めに対応をすることが重要です。

親子-向き合う

中学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校が「なんとなく行きたくない」「環境の変化に適応できない」という比較的漠然とした理由で始まることが多いのに対し、中学生の不登校はより明確な要因や深刻なストレスが背景にあることが多いのが特徴です。

中学生になると、学業の難易度が上がり、対人関係が複雑化し、自己意識が高まるため、小学生の頃にはなかった新たな悩みが生じます。また、思春期特有の心理的変化も影響し、不登校がより長期化しやすくなる傾向があります。

では、中学生の不登校の主なきっかけを詳しく見ていきましょう。

1. 学業の負担が増大し、ついていけなくなる

中学生の不登校の最も大きな要因の一つが、学習内容の難化によるストレスです。小学校の頃は比較的ゆるやかだった学習進度も、中学校に入ると一気にレベルが上がります。

特に、以下のような場面でつまずきを感じる生徒が多いです。

  • 授業のスピードが速くなり、理解が追いつかなくなる
  • 数学や英語など、苦手科目が明確になり、成績が低下する
  • テストや成績表による評価が厳しくなり、自己肯定感が下がる
  • 授業で当てられるのが怖くなり、授業に出ることが不安になる

中学生は「自分はできるのか」「周りと比べて劣っていないか」を強く意識する年齢です。そのため、小学校では「まぁ何とかなる」と思っていた勉強も、中学校では「もう無理だ」「学校に行っても意味がない」と感じ、不登校につながるケースが増えます。

また、中学校の先生は科目ごとに変わるため、「先生との相性が悪い」「分からないところを質問しにくい」といった問題も発生しやすくなります。授業についていけなくなり、学校に行くのが嫌になる――こうした流れで不登校に至るケースは非常に多いのです。

2. 対人関係の悩みが深刻化する

小学校の頃は、友人関係のトラブルがあっても、その日のうちに仲直りするケースが多いですが、中学生になると関係性がより複雑になり、トラブルが解決しにくくなります。

特に以下のようなケースで不登校になる生徒が増えます。

  • いじめや仲間外れに遭う(直接的な暴力だけでなく、無視や陰口も含む)
  • グループの中での立ち位置に悩む(クラスや部活動内での孤立)
  • 友人関係の変化についていけない(小学校時代の友達と疎遠になる)
  • SNSやオンラインゲーム上でのトラブル(LINEグループから外される、悪口を言われるなど)

中学生は小学生よりも「人間関係の軋轢」に敏感になります。「無視された」「仲間に入れてもらえなかった」など、小さなことでも大きなショックを受け、それが学校に行きたくない理由になることがよくあります。

また、最近では、学校内だけでなく、SNSやオンラインゲーム上でのトラブルが不登校の引き金となるケースも増えています。「学校では普通に接しているのに、ネット上では悪口を言われる」というような、表と裏の顔を使い分けるケースもあり、親や先生が気づかないうちに子どもが傷ついていることも少なくありません。

3. 部活動や学校行事によるプレッシャー

中学校に入ると、多くの生徒が部活動に参加します。部活動は友人関係を深めたり、自己成長の機会を得たりする場にもなりますが、「厳しすぎる指導」や「上下関係のストレス」が不登校のきっかけになることもあります。

特に以下のような状況に当てはまる場合、不登校になるリスクが高まります。

  • 顧問や先輩からの厳しい指導が耐えられない
  • 部活の練習が過度に厳しく、疲労がたまりすぎる
  • 試合やコンクールで結果を出さなければならないプレッシャーが強い
  • 部活動と勉強の両立ができず、ストレスを抱える

また、体育祭や文化祭といった学校行事が大きな負担になることもあります。目立つのが苦手な子どもにとって、学校行事は「避けたいイベント」になりやすく、その時期に一度休むと、そのまま不登校に移行してしまうことがあります。

4. 思春期特有の心理的要因

中学生は、精神的に大きく成長する時期です。しかし、その分だけ「自分はどう思われているのか」「このままでいいのか」といった悩みも増え、不登校につながるケースが多くなります。

具体的には、以下のような心理的変化が関係します。

  • 「完璧主義」で、失敗を極度に恐れる
  • 「過敏性」が強く、ちょっとしたことで深く傷つく
  • 「反抗期」があり、大人の言うことに反発したくなる
  • 「将来への不安」が強まり、学校に行く意味を見出せなくなる

特に「完璧主義」の子どもは、ちょっとした失敗でも強い挫折感を味わい、学校に行くこと自体が苦痛になりやすいです。また、思春期の不安定な心理状態の中で、親や先生とのコミュニケーションが上手くいかず、不登校に拍車をかけることもあります。

中学生の不登校の特徴まとめ

  • 学業の負担が増え、授業についていけなくなることが原因になる
  • 友人関係の悩みが深刻化し、解決しにくくなる
  • 部活動や学校行事によるストレスが影響を与えることがある
  • 思春期特有の心理的変化が、不登校の引き金となる

中学生の不登校は、小学生の不登校よりも長期化しやすいという特徴があります。そのため、できるだけ早い段階で不登校の兆候に気づき、適切な対応を取ることが重要です。

母と中学生の娘の会話

新学期に向けて注意すべき点

新学期は、不登校の子どもにとって大きなストレスがかかるタイミングです。特に4月の新学期や9月の2学期開始時は、「環境が変わる」「新しい人間関係が始まる」「学習内容が進む」などの要因が重なり、精神的な負担が増します。

すでに不登校気味の子どもにとっては、「新しいスタートを切らなければならない」というプレッシャーが大きく、さらに不登校が進行してしまうこともあります。また、これまで問題なく通学していた子どもでも、新学期を機に学校への違和感を強く感じ、不登校を引き起こすことがあります。

では、新学期に向けてどのような点に注意し、どのようなサポートができるのかを詳しく見ていきましょう。

1. 「新学期だから頑張ろう」というプレッシャーをかけすぎない

親としては、「せっかくの新学期だから、気持ちを切り替えて頑張ってほしい」と思うかもしれません。しかし、「頑張って行こうね」「そろそろ学校行かないとね」といった言葉が、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。

不登校の子どもは、すでに「学校に行かないといけない」という気持ちをどこかで持っています。それでも行けないのは、「行こうとすると不安やストレスで体調が悪くなる」「学校に対する恐怖心がある」などの理由があるからです。

そのため、新学期に向けては、無理に学校に行かせようとするのではなく、まずは子どもの気持ちに寄り添い、話を聞くことが大切です。

✔ NGな声かけ

  • 「新学期からはちゃんと行こうね」 → プレッシャーになり、不安が増す
  • 「みんな頑張ってるんだから、あなたも頑張らないと」 → 他人と比較されることで自己肯定感が下がる
  • 「いつまでも休んでいたら、将来困るよ」 → 長期的な不安を煽ることで余計に動けなくなる

