友だち100人から解き放たれよう

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こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。

今日は「友だち100人から解き放たれよう」というテーマでお話ししたいと思います。

きっかけは、ある保護者の方との会話でした。
「スーパーで流れてるあの歌を聞くと、なんだか胸がざわざわするんです」
——そんな一言から始まりました。

おそらく、多くの方が耳にしたことがあると思います。
「ともだち100人できるかな♪」という、あの有名な子どもの歌「一年生になったら」です。
お買い物中やテレビのCM、運動会のBGMなんかにも使われたりして、ふとした瞬間に流れてくる曲です。

でも、よく考えてみると、この歌。
本当に素敵な歌でしょうか?

今日は、この歌に込められたメッセージを、ちょっと立ち止まって考えてみたいと思います。


目次



「友だち100人できるかな」という無言のプレッシャー

この歌が初めて登場したのは1966年。
当時の日本は高度経済成長の真っ只中で、「集団」「協調」「みんなで同じ方向を向く」ことが良しとされる時代でした。

そんな時代背景の中で、「友だちは多いほうがいい」「たくさんの人と仲良くするのが正しい」という価値観が、無意識のうちに子どもたちに刷り込まれていきました。

もちろん、友だちが多いこと自体を否定するわけではありません。
誰かと関われること、つながりを持てることは、大人になってもとても大事です。

ただ、この「100人できるかな」というフレーズ。
少し冷静に考えてみると、なかなかに重たいんですよね。


「みんなと仲良くしよう」がもたらす心のひずみ

よく学校で言われる「みんなと仲良くしよう」という言葉も、実は似た構造を持っています。

この言葉、悪気はないんです。
先生たちも善意で言っているし、「いじめをなくしたい」という願いから出てきたものだったりします。

でも、言われる側の子どもたちはどう感じるでしょうか?

本当は苦手な子がいるのに、それを我慢して笑わなきゃいけない。
「仲良くしなきゃいけない」から、距離を取ることもできない。

その結果、自分の心を押し殺すようになります。
そして少しずつ、自分がどう感じているのかが分からなくなってしまうのです。


「友だちが多い=いいこと」という呪縛

「うちの子、友だちが少ないんです」
「学校に行っても一人でいることが多くて……」

そんな声を聞くたびに思うのは、
「それって、本当に問題なんでしょうか?」という疑問です。

もちろん、親として心配になる気持ちはとてもよく分かります。
私も我が子が一人でいると聞けば、何かトラブルがあるんじゃないかと不安になります。

でも、それは私たち大人が、
「友だちはたくさんいるべき」
「ひとりぼっちはかわいそう」
という“常識”を疑っていないからこそ、湧いてくる感情なのかもしれません。


ひとりでいること=悪ではない

一人で過ごす時間が好きな子。
静かに本を読んでいるほうが安心する子。
深く関われる一人の友だちがいれば、それで十分な子。

そんな子どもたちにとって、「100人の友だち」は必要ないどころか、むしろ重荷になります。

実際、友だちが多すぎることで疲れてしまったり、トラブルが増えてしまったりすることもあります。
中には「人間関係を回すこと」に精一杯で、自分自身を見失ってしまう子もいます。

それでも、「ひとりでいるのは変」とされてしまうのが、今の社会です。


子どもの「ひとり時間」を大人がどう見るか

ここで一度、立ち止まって考えてみてください。

「この子はひとりでいるけれど、困っているのかな?」
「それとも、自分なりのペースで安心して過ごしているのかな?」

同じ“ひとり”でも、その背景は全然違います。

そして、前者と後者を見分けられるかどうかは、親や大人のまなざしにかかっています。
「寂しそうだから」「かわいそうだから」と思い込んで、無理に友だちを作らせようとすると、子どもはますます混乱してしまいます。


「100人」より「たった一人」の安心

「友だちは多いほうがいい」と言われる一方で、実際に子どもたちの口からよく聞くのは、
「一人だけでも、ちゃんと話せる子がいればいい」
という声です。

大人でもそうですよね。

知り合いは多くても、本音で話せる相手って、そう何人もいないと思います。
むしろ、たった一人でも「自分のことを分かってくれる」と思える人がいれば、すごく心強いものです。

にもかかわらず、子どもにだけ「広く・浅く・みんなと仲良く」という無理をさせるのは、少し違う気がしています。

小学生の登校画像

「友だちを作る」は目標じゃなく、結果

不登校や登校しぶりがあると、保護者の方が「まずは友だちを作って」と考えることがあります。
けれど、私はこの順番に、少し疑問を感じています。

友だちは、「作る」ものというより、「できる」ものです。
何かに夢中になっているときや、好きなことに取り組んでいるとき。
同じ空間で自然に時間を過ごしているうちに、気が合う相手が現れて、少しずつ関係ができていく。

それが本来の友だち関係なのではないでしょうか。

つまり、「友だちを作る」は目的ではなく、何かに取り組んだ“結果”なのです。


目的を「友だち」から「安心」に変える

では、不登校の子どもが学校に行けるようになるには、どうしたらいいのでしょうか?

私は、「安心できること」が最優先だと思っています。

たとえば、教室に入らなくても大丈夫な場所がある。
無理に人と話さなくても、自分のペースで過ごせる。
わかってくれる大人が一人でもいる。

そういう「安心の土台」があると、少しずつ心がほぐれていきます。

その結果、「誰かとちょっと話してみようかな」と思えるようになる。
そうやって、自分から関わろうとする気持ちが芽生える瞬間がやってきます。


「友だちがいないと不安」なのは、子どもじゃなくて親かもしれない

ここまで読んでくださった方の中には、もしかするとこんな気持ちになっている方もいるかもしれません。

「でも、うちの子は本当に一人ぼっちで大丈夫なの?」
「子どもの将来を考えると、やっぱり人間関係が心配です」

すごくよくわかります。
私も、保護者として同じように感じることがあります。

でも、だからこそ一度だけ、自分に問いかけてみてください。

「この不安は、本当に“子ども自身”のものだろうか?」
「それとも、“自分”が抱えている不安かもしれない?」

子どもがひとりでいても、落ち着いた表情をしている。
好きなことを楽しんでいる。
そんな姿があるなら、きっと大丈夫です。


解き放たれるということ

「友だち100人できるかな」という歌は、明るくて、元気で、無邪気な印象があります。

でも、その裏には「みんなと仲良くするのが正しい」「孤立するのは悪いこと」という、見えないメッセージが含まれているようにも思えます。

その価値観から、少しだけ距離をとってみる。
「友だちが少ない=ダメなこと」ではなく、
「自分らしくいられる関係があれば、それでいい」と考えてみる。

それは、子どもだけでなく、大人自身が抱えていた思い込みから「解き放たれる」ことでもあります。


まとめ

「友だち100人できるかな」という歌が投げかけてくる価値観は、時に子どもたちを縛るものにもなり得ます。

子どもが本当に必要としているのは、「たくさんの友だち」ではなく、「安心していられる空間」と「わかってくれる人」です。

そして、その安心があってこそ、自然な形で人との関係が築かれていきます。

焦らなくて大丈夫です。
「ひとりでいる子」を見たとき、「かわいそう」と感じる気持ちが湧いたら、少し立ち止まってみてください。

もしかしたらその子は、「たくさんの誰か」ではなく、「たった一人の自分」を、大切にしているのかもしれません。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも、子どもたちが「自分のままでいていい」と思える社会のために、発信を続けていきます。

— 竹宮(ToCo 不登校カウンセラー)


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

会話が苦手な人への処方箋

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こんにちは。ToCo(トーコ)の不登校カウンセラー、竹宮です。
今日は「会話が苦手な人へ」というテーマで書いてみたいと思います。

私たちは、「会話が得意な人」のイメージに振り回されすぎている気がします。テンポよく返す、内容が面白い、誰とでもすぐ打ち解けられる……。そんな人を見ると、思わず「自分は無理だな」と感じてしまう方も少なくないのではないでしょうか。

でも、会話というのは本来、もっと多様で、もっと自由なものです。
今日はそのことを、少し違った角度から考えてみます。

参考:文部科学省「子どもたちの 未来をはぐくむ家庭教育


目次


よくあるアドバイスが辛い理由

「会話が苦手です」と相談すると、決まって出てくるアドバイスがあります。

「練習あるのみですよ」
「数をこなせば慣れてきます」
「人前で話す機会を増やしましょう」

こうしたアドバイスが悪いわけではありません。ある程度の場数が自信につながることもあります。

でも、これらは“ある程度うまくやれること”が前提になっています。つまり、「とにかく実践!」というアドバイスは、実はある程度スキルや安心感がある人にしか届かない場合があるんです。

本当に苦手な人にとっては、「自転車の乗り方を教える代わりに、とりあえず坂道を下らせる」ようなやり方に感じられます。

「話さなきゃ」と思うほど話せなくなる

会話に苦手意識のある人ほど、「うまく話さなきゃ」「ちゃんと受け答えしなきゃ」と思いがちです。でも、そう思えば思うほど言葉が出てこない。頭が真っ白になる。自分が何を言いたいのかすらわからなくなってしまう。

これは、会話というものを「自分が何かをうまく表現する場」として見ているから起こる現象です。

でも、会話って本当に“自分をうまく表現するもの”なんでしょうか?


会話はもっとラフでいい

ここで、ちょっと違った視点を紹介したいと思います。

会話がうまくなりたいとき、「司会者のようになりましょう」と言われたらどう感じるでしょうか。たいていの人は無理だと思うはずです。ですが、「ネットサーフィンのように会話を楽しんでください」と言われたら、少しイメージが変わってくるかもしれません。

これは、あるエクササイズの話です。

複数人で会話をしているとき、その場に流れる話題や雰囲気を、「全部理解しよう」「全部追いかけよう」とせずに、「波乗り」のように乗ってみる。
相手の発言を“分析”するのではなく、ただ“受けてみる”。そして、自分の発言も“正解”を出そうとせず、軽く混ざってみる。

これは、少し遊びに似ています。


エクササイズとしての「会話の波乗り」

この会話の波乗りは、ちょっとしたエクササイズにもなります。

たとえば、こんなふうにしてみてください。

  • 複数人の会話に、メモやスマホを使わずに加わる
  • 誰が何を言ったかを全部記憶しようとせず、印象に残ったことだけを心にとどめる
  • 発言の内容を“整理”しようとせず、あえてそのままにしておく
  • 話すときに「意味のあることを言おう」としない

このとき大事なのは、「明確な目的」を持たないことです。
考えながら喋るのではなく、感じながら関わる。

つまり、「喋るために喋る」のではなく、「交わるために混ざる」感覚です。

ママ友の会話イメージ。

自分の発言にこだわりすぎない

よく、「自分が何を言うか」にばかり気を取られる方がいます。
でも、会話において「何を言ったか」よりも大事なのは、「どうそこにいたか」だったりします。

たとえば、友人と雑談しているとき、何を言ったか一言一句覚えている人はほとんどいません。でも、会話の“雰囲気”や“空気感”は覚えている。

つまり、人との会話って、情報のやりとりだけではなく、空間を共有することでもあるんです。

「意味のあることを言わなければならない」という思い込みを手放してみると、少しずつ自分の中に余裕が生まれてきます。


「話をまとめよう」としない勇気

話しているとき、「何を言いたいのか分からなくなってしまう」と感じることはありませんか?
実はそれ、とても自然なことです。会話は原稿用紙に書く小論文ではありません。起承転結がなくてもいいんです。

むしろ、「ちゃんとまとめなきゃ」「分かりやすく伝えなきゃ」と思うと、逆に身動きが取れなくなってしまいます。

これは、料理を作るときに「見た目も味も完璧にしなきゃ」と思って、結局キッチンに立つのをやめてしまう感覚に似ています。

だからこそ、会話では「途中でもいい」「つながっていなくてもいい」という感覚が大切です。


会話の「対話モデル」に気づく

ここで、少し専門的な話をしてみます。

会話というのは、私たちが無意識のうちに選んでいる“対話の仕方”によって大きく変わってきます。この「対話モデル」は、人によってまちまちです。

たとえば、「きちんと整理してから話す」タイプの人もいれば、「とりあえず口に出しながら整理する」タイプの人もいます。どちらが優れている、という話ではありません。

でも、会話が苦手な人の多くは、「きちんと整理してから話すべき」というモデルに縛られていることが多いです。

一方で、親しい友人と話しているときは、「言葉にならないままでもとりあえず出す」「話しながら考える」ことが自然とできています。そこには“慣れ親しんだ対話モデル”が働いているわけです。

この感覚があると、少し気が楽になります。
「うまく伝えなきゃ」ではなく、「今の自分に合ったやり方で混ざってみよう」と思えるからです。


“考える”より“交じる”こと

少し極端な言い方かもしれませんが、会話がしんどいときには「考えるな、交じれ」という視点が有効です。

もちろん、無理に話す必要はありません。でも、「参加しないといけない」と感じる場面では、“何かを言う”よりも“そこにいる”ことの方が大事です。

会話というのは、本来「遊び」に近い側面があります。
ゲームのように、勝ち負けや正解があるものではなく、「どんなふうにその場に参加するか」を楽しむものです。

そう考えると、「ちゃんとしたことを言おう」「面白い話をしよう」という力みは、少しずつ手放してもいいのではないでしょうか。


実際にやってみるためのヒント

ここまで読んで、「それでも難しそう」と思う方もいるかもしれません。
ですので、最後に、実践しやすい形に落とし込んでみます。

次のような場面をイメージしてみてください。

複数人での雑談のときに試したいこと

  • 誰かの発言を、無理に理解しようとしない
  • 「あ、この人が○○って言ったの面白いな」と、軽く受け止めてみる
  • 自分の番が来たとき、「とくにないんだけどね〜」と前置きして、思いついたことをぽつりと話してみる
  • 「それ、ちょっと分かるかも」だけでも、立派な発言です
主婦の会話イメージ。

ポイントは、「内容」より「タイミング」と「混ざり方」に目を向けることです。


「うまく喋らなきゃ」を手放すと、他者が見えてくる

最後に、少しだけ本質的な話をします。

会話というのは、“自分を表現する場”のようでいて、実は“他者と共にいる場”でもあります。

つまり、自分の発言にこだわるということは、裏を返せば、他者の言葉や存在を「背景化」してしまうことにもつながります。
「ちゃんとしよう」とすればするほど、周りの人の声が聞こえなくなっていく。

逆に、「うまく喋らなくてもいい」と思えるようになると、不思議と周りの人の言葉が自然に入ってくるようになります。
会話がキャッチボールというより“水の流れ”に近いものだと気づける瞬間です。


まとめると

「会話が苦手です」と感じている方の多くは、話すことそのものよりも、「うまくやらなきゃ」「伝わらなきゃ」というプレッシャーに苦しんでいるように見えます。

だからこそ、「うまく伝えること」より「そこに混ざること」を意識してみてください。

話すときに力が入ってしまう人は、まず力を抜くところから始めてみてください。
そして、会話を“練習”ではなく“波乗り”のように捉えてみてください。

ToCoでは、不登校や学校生活への不安だけでなく、このような「人との関わり方の難しさ」にも、一緒に取り組んでいます。
家族や学校での対話をテーマに、話すことに少しずつ慣れていく支援も含まれています。
興味がある方は、サービス詳細をご覧ください。

会話が得意である必要はありません。
でも、「会話が怖くない」と思えるだけで、日常は少し変わります。

そんなふうに、ゆるやかに変化を感じられることを願っています。


ToCo(トーコ)について

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不登校リスクの高い家庭の特徴(調査報告)

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こんにちは。ToCoの不登校カウンセラー、竹宮です。
今日は「不登校リスクの高い家庭の特徴」について書きたいと思います。

不登校と聞くと、多くの方が「学校に何か問題があったのかな」と想像するかもしれません。もちろん、学校での人間関係や学業のプレッシャーは大きな要因になります。でも、それだけではありません。

私たちToCoでは、これまで年間1,000世帯以上のご家庭を支援してきました。そして、支援の中でアンケート調査も行った結果、不登校の「きっかけ」と「継続の要因」には、少し意外な傾向が見えてきました。

今日はその調査結果をもとに、「どんな家庭に不登校リスクが高まりやすいのか」、そして「どうすればそのリスクを下げられるのか」について、一緒に考えてみたいと思います。


目次


不登校要因の調査結果

ToCoは、継続登校まで支援させていただいた1,092世帯にアンケートを取りました。
「不登校のきっかけ」と「継続要因」を尋ねたところ、以下のような結果になりました。

【不登校のきっかけ】(最も影響が大きかった項目)

1位:学校の人間関係(527件)
2位:子どもの情緒的混乱(319件)
3位:学業や成績(166件)
4位:子どもの生活習慣(38件)
5位:教師との相性(26件)
6位:親子の対話(14件)
7位:学校の規則やイベント(2件)

この数字を見て、「やっぱり人間関係か」と思った方もいるかもしれません。
確かに、最初の“きっかけ”としては人間関係の影響が最も大きいです。

ですが、注目すべきは「継続の要因」です。

【不登校の継続要因】(最も影響が大きかった項目)

1位:子どもの生活習慣(388件)
2位:親子の対話(331件)
3位:学業や成績(214件)
4位:学校の人間関係(107件)
5位:子どもの情緒的混乱(52件)
6位・7位:学校の規則や教師との相性(0件)


最も多かったのは「子どもの生活習慣」、次に「親子の対話」でした。つまり、学校に行けなくなった理由と、行けない状態が続く理由は、違うということです。


不登校解決の一般論に潜む落とし穴

見守り続けることのリスク

よくある不登校に悩む保護者へのアドバイスに、「子どもが学校に行けなくなったら、まずは休ませてあげてください」というものがあります。
これは決して間違いではありませんし、必要なケースも多いです。

でも、この言葉が「とりあえず何もしなくていい」という印象を与えてしまうことがあります。
気持ちが落ち着くまで、様子を見る――それ自体は大切ですが、時間が経つと別の問題が出てくるのです。

その一つが、生活リズムの崩れです。

最初は「朝起きられない」「夜眠れない」という程度だったものが、2週間、1ヶ月と経つうちに、「昼夜逆転しているから登校できない」「何をするにもやる気が起きない」状態になってしまう。
この段階に入ってしまうと、本人の中に「行きたい」という気持ちが少し出てきたとしても、体がついていかないことが多いです。

親子の対話は“多ければいい”ではない

もう一つ、見落とされがちなのが「親子の対話」です。

不登校の継続要因として2位になったこの項目ですが、「家ではたくさん話しているつもりなんですが…」という保護者の方も少なくありません。

実は、親子の対話には“質”が大きく関係します。
たとえば、子どもの話にすぐアドバイスで返してしまうと、「話してもどうせ説教される」と感じて口を閉ざすようになります。

また、子どもが感じていることを、親が「そんなこと気にしなくていいよ」と軽く流してしまうのも、よくあるすれ違いです。

本人の中では深刻な問題なのに、それを軽く扱われたと感じた瞬間に、心の扉が閉じてしまいます。

「どうしたの?」「最近、元気ないけど大丈夫?」と聞くよりも、「今朝は寒かったね」とか、「お昼は何食べようか」みたいな、日常的な話から始めるほうが、かえって会話がしやすくなることもあります。

不登校リスクが高まりやすい家庭には、どんな共通点があるのか?

ToCoでの支援経験と調査結果を照らし合わせていくと、「このタイプの家庭は、少し注意が必要かもしれない」と感じるパターンがあります。
いくつかの例をご紹介します。

① 子どもの生活リズムにあまり関与していない

これは、共働きや忙しい家庭に多く見られます。
朝は各自バラバラに起きて準備し、夜も遅く帰ってきた親と、すでにスマホやゲームに集中している子どもが、あまり交わらずに一日が終わる。そんな日が続いているケースです。

生活習慣というと、「夜ふかしがよくない」といった話に矮小化されがちですが、本質はそこではありません。

「生活にリズムがある」ということは、「次に何があるかが予測できる」「誰かと一緒に動く」ということです。
それが薄れてくると、子どもの中で「社会とのつながり」の感覚がだんだんと希薄になります。

② 子どもとの雑談が少ない

「うちは親子の対話はできている方だと思います」というご家庭でも、その内容を聞いてみると、「将来の話」「進路の話」「なぜ学校に行けないのか」といった“重たいテーマ”が中心になっていることがあります。

もちろん、それらの話が悪いわけではありません。
ただ、常に“答え”を探す対話だけになってしまうと、子どもは疲れてしまいます。

「何を話すか」よりも、「話す時間を一緒にどう過ごすか」。この視点を持つことで、親子の会話はもっとラクになります。

③ 良かれと思って、言いすぎてしまう

「本当は行きたいって思ってるでしょ?」「明日こそは行こうよ」
このような言葉は、親として自然な気持ちから出るものだと思います。

でも、子どもにとっては「気持ちをわかってもらえてない」と感じることもあります。

子どもが動き出すには、「気持ちの準備」と「実際に動ける状態」の両方が必要です。
どちらか一方だけがあっても、登校にはつながりにくいのです。


継続登校に向けた小さな工夫

では、具体的にどんなことを意識すればいいのでしょうか?
ここでは、どのご家庭でも取り入れやすい、小さな工夫を3つご紹介します。

① 朝の「おはよう」は同じ時間に

「毎朝、7時半に“おはよう”だけ言う」と決めてしまうのも一つの方法です。
子どもが起きていようと寝ていようと、関係ありません。

毎日同じタイミングで、同じ声がかかること。
これは、生活の中で“予測できる安心”を作ることにつながります。

② 話さなくても、同じ場所に“いる時間”を増やす

会話のハードルが高いときは、無理に言葉を交わさなくても構いません。
たとえば、同じ部屋で別々のことをする時間を、少しずつ増やしてみてください。

一緒にテレビを見る、同じ机でお互い違う作業をする、ただそれだけのことでも、「自分は一人じゃない」という感覚につながります。

③ “目的のない外出”をしてみる

「買い物ついでにちょっと外の空気を吸いに行く」くらいの軽い外出を提案してみてください。
登校に直結しなくても、体を外に出す感覚を取り戻すことが、回復への第一歩になります。


「うまくいかない時期」こそ、リスクを減らすチャンス

ここまで読んでいただき、「うちは全部当てはまっているかも…」と不安になった方がいたら、安心してください。
むしろ、今気づけたことが、とても大きな一歩です。

不登校のきっかけは、親がコントロールできるものではないことが多いです。
でも、「継続してしまう要因」は、少しずつ整えることができます。

生活習慣や親子の関係性は、変えようと思えば家庭の中で動かせるものです。
焦らなくて大丈夫です。できるところからでいいんです。


明確な“解決策”がないからこそ、大切にしたいこと

ToCoでは、ご家庭の状況に応じたサポートを行っています。
不登校要因の診断だけでなく、生活改善の支援や、学校との橋渡しなど、継続登校まで寄り添う支援をしています。

でも私たちが本当に大切にしているのは、“解決”よりも“回復”です。

「いつから行けるようになるのか」ではなく、
「その日まで、どうやって心を守るか」
「一緒に待つ時間を、どれだけ健やかに保てるか」

そんな視点を大事にしています。もし不登校にお悩みの方は、ぜひご相談ください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

【夫婦仲】簡単な測定法と、家庭への影響について

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問も務めております。
ここでは「夫婦関係が家庭に与える影響」を、臨床現場での経験と心理学の知見に基づいて論じていきます。

参考:文部科学省「文部科学省における家庭教育支援について


目次


「夫婦仲」を簡単に確かめる質問

夫婦関係というのは、年数と共に表面的な会話や日常のやり取りに終始しがちで、内面でのつながりが希薄になっていくことがあります。ただ、それが問題かどうかを判断するのは難しい。けれど、「なんとなく冷めている」「ケンカはしないけど会話が少ない」程度では、危機感を持ちにくいものです。

そんな中、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の心理学教授アーサー・アーロン氏の研究が示す「自己への内包」という概念は、夫婦仲を客観的かつ簡潔に測る手段として有効です。

「自身にとって相手はどんな存在ですか?下記の中から一番近いものを選んでください」

完全に離れた円は心理的距離がある状態、ほぼ重なった円は相互に深くつながっている状態とされ、選んだ円の重なりが少ない夫婦ほど、後の離婚率が高まる傾向にあると報告されています。この図は、冷静な自己認識を促すと同時に、夫婦間の無意識な距離をあぶり出す働きがあります。

目に見えない「空気」が子どもに与える影響

では、夫婦の関係が家庭全体、特に子どもにどう影響するのでしょうか。表面上は穏やかに見えていても、夫婦間に無言の緊張や疎遠さがあると、それは家庭の「空気」となって子どもに伝わります。とくに小中学生は、言葉ではうまく説明できなくても、大人の表情や雰囲気、声のトーンといった非言語の要素にとても敏感です。

私は児童心理司として数多くの家庭を訪問してきましたが、不登校の相談を受けたとき、子どもが「自分のせいで親が喧嘩している」と感じていたり、逆に「自分がいなくなれば両親はもっとうまくいくのでは」と思い詰めていたケースもあります。実際には親同士の関係が原因とは限らないにもかかわらず、子どもがそう思い込んでしまうのは、家庭内に明確な言葉では説明できない「緊張感」があるからです。

アーロンの「自己への内包」の理論を援用するなら、夫婦が互いの感情に自然と共鳴し合えている関係であれば、その雰囲気は子どもにも安心感を与える材料となります。

たとえば、父親が疲れて帰宅したとき、母親がその変化に気づき、自然に気遣いを示す。そして父親もまた、子どもの些細な表情の変化に反応できる。こうした「感情の連鎖」は、家庭のなかに情緒的な安全地帯を生みます。逆に、夫婦の感覚が断絶していれば、家庭内の誰もが孤立しやすくなります。

家庭は、子どもにとって日々の「基準」になります。何が当たり前で、何が安心で、何が危険か──それらを判断する土台が家庭です。その土台の芯にあたるのが、実は夫婦関係です。円の重なりが少ない状態を放置してしまえば、親子の関係にも微妙な「ずれ」が生まれていきます。だからこそ、夫婦仲を“円の重なり”というイメージで確認し、必要があれば意識的に距離を詰める努力を始めることが、家庭全体の安定にとっても意味を持ちます。

夫婦のつながりが保つ「家庭の地盤」

夫婦仲の「円の重なり具合」を意識することが、なぜ家庭にとってそこまで重要なのでしょうか。それは、夫婦の関係性が家庭の「地盤」だからです。地盤がしっかりしていれば、たとえ突発的な出来事があっても家庭は崩れません。しかし、地盤が脆ければ、どんなに表面をきれいに整えても、子どもが安心して立つことはできません。

この「地盤の強さ」は、決して外からはわかりません。人前では笑顔でいても、内側に距離があれば、家庭内でのコミュニケーションはすれ違いが増えていきます。例えば、子どもが不調を訴えたとき、一方の親が「よくあること」と軽く扱い、もう一方は心配で動こうとする。ここで夫婦の感覚がかみ合わなければ、対応がバラバラになり、子どもは「自分の気持ちが誰にも届かない」と感じてしまうことがあります。

ToCo株式会社では、再登校を目指す支援のなかで家庭とのやりとりも多く行いますが、子どもが安定して動き出せる家庭には、必ずといっていいほど、夫婦間で感情や意図が共有されている土壌があります。お互いが感覚を「内包」し合えている関係では、たとえ意見の違いがあっても、軸はぶれず、支え合う姿勢が自然と生まれるのです。

ですから、夫婦仲を確認することは、何か問題が起きたときの「責任の所在」を追及するためではありません。むしろ、まだ何も起きていない段階で、地盤の状態を確認するための行為です。

アーロンの「重なりの円」は、毎日見る必要はありません。ただ、半年に一度でも、一年に一度でも、静かに立ち止まって「私たちは、今どの円にいる?」と考える。その小さな問いが、家庭の地盤を強固にしていきます。

家庭内の問題は、目に見えるところから始まるとは限りません。大切なのは、目に見えないつながりを見逃さず、少しでも「今よりも近づく」努力を夫婦で共有していくことです。それが結果的に、子どもにとっても落ち着ける場所を作ることにつながっていきます。夫婦仲は、子育てにおいて「背景」ではなく「中心」です。その中心がしっかりしているかを確かめることが、家庭の安定を築くための第一歩となるのです。

まとめ

今回取り上げた「夫婦仲」というテーマは、不登校という現象そのものから少し離れて見えるかもしれません。しかし、現場で多くのご家庭と関わる中で、私は何度も実感してきました。子どもが安心して前を向くためには、まず家庭という足場が安定していなければならないということ。そしてその足場の要が、夫婦のつながりであるということです。

アーサー・アーロン教授の「自己への内包」の理論と、それをもとにした“円の重なり”というシンプルな図は、私たちが日常の中で見落としがちな「心の距離感」に気づかせてくれます。それは、夫婦関係において「今、どの位置にいるのか」「どのくらい互いを感じ取れているのか」を、具体的に可視化する手段でもあります。

夫婦仲を確かめるという行為は、決して責め合うためでも、関係を再構築しなければならないという義務感から行うものでもありません。ただ、「気づく」ための行為です。自分と相手の間にどれだけ感覚が通い合っているかを知ること、それだけでも家庭の空気は少し変わります。そしてその変化は、必ず子どもにも伝わります。

子どもが抱える不安や不調は、外からの刺激や学校との関係だけでなく、家庭内の“気づかれない圧”が原因であることも少なくありません。その圧力を減らし、家庭をもっと柔らかく、安心できる空間にするためには、まず夫婦がお互いを「感じ取ろうとする」ことが必要です。

夫婦の距離が縮まると、親子の距離も自然と整います。無理に完璧を目指す必要はありません。ただ、今より少しだけ、相手の感覚に目を向ける。その小さな姿勢の積み重ねが、家庭の空気を変え、子どもが安心して「また動いてみようかな」と感じられる足場をつくっていくのです。


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友達を作らなくてもいい

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「友達がいない」という不安を抱える親子へ

春になると、街のあちこちに真新しいランドセルや制服を身にまとった子どもたちの姿が見られるようになります。親としては、その姿に微笑ましさとともに不安も感じるのではないでしょうか。子どもが新しい環境にうまく馴染めるか、友達ができるか、先生とうまくいくか。そのような心配は、子育て中の親にとって避けられないものです。

特に「友達ができるかどうか」は、多くの親が強く気にするポイントです。自分の子どもが休み時間に一人でいたらどうしよう。グループに入れなくて、お昼ご飯をひとりで食べていたら辛いんじゃないか。誰かと一緒に下校していなかったら、仲間外れにされているのでは……。そういう思いが、子どもの様子を観察するたびに頭をよぎるかもしれません。

実際、「友達ができたか?」という質問を新学期の数日以内に投げかけてしまう親は少なくありません。ある意味それは当然のことです。学校という場所は、勉強だけでなく社会性を学ぶ場でもあるという認識が強くあり、そこに「友達」が関係してくるのは自然な流れです。

しかし、必要な言葉は「友達を作らなくてもいい」かもしれません。

これは決して人間関係を否定する意図でもありません。むしろ、心の安全と成長を守るためのメッセージです。
「誰とでも仲良くしなさい」の言葉の裏に、どれほど大きなプレッシャーが潜んでいるのか。無理に友達を作ろうとして、自分をすり減らしてしまう子どもがどれほど多いのか。私はそれを、親として、そしてカウンセラーとして、日々目にしています。

新しい環境で不安を抱える子どもたちを、どう支えればいいのか。どんな言葉をかければ、自分らしくいられるのか。そして、何より親自身がどのような視点で子どもの「人間関係」と向き合うべきか。そのヒントを、一緒に探していきましょう。

参考データ:文部科学省「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」

「友達づくり」は学校生活の一部にすぎない

小学校でも中学校でも、学校という場所は何より「学びの場」であるということを、まずは再確認しておきたいと思います。先生の話を聞いて、自分で考える力を養う。そうした教育活動こそが、本来の学校生活の核です。

ところが、実際の学校生活では「友達関係」に注目が集まりがちです。先生も保護者も、「友達を大切に」「友達と協力して」と繰り返します。運動会も、修学旅行も、合唱コンクールも、ほとんどの行事は「仲間との協力」が前提となっています。それ自体は悪いことではありません。むしろ、協調性やコミュニケーション能力を養うには最適です。

ただ、ここにひとつ大きな落とし穴があります。それは、「友達ができない子は、学校生活がうまくいっていない」という誤解です。

実際には、ひとりでいることを好む子どももいます。自分の世界を大切にしたい子もいます。グループに入って無理に笑うより、一人で本を読んでいる方が心が穏やかになる子もいるのです。それにも関わらず、「友達がいない=問題がある」と判断されてしまうことが非常に多いのが現状です。

このような誤解の中で苦しむのは、ほかならぬ子どもたち自身です。周囲の目を気にして、無理に誰かと関わろうとしてしまう。自分を押し殺してでも輪に入ろうとしてしまう。その結果、疲弊し、自己肯定感を失っていくのです。

「友達がいない」と聞いても、すぐに問題視しないこと。そこに焦りを感じる必要はありません。学校は本来、「自分らしさを育む場」であるべきです。そして、その「自分らしさ」は、必ずしも友達という枠の中で育まれるものではありません。

だからこそ、私は繰り返し伝えます。「友達を作らなくてもいい」。それは、子どもの世界を狭める言葉ではなく、むしろ可能性を開くための言葉なのです。

「友達ができない=劣っている」は幻想

新学期が始まって数日が経つと、子どもたちの間で自然と“序列”のようなものが生まれ始めます。目立つ子、人気のある子、誰とでもすぐ仲良くなれる子――そうした子どもたちが早々に友達の輪を築いていく様子を見て、親も子も、無意識のうちに「友達が多いことが正しい」「友達が少ない=劣っている」と感じてしまいがちです。

しかし、それは完全に幻想です。

そもそも、「友達が多い=人間的に優れている」といった価値観は、一体誰が決めたのでしょうか?学校の中で目立つ子が、必ずしも心の豊かな子とは限りません。友達が少ない子が、劣っているわけでもありません。むしろ、慎重で観察力があり、自分のペースで人との距離を測れる子こそ、将来にわたって安定した人間関係を築ける資質を持っているとも言えるのです。

「友達がなかなかできない」という現象には、いくつかの要素が関係しています。性格の問題だけではありません。周囲の環境、同じクラスにどんな子がいるか、先生の指導方針、学校の雰囲気など、多くの要素が影響しています。そして何より、「相性」があります。たとえ良い子同士であっても、相性が合わなければ、無理に仲良くする必要はありません。

ですが、子どもたちの間では「仲良し=善」「ひとり=悪」という空気が強く存在しています。これは、アニメやドラマなどの影響もありますし、大人たちの会話の中にも無意識の偏見が含まれていることが多いのです。

たとえば、親同士がこんな会話をしていたらどうでしょうか。

「うちの子、もう友達ができて毎日遊んでいるんですよ」 「え〜すごい!うちはまだみたいで心配で…」

この一言が、子どもにとってどれほどプレッシャーになるか。友達の有無を成績のように比較されると、子どもは「できなかった自分」を否定的に受け止めてしまいます。まるで「友達がいないことは失敗」のように感じてしまうのです。

しかし、人との関係はテストの点数のように評価できるものではありません。何人と話したか、何人と連絡先を交換したか、それは本質ではありません。もっと大事なのは、その関係の中に「安心感」があるか、「尊重」があるかということです。

また、友達ができないことで落ち込んでしまう子どもに、こんな声かけをしてしまう親もいます。

「もっと自分から話しかけなさいよ」 「挨拶くらいちゃんとしないと、友達できないよ」

こういった言葉は、子どもにとって“ダメ出し”に聞こえます。もちろん、社会性を育てるための助言として意図されているのでしょう。でも、傷ついている子どもに必要なのは、戦い方のアドバイスではなく、安心して休める場所です。

「無理して友達作らなくていいよ」 「ひとりでいても、何も悪くないよ」

そんな風に伝えてもらえたら、どれほど救われる子がいるでしょうか。

「友達になろう」という言葉の裏にあるプレッシャー

新年度、特に入学やクラス替え直後には、先生や親が子どもに頻繁に投げかける言葉があります。

「新しい友達作ってね」 「まずは誰かに声をかけてみよう」 「困っている子がいたら声かけようね」

このようなフレーズは、一見優しさと善意に満ちた言葉に思えます。実際、悪意が込められているわけではありませんし、社会性を育てる教育の一環としても機能しています。

しかし、それがノルマやミッションのように聞こえてしまうこともあるのです。

子どもにとって、見知らぬ人に話しかけるという行為は、想像以上にエネルギーのいることです。自分がどう思われるか、変に思われないか、嫌がられないか……そうした不安を抱えながら「友達になろう」と声をかけるのは、心の強さが求められます。

しかも、それがうまくいかないと、「やっぱり自分はダメなんだ」と自己否定につながりやすいのです。つまり、「友達を作ろう」という言葉は、子どもによっては「作らなければならない」「作れない自分は失格」というプレッシャーになり得るのです。

特に、集団において自分のポジションを探るのが苦手な子や、敏感で繊細な子にとっては、「友達を作ることが当然」とされる空気は非常に息苦しいものです。大人でも、初対面の人に話しかけるのが苦手な人はたくさんいますよね。それを子どもにだけ「できて当たり前」と押しつけるのは、少し乱暴ではないでしょうか。

また、先生が子どもたちに「みんなで仲良くしよう」「友達100人作ろうね」と言うと、それを文字通り受け取ってしまう子どももいます。人によっては、その期待に応えようと必死になり、自分の本心を無視して関係を築こうとしてしまいます。自分に合わない子とも無理に仲良くしようとし、心がすり減っていくのです。

だからこそ、「友達になろう」という言葉は慎重に使うべきです。友達づくりを推奨するのではなく、「一人でいても悪くない」「誰かと話さなくても、そのままで大丈夫」というメッセージを、同時に伝える必要があります。

本当に優しさを持った人間とは、誰に対しても敬意を持って接することができる人です。無理に誰かとつながるのではなく、心が自然と近づく相手と、時間をかけて関係を築いていく。それが、本来の「友達」であるべきです。

「友達の輪」は、ときに壁にもなる

学校生活において、「友達の輪」という言葉はポジティブなイメージで語られることがほとんどです。「友達の輪が広がる」「輪の中で楽しむ」など、何かと良いことの象徴として扱われます。

しかし、輪は内側と外側を分ける構造となります。

つまり、誰かが輪をつくるということは、同時に「その外にいる誰か」が必ず生まれるということなのです。子どもたちはその構造を直感的に理解しています。輪の中に入っているか、弾かれているか、あるいは入っていてもいつ出されるかわからない。そんな不安定な立場の中で、多くの子どもが神経をすり減らしています。

新学期の4月、特にこの「輪」が急速にできあがっていく時期です。最初の数日で誰と一緒にいるかによって、その後の人間関係がある程度決まってしまうような空気があるのです。これは高校生、中学生、小学生でも共通です。

そのため、子どもたちは焦ります。「どこかのグループに入らないと」と。まるで椅子取りゲームのように、居場所が限られているかのような感覚に襲われ、誰かと早くつながらなければ、自分の居場所がなくなってしまうと思い込むのです。

ここで問題なのは、「輪に入ることがゴール」になってしまうことです。本来、友達とは信頼関係を築き、気の合う人同士が自然にできるものです。しかし、輪に入りたいという気持ちが強くなりすぎると、「誰でもいいから一緒にいたい」「嫌われてもいいからついていくしかない」といった依存的な関係を生み出しやすくなります。

さらに怖いのは、一度輪ができると、それを守ろうとする心理が働くことです。その結果、輪の外にいる子に対して無意識に壁をつくってしまう。「この子は違うグループの子」「あの子はちょっと変わってるから…」という線引きが生まれます。そしてそれが、無視や排除といった形で表面化していくこともあります。

また、輪の中にいる子どもも安心ではいられません。常に「この輪から外されないように」という緊張感の中で過ごすことになります。何か意見を言うと嫌われるかもしれない。違う行動を取ると裏切り者扱いされるかもしれない。そういった不安が、輪の中にいるはずの子どもたちをも苦しめているのです。

つまり、「友達の輪」というものは、うまく機能すれば支え合いの場になりますが、構造としてはとても不安定で、排他的になりやすい面を持っています。

だからこそ、私たち大人は「輪に入ること」を目標にしない姿勢を子どもに伝える必要があります。「無理に入らなくていい」「一人でいることも素敵だよ」という価値観を共有することで、輪の“外”を恐れない心を育てていくことができるのです。

人間関係で大切なことは「敬意」

では、友達を作ることよりも本当に大切なこととは何でしょうか?

