新学期にスムーズに登校するための接し方とは?

新学期にスムーズに登校するための接し方-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、数多くの保護者の方々と向き合いながら、子どもたちの学校復帰をサポートしてきました。

新学期が始まるとき、お子さんがスムーズに登校できるかどうかは、多くの親御さんにとって重要な関心事です。特に、過去に不登校の経験があったり、学校に対する不安を強く感じているお子さんをお持ちのご家庭では、「どうすれば新学期を乗り越えられるのか」と悩まれることも多いでしょう。

本稿では、新学期に対する子どもの心理と対策について、データを交えながら詳しく説明していきます。


目次


第一章:新学期が不安になる子どもの心理

1.1 新学期が子どもに与える心理的負担

新学期は、子どもにとって環境の変化が大きい時期です。クラス替えや担任の変更、授業内容の進行、新しい友人関係の構築など、さまざまな要素が絡み合いながら、子どもたちに影響を与えます。こうした環境の変化に不安を感じること自体は自然なことですが、特に不登校の経験がある子どもにとっては、その不安がより強く表れやすく、場合によっては「学校に行きたくない」「登校が怖い」といった強い拒否感を示すこともあります。

文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査(令和5年度)」によると、小中学生の不登校児童生徒数は約35万人と過去最多を更新しており、その背景として以下の要因が指摘されています。

  1. 無気力・不安(約49%)
  2. 生活リズムの乱れ(約16%)
  3. 対人関係の不適応(約12%)
  4. 学業不振(約5%)
不登校児童生徒について把握した事実
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

このデータからも分かるように、不登校は単なる「怠け」ではなく、深刻な心理的要因が関わっていることが多いのです。特に「無気力・不安」に分類されるケースが約半数を占めており、新学期においては「うまくやれるだろうか」「また失敗したらどうしよう」といった不安感が強く影響することがわかります。

また、国立教育政策研究所の報告によると、不登校の子どもが学校復帰を考える際、最も大きな障害となるのは 「再び学校に行けるかどうか分からないという不安」 だとされています。これは、「登校しても大丈夫なのか」「また辛くなってしまうのではないか」という自己疑念が、学校復帰の足かせになっていることを意味します。

このことから、新学期の不安を軽減し、登校のハードルを下げるためには、「行こうと思えば行ける」という感覚を持たせること が重要になります。

1.2 不登校経験のある子どもに特有の心理的特徴

不登校経験のある子どもたちは、以下のような心理的特徴を持ちやすいことが知られています。

① 自信の喪失と自己評価の低下

不登校を経験した子どもは、過去に「行けなかった」「途中でやめてしまった」という経験を持つため、自信を失いやすくなります。「どうせ自分はまた行けなくなる」「みんなと同じようにできない」と考え、自己評価が低くなってしまうのです。

日本心理学会の研究(2023年)によると、不登校経験者の約70%が「自分に自信が持てない」と回答しており、その理由として「学校に行けなかったことが影響している」と述べています。

② 環境変化に対する強い抵抗感

不登校の経験がある子どもは、学校に対して「慣れ親しんだ場所ではない」という意識を持ちやすくなります。そのため、新学期のような環境の変化には特に敏感になり、ストレスを感じやすくなります。
このような子どもにとっては、新学期が「未知の環境」になってしまうため、不安が倍増するのです。

③ 先延ばし思考と回避行動

「行かなきゃいけないとは思うけど、怖い」
「明日から頑張ればいいや」

このように、不安が大きすぎると、人は目の前の課題を先延ばしにする傾向があります。これを心理学では「回避行動」と呼びます。

回避行動が続くと、「行かないことが当たり前」になり、再登校のハードルがどんどん上がってしまいます。こうした思考の癖を変えるためには、「少しずつ慣らしていく」「行動を習慣化する」といった対策が必要になります。

1.3 親が気づくべき「新学期のサイン」

子どもが新学期に対して不安を抱えている場合、いくつかのサインを出すことがあります。例えば、

  • 「学校の話題を避ける」 → 新学期の話をすると黙り込む、話を逸らす
  • 「体調不良を訴える」 → 朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と言う
  • 「イライラしやすくなる」 → ちょっとしたことで怒る、反抗的になる
  • 「夜更かしが増える」 → 生活リズムが乱れ、朝起きられなくなる

こうしたサインを見逃さず、適切なサポートを行うことが大切です。

第二章:新学期に向けた心構え

不登校経験のある子どもが新学期を迎える際、親の対応が登校の成否を大きく左右します。ここで重要なのは、「共感」と「具体的な準備」のバランスをとること です。
ただし、「子どもの気持ちに寄り添う」ことと、「行かなくてもいいよ」と受け入れることは異なります。不登校を長期化させないためには、親の言葉がけや行動が決定的な役割を果たします。本章では、親ができる適切な接し方 について詳しく解説します。

2.1 子どもの不安に寄り添うことの重要性

不登校経験のある子どもは、学校に対して「怖い」「失敗するかもしれない」という強い不安を抱いています。この不安を無視したり、否定したりすると、かえってプレッシャーになり、登校意欲がさらに低下してしまいます。

例えば、次のような対応は避けるべきです。

  • 「また学校休むの?」と責める → 自己否定感を強め、親との信頼関係を損なう
  • 「頑張れば行けるよ」と励ます → 子どもにとっては「頑張れない自分はダメ」というメッセージに聞こえる
  • 「行かなくてもいいよ」と逃げ道を与える → 登校するための努力を放棄するきっかけになる

では、どのように声をかけるのが適切なのでしょうか?

共感のある声かけの例

「新しいクラス、ちょっと不安だよね」 → 子どもが「そうだよね」と気持ちを整理しやすくなる
「最初は緊張するよね。でも、去年も頑張ってたよね」 → 以前の成功体験を思い出させる
「どうしたら行きやすくなると思う?」 → 子ども自身に考えさせることで、自主性を育む

このように、「不安な気持ちを認めつつ、解決策を探る」スタンスが重要です。

2.2 「生活リズムの安定」が登校の鍵

不登校の子どもに共通する特徴の一つとして、「生活リズムの乱れ」があります。文部科学省の調査でも、不登校の約16%が「生活リズムの崩れ」を理由として挙げています。夜更かしや昼夜逆転が続くと、朝起きられず、結果的に登校の機会を失ってしまうのです。

したがって、新学期に向けては、以下のようなリズム調整が必要になります。

  1. 朝決まった時間に起きる → 休み中でも、登校時間に合わせて起床する
  2. 夜のスマホ・ゲームの時間を短縮する → 睡眠の質を向上させる
  3. 学校の時間割に近い生活を送る → 昼寝を避け、日中の活動を増やす

特に、「朝起きられない」問題は、登校を妨げる大きな要因になります。親が「学校に行く前提」の生活習慣を意識的に作ることが重要です。

2.3 「学校に行く流れ」とは?

登校のハードルを下げるためには、「学校に行くことが自然な流れ」となる環境作りが不可欠です。例えば、以下のような準備を整えておくと、子どもがスムーズに動き出しやすくなります。

  • 「制服を用意する」 → 親が手伝うことで、「学校に行く前提」の空気を作る
  • 「通学路を一緒に歩いてみる」 → 事前にルートを確認することで、登校のハードルを下げる
  • 「仲の良い友達と約束をする」 → 誰かと一緒に行くことで、安心感を持たせる

このとき、「〇〇しておきなさい」と指示するのではなく、「一緒にやろうか?」 という形で関わることがポイントです。

2.4 親が意識すべき「適度な距離感」

不登校からの再登校では、親がどこまで介入すべきか が大きな課題となります。関わりすぎると子どもが自立できなくなり、放任すると再び登校意欲が低下するという難しいバランスが求められます。

適切な距離感を保つために、以下のようなスタンスを意識しましょう。

「助けが必要なときは手を貸す」 → 例えば「準備を手伝う」「送迎をする」など、最小限のサポートを行う
「行動は子ども自身に決めさせる」 → 「どうしたい?」と問いかけることで、登校の決定権を本人に持たせる
「結果にこだわりすぎない」 → 1日行けなかったとしても、次の日に再挑戦できるよう励ます

「学校に行くこと」は大切ですが、「その過程」も同じくらい重要 です。親が焦ると、子どももプレッシャーを感じ、逆効果になります。

第三章:新学期にスムーズに登校するための接し方

新学期は、子どもにとって大きな環境の変化があるタイミングです。不登校の経験がある子どもにとっては、「また学校に行けなくなるのではないか」「クラスに馴染めるだろうか」など、不安が増す時期でもあります。そのため、新学期をスムーズに迎えるためには、親の適切な関わり方 が欠かせません。

本章では、新学期に向けて親ができる具体的なサポート方法を詳しく解説します。


3.1 新学期の不安を減らすための準備

「学校が遠い存在」にならないようにする

長期の不登校や長期休暇の間、学校との関わりが薄れると、子どもにとって学校が「遠い存在」になり、再登校のハードルが高くなります。新学期に向けて、以下のような準備をしておくと、登校への心理的負担を減らせます。

  1. 学校の話題を日常に取り入れる
    • 「新しい先生、どんな人かな?」
    • 「夏休みの宿題はどんなのがあった?」
    • 「○○くん(友達)、元気かな?」
  2. 事前に学校へ足を運ぶ機会を作る
    • 始業式の前に登校し、校舎の雰囲気に慣れる
    • 担任の先生と事前に話しておく
    • 学校の近くを散歩し、通学の感覚を取り戻す
  3. 生活リズムを学校モードに戻す
    • 朝起きる時間、食事のタイミング、勉強の時間を整える
    • 夜更かしを避け、登校時間にスムーズに起きられるようにする

学校に行くことが「特別なこと」ではなく、「当たり前の日常の一部」だと感じられるように準備をしていくことが大切です。


3.2 「行きたくない」と言われたときの対応

新学期が近づくと、子どもが「学校に行きたくない」と口にすることがあります。このとき、「どうして?」「行かないとダメだよ」と無理に説得すると、子どもはさらにプレッシャーを感じてしまいます。

■ 「行きたくない」の裏にある本当の気持ちを探る

子どもが「行きたくない」と言うとき、実際には「行けない」「どうしていいかわからない」という心理が隠れています。

例えば、次のような不安を抱えていることが多いです。

  • 「クラスに馴染めるか不安」 → 「先生や友達と話せるかな…」
  • 「勉強についていけるか心配」 → 「みんなより遅れてるかも…」
  • 「学校のルールが怖い」 → 「宿題や決まりごとが守れないかも…」
  • 「そもそも学校に行く意味が分からない」 → 「どうして行かなきゃいけないの?」

これらの不安に寄り添うために、次のような言葉をかけるのが効果的です。

  • 「久しぶりだから不安だよね。でも、一緒にできることを考えてみようか。」
  • 「どんなことが不安なのか、少しずつ話してくれると嬉しいな。」
  • 「学校に行くかどうかはまだ決めなくてもいいから、まずは準備だけしてみようか。」

親が「解決しなきゃ!」と思いすぎると、子どもは余計に追い詰められます。焦らず、不安を一つずつ整理していくことが重要です。


3.3 新学期の朝、スムーズに登校するための工夫

■ 朝の支度をスムーズにするためのポイント

新学期初日は、登校への緊張がピークになります。朝の準備をスムーズにするために、次のポイントを押さえましょう。

  1. 前日の夜に準備を済ませる
    • 制服や持ち物を整える
    • 明日のスケジュールを確認する(何時に家を出るかなど)
  2. 朝は時間に余裕を持つ
    • バタバタするとストレスが増すので、普段より少し早めに起こす
    • 「早くしなさい!」ではなく、「ゆっくりでいいよ」と声をかける
  3. 登校のハードルを低くする
    • 「今日は途中まで一緒に行こうか?」
    • 「まずは学校の門まで行ってみようか」
    • 「一日全部じゃなくてもいいから、午前中だけ行ってみる?」

いきなり「フルで登校しなければならない」と思うとプレッシャーになるので、「まずは学校に向かうこと」 を目標にするのがポイントです。


3.4 まとめ:親の適切なサポートが「新学期のスムーズな登校」につながる

新学期にスムーズに登校するために、親ができるサポートとして、次のようなポイントが重要です。

・「学校を遠い存在にしない」ために、事前準備をする
「行きたくない」と言われたときは、不安の原因を探る
朝の準備をスムーズにし、登校のハードルを下げる

親が「新学期をどう迎えるか」に焦点を当て、事前の準備や登校のサポートを行うことで、子どもが少しずつ学校に向かいやすくなります。

不登校経験のある子どもにとって、新学期は大きなハードルですが、「少しずつでも前に進めるように」と考えることが、親子にとって最も大切な視点です。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

学校に不登校を相談する前の準備とは?

学校に不登校を相談する前の準備とは-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの子どもたちと保護者の方々に関わってきました。不登校の問題は、家庭だけでなく学校との関係性が大きな鍵を握っています。

しかし、保護者の方々の中には、「学校とどう連携すればいいのか分からない」「学校に相談しても状況が変わらない」と感じている方も少なくありません。今回は「不登校の子のために親が知っておくべき学校との連携」というテーマで、具体的なポイントをお伝えします。


目次


第1章 不登校の背景を学校と共有する重要性とは?

不登校の背景には、子ども自身の心理的負担や学校内での人間関係、学業のつまずきなど、さまざまな要因が絡み合っています。しかし、その要因が学校側に十分に伝わっていない場合、適切な支援が行われず、状況が長期化してしまうことがあります。学校と保護者が正確な情報を共有し、現状を共通理解することが、再登校への第一歩です。

1.1 学校は「子どもの現状」を正確に把握できているか

学校側は、子どもが登校していない間の様子を把握することが難しい状況にあります。特に長期間の不登校の場合、担任や学年主任が「子どもが今、どのような状態なのか」「何を不安に感じているのか」を把握していないケースが多いです。そのため、保護者が学校に対して、子どもの状況を具体的かつ継続的に伝えることが求められます。

例えば、以下の情報は学校との共有が重要です。

  • 子どもが不安に感じていること(友人関係、授業の進度、教師との関係など)
  • 自宅での生活リズムや学習状況
  • 心理的な状態(無気力、焦燥感、強い不安など)

これらの情報が学校側に伝わることで、子どもにとって適切な関わり方が見えてきます。

1.2 「問題点」より「子どもの願い」を伝える

学校に状況を伝える際、つい「学校の対応が悪かった」「クラスの雰囲気が合わない」といった問題点にフォーカスしてしまうことがあります。しかし、学校側に改善を求める場合も、子どもの「願い」や「望んでいること」を伝える方が、建設的な関係を築きやすくなります。

例えば、「〇〇先生の授業が分かりづらい」と伝えるより、「子どもは授業内容について、もう少しゆっくり進めてもらえると安心できると言っています」と伝える方が、学校側も柔軟に対応しやすくなります。子どもの立場に立った「前向きな希望」として伝えることが、学校との良好な連携につながります。

学校での三者面談

1.3 「学校に期待すること」を具体的に伝える

学校側も不登校の子どもへの対応に苦慮していることが多く、「どう関わればよいか分からない」という戸惑いを抱えています。そのため、保護者が「何を学校に期待しているのか」を具体的に伝えることで、学校側はより的確な対応ができます。

例えば、「週に1回、担任の先生から手紙をもらえると安心するようです」や「オンラインで少しでも授業の様子が分かると、復帰へのハードルが下がるかもしれません」といった具体的な提案は、学校側も動きやすくなります。

1.4 担任任せにせず、複数の教職員とつながる

不登校の子どもへの対応は、担任だけに任せてしまうと限界があります。担任の先生が熱心であっても、多忙な業務の中で十分に関わる時間を取れないこともあります。そのため、スクールカウンセラーや学年主任、特別支援コーディネーターなど、複数の教職員と情報共有を進めることが望ましいです。

「誰がどの役割を果たしてくれるのか」「どの先生が子どもと気が合うか」を見極めながら、複数の関係者と連携していくことで、より多角的なサポートが可能になります。況が変わればまた調整する」といった姿勢で、焦らず段階的に進めていくことが大切です。


第2章 学校との連携がうまくいかない時の原因とは?

学校との連携を試みても、思うように進まないケースもあります。学校側の対応が消極的であったり、子どもの状況に対する理解が不足している場合、保護者としては「どうして学校は動いてくれないのか」と不安や不満を抱くこともあります。この章では、学校との連携がうまくいかない原因と、それを解消するための具体的な対策について説明します。

2.1 学校側の「不登校に対する理解不足」

学校側は「不登校は家庭の問題」と捉えてしまう傾向があります。また、子どもが学校を拒否している理由を十分に理解せず、「本人がそのうち戻ってくるだろう」と様子見を続けてしまうケースもあります。このような状況では、保護者が学校に対して「我が子の状況は特別な配慮が必要である」ということを丁寧に説明する必要があります。

2.2 保護者が「学校に遠慮しすぎている」

一方で、保護者の方が学校との関係を悪化させたくないあまり、意見を伝えにくく感じてしまうケースもあります。しかし、不登校の解決には学校との連携が不可欠であり、「学校にお願いして申し訳ない」と感じる必要はありません。むしろ、子どものために必要なサポートを求めることは、親の当然の役割です。

2.3 「学校の限界」を見極めたうえでの関わり方

学校にもできることとできないことがあります。学校の対応が不十分であっても、全面的に依存するのではなく、「学校に求めること」と「家庭でできること」のバランスを見極めることが大切です。学校側が対応できない部分については、家庭で補完する形で支えていくことで、子どもの安心感が高まります。

第3章 再登校に向けた学校との具体的な連携ステップ

学校との連携が進むことで、子どもの不登校状態からの回復は大きく前進します。しかし、再登校に向けた支援は単に「学校に戻ること」をゴールとせず、「子どもが学校で安心して過ごせる環境を整えること」に焦点を当てる必要があります。ここでは、再登校に向けた学校との具体的な連携ステップについて、実践的な方法を解説します。


3.1 再登校の「タイミング」は子ども主体で決める

再登校に向けた連携で最も重要なのは、「いつ学校に戻るか」を子どもの気持ちを軸に決めることです。親としては「早く戻ってほしい」という焦りが生まれがちですが、子どもがまだ心理的に準備ができていない段階で無理に登校を促すと、再登校が長続きせず、再び不登校状態に戻ってしまうことが多いのです。

しかし、「子どもが戻りたいと言うまで待つ」という姿勢だけでは、状況が長期化してしまう恐れがあります。そこで、学校との連携では、「子どもがどの段階で戻れそうか」「どのような条件が整えば戻りやすいか」を見極めることが重要です。

具体的なステップ:

  • 担任の先生やスクールカウンセラーと定期的に情報交換を行い、子どもの心理状態や意欲の変化を把握する。
  • 子どもと「学校に戻ったときに不安に感じること」を具体的に話し合い、不安要素を一つずつ減らす取り組みを学校と共有する。
  • 「別室登校」「短時間登校」「放課後の個別対応」など、子どもが段階的に学校に慣れる方法について、学校と柔軟に調整する。

3.2 「復帰後の環境」を事前に整える

再登校がスムーズに進むかどうかは、学校側の「受け入れ態勢」が整っているかに大きく左右されます。子どもが不安を感じる要素を取り除き、「戻っても大丈夫」と思える環境を学校と共に整えることが不可欠です。

環境調整の具体的なポイント:

  • 学習面の配慮
    長期間の不登校の場合、授業の進度についていけるかどうかが子どもの大きな不安材料です。学校側と相談して、復帰後の学習サポート体制(補講、個別指導、プリント補助など)を整える必要があります。ただし、無理に「遅れを取り戻す」ことを目的とせず、「自分のペースで学び直せる」という安心感を与えることが大切です。
  • 人間関係の調整
    不登校のきっかけが友人関係の場合、復帰後に同じクラスで過ごすことへの抵抗感があります。この場合、学校側と「席替えの配慮」「グループ活動の調整」「特定の友人との距離の確保」など、子どもが少しずつ人間関係を再構築できる環境を作ることが求められます。
  • 教職員の理解と関わり方の調整
    子どもが戻った時に、担任だけでなく教科担当の先生や学年主任が「今の子どもの心理状態」を正しく理解していることが大切です。保護者は、学校側に対して「どのような声かけが有効か」「子どもが安心して話せる教職員は誰か」といった情報を共有し、復帰後の関わり方を事前にすり合わせる必要があります。
学校側との面談

3.3 再登校の「初期段階」を丁寧にサポートする

再登校の初期段階は、子どもにとって非常に大きな心理的ハードルです。この段階でのサポートが不十分だと、せっかく再登校してもすぐに「もう無理だ」と感じてしまい、再度の不登校につながることがあります。学校側と密に連携し、再登校の初期段階を丁寧にサポートすることが、長期的な安定につながります。

再登校初期のサポートポイント:

  • 「登校日数」にこだわらず、学校との接点を増やす
    最初は「毎日登校する」ことを目標にせず、「週に1回でも登校できたら十分」と考え、子ども自身が「できた」という達成感を積み重ねることが重要です。学校側には「登校日数よりも、まずは学校との関係を取り戻すこと」を目的とするよう伝え、柔軟な対応をお願いしましょう。
  • 「教室に入れない場合」も想定したプランを準備
    再登校した直後、教室に入れずに保健室や別室で過ごすこともよくあります。この場合も「教室に入れない=失敗」と捉えず、「学校の空間に慣れるステップ」として位置づけることが大切です。学校側と「教室以外の安心できる場所」「特定の先生が見守る時間帯」などをあらかじめ調整しておくことで、子どもは「万が一の逃げ場がある」と安心できます。

3.4 「親の役割」はあくまで伴走者

再登校に向けた過程では、親が「子どもを引っ張る役割」を担おうとすると、かえって子どもにプレッシャーを与えることになります。親はあくまで「伴走者」として、子どもが安心して学校に戻れる環境を整える役割に徹することが大切です。

伴走者としての関わり方:

  • 学校側と子どもの間に立って、双方の思いを丁寧に伝えながら橋渡し役を務める。
  • 「登校できたかどうか」ではなく、「学校に行こうと考えたこと」を評価する。
  • 子どもが不安を口にした時は、否定せずに「それは大変だったね」と共感する。

第4章 学校との連携を長期的に維持するポイント

再登校が実現しても、そこから安定した学校生活を継続するには、学校との連携を長期的に維持していくことが不可欠です。再登校直後は、子ども自身も不安を抱えながら環境に慣れようとしています。しかし、登校が続くことで少しずつ安心感が芽生える一方で、些細な出来事で再び心のバランスを崩してしまうことも少なくありません。そのような時に、保護者と学校が継続的に情報を共有し、柔軟に対応していくことで、子どもは「困った時には守ってもらえる」という安心感を持つことができます。


4.1 「再登校後の不調」を想定して備える

再登校後、最初の数週間は順調に見えても、子どもが新たなストレスを感じ始めるのは少し時間が経ってからです。友人関係の微妙な変化、学業へのプレッシャー、教師との関係性など、さまざまな要因が重なることで、子どもは「やっぱり無理かもしれない」と感じ始めることがあります。

この「再登校後の不調」は、保護者と学校が見逃しがちなポイントです。しかし、ここで迅速かつ丁寧に対応することで、再度の不登校を防ぎ、安定した学校生活を継続できる可能性が高まります。

不調のサインに気づくポイント:

  • 「朝、登校準備に時間がかかるようになった」「お腹が痛い、頭が痛いと言い出す」など身体症状の増加。
  • 学校から帰宅後、以前よりも疲れやすくなり、何も話したがらなくなる。
  • 学校での出来事に対して否定的な発言が増え、再登校前のネガティブな気持ちが戻ってきている。

不調を感じた時の対応:

  • 早めに担任やスクールカウンセラーに状況を伝え、「しばらく様子を見ましょう」ではなく、具体的な対策を一緒に検討する。
  • 一時的に別室登校や短時間登校を取り入れるなど、柔軟な選択肢を提示する。
  • 子ども自身にも「調子が悪い時は、学校と相談して無理をしない方法がある」と伝え、不安を和らげる。

4.2 「担任任せ」にならない関係づくり

再登校後は、どうしても担任の先生との関係が中心になりますが、長期的な連携を維持するためには、担任だけに依存せず、複数の教職員と関係を築いておくことが重要です。担任の異動や学年の変化によって状況が変わった場合も、子どもの状況を理解している複数の教職員とつながっていることで、継続的な支援が途切れることを防げます。

関係構築のポイント:

  • スクールカウンセラーとの定期面談
     担任だけでなく、スクールカウンセラーとも定期的に面談を行い、子どもの状況を共有しておくと、担任が変わった場合にも継続的なフォローが期待できます。
  • 特別支援コーディネーターとの連携
     学校には特別支援コーディネーターが配置されていることが多く、学習面や心理的配慮が必要な子どもへのサポート体制について相談することができます。担任が多忙な時にも、コーディネーターが間に入ることで、スムーズな対応が可能になります。
  • 学年主任や管理職とも関係を築く
     学年主任や校長・教頭とも定期的に情報を共有しておくことで、学校全体の方針として子どもへの配慮が継続されやすくなります。

4.3 「学校からの情報」を積極的に引き出す

再登校後も、子どもは家庭で学校の出来事を細かく話すことは少なくなります。特に、うまくいっていない時ほど、自分の気持ちを言葉にできずに抱え込んでしまうケースが多いです。そのため、保護者としては、学校側から積極的に情報を引き出し、子どもの状況を把握することが重要です。

情報共有の方法:

  • 定期的な面談や電話連絡の依頼
     再登校後も「順調そうだから大丈夫」と思わず、定期的に担任やスクールカウンセラーと面談を行い、子どもの様子を確認します。必要があれば、電話連絡やメールで簡単に状況を把握するだけでも、安心材料になります。
  • 「困った時のサイン」を学校側と共有
     子どもが再び不安を抱え始めた時に現れるサイン(疲れやすくなる、教室に入れなくなる、授業中にぼんやりしているなど)を学校側に伝え、「このような様子が見られたら早めに知らせてほしい」と依頼しておくことで、早期対応が可能になります。
  • 子どもと話す「きっかけづくり」
     学校での出来事について子どもから話を引き出すために、「今日は〇〇先生と話せた?」「お昼は誰と食べた?」など、具体的で答えやすい質問を心がけることで、子ども自身の思いを少しずつ言葉にできるようになります。

4.4 「学校との関係」が途切れそうな時の対応

再登校が軌道に乗ると、学校側も「もう大丈夫だろう」と安心してしまい、連携が途切れがちになります。しかし、長期的に安定した学校生活を送るためには、学校との関係を意図的に維持し続けることが重要です。

関係を維持する工夫:

  • 定期的に短い面談を申し込む
     「特に問題はなさそうでも、今の状況を知りたい」という理由で、短時間の面談や電話連絡を依頼することで、学校側にも「引き続き気にかけている」という姿勢が伝わります。
  • 学校行事や保護者会への積極的な参加
     学校行事や保護者会への参加を続けることで、担任だけでなく他の教職員とも顔を合わせ、子どもの状況について自然な形で情報交換ができます。
  • 「困った時だけ連絡する」のではなく、ポジティブな情報も共有
     子どもが学校で「うまくいったこと」「前よりも成長したこと」を学校側に伝えることで、教職員も子どもの変化をポジティブに捉え、さらなるサポートへのモチベーションが高まります。

第5章 子どもと学校との「信頼関係」を築くための支援とは?

学校との信頼関係を築くことは、再登校後の安定した学校生活を維持するための重要な要素です。不登校を経験した子どもは、学校に対して「自分の気持ちを分かってもらえなかった」「助けてもらえなかった」というネガティブな記憶を抱えていることが多く、再登校後も「また同じことが起きるのではないか」と心のどこかで不安を感じています。その不安を和らげ、学校との信頼関係を再構築するには、保護者の適切な関わりとサポートが欠かせません。


5.1 「学校での安心感」を少しずつ積み重ねる

再登校後の子どもは、学校にいるだけで大きなエネルギーを消耗しています。そのため、最初のうちは「頑張って登校している」というだけで十分です。保護者としては、「教室で過ごせた」「授業を最後まで受けられた」といった成果を求めるのではなく、「学校に行けた」「先生と目を合わせられた」といった小さな成功体験を積み重ねることを大切にしてください。

安心感を積み重ねるための具体的な方法:

  • 「学校で頑張れたこと」を子ども自身に気づかせる
     「今日は教室に入れたね」「友達と少し話せたね」といったポジティブな声かけを意識することで、子ども自身が「自分は頑張れている」と自覚できます。
     ただし、「頑張ったね」「偉いね」といった単純な褒め方ではなく、「〇〇ができたこと、すごいと思うよ」と、具体的に認める言葉をかけることで、子どもの達成感はより深まります。
  • 学校側と「子どもの頑張り」を共有する
     担任の先生に「今日は〇〇ができたと話していました」と伝えることで、学校側も子どもの努力に気づき、よりきめ細かいサポートを続けやすくなります。また、学校側からも「最近〇〇ができるようになりました」とフィードバックがあると、子どもは「学校も自分のことを見てくれている」と感じ、安心感が増します。
  • 「学校外での成功体験」を学校に伝える
     学校での成功体験だけでなく、家や習い事での小さな達成も学校側と共有することで、教職員は子どものポジティブな変化に気づきやすくなります。「最近、家で読書を始めた」「習い事で友達と話せるようになった」といった情報は、学校での関わり方のヒントになります。

5.2 「子ども自身の気持ち」を学校に伝え続ける

再登校後も、子どもは自分の気持ちを学校の先生にうまく伝えられないことが多いです。「学校で困っていること」「苦手なこと」「安心できること」を先生に伝えられず、心の中でモヤモヤを抱えたまま過ごしているケースは少なくありません。
そこで、保護者が「子どもの気持ちの代弁者」として、学校側に子どもの内面を丁寧に伝え続けることが、信頼関係の構築につながります。

子どもの気持ちを伝える際のポイント:

  • 「子どもの言葉」をそのまま伝える
     「〇〇ちゃんは、最近〇〇について少し不安に感じていると言っていました」「〇〇先生の授業が少し速く感じるみたいです」と、子どもの言葉をできるだけそのまま伝えることで、教職員は子どもの気持ちをよりリアルに理解できます。
  • 「要望」ではなく「気持ち」として伝える
     「〇〇してほしい」と学校側に要望を伝えるのではなく、「子どもは〇〇に不安を感じている」といった事実として伝えることで、学校側も柔軟に対応しやすくなります。
  • 子どもの「良い変化」も積極的に共有する
     「最近、〇〇が少しずつできるようになっています」とポジティブな変化を学校側に伝えることで、先生たちも「子どもは頑張っている」と感じ、信頼関係が深まります。

5.3 「学校で困った時の逃げ場」を確保する

学校での信頼関係がまだ十分に築かれていない段階では、子どもは「困った時にどこに行けばいいのか分からない」という不安を抱えています。この「逃げ場がない」という感覚が、再び不登校に戻ってしまう要因になりかねません。
そこで、学校側と連携して、子どもが「困った時に頼れる場所」を確保しておくことで、安心感を高めることができます。

逃げ場を確保する具体的な方法:

  • 「保健室登校」や「別室対応」の選択肢を残しておく
     再登校後も、教室で過ごすことが難しくなった時に、保健室や別室で過ごせる選択肢があると、子どもは「無理しなくていい」と感じられます。
     ただし、「保健室に行く=失敗」と子どもが感じないように、「ちょっと休憩する場所」「気持ちを落ち着ける場所」としてポジティブに位置づけることが大切です。
  • 「特定の先生」を避難先に設定する
     子どもが信頼できる先生がいる場合、「何かあったら〇〇先生のところに行ってもいいよ」と伝えておくことで、子どもは「いざという時の避難先」を持てます。
     学校側とも事前に「〇〇先生が避難先として対応する」という共通認識を持っておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。

5.4 「子どもの意見」を学校生活に反映させる

子どもが学校に対して信頼感を持つためには、「自分の意見が尊重されている」と感じることが重要です。不登校を経験した子どもは、「学校は自分の気持ちを分かってくれない」と感じることで、さらに心を閉ざしてしまうことがあります。
そこで、学校との連携では「子どもの意見を学校生活に反映させる」という視点を持つことで、子ども自身が「学校は自分を大切にしてくれている」と感じやすくなります。

意見を反映させるための方法:

「困った時のサイン」を子どもと共有しておく
 「教室にいられなくなった時は、保健室に行ってもいいよ」「先生にサインを出していいよ」といったルールをあらかじめ決めておくことで、子どもは「自分で状況をコントロールできる」という自信を持てます。

「登校スケジュール」を子どもと一緒に決める
 再登校の際、登校日数や時間帯、別室で過ごすかどうかなどの選択肢を子どもと一緒に考え、「自分で決めた」という感覚を持たせることが大切です。

「授業の受け方」を柔軟に調整する
 「全部の授業を受けるのがしんどい」と感じている場合は、「まずは1時間目だけ参加」「得意な教科から入る」といった方法を、子どもと話し合いながら決めます。
 学校側にも「〇〇は、今のところこのスタイルでやってみたいそうです」と伝えることで、子どもの意思が尊重されていると感じやすくなります。

まとめ:親と学校の「協働」が子どもの継続登校を支える

各章要点必要な行動
第1章 不登校の背景共有学校に子どもの状況・心理状態を具体的に伝え、共通理解を深めることが再登校への第一歩。子どもの不安、生活リズム、心理状態を正確に学校へ伝え、希望するサポート方法を明確に伝える。
第2章 連携がうまくいかない時学校側の不登校への理解不足や、保護者の遠慮が連携を妨げる原因になる。学校の限界を見極めつつ、具体的なサポートを求め、複数の教職員との関係構築を図る。
第3章 再登校へのステップ再登校は子どもの心理的準備を見極めながら、段階的かつ柔軟に進める必要がある。無理のないスケジュールで段階的に復帰し、学習・人間関係・教職員の関わり方の環境調整を進める。
第4章 連携の維持再登校後も継続的な情報共有と複数の教職員との関係構築が、安定した学校生活を支える。定期的な面談や情報共有を続け、子どもの変化に気づきやすい関係を維持する。
第5章 信頼関係の構築子どもが「学校は自分を理解している」と感じることで、長期的な安心感につながる。子どもの気持ちを代弁し、学校との関係を築き、安心できる逃げ場の確保や意見の反映を促す。

再登校後の安定した学校生活は、保護者と学校が継続的に連携し、子どもを支え続けることで実現します。
子どもが「学校は自分を理解してくれている」「困った時には助けてくれる」と信じられる環境を整えることが、不登校の再発を防ぎ、将来的に子どもが自信を持って社会に踏み出すための土台となります。

最後に強調したいのは、保護者と学校の関係は「親が学校にお願いする立場」ではなく、「子どもを一緒に支えるパートナー」という協働の姿勢であるべきだということです。お互いの立場や意見を尊重しながら、子どもが安心して自分らしく成長できる環境を整えていくことが、私たち大人の大切な役割です。

再登校はゴールではなく、子どもの未来につながる新たなスタートです。学校と連携しながら、子どもが自分のペースで前に進めるよう、温かく見守っていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校と発達障害:知っておきたい基礎知識と、家庭で出来るサポート

不登校と発達障害-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問を務めております。近年、小中学生の不登校と発達障害の関連性が注目されています。不登校の背景にはさまざまな要因がありますが、その中でも発達障害の特性が関係するケースは少なくありません。

本稿では、不登校と発達障害に関する基礎知識を整理し、家庭でできる具体的なサポートについて詳しく解説していきます。お子さんが不登校の状態にあるご家庭では、日々の対応に悩みや戸惑いを感じていることと思います。
しかし、適切な理解とサポートによって、お子さんの状況は変わる可能性があります。ぜひ最後までお読みいただき、実践できる部分から取り入れてみてください。


目次


第1章:不登校と発達障害の関係性とは?

不登校が増加傾向にあることは、多くの保護者の方も耳にされているのではないでしょうか。文部科学省の調査によると、2023年度の小中学校の不登校生徒数は34万6482人に達し、過去最多となりました。特に小学生の不登校は近年急増しており、学校生活に適応することが難しい子どもが増えている実態が浮き彫りになっています。

不登校の背景には、学業不振やいじめ、家庭環境の変化などさまざまな要因が挙げられます。その中でも、発達障害を抱える子どもが不登校になるケースは珍しくありません。
発達障害とは、脳の機能的な特性によって学習や行動、対人関係などに困難を抱える状態を指します。発達障害には、主に以下のような種類があります。

1. 自閉スペクトラム症(ASD)

ASD(Autism Spectrum Disorder)は、対人関係やコミュニケーションの難しさ、こだわりの強さ、感覚過敏などの特性を持つ発達障害です。

ASDの子どもは、集団生活においてさまざまな困難を抱えやすい傾向があります。例えば、以下のような場面で学校生活に適応しにくくなることがあります。

  • 暗黙のルールが理解しにくい:「空気を読む」ことが苦手で、友人関係にトラブルを抱えやすい
  • 予定の変更に対応しづらい:急な時間割変更や行事の予定が変わると強いストレスを感じる
  • 感覚過敏がある:教室の騒音や蛍光灯の光、体育の授業の汗の匂いなどが強い不快感を引き起こす

こうした困難が積み重なると、学校に行くこと自体が大きなストレスとなり、不登校につながることがあります。

2. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。

ADHDの子どもは、学校生活において次のような困難を抱えることがあります。

  • 授業中にじっと座っていられない:周囲の子どもと比べて落ち着きがなく、教師から注意を受けることが多い
  • 忘れ物が多い:宿題や持ち物を忘れやすく、自己管理が苦手
  • 感情のコントロールが難しい:カッとなりやすく、衝動的な発言や行動をしてしまう

ADHDの子どもは「やる気がない」と誤解されやすく、叱責を受けることで自己肯定感が低下し、学校に行く意欲を失ってしまうことがあります。

3. 学習障害(LD)

LD(Learning Disability)は、知的発達には問題がないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習分野に著しい困難を抱える発達障害です。

LDの子どもは、以下のような困難を経験することがあります。

  • 文章を読むのが極端に遅い(読字障害)
  • 板書をノートに写すのに時間がかかる(書字障害)
  • 簡単な計算問題でもミスが多い(算数障害)

学習に対する苦手意識が強くなると、「どうせやってもできない」と考えるようになり、登校意欲が低下してしまうことがあります。


発達障害がある子どもが不登校になりやすい理由

発達障害を持つ子どもが不登校になる背景には、いくつかの共通する要因があります。

1. 学校環境が合わない

学校は「集団行動が基本」となる場であり、発達障害の特性を持つ子どもにとっては過酷な環境になりやすいです。授業の進め方やルールが一律であるため、柔軟な対応が求められる場面で適応しにくくなります。

2. 失敗体験が積み重なる

発達障害の子どもは、「努力しても報われない」という経験を繰り返すことが多くなります。特に、ASDの子どもは友達との関係がうまくいかない、ADHDの子どもは授業中に注意を受けることが多いなど、周囲と比べて劣等感を抱きやすいです。こうした経験が蓄積すると、「学校に行くこと自体が苦痛」と感じるようになります。

3. 過度なストレスによる身体的な不調

強いストレスがかかると、頭痛や腹痛、吐き気などの身体症状が現れることがあります。発達障害の子どもは、自分の気持ちを言葉で表現することが難しい場合があり、ストレスを体調不良として訴えることが多くなります。この状態が続くと、保護者は「本当に体調が悪いのか、それとも学校に行きたくないだけなのか」と判断に迷うことになります。

以上のように、発達障害の特性が不登校につながるケースは少なくありません。では、家庭でどのようにサポートすればよいのでしょうか?

第2章:家庭でできる不登校の子どもへの実践的なサポート

ここでは、発達障害が関係する不登校のケースにおいて、家庭で具体的にできる対応を解説します。どこにでも書かれているような「生活リズムを整える」「見守る」では解決しません。お子さんの状況に応じて、実際に成果を上げやすい方法を詳しくご紹介します。


1. 「不登校の原因」を正しく見極めるためのポイント

発達障害のあるお子さんが学校を休むようになると、多くの親御さんは「いじめがあったのか?」「先生との関係が悪いのか?」と外部要因を探しがちです。しかし、発達障害の特性による不登校は、「本人の特性」と「学校環境」のミスマッチによって生じることが多く、他者とのトラブルが直接的な原因ではない場合もあります。

チェックすべきポイント

以下のような視点から、お子さんが学校に行けなくなった背景を整理してみてください。

① 学校環境の負担が大きすぎる

  • 音や光に過敏で、教室が苦痛(蛍光灯のチカチカ、騒音、匂いが耐えられない)
  • 時間割の変更や行事ごとが極端にストレスになる(予定変更に適応しにくい)
  • 先生の指示が抽象的で、何をすればいいのかわからず怒られる

② 人間関係の困難がある

  • クラスメイトとの会話がかみ合わず、孤立しやすい
  • 友達を作ろうとすると過度に執着し、トラブルになりやすい(ASD傾向)
  • すぐに感情的になり、喧嘩をしてしまう(ADHD傾向)

③ 学習面での苦手意識が強い

  • 板書のスピードについていけず、ノートがとれない(LDの可能性)
  • 計算や漢字の暗記が極端に苦手で、授業が苦痛
  • 先生の話を聞きながら理解することが難しく、内容が頭に入らない

実践的なアクション

お子さんが「学校に行きたくない」と言ったとき、「なぜ?」と聞いても本当の理由が出てこないことがほとんどです。本人も、何が苦痛なのか正確に説明できないからです。

そこで、親御さんがすべきことは以下の2つです。

  1. 学校生活を具体的にイメージさせる質問をする
    • 「休み時間はどこで過ごしていたの?」
    • 「今日の授業で一番嫌だったのはどこ?」
    • 「先生にどんなことを言われるとつらい?」
    • 「給食の時間はどんな気持ちだった?」
  2. 記録を取る
    • 学校に行けた日と行けなかった日で、前日や朝の様子に違いはあったか?
    • 体調不良を訴える頻度やタイミングにパターンはあるか?
    • どんな話題を振ると急に機嫌が悪くなるか?

親御さんが「お子さんのストレスポイント」を客観的に把握することで、適切なサポートが見えてきます。


2. 不登校を長期化させないための家庭での接し方

発達障害を持つ子どもの不登校は、適切な対応ができないと長期化しやすい特徴があります。「とりあえず様子を見よう」と受け身の対応をすると、家での居心地が良くなりすぎて学校への戻り方がわからなくなってしまいます。

では、どのように接すればよいのでしょうか?

①「学校に行くかどうか」を議論の中心にしない

  • 「いつになったら行くの?」は禁句
  • 代わりに「今日はどんな気持ち?」と、その日の状態に目を向ける
  • 「じゃあ明日はどうする?」と1日単位で考えさせる

② 家庭での生活リズムを「学校に近い形」に整える

  • 朝は決まった時間に起こす(学校がない日でも)
  • 日中は家でダラダラさせない(寝転んでスマホを見続けるのは避ける)
  • 昼食の時間を固定する(生活リズムの軸を作る)
  • ゲームや動画のルールを決める(夜更かしを防ぐため)

③ 「家にいることが心地よすぎる状態」にしない

不登校が続くと、家が「最も安心できる場所」となり、外に出ること自体が困難になっていきます。そのため、意識的に以下のような行動を取り入れましょう。

  • 毎日外に出る機会を作る(買い物、散歩、図書館など)
  • 学校以外の人と接する機会を持つ(親戚、習い事、支援機関など)
  • 好きなことをする時間を、家の外でも作る(例えばカフェで読書など)

家の中に閉じこもる時間が長くなるほど、学校復帰のハードルが上がります。


3. 学校復帰に向けたステップの作り方

発達障害のある子どもは、いきなり「明日から普通に学校に行く」のは難しいです。そのため、段階的に学校に戻る「ステップ」を作ることが重要になります。

実践的なステップの例

  1. 学校に関する話題を増やす(「今日は○○先生から連絡があったよ」など)
  2. 学校の宿題を少しだけやる(完全に学習を止めないため)
  3. 登校時間に近い時間に起きる習慣をつける
  4. 「学校に寄る」だけの機会を作る(校門まで行く、先生に会うなど)
  5. 短時間だけ学校に行く(まずは1時間、次に半日など)

このように、一歩ずつ「学校に行くこと」への抵抗感を減らすことが大切です。

まとめ

発達障害のあるお子さんの不登校は、環境のミスマッチによるものが多く、単に「甘え」や「怠け」ではない可能性があります。
そして、発達障害だからどうしようもないのではなく、家庭での対応次第で状況を変えていくことが可能です。「何が問題なのか」を正しく把握し、適切なサポートを行うことで、学校復帰の可能性を高めることができます。焦らず、お子さんに合った方法を試してみてください。

要点具体的な行動
不登校の原因を見極めるお子さんの困りごとを把握し、「学校環境の負担」「人間関係」「学習面」のどこに問題があるのか整理する。具体的な質問をして、本音を引き出す。
「学校に行くかどうか」の議論を避ける「いつ行くの?」とプレッシャーをかけず、その日の気持ちを確認しながら、少しずつ学校の話題に触れる。
生活リズムを学校に近づける朝決まった時間に起こし、日中に活動時間を確保する。昼食の時間を一定にし、夜更かしを防ぐためにゲームや動画のルールを設定する。
家庭を「心地よすぎる場所」にしない毎日外出する習慣をつける(散歩、買い物など)。学校以外の人との交流機会を増やし、家の外で楽しい時間を持つ。
学校復帰のためのステップを作るまずは学校に関する話を増やし、次に短時間の登校を試すなど、段階的に慣れさせる。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校の子と親の「心の距離」を縮める、今日からできるコミュニケーション術

不登校の子と親の「心の距離」を縮める、今日からできるコミュニケーション術-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

不登校に直面する保護者の多くが、「どう接したらよいのかわからない」「子どもと話す機会が減ってしまった」と悩みを抱えています。
しかし、親子のコミュニケーションが途絶えると、不登校の長期化や家庭内での孤立を招くリスクが高まります。本稿では、今日から実践できる「心の距離」を縮めるコミュニケーション術について、具体的な方法とその心理的背景を詳しく解説していきます。


目次


第1章:子どもの感情を理解し、受け止めることの重要性

不登校の子どもの心理

不登校の子どもたちは、学校に行けないことへの罪悪感や、親に迷惑をかけているという後ろめたさを抱えていることが少なくありません。特に、もともと真面目で頑張り屋の子ほど、「行かなければならないのに行けない」という自己否定のループに陥りやすい傾向があります。その結果、「自分はダメな人間だ」と感じ、自信を失い、家にこもる状態が続いてしまうのです。

こうした子どもの心理状態を理解せずに、「どうして学校に行かないの?」「いつまでこのままなの?」と問い詰めると、子どもはますます追い詰められ、親との心の距離が広がってしまいます。

子どもが抱えている本当の気持ちを知るためには、まず「親が子どもの感情を受け止めること」が欠かせません。ここで大切なのは、「なぜ行かないのか」と理由を問い詰めるのではなく、「今どんな気持ちでいるのか」に焦点を当てることです。

たとえば、子どもが言葉少なげにしている場合、「最近、なんとなく気分が沈んでいる?」とそっと尋ねてみるのもよいでしょう。もし子どもがうなずいたなら、「そうなんだね。ずっとつらかったね」と共感の言葉をかけることで、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じ、少しずつ話しやすくなります。

不安を大きくしないための言語化

また、不登校の子どもたちは、自分の気持ちをうまく言語化できないことがよくあります。特に小学生の子どもは、「学校が嫌だ」とは言うものの、具体的に何が嫌なのか説明できないことが多いのです。
こうした場合、「学校のどんなことがしんどいのかな?」「教室に入るのがつらいの?」「勉強が大変なの?」と、いくつかの選択肢を示してあげると、子どもが自分の気持ちを整理しやすくなります。もし、どの質問にも答えられないようであれば、「話したくないときは、無理に話さなくてもいいからね」と伝え、無理に聞き出そうとしないことも大切です。

さらに、子どもの話を聞く際には、「否定しない・アドバイスをしない」ことを意識しましょう。例えば、子どもが「学校に行くのが怖い」と話したときに、「そんなの気の持ちようだよ」「みんな頑張っているんだから、あなたも頑張りなさい」といった言葉をかけると、子どもは「この人にはわかってもらえない」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

親としては励ましたい気持ちがあるかもしれませんが、不登校の子どもにとって、もっとも必要なのは「共感されること」です。「怖いんだね」「毎朝、学校のことを考えると胸が苦しくなるのかな」と子どもの感情に寄り添いながら話すことで、子どもは安心して気持ちを話せるようになります。

また、言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションも大切です。親の表情や態度は、子どもに大きな影響を与えます。例えば、親が険しい顔をしていたり、ため息をついたりしていると、子どもは「自分のせいで親がこんなに疲れている」と感じ、さらにプレッシャーを感じてしまいます。逆に、穏やかな表情で、落ち着いた声のトーンで話すと、子どもは安心して自分の気持ちを伝えやすくなります。親が子どもの話を聞くときには、意識的に表情を柔らかくし、「あなたのことを大切に思っているよ」という気持ちを伝えることが重要です。

このように、子どもの感情を理解し、受け止めることは、不登校から抜け出すための第一歩となります。子どもが「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じることで、親子の信頼関係が深まり、少しずつ前向きな行動へとつながっていきます。

第2章:日常生活の中でのコミュニケーションの工夫

不登校の子どもとの「心の距離」を縮めるには、特別な場面での対話だけでなく、日常生活の中での関わり方が大きな影響を与えます。多くの保護者は、子どもとしっかり話そうとして「時間を作って真剣に向き合う」ことを考えがちですが、それが逆にプレッシャーとなり、子どもが話しづらくなってしまうこともあります。不登校の子どもにとっては、「向き合う対話」よりも「自然な会話」が重要なのです。

共通の時間を増やすことの大切さ

不登校の子どもは、学校に行かないことで「親と顔を合わせるのが気まずい」と感じたり、「どうせ叱られるのではないか」と警戒心を抱いていたりすることがあります。そのため、親子の関係を改善するためには、意識的に「同じ空間で過ごす時間」を増やすことが大切です。ただし、「話すこと」を目的にするのではなく、「一緒に何かをする」ことに重点を置くのがポイントです。

例えば、一緒に食事をする時間を増やすことは有効な手段のひとつです。食卓を囲むことは、言葉を交わさなくても「家族としてのつながり」を感じられる大切な時間です。無理に会話をしようとせず、同じ空間で食事をすること自体を大事にするだけでも、子どもに安心感を与えます。また、子どもが自分から話し出したときに、さりげなく相槌を打つことで、「親は自分を受け入れてくれている」という感覚を持たせることができます。