✔ 望ましい声かけ

  • 「新学期、不安なことはある?」 → 子どもが抱えている気持ちを引き出す
  • 「学校に行くことだけが大事なんじゃなくて、どうすれば安心して過ごせるか考えようね」 → 子どもに寄り添いながら、前向きな選択肢を一緒に探す

2. 生活リズムを整えることを優先する

新学期が始まる直前になって、「学校に行く準備をしなさい」「朝起きられるようにしなさい」と急に言われても、子どもにとっては大きな負担になります。特に、長期間の不登校で生活リズムが崩れている場合、新学期直前に無理に元に戻そうとすると、かえって不安定になってしまうことがあります。

そのため、新学期の2週間ほど前から、少しずつ朝の時間を整えることを意識すると良いでしょう。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

  • 起きる時間を少しずつ早める(いきなり学校の時間に合わせるのではなく、15~30分ずつ調整)
  • 朝日を浴びる習慣をつける(体内時計を整えるために、起きたらカーテンを開ける)
  • 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす(急に禁止するのではなく、少しずつ短縮していく)

「学校に行けるかどうか」よりも、まずは朝起きる習慣をつけることが最優先です。朝のリズムが整ってくると、自然と気持ちも安定しやすくなります。

3. 学校に関する不安を具体的にする

新学期が近づくと、子どもは漠然とした不安を感じやすくなります。しかし、その不安を「学校に行きたくない」という形でしか表現できないことが多いです。

そこで、「何が一番不安なのか?」を具体的にしていくことが大切です。

✔ 不安を具体化するための質問

  • 「先生との相性が心配?」
  • 「友達とうまくやれるか不安?」
  • 「授業についていけるかどうかが気になる?」

不登校の子どもは、「とにかく学校が怖い」という気持ちを持っていることが多いですが、その「怖さ」の正体を探ることで、具体的な対策を立てることができます。

例えば、「授業についていけるか不安」という場合は、最初の1週間は無理に授業を受けさせるのではなく、まずは登校して雰囲気に慣れることを目標にするといった調整が可能です。

また、「友達とうまくやれるか不安」という場合は、事前に学校の先生と相談し、サポートしてもらうという対応ができます。

まとめ

新学期は、不登校の子どもにとって大きな転機となる時期です。しかし、焦って登校を促してしまうと、かえって子どもにプレッシャーを与え、不登校が悪化することもあります。

  • 「頑張って行こうね」とプレッシャーをかけない
  • 生活リズムを少しずつ整える
  • 不安を具体化し、解決策を探る

こうしたポイントを意識しながら、子どものペースに寄り添っていくことが何よりも大切です。

母と娘の会話のイメージ

日常的にできる不登校対策

不登校の子どもが再び学校へ行くためには、日々の生活の積み重ねが重要になります。不登校の対応は「学校に行かせること」だけが目的ではなく、子どもが安心できる環境を整え、再登校に向けた準備をしていくことが大切です。

特に、日常的に意識してほしいのは次の3点です。

  1. 生活リズムを整えること
  2. 家族の時間を大切にすること
  3. 夫婦喧嘩に注意すること

これらは、すぐに効果が出るものではありません。しかし、時間をかけて意識していくことで、子どもが少しずつ前向きになり、「学校に行ってみようかな」と思える環境をつくることができます。では、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

1. 生活リズムを整えること

不登校の子どもは、学校に行かなくなることで昼夜逆転しやすくなります。朝起きる時間が遅くなると、自然と夜も眠れなくなり、生活リズムが崩れてしまいます。そして、「朝起きられないから学校に行けない」という状態が続くと、ますます不登校が長期化してしまうのです。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

① いきなり「早起きしなさい」と言わない
「明日からちゃんと朝7時に起きなさい!」と言っても、急に生活リズムを変えるのは難しいものです。いきなり理想の時間に戻そうとすると、子どもはプレッシャーを感じ、余計に朝起きられなくなってしまいます。

そこで、15分ずつ起きる時間を早めるなど、少しずつ調整していくのが効果的です。例えば、今朝9時に起きているなら、次の週は8時45分、その次の週は8時30分といった具合に、ゆるやかに改善していきましょう。

② 朝起きたらカーテンを開ける
人間の体内時計は、朝日を浴びることでリセットされる仕組みになっています。朝になったらカーテンを開けて日光を浴びるだけでも、少しずつ生活リズムを整える助けになります。

③ 昼間に軽い運動をする
不登校の子どもは家の中で過ごす時間が長くなりがちですが、日中に体を動かすことが夜の快眠につながります。散歩に誘ったり、買い物についてきてもらったりするだけでも、体内リズムが整いやすくなります。

④ 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす
スマホやゲームの長時間使用は、寝る時間が遅くなる原因の一つです。しかし、いきなり「夜のスマホは禁止!」とすると、かえって反発を招くこともあります。まずは「30分だけ短くする」など、少しずつ調整していくことを意識しましょう。

2. 家族の時間を大切にすること

不登校の子どもは、「学校に行っていない自分はダメなんじゃないか」と自己否定感を持ちやすくなります。そのため、「家では安心して過ごせる」と感じられるような家庭環境を作ることが大切です。

✔ 家族の時間を増やすための工夫

① 一緒に食事をする
家族そろって食事をする時間は、子どもが安心感を得る大切な時間になります。不登校の子どもは、食事の時間がバラバラになりがちですが、できる限り「一緒にご飯を食べる習慣」を作ることで、家庭内のつながりが深まります。

② 子どもが好きなことに親も関心を持つ
例えば、子どもがゲームやアニメに夢中になっているなら、「何をやってるの?」「一緒にやってみてもいい?」と興味を示してみるのも良い方法です。親が子どもの趣味に関心を持つことで、子どもは「自分のことを理解してくれている」と感じ、親子関係が良くなります。

③ 週末に軽いお出かけをする
遠くに行く必要はありません。近所の公園に散歩に行く、カフェでお茶をするなど、ちょっとした外出が気分転換になります。特に、長期間家にこもっていると気分が落ち込みやすくなるため、「学校に行く前に、まずは外に出ることに慣れる」という意味でも効果的です。


3. 夫婦喧嘩に注意すること

意外に思われるかもしれませんが、家庭内の雰囲気は、不登校の子どもの心理状態に大きな影響を与えます

✔ 子どもは親の雰囲気を敏感に感じ取る

子どもは、親の表情や言葉のトーンから、「お父さんとお母さんの仲が悪い」「家の中がピリピリしている」と感じ取ります。そして、それがストレスになり、不登校が長引いてしまうことがあります。