それは「敬意」です。誰かを尊重する気持ち、違いを認める態度、自分自身を過小評価しない誇り。これらがあってこそ、人との関係が健全に成り立ちます。そしてこれは、友達かどうかに関係なく、すべての人間関係に共通する軸なのです。

友達になる、ならないというのは、一種の“選択”です。しかし、敬意を持って接することは基本となります。好き嫌いとは関係なく、目の前の人に対して最低限の礼儀と配慮を持って接する。それができる子どもは、たとえ友達が少なくても、必ず誰かから信頼されます。

反対に、「仲良し」だけれど敬意がない関係は、すぐに壊れます。たとえば、いじめの加害者はよく「遊びだった」「仲良かったから冗談のつもりだった」と言います。しかし、それは敬意のない関係です。「嫌だ」と感じている相手の気持ちを無視している時点で、それは友情ではありません。

私たち親が子どもに教えるべきなのは、「友達と仲良くすること」ではなく、「すべての人に敬意を持つこと」です。たとえクラスメイトと距離を置いていたとしても、その子の考えや好み、家庭環境を馬鹿にしないこと。表面的に仲良くするのではなく、心の奥で他者を尊重すること。

そして同じくらい大切なのは、自分自身に対しても敬意を持つことです。自分の感じ方や考え方を大切にし、「一人でいたい」という気持ちも否定しない。それができるようになると、無理に輪に入る必要もなくなり、自分らしさを守れるようになります。

「友達がいてもいなくても、自分を大事にできているなら、それで充分立派だよ」

このメッセージを、ぜひ子どもたちに届けてあげてください。誰かに合わせるより、自分に敬意を持てることの方が、よほど難しくて、価値のあることなのです。

居場所はひとつじゃない

学校という場所は、子どもたちにとって社会の最初の縮図です。そしてその中で、子どもたちは「居場所」を求めます。誰かと笑い合える場所、安心できる空間、自分の存在が認められていると感じられる環境。それが「居場所」です。

ですが、現実には、学校という一つの場所の中だけで、すべての子どもが安心して過ごせるわけではありません。クラスの中に自分と合う人がいないこともあります。部活に馴染めないこともあります。先生と相性が悪いことだって、当然あります。

それなのに、多くの子どもは「学校の中で居場所がない=自分が悪い」と考えてしまいます。周りにうまく溶け込めないことを、自分の性格のせいにしてしまうのです。

そして親もまた、無意識のうちに「学校でうまくやれているか」を基準に子どもの社会性を判断してしまいがちです。「クラスに友達いるの?」「今日は誰と遊んだの?」そんな会話が続くと、子どもは「学校の中で居場所をつくらなきゃいけないんだ」というプレッシャーを背負い込んでいきます。

でも、本当に大切なことは、ひとつの場所で全てを完結させないことです。居場所は、たくさんあっていい。むしろ、たくさんあったほうがいいのです。

家が居場所であること。家族との時間が心を守ってくれること。それだけでも、十分かけがえのない支えです。親が「学校だけが全てじゃないよ」と本気で思えていれば、子どもはずっと楽になれます。

また、習い事や地域の活動、趣味のコミュニティ、ネット上の健全な関係など、学校とは違う場所に安心できるつながりを持っている子は、学校で孤立しそうになっても心が折れにくくなります。選択肢があるというのは、心の逃げ道があるということ。どこかでつまずいても、別の場所で自分を取り戻せるからです。

特に今の時代は、リアルだけでなくオンラインの世界でも、自分と似た価値観を持つ人とつながれるようになりました。昔のように「学校が世界の全て」ではなくなっています。だからこそ、私たち大人が視野を広げ、「学校の中だけで居場所をつくらなきゃ」という呪縛を解いてあげることが必要です。

学校はあくまでひとつの環境です。向いていない子もいて当然です。そういう子にこそ、「学校に馴染めなくても大丈夫」「君にはもっと別の居場所がある」と伝えてあげること。それが、本当に必要な親の支援だと思うのです。

子どもが安心して戻ってこられる場所、それが家庭であること。その信頼があれば、学校で居場所が見つからなくても、子どもは折れずにいられます。

おわりに:誰のものでもない、自分のペースで歩ける子へ

ここまで、「友達を作らなくてもいい」というテーマで、学校生活や人間関係、親の関わり方についてお話してきました。しかし「友達がいらない」と言いたいのではありません。友達ができること、それ自体は素晴らしいことです。

ただ、「作らなきゃダメ」という空気に支配されて、自分を曲げたり、心を削ったりしてしまうことの方が、ずっと問題だと思っているのです。

4月というのは、子どもたちにとってとても特別で、同時にとても繊細な時期です。まわりは新しい友達を作っているように見えて、自分だけが取り残されているように感じる子もたくさんいます。無理にグループに入ろうとして傷つくこともあります。ちょっとした言葉や態度で、大きく自信を失ってしまうこともあります。

そんな時、子どもが帰ってくる場所である私たち大人が、何を言ってあげられるか。それがすべてだと思うのです。

「ひとりでも大丈夫だよ」 「ゆっくりでいいよ」 「無理しなくていい」

そう言ってあげられるだけで、子どもは少し楽になります。親が自分を否定せず、信じてくれている。それだけで、また明日、学校へ行こうと思えるのです。

この春、すぐに友達ができる子もいれば、なかなか関係が築けない子もいます。でもそれは、勝ち負けではありません。どちらが偉いわけでも、どちらが間違っているわけでもない。それぞれが、それぞれのペースで、少しずつ居場所を見つけていけばいいのです。

そして子ども自身が、自分の「心地よい距離感」を知り、誰にも合わせすぎず、自分らしく生きていけるようになること。それこそが、人生における本当の強さだと私は信じています。

だから、無理して輪に入らなくてもいい。 気の合う人がいなければ、一人でいてもいい。 居場所は、ひとつじゃなくていい。

大人がこの価値観をしっかり持っていれば、子どもはもっと自由になれます。もっと自分を肯定できるようになります。そして、そういう子どもこそ、いつか本当に信頼できる友達と出会えたときに、深く、あたたかい関係を築けるようになるのです。

どうかこの春、自分のペースでゆっくり歩いているすべての子どもたちに、あたたかい目を向けてあげてください。彼らが「誰かになる」ことではなく、「自分である」ことに誇りを持てるように。私たち大人は、焦らず、寄り添い続けましょう。


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子どもが学校に行きたくないと言った時の初動

子どもが学校に行きたくないと言った時の初動についての記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
「学校に行きたくない」と子どもが訴えたとき、親としては戸惑いを感じると思います。昨日まで普通に登校していたのに突然拒否するケースもあれば、以前から不安そうな様子が見えていたケースもあるでしょう。

この時、保護者の対応次第で子どもの心理状態は大きく変わります。適切な初動をとることで、問題の長期化を防ぐことができます。

参考:文部科学省「不登校への対応について


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第1章:初回は休ませる

「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、最も避けたいのは 焦って無理に登校させること です。
もちろん、理由が単なる気分的なものであれば登校したほうが良い場合もあります。しかし、強いストレスを抱えたまま無理に登校させると、状況が悪化しやすくなります。

では、なぜ初回は休ませたほうが良いのでしょうか?


1. 休ませることの目的を理解する

初めて「行きたくない」と言ったときに休ませるのは、「登校のハードルを下げるため」ではなく、「子どもが抱えている問題を整理する時間を確保するため」です。

休むこと自体を「特別なこと」にはせず、以下のような目的意識を持つことが重要です。

  • 子どもの状態を観察する
    → 何が原因なのかを整理し、状況を把握する時間を作る。
  • ストレスが蓄積するのを防ぐ
    → 無理に行かせることで悪化する可能性があるストレスを、一時的にリセットする。
  • 長期化を防ぐための対策を考える
    → 休むことを一つのきっかけとして、今後の対応を計画する。

このように、単に「休ませる」のではなく、目的を持った「適切な休息」をとることが大切です。


2. 休ませるべきケースと休ませないほうが良いケース

全ての「学校に行きたくない」が同じ重さを持つわけではありません。そのため、休ませるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

休ませたほうが良いケース

  • 学校の話題を出すと涙ぐむ、またはパニックを起こす
    → 強い不安や恐怖がある可能性が高い。
  • 身体症状(頭痛、腹痛、吐き気など)が頻発する
    → ストレスによる身体反応の可能性がある。
  • 理由を聞いても、明確な説明ができず苦しそうにしている
    → 本人も整理できていない状態。時間をかけて話をする必要がある。
  • 登校を強く促すと、家の中で暴れる、塞ぎ込むなどの行動が見られる
    → 無理に行かせると逆効果になる可能性がある。

こうした場合、無理に登校させるのは逆効果です。一旦休ませ、冷静に状況を整理する時間を確保しましょう。

登校を促したほうが良いケース

  • 宿題が終わっていない、テストが嫌だなど、明確な理由がある
    → 単なる回避行動の可能性が高い。
  • 友達とケンカしたが、大きな問題ではなさそう
    → 一時的な対人関係のトラブルは、むしろ学校で解決することが望ましい。
  • 「なんとなく行きたくない」と言うが、気分的なものに見える
    → 休むことで「行かなくてもいい」と思うリスクがある。

このようなケースでは、できるだけ登校を促しつつ、「行けば何とかなる」という経験を積ませることが重要です。


3. 休むことが「楽な選択」にならないようにする

ここで注意したいのは、「休むことが当たり前になると、登校がさらに難しくなる」という点です。

特に、「休んだ日は好きなことをしてOK」という雰囲気になってしまうと、子どもは 「休んだほうが楽だ」と学習 してしまいます。

そのため、休んだ日は以下の点を意識しましょう。

  • 生活リズムを崩さない(朝食は通常どおり、日中はリビングで過ごす)
  • 宿題を先生に確認して取り組ませる
  • 休むことを「解決のための時間」と位置づける

「今日は休むけど、これからどうしていくか考える時間にしようね」と声をかけることで、休むことが「目的」ではなく「手段」だと理解しやすくなります。


4. 親の姿勢が子どもの安心感を左右する

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親が慌てると、その不安が子どもに伝染します。

親が焦って「どうして?何があったの?」と詰め寄ると、子どもは余計にプレッシャーを感じ、口を閉ざしてしまうことがあります。

逆に、「そうか、今日は行きたくないんだね」と一度受け止めることで、子どもは安心し、自分の気持ちを整理しやすくなります。

大切なのは、休むことを特別扱いせず、冷静に対応することです。


5. 学校との連携の準備をする

子どもが「行きたくない」と言った時点で、保護者がすべきことの一つが 学校との連携を考えること です。

初回の段階では、学校に対して「今朝、子どもが学校に行きたくないと言っています。今日は休ませる予定ですが、担任の先生と少しお話しできればと思います」と簡単に連絡を入れておくと良いでしょう。

この時点で、子どもにとって負担にならない範囲で 学校での様子を知ること が重要です。
たとえば、

  • 最近の授業の様子
  • クラスで何かトラブルがあったか
  • 先生が気づいている変化

こうした情報を集めることで、次の対応が取りやすくなります。

第2章:当日の時間の使い方

ここまでで「初回は休ませる」ことの理由についてお話ししました。ただし、学校を休ませることは「問題を解決する手段」であり、「最終的な目的」ではありません。

子どもが休んだその日を どのように過ごすか が、今後の登校を左右する重要なポイントとなります。

もし、何もせずに一日が終わると、「休んだら楽だった」「また休んでもいいかも」という気持ちが芽生えやすくなります。一方で、「学校に行けなくなった自分はダメだ」と思い込み、より気持ちが沈んでしまうこともあります。

休むこと自体は悪いことではありませんが、休んだ日の過ごし方を工夫しなければ、不登校の長期化に繋がる可能性が高まります。

では、当日の時間をどのように使うべきか、具体的に見ていきましょう。


「学校に行きたくない」と言って休んだ日は、子どもにとって 「自分の気持ちと向き合う時間」 です。

ただし、子どもに「今日は自分の気持ちを整理してね」と言っても、うまくできるわけではありません。そこで、親が適切にサポートすることが大切です。

ここでは、当日を 午前・午後・夜 の時間帯に分けて、適切な対応を考えていきます。

1. 午前:気持ちを落ち着ける時間

朝、学校に行かないと決まると、子どもは「ほっとしたような」「罪悪感があるような」複雑な気持ちを抱えます。

この時間帯にやるべきことは、次の3つです。

① 生活リズムを崩さない

休んだ日は 「いつも通りの朝を過ごす」 ことが重要です。

  • 朝ごはんを食べる(できれば家族と一緒に)
  • 着替える(パジャマのまま一日を過ごさない)
  • 布団やベッドにこもらない

「せっかく休んだんだから、ゆっくり寝かせておこう」と思うかもしれませんが、ダラダラと寝続けると、頭が働かず気持ちの整理もうまくいきません。

「今日は家にいるけど、普通の生活をしようね」と伝え、学校に行く日と大きく変わらない朝の習慣を続けましょう。

② 子どもの気持ちを整理する時間を作る

子どもは「何が嫌で学校に行きたくなかったのか」を 自分でも整理できていないことが多い です。

そのため、親が「どうして行きたくないの?」と問い詰めても、うまく言葉にできないことがほとんどです。

そこで、次のような方法を試してみましょう。

  • 「今の気持ちを書き出してみようか?」と提案する
    → 文字にすることで、漠然とした不安が整理しやすくなる。
  • 「どんなことがあると、学校に行きたくないと思う?」と具体的に聞く
    → 「先生が怖い」「友達が冷たい」「授業が分からない」など、何が原因なのか探る。
  • 「昨日までは普通に行けていたけど、今日はどうだった?」と前日との違いを考えさせる
    → 急に登校できなくなった背景を探るヒントになる。

このとき、子どもが「分からない」と言ったら無理に答えを出そうとしないことも大切です。 「そうだよね、まだ整理できてないかもしれないね」 と寄り添うことで、子どもが安心して考えられる環境を作れます。

③ 学校に連絡を入れる(親が対応)

休むと決めた場合、 学校には必ず連絡を入れる ことが大切です。

この際、「体調不良」とだけ伝えるのではなく、できるだけ 担任の先生と直接話す のが望ましいです。

伝えるべき内容の例:

  • 「今朝、子どもが学校に行きたくないと言い出しました。」
  • 「本人に理由を聞いていますが、まだ整理できていないようです。」
  • 「今日一日は家で様子を見ますが、何か学校で気になることはありましたか?」

先生からの情報が、子どもの状況を理解する手がかりになることもあります。


2. 午後:具体的な対策を考える時間

午前中は「気持ちを落ち着ける時間」でしたが、午後は 「これからどうするかを考える時間」 です。

ここで重要なのは、休むことを特別なことにしないこと です。

① 「休めば楽になる」と思わせない工夫

子どもが「休むこと=自由に過ごせること」と認識すると、登校のハードルが一気に上がります。

そのため、午後は次のようなルールを作るとよいでしょう。

  • ゲームやスマホの使用時間を制限する
    → 「学校に行かない日だからこそ、使う時間を考えよう」と伝える。
  • 学校の課題を少しでもやる
    → 宿題や教科書を開くだけでも、「学校と完全に切り離される」ことを防げる。
  • リビングで過ごす時間を作る
    → 一日中自室にこもると、「外に出る」ことがより苦痛になる。

② 子どもと一緒に対処法を考える

子ども自身に「これからどうするか」を考えさせることが大切です。

  • 「明日、学校に行けそう?」
  • 「もし行くとしたら、何が不安?」
  • 「先生に相談できたら少し楽になる?」

ここで 無理に登校を約束させる必要はありません
ただし、「どうすれば行けそうか」を一緒に考えることが重要です。


3. 夜:翌日の準備と安心感を与える時間

夜は、「明日どうするか」を整理する時間です。

  • 「明日はどうする?」と確認する(プレッシャーをかけすぎないように)
  • 準備だけはしておく(ランドセルや制服を揃えておく)
  • 「いつでも相談していいよ」と伝える(親が味方であると感じさせる)

ここで改めて確認したいのは、休むこと自体は問題ではなく、休んだ後の対応が不登校に繋がるかどうかを決める という点です。

1日休んだらスッキリして、翌日から普通に行けた場合は問題ありません。しかし休んだことで安心して、翌日も「また行きたくない」と言い始めた場合は、早めの対策が必要です。

なぜなら、不登校は 「急に起こるもの」ではなく、「少しずつ登校が難しくなっていくプロセス」 を経て長期化することが多いからです。

では、不登校に繋がらないようにするためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?

第3章:不登校に繋げないための工夫

不登校を防ぐためには、「休み方」を間違えないことが最も重要です。

  • 「休めば解決する」思考にならないようにする
  • 「登校しやすい環境」を少しずつ整えていく
  • 「親も一緒に考える」という姿勢を持つ

これらを意識しながら、具体的な工夫を見ていきましょう。


1. 「休めば解決する」という誤解を防ぐ

子どもが「行きたくない」と言ったとき、すぐに休ませることで「嫌なら休んでもいいんだ」と学習してしまうと、登校のハードルがどんどん高くなってしまいます。

これは、子どもが「休むことの快適さ」に慣れてしまうためです。

そのため、次のような意識を持つことが大切です。

① 休むことを「解決策」ではなく「一時的な対応」と伝える

「休むのはいいけれど、それで問題がなくなるわけじゃないよね」と、子どもが 「休めばすべてが解決するわけではない」と理解する ように促しましょう。

たとえば、こんな声かけが効果的です。

  • 「今日はお休みして気持ちを落ち着けるのはいいけれど、学校のことは考えないままでいいのかな?」
  • 「休んだことで少し落ち着いたら、どうすれば行きやすくなるか考えてみようね。」

「休む=問題を先送りにしているだけ」ということを、無理のない範囲で伝えることが大切です。

② 休むことのルールを決める

休むことが続くと、不登校になりやすくなります。そのため、「休むことのルール」を決めておくと、ズルズルと長引くのを防げます。

たとえば、次のようなルールを設定すると良いでしょう。

  • 昼間はリビングで過ごす(自室にこもらない)
    → 自室に閉じこもると、気持ちの整理が難しくなるため。
  • 休んでも、学校の時間割に沿って何かする(勉強・読書など)
    → 何もせずに過ごすと、「休む=楽になる」という意識が強くなるため。
  • ゲームやスマホの使用時間は学校が終わる時間までは制限する
    → 「休んだ方が楽しい」と思わないようにするため。

このように、「休むことを無条件に快適なものにしない」という工夫が、不登校を防ぐポイントになります。


2. 登校しやすい環境を整える

「行きたくない」と言った背景には、必ず何かしらのストレスがあります。

そのため、「学校に行くことのハードルを下げる」工夫をすることで、登校を促しやすくなります。

① 「全部行くのは無理」なら「少しだけ行く」を目標にする

「朝から夕方まで学校にいるのが無理」なら、まずは「午前中だけ」「3時間目から行く」などの選択肢を作ると良いでしょう。

  • 「午前中だけ行って、給食を食べずに帰ってきてもいいよ。」
  • 「今日は3時間目から行ってみようか?」

このように 「全部登校するのは無理でも、一部だけならできるかも」 という視点を持たせることが重要です。

② 「学校がつまらない」「意味がない」と言う場合の対応

「学校が嫌」という理由が、単純に「つまらない」「行く意味がない」といったものである場合、次のようなアプローチが有効です。

  • 「学校に行くことには、今すぐは分からないけど、将来のためになることがあるよ。」
  • 「今は楽しくないかもしれないけど、大人になったときに『行ってよかった』と思うことがあるかもしれないよ。」

また、「学校の何が嫌なのか」を一緒に整理するのも効果的です。

  • 授業がつまらないのか
  • 先生が苦手なのか
  • 友達との関係が難しいのか

原因を特定し、それぞれの対策を考えることが、登校を後押しするカギになります。


3. 親の関わり方がカギを握る

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親の対応次第で状況が大きく変わります。

① 「見守る」だけではなく、一緒に解決策を考える

「子どもが行きたくないなら、無理に行かせない」という考えは、一見優しさのように思えます。

しかし、「そのまま何もしない」=「問題を放置する」ことになりやすい ため、適切な対応とは言えません。

親として大切なのは、「どうすれば学校に行けるようになるか、一緒に考える」 姿勢を持つことです。

② 「大丈夫だよ」と言いすぎない

「学校に行きたくない」と言われると、つい「大丈夫だよ」と言って安心させたくなるかもしれません。

しかし、子どもにとっては「何が大丈夫なの?」と逆に不安が増してしまうことがあります。

代わりに、次のような声かけを意識してみましょう。

  • 「大丈夫かどうか、一緒に考えてみようか?」
  • 「何が不安か分からないままだと、もっとしんどくなるかもしれないね。」

「親が一緒に考えてくれる」という安心感 を持たせることが、不登校を防ぐカギになります。

「学校に行きたくない」という子どもの言葉は、単なる気まぐれではなく、何かしらのサインです。そのため、初回は冷静に受け止め、一時的な休息を認めつつ適切な対応を進めることが重要です。

その日の過ごし方や親の関わり方次第で、不登校に繋がるかどうかが決まります。「休めば解決する」という誤解を防ぎ、登校しやすい環境を整えながら、子どもと一緒に前向きな解決策を考えていきましょう。焦らず、一歩ずつ対応することが大切です。

各章のまとめ

各章要点必要な行動
初回は休ませる「学校に行きたくない」と言われたら、無理に登校させず、一時的に休ませる。ただし、休むこと自体を目的にせず、問題を整理する時間とする。休む理由を整理し、子どもの状態を観察する。学校に連絡し、状況を共有する。生活リズムを崩さず、休むことを特別視しない。
当日の時間の使い方休んだ日をどう過ごすかが、今後の登校を左右する。何もせずに終わると「休むほうが楽」と感じ、不登校に繋がりやすくなる。朝は普段通りに起きて朝食をとる。気持ちを整理する時間を作り、学校と連絡を取る。午後は今後の対策を話し合い、ゲームや動画の時間を制限する。
不登校に繋げないための工夫「休めば解決する」と思わせないようにし、登校のハードルを下げる工夫が必要。親が「見守る」だけではなく、一緒に解決策を考える姿勢が重要。休むルールを決め、昼間はリビングで過ごさせる。部分登校の選択肢を考える。子どもが不安に感じるポイントを整理し、少しずつ解決策を見つける。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

新学期に向けた家庭で出来る不登校対策とは?

新学期に向けた家庭で出来る不登校対策とは-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防と再登校支援を専門とし、ToCo(トーコ)株式会社の顧問として多くの家庭が抱える課題に寄り添いながら解決策を提案してきました。

新学期が近づくにつれ、不登校に関するご相談が増える傾向にあります。「うちの子は大丈夫だろうか」「また学校に行けなくなってしまうのではないか」と不安を抱える保護者の方々に向けて、家庭でできる不登校対策を詳しくお伝えしていきます。

本記事では、新学期における不登校の実態と傾向、不登校になりやすい理由、子どもの兆候の見つけ方、そして具体的に家庭で実践できる予防策について解説します。これまでの経験から導き出した実践的なアドバイスを盛り込みながら、保護者の皆さまにとって役立つ情報を提供することを目指しました。

参考:文部科学省「不登校に関する基礎資料


目次


第一章:新学期における不登校の傾向と実態

新学期が始まると小中学生の不登校が急増することは、学校界隈ではよく知られている事実です。特に、夏休み明けや春休み明けのタイミングでは、不登校の子どもが一気に増える傾向にあります。では、なぜこの時期に不登校が増えるのでしょうか?

文部科学省の調査によると、小中学生の不登校の発生率は年々上昇しています。かつては「不登校=特殊なケース」と考えられていましたが、現在では決して珍しいことではなくなりました。特に新学期は、これまで普通に通っていた子どもが突然学校へ行けなくなるケースが多発する時期です。

1.1 休み明けに急増する不登校

夏休みや冬休みが終わると、一部の子どもは登校を渋るようになります。これは単なる「休みボケ」ではなく、心理的なハードルが一気に高まるためです。

長期休暇中、子どもは学校のストレスから解放され、自分のペースで過ごせます。しかし、休みが終わると、そのストレスが再び襲ってきます。「あの先生とまた顔を合わせるのか」「クラスメイトにどう思われるだろう」「勉強についていけるか不安だ」といった不安が膨れ上がり、登校が難しくなるのです。

特に、前学期の終わりに何らかのトラブルを抱えていた場合、その不安はさらに強まります。例えば、学級内の人間関係に悩んでいた子どもや、成績の低下にショックを受けた子どもは、「新学期に行くのが怖い」という感情を抱えがちです。

1.2 「4月と9月」は不登校の壁ができる時期

新学期に不登校が増える理由の一つに、「環境の変化による心理的な負担」があります。

・4月の新学期は、クラス替えや担任の変更があり、新しい環境に適応しなければなりません。「また一から友達を作らなければならない」「新しい先生とうまくやれるだろうか」という不安が、不登校につながるケースが多いです。

・9月の二学期は、夏休み中の生活リズムの乱れが影響します。長期休暇中は遅寝遅起きの習慣がついてしまい、朝早く起きて登校すること自体が負担になりやすくなります。また、学習面での遅れが気になり、授業についていけるかどうかの不安が強まる時期でもあります。

1.3 親が「うちの子は大丈夫」と思っていても油断できない

「うちの子はこれまで学校に行けていたから、新学期も問題ないだろう」と思っていると、突然不登校の兆候が現れることがあります。不登校の原因は、目に見える問題だけではなく、子どもの内面で静かに進行していることも多いのです。

例えば、前年度は何とか頑張っていた子どもが、新学期を迎えた途端に気持ちが折れてしまうケースがあります。これは、「もう頑張れない」「これ以上は無理だ」と感じる限界点が、新学期のタイミングで訪れるためです。

また、不登校経験のない子どもでも、突然「学校に行きたくない」と言い出すことがあります。これは、長期休暇中に「学校がない生活」の快適さを知り、再び学校へ戻ることが苦痛に感じるためです。

第二章:新学期に不登校になりやすい理由

では、新学期になると不登校が増える理由は具体的に何なのでしょうか?

新学期に不登校が発生しやすい理由は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

2.1 環境の変化によるストレス

新学期は、子どもにとって大きな環境の変化を伴います。クラス替え、新しい担任、新しい友人関係——これらの要素は、子どもにとって大きな心理的負担となります。

特に、内向的な性格の子どもは、新しい環境への適応に時間がかかるため、新学期は極度のストレスを感じやすくなります。また、「去年うまくいったから今年も大丈夫」とは限らず、些細なきっかけで不登校になってしまうことも少なくありません。

2.2 学業の負担と自己肯定感の低下

新学期が始まると、学習内容が難しくなるため、勉強についていけなくなる子どもが増えます。「授業が分からない」「テストの点数が悪い」といった状況が続くと、子どもは自信を失い、登校を避けるようになります。

特に、「完璧主義」の傾向がある子どもは、少しの失敗でも「自分はダメだ」と思い込みやすく、不登校へとつながりやすいです。

2.3 友人関係の不安

新学期になると、「誰と一緒にいるか」という問題が再び浮上します。仲の良い友人とクラスが分かれてしまったり、新しい友人関係を築かなければならなかったりすることで、子どもは大きなストレスを抱えます。

特に、過去にいじめやトラブルを経験した子どもは、「また同じことが起きるのではないか」と恐怖心を抱き、不登校に陥るケースが少なくありません。

第三章:子どもの不登校兆候の見つけ方

新学期に向けて、不登校の兆候を見つけることは非常に重要です。多くの保護者は、子どもが「学校に行きたくない」と口にするまで気づかないことが多いですが、実はその前から様々なサインが現れています。早期に兆候を察知し、適切な対応を取ることで、不登校を未然に防ぐことが可能です。ここでは、子どもが発する「心のSOS」に気づくためのポイントをお伝えします。

3.1 身体的なサインを見逃さない

子どもが不登校になりかけているとき、まず表れるのは「体調の変化」です。これは心理的ストレスが身体的な症状として現れるためで、以下のような兆候が見られることが多いです。

  • 朝になると腹痛や頭痛を訴える
    夜は元気に過ごしているのに、登校時間が近づくと突然「お腹が痛い」「頭が痛い」と言い出す場合は要注意です。これが週に数回続く場合、不登校の前兆である可能性が高くなります。
  • 食欲の変化
    ストレスが強いと、食欲が極端に増減します。「急に食べなくなった」「好きだった食べ物を残すようになった」「お菓子ばかり食べるようになった」などの変化が見られたら、子どもが心理的なストレスを抱えている可能性があります。
  • 睡眠の乱れ
    不登校の兆候として多いのが「睡眠障害」です。夜更かしが増え、朝起きるのがつらくなると、登校がますます困難になります。また、夜中に何度も目を覚ます、悪夢をよく見る、寝る前に不安そうにするなどの様子があれば、学校へのストレスが関係している可能性が高いです。
  • 疲れやすい、だるそうにしている
    心理的な負担が大きくなると、子どもは常に「疲れた」と感じるようになります。特に、休日は元気に遊んでいるのに、平日になると「疲れた」「だるい」と言い出す場合、学校生活への不安やストレスが影響しているかもしれません。

3.2 行動の変化に注意する

子どもが不登校になりかけているとき、日常の行動に微妙な変化が現れます。特に以下のような行動は、子どもが「学校に行くのがつらい」と感じているサインかもしれません。

  • 学校の話を避ける
    以前は「今日、学校でこんなことがあったよ」と話していたのに、急に学校の話題を避けるようになった場合、何かしらの悩みを抱えている可能性があります。特に、「先生はどう?」と聞いたときに曖昧な返事をする、あるいは「別に」「普通」としか答えなくなる場合は要注意です。
  • 準備をしなくなる、忘れ物が増える
    学校へ行くことへの関心が薄れると、宿題をやらなくなったり、持ち物の準備を後回しにしたりするようになります。これまできちんとしていた子どもが、急に「忘れ物が多くなる」「宿題をやらなくなる」といった変化を見せた場合、学校への意欲が低下している可能性があります。
  • 登校時間が近づくと不機嫌になる
    朝になるとイライラしたり、些細なことで怒ったりするのも、不登校の兆候の一つです。学校へ行くことを考えるだけでストレスを感じているため、登校前に機嫌が悪くなることがよくあります。

3.3 子どもの「心の声」を聞く方法

子どもが不登校の兆候を見せているとき、一番大切なのは「無理に問い詰めないこと」です。「どうして行きたくないの?」と問い詰めると、子どもは「責められている」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

代わりに、子どもが話しやすい雰囲気を作ることが大切です。例えば、学校とは関係のない話題から始め、リラックスした状態で「最近どう?」とさりげなく尋ねると、子どもは少しずつ本音を話し始めることがあります。また、親が「学校に行かせなければ」という気持ちを抑え、「あなたが大切だよ」というメッセージを伝えることが、子どもに安心感を与えるポイントです。

第四章:家庭で実践できる不登校予防

不登校を未然に防ぐためには、家庭でのサポートが非常に重要です。ここでは、具体的な予防策について詳しくお伝えします。

4.1 朝の習慣を整える

新学期に向けて最も効果的な対策の一つが、「朝の習慣を整えること」です。夏休みや春休みの間に夜更かしや寝坊の習慣がついてしまうと、学校が始まったときに登校が苦痛になりやすくなります。

具体的な対策:

  • 休み中でも「平日と同じ時間に起きる」習慣を作る
  • 朝ごはんをしっかり食べることで体内リズムを整える
  • 午後は外に出て日光を浴びる(体内時計をリセットする効果がある)

4.2 子どもの不安を和らげる

新学期が近づくと、多くの子どもが「ちゃんとやっていけるかな」「友達と仲良くできるかな」と不安を抱きます。こうした不安を和らげるために、親ができることは何でしょうか?

