「ふつうの子」なんて無い

私は児童心理カウンセラーの藤原と申します。不登校や引きこもりの子どもたちを専門にサポートをしています。これまで多くの親御さんとお話しする中で、「普通の子」に対する考え方やその先入観が、親子関係や子どもの心にどれほど大きな影響を与えるのかを目の当たりにしてきました。

本稿では、「ふつうの子」なんて無い、という題名のもと、子どもたちの個性や生きづらさを理解し、親としてどう寄り添えるかを掘り下げていきます。


「普通」を求めることの落とし穴

親として、我が子が「普通」であってほしい、特別な問題を抱えず、周囲に馴染み、順調に成長してほしいと願うのは当然のことです。学校に通い、友達と楽しく過ごし、やりたいことを見つけ、将来に向かって歩んでいく姿を思い描くのは自然なことです。しかし、その「普通」という言葉が、時に子どもの苦しみの原因になることをご存じでしょうか。

不登校や引きこもりの子どもたちと接していて感じるのは、多くの場合、子どもたちは自分を「普通ではない」と思い込んでいるということです。「他の子どもたちはみんな学校に行けているのに、どうして自分は行けないのだろう」「自分はダメな子だ」と、子どもたちは自分を責めてしまうのです。そしてその背景には、多くの場合、親や周囲の「普通であってほしい」という期待が影を落としています。

もちろん、親として「普通であってほしい」と願うこと自体が悪いわけではありません。問題は、それが子どもにとって「自分のありのままを否定されている」と感じさせてしまう点にあります。例えば、「学校に行かないなんて普通じゃないよ」「みんなやっているんだから頑張ってごらん」といった言葉は、励ましのつもりでも、子どもにとっては「自分はダメなんだ」というメッセージに聞こえることがあります。

私たちは「普通」という言葉を使う時、その背後にある基準を無意識に社会や周囲の価値観に頼っています。しかし、果たしてその基準は絶対的なものでしょうか?たとえ学校に行けなかったとしても、友達と過ごす時間が少なかったとしても、それはその子にとっての「普通」ではないのでしょうか。

子どもの「生きづらさ」を見つめる

不登校や引きこもりは、単に怠けや反抗心から来るものではありません。むしろ、その多くは子ども自身の「生きづらさ」から生じています。その生きづらさの原因は千差万別です。例えば、学校という環境が持つ画一的なルールや価値観に適応できない場合や、人間関係で傷ついた経験が心の傷となっている場合、あるいは自己評価の低さから新しいことに挑戦すること自体が怖くなってしまう場合などがあります。

これらの生きづらさは、表面からは見えにくいものです。子どもが学校に行きたくないと言ったとき、その理由を「ただ怠けているだけだ」「気分の問題だ」と決めつけるのは危険です。むしろ、「この子は何に苦しんでいるのだろう」「どんな部分が負担になっているのだろう」と子どもの心の内側に目を向けることが大切です。

ある親御さんが、学校に行けなくなった娘さんについて話してくれたことがあります。その子はとても真面目で、先生の期待にも答えようと一生懸命努力していました。しかし、その頑張りが裏目に出て、友達との関係で「自分だけが空回りしている」と感じるようになり、次第に学校への足が重くなっていったのです。親御さんは初め、娘さんが学校に行かないことを「わがまま」だと考えていましたが、よく話を聞いてみると、娘さんは「自分の努力が否定されている」と感じていたことがわかりました。

このように、子どもの心の中には、私たち大人が想像する以上に複雑な感情が渦巻いていることがあります。それを理解するには、まず「子どもは何かに苦しんでいるのではないか」という視点を持つことが必要です。

親としての役割を見直す

では、親としてどのように子どもに接すればよいのでしょうか。答えの一つは、「普通」を押し付けるのではなく、子ども自身のペースや価値観を尊重することです。

ある意味で、不登校や引きこもりは、子どもからの「サイン」と言えます。「私は今、苦しい」「助けてほしい」という声を上げる代わりに、行動でそのメッセージを伝えているのです。親としてそのサインを受け取ったとき、最も重要なのは「この子が何を伝えようとしているのか」に耳を傾けることです。

具体的には、以下のようなアプローチが有効です。

  • 子どもの話を否定せずに聞く。たとえ親としては受け入れがたい内容でも、「この子がどう感じているか」を理解しようとする姿勢が大切です。
  • 子どもの現状をそのまま認める。学校に行けていない現実を否定するのではなく、「今、学校に行けないんだね」と事実を受け入れることで、子どもは少しずつ安心感を取り戻します。
  • 親自身の価値観を見直す。「普通であること」に囚われていないか、「他の子と比べていないか」を振り返ることで、親としての心の余裕が生まれます。