また、子どもの好きなことに親が関心を示すのも、自然なコミュニケーションのきっかけになります。不登校の子どもは、ゲームやアニメ、動画視聴などに没頭していることが多いですが、それを「時間の無駄」などと否定せず、「どんなゲームをしているの?」「このキャラクター、どんなところが好き?」といった形で興味を持って話しかけることで、子どもは「親に認められた」と感じやすくなります。このような日常的な関わりを続けることで、親子の信頼関係が深まり、子どもが自分の気持ちを話しやすくなる土台ができます。

親からの一方的な会話にならない工夫

子どもとの会話では、「親が話す時間を短くし、子どもが話す時間を長くする」ことが理想的です。しかし、不登校の子どもは自分から話し出すことが難しいため、親が主導で会話を進める場面も出てくるでしょう。その際に気をつけるべきなのは、「問い詰めるような話し方をしない」「アドバイスを押しつけない」ことです。

例えば、「学校に行かない理由を教えて」と直接聞いてしまうと、子どもは「正しい答えを言わなければならない」と感じ、余計に口を閉ざしてしまいます。そのため、「最近、家で過ごす時間が増えたけど、何か楽しいことはあった?」といったように、答えやすい話題から入るのが効果的です。まずは子どもがリラックスして話せる環境を作り、徐々に心を開いてもらうことを意識しましょう。

また、親が「こうしたほうがいい」「こうすればうまくいく」とアドバイスをするのも避けたほうがよいでしょう。たとえば、「朝早く起きる習慣をつけたほうがいいよ」と言うと、子どもは「できていない自分はダメなんだ」と感じてしまいます。
代わりに、「朝起きるのがしんどいのは、夜なかなか眠れないのかな?」と、子どもがどう感じているかを尋ねる形にすることで、プレッシャーを与えずに話を深めることができます。

「会話がなくてもOK」という安心感を持たせる

不登校の子どもは、親と話すこと自体に緊張を感じることがあります。特に、長期間学校に行っていない場合、「親と話すと学校の話になってしまうのでは」と警戒し、できるだけ会話を避けようとする子もいます。このような場合、「話さなくてもいい」「会話がなくても大丈夫」という空気を作ることが大切です。

具体的には、子どもがリビングに来たときに、無理に話しかけるのではなく、親が普段通りに過ごしている姿を見せることが有効です。例えば、親が新聞を読んでいたり、料理をしていたりすると、子どもは「何か話さなければならない」というプレッシャーを感じずに済みます。そして、もし子どもが何か話し始めたときには、手を止めてしっかり耳を傾けることで、「親は自分の話をちゃんと聞いてくれる」と感じるようになります。

また、散歩やドライブなど、横並びの状態で過ごす時間を増やすのも良い方法です。面と向かって話すのが苦手な子どもでも、並んで歩いていると自然と会話が生まれやすくなります。「天気がいいね」「この道、前に通ったことある?」といった些細な話題から始めることで、子どもが会話に参加しやすくなるのです。

このように、日常生活の中で自然な形で関わりを持つことが、子どもとの「心の距離」を縮める上で非常に重要です。親が「会話をしなければならない」と意気込むと、子どもは逆に緊張してしまうため、「同じ空間にいること自体が大事」と考え、ゆるやかに関わっていくことが大切です。

第3章:親自身の心のケアとサポートの重要性

不登校の子どもと向き合うことは、親にとっても精神的な負担が大きいものです。多くの保護者が「このままでいいのか」「何か間違ったことをしているのではないか」と悩み続けています。また、周囲の目や親族からの心ない言葉に傷つき、自分を責めてしまうことも少なくありません。しかし、親が不安や焦りを抱えたままだと、それは必ず子どもにも伝わり、状況を悪化させる要因となってしまいます。子どものためにも、まずは親自身が心のケアを意識することが大切です。

親の不安が子どもに与える影響

不登校の子どもは、親の感情を敏感に感じ取ります。特に、小学生の子どもは親の表情や態度の変化を直感的に察知する能力が高いため、親が焦りや不安を抱えていると、それを「自分のせいだ」と受け止めてしまうことがよくあります。

例えば、親が「なんとかして学校に行かせなければ」と思っていると、その緊張感が日常の何気ないやり取りにも表れます。たとえば、「今日はどうするの?」「そろそろ学校のこと考えようか?」といった言葉が、知らず知らずのうちにプレッシャーになってしまうのです。子どもは親を悲しませたくない、怒らせたくないという思いを持っているため、「学校に行かなければ」と焦りながらも動けない状況に追い込まれ、ますます心を閉ざしてしまうことがあります。

また、親自身が落ち込んでいたり、疲れ果てていたりすると、子どもは「自分のせいで親がこんなに苦しんでいる」と感じ、余計に自己肯定感が低下してしまいます。そのため、親が心の安定を保つことは、子どもの回復にも大きく影響するのです。

親自身のメンタルケアの方法

不登校の子どもと向き合うには、親自身が心の余裕を持つことが不可欠です。とはいえ、「ストレスを溜めないようにしよう」と考えても、現実的には難しいものです。そこで、親自身が気持ちを整理し、適切にケアをするための具体的な方法を紹介します。

① 一人で抱え込まない
不登校の問題は、親一人で解決できるものではありません。親だけで何とかしようとすると、どうしても視野が狭くなり、冷静な判断ができなくなってしまいます。信頼できる専門家や、不登校の子どもを持つ親同士のコミュニティなどに相談し、「一人ではない」と感じることが重要です。

② 生活リズムを整える
子どもの不登校が続くと、親自身の生活リズムも乱れがちになります。例えば、夜遅くまでインターネットで不登校に関する情報を調べ続けたり、朝の登校時間に合わせて過度に神経を使ったりすることで、親自身が疲弊してしまうケースも少なくありません。しかし、親が健康的な生活を送ることは、子どもに安心感を与えるためにも重要です。

特に、食事や睡眠の質を意識することが大切です。親が食事をきちんと摂り、規則正しい生活をしていると、子どもも自然とそのリズムに影響を受けます。逆に、親が疲れ果てた様子でいると、子どもも「家の中が落ち着かない」と感じ、余計に部屋にこもってしまうことがあります。

③ 「今できること」に目を向ける
不登校の子どもを持つ親は、「どうすれば学校に戻れるのか」「いつになったら元の生活に戻るのか」と将来のことばかり考えてしまいがちです。しかし、先のことを考えすぎると、不安が増し、焦りが強くなります。そのため、「今できること」に意識を向けることが大切です。

例えば、「今日は子どもと一言でも会話ができた」「一緒にご飯を食べられた」といった小さな積み重ねを大切にすることで、少しずつ前向きな気持ちを持つことができます。「学校に行かせなければならない」というプレッシャーを手放し、「今の子どもを受け入れる」という視点に切り替えることで、親自身の心の負担も軽くなります。

第4章:親子の信頼関係が回復した先にあるもの

不登校からの回復には時間がかかります。その過程で大切なのは、「親子の信頼関係を回復すること」です。子どもが安心して親と話せるようになり、自分の気持ちを素直に表現できるようになれば、少しずつ前向きな行動が増えていきます。

多くの保護者が「子どもを学校に戻したい」と思うのは当然ですが、大切なのは「子どもが自分の力で一歩を踏み出せる状態を作ること」です。そのためには、「親が子どもに安心感を与えられる存在であること」が何よりも重要です。

不登校の子どもは、「自分はダメな人間だ」「どうせ理解してもらえない」と思い込んでしまうことがよくあります。しかし、親が適切に関わることで、子どもは「自分は大丈夫だ」「受け入れてもらえている」と感じることができるようになります。そうした積み重ねが、最終的には学校復帰や社会との関わりを再構築する力へとつながっていくのです。

これまで述べてきたように、不登校の子どもと親の「心の距離」を縮めるためには、焦らず、日常の中で少しずつ信頼関係を築いていくことが大切です。そして、そのためには、親自身が冷静で、穏やかな気持ちでいられることが不可欠です。「子どもが学校に行くこと」だけを目標にするのではなく、「親子の関係を良くすること」を大切にすることで、子どもは安心して前に進むことができるようになります。

最後に、不登校は決して親のせいではありません。そして、どの子どもにも必ず回復のタイミングが訪れます。親が適切に関わり、支えていくことで、そのタイミングを早めることができるのです。本稿が、少しでもその手助けになれば幸いです。

要点必要な行動
子どもの感情を理解する子どもが感じている不安やプレッシャーに寄り添い、「なぜ行かないのか」ではなく「今どんな気持ちか」を聞く。共感の言葉をかけ、安心できる環境を作る。
自然なコミュニケーションを増やす向き合う対話より、食事や散歩などを通じた「さりげない会話」を大切にする。子どもの興味に関心を持ち、一緒に過ごす時間を増やす。
親の不安を子どもに伝えない焦りやストレスを子どもに押しつけないようにし、親自身が心の余裕を持つ。生活リズムを整え、相談できる場を確保する。
今できることに目を向ける「学校に行かせる」ことにとらわれず、「今日は会話できた」「一緒に食事できた」といった小さな前進を喜び、積み重ねる。
子どもが前向きになる環境を作る無理に学校を勧めず、子どもが「安心できる場所」で自信を回復できるようサポートする。親子の信頼関係を最優先に考える。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

【不登校タイプ別診断】不登校の4つの原因と今日からできる対応策

【不登校タイプ別診断】不登校の4つの原因と今日からできる対応策-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
不登校は単なる怠けや甘えではなく、必ず何らかの要因が存在します。その要因を見極め、適切に対応することで、再び学校へ向かうきっかけを作ることができます。本稿では、不登校の子どもに見られるタイプごとに原因を整理し、それぞれに適した対応策を詳しく解説します。


目次


不登校のタイプとそれぞれの特徴

不登校の要因は子どもによって異なりますが、大きく以下の4つのタイプに分類できます。

  1. 環境適応が難しいタイプ
  2. 心のエネルギーが低下しているタイプ
  3. 家庭環境の影響を受けているタイプ
  4. 自由志向が強いタイプ
タイプ特徴必要な行動
環境適応が難しい学校の人間関係や学習の負担が原因で、登校がストレスになっている。具体的な負担を特定し、学習支援や人間関係の調整を行う。短時間の登校から始める。
心のエネルギーが低下精神的な疲労が蓄積し、学校に行く気力がなくなっている。無理に登校を促さず、生活リズムを整えながら回復を優先。学校とのつながりを維持する。
家庭環境の影響を受けている親との関係や家庭の雰囲気が不登校に影響している。親子の会話を増やし、見守るだけでなく適切な働きかけを行う。外出の習慣をつける。
自由志向が強い学校に行く必要性を感じず、家庭での生活に満足している。学校に行く意義を説明し、家庭のルールを工夫する。外での活動時間を増やす。

それぞれのタイプごとに、具体的な特徴と対応策を説明します。

1. 環境適応が難しいタイプ

このタイプの子どもは、学校という集団生活の場に適応しにくく、強いストレスを感じています。例えば、以下のような特徴が見られることが多いです。

  • 友人関係がうまくいかず、学校で孤立しがち
  • 授業についていくのが難しく、自己肯定感が低下している
  • 音や匂い、人の多さに敏感で、学校の環境に強い疲労を感じる

こうした子どもは、環境への適応に困難を抱え、その負担が蓄積することで登校が難しくなります。特に、学校内でのトラブルが明確な場合は、それが登校拒否の直接的な原因になっていることが多いです。

対応策

このタイプの子どもの場合、「なぜ学校に行けないのか」を明確にすることが最優先です。「学校が嫌」という言葉だけで終わらせず、子どもの心情に配慮しながら、何が負担になっているのかを具体的に言語化することが重要になります。

例えば、授業が理解できないことで苦しんでいる場合、学習サポートを行うことで負担を軽減できるかもしれません。一方で、人間関係が原因の場合は、学校と連携して席替えや関わる人を調整するだけでも状況が改善することがあります。

また、環境の変化に対する不安が強い子どもには、いきなり再登校を促すのではなく、少しずつ学校との接点を増やしていく方法が効果的です。保健室登校や、短時間の登校を取り入れることで、負担を軽減しながら学校生活に戻る準備ができます。

2. 心のエネルギーが低下しているタイプ

このタイプの子どもは、精神的な疲労が蓄積し、学校へ行く気力そのものがなくなっている状態です。以下のような特徴が見られます。

  • 朝起きるのが極端に難しい
  • 家でも無気力で、好きだったことにも興味を示さない
  • 「学校に行かなければ」とは思っているが、体が動かない

この場合、学校へ行かないこと自体が問題というよりも、まず「なぜ心のエネルギーが低下しているのか」を探ることが重要です。長期間のストレス、過去の挫折経験、プレッシャーによる精神的な疲労などが背景にあることが多く、焦って登校を促すことで逆効果になる場合もあります。

対応策

このタイプの子どもの場合、まずは心のエネルギーを回復させることが最優先です。ただし、単に「休ませる」だけでは、回復の目処が立たないこともあります。

重要なのは、子どもの心の状態を観察しながら、少しずつ「生活リズムを整える」「外の世界との接点を作る」といった段階を踏むことです。朝のリズムを整えるために、最初は家の中での簡単なルーティン(食事の時間を決める、軽い運動をするなど)から始めるのがよいでしょう。

また、無理のない範囲で「学校に行くことへの心理的なハードル」を下げることも重要です。例えば、担任の先生と定期的に連絡を取る、プリントや宿題を自宅で取り組むといった方法で、学校と完全に切り離された状態を作らないことが回復への近道になります。

3. 家庭環境の影響を受けているタイプ

このタイプの子どもは、家庭の状況や親との関係が不登校に影響しているケースです。決して親が悪いというわけではなく、家庭の雰囲気や親の関わり方が、子どもの学校生活に影響を与えることは珍しくありません。

  • 家庭での会話が少なく、気持ちを話せる環境がない
  • 兄弟姉妹との関係にストレスを感じている
  • 親が過度に心配し、学校に行かないことを受け入れすぎている
  • 家が快適すぎて、学校に行く必要性を感じなくなっている

このタイプの場合、不登校の直接的な原因が家庭にあるため、子ども本人の意思だけで解決することが難しい傾向があります。親の接し方を少し変えるだけで、状況が改善することもあります。

対応策

家庭環境が影響している場合、まずは「親子の関係性」を見直すことが重要です。親が良かれと思ってやっていることが、かえって子どもにとって負担になっていることもあります。

例えば、子どもが不登校になると、多くの親は「無理に学校へ行かせるのは逆効果」と考え、見守る姿勢をとります。しかし、ただ受け入れるだけでは、「このままでいいんだ」と思わせてしまい、結果的に長期化することがあります。不登校から抜け出すためには、見守るだけではなく、適切なタイミングで「学校に戻る方向へ導く」働きかけが必要です。

また、家庭内の会話が不足している場合は、まず「学校の話ではない会話」を増やしてみることが効果的です。いきなり「学校に行こう」と言われるとプレッシャーを感じますが、日常的な雑談が増えることで、子どもが心を開きやすくなります。信頼関係ができれば、登校に向けた話し合いもスムーズになります。

さらに、家の中が快適すぎることで不登校が長引いている場合は、少しずつ「外に出る習慣」を作ることも大切です。短時間でも外の空気に触れることで、生活リズムが整い、学校へ行くきっかけを作りやすくなります。

4. 自由志向が強いタイプ

このタイプの子どもは、学校に行く意味を見出せず、自分の好きなことに時間を使いたいという意識が強い傾向があります。いわゆる「学校に行く必要性を感じない」状態です。

  • 「学校に行かなくても困らない」と考えている
  • 家でゲームや動画視聴、創作活動などに没頭している
  • 規則や集団行動を窮屈に感じる

こうした子どもは、特定の強いストレスがあるわけではなく、「学校よりも家のほうが楽しい」と感じていることが多いです。しかし、このままでは社会的な経験が不足し、将来的に困難を感じる場面が増える可能性があります。

対応策

このタイプの子どもに対しては、「学校に行かなければダメ」という圧力をかけるのではなく、「学校に行くことの意味」を納得させることが重要です。

例えば、学校では勉強だけでなく、人との関わり方や集団の中での適応力を学ぶ場でもあります。将来的に好きなことを仕事にするにしても、最低限の学力や対人スキルは必要になります。そうした「学校に行くことで得られるもの」を、子どもの関心に合わせて伝えると、納得しやすくなります。

また、家庭でのルールを工夫することも効果的です。例えば、「昼間は動画やゲームを制限する」「外に出る時間を増やす」など、家の環境を少しずつ変えることで、「家にいるより学校に行くほうがいいかも」と思わせることができます。

まとめ

不登校の原因は子どもによって異なり、それぞれに合った対応が必要です。

  • 環境適応が難しい子どもには、ストレスの原因を特定し、負担を軽減する
  • 心のエネルギーが低下している子どもには、回復を優先しながら少しずつ学校との接点を作る
  • 家庭環境の影響がある場合は、親の関わり方を見直し、適切な働きかけをする
  • 自由志向が強い子どもには、学校へ行く意味を理解させ、生活習慣を整える

不登校は、適切な対応をすれば改善できるケースが多くあります。大切なのは、子どもの状況を冷静に見極め、段階的に学校へ戻るための環境を整えていくことです。焦らず、しかし現状を放置せず、一歩ずつ前に進めるように支援していきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

親ができる、子どもの学校ストレスへの対策5点

親ができる、子どもの学校ストレスへの対策5点-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの保護者の方々と向き合いながら、子どもたちの学校ストレスとその対策について考えてきました。

本稿では、学校という環境の特殊性とストレス、その危険性と親にできる5つの対策について紹介していきます。


目次


学校が強いる集団生活のメリット・デメリット

学校は、子どもたちが学力を身につける場であると同時に、社会性を育む場所でもあります。集団生活を通じて、子どもたちは人間関係を学び、協調性や責任感を養っていきます。しかし、その一方で、学校という環境がすべての子どもにとって適切とは限らず、集団生活のあり方が子どもにとって大きなストレスとなることもあります。

学校生活のメリット

  1. 社会性の発達
    学校は、家族以外の人と長時間過ごす最初の社会です。ここでは、友達と協力したり、意見を調整したりする経験を積むことができます。これにより、子どもは相手の気持ちを考える力や、トラブルを解決するスキルを身につけることが期待されます。
  2. ルールや規律を学ぶ
    学校には、時間割、校則、学級活動など、一定のルールが存在します。これらを守ることを通じて、子どもは社会に出たときに必要となる規律を身につけることができます。例えば、「時間を守る」「順番を待つ」「集団のルールを尊重する」といった基本的な社会的行動は、学校での経験を通じて学ぶことが多いです。
  3. 挑戦する機会が増える
    学校では、勉強以外にも運動会、合唱コンクール、修学旅行など、さまざまな活動があります。これらのイベントを通じて、子どもは努力することの大切さや、成功・失敗から学ぶ機会を得ることができます。特に、普段はあまり目立たない子でも、特定の活動で才能を発揮することがあります。
  4. 学習の機会
    もちろん、学校は学力を身につける場でもあります。授業を通じて、読み書き計算の基礎から、論理的思考や問題解決の能力まで、多くの知識を得ることができます。先生がいる環境で学ぶことで、自宅学習だけでは得られない指導を受けることができます。

学校生活のデメリット

  1. 集団のルールが個人に合わないことがある
    学校は、多くの子どもを一律に指導する場であるため、個々の特性に配慮しきれないことがあります。例えば、じっと座っているのが苦手な子や、静かな環境で集中したい子にとっては、学校のルールが過度なストレスになることがあります。また、体育や音楽のような特定の授業が苦手な子どもは、劣等感を抱きやすくなります。
  2. いじめや人間関係のストレス
    学校では、さまざまな性格や価値観を持つ子どもたちが共に生活します。その中で、いじめや仲間外れといった問題が発生することがあります。特に、クラスの固定された人間関係の中では、一度トラブルが起こると逃げ場がなくなり、ストレスが慢性的になることがあります。
  3. 学習のペースが合わないことによるストレス
    学校の授業は、平均的な進度に合わせて進められるため、理解が遅い子には難しく、逆に先に進みたい子には退屈に感じることがあります。どちらのケースでも、学校での学びが苦痛になり、勉強に対するモチベーションが低下する要因となります。
  4. 教師の対応の影響
    教師の指導方法が子どもに合わない場合、それが大きなストレスになることがあります。例えば、厳しい指導を受けることで萎縮してしまったり、逆に放任されることで不安を抱えたりすることもあります。また、教師の価値観が強く押し付けられる環境では、個性が尊重されにくくなります。
  5. 家庭と学校の価値観のギャップ
    家庭で育てられた価値観と、学校の方針が大きく異なる場合、子どもは戸惑いを感じることがあります。例えば、「家では自由に意見を言えるのに、学校では先生の言うことが絶対」という環境では、自己表現の仕方が分からなくなることがあります。

集団生活が合わない子どもの特徴

これらのメリット・デメリットを考えると、学校の集団生活がすべての子どもに適しているわけではないことが分かります。実際、集団生活が苦手な子どもにとっては、学校のルールや人間関係が大きな負担となり、不登校につながることもあります。

特に、以下のようなタイプの子どもは、学校生活のデメリットの影響を受けやすい傾向があります。

  • 繊細で感受性が強い子
  • 一人でいることを好む子
  • 競争や比較を苦手とする子
  • 自分のペースで学びたい子
  • ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

このような子どもにとって、学校の集団生活はストレスの原因となり、不登校や引きこもりにつながるリスクが高くなります。そのため、親としては、学校が子どもに与えている影響を慎重に観察し、子どもにとっての適切な環境を考える必要があります。


学校によるストレスの種類

学校は、子どもたちにとって学びや成長の場であると同時に、さまざまなストレスの要因を含む環境でもあります。すべての子どもが同じように学校を楽しめるわけではなく、学校での生活が大きな負担となるケースも少なくありません。本章では、学校において子どもが感じるストレスの種類について詳しく解説し、その影響について考えていきます。

1. 学業に関するストレス

① 授業の進度や内容の難易度の不一致
学校の授業は、多くの子どもにとって適度な難易度になるよう設計されていますが、すべての子どもにとって「ちょうどいい」わけではありません。授業の進度が速すぎて理解が追いつかない子どもは、学習に対する自信を失い、自己肯定感が低下していきます。一方で、授業が簡単すぎる子どもは退屈を感じ、学習意欲を失うことがあります。どちらのケースでも、学校が「学ぶ楽しさを感じる場」ではなく、「苦痛を感じる場」になってしまう可能性があります。

② テストや成績のプレッシャー
小学校高学年になると、成績が本格的に評価されるようになり、中学では定期テストの結果が内申点にも影響します。このように、学業に対するプレッシャーが年々増していくことで、子どもは「良い成績を取らなければならない」という重圧を感じるようになります。特に、完璧主義傾向が強い子や親の期待を強く感じる子は、テスト前に極度の不安を抱えたり、失敗を恐れて挑戦を避けるようになったりすることがあります。

2. 人間関係によるストレス

① いじめや対人トラブル
学校における最大のストレス要因の一つが、いじめや友人関係のトラブルです。いじめには、暴力や暴言といった目に見えるものだけでなく、無視や仲間外れといった陰湿なものもあります。こうした問題が発生すると、子どもは学校に行くこと自体が苦痛になり、不登校につながることがあります。

② 先生との相性
学校生活において、子どもが最も長く接する大人は担任の先生です。教師の態度や指導方法が、子どもの心理に大きな影響を与えることは言うまでもありません。厳しすぎる指導や理不尽な叱責、逆に放任されすぎることで不安を感じることもあります。また、先生が特定の生徒をひいきしているように見えると、子どもは不公平感を抱き、学校への不信感を強めることもあります。

3. 学校のルールや環境によるストレス

① 校則や規律の厳しさ
学校では、一定の秩序を維持するためにルールが設けられています。しかし、そのルールが厳しすぎたり、合理性に欠けたりする場合、子どもにとって強いストレスになります。たとえば、「前髪の長さが決められている」「靴下の色に指定がある」「休み時間の過ごし方が制限されている」といった校則に対し、納得できない子どももいます。「なぜ守らなければならないのか」が理解できないルールを押し付けられることで、学校に対する不信感や反発心が生じることがあります。

② 集団行動の負担
日本の学校では、「みんなで一緒に行動すること」が重視される傾向があります。たとえば、給食当番、清掃当番、班行動など、さまざまな場面で協調性が求められます。しかし、一人で静かに過ごすことを好む子や、自分のペースで動きたい子にとっては、これが大きなストレスになることがあります。「集団のペースに合わせなければならない」という圧力が、学校生活そのものを苦痛に感じさせる原因になり得ます。

4. 身体的ストレス

① 朝の早起きと生活リズムの強制
学校の始業時間は多くの場合8時台であり、これに間に合うためには早起きをしなければなりません。特に低学年のうちは、まだ生活リズムが安定していない子どもも多く、朝早く起きること自体がストレスになっていることがあります。さらに、部活動や宿題によって夜遅くまで活動を強いられると、慢性的な睡眠不足につながり、心身の不調を引き起こす原因にもなります。

② 長時間の座学と運動不足
学校では1日に5~6時間、座って授業を受けることが求められます。しかし、じっと座っていることが苦手な子どもにとっては、これが大きな負担になります。また、最近は休み時間に自由に遊べる時間が減っている学校もあり、身体を動かす機会が少なくなることでストレスが蓄積することもあります。

5. 家庭とのギャップによるストレス

学校と家庭の考え方や価値観が異なると、子どもは「どちらに合わせればいいのか」と悩むことがあります。例えば、家では「自分の好きなことを大切にしていい」と言われていても、学校では「みんなと同じように行動しなさい」と求められることがあります。こうしたギャップが大きくなると、子どもはアイデンティティの揺らぎを感じることがあり、精神的な負担となることがあります。

このように学校にはさまざまなストレスの要因が存在します。もちろん、すべての子どもがこれらのストレスを感じるわけではありませんが、特定の要因が強く影響すると不登校のきっかけとなることがあります。


学校ストレスを強く感じてしまう子どもの特徴

学校生活は多くの子どもにとって、学びや成長の場となる一方で、強いストレスを感じる場にもなり得ます。しかし、すべての子どもが同じようにストレスを感じるわけではありません。特に学校の環境や人間関係が負担になりやすいタイプの子どもは、不登校のリスクが高くなることがあります。本章では、学校ストレスを強く感じやすい子どもの特徴を詳しく解説し、それぞれの子どもがどのような状況で困難を抱えやすいのかを考えていきます。

1. 繊細で感受性が強い子

① 小さなことでも深く考え込んでしまう
繊細な子どもは、周囲の状況や他人の言葉に対する感受性が高いため、些細な出来事でも心に大きな影響を受けます。たとえば、先生のちょっとした注意や、友達の何気ない一言でも、「自分は嫌われているのではないか」「もう学校に行きたくない」と感じてしまうことがあります。

② 周囲の期待に敏感
「親や先生の期待に応えなければ」と強く感じる子どもほど、学校でのプレッシャーを抱え込みやすくなります。完璧主義の傾向がある場合、「うまくやらなければならない」という気持ちが強まり、失敗を過度に恐れるようになります。その結果、学校生活がストレスの源になり、不安が高まることがあります。

2. 一人でいることを好む子

① 集団行動が負担になる
学校では、授業や給食、清掃活動など、多くの時間を集団で過ごすことが求められます。しかし、一人でいることを好む子どもにとっては、これが大きな負担になります。特に、常にグループで行動しなければならない環境では、自分のペースを保つことが難しくなり、ストレスを感じやすくなります。

② 友達付き合いが苦手
学校生活では、友達関係の維持が重要視される場面が多くあります。しかし、人と話すことが苦手だったり、特定の友人がいなかったりする子どもは、「友達を作らなければならない」というプレッシャーを感じやすくなります。その結果、無理に人付き合いをしようとして疲れたり、孤独感を深めたりすることがあります。

3. 競争や比較を苦手とする子

① テストや成績のプレッシャーに弱い
学校では、定期的にテストが行われ、成績によって評価が決まります。競争心が強い子どもにとっては、これはモチベーションになることもありますが、競争や比較を苦手とする子どもにとっては、強いストレス要因になります。特に、努力しても成績が伸びにくいと感じると、「どうせやっても無駄だ」と考えてしまい、意欲を失うことがあります。

② 体育や発表など、人前に出ることへの抵抗感
学校では、体育の授業や学芸会、発表の場面など、多くの人の前で何かをする機会が頻繁にあります。こうした場面で「失敗したらどうしよう」と不安を感じる子どもは、学校に行くこと自体が怖くなり、不登校の引き金になることがあります。

4. 自分のペースで学びたい子

① 授業の進め方が合わない
学校の授業は、多くの子どもが理解できるペースで進められますが、それがすべての子どもに合っているわけではありません。学ぶスピードが速い子にとっては「退屈」、遅い子にとっては「ついていけない」と感じることがあり、それがストレスの原因になります。

② 興味のあることに集中したい
自分の興味のあることに没頭したい子どもにとっては、学校の授業が「やりたくないことをやらされる時間」と感じられることがあります。その結果、学校生活への意欲が低下し、不登校につながることがあります。

5. ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

① 学校の規則に納得できない
学校のルールに対して、「なぜ守らなければならないのか?」と疑問を抱く子どももいます。特に、自分の考えをしっかり持っている子は、納得できない規則に従うことをストレスに感じることがあります。たとえば、「髪型の自由がない」「服装の細かい決まりがある」といった校則が、自分の価値観と合わないと感じることで、学校への不満が蓄積していくことがあります。

② 自由に考えることが制限されることへの違和感
自分の意見を持ち、独自の考えを大切にしたい子どもにとって、学校の「先生の指示に従うことが基本」というルールは窮屈に感じられることがあります。その結果、「自分の考えを抑えなければならない環境」に強いストレスを感じ、学校生活が苦痛になることがあります。

以上のように、学校ストレスを強く感じる子どもには、それぞれ異なる特性があります。しかし、共通しているのは、「その子にとって学校が合わない要因がある」ということです。学校に適応しにくい子どもを「弱い」とか「甘えている」と考えるのではなく、「どの部分で負担を感じているのか?」を理解することが大切です。


親ができる対策①「情報を得る」

学校のストレスが子どもに大きな影響を与えていると感じたとき、親として何ができるでしょうか。不登校や学校ストレスへの対応でまず重要なのは、「正しい情報を得る」ことです。

親が学校の仕組みや不登校の現状を知らないまま、感情的に対応してしまうと、かえって子どもの負担を増やしてしまうことがあります。そこで、本章では、親が知っておくべき情報と、その活用方法について詳しく説明していきます。

1. 不登校に関する正しい知識を持つ

不登校についての理解がないまま、「学校に行かないと将来困る」「今のうちに立ち直らせないとダメになる」と考えてしまうと、親自身が焦り、不適切な対応を取ってしまうことがあります。しかし、近年の研究やデータから、不登校の子どもすべてが将来困るわけではないことが分かっています。

① 不登校の子どもの数は増えている
文部科学省の調査によると、不登校の小中学生の数は年々増加し、35万人を超えています。特にコロナ禍以降、その傾向は加速しており、学校の環境が合わない子どもが増えていることが分かります。このような状況の中で、不登校は決して珍しいことではなく、特定の家庭や子どもに限った問題ではないことを理解することが重要です。

② 不登校の原因は多様
「学校に行きたくない」という気持ちの背景には、さまざまな要因が関係しています。いじめや学業のプレッシャー、人間関係のストレスなど、子どもによって理由は異なります。そのため、「なぜ学校に行けないのか」を単純に判断せず、多角的に考えることが大切です。

③ 「不登校=逃げ」ではない
「学校に行かないことは逃げだ」と考える親は少なくありません。しかし、子ども自身が「学校に行きたいのに行けない」状態であることが多く、その背景には強いストレスや心理的な負担が隠れています。大切なのは、「どうすれば子どもが安心して学校に行けるようになるのか」を考えることであり、単に「無理やり行かせること」ではないのです。

2. 学校の制度や支援について知る

不登校や学校ストレスの問題を考える際には、学校がどのような対応を取れるのかを知ることも重要です。

① 学校は不登校の子どもへの対応を求められている
文部科学省は、不登校の子どもに対して適切な支援を行うよう、各学校に指示を出しています。学校側が「不登校は家庭の責任」と考える時代は終わりつつあり、適切な支援策を講じることが求められています。そのため、学校と建設的に話し合いながら、子どもにとって最善の方法を探ることが可能です。

② 学校外のサポート機関を活用する
不登校支援を行う機関やサービスは増えています。たとえば、ToCo(トーコ)株式会社では、子どもがスムーズに再登校できるようサポートを提供しています。こうした専門的な支援を受けることで、親だけで抱え込むのではなく、適切な対応を取ることができます。

3. 情報を得た上で、親ができること

① 子どもの状態を把握する
情報を集めたら、まずは自分の子どもがどのような状況にあるのかを客観的に分析することが重要です。学校でのストレスの原因は何か、どのようなことに悩んでいるのかを理解することで、適切な対応が見えてきます。

② 学校との連携を考える
情報をもとに、学校とどのように話し合うかを考えます。いきなり「学校を休ませます」と伝えるのではなく、「どのような対応が可能か」を相談することで、子どもにとって最適な環境を整えることができます。

③ 再登校に向けた準備をする
不登校が長引くと、再登校へのハードルが高くなります。そのため、子どもが学校に戻る際に負担を感じにくい方法を考え、必要であれば専門的な支援を活用することも検討します。ToCoでは、再登校をスムーズに進めるためのプログラムを提供しており、親だけでは難しい対応もサポートしています。

「情報を得ること」は、不登校対応の第一歩です。感情的にならず、正しい知識をもとに冷静に対応することで、子どもにとって最適な方法を見つけることができます。

親ができる対策②「相談相手になる」

不登校や学校ストレスに直面した子どもにとって、親の存在は非常に大きな意味を持ちます。特に、子どもが自分の気持ちを打ち明けられる「相談相手」になれるかどうかは、その後の対応に大きな影響を与えます。

多くの親御さんが、「うちの子は何も話してくれない」「何を考えているのか分からない」と悩まれます。しかし、それは子どもが何も考えていないのではなく、「どう話せばいいのか分からない」「話しても理解してもらえないのではないか」と思っている場合が多いのです。本章では、親が相談相手として信頼されるためにできることを具体的に解説していきます。

1. 子どもが相談しにくい理由を知る

子どもが学校での悩みを親に話せない理由はいくつかあります。

①「心配をかけたくない」と思っている
子どもは、親に心配をかけたくないという気持ちを強く持っています。特に、普段から「頑張りなさい」「学校は行くものだ」と言われている場合、「学校がつらい」と話すことで親をがっかりさせてしまうのではないかと不安になります。そのため、親の前では何もなかったように振る舞うことがあります。

②「否定されるのではないか」と不安を抱えている
「甘えているだけじゃないの?」「みんな頑張っているんだから」など、子どもの気持ちを否定するような言葉をかけられた経験があると、それ以降、話しにくくなってしまいます。特に、子ども自身が「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいる場合、親からの否定的な言葉はさらに追い詰めることになります。

③「どう話せばいいか分からない」と感じている
子ども自身も、自分の気持ちを整理できていないことがあります。「なぜ学校に行きたくないのか分からない」「言葉にすると余計につらくなる」と思っている場合、あえて話さない選択をすることがあります。

これらの背景を理解したうえで、親が「安心して話せる環境」を作ることが重要です。

2. 相談しやすい雰囲気を作るために

子どもが自然に相談できる環境を整えるには、次のポイントを意識することが大切です。

① すぐに解決しようとしない
親としては、子どもの悩みを聞いたら「どうすれば解決できるか」を考えてしまいがちです。しかし、子どもが求めているのは「アドバイス」ではなく、「ただ話を聞いてもらうこと」である場合が多いです。特に、初めて悩みを打ち明けるときには、親が「どうすればいいか」よりも「そうだったんだね」「大変だったね」と共感する姿勢を示すことが大切です。

② 子どものペースに合わせる
無理に「話しなさい」と迫ると、かえって口を閉ざしてしまうことがあります。子どもが話したいときに話せるよう、自然な雰囲気を作ることが大切です。例えば、「今日はどうだった?」と軽く聞くだけにしたり、食事中や散歩中などリラックスできる環境で会話をするのも効果的です。

③ 親自身の気持ちを伝える
「あなたのことを心配しているよ」「何があっても味方だからね」と伝えることで、子どもは安心感を持つことができます。ただし、「学校に行かないと将来大変になるよ」「早く行ってほしいと思っているよ」といったプレッシャーを感じさせる言葉は逆効果になるため注意が必要です。

3. 相談しやすい親になるためにできること

① 普段から子どもの話に耳を傾ける
学校のことに限らず、普段から子どもの話をしっかり聞く姿勢を持つことが大切です。「学校どうだった?」と聞いても「別に」としか返ってこない場合でも、子どもが好きなこと(ゲームや趣味など)についての話を聞くことで、会話のきっかけを作ることができます。

② 否定せずに受け止める
「それはおかしいよ」「そんなことで悩んでいるの?」といった否定的な言葉は、子どもの気持ちを閉ざしてしまいます。子どもの話がどんな内容であっても、まずは「そうなんだね」と受け止めることを意識しましょう。

③ 親も相談する姿を見せる
子どもは、「相談することは恥ずかしいこと」「弱い人がすること」と思っている場合があります。親自身が「今日はこんなことがあってちょっと落ち込んじゃったんだ」「お母さんもこういうことで悩むことがあるよ」と話すことで、相談することは自然なことだと伝えることができます。

「相談相手になる」ということは、すぐに解決策を提示することではなく、「子どもが安心して話せる存在になる」ということです。子どもが悩みを打ち明けやすい環境を作ることで、少しずつ前向きな変化が生まれます。

親ができる対策③「初動を大切にする」

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親がどのように対応するかによって、その後の展開が大きく変わります。最初の対応次第で、不登校が長期化するか、それとも適切なサポートを受けながら再登校につなげられるかが決まることもあります。

この章では、親が初めにどのように対応すべきか、また避けるべき対応について詳しく解説していきます。

1. 最初の対応が不登校の長期化を左右する

「学校に行きたくない」と子どもが言い出したとき、親は戸惑いや不安を感じるものです。しかし、最初の対応を間違えると、子どもはさらに追い詰められ、不登校が長期化する可能性が高まります。

① 感情的にならないことが最も重要
親としては、「どうして急に?」「甘えているだけでは?」と焦りを感じるかもしれません。しかし、そこで感情的になってしまうと、子どもは「話しても分かってもらえない」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

② すぐに「学校に行きなさい」と言わない
「行きたくない」と言った子どもに対して、すぐに「そんなこと言わずに行きなさい」と返してしまうと、「親には分かってもらえない」と思い込み、以降本当の気持ちを話さなくなってしまいます。また、学校のストレスが強い状態で無理に登校させると、かえって状況が悪化することもあります。

③ まずは話を聞く姿勢を持つ
最初にやるべきことは、「なぜ学校に行きたくないのか」を聞くことです。ただし、無理に理由を聞き出そうとすると、かえって子どもは話したがらなくなるため、落ち着いた雰囲気で「何かあったの?」と優しく問いかけることが大切です。

2. 子どもの気持ちを尊重する姿勢を持つ

不登校の子どもは、「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいることが多いです。親が「どうして行けないの?」「みんな頑張っているのに」と責めるような言葉をかけると、子どもの自己肯定感はさらに低下し、学校への恐怖心が強まってしまいます。

① 「学校に行けないのは弱いことではない」と伝える
「今は少し休んでもいいんだよ」と安心させる言葉をかけることで、子どもは落ち着きを取り戻します。不登校の原因を探る前に、まずは「大丈夫だよ」と受け止めることが重要です。

② 「休むこと=悪いこと」ではないことを理解する
「1日休んだからといって、大きな問題になるわけではない」ということを親が理解し、それを子どもにも伝えることが大切です。無理に登校を促すよりも、「今日はゆっくり考えよう」と話すことで、子どもは安心します。

3. 避けるべき対応

初動対応で避けるべき対応について、具体的に説明します。

①「甘え」「怠け」と決めつける
「ただの甘えでしょ?」「みんなも同じように頑張っているよ」といった言葉は、子どもを追い詰める原因になります。子どもにとっては、学校のストレスは親が想像する以上に大きなものです。決して「怠け」ではなく、「行きたくても行けない」状態であることを理解しましょう。

②「昔はこうだった」と比較する
「お母さんの時代は、こんなことで休まなかった」など、過去の話を持ち出すのは逆効果です。子どもは「自分が弱いせいだ」と思い込み、さらにプレッシャーを感じてしまいます。

③ 無理に理由を聞き出そうとする
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、すぐに「どうして?」と詰問すると、かえって話しにくくなります。「話せる範囲でいいよ」と伝え、焦らず待つことが大切です。

4. 初動の対応が落ち着いた後の進め方

最初の対応で子どもが安心したら、次のステップとして、学校への対応や今後の方針を考えます。

① 学校との連絡をどうするか決める
欠席する場合は、学校に連絡が必要になります。子どもが「親に言ってほしい」と望む場合は、親が学校と連絡を取るようにしましょう。「今日は体調が悪いのでお休みします」と伝えるだけでも大丈夫です。

② 無理のない範囲で子どもと話し合う
ある程度落ち着いたら、「これからどうしていくか」を子どもと話し合います。ただし、「いつまでに復帰するか」を決める必要はありません。まずは、「今どう感じているか」を聞くことが大切です。

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親の対応次第でその後の展開が大きく変わります。感情的にならず、まずは子どもの気持ちを尊重しながら話を聞くことが大切です。最初の対応を間違えなければ、子どもは「話してもいいんだ」と安心し、解決への道筋が見えてきます。

親ができる対策④「学校との適切な交渉」

不登校や学校ストレスに直面したとき、親がどのように学校と関わるかは、子どもの状況を改善するうえで重要なポイントになります。しかし、学校と適切に交渉することは、決して簡単ではありません。「先生にどう伝えればいいのか分からない」「相談しても真剣に取り合ってもらえない」と感じる保護者も少なくありません。

本章では、学校と適切に交渉し、子どもにとってより良い環境を整えるための具体的な方法について解説します。

1. 学校と話し合う目的を明確にする

学校との交渉において最も大切なのは、「何を目的とするか」を明確にすることです。漠然と「子どもが学校に行きたがらない」と伝えるのではなく、「どうすれば子どもが安心して通えるようになるか」を話し合う姿勢が求められます。

①「学校に復帰させること」が目的ではない
学校との話し合いの場では、「すぐに登校を再開させる」ことを目標にしないことが大切です。学校側も、「とにかく学校に戻すこと」が目的になってしまうと、子どもにとって逆効果になる可能性があります。大切なのは、「学校への不安を減らし、少しずつ適応できる環境を整えること」です。

② 具体的な課題を整理する
学校と交渉する前に、親として「子どもが何に困っているのか」「どのようなサポートが必要なのか」を整理しておくことが重要です。たとえば、

  • 授業の進度についていけない
  • 特定のクラスメートとの関係が負担になっている
  • 先生の対応が厳しく、萎縮してしまう
  • 朝の登校が特にストレスになっている

など、具体的に課題を把握することで、学校に対して適切な対応を求めやすくなります。

2. 学校との話し合いの進め方

学校と適切に話し合うためには、いくつかのポイントがあります。

①「敵対的な態度」は避ける
「学校が悪い」「先生の対応が間違っている」といった敵対的な姿勢で話を始めると、学校側も防御的になり、建設的な話し合いが難しくなります。あくまで「協力して子どものためにできることを考える」というスタンスで臨むことが大切です。

② 担任だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも話す
担任の先生だけに相談しても、状況が改善しない場合があります。そのような場合は、スクールカウンセラー、学年主任、教頭や校長といった他のスタッフとも話し合うことを検討しましょう。特にスクールカウンセラーは、不登校の子どもへの支援経験があることが多く、親身になって相談に乗ってくれるケースが多いです。

③ 学校側が対応可能な範囲を理解する
学校には学校の事情があり、すべての要求を受け入れることは難しい場合があります。そのため、あらかじめ「どこまで対応が可能なのか」を確認しつつ、無理のない範囲で調整することが大切です。

3. 学校に伝えるべき具体的な要望

学校との話し合いでは、以下のような要望を伝えることが考えられます。

① 登校のハードルを下げる
「いきなりフルタイムで登校するのは難しい」という場合、

  • 午前中だけ登校する
  • 保健室登校を認めてもらう
  • 放課後に先生と個別に面談する

といった段階的な対応を提案するのも一つの方法です。

② 学習のサポートを求める
学校を休んでいる間、学習の遅れを取り戻すために、

  • 宿題の量を調整してもらう
  • プリントや授業内容を共有してもらう
  • 家庭学習の方法についてアドバイスをもらう

といった支援を求めることができます。

③ 人間関係に関する配慮
もしクラス内の人間関係がストレスの原因になっている場合、

  • クラス替えを検討してもらう
  • 座席の配置を調整してもらう
  • グループワークの組み合わせに配慮してもらう

といった対応を相談することが可能です。

4. 学校に期待しすぎないことも大切

学校と話し合いを重ねても、必ずしも希望通りの対応をしてもらえるとは限りません。学校の体制や先生の考え方によっては、「これ以上の対応は難しい」と言われることもあります。その場合、学校だけに頼るのではなく、他の選択肢を検討することも必要です。

① 再登校支援の専門機関を活用する
ToCo(トーコ)株式会社では、学校と家庭の間に立ち、子どもの再登校をサポートするプログラムを提供しています。学校が十分な対応をしてくれない場合でも、専門的な支援を受けることで、親子の負担を軽減しながら再登校を目指すことができます。

② 学校以外の学びの場を考える
一時的に学校を休んでいる間も、学びの機会を失わないよう、オンライン学習や家庭学習を活用することができます。「勉強が遅れるのが不安」という子どもに対して、「自分のペースで学習できる場」を用意することで、安心感を持たせることができます。

学校との適切な交渉は、子どもが安心して学校に戻るための重要なステップです。感情的にならず、具体的な課題を整理し、協力的な姿勢で話し合うことが大切です。学校側が十分な対応をしてくれない場合は、専門機関のサポートを活用することで、より適切な支援を受けることが可能です。

親ができる対策⑤「家庭を安全地帯にする」

学校がストレスの原因となっている子どもにとって、家庭がどのような環境であるかは非常に重要です。不登校や学校ストレスを抱える子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であるかどうかが、その後の回復や再登校に大きく影響します。逆に、家庭がプレッシャーの場になってしまうと、子どもはますます心を閉ざしてしまうことになります。

1. 家庭が「安全地帯」であることの重要性

不登校の子どもにとって、学校はストレスの源となっています。そのため、学校以外に安心して過ごせる場所が必要になります。それが家庭です。

① 「逃げ場」があることで安心できる
学校で強いストレスを感じているとき、家庭まで居心地の悪い場所になってしまうと、子どもは心を休めることができません。「学校では頑張らなきゃいけない、家でも怒られる」となると、ますます追い詰められます。しかし、「家では安心していられる」と思えるだけで、心の負担が軽減されることがあります。

② 自己肯定感を回復する場になる
学校での人間関係や学業のプレッシャーによって、自己肯定感が低下している子どもは多いです。家庭で「ありのままの自分を受け入れてもらえる」と感じることで、自己肯定感を回復し、次の一歩を踏み出すエネルギーを蓄えることができます。

③ 安心できる環境が再登校の第一歩になる
不登校の子どもが再登校するためには、まず「外の世界は怖くない」と感じることが大切です。そのためには、家庭の中でまず安心感を得ることが必要になります。家庭がプレッシャーの場ではなく、リラックスできる場であることが、学校復帰への第一歩になります。

2. 子どもが安心できる家庭環境を作るために

では、具体的にどのように家庭を「安全地帯」にすればよいのでしょうか?