  • 「大丈夫だよ」と言葉で安心させる
    「新学期、楽しみだね!」とポジティブな声かけをすることで、子どもは「大丈夫なんだ」と思えるようになります。
  • 学校の話を楽しい話題にする
    「今年はどんなことが楽しみ?」と聞くと、子どもは前向きな気持ちを持ちやすくなります。
  • 小さな成功体験を積ませる
    夏休みの間に「できた!」という経験を増やしておくと、新学期に対する自信がつきます。

4.3 「行くのが当たり前」にしない

「学校に行くのが当たり前」と思わせるのではなく、「学校に行くことで楽しいことがある」と感じられる環境を作ることが大切です。そのためには、子どもの気持ちに寄り添いながらも、少しずつ登校に向けた準備を進めていくことが重要です。

第五章:家庭での具体的なサポート方法

ここまで、新学期に不登校が増える理由やその兆候、そして予防のための基本的な対応についてお伝えしてきました。しかし、「兆候に気づいたけれど、実際にどう対応すればいいのかわからない」「すでに学校を休みがちになっているけれど、どうすれば登校を促せるのか」と悩む保護者の方も多いでしょう。

そこで本章では、家庭でできる具体的なサポート方法について詳しくお伝えします。不登校を防ぐためには、子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつ前向きな変化を促していくことが重要です。

5.1 「無理に行かせる」のではなく、「行きやすい環境」を作る

不登校の兆候がある子どもに対して、「明日は絶対に学校に行きなさい!」と強制することは逆効果です。子どもは「行かなきゃいけない」というプレッシャーに押しつぶされ、ますます登校が難しくなってしまいます。

そこで大切なのは、「学校に行くこと」をゴールにするのではなく、「学校に行きやすい環境を作る」ことです。そのために、次のようなアプローチが有効です。

まずは学校の話をしすぎない
「学校はどう?」と何度も聞かれると、子どもはプレッシャーを感じます。学校について話すよりも、日常の楽しい話題を増やし、子どもが安心できる雰囲気を作ることが大切です。

「行かなくてもいい」とは言わないが、「行かないとダメ」とも言わない
「別に行かなくてもいいよ」と言ってしまうと、子どもは「もう行かなくていいんだ」と思い込んでしまいます。一方で、「行かないとダメ!」と強く言うのもプレッシャーになります。「どうしたら行きやすくなるかな?」と、子どもの気持ちを引き出すような声かけが効果的です。

学校とつながりを持ち続ける
完全に学校と断絶すると、復帰のハードルが高くなります。担任の先生と連携しながら、「宿題だけ提出する」「放課後に先生と少し話す」など、少しでも学校とつながりを持ち続けることが重要です。

5.2 「朝の支度」がスムーズにできる工夫

登校を渋る子どもの多くは、「朝の準備」そのものに心理的な負担を感じています。

例えば、制服を着るだけで「学校へ行かなければならない」とプレッシャーを感じたり、ランドセルを背負うと「今日も嫌なことがあるかもしれない」と不安になったりすることがあります。

そこで、朝の支度をスムーズにするために、次のような工夫を取り入れてみてください。

朝起きる時間を一定にする
生活リズムを整えることは、不登校予防において非常に重要です。休日も含め、毎日同じ時間に起床する習慣をつけましょう。

制服を着るのを手伝う
制服を着ることが負担になっている場合は、「一緒に着替えようか?」と声をかけ、少し手伝ってあげるのも効果的です。「今日はとりあえず着替えるだけでもいいよ」と、ハードルを下げることも大切です。

朝食の時間を楽しみにする
「朝起きたら好きなパンがあるよ」「朝ごはんの後に少しゲームしよう」など、朝起きること自体をポジティブなものにする工夫をしてみましょう。

家の中の動線を変える
登校を嫌がる子どもの中には、「玄関を通ること」自体にストレスを感じている場合もあります。例えば、登校時間になったらリビングでしばらく過ごすなど、いつもと違う動線を作ることで、心理的な負担を和らげることができます。

5.3 「小さな成功体験」を積み重ねる

子どもが学校に行くことを不安に感じている場合は、「登校=大きな負担」と思い込んでいることが多いです。そこで、学校に関する「小さな成功体験」を積み重ねることで、「行けるかもしれない」と思えるようにすることが大切です。

「校門まで行ってみる」「教室の前まで行く」など、段階的に進める
「最初から1日フルで登校しなければならない」と思うと、子どもは大きなプレッシャーを感じます。「まずは校門まで行く」「保健室にだけ行ってみる」など、ハードルを低く設定することで、少しずつ慣れていくことができます。

友達と一緒に登校する機会を作る
仲の良い友達と一緒に登校することで、学校への不安が和らぐことがあります。可能であれば、登校前に近所の友達と合流できるような環境を作るのも良いでしょう。

学校以外の「成功体験」を増やす
「学校に行けなかった」という経験が積み重なると、子どもは「自分はダメだ」と思い込んでしまいます。そのため、学校以外の場で小さな成功体験を積むことも大切です。例えば、「料理を手伝った」「好きな本を1冊読んだ」「習い事で先生に褒められた」といった経験が、自信につながります。

第六章:まとめ 〜家庭での関わり方が不登校を左右する

新学期は、不登校が増えやすい時期です。しかし、子どもの小さなサインに早く気づき、適切なサポートをすることで、学校へ行くことへのハードルを下げることができます。

  • 不登校の兆候を見逃さないこと
  • 無理に行かせるのではなく、「行きやすい環境」を作ること
  • 朝の習慣を整え、心理的な負担を減らすこと
  • 小さな成功体験を積み重ねること

こうした工夫をすることで、子どもが「学校に行けるかもしれない」と思えるようになり、不登校を防ぐことができます。

不登校に悩むと、親も「どうすればいいの?」と不安になってしまいます。しかし、焦らず子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつサポートしていくことが何よりも大切です。

お子さんが新学期を迎えるにあたって、少しでも前向きな気持ちになれるよう、この記事が参考になれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問も務めております。
本日は、「私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?」というテーマについてお話しします。

多くの保護者の方々は、私立中学校に通うお子様が不登校になる可能性を低く見積もりがちです。「せっかく頑張って合格したのだから、楽しく通えるはず」「優秀な子が集まっているのだから、不登校になる子は少ないだろう」──このように考えている方も多いのではないでしょうか?
しかし、実態としては、私立中学校でも不登校の問題は深刻です。

2023年度の日本の私立中学校における不登校児童数8,120人に上ります。これは、公立中学校に比べて割合としては少ないものの、「不登校になりにくい」と思われている私立中学校でも、相当数の子どもが学校に通えなくなっていることを意味します。

私立中学校での不登校は、公立中学校とは異なる要因が絡んでいることが多く、対策も異なります。本稿では、私立中学校で不登校になりやすい理由を具体的に掘り下げ、保護者がどのように対応すればよいかを詳しく解説していきます。


目次


私立中学にも不登校はある――「まさかうちの子が」とならないために

「私立だから大丈夫」という誤解

「私立に入れたのだから、不登校の心配はない」と考えていませんか?
実は、この考えが落とし穴です。多くの保護者が、私立中学校における不登校の実態を知らず、「うちの子は大丈夫」と思い込んでしまう傾向にあります。しかし、これは大きな誤解です。

私立中学校では、生徒の質が高い=不登校が少ないというイメージが先行しがちですが、現実には、むしろ私立特有の環境が子どもにとって過度なプレッシャーとなり、不登校を引き起こしてしまうことがあるのです。

例えば、私立中学校に通う生徒の多くは、小学生の頃から厳しい受験勉強を経験しています。長い期間、勉強中心の生活を送り、ようやく合格を勝ち取った子どもたちは、「入学することがゴール」となりがちです。その結果、入学後の学習環境についていけなくなり、燃え尽き症候群のような状態になってしまうこともあります。

また、私立中学校では、同じレベルの学力を持つ子どもたちが集まるため、小学生時代に「学力が武器」だった子どもが、自信を失いやすくなるという問題もあります。「小学校では成績トップだったのに、中学校に入ったら普通になってしまった……」と感じる子どもは少なくありません。このようにして、学力をアイデンティティの拠り所にしていた子どもほど、不登校になりやすい傾向があるのです。

さらに、私立中学校の校風や指導方針が、必ずしも全ての子どもに合うとは限りません。偏差値の高さだけで学校を選んだ場合、入学後に「思っていた雰囲気と違う」「人間関係がうまくいかない」といった悩みを抱え、不登校に繋がるケースもあります。

「私立でも不登校になる可能性はある」と考えることが重要

「私立だから大丈夫」と思い込んでしまうと、子どもの小さなサインを見落としやすくなります。

  • 「最近、学校の話をしなくなった」
  • 「朝、起きるのが極端につらそうになった」
  • 「成績が悪くなったわけではないのに、学校を休みたがる」

こうした変化は、子どもが学校に対してストレスを感じ始めているサインかもしれません。

不登校は、ある日突然起こるわけではなく、徐々に進行していくものです。「私立だから」という理由で安心せず、日々の子どもの様子を注意深く見守ることが大切です。


不登校になりやすい理由①「受験ゴールで燃え尽きてしまう」

受験後に「燃え尽きる」子どもたち

小学生の頃から塾に通い、毎晩遅くまで勉強し、休日もほとんど塾の授業や宿題に追われる生活。こうした努力の末、私立中学校に合格した子どもたちは、「合格」という目標を達成した途端に、エネルギーが尽きてしまうことがあります。

これは、いわゆる「燃え尽き症候群」の一種です。受験勉強のプレッシャーから解放されると同時に、「もう頑張らなくてもいい」という気持ちになり、学校生活に対する意欲を失ってしまうのです。

文部科学省の調査では、中学生の不登校の理由のトップが「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった(32.2%)」という結果になっています。このデータからも分かるように、受験がゴールとなり、その後の目標を見失ってしまうことが、不登校の原因の一つになっているのです。

対策:「受験合格」がゴールではないことを伝える

この問題に対処するには、受験の段階から「合格が最終目的ではない」ことを子どもに伝えることが重要です。

具体的には、以下のような点を意識するとよいでしょう。

  1. 「受験の先」に目を向ける習慣をつける
    受験は、あくまでも人生の通過点であり、そこからさらに成長していくためのステップの一つに過ぎません。「合格したら終わり」ではなく、「その先にどんな楽しいことが待っているか」を親子で話し合うことが大切です。
  2. 入学後の生活を具体的に想像させる
    「どんな部活に入りたいか?」「どんな友達を作りたいか?」など、合格後の生活を具体的に考えさせることで、受験だけに集中しすぎることを防げます。
  3. 成功体験を「受験」以外にも持たせる
    受験以外にも、小さな成功体験を積み重ねることで、「勉強以外にも楽しいことがある」と思えるようになります。

このように、受験がゴールではなく、新たなスタートであることを伝え、受験後のモチベーション低下を防ぐことが、不登校を防ぐ上で重要です。

不登校になりやすい理由②「勉強面のアイデンティティが崩れる」

「小学校では優秀だったのに……」という現実

私立中学校に進学する子どもたちは、小学生時代に塾通いを経験し、学力で高い評価を得ていた子が多いです。「勉強が得意」「テストで良い点を取ることが誇りだった」「クラスで一番だった」という経験は、彼らの自尊心を形作る重要な要素となります。

しかし、私立中学校に入ると状況は一変します。今まで「学年トップ」だった子も、周囲を見渡せば同じレベルの生徒ばかり。自分の「強み」だった勉強が通用しないと気づいた瞬間、アイデンティティが崩れ、精神的に大きなダメージを受けるのです。

たとえば、こんなケースがあります。

  • 小学校時代は「勉強が得意な自分」が誇りだったのに、中学校では普通レベルになってしまった。
  • どんなに頑張っても、学年トップの座には届かない。
  • それまで親や先生に褒められてきた「成績」という評価基準がなくなり、自分が価値のない人間に思えてしまう。

これらの経験は、子どもの自己肯定感を大きく傷つけ、「どうせ自分はダメなんだ」「頑張っても意味がない」と思い込ませてしまいます。そして、勉強への意欲を失い、学校そのものに行く意味を感じられなくなるのです。

対策:「勉強ができる=価値がある」という考えを変える

この問題に対処するためには、「勉強ができること=人間として優れていること」ではないという価値観を、親子で共有することが重要です。

  1. 「努力の過程」を評価する習慣をつける
    点数や順位ではなく、「どれだけ頑張ったか」を認めるようにしましょう。たとえば、「結果よりも、コツコツ勉強したことがすごい」といった声かけを意識することで、子どもは結果に一喜一憂せず、努力そのものを大切にするようになります。
  2. 「できること」を広げる機会を作る
    勉強だけが子どもの価値ではありません。スポーツ、音楽、アート、プログラミングなど、他の分野にも目を向けることで、「自分には勉強以外にも強みがある」と気づくことができます。
  3. 「勉強ができるのは能力ではなく、適性の問題」だと伝える
    学力は、生まれ持った才能ではなく、環境や努力の積み重ねによるものです。「今まで塾の勉強が合っていただけで、中学の勉強はまた違うもの」と考えることで、「できなくなった自分=価値がない」とは思わなくなります。

このような考え方を身につけることで、「勉強が得意」というアイデンティティが揺らいでも、他の部分で自信を持つことができるようになります。


不登校になりやすい理由③「偏差値重視で校風が合わない」

「偏差値の高い学校=良い学校」ではない

私立中学校の選び方として、「偏差値の高い学校に行くことが成功」という考え方が一般的です。しかし、この価値観に従って学校を選んだ結果、子どもが不登校になってしまうケースが少なくありません。

特に、以下のようなケースでは注意が必要です。

  • 「とにかく偏差値の高い学校を目指そう」と親が決めた
  • 「友達が受験するから、自分も同じ学校に行きたい」と決めた
  • 学校の特色や校風を十分に調べず、学園祭やパンフレットの印象だけで決めた

子どもはまだ、「自分に合う環境とは何か」を正しく判断するのが難しい年齢です。親が「良い学校」と思って選んでも、子どもにとっては「合わない学校」だったということは珍しくありません。

対策:「偏差値」よりも「子どもに合う環境」を優先する

  1. 学校選びの際、実際の雰囲気を確認する
    偏差値だけでなく、学校の雰囲気を肌で感じることが重要です。最近では、学校の口コミを確認できるサイト(https://school-reviews.com/)などもあるため、事前に調査するのもおすすめです。
  2. 「どういう学校なら楽しく通えるか?」を話し合う
    「校則が厳しすぎると辛い」「競争が激しい学校は合わないかも」など、事前に子どもの性格と学校の特色が合うかを考えておくことが大切です。
  3. 入学後に「合わない」と感じたら、転校を検討するのも選択肢
    どうしても学校が合わない場合は、無理に通わせ続けるのではなく、転校を視野に入れることも一つの手です。しかし、環境の変化はデメリットが大きいため事前の学校選択がより重要です。

学校選びの段階から、「偏差値」よりも「子どもにとって相性が良いかどうか」を優先することが、不登校を防ぐための大きなポイントとなります。


私立中学校で不登校にならないために

私立中学校は、公立に比べて教育環境が整っている反面、「受験ゴールによる燃え尽き」「学力アイデンティティの喪失」「偏差値重視のミスマッチ」といった独自の不登校リスクが存在します。

では、親としては何を意識すればよいのでしょうか?

  1. 受験はゴールではなく、スタートであることを伝える
    → 受験の成功にとらわれず、その後の学校生活を楽しむことを意識させる。
  2. 勉強以外の成功体験を持たせる
    → 学業以外の分野でも「自分には価値がある」と感じられる機会を作る。
  3. 学校選びは「偏差値」よりも「相性」を重視する
    → 校風や雰囲気が子どもに合っているかをしっかり確認する。

不登校は突然起こるものではなく、小さなサインの積み重ねによって生じます。早めに気づき、適切な対応をすることで、未然に防ぐことができます。

「私立だから安心」ではなく、「私立だからこそ注意すべき点がある」と認識し、お子様の変化を見逃さないようにしましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

ソーシャル・エモーショナル学習 〜社会を生き抜く力を育む〜

ソーシャル・エモーショナル学習-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの子どもたちとその保護者の方々と向き合ってきました。不登校は決して珍しいことではなく、日本の小中学生の中でも増加傾向にあります。しかし、親としてどのように子どもを支えればよいのか、その答えを見つけることは容易ではありません。

今回お伝えしたいのは、子どもが社会の中で生き抜く力を身につけるために有効な「ソーシャル・エモーショナル学習(SEL)」についてです。これは、単なる学力や知識ではなく、感情や対人関係を適切に理解し、管理しながら社会と関わっていく力を養う学習法です。不登校の背景には、対人関係の悩みや自信の喪失、感情のコントロールの難しさがある場合が多く、SELを学ぶことが状況改善の大きな助けになると考えています。

参考:文部科学省「生徒指導提要


目次


ソーシャル・エモーショナル学習(SEL)とは?

ソーシャル・エモーショナル学習(Social Emotional Learning、以下SEL)は、1960年代にイェール大学の研究プロジェクトとして始まりました。その後、アメリカのCASEL(Collaborative for Academic, Social, and Emotional Learning)が中心となり、学校教育の中にSELを取り入れることを推進しています。SELは単なる「情緒教育」ではなく、自己理解、感情のコントロール、対人スキル、意思決定能力を統合的に育むプログラムです。

日本ではまだ広く浸透していませんが、欧米では教育現場だけでなく、企業研修や社会人向けのプログラムにも取り入れられています。なぜなら、どんなに優れた知識や技術を持っていても、感情を適切に扱えず、人間関係を築けなければ、社会の中で成功することが難しいからです。

特に、不登校の子どもたちにとってSELは重要な学習要素です。学校に行けなくなった背景には、対人関係でのストレスや自己肯定感の低下、感情のコントロールの難しさがあることが多いため、それらを改善するための具体的な手段としてSELが有効なのです。


SELの5能力

① Self Awareness(自己の理解)

自己の理解とは、自分の感情や思考、強みや弱みを客観的に認識する力のことです。不登校の子どもたちは、自分の気持ちをうまく言葉にできなかったり、「なぜ学校に行きたくないのか」が分からなかったりすることが多くあります。

例えば、ある日突然「学校に行きたくない」と子どもが言ったとしても、その理由が明確に説明されることは少ないでしょう。しかし、よく話を聞いてみると、「友達との関係がうまくいかない」「授業が分からないことで自信をなくしている」「先生に怒られるのが怖い」といった背景が見えてくることがあります。

親としてできることは、子どもの感情に寄り添いながら「今、どんな気持ちなのか」を言語化するサポートをすることです。「何が嫌なの?」と問い詰めるのではなく、「最近、学校でどんなことがあった?」と出来事を話しやすい形で聞くことが大切です。子ども自身が自分の感情を理解し、それを適切に表現できるようになることで、不登校の原因の一端を明らかにし、解決に向けた第一歩を踏み出せるのです。

② Self Management(セルフマネジメント)

セルフマネジメントとは、自分の感情をコントロールし、ストレスに適応する力のことです。不登校の子どもたちは、ストレスに対処する手段を持たないまま問題に直面し、結果的に「学校に行かない」という選択をしてしまうことがあります。

ここで重要なのは、「感情をコントロールする力」は生まれつき備わっているものではなく、学習によって身につけられるということです。例えば、大人でも仕事で失敗したときに「もうダメだ」と落ち込むことがありますが、「次はこうしよう」と前向きに切り替えられる人もいます。その違いは、生まれつきの性格ではなく、これまでに培った「感情の管理スキル」によるものなのです。

親ができるサポートの一つとして、「感情の整理法」を教えることが挙げられます。例えば、「気持ちが落ち込んだときは、深呼吸をしてからお気に入りのノートに気持ちを書き出す」「嫌なことがあった日は、お風呂に入ってリラックスする」など、具体的な対処法を一緒に考えることで、子ども自身が感情をコントロールする力を育むことができます。

③ Social Awareness(社会や他者の理解)

社会や他者の理解とは、自分以外の人々の感情や立場を理解し、共感する力のことです。不登校の子どもたちにとって、この力は特に重要です。なぜなら、不登校に至る原因の多くは、他者との関係性の中で生まれる「分かってもらえない」「どう接していいか分からない」といった悩みだからです。

学校は、勉強を学ぶ場であると同時に、集団の中で人間関係を築く場でもあります。しかし、クラスの中で「空気が読めないと言われる」「友達と話が合わない」「先生が何を考えているのか分からない」と感じる子どもにとって、学校は居心地の悪い場所になりがちです。その結果、「学校に行かなくていいなら、楽だ」と思い、不登校が長期化することもあります。

では、どうすれば社会や他者の理解を深めることができるのでしょうか?

まず、親ができることは「共感の経験を積ませる」ことです。たとえば、「友達が怒っていたら、どんな気持ちになっているのかな?」「先生が厳しく指導するのは、どんな理由があると思う?」と、日常の出来事を一緒に考える時間を持つのも有効です。ポイントは、子どもが自分の意見を言いやすい雰囲気を作ること。正しい答えを求めるのではなく、「そんなふうに感じたんだね」と受け止めることが大切です。

また、映画や本を活用するのもおすすめです。フィクションの世界には、さまざまな立場の人々が登場します。たとえば、『ズートピア』のような映画は、「偏見を持たれる側」「誤解をされる側」の視点を学ぶのに最適です。物語を通じて「もし自分がこの立場だったら?」と考える習慣をつけることで、子どもは少しずつ他者の気持ちを理解する力を養っていくのです。

④ Relationship Skills(対人関係スキル)

対人関係スキルとは、人と適切にコミュニケーションをとり、良好な関係を築く能力です。不登校の子どもたちは、「どう話せばいいのか分からない」「話しかけてもらえないと、自分からは話せない」という悩みを抱えていることが多いです。

ここで重要なのは、「コミュニケーション能力は、生まれつきの才能ではなく、学習できるスキルである」ということです。たとえば、人と会話をするときの基本として「相手の話をよく聞く」「自分の気持ちをシンプルに伝える」といったことを、練習によって身につけることができます。

親ができるサポートとしては、「会話の練習をする」ことが挙げられます。たとえば、子どもが友達と話すのが苦手なら、「どうやって話しかければいいか、一緒に考えてみよう」とロールプレイをするのも有効です。「〇〇君が好きなスポーツの話をしてみるのはどう?」と具体的なアドバイスをすることで、子どもは会話の糸口をつかみやすくなります。

また、「あいづちの打ち方」や「相手の話を広げる質問の仕方」を学ぶことも大切です。「へえ、そうなんだ!」と相手の話に興味を持つ姿勢を示すだけで、会話はスムーズに進むようになります。こうしたスキルは、学校だけでなく将来の職場や社会生活でも役立つ重要な能力です。

⑤ Responsible Decision Making(責任ある意思決定)

責任ある意思決定とは、自分の選択が周囲にどのような影響を与えるかを考え、適切な判断を下す力のことです。不登校の子どもたちにとって、このスキルは「学校に行くかどうか」を自分で考える上で非常に重要です。

「学校に行きたくない」という気持ちは、決して否定されるべきものではありません。しかし、「行かない」という選択を続けることで、将来的にどんな影響があるのかを、子ども自身が理解することも必要です。

ここで大切なのは、「子どもに考えさせる機会を作る」ことです。たとえば、「学校に行かないことで、困ることは何があるかな?」「行った場合、少しでも楽になる方法はある?」と、一緒に選択肢を考える時間を持つことが効果的です。「どうしたい?」と問いかけることで、子どもは自分の行動について責任を持つ意識が芽生えます。

また、小さな成功体験を積むことも重要です。「今日は玄関まで行けた」「学校の前まで行けた」という一歩一歩の成功を積み重ねることで、「やればできる」という自信につながります。この積み重ねが、最終的に再登校への道を開くことになるのです。


「成長マインドセット」の重要性

不登校の子どもたちが再び社会に向き合い、自分の未来に希望を持つためには、「成長マインドセット(Growth Mindset)」の獲得が欠かせません。これは、アメリカの心理学者キャロル・ドゥエックが提唱した概念で、「能力や才能は生まれつき決まっているものではなく、努力と工夫によって成長できる」という考え方を指します。

この考え方の対極にあるのが「固定マインドセット(Fixed Mindset)」です。これは、「自分の能力には限界があり、努力しても変わらない」という思い込みのことを指します。不登校の子どもたちは、過去の失敗体験や他者との比較の中で、「どうせ自分はできない」「頑張っても意味がない」と感じてしまい、固定マインドセットに陥っていることが多いのです。

この章では、不登校の子どもに「成長マインドセット」を持たせることの重要性と、それを育むための親の関わり方について詳しく解説します。


なぜ「成長マインドセット」が不登校の克服に必要なのか?

不登校になる理由はさまざまですが、多くの子どもが「失敗の恐怖」「自信の喪失」「周囲との比較」によって学校に行くことをためらっています。

例えば、学校の授業についていけなくなった子どもは、「自分は勉強ができない」「もう取り返しがつかない」と考え、努力する気力を失います。また、友人関係でのトラブルを経験した子どもは、「自分は人と関わるのが下手だ」「どうせまた傷つく」と思い込み、新しい関係を築くことを避けるようになります。

しかし、成長マインドセットを持つことで、こうした思考を「今はできなくても、努力すれば変わる」「失敗は学びのチャンス」というポジティブなものに変えることができます。これにより、不登校の子どもが「少しずつでも前に進んでみよう」と思えるようになるのです。

「成長マインドセット」を持つ子どもと持たない子どもの違い

固定マインドセット成長マインドセット
「自分には才能がない」「今はできないけれど、努力すればできるようになる」
「勉強しても意味がない」「勉強を続ければ少しずつ成長できる」
「友達ができなかったから、もうダメだ」「前はうまくいかなかったけれど、次は違う方法を試してみよう」
「失敗は恥ずかしいこと」「失敗は成長のために必要な経験」

この違いが、長期的な行動の変化を生み出します。

では、親として子どもに「成長マインドセット」を育むためには、どのような関わり方をすればよいのでしょうか?


親ができる「成長マインドセット」の育成方法

① 結果ではなく「努力のプロセス」を認める

不登校の子どもは、「結果」によって評価されることに敏感です。学校のテストの点数や、友人関係の成功・失敗ばかりが重要視されると、「自分はうまくできないからダメなんだ」と思い込んでしまいます。

親として意識すべきことは、結果ではなく、努力の過程を認めることです。

例えば、テストの点数が悪かったとしても、「この問題に挑戦したことがすごいね」「前回よりも少し解ける問題が増えたね」と、努力したことに目を向ける声かけをしましょう。これによって、子どもは「自分の頑張りには意味がある」と感じられるようになります。

② 失敗を「学びの機会」として捉える

不登校の子どもたちは、過去の失敗経験によって「もう傷つきたくない」と思い、新しいことに挑戦するのを避けることがあります。

このとき親ができるのは、「失敗を否定しないこと」です。「なぜこんなこともできないの?」と責めるのではなく、「うまくいかなかったけれど、次はどうすればいいと思う?」と、解決策を一緒に考える姿勢を持ちましょう。

また、「親自身が失敗をポジティブに捉える姿勢を見せる」ことも大切です。「今日、仕事でミスをしちゃったけど、次はこうしようと思うんだ」と話すことで、子どもも「失敗しても大丈夫なんだ」と感じることができます。

③ 「まだできない」を受け入れる習慣をつける

「できない」という言葉を「まだできない(yet)」という言葉に変えるだけで、子どもの捉え方は大きく変わります。

例えば、「算数が苦手だ」と言う子どもには、「今は苦手かもしれないけど、練習すれば得意になるかもしれないね」と伝えてみましょう。こうすることで、「できない自分」ではなく、「成長途中の自分」として、自分自身を受け入れられるようになります。

④ 小さな成功体験を積み重ねる

成長マインドセットを持つためには、「できた!」という経験を積み重ねることが重要です。

不登校の子どもにとっては、「学校に行くこと」自体のハードルが高いため、いきなり再登校を目指すのではなく、「少しずつの成功」を重ねていくことがポイントです。

例えば、
✅ 今日は朝、制服を着ることができた
✅ 学校の近くまで行ってみた
✅ 友達にLINEでメッセージを送れた

このような「小さな成功」を認めることで、子どもは「やればできる」という感覚を持つようになります。


成長マインドセットがもたらす変化

成長マインドセットを持つことで、不登校の子どもたちには次のような変化が生まれます。

  1. 「どうせ無理」が「やってみよう」に変わる
  2. 失敗を怖がらなくなり、新しいことに挑戦できる
  3. 小さな成功体験が積み重なり、自信が生まれる

この考え方が根付けば、学校復帰だけでなく、将来の仕事や人間関係の中でも、「挑戦する力」を持ち続けることができます。


まとめ

SELを家庭で育むためには、特別な教育プログラムが必要なわけではありません。親が日常の中で「感情を言葉にする」「小さな成功体験を積ませる」「共感を大切にする」「成長マインドセットを意識する」ことが、SELの能力を伸ばすカギになります。

そして、SELが育まれることで、不登校の子どもたちは「自分の気持ちを理解できるようになる」「他人との関係を築く力が身につく」「挑戦する勇気が持てる」といった変化を経験し、少しずつ社会と向き合う力をつけていきます。

焦らず、一歩ずつ。子どもが安心して成長できる環境を作ることこそ、親ができる最も大切なサポートです。

最後に、不登校の克服には「親だけで抱え込まないこと」も大切です。家族だけでは難しいと感じるときは、専門家の力を借りながら、子どもに合った支援を見つけていきましょう。ToCo株式会社では、不登校の子どもたちが少しずつ社会との接点を持てるようサポートを行っています。一人で悩まず、ぜひ相談してください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校のワクチンとなる自尊心とは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの保護者や子どもたちと向き合ってきました。

不登校の原因はさまざまですが、その根底に共通して見られるのが「自己評価の低さ」です。子どもが「自分には価値がない」「どうせ自分なんてダメだ」と思い込んでしまうと、学校生活の中で感じるストレスが大きくなり、そのストレスを乗り越えることが難しくなります。そして、次第に学校に行くことへの抵抗感が強まり、不登校へとつながってしまうのです。

では、なぜ不登校の子どもは自己評価が低くなりやすいのでしょうか? そして、自己評価の低さを克服し、自尊心を育てるために、親としてどのように関わることができるのでしょうか? 本稿では、不登校を防ぐための「自尊心の育み方」について、具体的な方法をお伝えしていきます。

参考:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」


目次


第一章:不登校の子どもの自己評価の低さ

不登校の子どもたちは、驚くほど自己評価が低い傾向にあります。「どうせ自分なんて」「また失敗するに決まっている」「自分は何をやってもダメだ」といった言葉が口癖になっていることが多く、物事に対して消極的になりがちです。こうした思考が続くと、子どもは自分に対する信頼を失い、新しいことに挑戦する気力をなくしてしまいます。

1-1. 自己評価とは何か?

「自己評価」とは、簡単に言えば「自分の能力や価値に対する認識」のことです。たとえば、「自分は数学が得意だ」と思っている子どもは、数学の問題に自信を持って取り組めます。しかし、「自分は計算が苦手だ」と思っている子どもは、問題を見るだけで不安を感じ、解く前から「どうせできない」と決めつけてしまうことがあります。

自己評価には、二つの側面があります。

  1. 能力に対する評価:「自分は何ができるのか?」という認識。勉強ができる、スポーツが得意、人付き合いが上手など。
  2. 存在に対する評価:「自分には価値があるのか?」という認識。誰かに愛されている、必要とされている、役に立っているなど。

自己評価が低い子どもは、このどちらの側面でも否定的な考えを持ちやすくなります。たとえば、成績が下がると「自分は勉強ができないダメな人間だ」と思い込み、友達とのトラブルがあると「自分は嫌われている」と感じてしまいます。

1-2. 自己評価の低さが不登校につながる理由

自己評価の低い子どもは、学校生活でのさまざまな場面で不安を感じやすくなります。たとえば、以下のような状況が考えられます。

こうした不安が積み重なることで、学校に行くこと自体が大きなストレスになり、「学校に行きたくない」「休みたい」という気持ちが強くなっていきます。

さらに、自己評価が低い子どもは、失敗を極端に恐れる傾向にあります。「失敗=自分の価値の低下」と感じてしまうため、失敗するくらいなら何もしないほうがマシだと考えてしまうのです。その結果、新しいことに挑戦する機会が減り、さらに自己評価が低くなるという悪循環に陥ります。

1-3. 自己評価の低さから不登校になった子どもの例

Aくん(小学5年生)は、もともと勉強が得意で、クラスでも目立つ存在でした。しかし、ある日、国語の授業で意見を求められたとき、答えた内容がクラスメートに笑われてしまいました。先生は特に気にする様子もなく授業を進めましたが、Aくんにとっては大きなショックでした。

「自分の考えは間違っているのかもしれない」
「もう発言しないほうがいい」

そう思うようになったAくんは、それ以来、授業で手を挙げなくなりました。すると、テストの点数が少しずつ下がり始め、「自分は勉強ができないんだ」と思うようになりました。それが積み重なり、最終的には「学校に行きたくない」と言い出すようになったのです。

Aくんのように、ちょっとした出来事がきっかけで自己評価が低くなり、それが不登校につながるケースは非常に多いです。特に、真面目で責任感の強い子どもほど、自己評価の低下が大きな影響を及ぼしやすいのです。

1-4. 子どものサイン

子どもが自己評価を低くしているとき、以下のような言動が見られることが多くなります。

こうしたサインに気づいたら、親は早めに子どもの気持ちに寄り添い、サポートしていくことが大切です。自己評価の低さは放っておくとどんどん悪化し、不登校が長期化する原因になってしまうからです。


第二章:自己評価が低いとストレスが増え、乗り越えにくくなる

2-1. ストレスとは何か?

ストレスとは、心や体にかかる負担のことです。人は日常生活の中でさまざまなストレスを受けますが、適度なストレスは成長の糧にもなります。しかし、過度なストレスが続くと、心が疲れ果ててしまい、行動する気力を失ってしまうのです。

特に、子どもにとって学校はストレスが発生しやすい環境です。授業、宿題、友達付き合い、先生との関係、部活動――学校生活のあらゆる場面でストレスが生じる可能性があります。

ストレスを受けやすい子と受けにくい子の違い

同じ出来事が起こっても、子どもによってストレスの感じ方は大きく異なります。たとえば、授業で答えを間違えたときの反応を見てみましょう。

  • 自己評価が高い子:「間違えちゃったけど、次は気をつけよう!」
  • 自己評価が低い子:「やっぱり自分はダメだ……もう二度と発言したくない」

自己評価が高い子は、ミスを「一時的なもの」として受け止め、前向きに考えることができます。しかし、自己評価が低い子は、「間違えた自分は価値がない」と極端に考えてしまい、深いダメージを受けてしまうのです。


2-2. 自己評価が低いとストレスを感じやすくなる理由

自己評価の低い子どもは、学校生活の中で遭遇するさまざまな出来事を「自分に対する否定」として受け止めがちです。その結果、通常なら軽く受け流せるようなことでも、大きなストレスとなってしまいます。

1. 他人の言動を過剰に気にする

自己評価が低い子どもは、周囲の評価を過剰に気にする傾向があります。友達が何気なく言った一言を「自分は嫌われている」と解釈したり、先生のちょっとした指摘を「怒られた」「見放された」と受け取ってしまうことがあります。

2. 小さな失敗を「致命的なミス」だと考える

自己評価が低い子どもは、「失敗=価値がない」と考えてしまいがちです。そのため、小さなミスでも大きなショックを受け、必要以上に落ち込んでしまいます。


2-3. 自己評価が低いとストレスを乗り越えにくくなる理由

自己評価が低い子どもは、ストレスを乗り越える力も弱くなります。なぜなら、「自分にはできる」という自己信頼がないため、困難に直面したときに「無理だ」とすぐに諦めてしまうからです。

1. 「どうせ無理」と思い込み、行動できない

自己評価が低い子どもは、新しいことに挑戦する前から「どうせできない」と決めつけてしまいます。そのため、何か問題が起こったときに、解決しようとする前に諦めてしまうことが多いのです。

2. 「自分の力で解決できる」という感覚がない

自己評価が低い子どもは、「困難な状況に直面したときに、自分の力で乗り越えられる」という感覚(自己効力感)が低くなっています。そのため、少しでも難しい問題にぶつかると、すぐに助けを求めたり、逃げてしまうことが多くなります。


では、どうすれば自己評価を高め、ストレスを乗り越えやすい子になるのでしょうか? その鍵を握るのが「自尊心」です。


第三章:自己評価と自尊心の関係

3-1. 自己評価と自尊心の違いとは?

「自己評価」と「自尊心」は似ているようで異なる概念です。簡単に言うと、

  • 自己評価:「自分は何ができるか?」(能力に対する評価)
  • 自尊心:「自分には価値があるか?」(存在に対する評価)

たとえばテストの結果を見て、自己評価に左右されやすい子は「成績の良し悪し」と「自分の価値」を連動させてしまいます。

一方で、自尊心が根付いている子は、たとえ成績が振るわなくても、生きていることの価値を失わないでいられます。

つまり、自尊心が低ければ「うまくいかないと自分には価値がない」と思い込んでしまいし、周囲の物差しによって自分の幸不幸が大きく左右されてしまいます。


3-2. 自己評価が高くても自尊心が低いとどうなるか?

ここで重要なのは、「自己評価が高い=自尊心が高い」というわけではないということです。たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。

ケース1:優等生タイプの子ども

成績優秀で、先生や親からも「すごいね」「頑張り屋だね」と褒められることが多く、自己評価は比較的高い。しかし、「良い成績を取らないと自分には価値がない」と考えている。そのため、少しでも成績が下がると「自分はダメだ」と強く落ち込み、自己否定の感情に襲われてしまう。

ケース2:スポーツが得意な子ども

運動が得意で、リレーの選手にも選ばれるほど。しかし、運動会当日、緊張で思うように走れず、チームが負けてしまいまった。「私は足が速いから価値がある」と思っていたため、失敗した途端に「私なんていらない」と極端に落ち込んでしまう。

こうした子どもたちは、一見すると自己評価が高そうに見えますが、実際には「条件付きの自己評価」になっており、根本的な自尊心が育っていないことがわかります。


3-3. 自尊心が低いとどうなるか?

自尊心が低いと、どんなに頑張って成果を出しても、自分を肯定できなくなります。その結果、以下のような思考に陥りがちです。

このような状態が続くと、学校での小さな出来事が大きなダメージになり、やがて不登校につながってしまうのです。


3-4. 自己評価よりも自尊心を育てることが大切

ここまでの話をまとめると、不登校を防ぐためには、自己評価を高めるだけでなく、「自尊心を育てる」ことが最も重要だと言えます。自尊心がしっかりと育っていれば、子どもはたとえ失敗しても「それでも自分には価値がある」と思えるようになり、ストレスを乗り越える力がつくのです。

では、どうすれば自尊心を育てることができるのでしょうか?


第四章:自尊心の発育は、親が鍵

子どもの自尊心を育てるためには、どのようなことが必要なのでしょうか?その鍵を握っているのは「親の関わり方」です。

親の何気ない言葉や行動が、子どもの自尊心を育てる土台を作ります。この章では、自尊心を育むために親ができる具体的な関わり方を詳しく解説していきます。


4-1. 親の関わりが自尊心を決める理由

子どもの自尊心は、生まれつき決まっているわけではありません。それは「人との関わりの中で育まれるもの」です。そして、子どもにとって最も身近な存在が「親」なのです。

子どもは、幼少期から親の言葉や態度を通じて「自分はどんな存在なのか?」を学んでいきます。

たとえば、次のような関わりをされた子どもは、それぞれ異なる自尊心を持つようになります。

  • 親が「あなたは大切な存在だよ」と伝えて育てた子 → 「自分には価値がある」と感じる
  • 親がいつも否定的な言葉を使って育てた子 → 「自分なんてダメだ」と思い込む

子どもがどのように自分を捉えるかは、親の関わり方によって大きく左右されるのです。


4-2. 子どもの自尊心を傷つける親の言動

まず、気をつけたいのは「自尊心を傷つける親の言葉や態度」です。親が悪気なく発した言葉でも、子どもは深く傷つき、「自分には価値がない」と感じてしまうことがあります。

1. 否定的な言葉を頻繁に使う

こうした言葉を頻繁に聞かされた子どもは、「自分はダメな人間だ」と思い込むようになります。特に「○○ちゃんと比べて…」という言葉は、子どもの自己評価を下げる大きな要因となります。

2. 結果だけを評価する

結果だけを評価され続けると、子どもは「良い結果を出さなければ、自分には価値がない」と思うようになります。その結果、失敗を恐れ、新しいことに挑戦する意欲を失ってしまうのです。

3. 子どもの話を途中で遮る

子どもが話しているときに、親が途中で話を遮ったり、否定的な言葉を返したりすると、「自分の話は聞いてもらえない」と感じるようになります。これが続くと、子どもは「どうせ話しても無駄だ」と思い、自分の気持ちを表現することをやめてしまうのです。


4-3. 自尊心を育てるための親の関わり方

では、子どもの自尊心を育てるためには、どのような関わり方が必要なのでしょうか?

1. 子どもの存在そのものを肯定する

子どもは、何かができるから価値があるのではなく、「存在そのものに価値がある」という感覚を持つことが大切です。そのためには、日常的に「あなたがいてくれるだけで嬉しい」というメッセージを伝えることが重要です。

たとえば、次のような言葉を使いましょう。

  • 「○○がいてくれると、お母さん(お父さん)は嬉しいよ」
  • 「大好きだよ」

こうした言葉は、子どもにとって「自分は愛されている」「自分には価値がある」という安心感につながります。そして、言葉をかけなくても、愛情を持って見つめることも大きな効果を生みます。

2. 失敗しても肯定的な声かけをする

子どもが何かに失敗したとき、どのように声をかけるかが重要です。

✔ 良い声かけの例

  • 「失敗しても大丈夫だよ」
  • 「やってみたことが素晴らしいよ」
  • 「次はどうしたらうまくいくかな?」

このように、失敗を責めるのではなく、「次につなげる考え方」を伝えることが、自尊心の成長につながります。

3. 子どもの話を最後まで聞く

子どもが話をするときは、途中で口を挟まず、最後までしっかり聞いてあげることが大切です。

「うんうん」「そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の気持ちは大切にされている」と感じるようになります。

また、「どう思ったの?」「それで、○○はどうしたの?」と質問を投げかけることで、子ども自身が自分の気持ちを整理する力を育てることもできます。

「もううちの子は自信をなくしてしまっている」と感じている親御さんもいるかもしれません。しかし、安心してください。親の関わり方を少しずつ変えていくことで、子どもの自尊心は確実に回復していきます。


第五章:自尊心は今からでも回復できる

「うちの子はもう自尊心が低くなってしまっている」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。しかし、自尊心は何歳からでも回復させることができます。たとえ今、子どもが「自分なんて」と思い込んでいたとしても、親の関わり方次第で徐々に自尊心を取り戻すことができます。

この章では、自尊心を回復させる具体的な方法について解説していきます。


5-1. 自尊心を回復させるために親ができること

1. 「結果」ではなく「過程」を褒める

「テストで100点を取ったね、すごい!」といった結果を褒めるのではなく、努力や工夫を褒めるようにしましょう。

例:「一生懸命勉強していたね、その頑張りが素晴らしいよ」

結果だけを褒めてしまうと、子どもは「良い結果を出さなければ価値がない」と思い込んでしまいます。しかし、努力や工夫を褒めることで、「頑張ることそのものが大切だ」と学び、自尊心が回復していきます。

2. 小さな成功体験を積ませる

大きな目標ではなく、日常の小さな成功体験を積み重ねることが重要です。たとえば、

  • 「今日は食器を運んでくれて助かったよ」
  • 「お風呂掃除してくれたんだね、ありがとう!」

こうした些細な成功体験を通じて、「自分は役に立つ存在だ」と実感させることが大切です。

3. 子どもの話を「最後まで」聞く

子どもが話をしているとき、「でもね」「それは違うよ」と途中で遮っていないでしょうか? 自尊心が低い子どもほど、「自分の話なんて聞いてもらえない」と感じやすいため、話を最後まで聞いてあげることが大切です。

「うんうん、そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の考えを大切にしてもらえている」と感じられるようになります。


5-3. 親の変化が子どもに与える影響

親がポジティブな言葉を使い、自分自身の価値を認めている姿を見せることで、子どもも自然と同じ考え方を身につけます。

たとえば、親自身が失敗したときに「もうダメだ」と言ってしまうと、子どもも「失敗=価値がない」と思ってしまいます。逆に、「まあ、失敗しても次頑張ればいいよね」と前向きな姿勢を見せると、子どもも同じように考えるようになります。

子どもの自尊心を回復させるためには、親自身がまず「ありのままの自分を認めること」も大切なのです。


第六章:自尊心を高めやすい家庭とは?