特に、親が夫婦喧嘩をしている場面を子どもが目にすると、次のような気持ちを抱くことがあります。

  • 「自分が不登校だから、親がケンカしているんじゃないか」(罪悪感)
  • 「家の中が居心地悪い」(安心感の欠如)
  • 「親に相談しづらい」(気持ちを話せなくなる)

これが積み重なると、子どもはますます閉じこもりがちになり、不登校の解決が遠のいてしまいます。

✔ 夫婦間の意見の違いを子どもの前で見せすぎない

不登校の対応について、夫婦で意見が違うこともあるでしょう。例えば、

  • 父親:「厳しくしないとダメだ」
  • 母親:「無理に行かせず、まずは見守るべきだ」

こうした意見の違いはよくあります。しかし、それを子どもの前でぶつけ合うと、子どもは「どちらの親の言うことを聞けばいいの?」と混乱してしまいます。

夫婦で意見が合わないときは、子どものいない場所で話し合い、意見のすり合わせをすることを心がけましょう。

まとめ

日常的な積み重ねが、不登校の改善につながります。

  • 生活リズムを少しずつ整える(急に変えようとせず、徐々に調整)
  • 家族の時間を大切にし、安心できる環境を作る
  • 夫婦喧嘩を避け、子どもに不安を与えないようにする

子どもが学校に行くためには、まず「家が安心できる場所であること」が何よりも大切です。できることから少しずつ始め、子どもが「学校に行ってみようかな」と思える環境を整えていきましょう。


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【2023年度】不登校に関する政府統計データ(文部科学省)

不登校の文部科学省統計データ見出し

※データソース:令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
※下記のデータを引用される場合は、引用元として当URLを記載ください。


目次


1. 小・中学校における理由別長期欠席者数の推移 | 2010〜2023年度

年度在籍者数不登校割合増減率病気割合増減率経済的理由その他割合増減率割合増減率
201010,566,028 119,891 1.13%***36,421 0.34%***129 20,929 0.20%***177,370 1.68%***
201110,477,066 117,458 1.12%▲ 2.036,523 0.35%0.3119 22,573 0.22%7.9176,673 1.69%▲ 0.4
201210,333,629 112,689 1.09%▲ 4.138,916 0.38%6.691 24,073 0.23%6.6175,769 1.70%▲ 0.5
201310,229,375 119,617 1.17%6.137,431 0.37%▲ 3.885 24,187 0.24%0.5181,320 1.77%3.2
201410,120,736 122,897 1.21%2.737,851 0.37%1.164 24,239 0.24%0.2185,051 1.83%2.1
201510,024,943 125,991 1.26%2.541,064 0.41%8.549 27,794 0.28%14.7194,898 1.94%5.3
20169,918,796 133,683 1.35%6.142,813 0.43%4.329 29,768 0.30%7.1206,293 2.08%5.8
20179,820,851 144,031 1.47%7.745,362 0.46%6.027 27,620 0.28%▲ 7.2217,040 2.21%5.2
20189,730,373 164,528 1.69%14.249,624 0.51%9.424 25,863 0.27%▲ 6.4240,039 2.47%10.6
20199,643,935 181,272 1.88%10.246,734 0.48%▲ 5.830 24,789 0.26%▲ 4.2252,825 2.62%5.3
20209,578,674 196,127 2.05%8.244,427 0.46%▲ 4.933 26,255 0.27%5.9287,747 3.00%13.8
20219,529,152 244,940 2.57%24.956,959 0.60%28.219 52,516 0.55%100.0413,750 4.34%43.8
20229,442,083 299,048 3.17%22.175,597 0.80%32.736 62,307 0.66%18.6460,648 4.88%11.3
20239,321,243 346,482 3.72%15.9105,838 1.14%40.034 41,086 0.44%▲ 34.1493,440 5.29%7.1
(注1) 在籍者数は、2023年5月1日現在
(注2) 調査対象:国公私立小・中学校(小学校には義務教育学校前期課程,中学校には義務教育学校後期課程及び中等教育学校前期課程を含む。以下同じ。)
(注3) 「児童・生徒指導要録」の「欠席日数」欄の合計の日数により,年度間に30日以上欠席した児童生徒数を理由別に調査。なお,「児童・生徒指導要録」の「出欠の記録」欄のうち,「備考」欄に,校長が出席扱いとした日数が記載されている場合は,その日数についても欠席日数として含める。

グラフ

小・中学校における理由別長期欠席者数の推移-政府統計

考察

日本の小・中学校における長期欠席者数の推移を分析した結果、特に注目すべきは不登校による欠席者数の増加です。統計によれば、不登校は長期欠席の主要な理由であり、年度ごとに一定の増減を繰り返しながらも全体的には増加傾向を示しています。一方で、病気や経済的理由による欠席者数は比較的安定しており、その他の理由も緩やかに増加している状況です。

まず、不登校が増加している背景として、現代の子どもたちを取り巻く環境の変化が挙げられます。教育現場ではいじめや友人関係の問題、学業への過度なプレッシャーが要因となるケースが多く報告されています。また、家庭環境の変化や、インターネットやSNSの普及により、人間関係が複雑化していることも要因と考えられます。さらに、コロナ禍における生活の変化が子どもたちの精神的な負担を増大させ、不登校の増加に拍車をかけた可能性があります。

病気による欠席は一定の割合を保ちながらも、年によって多少の増減があります。これは、感染症の流行や医療の進展による影響を反映していると考えられます。特に季節性のインフルエンザや、新型コロナウイルスの影響が統計に表れている可能性があります。

経済的理由による欠席は全体として非常に少なく、横ばいの状態が続いています。これは、日本の公教育制度が比較的安価であることや、義務教育期間中において学費負担が軽減されていることが要因と考えられます。しかし、少数ながらも経済的理由による欠席が存在するという事実は、貧困家庭が抱える課題の深刻さを浮き彫りにしています。