① 「学校に行かないこと」を責めない
子どもが学校に行けない状態のときに、「どうして行かないの?」「いつになったら行くの?」と責めることは逆効果です。不登校の子どもは、「行かなきゃいけない」と頭では分かっていても、心と体が動かない状態になっています。そこにプレッシャーをかけると、ますます状況が悪化してしまいます。

② ルールを押し付けすぎない
「何時に起きなさい」「勉強しなさい」など、過度なルールを設けることも、子どもにとってはストレスになります。もちろん、生活リズムを整えることは大切ですが、最初から厳しく管理しすぎると、家庭でも居心地が悪くなってしまいます。まずは、子どもがリラックスできる環境を優先し、少しずつ生活リズムを整えていくことが大切です。

③ 子どもの好きなことを尊重する
不登校の子どもは、自己肯定感が低くなっていることが多いため、「好きなこと」や「得意なこと」に集中できる時間を作ることが重要です。たとえば、ゲームや読書、絵を描くことなど、何かに没頭できる時間があることで、少しずつ「自分にはできることがある」と感じることができます。

④ 会話の機会を増やす
子どもが安心して話せる環境を作るために、親子の会話を増やすことも大切です。ただし、「学校の話をしなさい」と無理に話題を限定するのではなく、日常的なことや子どもの興味のあることについて話すことで、自然とコミュニケーションを取ることができます。

3. 親自身の心のケアも重要

親が「家庭を安全地帯にしよう」と思っていても、親自身が疲れてしまっていては、子どもにとって安心できる環境を作ることは難しくなります。そのため、親自身の心のケアも重要です。

① 一人で抱え込まない
不登校の問題は、親だけで解決しようとすると大きな負担になります。学校や専門機関に相談しながら、親自身の気持ちを整理することも大切です。

② 完璧を求めすぎない
「ちゃんとサポートしなければ」と思いすぎると、親自身がプレッシャーを感じてしまいます。親も「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

③ 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門家に相談したりすることで、親自身の不安を軽減することができます。たとえば、ToCo(トーコ)では、親のサポートも含めた支援を行っており、不登校の子どもを持つ親がどのように対応すればよいかを具体的にアドバイスしています。

不登校の子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であることは非常に重要です。家庭が安全地帯であれば、子どもは少しずつ自己肯定感を取り戻し、再登校に向けた準備を進めることができます。

親が無理をしすぎず、子どもの気持ちを尊重しながらサポートすることで、子どもは安心感を得て、自分のペースで前に進むことができます。


まとめ

ここまで、学校ストレスに対する親の対応として、具体的な5つの対策を詳しく解説してきました。最後に、それぞれのポイントを振り返りながら、改めて「親ができること」について整理していきます。

学校ストレスの正体を知ることが大切

学校は、子どもにとって学びの場であると同時に、大きなストレスの要因にもなり得ます。学校によるストレスには、学業のプレッシャー、人間関係のトラブル、学校のルールへの適応、身体的な負担など、さまざまなものがあります。特に、繊細で感受性が強い子、一人でいることを好む子、競争や比較を苦手とする子にとって、学校の環境は大きな負担になりやすいことが分かっています。

このような子どもの特性を理解し、**「なぜ学校がつらいのか?」**を冷静に分析することが、適切な対応の第一歩になります。

親ができる5つの対策のポイント

情報を得る
不登校や学校ストレスについて、正しい知識を持つことが大切です。「不登校=悪いこと」「学校に行かないと将来困る」といった思い込みを捨て、冷静に現状を把握しましょう。学校の制度や支援機関の活用方法についても知識を得ることで、より適切な対応が可能になります。

相談相手になる
子どもが悩みを抱えているとき、親が最も信頼できる相談相手になることが重要です。子どもが安心して話せる環境を作り、無理に解決策を押し付けるのではなく、「話を聞くこと」に徹することが大切です。

初動を大切にする
「学校に行きたくない」と子どもが言い出したときの対応が、その後の展開を左右します。焦らず、感情的にならず、「まずは話を聞く」ことを最優先にしましょう。「とりあえず今日は休もう」と伝え、安心感を与えることが大切です。

学校との適切な交渉
学校と話し合う際には、感情的にならず、「子どもが安心して学校に戻れる環境を整えるために、どのような対応が可能か」を具体的に相談することが重要です。担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも連携し、無理のない形で調整を進めていきましょう。

家庭を安全地帯にする
学校がストレスの原因になっている場合、家庭が「安心できる場所」であることが重要です。「学校に行けないこと」を責めず、子どもの好きなことを尊重しながら、少しずつ自己肯定感を回復させていくことが大切です。

再登校のために親が意識すべきこと

不登校が長引くと、子ども自身が「学校に戻るのが怖い」と感じるようになり、再登校のハードルが高くなってしまいます。そのため、早い段階から「どうすればスムーズに学校に戻れるか」を考えておくことが重要です。

学校との連携を続ける
学校と連携しながら、子どもが少しずつ学校に戻るための環境を整えていくことも大切です。いきなり通常登校を目指すのではなく、保健室登校や短時間登校など、段階的に慣らしていく方法を検討しましょう。

子どものペースを尊重する
「いつまでに学校に戻るか」を決めるのではなく、「子どもが安心して学校に行けるようになること」を目標にしましょう。無理に急がせるのではなく、子ども自身が「行ってみようかな」と思えるタイミングを見極めることが重要です。

親自身も無理をしないことが大切

不登校の問題に向き合うことは、親にとっても大きな負担になります。「なんとかしなければ」と焦るあまり、親自身がストレスを抱えてしまうことも少なくありません。しかし、親が疲れ切ってしまっては、子どもにとってもよい影響を与えません。

① 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門機関に相談したりすることで、親自身の気持ちを整理することができます。一人で抱え込まず、サポートを受けながら対応していきましょう。

②「完璧な対応」を求めない
親としては、「正しい対応をしなければ」と思いがちですが、完璧な対応をすることは誰にもできません。「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

学校ストレスや不登校の問題は、一朝一夕で解決できるものではありません。しかし、親が適切な対応を取ることで、子どもは少しずつ前向きな気持ちを取り戻し、再び学校に向かう力を蓄えていくことができます。

焦らず、子どもの気持ちを尊重しながら、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。そして、必要に応じて専門的な支援を活用することで、親子の負担を軽減しながら、より良い方向へ進むことができます。

学校ストレスに悩む子どもたちが、自分のペースで安心して歩んでいけるように、親としてできることを考えながら、温かくサポートしていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策

不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防および再登校支援事業を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの不登校の子どもと向き合い、その原因や解決策を探ってきました。

不登校が長引く要因の一つとして「勉強の遅れ」が挙げられます。勉強の遅れは、単に学力の問題ではなく、子どもの心理状態や自己評価にも大きな影響を及ぼし、再登校を阻む大きな壁となるのです。本稿では、「なぜ勉強が不登校を長引かせるのか」「その結果、どのような悪循環が生まれるのか」「それを解決するためにはどのような方法があるのか」について詳しく論じていきます。

まずは、不登校が続く要因としての「勉強」に焦点を当て、その影響について詳しく見ていきましょう。


目次


勉強が不登校の続いてしまう要因となる理由

不登校の子どもにとって、「勉強」は単なる学習課題ではなく、大きな心理的負担となることが少なくありません。学校に行かないことで授業についていけなくなると、その遅れが焦りや劣等感を生み、さらなる不安や自己否定感につながるのです。では、具体的にどのようなメカニズムで「勉強」が不登校を長引かせるのかを見ていきます。

1. 学習の遅れによる自己肯定の低下

不登校が続くと、当然ながら学校の授業は進みます。特に、小学校高学年から中学生にかけては、学習内容がより抽象的になり、前提となる基礎知識がないと理解が難しくなる単元が増えていきます。例えば、小学校で分数や割合に苦手意識がある子は、中学数学の方程式を理解することが困難になります。同じように、国語の読解力が不足していると、社会や理科の教科書の内容すら難しく感じるようになります。

この「ついていけない」という感覚が積み重なることで、子どもは次第に「自分は勉強ができない」「学校に戻っても授業についていけない」と考えるようになります。そして、「どうせ頑張っても追いつけない」「もう手遅れだ」といった思考に陥り、学習意欲そのものを失ってしまうのです。

2. 周囲との差を意識することによる劣等感の増幅

子どもたちは、想像以上に「周囲との比較」を意識しています。不登校の期間が長くなるほど、学校にいる同級生と自分との差が開いていることを痛感する機会が増えていきます。

例えば、学校にいる友達が「今日の授業、難しかったけど何とか理解できたよ」と話しているのを聞いたとき、不登校の子どもは「そもそも何の授業をしているのかもわからない」と強く意識してしまいます。また、久しぶりに登校した際に、先生が「この問題、簡単だよね」と発言しただけでも、「自分にとっては簡単ではない」と感じ、ますます自信を失うことになります。

こうした経験が重なることで、「自分は他の子より劣っている」という意識が強まり、それが再登校の妨げになるのです。

3. 「勉強しなければならないのに、できない」というジレンマ

不登校の子どもたちは、多くの場合、「勉強しなければいけない」という意識を持っています。親や教師からの言葉だけでなく、社会全体の価値観として「勉強は大切」「勉強しないと将来が不安」という認識があるからです。しかし、不登校の状態が続くと、「やらなければいけないのに、やれない」「やる気が起きない」というジレンマに苦しむことになります。

このジレンマがストレスとなり、勉強に対する苦手意識をさらに強めてしまうことがあります。親が「勉強しなさい」と強く促したり、「このままでは将来が大変だ」と不安を煽るような言葉をかけたりすると、子どもはより強いプレッシャーを感じるようになります。その結果、勉強をすることそのものがストレスになり、「学校に戻ること=嫌なこと」と認識してしまうのです。

4. テストや成績による不安

不登校の子どもたちにとって、定期テストや成績評価は非常に大きなプレッシャーになります。仮に学校に戻りたいという気持ちがあっても、「テストで悪い点を取ったらどうしよう」「赤点を取ったら親に怒られるかもしれない」といった不安が頭をよぎることが多いのです。

特に、中学に入ると高校受験が意識されるようになり、学校の成績が重要視されます。「不登校の期間が長かったから、受験に不利になるのではないか」という不安を抱えることで、学校に戻ること自体を諦めてしまうケースもあります。

このように、学習の遅れが単なる知識の不足ではなく、心理的な負担として積み重なり、不登校を長引かせる原因になっているのです。


以上のように、「勉強ができない」「勉強の遅れが取り戻せない」「周囲との差が大きくなりすぎた」という意識が、不登校の継続につながっています。こうした状況に対処するためには、単に学習の機会を与えるだけではなく、子どもの心理的負担を軽減しながら、段階的に学習習慣を取り戻すことが重要です。

不登校が長引くほど、勉強による再登校のハードルは高まる

不登校の期間が長くなるほど、勉強が再登校の大きな障壁となってしまいます。それは単に「勉強が遅れるから」という理由だけではありません。時間の経過とともに、学習の遅れが子どもの自己評価や人間関係に影響を与え、結果的に学校に戻ることをより困難にしてしまうのです。ここでは、不登校の長期化が勉強面に与える影響と、それがどのように再登校の妨げになるのかを詳しく見ていきます。

1. 学習の遅れが加速度的に広がる

不登校の初期段階では、子ども自身も「少し休んでから戻るつもりだった」「数日分の授業なら何とかなる」と思っていることが多いです。しかし、1週間、1か月と時間が経つにつれて、授業の進度との差が広がり、取り戻すべき内容が膨大になっていきます。

特に、中学校に入ると、授業のスピードは小学校よりも速くなり、科目ごとに専門性が増します。例えば、数学では一次関数や方程式といった内容が基礎となり、それが理解できないと後の単元も理解しにくくなります。同じように、英語では文法や単語の積み重ねが重要になるため、一度遅れるとキャッチアップするのが非常に難しくなります。

また、学校のカリキュラムは、過去の学習内容を前提に進むため、一度でも「わからない」状態になると、その先の内容も理解しづらくなるという負のスパイラルに陥ります。このように、学習の遅れは単なる「取り戻すべき量」の問題ではなく、「理解するための基盤」が崩れてしまうという問題を引き起こすのです。

2. 「今さら戻ってもついていけない」という心理的ハードル

不登校が数か月以上続いた場合、子どもが抱える心理的なハードルはさらに高まります。単純な学習の遅れに加え、「戻ったときに授業についていけるのか」「周りの友達にどう思われるか」といった不安が膨らんでいくのです。

例えば、国語の授業で「この前の文章、みんな覚えてるよね?」と先生が発言したとき、不登校の子どもは「何の話をしているのかわからない」と感じます。それが一度や二度ではなく、授業のたびに続くことで、「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、次第に学校へ戻る意欲を失ってしまうのです。

また、定期テストや小テストがあると、「どうせ点が取れないから行きたくない」と思うようになります。実際に、学校に戻った子どもたちの中には「テストで名前を書くだけだった」「提出物も出せず、成績がつけられなかった」という経験をした子もいます。こうした状況は、「学校に戻った後の困難」をイメージさせ、ますます再登校を遠ざける要因となります。

3. 勉強の遅れが人間関係にも影響を及ぼす

不登校の子どもが学校に戻った際、最も恐れることの一つが「周囲の反応」です。特に、勉強に関する話題は、クラスメイトとの距離を感じやすい場面の一つです。

例えば、休み時間に友達が「数学の宿題、難しかったね」と話しているとき、不登校だった子どもは「そもそもその宿題が何なのかも知らない」と感じます。また、グループワークなどで先生から「この前の授業でやったことを復習して」と指示されたとき、他の子がスムーズに取り組んでいるのに対し、自分だけ何をすればいいのかわからない状況になることもあります。

このような場面を経験すると、「友達と話が合わない」「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、再登校に対する不安がますます大きくなります。学校は勉強をする場であると同時に、友人関係を築く場でもあります。そのため、勉強の遅れが人間関係にも影響を与え、「学校に戻りたくない」という気持ちを強めてしまうのです。

4. 長期化すると「不登校の生活が当たり前」になってしまう

不登校が長引くと、子どもの中で「学校に行くこと」よりも「家で過ごすこと」が当たり前の生活になっていきます。最初の頃は「また学校に戻るつもりだった」と思っていた子どもも、数か月が経過すると「どうやって戻ればいいのかわからない」「もうこのままでいいのではないか」と考えるようになります。

この状態が続くと、勉強に対する意欲も徐々に薄れていきます。「どうせ学校に行かないのだから、勉強しなくてもいい」「今さら頑張っても意味がない」という考えが強まり、学習習慣そのものが崩れてしまうのです。

また、学習の遅れが「学校復帰のための課題」ではなく、「自分の価値を測るもの」として感じられるようになると、「勉強ができない=自分には価値がない」という自己否定につながることもあります。このような状態では、学校に戻るための一歩を踏み出すことがますます難しくなってしまいます。

学習の遅れが再登校を難しくする悪循環を断ち切るために

不登校が長引けば長引くほど、勉強が再登校の妨げになることは明らかです。しかし、「このままではいけない」と焦って無理に勉強を押し付けることは逆効果です。重要なのは、子どもが勉強に対して「できない」「ついていけない」というネガティブな感情を抱かずに済むような環境を整えることです。

塾よりも学校連携が優先される理由

不登校が続く中で、「学習の遅れを取り戻すために塾に通わせるべきか」と考える保護者の方は少なくありません。確かに、塾は学力向上を目的とした場であり、学校に戻る前に学習を補う手段として魅力的に映ることもあるでしょう。しかし、不登校の子どもにとって、塾が必ずしも最適な選択肢とは限りません。むしろ、塾よりも学校との連携を優先することが、不登校からの回復において重要なポイントになります。

では、なぜ塾よりも学校との関わりを重視すべきなのか、その理由について詳しく説明していきます。

1. 不登校の本質的な問題は「学力不足」ではなく「学校適応」

不登校が続く要因の一つとして「勉強」が挙げられることは確かですが、学力不足そのものが不登校の主原因というわけではありません。むしろ、「学校に行くことへの不安」「友人関係の悩み」「先生との関係の問題」などが根本的な理由となっていることが多いのです。

そのため、学力を塾で補えばすぐに学校へ戻れるかというと、そう単純な話ではありません。たとえ塾で学習の遅れを取り戻したとしても、「学校へ行くことへの抵抗感」や「学校の環境に適応する力」が育まれなければ、再登校は難しいのです。

例えば、塾で勉強を頑張った子どもが「勉強は少しできるようになったけれど、学校に行くのは怖い」と感じるケースは少なくありません。塾は学習指導が中心であり、学校生活への適応をサポートする仕組みは整っていないため、学校復帰に必要な「集団生活への慣れ」や「学校との関係を再構築する力」を養うことができないのです。

2. 塾は「勉強ができる子」を前提とした環境である

塾は基本的に「学習を進める場」であり、「学習の遅れを取り戻す場」として設計されているわけではありません。特に集団指導の塾では、ある程度の学力があることを前提に授業が進められるため、長期間不登校だった子どもがいきなり塾に入ると、ついていけずに挫折する可能性が高くなります。

また、塾には学校と異なり「成績向上」や「受験対策」に特化した競争的な環境があります。これが不登校の子どもにとってストレスとなることもあります。例えば、塾では定期的に確認テストが実施されることが多く、「勉強ができるかどうか」が可視化される場面が増えます。不登校の期間が長く、学習の遅れがある子どもにとっては、こうした環境が「できない自分」を強く意識させてしまい、学習への意欲を失わせることにもつながります。

また、塾の講師は「勉強を教えるプロ」ではあっても、「不登校支援の専門家」ではありません。不登校の子どもが抱える心理的な課題に対する理解が不足していることも多く、子どもの気持ちに寄り添った適切な対応ができないこともあります。

3. 学校との関係を再構築することが重要

不登校からの回復には、「学校との関係を再構築すること」が非常に重要です。つまり、学習の遅れを取り戻すこと以上に、「学校に戻りやすい環境を整えること」が求められます。そのためには、学校と適切な形でつながりを持ち続けることが不可欠です。

学校との関係が切れてしまうと、復帰のタイミングを見失い、「戻るべき場所がない」と感じてしまうこともあります。しかし、学校と定期的にコミュニケーションを取りながら進めることで、「いつでも戻れる場所がある」という安心感を持つことができるのです。

4. 塾の利用が有効なのは「居場所」としての機能を果たす場合

ここまで、塾の限界について述べてきましたが、すべての塾が不登校の子どもにとって不適切というわけではありません。塾の中には、学習指導だけでなく、子どもの居場所としての役割を果たすものもあります。例えば、少人数制や個別指導の塾で、学習のサポートと同時に心理的なケアを行っている場合、子どもにとって安心できる環境になることもあります。

しかし、その場合でも、塾の利用を「学校復帰の手段」として捉えるのではなく、「子どもの社会的な居場所の一つ」として考えることが重要です。学校に戻るための準備として塾を活用するのではなく、「外部の人と関わる機会を作る」「生活リズムを整える」といった目的で利用する方が、子どもにとってプラスになるケースが多いです。

学校との連携を重視し、適切な学習支援を行うことが鍵

不登校の子どもにとって、学習の遅れを取り戻すことは重要ですが、それ以上に「学校に戻れる環境を整えること」が最優先事項です。塾は学習指導の場としては有効ですが、「不登校支援」には向いていません。学力向上だけでなく、学校への適応を促すためには、学校との関係を維持しながら進めていくことが必要不可欠です。

勉強のハードルを下げるための親の接し方、行動

不登校が続く中で、保護者の方が特に気にされるのが「勉強の遅れ」についてです。

「このままで将来は大丈夫なのか」「学校に戻ったとき、ついていけるのか」といった不安を抱えるのは、ごく自然なことです。しかし、その不安が強すぎると、子どもに対して「勉強しなさい」とプレッシャーをかけてしまったり、「勉強をしないと将来困るよ」と無意識のうちに不安を煽ってしまったりすることがあります。

不登校の子どもはすでに、「勉強が遅れている」「授業についていけるか不安」という気持ちを抱えていることが多いです。そんなときに、親からのプレッシャーが加わると、勉強に対する抵抗感がさらに強まり、ますます手をつけなくなってしまうことがあります。

では、どうすれば子どもが勉強に対する抵抗感を減らし、少しずつ学習の習慣を取り戻せるのでしょうか。ここでは、親ができる具体的な接し方や行動について詳しく説明していきます。

1. 「今すぐ取り戻さなければならない」という意識を手放す

保護者の方がまず意識すべきことは、「今すぐに勉強の遅れを取り戻す必要はない」ということです。不登校が長引いた子どもにとって、「勉強しなければならない」という気持ちがストレスになり、それが逆に学習への意欲を削いでしまうことがあります。

勉強ができないことを責めたり、急いでキャッチアップさせようとすると、子どもは「勉強は苦しいもの」と認識し、ますます避けるようになってしまいます。重要なのは、「まずは勉強に対する心理的なハードルを下げること」です。そのためには、「少しずつでもいいからやってみよう」というスタンスで関わることが大切です。

2. 「勉強しなさい」と言わず、環境を整える

不登校の子どもに対して、「勉強しなさい」と言うことは逆効果になりやすいです。親から勉強を強制されることで、かえって反発心が生まれ、勉強そのものを避けるようになるケースが多いからです。

大切なのは、「勉強をやるかやらないかは本人に委ねる」ことです。ただし、完全に放置するのではなく、「勉強しやすい環境」を整えることが重要になります。例えば、以下のような工夫が考えられます。

  • リビングに勉強できるスペースを作る
    勉強部屋にこもることがプレッシャーになる子も多いため、リビングやダイニングなどで気軽に勉強できる環境を用意する。
  • 親が本を読んだり、一緒に学ぶ姿勢を見せる
    親がスマホやテレビばかり見ていると、子どもも同じように過ごしがちです。親自身が読書や資格の勉強をする姿を見せることで、「学ぶことは自然なこと」と思えるようになります。
  • 勉強の話題をプレッシャーにならない形で出す
    「勉強しなさい」ではなく、「今日はどんなことをした?」と軽く話を振る程度に留める。興味を持てる話題を出し、学ぶことを自然な流れにする。

3. 「小さな成功体験」を積ませる

勉強への抵抗感を減らすには、「できた!」という成功体験を積ませることが重要です。いきなり難しい問題を解かせるのではなく、簡単な問題から始め、「少しずつできる」という感覚を持たせることが大切です。

例えば、以下のような工夫が有効です。

  • 子どもが好きな分野から始める
    算数や英語が苦手なら、好きな歴史の本を読むだけでも学習になります。「興味が持てることから学ぶ」ことで、学習のハードルを下げることができます。
  • 問題を解くのではなく、動画や本で学ぶ
    「勉強=問題を解くこと」と考えるとハードルが上がります。まずは教育系のYouTube動画や、学習漫画などを活用して、知識を増やすところから始めるのも有効です。
  • できたことをしっかり褒める
    「たった1問しか解いてない」「こんな簡単なことができただけ」と思わずに、「やろうとしたこと」そのものを褒めることが大切です。「少しでもやったことがすごい」「昨日よりも進んだね」と声をかけることで、子どもは「やってよかった」と感じ、勉強への抵抗感を減らすことができます。

まとめ:勉強を再登校への妨げとしないために

不登校の子どもにとって、「勉強」は大きな心理的負担になりやすいものです。しかし、親が焦って勉強を強要すると、かえって逆効果になってしまうこともあります。重要なのは、子どもが「学ぶことに対してポジティブな気持ちを持てるようになること」です。そのためには、無理に勉強を押し付けるのではなく、子どもが少しずつでも学習習慣を取り戻せるように環境を整えることが大切です。

不登校は決して「そのまま放置すれば解決する問題」ではありません。適切な学習支援と環境調整を行いながら、子どもが再び学校に戻るための準備を整えていくことが、何よりも重要なのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

小学校の不登校、中学校の不登校の特徴

小学校の不登校、中学校の不登校の特徴-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

日本では近年、不登校の児童生徒が増加し続けており、小学校と中学校ではその特徴や背景に違いがあります。本記事では、データをもとに不登校の現状を整理し、小学校と中学校それぞれに多い不登校のきっかけを詳しく分析していきます。さらに、新学期に向けた注意点や、日常的にできる不登校対策についても具体的にお伝えします。

不登校の問題は一朝一夕で解決するものではありません。しかし、適切な対応をすれば、子どもが再び学校へ戻れる可能性は十分にあります。まずは現状を正しく理解し、親として何ができるのかを一緒に見ていきましょう。


目次


データで見る小・中学校の不登校

日本の小・中学校における不登校児童生徒数は、年々増加傾向にあります。文部科学省の統計によれば、2023年度の不登校児童生徒数は346,482人に達し、これは小・中学校在籍者数全体の約3.72%を占めています。特に中学校における不登校の割合は顕著で、中学生216,112人、小学生130,370人という内訳になっています。

この数字を10年前と比較すると、その増加率は驚異的です。2010年度の不登校児童生徒数は119,891人でしたが、2023年度には346,482人と、約2.9倍に増加しています。特に近年は、毎年1万人単位で増え続けており、今後もこの傾向は続くと考えられます。

また、不登校の期間について見ると、90日以上欠席する長期不登校が全体の約44.5%を占めています。中でも、1年間の出席日数が0日の児童生徒は約3.1%に達しており、完全に学校と接点を失ってしまっているケースも少なくありません。

出典:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)

学年別の不登校傾向

学年ごとに不登校の発生率を分析すると、以下のような傾向が見えてきます。

  • 小学校では高学年(特に5・6年生)で不登校が増える
  • 中学校では1年生から増加し、2年生でピークを迎える

小学校では環境の変化に適応できないことが主な原因となることが多く、中学校では学業や人間関係のストレスが不登校につながることが多いです。

このデータから分かることは、不登校の問題は決して一部の子どもだけに起こる特異なものではなく、どの家庭にも起こりうるということです。では、なぜ小学生や中学生が不登校になるのか、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

小学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校のきっかけは、中学生の不登校とは異なり、比較的曖昧で漠然とした理由で始まることが多いです。中学生のように「勉強についていけない」「人間関係のトラブルが深刻化した」という明確な原因があるというよりも、「なんとなく学校に行きたくない」「朝になるとお腹が痛くなる」といった形で、本人も自覚できないまま不登校へ移行してしまうことが少なくありません。

では、具体的にどのような要因が小学生の不登校につながるのでしょうか。

1. 環境の変化によるストレス

小学生の不登校の大きなきっかけの一つが、環境の変化です。小学生は精神的にまだ未熟であり、環境の変化に対する適応能力も大人ほど発達していません。そのため、ちょっとした変化でも大きなストレスとなり、不登校につながることがあります。

具体的には、以下のような環境の変化が影響を与えることが多いです。

  • 入学や進級に伴うクラス替え
  • 担任の先生の交代
  • 親の転勤や引っ越し
  • 親の離婚や家庭内の不和

特に、担任の先生との相性が合わないことが、不登校のきっかけとなることが多くあります。小学生にとって、担任の先生は学校生活の中で大きな存在です。その先生が厳しかったり、自分を理解してくれないと感じたりすると、「学校が怖い」「行きたくない」という気持ちにつながることがあります。

また、家庭環境の変化も不登校に大きく影響します。親の転勤や離婚があった場合、子どもは大きなストレスを感じます。子どもは大人のように感情を言語化することが難しいため、「学校に行きたくない」という形でストレスを表現することがあるのです。

2. 友人関係のトラブル

小学生の不登校のきっかけとして、友人関係のトラブルも大きな要因の一つです。

小学生の段階では、まだコミュニケーション能力が十分に発達していないため、ちょっとした言い争いや意見の食い違いが大きなストレスになりやすいという特徴があります。特に低学年では、「昨日までは仲が良かったのに、今日は無視される」といったことが頻繁に起こります。

また、最近ではSNSやオンラインゲームを通じたコミュニケーションの増加により、学校以外の場でのトラブルが学校生活に影響を及ぼすケースも増えています。例えば、ゲーム内でのトラブルがきっかけで友人関係が悪化し、学校へ行きづらくなることもあります。

3. 学校生活への適応の難しさ

小学校のカリキュラムは、学年が上がるにつれて徐々に厳しくなります。そのため、勉強や集団生活に適応できない子どもは、不登校になりやすい傾向があります。

特に以下のような要因を持つ子どもは、学校生活に適応することが難しくなり、不登校につながることがあります。

  • 集団行動が苦手(発達特性の影響など)
  • 聴覚過敏や感覚過敏があり、学校の音や刺激がつらい
  • ルールや指示に従うことが難しい

発達特性を持つ子どもは、普通の授業や学校生活のルールに適応するのが難しいことがあります。例えば、「大勢の人と一緒にいるのが苦手」「音に敏感で教室のざわざわした雰囲気が耐えられない」といった理由で、学校に行きづらくなることもあります。

また、小学4年生~6年生頃になると、学習内容が難しくなり、勉強についていけなくなることが原因で不登校になる子どもも増えます。特に「みんなの前で当てられるのが怖い」「テストの点数が悪くて恥ずかしい」といった感情が、不登校につながることも少なくありません。

小学生の不登校の特徴まとめ

  • 環境の変化(クラス替え、先生の交代、親の転勤や離婚など)が大きな影響を与える
  • 友人関係のトラブルが直接的な不登校のきっかけになることが多い
  • 学習面のつまずき集団生活の苦手さが原因になることもある
  • 「なんとなく行きたくない」という曖昧な形で始まることが多く、早期の対応が重要

小学生の不登校は、最初は「ちょっと休みたい」程度の気持ちから始まり、気づけば長期化してしまうことが少なくありません。そのため、「何となく休みがちになっている」と感じた時点で、早めに対応をすることが重要です。

親子-向き合う

中学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校が「なんとなく行きたくない」「環境の変化に適応できない」という比較的漠然とした理由で始まることが多いのに対し、中学生の不登校はより明確な要因や深刻なストレスが背景にあることが多いのが特徴です。

中学生になると、学業の難易度が上がり、対人関係が複雑化し、自己意識が高まるため、小学生の頃にはなかった新たな悩みが生じます。また、思春期特有の心理的変化も影響し、不登校がより長期化しやすくなる傾向があります。

では、中学生の不登校の主なきっかけを詳しく見ていきましょう。

1. 学業の負担が増大し、ついていけなくなる

中学生の不登校の最も大きな要因の一つが、学習内容の難化によるストレスです。小学校の頃は比較的ゆるやかだった学習進度も、中学校に入ると一気にレベルが上がります。

特に、以下のような場面でつまずきを感じる生徒が多いです。

  • 授業のスピードが速くなり、理解が追いつかなくなる
  • 数学や英語など、苦手科目が明確になり、成績が低下する
  • テストや成績表による評価が厳しくなり、自己肯定感が下がる
  • 授業で当てられるのが怖くなり、授業に出ることが不安になる

中学生は「自分はできるのか」「周りと比べて劣っていないか」を強く意識する年齢です。そのため、小学校では「まぁ何とかなる」と思っていた勉強も、中学校では「もう無理だ」「学校に行っても意味がない」と感じ、不登校につながるケースが増えます。

また、中学校の先生は科目ごとに変わるため、「先生との相性が悪い」「分からないところを質問しにくい」といった問題も発生しやすくなります。授業についていけなくなり、学校に行くのが嫌になる――こうした流れで不登校に至るケースは非常に多いのです。

2. 対人関係の悩みが深刻化する

小学校の頃は、友人関係のトラブルがあっても、その日のうちに仲直りするケースが多いですが、中学生になると関係性がより複雑になり、トラブルが解決しにくくなります。

特に以下のようなケースで不登校になる生徒が増えます。

  • いじめや仲間外れに遭う(直接的な暴力だけでなく、無視や陰口も含む)
  • グループの中での立ち位置に悩む(クラスや部活動内での孤立)
  • 友人関係の変化についていけない(小学校時代の友達と疎遠になる)
  • SNSやオンラインゲーム上でのトラブル(LINEグループから外される、悪口を言われるなど)

中学生は小学生よりも「人間関係の軋轢」に敏感になります。「無視された」「仲間に入れてもらえなかった」など、小さなことでも大きなショックを受け、それが学校に行きたくない理由になることがよくあります。

また、最近では、学校内だけでなく、SNSやオンラインゲーム上でのトラブルが不登校の引き金となるケースも増えています。「学校では普通に接しているのに、ネット上では悪口を言われる」というような、表と裏の顔を使い分けるケースもあり、親や先生が気づかないうちに子どもが傷ついていることも少なくありません。

3. 部活動や学校行事によるプレッシャー

中学校に入ると、多くの生徒が部活動に参加します。部活動は友人関係を深めたり、自己成長の機会を得たりする場にもなりますが、「厳しすぎる指導」や「上下関係のストレス」が不登校のきっかけになることもあります。

特に以下のような状況に当てはまる場合、不登校になるリスクが高まります。

  • 顧問や先輩からの厳しい指導が耐えられない
  • 部活の練習が過度に厳しく、疲労がたまりすぎる
  • 試合やコンクールで結果を出さなければならないプレッシャーが強い
  • 部活動と勉強の両立ができず、ストレスを抱える

また、体育祭や文化祭といった学校行事が大きな負担になることもあります。目立つのが苦手な子どもにとって、学校行事は「避けたいイベント」になりやすく、その時期に一度休むと、そのまま不登校に移行してしまうことがあります。

4. 思春期特有の心理的要因

中学生は、精神的に大きく成長する時期です。しかし、その分だけ「自分はどう思われているのか」「このままでいいのか」といった悩みも増え、不登校につながるケースが多くなります。

具体的には、以下のような心理的変化が関係します。

  • 「完璧主義」で、失敗を極度に恐れる
  • 「過敏性」が強く、ちょっとしたことで深く傷つく
  • 「反抗期」があり、大人の言うことに反発したくなる
  • 「将来への不安」が強まり、学校に行く意味を見出せなくなる

特に「完璧主義」の子どもは、ちょっとした失敗でも強い挫折感を味わい、学校に行くこと自体が苦痛になりやすいです。また、思春期の不安定な心理状態の中で、親や先生とのコミュニケーションが上手くいかず、不登校に拍車をかけることもあります。

中学生の不登校の特徴まとめ

  • 学業の負担が増え、授業についていけなくなることが原因になる
  • 友人関係の悩みが深刻化し、解決しにくくなる
  • 部活動や学校行事によるストレスが影響を与えることがある
  • 思春期特有の心理的変化が、不登校の引き金となる

中学生の不登校は、小学生の不登校よりも長期化しやすいという特徴があります。そのため、できるだけ早い段階で不登校の兆候に気づき、適切な対応を取ることが重要です。

母と中学生の娘の会話

新学期に向けて注意すべき点

新学期は、不登校の子どもにとって大きなストレスがかかるタイミングです。特に4月の新学期や9月の2学期開始時は、「環境が変わる」「新しい人間関係が始まる」「学習内容が進む」などの要因が重なり、精神的な負担が増します。

すでに不登校気味の子どもにとっては、「新しいスタートを切らなければならない」というプレッシャーが大きく、さらに不登校が進行してしまうこともあります。また、これまで問題なく通学していた子どもでも、新学期を機に学校への違和感を強く感じ、不登校を引き起こすことがあります。

では、新学期に向けてどのような点に注意し、どのようなサポートができるのかを詳しく見ていきましょう。

1. 「新学期だから頑張ろう」というプレッシャーをかけすぎない

親としては、「せっかくの新学期だから、気持ちを切り替えて頑張ってほしい」と思うかもしれません。しかし、「頑張って行こうね」「そろそろ学校行かないとね」といった言葉が、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。

不登校の子どもは、すでに「学校に行かないといけない」という気持ちをどこかで持っています。それでも行けないのは、「行こうとすると不安やストレスで体調が悪くなる」「学校に対する恐怖心がある」などの理由があるからです。

そのため、新学期に向けては、無理に学校に行かせようとするのではなく、まずは子どもの気持ちに寄り添い、話を聞くことが大切です。

✔ NGな声かけ

  • 「新学期からはちゃんと行こうね」 → プレッシャーになり、不安が増す
  • 「みんな頑張ってるんだから、あなたも頑張らないと」 → 他人と比較されることで自己肯定感が下がる
  • 「いつまでも休んでいたら、将来困るよ」 → 長期的な不安を煽ることで余計に動けなくなる

✔ 望ましい声かけ

  • 「新学期、不安なことはある?」 → 子どもが抱えている気持ちを引き出す
  • 「学校に行くことだけが大事なんじゃなくて、どうすれば安心して過ごせるか考えようね」 → 子どもに寄り添いながら、前向きな選択肢を一緒に探す

2. 生活リズムを整えることを優先する

新学期が始まる直前になって、「学校に行く準備をしなさい」「朝起きられるようにしなさい」と急に言われても、子どもにとっては大きな負担になります。特に、長期間の不登校で生活リズムが崩れている場合、新学期直前に無理に元に戻そうとすると、かえって不安定になってしまうことがあります。

そのため、新学期の2週間ほど前から、少しずつ朝の時間を整えることを意識すると良いでしょう。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

  • 起きる時間を少しずつ早める(いきなり学校の時間に合わせるのではなく、15~30分ずつ調整)
  • 朝日を浴びる習慣をつける(体内時計を整えるために、起きたらカーテンを開ける)
  • 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす(急に禁止するのではなく、少しずつ短縮していく)

「学校に行けるかどうか」よりも、まずは朝起きる習慣をつけることが最優先です。朝のリズムが整ってくると、自然と気持ちも安定しやすくなります。

3. 学校に関する不安を具体的にする

新学期が近づくと、子どもは漠然とした不安を感じやすくなります。しかし、その不安を「学校に行きたくない」という形でしか表現できないことが多いです。

そこで、「何が一番不安なのか?」を具体的にしていくことが大切です。

✔ 不安を具体化するための質問

  • 「先生との相性が心配?」
  • 「友達とうまくやれるか不安?」
  • 「授業についていけるかどうかが気になる?」

不登校の子どもは、「とにかく学校が怖い」という気持ちを持っていることが多いですが、その「怖さ」の正体を探ることで、具体的な対策を立てることができます。

例えば、「授業についていけるか不安」という場合は、最初の1週間は無理に授業を受けさせるのではなく、まずは登校して雰囲気に慣れることを目標にするといった調整が可能です。

また、「友達とうまくやれるか不安」という場合は、事前に学校の先生と相談し、サポートしてもらうという対応ができます。

まとめ

新学期は、不登校の子どもにとって大きな転機となる時期です。しかし、焦って登校を促してしまうと、かえって子どもにプレッシャーを与え、不登校が悪化することもあります。

  • 「頑張って行こうね」とプレッシャーをかけない
  • 生活リズムを少しずつ整える
  • 不安を具体化し、解決策を探る

こうしたポイントを意識しながら、子どものペースに寄り添っていくことが何よりも大切です。

母と娘の会話のイメージ

日常的にできる不登校対策

不登校の子どもが再び学校へ行くためには、日々の生活の積み重ねが重要になります。不登校の対応は「学校に行かせること」だけが目的ではなく、子どもが安心できる環境を整え、再登校に向けた準備をしていくことが大切です。

特に、日常的に意識してほしいのは次の3点です。

  1. 生活リズムを整えること
  2. 家族の時間を大切にすること
  3. 夫婦喧嘩に注意すること

これらは、すぐに効果が出るものではありません。しかし、時間をかけて意識していくことで、子どもが少しずつ前向きになり、「学校に行ってみようかな」と思える環境をつくることができます。では、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

1. 生活リズムを整えること

不登校の子どもは、学校に行かなくなることで昼夜逆転しやすくなります。朝起きる時間が遅くなると、自然と夜も眠れなくなり、生活リズムが崩れてしまいます。そして、「朝起きられないから学校に行けない」という状態が続くと、ますます不登校が長期化してしまうのです。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

① いきなり「早起きしなさい」と言わない
「明日からちゃんと朝7時に起きなさい!」と言っても、急に生活リズムを変えるのは難しいものです。いきなり理想の時間に戻そうとすると、子どもはプレッシャーを感じ、余計に朝起きられなくなってしまいます。

そこで、15分ずつ起きる時間を早めるなど、少しずつ調整していくのが効果的です。例えば、今朝9時に起きているなら、次の週は8時45分、その次の週は8時30分といった具合に、ゆるやかに改善していきましょう。

② 朝起きたらカーテンを開ける
人間の体内時計は、朝日を浴びることでリセットされる仕組みになっています。朝になったらカーテンを開けて日光を浴びるだけでも、少しずつ生活リズムを整える助けになります。

③ 昼間に軽い運動をする
不登校の子どもは家の中で過ごす時間が長くなりがちですが、日中に体を動かすことが夜の快眠につながります。散歩に誘ったり、買い物についてきてもらったりするだけでも、体内リズムが整いやすくなります。

④ 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす
スマホやゲームの長時間使用は、寝る時間が遅くなる原因の一つです。しかし、いきなり「夜のスマホは禁止!」とすると、かえって反発を招くこともあります。まずは「30分だけ短くする」など、少しずつ調整していくことを意識しましょう。

2. 家族の時間を大切にすること

不登校の子どもは、「学校に行っていない自分はダメなんじゃないか」と自己否定感を持ちやすくなります。そのため、「家では安心して過ごせる」と感じられるような家庭環境を作ることが大切です。

✔ 家族の時間を増やすための工夫

① 一緒に食事をする
家族そろって食事をする時間は、子どもが安心感を得る大切な時間になります。不登校の子どもは、食事の時間がバラバラになりがちですが、できる限り「一緒にご飯を食べる習慣」を作ることで、家庭内のつながりが深まります。

② 子どもが好きなことに親も関心を持つ
例えば、子どもがゲームやアニメに夢中になっているなら、「何をやってるの?」「一緒にやってみてもいい?」と興味を示してみるのも良い方法です。親が子どもの趣味に関心を持つことで、子どもは「自分のことを理解してくれている」と感じ、親子関係が良くなります。

③ 週末に軽いお出かけをする
遠くに行く必要はありません。近所の公園に散歩に行く、カフェでお茶をするなど、ちょっとした外出が気分転換になります。特に、長期間家にこもっていると気分が落ち込みやすくなるため、「学校に行く前に、まずは外に出ることに慣れる」という意味でも効果的です。


3. 夫婦喧嘩に注意すること

意外に思われるかもしれませんが、家庭内の雰囲気は、不登校の子どもの心理状態に大きな影響を与えます

✔ 子どもは親の雰囲気を敏感に感じ取る

子どもは、親の表情や言葉のトーンから、「お父さんとお母さんの仲が悪い」「家の中がピリピリしている」と感じ取ります。そして、それがストレスになり、不登校が長引いてしまうことがあります。

特に、親が夫婦喧嘩をしている場面を子どもが目にすると、次のような気持ちを抱くことがあります。

  • 「自分が不登校だから、親がケンカしているんじゃないか」(罪悪感)
  • 「家の中が居心地悪い」(安心感の欠如)
  • 「親に相談しづらい」(気持ちを話せなくなる)

これが積み重なると、子どもはますます閉じこもりがちになり、不登校の解決が遠のいてしまいます。

✔ 夫婦間の意見の違いを子どもの前で見せすぎない

不登校の対応について、夫婦で意見が違うこともあるでしょう。例えば、

  • 父親:「厳しくしないとダメだ」
  • 母親:「無理に行かせず、まずは見守るべきだ」

こうした意見の違いはよくあります。しかし、それを子どもの前でぶつけ合うと、子どもは「どちらの親の言うことを聞けばいいの?」と混乱してしまいます。

夫婦で意見が合わないときは、子どものいない場所で話し合い、意見のすり合わせをすることを心がけましょう。

まとめ

日常的な積み重ねが、不登校の改善につながります。

  • 生活リズムを少しずつ整える(急に変えようとせず、徐々に調整)
  • 家族の時間を大切にし、安心できる環境を作る
  • 夫婦喧嘩を避け、子どもに不安を与えないようにする

子どもが学校に行くためには、まず「家が安心できる場所であること」が何よりも大切です。できることから少しずつ始め、子どもが「学校に行ってみようかな」と思える環境を整えていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校の日々(中学2年生の体験)

不登校の日々(中学2年生の体験)-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。今回は、ToCoで支援させていただいた中学2年生のKさんから、不登校中の生活について語っていただきました。


目次


不登校のきっかけ

私は、中学2年生のときに学校に行けなくなりました。

それまでは、ごく普通の生徒だったと思います。小学生のころは友達とも仲がよく、特に大きな悩みもありませんでした。成績も平均的で、先生や親から怒られるようなこともなく日々を送っていました。

でも、中学に上がってから、少しずつ学校が嫌な場所になっていきました。

きっかけは、部活動の人間関係でした。私は運動が得意ではなかったけれど、友達に誘われて運動部に入りました。1年生のときは、先輩の言うことを聞いていればよかったし、そこまできついと感じることはありませんでした。でも、2年生になって後輩が入ってくると、私たちが指導する立場になりました。

「Kって真面目すぎるよな」

「いちいち細かいんだよ」

最初は冗談だと思いました。みんなが笑っていたし、私も「そうかな?」と苦笑いで流していました。でも、それが毎日のように続くようになり、次第に雰囲気が変わっていきました。

練習中にわざと私にだけきつい指示が飛んできたり、準備や片付けの仕事を押し付けられたりするようになりました。ロッカーに入れておいた靴がなくなっていたこともありました。あとでゴミ箱の中から見つかったけれど、そのとき私は何も言えませんでした。

「気のせいかもしれない」

「ただのふざけあいかもしれない」

そう思って、できるだけ気にしないようにしていました。でも、あるとき気づいたんです。私が話しかけても、みんな目を合わせようとしない。ふとした瞬間に、クスクスと笑われることが増えたことに。

「私、嫌われてるのかもしれない」

そう思ったとき、胸がぎゅっと締めつけられるような感覚がしました。

教室でも同じようなことが起きるようになりました。朝、教室に入ると、誰とも目を合わせられない。私が近づくと、急に会話が止まる。プリントを配ると、私のだけ机に投げられる。

友達だと思っていた子たちも、最初は普通に話してくれていました。でも、いじめが続くうちに、みんなが少しずつ距離を取るようになっていきました。目が合うとすぐにそらされます。

このままではだめだと思い、私は担任の先生に相談しました。

勇気を振り絞って、休み時間に職員室へ行きました。

「先生、ちょっといいですか?」

声が震えていたと思います。先生は書類に目を通しながら、「どうした?」と顔を上げました。

「…私、最近クラスで無視されたり、持ち物を隠されたりしてて…。その、部活でも…」

先生はしばらく黙っていました。そして、少し考えるようなそぶりを見せたあと、ため息をついて言いました。

「Kは気にしすぎなんじゃないか?」

私は言葉を失いました。

「そんなの、みんな経験することだよ。これくらいのことで落ち込んでたら、社会に出たときに大変だよ」

先生は軽く笑いました。冗談のつもりだったのかもしれません。でも、私には笑えませんでした。

「もっと強くならないとダメだよ。Kは真面目だから、ちょっとしたことで気にしちゃうんだろう?」

私は何も言えませんでした。先生に相談すれば、何か変わるかもしれないと思っていたのに。「先生も助けてくれないんだ」と思ったら、体の力が抜けていきました。

「…はい」

それだけ言って、私は職員室を出ました。

次の日から、私は誰にも相談しなくなりました。もう、どうしようもないんだと思いました。私はただ、耐えるしかないんだと。

でも、耐えることができませんでした。

ある朝、学校に行こうと玄関に立ったとき、体が動かなくなりました。

「行かなきゃ」と思うのに、足が前に出ません。心臓がドキドキして、息が苦しくなって、涙があふれてきました。お母さんが「大丈夫?」と心配そうに私の肩に手を置きました。

「…お腹が痛い」

私はそう言うのが精一杯でした。

「今日は休んでいいよ」

お母さんの言葉に、ほっとした気持ちと、罪悪感が入り混じりました。でも、その日は一日中布団の中にいて、何も考えたくなかった。

翌日も、またその翌日も、私は学校に行くことができませんでした。

「学校に行かなきゃ」と思えば思うほど、体が動かなくなりました。制服に着替えることすらできない。時計の針が進むたびに、焦りと不安でいっぱいになって、最終的には布団の中に逃げ込んでしまう。

お母さんは、「もう少し休んでいいよ」と言ってくれました。でも、お父さんは何も言いませんでした。私は、その無言の圧力が怖くて、家の中でもリビングに出るのが嫌になりました。

そうして私は、部屋に閉じこもるようになりました。

部屋から出れない日々

私は、ある日突然、部屋から出られなくなりました。

最初の頃は、学校を休んでしまった罪悪感がありました。でも、どうしても行く気になれなかったんです。朝になると気持ちが悪くなって、お腹が痛くなって、制服に着替えることすらできない。お母さんは「今日は休んでいいよ」と言ってくれました。でも、何日も続くうちに、私はリビングにいるのも辛くなって、自然と部屋に閉じこもるようになりました。

お母さんは、最初のうちは毎日「大丈夫?」「何か食べる?」と優しく声をかけてくれました。でも、お父さんは何も言いませんでした。学校に行かない私のことをどう思っていたのか、表情からは読み取れませんでした。

お父さんと目が合うと、何も言われなくても責められているような気がしました。だから、リビングに行くのが怖くなって、部屋の中だけで過ごすようになりました。

お腹がすいたら、夜中にこっそりキッチンへ行って、冷蔵庫の中のものをつまんでいました。夜の方が家族と顔を合わせることがなくて安心できたし、そのうち夜更かしをして、朝になったら眠る。そんな毎日を繰り返していました。

ある夜、布団にくるまってスマホをいじっていると、リビングから両親の喧嘩する声が聞こえてきました。

「あなたがもっとちゃんと関わってあげないから!」

「甘やかしてるのはお前だろ!」

私は耳を塞ぎました。心臓がドキドキして、体が硬くなるのがわかりました。私のせいで、家族が喧嘩している。私は家族の重荷になっている。

そう思うと、どこにも居場所がない気がして、涙がこぼれました。でも、泣いたところで何も変わらない。だから、ただひたすら目を閉じて、この時間が早く過ぎるのを待つしかありませんでした。

部屋で考えていたこと

部屋の中でひとりでいる時間が増えると、私は自分のことばかり考えるようになりました。

「どうして私は普通に学校に行けないんだろう?」

「どうして、いじめられても言い返せなかったんだろう?」

「なんで、周りの人みたいに、何も気にせず過ごせないんだろう?」

そんなことをずっと考えていました。考えたところで答えは出ないのに、頭の中ではずっと同じことがぐるぐる回っていました。

「私が弱いからだ」

「私がダメな人間だから、こうなったんだ」

「こんなことで悩んでるのは、私だけかもしれない」

そう思うたびに、どんどん自分が嫌いになりました。私がもっと強ければ、こんなふうにならなかったのに。私がもっとちゃんとできていれば、家族にも迷惑をかけずに済んだのに。

時々、スマホで「不登校」について検索しました。自分と同じように学校に行けなくなった人がいないか知りたかったんです。

いろいろな人の体験談を読んで、「私と同じだ」と思うこともあれば、「この人は頑張って学校に戻れたのに、私はダメなままだ」と落ち込むこともありました。

「もうこのままでいいや」と思うことも増えてきました。学校に行かなくても、スマホを見ていれば時間は過ぎる。現実を見なければ、嫌なことを考えなくて済む。でも、そんな生活を続けていると、ふとした瞬間に「このままで本当にいいのか?」と思うこともありました。

何かを変えなきゃいけない。でも、どうしたらいいのかわからない。

部屋の中で、私はただ時間が過ぎていくのを眺めていました。

親の呼びかけ

そんなある日、部屋にこもっている私に、お父さんが声をかけてきました。

「とりあえず、ご飯は一緒に食べよう」

それまで、ほとんど私に何も言わなかったお父さんが、急にそんなことを言うなんて驚きました。でも、不思議と「嫌だ」とは思いませんでした。

リビングに行くと、お母さんもいました。二人は特に何も言わず、いつも通りの食卓でした。私は黙ってご飯を食べました。

何か話さなきゃ、と思ったけれど、うまく言葉が出てこなくて、結局何も言えませんでした。でも、誰かと一緒にご飯を食べることが、こんなに安心するものなんだと、そのとき初めて気づきました。

それから、毎日、家族とご飯を食べるようになりました。最初はただ食べるだけだったけど、少しずつ、お母さんやお父さんと話をするようになりました。

ある日、お母さんが「学校の先生と話をしたの」と言いました。

「先生、Kにちゃんと謝りたいって言ってたよ」

先生が謝る? あのとき、「気にしないで強くなれ」って言った先生が?