前章では、子どもの自尊心は今からでも回復できること、そして親の関わり方が大きな鍵を握ることをお話ししました。しかし、子どもは家庭という環境の中で育つため、親がどれだけ頑張っても、家庭全体の雰囲気が自尊心を育みやすいものでなければ、根本的な改善は難しくなります。

そこで、次に「自尊心を高めやすい家庭の特徴」について詳しく掘り下げていきます。普段の生活の中で取り入れられる小さな工夫から、家族関係の見直しまで、具体的なポイントを解説します。


6-1. 甘やかさず、褒めることができる家庭

自尊心を育てるためには、褒め方が非常に重要です。ただし、何でもかんでも褒めればよいわけではありません。「甘やかし」と「適切な褒め方」はまったく別のものです。

1. 甘やかしとは何か?

「甘やかし」とは、子どもが本来向き合うべき問題や課題を親がすべて取り除いてしまうことです。たとえば、

  • 「宿題をやらなくてもいいよ」と言ってしまう
  • できなかったことをすぐに親が手助けしてしまう
  • 失敗しても、子どもに責任を負わせずに周囲のせいにする

こうした対応を続けていると、子どもは「努力しなくても何とかなる」「自分は何もしなくても親が守ってくれる」と学習し、自己肯定感が育たなくなります。

2. 正しい褒め方とは?

自尊心を育てるためには、結果だけでなく「努力や工夫」を褒めることが重要です。

✔ 良い褒め方の例

  • 「最後まで頑張ったね!」(努力を認める)
  • 「工夫してやってみたんだね」(プロセスを評価する)
  • 「失敗しても挑戦したのがすごい!」(チャレンジ精神を認める)

✖ 良くない褒め方の例

  • 「すごい!天才!」(漠然と褒める)
  • 「なんでもできるね!」(現実的でない評価)

褒めることで自尊心は高まりますが、それが「条件付きの評価」になってしまうと逆効果です。たとえば、「100点を取ったから偉いね」と言われ続けると、「100点を取らないと自分の価値がない」と思い込んでしまいます。そうではなく、「一生懸命勉強したことが素晴らしい」といったプロセスを評価することが大切なのです。


6-2. 家族で食事を一緒に取ることの重要性

「食事を一緒に取ること」が、自尊心の発育に深く関わっていることをご存じでしょうか? 実は、家庭での食事回数が多い子どもほど自己肯定感が高いという研究結果があります。

1. 食事がもたらす安心感

食事の時間は、家族がリラックスして会話できる貴重な時間です。子どもは、「家族と一緒に食卓を囲む」ことで「自分は受け入れられている」「安心できる場所がある」と感じることができます。

たとえば、毎日「今日、学校でどんなことがあった?」と聞かれるだけでも、子どもは「自分は話を聞いてもらえる存在なんだ」と思えるようになります。こうした小さな積み重ねが、自尊心を高める要因となるのです。

2. 食事中の会話が子どもの心を開く

不登校の子どもは、「どうせ自分の話なんて誰も聞いてくれない」と思い込んでいることが少なくありません。そのため、食事の時間を活用して、少しずつ子どもの話を引き出すことが大切です。

たとえば、以下のような質問をしてみてください。

  • 「今日はどんなことがあった?」
  • 「最近、気になっていることはある?」
  • 「学校の○○先生ってどんな先生?」

子どもが話しやすい雰囲気を作ることで、「自分の気持ちを話してもいいんだ」と感じるようになり、少しずつ自尊心が回復していきます。


6-3. 夫婦仲が険悪ではない(シングルの場合は親の安定が重要)

家庭の雰囲気が、子どもの自尊心に与える影響は計り知れません。特に、夫婦仲が険悪な家庭では、子どもが「自分のせいで喧嘩しているのでは?」と感じ、深い自己否定感を抱くことがあります。

1. 夫婦仲が険悪な場合の影響

夫婦喧嘩が多い家庭では、子どもは次のような感情を抱きやすくなります。

  • 「お母さん(お父さん)が苦しそうなのは、自分のせいかもしれない」
  • 「自分さえいなければ、もっと仲良くなるのかな」
  • 「家庭が不安定だから、学校にも安心して行けない」

このように、家庭の不安定さが子どもの自尊心を低下させる大きな要因になってしまいます。

2. シングル家庭の場合のポイント

一方、シングル家庭では「親の安定」が子どもの安心感に直結します。親が疲れ果てていたり、不安を抱え込んでいたりすると、子どもはそれを敏感に感じ取ってしまいます。

そのため、シングル家庭の場合は「親自身が心を安定させること」が非常に重要になります。たとえば、

  • 親が自分の趣味や楽しみを持つ
  • 「子どもを守らなきゃ」と思いすぎず、肩の力を抜く

親が笑顔でいることが、子どもにとって最大の安心材料なのです。


6-4. 自尊心を高めるために今日からできること

ここまで、自尊心を高めやすい家庭の特徴についてお話ししてきました。最後に、今日から実践できる具体的な方法をいくつかご紹介します。

今日からできることリスト

  1. 毎日、子どもに「おはよう」「おやすみ」を笑顔で伝える
  2. 結果ではなく過程を褒める(努力や工夫を認める)
  3. 1日1回は子どもの話をじっくり聞く(途中で口を挟まない)
  4. 一緒に食事を取る時間を増やす
  5. 親自身も「失敗しても大丈夫」と前向きな姿勢を見せる

自尊心を高めやすい家庭とは、特別なことをする必要はありません。大切なのは「子どもが安心できる環境を作ること」です。

「うちの子はもう自信をなくしてしまっている」と感じている方も、今日から少しずつ変えていけば、必ず子どもの心に届きます。焦らず、一歩ずつ取り組んでみてください。


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優秀な親ほど間違えやすい子育てとは?

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。

多くの親御さんが「子どものために」と思って日々努力をされていることと思います。
特に社会で成功を収めてきた親ほど、子育てにおいてもベストを尽くそうとし、優秀さゆえに細部にまで気を配ることができるかもしれません。しかし、その「優秀さ」が時に子育てにおいて落とし穴になることがあるのです。本稿では、特に不登校の問題に直面した親御さんに向けて、「優秀な親ほど間違えやすい子育て」について考えていきたいと思います。

参考:文部科学省「保護者に対する調査の結果を活用した専門的な分析」
参考:文部科学省「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策について」


目次


第一章:優秀な人の落とし穴

一般的に、IQ(知能指数)やEQ(感情知能)が高い人は、社会において成功を収めやすいとされています。論理的思考力があり、問題解決能力が高く、目標達成に向けて計画的に行動することができるからです。そのため、職場や社会において高く評価され、リーダーシップを発揮する場面も多いでしょう。

しかし、こうした能力が子育てにおいて必ずしもプラスに働くとは限りません。むしろ、「優秀さ」が逆に子どもの自立を妨げたり、親子関係をこじれさせたりすることもあるのです。特に、不登校の問題が発生したとき、親の対応次第で子どもの状態が長引くこともあれば、改善することもあります。その分岐点になるのが、親が「子どもに任せられるかどうか」です。

「子どもに任せられない」親は、無意識のうちに次のような特徴を持っています。

  1. 何事も効率よく進めたい
  2. 失敗をできるだけ避けたい
  3. 共同作業よりも単独で成果を上げることが得意

これらの特徴は、ビジネスの世界では大きな武器になります。プロジェクトを効率的に管理し、問題が起こる前に先回りして対策を講じ、リスクを最小限に抑えることができる。こうした能力があるからこそ、社会で高い成果を上げられるのです。

しかし、これをそのまま子育てに適用するとどうなるでしょうか? 親がすべての問題を先回りして解決してしまうと、子どもは自分で考え、判断し、行動する機会を失ってしまいます。その結果、失敗に対する耐性が育たず、小さな困難にも対処できなくなってしまうのです。不登校になったときも、自ら状況を変える力が弱くなり、親がどれだけ手を尽くしても、子ども自身が動き出すことが難しくなってしまうのです。

「子どものために」と思ってやってきたことが、実は子どもにとっては足かせになっているかもしれません。では、「任せられない」親には、具体的にどのような傾向があるのでしょうか? 次章では、その特徴について詳しく見ていきましょう。


第二章:「任せられない」人の特徴

「子どもに任せられない」親は、一般的に以下のような特徴を持っています。

1. 何事も効率が良い

優秀な人は、限られた時間の中で最大の成果を出すことが得意です。仕事でも家庭でも、できるだけ無駄を省き、最短ルートで物事を進めようとします。例えば、朝の支度が遅い子どもに対して、「自分でやらせると時間がかかるから」と、親がランドセルの準備をしたり、洋服を着せたりすることはないでしょうか?

確かに、そうすることで朝のバタバタを防ぐことはできます。しかし、これは長期的に見れば、子どもにとっての「学びの機会」を奪っていることになります。子どもは試行錯誤しながら、自分で支度の段取りを学びます。時間がかかるのは当然なのです。でも、親がすべてを代わりにやってしまうと、子どもは「自分で考えて動く」経験を積むことができなくなります。その結果、「自分でやる」意識が育たず、何か問題が起こったときも「誰かが解決してくれる」と考えてしまうようになります。

2. 失敗が少ない

優秀な人は、過去の経験から失敗しない方法を知っています。ミスを最小限に抑えることで、成功率を高めることができるからです。しかし、子どもは失敗を通じて学ぶものです。

例えば、テストの前に「この範囲をやっておけば大丈夫」と親が予想を立て、最適な勉強方法を指示する。すると、確かに点数は上がるかもしれません。でも、その過程で「自分で考えて勉強する」力が育たなくなります。子どもは「親が言うことをやっていればいい」と思い込み、自主的に学ぶ習慣がつきません。

また、不登校の子どもの中には「失敗を極端に恐れる」タイプが多くいます。「間違えたらどうしよう」「完璧にできなかったら恥ずかしい」といった気持ちが強くなり、学校に行くこと自体がプレッシャーになってしまうのです。こうした子どもにとって、親の「失敗させない」姿勢は、さらに自信を失わせる要因になりかねません。

3. 共同作業よりも単独で成果を上げるのが得意

優秀な人の多くは、一人で完結できるスキルを持っています。誰かに頼るよりも、自分でやった方が早いし、正確だからです。しかし、子育てにおいては、この「一人でできる能力」がマイナスに働くことがあります。

例えば、子どもが何かを手伝いたがったとき、「自分でやった方が早いから」と断ったことはないでしょうか? 食器を運ぶ、料理を手伝う、掃除をする。どれも子どもにとっては成長の機会です。しかし、親が「自分でやった方が効率的」と考え、子どもに任せることをしないと、子どもは「自分がやらなくてもいいんだ」と学習してしまいます。その結果、主体性が育たず、不登校になったときにも「どうしたらいいかわからない」となってしまうのです。


第三章:「任せられない」人がしてしまいがちな子育て

「子どもに任せられない」親は、日常生活の中で無意識に以下のような行動をとってしまうことがあります。

1. 先回りして準備してしまう

不登校の子どもを持つ親の多くは、「この子の負担を少しでも減らしてあげたい」「できるだけスムーズに学校に戻れるようにしたい」と考えます。その結果、親が必要以上に手を差し伸べてしまうことがよくあります。

例えば、子どもが学校に行く準備をする前に、親がすべて整えてしまう。持ち物の準備、時間割のチェック、場合によっては先生との連絡まで、すべて親が先回りしてやってしまうのです。「子どもに任せると不安だから」「子どもが忘れ物をしてしまうと余計にストレスになるから」といった理由から、このような行動をとってしまうこともあるでしょう。

しかし、このような先回りは、結果的に子どもが「自分で考えて動く力」を奪ってしまいます。何も準備しなくてもすべてが整っている状態に慣れてしまうと、子どもは「自分でやらなくてもなんとかなる」と思ってしまい、自主的に動く意欲が低下してしまいます。

2. 子どもができないことが理解できない

「なんでこんなこともできないの?」と感じたことはありませんか?

親が優秀であるほど、子どもの「できない」という状況が理解しづらくなります。特に、自分が子どもの頃に「普通にできていたこと」に対して、我が子が苦戦しているのを見ると、「なぜ?」という疑問が湧いてくるのは当然です。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、「親と子どもは違う」ということです。親がすんなりできたことでも、子どもにとっては大きなハードルかもしれません。また、不登校の子どもは特に、自信を失っている状態にあるため、「できない」と思い込んでいることが多くあります。

このとき、親が「なんでやらないの?」「ちょっと頑張ればできるでしょ?」と声をかけると、子どもは「できない自分」を責めてしまい、ますます動けなくなってしまいます。結果的に、不登校の状態が長引く原因になってしまうのです。

3. 子どもの手伝いを嫌がる

子どもが何かをやりたがったとき、「いや、それはまだ早い」「時間がかかるから、今はいいよ」と言ってしまったことはありませんか?

例えば、料理をしたがる子どもに対して、「危ないからダメ」「面倒だからやめて」と言ってしまう。掃除を手伝いたがっても、「ちゃんとできないからやらなくていい」と止めてしまう。

これは、親自身が「自分でやった方が早い」と思っていることが原因です。しかし、子どもにとって、こうした日常の手伝いは「自分の存在意義」を感じる大切な機会です。親が「必要ない」と判断してしまうと、子どもは「自分は役に立たない存在なんだ」と思い込んでしまうことがあります。

特に、不登校の子どもは「自分の存在意義」を強く意識します。「自分なんていなくてもいいんじゃないか」「どうせ自分は何をやってもダメだ」といった自己否定の感情を抱えがちです。だからこそ、小さなことであっても「できた!」という経験を積み重ねることが重要なのです。


第四章:子どもの成長の機会を奪わないために

ここまで、「優秀な親が無意識にしてしまう子育ての落とし穴」についてお話ししてきました。それでは、どうすれば子どもが自信を持ち、少しずつ前に進めるようになるのでしょうか?

大切なのは、「できるだけ子どもに任せる」ことです。

1. 「できること」から任せてみる

いきなりすべてを子どもに任せるのは難しいかもしれません。しかし、小さなことから「自分でやる」経験を積ませていくことが重要です。

例えば、学校に行く準備を親がすべてやっていた場合、「明日の持ち物を確認するのは子どもに任せる」というステップから始めてみる。最初は忘れ物をするかもしれませんが、それも学びの一つです。大事なのは、「忘れ物をしないようにすること」ではなく、「自分で考えて準備すること」です。

2. 失敗を前提に考える

「うちの子は失敗したら立ち直れないのではないか」と不安に思うかもしれません。しかし、失敗の経験がないまま成長すると、かえって「失敗への恐怖」が強くなり、ますます動けなくなってしまいます。

親がすべきなのは、「失敗を防ぐこと」ではなく、「失敗しても大丈夫だと思える環境を作ること」です。例えば、「失敗しても親が怒らない」「何がダメだったか一緒に考える時間を作る」といった工夫が効果的です。

3. 「できないこと」ではなく「できたこと」に目を向ける

不登校の子どもは、できないことばかりに目を向けがちです。親もまた、「学校に行けていない」「宿題ができていない」といった「できていない部分」に目が行ってしまいがちです。

しかし、それでは子どもは「自分はダメな存在だ」と思い込んでしまいます。だからこそ、「できたこと」を意識的に見つけてあげることが大切です。

例えば、

  • 朝、少し早く起きられた
  • 一度も外に出なかった子が、コンビニに行く気になった
  • 親と一緒に夕飯を作ることができた

こうした小さな「できた」を積み重ねることで、子どもは少しずつ自信を取り戻していきます。

社会的に優秀な親ほど、「子どもに任せること」が苦手です。しかし、子どもが本当に成長するのは、「自分でやってみる」経験を積んだときです。親が少しずつ「任せる姿勢」を持つことで、子どももまた「自分でやってみよう」と思えるようになっていきます。

最初は不安かもしれません。でも、「子どもを信じること」が、子どもが再び前に進むための第一歩になるのです。

各章内容必要な行動
優秀な人の落とし穴優秀な親は効率的に物事を進めるが、子どもに任せることが苦手。その結果、子どもの自立を妨げることがある。子どもが自分で考える機会を作る。完璧を求めず、子どものペースを尊重する。
「任せられない」人の特徴先回りしがちで、失敗を避け、単独で成果を上げることを好む。そのため、子どもが自分で考える機会を失いがち。すぐに手を出さず、子どもが試行錯誤する時間を確保する。失敗を受け入れる姿勢を持つ。
「任せられない」人がしてしまいがちな子育て親が準備を整えすぎたり、子どもの「できない」を理解できなかったりすると、子どもは動けなくなる。できることは子どもに任せ、小さな成功体験を増やす。親の価値観を押しつけない。
子どもの成長の機会を奪わないために失敗を恐れず、小さなことでも「できた!」を積み重ねることが大切。「できたこと」に注目し、親も子どももプレッシャーを減らす。任せる勇気を持つ。
子どもに任せる勇気を持つ親が「信じる」ことで、子どもも「やってみよう」と思える。失敗も成長の一部と考え、子どもを信じる姿勢を大切にする。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校に繋がる4つのリスク: ④周囲への過敏性(HSP)

不登校に繋がる4つのリスク4周囲への過敏性(HSP)-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因に焦点を当て、子どもたちが再び学校に戻れるようになるための支援を行っています。本日は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、最後のリスクである「周囲への過敏性(HSP)」についてお話しします。

周囲への過敏性、いわゆる「Highly Sensitive Person(HSP)」の特性は、今、多くの子どもたちに見られる傾向の一つです。この特性を持つ子どもは、刺激に対して敏感に反応し、特に学校生活の中での些細なことが心に強い負荷をかける場合があります。その結果、不登校や登校への抵抗といった形で現れることが少なくありません。今回は、このリスクについて深掘りし、不登校を防ぐための具体的な方法を考えていきたいと思います。

参考:文部科学省「不登校の要因分析に関する調査研究」


目次


周囲への過敏性(HSP)の背景と特性

HSPとは何か?

HSPとは、心理学者エレイン・アーロン博士によって提唱された概念で、感受性が強く、周囲の刺激に対して敏感に反応する特性を持つ人々を指します。これは病気や障害ではなく、あくまで生まれつきの性質です。HSPの特性を持つ人々は全人口の15〜20%ほどいると言われ、子どもの中にも一定数存在します。

HSPの特性を持つ子どもたちは、以下のような特徴を示すことが多いです:

  • 周囲の音、光、匂い、温度などの感覚刺激に過敏に反応する。
  • 他人の感情や言葉、表情に強く影響を受ける。
  • 新しい環境や突然の変化に対して不安や恐怖を感じやすい。
  • 細かいことに気付きやすいが、それが逆に負担となる場合がある。

これらの特性を持つ子どもたちは、学校という多様な刺激が集まる場において、特に大きなストレスを感じることがあります。そのため、HSPの特性を理解し、適切にサポートすることが不登校を未然に防ぐためには非常に重要です。

HSPの特性が不登校につながる理由

HSPの特性を持つ子どもたちにとって、学校生活は過酷な環境になることがあります。たとえば、以下のような状況が考えられます。

  • 感覚過敏によるストレス
    体育の授業で使うマットの埃臭さや鉄棒の金属の匂い、教室のざわめきや蛍光灯の明るさなど、学校ではさまざまな感覚刺激があります。これらがHSPの子どもにとっては非常に強い不快感やストレスの原因となることがあります。
  • 人間関係の過剰な負担
    他人の表情や言葉に敏感なHSPの子どもたちは、友達との些細な言い合いや教師からの指摘に深く傷つくことがあります。また、教室内の人間関係における緊張感や圧力を過剰に感じることもあります。
  • 新しい環境への不安
    学年が変わったり、クラス替えがあったりするたびに、新しい環境に適応するための負担が非常に大きくなります。HSPの子どもは「慣れるまで」のハードルが高いため、これが登校しぶりや不登校につながることがあります。

感覚過敏と回避行動の関係

感覚過敏とその影響

感覚過敏は、HSPの特性を持つ子どもたちに共通する課題です。具体的には、以下のような感覚が問題になることが多いです:

  • 音:教室内のざわめきや、授業開始のチャイム、運動会のピストル音など。
  • 匂い:給食の匂いや校庭で使う道具の匂い、体育館の靴の匂い。
  • 触覚:制服のタグの感触や、体育の授業で使う道具の感触。

これらの感覚刺激が強すぎると、子どもは無意識のうちにその場を避けるようになります。最初は「嫌だな」と感じる程度かもしれませんが、それが続くと「行きたくない」という気持ちに変わり、最終的には「行けない」と感じるようになります。

回避行動の強化

不快な状況から逃れたいという気持ちは、人間として当然の反応です。しかし、この回避行動が習慣化してしまうと、不登校という形で現れることがあります。たとえば、以下のような流れです:

  1. 体育の授業で鉄棒の匂いが気になり、それが嫌で体育を休む。
  2. 体育の授業を休んでいると、クラスメートからの視線が気になるようになる。
  3. 体育だけでなく、教室全体に対しても居心地の悪さを感じるようになる。
  4. 最終的に学校全体を避けるようになり、不登校につながる。

このように、感覚過敏と回避行動の連鎖が、不登校を引き起こすリスクを高めてしまうのです。

HSPの子どもに適した家庭環境の整え方

HSPの特性を持つ子どもたちにとって、家庭は「心の安定を保つ場所」であることが何よりも重要です。学校生活で受ける刺激やストレスを家庭で適切に緩和できれば、不登校や登校しぶりを防ぐことにつながります。

1. 子どもの感覚に寄り添う環境作り

HSPの子どもたちは、周囲の刺激に対して敏感であるため、自分にとって心地よい環境を持つことが必要です。家庭で以下のような工夫を取り入れると良いでしょう。

  • 静かな空間の確保
    子どもが刺激を感じやすい場合、自分の部屋やリビングの一角に、静かで安心できる空間を用意することが大切です。余計な音や光を排除し、自分のペースでリラックスできる場所を作りましょう。
  • 柔らかい素材や心地よい感触のアイテム
    感覚過敏を持つ子どもは、肌触りの悪い服や寝具にストレスを感じることがあります。子どもが「これなら気持ちいい」と感じる素材のものを選ぶことが大切です。
  • 家庭の匂いを見直す
    家庭内の匂いも子どもに影響を与えることがあります。香りの強い柔軟剤や芳香剤がストレスの原因になる場合もあるため、できるだけ無香料のものを使用するなど、配慮が必要です。

2. HSP特有の感情を尊重した声かけ

HSPの子どもたちは、親の何気ない一言にも敏感に反応します。そのため、家庭での声かけや会話の仕方には注意が必要です。

  • 肯定的な言葉を意識する
    子どもがミスをしたり、苦手なことに直面したりしたときは、「どうしてできないの?」ではなく、「挑戦しようとしたことがすごいね」「次は少しずつやっていこうね」といった肯定的な言葉をかけましょう。
  • 子どもの感情を言葉で受け止める
    HSPの子どもは、感情を自分でうまく処理できないことがあります。たとえば、「学校でみんなが大きな声で話してて疲れた」と言ったときには、「そうだったんだね。疲れるよね」と共感の言葉を返すことで、子どもは安心感を得られます。
  • 過剰に心配しすぎない
    HSPの子どもは親の感情にも敏感です。お母さまが不安そうな表情や言葉を見せると、それを敏感に感じ取り、さらに不安を抱えることがあります。心配する気持ちは自然なものですが、それを子どもに直接伝えすぎないよう注意しましょう。

3. 楽しい体験で刺激に慣れさせる

HSPの子どもにとって、苦手な刺激に慣れることは非常に難しいことです。しかし、「楽しい体験」を通じて徐々に慣れていくことができれば、不登校リスクの軽減につながります。

  • 苦手な状況に段階的に触れる
    たとえば、体育の授業で使う鉄棒の匂いや感触が苦手な場合、まずは鉄棒に軽く触れるところから始め、次に短時間ぶら下がってみる、といった具合に段階的に慣れていくことを目指します。
  • 興味を引き出すアプローチ
    子どもの好きなキャラクターや趣味を取り入れたアプローチを試みることも効果的です。たとえば、鉄棒が苦手な場合でも、好きなキャラクターが描かれた手袋を使うと抵抗が減ることがあります。
  • ポジティブな結果を共有する
    苦手な状況に少しでも触れられた場合は、「よく頑張ったね」と伝え、成功体験として記憶させるようにします。これは、次回以降の挑戦を後押しするモチベーションとなります。

学校との協力でHSPの子どもを支える

家庭だけでなく、学校とも協力しながらHSPの子どもを支えていくことが重要です。

1. 学校との情報共有

HSPの特性について、学校側としっかり情報を共有することで、子どもに適した配慮がしやすくなります。

  • 子どもの特性を伝える
    具体的にどのような刺激に対して敏感なのかを、担任の先生やスクールカウンセラーに伝えることが重要です。たとえば、「体育の授業で使うマットの埃が苦手」といった具体例を挙げると、先生も配慮しやすくなります。
  • 柔軟な対応をお願いする
    子どもが特定の教科や状況で苦手意識を抱えている場合、一時的に授業を見学させたり、別の活動に参加させたりする柔軟な対応をお願いしましょう。

2. 学校全体での支援体制

HSPの特性を持つ子どもに対する支援は、担任の先生だけではなく、学校全体で取り組むべき課題です。

  • 教職員の理解を深める
    HSPについての研修や勉強会を行い、教職員がこの特性を理解することで、学校全体での支援がスムーズになります。
  • 安心感のある環境づくり
    教室内の音量や照明など、子どもが安心して過ごせる環境を整える努力を、学校全体で進めることが重要です。

最後に:HSPの特性に寄り添う

HSPの特性を持つ子どもたちは、確かに周囲の刺激に敏感で、不登校のリスクを抱えやすい側面があります。しかし、その敏感さは、同時に他者への気遣いや、芸術的な才能、繊細な観察力といった「強み」にもつながります。

お母さまが子どもの特性を受け入れ、その良さを認めることで、子どもは自信を持って学校生活を乗り越えられるようになります。不登校リスクを未然に防ぐために、今日から少しずつできることに取り組んでみてください。

ポイント要点必要な行動
周囲への過敏性(HSP)HSPの子どもは感覚刺激や人間関係に敏感で、不登校リスクが高まる傾向がある。感覚過敏を理解し、苦手な刺激を減らす環境作りを行う。段階的に慣れさせ、成功体験を積ませる。
感覚過敏の影響音、光、匂いなどの刺激が強いと、子どもが学校を避ける要因となり得る。教室の環境や学校生活での刺激を減らす工夫を行い、子どもの負担を軽減する。
人間関係の負担他人の言葉や態度に敏感なHSPの子どもは、些細なトラブルでも深く傷つきやすい。トラブルが起きた際には共感を示し、子どもの気持ちを受け止め、安心感を与える。
回避行動の強化過敏さから回避行動を取ると、それが習慣化し、不登校につながりやすくなる。苦手な状況に段階的に触れさせ、無理のない範囲で少しずつ慣れさせる。
学校との情報共有子どものHSP特性を学校に伝えることで、きめ細やかな支援が可能になる。子どもが特に苦手とする刺激や状況を担任に共有し、適切な配慮をお願いする。

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私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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不登校に繋がる4つのリスク: ③兄弟姉妹が不登校

不登校に繋がる4つのリスク3兄弟姉妹が不登校-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因に焦点を当て、子どもたちが再び学校に戻れるようになるための支援を行っています。本日は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、3つ目のリスクである「兄弟姉妹が不登校である」場合についてお話しします。

このテーマは、不登校に悩む保護者の方にとって特に敏感な話題ではないでしょうか。兄弟姉妹の不登校が連鎖するケースは決して珍しいものではなく、多くの家庭で共通する課題です。この問題について深く掘り下げることで、少しでも気づきや不安の軽減に繋がればと思います。

参考:文部科学省「不登校の要因分析に関する調査研究」


目次


不登校の「兄弟姉妹間の連鎖」という現象

不登校が兄弟姉妹間で連鎖する現象は、学校現場や心理支援の現場でも広く知られています。一人の子どもが不登校になると、家族内での雰囲気や環境、さらには家族全体の心理的な影響が、他の兄弟姉妹にも波及することがあるのです。

例えば、不登校の兄や姉と生活を共にする中で、「学校に行かない」という行動が身近に感じられ、それを模倣する形で弟や妹も不登校になるケースがあります。このような場合、不登校という選択肢が家庭内で「あり得ること」として無意識的に受け入れられてしまい、結果として兄弟姉妹間の連鎖が起きやすくなるのです。

また、保護者の対応にも影響が出ることがあります。上の子どもが不登校を経験した場合、保護者は「以前に試したアプローチが効かなかった」という記憶を持つため、次の子どもが不登校になったときに「どうせ無駄だ」と感じてしまい、初期段階での対応が弱くなることがあります。これは決して保護者の怠慢ではなく、過去の経験から来る自然な心理的反応です。しかし、この「対応の弱化」が結果として兄弟姉妹間の不登校の連鎖を助長してしまうことがあります。


「兄弟姉妹間の連鎖」による保護者の悩み

兄弟姉妹の間で不登校が連鎖すると、多くの保護者は自責の念を抱くことになります。「親としての育て方が間違っていたのではないか」「家庭環境が原因ではないか」といった思いが、日々の生活の中で心に重くのしかかるのです。

さらに、周囲からの視線や無理解も保護者を追い詰めます。学校の先生や相談機関のスタッフから「家庭に問題があるのでは?」と暗に示唆されたり、親戚や近所の人々から心無い言葉をかけられたりすることもあります。そのような中で、保護者が「自分が悪い」「自分のせいで子どもがこうなった」と感じてしまうのは当然のことです。

一方で、自責の念が強すぎると、逆に支援を受け入れる意欲が低下するケースもあります。保護者が「自分はもう十分苦しんでいる」と感じるあまり、「これ以上は何もしなくてもいいのではないか」と思い込んでしまうこともあるのです。このような心理的なジレンマが、兄弟姉妹間の不登校の連鎖をより深刻なものにしてしまう可能性があります。


兄弟姉妹の不登校連鎖が起こる理由

兄弟姉妹間で不登校が連鎖する理由には、いくつかの要因が考えられます。ここでは、その主要な理由を詳しく掘り下げてみます。

1. 模倣と学習の影響

子どもたちは、日常生活の中で家族の行動や態度を観察し、それを無意識に模倣する傾向があります。不登校の兄や姉がいる場合、弟や妹は「学校に行かない」という選択肢が現実的なものとして目に映ります。それは単なる模倣行動ではなく、「休むことが許される」という価値観を共有してしまうことにも繋がります。

この模倣の影響は、特に家庭内で不登校の子どもがどのように扱われているかによって大きく異なります。不登校の兄や姉が家族から温かく受け入れられている場合、それを見た弟や妹は「自分も学校に行かなくても大丈夫なのだ」と感じることがあります。一方で、兄や姉が不登校で強く叱責されている場合でも、「学校に行かない」という行動自体が頭に残り、ストレスや不安を感じたときに同じ選択肢を取る可能性があります。

2. 家庭内の雰囲気の影響

不登校の子どもがいる家庭では、自然とその子どもに焦点が当たるようになります。親がその子どもに多くの時間やエネルギーを割くことで、他の兄弟姉妹が心理的に疎外感を覚えることもあります。この疎外感が、不登校の兄や姉への嫉妬や無力感となり、結果的に「自分も学校に行かない」という行動を選択する要因になることがあります。

また、不登校の子どもがいる家庭では、家族全体の雰囲気が不安定になりがちです。親が抱えるストレスや不安が家庭内に伝わり、それが他の兄弟姉妹にも影響を与えることで、不登校が連鎖するリスクを高めます。

3. 保護者の対応の変化

上の子どもが不登校になった経験を持つ親は、次の子どもに対して異なる対応をすることがあります。過去の経験があるために、過度に慎重になったり、逆に諦めが早くなったりすることがあります。この「対応の変化」が、兄弟姉妹間の不登校の連鎖を助長する可能性があります。

たとえば、上の子どもの不登校が長引いた経験から、「無理に登校させても逆効果だ」という思い込みが強くなると、次の子どもが不登校になった際にも早い段階で支援を諦めてしまうことがあります。一方で、過去の経験から「不登校はなんとしても防がなければならない」と強く感じるあまり、子どもに過度なプレッシャーを与えてしまい、それが逆効果となるケースもあります。


兄弟姉妹間の違いを見つめる重要性

兄弟姉妹の不登校が連鎖するケースにおいて、特に重要なのは「個々の子どもの違い」に目を向けることです。同じ家庭で育っていても、兄弟姉妹はそれぞれ異なる性格や価値観、経験を持っています。そのため、一人ひとりの状況や心理的背景を丁寧に見つめることが、支援の第一歩となります。

たとえば、保護者が学校の先生や支援者と話す際、「上の子もこうだった」という話題に触れることがあります。このような場合、支援者は「兄弟姉妹の違い」に意識を向けることで、より個別的な対応が可能になります。「上の子の場合はこうでしたね。では、今回の子どもさんはどうでしょうか?」という問いかけを通じて、兄弟姉妹それぞれの状況を把握することができます。

兄弟姉妹の不登校リスクにどう向き合うか

不登校が兄弟姉妹間で連鎖するリスクを防ぐためには、家庭環境や保護者の対応において意識的なアプローチが求められます。以下に、家庭や学校、そして保護者自身が取り組むべき具体的な方法を詳しく解説します。

1. 家庭での雰囲気づくり

家庭内での雰囲気が、不登校の連鎖に大きな影響を及ぼすことは先述した通りです。したがって、家庭で「安心感」を生み出す雰囲気づくりが重要です。

  • 一人ひとりの子どもに寄り添う
    兄弟姉妹の中で一人が不登校になった場合、親の関心がその子に偏りがちです。これは仕方のないことですが、他の兄弟姉妹が「自分は見てもらえていない」と感じると、心理的な不安定さが生まれる可能性があります。意識的に他の兄弟姉妹とも向き合い、「あなたも大切だ」というメッセージを伝えることが大切です。
    • ポジティブなコミュニケーション
      家庭内での会話が「学校に行くべきかどうか」といったテーマばかりに集中すると、兄弟姉妹全員がプレッシャーを感じることがあります。家族全員がリラックスできる話題を意識的に取り入れ、ポジティブなコミュニケーションを増やす努力が必要です。
    • 家庭のルールを柔軟に保つ
      不登校の子どもに特別な配慮をする必要がある場合でも、家庭全体のルールが極端に変わってしまうと、他の兄弟姉妹が混乱することがあります。たとえば、家事や宿題の取り組み方、食事の時間など、家族全体で共有するルールは、できるだけ公平に保つことが理想的です。
  • 家庭内での「役割分担」を意識する
    不登校の子どもがいる場合、その子どもへの対応に時間やエネルギーが集中することは避けられません。しかし、その結果として他の兄弟姉妹が心理的に孤立してしまうリスクがあります。そこで、家庭内での「役割分担」を意識することが重要です。
    たとえば、次のような対応が効果的です。
    • 兄弟姉妹に役割を与える
      不登校の兄や姉がいる場合、弟や妹に小さな家事や家族の一員としての役割を与えることで、「自分は家庭の中で必要とされている」という実感を持たせることができます。これは、不登校の連鎖を防ぐための心理的な支えになります。
    • 全員が平等に評価される環境を作る
      家庭内で、どの子どもも平等に扱われていると感じられる環境を作ることが大切です。不登校の子どもに対する特別な配慮が必要な場合でも、他の兄弟姉妹にも「あなたも大切な存在だよ」というメッセージを伝えるよう意識しましょう。
  • 兄弟姉妹間の違いを理解し、尊重する
    兄弟姉妹が不登校に陥った場合、保護者はその共通点ばかりに目が行きがちです。しかし、不登校という同じ行動を取ったとしても、その背景にある理由や心理的な動機はそれぞれ異なることがほとんどです。具体的には次のような点に注意を払いましょう。
    • 子どもごとの不安やストレスの要因を探る
      兄が不登校になった理由と、弟が不登校になる理由は必ずしも同じではありません。それぞれの子どもが抱える不安やストレスを丁寧に掘り下げることで、より適切な支援が可能になります。
    • 一人ひとりのペースを尊重する
      兄弟姉妹であっても、性格やペースは異なります。ある子どもには効果的だったアプローチが、別の子どもには逆効果となる場合もあります。そのため、固定観念にとらわれず、柔軟な対応を心がけることが大切です。
  • 兄弟姉妹の「成功体験」を大切にする
    兄弟姉妹間で不登校が連鎖するリスクを防ぐためには、子どもたちが「自分にはできる」という成功体験を持つことが重要です。不登校の子どもに焦点を当てるだけでなく、他の兄弟姉妹にも成功体験を提供する機会を意識的に作りましょう。
    • 得意分野を伸ばすサポートをする
      たとえば、スポーツや芸術、学習など、子どもが興味を持っている分野をサポートすることで、自信を育むことができます。
    • 小さな成功を褒める
      どんなに小さなことでも、子どもが達成感を感じられるような成功体験を見つけ、それを褒めることが大切です。

