はじめに:「解決」を求める気持ち
お子さんが不登校になると、多くの親御さんが最初に「どうすれば不登校を解決できるのだろう」と考えるかもしれません。特にこれまでお子さんが学校で順調に過ごしていた場合、「何とかして学校に戻してあげたい」「他の子と同じように通えるようにしてあげたい」と、心が焦るのは当然のことです。子どもが学校に通えない現実を目の当たりにすると、親としては不安で、何か原因を見つけ出し、その原因を取り除くことで解決を目指したくなるものです。
けれども、ここで注意したいのは、「不登校を解決する」という言葉自体が、実は私たちの心に「落とし穴」を作っている可能性があるということです。この「解決」という考えが、結果的にお子さんとの距離を広げてしまったり、お子さんの気持ちを見えなくしてしまうことがあるのです。
不登校の「原因」を探る危うさ
不登校が始まると、多くの親御さんはお子さんが不登校になった「原因」を探し始めます。学校のクラスの人間関係か、担任の先生との相性か、あるいは勉強のつまずきなのか――こうした理由を探し出して解決すれば、再び登校できるようになると考えるのも無理はありません。しかし、実は「原因を探して、それを取り除くことで解決する」という考えが、お子さんの気持ちを見失う原因になる場合があります。
不登校の原因は、往々にして一つではありません。小さな要因が重なり合い、気づかぬうちにお子さんの心に負担がかかっていることも多いのです。そして、原因を追究するあまり、お子さんが抱える「今の気持ち」を見過ごしてしまうことがあります。例えば、「クラスの友達と少し話しづらいから学校に行きたくない」という表面的な理由があったとしても、根底には「学校生活全般に疲れてしまった」や「そもそも学校に馴染むことができなかった」など、複雑で根深い感情が隠されていることも多いのです。
「戻す」ことへの執着が生むプレッシャー
不登校になった子どもを学校に「戻す」ことに執着しすぎると、その言葉自体が子どもにとって大きなプレッシャーとなります。「また学校に戻らなければいけない」「他の子と同じように通わないといけない」と感じることで、さらに気持ちが閉ざされてしまうことがあるのです。
お子さんにとって、学校に行くことが苦痛であるにもかかわらず、「普通に通うべきだ」と感じてしまうと、自己嫌悪や無力感に陥ってしまうこともあります。「自分は普通じゃない」「みんなができることが自分にはできない」という思いが重なることで、ますます自信を失い、さらには家の中でも居場所を感じられなくなってしまう場合さえあります。
「解決」という目標が親子の距離を生むことも
不登校になったお子さんを「どうにかして学校に行かせてあげたい」と思う気持ちは自然ですし、親御さんとして当然の愛情でもあります。しかし、この「解決」という目標が前面に立つとき、しばしば親子の間に「距離」が生じてしまうこともあります。
例えば、毎朝「今日は行ける?」「少しだけ頑張ってみよう」と声をかけることは、お子さんにとってプレッシャーを感じさせる可能性があります。「親が自分に学校に行ってほしいと願っているのはわかるけど、それに応えられない自分が情けない」「自分が悪いんだ」と思い込み、罪悪感を抱えてしまうお子さんも少なくありません。また、親の期待が重荷となって、親子の会話がぎこちなくなったり、本音を隠すようになったりすることもあります。
さらに、親御さんが「解決」を目指すことに集中すると、知らず知らずのうちにお子さんが抱えている複雑な感情や不安に目が向きづらくなってしまうことがあります。お子さんは「学校に戻るために努力する」という気持ちよりも、「今は学校に行かない自分の気持ちを理解してほしい」と感じていることが多いものです。
「不登校は悪いこと」という思い込みを見つめ直す
不登校について話すとき、私たちの中にはどこか「学校に行かないことは悪いことだ」「みんなと同じように学校に通うことが正しい」という思い込みが根強くあります。学校という場所は社会の中でのルールや協調性を学ぶ場であり、大切な場所でもあるため、その考え方自体が間違っているわけではありません。しかし、その「正しい」「普通」という考え方に縛られてしまうと、不登校を受け入れることがとても難しくなってしまうのも事実です。
不登校は、何かしらの理由やきっかけで生じる一時的な「状態」であり、「お子さんの人間性の問題」ではありません。むしろ、不登校になっている時期こそ、お子さんが抱える心の課題や内面的な葛藤に目を向ける大切な機会なのです。子どもが「どうしても学校に行けない」と感じているのには、それなりの理由があり、その感情に寄り添いながら理解しようとすることが、親としてできる第一歩ではないでしょうか。
「解決」よりも「変化」を見守る
不登校に対して「解決」という明確なゴールを目指すのではなく、「変化」を見守るという姿勢が時に重要です。不登校は、「行かないこと」にもさまざまな段階や意味が含まれています。
お子さんが一時的に学校を避けることで、何かを考えたり、休んだり、自分の気持ちに向き合ったりする時間が必要な場合もあります。また、お子さん自身が学校に行かないことで得られる安心感や、家族とのコミュニケーションを通じて少しずつ自分のペースを取り戻していくこともあるでしょう。
「解決」に囚われず、お子さんの「今の心の状態」を理解し、変化を見守ることで、不登校という経験自体が一つの成長のプロセスになることがあります。例えば、お子さんが少しずつ家の外で気の合う友人を見つけたり、オンライン学習や趣味に集中する時間を得ることで、自己肯定感を取り戻すこともあります。そして、結果的にお子さん自身が「もう一度学校に行ってみようかな」と自らの意思で前向きな行動を取る場合もあります。
最後に:不登校の要因を一緒に解きほぐすということ
不登校に対する一番の落とし穴は、「解決」を焦るあまり、「今の気持ちや状況」をおざなりにしてしまうことです。お子さんが不登校になったとき、親御さんとしては未来のことが気になるのも当然ですが、「今、お子さんが何を感じているのか」に焦点を当てることが、長期的な解決の糸口になるのです。
お子さんと向き合う中で、少しずつ不登校の背景にある要因が明らかになることも多いものです。そして、お子さんが自分の感情を安心して言葉にできるようになると、自分自身でも不登校の要因について冷静に考えることができるようになります。
こうしたプロセスを経ることで、お子さんが自分の意思で「もう一度学校に行ってみようかな」と思う日が訪れることも少なくありません。このように、自分の内面と向き合い、「再登校」という選択を自らの意思で選ぶことで、以前よりも自信を持って学校生活を送れるようになることもあります。
そして、たとえ最終的に「学校に戻る」という選択を取らなかったとしても、不登校の要因を一緒に解きほぐし、その中で心の整理ができたことで、お子さんは「不登校に押しつぶされていた日々」から抜け出せるようになります。これは、お子さんにとって大きな前進です。不登校という重圧の中で苦しむよりも、心が軽くなり、「自分はこれでいいんだ」と思えるようになることで、未来に向かって前を向く力を取り戻していけるのです。親が一緒に要因を解きほぐす姿勢を持つことが、こうした変化の原動力になるのです。
ToCo(トーコ)株式会社について
当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。
代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。
特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。