驚いたけど、心のどこかで「そんなの意味がない」とも思いました。今さら謝られたって、もう私は学校には戻れない。

でも、お母さんは続けました。

「先生ね、いじめた子たちにも話をしたんだって。今、その子たちは処罰を受けて、自宅謹慎中で、復帰したら別のクラスに移るって」

私は何も言えませんでした。罰して欲しかった訳ではないという思いと、もういじめられることはないんだという安心がありました。

私はまだ、学校に戻れる気がしませんでした。でも、お父さんとお母さんが、私のために動いてくれていたことがわかって、心が軽くなった気がしました。

再登校の日

私は、それでもまだ学校が怖かったです。でも、お父さんもお母さんも、何も言わずに、私のことを見守ってくれていました。

そんなある日、ふと思いました。

「学校が全部じゃないんだ」

お父さんとお母さんがいて、話をして、ご飯を食べて。そんな毎日がある。そう思うと、少し気が楽になりました。

そして、ある朝、「ちょっと行ってみようかな」と思ったんです。

まだ不安だったけれど、お母さんが「行ってらっしゃい」と笑顔で言ってくれて、それだけで少し安心しました。

学校の門の前で、深呼吸をして、一歩踏み出しました。

高校生の後ろ姿

まとめ

Kさんのお話を聞いて、不登校という問題の本質について改めて考えさせられました。

Kさんのケースのように、いじめがきっかけで学校に行けなくなる子どもは少なくありません。さらに、勇気を出して相談した先生が真剣に受け止めてくれなかったことは、Kさんの心に深い傷を残しました。学校に限らず、相談を受ける側がどれだけ子どもの気持ちを受け止められるかによって、その後の選択肢は大きく変わります。

また、家庭の対応も子どもにとって大きな影響を与えます。Kさんのお母さんは、最初からKさんの気持ちに寄り添い続けましたが、お父さんは最初は無関心のように見えました。
しかし、弊社の再登校支援プログラムの一環で、「とりあえずご飯を一緒に食べよう」と声をかけていただくようになり、Kさんの再出発のきっかけになりました。このように、言葉少なであっても、関わり方次第で子どもの心に届くことはあります。

また、学校と家庭の連携も非常に重要です。Kさんのケースでは、最初は先生が問題を軽く見ていましたが、お母さんが学校と話し合いを続けたことで、最終的には学校側がいじめの事実を認め、対応をしてくれました。学校との話し合いは負担に感じるかもしれませんが、お子さんのために必要なサポートを求めることは、とても大切なことです。

親御さんにとって、不登校は不安なことが多いと思います。しかし、お子さんの気持ちに寄り添い、少しずつでもできることから始めることで、必ず何かが変わっていきます。焦らず、無理をせず、お子さんのペースを尊重しながら、一緒に歩んでいってほしいと思います。

ToCo株式会社では、不登校のお子さんやご家族のサポートを行っています。困ったときには、ぜひ専門家の力を借りながら、一緒に考えていきましょう。お子さんが安心できる未来のために、できることは必ずあります。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

家庭で出来る不登校対応とは?

家庭で出来る不登校対応とは-記事見出し

目次


第1章:情報が錯綜する不登校対応

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。

現在、多くの保護者の方々が、お子様の不登校に対してどのように対応すべきか、情報の洪水の中で迷われていることと思います。特に、インターネットや書籍、専門家の意見など、さまざまな情報が飛び交う中で、何が正しいのか、どの方法が効果的なのかを判断するのは容易ではありません。

例えば、「ゲームが不登校の原因だ」という意見もあれば、「ゲームは関係ない」という全く逆の主張も存在します。このように、情報が錯綜している現状では、保護者の方々が混乱し、適切な対応を見つけることが難しくなっています。

しかし、不登校の問題は各家庭やお子様の状況によって異なるため、一般的な情報だけでは十分な対応ができません。そのため、実績のある対応法を知り、家庭でどのように実践していくかを考えることが重要です。

本稿では、情報が錯綜する不登校対応の現状を踏まえ、効果が証明されている認知行動療法(CBT)について詳しく解説し、家庭でどのように実践できるかを具体的にご紹介いたします。


第2章:不登校への効果が証明されている認知行動療法(CBT)

認知行動療法(CBT)とは?

認知行動療法(CBT)は、心理療法の一種であり、思考(認知)と行動に焦点を当て、問題の解決や症状の改善を図るアプローチです。具体的には、ネガティブな思考パターンや非適応的な行動を特定し、それらをより適応的なものに変えることで、感情や行動の改善を目指します。

CBTは、うつ病や不安障害など、さまざまな心理的問題に効果があるとされており、その効果は多くの研究で実証されています。不登校の問題においても、CBTは有効なアプローチとされています。例えば、ネガティブな思考パターンを持つお子様が、学校に対する不安や恐怖を感じている場合、その思考を現実的で前向きなものに変えることで、学校への適応を促進することができます。

認知行動療法(CBT)による不登校支援の試み「不登校の子どもを抱える保護者へのグループワーク」の研究

また、CBTでは、段階的な暴露療法を用いることがあります。これは、恐怖や不安を引き起こす状況に徐々に慣れることで、感情的な反応を和らげる方法です。不登校のお子様の場合、学校や教室に対する不安が強いことが多いため、段階的に学校環境に慣れさせることで、再登校へのハードルを下げることが可能です。

さらに、CBTは問題解決スキルの向上にも役立ちます。お子様が学校で直面するさまざまな問題や課題に対して、効果的な対処法を学ぶことで、自己効力感が高まり、学校に対する抵抗感を減らすことができます。


第3章:認知行動療法を家庭で実践するための第一歩

認知行動療法(CBT)が不登校の解決に有効であることを説明しましたが、保護者の方々が最も知りたいのは、「実際に家庭でどのように取り組めばよいのか」という点だと想います。
ここでは、不登校の子どもに対して親が何をすればよいのか、どのように関われば効果があるのかを具体的に解説していきます。

1. 不登校の子どもが抱えている「認知の歪み」を知る

CBTの基本は、「認知の歪み」を修正することにあります。認知の歪みとは、物事の受け取り方や考え方に偏りがあり、その偏りが感情や行動に影響を与えてしまう状態です。不登校の子どもは、しばしば以下のような認知の歪みを持っています。

  • 「自分はダメな人間だ」(全か無かの思考)
  • 「学校に行ったら絶対にまた嫌なことが起こる」(悲観的予測)
  • 「友達はみんな自分を嫌っている」(根拠のない決めつけ)
  • 「先生に怒られるかもしれないから学校に行けない」(過度のリスク予測)

このような歪んだ認知があるため、子どもは学校に対して強い不安を抱き、登校することを避けるようになります。親ができる第一歩は、「子どもの考え方に歪みがあるかもしれない」という視点を持つことです。

2. 「安心感」を与えるのではなく、「適応力」を育てる

不登校の子どもに対して、「家にいれば安心できる」「無理に学校に行かなくていいよ」と言うことは、一見すると優しさのように思えます。しかし、このアプローチには大きな落とし穴があります。

子どもは「安心できる環境」に長くいるほど、不安を感じる場面を避けるようになります。これは「回避行動」と呼ばれ、不安を増大させる要因になります。例えば、「学校に行くのが怖いから行かない」という行動を続けると、学校に対する恐怖はどんどん大きくなります。これは、不安障害やパニック障害の治療でもよく見られるパターンです。

そのため、家庭では「安心感を与える」ことよりも、「適応力を育てる」ことを優先すべきです。具体的には、次のような取り組みが有効です。

  • 小さな成功体験を積み重ねる
    • 「学校の教科書を読み進めてみる」「学校のプリントを解いてみる」
      • 勉強面での引け目を減らしていく。
    • 「制服を着てみる」「ランドセルを準備してみる」
      • 学校に行く準備を少しずつ進めることで、登校への心理的なハードルを下げる。
    • 「登校時間に家の近くを散歩してみる」「学校まで一緒に歩いてみる」
      • 登校時間帯に外に出ることで、学校へ行くリズムを少しずつ取り戻す。
  • 不安の分解を行う。
    • 子どもが抱えている不安を具体的に言語化し、それが本当に現実的な恐怖なのかを親子で話し合う。
      • 「嫌なことが起きるとしたら、どんなことだと思う?」などと質問し、漠然とした不安を具体的な内容に落とし込む。
      • 「先生に怒られるのが怖い」と言えば、「怒られる理由は何か?」と掘り下げて現実的な対応を考える。
    • ネガティブな面ばかり考えないよう、ポジティブな側面も考える。
      • 「学校に行くことで何か良いことが起きるとしたら、どんなこと?」とポジティブな側面も一緒に考える。
      • 「友達が話しかけてくれるかも」のような前向きな予想を引き出すことで、不安な予測ばかりしてしまうことを避ける。

3. 「学校に戻る」という目的をブレさせない

不登校の対応において、最も重要なのは「最終的に学校に戻る」という目的を親がブレさせないことです。

よくある失敗例は、

  • 「子どもが家で楽しく過ごしているから、無理に学校に行かなくてもいいのでは?」と考えてしまう。
  • 「子どもが学校の話を嫌がるから、一切触れないようにする」という対応をとる。

これは、長期的に見ると子どもにとって良い影響を与えません。子ども自身が「自分はこのままでいいのか?」と不安になってしまうためです。親は「今は難しくても、学校に戻る方法を一緒に考えようね」という姿勢を崩さないことが大切です。


第4章:ToCoの再登校支援について

1. ToCoのアプローチとは?

再登校支援を行っているToCo(トーコ)株式会社は、不登校の「原因」ではなく「継続してしまう要因」に着目した支援を行っています。一般的な不登校支援では、「学校の環境を変える」「親の接し方を見直す」といったアプローチが取られますが、ToCoは「なぜ不登校が続いてしまうのか?」に焦点を当てています。

2. CBTを基盤にした支援プログラム

ToCoの再登校支援は、CBTの理論を基盤にしたプログラムになっています。特徴的なのは、日本の家庭環境や学校制度に最適化されている点です。一般的なCBTは欧米の心理学を元にしており、日本の不登校の子どもにそのまま適用するのは難しい場合があります。しかし、ToCoは日本の子どもたちに合った形でCBTを実践できるようにしています。

3. 平均2週間で再登校を実現

ToCoのプログラムは、平均2週間で再登校を達成する実績を持っています。その理由は、単なる「カウンセリング」ではなく、「行動変容」に重点を置いているからです。

一般的なカウンセリングでは、

  • 「子どもの気持ちを尊重する」
  • 「自己肯定感を高める」
    といったアプローチが取られますが、これだけでは再登校には繋がりません。ToCoでは、
  • 「実際に行動を変える」
  • 「小さなステップを積み重ねる」
    という方法を取り入れ、親子が具体的に取り組めるようにしています。

4. 親の負担を減らすサポート

不登校の対応は、親にとって大きな負担となります。「自分の関わり方が間違っていたのではないか?」「子どもの気持ちを尊重しすぎて甘やかしてしまったのでは?」といった悩みを抱えている親御さんも多いでしょう。

ToCoでは、親が無理なく実践できる形でのサポートを提供しており、具体的な声かけの方法や、子どもへの働きかけを一緒に考えていきます。

不登校は、「待てば解決する」というものではありません。家庭で出来る対応を適切に行うことで、子どもが再登校する可能性は大きく高まります。本記事を参考に、ぜひ家庭での関わり方を見直してみてください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校の子どもとの対話法とは?

不登校の子どもとの対話法-記事の見出し画像

児童心理司の藤原です。ToCo株式会社の顧問として、不登校問題に向き合うための支援プログラムの開発に携わっています。本記事では、「不登校の子どもとの対話法」をテーマに、具体的な方法と心がけるべき点について深掘りします。不登校に悩む保護者の方がこの記事を通じて、新たな視点やアプローチを得て、子どもとの関係を前向きに構築する助けとなれば幸いです。


目次


第一章:声をかけることの意義と基盤

不登校の問題に直面したとき、多くの親御さんは「どう接したらいいのかわからない」という不安や戸惑いを抱えています。特に、子どもに声をかけることすら怖いと感じ、「何を言えば傷つけないのか」「どこまで踏み込んでいいのか」と悩むケースも少なくありません。しかし、親からの声かけは、子どもの孤独感を和らげ、再び周囲とつながるきっかけを作る重要な役割を果たします。

声をかける行為は、単にコミュニケーションを取るだけでなく、子どもの心に寄り添い、安心感を与えるための大切な行動です。不登校の子どもは、外の世界との接触を断ち、心を閉ざしていることが多いため、親が積極的に「君を見ているよ」「君の味方だよ」というメッセージを伝えることが、第一歩となります。

とはいえ、声をかける際に「学校に行こう」「どうして行けないの?」といった言葉をかけると、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。そのため、適切な声かけの方法を知り、子どもの気持ちを尊重する姿勢が不可欠です。

親子の会話のイメージ。

声かけの意義

声をかけることが子どもに与える影響は多岐にわたります。

  • 自己存在の肯定感: 「親は自分を気にかけている」と感じられることで、自分の存在意義を再確認できます。
  • 安心感: 自分の感情が否定されることなく受け止められると、不安や緊張が軽減されます。
  • 問題解決の土台: 自分の気持ちを言葉にする過程で、自身の悩みを整理しやすくなります。

これらの感覚が積み重なることで、子どもは親との会話を心地よく感じ、心の扉を開きやすくなります。

声かけの基盤となる姿勢

声をかける際に特に大切なのは、「子どもの感情に寄り添う姿勢」です。ただし、共感を誤った形で示すと、子どもが親に依存しすぎるリスクもあります。適切な共感とは、子どもの気持ちを理解しながらも、次の一歩をサポートする姿勢です。具体的には、以下を心がけましょう。

  1. 子どもの言葉を最後まで聞く: 話を遮らず、全体を理解する努力をしましょう。
  2. 感情を否定しない: 子どもが何を感じていても、それが自然な反応であると受け入れることが重要です。
  3. 前向きな視点を共有する: 子どもの気持ちに共感しつつ、その中に潜む希望を引き出す言葉をかけましょう。

第二章:子どもの感情を理解し受け止める

不登校の子どもたちは、心の中に様々な葛藤や不安を抱えています。それは、「学校に行けない」という結果として表れるだけでなく、日常の中で小さな行動にも影響を与えています。しかし、彼ら自身がその感情を的確に言葉にすることは難しく、親にうまく伝えられないことがほとんどです。その結果、親子の間で誤解やすれ違いが生じ、子どもの孤立感がさらに深まってしまう場合もあります。

このような状況で、親が最初にすべきことは「子どもの感情を深く理解し、受け止めること」です。子どもが何を感じ、何に悩んでいるのかを知るためには、焦らず、根気よく対話を続ける必要があります。重要なのは、子どもが感じていることを「正しい」「間違い」とジャッジするのではなく、そのままの形で受け入れる姿勢を示すことです。

親が「話を聞いてくれる」「自分を責めない」と感じられると、子どもは少しずつ心を開くようになります。

感情を引き出すための声かけ

直接的に「どうして学校に行かないの?」と問うことは、プレッシャーとなる可能性が高いです。その代わり、以下のような柔らかい表現を使うと良いでしょう。

  • 「どんなことが気になっているのかな?一緒に考えよう。」
  • 「学校のこと、もし話したくなったら教えてね。」
  • 「今日の朝はどんな気持ちだった?」

これらの言葉は、子どもに「親は自分の味方だ」と感じさせる効果があります。

【親子の会話例】

親: 「最近、学校に行くのが辛そうだね。朝起きたとき、どんな気持ちだった?」
子: 「お腹が痛かった。」
親: 「お腹が痛かったんだね。何か気になることがあったのかな?」
子: 「宿題を忘れたのが怖くて…」
親: 「宿題のことが気になっていたんだね。教えてくれてありがとう。」

このように、気持ちを丁寧に聞き出し、否定せず受け止めることで、子どもの不安を少しずつ解消できます。


第三章:自己肯定感を高めるための声かけ

不登校の子どもたちは、多くの場合「自分はダメだ」「何をやってもうまくいかない」という自己否定感に苦しんでいます。この自己否定感は、学校生活の中での失敗体験や、親や先生からの無意識のプレッシャーによって強化されることがあります。例えば、友人関係のトラブルや勉強でのつまずきがきっかけで、「自分は他の子より劣っている」と感じるようになり、そこから抜け出せなくなるケースも少なくありません。

子どもに寄り添う母親のイメージ

自己肯定感が低下すると、子どもは「どうせ何をやっても無駄だ」と考え、次第に新しいことに挑戦する意欲を失います。親として、この負のスパイラルを断ち切るためには、子どもの小さな成功や努力を見つけ、それを具体的に認めることが必要です。特に、不登校の子どもにとって「家でできた小さなこと」を褒めることは、自己肯定感を取り戻す大きな一歩となります。

努力を認める具体的な声かけ

どんなに小さな努力でも、それを肯定し、褒めることが大切です。子どもが気付いていない成長や変化を見逃さず、具体的に伝えるよう心がけましょう。

  • 「昨日は自分で起きられたね!すごいよ。」
  • 「今日は少し元気そうだね。きっと自分で頑張ったんだね。」
  • 「自分の気持ちを教えてくれてありがとう。それがすごく大事なことなんだよ。」

このように、行動や気持ちを具体的に認めることで、「自分にもできることがある」という前向きな意識を育むことができます。

【親子の会話例】

親: 「今日はちゃんと朝ごはんを食べられたね。」
子: 「うん、でも学校には行けなかった…。」
親: 「学校に行けなかったかもしれないけど、朝ごはんを食べるってすごく大事なことだよ。それだけでも一歩前進だね。」
子: 「そうかな…?」
親: 「そうだよ。毎日少しずつでいいんだから、一緒に頑張ろうね。」

子どもは親から具体的な努力を認められることで、自信を持ちやすくなります。


第四章:不安を分解する声かけ

不登校の子どもたちが抱える不安は、単純なものではありません。漠然とした「学校が怖い」「友達に会いたくない」という思いの背後には、複数の小さな不安が絡み合っています。例えば、「先生に怒られるかもしれない」「友達に嫌われている気がする」「宿題を忘れたらどうしよう」など、具体的な恐怖が積み重なり、一つの大きな不安として感じられていることが多いのです。

こうした不安をそのままにしておくと、子どもは「自分にはどうしようもない」と感じ、さらに閉じこもってしまう可能性があります。そのため、不安を「分解」して具体的な要素に切り分けることが重要です。一つひとつの要素を明確にし、「何が怖いのか」「どこから始めればいいのか」を子どもと一緒に整理することで、解決への道筋を見つけやすくなります。

不安を分解するためのフレームワーク

「感覚」「思考」「行動」のフレームワークは、親子で不安を整理する際にも役立ちます。例えば、次のように進めます。

  1. 感覚: 「何が怖いと感じる?」(身体や心の反応)
  2. 思考: 「どんなことを考えてしまう?」(頭に浮かぶ具体的なイメージ)
  3. 行動: 「そのとき、どんな行動をとっている?」(具体的な反応や行動)

これにより、不安がより具体化し、解決の糸口が見えてきます。

【親子の会話例:不安を分解する】

親: 「学校に行くのが怖いんだね。どんなところが怖いと思う?」
子: 「先生に怒られるのが怖い…。あと、友達に何か言われるのも嫌だ。」
親: 「そうなんだね。先生に怒られるのと、友達に何か言われるの、どっちが一番辛い?」
子: 「うーん、友達かな…。」
親: 「友達のことが気になるんだね。そこから少しずつ一緒に考えてみようか。」

このように、子どもの不安を分解することで、具体的な対処が可能になります。


第五章:状況に応じた声かけのアプローチ

不登校の原因や背景は、子どもによって大きく異なります。学校生活への恐怖、友人関係のトラブル、家庭内でのストレスなど、さまざまな要因が絡み合っている場合が多いです。また、同じ原因があっても、子どもの感じ方や受け止め方は一人ひとり異なるため、親が適切に対応するためには、子どもの状況を正確に理解し、それに合わせたアプローチを取る必要があります。

例えば、学校生活への恐怖心が強い子どもには、無理に学校に行かせようとするのではなく、少しずつその恐怖と向き合えるような声かけが必要です。一方で、友人関係の問題を抱える場合は、子どもがその経験を整理できるような質問や励ましが有効です。このように、状況に応じた柔軟な対応が、子どもをサポートする上で不可欠となります。

1. 学校生活への恐怖心が強い場合

学校への恐怖心が強い子どもには、無理に克服を促すのではなく、恐怖と少しずつ向き合う機会を作ることが重要です。

  • 「学校のこと、少しだけでも話してくれると嬉しいよ。」
  • 「どんなことが怖かったのか、一緒に考えてみようか?」

2. 対人関係の問題が原因の場合

友達や先生との関係が不登校の原因である場合、子どもの感情を受け止めつつ、自分の気持ちを整理できるよう手助けをします。

  • 「友達と何かあったのかな?どんなことが気になる?」
  • 「話したくなったら、いつでも教えてね。」

3. 親への依存が強い場合

親への過度な依存が背景にある場合は、子どもが少しずつ自立できるよう促します。

  • 「自分でできること、試してみるのはどう?」
  • 「少しだけ挑戦してみたら、できたことを教えてね。」

【親子の会話例1:学校生活への恐怖心が強い場合】

親: 「学校のことを思い出すと、どんな気持ちになるのかな?」
子: 「うーん…怖いし、嫌だ。」
親: 「怖いって感じるんだね。どんなところが一番怖いと思う?」
子: 「先生が怒るのが怖い…。あと、みんなに何か言われそうで…。」
親: 「先生のことと、みんなに何か言われそうなことが気になるんだね。どうしたら少しでも安心できるか、一緒に考えてみる?」
子: 「…うん、ちょっと考えてみる。」
親: 「ありがとう。少しずつでいいから、何でも話してくれると嬉しいよ。」

【親子の会話例2:対人関係の問題が原因の場合】

親: 「最近、学校で何か気になることがあった?」
子: 「友達とうまくいってない気がする…。」
親: 「そっか、友達のことが気になるんだね。どんなことがあったのか、もし話せたら教えてくれる?」
子: 「うーん…〇〇ちゃんとケンカして、仲直りしたけど気まずい…。」
親: 「〇〇ちゃんとケンカしたんだね。仲直りできたのはすごいことだけど、まだ気まずい感じがするんだね。」
子: 「うん…。どうしたらいいかわからなくて…。」
親: 「無理に解決しなくても大丈夫だよ。でも、少しずつ自分の気持ちを伝えてみるのもいいかもしれないね。何か手伝えることがあったら言ってね。」

第六章:声かけを続けることの重要性

不登校の解消には時間がかかることが多く、一朝一夕に状況が変わることはありません。そのため、親が継続的に声をかけ、子どもを支え続けることが大切です。特に、不登校が長期化している場合、親が焦りや苛立ちを感じることもありますが、それを子どもにぶつけてしまうと、逆効果になる可能性があります。

声かけを続けることは、子どもにとって「親はいつでも自分を見守ってくれている」という安心感を与えます。また、継続的な声かけを通じて、少しずつ親子間の信頼関係が深まり、子どもが再び心を開く土台を作ることができます。

母と娘の会話のイメージ

継続的な声かけのポイント

  1. 一貫性を保つ: 毎日ポジティブな言葉をかける習慣を作りましょう。
  2. 小さな変化を見逃さない: 子どもの小さな努力や変化を認めることが大切です。
  3. 否定的な言葉を避ける: 「どうしてできないの?」ではなく、「どこが難しいと思う?」といった前向きな表現を意識しましょう。

【親子の会話例1:小さな変化を見逃さない】

親: 「最近、朝は少し早く起きられるようになったね。」
子: 「うん、でも別に学校に行けるわけじゃないし…。」
親: 「学校に行けることも大事だけど、朝早く起きられるってすごいことだよ。一歩前に進んでいる感じがするな。」
子: 「そうかな…。」
親: 「そうだよ。少しずつでいいんだから、進んでいることを一緒に喜ぼうね。」

【親子の会話例2:否定的な言葉を避ける】

親: 「今日はどうしていたの?」
子: 「ゲームしてた…。」
親: 「そっか、ゲームを楽しんでたんだね。どんなゲームだったの?」
子: 「新しいやつ。少し難しかったけど、クリアできた!」
親: 「難しいのにクリアできたんだ!すごいね。それ、きっと集中して頑張ったからだよ。」
子: 「うん…。」
親: 「その集中力、他のことにも活かせたらすごいと思うな。何か挑戦してみたいことがあったら教えてね。」

第七章:親自身のケアも大切に

不登校のお子さんを支える親御さんにとって、子どもの状況や気持ちを受け止めながら日々を過ごすことは、時に大きな精神的・身体的負担となることがあります。親自身が疲れ切ってしまうと、知らず知らずのうちに子どもへの接し方が硬直的になったり、焦りや苛立ちが子どもに伝わってしまうことがあります。子どもと向き合うためには、まず親自身が心に余裕を持つことが大切です。

親のケアが必要な理由

親がストレスを感じている状態では、子どもの気持ちや行動を冷静に受け止めることが難しくなる場合があります。その結果、子どもに「理解されていない」「責められている」と感じさせる可能性が生じるのです。一方で、親が自分を大切にする姿勢を持つことで、家庭全体がより落ち着いた雰囲気になり、子どもも安心して過ごせる環境が整います。

親自身をケアする姿勢が子どもに与える影響

親が自分を大切にしている姿を見せることは、子どもに「自分も大事にしていいんだ」というメッセージを伝えることにつながります。親が心の余裕を持つことで、子どももリラックスした状態で親との会話や時間を楽しむことができるようになるのです。


結論:声かけは未来を切り開くカギ

不登校のお子さんを支える親の役割は、子どもの心を温かく包み込み、社会とのつながりを取り戻すための架け橋となることです。しかし、その過程は決して平坦ではなく、時間と忍耐が必要です。

声かけがもたらす変化

親の声かけは、子どもの心に響き、孤独感を和らげると同時に、再び自分自身の力を信じるきっかけとなります。たとえ小さな一歩であっても、その積み重ねが子どもの未来を明るく照らす礎となるのです。

親自身も成長する機会として

また、不登校の経験は親自身にとっても、子どもとの絆を深め、自己成長を促す貴重な機会となるでしょう。親も子どもも無理をせず、それぞれのペースで歩んでいくことが、長い目で見て最善の結果を生むはずです。

最後に、本記事でご紹介した声かけの方法や考え方が、少しでもお役に立つことを願っています。焦らず、子どもの心に寄り添いながら、日々の対話を大切にしてください。その積み重ねが大きな一歩となるでしょう。

各章要点必要な行動
声をかける意義と基盤声をかけることは、信頼関係の構築と不登校解消の第一歩。孤立感を和らげ、自己肯定感を高める役割を持つ。子どもの感情に寄り添い、否定せず受け止める。共感を示しつつ、前向きな声かけを続ける。一貫してポジティブな態度を心がける。
感情の理解と受容子どもは感情を言葉にするのが難しいため、親が適切に感情を引き出し受け止めることが重要。プレッシャーを与えない表現が効果的。「どんなことが辛い?」など、柔らかい言葉で感情を引き出す。話を遮らず、最後まで聞き、子どもの気持ちを肯定する。安心感を与える対話を心がける。
自己肯定感を高める子どもは自己否定感を抱きがち。小さな努力や行動を具体的に認めることで、前向きな意識と自己肯定感を育てる。努力を褒める際は具体的に伝える。「朝起きられたね」など、小さな成功体験を認める。結果ではなく過程に目を向け、前向きな変化を励ます。
不安の分解不安は漠然とした大きな塊ではなく、複数の要素から成る。これを分解することで、子どもが具体的に向き合いやすくなる。「どんなところが怖い?」と不安を分解し、具体化する。フレームワーク(感覚・思考・行動)を活用して、一つずつ取り組む。子どものペースに合わせる。
状況別の対応不登校の原因は子どもごとに異なる。学校生活の恐怖、対人関係、親への依存など、それぞれに応じた柔軟な対応が必要。子どもの状況を観察し、適切な声かけを選ぶ。例えば、学校生活への恐怖心が強い場合は無理をさせず、対人関係の問題には感情を丁寧に整理するサポートをする。
声かけの継続声かけの効果はすぐには現れないが、継続することで子どもの心の支えとなる。一貫性と忍耐が重要。日々ポジティブな言葉をかける習慣を作る。小さな変化を見逃さずに認め、前向きな声かけを心がける。否定的な表現を避け、子どものペースに寄り添う。
親自身のケア親が心に余裕を持つことも重要。無理をすると、子どもへの接し方に影響が出るため、自分自身を労る習慣を持つ。一人で抱え込まず、家族や専門機関に相談する。趣味やリラックスできる時間を持つ。同じ悩みを持つ親たちとの交流を通じて孤独感を軽減する。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校を「解決」する、ということ

不登校を「解決」するということの記事見出し画像。

目次


ToCo株式会社のCEO、青山登と申します。私たちの会社は、不登校のお子さんやご家庭を支援する活動をしています。

あなたは、不登校を「解決」すると聞いて、どう感じますか?

私の子どもが不登校になった時、「不登校を解決したい」という気持ちは一切起こりませんでした。ただ、「この苦しんでいる状態を何とかしてあげたい」という思いだけがぐるぐると巡っていました。
「不登校を解決する」とは、一見すると「子どもが学校に戻ること」や「学校生活を普通に送ること」を指しているように聞こえます。けれども、不登校という状態を「何かを直す」という視点から見てしまうと大事なものが見えなくなってしまいます。

思い返せば、私は当初、自分の子どもを理解していないどころか、自分自身の行いすら分かっていませんでした。不登校が始まった当初、私は何度も「なぜこうなってしまったのか?」と自分に問いかけました。
今だから分かりますが、答えは実にシンプルで、同時に胸が締めつけられるものでした。問題の大きな原因は、他ならぬ「私自身」にあったのです。

私は当時、子どもの中学入学という大きな環境の変化に対して、親として何一つ向き合えていませんでした。新しい環境でどのような思いをしているのか、学校生活についての話を聞くこともありませんでした。「もう中学生だから、一人でやれるはずだ」と勝手に思い込み、適切なサポートを怠っていたのです。さらに、うまくいかないことがあれば「努力が足りないからだ」と、まるで根性論のような言葉をぶつけていました。その一言一言が、どれだけ子どもの心を傷つけていたのかを考えると、今でも悔やんでも悔やみきれません。

子どもの不登校をきっかけに、私は「親」という存在について深く考え直すようになりました。私は親である以上、子どもを育てる責任があります。しかし、その責任を勘違いしていました。「育てる」とは、子どもに目標を押し付け、親の価値観を無理に伝えることではありません。それは、子どもと共に歩み、共に悩み、共に成長していく過程を共有することなのです。

再登校の支援を通じて多くの家庭から学ぶ

各ご家庭の支援をさせていただく中で、考え方の軸を一つ持つようになりました。
それは、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味は、学校に戻ることではなく、不登校も含めて、子どもが抱える悩みや苦しみを共有し、親子で話し合える関係性を築くことだということです。子どもの状態がどんなものであれ、その存在を受け入れ、共に歩む姿勢こそが大切なのです。

不登校の経験は、私の価値観を変えました。それまでは、学校に通うことが当たり前で、通えない状態が「問題」とみなされる風潮に、無意識のうちに染まっていたのです。しかし、子どもの不登校と向き合う中で、「当たり前」と信じていたものがどれほどの重荷を子どもに背負わせていたのかを知りました。それは、社会や学校、さらには親である私自身の固定観念が作り上げたものに過ぎなかったのです。

ある日、私の子どもがぽつりと口にした言葉がありました。「学校に行けない自分はダメな人間だと思う」。この言葉は、私の胸に鋭く突き刺さりました。学校という一つの枠組みに収まらないことが、なぜ「ダメな人間」へと繋がってしまうのでしょうか?そして、それを子ども自身にそう感じさせてしまったのは、私だったのです。

私は親として無意識のうちに「学校に通うこと」「良い成績を取ること」「ルールを守ること」を絶対的な価値観として子どもに示してしまいがちでした。そして、それが達成できない子どもを見たとき、「努力が足りない」「何かが間違っている」と考えてしまうのです。しかし、本当にそうでしょうか? そもそも「学校に通うこと」や「社会の枠組みに適応すること」が、子ども一人ひとりの幸せを保証してくれるのでしょうか? 

私は、この問いに向き合う中で、「不登校を解決」という言葉自体に対する違和感を抱くようになりました。不登校を「解決する」という表現には、どこか「問題を直す」というニュアンスが含まれています。しかし、不登校は本当に「直すべき問題」なのでしょうか? もしもそれが子ども自身の助けを求めるサインだとしたら、その声を無視して無理やり「直す」ことは、本質的な解決ではなく、むしろ事態を悪化させるだけではないでしょうか。

私自身の子どもとの関係は、不登校という経験を経て大きく変わりました。以前の私は、親として子どもの成長を見守るどころか、自分の理想を押し付け、子どもを「型にはめる」ことにばかり意識を向けていました。しかし、子どもが学校に行けなくなり、心の中に抱えていた悩みを少しずつ打ち明けてくれるようになった時、初めて「親としての本当の役割」を考えるようになったのです。

親の役割とは

親が子どもを育てる目的は、子どもを「成功させる」ことではありません。子どもがどんな状況にあってもその存在を受け入れ、一緒に歩むことです。たとえ学校に行かなくても、将来の進路がどうであっても、子どもが自分自身を肯定できるような関係を築くことが大切なのです。

再登校支援の現場では、さまざまなご家庭の状況や子どもたちの声を耳にします。「親が自分の気持ちを理解してくれない」と感じる子どもがいれば、「子どもにどう接していいのか分からない」と悩む親御さんもいます。どちらの声にも共通しているのは、互いに相手の気持ちを知りたい、理解したいという思いがあることです。しかし、その思いが伝わらないことで、家族の中に深い溝が生じてしまうのです。

大人は時に、自分の方が「正しい」と思い込んでしまいます。特に、子どもが何か問題を抱えているように見えるとき、それを「直さなければならない」と考え、子どもの声に耳を傾ける前に解決策を押し付けてしまうのです。しかし、子どもの気持ちを聞くことなく、一方的に「正しさ」を伝えることは、子どもに「自分の気持ちは無視されている」と感じさせてしまいます。それは、親子の関係を崩壊させる大きな原因になり得るのです。

私の子どもが不登校を経て、少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになったとき、私は子どもの「言葉にできない声」に耳を傾ける姿勢を持つことの大切さに気づきました。子どもは、必ずしも自分の感情や悩みを明確な言葉で表現できるわけではありません。そのため、親である私たちが、子どもの言葉の裏にある本当の気持ちをくみ取ろうとする努力が必要なのです。

私は、ToCoの活動を通じて、これまで以上に多くの家庭や子どもたちを支援していきたいと考えています。そして、その活動を通じて、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味を、社会全体に問いかけていきたいのです。不登校という状況が、単なる「問題」ではなく、親子の新たな可能性を見出すための現れであることを、多くの人に知っていただけたらと思っています。

「学校に行けない」の底にあるもの

不登校という状況は、表面的には「学校に行けない」という形で現れます。しかし、その背後には、子ども自身が抱えるさまざまな葛藤や悩みが存在します。親である私たちが本当に向き合うべきなのは、この表面的な「学校に行けない」という事実ではなく、子どもの内面で何が起きているのかを理解しようとする姿勢です。

私の子どもが不登校になった頃、私は「何とかしなくては」という焦りに駆られていました。子どもをカウンセリングに連れて行ったり、無理に学校に行かせようとしたりしました。しかし、これらの行動が子どもにとってどれほどの負担を強いていたのかに気付くのに、時間がかかりました。子どもは、親である私の期待や圧力に押しつぶされそうになっていたのです。

その後、私は無理に何かを変えようとするのをやめました。子どもが話したい時に話を聞き、黙っていたい時にはそっと寄り添うことを心がけるようになりました。すると、子どもは少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになりました。彼が語ったのは、自分がいかに孤独を感じ、誰にも理解されないと思っていたかということでした。そして、その孤独感の大きな原因は、私が彼を「学校に行ける普通の子ども」としてしか見ていなかったことにあると気付かされました。

親は、子どもを「普通」であることに縛りつけてはいけないと考えています。それは、子どもの個性や可能性を否定する行為と同じです。私たちは子どもを「型」に当てはめるのではなく、一人の人間として尊重し、その子どもがどんな人生を歩むべきかを共に考えるべきなのです。その過程で、子どもが学校に行くことが必要だと思えば、それを支援すれば良いですし、別の道を選ぶのであれば、その道を全力で応援することが親の役割だと思います。

不登校は、決して親や子どもの失敗ではありません。それは、これまでのやり方や価値観を見直し、新たな関係を築くためのきっかけです。私たち親がその事実に気付き、子どもと共に前に進む覚悟を持つことができれば、不登校という状況は単なる「問題」ではなく、大きな成長の機会となり得ます。

ToCoを立ち上げた理由の一つは、カウンセラーや児童心理司たちとからの学びを経て、このような視点の大切さを多くの家庭に届けたいという想いがあったからです。不登校に直面するご家庭は、孤独や不安を抱えることが多いです。しかし、同じ経験を持つ人々が繋がり、支え合うことで、その孤独感や不安感は大きく軽減されます。そして、子どもとの関係を一度見直してみることで、子どもにとっての安心できる居場所が増えることを願っています。

私たちは、親としての役割に対する考えを一度見直し、「不登校を解決する」とは何を意味するのかを問い直す必要があります。それは、親子の新しい可能性を見出し、子どもが自分らしく生きられる道を模索するプロセスなのです。ToCo株式会社を通じて、そのプロセスを支援し、多くの家庭が笑顔を取り戻すお手伝いができればと願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

論文紹介:不登校の実情と対応-第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会

不登校の実情と対応-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。今回は、不登校に関する論文、「第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会2023年 教育講演『不登校の実情と対応』(藤田光江著)」をもとに、不登校の実情や対応策について考察を加えながらお話しいたします。この文章では、特に小中学生のお子様が不登校であるお母様に向けて、具体的な視点や助けとなるアプローチをお届けします。


第1章 不登校という現実とその定義

日本では、不登校が子どもたちやその家族にとって深刻な社会的問題となっています。藤田光江氏の論文によると、文部科学省は不登校を以下のように定義しています。

「心理的、情緒的、身体的、または社会的な要因や背景により、児童生徒が30日以上学校を欠席し、登校しない、またはしたくてもできない状況」

さらに、2024年の文部科学省の統計によれば、不登校児童生徒の数は34万6482人に上りました。この数字は、不登校が「特殊なケース」ではなく、「どの家庭にも起こり得る現象」であることを示しています。この認識を持つことが、最初の一歩です。


第2章 子どもの「小さなサイン」を見逃さない

不登校は突然始まるものではなく、多くの場合、小さなサインが積み重なっていく過程があります。藤田氏の論文によれば、不登校の初期徴候として以下のような身体症状が多く見られるとされています。

「学校がある日の朝に頭痛や腹痛を訴える」「朝起きられない」「生活リズムの乱れ」などの身体的な訴え

これらは単なる体調不良ではなく、心理的な負担が身体に現れた可能性を示唆しています。また、藤田氏の分析によると、不登校のきっかけとして、子どもが「先生のこと」「友人関係」「生活の乱れ」「身体の不調」を挙げるケースが多いとされています。

これに対して保護者の方ができる第一歩は、子どもの発言や行動を注意深く観察し、サインを見逃さないことです。例えば、以下のような点に着目してください。

  • 頻繁に体調不良を訴えるタイミングや状況を記録する。
  • 学校や友人関係の話題に対する子どもの反応を観察する。
  • 食欲や睡眠の質が以前と比べて変化していないか確認する。

こうした観察は、子どもが抱える問題を早期に発見するだけでなく、後に専門家へ相談する際の重要な資料にもなります。


第3章 不登校の背景にある複雑な要因

不登校の原因は、単一の要因だけで説明できるものではありません。藤田氏の論文では、以下のような複数の要因が不登校の背景にあると指摘されています。

「心理的要因(自己評価の低下、友人関係のトラブル)」「身体的要因(起立性調節障害、慢性緊張型頭痛、過敏性腸症候群など)」が複雑に絡み合っている

例えば、起立性調節障害により朝起きるのが困難になり、それが学校への遅刻や欠席を引き起こすことがあります。また、慢性緊張型頭痛は、子どもが感じるストレスが頭痛として現れることが多いとされています。

親が最も気をつけるべきなのは、子どもの「仮病」と決めつけないことです。不登校に関連する身体症状は、子どものストレスや不安の「SOSサイン」であり、親がこれを理解し、適切に対応することが子どもを救う第一歩となります。

子どもに寄り添う母親のイメージ

第4章 専門家との連携とその活用法

不登校に直面した場合、保護者がどのタイミングでどこに相談すればよいのか迷うことが多いでしょう。藤田氏は、医療機関や学校のカウンセラー、地域の支援機関との連携の重要性を強調しています。

「初期の段階ではかかりつけ医が身体症状を確認し、器質的な疾患がない場合は心理的要因に着目する」ことが推奨される

また、学校内では養護教諭やスクールカウンセラーとの連携が、不登校の子どもを支えるうえで重要な役割を果たします。もし子どもが学校に行くこと自体を拒否する場合、地域の適応指導教室やフリースクールなどの利用が効果的とされています。

こうした専門家や支援機関を利用する際には、親が「完璧な解決策を求める」よりも、「子どもに合った小さな改善を見つける」姿勢で臨むことが大切です。小さな成功体験を積み重ねることで、子ども自身が少しずつ自信を取り戻すことにつながります。


第5章 支援的対話と子どもへの寄り添い方

不登校の子どもと接するうえで、お母様が果たす役割は非常に大きいものです。藤田氏の論文では、支援的精神療法の重要性が繰り返し強調されています。

「治療者が子どもの悩みや不安を傾聴し、その気持ちを理解しながら、子どもの存在や努力を支持することが基本である」

この姿勢は、お母様にも当てはまる重要な心構えです。具体的には、子どもの言葉を否定せず、批判せず、まずはその気持ちに寄り添うことが求められます。たとえば、次のような対話を心がけると良いでしょう。

  • 子どもが「学校に行きたくない」と言った場合:「そうなんだね。どうしてそう思うのか、話してみてくれる?」と優しく問いかける。
  • 子どもが「先生が嫌い」と言った場合:「先生にどんなことをされて嫌だったの?」と具体的な感情を引き出す。
  • 子どもが「誰にも話したくない」と言った場合:「分かったよ。話したくなったらいつでも言ってね」と受け入れる姿勢を示す。

藤田氏も述べているように、不登校の子どもに「頑張れ」という言葉をかけるのは逆効果になることが多いです。代わりに、「どんな状態でも、あなたは大切な存在だよ」というメッセージを伝えることが重要です。


第6章 行動療法と子どもの自信を引き出すアプローチ

藤田氏の論文では、行動療法の一環として「登校カレンダー」や「頭痛ダイアリー」の利用が挙げられています。

「登校カレンダーは、少しでも登校したらお気に入りのシールを貼る方法で、モチベーションの向上につながる」
「頭痛ダイアリーは身体症状を記録するだけでなく、生活リズムの把握にも役立つ」

これらの方法は、子どもが達成感を得られるような仕組みを作ることが目的です。特に、何らかの形で「成功体験」を積み重ねることが、不登校解決への大きな一歩となります。

これを家庭でも応用する方法として、以下のような工夫が考えられます。

  • 目標の分解:例えば「週1回登校する」という大きな目標を、「朝制服に着替える」「学校まで行ってみる」といった小さな行動に分解する。
  • 成功の視覚化:カレンダーやノートに、できたことを記録し、本人が目で見て成長を実感できるようにする。
  • 子どものペースを尊重:無理に進めるのではなく、子どもが自分の意思で一歩を踏み出せるように環境を整える。
Fig. 1 不登校児・不規則登校児への対応

第7章 親の葛藤と向き合うために

お母様方にとって、子どもの不登校は時に「どうしてうちの子だけが」と感じさせるものかもしれません。ですが、この苦しい状況の中で、お母様ご自身の感情に向き合うことも忘れてはいけません。藤田氏も指摘しているように、不登校の対応では、親が「子どもを治さなければ」という強迫観念にとらわれることで、かえって子どもの状態を悪化させてしまうケースが見られます。

「保護者は子どもの症状を治そうと躍起になるほど、子どもの訴えが強くなることがある」

この状況を避けるためには、親が自身の心を保つための方法を見つけることも重要です。以下のようなアプローチが役立つでしょう。

  • 信頼できる人に相談する:親自身の不安を共有できる友人や家族、専門家の存在が心の支えとなります。
  • 情報収集をしすぎない:不登校についての情報を集めすぎることで、かえってプレッシャーを感じる場合もあります。情報は必要最低限に留めましょう。
  • 自分を責めない:子どもの不登校は親の責任ではありません。この点を強く意識してください。

第8章 不登校に向き合う「長期的視点」

不登校の解決には短期的な成功を期待するのではなく、長期的な視点を持つことが求められます。藤田氏も、不登校解決の目標として次のように述べています。

「最終目標は、子どもが元気になり、打ち込める何かを見つけ、将来社会に出ていくこと」

この言葉は、不登校そのものを「解決」することがゴールではないことを示しています。むしろ、「子どもが自分らしく生きる力を育むこと」が最終的な目標と言えます。

親としてできることは、目先の「学校復帰」にこだわるのではなく、以下のような目標を念頭に置くことです。

  • 子どもが自信を取り戻すプロセスを見守る。
  • 子どもが安心できる環境を家庭内外に作る。
  • 子どもが新しい興味や関心を見つけられるよう支援する。

第9章 おわりに:親と子どもの未来のために

不登校は、一朝一夕で解決する問題ではありません。それでも、親が子どもの変化を受け入れ、小さな一歩を共に歩むことで、未来への扉が少しずつ開いていくのです。藤田氏も以下のように結論づけています。

「不登校は誰にでも起こりうることであり、子どものあるがままを受け止め、支え続けることが重要」

お母様方が子どもと共に過ごすこの時間は、確かに試練の時期かもしれません。しかし、どうか焦らず、子どもの未来を信じて寄り添い続けてください。

参考URL

教育講演-不登校の実情と対応 藤田 光江


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

論文紹介:不登校児童生徒の再登校傾向に応じた教師による支援


目次


第一章:はじめに ― 不登校問題と教育現場の挑戦

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、ToCo株式会社という学校における不登校予防サービスを提供する企業で顧問を務めております。

不登校という現象は、単に教育の遅れを生むだけではなく、当事者の精神的・社会的な成長にも深刻な影響を及ぼす問題です。それゆえ、この課題をどう乗り越え、当事者を支援していくかは、教育界全体の喫緊の課題であると言えます。

不登校は特定の環境や性格による単純な問題ではなく、多様な要因が複雑に絡み合っています。そのため、対応策も一律ではなく、児童生徒の個別の状況に応じた柔軟な支援が求められます。本稿では、山本奬氏による論文「不登校児童生徒の再登校傾向に応じた教師による支援」[岩手大学大学院教育学研究科研究年報 第8巻 (2024. 3) 159-173]を基に、不登校の児童生徒に向き合うための具体的な知見を共有するとともに、学校現場での実践に役立てていただくことを目的としています。

山本氏の研究は、不登校児童生徒の心理的な状態や再登校に向けた準備段階を、教師の視点から詳細に分析し、支援の在り方を明らかにしたものです。この研究が重要なのは、単なる一般論に留まらず、現場の教師が直面する課題を具体的に掘り下げ、それに応じた実践可能な解決策を提案している点です。本稿では、同論文の内容を詳細に解説するとともに、その知見を教育現場でどのように活用できるのかを議論します。

本稿のまとめ

要点必要な行動
混乱と受容の評価が重要不登校児童生徒の心理状態を「混乱」と「受容」の二軸で評価し、それに基づいた支援を計画する。
受容が高い段階で支援を強化「受容」が高まった児童生徒には、意欲喚起や人間関係の再構築を通じて再登校への準備を進める。
混乱が高い場合は安全基地を提供「混乱」が高い場合は、無理に登校を促さず、保健室や別室など安心して過ごせる環境を整える。
家庭との協力が重要保護者と連携し、児童生徒の心理状態や支援計画を共有しながら、家庭内での支援体制を構築する。
再登校後も持続的支援を再登校後も心理状態をモニタリングし、フォローアップを行うことで再発を防ぐ。
教師間・学校全体で連携を取る支援チームを組織し、学級担任、養護教諭、教務主任が役割を分担しながら児童生徒をサポートする。
外部機関や地域と協力専門家や地域コミュニティと連携し、児童生徒が社会とのつながりを持てるよう支援する。

第二章:不登校児童生徒の多様性と再登校のステップ

不登校の背景には、実に多様な要因が存在します。家族関係の問題、学業の困難、人間関係のトラブル、さらには発達障害や精神的疾患など、その原因は一人ひとり異なります。さらに興味深いことに、不登校の児童生徒がその状況に至る経過も多種多様です。一部の生徒は、特定のトラウマや出来事をきっかけに突然学校へ行かなくなります。一方で、じわじわと学校生活への適応が困難になり、最終的に不登校に至るケースもあります。

山本氏は、不登校の児童生徒が学校に戻るまでのプロセスを「再登校傾向」と呼び、これを測定するための方法論を研究しています。同氏の研究によれば、再登校傾向を正確に評価するためには、以下の二つの心理的因子に注目する必要があるとされています。

  1. 混乱
    児童生徒が自身の不登校状況を認識し、将来への不安や後悔、自己否定的な感情に直面している状態を指します。たとえば、「どうして学校に行けなくなったのだろう」と考えたり、「これからどうなるのか」という恐怖感を抱く状態がこれに該当します。
  2. 受容
    自らの不登校という現実を受け入れ、それに向き合おうとする姿勢を表します。具体的には、「今の自分を認めて、できることから始めよう」と考えたり、前向きな態度を取り戻す段階が含まれます。

この二つの因子は、矛盾しているように見えるかもしれませんが、実際には児童生徒の再登校への道筋において極めて重要な役割を果たします。たとえば、「混乱」が高まり、「受容」が低い場合、児童生徒は不安定な状態にあり、支援を試みても効果が現れにくいことが示されています。一方、「混乱」が高い状態でも「受容」が伴っている場合は、再登校への可能性が高まることがわかっています。

この研究結果は、不登校児童生徒の支援における一つの重要な指針を示しています。つまり、支援を行う際には、児童生徒がどの段階にいるのかを正確に把握し、それに応じたアプローチを選択する必要があるのです。


第三章:再登校傾向を測定するための実践的アプローチ

山本氏の研究では、再登校傾向を測定するための具体的な手法が提案されています。同氏は、多くの教師を対象としたアンケート調査を実施し、不登校児童生徒の心理状態や行動特性を測定するための質問項目を開発しました。その結果、再登校傾向を評価するための14の質問項目が選定されました。

山本氏が提案する14項目の質問
1. 最近、自分の不登校について考えることが多いですか?
2. 将来のことを考えると不安になりますか?
3. 現在の状況について後悔する気持ちがありますか?
4. 「学校に行けていたら」と思うことがありますか?
5. 今の自分を受け入れようとしていますか?
6. 目の前の課題に集中しようとしていますか?
7. 不登校の原因について冷静に考えられるようになりましたか?
8. 自分が学校に戻るイメージを描けますか?
9. 不安なことを誰かに話すことができますか?
10.学校生活に対する興味や意欲が戻りつつありますか?
11. 自分自身について前向きに考えられることが増えましたか?
12. 再登校への計画を少しずつ立てられていますか?
13. 家族や周囲の人々の支えを感じていますか?
14. 将来的な自分の目標について話せるようになっていますか?