2. 学校との連携

兄弟姉妹の不登校が連鎖するケースでは、学校との連携も重要なポイントです。学校が家庭の状況を理解し、適切なサポートを提供することで、連鎖を防ぐことができます。

  • 兄弟姉妹ごとの個別対応
    学校が兄弟姉妹を一括りにして対応するのではなく、それぞれの子どもに合わせた支援を提供することが重要です。たとえば、「上の子の場合はこうだったので、同じように対応する」といった固定観念を持たず、一人ひとりの性格やニーズを丁寧に把握する必要があります。
  • 担任と保護者の定期的な連絡
    担任の先生と保護者が定期的に連絡を取り合うことで、家庭の状況を学校が把握しやすくなります。これにより、学校側もより適切な支援を提供できるようになります。
  • 学校全体での理解と協力
    不登校は、個々の担任の先生だけではなく、学校全体で取り組むべき課題です。不登校に対する理解を深めるための研修や勉強会を定期的に実施し、教職員全体で子どもたちを支える体制を整えることが大切です。

3. 保護者自身のケア

兄弟姉妹間の不登校が連鎖するリスクに向き合う中で、保護者自身が心身ともに疲弊してしまうことがあります。お母さま自身のケアも、家族全体の安定に欠かせない要素です。

  • 一人で抱え込まない
    不登校の問題は、一人で解決することが難しい課題です。信頼できる支援者や相談窓口を活用し、気軽に相談できる環境を整えることが大切です。
  • 「完璧な親」である必要はない
    保護者が「すべてを解決しなければならない」と感じてしまうと、かえって家庭内の雰囲気が硬直化することがあります。「自分なりにできることをしている」というスタンスで、少し肩の力を抜くことも必要です。
  • リフレッシュの時間を確保する
    お母さまが自分自身のための時間を持つことも大切です。短い時間でも良いので、趣味やリラックスできる活動を取り入れることで、家庭での対応に前向きな気持ちを保つことができます。

不登校リスクの「連鎖」を防ぐ家庭の力

兄弟姉妹間での不登校の連鎖を防ぐためには、家庭内での支え合いと、柔軟な対応が鍵となります。兄弟姉妹がそれぞれの個性を尊重され、自分の価値を感じられる環境を整えることで、不登校のリスクを大きく軽減することができます。

また、保護者が自分自身を責めすぎないことも重要です。子どもたちの未来は、今日の小さな積み重ねによって変わる可能性があります。焦らず、じっくりと向き合うことで、連鎖を断ち切り、子どもたちがそれぞれの道を前向きに歩むことを支えることができるのです。

ポイント要点必要な行動
兄弟姉妹が不登校である兄弟姉妹間で不登校が連鎖することが多い。模倣や家庭内の対応の影響が大きな要因となる。兄弟姉妹ごとの違いを意識し、それぞれに合った対応を取る。家庭内の役割分担や公平な接し方を心がける。
模倣行動の影響不登校の兄弟姉妹を見て「休むことが許される」という意識が生じ、不登校が広がる可能性がある。不登校の子どもに必要な配慮を行いつつ、他の兄弟姉妹への関心も分散させ、孤立感を抱かせない。
保護者の対応の変化一人目の不登校経験が次の子どもへの対応に影響を与え、早期の支援を躊躇することがある。保護者が自責の念を抱きすぎないよう意識し、専門家や学校のサポートを受けながら柔軟に対応する。
家庭内の雰囲気の影響家庭が不登校の兄弟姉妹に集中すると、他の子どもが心理的に疎外感を抱く可能性がある。家庭内で全ての子どもに公平な関心を向け、ポジティブなコミュニケーションを増やす。
学校との連携の重要性学校が兄弟姉妹それぞれの状況を把握し、適切な支援を提供することが不登校リスク軽減の鍵となる。学校に兄弟姉妹の特性や状況を詳細に伝え、一人ひとりに合った対応を相談する。

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不登校に繋がる4つのリスク: ①不十分な睡眠
不登校に繋がる4つのリスク: ②欠席の経験が多い
不登校に繋がる4つのリスク: ③兄弟姉妹が不登校
不登校に繋がる4つのリスク: ④周囲への過敏性(HSP)


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校に繋がる4つのリスク: ②欠席の経験が多い

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因にアプローチすることで、子どもたちが再び学校に戻れるようになるためのサポートを行っています。

今回は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、2つ目の「欠席の経験が多い」ことについて詳しくお話しします。

不登校を単なる「出来事」として捉えるのではなく、その背景にある心の動きや環境要因を冷静に理解することが、不登校の未然防止に繋がります。

参考:文部科学省「不登校の要因分析に関する調査研究」


目次


「過去の欠席歴」の心理的影響

人間は、どのような理由であれ「自分だけが長期間休む」という状況に直面すると、不安や孤独感を覚えやすくなります。それは大人でも同じことですが、小さな子どもにとっては、こうした経験が心に残す影響は計り知れません。

たとえば、長期間学校を休んだ理由が病気やけがであった場合でも、子どもたちは「自分はずる休みをしてしまった」「他の子のような”普通”ではなくなった」という感覚を持ちやすくなります。そして、復帰する際に、周囲の目や反応を過剰に気にすることが多くなります。この不安感が、「また同じ状況になったらどうしよう」という恐れを生み、さらなる不安を抱かせるのです。

一方で、不登校の直接的な原因が人間関係のトラブルや学校生活への不適応である場合は、「学校に行かない」という選択肢が心の中でより強く根付くことがあります。この選択肢は、最初こそ本人にとって「非常手段」だったかもしれませんが、一度それが功を奏したと感じれば、次回以降は容易に同じ道を選ぶようになります。

これらの心理的な動きは、子どもにとって必ずしも意識的なものではありません。むしろ無意識のうちに、過去の経験が現在の行動に影響を与えているケースがほとんどです。したがって、「過去の欠席歴がある」というリスクは、その子どもの持つ内面的な傾向を理解するための重要な手がかりとなります。


一度不登校を経験した場合の特有の課題

よく頂く質問の一つに、「長期欠席となったことは、その後の学校生活にどう影響しますか?」というものがあります。多くの場合、子どもたちは再登校に成功することで自信を取り戻します。しかしながら、ここで注意すべきは、過去の不登校経験が完全に「リセット」されるわけではないということです。

不登校の経験をした子どもは、再び困難な状況に直面したときに「学校に行かない」という選択肢を容易に思い浮かべる傾向があります。これには心理的なメカニズムが関係しています。人間はストレスを感じると、過去にとった行動を無意識のうちに繰り返しやすくなる性質を持っています。たとえば、大声をあげて不安を解消する人は、次回も同じ行動をとる可能性が高いのです。同じように、「学校を休む」という選択肢が一度でも心に根付いた子どもは、その後も同じ手段を取りがちになるのです。

この傾向は、特に小学校から中学校、そして高校といった新しい環境に移行する際に顕著になります。環境が変わるたびに適応が求められるため、過去の不登校経験が「次もそうなるかもしれない」という不安を呼び起こしやすくなるのです。これは不登校経験のある子どもたちが、新しい環境でつまずきやすい理由の一つとも言えます。


家庭や学校ができる具体的な対策

では、「過去の欠席歴がある」子どもをどうサポートすれば良いのでしょうか?ここでは、家庭と学校で実践できるいくつかの具体的な方法を紹介します。

1. 家庭での対応

お母さまがまず取り組むべきなのは、子どもが「安心感」を持てる環境を整えることです。たとえば、次のような取り組みが効果的です。

  • 肯定的な声かけを習慣化する
    「学校に行かないと将来困る」という脅しではなく、「休むのは悪いことではないけれど、どのように戻るかが大切だよ」といったポジティブなメッセージを伝えることが重要です。
  • 過去の欠席経験について話し合う
    子どもが過去に欠席していた理由や、そのときの気持ちを振り返る機会を持つことで、次に同じ状況になった際の対策を一緒に考えることができます。
  • 失敗を恐れない姿勢を伝える
    子どもが学校生活で失敗することを過剰に恐れないよう、「失敗は成長の一部」という考え方を伝えることも効果的です。

2. 学校での対応

一方で、学校側も過去の欠席歴を考慮した対応が求められます。

  • 復帰支援の計画を立てる
    例えば、長期欠席明けの子どもが徐々に登校日数を増やせるよう、柔軟なスケジュールを組むことが考えられます。
  • 担任の先生のサポート体制
    担任の先生が、子どもの過去の欠席歴や家庭環境についてしっかり把握し、復帰時に積極的なフォローを行うことが大切です。
  • クラスメートの理解を促す
    周囲の生徒に、復帰してきた子どもを受け入れる姿勢を育むための教育を行うことも、再登校を支える上で欠かせません。

最後に

「欠席の経験が多い」というリスクを抱える子どもにとって、最も重要なのは家庭と学校の連携による支援体制です。不登校は決して悪いことではありませんが、その経験を適切に理解し、将来に向けて活かすための努力が必要です。家族が子どもたちの心に寄り添って、安心して自分のペースで前進できる環境を提供することで、不登校という問題を乗り越える道が見えてきます。

ポイント要点必要な行動
過去に多い欠席歴がある過去に長期間の欠席経験がある子どもは、不登校を選択しやすくなる。休むことが「できる選択肢」として心に根付く場合が多い。過去の欠席経験を学校と共有し、復帰時のフォローを丁寧に行う。少しずつ学校生活に慣れる支援を続ける。
欠席が心に与える影響長期間の欠席経験が「再び休むのも簡単」との認識を強化し、不登校を選びやすい心理状態を作る。過去の欠席経験を否定せず、それを乗り越えたことを子どもと共に振り返り、前向きな経験として活用する。
欠席経験の連鎖のリスク休むことに対する心理的なハードルが低くなるため、再度の欠席が起こりやすくなる傾向がある。欠席が続く場合でも、日常生活のリズムを維持するよう促し、登校再開への準備を整える。
学校との情報共有の重要性欠席経験がある場合、担任や支援者に情報を共有することで、きめ細やかなフォローが可能になる。登校再開前の面談や電話連絡を通じて、子どもが安心して学校に戻れる準備を整える。
安心感を与える環境作り長期欠席を経験した子どもが学校に戻る際、安心感を与える環境が重要となる。友人関係やクラスでの過ごし方に配慮し、最初は短時間から徐々に登校時間を延ばしていく。

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不登校に繋がる4つのリスク: ①不十分な睡眠

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、ToCo株式会社の顧問として、不登校が継続してしまう要因に焦点を当て、子どもたちが再び学校に戻れるようになるための支援を行っています。本日は、「不登校を未然に防ぐために知っておくべき4つのリスク」の中から、最初の「不十分な睡眠」に関するリスクについてお話しします。

「睡眠不足」や「睡眠の質の低下」は、不登校のリスクに大きく関わる要因です。子どもの心身の発達にとって睡眠は不可欠であり、そのバランスが崩れると、学業や人間関係、そして何よりも子どもの意欲や自信に深刻な影響を与えます。本稿では、このリスクの背景と、その対策について詳しく考えていきたいと思います。

参考:文部科学省「不登校の要因分析に関する調査研究」


目次


睡眠と不登校の関係性

1. 子どもの「睡眠」の重要性

子ども時代の睡眠は、大人以上に重要な役割を果たします。睡眠中、脳は日中に受けた刺激を整理し、情報を記憶として定着させるだけでなく、体の成長や免疫力の維持にも関わっています。小中学生の子どもたちは、成長ホルモンが夜間に活発に分泌されるため、十分な睡眠が確保されていないと、心身両面での健康に支障をきたすことがあります。

しかしながら、現代の子どもたちは「十分な睡眠」が得られていないケースが少なくありません。理由はさまざまですが、主に以下のような点が挙げられます:

  • スマホやゲームなど、夜遅くまでのデジタル機器使用。
  • 学校や塾の宿題、部活動による過密スケジュール。
  • 家庭の夜型化による就寝時間の遅延。

特にデジタル機器の影響は大きく、夜間にスマホやタブレットを使用すると、ブルーライトが脳の覚醒状態を維持してしまい、入眠を妨げます。その結果、子どもたちは夜更かしが常態化し、翌朝の起床が困難になり、登校が難しくなるのです。


2. 不十分な睡眠が不登校に与える影響

十分な睡眠が取れていないと、以下のような影響が子どもたちに現れることがあります:

  • 気分の不安定さ
    睡眠不足は脳の感情をコントロールする部分に直接影響を与えるため、イライラしやすくなったり、悲観的になったりします。これにより、学校生活における人間関係のトラブルが増える可能性があります。
  • 集中力や記憶力の低下
    学業成績の低下につながり、「学校に行きたくない」という気持ちを引き起こす原因となります。
  • 身体的不調
    睡眠不足は免疫力を低下させ、体調を崩しやすくします。これが繰り返されると、「体調が悪いから学校を休む」というパターンができ、登校意欲の低下につながります。
  • 生活リズムの乱れ
    一度生活リズムが崩れると、元に戻すのは難しくなります。夜更かしと昼夜逆転が習慣化すると、朝起きるのが苦痛になり、不登校のリスクが一気に高まります。

「不十分な睡眠」の背景にある現代的課題

1. スマホやゲームが子どもたちに与える影響

現代の子どもたちは、スマホやゲームといったデジタル機器に囲まれて生活しています。それ自体が悪いわけではありませんが、使用時間や使い方が適切でない場合、睡眠不足を引き起こす要因になります。特に、以下のような影響が指摘されています:

  • 夜間の使用による入眠障害
    スマホやタブレットのブルーライトは、脳内のメラトニン(眠気を誘発するホルモン)の分泌を抑制します。その結果、夜遅くまで覚醒状態が続き、自然な眠気が来にくくなります。
  • 過剰な刺激による興奮状態
    アクションゲームやSNSでのやり取りは、子どもの脳を興奮状態にします。この影響で、ベッドに入ってもなかなか眠れない、という子どもが増えています。

2. 家庭の夜型化と生活リズムの乱れ

家族全体が夜型の生活を送っている場合、子どももそのリズムに引きずられることがあります。たとえば、夜遅くまでテレビを見ていたり、親が夜更かししている姿を見たりすることで、子どもにとって「遅くまで起きていること」が当たり前になります。このような環境では、規則正しい生活リズムを維持するのが難しくなります。


不十分な睡眠を防ぐための具体的アプローチ

睡眠不足が不登校のリスクを高めることを考えると、家庭内で睡眠環境を整え、生活リズムを改善することが重要です。ここでは、具体的なアプローチをいくつかご紹介します。


1. 睡眠環境を整える

子どもがリラックスして眠れる環境を作ることが大切です。

  • 寝室の照明を見直す
    就寝前は、蛍光灯ではなく暖色系の間接照明に切り替えることで、脳がリラックスしやすくなります。
  • デジタル機器の使用制限
    寝る1時間前にはスマホやタブレットの使用を控えるルールを設けることが有効です。リビングに充電スペースを設け、子どもの枕元にスマホを持ち込ませないようにするのも良いでしょう。
  • 快適な寝具を用意する
    マットレスや枕の硬さ、肌触りなどを見直し、子どもに合った寝具を選びます。

2. 規則正しい生活リズムを促す

生活リズムを整えることで、自然と睡眠の質が向上します。

  • 朝日を浴びる
    起床後に太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされ、1日のリズムが整いやすくなります。
  • 食事のタイミングを一定にする
    朝食をしっかりとることで、体が活動モードに切り替わりやすくなります。また、夜遅い時間の食事は避けるようにしましょう。
  • 寝る時間と起きる時間を固定する
    平日と休日で大きく睡眠時間が異ならないようにすることが重要です。

3. 睡眠の大切さを学ばせる

子ども自身が睡眠の重要性を理解することで、主体的に生活を改善する意欲が高まります。科学的なデータを使って、「十分な睡眠が取れていると集中力が上がる」「成績が良くなる」といったメリットを伝えるのも効果的です。


最後に

「不十分な睡眠」というリスクは、不登校の背後に隠れがちな要因の一つですが、実際には非常に大きな影響を及ぼします。子どもたちが十分に眠れる環境を整え、生活リズムを見直すことで、不登校のリスクを大幅に減らすことが可能です。

睡眠は、体と心を整える基盤です。お母さまが家庭全体の生活リズムを見直し、子どもたちが安心して休める環境を整えることが、不登校の予防につながります。まずは、今日からできる小さな一歩を始めてみてください。

ポイント要点必要な行動
不十分な睡眠睡眠不足は気分や集中力の低下、生活リズムの乱れを引き起こし、不登校の大きな要因となる。デジタル機器の使用制限や規則正しい生活リズムを整え、朝日を浴びるなどして睡眠の質を向上させる。
睡眠不足の影響睡眠不足は学業成績や人間関係に悪影響を与え、不登校リスクを高める。規則正しい睡眠習慣を家庭全体で共有し、子どもが十分な休息を取れる環境を整える。
デジタル機器の影響夜間のスマホ使用が睡眠を妨げる要因となり、昼夜逆転の生活を招く可能性がある。スマホやタブレットの使用時間を制限し、寝る1時間前にはデジタル機器を使用しない習慣をつける。
家庭の夜型化家族全体が夜型の生活を送ると、子どももその影響を受けやすくなる。家庭全体で規則正しい生活を心がけ、親が睡眠習慣の良いロールモデルとなる。
睡眠の質の改善時間だけでなく睡眠の質も重要で、環境やリズムが整わないと十分な休息が得られない。寝室の環境を整え、暗く静かな空間を用意する。寝具や照明にも気を配り、快適な睡眠をサポートする。

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ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

家庭における不登校のシグナルとは?

不登校のシグナル、家庭の特徴の見出し

目次


私は、不登校や引きこもりの問題に特化した児童カウンセラーとして、多くの親子と向き合ってきました。不登校は「ただ時期が来れば解決する」ものではありません。見守るだけで自然に元気を取り戻すケースはごくわずかで、多くの場合、家庭や学校、そして社会の環境が改善されなければ、子どもたちの心は傷つき続けます。そして、それらの改善は子ども自身が一人で成し遂げられるものではありません。だからこそ、親として、家族として、「気づき」と「具体的なアクション」が求められるのです。

本稿では、不登校に繋がりやすい「3つの家庭の特徴」についてお話しします。不登校を引き起こす原因には、いくつもの要因が絡み合っていますが、その中で特に共通して見られる家庭環境の特徴を取り上げます。あなたの家庭に当てはまる点がないか、一度立ち止まって見直すきっかけにしていただければと思います。

家庭の特徴要点必要な行動
1. 子どもが学校のことを話さない子どもが学校生活の悩みを抱えている可能性が高い。親が関心を持たない態度も原因になり得る。子どもが話しやすい雰囲気を作り、日常的に学校の話題を自然に引き出す努力をする。話を否定せず共感する。
2. 家族で食卓を囲まない食卓を囲む機会が減ると家庭内の会話が減少し、子どもが孤独感を抱えやすくなる。家庭の一体感も失われる。定期的に家族で食卓を囲む時間を作る。食事中はポジティブな話題を選び、テレビやスマホを避けて会話に集中する。
3. 家庭内がピリピリしている親の口論や不一致が日常化すると、子どもが家庭での安心感を失い、自己否定感を持つ原因になる。親同士で教育方針を一致させ、子どもの前で口論を避ける。親が感情をコントロールし、家庭の雰囲気を穏やかに保つ。

参考:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について


特徴1. 子どもが「学校のことを話さない」家庭

まず最初に取り上げたい特徴は、子どもが学校について家庭でほとんど話さないという点です。「うちの子は学校のことを話さないけど、それって普通なんじゃない?」と思われる親御さんも少なくないでしょう。しかし、この「話さない」という現象は、不登校やその予兆を考える上で極めて重要なシグナルであることが多いのです。

子どもが親に話さない背景

子どもが学校について話さない背景には、いくつかの要因が考えられます。

  1. 学校生活に悩みを抱えている
    子どもが学校で辛い思いをしている場合、そのことを親に話したくないと思うのは自然な反応です。「親を心配させたくない」「言ってもどうせ理解してもらえない」「自分の問題は自分で解決しなければならない」など、子どもの心にはさまざまな葛藤が渦巻いています。 特に、小学校高学年から中学生にかけては、友人関係のトラブルや教師との摩擦、成績へのプレッシャーなどが積み重なり、学校生活に居場所を感じられなくなる子どもが増えます。この段階で子どもがその悩みを親に話せていれば、深刻な不登校に発展することを防ぐ可能性が高いのですが、話さないままでいると、心の中にストレスが溜まり続けてしまいます。
  2. 親が学校生活に関心を持っていない
    一方で、親側の無意識な態度が、子どもに「話しても無駄だ」と思わせてしまうケースも少なくありません。「学校で何かあったの?」と声をかけても、親が忙しそうにしていたり、そもそも話を聞く時間を取らなかったりすると、子どもは「どうせ真剣に聞いてくれない」と感じてしまいます。また、親が学校についての話をネガティブに受け止める場合も、子どもは話すことを避けるようになります。 例えば、「そんなの気にすることないよ」「みんな同じだよ」といった言葉。これは、親としては励ましのつもりかもしれませんが、子どもにとっては「私の悩みは重要じゃないんだ」というメッセージとして受け取られがちです。

親としての会話の工夫

では、子どもが学校について話さなくなった場合、親としてどのように接するべきなのでしょうか。

  • 話を引き出す努力を惜しまない
    例えば、「今日は何が楽しかった?」とポジティブな切り口で質問することから始めてみてください。また、「学校で困っていることはない?」と、具体的に困り事に焦点を当てるのではなく、軽い雑談の中で学校の話題を自然に引き出すのも効果的です。
  • 話す時間を意識的に作る
    子どもが自然と話せる環境を作るためには、家庭内で一緒に過ごす時間を増やすことが大切です。忙しい日常の中でも、1日のうち少しの時間でも「話せる時間」を設ける意識を持ちましょう。
  • 子どもの気持ちを受け止める
    子どもが勇気を出して話してくれたとき、親として一番大切なのは、その気持ちを否定しないことです。たとえ「大したことがない」と思える悩みでも、「そうだったんだね」と共感する姿勢を見せることで、子どもは安心して話せるようになります。

特徴2. 家族で食卓を囲まない家庭

次に挙げる特徴は、食事が家族でバラバラになっている家庭です。近年の共働き世帯の増加や、子どもの習い事の多様化により、家族揃って食卓を囲む機会が減っている家庭が増えています。一見、食事の時間がバラバラになることはそれほど大きな問題ではないように思われるかもしれませんが、この状況が引き起こす心理的影響は決して軽視できません。

食事がバラバラになることの問題

食事が家族バラバラになることで、以下のような問題が生じます。

  1. 家族間の会話の減少
    食事の時間は、本来家族が日常の出来事を共有する大切な時間です。しかし、各自が別々の時間に食事を取るようになると、家庭内でのコミュニケーションが激減します。この結果、子どもが学校や友人関係で感じている不安を話す場が失われ、孤独感を感じやすくなります。
  2. 家庭の一体感の喪失
    食卓を囲むことがない家庭では、家庭全体が「それぞれが別々の生活を送っている」という感覚に陥りやすくなります。子どもにとって、家庭は唯一安心できる「心の拠り所」であるべきですが、その家庭が分断されているように感じられると、学校や社会でのストレスを一人で抱え込むことになります。
  3. 心の余裕の欠如
    忙しさの中で食事が「ただ栄養を取るだけの時間」になってしまうと、親も子も心に余裕がなくなります。これは、イライラしやすくなる、物事を前向きに考えられなくなる、といった形で家庭全体の雰囲気に影響を及ぼします。

食事習慣への対策

食事がバラバラな状態を改善するためには、親が意識的に取り組むことが必要です。忙しい現代社会においては難しい面もあるかもしれませんが、家庭内での食事の時間を大切にすることは、子どもの心の安定に直結します。以下に具体的な提案を挙げます。

1. 「家族全員で食卓を囲む日」を意識的に作る

週に一度でもよいので、「家族全員で夕食を食べる日」を決めてみましょう。その際、テレビやスマホはオフにし、食事中の会話に集中する環境を整えます。例えば、「今日はみんなで好きな料理を作ろう」というテーマを設けると、食卓の時間がより楽しみになります。

  • たとえ短い時間でも、家族が顔を合わせて話すことが重要です。
  • 子どもが話しやすいよう、学校や成績の話題よりも、日常的な出来事や興味のある話題を取り上げてください。

2. 生活スケジュールを調整する努力をする

共働きや塾通いで家族の生活時間がずれている場合でも、食事の時間を共有する努力をしてみましょう。朝食を一緒に取るのも効果的です。
特に、子どもが夕方に帰宅し、親が仕事で遅くなる場合、子どもが親の帰宅時間まで少し待ってでも一緒に夕食を取る習慣を持てると良いでしょう。

  • 無理のない範囲でスケジュールを調整し、「一緒に食事をする」という優先順位を家庭全体で共有することが大切です。
  • 親自身が忙しい場合、休日を利用して食事の時間を補完するのも一つの方法です。

3. 食卓を「ポジティブな場所」にする

もし家庭内で意見の衝突やストレスを抱えている場合、食卓での会話をポジティブな内容にするよう心がけましょう。食事中の空気が緊張していると、子どもは食卓に居づらさを感じてしまいます。

  • 「今日一番楽しかったこと」を家族それぞれが話すルールを作ると、会話が明るいものになります。
  • 子どもの発言に対して「それは面白いね」と興味を示し、否定的な意見は避けるようにしましょう。

4. 手軽に取り組める「家族の食のイベント」を設ける

家族全員での食事が難しい場合でも、「おやつタイム」や「休日のブランチ」など、小さなイベントを取り入れてみてください。例えば、「週末にみんなでパンケーキを作る」「お昼にピクニックをする」といった軽い取り組みでも、家庭の一体感を育むことができます。

  • 「一緒に料理をする時間」は、食卓での会話を自然に増やすきっかけになります。
  • 料理を通じて、子どもが「家族と一緒にいる時間は楽しい」と感じられるようにすると良いでしょう。

5. 親が率先して習慣を見直す

忙しい中で子どもに「一緒に食事をしよう」と強制するのは難しい場合があります。そのため、親自身がまず食事の時間を丁寧に取り、ゆったりとした気持ちで子どもと接するよう心がけてください。

  • 「自分一人でも丁寧に食べる」姿を見せることが、子どもの心に安心感を与えます。
  • 食事中に愚痴や批判を口にしないことで、食卓が「安心できる空間」であると子どもに伝わります。

家庭での食事は、ただ体を養うだけでなく、子どもの心を満たすための大切な時間です。一緒に食卓を囲む習慣が復活すれば、家庭内での会話が増え、子どもの学校生活や心の悩みを共有する機会も自然と生まれます。少しの意識改革が、家庭全体の雰囲気を大きく変えるきっかけとなるでしょう。

食事風景

特徴3. 家庭内がピリピリしている

最後に挙げる特徴は、雰囲気が張り詰めている家庭です。不登校の子どもを持つ家庭では、親自身が不安や焦りを抱えることが少なくありません。その結果として、親同士や親子間の関係がぎくしゃくし、家庭全体に緊張感が漂っているケースが見受けられます。この「ピリピリした空気」が子どもに与える影響は非常に大きく、子どもが家庭で安心感を得られない要因の一つになっています。

家庭内がピリピリする原因

家庭内の雰囲気が張り詰めている原因としては、次のようなケースが挙げられます。

  1. 親同士の口論が多い
    夫婦間での意見の衝突や口論が日常化している場合、子どもはその影響を強く受けます。特に、子どもの前で頻繁に口論を繰り広げる家庭では、子どもが「自分の存在が家庭の問題の原因なのではないか」と感じることがあります。これは、子どもにとって極めて大きなストレスとなり、自分の価値を否定するような気持ちを抱かせる要因になります。 また、家庭内の争いがエスカレートして暴言や感情的なやり取りが日常化すると、子どもは家庭に安心感を持てなくなり、家庭という場が「ストレスの発生源」にすらなってしまいます。
  2. 親同士の教育方針の不一致
    子どもの教育に関する考え方が親同士で大きく異なる場合、親がそれぞれ異なる要求を子どもに突きつけることがあります。例えば、片方の親が「もっと勉強を頑張れ」とプレッシャーをかけ、もう片方の親が「無理しなくていい」と言うようなケースです。こうした矛盾したメッセージを受け取ると、子どもはどちらの親の期待に応えるべきか分からず、混乱を深めます。 このような状況は、子どものストレスを高めるだけでなく、親自身の間にさらなる摩擦を生み出し、家庭内の緊張感を悪化させます。
  3. 親の感情的な不安定さ
    親が不登校の状況に焦りを感じ、「なぜうちの子だけがこうなってしまったのか」と自分を責めたり、子どもに対して強い不満を抱いたりするケースも見られます。このような感情は、無意識のうちに子どもに伝わります。「また怒られるかもしれない」「親に迷惑をかけている自分はダメなんだ」といった考えに至り、子どもがさらに自分の殻に閉じこもる悪循環を生み出します。

家庭内の緊張が生む子どもへの悪影響

家庭内のピリピリ感が続くと、子どもの心にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

  1. 「家に居場所がない」という感覚
    家庭は本来、子どもが外の世界でのストレスを癒やし、安心感を得られる場所であるべきです。しかし、家庭内が常に緊張した空気に包まれていると、子どもは「家にいても休まらない」と感じます。これにより、ますます孤立感を深め、学校や家庭という社会の2大柱から距離を取るようになります。
  2. 感情のコントロールが難しくなる
    ピリピリした雰囲気の中で育つと、子ども自身が感情を安定させる力を失いやすくなります。親の不安定さがモデルとなり、子どももストレスを感じたときに怒りや不安を爆発させることが増えるのです。
  3. 将来的な人間関係の影響
    子ども時代に家庭内の不安定さを経験すると、大人になってからも他者との関係構築に苦労することがあります。信頼関係を築く基盤が十分に形成されないため、「人を信じるのが怖い」と感じることが多くなります。

親としてできること

家庭内のピリピリした雰囲気を和らげるには、親がまず自分たちの行動や感情に目を向けることが重要です。

  • 夫婦間での話し合い
    教育方針の不一致が原因の場合、まず夫婦間で冷静に話し合い、子どもに矛盾したメッセージを送らないようにすることが大切です。どちらか一方が主導権を握るのではなく、双方の意見を尊重し合い、共通のゴールを見つけることが必要です。
  • 感情のコントロールを意識する
    親自身が不安定な状態でいると、それが家庭全体に広がります。心が疲れたときには、自分自身のストレス解消法を見つけることを心がけてください。深呼吸や趣味の時間を持つことでも、心に余裕が生まれます。
  • 子どもの前で口論を避ける
    子どもの目の前で意見の対立を見せるのは避けるべきです。口論になりそうな場合は、一度落ち着いてから話す機会を設けるようにしましょう。子どもにとって家庭が安心できる空間であることを最優先に考えるべきです。

総括:子どもが安心できる家庭を目指して

これまで述べてきた「子どもが学校について話さない」「食事が家族バラバラ」「家庭内がピリピリしている」という3つの特徴には、いずれも共通しているポイントがあります。それは、子どもが家庭という場所で安心感を得られていないということです。

子どもが不登校になった場合、親としては「どうしてうちの子が?」という気持ちが湧き上がり、自分を責めたり、子どもに対して怒りを感じたりすることがあるかもしれません。しかし、まず最初に意識してほしいのは、子どもが何を感じ、何を必要としているかを理解する努力をすることです。

不登校の背景にはさまざまな要因が絡み合っていますが、家庭が「安全基地」である限り、子どもは再び外の世界に向き合う力を取り戻せる可能性があります。そのためには、以下の3つを意識することが大切です。

  1. 子どもの気持ちを受け止める
    子どもが何かを話そうとしたとき、親としてその気持ちを全力で受け止めることが重要です。アドバイスをする前に、まず子どもの話に耳を傾ける姿勢を持ちましょう。
  2. 家庭内のコミュニケーションを大切にする
    忙しい毎日の中でも、家族揃って過ごす時間を意識的に作りましょう。特に食事の時間は、家族全員が顔を合わせ、日々の出来事を共有する貴重な機会です。
  3. 親自身の心の余裕を持つ
    親がストレスを抱えすぎると、その影響が家庭全体に及びます。自分を追い詰めすぎず、時には助けを求めることも必要です。

子どもが家庭で「受け入れられている」と感じることが、不登校を乗り越える第一歩となります。この文章が、家庭を見直し、子どもに寄り添うためのヒントとなれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

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親の愛情の過不足は、子どもが決める

親の愛情の過不足は、子どもが決めることのイラスト

目次


「こんなに愛しているのに、どうしてこの子はわかってくれないのだろう?」

不登校や引きこもりの子どもを持つ親御さんが抱える苦悩の中で、このような問いは決して珍しいものではありません。愛情を注いでいるという自負もある、子どもを思い、学校に戻れるよう願っている。それでも、子どもの心が離れていく感覚に戸惑い、時に親自身が深く傷ついてしまう。

私は、不登校や引きこもりの相談を専門とする児童心理カウンセラーとして、長年こうした親子と向き合ってきました。その中で感じるのは、親の愛情と子どもの反応がすれ違う瞬間にこそ、問題の根が隠れているということです。そして、そのすれ違いは単純な誤解ではなく、「親の愛情の過不足」が原因であることが少なくありません。

親の愛情は、いわば自転車の補助輪です。子どもが自分でバランスを取り、漕ぎ出せるようになるまで支えるもの。しかし、その補助輪がいつまでも外れなかったり、反対に早々に外されてしまったりすると、子どもは転び、立ち上がる力を失ってしまうかもしれません。では、どうすれば適切なタイミングで補助輪を調整できるのでしょうか?

本稿では、親の愛情が子どもにどう影響を与えるのか、そしてその愛情をどう調整すべきかについて考えていきます。子育てに悩む親御さんにとって、新たな気づきと視点を提供できることを願っています。

参考:文部科学省「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
参考:文部科学省「新しい時代を拓く心を育てるために」


愛情の形が子どもを縛るとき

母親の苦悩

Aさんは、私のカウンセリングルームを訪れたとき、目に涙を浮かべながらこう話しました。

「私は、この子が赤ちゃんの頃から、全力で愛してきたつもりなんです。でも、中学生になったあたりから反抗的になり、ついに学校に行けなくなりました。どうして、私の愛情が届かないのでしょうか?」

Aさんの言葉には、自分の子育てに対する自信と、それが否定されたように感じる痛みが滲んでいました。彼女の息子さんは、中学2年生。成績優秀で、小学生の頃までは親の期待に応えるように頑張っていました。しかし、成長するにつれ、母親の言葉に素直に従わなくなり、最終的には学校に通えなくなってしまったのです。

「私は悪い母親だったのでしょうか?」と問いかける彼女の姿は、私の心に深く刻まれました。しかし、この問いの裏には、ある重要なすれ違いが隠れていました。それは、「親が注ぐ愛情の形」と「子どもが求める愛情の形」が違っていたことです。

愛情の過剰が子どもを追い詰める

Aさんは、息子が小さい頃から「この子の将来を思って」という言葉をよく口にしていました。宿題をきちんとやらせ、習い事にも通わせ、テストの結果を確認して次のステップを考える。いわゆる「熱心な母親」でした。しかし、息子さんにとって、この「熱心さ」は次第にプレッシャーとなり、自分の気持ちを押し殺す習慣を生むきっかけとなっていたのです。

息子さんが学校に行けなくなった背景には、「親の期待に応えることでしか、自分の価値を証明できない」という考えが根付いてしまったことがありました。親が愛情をもってサポートしていたつもりでも、子どもはその愛情を「自分を支配するもの」と感じることがあります。

不足する愛情がもたらす孤独

愛情不足の家庭環境

一方、別のケースでは、愛情の不足が子どもを不登校に追いやる要因になった例もあります。Bさんの家庭では、両親共働きで多忙を極めていました。小学生の娘さんは、学童保育に通いながら、一人で過ごす時間が多かったと言います。

娘さんは次第に「お母さんが忙しいのは仕方がない」「自分が手のかからない子でいれば、迷惑をかけずに済む」と考えるようになりました。これが表面化したのは中学生になってからでした。「学校に行きたくない」という言葉は、実は「自分は愛されているのか?」という問いだったのです。

子どもの孤独感

子どもが「自分は親から注目されていない」と感じると、心に孤独感が生まれます。特に思春期の子どもは、自分の存在価値を親からの愛情を通じて確認しようとするものです。この孤独感が蓄積すると、やがて心が萎縮し、社会に向かう力が失われてしまいます。

Bさんの娘さんは、最終的に「学校に行けない」と自分の状況を言葉にできるようになるまで、多くの時間を費やしました。その過程で彼女は「親に迷惑をかける自分」を嫌い、ますます内向的になっていったのです。

愛着障害という目に見えない影響

愛情の過不足が長期間続くと、子どもの心に「愛着障害」という深刻な影響が生じることがあります。愛着障害は、幼少期に親との安定した信頼関係が築かれなかったことによって生じる心の問題です。

愛着障害が生む困難

愛着障害を持つ子どもは、次のような特徴を示すことが多いです。

  • 他者に対する強い不信感
  • 過度な自己防衛
  • 対人関係の構築が困難
  • 自己否定的な思考

例えば、C君は、小学生の頃から親との関係が不安定でした。母親は、彼が幼少期に育児ノイローゼを経験し、彼との距離を取ることが多かったと言います。その結果、C君は「自分は誰からも愛されていない」と感じるようになり、不登校だけでなく、クラスメイトとの交流にも問題を抱えるようになってしまいました。

親子の愛情のイメージ

子どもの声に耳を傾ける

愛情の過不足に気づくためには、親が子どもの声に耳を傾ける姿勢が必要です。しかし、子ども第四章:子どもの声に耳を傾ける

親が子どもの愛情の「適量」を見極めるために、何より重要なのは「子どもの声に耳を傾けること」です。しかし、子どもの声とは、必ずしも言葉として分かりやすい形で発せられるものではありません。むしろ、態度や行動の変化、時に沈黙さえも、親へのメッセージである場合が多いのです。

子どもが発する「見えない声」

親の愛情が適切でないとき、子どもは無意識のうちにサインを発します。たとえば、不登校や引きこもりという行動自体も、実は「自分を見てほしい」「自分の気持ちに気づいてほしい」という叫びであることが少なくありません。

中学1年生のD君は、学校に行きたくない理由を何も話さず、部屋にこもるようになりました。親御さんが心配して声をかけても、「うるさい」と言って顔を背けてしまう。両親は、「この子は何も考えていないのではないか」と不安になり、時には怒りを爆発させてしまいました。

しかし、D君が実際に感じていたのは、「自分の気持ちを分かってもらえない」という孤独感でした。母親が「学校に行きなさい」と繰り返すたびに、「自分の苦しさに気づいてくれない」という思いが膨らみ、彼はますます心を閉ざしていったのです。

子どもの態度や行動に隠れた意味

子どもが発する「声」をキャッチするためには、親は子どもの態度や行動の背景にある感情を想像する必要があります。例えば、以下のような行動が見られた場合、それは子どもの心の叫びである可能性があります。

  • 親の顔色を伺う
    「自分が親に負担をかけているのではないか」と感じ、親を怒らせたくないと考えている可能性があります。これは、愛情が過剰になりすぎてプレッシャーを与えているサインです。
  • 些細なことで嘘をつく
    「親の期待に応えられない自分を隠したい」という気持ちが背景にあるかもしれません。子どもがこうした態度を取る場合、親が「完璧」を求めすぎていないかを振り返る必要があります。
  • 何を聞いても無反応である
    親の愛情が不足し、関心を向けられていないと感じている可能性があります。「どうせ何を言っても無駄」と思い、表現を諦めてしまっている場合もあります。

これらの行動が見られるとき、親としての対応を変えるタイミングだと受け止めることが大切です。

沈黙の時間も「耳を傾ける」姿勢

子どもがすぐに本音を話さない場合もあります。しかし、無理に言葉を引き出そうとするのは逆効果です。むしろ、親が「話してもいい」「話したくなったらいつでも聞くよ」という雰囲気を作ることが、子どもの心を開く第一歩となります。

例えば、D君のケースでは、母親が「学校に行かなければ」という焦りを一旦手放し、「お母さんはただ、あなたが元気でいてくれるだけで嬉しいよ」と声をかけました。それを聞いたD君は最初こそ反応を示しませんでしたが、しばらくしてから「ちょっとだけ話してもいい?」と切り出し、学校で感じていたストレスや不安を打ち明けてくれました。

このように、子どもの沈黙の時間も「耳を傾ける」一環として受け入れる姿勢が、親子関係を改善するための鍵になります。

愛情の調整は双方向の対話から

親が子どもの声を聞き取ろうとすることは、愛情の調整に直結します。そして、調整とは「子どもの声を受け止めた上で、親も自分の気持ちを正直に伝えること」です。

例えば、「あなたのためを思ってあれこれ言ったけど、少し押し付けすぎてしまったかもしれないね」と素直に話すことで、子どもは「親も自分を理解しようとしている」と感じます。こうした双方向の対話が愛情のバランスを整える基盤となります。

子どもが安心して話せる環境を

最後に重要なのは、子どもが「自分の気持ちを話しても大丈夫だ」と感じられる環境を作ることです。これは、親が無条件の愛情を示すことによって初めて可能になります。子どもが間違えたり、学校に行けなかったりしても、それを責めるのではなく、「どんなあなたでも愛している」というメッセージを伝えることで、子どもは親に心を開くことができるのです。

「子どもの声に耳を傾ける」というのは、単に「話を聞く」こと以上に、子どもの感情やサインを受け取り、そこから愛情を再調整するプロセスそのものです。そのプロセスがあって初めて、親子の愛情は互いにとって適切な形へと進化していくのです。

最後に:愛情のバランスを模索し続ける

結局のところ、「親の愛情の過不足は、子どもが決める」という言葉が示すように、愛情は一方的に与えるものではなく、双方向で形を変えるものです。親として完璧である必要はありません。大切なのは、子どもの反応に目を向けながら、愛情を調整する努力を続けることです。

そして、一人で悩まないことを心に留めてください。専門家や信頼できる仲間とともに、子どもとの未来を切り開いていくのです。親子で共に成長する道を歩み続けましょう。


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スマホ制限を子どもにどう伝える?