親が変わることで、子どもの感じ方や行動も変わることがあります。「普通であること」ではなく、「その子らしさ」を大切にすることで、子どもは自分自身を肯定できるようになるのです。

「普通」から解放されるとき

最後に、「普通」という言葉を手放すことの大切さについてお話しします。私たちの社会は、多様性を尊重すると言いながらも、どこかで「普通」の枠にはめようとする力が働いています。それは学校という場においても同様です。しかし、「普通」に囚われ続ける限り、私たちは子どもたちが本来持っている個性や可能性を見過ごしてしまう危険性があります。

不登校や引きこもりは、決して「異常」ではありません。それは、その子にとって「自分らしく生きるための過程」であり、「自分自身を守るための手段」なのです。親としてその事実を理解し、子どもの心の声に寄り添うことで、子どもたちは自分の道を見つけ出すことができます。

「普通の子なんてどこにもいない」という言葉は、一見過激に聞こえるかもしれません。しかし、それこそが真実です。すべての子どもは、唯一無二の存在であり、誰かと比較することなく、そのままで価値のある存在です。親も子も「普通」という幻想から解放されることで、新しい視点を得ることができるのです。

1ヶ月以上続いた不登校への対処法

1ヶ月以上続いた不登校への対処法の見出し

私は児童心理カウンセラーとして10年以上、不登校や引きこもりに日々向き合っています。不登校の問題は、単に「放っておけば治る」というものではありません。むしろ、不登校が長引くほど、その状態が子どもの「日常」として定着しやすくなり、元の生活に戻ることがどんどん難しくなってしまいます。そのため、早期に適切な対処を行うことが非常に重要です。

本稿では、不登校が1ヶ月以上続いた場合に親御さんが取るべき具体的な対処法を解説します。不登校のお子さんを持つ多くの親御さんが、何をすべきか迷い、不安な気持ちを抱えながら日々を過ごしていることでしょう。その心情に寄り添いながらも、実際に役立つ方法をお伝えします。

子どもが「不登校」という状態に至るまで

まず、不登校に至る背景を理解することが大切です。多くの場合、不登校は突然始まるわけではありません。その前兆や原因となる出来事が必ず存在します。それが学業面のプレッシャーだったり、友人関係のトラブル、先生との摩擦、さらには家庭内の環境要因であったりします。しかし、1ヶ月以上学校を休んでいる今、親御さんがすべきことは、その「原因」をあまり深く掘り下げすぎないことです。なぜなら、不登校のきっかけとなったストレスは、実は時間の経過とともに薄れている可能性が高いからです。

例えば、子どもが友達とのケンカが原因で学校に行かなくなった場合、最初の数日はその問題が頭の中で大きく占めているかもしれません。しかし、1ヶ月も経てば、その問題自体の影響力は薄れ、今度は「学校に戻ること」そのものへの抵抗感が大きくなります。「自分が学校を休んだことで周囲からどう見られるのか」という不安や、長い休みで勉強が遅れてしまったことへの焦りが新たな障害となるのです。

このため、まず親御さんが子どもに対してできることは、「現在、学校に戻る意思があるか」を率直に確認することです。もちろん、子どもがすぐに素直に答えるとは限りません。その場合は焦らずに、子どもの様子を見ながら丁寧に話を進めていく必要があります。

「学校に行かない」ことが当たり前になる危険性

1ヶ月を過ぎると、不登校は「一時的な出来事」ではなく「日常」として子どもの中に根付いてしまう危険があります。朝起きて学校に行く代わりに、遅くまで寝ている、好きなテレビやゲームをする、家族の目が届きにくい時間帯にスマートフォンを長時間使う、といった行動が日々の生活リズムとなると、そこから抜け出すことは容易ではありません。学校に行かないことが「楽」と感じられるようになると、「また学校に通い始める」という意識自体が失われてしまいます。

ゲームをする子どものイメージ

この段階で重要なのは、学校に行かないからといって、子どもの生活を過剰に快適にしないことです。例えば、子どもが学校を休む理由を「疲れた」「眠い」といった漠然としたものにする場合があります。このとき、親御さんが「疲れているなら無理しなくていいよ」「眠いなら今日は休んでいいよ」と何度も許容してしまうと、子どもにとって「学校を休む」ことが無条件で許される行動になってしまいます。

不登校中であっても、家庭内で一定の規律を保つことが非常に重要です。具体的には、以下のようなポイントに注意してください。

①起床時間と就寝時間を規則正しく保つこと:平日でも休日でも、朝は同じ時間に起きるように促してください。たとえ学校に行かなくても、生活リズムが乱れると、復帰する際に大きな障害になります。