これらの項目は、児童生徒の「混乱」と「受容」の度合いを把握するために設計されており、教師が簡便に活用できるよう工夫されています。たとえば、「最近、自分の不登校についてどのように感じていますか?」という質問に対して、5段階評価で回答を求める形式が採用されています。このような評価方法は、児童生徒の心理状態を客観的かつ定量的に把握する上で非常に有用です。

さらに興味深い点は、再登校傾向が「混乱」と「受容」のバランスによって大きく左右されるという発見です。たとえば、「混乱」が低く「受容」が高い児童生徒は、比較的スムーズに学校生活へ戻ることができる一方で、「混乱」と「受容」のいずれも低い場合は、支援の効果がほとんど見られないことが判明しています。この結果は、教師が支援方針を決定する際の重要な指針となるでしょう。


第四章:具体的な支援方法 ― 再登校傾向に基づく実践

不登校児童生徒の再登校支援において、最も重要な点は、「混乱」と「受容」の状態を正確に評価し、それに応じた支援を実施することです。本章では、山本氏の研究に基づき、それぞれの状態に適した具体的な支援方法について詳しく述べます。

1. 「混乱」が高く、「受容」が低い場合

この状態の児童生徒は、自分の不登校について深く考えることを避けているか、問題を認識しつつもその解決に向けた意欲が見られない状況にあります。こうした児童生徒に対して無理に登校を促すことは逆効果になり得ます。むしろ、次のようなアプローチが求められます。

  • 心理的安全基地の提供
    児童生徒が安心して過ごせる環境を整えることが重要です。例えば、保健室や学校内の別室、あるいは家庭での支援が考えられます。この段階では、登校を直接促すのではなく、学校や教育活動に対する恐怖心や抵抗感を和らげることを優先します。
  • 関係構築のための家庭訪問
    教師が児童生徒の家庭を訪問し、保護者と協力しながら信頼関係を築くことが有効です。ただし、この際には児童生徒のプライバシーに配慮し、訪問がプレッシャーにならないよう工夫する必要があります。
  • 自己表現の支援
    児童生徒が自分の気持ちを言葉にすることが難しい場合、絵や日記など、言語以外の手段で感情を表現できる機会を提供します。これにより、混乱の原因を少しずつ明らかにすることができます。

2. 「混乱」と「受容」が共に高い場合

この状態は、再登校への可能性が最も高い段階です。児童生徒が現状を受け入れつつ、内面的な葛藤に直面しているため、教師の適切な介入が大きな成果をもたらします。

  • 積極的な意欲喚起
    学校生活において達成感を味わえるようなタスクや役割を提供します。例えば、学級活動の小さな役割を任せたり、得意な教科の課題を出したりすることで、自信を取り戻す手助けを行います。
  • 目標の共有と段階的な計画作成
    教師と児童生徒が一緒に目標を設定し、それを達成するための具体的な計画を立てます。例えば、まずは週に1回登校する目標を設定し、その後段階的に頻度を増やす方法が有効です。
  • 友人関係の再構築
    児童生徒が信頼できる友人と再び関わる機会を作ります。例えば、グループ学習や校外活動を通じて自然な形で関係を再構築できるよう支援します。

3. 「混乱」が低く、「受容」が高い場合

この段階の児童生徒は、比較的安定しており、再登校が現実的な目標となります。ただし、学校生活への完全な適応には時間がかかる場合もあるため、慎重なアプローチが求められます。

  • 学習支援の強化
    学校での学習に遅れが生じている場合は、補習や個別指導を通じてサポートします。学力の向上は児童生徒にとって重要な自己肯定感の源となります。
  • 日常的な登校習慣の確立
    学校生活に必要なルーティンを再構築します。例えば、登校時間に合わせて家庭で準備を進める習慣をつけたり、短時間の登校から始めて徐々に時間を延ばす方法が効果的です。
  • 自己評価の促進
    児童生徒が自らの成長を実感できるような仕組みを導入します。例えば、達成した目標を振り返る「自己チェックリスト」を作成することで、再登校への自信を育むことができます。

4. 「混乱」と「受容」が共に低い場合

この段階の児童生徒は、再登校に向けた準備が整っていないため、長期的な視点での支援が必要です。この場合、無理に登校を促すのではなく、まず児童生徒の状態を安定させることが優先されます。

  • 専門機関との連携
    心理カウンセラーや医療機関と協力し、児童生徒の心理的問題を専門的にサポートします。学校だけで対応しきれないケースでは、外部の支援が欠かせません。
  • 家庭での支援の強化
    保護者に対して適切な支援方法を指導します。特に、児童生徒の感情に寄り添い、プレッシャーを与えない環境を作ることが重要です。
  • 無理のない交流機会の提供
    学校外のイベントや地域活動など、気軽に参加できる場を通じて、社会とのつながりを徐々に回復させます。
受容が高い受容が低い
混乱が高い[積極的支援段階]
・意欲喚起や目標設定を行い、再登校の計画を具体化する。
・友人関係や教師との関係を再構築する場を提供する。
・自信を育むための小さな成功体験を積ませる。
[不安定支援段階]
・心理的安全基地を提供し、無理に登校を促さない。
・家庭訪問や保護者との連携を強化し、児童生徒の状態を安定させる。
・児童生徒が自分の不安や感情を少しずつ表現できるよう支援する。
混乱が低い[安定した再登校段階]
・学習指導や日常生活のルーティンを整え、学校生活への完全な適応を目指す。
・学校内外での役割や活動を通じて、自己効力感を高める。
・教師間や学校全体で連携し、フォローアップを続ける。
[停滞段階]
・再登校の準備が整っていないため、急激な支援を避け、心理的安全を優先する。
・専門機関と連携し、児童生徒の状態を見極めた上で段階的な支援を開始する。
・家庭での過ごし方や心の安定を支援し、児童生徒が自分の状況を徐々に受け入れる環境を整える。

第五章:教育現場での実践例 ― 山本氏の提言の活用

前章では、不登校児童生徒の心理状態に応じた支援方法について述べました。本章では、それらを実際に教育現場でどのように活用するか、具体的な事例や取り組みを通じて解説します。不登校支援は一人の教師だけで完結するものではなく、学校全体として連携する必要があります。その中で、山本氏の研究がどのように役立つのか、考察を深めていきます。

1. 個別支援計画の作成

不登校児童生徒に対する支援は、個別性を尊重することが何よりも重要です。山本氏の研究を活用することで、再登校傾向を定量的に評価し、それに基づいて効果的な個別支援計画を策定できます。以下はその具体的なプロセスです。

  • 初期アセスメント
    まず、山本氏が提案する14項目の質問を活用し、児童生徒の心理状態を評価します。これにより、「混乱」と「受容」のレベルを客観的に把握します。
  • 支援目標の設定
    児童生徒の状態に応じて、短期的・中期的な目標を設定します。例えば、「毎週1回の登校を目指す」や「まずは友人とオンラインで交流する」といった具体的な目標を掲げます。
  • 支援方法の選択
    前章で述べたように、「混乱」と「受容」の状態に応じた適切な支援方法を選択します。例えば、「混乱」が高い場合は心理的安全基地を提供し、「受容」が高い場合は意欲喚起を行うといった形です。
  • 進捗のモニタリング
    定期的にアセスメントを繰り返し、支援の効果を確認します。必要に応じて計画を見直し、柔軟に対応します。

2. 教師間の連携と役割分担

不登校児童生徒を支援する際、担任教師一人だけでは対応が困難な場合があります。山本氏の提言を学校全体で共有し、役割分担を明確にすることで、支援の質を高めることが可能です。

  • 学級担任の役割
    学級担任は、児童生徒との日常的な関わりを通じて信頼関係を築きます。また、アセスメント結果に基づいて支援計画を策定し、他の教師や保護者と連携します。
  • 養護教諭の役割
    養護教諭は、心理的安全基地を提供する役割を果たします。保健室で児童生徒が安心して過ごせる環境を整え、必要に応じて心理的なケアを行います。
  • 教務主任の役割
    教務主任は、支援計画を学校全体で共有し、教員間の連携を促進します。また、外部機関との調整役を務めることもあります。
  • 学校全体での支援体制の構築
    学校内で「不登校支援チーム」を組織し、定期的にケース会議を開催することで、児童生徒一人ひとりに対する支援を継続的に行います。

3. 家庭との協力関係の構築

不登校の問題を解決するには、家庭との連携も欠かせません。山本氏の研究は、家庭環境が児童生徒の「混乱」と「受容」に大きな影響を与えることを示唆しています。以下は具体的な家庭支援の方法です。

  • 保護者への説明
    山本氏の研究結果を基に、児童生徒の心理状態をわかりやすく保護者に説明します。保護者が現状を正確に理解し、適切な対応ができるようサポートします。
  • 家庭での役割作り
    児童生徒が家庭内で自信を持てるような役割を与えます。例えば、簡単な家事を任せたり、家族との会話を増やす工夫を行います。
  • 登校準備の支援
    朝の準備や通学のサポートを保護者と協力して行います。特に、登校へのプレッシャーを軽減しつつ、少しずつ学校生活への適応を促します。

4. 成功事例から学ぶ

山本氏の研究は、多くの成功事例に基づいています。以下はその一例です。

  • ケース1:中学2年生の男子生徒
    この生徒は、学校生活への不安から不登校になりました。アセスメントの結果、「混乱」が高く「受容」が低い状態であることが判明しました。教師はまず、安全な環境を提供しつつ、少しずつ自己表現を促しました。その後、「混乱」がやや低下し「受容」が高まった段階で、意欲喚起と目標設定を行い、最終的に週3日の登校が可能となりました。
  • ケース2:小学5年生の女子生徒
    この生徒は、「受容」が高く「混乱」が低い状態にありました。教師は、学習支援を強化しつつ、クラスメイトとの交流の場を設けました。その結果、生徒は2か月後に通常の登校を再開することができました。

第六章:不登校支援の長期的視点と未来への展望

不登校問題は、短期間で完全に解決することが難しい場合が多く、支援には長期的な視点が求められます。山本氏の研究に基づくと、児童生徒の再登校傾向を適切に捉えながらも、急激な変化を期待せず、着実に前進するための支援が必要であることが示唆されています。本章では、不登校支援の持続的な取り組みや、今後の教育現場における課題と可能性について考察します。

1. 持続的支援の重要性

不登校は、一時的に学校へ戻ることができたとしても、その後再び登校が難しくなる「再発」が少なくありません。そのため、再登校後のフォローアップや持続的な支援体制が必要です。以下はその具体的な方策です。

  • 再登校後の観察期間
    児童生徒が再登校を開始した後も、定期的に「混乱」と「受容」のレベルを評価し、問題が再燃する兆候を早期に発見します。これにより、再発を未然に防ぐことが可能になります。
  • 段階的な目標設定
    再登校ができたことを「ゴール」とせず、その後の学校生活における目標を段階的に設定します。例えば、「クラスの発表会に参加する」「クラブ活動に加わる」など、児童生徒が新たなチャレンジを楽しめるよう支援します。
  • 心理的サポートの継続
    再登校後も、養護教諭やスクールカウンセラーによる定期的な面談を通じて、心理的な安定を保つためのサポートを続けます。

2. 教育現場における課題

不登校支援を行うにあたり、教育現場にはいくつかの課題が存在します。以下に代表的なものを挙げ、それぞれに対する解決策を検討します。

  • リソースの不足
    教師が不登校児童生徒への支援に割ける時間やエネルギーは限られています。この問題を解決するためには、支援スタッフの増員やToCoの不登校予防サービスなど外部機関との連携が不可欠です。また、教師が利用可能なリソース(マニュアル、研修プログラムなど)を充実させる必要があります。
  • 教師の心理的負担
    不登校支援には、教師自身の心理的な負担が伴います。支援がうまくいかない場合、教師が自責の念を抱くことも少なくありません。この課題に対処するためには、教師同士の連携を深め、困難を共有する機会を設けることが有効です。また、教師自身のメンタルヘルスを支えるプログラムの導入も必要です。
  • 保護者との連携不足
    不登校支援では、家庭との協力が欠かせませんが、保護者との意思疎通がうまくいかない場合もあります。この問題に対しては、保護者向けの説明会やワークショップを開催し、不登校に関する知識や対応方法を共有することが効果的です。

3. 社会全体での不登校支援の推進

不登校の問題は学校だけの課題ではなく、社会全体で取り組むべき問題です。山本氏の研究が示すように、再登校を促進するには、学校外のサポートが重要な役割を果たします。以下はその具体例です。

  • 地域コミュニティとの連携
    地域の支援団体やボランティアグループと協力し、児童生徒が学校外で社会とのつながりを持てるよう支援します。たとえば、学習塾や地域活動への参加を奨励することで、児童生徒の孤立感を軽減します。
  • オンライン学習の活用
    学校に通うことが難しい児童生徒に対して、オンライン学習を通じて学びの場を提供します。特に、コロナ禍以降、オンライン教育の可能性が広がっており、不登校支援にも応用できる領域が増えています。
  • 行政による支援の強化
    不登校支援のための予算を増やし、学校が専門的なリソースを利用できるようにすることが求められます。具体的には、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置を進めるべきです。

4. 山本氏の研究が示す未来への展望

山本氏の研究は、不登校支援の新たな可能性を切り開きました。「混乱」と「受容」という視点を活用することで、児童生徒の心理状態をより正確に捉え、適切な支援を提供することが可能になります。この知見を広く普及させることで、教育現場全体の不登校対応能力が向上すると考えられます。


結論として

不登校支援は、多様な要因と長期的な取り組みを要する複雑な課題です。しかし、山本氏の研究が示す知見を活用することで、教師が自信を持って児童生徒を支援するための具体的な手がかりが得られます。教育現場の皆様が、今回の論文紹介を通じて新たなヒントを得られ、児童生徒一人ひとりの成長を支える手助けとなれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

自閉スペクトラム症と不登校の関係とは?

自閉スペクトラム症と不登校の関係・対処-記事の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さまをお持ちの親御さんにとって、この状況は決して簡単なものではなく、日々さまざまな思いや葛藤を抱えておられることでしょう。そのような中で、「自閉スペクトラム症(ASD)」という特性が、不登校の背景にどのように関与しているのかを深掘りしながら、適切な対処法についてお伝えできればと思います。

自閉スペクトラム症と不登校の複雑なつながり

自閉スペクトラム症という言葉に触れると、ある種の誤解や偏見が伴うことがあります。しかし、ASDは決して「障害」として固定的に捉えるべきではなく、一人ひとりの異なる特性としての多様性の一環と考えることが重要です。その特性が、学校生活という集団環境において、時として困難さを生むことがあります。不登校はその結果として表面化しているにすぎません。

ASDの子どもたちは、主に以下のような困難を抱えることが多いです:

  • 感覚過敏:教室内の騒音、他人の話し声、蛍光灯の明るさなどが過剰にストレスとなる。
  • 社会的コミュニケーションの課題:友達との会話がうまくいかない、先生の指示の真意が理解しづらい。
  • ルールや予測可能性のこだわり:予定外の変更や、曖昧な指示に対する過剰な不安。

これらの要因が重なり、結果として学校への不安感や拒否感を強めてしまうのです。加えて、「理解されない」という感覚が強まると、自尊心が大きく傷つき、不登校が長期化する可能性が高まります。

保護者としての最初の一歩:気づきと受け入れ

まず親御さんにお伝えしたいのは、ASDの特性に由来する不登校である可能性を冷静に見極めることです。お子さまが学校に行けない理由を探るとき、多くの親御さんは「甘え」「怠け」という観点に目が行きがちです。しかし、ASDの特性が絡んでいる場合、こうした見方は当てはまらないどころか、かえってお子さまを追い詰めてしまう結果になります。

例えば、お子さまが以下のようなサインを見せている場合、ASDの可能性を考慮することが有益です:

  • 朝起きるたびに頭痛や腹痛を訴える:これはストレスが身体的な症状として現れることが多いASDの特徴です。
  • 細かいルールや順序にこだわる:例えば、朝食の順番が違うだけでパニックになることもあります。
  • 学校に行く以前に、準備段階で極度に疲弊する:制服を着る、教科書をそろえるといった日常的な準備が大きなハードルになります。

これらの特性を理解することで、「子どもに何が起きているのか」という視点を持つことができます。そして、お子さまの行動が「学校に行きたくない」ではなく、「行けない」という状態にあることを認識することが、最初の一歩です。

再登校の第一歩を支える親のアプローチ

ASDのお子さまにとって、再登校への道のりは、短期間で解決できるものではありません。ただし、親御さんのサポート次第でそのプロセスが大きく変わることも事実です。重要なのは、以下のポイントを意識したケアを行うことです。

  1. 予測可能性を高める環境作り
    お子さまが安心して日常を過ごせるよう、生活の中で予測可能性を意識的に高めることが大切です。例えば、毎日のスケジュールを視覚的に示したり、事前に次の日の予定を詳しく伝えたりする工夫が有効です。
  2. 小さな成功体験を積み重ねる
    お子さまが「できた」という実感を持つことが再登校への第一歩です。たとえば、登校ではなく、近所の公園に出かけることから始めるのも一つの方法です。その際、無理のない範囲で「ここまでできた」という達成感を味わえる工夫をしてください。
  3. 「励まし」ではなく「具体的なサポート」を
    「頑張って」「行けるよ」という励ましは、ASDのお子さまにとって逆効果になる場合が多いです。代わりに、「今日はランドセルを背負ってみよう」「学校の門の前まで行ってみよう」といった、具体的な行動目標を一緒に考える方が実際的です。
微笑む子どものイメージ

ASD特有のサポートが必要な理由

再登校の支援において、ASDの特性に寄り添ったアプローチが必要不可欠です。フリースクールや特別支援学級などの選択肢も考えられますが、これらはASDのお子さまにとっては慎重に検討すべき場合があります。ASDの特性を持つお子さまは、新しい環境への適応に時間がかかったり、特定の刺激に過敏に反応したりすることが多いため、必ずしもこれらの選択肢がストレス軽減や不安解消に繋がるとは限らないのです。

例えば、フリースクールは自由度が高い反面、活動内容が予測しにくかったり、集団の中での柔軟な対応が求められたりするため、ASDのお子さまにとって混乱や負担を増やす場合があります。また、特別支援学級もASDのお子さま全員に適しているわけではなく、他の特性を持つ子どもとのやり取りが逆にストレスとなることもあります。

そのため、ASDのお子さまには、特性やニーズに応じた個別の支援が適しています。特化したサポートを提供できる専門機関や家庭での計画的な支援の方が、再登校への道をより確実にする可能性が高いと言えます。

不登校が長期化した場合のリスクとその回避法

不登校が長期化することによるリスクは、単に学業の遅れにとどまりません。特に自閉スペクトラム症(ASD)のお子さまの場合、長期間の不登校がさらなる心理的な負担や社会的な孤立感を生む可能性があります。この状態を放置すると、「学校への拒否感」が強まり、再登校へ必要なエネルギー(閾値)が飛躍的に上昇してしまいます。

長期化に伴う主なリスクには以下のようなものがあります:

  1. 自己評価の低下
     ASDの特性を持つお子さまは、もともと自己評価を下げやすい傾向があります。「学校に行けない自分」という感覚が長期間続くことで、「自分には価値がない」「自分は周りと違う」といった否定的な自己イメージが固定化される恐れがあります。
  2. 社会的スキルの発達の遅れ
     学校生活は学業だけでなく、他者との関わり方を学ぶ重要な場です。不登校が続くと、日常的なコミュニケーションの機会が減少し、友達や先生との接し方がますます分からなくなってしまいます。
  3. 新たな心理的問題の発生
     長期間の不登校による孤立感は、さらに不安症やうつ症状を引き起こす可能性があります。特にASDの子どもは感覚的なストレスに敏感なため、孤立による不安がより深刻化しやすい傾向があります。

リスク回避のための親の役割

これらのリスクを避けるためには、親御さんの積極的なサポートが必要不可欠です。具体的には、次のような取り組みを意識してみてください。

  1. 日常生活での「繋がり」を意識する
     たとえ学校に行けなくても、他者と接する機会を意図的に作ることが大切です。親御さん自身が積極的に子どもの話を聞き、共感を示すことも「繋がり」を育む第一歩になります。また、学校の先生との継続的な連携を意識しましょう。
  2. 子どもの「やりたいこと」に寄り添う
     ASDのお子さまは特定の興味や得意分野に没頭する傾向があります。その興味を活かして学びや社会との接点を増やすことができれば、不登校中でも成長の機会を確保できます。例えば、プログラミングやアート、読書など、興味に基づいた学びを家庭内でサポートするのも効果的です。
  3. 早期の専門支援の活用
     ASDを伴う不登校では、親御さんだけで解決しようとするのは難しい場合があります。再登校への具体的なステップについて0から取り組むのではなく、実績のあるToCoのようなプロフェッショナルの力を借りる選択肢も検討ください。支援を受けることで、お子さまが感じる安心感も高まり、親御さんご自身の負担も軽減されます。

ASDのお子さまの感情や思考パターンを理解する

もしASDのお子さまが不登校になった場合、その感情や思考パターンを深く理解することが解決の糸口となります。ASDの特性を持つお子さまの多くは、表面的な行動の裏に繊細で複雑な感情を抱えています。これを理解しないまま表面的な対処に終始すると、かえって逆効果となることも少なくありません。

「行けない」気持ちの背景にあるもの

ASDのお子さまが学校に行けない理由はさまざまですが、主に以下のような心理的な背景が考えられます:

  1. 過去の失敗体験がトラウマ化している
     例えば、授業中に自分だけ答えられなかった、友達とのやりとりで誤解が生じた、先生から厳しい指摘を受けたといった経験が、ASDのお子さまにとって非常に大きなトラウマとなることがあります。
  2. 「完璧にやらなければならない」という思い込み
     ASDの特性上、「こうあるべき」という思い込みが強い場合があります。そのため、ほんの少しのミスや変更で「自分はダメだ」という感覚に陥りやすいのです。
  3. 感覚的なストレスの蓄積
     教室の騒がしさ、体育の時間の匂い、休み時間の喧騒など、通常の子どもにとって気にならない刺激が、ASDのお子さまには大きなストレスとなっていることがあります。

これらの感情や思考パターンを理解することで、親御さんは「なぜ行けないのか」の理由をより正確に把握することができます。そして、これに基づいた具体的な対応策を取ることが可能になるのです。

「行ける」を引き出すための心がけ

ASDのお子さまにとって、再登校への道は段階的なプロセスが必要です。以下の心がけがその助けになります。

  1. 小さな一歩を大切にする
     最初の目標を「学校に行くこと」ではなく、「ランドセルを準備する」「学校の周りを歩いてみる」といった小さなステップに設定してください。その成功を褒めることで、次の一歩へのモチベーションが生まれます。
  2. 感情を否定しない
     お子さまが「怖い」「行きたくない」と言ったとき、その感情を否定せず、「そう感じているんだね」と受け止めることが重要です。それにより、お子さまが安心感を得て、「次はどうすればいいか」を一緒に考えることが可能になります。
  3. 柔軟な学び方を取り入れる
     ASDのお子さまは学校の形態に馴染みにくい場合もありますが、自宅での学びや趣味を通じた知識の吸収には興味を持つことがあります。お子さまの特性や興味を活かした活動(オンライン学習、図鑑での調べ物、実験キットの使用など)を日常生活に取り入れることで、学びの楽しさを実感でき、学校への興味を少しずつ取り戻すきっかけになります。

不登校や自閉スペクトラム症を一緒に乗り越えるためには、まずお子さまを理解し、寄り添い、専門家のサポートを受けながら段階的に取り組むことが大切です。

まとめ

要点必要な行動
ASDは不登校の背景に影響を与える特性があるお子さまの感覚過敏やコミュニケーションの課題を理解し、行動の理由を冷静に見極める。
不登校が長期化すると心理的負担が増大する早期に適切な支援を受け、子どもに無理のない範囲で社会との接点を作る。
小さな成功体験が再登校の鍵になるランドセルの準備や学校周辺を歩くなど、小さな目標を設定し、達成を一緒に喜ぶ。
親の具体的なサポートが重要抽象的な励ましではなく、具体的な行動計画や段階的なステップを共有する。

親御さんにとって、不登校の問題は非常に辛いものかもしれません。しかし、焦らず、正しいステップを踏めば必ず解決への道は開けます。そして、その道を一緒に歩む存在として、私たちToCoがいます。ぜひ、一人で抱え込まずに、いつでも私たちを頼っていただければと思います。不登校の問題に向き合い、解決に向けた一歩を共に歩めることを願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

子どもへの傾聴の意味とは?

子どもへの傾聴の意味と難しさ-記事の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さんを抱える保護者の方々にとって、日々の生活の中で「子どもの話をどう聞くか」というのは極めて大きなテーマだと思います。特に、不登校のような状況では、親と子どもの間でのコミュニケーションが希薄になりがちです。「話をしてくれない」「何を考えているかわからない」という声を、私もこれまで何度も耳にしてきました。しかし、だからこそ「傾聴」のスキルが非常に重要となります。

「傾聴」という言葉はよく使われますが、これは単に「耳を傾ける」という行為以上の深い意味を持っています。傾聴の本質は、子どもの言葉に真摯に向き合い、心の中で何が起きているのかを共に理解しようとする姿勢にあります。ここで大切なのは、「受け入れること」と「解決しようとしないこと」です。親として、問題を早く解決してあげたいという気持ちは自然なことです。しかし、傾聴の場では、解決を急がず、ただその瞬間の子どもの感情や考えに寄り添うことが重要なのです。

傾聴が生む信頼関係

傾聴の最大の効果のひとつは、子どもとの間に信頼関係を築くことです。不登校のお子さんにとって、自分の存在や感情が「親にとって重要だ」と感じられる瞬間は非常に貴重です。日々の生活の中で、「どうして学校に行けないの?」といった問いかけが繰り返されると、子どもは自分が問題視されているように感じ、心を閉ざしてしまうことがあります。しかし、「どうしたいと思っているの?」や「最近、どんなことが気になる?」というような、否定や評価を含まない問いかけがあると、少しずつ自分の気持ちを言葉にする勇気が湧いてきます。

これは単に親子関係の改善に留まらず、子どもの内面的な成長にもつながります。自分の気持ちや考えを言葉にするという行為は、対話力や思考力を育む重要なステップです。例えば、「友達と喧嘩したけど、本当は仲直りしたい」「学校に行きたい気持ちと、怖い気持ちが両方ある」といった心情を親に伝えられることで、子ども自身が自分の感情を整理し、前向きな一歩を踏み出すきっかけになるのです。

見過ごされがちな傾聴の価値

多くの方が誤解しているのは、「話を聞いても、何も解決しない」という認識です。確かに、傾聴は直接的な解決策を提示するものではありません。しかし、子どもの内面を理解するための土台を築くプロセスとして、極めて重要です。例えば、子どもが不安を抱えている理由を知ることができれば、その後の対応策を考える際のヒントになります。また、子ども自身が自分の気持ちを言葉にすることで、次第に自己理解を深め、問題解決の糸口を見つけることもあります。

傾聴は、単なる「聞く」ことではなく、親子間の対話の質を高める行為です。これを意識的に実践することで、親子関係に変化が訪れるのは間違いありません。

子どもとの対話のイメージ

子どもへの傾聴が難しい理由

子どもの話を聞くことが重要だと分かっていても、実際に実践するとなると難しさを感じる保護者の方は少なくありません。その背景には、さまざまな心理的・実践的な障壁があります。本章では、特に子どもへの傾聴が難しいとされる理由を、以下の三つの観点から掘り下げて考えていきます。

1. 子どもなりの意見や論理を尊重する必要がある

まず一つ目は、子どもなりの意見や論理を尊重するという点です。親としては、どうしても子どもの言葉が稚拙に思えたり、現実的でないと感じたりすることがあります。「どうしてそんなことを考えるの?」と疑問に思うこともあるでしょう。しかし、子どもの意見を否定したり論破したりすることは、傾聴の本質から外れてしまいます。

子どもが「学校の先生が嫌いだから行きたくない」と言った場合を考えてみましょう。大人から見れば、「先生が嫌いな理由が何なのか」を具体的に聞き出し、その原因を解決すればいいのではないかと思うかもしれません。しかし、このアプローチでは子どもの心に触れることはできません。子どもが本当に伝えたいのは、「自分が感じている違和感や不安を分かってほしい」ということです。そのためには、まず「嫌い」という感情そのものを受け止める必要があります。「嫌だと思うんだね。その気持ち、もう少し教えてくれる?」と問いかけることで、子どもは少しずつ心を開いていきます。

大切なのは、子どもの言葉の背景にある気持ちを理解しようと努めることです。例えその意見が論理的でなくても、そこに至るまでの感情を尊重することで、子どもは「自分の考えを聞いてくれる大人がいる」と感じ、安心感を得ることができます。


2. 親として適切な方向へ育てたいという思い

二つ目の理由は、親としての「正しい方向へ導きたい」という思いの強さです。これは親として当然の感情です。子どもが不登校になったり、社会的なルールから外れる行動を取ったりすると、「このままでは将来が不安だ」という気持ちが強くなるのは無理もありません。そのため、つい「こうすべきだ」「こうあるべきだ」とアドバイスを与えたり、方向性を示したりしたくなります。

しかし、このような指導的なアプローチは、傾聴の場面では逆効果になることがあります。子どもが「もう学校に行かなくてもいい」と言ったとき、親としては「そんなことを言ってはいけない」「学校には行くべきだ」と反論したくなるかもしれません。けれども、こうした言葉は子どもにとって、自分の気持ちが否定されたと感じさせる原因になります。その結果、子どもはさらに心を閉ざし、親との対話を避けるようになるのです。

親の役割は、子どもが安全に自分の気持ちを表現できる環境を整えることです。傾聴の場面では、正解を求めるのではなく、子どもの気持ちや考えに寄り添い、共に考える姿勢を持つことが求められます。


3. 子どもへの甘やかしと混同しやすい

三つ目は、傾聴と甘やかしを混同しやすいという点です。特に日本の文化では、「子どもを厳しく育てることが親の務め」という考えが根強いこともあり、子どもの話を丁寧に聞くことが「甘やかし」だと捉えられることがあります。この認識が、傾聴を実践する上での障壁となることが多いのです。

しかし、傾聴は甘やかしとは根本的に異なります。甘やかしとは、子どもの要求を全て受け入れることや、問題に対して親が代わりに責任を負うことを指します。一方、傾聴は、子どもの気持ちや考えを尊重しつつも、必要な場面では親としての適切なガイドラインを示すことを含みます。例えば、「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、「行かなくてもいいよ」と安易に答えるのではなく、「そう思うんだね。その理由を教えてもらえる?」と深掘りすることで、子ども自身が自分の考えを整理する手助けをすることができます。

また、甘やかしとの混同を避けるためには、親自身が傾聴の目的を明確に理解することが大切です。傾聴は、子どもの気持ちや考えを受け入れることで、子どもの内面的な成長や自己肯定感を促す行為です。そのため、親が一方的に譲歩するものではなく、子どもの自主性を育むためのプロセスだという意識を持つことが重要です。


傾聴を実践するための具体的な方法

傾聴の重要性を理解していても、「具体的にどうやって実践すればいいのかわからない」というお悩みをよく耳にします。子どもへの傾聴は、大人同士の会話とは異なるスキルを要するため、意識的な準備や練習が必要です。本章では、傾聴を日常で実践するための具体的な方法とポイントについて詳しく解説します。


1. まずは「聞く環境」を整える

傾聴を実践する上で最初に大切なのは、「子どもが安心して話せる環境」を整えることです。環境とは、物理的な空間だけでなく、親子間の心理的な雰囲気も含まれます。以下のような工夫が効果的です。

  • 静かで落ち着ける場所を選ぶ
    テレビやスマホの音が鳴り響くリビングでは、子どもは集中して話すことができません。話を聞くときには、できるだけ静かな場所を選び、子どもと向き合う時間を確保しましょう。
  • 親の態度をフラットに保つ
    子どもが話し始めたとき、驚いたり怒ったりする反応は禁物です。どんな内容でも、「そうなんだね」とまず受け止める姿勢を見せることが大切です。
  • 時間を作る努力をする
    傾聴は、短い時間で済ませるものではありません。忙しい日々の中でも、意識的に子どもと向き合う時間を作ることが必要です。「今ちょっと忙しいから」と話を中断してしまうと、子どもは「自分の話は大したことではないのかもしれない」と感じてしまうことがあります。

2. 子どものペースを尊重する

子どもが話すスピードや内容は、大人にとって物足りなく感じることもあるかもしれません。しかし、傾聴の場では、子どものペースを尊重することが最優先です。子どもが言葉を探しながら話しているときは、焦らずに待つことが大切です。たとえ沈黙が訪れても、それを埋めようとせず、子どもが考える時間を与えましょう。

例えば、子どもが「学校で嫌なことがあった」と話し始めたとします。このとき、「どんなこと?」と急かすのではなく、「そうだったんだね」と応じて、次の言葉を引き出す時間を与えることが効果的です。相手が話すリズムに合わせることで、子どもは「急かされない」「プレッシャーを感じない」と思い、より深い話をしやすくなります。


3. 「聞き方」の技術を身につける

傾聴のスキルには、いくつかの具体的なテクニックがあります。これらを意識的に取り入れることで、子どもとの対話の質が向上します。

  • オウム返し
    子どもが言った言葉をそのまま繰り返すことで、「自分の話がちゃんと聞かれている」と感じてもらうことができます。例えば、子どもが「学校が怖い」と言ったときに、「学校が怖いんだね」と返すことで、相手がさらに深く話すきっかけを作ります。
  • 感情の代弁
    子どもが言葉にしきれない感情を代わりに表現してあげることも有効です。「友達に無視されるのが辛い」と言った場合、「無視されると悲しい気持ちになるよね」と感情に寄り添うことで、子どもが安心感を持ちます。
  • 具体的な質問を避ける
    「どうして?」「なぜ?」といった質問は、子どもにプレッシャーを与えることがあります。代わりに、「そう思ったのはどんなことがあったからかな?」と柔らかく尋ねると、子どもが話しやすくなります。
母と娘の会話のイメージ

4. 親自身の心構えを整える

傾聴を成功させるためには、親自身の心の準備も重要です。特に以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 完璧を目指さない
    傾聴は一朝一夕で身につくスキルではありません。「子どもの話をきちんと聞けなかった」と感じた日があっても、それに後悔ばかりしないで少しずつ改善していく姿勢が大切です。
  • 自分の感情をコントロールする
    子どもの話を聞く中で、親自身が感情的になってしまうことがあります。しかし、傾聴の場では、親が冷静さを保つことが必要です。もし感情が高ぶってしまった場合は、一度深呼吸をしてから話を続けると良いでしょう。
  • 期待を手放す
    傾聴の目的は、子どもに「正しい答え」を導かせることではありません。子どもが自分の感情を表現できる場を提供することそのものが、大きな成果なのです。話を聞く中で何かを得られなくても、「今日はこれで十分だった」と自分を納得させることが大切です。

傾聴がもたらす変化と効果

傾聴を日常的に実践することで、子ども自身だけでなく、親子関係や家庭全体にもさまざまなポジティブな変化が現れます。この章では、傾聴を通じて得られる具体的な効果を三つの観点からご紹介します。


1. 子どもの自己肯定感の向上

傾聴の最大の恩恵の一つは、子どもの自己肯定感を高めることです。自己肯定感とは、「自分は価値がある存在だ」と感じる力であり、子どもの精神的な安定や社会的な適応能力に直結します。特に、不登校や引きこもりの子どもたちは、自己否定感や孤立感を抱えやすい傾向があります。そのような状況で、親が真剣に話を聞いてくれるだけで、子どもは「自分の存在を認められている」と実感し、自信を取り戻すきっかけとなります。

例えば、子どもが「みんなに嫌われている気がする」と話した場合、親が「そんなことはない」と否定するのではなく、「嫌われていると感じるんだね。その理由、教えてもらえる?」と受け止めるだけで、子どもは「自分の気持ちは価値がある」と感じられます。この感覚の積み重ねが、子どもの自己肯定感を徐々に育てていくのです。


2. 親子の信頼関係の強化

傾聴を続けることで、親子の信頼関係がより深く強固になることが期待されます。不登校や引きこもりの問題を抱える家庭では、親子間のコミュニケーションが断絶されがちです。「どうして学校に行かないの?」と問い詰めたり、「もっと頑張りなさい」と励ましたりするアプローチは、子どもにとってプレッシャーとなり、親子間の距離をさらに広げることがあります。

傾聴を通じて、「親は自分を責めたり否定したりしない」「自分の話をちゃんと聞いてくれる」という安心感を子どもが得られるようになると、親子間の信頼が深まります。この信頼関係は、子どもが困難に直面した際に親に相談しやすくなる土台となります。例えば、学校復帰や社会復帰を目指す際にも、この信頼があることでスムーズに進めることができます。


3. 子どもの問題解決能力の向上

傾聴は、子どもが自分で問題解決する力を育む手助けとなります。親が話を聞いてくれる環境の中で、子どもは自分の気持ちや考えを言葉にし、整理することを学びます。この過程は、子どもが自分で問題を解決するための重要なトレーニングとなります。

例えば、「友達とケンカをしてしまった」と話す子どもに対し、親が解決策を提示するのではなく、「どうしたら仲直りできると思う?」と問いかけることで、子ども自身が行動の選択肢を考え始めます。このように、自分の感情を表現し、それをもとに行動を選ぶ力を育むことが、子どもの成長にとって重要です。


傾聴がもたらす「家庭全体」の変化

傾聴は、子どもや親子関係にとどまらず、家庭全体の雰囲気にも影響を与えます。子どもの話を丁寧に聞くことで、家庭内に「安心感」や「理解のある雰囲気」が生まれます。このような家庭環境は、子どもの精神的な安定に寄与するだけでなく、家族全員のストレスを軽減する効果もあります。

例えば、子どもの傾聴を通じて親自身が「子どもの成長を急がず見守る姿勢」を学ぶことができます。また、兄弟姉妹がいる場合、親が傾聴を実践する姿を見せることで、子どもたち同士のコミュニケーションにも良い影響を及ぼします。

仲の良い兄弟のイメージ

傾聴を妨げる障害とその克服法

傾聴を実践したいと考えていても、日々の生活の中でうまくいかないと感じることがあるかもしれません。これは、私たちが傾聴を妨げるいくつかの要因に直面しているからです。ここでは、傾聴を妨げる具体的な障害を三つに分け、それぞれの克服法について解説します。


1. 親自身の感情のコントロールが難しい

親が子どもの話を聞くとき、自分自身の感情が邪魔をすることがあります。例えば、子どもが「学校なんて意味がない」と言ったとき、親としては「何を言っているの?」とイライラしたり、不安を感じたりしてしまうことがあります。このような感情が出てくると、傾聴の基本である「相手を受け止める姿勢」が崩れてしまいます。

克服法:感情を整理する時間を持つ
まず、自分自身の感情を受け止め、冷静になる時間を作りましょう。子どもが話を始めたときに感情が湧き上がるのを感じたら、「ちょっと待ってね」と一呼吸置くことも大切です。また、日常的に自分の感情をノートに書き出すなどして整理することで、子どもとの対話の場面でも冷静さを保ちやすくなります。


2. 子どもが話すことを避ける

子どもが心を閉ざしてしまい、話したがらないことも傾聴の障害となります。特に、不登校や引きこもりの子どもは、「話をしてもどうせ理解してもらえない」と感じている場合があります。その結果、親がいくら話を聞こうとしても、「別に」「何でもない」と言われてしまうことが少なくありません。

克服法:非言語的なコミュニケーションを活用する
子どもが言葉で話すのが難しいときには、非言語的なコミュニケーションを試してみましょう。一緒に料理をしたり、ゲームをしたりする中で、少しずつ子どもが気持ちを表現しやすい状況を作ることができます。また、言葉を引き出すためにプレッシャーをかけるのではなく、「いつでも話したいときに話していいよ」と伝え、子どもが安心感を持てるようにします。


3. 時間やエネルギーの不足

忙しい日常の中で、子どもの話をじっくり聞く時間やエネルギーが取れないことも、大きな障害となります。仕事や家事に追われる中で、「傾聴したい気持ちはあるけれど余裕がない」と感じる親も多いでしょう。

克服法:短い時間でも質を高める工夫
時間が限られている場合でも、少しの工夫で傾聴の質を高めることができます。例えば、家事をしながら子どもと会話をするのではなく、数分でもいいので子どもと向き合う時間を取るようにしましょう。また、疲れているときは、「今日はちょっと疲れているけど、話を聞きたい気持ちはあるよ」と伝えることで、親の誠実さが伝わります。

傾聴の実践例とその成果

傾聴が具体的にどのように効果をもたらすのか、実際のエピソードを交えてお話ししたいと思います。不登校や引きこもりに悩む家庭の中で、傾聴を通じて親子関係が改善した事例や、子ども自身が変化を見せた事例は数多くあります。これらのエピソードを通じて、傾聴の重要性をさらに深く理解していただければと思います。


1. 「何も言わない」子どもの心が動いた瞬間

小学5年生の男の子A君は、不登校が始まってから親とほとんど会話をしなくなりました。母親が「どうしたの?」と尋ねても、「別に」とそっけない返事ばかり。ある日、母親は「どうせ話しても無駄だ」と諦めかけていましたが、児童心理司として私がアドバイスしたのは「何も言わなくても、子どものそばに寄り添う時間を作る」ことでした。
そこで、A君の母親は毎晩A君の部屋に行き、「今日はこんなことがあったよ」と自分の日常を一方的に話す時間を取りました。そして、最後に「あなたの話もいつか聞けたら嬉しいな」とだけ伝えるのを続けました。1か月後、A君が初めて自分から「今日はゲームでこんなに強い敵を倒した」と話し始めたそうです。それを聞いた母親は涙が出るほど嬉しかったと言います。

このエピソードが示しているのは、子どもが話さないときでも親が根気よく安心感を提供し続けることが重要であるということです。「話さない=拒絶」ではなく、子どもにとっては「まだ心の準備ができていない」だけの場合が多いのです。


2. 傾聴がもたらした親子の信頼関係の再構築

中学2年生の女の子Bさんは、学校でのいじめが原因で引きこもり状態に陥っていました。母親はBさんの状況を心配し、「学校に相談したほうがいいんじゃない?」と提案しましたが、Bさんは「そんなことされたら余計に辛い」と怒りをあらわにしました。この時、母親は自分の行動が「子どものためにならない」と感じ、私に相談に来られました。
私は母親に、「まずはBさんが何を考えているのかを徹底的に聞くことに集中しましょう」と提案しました。具体的には、Bさんが自分の部屋から出てきたタイミングで「どうしてそんなに学校が嫌なのか教えてほしいな」と穏やかに話しかけてもらいました。最初は無視されたそうですが、何度か同じことを続けるうちに、Bさんがポツリと「学校が怖い」と言ったそうです。
その言葉を聞いた母親は、「怖いと思うんだね」と繰り返し、それ以上は聞かずにその場を終えました。それから少しずつ、Bさんは学校での出来事や気持ちを話すようになり、半年後には母親と一緒に学校のカウンセラーと相談することに前向きになったのです。

このケースでは、親が解決策を急がず、子どもの感情に寄り添うことが、子ども自身が行動を起こすきっかけとなった好例です。


3. 傾聴を通じて子どもが自分を見つめ直した例

高校1年生のC君は、成績優秀で生徒会長を務めていましたが、ある日突然登校を拒否しました。親は「何があったの?」と詰問しましたが、C君は「疲れた」とだけ言って部屋に閉じこもりました。親としては、学校に行くことが大切だと感じ、C君に「これ以上休んだら取り返しがつかなくなるよ」と説得を試みましたが、逆効果でした。
そこで、私が提案したのは、C君の「疲れた」という言葉を深く掘り下げるための傾聴です。母親はC君に「どうしてそんなに疲れているのかな?」と優しく尋ねるようにしました。最初は「別に」とかわされましたが、「本当に辛いときは話してね」と繰り返し伝えることで、C君が「自分の気持ちを受け入れられる場所がある」と感じ始めました。
1か月後、C君は初めて「もう何も頑張りたくない」と本音を話しました。母親はそれを受け止め、「頑張らなくていいんだよ」と伝えると、C君は涙を流しながら「そう言ってくれてありがとう」と言いました。その後、C君は徐々に自分のペースで日常を取り戻していきました。

このエピソードが示すのは、傾聴は子どもが自分の本音に気づき、受け入れるプロセスを促進する力を持つということです。


最後に:傾聴を続ける価値

ここまで述べてきた通り、傾聴は子どもの心に寄り添い、信頼関係を築き、自分自身の力で前に進むきっかけを作るための強力な手段です。しかし、それは簡単なことではありません。親自身が感情をコントロールし、時間を作り、忍耐強く続ける必要があります。

大切なのは、「完璧を目指さない」ことです。上手に聞けない日があっても、気に病まずに、次の日からまた続ければいいのです。傾聴は一瞬で効果が出るものではなく、小さな積み重ねによって、いつか大きな変化をもたらします。

どうか、今日もお子さんの気持ちに耳を傾ける時間を作ってみてください。たとえ小さな一言でも、それが親子の絆を深める大きな一歩となるのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

自信のない子どもと不登校の関係は?