スマホ制限を子どもにどう伝えるか、を考える

目次


スマホとの付き合い方が子どもの未来を左右する

「スマホは便利な道具ですが、同時に子どもの健康や生活習慣、そして学びの基盤を大きく左右する存在でもあります」と言うと、多くの親御さんがうなずかれるでしょう。確かに、連絡手段や学習ツールとしてのメリットは計り知れません。しかし、スマホが子どもの生活に与える影響は、単なる便利さにとどまらず、深刻な問題を引き起こすことがあります。

私は、日々不登校や引きこもりの相談を受ける中で、スマホの過剰使用がその一因となっているケースを数多く目の当たりにしています。不登校の要因は複雑で、単一の原因で語ることはできませんが、「生活習慣の乱れ」や「昼夜逆転」のきっかけとしてスマホが大きく影響していることは明らかです。

この随筆では、スマホ制限をどのように子どもに伝え、実践すればよいのかについて考えます。特に、健康や学び、不登校との関連性を中心にお話ししながら、子どもからの反発にどう対応すればよいか、親としての適切なアプローチを提案していきます。

参考:文部科学省「小中学校における携帯電話の取扱いに関するガイドライン
参考:文部科学省「子供の携帯電話をめぐる問題
参考:文部科学省「話し合っていますか?家庭のルール


子どもの生活習慣と健康を守るための第一歩

まず、スマホの過剰使用がどのように生活習慣を乱すかを考えてみましょう。多くの子どもが、夜遅くまでスマホを操作することで睡眠時間が削られ、翌朝起きられない状態に陥っています。これが繰り返されると、昼夜逆転の生活が定着し、学校に行けないという結果を招くのです。

睡眠不足が子どもに与える影響は、単なる「眠い」という状態にとどまりません。注意力や集中力の低下、学習能力の減退、さらには免疫力の低下まで引き起こします。このような状況に陥れば、学校生活においてさらに困難を抱え、不登校へとつながる悪循環が始まります。

こうした問題を未然に防ぐためには、生活習慣の基盤をしっかりと築く必要があります。そのためには、スマホの使用時間を制限し、適切なルールを設けることが不可欠です。

スマホが引き起こす不登校の要因

不登校の相談を受ける中で、私はスマホが直接的または間接的な要因となるケースに何度も出会いました。

例えば、SNSでのトラブルやオンラインゲームの依存が原因で学校生活への意欲を失うケースが挙げられます。SNSは一見、友人とのつながりを強めるツールのように思えますが、同時に「誰かと比べる」「見えないプレッシャーを感じる」という負の側面を持っています。これにより、精神的なストレスを抱え込む子どもが少なくありません。

また、オンラインゲームは瞬間的な達成感を得られる一方で、長時間に及ぶプレイが学業や生活のリズムに悪影響を及ぼします。一度「ゲームの世界が居心地がいい」と感じてしまうと、現実の学校生活に戻るハードルがますます高くなります。

こうした状況に陥った場合、ただ「スマホをやめなさい」と叱るだけでは解決しません。むしろ、子どもを追い詰めてしまい、親子関係を悪化させる可能性さえあります。

子どもの反発を予測する

「どうしてスマホを使っちゃいけないの?」「友達とつながることは悪いことなの?」子どもは必ずと言っていいほど、こうした反発を口にするでしょう。特に思春期に差し掛かったお子さんは、自分の自由を侵害されたと感じ、感情的になることも珍しくありません。

子どもの反発にどう対応すればよいのでしょうか。それには、親が冷静さを保ち、子どもの心情を理解しながら対話を重ねることが大切です。子どもにとって「スマホ=友達との大切なつながり」となっている以上、親が一方的に「悪いからダメ」と決めつけても、納得させることは難しいのです。

この段階で重要なのは、制限の理由を具体的に伝えることです。「健康を守るため」「学校生活を大切にするため」という目的を子どもに理解させることが、スマホ制限を受け入れさせる鍵となります。


スマホ制限を実践するための具体策

前章では、スマホが子どもに及ぼす影響と反発への理解について触れました。この章では、実際にスマホ制限をどのように導入し、効果的に進めていくかについて具体的な方法をお伝えします。

1. ルール作りは親子で行う

スマホの利用を制限するためには、親が一方的にルールを押し付けるのではなく、子どもと一緒にルールを作ることが重要です。このプロセスを通じて、子ども自身が納得感を持ち、ルールを守りやすくなります。

具体的には、以下の手順を試してみてください。

  1. ゴールを共有する
    まず、「スマホの使い方を改善することで、健康的な生活を送る」「学校生活をスムーズに進める」という共通の目的を子どもと話し合います。子どもにとっても意味のあるゴールを見つけることで、協力的な姿勢を引き出すことができます。
  2. スマホの利用実態を把握する
    子どもが現在どのくらいスマホを使っているのか、どんなアプリやサービスを利用しているのかを一緒に確認します。これをベースに、無理のない範囲での制限を設定します。
  3. 具体的なルールを決める
    例えば以下のようなルールを話し合いながら決めていきます:
  • スマホを使っていい時間帯(例:20時以降は使用禁止)
  • 使用時間の上限(例:1日2時間まで)
  • 勉強や家族との時間を優先する条件(例:宿題が終わったら30分間使用可能)

ルールは「守らなければ罰がある」という形ではなく、「守ると何か良いことがある」というプラスの要素を盛り込むと効果的です。

2. ルールを実践するための工夫

ルールを決めたあと、次に重要なのはそれをいかに実践し、継続するかです。ここでは、実際に役立つ工夫をいくつかご紹介します。

1. スマホ管理アプリの活用
家庭用のスマホ管理アプリを活用することで、使用時間の制限や特定アプリのブロックを簡単に設定できます。これにより、「親が直接監視する」プレッシャーを軽減し、ルールを守りやすい環境を作ります。

2. スマホを使わない時間を楽しく過ごす代替案を用意
「スマホをやめなさい」ではなく、「スマホを使わない時間をこう過ごそう」と提案することがポイントです。家族での会話や外出、子どもが興味を持てる趣味を一緒に探してあげるとよいでしょう。

3. 親自身もルールを守る
子どもがスマホを制限されている中で、親が四六時中スマホをいじっている姿を見せると、「不公平だ」と感じてしまいます。親も「家族との時間はスマホを置く」といった行動を示すことで、子どもはルールに納得しやすくなります。

3. 子どもの反発にどう向き合うか

スマホの制限を導入すると、多くの子どもが「嫌だ」「なんで僕だけ?」と反発します。このとき、感情的に対応するのは避けなければなりません。

冷静に繰り返し理由を伝える
子どもはすぐに親の意図を理解できないことがあります。何度でも丁寧に、「健康を守るため」「生活習慣を整えるため」と伝え続けることが大切です。

反発を感情的に受け止めない
子どもが怒ったり泣いたりしても、それを否定するのではなく、「君がそう思うのもわかるよ」と共感を示します。そのうえで、「でもこのルールは必要なんだ」と一貫した姿勢を保つことが大事です。

柔軟性を持つ
ルールを完全に押し通すのではなく、子どもの状況に応じて調整する余地を残します。例えば、「テスト期間中は30分延長する」といった譲歩を示すことで、子どもも「親は自分を理解しようとしている」と感じられます。

スマホ制限について話し合う家族。

スマホ制限がもたらすメリット

ここまで、スマホ制限の必要性や具体的な方法についてお話ししましたが、それを実行することで子どもがどのようなメリットを得られるのかを考えてみましょう。これは、制限を嫌がる子どもに「やらされている感」ではなく、「やってよかった」と実感させるためにも重要なポイントです。

1. 健康的な生活リズムの回復

スマホ制限の最も大きな効果の一つは、睡眠時間が確保されることです。特に、夜遅くまでスマホを操作することで引き起こされていた「昼夜逆転」を解消できる可能性が高まります。

十分な睡眠は、子どもの身体と心に大きな恩恵をもたらします。例えば、朝起きられるようになることで学校に通う意欲がわき、生活にリズムが生まれます。また、睡眠によって学習に必要な脳の機能が回復し、集中力や記憶力も向上します。

一度健康的な生活リズムを取り戻すと、子ども自身がその快適さに気づき、「もう一度昼夜逆転の生活に戻りたい」とは思わなくなることが期待されます。

2. 学習や趣味に使える時間の増加

スマホを制限することで、それまで画面に費やしていた時間を別の活動に振り分けることができます。この時間を活用して、例えば以下のようなメリットが得られます:

  • 学業への集中
    スマホを触らない時間が増えることで、勉強に集中しやすくなります。多くの子どもが、スマホの通知やゲームの誘惑に負けて学習時間を削っていますが、それがなくなるだけで学業の成果に大きな変化が見られるでしょう。
  • 新しい趣味の発見
    スマホの代わりに、読書やスポーツ、音楽など新しい趣味を見つける機会が生まれます。特に、親子で楽しめる活動を取り入れることで、親子関係の強化にもつながります。
  • 自己肯定感の向上
    スマホ依存の状態では、子どもはゲームのスコアやSNSの「いいね」数で一喜一憂することがあります。しかし、それ以外の活動に時間を使うことで、他者に評価されることに頼らない自己肯定感を育むことができます。

3. 精神的な安定

スマホの過剰利用は、子どものメンタルヘルスにも影響を及ぼします。特にSNSにおいては、他人と自分を比較して落ち込む「SNS疲れ」や、メッセージにすぐ返信しなければならないプレッシャーが子どもに負担をかけています。

スマホを制限することで、これらのストレス要因が軽減されます。最初はスマホがないことで不安を感じるかもしれませんが、次第にその状態に慣れ、心の安定を取り戻すことができるでしょう。

また、スマホを使わない時間に親子の会話が増えることで、親が子どもの悩みを聞き出しやすくなり、不安や問題を早期に解決できる可能性も高まります。

要点必要な考えや行動
スマホ制限の重要性スマホの過剰使用は、生活習慣の乱れや健康被害、不登校の原因になり得る。
生活習慣の影響夜更かしや昼夜逆転は、集中力や免疫力の低下を招き、学校生活への支障を引き起こす。
スマホと不登校の関連SNSやゲーム依存は、現実逃避や学校へのストレス増加を引き起こすリスクがある。
反発への対応スマホ制限への反発は、自由の侵害と感じる子どもに多い反応。
ルール作りの方法子どもが納得するルールを作るには、親子での話し合いが必要不可欠。
親の姿勢と信頼関係子どもは親の行動を見て学ぶため、親自身のスマホ利用も見直す必要がある。

結び:スマホ制限は親子の絆を深めるチャンス

スマホの制限は、単に「子どもの行動を抑制する」ためのものではありません。むしろ、親子が共に成長し、新たな絆を築くための重要な機会だと考えるべきです。

多くの親御さんが、スマホの使い方を巡って子どもと衝突し、どうすれば良いか分からなくなることがあります。ですが、このプロセスを通じて、親は「子どもの心に寄り添う力」を養い、子どもは「ルールを守りながら自分をコントロールする力」を身につけていきます。こうした経験は、単なるスマホ制限を超えて、子どもが未来に向けて生きる上での基盤となるのです。

関連記事:小学生、中学生のスマホ制限・メリットとデメリット

関連記事:「親」のスマホ依存が与える子どもへの影響


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不登校対策:サードプレイスを持ちましょう


目次


不登校や引きこもりの支援に携わる者として日々多くの親子と接している中で、ひとつ痛感することがあります。それは、子どもが自分の居場所を学校だけに限定してしまうと、その「唯一の場所」でうまくいかなかったときのダメージが大きいということです。学校に行けなくなった子どもたちは、家族との関係がぎこちなくなり、孤独感や無力感にさいなまれてしまいがちです。私自身も、子どもが不登校になり、その対応に悩んだ経験を持つ親として、その苦しさを身をもって理解しています。

ToCoでは子どもたちの不登校が続く原因を特定し、それに対処するアプローチを重視しています。ToCoの考え方は、「ただ見守るだけではなく、適切な対処が必要である」というものです。多くの親が「見守るしかない」と感じがちですが、不登校の本質的な解決にはそれ以上の支援が求められます。学校以外の「サードプレイス」、つまり塾や習い事などの居場所を子どもに持たせることで、不登校の予防や改善に大きな役割を果たすことができるのです。

参考:内閣官房「こどもの居場所づくりに関する調査研究報告書


不登校を防ぐための「サードプレイス」とは?

「サードプレイス」という言葉は、家庭(ファーストプレイス)や学校(セカンドプレイス)以外の第三の居場所を意味します。子どもが学校に行けなくなったときに、そこに代わる居場所としての「サードプレイス」は、非常に大きな意味を持ちます。学校では必ずしも評価されない個性や才能が評価される場であり、また学校での人間関係とは異なる価値観や生き方を学べる場でもあります。特に、塾や習い事など、勉強や趣味の分野で仲間と過ごせる場所は、子どもが「自分にもできることがある」という自己肯定感を持つ機会を増やします。

不登校になりやすい子どもたちの中には、学校において「自己肯定感の低さ」や「不安感」を抱えやすい傾向が見られます。学校での人間関係にうまくなじめないこともあれば、勉強や部活動でのプレッシャーに耐えられなくなってしまうこともあります。こうした背景の中で、塾や習い事といったサードプレイスが、その「逃げ場」としてだけでなく、「挑戦する場」としての役割を果たすのです。

また、サードプレイスに通うことで、子どもたちは異なる価値観を持つ大人や仲間と触れ合い、「学校以外にも多様な世界がある」と実感できるようになります。これは将来、社会に出たときに非常に大きな財産となります。つまり、サードプレイスは、不登校予防だけでなく、子どもの人間的成長や生きる力の育成にも寄与するのです。


学校だけが「唯一の世界」になることの危険性

親としては、学校でうまくやってほしい、そこに適応してほしいという思いが強くなるものです。しかし、学校だけを「唯一の世界」として子どもに受け入れさせてしまうと、そこでうまくいかなかったときに子どもが感じる失望感や挫折感は計り知れません。学校でつまずいた子どもたちは、他に居場所がなければ、孤独感に押しつぶされてしまうのです。

子どもが学校に行けなくなると、家庭での関係も悪化しやすくなります。子どもが部屋に閉じこもってしまい、親との会話が減り、お互いに気を遣いすぎて本音で話すことができなくなってしまう家庭は少なくありません。こうした状況が続くと、子どもはますます「自分はダメな存在だ」という自己否定感に陥り、不登校が長引く原因にもなりかねません。

そのため、家庭や学校以外に「居場所」を確保することは、不登校予防において極めて重要です。学校に居場所を見つけられない子どもたちにとって、サードプレイスは救いの手となりうるのです。

親ができること:サードプレイスの選択と支援

サードプレイスの確保にあたっては、親が適切な選択を行い、子どもが安心して通えるよう支援することが重要です。例えば、塾や習い事など、子どもの興味や関心を引き出せる場所を見つけることが大切です。勉強に対する興味がある場合は学習塾、スポーツに興味がある場合は地域のスポーツクラブといった具合に、子どもが自然とその場に行きたいと思える場所を見つけてあげましょう。

もちろん、サードプレイスに通わせることが万能な解決策ではありません。場合によっては、家庭や学校との連携が必要になることもあります。特に不登校が続いている場合、家庭内での支援だけでは解決が難しいことも多々あります。私たちToCoでは、不登校が続く要因を特定し、それに対する具体的な対処方法を親とともに考え、実践的な支援を提供しています。不登校の本質的な解決には、こうした専門的なアプローチが欠かせません。


ToCoの再登校支援サービスが目指すもの

ToCoの再登校支援サービスは、不登校の要因を明確にし、子ども一人ひとりに合った解決方法を見つけ出すことを重視しています。多くの家庭では、「いつかまた学校に行けるように」と見守ることしかできない状況に陥りがちですが、見守るだけでは不登校の状態は長引きやすいのです。

ToCoの支援では、不登校になった「きっかけ」ではなく、不登校が続いてしまう「要因」に目を向け、そこに適切な対処を行います。これは、従来のカウンセリングとは異なるアプローチです。具体的には、認知行動療法を用いた再登校支援プログラムを通じて、子どもが抱える不安や課題に対処し、自ら解決できる力を養います。また、AIを活用した診断により、個々の子どもに最適な対処法を提供しています。このようにして、子どもが自立し、自分の力で不登校の問題を乗り越えていける環境を整えることができるのです。


学校外の「居場所」が子どもの成長に果たす役割

サードプレイスは、子どもがさまざまな価値観や考え方に触れることができる場です。学校という単一の環境に留まると、どうしても同じような価値観に染まりがちですが、塾や習い事で出会う他の大人や子どもたちとの交流は、柔軟な視点と自己肯定感を育てます。特に、子どもが自分の興味を活かし、安心して試行錯誤できる場所があることで、「ここでなら自分らしくいられる」という自信が芽生えるのです。

実際、学校に行けなくなった子どもたちがサードプレイスに通い始めると、自分に自信を持てるようになることが多く、再登校へのステップとして大きな助けになることがよくあります。これは、不登校になりやすい子どもたちが持つ「自己否定感」や「他者からの評価への過度な不安感」に対して、サードプレイスが心理的な安定を与えてくれるためです。

学校以外の世界を知ることの利点

親として、子どもが学校で勉強し、成長してほしいと思うのは自然なことです。しかし、学校だけにすべての成長が依存してしまうと、子どもは社会に出たときに「学校以外の価値観」に戸惑うことになります。サードプレイスでは、多様な価値観や異なる生活様式を学ぶことができ、将来の多様な人間関係や職場環境に適応する力を養うことができます。学校だけでは学べない社会性や生き抜く力が、こうした場で自然と身につくのです。

また、サードプレイスを通じて出会う大人たちは、学校の先生とは異なる視点で子どもを見てくれます。塾の講師や習い事の指導者は、子どもの学力やスキルに注目するだけでなく、時にはその「人間性」を尊重し、異なる角度からのサポートを提供します。これは、子どもにとって「自分は見守られている」「自分は認められている」と感じられる貴重な体験です。


結論

学校での学びと成長は確かに重要ですが、子どもにとっての「唯一の世界」が学校であることは危険です。サードプレイスとしての塾や習い事を通じて、多様な価値観や新しい挑戦を経験することは、不登校予防に大きな効果をもたらします。そして、必要であれば、ToCoの再登校支援サービスなどを活用し、専門的なサポートを受けることで、子どもが自分の力で未来を切り開いていけるよう手助けしましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

【実録】子どもが学校に行きたくないと言った日


目次


先日、私の小学生の子どもが風邪で学校を休みました。最初の日は単純に体調不良でしたが、翌朝になると別の問題が浮上しました。「昨日ズル休みしたと思われているかも…」と、子どもが再び登校を渋りだしたのです。私は、普段から不登校や引きこもりの支援に携わる仕事柄、この小さな躊躇が「不登校の芽」になる可能性もあると感じました。実際、不登校の多くは些細なきっかけから始まることが少なくありません。

今回、この経験から親としても専門家としても学び得たことを、皆さまにお伝えしたいと思います。

1. 「ズル休みしたと思われたくない」その小さな不安

小学生の子どもにとって、クラスの同調圧力や「ズル休み」への周囲の評価は意外と大きな負担になります。特に「周りと同じであること」に敏感な年代のため、「自分だけ違う行動を取った」という事実が翌日以降の登校に対するハードルになりやすいのです。

子どもが「ズル休み」と見なされることに不安を抱く姿を目の当たりにした時、私はこの小さな不安が、将来的な不登校のリスク要因になると直感しました。私が勤めるToCo株式会社でも、「見守るだけ」ではその不安が消えず、不登校が固定化されるケースが多いことが分かっています。問題を早期に見極め、適切な対処をすることが大切です。

2. 思い悩んだ末の「1日休ませる」という選択

子どもの不安を取り除くためには、どうしたら良いかと悩みました。ここで私がとったのは、担任の先生と相談して、あえてもう1日休ませるという選択でした。最初は「学校に行きたくないから」と休ませてしまうと、これが一度きりでは済まなくなり、繰り返しになってしまうのではないかと心配しました。しかし、そのまま無理に登校させて、子どもが負のイメージを抱えたまま学校に行くのも逆効果です。

この選択が正しかったかどうか、私は自信を持って選択したわけではありません。しかし、親として「今の気持ちを尊重するけれども、学校から完全に逃げるわけではない」という中立的なスタンスを保つことを大切にしました。最初から簡単に休ませるとズルズルと不登校につながりやすくなりますが、今の気持ちを尊重することで、子どもも安心できる面があります。

3. 勉強することを条件に「休み=楽しい」を防ぐ

不登校の問題に関してToCoでは、休んだ際の「時間の過ごし方」に注目しています。休むといっても、完全に「自由」や「楽しい時間」にしてしまうと、「学校に行かない=好きなことができる」という認識を子どもが持ってしまう危険があります。

そこで、子どもに「病気ではないから学校と同じように勉強すること」を約束させました。具体的には、私がリモートワークをしているリビングで、隣に子どもが座り、宿題や学習ドリルを進めるようにしました。こうすることで、「学校に行く代わりにリビングで勉強する」というスタンスを取りつつ、子どもが「休み=楽しい時間」と誤解しないようにしました。これは個人的に「マシダ作戦」(≒これなら学校に行ったほうがマシダ)と名付けています。

子どもはリビングで私と一緒に机に向かい、意外と楽しそうに勉強をしていました。子どもが集中できる環境を保ち、少しでもリズムが崩れないように心がけました。このように、「休み=楽しい」という誤った認識を防ぐことが、再び学校へ戻るための小さな一歩であることを実感しました。

4. 次の日

翌朝になると、子どもは再び明るい顔で「学校に行ってくる!」と言って登校していきました。この瞬間、私はホッと胸を撫で下ろしつつ、「やはり見守るだけではなく、適切な対応が必要なのだ」ということを再確認しました。

「部屋に閉じこもらせず、リビングで勉強させる」という工夫で、「学校を休んだら家でのんびりできる」という感覚を防ぐことができました。ToCoで働く中で、こういったちょっとしたサポートが将来的な不登校リスクを減らすことに繋がると確信しています。

5. 「休む日」にもルールを作ることの重要性

今回の経験を通して改めて感じたのは、家庭での「休む日」のルールづくりの重要性です。たとえば、子どもが休んだ日は、好きなテレビを見たりゲームをしたりする時間を設けない、もしくは厳しく制限するというルールです。これにより、「学校を休むと楽しいことができる」という印象を持たせないようにします。私の場合も、子どもに「風邪は治ったけど、今日も家で勉強すること」を条件に一日を過ごしました。このような規律を家庭内で守ることで、日常のルーチンから大きく外れることなく、学校へ戻ることへの抵抗感を少しでも減らすことができたと思います。

一方で、休んだ日だからこそ少しだけ楽しい活動も入れる工夫もしました。昼食後に一緒に軽い散歩に出かけることで、自然と気分転換を図れるようにしました。このような活動は短時間で抑えつつ、「休む日も単なる遊びの時間ではない」というバランスをとることで、子どもの気持ちを落ち着けるのに役立ったのです。

6. 周囲のサポートも大切

休みが続くことで、子ども自身も「どうして自分だけが学校に行けないのだろう」と自責の念を抱きがちです。また、親としても、「自分の対応が間違っているのではないか」という不安に駆られることもあります。こういったときに、学校の先生や第三者のサポートを積極的に頼ることが重要です。私も今回のケースでは、子どもにとっての居心地の良さを第一に考えつつ、学校側の先生に相談しました。担任の先生から「もう一日休ませても構いませんよ」と言われたことで、私自身も心が軽くなり、冷静に対処できるようになりました。

学校だけでなく、同じ悩みを抱える親同士のコミュニティも心強いサポートになります。子どもが学校に通えない日々が続いたとしても、「親として、どうにかできる」という自信が少しでも持てるようなサポートを受けることが大切だと考えます。

7. 不登校の予防と家庭の対応力を高めるために

今回の一件は、にとって多くの学びをもたらしてくれました。不登校はある日突然始まるわけではありません。子どもの小さな「不安」や「気持ちの変化」を早期に察知し、親として適切に対処することで、不登校を防ぐ可能性が高まります。しかし、こうした対応は決して一筋縄ではいきません。

子どもが学校を休みたいと言い出した時、その原因がわからないと親として戸惑います。しかし、親としてできることは、「休みたい」という子どもの気持ちに共感しつつも、家庭内でしっかりとしたルールを設け、家庭と学校の両方で「一貫したメッセージ」を示すことだと痛感しました。そしてその過程で、子どもが一人で不安を抱えないように寄り添うことも重要です。

親子の絆は、こうした悩みの瞬間にこそ深まります。親が自分の気持ちを尊重しながら適切に対応してくれることがわかれば、子どもも安心して自分の気持ちを正直に伝えることができるようになります。長い目で見れば、こうした絆の積み重ねが、子どもが学校での問題や社会生活の中で困難に直面した際の心の支えとなり、自己肯定感を育てる礎になります。

家庭でできる対応を実行しながら、必要に応じて支援サービスを利用することは逃げではありません。専門家が不登校の要因を分析し、再登校へのプランを立ててくれることで、親も「見守るだけでいいのか」「どのようにサポートすべきか」といった迷いを解消しやすくなります。ToCoでは、不登校支援のエキスパートが各家庭に合わせたアドバイスを行い、親御さんが子どもを適切に支えることができるような情報やアプローチを提供しています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校予防フローチャート

不登校予防フローチャート見出し

目次


不登校予防フローチャート

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上記の不登校予防フローチャートは、子どもが「学校に行きたくない」と言ったときの対処を簡易的に表したものです。

欠席から不登校になりにくくするためには、子どもの不安やストレスを理解し、少しずつ対処していくことが鍵となります。ご家庭によって適切な対処は異なりますが、一つの基本的な型として参考にしていただけますと幸いです。

参考:文部科学省「不登校対策(COCOLOプラン等)について
参考:文部科学省「不登校への対応について


1. 子どもが「学校に行きたくない」と言う

子どもが「学校に行きたくない」と話したときは、すぐに反応せず、冷静に受け止めましょう。子どもの一時的な気持ちである場合もあるため、数日間様子を見ることが大切です。もし、4日以上続くようであれば、別のステップでさらに深い対応を始めます。

2. 行きたくない理由を聞く

理由を聞く際には、子どもを責めず、話を傾聴することが重要です。子どもが安心して話せるように、親の価値観を押し付けず、気持ちを受け止める姿勢を示しましょう。このステップで大切なのは、子どもが「自分の気持ちが理解されている」と感じることです。

3. 体調を確認する

子どもが学校に行きたくない理由が、体調不良によるものかどうかを確認します。もし体調を崩している場合は、無理せず休ませ、健康回復を優先します。軽度の場合は、次のステップでさらなる対応を検討し、学校に行けるかどうかを一緒に話し合いましょう。

4-A. 担任の先生と連携する(体調不良の場合)

体調不良が理由で欠席する場合、担任の先生と連絡を取り合うことが大切です。放課後の電話相談などを依頼し、学校側と状況を共有しましょう。先生と話し合うことで、宿題や授業の内容を確認でき、無理のない範囲で家庭学習をサポートすることが可能になります。

4-B. 軽度の場合の対応(登校可能性がある場合)

軽い体調不良の場合、子どもが自身で担任の先生に理由を伝えられるよう促しましょう。これにより、子ども自身が気持ちを整理する機会を持つことができます。また、担任の先生に早めに状況を共有することで、登校の後押しをお願いすることが可能です。

5. 学校に行きたくない理由を紙に書き出す

子どもが「行きたくない」と感じている理由を一緒に紙に書き出すことは、気持ちを整理するのに役立ちます。口頭で話すよりも、書き出すことで悩みや不安が視覚化され、対策を考えるための第一歩になります。親は指導するのではなく、子どもと一緒に取り組む姿勢を大切にしてください。

6. 子どもと一緒に対策を考える

学校に行くことをゴールにせず、ストレスや不安をどう乗り越えるかに焦点を当てて話し合います。この段階では、子ども自身が解決方法を考えるプロセスに親も伴走し、無理強いせずに一緒に向き合うことが重要です。焦らず、子どものペースを尊重して進めましょう。

7. 担任の先生と連携する(定期的な話し合い)

不登校が長引く場合、担任の先生と定期的に連絡を取り合い、子どもと一緒に話す機会を設けてもらいます。学校側には不登校に対するノウハウがあるため、連携することで新たな対策が見えてくることも多いです。また、学校との連絡を密にすることで、子どもが学校に戻る際の心理的なハードルを下げることにもつながります。

8. 通常の生活を続ける

不登校が続いても、できるだけ通常の生活を保つように心がけます。親子ともに家に閉じこもらず、外出の機会を設けてリフレッシュすることが大切です。また、家庭内が暗い雰囲気にならないよう、日常生活を前向きに過ごす工夫をしましょう。

9. 翌朝の様子を見る

前日の対策がどう影響したか、翌朝の子どもの様子を確認します。子どもの気持ちが少しでも前向きになっている場合は、それを大切にサポートしていきましょう。登校が難しい場合は、再度フローチャートに戻りながら、焦らず取り組みます。


突然お子様が休みたいと言われると、動揺されたり、声掛けに悩まれることもあると思います。そのような時には、このフローチャートを一つの参考としてご活用ください。


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不登校の鍵となる愛着障害とは?

不登校の鍵は愛着障害

目次


現代の教育現場では、不登校という問題が深刻化しています。多くの親や教師が、子どもが学校へ行かなくなったときに感じるのは「どうすればいいのか」という戸惑いや不安です。しかし、その根本的な原因にたどり着くことができなければ、どれだけ対策を講じても問題は根本的には解決しません。そして、意外にもこの不登校の問題は、幼少期の「愛着障害」に密接に関わっていることが多いのです。

愛着障害とは、幼少期において母親などの養育者との間で十分な「情緒的な絆」が形成されないことによって生じる心理的な障害です。子どもは生まれてからまず母親を求め、そこで築かれる愛着を通じて人間関係や自己肯定感の基盤を形成します。しかし、その愛着形成が阻害された場合、やがて成長するにつれ、様々な対人関係の困難や社会生活での適応不全が生じやすくなります。不登校の根底に愛着障害が存在している場合、その理解と対応が鍵を握るのです。

本稿では、不登校の背景にある愛着障害について詳しく探りながら、問題解決のために親や教育者がどのように向き合うべきかを考察します。

参考:文部科学省「不登校の要因分析に関する調査研究

愛着の形成とその重要性

愛着の発生と役割

愛着とは、乳幼児が主に母親との間に形成する「情緒的な絆」を指します。赤ちゃんが生まれて間もなく、母親に抱かれ、見つめられることで心の安定がもたらされます。そして、この絆は成長において自己肯定感や社会的な信頼感の基礎となります。愛着がしっかりと形成されると、子どもは成長する過程で自信を持ち、他者と信頼関係を築く力を養うことができるのです。

愛着の形成が良好であれば、子どもはたとえ親と一時的に離れても、心に安定を保つことができます。しかし、愛着が未成熟である場合、外界に対して不安や恐怖心が先立ち、対人関係で過度な依存や逆に無関心を示すなどの行動が見られることが多くなります。適切な愛着は子どもにとって「心の安全基地」であり、そこが揺らぐと様々な問題が生じるのです。

愛着形成の阻害要因

愛着が十分に形成されない原因として、母親や養育者が心の余裕を失っている状況が挙げられます。例えば、母親が精神的な不安定さを抱えていたり、離婚や家庭内の混乱が頻繁に起こる場合、子どもに安心感を与える環境が提供されにくくなります。また、母親の過度な依存や虐待、ネグレクトなどが存在すると、愛着形成は著しく阻害されます。

また、社会の変化によっても愛着形成は影響を受けます。例えば、女性の社会進出が進み、保育園などでの育児が一般化したことによって、母親と長時間過ごす機会が減少したことも愛着形成を阻害する要因の一つとして考えられます。しかし、必ずしも保育園や託児が悪影響を及ぼすわけではありません。3歳以降であれば母子分離も問題とされないことが多く、むしろ育児に対する理解やサポートの充実が重要です。

愛着障害の種類と特徴

愛着障害には、大きく分けて「反応性愛着障害」と「脱抑制型愛着障害」の二種類があります。それぞれがどのような特徴を持つのかを見ていきましょう。

反応性愛着障害

反応性愛着障害は、適切な愛着形成の機会を与えられず、母親や養育者に対して十分な信頼や安心感を抱けない状態です。この障害を持つ子どもは、愛情に対して反応せず、養育者との間に距離を置こうとする傾向があります。主な症状としては以下のようなものが挙げられます。

  • 母親への接近や接触を避ける
  • 呼びかけに反応せず無関心な態度を示す
  • 母親からの愛情や慰めに対して無反応である

これらの症状は、他者への不信感や自己肯定感の低さの表れであり、学校においても他者との関係を築くことが難しくなりがちです。学校生活で周囲と壁を作り、自分の殻に閉じこもるような行動に繋がりやすいのも、この愛着障害の特徴です。

脱抑制型愛着障害

脱抑制型愛着障害は、母親との間に適切な境界が形成されず、誰にでも過度に甘えたり依存する傾向を持つ状態です。この障害を持つ子どもは、母親から離れても不安を感じず、他者に対しても境界なく接近することがあります。主な症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 誰にでもすぐに懐き、過剰に甘える
  • 母親から離れても不安や恐怖を感じない
  • 母親からの愛情や好意に対して過剰に反応する

脱抑制型愛着障害の子どもは他者に対して過度な親密さを見せるため、周囲との適切な距離感を持つことが難しくなります。また、家庭や学校において人間関係の問題が生じやすく、不登校の一因となる場合も少なくありません。

不登校と愛着障害の密接な関係

不登校の背後には、愛着障害が隠れていることが多いです。愛着障害を抱えた子どもは、他者と健全な関係を築くことが難しく、その結果、学校という場での適応に大きな困難を抱えます。学校生活には集団生活の中での協調や、他者とのコミュニケーションが不可欠です。しかし、愛着障害を抱える子どもにとっては、学校は「他者に囲まれた場」として強い不安を引き起こす場所になりがちです。

さらに、不登校の子どもが家庭で感じる居心地の良さが、愛着障害によって阻害されている場合もあります。家庭が子どもにとって安心できる場所でない場合、子どもは居場所を求めることができなくなり、学校へ通うことへの不安も増幅されるのです。愛着障害が解消されないままでは、不登校を根本的に解決することが困難なのです。

親が直面する愛着障害の連鎖

愛着障害の問題において、非常に重要なのが「親自身の愛着障害」です。子どもに愛着障害が見られる場合、その親もまた同じように幼少期に愛着障害を抱えていたことが多いとされています。これは「愛着の連鎖」とも呼ばれ、親が自らの愛着問題を解消できないまま育児に携わると、子どもに同じ問題を引き継がせてしまう可能性が高まるという現象です。

愛着障害を抱える親は、子どもに対して不安定な愛情を注ぎがちです。「本当に愛しているのだろうか」「自分は子どもを幸せにできるのだろうか」といった自己疑念が絶えず湧き上がり、それが子どもに伝わります。このような親から育てられた子どもは、愛情の一貫性を感じられず、また不安定な愛情を与えられることにより愛着障害を発症しやすくなります。

愛着障害の図

愛着障害の克服と不登校解消への道

ここまで述べたように、不登校問題の解決には、まず愛着障害に向き合うことが不可欠です。愛着障害は決して治らないものではありません。むしろ、理解し、適切なサポートを受けることで、徐々に改善が期待できるのです。そのためには、親子双方が「愛着」というテーマを正面から見つめ直し、健全な親子関係の構築に努める必要があります。

家庭の居場所作り

不登校の子どもが学校に戻るためには、まず家庭が安心できる居場所である必要があります。家庭が子どもにとって心の拠り所となり、親が温かく支えてくれる存在であると感じることで、学校という外の世界へ再び目を向けることができるのです。親が子どもに対して無条件の愛情を示し、どんな状態であっても「ここにいていいんだ」と感じさせることが最初の一歩です。

親自身の愛着障害に向き合う

愛着障害の克服には、親自身もまた自らの愛着障害と向き合い、必要であれば専門的なサポートを受けることが必要です。親が自己理解を深め、愛情を与える力を取り戻すことで、子どももまたその愛情を受け入れやすくなります。親が心から子どもを愛し、支えたいと願う姿勢を見せることで、子どももその姿勢に応じて成長していきます。

結論

不登校の問題解決には、愛着障害への理解が欠かせません。不登校の背後には、往々にして愛着形成の問題が潜んでおり、それが親子関係や学校生活において様々な問題を引き起こしています。親がまず自分の愛着問題に向き合い、家庭の中で安心できる居場所を子どもに提供することが、不登校の解消に向けた一歩です。そして、愛着障害は決して克服できない問題ではありません。理解し、向き合うことで、親子の間に新たな絆が生まれ、子どもは自信を持って社会へと歩みを進めることができるようになるのです。

関連記事:再登校の鍵は「子ども・親・学校」のリボンモデル



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傾聴の基本と応用とは?