その他の理由による欠席者数は緩やかな増加を示しています。このカテゴリには、家族の事情や特別な教育的ニーズ、児童・生徒本人の個別の状況が含まれると推測されます。


2. 不登校児童生徒の欠席期間別実人数 | 2023年度

学校種別国公私立不登校児童生徒数欠席30~49日割合欠席50~89日割合欠席90日以上で出席11日以上割合欠席90日以上で出席1~10日割合欠席90日以上で出席0日割合
小学校国立366 124 33.9%122 33.3%90 24.6%18 4.9%12 3.3%
小学校公立129,410 38,331 29.6%33,802 26.1%47,374 36.6%6,568 5.1%3,335 2.6%
小学校私立594 185 31.1%195 32.8%190 32.0%20 3.4%0.7%
小学校130,370 38,640 29.6%34,119 26.2%47,654 36.6%6,606 5.1%3,351 2.6%
中学校国立979 227 23.2%225 23.0%457 46.7%53 5.4%17 1.7%
中学校公立207,013 36,666 17.7%42,284 20.4%102,529 49.5%18,366 8.9%7,168 3.5%
中学校私立8,120 1,893 23.3%2,036 25.1%3,484 42.9%512 6.3%195 2.4%
中学校216,112 38,786 17.9%44,545 20.6%106,470 49.3%18,931 8.8%7,380 3.4%
小・中合計国立1,345 351 26.1%347 25.8%547 40.7%71 5.3%29 2.2%
小・中合計公立336,423 74,997 22.3%76,086 22.6%149,903 44.6%24,934 7.4%10,503 3.1%
小・中合計私立8,714 2,078 23.8%2,231 25.6%3,674 42.2%532 6.1%199 2.3%
小・中合計346,482 77,426 22.3%78,664 22.7%154,124 44.5%25,537 7.4%10,731 3.1%

考察

2023年度の日本の小中学校における不登校の総数は346,482人に達し、特に中学校の不登校の数は216,112人と、全体の6割以上を占めています。この数字が指し示すのは、非常に多くの学生が学校との関係が弱まっている実態です。

「不登校」と一句に言っても、具体的な状況は異なります。小中合計でみると、最も多いのは「欠席90日以上」の154,124人で、この中でも「出席0日」という、学校との縁が完全に切れた状況の学生は10,731人にのぼります。

中学校では特に長期的な欠席が盛んでおり、「欠席90日以上」は106,470人に達します。一方、小学校では「欠席30〜89日」の中期的な欠席が目立つのが特徴です。

不登校の背景には、さまざまな要因が存在します。学校内の人間関係やいじめなどの問題に加え、家庭の状況や学生自身の心理的ケアの問題が見過ごされないことが必要です。これに加え、コロナ禍の影響による学校生活の調和が困難になった事例も増えています。


3-1. 小中学校別・不登校児童生徒について把握した事実 | 2023年度

事実小学校割合中学校割合
いじめの被害の情報や相談があった。2,350 1.8%2,113 1.0%
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった。14,951 11.5%31,021 14.4%
教職員との関係をめぐる問題の情報や相談があった。5,735 4.4%4,548 2.1%
学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた。19,124 14.7%33,423 15.5%
学校のきまり等に関する相談があった。 2,622 2.0%4,223 2.0%
転編入学、進級時の不適応による相談があった。4,288 3.3%9,693 4.5%
家庭生活の変化に関する情報や相談があった。12,130 9.3%12,822 5.9%
親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった。22,116 17.0%20,854 9.6%
生活リズムの不調に関する相談があった。31,937 24.5%47,701 22.1%
あそび、非行に関する情報や相談があった。2,992 2.3%8,630 4.0%
学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった。42,014 32.2%69,617 32.2%
不安・抑うつの相談があった。29,549 22.7%50,643 23.4%
障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった。11,454 8.8%12,676 5.9%
個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。11,096 8.5%11,871 5.5%
不登校児童生徒数130,370 100%216,112 100%

(注1) 複数選択可。「1.長期欠席者の状況」における「不登校」と回答した不登校児童生徒全員につき,当てはまるものをすべて回答。
(注2)「個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。」は、障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援以外の個別の配慮を指す。

考察

2023年度の小中学校における不登校問題について文部科学省が発表した統計によれば、小学校と中学校で異なる要因が見られるものの、共通していじめ、友人関係、教職員との関係、学業不振が主な要因として挙げられています。

まず、いじめの被害に関するデータを見ると、小学校で2,350件(1.8%)、中学校で2,113件(1.0%)が報告されています。いじめは児童生徒の精神的な健康に深刻な影響を及ぼし、不登校の引き金となることが多いです。学校現場では防止策が講じられているものの、根本的な解決にはまだ課題が残されています。

次に、友人関係をめぐる問題が小学校で14,951件(11.5%)、中学校で31,021件(14.4%)報告されています。これは、不登校児童生徒の最大の要因となっており、特に中学校では割合が高くなっています。思春期特有の人間関係の複雑さやソーシャルメディアの普及が、この背景にあると考えられます。

また、教職員との関係をめぐる問題も無視できません。小学校で5,735件(4.4%)、中学校で4,548件(2.1%)の事例がありました。生徒と教師の間の信頼関係が損なわれると、生徒が学校に通う意欲を失う原因となります。教職員の研修やコミュニケーションの向上が必要です。

最後に、学業の不振や宿題の未提出は、小学校で19,124件(14.7%)、中学校で33,423件(15.5%)と最多の報告数を記録しました。学力格差や学習習慣の欠如が、この課題の背後にある可能性があります。個別指導や学習支援体制の充実が求められます。


3-2. 小中学校、国公私立別・不登校児童生徒について把握した事実 | 2023年度

国公私立小学校・国立割合小学校・公立割合小学校・私立割合中学校・国立割合中学校・公立割合中学校・私立割合
いじめの被害の情報や相談があった。36 9.8%2,264 1.7%50 8.4%21 2.1%1,967 1.0%125 1.5%
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった。52 14.2%14,795 11.4%104 17.5%151 15.4%29,870 14.4%1,000 12.3%
教職員との関係をめぐる問題の情報や相談があった。37 10.1%5,643 4.4%55 9.3%20 2.0%4,365 2.1%163 2.0%
学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた。43 11.7%18,988 14.7%93 15.7%162 16.5%31,735 15.3%1,526 18.8%
学校のきまり等に関する相談があった。 14 3.8%2,589 2.0%19 3.2%18 1.8%4,059 2.0%146 1.8%
転編入学、進級時の不適応による相談があった。1.6%4,249 3.3%33 5.6%28 2.9%9,216 4.5%449 5.5%
家庭生活の変化に関する情報や相談があった。35 9.6%12,025 9.3%70 11.8%79 8.1%12,317 5.9%426 5.2%
親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった。63 17.2%21,920 16.9%133 22.4%140 14.3%19,847 9.6%867 10.7%
生活リズムの不調に関する相談があった。110 30.1%31,666 24.5%161 27.1%314 32.1%44,795 21.6%2,592 31.9%
あそび、非行に関する情報や相談があった。10 2.7%2,977 2.3%0.8%16 1.6%8,527 4.1%87 1.1%
学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった。110 30.1%41,730 32.2%174 29.3%285 29.1%67,207 32.5%2,125 26.2%
不安・抑うつの相談があった。106 29.0%29,284 22.6%159 26.8%207 21.1%48,387 23.4%2,049 25.2%
障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった。38 10.4%11,381 8.8%35 5.9%40 4.1%12,246 5.9%390 4.8%
個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。33 9.0%10,979 8.5%84 14.1%68 6.9%11,341 5.5%462 5.7%
不登校児童数366100%129,410 100%594100%979100%207,013 100%8,120 100%

