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参考:文部科学省「これからの家庭教育の在り方」
参考:文部科学省「家庭教育支援の具体的な推進方策について」
子どもが学校に行きたがらないとき、親として本当にすべきことは何か
子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、多くの親は不安と戸惑いを抱えます。責めるべきか、受け入れるべきか、学校へ行かせるよう強く促すべきか――正解が見えず、混乱するのは自然なことです。ただ、まず最初に知っておいてほしいのは、「子どもが学校に行きたくない理由」は、表面だけでは見えてこないということです。
学校を拒否する背景には、いじめ、友人関係の不安、学業へのプレッシャー、教師との相性、HSP(非常に敏感な気質)、起立性調節障害といった身体的要因、さらには家庭環境の影響など、多岐にわたる原因が存在します。子ども自身もそれを明確に言語化できないケースが多く、「なんとなく嫌だ」「疲れる」「意味がない」といった曖昧な言葉でしか表現できないこともあります。
このような状況で、親がすべきことは「問い詰める」ことではなく、「聞く姿勢を持つ」ことです。子どもが話し始めるタイミングを待ち、安心して話せる空気をつくることが出発点になります。「なんで?」「行かなきゃダメでしょ?」という言葉よりも、「そう思ったんだね」「話してくれてありがとう」と伝えることが、子どもにとっての安心感と信頼に繋がります。
また、学校に行かないという選択を責めず、「今は休むことも大切」と受け止める姿勢も必要です。無理に登校させることで状況が悪化し、不登校が長期化するリスクは少なくありません。一度崩れた心の状態は、短期間では回復しません。回復には「安全な場所」と「理解者」の存在が不可欠です。そしてその最も重要な理解者が、他でもない親なのです。
親は「なんとかしなければ」と思うかもしれませんが、実は「解決しようとしすぎないこと」が鍵となります。子どもの内面が安定し、信頼関係が育つことで、次第に自分の言葉で今の気持ちを表現できるようになります。その時が、次のステップに進むタイミングです。
「一緒に学校へ行く」は助けになるのか、それとも依存を深めるのか
子どもが「お母さんが一緒じゃないと学校に行けない」と言う場面は、決して珍しくありません。登校しぶりが強くなると、親が付き添って登校することも検討されます。一見、親が付き添えば子どもは安心し、学校に戻れるように思えるかもしれません。ですが、この対応には注意すべきポイントがあります。短期的には効果があるように見えても、長期的には子どもの「自立する力」を削ぐリスクがあるからです。
まず、親が付き添いを続けることで、子どもは「自分はひとりでは動けない」「親がいないとダメなんだ」と無意識に刷り込まれていきます。これが依存の始まりです。特に低学年では、親の存在は絶対的であり、子どもが不安を感じたときに頼りたくなるのは当然です。ただ、それを長期的に続けてしまうと、子ども自身が「自分の足で進む」練習を奪われてしまいます。
また、親が常にそばにいてくれることが「特別な注目を得る手段」として機能してしまうと、子どもは無意識にその状態を維持しようとします。例えば「学校に行かないと親が自分にかまってくれる」「つらいときは助けてもらえる」という形で、親のサポートを無限に求める状態に陥りやすくなるのです。これは悪意があっての行動ではなく、防衛反応であり、環境に適応しようとする子どもなりのサバイバルですが、結果的には自立心の育成を妨げる要因になります。
さらに、「一緒に行ってあげる」ことに親が慣れてしまうと、次にやめるタイミングが難しくなります。「ここまでは一緒に…」というラインが日々後退し、親がいなければ一歩も学校に近づけないという状態に陥るケースも少なくありません。その結果、登校がより大きな壁となり、「学校=不安な場所」「親がいない=行けない」が強化されていきます。
こうしたリスクを踏まえると、親が付き添うのは「短期的な不安緩和の手段」であって、「長期的な支援の柱」にはなり得ません。必要な場合は、あらかじめ「◯月まで」や「校門まで」など、期限や範囲を決めておくことが大切です。その上で、段階的に手を離していく仕組みを作っておくことが、子どもの自立を支えるポイントになります。