傾聴の基本と応用。子どもが伸び伸びと外で挑戦できるように。

目次


「子どもは親の言うことを素直に聞くべきだ」——かつての日本社会ではこのような考え方が主流でした。しかし、近年の児童心理学の発展とともに、「子どもは育てるものではなく、育つもの」という新しい視点が注目されています。この言葉は単なるキャッチフレーズではなく、親子の関係や教育の根本を考え直す上で非常に重要な意味を持っています。

現代の日本社会において、不登校や引きこもりの問題は依然として深刻です。子どもが学校に行きたがらなかったり、家から出たがらなかったりする状況は、単に怠けや甘えと決めつけては解決しません。むしろ、家庭の信頼関係やコミュニケーションの不足がその背景に隠れていることが多いのです。

そこで、今回は「傾聴」という心理的なスキルについて、その基本から応用までを掘り下げ、子どもとの信頼関係をどのように構築し、問題を解決していくのかについて考えていきたいと思います。

参考:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について

傾聴とは何か

傾聴とは、相手の言葉や感情に対して注意深く耳を傾け、共感的に理解しようとする姿勢のことです。単に「話を聞く」という行為とは異なり、相手の内面的な感情や考え方にまで焦点を当て、その心情に寄り添うことを目指します。傾聴の基本には、以下の三つの要素があります。

1. 子どもを受け入れる

まず、子どもの言葉や感情を評価したり否定したりせず、そのまま受け入れることが大切です。「なんでそんなことを考えるの?」「それは間違っているよ」と否定から入ると、子どもは心を閉ざしてしまいます。大人の価値観や常識から逸れているように感じても、子どもが感じた事実は子ども自身にとって重要なものです。その感情を否定せずに受け止める姿勢が、信頼関係の土台を作ります。

2. 共感を示す

ただ話を聞くだけでは不十分です。話し手である子どもが「自分の気持ちを理解してくれている」と感じられるよう、共感的な態度を取ることが求められます。例えば、子どもが学校でいじめにあった経験を語っているときには、「それは本当に辛かったね」「嫌な思いをしたんだね」と、子どもの感情に寄り添う言葉をかけることが大切です。

3. 子どもの話を引き出す

傾聴は一方的な受動的行為ではなく、話し手が自分の思いをより深く表現できるようサポートすることでもあります。「その時、どう感じたの?」や「もう少し詳しく教えてくれる?」といった質問を投げかけることで、子どもが自分の内面を見つめ直し、自らの言葉で語る機会を提供します。

傾聴の基本から応用へ

では、傾聴の基本を理解したうえで、具体的にどのように応用していくべきでしょうか。家庭内での信頼関係を築くためには、基本的な傾聴のスキルを実践しつつ、子どもとの対話を深める工夫が必要です。

無言のメッセージに気づく

子どもは必ずしも自分の気持ちを言葉にして表現できるわけではありません。特に、内向的で感情を外に出しづらい子どもにとって、自分の思いを伝えるのは困難です。そのため、親は子どもの仕草や表情、沈黙からも心情を読み取る努力をすることが重要です。「今日は学校のことを話したくないんだな」「何か不安そうな表情をしているな」といったサインを見逃さないようにし、それを元に会話を始めることが信頼関係の構築につながります。

質問の仕方を工夫する

親として、子どもに「どうして?」と問い詰めたくなる場面は少なくありません。しかし、問い詰めるような質問は子どもにとっては圧力となり、正直な気持ちを語ることを妨げます。「どうして学校に行きたくないの?」という質問は、「何があったのかな?」や「最近、どんなことがあった?」というように、より柔らかく具体的な質問に変えることが効果的です。質問の仕方を工夫することで、子どもが自ら話しやすい環境を整えられます。

傾聴の実践と効果

子どもは育てるものではなく、育つものである

「子どもは育てるものではなく、育つもの」という考え方は、親が子どもに対してコントロールや支配をせず、成長を見守り、必要な支援を行うことを意味します。これは単に「放任主義」とは異なり、子どもが自己成長を遂げる過程でのサポートが重要であるという考え方です。親の役割は、子どもが自分の意思で行動し、自己の価値を見出していくための環境を整えることにあります。

過干渉がもたらす弊害

過干渉や過保護は、子どもにとって一見「愛情深い」行為に見えるかもしれませんが、実際には子どもの自立を妨げる結果につながることがあります。子どもが何か困難に直面したとき、親がすぐに手を差し伸べてしまうと、子どもは自分で問題を解決する経験を積む機会を失います。困難に直面することは成長の一部であり、そのプロセスを見守ることが重要です。

信頼の失われた子どもたち

子どもが自分の考えや感情を尊重されないまま育つと、親に対する信頼を失いやすくなります。親が子どもの意見を否定したり、自分の価値観を押し付けたりすることが続くと、子どもは「どうせ話しても無駄だ」と感じ、心を閉ざしてしまいます。この状態が長引くと、不登校や引きこもり、さらには非行といった問題行動に発展することも少なくありません。

傾聴の意味を子どもに伝える

傾聴の重要性は、親だけが理解していれば良いわけではありません。子ども自身も、他者と良好な関係を築くためのスキルとして、傾聴を身につけることが大切です。では、どのようにして子どもに傾聴の意味を伝え、実践させることができるでしょうか?

親が傾聴の手本を見せる

子どもは親の行動をよく観察しています。親が日常的に傾聴の姿勢を示すことで、子どもも自然とその態度を学ぶことができます。例えば、親が兄弟間のトラブルに対して公正な立場で話を聞き、互いの意見を尊重して解決策を見つけようとする姿勢を見せることが、子どもへの良いお手本となります。

小さな成功体験を積ませる

傾聴を実践することによって得られる成果を、子どもが実感できるようにすることも重要です。例えば、友達とのけんかの際に「相手の話をよく聞いてみよう」とアドバイスし、その結果として和解できた経験を振り返るといった形で、傾聴の効果を確認させると良いでしょう。このような成功体験が子どもの自信を育み、他者への共感を育てる一助となります。

傾聴がもたらす親子関係の変化

傾聴の実践を通じて、子どもは次第に自分の感情を素直に表現することができるようになります。また、親も子どもの成長や変化を受け入れる姿勢を身につけ、親子関係はより深い信頼に基づいたものへと変化していきます。この信頼関係が築かれることで、不登校や引きこもりの問題を未然に防ぐことができるだけでなく、子どもの自己肯定感や対人スキルの向上にも寄与します。

自己肯定感の向上

傾聴によって、子どもは自分の感情や考えが尊重される経験を積みます。これは自己肯定感の向上につながり、自己表現や対人関係に対する不安が軽減されます。親に「自分は受け入れられている」と感じることで、子どもは積極的に自己表現をし、他者とのコミュニケーションを楽しむことができるようになるのです。

問題解決能力の向上

傾聴を通じて子どもは自己反省や問題解決のスキルを学びます。親が子どもの意見を受け入れ、その上で問題を一緒に解決する姿勢を見せることで、子どもは「問題をどう捉え、どのように解決していくか」を学ぶ機会を得ます。このスキルは学校生活や将来の社会生活において非常に重要です。

結論

傾聴は単なる技術や方法論ではなく、子どもとの信頼関係を築くための「心構え」でもあります。親が子どもの言葉や感情を受け入れ、共感し、対話を深めることで、子どもは自らの成長を実感し、自己肯定感を高めていくことができます。

「子どもは育てるものではなく、育つもの」という考え方は、親が子どもを信じ、成長を見守る姿勢を示すことを意味します。そして、そのための鍵となるのが傾聴です。家庭内での信頼関係を深めるために、まずは親が傾聴の姿勢を身につけ、それを日常生活の中で実践していくことが求められます。

親子の信頼関係が強まることで、子どもは困難な状況においても自らの力で立ち向かうことができるようになります。傾聴の基本と応用を理解し、日々の生活の中で少しずつ取り入れていくことで、子どもたちがより良い成長を遂げ、家庭が安心できる居場所となることを願っています。



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子どもにストレスの乗り越え方を伝える意味とは?

子どもにはストレスの避け方ではなく、乗り越え方を伝える

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参考:文部科学省「学校における子供の心のケア-サインを見逃さないために

 例えば、学校に行くことを子どもが嫌がった場合、親はつい無思考に「大丈夫だよ」と声をかけてしまいがちです。しかし、単に不安を解消するだけでなく、緊張に打ち勝つための具体的な方法を一緒に考えていくことが重要です。

現代社会は、子どもたちを取り巻く環境が複雑化し、多様なストレス要因が存在します。学校での人間関係、学業の難しさ、将来への不安など、子どもたちは様々なストレスに直面しています。こうした状況下で、多くの親御さんが「子どもをストレスから守りたい」という気持ちを抱くのは当然のことで、大切な愛情です。本稿では、その親心を「守る」ではなく「育てる」に向ける方法について紹介していきます。

「授人以魚 不如授人以漁」と老子は言いました。これは「飢えている人へ、あなたは魚を与えるべきか、魚の釣り方を教えるべきか」 という問いかけで、「人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、釣り方を教えれば一生食べていける」という見方を示した格言です。
子どもを育てる上でも、常に問題から子どもを守り続けるのではなく、自ら問題を解決できる力を育むことが、子ども自身の将来にとって大切なのではないでしょうか。

ストレスから逃げることのリスク

子どもでも大人でもストレスを完全に取り除くことは不可能なため、過度に子どもからストレスを取り除くことは、子どもの将来への悪影響になる可能性があります。なぜなら、ストレスを避けることに慣れた子どもは、将来、どこかで訪れる困難な状況に対して乗り越える力がないため、克己して機会を掴みとる道を自ら閉じてしまう恐れがあるからです。

ストレスを抱え込んだままにしておくと、子どもは不安を自分で大きくしてしまうことがあります。また、辛いことに対して逃げることが最初の選択肢になってしまうと、困難を克服する力が育ちません。ストレスに立ち向かう経験を積むことは、子どもたちが自己肯定感を高め、自己効力感を育む上で不可欠なのです。

不安を放置すると

不安に立ち向かうための具体的な方法

 では、具体的にどのように子どもにストレスに立ち向かう力を養えばよいのでしょうか。まず、子ども自身が抱えている不安を、漠然とした「不安」と捉えないことが必要です。
不安について【感情、思考、行動】の3つの要素に分けて考えることで、子どもは自分の不安を客観的に捉え、その原因を特定することができます。

1つ目は、感じていること。「心臓がドキドキしている」「体が震えている」「手が湿っている」「お腹が痛くなる」などの体の動きは、怖いという感情を伝えています。

2つ目は、考えていること。感じていることを何とかするために、「ここから逃げよう」「そんなことできない」「お家に帰りたい」「お母さんか誰かに助けてほしい」などの考えが出てきます。

3つ目は行動で、考えていることから具体的に何かをすること。その場所から離れたり、部屋に隠れたり、気分を楽にしてくれそうな人のそばにいようとする、などです。この行動はまた、新しい感情を生み出します。

子どもが自分の不安を具体的に表現できるようになったら、次に、その不安を小さくする方法について一緒に考えてみましょう。

学校に行きたくないと言っていた子どもとの対話例を紹介します。

親:ねぇ、ちょっと座って話を聞かせてくれる?  〇〇の気持ち、もっとよく知りたいなって思ってるんだ。

子:うん。

親:この3つの丸、見てくれる?  これはね、私たちの体や心で起こっていることを 「感じていること」「考えていること」「していること」 に分けて表してるんだ。最近、学校に行きたくないって思ったことあったよね?  そのときのことをちょっと一緒に考えてみようか。  いつ頃だったか覚えてる?

子:うん、先週。

親:そのとき、どんな気持ちだった?  朝、学校に行く前かな?

子:うん。

親:朝、学校に行こうとして、お母さんが起こしたとき、〇〇はどう思ったのかな?

子:行きたくなかった。

親:そうだよね。  「行きたくない」って思ったんだね。  じゃあ、ここに書いてみようか。(思考の丸に 「行きたくない」 と書く)  他にも何かあったかな?

子:寝てたのに起こされたから、ちょっと怒っちゃった。

親:そうだね、寝てたのに起こされたから、少し怒ったのかもしれないね。  じゃあ、ここに 「寝ていた」 って書いてみよう。(行動の丸に書き込む)  学校に行きたくないって思ったときにしていたこと、これだね。  その後、どうしたかな?

子:泣いちゃった。

親:そうだったね。(行動の丸に 「泣く」 と書く)  どうして泣いちゃったのかな?

子:宿題を忘れて、先生に怒られるのが怖かった。

親:そうか、宿題を忘れて、先生に怒られるのが怖かったんだね。(思考の丸に 「宿題を忘れた」 「先生が怒る」 と書く)  先生が怒るかもしれないって考えると、体はどうだった?  どこか痛かったり、変な感じがしたりしたかな?

子:お腹が痛くなって、気持ち悪かった。  心臓もドキドキしてた。

親:そうだったんだね。  お腹が痛くなったり、心臓がドキドキしたりするってことは、〇〇はとっても不安だったってことだよね。(感情の丸に 「心臓がドキドキする」 「お腹の調子が悪い」 と書く)  よくできたね。  見てごらん、〇〇が怖いと感じるとき、体の中でこんな風に色々起こってるんだね。

親:この3つの丸を見てみよう。  〇〇が寝ていた時(していることを示しながら)、宿題を忘れて、先生に怒られるかもしれないって思ったんだね。合ってる?

子:うん。

親:泣いてたとき、お腹の調子はどうだった?

子:もっと悪くなった。

親:そうか、もっと悪くなっちゃったんだね。  そのとき、心の中ではどんなことを考えてたかな?

子:お母さんに怒られたこと。  お母さんが怒るから悲しい。

親:そうだね。(思考の丸に 「お母さんに怒られて悲しい」 と書く)  見てごらん。  1つの丸で何かが起こると、他の丸でも何かが起こってるね。(それぞれの丸から矢印を引き、隣の丸とつなぐ)  つまり、〇〇が 「宿題を忘れて先生に怒られる」 って思うと、お腹の調子が悪くなって、学校に行けなくなっちゃう。  そうするとお母さんが心配して怒って、〇〇はもっと悲しい気持ちになっちゃうんだね。  見てごらん、私たちの気持ちって、こういう3つの部分からできていて、この3つはお互いに影響し合ってるんだね。

親: じゃあ、行動の丸で考えてみようか。宿題を忘れてしまって、学校に行きたくない気持ち、よく分かるよ。でも、もし学校に行けなかったら、どうなると思う? 

子: 先生に怒られるし、お母さんもきっとがっかりする。 

親: そうか、そう思うんだね。じゃあ、もし学校に行って先生に正直に話したら、どうなると思う? 

子: 怒られるかも。

親: そうかもしれないね。ただ、先生は宿題を忘れたから〇〇が休むよりも、行ってちゃんと話してくれる方が嬉しいんじゃないかな。

脱感作法による自己強化

不安を小さくすることに成功したら、子どもを心から褒めて励ましましょう。この方法は、脱感作法と呼ばれるもので、ネガティブな感情を抑止して成功体験を重ねることで、自己肯定感を高める効果があります。

例えば、テスト前に緊張していた子どもが、深呼吸をすることで落ち着きを取り戻し、テストで良い点を取ることができたとします。この時、「よく頑張ったね!緊張していたけど、落ち着こうと工夫したからきっと良い結果になったんだね」と具体的に褒めることで、子どもは自信を持つことができます。

最後に

子どもにストレスの乗り越え方を教えることは、決して簡単なことではありません。しかし、子どもが将来、社会で自立して生きていくためには、不可欠なことです。親は、子どもが困難な状況に直面した際に、寄り添い、励まし、具体的なアドバイスを与えることで、子どもが自ら問題を解決できるようサポートしていくことが重要です。

ストレスから「逃げる」のではなく、「乗り越えていく」ことを教える。それは、子どもたちが自信を持って未来に向かって歩んでいくための第一歩となるはずです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

欠席を不登校にしないために親ができることとは?

欠席を不登校にしないために親ができること

目次


「学校に行きたくない」

この子どもからの切実な言葉に、多くの親は戸惑いを隠せないでしょう。なぜなら、学校は社会性を育み、知識を習得する場所であり、子どもたちの成長にとって欠かせないものだと考えられてきたからです。しかし、果たして学校が全ての子どもにとって最適な場所と言えるでしょうか。

子どもが学校を欠席されるということは、何かしらのSOSを発していらっしゃる可能性が高いです。体調不良、人間関係の悩み、学習の遅れなど、その理由は様々です。ここで大切なのは、欠席を単なる問題として捉えず、子どもたちが何を伝えようとしているのか、その背景にある感情に目を向けることです。

参考:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

なぜ子どもは学校に行きたがらないのか。

もしかしたら、特定の科目についていけずに自信を失っているのかもしれません。
また、クラスメイトとの人間関係で悩んでいるのかもしれません。
あるいは、単に疲れていて休みたいと思っているのかもしれません。

重要なことは、子どもたちの心の声に耳を傾けることです。まずは、子どもたちが安心して話せるようなオープンな雰囲気を作り、焦らずにじっくりと話を聞いてあげましょう。否定的な言葉や判断をせず、共感の言葉をかけてあげることで、子どもたちは自分の気持ちを素直に打ち明けられるようになるでしょう。欠席を責めるような姿勢は避けましょう。

従来、欠席は良くないことだと考えられ、子どもたちは欠席すること自体に罪悪感を抱きがちでした。しかし、状況によっては、欠席することが子どもたちの心身の健康を守るために必要となる場合もあります。

無理して学校に通うことで、かえって精神的な負担が増大し、不登校へとつながる可能性も否定できません。欠席は、子どもたちが自分の心と体と向き合い、休息を取るための貴重な機会でもあるのです。例えば、人間関係で悩んでいる場合は、学校から離れて心を落ち着かせることで、問題解決の糸口が見つかることもあるでしょう。欠席を認めることは、子どもたちの信頼を得る上で非常に重要です。子どもたちは、自分の気持ちを理解してもらえたという安心感を得ることで、再び学校へ行く意欲を取り戻せるでしょう。

欠席したことを理由に、子どもを責めたり、過去の失敗を蒸し返えさない。

そのような言動は、子どもの心に深い傷を負わせ、次の登校を困難にするでしょう。むしろ、欠席したことを認め、その気持ちを尊重することが大切です。子どもたちにかける言葉は、彼らの心に大きな影響を与えます。例えば、「また休んでいるのか」「ちゃんと勉強しているのか」といった言葉は、子どもたちを傷つけ、自信を喪失させてしまう可能性があります。代わりに、「今日はゆっくり休んでね」「何かしたいことはあるかな?」など、温かい言葉をかけてあげましょう。過去の失敗を引きずることは、子どもたちの成長を妨げます。過去のことは過去のこととして受け止め、これからのことを前向きに考えていくことが大切です。

欠席中も、学習の機会を設けることは重要です。ただし、学校と同じように厳しく勉強をさせるのではなく、子どもの興味関心に合わせた学びを提供することが望ましいです。例えば、オンライン学習や読書など、子どもが楽しみながら取り組めるような活動を取り入れることで、学習意欲を高めることができます。

親は、子どもにとって最も身近な存在であり、子どもたちの成長を支える重要な役割を担っています。子どもたちが困難に直面した際には、共感し、寄り添い、共に解決策を探していくことが求められます。子どもたちの気持ちを理解するためには、彼らの立場に立って考えてみる必要があります。なぜ学校に行きたがらないのか、何が悩んでいるのか、子どもたちの視点から問題を捉えてみましょう。

欠席が不登校にならない工夫

子どもが学校を休むことは、心身に何らかのサインを発している可能性があります。しかし、その一方で、欠席をきっかけに、学校から離れてしまう、いわゆる「不登校」へとつながってしまうケースも少なくありません。欠席が不登校に発展しないよう、親としてできることは何でしょうか。

欠席中に大切なのは、子どもを甘やかすことなく、一方で、厳しすぎる態度も避けることです。例えば、「学校を休んでいるのだから、好きなものを食べに行こう」と、外食に連れ出したり、「今日は特別だから、ゲームをしてもいいよ」と、普段できないことを許すような行動は、子どもにとって学校を休むことのメリットを大きくしてしまう可能性があります。学校を休むことは特別なこと、楽しいことという印象を与えてしまい、結果的に学校へ行く意欲を低下させてしまう恐れがあるのです。

もちろん、子どもが辛い思いをしているのであれば、優しく寄り添い、話を聞いてあげることは大切です。しかし、同時に、学校へ行くことの大切さ、学ぶことの楽しさについても伝えていく必要があります。例えば、「今は学校がつらいかもしれないけれど、〇〇(好きなこと)を学ぶために、学校で必要な知識を身につけることは大切なんだよ」と、将来の目標と結びつけて話してみるのも良いでしょう。

さらに、欠席中に限らず、普段から家庭学習の習慣を身につけることも大切です。例えば、一緒に問題を解いたり、読書をしたりする時間を設けることで、学習に対する意欲を高めることができます。

大切なのは、一貫性のある態度で子どもに接することです。例えば、今日は甘やかして、明日は厳しく叱るといったように、態度がコロコロ変わってしまうと、子どもは混乱してしまい、何をすれば良いのか分からなくなってしまいます。

欠席中の過ごし方だけでなく、学校へ行く前の準備も大切です。登校前には、一緒に朝食を食べたり、今日の予定を確認したりするなど、学校へ行くことを意識した行動を取り入れるようにしましょう。また、学校で困ったことがあったら、いつでも相談に乗ることを伝えてあげることも大切です。

欠席を通して子どもと向き合う

大切なのは、欠席を単なる問題として捉えるのではなく、子どもたちが何を必要としているのか、その個々の状況に合わせて適切な対応をしてあげることです。親は、子どもの成長をサポートするパートナーとして、子どもたちと一緒に歩んでいくことが大切です。子どもたちの可能性を信じ、彼らの成長を応援してあげましょう。「欠席」という言葉に、ネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、欠席は、子どもたちが自分自身と向き合い、成長するための貴重な機会でもあるのです。親は、その機会を最大限に活かすために、子どもを信じて、共に歩んでいきましょう。子どもたちは、それぞれ異なる個性と才能を持っています。学校という枠組みにとらわれず、子どもたちの可能性を信じ、様々な選択肢を提示してあげることが大切です。


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不登校における「未病」の大切さとは?

不登校にも未病という考えを

目次


不登校は、子どもが学校へ行かなくなる前に、さまざまな兆候を示すことがあります。​これらのサインを早期に察知し、適切に対応することが、不登校の予防や早期解決につながります。​本章では、子どもが発する小さなサインと、その背景にある心理状態、そして保護者としての具体的な対応策について詳しく解説します。


参考データ

文部科学省:不登校への対応について(Q&A)

東京都教育相談センター(教育支援)

子ども家庭庁:子どもの心の健康に関する支援情報


子どもが示す「小さなサイン」とその背景

子どもが不登校に至る前には、以下のようなサインが見られることがあります。​

  • 朝起きるのがつらそうになる:​以前はすぐに起きていたのに、「あと5分…」と布団から出られなくなることが増える。​
  • 体調不良を頻繁に訴える:​「お腹が痛い」「頭が痛い」など、特に朝や登校前に体調不良を訴えることが増加する。​
  • 学校の話題を避ける:​学校での出来事や友人関係について話したがらなくなる。​toco.mom
  • 宿題やテストへの強い拒否感:​宿題をやりたがらない、テスト前に極度の不安を示す。​
  • 情緒の不安定さ:​些細なことで怒ったり、泣いたりするなど、感情の起伏が激しくなる。​
  • 食欲の変化:​食事量が急に減ったり、増えたりする。​
  • 睡眠リズムの乱れ:​夜更かしが増え、朝起きるのが遅くなる。​

これらのサインは、子どもが学校生活や人間関係でストレスや不安を感じている可能性を示しています。​特に、いじめが原因の場合、子どもは直接的に「いじめられている」と言わないことが多く、上記のような間接的なサインでSOSを発していることがあります。​

保護者としての具体的な対応策

子どもがこれらのサインを示した場合、保護者として以下のような対応が考えられます。​

  1. 子どもの話をじっくり聞く:​子どもが話したいと感じたときに、否定せず、遮らず、最後まで話を聞く姿勢を持つ。​「そう感じているんだね」と共感を示すことで、子どもは安心感を得る。​
  2. 焦らず待つ:​子どもが自分の気持ちを言葉にするには時間がかかることもある。​保護者が焦ると、そのプレッシャーが子どもに伝わり、さらに心を閉ざしてしまう可能性があるため、子どものペースを尊重する。​
  3. 家庭を安心できる居場所にする:​家庭がリラックスできる場所であることを子どもに感じさせる。​保護者が穏やかに接することで、子どもは安心感を得る。​
  4. 生活リズムを整える:​夜更かしや昼夜逆転を防ぎ、規則正しい生活を送ることで、心身の健康を保つ。​朝は一緒に朝食をとる、夜は決まった時間に就寝するなど、家族全体で生活リズムを整える努力をする。​
  5. 学校や専門家と連携する:​子どもの状況を学校の担任やスクールカウンセラーと共有し、適切なサポートを受ける。​必要に応じて、外部の専門家や支援団体に相談することも検討する。​

これらの対応を通じて、子どもが抱える不安やストレスを軽減し、再び学校生活に前向きになれるようサポートすることが重要です。​

未病段階での親子の対話の築き方

子どもが不登校の兆候を見せ始めたとき、親ができる最も大切なことの一つが「対話」です。しかしこの“対話”とは、単に「話をすること」ではありません。ポイントは、子どもが心を開いて本音を話せるような“聞き方”にあります。

「問い詰めない」ことがスタートライン

子どもが学校に行きたがらない、あるいは不機嫌だったり、黙って部屋にこもるようになったとき、親としてはつい「何があったの?」「学校で何か嫌なことがあった?」と聞きたくなります。しかし、ここでストレートに原因を追及すると、子どもは「責められている」と感じてしまい、心を閉ざしてしまうことがあります。

この段階では、子ども自身も自分の気持ちをうまく言語化できていないことが多いです。頭の中がモヤモヤしていて、「理由は分からないけど学校に行きたくない」と感じていることもよくあります。ですから、親がまずやるべきは「答えを求めない姿勢」で向き合うことです。

「聞く」ではなく「聴く」姿勢

親子の会話で信頼関係を築くには、“傾聴”の姿勢がカギになります。以下のポイントを意識すると、子どもは安心感を得やすくなります。

  • 目線を合わせて話す
     子どもが安心できる距離で、正面からではなく横並びに座るのも効果的です。食事中や散歩中など「ながら会話」も有効です。
  • あいづち・うなずき
     「うん」「そうなんだ」「それは大変だったね」など、子どもの話を受け止めている姿勢を伝えましょう。
  • 話の主導権は子どもに
     「もっと詳しく教えて」とは言わず、「教えてくれてありがとう」と言うことで、無理に深掘りせず、安心できる場を保ちます。

小さな会話の積み重ねが「信頼」を育てる

不登校の未病段階では、毎日少しずつ会話の“回数”を重ねることが大切です。特別な話題を出さなくても構いません。「今日のおやつ何にする?」「一緒にコンビニ行く?」など、日常の些細な言葉のキャッチボールが信頼を育てます。

こうした何気ない会話の中で、子どもがふと本音をポロッと漏らすことがあります。それをきっかけに、「ああ、そう思ってたんだね」と受け止めることができれば、そこから少しずつ心の距離を縮めることができます。

無理に「学校」の話をしない

学校のことに触れたくない子どもに対して、「学校に行かないの?」といった言葉は重荷になります。あくまで学校の話題は子どもから出てくるまで待つことが原則です。

また、「将来どうするの?」「高校はどうするの?」という先の話をすると、子どもは自分を責めてしまったり、逃げ場がないと感じてしまいます。未来の話はタイミングを見て慎重に。

感情のコントロールは大人の仕事

子どもが親に心を開かない背景には、「親が感情的になることへの恐れ」がある場合も多いです。「なんでそんなにだらけてるの!」「いい加減にして!」といった叱責は、一瞬で子どもとの信頼関係を壊してしまいます。

親も人間ですから、感情的になってしまうことは当然あります。しかし、そのときこそ深呼吸をして、「この子は困っているだけかもしれない」と視点を変えてみてください。怒りではなく、共感と安心を与えることが、子どもが回復に向かう土台になります。

生活リズムを整えることで心と体を守る

不登校の未病段階において、子どもの心の問題は体のリズムと密接に関係しています。心が不安定になると睡眠が乱れ、生活リズムが崩れる。そしてその乱れがさらなる不安や無気力感を呼び、不登校につながる——これは珍しい流れではありません。

逆に言えば、「生活リズムを整えること」が、子どもの心身の安定を取り戻すきっかけになり得るのです。


「体を整えることが心を整える」

まず知っておきたいのは、「心の不調」は体に現れやすいということです。例えば、朝になると腹痛や頭痛を訴える、ぼーっとして無気力になる、食欲が落ちるといった変化です。これは決して「仮病」ではなく、自律神経が乱れているサインかもしれません。

自律神経は、規則正しい生活によって整っていきます。だからこそ、生活リズムの見直しは、未病段階の子どもにとって非常に重要な“予防的アプローチ”なのです。


朝が「一日の軸」になる

生活リズムの要は「朝」です。夜型の生活をしていると、朝起きることが苦痛になり、そこから「学校に行きたくない」「何もしたくない」へと気持ちが流れてしまいます。

保護者ができる支援として、次のような「朝のサポート」が効果的です。

● 一緒に朝日を浴びる

朝の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、セロトニン(心を安定させる脳内物質)の分泌が促進されます。起きる時間がバラバラな子どもでも、「カーテンを開けて太陽の光を入れる」「5分だけでもベランダで深呼吸」など、できる範囲で十分です。

● 朝食を一緒にとる

食事をすることで身体が「活動モード」に切り替わります。朝食を抜くと低血糖状態が続き、頭がぼーっとしてしまい、気持ちも沈みやすくなります。最初は少量のフルーツやスープなど、子どもが食べやすいものから始めても構いません。

● 起床時間を徐々に調整

いきなり「7時に起きよう」としても難しい場合は、10時→9時→8時と、段階的に早めていきましょう。無理のないスケジュール調整が、ストレスを最小限に抑えます。


夜の過ごし方が翌日に影響する

夜遅くまでゲームやスマホをしていると、脳が刺激を受け続けてしまい、眠りの質が下がります。結果として翌朝起きられず、日中の活動に影響が出てしまうという悪循環が生まれます。

● スマホ・ゲームのルールづくり

「21時以降はスマホを親に預ける」「寝室にはスマホを持ち込まない」などのルールを家庭内で設けることも検討してみてください。強制ではなく「一緒に決めよう」というスタンスが大切です。

● 寝る前の“クールダウン”タイム

就寝の30分〜1時間前には、照明を落とし、テレビやスマホの画面を見ないようにします。代わりに、音楽を聴いたり、アロマを焚いたり、読書したりといった“脳を落ち着ける時間”を習慣にするとよいでしょう。


日中に“少しの活動”を取り入れる

「不登校=外出しない生活」になりがちですが、心身を安定させるためには、日中の適度な活動が不可欠です。特に軽い運動は、セロトニンの分泌を促し、抑うつ感や不安を和らげる効果があります。

● 散歩・公園・家庭菜園

「家の周りを10分歩く」「公園で花を見に行く」「家庭菜園で水をあげる」といった行動が、心をほぐします。大切なのは「がんばらなくていい活動」にすることです。

● 家事を一緒にやる

「洗濯物を一緒に干す」「野菜を一緒に切る」なども立派な活動です。達成感や役割意識を育てるとともに、生活の中にリズムを取り戻す足がかりになります。


生活リズムの改善は「習慣化」がカギ

生活リズムは一朝一夕に整うものではありません。親も子も、短期的な成果を求めすぎず、「一つずつ整えていこう」という気持ちで進めることが大切です。

また、スケジュールは子どもと一緒に作ることをおすすめします。カレンダーやホワイトボードを使って「朝8時に起きる」「10時に散歩する」と視覚的に共有すると、子ども自身の意識も変わっていきます。

まとめ

不登校の「未病段階」において、保護者ができることはたくさんあります。兆候に早く気づき、家庭の中で安心できる土台を整えること。そして、必要に応じて学校や専門機関とつながることが、子どもを支える強力な柱になります。

忘れてはならないのは、子どもの問題に向き合っている保護者自身も、強いストレスや不安を抱えているということです。

必要があれば、保護者自身がカウンセリングを受ける、信頼できる友人や家族に話すなど、“大人の心のケア”も大切です。親が穏やかでいることが、子どもにとって一番の安心材料となるからです。

「どうしていいかわからない」と感じる時は、立ち止まってもかまいません。大切なのは、そこで一人きりにならないこと。親が自分を責めすぎず、誰かとつながることで、子どもにも「大丈夫」と思える環境が広がっていきます。


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夫婦仲と子どもの不登校傾向の関連とは?

夫婦仲と子どもの不登校傾向の関連性

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不登校の原因は様々ですが、実は夫婦仲の悪さが子どもの不登校に影響を及ぼす可能性があることをご存知でしょうか?

本稿では、論文「Marital conflict and child adjustment: emotional security as a moderator of the effects of interparental conflict on children’s internalizing and externalizing problems 夫婦間の対立と子どもの適応:両親間の対立が子どもの内面化問題および外面化問題に及ぼす影響の調整因子としての情緒的安全性」(Journal of Child Psychology and Psychiatry, 2009) を参考に、夫婦の不仲が子どもの不登校にどのように影響するのか、そのメカニズムについて考察していきます。

まず、論文の概要ですが、この研究では、3年間、毎年親子297組を追跡調査し、夫婦間の不仲・親のうつ状態と、子どもの心の安全性・子どもの内向性の傾向・問題行動との関連性を調べました。その結果、興味深い事実が明らかになりました。

参考:文部科学省「新しい時代を拓く心を育てるために」

※父母家庭に限った調査であり、ひとり親の場合、子どもの心の安全保障には親子関係が大きく影響します。

夫婦間の不仲と子どもの不登校の関係

研究によると、夫婦間の対立は、子どもの非行や不登校などに繋がることが示されました。
当然ですが子どもにとって、両親が仲良くしていることは安心感や幸福感に繋がります。しかし、両親が愛し合っていないと感じたり、喧嘩を見たりすると、子どもは不安や心配を感じるようになります。この不安感が積み重なっていくと、自分自身が安全ではない、守られていないと感じてしまうのです。
そして夫婦間の不仲が子どもの心の安全保障が壊してしまい、学校などの外の環境に挑戦する気力を失わせてしまいます。

さらに注目すべき点は、親のうつ状態が、この関係性に大きく影響を及ぼすということです。うつ状態にある親は、ネガティブな感情に振り回されやすく、夫婦間のコミュニケーションも悪化しがちです。また、うつ状態にある親は、子どもに対して十分な愛情を注げなかったり、適切な養育をすることが難しくなる場合もあります。

なお、うつ状態は特別なものではありません。 厚生労働省の患者調査によれば約420万人の人がうつ病などの精神疾患にかかっており、その数は近年増え続けています。 精神疾患の中でも、もっとも多いのがうつ病です。

子どものための夫婦関係の改善

夫婦である以上、意見が食い違うことや、感情的にぶつかることは避けられません。しかし、子どもがいる家庭においては、夫婦の諍いが子どもたちの心に与える影響は計り知れません。

子どもたちは、大人以上に両親の言動に敏感です。両親がいつも笑顔で仲睦まじくしている様子を見て育った子は、心の安定を得て、健やかに成長していくでしょう。しかし、両親がよく言い争いをしたり、険悪なムードを漂わせている家庭で育った子は、いつもどこかで不安を抱え、心の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

「夫婦の喧嘩は子どもの前でするな」という言葉は、古くから言われていますが、決して古くならない普遍的な真理です。とはいえ、夫婦の関係は、常に良好な状態を保つことの方が難しいのが現実です。大切なのは、夫婦の間に問題が生じた際に、どう対処していくかということです。

大切なのは、子どもの心のエネルギーを損なわないこと

夫婦の喧嘩は、子どもにとって大きなストレスになります。特に、幼い子どもは、両親の喧嘩の原因や背景を理解することが難しく、自分のせいだと感じてしまうことがあります。これは、子どもの心に深い傷跡を残し、自己肯定感を低下させたり、大人になってからの人間関係に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。

無視や軽蔑は厳禁

夫婦の仲が悪くなると、つい相手を無視したり、軽蔑したりしたくなることがあります。しかし、これは絶対に避けるべき行為です。子どもは、両親の言動をすべて見ています。たとえ相手のことを嫌いになったとしても、子どもの前でそれを露わにすることは、子どもに大きなショックを与えることになります。

挨拶を交わす

夫婦関係の改善は、一朝一夕にできるものではありません。しかし、小さなことからコツコツと積み重ねていくことで、少しずつ状況は改善していくはずです。

まずは、挨拶を交わすことから始めましょう。挨拶は、相手に対して「あなたを認めています」「あなたとコミュニケーションを取りたいと思っています」という気持ちを伝える大切な行為です。

無理に仲良くする必要はない

夫婦が仲良くすることは理想ですが、無理に仲良くする必要はありません。人間同士なので、不満がまったく無くなることはありません。大切なのは、お互いを尊重し、一人の人間として接することです。

子どものために夫婦が守るべき3点

「自分たちは問題ない」と考えている夫婦でも、実は表立った喧嘩をしていないだけ、という場合が多くあります。相手を軽蔑し不満を抱き、返事をしなかったり避けたりすることは、そこまで悪いことに思えないかもしれません。しかしその冷えた空気は子どもが吸うことになります。
お子さんが不登校に悩んでいる場合も、そうではない場合も、自身のプライドや感情ではなく、せめて子どもが成人するまでは家族関係を優先してみるのはどうでしょうか。

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言葉の暴力と子どもの問題行動とは?