(注1) 複数選択可。「1.長期欠席者の状況」における「不登校」と回答した不登校児童生徒全員につき,当てはまるものをすべて回答。
(注2)「個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった。」は、障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援以外の個別の配慮を指す。

考察

文部科学省の統計によると、2023年度における小中学校の不登校児童生徒数は引き続き高水準で推移しています。特に、公立小中学校における不登校児童生徒の数が圧倒的に多く、いじめや友人関係、教職員との関係といった問題が原因として浮き彫りになりました。

公立小学校では約12万9千人、公立中学校では約20万7千人が不登校となっています。この数字は、全体の大多数を占めており、同じく国立や私立学校と比較しても非常に高い割合です。特に中学校においては、不登校の背景にいじめが関連しているケースが顕著であり、その割合は14.4%になります。また、友人関係をめぐる問題も中学校で15.4%と高く、小学校と比較して生徒同士の関係性がより複雑化していることが伺えます。

一方で、私立学校における不登校の割合は公立と比較して低い傾向が見られます。例えば、私立小学校では不登校割合が1.7%に留まっており、中学校でも1.5%と抑えられています。この背景には、私立学校が提供するきめ細やかな指導や少人数制、家庭と学校の緊密な連携が寄与している可能性が考えられます。


4. 不登校児童生徒への指導結果 | 2023年度

学校種別国立・不登校児童生徒数国立・指導の結果、登校できた児童生徒国立・指導中の児童生徒公立・不登校児童生徒数公立・指導の結果、登校できた児童生徒公立・指導中の児童生徒私立・不登校児童生徒数私立・指導の結果、登校できた児童生徒私立・指導中の児童生徒計・不登校児童生徒数計・指導の結果、登校できた児童生徒計・指導中の児童生徒        
小学校366 129 237 129,410 39,553 89,857 594 196 398 130,370 39,878 90,492 
割合100.0%35.2%64.8%100.0%30.6%69.4%100.0%33.0%67.0%100.0%30.6%69.4%
中学校979 374 605 207,013 62,083 144,930 8,120 2,332 5,788 216,112 64,789 151,323 
割合100.0%38.2%61.8%100.0%30.0%70.0%100.0%28.7%71.3%100.0%30.0%70.0%
1,345 503 842 336,423 101,636 234,787 8,714 2,528 6,186 346,482 104,667 241,815 
割合100.0%37.4%62.6%100.0%30.2%69.8%100.0%29.0%71.0%100.0%30.2%69.8%

考察

2023年度の政府統計データによれば、公立学校では不登校児童生徒数が圧倒的に多く、全体の大部分を占めています。一方で、国立学校における不登校児童生徒数は小学校で366人、中学校で979人と公立に比べて少数ですが、指導の結果登校できた割合が高いことが注目されます。具体的には、国立小学校では35.2%、中学校では38.2%が指導の結果登校に至っています。

一方、公立学校では登校できた児童生徒の割合が全体で30.2%にとどまり、指導が継続中の児童生徒が69.8%を占めています。この差は、学校種別ごとの支援体制やリソースの違いを反映している可能性があります。国立学校では児童生徒数が少ない分、個別指導が行き届きやすい環境にあると考えられる一方、公立学校では多数の児童生徒を対象に支援を行うため、対応が困難になるケースが多いと推測されます。

また、不登校児童生徒の増加傾向は、教育現場における支援の課題を如実に示しています。たとえば、2023年度のデータでは、小学校よりも中学校で不登校の割合が高く、特に思春期の子どもたちに対する精神的なサポートが必要とされています。

これらのデータから読み取れるのは、不登校問題において「一律の解決策」が存在しないという現実です。国公私立それぞれの状況や特徴に応じた柔軟な対応が求められます。同時に、指導の効果を最大化するためには、学校だけでなく地域や家庭との連携が不可欠です。

さらに、国公私立間のデータを比較することで、不登校児童生徒の支援策における成功事例や課題点が浮き彫りになります。たとえば、国立学校の指導成功率の高さは、他の学校種別においても参考になる可能性があります。一方、公立学校では、より広範囲の児童生徒に対応するためのリソース増強が急務です。


5. 都道府県別・理由別長期欠席者数 | 2023年度

都道府県在籍児童生徒数不登校うち,50日以上の欠席うち,90日以上の欠席うち,出席10日以下うち,出席0日病気経済的理由その他
北海道344,81414,36111,9728,8631,7364744,469287319,705
青森県80,9782,8272,0611,437200518622833,774
岩手県82,6852,4591,9001,258191415520723,083
宮城県167,8127,8405,7963,8536261242,190047810,508
秋田県57,6101,9471,5791,1242225962901562,732
山形県73,8632,3391,7181,221168484800962,915
福島県128,9384,3383,4952,5434261191,45023886,178
茨城県212,7767,9876,3204,4397441804,35821,20013,547
栃木県142,8975,8504,6313,2836181921,73206098,191
群馬県140,4824,7803,9102,8555441291,10602386,124
埼玉県541,48117,05413,62310,0441,9486087,03302,99827,085
千葉県458,00114,59211,3488,1721,5404977,46412,78424,841
東京都950,06634,19927,02319,7404,3721,34510,43014,84249,472
神奈川県668,64324,63119,41613,9302,6397807,04912,77934,460
新潟県153,8195,6174,2312,89344213365111046,373
富山県71,5672,6411,9911,3922408236802163,225
石川県84,5463,3362,5831,8274401725280803,944
福井県58,8541,5671,2599141373259601312,294
山梨県57,6792,2611,7601,2392186764204203,323
長野県152,3417,0605,0533,3765001441,11704958,672
岐阜県151,9325,7414,4643,0914741471,50608828,129
静岡県271,66011,7428,6596,0061,2623321,765660714,120
愛知県604,14024,05117,56011,9052,0527133,22432,16729,445
三重県133,6114,6963,6942,5584421241,36205596,617
滋賀県119,4484,0873,0982,031266641,19507856,067
京都府184,4396,2105,0013,5376171831,36911,0538,633
大阪府634,35823,00618,34913,1152,64285610,58503,96337,554
兵庫県416,31916,28312,0218,4971,7514545,50802,62924,420
奈良県99,3113,6912,8752,076380951,81408886,393
和歌山県65,9152,4051,9031,3202489730301522,860
鳥取県42,1131,6561,2928811445939901972,252
島根県50,7332,3151,6581,156213731491922,557
岡山県145,2404,1733,4322,5114791362,85001,1788,201
広島県219,5758,7426,6894,6349723222,07301,13311,948
山口県95,5753,5702,7641,92143513465812144,443
徳島県50,6191,7621,298908203672670632,092
香川県72,6112,2051,7731,2192657558313693,158
愛媛県98,0353,4752,9142,1784431411,1513934,722
高知県46,7381,6041,3189471863875713392,701
福岡県418,48618,14813,7769,4981,7914804,99611,87225,017
佐賀県68,2372,1801,8111,3263108868201132,975
長崎県101,7813,6922,9232,03736010480201714,665
熊本県143,4245,8484,6193,1525241571,82923798,058
大分県85,1363,1582,5201,8144008393802374,333
宮崎県88,3282,6912,3231,7453871497390963,526
鹿児島県132,6714,6523,7362,6375151092,06404317,147
沖縄県150,9567,0134,9173,2895561742,56421,38210,961
全国9,321,243346,482269,056190,39236,26810,731105,8383441,086493,440