自信のない子どもの不登校-記事の見出し画像

目次


はじめに

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私はこれまで、多くの不登校や引きこもりに悩む子どもたち、そしてその親御さんたちと接してきました。この問題に直面しているご家庭は、決して少なくありません。お子さんが学校に行けない状況が続くと、親御さんは「何が原因なのだろう」「どうすればまた学校に行けるのだろう」と頭を抱え、場合によっては自分を責めてしまうこともあります。ですが、まず初めにお伝えしたいのは、不登校は決して親御さんだけの責任ではないということです。

今回の随筆では、不登校の背景にある「自信の問題」について焦点を当てながら、親御さんがどのようにお子さんと向き合い、支えることができるかを考えていきたいと思います。なぜ自信を失うと学校に行けなくなるのか、そしてその「自信のなさ」がどのように形成されるのか。それを知ることは、お子さんの気持ちを理解する第一歩となります。

自信のない子どもの特徴必要な対処
周囲からの評価に敏感で、些細な失敗や批判を過剰に気にする。自分を「劣っている」と思い込みがち。否定せず、子どもの感情を受け止める。小さな努力や成功を褒めて、安心感を与える。
他人と自分を頻繁に比較し、「自分には価値がない」と感じる。学校生活や友人関係で孤立を深めやすい。比較ではなく、子どもの個性や得意なことに注目する。家庭内で「そのままの自分でいい」と感じられる言葉をかける。
何事にも挑戦を避ける傾向があり、「どうせ失敗する」と考え、行動力が低下している。子どもが興味を持つことや好きなことを応援し、小さな成功体験を積ませる。プレッシャーをかけず、挑戦をサポートする。
自己否定的な思考が強く、「自分なんてどうでもいい」「家族の迷惑になっている」と思いがち。親が子どもに「あなたの存在が大切だ」と伝える。日常の中で無条件の愛情を示し、親子の信頼関係を深める努力をする。
孤独感を抱えており、「誰にも理解されない」と感じることが多い。心を閉ざしがちで、話す機会や意欲を失っている。子どもの話を否定せず傾聴する。話しやすい環境を整え、無理に答えを求めず、安心して話せる時間を作る。

第1章:子どもの自信とは何か

「自信」という言葉を聞いたとき、皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。明るく、積極的で、何事にも挑戦することを恐れない、そんな姿が思い浮かぶかもしれません。しかし、ここでお伝えしたいのは、「自信」とは決して目立つ行動や結果のことではないということです。むしろ、自信とは、自分を大切に思う気持ち、すなわち「自己肯定感」の土台の上に成り立つものです。

自信を持つということは、「自分には価値がある」「自分はこの世にいていい存在だ」と感じられることです。一方で、自信を失うと、「自分は何をやってもダメだ」「自分なんてどうでもいい存在だ」と思い込んでしまいます。このような心の状態に陥った子どもは、周囲の評価や出来事に対して非常に傷つきやすくなります。例えば、クラスで失敗をしたり、友達から何気ない一言を言われただけで、「やっぱり自分が悪いのだ」と感じてしまいがちです。こうした思考の積み重ねが、次第に学校そのものを拒絶する原因となるのです。

ある小学生の男の子が、こんなことを言っていました。「僕は学校に行くのが怖い。みんなが僕を笑っている気がするし、何か失敗したらまた怒られるから」。彼の言葉から伝わってくるのは、自分への強い不信感です。「どうせ僕なんて」と自分を否定する思いが、自信のなさをさらに深め、不登校という形で表れているのです。

子どもが自信を失う背景

では、子どもがなぜ自信を失ってしまうのでしょうか。それには、いくつかの原因が考えられます。大きな要因の一つは、「自己否定的な経験の積み重ね」です。例えば、学校生活の中でテストの点数が思うように取れなかったり、運動が苦手で体育の授業で目立ってしまったり、友達とうまく話せず孤立してしまったりすることがあります。これらの経験が繰り返されると、子どもは「自分はできない」「自分には価値がない」と思い込むようになります。

また、家庭環境も重要な要素です。親御さんが子どもを褒める機会が少なく、何気なく口にした否定的な言葉が子どもの心に深く刻まれることがあります。例えば、「どうしてこんなこともできないの?」「もっと頑張りなさい」という言葉は、親御さんの愛情の裏返しである場合が多いですが、受け取る側の子どもにとっては「自分はダメなんだ」と感じる原因になることがあります。

さらに、現代の子どもたちが置かれている環境も一因です。SNSなどを通じて、他人と自分を比較する機会が増えています。「あの子はこんなに優秀なのに、自分は何もできない」と感じ、自己否定を繰り返す子どもたちも少なくありません。こうした環境の中で、子どもたちが自信を失っていくプロセスは、親御さんが想像する以上に複雑で深刻なものです。

人間関係が自信を揺るがす要因

不登校の背景にある問題として、人間関係が大きな割合を占めています。学校という場所は、子どもたちにとって社会の縮図のような場です。そこでは友達とのつながりや、教師との関係性が日々の生活に大きな影響を与えます。しかし、子どもが自分に自信を持てない状態でいると、この人間関係の中で傷つきやすくなり、不登校につながるケースが少なくありません。

例えば、ある中学生の女の子が「友達の輪に入れない」と相談してきたことがありました。彼女は非常に繊細で、友達が楽しそうに話している中に自分が加わると、「私が入るとみんながつまらなくなってしまうのではないか」と感じてしまいます。その結果、自分から話しかけることを避け、友達からも「話したくないのかもしれない」と誤解され、次第に孤立してしまいました。こうした誤解や行き違いが積み重なり、彼女は「どうせ自分は誰からも必要とされていない」と考えるようになり、学校に行くことをやめてしまいました。

学校生活では、他者との比較が避けられない場面がほとんどです。「勉強ができる子」「運動が得意な子」といったクラス内での評価軸が自然と生まれる中で、子どもたちは「自分はその軸において劣っている」と感じることがあります。例えば、体育の時間に苦手な運動をクラス全員の前で披露しなければならない場面があると、「みんなはできるのに、どうして自分だけできないんだろう」と思い、深い恥ずかしさや自己嫌悪を抱いてしまうことがあります。

さらに、子どもたちは大人よりも他人の視線や評価に敏感です。「友達にどう思われているのか」「自分はこの集団の中でどんな存在なのか」といった不安を常に抱えながら生活しています。この不安が過剰になると、ちょっとした言葉や態度で深く傷つき、「自分はここにいてはいけない存在だ」と思い込むこともあります。このような気持ちの積み重ねが、最終的に学校に足を運ぶことを避けるきっかけとなるのです。

親が果たすべき役割:自信を育む言葉と態度

人間関係の問題が子どもの不登校の大きな要因であるとすれば、親としてどのように子どもに働きかけることができるのでしょうか。ここで鍵となるのは、「そのままの子どもを認める」という親の姿勢です。

まず重要なのは、子どもがどんな状況でも「無条件で愛されている」と感じられる環境を作ることです。不登校の子どもたちと話していると、「親に申し訳ない」「自分は家族の迷惑になっている」と感じているケースが非常に多いです。このような感情が、さらに自分を追い詰める原因となります。ですから、親御さんが「学校に行けないあなたでも大丈夫」「あなたはそのままで価値がある」と伝えることが、子どもの心を軽くする第一歩となります。

例えば、子どもが学校に行けずに家で過ごしているとき、親御さんが「どうして学校に行かないの?」と問い詰めるのではなく、「今日はどんなことをして過ごしたの?」と穏やかに話しかけるだけで、子どもは安心感を得ることができます。親が子どもの行動や選択を批判するのではなく、受け入れる姿勢を見せることで、子どもは「自分はここにいていい」と感じられるようになるのです。

また、日常の中で子どもを褒める機会を意識的に増やすことも大切です。例えば、子どもが料理を手伝ってくれたとき、「上手にできたね、ありがとう」と声をかけることで、「自分は役に立っている」という感覚を育むことができます。このような些細なやりとりが、子どもの自己肯定感を支える重要な要素となります。

ただし、ここで注意したいのは、「褒める」ことが子どもにプレッシャーを与えないようにすることです。例えば、成績が良かったときに「次も頑張って」と言うと、子どもは「頑張らなければ認められない」と感じることがあります。そうではなく、「よく頑張ったね」とその時点での努力を認める言葉がけを心がけましょう。

第2章:家庭環境が子どもの自信に与える影響

家庭は、子どもが最も長い時間を過ごす場所であり、親は子どもにとって最も近い存在です。そのため、家庭環境は子どもの自己肯定感や自信に直接的な影響を与えます。ここでは、家庭の在り方がどのように子どもの心に影響を及ぼすのか、そして親が具体的にどのように対応できるのかを考えていきます。

子どもが自己否定を感じる家庭環境とは

私がこれまで関わってきた不登校の子どもたちの中には、「家の中ではいつも否定されているように感じる」と語る子が少なくありません。もちろん、親御さんは決して悪意を持ってそうしているわけではなく、むしろ子どもに良かれと思って言ったことが、子どもには違う形で伝わってしまうことがあります。

例えば、次のような言葉は、親としては子どもの成長を願う一心で発したものであっても、子どもにとってはプレッシャーや否定と受け取られる場合があります。

  • 「どうしてこんな簡単なこともできないの?」
  • 「お兄ちゃん(お姉ちゃん)はもっと頑張っていたよ」
  • 「学校に行かないで家にいるなんて情けない」

このような言葉を聞くたびに、子どもは「自分はダメな存在だ」「自分には価値がない」と感じるようになります。特に、「他人と比較される」ことは子どもの自己否定を深める大きな要因です。「自分は誰かより劣っている」という意識が植え付けられると、子どもは何をするにも「どうせ自分はダメだ」という思考に囚われるようになります。

また、家庭内で親が忙しさやストレスから子どもとのコミュニケーションを取る時間が減ると、子どもは「自分は親にとって重要ではないのかもしれない」と感じることがあります。親が一生懸命働いて家族を支えていることは子どもも理解していますが、それでも「自分が受け入れられていない」と感じる環境は、子どもにとって深い孤独感を生む要因となります。

自信を育む家庭環境を作るために

では、親としてどのような家庭環境を作れば、子どもの自信を育むことができるのでしょうか。ここで重要なのは、「子どもが自分は大切にされている」と感じられるような接し方を心がけることです。以下に、実践的な方法をいくつか挙げます。

1. ありのままの子どもを受け入れる

子どもが失敗したり、間違えたりしたときに、それを責めるのではなく受け入れる姿勢を見せることが大切です。例えば、テストの点数が悪かったとき、「なんでこんな点数なの?」と責めるのではなく、「次はどうすれば良くなるか一緒に考えよう」と建設的な話し合いをすることで、子どもは「自分の努力を認めてもらえている」と感じます。

2. 比較ではなく、その子自身を見つめる

兄弟姉妹や同級生と子どもを比較するのではなく、子ども自身の成長に目を向けることが重要です。例えば、「あなたは〇〇が得意だね」とその子の長所に焦点を当てることで、「自分には良いところがある」と思えるようになります。

3. 子どもの話をしっかり聞く

忙しい日々の中でも、子どもの話に耳を傾ける時間を作ることは、子どもが「自分は親にとって重要な存在だ」と感じるために必要不可欠です。たとえ短い時間でも、テレビやスマートフォンを一旦手放して、子どもの目を見て話を聞くことが効果的です。

4. 肯定的なフィードバックを与える

子どもが何かに挑戦したり、小さな成功を収めたときには、「すごいね」「よく頑張ったね」と肯定的なフィードバックを与えましょう。このような言葉をかけることで、子どもは自分の行動に自信を持てるようになります。

5. 家庭内で安心できる雰囲気を作る

家庭は子どもにとって「安全基地」であるべき場所です。親が子どもの存在を否定せず、安心して過ごせる雰囲気を作ることが、子どもの心を支える土台となります。


第3章:親子の対話が育む「自信」:具体的なコミュニケーション方法

不登校の子どもが自分を否定する気持ちから抜け出し、自信を少しずつ取り戻すには、親子の対話が非常に重要です。ここでは、具体的にどのように子どもと向き合い、対話を深めていけばよいのかを、実例を交えて考えていきます。

対話の基本:否定せず、受け止める

不登校の子どもとの会話で最も大切なのは、「否定しない」ことです。子どもは学校に行けない自分をすでに責めている場合が多く、そこにさらに親からの否定的な言葉が重なると、心の逃げ場を失ってしまいます。子どもにとって、親は最後の味方であってほしいのです。

例えば、こんな会話を想像してみてください。

子ども:「学校に行きたくない。」
親:「なんで行かないの?そんなことじゃダメだよ。」

この親の言葉には、愛情が含まれているかもしれませんが、子どもにとっては「自分の気持ちを否定された」と感じる可能性が高いです。子どもは、親が自分の本音を理解してくれないと感じると、心を閉ざしてしまいます。

一方で、次のような対応を取るとどうでしょうか。

子ども:「学校に行きたくない。」
親:「そうか。学校が嫌だと思うくらい辛いんだね。」

この言葉には、子どもの感情をそのまま受け止める姿勢が含まれています。親が否定せずに子どもの言葉をそのまま受け止めることで、子どもは「自分の気持ちは大丈夫なんだ」「この人は話を聞いてくれる」と感じ、次の言葉を話しやすくなります。こうした小さな積み重ねが、子どもとの信頼関係を深め、自信を回復する土台となるのです。


傾聴の力:子どもの言葉を引き出す

不登校の子どもたちと接する中で感じるのは、彼らが自分の気持ちを言葉にすることの難しさです。彼らは「どうせ話しても分かってもらえない」と思っていたり、「自分の気持ちをどう表現すればいいのか分からない」と感じていたりします。そのため、親としては、子どもの言葉を引き出すための工夫が必要です。

1. 子どものペースに合わせる

子どもが何かを話し始めたら、途中で口を挟まず、最後まで聞くことを心がけましょう。例えば、子どもが「友達に嫌なことを言われた」と話したとき、すぐに「どんなこと?それでどうしたの?」と矢継ぎ早に質問すると、子どもはプレッシャーを感じてしまうことがあります。子どもの話のペースに合わせ、「そっか、それは嫌だったね」と共感を示すだけでも十分です。

2. 言葉に詰まったときは手助けをする

子どもが自分の気持ちを言葉にできないとき、「それって悲しい気持ちだった?それとも怒りの方が強かった?」といった具合に、いくつかの選択肢を与えることで、子どもの感情を整理する手助けができます。無理に言葉を引き出そうとせず、「話したいときに話してくれていいよ」と伝えることで、安心感を与えることも大切です。

3. 身近な話題から始める

「学校のことは話したくない」と感じている子どもには、まず日常の些細な話題から会話を始めるとよいでしょう。例えば、「今日は何時に起きたの?」「最近、好きなアニメとかある?」といった軽い質問がきっかけで、少しずつ心を開いてくれることがあります。子どもが安心して話せる場を作ることが、深い話題に進むための第一歩です。


③「解決」を急がない姿勢の重要性

親は子どもの不登校を「何とかしなければ」と考えがちです。それ自体は親として自然な感情ですが、解決を急ぐあまり、子どもに「早く学校に戻ることが正しい」とプレッシャーをかけてしまうことがあります。不登校の解決には、何よりも時間が必要です。焦らずに子どもを見守り、ゆっくりと変化を待つ姿勢を持つことが大切です。

例えば、ある中学生の男の子は、親が「いつになったら学校に行けるの?」と毎日尋ねてくることが負担になり、部屋に閉じこもってしまいました。しかし、親が「学校のことは気にしなくていいから、まずは一緒にご飯を食べよう」と声をかけるようになってから、少しずつリビングに出てくるようになりました。このケースでは、親が「学校に行くこと」ではなく「家庭内での安心感」を優先したことが功を奏したのです。


このように、親子の対話は子どもが自信を回復するための重要な鍵です。否定せずに受け止め、子どものペースに合わせて話を聞くことで、子どもは「自分の気持ちは大丈夫なんだ」と感じられるようになります。解決を急がず、子どもが話しやすい環境を作ることが、不登校という問題を乗り越える第一歩となります。

第4章:不登校期間中に家庭でできる具体的な取り組み

不登校の子どもにとって、家庭は最も安心できる場所であると同時に、自分を取り戻すための再出発の場でもあります。不登校期間中、親としてどのように家庭で子どもと向き合い、サポートを続けていけばよいのでしょうか。この章では、不登校期間中に家庭で実践できる具体的な取り組みについて詳しくお伝えします。


日常生活のリズムを整える

不登校が続くと、子どもが夜更かしをしたり昼夜逆転の生活に陥ったりすることがあります。しかし、生活リズムの乱れは、心身の健康に影響を及ぼすだけでなく、気持ちの不安定さを助長することがあります。家庭でまず心がけるべきは、無理のない範囲で日常生活のリズムを整えることです。

例えば、朝起きる時間を親が少しずつ調整していくことで、自然と朝型の生活へと戻していくことができます。ただし、「明日から早起きしなさい」というように一気に変えようとするのは逆効果です。子ども自身のペースを尊重しながら、「今日は昨日より30分だけ早く起きてみよう」と小さな目標を立てると良いでしょう。また、朝起きたときに「おはよう」と笑顔で声をかけることも、子どもの気持ちにポジティブな影響を与えます。

さらに、朝食や昼食を一緒に取ることは、親子のつながりを感じられる大切な時間です。食事の場をリラックスした雰囲気に保ち、学校や将来の話題を避けながら、子どもの好きな話題で会話を楽しむことで、家庭が安心できる居場所となります。


子どもが好きなことを応援する

不登校期間中、子どもが何か好きなことや興味を持つことに集中できる時間を与えることは、自己肯定感を回復させる上で非常に効果的です。「学校に行かないのだから勉強をしなければ」というプレッシャーをかけるよりも、まずは子どもが心から楽しめる活動を見つけ、それを応援する姿勢を持ちましょう。

例えば、ゲームやアニメが好きな子どもに対して、「そんなことばかりしていてはいけない」と否定するのではなく、「どんなところが面白いの?」と興味を持って話を聞いてみるのも一つの方法です。こうした会話の中で、子どもの趣味や興味を共有することで、親子の絆が深まり、子どもは「自分が好きなことを親が認めてくれる」と感じられるようになります。

ある不登校の男の子は、絵を描くことが好きでした。最初は親に見せることを恥ずかしがっていましたが、親が「見せてくれてありがとう。すごく上手だね」と言葉をかけ続けた結果、彼は次第に自信を持つようになり、イラストをSNSに投稿するようになりました。最終的には、同じ趣味を持つ友達とつながり、自ら外の世界に目を向け始めたのです。このように、子どもの好きなことを尊重する姿勢が、新たな人間関係や活動へのきっかけになることもあります。


学校との関係を保つ工夫

不登校期間中であっても、学校とのつながりを完全に断ち切るのは避けたほうが良いです。ただし、子どもにとって負担にならない形で、学校と適度な距離を保ちながら関係を続けることが大切です。

例えば、定期的に担任の先生と連絡を取り、学校でのイベント情報や授業の進捗状況を共有してもらうことが考えられます。ただし、この情報を子どもに無理に伝える必要はありません。子どもが興味を示したときに、自然な形で話題を提供するのが理想的です。

また、学校に直接足を運ぶことが難しい場合でも、オンライン授業やビデオメッセージなどを活用して、学校の雰囲気を少しずつ感じられる機会を作ることも効果的です。特に最近では、不登校の子どもをサポートするためのオンライン学習ツールや相談窓口が増えてきています。親がこうしたリソースを積極的に調べ、子どもに選択肢を提示することで、新たな一歩を踏み出す手助けができるでしょう。


親自身の心のケアも忘れずに

不登校の問題に直面している親御さんは、時に大きな不安や孤独感を抱えることがあります。子どもを支えようとする一方で、自分の心を置き去りにしてしまうことも少なくありません。しかし、親が心身の健康を保つことは、子どもを支える上で不可欠です。

親自身がリフレッシュするための時間を持つことや、同じ悩みを抱える親同士のコミュニティに参加することを検討してみてください。例えば、不登校の子どもを持つ親の会やオンラインフォーラムでは、共感し合いながら具体的なアドバイスを得ることができる場合があります。

また、専門家のカウンセリングを受けることも有効です。親が安心して話せる場を持つことで、子どもの問題に対しても冷静に向き合えるようになるのです。


最後に

不登校期間中は、子どもだけでなく、親にとっても試練の時間です。しかし、家庭が安心できる場所であり続けることで、子どもは少しずつ自信を取り戻し、未来に向けた一歩を踏み出す準備を整えることができます。生活リズムの見直し、子どもの興味を尊重する姿勢、学校との適切な距離感の保ち方など、親が日々できる取り組みを続けることで、不登校の問題を乗り越える可能性が広がります。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

いじめに苦しむ子どもの選択肢とは?

いじめに苦しむ子どもに選択肢を与えよう-記事の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む、児童心理司の藤原と申します。
いじめがなぜ起きるのかを考えるとき、子どもの性格や家庭環境を分析することも一つの方法ですが、これだけでは問題の全体像を捉えることはできません。いじめは、学校という特異な環境がもたらす構造的な問題でもあるのです。そして、仕組みを知ってこそ、子どもに対してどう支援すべきかも見えてきます。

第一章:いじめはなぜ起きるのか――学校の構造的問題

学校という閉じられた社会

まず理解しておかなければならないのは、学校が非常に閉鎖的な環境であるという点です。
教室やクラスという単位は、子どもにとって小さな社会そのものであり、そこでは独自の「空気」が支配しています。例えば、「誰と付き合うべきか」「誰と付き合ってはいけないか」といった暗黙のルールや、「強い立場の子どもが支配する」という力学が生まれやすい環境です。

このような空間では、子どもたちが大人のように問題を客観視し、冷静に対応することは難しいものです。成長途中の感情や価値観の中で、いじめという行動が一部の生徒たちの中で「正当化」されてしまうことが少なくありません。

人間関係の固定化

学校では、席替えの頻度やクラス替えの有無によって人間関係が固定化される場合があります。例えば、1年間同じメンバーで同じ教室に通い、席の移動がほとんどない環境では、いじめられる子どもにとって逃げ場がありません。さらに、学区に学校が1校しかない場合、転校という選択肢も現実的ではないため、逃げることができない状況に追い込まれます。

子どもが人間関係の問題を抱えた場合、「新しい環境でやり直す」という選択肢が少ないという点も、学校環境の構造的な欠陥といえるでしょう。

悩む生徒の画像

学校側の意識と対応の限界

最近では、いじめに対する学校側の意識が改善されつつあります。文部科学省のガイドラインに基づき、学校側がいじめの早期発見に努めたり、対応マニュアルを整備している場合も増えています。

しかし、現場では多忙を極める教師が十分に対応できないという現実もあります。教師は授業の準備や保護者対応、部活動の指導など、多岐にわたる業務を抱えており、いじめ問題に割ける時間やリソースが限られているのです。このような事情から、学校側がいじめを「発覚した後に対応する問題」として扱ってしまうケースもあることを理解しておく必要があります。

第二章:親が果たすべき役割――選択肢を増やすことの重要性

では、このような構造的な問題を抱える学校の中で、親としてどのように子どもを守れば良いのでしょうか。答えの一つは、子どもに「選択肢」を与えることです。

人が追い詰められるとき

人間が精神的に追い詰められるのは、選択肢がないと感じたときです。
いじめを受けている子どもにとって、学校という場が唯一の社会である場合、そこから逃げることは「自分の人生すべてを捨てる」ように感じられることがあります。このような状況では、登校することが精神的な限界を超える負担となり、不登校という形で子どもが自分を守る行動を取るのです。

しかし、親が子どもに「他の選択肢がある」と伝えることで、この絶望感を和らげることができます。実際にはハードルがあったとしても、例えば、転校、フリースクール、ホームスクーリング、オンライン学習といった多様な選択肢を一緒に検討だけで、子どもの閉塞した思いを広げることができます。

子どもと一緒に考える

選択肢を提示する際、親が一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に考えることが重要です。「どんな学校なら通えそう?」「どんな場所なら安心できる?」といった質問を通じて、子どもの声に耳を傾けることで、子ども自身が自分の未来について考えるきっかけを作ることができます。

また、子どもが「この学校を辞めたい」「転校したい」と言った場合、それを否定せず、冷静に受け止めることも大切です。親が子どもの言葉を信じて行動することで、子どもは「自分は守られている」と感じることができ、心の安定を取り戻すことができるのです。

繰り返しになりますが、転校や退学は子どもにとっても家庭にとっても大きな負担がかかる選択肢です。しかし、いじめや人間関係で苦しみ続ける子どもに、いざとなったら学校以外の道もあることを伝えて家族の共通認識としておくことは、最悪の事態を防ぐ一助となります。

第三章:学校とどう連携するか――適切なコミュニケーションの方法

ここまでで構造的な問題を整理したので、どのように対策をしていくか、に移ります。
いじめの問題を解決するためには、親と学校の間で適切な連携を取ることが欠かせません。しかし、学校とのコミュニケーションには一定の工夫が必要です。感情的になってしまうと、問題解決ではなく対立を生む可能性があるためです。
この章では、具体的な連携方法を詳しくお伝えします。

事実を整理する

学校に相談する前に、まずは子どもから聞いた情報をもとに事実を整理することが大切です。いじめの内容や状況を客観的にまとめておくことで、学校側も問題を正確に理解しやすくなります。

例えば、次のような点を記録しておくとよいでしょう。

いじめの具体的な内容
例:「○月○日に○○くんから『消えろ』と言われた」「体育の時間にわざとぶつかられた」
いじめが行われた場所や時間
例:「休み時間に教室で」「昼休みに運動場で」
子どもの感情や反応
例:「怖くて動けなくなった」「涙が止まらなかった」

このように、感情的な主張ではなく、具体的な事実を整理することで、学校側が事態を適切に把握しやすくなります。

学校への相談時のポイント

学校との連携は、まず担任教師への相談から始めるのが一般的です。最初の相談では、次のような姿勢を心がけましょう。

冷静かつ丁寧な話し方
感情的にならず、「このような問題が発生しているため、ぜひ一緒に解決策を考えたい」と建設的な姿勢で伝えます。
具体的な要望を伝える
例:「休み時間に目が届くようにしてほしい」「相手の保護者とも話し合いたいので、調整をお願いしたい」
記録を提出する
上記で整理した事実をまとめた資料を渡し、問題の共有をスムーズにします。

ただし残念ながら、先生方にも個人差があります。もし担任教師だけでは対応が難しい場合や問題と認識されなかった場合は、学年主任、教頭、校長など、学校の上層部に相談をエスカレートすることも検討してください。

学校側の対応が不十分だった場合

学校がいじめの存在を軽視したり、問題解決に消極的だったりする場合もあります。その際は、地域の教育委員会や第三者機関に相談する選択肢があります。また、最近では弁護士や子どもの権利擁護団体がいじめ問題に取り組むケースも増えており、必要であれば専門家の力を借りることも視野に入れましょう。

文部科学省:学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント

第四章:親自身の心も守る――不安との向き合い方

いじめや不登校の問題に直面すると、親であるあなた自身も大きなストレスや不安を抱えることになります。お子様のことを心配するあまり、自分自身の心の健康を見失ってしまうことも少なくありません。この章では、親としての自分自身を守る方法についてお話しします。

自分を責めない

親御さんが最初に覚えておくべきことは、「自分を責めない」ということです。子どもがいじめられたり、不登校になったりすることは、必ずしも親の育て方に問題があったわけではありません。むしろ、学校環境やいじめの構造的な問題が影響していることを忘れないでください。

「もっと早く気づくべきだった」「どうして助けてあげられなかったのだろう」と自分を責めるのではなく、「今できることは何か」を冷静に考えることが大切です。

子どもに寄り添う母親の画像

周囲のサポートを求める

不登校やいじめの問題は、親一人で抱え込むにはあまりにも大きな負担を伴います。信頼できる友人や家族に相談することで、気持ちを整理する助けになります。また、同じ悩みを持つ親同士が集まるサポートグループに参加するのも有効です。共感し合える仲間と話すことで、「自分だけではない」と感じられ、孤独感が軽減されるでしょう。

第五章:子どもの心を癒す――回復プロセスと親の役割

いじめや不登校によって傷ついた子どもの心を癒すには、時間と適切なサポートが必要です。心の傷は目に見えない分、その深さや痛みを測ることが難しく、時に回復の過程が親にとってももどかしく感じられることがあります。この章では、子どもの心の回復を促進するために、親ができる具体的なアプローチについてお話しします。

子どもに「安全な場所」を提供する

いじめを受けた子どもにとって、家庭が最も安心できる場所であることが重要です。子どもが「学校では傷ついたけれど、家では自分をそのまま受け入れてもらえる」と感じられることで、心の回復が進みます。

子どもがどのような言葉や態度を求めているのかは個人差がありますが、基本的には「話を聞く姿勢」を持つことが大切です。親として、「学校に行かないことを責めない」「無理に問題を解決しようとしない」ことを心がけてください。

例えば、子どもが「今日は何も話したくない」と言ったとしても、それを否定せず、「いつでも話したくなったら教えてね」と伝えるだけで、安心感を与えることができます。親が「子どものペース」を尊重する姿勢が、心の回復に繋がります。

子どもの自己肯定感を育む

いじめによる心の傷は、子どもの自己肯定感を大きく損ないます。「自分はダメな人間だ」「何をやっても意味がない」といった否定的な感情に陥ることがあります。このような感情を乗り越えるためには、日常生活の中で小さな成功体験を積み重ねることが重要です。

例えば、運動や音楽、料理など、子どもが得意なことや好きなことに取り組む機会を増やしてあげましょう。そして、その成果を親が積極的に認めることで、少しずつ「自分にも価値がある」という感覚を取り戻す手助けができます。

また、親が子どもに対して具体的な言葉で褒めることも効果的です。「頑張ったね」や「すごいね」といった漠然とした褒め言葉ではなく、「○○を最後までやり遂げたのはすごいね」といった、行動や成果に焦点を当てた言葉を使うことで、子ども自身が自分の努力を実感しやすくなります。

プロフェッショナルのサポートを受ける

子どもの回復を支えるためには、専門家の力を借りることも有効です。カウンセリングや心理療法は、子どもが自分の感情を整理し、新たな視点を獲得するための強力な助けとなります。

例えば、認知行動療法(CBT)は、いじめによるトラウマに苦しむ子どもに対して有効なアプローチです。この療法では、子どもが物事をどのように受け止めるか、その「認知の歪み」を修正し、より前向きな考え方を身につけることを目指します。

プロフェッショナルのサポートは、親だけでは解決が難しい問題に直面したときの大きな助けとなります。学校に設置されているスクールカウンセラーや、地域の相談窓口を積極的に利用してみましょう。

第六章:未来への歩み――不登校を乗り越えたその先

いじめや不登校は、今まさに直面しているときには深刻で解決の見えない問題のように感じられるものです。しかし、こうした状況も永遠に続くものではありません。子どもは親の想像以上に強く、柔軟に環境に適応していく力を持っています。

子どもの成長を信じる

親がまず理解しておかなければならないのは、子どもは自分のペースで成長し、自ら解決策を見つけていける力を持っているということです。不登校という経験が子どもの将来に悪影響を与えるのではないかと心配するのは当然ですが、これは一時的な状態であり、子どもの持つ可能性を信じることが重要です。

多様な進路を考える

日本の教育システムは、一定の枠に子どもを当てはめようとする傾向があります。学校に通い、成績を取り、進学するという一連の流れが当たり前とされているのです。しかし、すべての子どもがこの流れに適応できるわけではありません。いじめや不登校を経験した子どもにとっては、むしろ多様な進路を考えることが未来への希望を広げる鍵となります。

親がこれらの選択肢を理解し、子どもと一緒に考えることで、子どもが「自分にも選べる未来がある」と実感できるようになります。その上で、学校に行きたいという思いがあれば子どもの意思を尊重し、再登校に向けて支援を行っていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

自閉症から不登校になってしまう子どもへの接し方とは?

自閉症から不登校になってしまう子どもへの接し方の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。これまで多くのお子さんとご家族を支援してまいりました。不登校になっているお子さんをお持ちの方は、親として子どものことを心から案じながらも、何をどうすれば良いのか分からず、途方に暮れているかもしれません。私の言葉が少しでもお役に立てればと願いながら、ここに筆を執ります。

自閉症とは何か──特徴と学校生活での壁

まず、自閉症スペクトラム障害(ASD)について、その特徴や学校生活で感じやすいストレスを整理してみましょう。自閉症は、広範囲にわたる発達特性を持つ神経発達障害の一種です。典型的な特徴として、社会的なコミュニケーションの難しさ、興味の偏り、感覚過敏や過集中があります。

学校という場所は、多くの子どもにとって社会的なスキルを試される場であり、また集団行動が求められる環境です。特に自閉症の子どもにとっては、この「普通」が時に大きな負担となります。例えば、教室内でのざわざわした音や、昼休みに友達同士で自然に交わされる会話、教師の指示を即座に理解して行動に移すことなど、これらがすべて「苦手なこと」の要因になり得ます。

自閉症の子どもたちは、ルールやパターンを好む一方で、予期せぬ変化や曖昧な状況に対して大きな不安を感じやすい傾向があります。このため、例えば授業の変更や突発的なアクティビティがあると、パニック状態に陥ることがあります。また、同級生からの冗談や暗黙の了解を理解できずに孤立したり、逆に周囲の視線や言動に過敏に反応してストレスを感じることもあります。

以下は、自閉症の子どもの特徴と、学校でストレスになりやすい要素をまとめた表です。

特徴詳細
社会的な特徴– 他者とのコミュニケーションや集団活動が苦手。
– 冗談や暗黙の了解を理解するのが難しい。
– 対人関係で誤解されやすい。
興味・行動の特徴– 特定の物事やルールに強いこだわりを持つ。
– 興味の範囲が偏っており、他者と共有しにくい。
感覚特性– 音や光、匂い、触覚などに対して過敏または鈍感。
– 環境の変化に強いストレスを感じる。
自己調整の困難さ– 感情をコントロールするのが難しく、パニックや不安状態に陥りやすい。
– 刺激が過剰な環境では過集中や感情の爆発を起こしやすい。
学校でのストレス要因– 騒音: 教室や廊下のざわめき、ベルの音、体育館の反響音などがストレスになる。
– 授業中の変化: 急な時間割の変更や予期しないアクティビティ。
– 対人関係: 友達とのやりとりやグループ活動の難しさ。いじめや孤立感を感じることも多い。
– 評価・プレッシャー: テスト、発表、他者の注目を集める活動が大きな不安要因になる。
– 身体的な不快感: 校庭の暑さ・寒さ、椅子や机の硬さなどの環境的要因が影響することもある。
回避行動の例– 学校に行きたがらない、朝の支度に時間がかかる。
– お腹が痛い、頭が痛いなど体調不良を訴える。
– 家に閉じこもることが増える。

こうした学校生活の中での壁が、やがて大きな不安となり、不登校という結果につながることがあります。「学校に行かなければ」というプレッシャーと、「行きたくない」という心の葛藤が、朝の準備段階で涙や過剰な自己主張として現れることも珍しくありません。

学校という場が持つ意味と、不登校の背景

「学校に行くこと」は、多くの親御さんにとって、子どもの将来を左右する大事なテーマです。しかし、学校での体験が子どもの心を傷つける場になってしまう場合、その環境そのものが問題解決の障害となることもあります。「学校に行くべきだ」という社会的な圧力は確かに存在しますが、それが全ての子どもにとって良い結果をもたらすわけではありません。

自閉症の子どもの場合、学校におけるストレス要因は主に次のように分類できます:

  • 感情的なストレス──授業や課題への不安、教師やクラスメイトとの関係の緊張感。
  • 物理的な環境への不適応──騒音、照明、教室の配置。
  • 対人関係の難しさ──いじめ、孤立、誤解。

これらの要因が重なると、子どもは「学校を避けることで安心感を得る」という行動を選ぶことがあります。これは、ToCoの再登校支援プログラムで言う「負の強化」として説明されている現象です。

では、親としてどのように接するべきなのでしょうか?以下では具体的なアプローチをお伝えします。

自閉症の子どもが学校に向き合う力を持つために親ができること

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもにとって、学校生活での困難は、個別の特性や環境への適応力に深く関連しています。そのため、不登校の支援も一般的な方法ではなく、特性に配慮したアプローチが必要です。以下では、自閉症の子どもに適した具体的な支援策を解説します。


1. 子どもが安心できる環境を整える

自閉症の子どもにとって、「安心できる環境」が不安の軽減と行動の安定に繋がります。学校の環境が過剰な刺激を与える場合、家庭でまず安心感を持たせ、徐々に外部の環境に慣れさせていきます。

具体策:

自宅での学校体験をシミュレーション
学校での流れ(例えば「朝の準備→教室に入る→授業を受ける」など)を家庭内でロールプレイし、少しずつ「学校に行く」感覚を慣れさせます。

視覚的なスケジュールの作成
学校生活や1日の予定を絵や写真、アイコンを使って視覚的に示します。「次に何が起こるか」が分かるだけで、予測不能な不安を和らげます。


2. 子どもの特性に基づいた挑戦を設計する

自閉症の子どもは、特性に応じた小さな挑戦から始め、成功体験を積むことで自己効力感を高めていきます。これは、ToCoプログラムの「安全な挑戦」設定の考え方に基づいています。

具体策:

感覚的な刺激を避ける工夫
通学時間帯をずらしたり、静かな教室や個別ブースで学べるよう学校と調整します。これにより、過度な音や人混みからのストレスを軽減できます。

得意な分野を活かす
子どもが得意とすることや興味を持つことを学校活動に関連付けます。例えば、算数が得意なら「教室で計算問題を解くだけでもOK」など、子どもが「これならできる」と思える範囲を設定します。


3. 親の言葉と行動に一貫性を持たせる

自閉症の子どもは、曖昧な指示や変化に混乱しやすい傾向があります。親が安定した態度で一貫性のある言葉を使うことが、子どもの安心感につながります。

具体策:

  • 「具体的で短い指示」を心がける
    「学校に行く準備をしなさい」ではなく、「まず靴下を履こう」「次に教科書をカバンに入れよう」と具体的に伝えます。
  • 一貫したルールを作る
    学校に行く日と行かない日でルールやスケジュールを変えすぎないようにします。一貫したスケジュールが、子どもの安心感を高めます。
母と娘の会話イメージ

これにより、子どもは親に対して信頼感を持ち、自分の気持ちを素直に話せるようになります。


4. 感覚過敏や興奮を和らげる方法を取り入れる

自閉症の子どもは感覚的な過剰反応を示すことが多いため、ストレスを和らげるツールや方法を日常に取り入れると効果的です。

具体策:

リラクゼーションの習慣化
深呼吸、ストレッチ、抱きしめられる感覚が得られる重い毛布(加重ブランケット)などを使って、リラックスできる時間を作ります。生活リズムが整うことで、子どもは次第にエネルギーを回復し、学校復帰への準備が整っていきます。

感覚調整ツールの活用
ノイズキャンセリングヘッドホンやサングラス、柔らかい素材の服など、子どもの感覚的な快適さをサポートするアイテムを取り入れます。


5. 学校との密な連携を図る

自閉症の子どもが学校に通うためには、学校側との協力体制が重要です。特に特別支援教育コーディネーターや担任の先生と連絡を密にし、個別の支援計画を作成します。

具体策:

  • 個別の支援計画(IEP)の作成
    子どもの特性に合わせた支援が行われるよう、学年や担当教員と相談して具体的な計画を立てます。
  • 登校時間や授業内容の調整
    フルタイムの通学が難しい場合、登校時間を短縮したり、得意な科目に絞るなど柔軟な対応を学校に求めます。
先生との面談イメージ

6. 子どもが落ち着ける「安心の拠点」を持たせる

学校に行く際には、子どもが一息つける安心の場所を作ることも大切です。

具体策:

  • 学校内での拠点づくり
    保健室や図書室、特別支援教室など、子どもが安心して過ごせる場所を学校と調整します。
  • 親子で話し合い「逃げ場」を設定
    子どもがストレスを感じたときに「ここに行けばいい」という逃げ道を設定しておくと、安心感が高まります。

7. 子どもの小さな進歩を具体的に認める

自閉症の子どもにとって、褒められることや成功体験が次の挑戦への原動力になります。ただし、褒め方は具体的で分かりやすいものにしましょう。

具体策:

  • 行動を言葉で細かく評価する
    「頑張ったね」ではなく、「朝、カバンを自分で準備できたね」「学校の門まで行けたのはすごいことだよ」と具体的に伝えます。
  • 進歩を記録する
    できたことを日記やシールで記録し、子どもが自分の成長を視覚的に確認できるようにします。

最後に

お母さまが子どもを想う気持ちは、どんな言葉よりも力強いものです。どんなに小さな一歩でも、それは確実に前進です。お子さんが笑顔を取り戻し、安心して学校生活を送れるようになる日を、一緒に目指していきましょう。私達も、全力であなたとお子さんを支えていきます。どうか一人で抱え込まず、必要な支援を活用しながら進んでいってください。

ToCoでは、不安障害や自閉症を持つお子さんを対象に、何十人もの再登校を支援してきた実績があります。専門家によるカウンセリングや、個々の状況に応じたプログラムの提供を通じて、親子で取り組むことができます。詳しい情報は、ToCoの公式ウェブサイトをご覧いただくか、サポート窓口までお問い合わせください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不安障害で不登校になってしまう子どもへの接し方とは?

不安障害で不登校になってしまう子どもへの接し方の記事の見出し画像

目次


不登校や引きこもりを専門とする児童心理司の藤原と申します。不安障害を抱えるお子さまを持つ親御さまにとって、日々の生活は心配と葛藤の連続だとお察しします。お子さまの抱える不安がどのようなものなのか、どこまで親として助けてあげられるのか、そんな疑問に向き合いながらも、答えが見つからず苦しい日々を過ごしている方も多いでしょう。

私自身、多くのケースを通じて、「何とかしてあげたい」という親御さんの切実な願いと、それに応えたい一方で、どうしても親だけでは手に負えない壁を感じる瞬間を目の当たりにしてきました。本随筆では、不安障害と不登校という問題に焦点を当て、原因とその背景を掘り下げたうえで、親として具体的にどう向き合えばよいのかを考察していきます。

不安障害とは? ~子どもが抱える見えない恐怖~

不安障害とは、単なる緊張や心配とは異なる、日常生活に深刻な影響を及ぼすレベルの強い不安感や恐怖感を伴う疾患です。不安は本来、危険や問題に直面したときに人間が備える自然な反応ですが、不安障害ではこの反応が過剰に働き、本人にとっては非常に現実的で切迫した感情として現れます。

子どもにとっての不安障害とは?

大人が「それほど怖がる必要はない」と思うような状況でも、不安障害を抱える子どもにとっては、それが「恐ろしい災難」に見えることがあります。たとえば、学校での発表、先生に注意されること、友達と話すこと、さらには登校という日常的な行動そのものが、大きなストレス源になります。

  • 身体的症状: 「お腹が痛い」「気持ちが悪い」「心臓がドキドキする」といった身体的な不調が、不安の高まりとともに現れます。これは決して「仮病」ではなく、子どもの体が不安に対して反応している結果です。
  • 思考の歪み: 「失敗したらどうしよう」「みんなに嫌われる」といった否定的な思考が、頭から離れなくなります。このような思考の繰り返しは、子どもの行動範囲を狭め、自己肯定感を奪います。
  • 回避行動: 不安の原因となる状況を避けるため、子どもは学校を休む、部屋に閉じこもるといった行動を取ります。一見すると「怠けている」と見えることもありますが、実際には不安から自分を守るための防御策なのです。

学校が「安心できない場所」になる理由

学校は多くの子どもにとって学びと成長の場ですが、不安障害を抱える子どもにとっては、多くのストレス要因が詰まった場所でもあります。どんな子どもでも多かれ少なかれ緊張やプレッシャーを感じる場面があるものですが、不安障害を抱える子どもにとっては、それが日常的に耐え難いものとなります。

1. 過剰なプレッシャー

学校では、授業中に発言を求められたり、テストで結果を示す必要があったりと、他人に評価される機会が頻繁にあります。不安障害の子どもにとって、これらの場面は「失敗できない」という極端なプレッシャーを感じさせます。

2. 人間関係の複雑さ

友人関係や先生とのやり取りもまた、強い不安を引き起こす要因となります。友達との会話で何を話せばよいのか分からない、クラス全員の前で何かをするのが怖い、といったことが積み重なります。また、些細な意見の相違や行き違いが「自分は嫌われている」と感じる原因になることもあります。

3. 環境そのものへの不安

広い体育館や騒がしい校庭、廊下を歩くだけでも、不安障害を持つ子どもには安心できない場合があります。特に、音に敏感な子どもにとっては、チャイムの音やクラスメイトの声がストレスになることもあります。

親として何ができるのか ~第一歩は「不安」を理解すること~

不安障害を抱える子どもに接する際の基本姿勢として、最も大切なのは、「不安を否定しない」ことです。「そんなことで怖がらなくてもいい」「学校なんて大したことない」という言葉は、子どもにとって自分の気持ちを理解されていないと感じさせるだけでなく、「自分はおかしいのだ」とさらに自己否定感を抱かせてしまいます。

子どもの不安を言葉で受け止める

  • 子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、ただ「分かった」と受け流すのではなく、「そう感じる理由を教えてくれる?」と優しく尋ねます。
  • 子どもが口にした言葉を繰り返すことで、「親が自分の気持ちを理解している」と感じさせることができます。
  • 例:「朝起きたときに、お腹が痛かったんだね。それは不安が原因かもしれないね。」
子どもとのハグのイメージ

安心できる小さな挑戦を作る

不安障害の対処は、一気に解決を求めるのではなく、段階的に取り組むことが基本です。たとえば、次のようなステップを提案できます。

  • 最初は家の近所を一緒に散歩する。
  • 次に、学校の前まで行ってみる。
  • 次第に学校の敷地内に入る、担任の先生と一度だけ話してみる。

これらの挑戦に成功したときは、結果ではなく努力そのものを褒めるようにします。「行けたね」ではなく、「挑戦しようとした姿勢が素晴らしい」と伝えることで、子どもは自己肯定感を少しずつ取り戻します。

生活リズムの安定がカギ

不安が高まる背景には、睡眠不足や昼夜逆転といった生活習慣の乱れがあることも多いです。朝同じ時間に起きる習慣をつける、夜遅くのスマホやゲームを控えるといった基本的な生活リズムを整えることで、子どもの心身の安定を図ることができます。


子どもの心に寄り添う具体的なアプローチ

ここでは、不安障害を抱えるお子さまとどのように対話し、どのように日々の接し方を工夫すればよいかをさらに掘り下げていきます。

1. 子どもの不安を「分解」する対話

不安を感じる状況に直面した際、その原因がどこにあるのかを一緒に探ることで、子ども自身が自分の気持ちを整理する手助けをします。ToCoのプログラムでは、不安を「感覚」「思考」「行動」の3つの要素に分ける方法を推奨しています。

具体例:
親:「学校に行こうと思ったとき、どんな気持ちだった?」
子:「怖くて、お腹が痛くなった。」
親:「そっか。怖いと感じると、体にどんなことが起きたかな?」
子:「心臓がドキドキしたし、泣きそうになった。」
親:「それで、お腹が痛いって思ったのかもしれないね。そう感じたとき、どんなことを考えた?」
子:「行ったら先生に怒られるかもって思った。」

このように、感情を細分化して話し合うことで、子どもは「自分が感じている不安の正体」に気づくきっかけを得ます。それが漠然とした恐怖から具体的な「対処できる課題」へと変わる第一歩になります。

2. 現実的な視点を教える「リフレーミング」

不安障害を持つ子どもは、「失敗したらどうしよう」「みんなに嫌われる」といった極端で否定的な考えに陥りやすい傾向があります。これを「ネガティブな自動思考」と呼びます。この思考に対して、「もっと現実的な見方をする」という練習を繰り返すことが効果的です。

具体例:
子:「宿題を忘れたら先生がすごく怒るに決まってる。」
親:「そう思うんだね。先生が怒るとしたら、どうして怒ると思う?」
子:「私が悪いから…。」
親:「そうか。でも先生は、宿題をしていないことより、どうして忘れたのかを知りたいんじゃないかな?宿題ができなかった理由を話したら、先生は怒るより助けてくれるかもしれないね。」

ネガティブな予測に固執せず、別の可能性を考えられるようになると、不安を減らしやすくなります。

3. 小さな成功体験を積み重ねる

子どもが少しでも新しい挑戦をしたとき、それを必ず認め、成功体験として積み重ねていくことが大切です。挑戦が失敗に終わったとしても、「挑戦した事実」に注目します。

具体例:
親:「今日は学校の門の前まで行けたね。それだけでもすごいことだよ。最初は怖かったと思うけど、やろうとしたその気持ちが素晴らしいよ。」

このように肯定的なフィードバックを与えることで、次への挑戦への意欲を引き出します。


再登校に向けたToCoのサポート

最後に、不安障害を抱えるお子さまをサポートするうえでの選択肢として、ToCoの再登校支援プログラムをご紹介します。ToCoでは、不登校の原因に合わせた個別のプログラムを提供しており、親子ともに無理のない形で再登校を目指せる仕組みが整っています。

笑い合う母と娘の画像

たとえば、以下のような支援を受けられます:

  • 子どもが安心して登校できるよう、小さな目標を設定し、それを専門家と共有しながら進める。
  • 親が子どもとのコミュニケーションで迷った際に、具体的なアドバイスを受けられる。
  • 学校との連携をサポートし、環境調整を進める。

これまで多くの子どもたちが、このプログラムを通じて再び学校生活を取り戻してきました。親御さんとしても、孤独に悩む必要はありません。専門家の力を借りながら、一歩ずつ進んでいける道を探してみてください。

終わりに

不安障害を抱える子どもにとって、親の存在は何よりも大きな支えです。その一方で、親御さん自身が負担を抱え込みすぎてしまうと、心が疲れてしまうこともあります。今回の内容が、少しでも親御さんの力になれば幸いです。そして、必要なときにはToCoのような専門的な支援を受けることで、親子ともに安心して前進できる道を見つけていきましょう。

子どもの未来が明るいものとなるよう、心から願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校1ヶ月以上の子どもへの対処法とは?


目次


児童心理司の藤原と申します。不登校や引きこもりに関する支援に携わっても変わらない思いとして、不登校は親子双方にとって非常に辛い問題だということです。不登校が「1週間」「2週間」であれば、なんとか踏ん張って対策を講じられる方も多いでしょう。しかし、これが「1ヶ月以上」になると話は変わります。子どもの生活習慣は乱れ、学校との心理的な距離は広がり、親自身も「これで良いのか」と自問自答しながら疲弊してしまいます。このような状況において、家庭でどのような対応ができるのか、具体的にお伝えしていきたいと思います。

ここでは、「生活リズムを整える」「勉強を続ける」「学校との繋がりを保つ」という3つの柱をもとに、家庭で実践可能な方法をご紹介します。一歩一歩、親子で前進していくための助けになれば幸いです。

下記が本文の内容をまとめた表となります。

目的必要な行動
生活リズムを整え、心身の安定を図る毎朝決まった時間に起きる習慣をつけ、食事や運動などのルーティンを取り入れる。家族全体で規則正しい生活を心がける。
勉強の継続を通じて学びへの意欲を育む興味のある分野から学習を始める。学校の先生と連携して無理のない課題に取り組むことで、自信と学ぶ楽しさを感じられる環境を整える。
学校との繋がりを保ちながら復帰を促す先生との定期的な連絡や学校行事への参加を通じて、学校を身近に感じさせる。短時間の訪問など段階的な関わりを取り入れる。
親子関係を通じて自己肯定感を高める子どもの気持ちに寄り添い、小さな成功を見つけて具体的に褒める。安心できる環境を作り、感情を表現しやすくする。
親自身の心身の健康を守る信頼できる人に悩みを共有する。自分の時間を持ち、心身のリフレッシュを図ることで、親としての安定感を保つ。

第1章:子どもの生活リズムを整える

不登校が1ヶ月以上続く場合、ほぼ確実に生活リズムが乱れていると言っても過言ではありません。朝起きる時間がバラバラになり、夜更かしが当たり前になることで、昼夜逆転の生活に陥るお子さんも少なくありません。この状態が長引くと、心身の健康に大きな影響を及ぼすだけでなく、学校生活への復帰がますます困難になります。

なぜ生活リズムが重要なのか?

人間の体は、「体内時計」と呼ばれるリズムに従って生活しています。この体内時計を狂わせる最大の要因が、睡眠時間の不規則化です。たとえば、夜中の1時や2時に寝て昼頃に起きる生活が続くと、体が日中活動する準備を整えられなくなります。その結果、疲れやすくなったり、イライラしやすくなったりと、心身にさまざまな不調が現れるのです。さらに、こうした状態では学校に行くどころか、日常生活を送ること自体が難しくなる場合もあります。

どのように整えるのか?

1ヶ月以上続いた乱れた生活リズムを立て直すのは、簡単なことではありません。しかし、焦らず少しずつ取り組むことで、改善の道を開けることができます。以下に具体的な方法を挙げます。

1. 起床時間を固定する まず、毎日同じ時間に起きることを目指してください。最初は30分早く起きるだけでも構いません。「今日だけは少し遅くてもいいか」となると、改善は進みません。親御さん自身も一緒に起きることで、家庭全体で生活リズムを整える努力をしましょう。

2. 朝日を浴びる 朝起きたら、カーテンを開けて日光を浴びることを習慣化しましょう。日光には、体内時計をリセットし、眠気を覚ます効果があります。また、短時間でも散歩に出ることで、気分転換と体力づくりを同時に行うことができます。

3. 夜のルーティンを作る 夜更かしを防ぐためには、夜の過ごし方を工夫することが重要です。例えば、寝る1時間前からスマホやゲームを控える、リラックスできる音楽を聴く、ストレッチをするなど、規則的なルーティンを取り入れましょう。

4. 家族で取り組む 子どもだけに生活リズムの改善を押し付けるのではなく、家族全員で取り組む姿勢を見せることが効果的です。たとえば、朝食の時間を決めて全員で食べる習慣を作ることで、お子さんも「自分だけが頑張る必要はない」と感じられるでしょう。

心理的サポートも忘れずに

生活リズムの改善に取り組む中で、親御さんが注意すべきことは、「無理にやらせない」という点です。たとえば、朝起きる時間を守れなかったときに「どうしてできないの?」と責めてしまうと、子どもはさらに自信を失い、挑戦する意欲を失ってしまいます。たとえ失敗しても、「少しずつでいいよ」「今日はここまでできたね」と肯定的な声掛けを心がけてください。

また、1ヶ月以上の不登校が続く中では、「どうしても動けない」「何もしたくない」という日があるのも自然なことです。そんなときには、無理に何かをさせるのではなく、そっと寄り添い、「次にできそうなこと」を一緒に考えてあげる姿勢が大切です。

第2章:勉強を続けることの意義と方法

1ヶ月以上の不登校が続くと、勉強に対する意欲が大幅に低下しているケースがほとんどです。お子さんの中には、「学校に行っていないから勉強しなくても良い」と考え始める子もいれば、「勉強しようと思っても何から手をつけて良いか分からない」といった混乱を抱える子もいます。また、「他の子に遅れている」というプレッシャーから、自信を喪失してしまう場合も少なくありません。

勉強を続けることは、単に学校の授業に追いつくためだけではなく、お子さんが未来への選択肢を広げ、自信を取り戻すための大切な手段です。しかし、長期間勉強から離れている場合、再び学習の習慣を取り戻すことは簡単ではありません。この章では、勉強の再開をサポートする具体的な方法とその意義についてお伝えします。

なぜ勉強を続けるべきなのか?