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「ちゃんとしなさい」「なんで同じ失敗するの」「他の子は出来ているよ」

幼少期に親からこのような言葉を投げかけられた経験があるかもしれません。あるいは、自分の子どもに同じような言葉をかけた経験があるかもしれません。これらの言葉は、一見すると子どものことを思っての注意に聞こえますが、子どもたちの心に深い傷跡を残し、その後の子どもの言動に対する大きな影響を将来にわたって与える可能性があります。

本論では、親のデリカシー(配慮、気遣い)のない言動が、子どもたちの心の発達にどのような悪影響を及ぼすのか、どのような問題が生じるのかについて、国内外の研究結果と事例を交えながら考察していきます。

参考:文部科学省「学校・教育委員会等向け 虐待対応の手引き

親の言葉は、子どもの自己肯定感を左右する

 特に幼少期の子どもは、親を絶対的な存在として見ています。親の言葉は、子どもにとっての真理であり、自分自身を評価する基準となります。そのため、親から否定的な言葉をかけられると、子どもは「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまうのです。

心理学の研究では、親の言葉が子どもの心の発達に与える影響が数多く報告されています。例えば、アメリカのハーバード大学の大橋恭子氏の研究では、言葉の暴力を受けた子どもたちの脳のネットワーク機能が低下し、精神疾患のリスクが高まることが明らかになっています。
また、アメリカの心理学者、キューブラー・ロスは、「愛するとは、相手の言葉に耳を傾けることである」と述べています。親を愛する(信じる、頼る)子どもにとって、親の言葉は人生の道標のように働きます。そして、その言葉が肯定的なものであれば、子どもは自信を持って世界に飛び出すことができるでしょう。逆に、否定的な言葉ばかりを浴びせられると、子どもは自己肯定感が低くなり、自信を失ってしまう可能性があります。

言葉の暴力を受けた子どもは、大人になっても「自分は価値がない」という思いを抱き続け、対人関係を築く上で困難を経験することが示されています。この自己肯定感の低さは将来にわたって様々な場面で、自信のなさや自己卑下といった形で現れることがあります。

自己肯定感が高い子ども、低い子ども

自己肯定感が高い子の特徴自己肯定感が低い子の特徴
行動面好奇心旺盛で新しいことに挑戦する傾向がある。失敗を恐れず、積極的に行動する。集団の中で意見を言いやすい。変化を恐れ、新しいことに挑戦しにくい。失敗を恐れて行動が制限される。集団の中で意見を言いにくい。
感情面楽しさや喜びを感じやすく、感情表現が豊か。ストレスに比較的強く、回復力が高い。悲しみや不安を感じやすく、感情を内に閉じ込める傾向がある。ストレスに弱く、なかなか立ち直れない。
対人関係友だちとの関係が良好で、広範囲な人間関係を築く。信頼関係を築きやすく、協調性がある。友だちとの関係が良好でないことが多い。信頼関係を築きにくく、孤立しがち。
学業面学習意欲が高く、目標に向かって努力できる。失敗しても立ち直り、次のステップへ進むことができる。学習意欲が低く、目標達成が難しいと感じる。失敗を恐れて、挑戦することを避ける。
自己認識自分の強みと弱みを客観的に捉え、自己成長に繋げることができる。自分の意見をしっかりと持っている。自分のことを否定的に捉えがち。自分の意見を言えず、周囲に合わせようとする。

上の表で示されるように、自己肯定感の高さによって子どもたちの様々な側面に違いが見られることがわかります。

自己肯定感が高い子どもは、一般的に積極性、楽観性、良好な対人関係といった特徴を持ち、困難にも立ち向かう力が強い傾向にあります。一方、自己肯定感が低い子どもは、消極性、悲観傾向、対人関係の悩みを抱えやすく、困難に直面した際に、それを乗り越えるのが難しい傾向にあります。

自己肯定感が低い子どもはいじめの加害者になりやすい

 自己肯定感が低い子どもがいじめの加害者になりやすいという話は、一見矛盾するように思えます。しかし、心理学の研究や臨床例から様々な要因が因果関係として繋がっていることが明らかになっています。

自己肯定感が低い子どもが加害者となる要因として、以下のようなことが考えられています。

  • 自己肯定感を満たすための代償行動:
    自己肯定感が低い子どもは、自分自身に価値を見出すことができず、心のどこかで「自分はダメな人間だ」と感じています。このような状態では、自分自身を肯定するために、他者を攻撃したり、貶めたりするような行動に出てしまうことがあります。これは自己肯定感を満たすための「代償行動」に当たります。
  • 劣等感からの攻撃性:
    自己肯定感が低い子どもは、周囲の人と比べて劣っていると感じ、強い劣等感を抱いていることがあります。この劣等感を隠すために、攻撃的な態度をとったり、いじめを行ったりするケースも考えられます。
  • 不安や恐れからの行動:
    自己肯定感が低い子どもは、不安や恐れを感じやすく、それが攻撃的な行動に繋がることもあります。例えば、自分が仲間はずれにされることを恐れて、先に相手を攻撃してしまうといったケースが挙げられます。
  • 共感性の欠如:
    自己肯定感が低い子どもは、他人の気持ちに共感することが苦手です。そのため、いじめによって相手がどれほど傷つくのかを理解することができず、結果として加害行為に及んでしまうことがあります。

親の言葉の暴力は、なぜ起こるのか?

 言葉の暴力は単なる感情の爆発ではなく、その背後には複雑な心理メカニズムが潜んでいます。一つの要因として考えられるのは、親自身の育てられ方です。もし親自身が子どもの頃に言葉の暴力や身体的な虐待を受けて育った場合、その経験が大人になってからの育児に影響を与える可能性があります。いわば悪循環が繰り返されてしまうのです。

また、親の性格やストレスも大きな要因となります。完璧主義で常に高い目標を子どもに求める親、あるいは、仕事や人間関係でストレスを抱えている親は、些細なことで子どもに当たってしまうことがあります。さらに、社会的な孤立感や経済的な困難なども、親のストレスを増幅させ、言葉の暴力につながる可能性があります。

では実際の研究では、どのような関連性が明らかになっているのでしょうか。

  • 世代間の暴力の連鎖:
    前述したように、親が子どもの頃に経験した暴力は、その親が親になったときに子どもに対して同じような暴力を行う可能性を高めるという研究結果が数多く報告されています。
  • 親のストレスと子どもの暴力:
    親のストレスが、子どもの攻撃性や問題行動と関連するという研究も数多くあります。特に、経済的な困難や夫婦関係の悪化は、子どもの問題行動に強い影響を与えることが知られています。
  • 親の育児に関する知識不足:
    育児に関する知識やスキルが不足している親は、子どもとのコミュニケーションがうまくいかず、言葉の暴力に訴えてしまうことがあります。

言葉の暴力を子どもに振るわないために親ができること

 「なんでいつも片付けられないの!」と子どもに怒鳴ってしまう。そんな経験はありませんか?
こうした言葉が、子どもたちの心に深い傷跡を残しているかもしれません。まずは、自分が普段子どもに対してどのような言葉をかけているのか、意識的に振り返ることが大切です。
育ってきた環境や性格によって、つい言葉が出てしまうパターンがあるかもしれません。例えば、厳しく育てられた経験がある人は子どもにも同じように厳しく当たってしまうことがあります。
自分の発した言葉遣いに注意を向けることで客観的に自身の傾向を把握し、改善点を見つけることができます。

対策1. 深呼吸と心の余裕を持つ

子どもに対してイライラしたり怒りを感じたりした時は、子どもに何かを言う前に深呼吸をしてみましょう。感情的な状態で言葉を発すると、後悔するような言動をしてしまうことがあります。
深呼吸をすることで、冷静さを取り戻し、客観的に状況を判断できるようになります。また、子どもと向き合う前に、お茶を飲んだり、少し散歩に出かけたりするなど、心の余裕を持つことも大切です。

対策2. 言葉を選ぶ

子どもに何かを伝えたい時は、言葉を選び、丁寧に話すように心がけましょう。例えば、「宿題をやらないの?」と責めるのではなく、「宿題は終わったかな?何か困っていることはある?」と優しく声をかけることで、子どもは安心して相談できるようになります。
また、否定的な言葉ではなく、肯定的な言葉を使うことも効果的です。「できない」ではなく「できるようになりたいね」というように言葉を変えるだけで、子どものやる気は180度変わります。

「いつも部屋を片付けないから、あなたはだらしない」→「部屋がきれいだと気持ちがいいよね。一緒に片付けようか」
「なんでいつも失敗するの!」→「次はうまくいくよ。一緒に考えてみよう」

対策3. 感情表現を学ぶ

親も人間なので、怒りやイライラを感じることは当然です。大切なのは、その感情を子どもにぶつけるのではなく、適切な方法で表現することです。
例えば、「今、お母さんはとてもイライラしている。少し落ち着くまで待ってほしい」と正直に伝えることもできます。子どもは、親も完璧な人間ではないということを理解し、より深い信頼関係を築くことができるでしょう。

そして言葉の暴力の問題を根本的に解決するためには、子どもとの良好な関係を築くことが不可欠です。一緒に遊ぶ時間を作ったり、子どもの話をじっくり聞いたりすることで、信頼関係を深めることができます。
また、子どもの良いところをたくさん褒めることも大切です。小さなことでも良いので、具体的に褒めることで、子どもの自信につながります。

まとめ

 言葉の暴力は、子どもたちの心に深い傷跡を残し、将来にわたって大きな影響を与える可能性があります。しかし、言葉の暴力は、意識することで防ぐことができます。
親は、子どもとのコミュニケーションを大切にし、温かい言葉をかけてあげるように心がけましょう。また、自分の感情をコントロールし、子どもとの良好な関係を築く努力を続けることが大切です。
言葉の暴力は、子どもたちの未来を奪う可能性のある深刻な問題です。私たち一人ひとりが、この問題に対して意識を持ち、行動することが求められています。
子どもたちを健やかに育むために、今できることを一つずつ実践していきましょう。

参考論文

Child Maltreatment in the United States: Prevalence, Risk Factors, and Adolescent Health Consequences
Jon M. Hussey, PhD, MPH; Jen Jen Chang, PhD, MPH; Jonathan B. Kotch, MD, MPH

Childhood inter-parental violence exposure and dating violence victimization among 20-24 years old undergraduates in Dar es salaam
EN Helela – 2017 – dspace.muhas.ac.tz


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

夏休み明け不登校を防ぐ3つの注意点とは?


目次


参考:文部科学省「不安や悩みがあるみなさんへ

第1章 夏休み明け不登校の傾向

 長期休暇後、特に夏休み明けの不登校は、多くの学校現場で共通して見られる課題です。ここでは文部科学省の調査や関連論文を参考にその背景や要因を深掘りしていきます。

文部科学省の学校保健統計調査では、不登校児童生徒数の推移や不登校の原因に関するデータが公表されています。長期休暇明けの不登校率は、通常学期よりも高くなっています。この現象は単に学校という場から離れることで生じる生活リズムの乱れや、新たな学年への進級に伴う不安だけでなく、より複雑な要因が絡み合っていると考えられます。国内外の研究によると夏休み明けに不登校になる子どもは、もともと学校生活に不安を抱えていたり、家庭環境に問題を抱えていたりするケースが多いことも報告されています。

夏休み明けの不登校の特徴

長期休暇の後、不登校となる子どもたちは、様々なサインを示します。これらのサインは、単なる怠け心や甘えではなく、心のSOSである可能性が高いため、見過ごさないことが大切です。

行動面での特徴

  • 登校拒否: 学校へ行くことを極端に恐れるため、様々な理由をつけて登校を拒否します。「体調が悪い」「具合が悪い」と訴えたり、「学校に行きたくない」と直接的に表現したりする場合もあります。
  • 登校遅延: 学校には行くものの、いつもより大幅に遅刻したり、何度も遅刻を繰り返したりします。
  • 早退: 学校へは行くものの、途中で体調不良を訴えて帰宅したり、授業中に具合が悪くなって早退したりします。
  • 逃走: 学校へ着いても、すぐに校庭を出て逃げてしまうことがあります。

心理面での特徴

  • 不安感: 学校で何か悪いことが起こるのではないかと、強い不安を感じています。特に、新しい学期やクラス替えなど、環境の変化に大きな不安を感じることがあります。
  • 孤独感: 長期休暇中に友達とあまり会えなかったり、新しい友達を作れなかったりすることで、孤独感を感じています。
  • 無力感: 長期休暇中の自由な時間から、再び規則的な学校生活に戻ることが難しく、無力感を感じています。
  • 抑うつ状態: 長期休暇中の生活リズムの乱れや、人間関係の悩みなどから、気分が落ち込み、意欲が低下している状態です。

身体面での特徴

  • 頭痛、腹痛、吐き気: これらの症状は、ストレスや不安が原因で現れることがあります。特に、長期休暇中に不規則な生活を送っていたり、十分な睡眠を取れていなかったりすると、これらの症状が出やすくなります。
  • 不眠: 長期休暇中の生活リズムが乱れ、夜眠れず、日中に眠気を強く感じる状態が続いています。
  • 食欲不振: 長期休暇中は好きなものを好きなだけ食べることができたため、学校が始まると食欲が減退したり、体重が減少したりすることがあります。
  • 倦怠感: 長期休暇中はゆっくりと過ごしていたため、学校が始まると体がだるく感じたり、何をするにもやる気が起きなかったりします。

その他の特徴

  • 友だちとの関係の変化: 長期休暇中に友達と連絡を取らなかったり、価値観が変化したりすることで、人間関係に変化が生じることがあります。
  • 興味の喪失: 長期休暇中に新しい趣味を見つけたり、興味のあることを追求したりしていたため、以前の興味が薄れてしまうことがあります。
  • ひきこもり: 部屋にこもり、家族とのコミュニケーションも減ります。特に、長期休暇中に家族と過ごす時間が多かった場合は、一人になりたいという気持ちが強くなることがあります。

第2章 夏休み後に不登校になりやすい要因

 夏休みなどの長期休暇明けに不登校になる子どもたちは、様々な要因が複雑に絡み合って学校に行けなくなっているケースがほとんどです。主な要因を大きく3つに分けて見ていきましょう。

1. 学校環境の変化

長期休暇明けは、学校環境が大きく変わるタイミングです。新しいクラスになったり、担任の先生が変わったり、学習内容が高度になったりすることで、子どもたちは様々な不安やストレスを抱えることがあります。

  • クラス替え: 新しいクラスで馴染めず、孤立感を感じてしまう。特に、内向的な性格の子どもや、以前のクラスで良好な人間関係を築いていた子どもは、新しい環境に戸惑い、学校へ行くのが億劫になることがあります。
  • 教師との関係: 新しい担任の先生との関係がうまくいかず、学校へ行くのが億劫になる。特に、前の担任の先生との関係が良好だった場合、新しい先生との関係性が築けないことで、学校に対する信頼感が失われてしまうことがあります。
  • 学習内容の変化: 新しい教科や難しい内容の学習が始まり、ついていけなくなる不安を感じます。特に学習の遅れを感じている子どもは、学校へ行くこと自体を避けるようになることがあります。

2. 人間関係のトラブル

学校での人間関係は、子どもたちの心の安定に大きな影響を与えます。長期休暇明けに人間関係に変化が生じると、子どもたちは強いストレスを感じ、不登校につながる可能性があります。

  • いじめ: いじめを受けている、または目撃していることで、学校へ行くのが怖い。いじめは、子どもたちの心身に深刻なダメージを与え、不登校の大きな原因となります。
  • 友達関係のトラブル: 友達との関係がこじれてしまい、学校に行きたくなくなる。特に、親しい友達との関係が悪化すると、学校に行く楽しみが減り、学校を避けるようになります。
  • 異性関係: 異性との関係に悩み、学校で顔を合わせるのが恥ずかしいと感じたり、避けたりするようになります。特に、思春期を迎えた子どもは、異性との関係に敏感になりがちです。

3. 心理的な要因

長期休暇明けには、様々な心理的な要因が不登校に繋がることがあります。

  • 不安: 将来のことや、自分の将来について不安を感じます。特に、進学や就職を控えている子どもは、将来に対する不安から学校を避けることがあります。
  • うつ病: うつ病などの精神疾患を患っている。うつ病は、意欲の低下、無気力、集中力の低下などの症状を引き起こし、学校生活に支障をきたすことがあります。
  • 自己肯定感の低下: 自分のことを否定的に考え、価値を感じられない。特に、長期休暇中にSNSなどで自分と他人を比較したり、ネガティブな情報に触れたりすることで、自己肯定感が低下することがあります。

これらの要因は、単独で現れるのではなく、複合的に影響し合って不登校を引き起こすことが多くあります。

第3章 中学生向け3つの注意点

 中学生は思春期という大きな変化の時期を迎えており、特に長期休暇明けは、新しい学年やクラスへの不安、人間関係の変化など、様々なストレスを抱えやすくなります。ここでは、家庭で実践可能な具体的な取り組みを通して、不登校を未然に防ぐためにサポートする方法を紹介します。

1. コミュニケーションの促進:心の絆を深める

思春期の子どもたちは、同世代との関係を重視する傾向があります。そのため、クラスメイトとの良好な関係を築くためのコミュニケーションの機会を積極的に作り出すことが大切です。

  • 普段の会話: 食卓の時間や寝る前など、短い時間でも良いので、今日の出来事や友達との話を聞く機会を作りましょう。
  • 共感と傾聴: 話を遮らずに最後まで聞き、子どもの気持ちを共感してあげましょう。
  • 相談しやすい雰囲気づくり: 子どもが悩みを打ち明けやすいような、温かい雰囲気作りを心がけましょう。
  • 家族で過ごす時間: 家族で一緒に食事をしたり、ゲームをしたりするなど、家族との触れ合いを通して心の安定を図りましょう。

2. 将来への不安を解消:一緒に未来を描く

中学生は、進路選択や将来のことなど、様々な不安を抱えています。これらの不安を解消し、将来への希望を持てるようにサポートすることが大切です。

  • 情報収集: 進路に関する情報を一緒に集め、選択肢を広げましょう。
  • 体験学習: 職業体験やボランティア活動など、様々な体験を通して、興味のあることや得意なことを発見する機会を作りましょう。
  • 目標設定: 子どもと一緒に具体的な目標を設定し、達成に向けて一緒に努力しましょう。
  • 将来の話: 将来的にどんな大人になりたいか、どんなことをしたいかなど、将来について語り合う時間を持ちましょう。

3. 自己肯定感を高める:自分を大切にする心を育む

中学生は、外見や学力など、様々なことで自分を評価しがちです。そのため、自己肯定感を高め、自分のことを好きになれるようにサポートすることが大切です。

  • 子どもの良いところを具体的に褒める: 外見だけでなく、性格や行動など、子どもの良いところを具体的に褒めましょう。
  • 失敗を恐れない雰囲気を作る: 失敗しても叱らず、次のステップに繋がる経験として捉えるようにしましょう。
  • 得意なことや好きなことを応援する: 子どもが興味を持っていることや得意なことを応援し、自信をつけさせてあげましょう。

第4章 小学生向け3つの注意点

 小学生は社会経験が浅く変化に敏感なため、長期休暇明けの環境の変化に戸惑い、不登校になることがあります。そこで、家庭でできる3つの具体的な取り組みを通して、小学生が健やかに学校生活を送れるようサポートする方法を紹介します。

1. 遊びの時間を確保:心身ともに健やかに育む

遊びは、子どもたちの心身の成長に不可欠なものです。遊びを通して、様々なことを学び、社会性を身につけていきます。

  • 自由な遊びの時間: 週末や長期休暇中には子どもたちが自由に遊び、体を動かせる時間を確保しましょう。
  • 自然と触れ合う: 公園や自然の中で遊ぶ機会を作って五感を刺激し、心身をリフレッシュさせましょう。
  • 友達との時間を大切にする: 友達と遊ぶ機会を設け、コミュニケーション能力を育みましょう。

2. 安定した家庭環境を築く:心の拠り所となる

家庭環境は、子どもたちの心の安定に大きな影響を与えます。特に、長期休暇明けは学校生活のリズムが変わるため、家庭での安定感がより一層重要になります。

  • 規則正しい生活: 寝る時間や起きる時間を決めるなど、規則正しい生活リズムを送りましょう。
  • コミュニケーションを大切にする: 食卓の時間や寝る前など、短い時間でも良いので、子どもとコミュニケーションをとる時間を大切にし、子どもの様子を伺いましょう。
  • 家族で過ごす時間: 家族で一緒に過ごす時間を増やし、温かい家庭環境を築きましょう。

3. 学校との連携を深める:子どもの成長を共に見守る

小学生は特に担任やクラス内の影響が強くでます。夏休み明けに学校と家庭が密に連携することで、子どもの様子に合わせた適切なサポートを行うことができます。

  • 担任の先生との連携: 定期的に担任の先生と連絡を取り合い、子どもの様子について相談しましょう。
  • 学校行事への参加: 運動会や学芸会など、親が学校行事へ積極的に参加し、子どもを励ましたり、努力を褒めるようにしましょう。
  • 学校への相談: 不安なことがあれば、遠慮せずに学校に相談しましょう。担任も注意を払ってくれる確率が高まります。

第5章 参考:各国の取り組み状況

近年、不登校は世界的な問題として注目されており、各国で様々な取り組みが行われています。

フィンランド:早期介入と個別化教育の重視

フィンランドは、世界的に見ても教育水準が高く、不登校率が低いことで知られています。その背景には、早期介入個別化教育を重視した取り組みがあります。

  • スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置: 各学校にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されており、子どもたちの心の問題に早期に対応しています。彼らは、子どもたちとの個別面談や、教師や保護者との連携を通じて、子どもたちの抱える悩みや不安を聞き出し、適切な支援を行っています。
  • 少人数制のクラス: フィンランドの学校は、クラスの人数が少なく、一人ひとりの子どもに目が行き届きやすい環境が整っています。教師は、子どもたちと密接な関係を築き、個々の能力や性格に合わせて指導を行っています。
  • 個別学習計画: 各子どもに合わせて、個別学習計画を作成し、一人ひとりのペースで学習を進めることができます。これにより、学習の遅れや、難しいと感じている科目への不安を軽減することができます。

アメリカ:多様性への対応と包括的な支援体制

アメリカは、多様な民族や文化を持つ人々が暮らす国であり、不登校の原因も多様です。そのため、アメリカでは、多様性への対応包括的な支援体制の構築が求められています。

  • スクールカウンセラーの役割拡大: アメリカのスクールカウンセラーは、従来の進路指導だけでなく、心のケアや危機介入など、幅広い役割を担っています。また、文化背景や言語の異なる子どもたちに対して、適切な支援を提供できるよう、多文化理解教育も重視されています。
  • コミュニティとの連携: 学校だけでなく、地域住民やボランティア団体、非営利団体など、様々な主体が連携して、子どもたちの支援を行っています。
  • メンタルヘルス教育の充実: 学校でメンタルヘルス教育を充実させ、子どもたちが自分の心の状態について理解を深め、適切な対処法を身につけることができるように支援しています。

日本:法整備の進展と地域包括支援体制の強化

日本においては、いじめ防止対策推進法の改正など、法整備が進み、不登校対策に関する意識が高まってきました。また、地域包括支援センター児童相談所など、子どもたちの相談窓口も充実しつつあります。

  • スクールソーシャルワークの導入: 近年、日本の学校でもスクールソーシャルワークが導入されつつあり、子どもたちの生活環境や家庭環境の問題に働きかけ、学校生活への適応を支援しています。
  • フリースクールや居場所の拡充: 不登校の子どもたちが安心して過ごせる場所として、フリースクールや居場所の数が徐々に増えています。
  • 保護者支援の強化: 保護者向けの相談窓口や、子育て支援講座などが充実し、保護者も安心して子どもをサポートできる体制が整いつつあります。

その他の国の取り組み

  • イギリス: EBD(Emotional and Behavioural Difficulties:情緒的・行動上の困難)を持つ子どものための支援体制が整備されています。
  • オーストラリア: インディジニアス(先住民)の子どもたちに対する教育格差解消に向けた取り組みが積極的に行われています。
  • 韓国: 学校暴力防止対策が強化され、不登校の原因となるいじめ問題の根絶を目指しています。

各国共通の課題と今後の展望

各国は、それぞれの国の状況や文化に合わせて、様々な取り組みを行っていますが、共通して抱えている課題もあります。それは、教員の負担増や、十分な予算の確保地域社会との連携不足などです。

今後、不登校問題を解決するためには、これらの課題を克服し、より効果的な支援体制を構築していく必要があります。

  • 教員の負担軽減: 教員の働き方改革を進め、子どもたちとの向き合う時間を増やす。
  • 予算の増額: 教育予算を増やし、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充する。
  • 地域社会との連携強化: 地域住民やボランティア団体、NPO法人など、様々な主体が連携して、子どもたちの支援を行う。
  • 早期発見・早期介入体制の構築: 子どもたちの心の変化に早期に気づき、適切な支援を行う体制を構築する。
  • 多様な学びの場の提供: 学校だけでなく、地域や家庭など、様々な場所で子どもたちが学び、成長できる機会を提供する。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、年間1,000名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

子どもに手を上げてしまう親へ:親子相互交流療法(PCIT)とは?


目次


参考サイト

Verywell Health – PCITについての詳細ガイド
Parent-Child Interaction Therapy(PCIT)公式サイト
米国国立医学図書館 – PCITに関する学術研究論(PubMed)

はじめに:不登校の子どもと「育てづらさ」の背景

不登校の子どもを育てることは、親にとって想像以上にストレスの大きい状況です。「なぜこの子は学校に行かないのだろう」「どこまで甘やかしていいのか」「叱るべきか、見守るべきか」――そんな迷いが、日々の子育てにのしかかってきます。

こうした悩みの裏には、親子間のコミュニケーション不足や、感情のすれ違いが潜んでいることも多いです。学校に行けないことで子どもが抱える不安や孤独と、親としての責任感や焦りが交差し、関係が悪化してしまうケースも珍しくありません。

このような状況のなか、注目されているのが「PCIT(親子相互交流療法)」というアプローチです。これは従来の「問題行動の修正」に焦点を当てた方法ではなく、「親子の関係そのものを立て直す」ことを目的とした、全く新しい視点の療法です。不登校の背景には、必ずしも学校の問題だけでなく、家庭内のやり取りや親の接し方も関係しているため、PCITはその根本に働きかけることができます。

PCITとは何か(Parent-Child Interaction Therapy)

PCITは、1970年代にアメリカで開発された心理療法で、今では世界中で幅広く導入されています。2〜7歳の子どもを対象とし、親が主導となって子どもの行動を安定させ、親子関係を良好にするためのスキルを身につけるプログラムです。

この療法が他と大きく異なる点は、「セラピストが親を直接指導する形式」であること。一般的なカウンセリングのように、子どもが話すのではなく、親が子どもとの関わり方を学び直すというスタイルが取られます。

療法はおおまかに2つの段階に分かれています。

  1. 子ども主導の相互作用(CDI: Child-Directed Interaction)
  2. 親主導の相互作用(PDI: Parent-Directed Interaction)

まずCDIでは、親が子どもとポジティブな関係を築くために、「遊び」を通して信頼を取り戻すことを目的とします。ここでのポイントは、親がリードするのではなく、子どものやりたいことに100%付き合うことです。これは不登校の子どもにとって、自己肯定感と安心感を取り戻す大きなステップになります。

PCITの第1段階:子ども主導の相互作用(CDI)

PCITの最初のステップである「子ども主導の相互作用(CDI)」では、親が子どもの行動を操作しようとするのではなく、子どものペースに従って関わることが求められます。ここでの目的は、親子の間に信頼と安心を築き直すことにあります。

この段階では、子どもが遊びをリードし、親はそれに無条件に付き合う姿勢を持つようにします。例えば子どもが積み木で遊び始めた場合、親はその遊びに口を出したり、正しさを求めたりするのではなく、同じように積み木を手に取り、子どもと同じ行為を静かに真似たり、楽しんでいる様子に共感の言葉をかけます。「こんな形にしたんだね」「それ、いいアイデアだね」といった具合に、子どもの行動を肯定的に受け止め、承認することに徹します。

不登校の子どもは、日常的に「ちゃんとしなさい」「なんで学校に行けないの」など、指示や否定的な言葉を多く受け取っている可能性があります。そうした中で、親がただ隣にいて、何も指示せず、批判せず、関心を持って見守るという体験は、子どもにとって非常に大きな意味を持ちます。親から条件なしに受け入れられているという感覚は、子どもの自尊心を回復させ、行き場のなかった気持ちが少しずつ動き出すきっかけになるのです。

最初はこの関わり方に違和感を覚える親も少なくありません。「これで本当に意味があるのか」「何も教えていないのに」と不安に思うのも当然です。しかし、セラピストの指導のもとで、親は自らの接し方が変わることによって、子どもが内面から変化していく様子を目の当たりにすることになります。CDIは、子どもに「自分は親にとって大切な存在だ」と思わせるための、極めて本質的なアプローチなのです。


PCITの第2段階:親主導の相互作用(PDI)

CDIで信頼関係の基盤を築いた後に進むのが、「親主導の相互作用(PDI)」です。この段階では、親が明確で一貫したルールや指示を出すスキルを身につけていきます。

PDIの目標は、子どもを強く叱ることではなく、親自身が感情的にならずに、冷静にルールを伝え、適切に対応する力を育てることにあります。不登校の子どもに対しても、「朝起きる時間」「ゲームの時間」「家の中での約束」など、日常の中で小さなルールを丁寧に設定し、それを守ることが求められます。しかし、その際に親が感情で動いたり、日によって対応を変えたりすると、子どもは混乱し、ルールそのものへの信頼を失ってしまいます。

PDIでは、まず親が短く、具体的な言葉で指示を出す練習をします。そして、子どもがその指示に従ったときは肯定的に受け止め、従わなかった場合でも冷静に“行動の結果”を返すようにします。たとえば、テレビを消すように伝えたにもかかわらず無視された場合、「今はテレビを消す時間だから、これ以上続けるならリモコンは預かるね」と伝え、実行に移します。このとき感情的に怒鳴ったり、長く説教したりする必要はありません。むしろ、淡々と一貫性のある対応を続けることで、子どもは「親の言葉には意味がある」「守らないとこうなる」という因果関係を理解しやすくなります。

PDIが重要なのは、子どもが再び社会との関わりに向き合う準備が整ってきたときに、行動面での安定を保てるようになるからです。不登校からの回復は、「心の安心」と「日常の自律」の両輪が必要です。CDIが心を支えるならば、PDIはその次のステップとして、生活の中で自分の行動を調整していく力を育てる役割を果たします。


このように、PCITはただのしつけでもなく、ただの共感でもない、「信頼関係の再構築」と「行動の安定」を両立させるための具体的な枠組みです。不登校の子どもにとっても、親子関係の緊張やすれ違いの修復という意味で、大きな力を発揮します。

PCITの効果を裏付ける研究と科学的根拠

PCITが世界的に注目されるようになった背景には、数多くの臨床研究に裏打ちされた高い効果があることが挙げられます。とりわけ注目すべきは、2004年にアメリカ・オクラホマ大学で行われた大規模な研究です。この研究では、児童虐待の加害経験を持つ親を対象に、PCITと「怒りの抑制療法(Anger Management)」との比較が行われました。

研究対象となったのは約1,100人の保護者で、そのうち約73%が実際に子どもに対して身体的な暴力をふるっていたという深刻なデータが報告されています。なかには、骨折や重傷を負わせたケースも含まれており、親自身も「どう接していいか分からなかった」と語るように、暴力の背景には深い無力感と混乱が存在していました。

PCITを受けたグループは、怒りの抑制療法を受けたグループと比較して、再虐待の発生率が3分の1以下にまで下がったことが確認されています。さらに、子どもの問題行動(癇癪、攻撃性、反抗など)の改善も大きく、親のストレスも明らかに軽減されました。これは、PCITが単なる行動矯正ではなく、「親子関係の質」を変えるという根本的なアプローチを取っているからこそ、可能になった成果です。

不登校の子どもを持つ家庭では、たとえ暴力に至っていなくても、日々の言葉のすれ違いや、親子間の緊張状態が積み重なっていることが多くあります。こうした状況でもPCITは、家庭のコミュニケーションパターンそのものを再設計する手法として、確かな効果を発揮します。


不登校と「親の無力感」との関係

不登校の問題は、単に学校が合わないとか、友人関係に問題があるという話にとどまりません。多くの家庭では、子どもが学校に行かないことで、親自身が「自分の子育ては間違っていたのでは」「もっと厳しくすべきだったか」と自責の念にかられます。この“親としての無力感”は、時に過剰な干渉や、感情的な対応へとつながり、結果的に親子関係をさらに悪化させてしまうこともあります。

PCITでは、こうした無力感に働きかけるアプローチが重視されます。子どもが思い通りに動かないからといって、親が怒鳴る、脅す、あるいは逆に何も言えなくなるといった極端な反応を取るのではなく、「子どもを理解し、尊重しつつ、冷静に関わる」という中庸のスキルを養うことで、親自身が安心して子育てと向き合えるようになります。

不登校という状態は、子どもにとっても、親にとっても、見通しの立たない不安の中で生きていくような感覚を伴います。その中で、PCITがもたらす「やりとりの安定」「安心できる関係性の回復」は、非常に大きな意味を持ちます。親が子どもをコントロールするのではなく、信頼関係の中で“関わりを築く”という発想が、状況改善の起点になるのです。


家庭で実践するための心構えと準備

PCITは専門家の指導のもとで実施されるのが理想ですが、根底にある考え方や行動スタイルは、家庭でもある程度取り入れることができます。実践の第一歩として大切なのは、「何かを教える・直す」のではなく、「子どもとの関係をもう一度築き直す」ことを目的に据えることです。

まず、子どもと1日5分でもよいので、“ルールを設けず、ただ一緒に遊ぶ・関わる時間”を作ることを意識してみてください。その際は、親が何かを誘導したり、改善させようとしたりするのではなく、子どものやっていることに目を向け、「そのままの姿を受け止める」ことに集中します。この5分間は、親にとってもある種の訓練になります。黙って見守ること、口を出さずに任せることが、意外なほど難しいと感じるかもしれません。しかし、それができるようになってくると、子どもの反応や態度が徐々に変わっていくのを実感するはずです。

同時に、家庭の中で親自身の言動パターンを見直すことも重要です。叱る場面で感情的になってしまう傾向があるなら、叱る前に一呼吸置いて、短く明確な言葉で伝える練習をしてみる。子どもが従わなかったときには、「怒る」よりも「決めたルールに基づいて静かに対応する」ことを選ぶ。その繰り返しが、家庭全体に落ち着きを取り戻す第一歩になります。

家庭でのPCIT実践例:親子関係を整えるための具体的な関わり方

PCITを専門機関で受けることが理想とはいえ、家庭内でその考え方を応用することは十分に可能です。特に、不登校状態の子どもを支える家庭では、親の声かけや接し方が、子どもの心理状態に直結します。ここでは、日常の中で実践できるPCIT的アプローチを3つ紹介します。

1. 「5分間の子ども主導タイム」を毎日つくる

まず基本となるのは、1日5分でも良いので、子どもが好きなことを自由にできる時間を設け、そこに親が参加するという方法です。このとき、親は指示や命令を出さず、子どもの行動を否定せず、ただ一緒にその空間を共有します。テレビゲームでも、絵を描くことでも、ブロックでも構いません。大切なのは「主導権は子どもにある」ことを守ることです。

例えば子どもが絵を描いているなら、親はその横で「楽しそうだね」「この色、面白い選び方だね」と声をかけ、同じ紙に一緒に描くのではなく、子どもの作品を尊重する姿勢で見守ります。子どもが話さなくても、それを問題視する必要はありません。ただ同じ場にいることが信頼につながります。

2. 感情的に叱る前に、言葉を一度選び直す

不登校の子どもに対して、「また朝起きてこなかった」「何も話そうとしない」といった状況に親が苛立ちを覚えるのは自然なことです。しかし、感情に任せて怒鳴ったり否定的な言葉を投げかけると、親子の距離はさらに広がります。

PCIT的な視点では、まず親が一度気持ちを落ち着け、「何を伝えたいのか」を言葉にして短く明確に伝えるようにします。たとえば「なんで起きないの!」ではなく、「起きられるように手伝いたいけど、どうすればいいかな?」といった問いかけに変えることで、子どもは反射的な反発を減らし、少しずつ会話の糸口が見えてくるようになります。

3. 行動に対する「結果」を一貫して示す

子どもが約束を守らなかったとき、親が日によって対応を変えると、子どもはルールそのものを信用しなくなります。逆に、結果が予測できるようになると、行動のコントロールが自然と身についていきます。

たとえば、「リビングではゲームを○時まで」というルールがあるなら、時間を過ぎた時点で静かにゲーム機を預かる。怒る必要はありません。あくまで「これは約束だから」と、一貫して対応することが、親子関係の信頼感を保つうえで大切です。


まとめ:不登校を支えるには、“関係の再構築”から始める

PCITは、子どもの問題行動を直接修正することよりも、親子の関係性を立て直すことに重きを置いた心理的アプローチです。不登校という状態にある子どもは、学校に行けない自分に対して罪悪感や恥、焦りを抱いていることも多く、周囲からの過度な期待や干渉が、逆に心を閉ざす原因にもなります。

そのようなとき、親が「関係を修復する時間」を意図的に作り、言葉ではなく“態度”で安心感を示すことは、子どもの心に届く大きなメッセージになります。「この人は、無理に学校に行かせようとしているんじゃない」「自分のことを理解しようとしてくれている」と子どもが感じることが、再び一歩を踏み出す力になるのです。

不登校への対応に“正解”はありません。しかし、親子関係を土台から見直すことは、どの家庭にとっても価値ある取り組みです。PCITは、特別な治療というより、親子の暮らしの中に根ざした“接し方の再学習”とも言えます。

日々の小さな行動を見つめ直し、少しずつ信頼を積み重ねていくこと。それが、子どもが自分のタイミングで外の世界と向き合えるようになる、一番確かなサポートになります。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、年間1,000名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

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