考察

2023年度における都道府県別・理由別の長期欠席情勢を表したデータを解析すると、日本全国の情勢が見えてきます。最初に全国の評価として、在籍児童生徒数約930万人の中、不登校者数は約35万人に上り、不登校率は約3.7% となります。更に、50日以上の欠席者が約27万人、そのうち、90日以上の欠席者は約20万人と、長期の欠席者の情勢が大きな課題であることを示しています。

欠席の理由に目を向けると、病気による欠席者は約10万人にのぼり、全体の長期欠席の大きな割合を占めています。一方で経済的理由での欠席者はごく少なく、全国で34人という結果が出ています。

地域別の調査では、不登校率が最も高いのは宮城県で、4.67%を超えています。これは全国平均を大きく上回っています。一方で、不登校率の地域差は解釈されておらず、地域独特の要因が含まれていると考えられます。たとえば、経済的状況、社会的環境や地域の協力体制など、記録には表れない要素が伸びている可能性が考えられます。

自閉スペクトラム症と不登校の関係とは?

自閉スペクトラム症と不登校の関係・対処-記事の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さまをお持ちの親御さんにとって、この状況は決して簡単なものではなく、日々さまざまな思いや葛藤を抱えておられることでしょう。そのような中で、「自閉スペクトラム症(ASD)」という特性が、不登校の背景にどのように関与しているのかを深掘りしながら、適切な対処法についてお伝えできればと思います。

参考:文部科学省「自閉症・情緒障害
参考:文部科学省「誰一人取り残さない教育について

自閉スペクトラム症と不登校の複雑なつながり

自閉スペクトラム症という言葉に触れると、ある種の誤解や偏見が伴うことがあります。しかし、ASDは決して「障害」として固定的に捉えるべきではなく、一人ひとりの異なる特性としての多様性の一環と考えることが重要です。その特性が、学校生活という集団環境において、時として困難さを生むことがあります。不登校はその結果として表面化しているにすぎません。

ASDの子どもたちは、主に以下のような困難を抱えることが多いです:

  • 感覚過敏:教室内の騒音、他人の話し声、蛍光灯の明るさなどが過剰にストレスとなる。
  • 社会的コミュニケーションの課題:友達との会話がうまくいかない、先生の指示の真意が理解しづらい。
  • ルールや予測可能性のこだわり:予定外の変更や、曖昧な指示に対する過剰な不安。

これらの要因が重なり、結果として学校への不安感や拒否感を強めてしまうのです。加えて、「理解されない」という感覚が強まると、自尊心が大きく傷つき、不登校が長期化する可能性が高まります。

保護者としての最初の一歩:気づきと受け入れ

まず親御さんにお伝えしたいのは、ASDの特性に由来する不登校である可能性を冷静に見極めることです。お子さまが学校に行けない理由を探るとき、多くの親御さんは「甘え」「怠け」という観点に目が行きがちです。しかし、ASDの特性が絡んでいる場合、こうした見方は当てはまらないどころか、かえってお子さまを追い詰めてしまう結果になります。

例えば、お子さまが以下のようなサインを見せている場合、ASDの可能性を考慮することが有益です:

  • 朝起きるたびに頭痛や腹痛を訴える:これはストレスが身体的な症状として現れることが多いASDの特徴です。
  • 細かいルールや順序にこだわる:例えば、朝食の順番が違うだけでパニックになることもあります。
  • 学校に行く以前に、準備段階で極度に疲弊する:制服を着る、教科書をそろえるといった日常的な準備が大きなハードルになります。

これらの特性を理解することで、「子どもに何が起きているのか」という視点を持つことができます。そして、お子さまの行動が「学校に行きたくない」ではなく、「行けない」という状態にあることを認識することが、最初の一歩です。

再登校の第一歩を支える親のアプローチ

ASDのお子さまにとって、再登校への道のりは、短期間で解決できるものではありません。ただし、親御さんのサポート次第でそのプロセスが大きく変わることも事実です。重要なのは、以下のポイントを意識したケアを行うことです。

  1. 予測可能性を高める環境作り
    お子さまが安心して日常を過ごせるよう、生活の中で予測可能性を意識的に高めることが大切です。例えば、毎日のスケジュールを視覚的に示したり、事前に次の日の予定を詳しく伝えたりする工夫が有効です。
  2. 小さな成功体験を積み重ねる
    お子さまが「できた」という実感を持つことが再登校への第一歩です。たとえば、登校ではなく、近所の公園に出かけることから始めるのも一つの方法です。その際、無理のない範囲で「ここまでできた」という達成感を味わえる工夫をしてください。
  3. 「励まし」ではなく「具体的なサポート」を
    「頑張って」「行けるよ」という励ましは、ASDのお子さまにとって逆効果になる場合が多いです。代わりに、「今日はランドセルを背負ってみよう」「学校の門の前まで行ってみよう」といった、具体的な行動目標を一緒に考える方が実際的です。
微笑む子どものイメージ

ASD特有のサポートが必要な理由

再登校の支援において、ASDの特性に寄り添ったアプローチが必要不可欠です。フリースクールや特別支援学級などの選択肢も考えられますが、これらはASDのお子さまにとっては慎重に検討すべき場合があります。ASDの特性を持つお子さまは、新しい環境への適応に時間がかかったり、特定の刺激に過敏に反応したりすることが多いため、必ずしもこれらの選択肢がストレス軽減や不安解消に繋がるとは限らないのです。

例えば、フリースクールは自由度が高い反面、活動内容が予測しにくかったり、集団の中での柔軟な対応が求められたりするため、ASDのお子さまにとって混乱や負担を増やす場合があります。また、特別支援学級もASDのお子さま全員に適しているわけではなく、他の特性を持つ子どもとのやり取りが逆にストレスとなることもあります。