1ヶ月以上の不登校が続く中で、勉強をする意味を親御さん自身が見失ってしまうこともあります。「無理に勉強させてもストレスになるだけでは?」という疑問を抱えるのは当然のことです。しかし、勉強には以下のような意義があります。

1. 自信を取り戻すきっかけになる 
何かを学び、理解し、「できた!」と実感することは、お子さんの自己肯定感を高めます。不登校が長引くと、「自分はダメだ」「何をやっても無理だ」という思い込みが強くなりがちですが、勉強を通じて成功体験を積むことで、「やればできる」という感覚を取り戻すことができます。

2. 学び続ける姿勢を維持できる 
勉強は、将来の選択肢を広げるだけでなく、「学ぶこと自体が楽しい」と感じる力を育てます。一度勉強を完全にやめてしまうと、再開する際の心理的ハードルがさらに高くなるため、小さな形でも学習を続けることが重要です。

3. 学校復帰への準備となる 
学校生活に復帰した際、授業内容についていけないという不安は、お子さんにとって大きなストレスになります。不登校中に家庭での学習を進めておくことで、この不安を軽減することができます。

勉強を再開するための具体的な方法

勉強を再開させるには、お子さんの現状や気持ちに合わせた柔軟なアプローチが必要です。以下に具体的な方法を挙げます。

1. 小さな目標を設定する

いきなり学校のペースに合わせようとすると、負担が大きくなり挫折する原因になります。まずは「今日の10分だけドリルを解く」「1ページだけ読書をする」といった小さな目標を設定してください。そして、それを達成した際には必ず褒めてあげましょう。

親が「これだけやれば十分」と思うラインを明確にすることで、お子さんも安心して取り組むことができます。

2. サポートを活用する

不登校が1ヶ月以上続いている場合、学校や地域の教育支援機関と連携することが有効です。たとえば、以下のようなサポートを活用することが考えられます。

  • 先生への相談:学校の先生と連絡を取り、進級に必要な最低限の課題を調整してもらう。
  • オンライン学習:動画授業やオンライン教材を利用し、自分のペースで学べる環境を整える。
  • 学習塾や家庭教師:不登校の子どもに特化した学習塾や家庭教師を探してみるのも良い方法です。

3. 親が介入しすぎない

勉強を再開する際、親が全てを手取り足取り教えようとすると、お子さんが「自分ではできない」と感じてしまうことがあります。最初のきっかけを作った後は、少しずつ子どもが自分で考える時間を与えましょう。そして、取り組みの過程を見守りつつ、困ったときにはサポートするというスタンスを心がけてください。

心理的なハードルを下げる声掛けの工夫

勉強に対する心理的なハードルを下げるためには、親の声掛けが非常に重要です。「どうしてやらないの?」という責める言葉ではなく、「一緒にやってみよう」「少しだけ試してみない?」と優しく促すよう心がけましょう。また、「今日はこれだけできたね」「頑張ったことが素晴らしい」と結果だけでなく過程を褒めることで、お子さんのやる気を引き出せます。

第3章:学校との繋がりを保つ方法

1ヶ月以上の不登校が続くと、学校との繋がりが心理的にも物理的にも遠ざかっていきます。お子さん自身が「学校は自分には関係ない場所」と感じ始めることもありますし、親御さんも「学校に迷惑をかけているのでは?」という気持ちから、先生やクラスメイトとの関係を遠ざけがちになるかもしれません。しかし、学校との繋がりを完全に断ってしまうと、復帰の心理的ハードルが一層高くなります。この章では、無理なく学校との繋がりを保ち、復帰への道筋を整える方法をお伝えします。

なぜ学校との繋がりが重要なのか?

学校は、お子さんが同年代の友人と交流し、協力や競争を通じて社会性を育む場です。不登校が長引くと、そのような機会が失われるだけでなく、「学校は怖い場所」「自分の居場所ではない」という認識が固定化してしまうことがあります。

また、親子が学校との繋がりを維持することは、お子さんが「自分は見捨てられていない」「戻る場所がある」と感じるためにも重要です。不登校の間も、学校というコミュニティの一員であることを意識できるようにすることで、復帰への心の準備を進めることができます。

学校との繋がりを保つための具体的な方法

1. 先生との定期的な連絡を続ける

不登校が長引くと、親御さんの中には「先生に連絡するのが気まずい」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、学校とのコミュニケーションを断つと、状況を共有する機会が失われてしまいます。先生と定期的に連絡を取り合うことで、家庭での様子やお子さんの気持ちを共有し、学校側のサポートを受ける準備が整います。

具体例:

  • 月に1回程度、電話やメールで家庭での様子を報告する。
  • 担任の先生や学年主任と「今後どう進めるべきか」を相談する機会を持つ。
  • 先生からお子さん宛ての手紙やメッセージを依頼する。

2. 短時間の訪問を取り入れる

いきなり「学校に行こう」と言っても、お子さんにとっては心理的な負担が大きすぎる場合があります。その場合は、短時間の訪問や特定のエリアに限定した関わりから始めると良いでしょう。

具体例:

  • 放課後の空いた教室に親と一緒に行く。
  • 校庭や体育館で遊ぶ機会を作る。
  • 学校行事(運動会や文化祭)に顔を出す。

短い時間からでも「学校に足を運ぶ」という経験を積み重ねることで、「学校に行く」という行為自体への抵抗感を和らげることができます。

3. 友人やクラスメイトとの関係を維持する

クラスメイトとの関わりを絶たないようにすることも重要です。不登校が続く中で、友人との関係が途切れると、「学校に戻ったときに誰も自分を受け入れてくれない」という不安が強まります。可能であれば、親御さんが間に入って友人との交流をサポートしてみてください。

具体例:

  • 近所の友達を家に招き、一緒に遊ぶ機会を作る。
  • 学校外の活動(習い事やスポーツ)でクラスメイトと顔を合わせる。

友人との交流が続いていることは、お子さんにとって「学校に戻っても大丈夫」という安心感に繋がります。

4. 無理のない復帰計画を立てる

学校との繋がりを維持しながらも、復帰のタイミングや方法については、慎重に計画を立てる必要があります。一度学校に行けたからといって、それですべてが解決するわけではありません。長期的な視点で段階的に進めることを心がけましょう。

具体例:

  1. まずは1時間だけ授業に参加する。
  2. 好きな科目や得意な授業だけ出席する。
  3. 週に1回から徐々に登校日数を増やす。

お子さんのペースに合わせて計画を進めることで、負担を軽減しながら復帰を目指すことができます。

親のサポートが鍵となる

学校との繋がりを保つためには、親御さんのサポートが不可欠です。お子さんが「学校に行くのが怖い」と感じている場合は、その気持ちを否定せず、むしろ「どこが怖いのか」を一緒に考える姿勢を持ちましょう。また、親が「学校は楽しい場所だよ」と前向きに語ることも、子どもに安心感を与える重要な要素です。

第4章:親自身のケアと精神的な支え方

1ヶ月以上続くお子さんの不登校は、親御さんにとっても大きなストレスとなります。「どうしてこうなってしまったのだろう」「自分の育て方が悪かったのではないか」と自分を責める気持ちや、日々の対応に追われて疲弊する状況は、決して珍しいことではありません。ですが、親が心身ともに健康でいなければ、長期的にお子さんを支えるのは難しくなります。親御さん自身が「自分をケアする」ことに目を向けることは、お子さんの回復を促進するためにも非常に重要です。

なぜ親のケアが必要なのか?

不登校が長期化すると、家庭の雰囲気が張り詰めてしまうことがよくあります。お子さんの行動に一喜一憂し、日々の生活が「不登校の問題」に飲み込まれてしまう状態が続くと、親御さん自身が疲弊し、結果的にお子さんへの支援も行き詰まる恐れがあります。

以下は、親御さんがケアを怠った場合に起こりがちな問題です。

  • 感情的な対応が増える:「また起きられなかったの?」と、子どもを責める言葉が増え、親子関係に溝が生まれる。
  • 過干渉または放任に偏る:疲労から「どうでもいい」と放任してしまうか、逆に不安から過干渉になる。
  • 自分を責める感情が悪化する:「私がちゃんと育てていれば」と自己否定に陥り、精神的な余裕を失う。

こうした状況を防ぐためにも、親自身が心身の健康を保つことが欠かせません。

親自身をケアするための具体的な方法

1. 悩みを共有する

不登校問題を一人で抱え込む必要はありません。同じ悩みを持つ親同士の交流や、専門家への相談を活用することで、気持ちが軽くなることがあります。

具体例:

  • サポートグループに参加する:不登校の子どもを持つ親が集まるグループでは、「自分だけではない」と感じられ、共感や具体的なアドバイスを得られることがあります。
  • 専門家に相談する:児童心理司やスクールカウンセラーに現状を共有し、具体的な対応方法をアドバイスしてもらう。
  • 信頼できる友人や家族に話す:身近な人に話を聞いてもらうことで、感情の整理が進む場合もあります。

他者に悩みを打ち明けることで、問題を客観的に捉え直すきっかけが得られます。

2. 自分の時間を持つ

日々の生活が不登校対応に追われていると、親御さん自身の時間を持つことを忘れがちです。しかし、自分の趣味や楽しみの時間を確保することは、心のリフレッシュに繋がり、子どもへの支援を続ける力となります。

具体例:

  • 趣味に没頭する:読書、料理、運動など、気分転換になる活動を取り入れる。
  • 短時間でも外出する:カフェに行く、自然の中を散歩するなど、自分のための外出を計画する。
  • リラックスの時間を作る:瞑想やヨガを取り入れ、心を落ち着ける習慣を持つ。

お子さんを気にかけすぎて何もかも自分で抱え込むのではなく、少しの時間でも「自分のために使う」ことを心がけましょう。

3. 感情を整理する

お子さんの不登校に直面していると、親御さん自身も様々な感情を抱えます。「心配」「怒り」「焦り」「孤独」など、それらをため込むとストレスが増幅してしまいます。感情を外に出し、整理することが大切です。

具体例:

  • 日記をつける:日々の気持ちや考えを文章にすることで、自分自身を客観視できる。
  • 肯定的な言葉を自分にかける:「私はよく頑張っている」「一歩ずつ進んでいる」といった言葉を、自分に向けて語りかける。
  • 専門家の力を借りる:感情が整理しきれない場合、心理カウンセリングを受けることも一つの手段です。

4. 家族やパートナーとの協力体制を築く

親御さんが一人ですべてを抱え込むのは非常に困難です。家族やパートナーと協力しながら、不登校の対応を進めることを考えましょう。

具体例:

  • 役割分担をする:例えば「朝の声掛けは母親、宿題のサポートは父親」というように、家庭内で役割を明確にする。
  • 家族会議を開く:お子さんの状況や家庭での対応方針について話し合う時間を設ける。
  • お互いの気持ちを尊重する:「どうしてこの対応をしたの?」と責めるのではなく、互いの意見を受け入れる姿勢を大切にする。

家庭全体で協力し合うことで、親御さん自身の負担を軽減するだけでなく、家庭の雰囲気も穏やかになります。

親が元気であることが子どもを支える力になる

親御さんが元気でいることは、お子さんにとっての安心感に繋がります。不登校の状況においては、親が冷静で落ち着いた態度を示すことが、子どもに「自分も大丈夫」というメッセージを伝える重要な手段となります。親御さん自身のケアを優先することは決して「甘え」ではありません。それは長期的にお子さんを支えるための「準備」なのです。

おわりに

ここまで、「生活リズムを整える」「勉強を続ける」「学校との繋がりを保つ」、そして「親自身のケア」という4つの柱について詳しく解説してきました。不登校が1ヶ月以上続く中での対応は簡単なものではありませんが、一つずつ取り組むことで、状況を改善する道筋が見えてきます。

親御さんの努力や温かいサポートは、必ずお子さんに届きます。焦らず、親子で少しずつ前進していきましょう。そして、どんなに辛い日々の中でも、「今は支え合う時間」と捉え、将来の希望を共に描いていけることを願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

子育てにおける加点方式とは?


目次


児童心理司の藤原と申します。不登校や引きこもりの子どもたち、そしてそのご家族と日々向き合いながら、さまざまな課題や悩みに寄り添う仕事をしています。この文章を通じて、不登校に悩むお母さまたちが、子育てにおいて少しでも役立てられるヒントをお届けできればと思います。今回は「子育てと加点方式」というテーマに沿って、子育ての考え方を深掘りしていきます。

子育ては、ときに大きなプレッシャーを伴うものです。「これをしなければならない」「あれをやらないといけない」といった義務感や、「この子が将来困らないように」という切実な願いが、知らず知らずのうちに日々の言動を支配していることもあるでしょう。そして、そうした思いが強くなるとき、私たちはつい「減点方式」の視点に立ってしまうことがあります。

減点方式とは何か

まず、減点方式とは何でしょうか。この考え方は、もともと工業や製造業など、ミスが許されない分野で発展してきた評価の方法です。製品を検査する際に、欠陥がある部分を減点していくことで、品質を保証する仕組みです。たとえば航空機の製造や医療現場では、この減点方式が欠かせません。安全が最優先されるからです。

しかし、この減点方式を子育てに当てはめたとき、何が起こるでしょうか。子どもが失敗したり、不十分だったりした点を指摘し、そこを改善するように促すことで、理想的な状態に近づけようとする。この方法は一見、効率的に思えるかもしれません。けれども、子育てにおいては、こうした評価方法が親子双方に大きなリスクをもたらすことがあります。

減点方式が子どもに与える影響

減点方式の最大の問題点は、子どもの「自己肯定感」を損ないやすいという点です。自己肯定感とは、自分自身を「これでいいんだ」と認められる感覚のことです。この感覚は、幸せを感じるための基盤ともいえるものです。子どもが失敗や不足を指摘され続けると、「自分はダメだ」「自分には価値がない」という感覚を持ちやすくなります。そして、この自己肯定感の低下は、後々まで深刻な影響を及ぼす可能性があります。

たとえば、不登校の子どもたちと話していると、「どうせ何をやっても怒られる」「頑張ったって認めてもらえない」といった言葉を耳にすることが少なくありません。彼らの中には、親からの期待や指摘が積み重なり、自分自身を否定的にしか見られなくなっている子もいます。もちろん、親としては愛情をもって接してきたつもりでしょうし、子どもの成長を願う気持ちに偽りはないはずです。しかし、その思いが減点方式の形で伝わると、子どもには「自分はまだ足りない」「もっと頑張らないと愛されない」と感じさせてしまうのです。

加点方式とは何か

では、加点方式とは何でしょうか。加点方式は、減点方式とは逆に、ポジティブな側面や達成したことを評価し、それを積み重ねていく方法です。たとえば、「できなかったこと」ではなく、「できたこと」に注目する。「これが足りない」ではなく、「ここまでできている」という視点で接するのです。

この加点方式は、スポーツのコーチングなどでもよく使われます。選手の欠点ばかりを指摘するのではなく、うまくいった部分を認めることで、本人のやる気や自信を引き出します。こうした方法は、子育てにも大いに応用できるのです。

子どもに幸せを届けるための子育て

子育ての目的とは何でしょうか。それは、子どもが幸せになるための手助けをすることです。では、幸せとは何でしょうか。お金や地位といった物質的な豊かさももちろん大切です。しかし、それ以上に重要なのは、「自分自身を受け入れる力」です。どれだけ成功しても、自分を否定し続ける心では、本当の意味で幸せを感じることは難しいのです。

そのためには、子どもが自分自身を肯定できる環境をつくることが欠かせません。そして、この自己肯定感は、加点方式によってこそ育まれます。たとえば、テストで50点を取った子どもに対して、「あと50点足りないね」と言うのではなく、「50点分もよく頑張ったね」と伝えるのです。小さな違いに思えるかもしれませんが、これが子どもの心に与える影響は計り知れません。

加点方式は、親にとっても気持ちを軽くする効果があります。減点方式で子どもに接する親は、どうしても子どもの不足ばかりが目につくため、イライラしたり、失望したりすることが増えがちです。一方で、加点方式を意識することで、子どものポジティブな面を見つける喜びが増し、親子の間に温かな空気が生まれるのです。

子育てにおける歴史的背景

興味深いことに、加点方式と減点方式の考え方には、歴史的な背景があります。たとえば、江戸時代の日本では、子どもの成長を「目出度い(めでたい)」と捉える文化がありました。節目ごとに子どもの成長を祝う七五三などの行事も、その表れです。一方、産業革命以降の西洋では、効率や成果を重視する風潮が強まり、減点方式的な評価方法が広がりました。この背景には、資本主義の台頭や、労働力としての能力を重視する社会構造の変化が関係しています。

現代の日本は、この両方の影響を受けています。成果主義的な価値観が広がる一方で、伝統的な家族文化も残っています。このような状況の中で、私たちは改めて、「何のために子どもを育てるのか」という原点に立ち返る必要があるのではないでしょうか。

加点方式の具体的な実践方法

それでは、加点方式を日常の子育てにどう取り入れていくかについて、具体的にお話しします。ポイントは、「子どもの行動を細かく観察し、小さな進歩や努力を見逃さない」ということです。どんなに些細なことでも、「できたこと」「頑張ったこと」を見つけ、それを言葉にして伝えることが重要です。

たとえば、不登校の子どもが朝起きてリビングに顔を出したとします。その行動自体は、もしかすると親から見れば大したことではないように思えるかもしれません。しかし、不登校の子どもにとっては、それが大きな一歩である場合も多いのです。ここで「どうして学校に行かないの?」と尋ねるのではなく、「リビングに出てきてくれたんだね。嬉しいよ」と伝えることで、子どもは「自分の行動が認められた」と感じます。

また、子どもが何か新しいことに挑戦したときや、困難に向き合ったときも、結果にかかわらず努力を評価することが大切です。たとえば、「テストで良い点を取ること」だけを褒めるのではなく、「テスト勉強を頑張ったこと」を認める。「友達と話せた」だけではなく、「話しかけようと勇気を出した気持ち」に目を向ける。このように、結果だけではなく過程を評価する視点を持つことで、子どもの心に寄り添うことができます。

親の心の持ち方を変える

加点方式を実践するうえで、親自身の心の持ち方も大切です。減点方式に陥りがちな親の多くは、自分自身にも厳しい評価を下しがちです。「良い親でなければならない」「子どもをちゃんと育てなければならない」というプレッシャーが強く、自分自身に対しても減点方式的な見方をしていることが少なくありません。

しかし、子どもに加点方式を適用するためには、まず親自身が自分を認めることが必要です。「これだけやれた」「ここまで頑張れた」という自分自身の努力や成長を、意識して肯定的に捉える練習をしてみてください。たとえば、一日を振り返るときに、「今日も子どもとちゃんと話せなかった」と自己批判するのではなく、「今日は子どもに『おはよう』と声をかけられた」といった小さな成功体験に目を向けるのです。

子どもを褒めるイメージ

また、完璧を求めるのではなく、「少しずつ良くなっていくことを喜ぶ」という視点を持つことも大切です。不登校は決して「親の失敗」ではなく、子どもが人生の中で一時的に経験する一つの課題にすぎません。親が自分を責めすぎず、「今できることをやる」くらいの気持ちでいることで、親子の間に余裕が生まれます。

子どもの未来を信じる

不登校の子どもたちと接していると、親御さんから「この子の将来が心配です」という声をよく聞きます。その気持ちは当然のものですし、愛情の表れでもあります。しかし、過度な心配は、ときに子どもにとって重荷になってしまいます。

子どもにとって何より大切なのは、「自分を信じてもらえている」という感覚です。たとえ学校に行けていなくても、今は何もできていなくても、親が「あなたには可能性がある」「あなたならきっと大丈夫」と信じてくれることで、子どもは安心感を得ます。そして、その安心感が、次の一歩を踏み出すエネルギーになるのです。

私が以前関わった子どもの中に、2年間不登校だった男の子がいました。その子の母親は、最初の頃は非常に不安を抱えていて、どうしても減点方式的な接し方になりがちでした。しかし、母親がカウンセリングを通じて加点方式を意識するようになると、少しずつ親子の関係が変わっていきました。その子は、母親からの「最近、自分で時間割を作ろうとしてるんだね。すごいね」という声かけを受けて、自分の行動に自信を持つようになりました。最終的に彼は再登校し、今では学校生活を楽しんでいると教えていただきました。

このように、親が子どもの未来を信じ、できることを一つずつ認めていくことで、子どもの可能性は大きく広がります。

加点方式がもたらす親子関係の変化

加点方式を続けていくと、親子の関係そのものが変わっていきます。親が子どもの成功や努力を見つけ、認めることで、子どもは「自分は親に愛されている」と感じます。そしてその感覚が、子どもの自己肯定感を育みます。一方で、親にとっても、子どものポジティブな面を見つけることは、子育ての喜びを再発見する機会となります。

また、加点方式は親子の間に信頼関係を築く助けにもなります。減点方式では、どうしても指摘や注意が増え、子どもとの間に摩擦が生じやすくなります。しかし、加点方式を取り入れることで、親子の間にポジティブな会話が増え、自然と笑顔の時間が増えるのです。

親子の信頼関係は、不登校の解決だけでなく、その後の人生全般においても大きな財産となります。どんな困難に直面しても、「自分には味方がいる」「自分を認めてくれる人がいる」と思えることは、子どもにとって何よりの支えとなるのです。

最後に

子育てには正解がないとよく言われます。しかし、正解がないからこそ、自分たちに合った方法を見つけることが大切です。そしてその中で、減点方式ではなく加点方式を意識することは、親子双方にとって大きなメリットをもたらします。

不登校という状況は、親にとっても子どもにとっても、決して簡単なものではありません。しかし、そこに隠れている小さな可能性や希望に目を向け、加点方式の考え方を取り入れることで、きっと前に進む道が見えてくるはずです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。この文章が少しでも保護者の方のお役に立てれば幸いです。そして、何よりもお伝えしたいのは、あなたの頑張りが、きっとお子さまに届いているということです。どうぞご自分を責めず、肩の力を抜いて、お子さまとの時間を大切にしてください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

再登校に向けた冬休みの過ごし方とは?

冬休みを再登校に向けた土台作りにするための過ごし方のイメージ

目次


不登校や引きこもりの支援に携わる児童心理司の藤原と申します。不登校という状況は、どのご家庭でも大きな悩みであり、時に出口の見えない迷路のように感じられることもあるかと思います。
特に冬休みという時期は、親戚が集まる行事や年末年始の特別な環境変化が重なることで、お子さんの心に新たな負担が生じやすい時期でもあります。これから、「冬休みを再登校に向けた土台作りにするための過ごし方」というテーマで、保護者の方にとって役立つ具体的な方法をお伝えします。

1. 親戚との付き合い――無理をさせないための工夫

冬休みといえば、多くの家庭で親戚が集まる行事が予定される季節です。お正月や新年会、あるいはクリスマスの集まりなど、家族や親戚が一堂に会することは、日本の伝統的な年中行事の一部であり、多くの人にとって楽しみな時間でもあります。しかし、不登校のお子さんにとって、これらの機会は楽しいどころか、場合によっては非常にストレスフルな状況になることがあります。

まず、親戚同士の集まりでは、どうしても「学校」の話題が出やすいものです。特に学校に行けていないお子さんにとっては、「最近どう?」「学校はどうしてるの?」といった何気ない質問が強いプレッシャーになりがちです。このような質問に答えられない、あるいは答えることで不安や恥ずかしさを感じる場合、親戚の集まりそのものが苦痛に感じられることがあります。また、普段あまり会わない親戚たちの前では、素の自分を出すことができず、緊張が高まってしまう子どもも少なくありません。

こうした状況を避けるためには、まず保護者の方が事前にお子さんと話し合い、集まりへの参加方法や範囲について、可能な限りお子さんの希望を尊重することが大切です。「少しの時間だけ顔を出してみる」「挨拶だけして、あとは自分の部屋で過ごす」といった選択肢を提示し、お子さんが安心して過ごせる形を一緒に考えることが重要です。
たとえ短時間でも「参加できた」という経験は、お子さんにとって自信や達成感につながる可能性があります。一方で、無理に参加させることで逆にストレスが高まり、自己否定的な気持ちが強まるリスクもあるため、無理強いは避けるべきです。

また、親戚の方々に事前にお子さんの状況を簡潔に伝えることも有効な手段です。「今は少し休んでいる時期です」「ゆっくり考える時間を持たせています」といった形で、柔らかい表現を用いながら、子どもが質問攻めに遭わないよう配慮をお願いすることができます。この際、状況を細かく説明する必要はありません。あくまで「今の状況を温かく見守ってほしい」というスタンスを伝えることが大切です。親戚の集まりでは、学校や進学に関する話題が出ることが多いため、これを未然に防ぐことは、お子さんの安心感を守るうえで非常に有効です。

さらに、親戚同士の集まり自体を短時間に抑えるという選択肢もあります。例えば、昼食や夕食の時間帯だけ参加し、その後は自宅でゆっくり過ごすように計画を立てることが考えられます。こうすることで、お子さんが長時間ストレスにさらされることを防ぎつつ、親戚との交流も一定程度維持することができます。特に、祖父母など近しい親戚に会うことは、将来的にお子さんが家族のつながりを感じるための大切な経験となる可能性があるため、全く顔を出さないよりも、短時間でも接触の機会を持つことを目指すと良いでしょう。

加えて、親戚の集まりに参加する場合、お子さんに事前の準備をサポートすることも効果的です。例えば、「話したくない質問が来たらどう返すか」を一緒に考えたり、「参加する時間帯や席の場所」について相談したりすることで、お子さん自身が少しでもコントロール感を持てるよう配慮することが大切です。「わからない時は無理に答えなくてもいいんだよ」「何かあれば、すぐにお母さんに助けを求めていいんだよ」といった言葉をかけることで、安心感を与えることができます。

このように、親戚の集まりというイベントは、不登校のお子さんにとって大きなハードルとなり得ますが、工夫次第でその負担を軽減することが可能です。保護者としては、「参加できることが良い」というプレッシャーを抱えず、あくまでお子さんの気持ちやペースを尊重しながら、柔軟に対応する姿勢が求められます。短い時間でも「自分なりに頑張った」という経験は、お子さんの心の成長に確実につながっていきます。

2. 生活リズムの調整――年明けの再登校に備えて

冬休みという期間は、普段と違う生活リズムになりやすいものです。気温の低下によって布団から出づらくなったり、年末年始の行事の影響で夜更かしや朝寝坊が続いたりするのは、どの家庭でもよく見られる現象です。しかし、不登校のお子さんにとって、生活リズムが乱れることは、再登校への壁をさらに高くしてしまう要因になりかねません。心と体の準備が整わない状態で年明けを迎えると、休み明けの登校が一層難しくなってしまう場合があります。そのため、冬休み中にできる範囲で生活リズムを整える努力が重要となります。

まず、生活リズムを整えるために最も意識したいのは、起床時間を固定することです。夜更かしを完全に防ぐことが難しい場合でも、毎朝同じ時間に起きる習慣をつけることは、全体のリズムを戻す上で効果的です。子どもにとっては、冬休み中の朝に「起きる理由」がないことが多く、気づかないうちに昼まで眠る生活になってしまうことがあります。そのため、親御さんが一緒に起きる、あるいは軽い朝のイベントを計画するなどして、「朝起きる楽しみ」をつくる工夫をすると良いでしょう。例えば、親子で簡単な朝食作りに挑戦したり、近所を散歩して冬の景色を楽しむなど、小さな目標を持つだけで、朝起きるきっかけが生まれます。

次に、日光を浴びることも重要です。冬は日の出が遅いため、朝の光を浴びる機会が減りがちですが、太陽の光を浴びることは体内時計のリセットに欠かせません。起床後すぐにカーテンを開けて部屋に朝日を取り込み、可能であれば少し外に出るだけでも効果があります。たとえ寒い時期でも、10分程度の外出で十分です。日光を浴びると、体内のメラトニンというホルモンが調整され、自然な眠気が夜に訪れるようになります。この小さな習慣の積み重ねが、夜の早寝につながります。

また、食事のリズムを整えることも、生活習慣改善の重要な一歩です。特に朝食をきちんと摂ることは、体を目覚めさせるだけでなく、昼食や夕食の時間も一定に保つ助けとなります。不登校のお子さんの場合、食事をスキップしたり不規則な時間に軽食を取ることが増えやすいですが、親御さんが一緒に朝食を楽しむよう心がけることで、習慣づけがしやすくなります。子どもが好きな朝食メニューを一緒に考えたり、簡単に作れるレシピを共有するのも効果的です。

さらに、生活リズムを整える際に重要なのは、すべてを完璧に戻そうとしないことです。不登校のお子さんにとって、長い間崩れていたリズムを一気に修正することは、かえって負担になります。「少しずつ、できる範囲で」という姿勢を持つことで、子ども自身もプレッシャーを感じずに取り組むことができます。例えば、起床時間を1日30分ずつ早める、寝る前にスマートフォンやタブレットの使用時間を少し短くする、といった小さな目標を設定するのが良いでしょう。

親御さん自身も、お子さんのペースに寄り添いながら生活リズムの調整を進めていくことが大切です。「一緒にできたこと」を見つけて声に出して褒めることで、少しずつ自信を取り戻す助けになります。このような積み重ねが、年明けに再登校への一歩を踏み出す土台となるのです。

3. 学校との連携――家庭での学習支援を取り入れる

冬休みは、生活リズムだけでなく学習習慣の維持にも気を配りたい時期です。不登校のお子さんにとって、学習面での遅れがさらに再登校を難しくする原因になることがあります。学校の授業に追いつけない不安や、自分だけが取り残されている感覚を抱えたままでは、学校への足が遠のいてしまうのも無理はありません。そこで、学校と連携して家庭でできる学習支援を取り入れることが、有効な手段となります。

最初のステップとして、学校の担任の先生やスクールカウンセラーに相談することをおすすめします。不登校の状況に応じて、学校側が家庭で使えるプリントや課題を用意してくれることがあります。これらの教材は、単なる勉強の道具としてだけでなく、「学校とのつながりを持ち続ける」手段としても役立ちます。学校での学びを家庭で少しずつ取り戻していくことで、「勉強ができた」という自信につながり、再登校への意欲も高まる可能性があります。

学習に取り組む際には、量や難易度に配慮することが重要です。無理に多くの課題をこなそうとすると、かえってお子さんの負担になり、やる気を失わせてしまうことがあります。そのため、「少しでも取り組めたらOK」という柔軟な姿勢で進めることが大切です。例えば、1日1枚のプリントから始めたり、得意な科目や簡単な問題から手をつけることで、学習へのハードルを下げることができます。完璧を求めるのではなく、「やれたこと」に焦点を当てて褒める姿勢が、親子の間に前向きな空気を生み出します。

また、親御さんが直接教えるのではなく、そばで見守る形を取ることも効果的です。お子さんが勉強に取り組む間、親が横で読書をしたり、家事をしながら様子を見守ることで、適度な安心感を与えることができます。「一緒にいるけど口出ししない」というスタンスが、お子さんの自立を促すと同時に、過剰な干渉によるストレスを防ぎます。

さらに、学習の進捗や困難な点については、定期的に学校側と共有することが大切です。家庭での努力を学校に報告することで、先生たちが今後の指導方針を立てやすくなるだけでなく、お子さん自身も「学校に見守られている」という感覚を持ちやすくなります。こうしたつながりが、再登校への道筋を整える支えとなります。

冬休みという特別な期間は、お子さんが学校に戻る準備を進める上で大切なチャンスでもあります。しかし、それを実現するには、親御さん自身も無理をせず、子どものペースに寄り添うことが何より重要です。焦らず、少しずつ進むことを目指しましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校の対応が母親中心になる理由とは?

不登校の対応が母親中心になる理由のイメージ

目次


児童心理司の藤原と申します。不登校や引きこもりの問題を専門としており、これまで多くの子どもたちとそのご家族に向き合ってきました。

さて、今回のテーマである「不登校の対応が母親中心になる理由」について、掘り下げてお話ししていきたいと思います。不登校の子どもを持つお母さん方は、毎日心を痛めながら、どう接すれば良いのか、どう導いてあげれば良いのかと頭を悩ませていることでしょう。一方で、お父さんの役割はどうなっているのか――そんな疑問を持つ方も多いかもしれません。家族内での役割分担と、なぜ母親が中心的な存在となりやすいのかを理解していただくことで、不登校への対応に少しでも光が見えるのではないかと思います。

※今回は片親家庭は対象外として傾向分析を進めています。

1. 子どもとの「対話」は普段の積み重ねが鍵

不登校の問題が浮き彫りになるとき、多くのご家庭では「対話」が課題として挙げられます。学校に行かないという事実を前にして、子どもとどのように向き合えば良いのか、何を話せば良いのか分からなくなってしまうのです。しかし、ここで重要なのは「子どもとの対話は不登校になったとき突然始められるものではない」という点です。

子どもは、親に対して無条件に心を開いてくれるわけではありません。特に小学校高学年や中学生になると、自我が芽生え、親との距離を取りたがる時期でもあります。そういった時期に信頼関係を築くためには、日頃から何気ない会話を積み重ねておくことが必要です。「今日学校で何があった?」「友達と何を話したの?」そんな些細な一言でも、子どもにとっては「親が自分に関心を持ってくれている」と感じるきっかけになります。

しかし、ここで浮かび上がるのが「父親と子どもの会話の少なさ」です。これは多くの家庭で見られる傾向であり、データとしても裏付けられています。背景としては男性は感情を言葉にすることが苦手な傾向があり、子どもとのコミュニケーションが表面的なものになってしまうことがあります。

一方で、母親は普段から子どもとの会話を大切にしている方が多いです。朝起きたときから夜寝るまでの間に、自然と子どもと話す機会が多く、その積み重ねが信頼関係を育むのです。そのため、いざ子どもが不登校になったときも、母親は比較的スムーズに子どもの心に寄り添いやすい立場にいると言えるでしょう。

2. 不登校中の「非日常」が父親には難しい理由

不登校は家庭にとって「非日常」の出来事です。それまで当たり前だった「朝起きて学校に行く」という日常が崩れ、家族全体が不安定になります。この非日常の中で子どもと向き合うことは、実は非常に難易度の高いことなのです。

特に父親の場合、普段から子どもとの会話が少ない分、不登校という状況に直面したときにどう接すれば良いのか分からなくなることが多いです。子どもの気持ちを理解しようとしても、そもそも日常的な信頼関係が築けていないため、子どもが心を閉ざしてしまうことがあります。例えば、「どうして学校に行かないんだ?」「甘えているんじゃないか?」といった言葉が、父親の口から出てしまうことがありますが、これは子どもにとって大きなプレッシャーとなります。

一方で、母親は日常的な会話を通じて子どもの気持ちや変化に敏感です。不登校の原因が何であるか、子どもが何を考えているのかを感じ取りやすく、適切な言葉をかけることができるのです。そのため、不登校の対応が母親中心になりやすいのは、自然な流れとも言えるでしょう。

ただし、ここで誤解しないでいただきたいのは「父親の役割がない」というわけではないということです。不登校の子どもを支えるためには、父親も母親もそれぞれの得意分野を活かして適材適所で役割を果たすことが大切なのです。

3. 家族ぐるみの「役割分担」が効果的な理由

不登校の子どもを支えるためには、母親だけがすべてを抱え込むのではなく、父親を含めた家族全体での役割分担が重要になります。なぜなら、不登校への対応は一時的なものではなく、長期戦になることが多いため、母親がひとりで背負い込んでしまうと精神的にも体力的にも限界がきてしまうからです。

母親は、日頃から子どもとの会話を通して心に寄り添い、安心できる環境を作る役割を担っています。その一方で、父親は学校とのやり取りや社会的な役割を果たすことが得意な場合が多いです。例えば、担任の先生や学校のカウンセラーとの面談、学校への連絡などは、父親が中心となって動くことで、母親の負担が軽減されるだけでなく、父親自身が不登校への理解を深めるきっかけにもなります。

また、父親が学校と積極的にコミュニケーションを取ることで、子ども自身が「お父さんも自分のことを理解しようとしてくれている」と感じることができます。不登校の子どもは、時として「自分の存在は誰にも必要とされていないのではないか」という孤独感を抱えることがあります。父親が行動を通じて子どもの存在を認め、支えている姿勢を見せることは、子どもにとって非常に心強い支えとなるのです。

加えて、家庭内での役割分担は、両親の間のパートナーシップを強化する効果もあります。母親と父親がそれぞれの得意分野を活かしながら協力し合うことで、不登校の対応が「家族全体の課題」として捉えられるようになります。母親が孤立することなく、父親が不登校への理解を深めることで、家庭全体のバランスが保たれ、子どもも安心して過ごすことができるようになるのです。

4. 母親が中心になることの「現実」と向き合う

ここまで、母親が不登校の対応において中心的な役割を果たしやすい理由についてお話ししてきましたが、現実としては「母親がすべてを引き受けてしまう」という状況も少なくありません。不登校の子どもに寄り添うことは、決して簡単なことではなく、精神的にも大きな負担がかかります。

「自分の対応が間違っているのではないか」「なぜうちの子だけが学校に行けないのか」――そんな不安や焦りが、母親の心を圧迫してしまうことがあります。特に、周囲の目や世間の常識が母親に対して無言のプレッシャーをかけることも少なくありません。「お母さんの育て方が悪いのではないか」といった偏見にさらされることで、母親自身が自分を責めてしまうケースも見られます。

しかし、ここで強調しておきたいのは、「母親が一人で頑張りすぎる必要はない」ということです。不登校の問題は、決して母親一人の責任ではありません。子ども自身の心の問題、学校環境の問題、さらには社会全体の問題が複雑に絡み合って起こるものです。母親がすべてを背負い込んでしまうのではなく、父親や学校、専門家と連携しながら、少しずつ前に進んでいくことが大切です。

母親が子どもに寄り添う姿勢は、何よりも大切なものです。しかし、その姿勢が母親自身を追い詰めるものになってしまっては、元も子もありません。母親が笑顔で過ごすことが、子どもにとっても安心感につながります。だからこそ、家族全体で支え合い、母親が少しでも楽になれるような環境を作ることが、不登校の子どもを支える第一歩となるのです。

5. 父親の「役割」を再認識することの大切さ

不登校の対応が母親中心になりやすい理由として、父親の役割が見えにくくなってしまうことが挙げられます。しかし、父親が果たすべき役割は決して小さなものではありません。父親が学校や外部の専門機関とのやり取りを担当することで、母親の精神的な負担を軽減するだけでなく、家庭内での責任を分かち合うことができます。

また、父親が積極的に子どもとのコミュニケーションを取ることで、子どもが抱えている悩みや不安が見えてくることもあります。たとえ最初はうまくいかなくても、父親が真摯に向き合う姿勢を見せ続けることが、子どもとの信頼関係を築く第一歩となります。

さらに、父親の存在が家庭に安定感をもたらすことも忘れてはいけません。不登校の問題は、家庭全体に大きな影響を与えますが、父親も冷静に状況を見つめ、母親と協力しながら対応することで、家庭全体が前向きな方向へと進んでいくことができます。

6. 最後に――母親の皆さんへ

不登校の問題に向き合う母親の皆さんへ――あなたが今、毎日悩みながら子どもと向き合っていることは、決して無駄ではありません。子どもが学校に行けないことに対して、焦りや不安を感じるのは当然のことです。しかし、その中でも子どもの気持ちに寄り添い、少しずつ前に進もうとしているあなたの姿は、子どもにとって何よりも大きな支えとなっているはずです。

母親が中心的な役割を担うことは、現実として避けられない面もあります。しかし、それは決して「母親だけが頑張らなければならない」という意味ではありません。父親や学校、専門家と協力しながら、家族全体で子どもを支えていくことが、不登校の問題を乗り越えるための鍵となります。

どうか、一人で抱え込まずに、周囲の力を頼ってください。そして、あなた自身が少しでも笑顔で過ごせる時間を大切にしてください。その笑顔が、子どもにとっての希望となり、未来へとつながる第一歩となるのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校の構造的な問題と、親としての立ち向かい方とは?


目次


私は、児童心理司として不登校や引きこもりの問題に長年携わってきた藤原と申します。本文では、お子様の不登校に悩む保護者の皆様に向けて、子どもが不登校になる背景や構造的な問題を掘り下げ、親としてどのように立ち向かうべきかを考えていきます。

不登校という状況に直面すると、親は強い不安や自己批判にさいなまれることが少なくありません。しかし、この問題を冷静に捉え、子どもに寄り添った対応を取ることで、親子の新たな可能性を見出すことができます。これから、具体的な課題と解決策を深く掘り下げていきます。

不登校を生み出す学校という構造の問題

日本の教育システムは、長い間「画一的な学び」を前提に運営されてきました。つまり、すべての子どもが同じカリキュラムを、同じペースで学び、同じように評価される仕組みです。表向きには平等な教育のように見えますが、実際にはこの仕組みの中で多くの子どもたちが取りこぼされています。不登校という現象は、まさにその「画一化」の犠牲とも言える問題なのです。

例えば、学校の授業スタイルを考えてみましょう。多くの授業では、教師が黒板の前で説明し、生徒はそれを静かに聞くという形式が採られています。この形式が得意な子どももいますが、全員がそうとは限りません。じっと座って話を聞くことが苦手な子ども、耳で聞くよりも目で見たり、手を動かしたりして学ぶ方が得意な子ども、人前で発表することに強いストレスを感じる子どももいます。学校はこうした個々の学びの特性を十分に考慮していません。

また、評価の基準が偏っていることも問題です。たとえば、「算数100点、国語0点」の子どもは、「算数50点、国語50点」の子どもよりも問題視されがちです。特定の科目に秀でた子どもの才能が認められるどころか、不得意な科目に注目され、その子ども自身が「自分はダメだ」と感じてしまう原因となります。このような教育の仕組みが、子どもたちの自己否定感を生み出し、不登校につながっているのです。

さらに、学校という閉鎖的な環境において起こりやすい「いじめ」の問題も、不登校を引き起こす大きな要因です。いじめはしばしば表面化しにくい形で進行します。加害者だけでなく、周囲の無関心や教師の未熟な対応が、被害者の孤立感をさらに深めることがあります。このような環境で子どもが「学校は安心できる場所ではない」と感じるのは当然のことです。

社会と教育の価値観のズレが生む問題

近年、社会では「働きがい」や「個性の尊重」が重視されるようになっています。例えば、大人たちはそれぞれの能力や志向に応じた職業を選び、自分の適性を活かせる働き方を模索するようになりました。しかし、子どもたちの教育現場ではどうでしょうか。依然として「全員が同じ内容を、同じペースで学ぶ」ことが当然とされ、個性や適性など「学びがい」が軽視されています。この価値観のギャップこそが、子どもたちを苦しめている原因の一つです。

特に顕著なのは、学び方の選択肢が限られていることです。たとえば、フリースクールや通信制の学校など、従来の学校に代わる選択肢が増えてきてはいますが、それでも社会全体ではまだ少数派です。N校のような先進的な取り組みが注目されているのは、子どもたちが自分に合った学び方を選べる場を提供しているからです。従来型の学校に適応できない子どもたちが増えている背景には、このような選択肢の少なさが関係しています。

また、学校の価値が「勉強」だけにあるわけではないことも重要です。学び舎とも呼ばれるため「学校に行く=勉強をする」と考えがちですが、実際には学校で得られる最大の価値は「人間関係」です。同年代の子どもたちと触れ合い、協力し、時には衝突しながら人間関係を学ぶ場としての学校の役割は非常に大きいのです。しかし、この「人間関係」が逆にストレスとなり、不登校の原因になる場合もあります。

例えば、対人関係において自己肯定感が低い子どもは、「自分なんて誰も好きじゃない」「みんなから嫌われている」と思い込む傾向があります。このような子どもにとって、学校は非常に居心地の悪い場所となります。不登校の子どもたちの多くが、このような自己否定的な思考に悩まされています。

頭を抱える子どものイメージ

親として不登校にどう向き合うべきか

子どもが不登校になったとき、親はどう対応するべきでしょうか。最も避けなければならないのは、「学校に行くことが当たり前」という価値観を押し付けることです。子どもが学校に行けない理由は、多くの場合、「甘え」や「怠け」ではありません。不登校には、環境的な要因や心理的な要因が複雑に絡み合っています。親が「行くべきなのに行かない」という見方をしてしまうと、子どもは自分の気持ちを理解してもらえないと感じ、さらに孤立してしまう可能性があります。

子どもが不登校になったとき、まず親がするべきことは、「子どもの気持ちに寄り添うこと」です。例えば、子どもが「学校が怖い」と言ったとき、その言葉を軽視せず、なぜ怖いと感じるのかをじっくりと聞いてあげることが大切です。「どうして怖いの?」「具体的にどんな場面が嫌なの?」と問い詰めるのではなく、「怖いと感じるんだね」「それは辛いよね」と共感を示すことで、子どもは安心感を得られます。

さらに、不登校の原因の一つとして、子どもの自己肯定感の低さが挙げられます。私がこれまでカウンセリングしてきた中で、「自分は価値のない人間だ」と思い込んでいる子どもが非常に多いことに気づきました。この自己否定的な思考を和らげるためには、親が日常的にポジティブなメッセージを伝えることが有効です。「あなたは頑張っているね」「とても素敵だと思うよ」といった言葉は、子どもの心を少しずつ癒していきます。

また、不登校の子どもに「無理に学校へ戻す」ことは避けるべきです。子どもが学校に対して強い抵抗感や恐怖感を持っている場合、無理に通わせようとすると、さらに心の傷を深めてしまう可能性があります。その代わりに、子どもが安心できる環境を作り、少しずつ心の回復を促すことが重要です。

自己肯定感を高めるための具体的な取り組み

不登校の子どもの多くは、自分に自信を持てない状態に陥っています。「自分なんて、誰からも必要とされていない」「みんなが自分を嫌っている」といった考えが、子どもの行動や思考を支配してしまうのです。このような状態を改善するためには、親が自己肯定感を高めるための取り組みを意識的に行う必要があります。

まず、子どもの得意なことや好きなことを見つけ、それを伸ばしていくことが大切です。例えば、絵を描くことが好きな子どもであれば、自由に描ける時間や環境を用意し、その作品を「素敵だね」「こんな表現ができるなんてすごいね」と褒めてあげましょう。スポーツが好きな子どもには、地域のクラブ活動や親子で一緒に体を動かす時間を作るのも良いでしょう。

また、子どもの努力や小さな成果を認めることも重要です。たとえ学校に通えなくても、日々の生活の中で頑張っていることは必ずあります。「今日は朝起きられたね」「少しでも宿題に取り組んだね」といった具体的な行動を褒めることで、子どもは自分の価値を再認識することができます。

もう一つの重要なポイントは、親自身が子どもにとっての「安心感」を与える存在であることです。不登校の子どもにとって、親がイライラしたり落ち込んだりしている姿を見ることは、大きなストレスになります。もちろん、親が不安やストレスを感じることは当然です。しかし、その気持ちを子どもにぶつけるのではなく、誰かに話したり、時間を置くことで、親自身が心の安定を保つことが大切です。

親自身のストレスを軽視しないために

不登校の問題に向き合う中で、親自身が孤立しないことも非常に重要です。不登校の子どもを持つ親は、「自分の子育てが駄目だったから、こんな苦しい状況に子どもといるのではないか」と感じてしまうことがあります。この孤立感は、親自身の精神的な健康を損ない、子どもへの対応にも悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、親が自分の趣味や楽しみを見つけることも重要です。親が疲れ切ってしまっては、子どもに安心感を与えることは難しくなります。短時間でも良いので、自分の好きなことに没頭する時間を作り、リフレッシュすることを心がけましょう。

親自身が孤立から抜け出し、前向きな気持ちを持つことで、子どもとの関係もより良いものになっていきます。不登校という状況に向き合うのは決して簡単なことではありませんが、親が自分自身を大切にすることで、子どもへのサポートもより効果的なものになります。

もちろん不登校という状況は、親子にとって大きな試練であることは間違いありません。しかし、それは同時に、親子関係を見直し、より深い絆を築くチャンスでもあります。不登校に直面したとき、親が子どもを一方的に責めたり、学校に行くよう強制したりするのではなく、子どもの気持ちや考えをじっくりと理解しようとする姿勢を持つことで、新たな関係性を築くことができます。

例えば、子どもが「なぜ学校に行きたくないのか」を話し始めたら、その言葉を否定せず、最後まで耳を傾けることが重要です。たとえ子どもの言葉に納得できない部分があったとしても、「そう思うんだね」と受け止める姿勢を示すことで、子どもは安心して自分の気持ちを話せるようになります。

また、不登校をきっかけに、親子で一緒に何かを始めるのも良い方法です。例えば、家で料理を作る時間を増やしたり、庭で植物を育てたりすることで、親子が自然と会話をする機会が生まれます。このような日常の中での触れ合いは、子どもの心を癒し、親子の信頼関係を深めるきっかけになります。

子どもとの未来を築くため、親ができること

不登校という問題に直面したとき、親として重要なのは「長期的な視点を持つこと」です。多くの親は、「早く学校に戻らせなければ」「このままでは将来が心配」といった短期的な不安にとらわれがちです。しかし、不登校はその子どもの人生全体における、ほんの一時期の出来事にすぎません。親が目先の問題に焦るのではなく、子どもの成長を長い目で見守ることで、子ども自身も安心して自分のペースで進むことができるようになります。

親が心配する気持ちは当然ですが、その気持ちを子どもに押し付けるのではなく、「あなたのペースでいい」「一緒に考えていこう」という姿勢を持つことが大切です。このような親の態度が、子どもにとって最大の支えとなります。

そして、不登校が続きやすい原因となる自己否定や自尊心の低下についても、「モノの見方」を変える手助けをすることで、新しい人間関係を作る一歩になり、学校生活という場をもう一度楽しめる可能性を高めることとなります。

登校する生徒たちの画像

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

スクールカウンセラーへの適切な頼り方とは?