子どもが一人で学校に行けるようになるための具体的ステップ
子どもが再び一人で学校に通えるようになるには、いきなり登校を促すのではなく、段階を踏んで少しずつ進めていく必要があります。これは、子ども自身が「できる」と思える小さな成功体験を積み重ね、自信を取り戻していくプロセスです。焦らず、着実に進めることが何より重要です。
まず必要なのは、「子ども自身が安心できる土台づくり」です。これは、家庭内でリラックスできる環境を保ち、親が子どもの話を否定せずに受け止めることによってつくられます。信頼関係が築かれていなければ、どんな支援も表面的なものになってしまいます。話をする時間を日常的に確保し、学校に関する話題に限らず、趣味や好きなことを通じて気持ちのやりとりを積み重ねましょう。
次に、「段階的な目標設定」が有効です。たとえば「制服を着てみる」「決まった時間に起きてみる」「家の前まで出てみる」「学校の前まで行ってみる」など、学校に行くことそのものをゴールとせず、行動を細かく分けて設定することがコツです。このとき、無理に進ませるのではなく、子どもが「これならできそう」と思えるレベルを見極めることが必要です。設定した目標を達成した際は、過剰ではない程度のご褒美や言葉のフィードバックを加えることで、「やってみてよかった」という気持ちを育てていきます。
また、学校側との連携も欠かせません。担任の先生やスクールカウンセラーと情報を共有し、子どもの状況に応じた支援を調整していくことが求められます。教室に戻る前に保健室登校から始めたり、放課後の時間に先生と短時間だけ話す機会をつくったりするなど、「学校と関わるための中間的ステージ」を設けてもらえるように相談しましょう。
さらに、親がすべきことは「登校させるために励ますこと」ではなく、「どんな状態の子どもでも認めること」です。登校できない日が続いたとしても、生活リズムを保ち、自分の気持ちを言葉にできるようになってきたとしたら、それは立派な前進です。たとえ登校という結果がすぐに出なくても、プロセスに目を向けて肯定的にとらえる姿勢が大切です。
最終的な目標は、子どもが「自分で決めて、自分で動ける」ことです。親が先回りして道を整えるのではなく、子ども自身が選び取っていけるように、後ろから支える感覚が理想です。うまくいかない日があっても、それは「失敗」ではなく、必要なステップのひとつ。親が落ち着いて構えることで、子どもも自分のペースを保ちやすくなります。
最後に
子どもが学校に行けない状態は、親にとってもつらいものです。「どうしてうちの子だけ?」「このままで大丈夫なのか?」と、不安や焦り、時には自己否定の感情が湧いてくることもあるでしょう。でも、まず知っていてほしいのは、不登校は「特別な問題」ではなく、「よくある現実」だということです。誰にでも起こり得ることであり、正しく向き合えば、子どもは少しずつ自分の道を見つけていきます。
大切なのは、「いま目の前にいる子ども」に寄り添うことです。学校に行けるかどうかを焦点にするのではなく、その子が「安心して毎日を過ごせているか」「本音を話せる相手がいるか」「自分の価値を感じられているか」という視点で見てあげてください。そうした積み重ねが、やがて子ども自身の「行ってみよう」「やってみよう」という気持ちを育てていきます。
親としてできることは、子どもの背中を押すことではなく、隣に座って「一緒に考える」ことです。決して完璧な対応をしなくていいし、うまくいかない日があっても問題ありません。迷いながらでも、子どものことを思って動いている限り、それはすでに十分な「支援」になっています。
子どもは、今「止まっている」ように見えても、心の中では確実に動いています。その動きはとてもゆっくりで、見えにくいかもしれませんが、小さな安心、小さな成功を重ねることで、やがて自分の足で一歩を踏み出します。親はその一歩を信じて、見守ってあげてください。
最後に、あなた自身の心と体の健康も忘れずに。子どものサポートは長期戦になることもあります。ときには周囲のサポートを借りて、自分を責めすぎないようにしてください。あなたが元気でいることが、子どもにとって最大の安心材料になります。
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