そのため、ASDのお子さまには、特性やニーズに応じた個別の支援が適しています。特化したサポートを提供できる専門機関や家庭での計画的な支援の方が、再登校への道をより確実にする可能性が高いと言えます。

不登校が長期化した場合のリスクとその回避法

不登校が長期化することによるリスクは、単に学業の遅れにとどまりません。特に自閉スペクトラム症(ASD)のお子さまの場合、長期間の不登校がさらなる心理的な負担や社会的な孤立感を生む可能性があります。この状態を放置すると、「学校への拒否感」が強まり、再登校へ必要なエネルギー(閾値)が飛躍的に上昇してしまいます。

長期化に伴う主なリスクには以下のようなものがあります:

  1. 自己評価の低下
     ASDの特性を持つお子さまは、もともと自己評価を下げやすい傾向があります。「学校に行けない自分」という感覚が長期間続くことで、「自分には価値がない」「自分は周りと違う」といった否定的な自己イメージが固定化される恐れがあります。
  2. 社会的スキルの発達の遅れ
     学校生活は学業だけでなく、他者との関わり方を学ぶ重要な場です。不登校が続くと、日常的なコミュニケーションの機会が減少し、友達や先生との接し方がますます分からなくなってしまいます。
  3. 新たな心理的問題の発生
     長期間の不登校による孤立感は、さらに不安症やうつ症状を引き起こす可能性があります。特にASDの子どもは感覚的なストレスに敏感なため、孤立による不安がより深刻化しやすい傾向があります。

リスク回避のための親の役割

これらのリスクを避けるためには、親御さんの積極的なサポートが必要不可欠です。具体的には、次のような取り組みを意識してみてください。

  1. 日常生活での「繋がり」を意識する
     たとえ学校に行けなくても、他者と接する機会を意図的に作ることが大切です。親御さん自身が積極的に子どもの話を聞き、共感を示すことも「繋がり」を育む第一歩になります。また、学校の先生との継続的な連携を意識しましょう。
  2. 子どもの「やりたいこと」に寄り添う
     ASDのお子さまは特定の興味や得意分野に没頭する傾向があります。その興味を活かして学びや社会との接点を増やすことができれば、不登校中でも成長の機会を確保できます。例えば、プログラミングやアート、読書など、興味に基づいた学びを家庭内でサポートするのも効果的です。
  3. 早期の専門支援の活用
     ASDを伴う不登校では、親御さんだけで解決しようとするのは難しい場合があります。再登校への具体的なステップについて0から取り組むのではなく、実績のあるToCoのようなプロフェッショナルの力を借りる選択肢も検討ください。支援を受けることで、お子さまが感じる安心感も高まり、親御さんご自身の負担も軽減されます。

ASDのお子さまの感情や思考パターンを理解する

もしASDのお子さまが不登校になった場合、その感情や思考パターンを深く理解することが解決の糸口となります。ASDの特性を持つお子さまの多くは、表面的な行動の裏に繊細で複雑な感情を抱えています。これを理解しないまま表面的な対処に終始すると、かえって逆効果となることも少なくありません。

「行けない」気持ちの背景にあるもの

ASDのお子さまが学校に行けない理由はさまざまですが、主に以下のような心理的な背景が考えられます:

  1. 過去の失敗体験がトラウマ化している
     例えば、授業中に自分だけ答えられなかった、友達とのやりとりで誤解が生じた、先生から厳しい指摘を受けたといった経験が、ASDのお子さまにとって非常に大きなトラウマとなることがあります。
  2. 「完璧にやらなければならない」という思い込み
     ASDの特性上、「こうあるべき」という思い込みが強い場合があります。そのため、ほんの少しのミスや変更で「自分はダメだ」という感覚に陥りやすいのです。
  3. 感覚的なストレスの蓄積
     教室の騒がしさ、体育の時間の匂い、休み時間の喧騒など、通常の子どもにとって気にならない刺激が、ASDのお子さまには大きなストレスとなっていることがあります。

これらの感情や思考パターンを理解することで、親御さんは「なぜ行けないのか」の理由をより正確に把握することができます。そして、これに基づいた具体的な対応策を取ることが可能になるのです。

「行ける」を引き出すための心がけ

ASDのお子さまにとって、再登校への道は段階的なプロセスが必要です。以下の心がけがその助けになります。

  1. 小さな一歩を大切にする
     最初の目標を「学校に行くこと」ではなく、「ランドセルを準備する」「学校の周りを歩いてみる」といった小さなステップに設定してください。その成功を褒めることで、次の一歩へのモチベーションが生まれます。
  2. 感情を否定しない
     お子さまが「怖い」「行きたくない」と言ったとき、その感情を否定せず、「そう感じているんだね」と受け止めることが重要です。それにより、お子さまが安心感を得て、「次はどうすればいいか」を一緒に考えることが可能になります。
  3. 柔軟な学び方を取り入れる
     ASDのお子さまは学校の形態に馴染みにくい場合もありますが、自宅での学びや趣味を通じた知識の吸収には興味を持つことがあります。お子さまの特性や興味を活かした活動(オンライン学習、図鑑での調べ物、実験キットの使用など)を日常生活に取り入れることで、学びの楽しさを実感でき、学校への興味を少しずつ取り戻すきっかけになります。

不登校や自閉スペクトラム症を一緒に乗り越えるためには、まずお子さまを理解し、寄り添い、専門家のサポートを受けながら段階的に取り組むことが大切です。

まとめ

要点必要な行動
ASDは不登校の背景に影響を与える特性があるお子さまの感覚過敏やコミュニケーションの課題を理解し、行動の理由を冷静に見極める。
不登校が長期化すると心理的負担が増大する早期に適切な支援を受け、子どもに無理のない範囲で社会との接点を作る。
小さな成功体験が再登校の鍵になるランドセルの準備や学校周辺を歩くなど、小さな目標を設定し、達成を一緒に喜ぶ。
親の具体的なサポートが重要抽象的な励ましではなく、具体的な行動計画や段階的なステップを共有する。

親御さんにとって、不登校の問題は非常に辛いものかもしれません。しかし、焦らず、正しいステップを踏めば必ず解決への道は開けます。そして、その道を一緒に歩む存在として、私たちToCoがいます。ぜひ、一人で抱え込まずに、いつでも私たちを頼っていただければと思います。不登校の問題に向き合い、解決に向けた一歩を共に歩めることを願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

自閉症と診断された子どもへの不登校対策とは?