スクールカウンセラーの実態と適切な頼り方の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの支援を専門とする児童心理司の藤原と申します。ここでは、スクールカウンセラーの役割や、不登校の子どもを持つ親御さんがどのように適切に頼ればよいのかを詳しくお話しします。私がこれまでに出会った多くの親御さんや子どもたちの経験をもとに、少しでも皆さまの心が軽くなり、次の一歩を踏み出す助けになるよう願っています。


不登校の問題と親御さんの「孤独感」

不登校のお子さんを持つ親御さんは、多くの場合、非常に孤独です。周囲に相談できる人が少なく、学校からの対応にも期待が持てないと感じている方が少なくありません。「どうしてうちの子が?」という問いかけが、親としての自己否定や家庭環境への疑念につながることもあります。このような状況下で親御さんが真っ先に感じるのは、自分たちがどこかで間違えたのではないかという罪悪感です。

ですが、ここでまずお伝えしたいことがあります。不登校は、決して「親のせい」ではありません。もちろん、家庭環境や親子関係が子どもの心に影響を与えることはあります。しかし、それはあくまで一要因であり、すべてがそこに起因するわけではないのです。不登校の背景には、学校という場が持つ構造的な問題や、子ども一人ひとりの特性、さらに社会全体の変化が複雑に絡み合っています。親が感じる罪悪感は、現状を改善するためのエネルギーを奪い取るだけでなく、子どもとの関係性にも悪影響を与えかねません。

ここで大切なのは、親自身が孤独を感じないための「つながり」を持つことです。その一つとして、スクールカウンセラーの存在を知り、適切に頼る方法を考えることが重要になります。


スクールカウンセラーとは?

スクールカウンセラーという言葉を聞くと、「学校にいる専門家」「問題を聞いてくれる人」というイメージを持たれるかもしれません。しかし、実際にはその役割はもっと広範囲で多様です。スクールカウンセラーの主な使命は、子どもたちが学校生活をより良いものにするための支援を行うことです。そのため、不登校の問題だけでなく、友人関係や学習面、さらには家庭内での悩みまで、幅広い相談を受けることができます。

しかし、多くの親御さんはスクールカウンセラーにどのように頼ればよいか分からないという現状があります。子どもが学校に行かなくなってしまうと、「そもそも学校に関わる人たちに相談するのは抵抗がある」と感じるのも無理はありません。特に、過去に学校側からの対応に不満を感じた経験があると、その感情は一層強くなるでしょう。

ここで、スクールカウンセラーを「学校の一部」と見るのではなく、「外部の専門家」として捉えてみることを提案します。実際、スクールカウンセラーは学校職員ではなく、心理学や教育学の専門的な知識を持った外部委託の専門家であることがほとんどです。学校とのつながりを持ちながらも、独立した立場で親御さんや子どもの話を聞いてくれる存在です。言い換えれば、親御さんの味方として機能する場合も多いのです。

スクールカウンセラーの現状データと概要

1. 学校カバー率

  • スクールカウンセラーの配置は、日本の公立小中学校で広がっています。2024年時点で、ほぼ全ての公立小中学校に配置されている状況ですが、実際の勤務日数や時間には地域差があります。
  • 小学校では90%以上の配置率ですが、多くの場合、週4時間未満または月1回程度の勤務が一般的です。中学校では約3校中2校が週4時間以上の勤務時間を確保していますが、全体的に「広く薄く配置されている」傾向があります。
  • 高校では9割以上に配置され、週4時間以上勤務するケースが増えていますが、不定期の配置もまだ一定割合あります。

(データ元:政府統計 / 学校保健統計調査 / 令和4年度 都道府県表

2. 誰がスクールカウンセラーになれるのか?

  • スクールカウンセラーは、主に臨床心理士、公認心理師、もしくは心理学の高度な専門知識を持つ者が担当します。また、これらの資格に基づき、子どもや親、教職員との教育相談を行います。
  • 研修が義務付けられており、各自治体や教育委員会によって、地域特性や課題に応じたスキル向上の取り組みが進められています。また、チーム学校の一環として教職員向け研修にも参加しています【。

3. 課題

  • スクールカウンセラーの配置は進んでいますが、非常勤が多く、勤務時間が限られるため、子どもや親が必要な時に相談できるとは限りません。また、一部では配置時間の不足が継続的な相談に支障をきたしているという課題も指摘されています。
  • ICTを活用したオンラインカウンセリングが進められているものの、効果的な実施には環境整備やルール作りが必要とされています。

4. 配置の目的と成果

  • スクールカウンセラーの目的は、不登校やいじめ、家庭内問題などの早期発見と対応です。調査によれば、スクールカウンセラーが関与することで、不登校やいじめの発生率が減少するなどの効果が報告されています。さらに、災害時や緊急時の心のケアも期待される役割の一つです。

日本のスクールカウンセラーの現状を考えると、全国で配置率は向上しているものの、勤務時間の制約や地域ごとの違いが課題となっています。このため、利用する際には自治体や学校ごとの実態を理解し、効果的な活用を目指すことが重要です。

スクールカウンセラーの「具体的な頼り方」

では、どのようにスクールカウンセラーを頼るべきなのでしょうか。ここでは、いくつかの具体的なステップをお伝えします。

1. 最初の一歩を躊躇しないこと
「こんな相談をしてもいいのだろうか」「話すことで余計に問題がこじれるのでは」と考える親御さんは少なくありません。しかし、スクールカウンセラーはどんな小さな相談でも受け付けています。「子どもが最近、朝起きられない」「ゲームの時間が増えて心配」といった話題でも構わないのです。むしろ、早い段階で相談をすることで、問題が深刻化する前に対処できる可能性が高まります。

2. 子どもの状態を正確に伝える
スクールカウンセラーに相談する際には、できるだけ具体的に子どもの様子を伝えることが重要です。例えば、「学校に行きたくないと言った」「何も話さなくなった」といった事実に加えて、そのときの表情や態度、親として感じた違和感も共有してください。こうした情報は、カウンセラーが子どもの気持ちや置かれている状況を理解する手助けになります。

3. 自分の気持ちも伝える
スクールカウンセラーへの相談は、必ずしも子どもに関する内容だけに限りません。親自身が感じている不安や悩みも、カウンセラーに共有することができます。「自分がどう対応すればよいのか分からない」といった漠然とした気持ちでも大丈夫です。親の気持ちを整理することで、子どもに向き合う余裕が生まれることもあります。

4. 継続的な相談を心がける
スクールカウンセラーへの相談は、一度きりで終わる必要はありません。状況が変わったり、別の問題が出てきたりした場合には、何度でも足を運んでください。継続的な相談を通じて、カウンセラーとの信頼関係が築かれ、より深いサポートが受けられるようになります。

親が抱える「期待」と「現実」のギャップ

スクールカウンセラーに相談したからといって、すぐに問題が解決するわけではありません。不登校の問題は、表面的な対応だけではなく、子どもの内面的な成長や、周囲の環境との調整が必要になるため、時間がかかることが多いのです。しかし、このプロセスにおいて重要なのは、親が「変化の兆し」を見逃さないことです。

例えば、子どもが以前よりも家で笑うようになった、少しだけでも学校の話題に触れるようになったといった小さな変化は、大きな前進を意味しています。スクールカウンセラーを頼ることで、こうした変化を共有し、次のステップへの道筋を一緒に考えることができます。

スクールカウンセラーの限界と併用するべき支援

スクールカウンセラーは頼りになる存在ですが、全ての問題を解決できるわけではありません。カウンセラー自身にも担当できる範囲や限界があります。特に、深刻な精神的問題や診断が必要な場合には、専門医やクリニックとの連携が求められます。この点を理解した上で、スクールカウンセラーを適切に利用することが大切です。

また、親御さん自身が他のサポートを併用することも検討してください。例えば、不登校の親同士で交流できる自助グループや、地域の教育支援センターなどがあります。これらは親自身の孤立感を軽減し、具体的な対策や気持ちの整理をする場として非常に有効です。

こうした支援とスクールカウンセラーを併用することで、子どもと親が孤立せず、問題解決に向けた柔軟なアプローチが可能になります。

スクールカウンセラーが教えてくれる「親の役割」

多くの親御さんは、不登校という現実に直面すると「親として何をすればいいのか」という悩みに押しつぶされそうになります。その答えを見つけるために、スクールカウンセラーの助言が役立つことがあります。実際、カウンセラーからよく伝えられるのは、「親の役割は完璧でなくていい」というメッセージです。

例えば、不登校の子どもは家庭の中で自分の居場所を見つけることが何よりも大切です。そのためには、親自身が「何とかして学校に戻らせなければ」という焦りを手放す必要があります。この焦りが子どもに伝わると、余計にプレッシャーを感じさせ、状況を悪化させることがあります。代わりに、まずは子どもの心の安全基地としての役割を果たすことを意識しましょう。

スクールカウンセラーは「学校復帰」という目標を急ぐよりも、「子どもが自分らしく成長する道筋」を一緒に模索してくれる存在です。その過程で、親として何ができるのかを考えるヒントを与えてくれます。例えば、日常生活でどのように声をかければいいのか、家庭内でどんな雰囲気を作れば子どもが安心できるのかといった具体的なアドバイスを受けることができます。


不登校は「成長の過程」であると考える

不登校は決して子どもにとって「失敗」ではありません。むしろ、子どもが自分自身と向き合い、将来を考える貴重な機会であると捉えるべきです。スクールカウンセラーの役割は、こうした「成長の過程」に寄り添い、親と子どもが共に前向きに歩むサポートをすることにあります。

例えば、ある親御さんのケースでは、子どもが学校に行けなくなってから自然と興味を持ち始めた絵を描く活動が、後に進路選択のきっかけになったという話がありました。この家庭では、スクールカウンセラーが子どもの好きなことを引き出し、それをどう生かしていけるかを一緒に考えてくれたのです。

親としては、「今は学校に行けていなくても、子どもには未来がある」と信じることが重要です。この信念を持つためには、時にはスクールカウンセラーのような専門家の視点を借りることが有効です。親一人で全てを抱え込む必要はありません。


最後に:親が「信じる力」を持つことの重要性

最後にお伝えしたいのは、親が子どもを信じる力を持つことの重要性です。不登校の子どもは、多くの場合、自分自身に対する自信を失っています。その中で、唯一無条件に信じてくれる存在が親であることは、何よりも大きな支えになります。

スクールカウンセラーは、子どもと親の間に立ち、双方が互いを理解し、信じる力を回復する手助けをします。そして、その関係性が築かれることで、子どもは再び自分のペースで前に進む力を取り戻すことができるのです。

不登校という問題は、簡単には解決できない複雑な課題です。しかし、スクールカウンセラーという味方を得ることで、その道のりを少しでも軽やかにすることができます。親御さん自身も無理をせず、時には自分を労わりながら、子どもの成長を長い目で見守っていただければと思います。

これからの道のりにおいて、少しでも明るい兆しが見えることを心より願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

いじめによって不登校になった場合の対処は?


目次


いじめが原因で不登校になった場合、学校との連携は問題解決において欠かせない要素です。しかし、現実的には、学校側の対応が不十分だったり、解決に向けた行動が遅れるケースも少なくありません。そのような中で、親としてどのように学校と向き合い、子どもにとってより良い環境を作っていくかが重要な課題となります。これから、学校との具体的な連携方法を徹底的に掘り下げて解説します。

1. 学校との信頼関係を築く:連携の第一歩

学校との連携を効果的に進めるには、親が感情的にならず、冷静で協力的な態度を保つことが何よりも大切です。学校の教師やスタッフも、問題を解決したい気持ちは同じですが、業務の多忙さや複雑な人間関係から、時に十分な対応ができないことがあります。そのため、対立的な姿勢を取るのではなく、あくまで「子どもの利益を第一に考えた協力者」として接することが必要です。

たとえば、初めて学校に相談する際は、事実を整理した上で、簡潔かつ具体的に伝えるよう心がけましょう。以下のような情報をまとめて持参すると、学校側が迅速に状況を把握しやすくなります。

  • いじめの状況に関する詳細な記録
     いじめの具体的な内容(身体的・言葉の暴力、仲間外れ、無視など)、発生した日時、場所、関わった生徒の名前や状況。
  • 子どもの変化や反応
     不登校になる前後で見られた子どもの行動や感情の変化。例えば、食欲が落ちた、夜眠れない、学校の話題を避けるなどの具体例。
  • 親が把握している背景情報
     いじめが始まるきっかけと思われる出来事、学校行事やクラス内でのトラブル、教師の関わり方に関する情報など。

これらの情報を基に、担任教諭だけでなく、必要に応じて学年主任やスクールカウンセラー、さらには学校長と話し合いの場を設けることが効果的です。特に、いじめの深刻さが明らかな場合、学校全体のサポート体制を早急に整えてもらうことが重要です。

2. 学校の調査と対応策を促す:責任範囲を明確化する

学校に問題を報告した後は、いじめの調査と解決に向けた具体的な対応策を促しましょう。ここで重要なのは、学校が問題を把握しているだけでなく、実際にどのような行動を取る予定であるかを確認し、それを記録に残すことです。

例えば、学校とのやり取りでは以下の点を確認してください。

  • いじめの調査内容と進捗状況
     どのような方法でいじめを調査しているのか(加害者や被害者、第三者への聞き取り、SNSやノートの確認など)、調査の進捗状況。
  • 具体的な対応策
     いじめを防止するためにどのような措置を取るのか(加害者への指導、新しいクラス編成の検討、担任の変更など)。
  • 子どもの安全確保
     被害を受けた子どもが安心して学校生活を再開できる環境作りについて(保健室登校や特別支援教室の利用、教師のサポートなど)。

また、口頭でのやり取りだけでなく、話し合いの内容を文書にまとめるよう学校に依頼することをお勧めします。これにより、親として何が話し合われたのかを正確に把握できるだけでなく、後に問題が再発した際の証拠としても役立ちます。

3. 学校の対応が不十分な場合:教育委員会の活用

残念ながら、学校がいじめ問題に対して適切な対応を取らないケースもあります。そのような場合、教育委員会に相談することは非常に有効な手段です。教育委員会は、学校を監督する立場にある行政機関であり、学校では対応が困難な場合に具体的な指導や助言を行う役割を担っています。特に、いじめ問題や不登校のケースでは、教育委員会が親や子どもの立場を考慮し、学校に改善を促すケースが少なくありません。

1. 教育委員会に相談するタイミングを見極める

教育委員会に相談するべきかどうかを判断する際、まず考慮すべきは学校側の対応状況です。以下のような場合、教育委員会への相談を検討することが適切です。

  • 学校がいじめの事実を認めない、または調査を行わない。
  • 学校が加害者側の指導や被害者の安全確保に向けた具体的な対策を講じていない。
  • 何度も学校に相談しているにもかかわらず、対応が進展しない。
  • 学校側とのやり取りで、親が感情的になってしまい、建設的な話し合いが難しい。
  • いじめや不登校の状況が長期化し、子どもの心身の健康がさらに悪化するリスクが高まっている。

教育委員会は、親や子どもの立場に立って学校と調整を図る役割を持っています。学校の対応が不十分だと感じた場合は、ためらわずに教育委員会に相談を持ちかけましょう。

2. 教育委員会への相談の準備

教育委員会に相談する際は、学校と同様に、具体的な事実や状況を整理して伝えることが重要です。感情的な訴えだけではなく、客観的な情報を基に相談を進めることで、教育委員会側もスムーズに対応を開始できます。以下は、相談前に準備すべき項目です。

  • いじめや不登校に関する詳細な経緯の記録
     いつ、どこで、どのような状況でいじめが発生したのか、子どもの不登校が始まった時期や理由について、具体的に書き出します。
  • 学校とのやり取りの記録
     学校との話し合いの内容、対応の進捗状況、不満に感じた点や未解決の課題について、日時や内容を整理して記録します。
  • 関連する証拠資料
     いじめの証拠となるメモ、SNSでのやり取りのスクリーンショット、学校との文書やメールのやり取りなど、事実を裏付ける資料を用意します。
  • 親としての要望や希望
     具体的にどのような対応を望んでいるのか(例:いじめの解消、加害者への指導、被害者の安全確保、転校支援など)、明確にしておきましょう。

準備が整ったら、まずは電話で教育委員会に連絡し、面談や相談の日時を予約します。この際、「学校とのやり取りが進まない」「いじめが深刻で、子どもの安全が心配」といった概要を伝えるとスムーズです。

3. 教育委員会への相談時の流れ

教育委員会との面談や相談では、以下のような流れで進むことが一般的です。

追加の支援や外部機関の紹介
 場合によっては、カウンセリングやNPO団体、法律相談窓口など、外部機関のサポートを紹介されることもあります。

相談内容のヒアリング
 最初に、いじめや不登校の状況について詳細に説明します。この段階では、感情的にならず、事実に基づいた情報を冷静に伝えることが大切です。

教育委員会の対応方針の提示
 相談内容を受けて、教育委員会側が学校への指導や助言、場合によっては直接的な介入の方針を説明します。

改善プランの共有
 教育委員会が学校にどのような指導を行うのか、また親としてどのような協力が求められるのかを具体的に共有します。必要に応じて、定期的な経過報告の場を設けることもあります。


4. 学校環境の調整:クラス替えや転校の検討

いじめの解決策として、学期の変わり目にクラスを変える、あるいは転校を検討することは効果的な手段の一つです。ただし、この選択肢にはいくつかの現実的な課題があります。

クラス替えの実現性
いじめを行った子どもがクラスを移るべきだという意見は正論ですが、現実的には実現が難しい場合が多いです。そのため、親としては被害を受けた子どもが安全を確保できる形でのクラス替えを学校に要請することが現実的な対応になります。

転校の是非
転校は親にとって大きな決断ですが、時には新しい環境で子どもが気持ちをリセットすることが効果的です。ただし、転校先でのいじめリスクや新しい環境に適応するための負担も考慮する必要があります。転校を検討する際は、子ども自身の意思を尊重しながら、冷静に判断してください。


5. ケーススタディ:学校との連携が成功した実例と失敗例

親御さんが学校との連携に苦労するのは、どの家庭でも同じです。しかし、成功例から学ぶことは非常に多くあります。ここでは、いじめによる不登校の対応において、学校との連携が成功したケースと失敗したケースを比較し、どのように対応すれば効果的かを具体的に検討してみましょう。

成功例:学校と一丸となって解決に取り組んだケース

ある家庭では、中学2年生の娘さんがクラスメートからの無視や悪口を受け、不登校になりました。お母さんは早期に学校へ相談し、以下のような連携を取ることで、子どもの復帰を実現しました。

  • 学校側の対応
     担任教諭だけでなく、スクールカウンセラーや副担任も含めた「支援チーム」を編成し、定期的に状況を共有する場を設けました。また、クラス全体に対して「思いやりを持った行動を促す」という教育活動を実施し、いじめを防ぐ風土づくりを進めました。
  • 親の役割
     お母さんは、娘さんが少しずつ学校に戻る準備ができるよう、保健室登校や登校時間の調整を提案しました。また、自宅でも娘さんの不安に耳を傾け、「無理をしないで大丈夫」という安心感を与える一方で、「小さな目標を一緒に考えよう」と具体的な行動を支援しました。
  • 結果
     クラス替えのタイミングで新しい環境に移行することで、いじめが自然と収まりました。娘さんは最初は保健室登校から始め、数か月後には授業にも参加できるようになりました。

失敗例:学校側の対応が後手に回ったケース

一方、別の家庭では、小学5年生の息子さんが同級生から暴力を受けたことがきっかけで不登校になりました。お母さんは学校に相談しましたが、次のような要因が解決を妨げました。

  • 学校側の対応の遅れ
     担任教諭が「子ども同士の問題」として軽視し、適切な調査を行わなかったため、いじめの事実が明らかになるまでに時間がかかりました。また、加害児童の親との面談も消極的で、いじめが止まることはありませんでした。
  • 親の孤立
     お母さんは学校の対応に失望し、教育委員会に直接相談しましたが、具体的な改善にはつながらず、最終的に息子さんを転校させる決断をしました。転校後も環境への適応に時間がかかり、息子さんは新しい友人関係を築くのに苦労しました。
  • 教訓
     学校との連携がうまくいかない場合でも、感情的になるのではなく、記録を整え、外部機関を活用して解決を図ることが重要です。また、教育委員会やNPOを早期に活用することで、より迅速な対応を引き出せた可能性があります。

成功に導くためのポイント

上記のケースから学べることは、次の3点です。

  1. 学校との連携をスムーズにするための工夫
     学校側の関係者を巻き込むだけでなく、親自身も積極的に行動し、提案型の姿勢で連携を進める。
  2. 親としての冷静な対応
     感情的にならず、具体的な記録や解決策を提示することで、学校側の理解を得る。
  3. 複数の解決手段を同時進行で準備する
     学校だけでなく、外部機関や専門家の助けを早期に求め、対応が遅れるリスクを軽減する。

6. 学校連携における心理的負担への配慮

学校との連携を進める中で、親御さん自身が心理的な負担を感じることも少なくありません。「学校に迷惑をかけているのではないか」「子どものためにもっと何かできるのではないか」といった思いに押しつぶされそうになる親御さんも多いでしょう。

しかし、ここで大切なのは、「親が疲弊してしまうと、結果的に子どもも影響を受ける」という事実を理解することです。不登校問題に取り組む際、親の心の健康を保つことは不可欠です。

7. 学校との連携を通じて子どもに希望を届ける

学校との連携を進める目的は、単に問題を解決することではなく、子どもが再び「希望」を持てるようになる環境を整えることです。不登校を乗り越える過程は一朝一夕ではありませんが、親と学校が一丸となってサポートを続けることで、子どもは必ず一歩を踏み出せる日が訪れます。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

不登校になりかけの時に親がすべき3つの行動とは?

不登校になりかけの時に親がすべき3つの行動のイメージ

目次


私は児童心理カウンセラーの藤原と申します。不登校や引きこもり問題に取り組む現場で、数多くの親子と向き合ってきました。不登校は、原因を探ることだけでは解決しません。子どもが不登校の状態を「日常」として受け入れてしまう前に、親としてできることに目を向けるべきです。今回は、不登校になりかけた時に、親がどのように行動すればよいのかについて、私の経験を踏まえてお話ししたいと思います。特に、不登校が長期化するリスクを減らし、子どもの可能性を守るための具体的な方法を、学校との連携を含めてお伝えします。

(前段)不登校の「予兆」に気づくために

不登校は、ある日突然起こるものではありません。多くの場合、その前兆が見られるものです。しかし、親は日常の忙しさや、子どもの言動の「当たり前さ」に紛れて、その変化を見逃してしまうことがあります。たとえば、以下のような兆候は、不登校のサインかもしれません。

  • 朝の準備が極端に遅い、または機嫌が悪い
  • 「頭が痛い」「お腹が痛い」と頻繁に身体の不調を訴える
  • 学校や友達の話題を避けるようになる
  • ゲームやスマホに依存する時間が増える
  • 授業に遅刻が増え、欠席日数が徐々に増加する

これらの行動は、ただの気まぐれではなく、心や体に不安が生じているサインであることが多いです。大切なのは、これらの変化に気づいた際に、親が慌てたり感情的になったりせず、冷静に子どもに接することです。

たとえば、朝起きられないときに「怠けている」と叱るのは逆効果です。代わりに、「どうして朝がつらいのかな?」と問いかけ、子どもの感覚や状況を理解しようと努めることが重要です。また、身体の不調を訴える場合には、医師の診察を受けることも選択肢の一つです。「本当にどこも悪くない」と医師から確認されるだけで、親が冷静になるきっかけになることもあります。

さらに、親として注意すべきは、「何が原因なのか」を問い詰めすぎないことです。不登校の原因は必ずしも一つではなく、複数の要因が絡み合っている場合がほとんどです。そして、本人でさえも「なぜ行けないのか」をはっきり言葉にできないことがあります。親が原因にばかり目を向けると、子どもを追い詰める結果になりかねません。大切なのは、子どもの状態を冷静に観察し、今すべき具体的な対処を考えることです。

行動1. 学校との「建設的な連携」を図る

不登校になりかけたとき、学校との連携が非常に重要になります。しかし、ここで注意すべきなのは、「学校を責める姿勢」を取らないことです。親が学校に対して感情的になり、「学校が悪い」と批判を続けると、結果的に子どもの問題解決の道を狭めてしまいます。

まず、担任の先生との連絡を定期的に取り合うことを心がけましょう。電話やメール、面談など、手段は問いませんが、学校での子どもの様子についてできるだけ詳細な情報を得ることが重要です。たとえば、友人関係の状況や授業中の態度、休み時間の過ごし方など、学校ならではの視点から得られる情報は、親が家庭での対応を考える上で非常に役立ちます。

さらに、家庭でできる学習支援も重要です。学校のプリントや教科書を活用し、授業内容を家庭で補うことで、子どもが学習から完全に離れることを防ぐことができます。学習が滞ると、子どもは「もう取り戻せない」という感覚に囚われてしまい、さらに学校復帰が難しくなる可能性があります。親が無理のない範囲で学習を支えることで、子どもの自信を少しずつ回復させることができます。

ただし、学校と連携する中で、親が学校の全てを信頼する必要はありません。場合によっては、学校側の対応が不十分だったり、子どもにとって適切でない場合もあるでしょう。そのような場合は、教育委員会やスクールカウンセラーに相談するなど、他のリソースを活用することも視野に入れてください。

学校との面談イメージ

行動2. 家庭での「過ごし方」を見直す

不登校が長引く一因として、家庭が「居心地の良い場所」になりすぎている場合があります。親が子どもを心配するあまり、過保護になったり、子どもの言い分を全て受け入れたりすることで、家庭が過度に快適な空間になってしまうと、子どもは学校に戻る必要性を感じにくくなります。

たとえば、子どもが学校を休んでいる間に好きなだけゲームをしたり、スマホで友達と連絡を取ったりすることを許していませんか?これでは、「学校に行かなくても楽しい」と感じてしまい、結果的に不登校の状態を助長してしまう可能性があります。

親としては、家庭でのルールを見直し、一定の緊張感を持たせることが重要です。具体的には、以下のような取り組みを試してみてください。

  • 平日の昼間はゲームやスマホを制限する
  • 朝は必ず決まった時間に起きるよう促す
  • 日中はできる限り机に向かい、学習や創作活動に時間を使わせる
  • 家事の一部を手伝ってもらうなど、家庭内での役割を持たせる

これらの取り組みを通じて、子どもが「家での時間もそれなりに責任が伴う」という感覚を持つようになります。ただし、これらを実行する際には、決して感情的にならず、愛情を持った態度で接することが大切です。叱責や批判は、子どもをさらに追い詰めるだけで逆効果です。

また、親自身が「学校に戻ることが全てではない」という柔軟な考えを持つことも重要です。不登校は、時には子どもが自分のペースで成長するための時間でもあります。焦らずに見守りながら、少しずつ前進することを目指してください。

行動3. 子どもと向き合う姿勢を整える

不登校になりかけている子どもに対して、親が最も重要視すべきなのは「共感」と「信頼」です。子どもは、親のちょっとした態度や言葉から、自分が責められているかどうかを敏感に感じ取ります。そのため、「なぜ学校に行かないのか」「どうして頑張れないのか」といった言葉は、できるだけ避けるようにしましょう。

代わりに、「学校に行けない今の気持ちを教えてくれる?」といった共感的な言葉を使うことで、子どもが少しずつ自分の気持ちを親に打ち明けやすくなります。親が子どもの話を否定せずに受け入れることで、子どもは「親は自分の味方である」と感じ、不登校という状況から抜け出すための第一歩を踏み出しやすくなります。

また、親自身が冷静であることも大切です。不登校の問題に直面すると、親も焦りや不安を抱えやすくなります。しかし、親が感情的になると、子どもにもその不安が伝わり、状況がさらに悪化する可能性があります。親が心の余裕を持ち、冷静に対応することで、子どもにとっての安心感が生まれます。

子どもにとっての「安全基地」としての役割を果たしながら、必要なときには毅然とした態度で接する。これが、不登校を防ぐための親としての重要な心構えです。

最後に

不登校になりかけの時期に、親ができることは数多くあります。冷静に兆候を見極め、学校と建設的に連携し、家庭での生活習慣を整えることで、子どもが少しずつ学校に戻る準備を整えることができます。そして何よりも大切なのは、親が子どもの最大の理解者であり、応援者であることを示すことです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

「親」のスマホ依存が与える子どもへの影響とは?

「親」のスマホ依存

目次


愛着形成とスマホ依存の影響

はじめまして。不登校や引きこもりを専門に支援している児童心理カウンセラーの藤原と申します。今までの数え切れない事例から、不登校や引きこもりの問題は単なる「子どもの問題」ではなく、「親子関係や家庭環境の中で形作られる問題」であることが多いと感じています。そして、現代の親子関係の課題として、近年急速に注目されつつあるのが「親のスマホ依存」です。この問題は、親の無意識のうちに進行し、結果として子どもの心に深刻な影響を与える可能性があります。

子どもの健全な成長に欠かせないのは、親との良好な愛着形成です。しかし、親がスマートフォンに多くの時間を費やすことで、この愛着形成が阻害されるケースが増えていると感じます。まず、この問題の本質に触れるために、愛着形成がどのように子どもに影響を及ぼすか、そしてそれが親のスマホ依存によってどのように変容するのかを詳しく掘り下げていきます。

愛着形成の重要性

「愛着形成」という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。これは、乳幼児期から学童期にかけて子どもが親との間で築く、信頼や安心感の基盤を指します。たとえば、子どもが泣いたときにすぐに対応してくれる親の姿を見たり、子どもが発した些細な言葉や行動に対して親が関心を持って応答する、こうした繰り返しの中で子どもは「自分は愛されている」と感じ、心が安定していきます。

しかし、この愛着形成の基盤が不十分であると、子どもは精神的な不安定さを抱えるようになります。親からの適切な反応が得られない子どもは、「自分は大切にされていないのかもしれない」という感覚に陥りやすくなります。このような状況は、子どもの自己肯定感を著しく低下させ、結果的に学校生活や人間関係において消極的になる原因を作り出します。

たとえば、カウンセリングを通じて接してきたある小学生のケースでは、親が家にいる間ずっとスマートフォンでSNSを見ているため、子どもが話しかけても「うん」や「後で」といった短い返答で終わってしまう状況が続いていました。その結果、子どもは自分の話が重要ではないと感じるようになり、学校での出来事や友達との関係について話すことも次第に避けるようになりました。最終的には、学校でのトラブルを一人で抱え込み、不登校という形で表面化したのです。

スマホ依存による親子の関係断絶

スマートフォンが親子関係に与える影響の一つに、「親子の断絶」が挙げられます。断絶とは、物理的に離れているわけではなく、心理的な距離が広がることを意味します。親がスマートフォンを使っている時間、子どもとの会話や視線の共有は明らかに減少します。その結果、子どもは「親にとってスマホの方が自分より重要だ」と感じるようになります。

心理学的な視点から言えば、子どもにとって親からの視線や反応は、心の発達に欠かせない「栄養」です。親の視線を通して子どもは「自分は価値のある存在だ」と感じることができます。しかし、親がスマホを見続けていると、この視線の共有が減少し、子どもに心理的な飢餓状態が生まれるのです。この飢餓状態が続くと、子どもはどうなるでしょうか。
子どもはまず、親の関心を引こうとあらゆる手段を試みます。しかし、それでも親がスマホに夢中で反応を示さない場合、子どもは「どうせ何をやっても無駄だ」と学習してしまいます。この状態が長引くと、子どもは外の世界や他者との関係にも消極的になり、不登校や引きこもりの原因となる可能性があります。

親が意識しない「無視」の影響

興味深い研究があります。それは、「無視」の影響が子どもの精神発達にどれだけ大きなダメージを与えるかを示したものです。無視とは、言葉や行動での否定ではなく、親が子どもに関心を示さない状態を指します。スマホ依存の親が無意識のうちに行う行動が、まさにこれに該当します。
この無視の影響を受けた子どもは、自分の存在意義に疑問を持ちやすくなります。そして、それが引き金となり、学校生活や人間関係においても消極的な態度を取るようになります。ある中学生の事例では、親がスマホゲームに夢中で会話がほとんどなかったため、子どもは家庭内での孤独感を深め、学校でも友達との関係を構築できず、最終的に不登校となりました。

スマホ依存の仕組みと親の行動変容の必要性

スマホ依存の仕組みとその強力さ

現代のスマートフォンは、私たちの生活を便利にしてくれる一方で、非常に強力な依存性を持っています。なぜこれほど多くの人がスマホを手放せなくなってしまうのか。それは、スマホやスマホアプリが「人間の脳の仕組み」に巧みに働きかける設計になっているからです。

スマートフォンが私たちに与える刺激の一つに「断続的な報酬」があります。これは、SNSの通知やスマホゲームの報酬システムによって実現されています。たとえば、SNSを開けば「いいね」やコメントといった小さな報酬が得られる可能性がありますが、そのタイミングは予測できません。この「予測できない報酬」の仕組みは、人間の脳にとって非常に魅力的です。脳内でドーパミンと呼ばれる快感を司る物質が分泌され、私たちはその刺激を求めてスマホを手に取るようになります。

さらに、スマホゲームでは「次に何か良いことが起きるかもしれない」という期待感を与え続けることで、ユーザーをゲームに引き込む仕組みが存在します。このような射幸心を煽る仕組みが、親たちを含めた多くの人をスマホに夢中にさせ、気づけば1日が終わっている、という状況を引き起こしているのです。

親がスマホ依存に陥る背景

親がスマホに頼りがちな理由の一つに、「便利さ」や「息抜きの手段」という側面があります。特に子育て中の親にとって、スマホは情報収集や友人とのつながり、ストレス発散など、多くの役割を果たす貴重なツールです。また、子育てにおいて孤立感を抱える親にとって、SNSやオンラインコミュニティは大切な居場所になることがあります。

しかし、こうした利用が「無自覚の依存」に変わると問題が生じます。たとえば、子どもが目の前にいるのに無意識にスマホを開いてしまう、子どもとの会話中に通知が来ると反射的に画面を見てしまう、という行動が積み重なると、親子の関係性に影響が出るのは避けられません。

親自身の変化が必要な理由

では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか。まず大切なのは、「親自身が変わること」です。

親がスマホ依存から抜け出すことで、子どもとの接点を増やし、家庭内のコミュニケーションを円滑にすることができます。親がスマホに費やす時間を意識して減らす努力をすることで、子どもにとって「自分は親にとって大切な存在だ」という感覚が再び生まれます。
また、親がスマホ依存を克服する姿を見せることは、子どもへの良い手本にもなります。子どもは親の行動を観察し、それを模倣する傾向があります。親が自らのスマホ依存をコントロールする姿勢を示せば、子どももその影響を受けて、スマホとの適切な付き合い方を学ぶことができるのです。

スマホ依存を克服するための具体的な方法

親がスマホ依存を克服する第一歩

スマホ依存を克服するためには、まず「自分がどれだけスマホを使っているかを知る」ことから始めるのが効果的です。現在は、多くのスマートフォンに利用時間を記録する機能がついています。この機能を活用し、1日にどれくらいの時間をスマホに費やしているのかを確認してみましょう。
例えば、1日に4~5時間をスマホに費やしているとしたら、その時間の一部を子どもとの触れ合いに充てることを考えてみてください。「子どもと一緒に過ごす時間を増やす」という明確な目標を立てることで、スマホに依存する生活から少しずつ抜け出すことができます。

具体的な取り組み例

  1. 時間帯を決める
    スマホを使用する時間帯をあらかじめ決め、ルールを作ることが有効です。たとえば、「子どもが起きている間はスマホを見ない」「子どもと食事をする際はスマホを別の部屋に置く」といった具体的なルールを設けてみましょう。
  2. スマホの通知をオフにする
    スマホの通知は依存を強化する原因の一つです。通知が来るたびに画面を見る習慣がついてしまうため、SNSやゲーム、メールの通知をオフにすることで無駄な使用を防ぐことができます。
  3. 家族でスマホの利用ルールを共有する
    家族全員でスマホの使用に関するルールを話し合い、共有することも効果的です。「夜8時以降はスマホを触らない」「家族で過ごす時間はスマホ禁止」など、家族全体で取り組むことで、親自身も習慣を守りやすくなります。
  4. 子どもと一緒に楽しむ時間を増やす
    スマホに時間を費やす代わりに、子どもと一緒に楽しめるアクティビティを増やしてみてください。たとえば、一緒に料理をする、散歩に出かける、本を読むなど、スマホ以外の選択肢を意識して取り入れることが重要です。

親子の関係再構築が不登校克服のカギ

親の行動が子どもに与える影響

親がスマホ依存を克服し、子どもとの時間を増やすことで、子どもには多くのポジティブな変化が現れます。まず、親が自分に向き合ってくれると感じることで、子どもは安心感を得られます。この安心感は、子どもの自己肯定感を高め、学校生活や人間関係における積極性を引き出す原動力となります。
また、親がスマホに頼らずに子どもと接する姿勢を示すことで、子どもは「人と向き合うことの大切さ」を自然と学ぶことができます。これは、子どもが将来社会に出たときに良好な人間関係を築く力にもつながるのです。

不登校や引きこもりの問題を解決する上で、私は一貫して「親子の関係再構築」が最も重要な要素の一つであると考えています。不登校の原因は、学業のプレッシャーや友人関係、個々の気質など様々ですが、その問題が「長期化する」要因の多くは、家庭環境に起因します。そして、その中でも特に大きな役割を果たすのが親子関係です。ここでは、親子の関係が不登校克服にどのように関わるのかを深掘りし、さらに再構築の具体的なステップについて詳しく説明します。

親子の対話

不登校を長引かせる「日常のパターン化」

まず、不登校の大きな特徴として挙げられるのは、その状態が日常のパターンとして固定化されてしまうことです。不登校が長期化する理由は、学校に行かない生活が「子どもにとって居心地が良いもの」として定着してしまう点にあります。これは、単に子どもが怠けているわけではありません。不登校の初期段階では、学校での辛い経験や心の負担から一時的に逃れようとする防衛本能が働きます。その結果、家での生活が「安全地帯」として位置づけられ、学校へ戻るモチベーションがどんどん失われていくのです。

ここで、親の行動が非常に大きな意味を持ちます。親が無意識のうちに子どもの現状を「受け入れすぎる」ことで、子どもが学校に行かない生活をさらに当たり前と感じるようになります。例えば、「家で子どもが落ち着いているなら、それで良いのではないか」と考え、子どもに特別なアプローチを取らず、ただ見守るだけの状態が続くとします。このような見守りは、一見すると子どもの自立を尊重しているようにも見えますが、実は逆効果になることもあります。

親が子どもに「挑戦する機会」を与えないまま、日常のパターンを固定化させると、子どもはそのコンフォートゾーンから抜け出す力を失ってしまいます。この状況を打破するためには、親が意識的に「関わり方」を変え、子どもとの関係を新たに築き直す必要があるのです。

親子の関係が不登校克服に及ぼす影響

不登校を克服する過程で、親子関係の再構築が重要である理由は、子どもにとって親の存在が心理的な「基盤」となるからです。どれほど学校での経験が辛かったとしても、家庭が安心感に満ちていれば、子どもはもう一度外の世界に向き合う勇気を持つことができます。一方で、家庭内に緊張感や孤独感があると、子どもはますます内向的になり、外の世界と関わることを避けるようになります。

親子関係を再構築する過程で特に重要なのは、「親が子どもの感情に寄り添う」という姿勢です。不登校の子どもたちは、学校での辛さや友人関係のトラブル、または学業へのプレッシャーなど、さまざまなストレスを抱えています。しかし、それを表に出すことが苦手な子どもも少なくありません。特に小学校高学年や中学生になると、「自分の感情を伝えるのは恥ずかしい」と感じたり、「親に心配をかけたくない」と思ったりして、気持ちを隠すケースが多いのです。

このとき、親が「どうして学校に行かないの?」と問い詰める姿勢ではなく、「今どんなことが一番つらい?」と穏やかに問いかけたり、「学校に行くことだけが全てではないよ」と子どもの気持ちを肯定したりすることで、子どもは徐々に自分の感情を開示しやすくなります。このプロセスが、子どもが不登校の状態から一歩を踏み出すための第一歩となるのです。

スマホ依存の改善が親子関係に与える影響

親子関係を再構築する上で見落とされがちなのが、親自身の行動、特に「スマートフォンの使い方」です。親がスマホを手放せない状態でいると、子どもは親の関心が自分ではなくスマホに向けられていると感じてしまいます。こうした感覚が続くと、子どもは「どうせ自分に話しかけても親はちゃんと聞いてくれない」と考え、親に対して心を閉ざしてしまうことがあります。

例えば、ある中学生のケースでは、母親が毎晩リビングでスマートフォンを見続けていることが原因で、子どもが「自分の話をしても母親は聞いてくれない」と思い込んでいました。そこで、カウンセリングを通じて母親がスマホの利用時間を減らし、夜はスマホを別室に置いて子どもとの時間を増やすようにしたところ、子どもが母親に悩みを打ち明ける機会が増え、最終的に学校復帰への意欲を見せるようになったのです。

このように、親がスマホ依存を改善することは、親子の関係を再構築し、不登校克服への道を開くための大きな一歩となります。

親子関係の再構築のための具体的なアプローチ

親子関係を再構築するためには、以下のような具体的なアプローチが効果的です。

  1. 子どもの声に耳を傾ける
    子どもが話をしたいと思ったときに、親がすぐに対応できるようにすることが大切です。親がスマホに夢中になっていると、この「タイミング」を逃してしまいます。特に夜の時間帯はスマホを手放し、子どもと会話できる環境を整えましょう。
  2. 親自身が行動で示す
    「スマホの時間を減らす」「外出して一緒に体を動かす」「子どもの趣味に付き合う」など、親が積極的に行動を変える姿を見せることで、子どもは「自分のために親が変わってくれた」と感じ、親子の信頼関係が深まります。
  3. 小さな成功体験を共有する
    子どもが家で取り組んだ些細なことでも、「よくやったね」と認めてあげることで、子どもは自己肯定感を高めることができます。また、親子で一緒に楽しめるアクティビティを増やし、共有の思い出を作ることも関係改善につながります。

親子関係が築けるとき、子どもは動き出す

親子の関係が再構築され、家庭が子どもにとって本当の意味での「安心できる場所」となったとき、子どもは外の世界に向き合う力を徐々に取り戻します。不登校の克服には時間がかかる場合もありますが、親が変わり、家庭環境が改善されれば、子どもも自然と変化していきます。

不登校を克服するための第一歩は、子どもを急かすことでも、問題を根掘り葉掘り聞き出すことでもありません。親が「一緒にいること」「向き合うこと」に意識を向け、子どもとの絆を再構築することが、何よりも効果的な解決策なのです。

最後に: スマホとの新しい付き合い方を模索する

親がスマホを使う時間を減らし、子どもと向き合う時間を増やすことは、親子関係を深めるだけでなく、子どもの心の成長に大きな影響を与えます。スマートフォンは便利なツールですが、それに依存することで失われるものも多いことを忘れてはいけません。
スマホを使う時間を見直し、子どもとの触れ合いを優先することで、親子の絆はさらに強固なものになります。そして、この絆こそが、不登校や引きこもりを克服し、子どもが自分の力で未来を切り開いていくための土台となるのです。
親が少しずつスマホとの向き合い方を変えることで、子どもたちには必ず良い影響が現れます。どうか、今日からその一歩を踏み出してみてください。

関連記事:小学生、中学生のスマホ制限・メリットとデメリット

関連記事:スマホ制限を子どもにどう伝えるか

関連記事:スマートフォン制限の是非:フランスのデジタルブレイク実験を通して


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。

「ふつうの子」なんて無い


目次


私は児童心理カウンセラーの藤原と申します。不登校や引きこもりの子どもたちを専門にサポートをしています。これまで多くの親御さんとお話しする中で、「普通の子」に対する考え方やその先入観が、親子関係や子どもの心にどれほど大きな影響を与えるのかを目の当たりにしてきました。

本稿では、「ふつうの子」なんて無い、という題名のもと、子どもたちの個性や生きづらさを理解し、親としてどう寄り添えるかを掘り下げていきます。


「普通」を求めることの落とし穴

親として、我が子が「普通」であってほしい、特別な問題を抱えず、周囲に馴染み、順調に成長してほしいと願うのは当然のことです。学校に通い、友達と楽しく過ごし、やりたいことを見つけ、将来に向かって歩んでいく姿を思い描くのは自然なことです。しかし、その「普通」という言葉が、時に子どもの苦しみの原因になることをご存じでしょうか。

不登校や引きこもりの子どもたちと接していて感じるのは、多くの場合、子どもたちは自分を「普通ではない」と思い込んでいるということです。「他の子どもたちはみんな学校に行けているのに、どうして自分は行けないのだろう」「自分はダメな子だ」と、子どもたちは自分を責めてしまうのです。そしてその背景には、多くの場合、親や周囲の「普通であってほしい」という期待が影を落としています。

もちろん、親として「普通であってほしい」と願うこと自体が悪いわけではありません。問題は、それが子どもにとって「自分のありのままを否定されている」と感じさせてしまう点にあります。例えば、「学校に行かないなんて普通じゃないよ」「みんなやっているんだから頑張ってごらん」といった言葉は、励ましのつもりでも、子どもにとっては「自分はダメなんだ」というメッセージに聞こえることがあります。

私たちは「普通」という言葉を使う時、その背後にある基準を無意識に社会や周囲の価値観に頼っています。しかし、果たしてその基準は絶対的なものでしょうか?たとえ学校に行けなかったとしても、友達と過ごす時間が少なかったとしても、それはその子にとっての「普通」ではないのでしょうか。

子どもの「生きづらさ」を見つめる

不登校や引きこもりは、単に怠けや反抗心から来るものではありません。むしろ、その多くは子ども自身の「生きづらさ」から生じています。その生きづらさの原因は千差万別です。例えば、学校という環境が持つ画一的なルールや価値観に適応できない場合や、人間関係で傷ついた経験が心の傷となっている場合、あるいは自己評価の低さから新しいことに挑戦すること自体が怖くなってしまう場合などがあります。

これらの生きづらさは、表面からは見えにくいものです。子どもが学校に行きたくないと言ったとき、その理由を「ただ怠けているだけだ」「気分の問題だ」と決めつけるのは危険です。むしろ、「この子は何に苦しんでいるのだろう」「どんな部分が負担になっているのだろう」と子どもの心の内側に目を向けることが大切です。

ある親御さんが、学校に行けなくなった娘さんについて話してくれたことがあります。その子はとても真面目で、先生の期待にも答えようと一生懸命努力していました。しかし、その頑張りが裏目に出て、友達との関係で「自分だけが空回りしている」と感じるようになり、次第に学校への足が重くなっていったのです。親御さんは初め、娘さんが学校に行かないことを「わがまま」だと考えていましたが、よく話を聞いてみると、娘さんは「自分の努力が否定されている」と感じていたことがわかりました。

このように、子どもの心の中には、私たち大人が想像する以上に複雑な感情が渦巻いていることがあります。それを理解するには、まず「子どもは何かに苦しんでいるのではないか」という視点を持つことが必要です。

親としての役割を見直す

では、親としてどのように子どもに接すればよいのでしょうか。答えの一つは、「普通」を押し付けるのではなく、子ども自身のペースや価値観を尊重することです。

ある意味で、不登校や引きこもりは、子どもからの「サイン」と言えます。「私は今、苦しい」「助けてほしい」という声を上げる代わりに、行動でそのメッセージを伝えているのです。親としてそのサインを受け取ったとき、最も重要なのは「この子が何を伝えようとしているのか」に耳を傾けることです。

具体的には、以下のようなアプローチが有効です。

  • 子どもの話を否定せずに聞く。たとえ親としては受け入れがたい内容でも、「この子がどう感じているか」を理解しようとする姿勢が大切です。
  • 子どもの現状をそのまま認める。学校に行けていない現実を否定するのではなく、「今、学校に行けないんだね」と事実を受け入れることで、子どもは少しずつ安心感を取り戻します。
  • 親自身の価値観を見直す。「普通であること」に囚われていないか、「他の子と比べていないか」を振り返ることで、親としての心の余裕が生まれます。

親が変わることで、子どもの感じ方や行動も変わることがあります。「普通であること」ではなく、「その子らしさ」を大切にすることで、子どもは自分自身を肯定できるようになるのです。

「普通」から解放されるとき

最後に、「普通」という言葉を手放すことの大切さについてお話しします。私たちの社会は、多様性を尊重すると言いながらも、どこかで「普通」の枠にはめようとする力が働いています。それは学校という場においても同様です。しかし、「普通」に囚われ続ける限り、私たちは子どもたちが本来持っている個性や可能性を見過ごしてしまう危険性があります。

不登校や引きこもりは、決して「異常」ではありません。それは、その子にとって「自分らしく生きるための過程」であり、「自分自身を守るための手段」なのです。親としてその事実を理解し、子どもの心の声に寄り添うことで、子どもたちは自分の道を見つけ出すことができます。

「普通の子なんてどこにもいない」という言葉は、一見過激に聞こえるかもしれません。しかし、それこそが真実です。すべての子どもは、唯一無二の存在であり、誰かと比較することなく、そのままで価値のある存在です。親も子も「普通」という幻想から解放されることで、新しい視点を得ることができるのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年3月時点で900名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

年間900名以上の再登校実績。カウンセラー推奨No.1の再登校支援サービスはToCo(トーコ)

無料診断もお試しください

簡単5分のアンケートで不登校要因の無料診断を実施中。