自閉症と診断された子どもに向けた不登校対策の見出し

目次


自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された子どもたちは、その独特な感性や考え方ゆえに、学校生活において困難を抱えることが少なくありません。その結果、不登校という形でその困難が表面化することがあります。しかし、不登校は単なる「学校に行きたくない」という一言で片付けられるものではありません。その背後には、本人が抱える深い不安、自己肯定感の低下、さらには環境とのミスマッチが潜んでいます。

私は児童心理カウンセラーとして、これまで多くの不登校の子どもたちと向き合ってきました。その中で感じるのは、ただ「見守るだけ」では、子どもが抱える問題の根本に気づかないまま、時間だけが過ぎてしまうこともあるということです。特に自閉症の特性を持つ子どもたちの場合、その特性に応じた適切なアプローチが不可欠です。
本稿では、自閉症と診断された子どもが不登校に陥った場合に、親ができること、そして環境として提供できるサポートについて具体的に述べていきます。

参考:文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引

自閉症の特性が学校生活に与える影響

自閉症スペクトラム障害の特性は、社会性の発達の違い、コミュニケーションの苦手さ、そして感覚過敏や興味の偏りなど、多岐にわたります。これらの特性は、学校という集団生活において顕著に影響を及ぼします。

例えば、授業中に周囲の子どもたちが笑い合う声や教室に響くざわめきが、耳を覆いたくなるほどのストレスを引き起こすことがあります。さらに、教員や友人とのコミュニケーションにおいて、表情やニュアンスを読み取ることが難しい場合、誤解される場面も少なくありません。こうした日々のストレスや挫折感が積み重なった結果、「もう学校に行きたくない」と子ども自身が心を閉ざしてしまうのです。

特に、小学生や中学生という多感な時期には、周囲からの評価や仲間意識が重要な意味を持ちます。しかし、自閉症の特性を持つ子どもたちは、自分をうまく表現できず、その結果「変わった子」「空気が読めない子」として距離を置かれてしまうこともあります。親としては、こうした子どもの状況を的確に把握し、「何が学校で起こっているのか」を一緒に探る必要があります。

親が最初にすべきこと:「見守る」から「理解する」へ

不登校に陥った子どもを前に、多くの親御さんが最初に抱く感情は、驚きや混乱です。そして、「子どもを信じて、学校に行けるようになるまで見守ろう」と思う方も多いでしょう。しかし、不登校が始まったばかりの段階で、ただ見守るだけでは状況が悪化することがあります。

自閉症の特性を持つ子どもたちは、自分の気持ちを言葉にするのが得意ではありません。そのため、不登校という行動の裏に隠された原因を言語化することが難しいのです。このとき、親が「ただ待つ」のではなく、「なぜこの子は学校に行きたくないのか」を具体的に考える姿勢を持つことが重要です。

例えば、子どもの口から「友達が怖い」といった言葉が出た場合、それを表面的な問題として捉えず、深掘りして考える必要があります。「友達が怖い」という言葉の裏には、次のような理由が隠れていることがあります。

  • 過去に些細なことでからかわれた経験がトラウマになっている。
  • 友達と会話する際に、適切なタイミングで話を切り出せず、孤立感を感じている。
  • そもそも友達の言葉の意味を正確に理解できず、誤解が生じている。

こうした理由を特定することで、適切な支援策を講じることが可能になります。

学校との連携:情報共有と環境調整の重要性

自閉症の特性を持つ子どもが不登校になった場合、学校との密な連携が欠かせません。しかし、ここで一つ強調したいのは、「学校任せ」にしないということです。学校側も、自閉症の特性に関する専門的な知識を十分に持っているとは限らないため、親が積極的に情報を提供し、協力を求める必要があります。

例えば、以下のような情報を学校と共有することで、子どもにとって安心できる環境を整えることができます。

  • 子どもの感覚過敏や特定の状況で感じるストレスについて。
  • 子どもが安心して過ごせるスペースや時間について。
  • コミュニケーションが苦手な場面での適切なサポート方法。

また、学校の環境を調整するために、以下のような工夫が有効です。

  1. リフレッシュルームの活用
     感覚過敏を持つ子どもにとって、休憩できる専用のスペースを設けることは非常に効果的です。こうしたスペースで一定時間リセットできることで、教室に戻るエネルギーが回復します。
  2. 特別支援教室の利用
     場合によっては、特別支援教室で学ぶことで、学習のペースを調整したり、少人数環境で安心感を得られることもあります。
  3. 個別対応プランの作成
     学校側と協力して、子どもにとって無理のないスケジュールや目標を設定することが重要です。

家庭での支援:安心感と挑戦のバランス

家庭は子どもにとって最も安心できる場所であるべきですが、同時に、適度な挑戦を与える場でもあるべきです。ここで重要なのは、「安心感」と「挑戦」のバランスを取ることです。

例えば、不登校が続いている子どもに対して、「次の日曜日に一緒に近所の公園に行こう」というような小さな目標を提案することが考えられます。このような目標を達成することで、子どもが「自分にもできる」という自己肯定感を少しずつ取り戻していくことができます。

また、自閉症の特性を持つ子どもにとっては、日々の生活リズムを整えることも非常に重要です。不規則な生活は、不安感を増幅させ、不登校の状況を悪化させる原因となり得ます。例えば、以下のような工夫を取り入れると良いでしょう。

  • 毎日同じ時間に起床し、食事を摂る習慣を作る。
  • 1日のスケジュールを視覚的に示し、次に何をするのかを明確にする。
  • 不安を感じたときにリラックスできる方法(深呼吸やお気に入りの音楽を聞くなど)を一緒に探す。
子どもとのハグのイメージ

カウンセリングの活用:第三者の視点からのアプローチ

最後に、不登校が長期化している場合や、親子だけでは解決が難しいと感じた場合には、カウンセリングを活用することをお勧めします。カウンセラーは、第三者の視点から問題を整理し、子どもや親にとっての適切な解決策を提案します。

カウンセリングの中では、子どもが自分の感情を表現しやすい方法(絵や言葉、行動など)を用いることができます。また、親自身が抱える不安や葛藤についても話すことができ、子どもとの向き合い方を見直すきっかけになることもあります。

おわりに

自閉症と診断された子どもが不登校になる背景には、多くの要因が絡み合っています。その中で、親が子どもの特性を理解し、適切な環境を整えることが、最も重要な第一歩です。そして、そのプロセスにおいては、「ただ見守る」だけではなく、積極的に動き出す勇気が求められます。

不登校という状況はつらい状況ですが、それをきっかけに子どもの特性や本質を深く知ることで、親子関係がより強固なものになる可能性も秘めています。一緒に解決策を見つけていくことで、子どもにとって安心できる未来を築いていく可能性を諦めないでください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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