②自由時間を制限すること:ゲームやスマホの使用時間を明確に区切り、それ以外の時間は勉強や家庭内の手伝いに充てるよう指導してください。

③将来の目標や興味を掘り下げる活動を取り入れること:学校に行けない間でも、子どもが将来の夢や興味を持つ分野について考える機会を作ることは有益です。これにより、「学校で学ぶ意味」を再認識させることができるかもしれません。

学校との連携を密に保つ

不登校が1ヶ月以上続いている場合、学校との連携が欠かせません。親御さんの中には、「学校に連絡をすると、何か責められるのでは」と感じてしまう方もいます。しかし、学校側にとっても、不登校が続く子どもへのサポートは重要な課題です。担任の先生やスクールカウンセラーなど、専門的な知識を持った方々と情報を共有し、協力することで、より適切な対応が可能になります。

学校との連携で特に効果的なのは、「家庭で進められる勉強やプリント」の提供を依頼することです。勉強の遅れは、子どもが学校復帰をためらう大きな理由の一つです。たとえ子どもが「学校には行きたくない」と言い続けている場合でも、家で少しずつ勉強を進めることで、復帰のハードルを下げることができます。

また、学校側にお願いしたいのは、勉強以外のサポートも含めて具体的な提案をもらうことです。例えば、週に一度だけでも先生と子どもが電話で話をする、オンラインで授業を受けるといった方法が考えられます。これにより、子どもが学校とのつながりを失わずに済みます。

不登校中の甘やかしは長期化を招く

不登校中に「居心地の良い生活」を提供することは、長期化を招く大きな原因となります。「学校に行けないなら、せめて家では快適に」という親心は理解できますが、その結果として、子どもが「不登校であることのメリット」を感じるようになれば、復帰がますます困難になります。

例えば、子どもが「家にいれば好きなことができる」と考えるようになると、学校に戻る意欲を持つ理由が失われてしまいます。これは単なる甘えではなく、人間として当然の心理です。「楽な方を選ぶ」傾向は誰にでもあります。そのため、親御さんが毅然とした態度で、家での生活にも一定のルールを設けることが大切です。

その一方で、甘やかさないことが「叱ること」に直結してはいけません。不登校の子どもに厳しく接するだけでは、かえって心を閉ざしてしまう危険があります。ここで重要なのは、「子ども自身に不登校を解決する力がある」と信じ、その力を引き出すサポートをすることです。

親の心構えが子どもを支える

不登校の解決には時間がかかる場合があります。しかし、その間も親御さん自身が不安や焦りに負けず、冷静に対処することが大切です。親の態度は、子どもにとって大きな影響を与えます。「この子の未来は大丈夫」と信じる気持ちを持ち続けることで、子どもも「自分は受け入れられている」と安心感を持つことができます。

最後にお伝えしたいのは、不登校は子どもの人生における「失敗」ではないということです。不登校の期間を通じて、子どもは何かを学び、親も成長する機会を得ることができます。大切なのは、親子で一緒に問題に向き合い、最善の解決策を模索することです。

散歩の効用

散歩の効用イメージ

不登校や引きこもりの問題に直面すると、多くの親御さんは頭を悩ませ、時には途方に暮れることもあるでしょう。「どうすれば、子どもが再び元気を取り戻してくれるのか」「学校に行けるようになるために、親として何をすべきなのか」といった問いが、心の中で堂々巡りすることも少なくないはずです。不登校の要因や背景はさまざまで、単純な解決策はありません。しかし、私が児童心理カウンセラーとして数多くの親子と向き合ってきた経験から言えるのは、ただ手をこまねいて見守るだけでは、問題が改善されることはほとんどないということです。不登校の解決には、子ども自身が新しい刺激を受けたり、小さな成功体験を積み重ねたりすることが必要不可欠です。そして、そのための第一歩となるものとして「散歩」という行動を提案したいと思います。

散歩は、特別なスキルや道具を必要としません。それどころか、今すぐにでも始められる、とてもシンプルな行動です。しかし、その中には、心と身体にポジティブな変化をもたらす多くの可能性が秘められています。本稿では、散歩の持つ三つの大きな効用について詳しくお話ししながら、不登校の子どもとその親御さんが日々の中で取り入れられる実践的なヒントをご紹介していきます。


1. 散歩は「身体のデトックス」になる

まず、散歩の最も基本的な効用である「身体のデトックス効果」についてお話しします。不登校の子どもたちは、自室で過ごす時間が圧倒的に多くなり、運動不足に陥るケースが非常に多いです。動く機会が少ない生活が続くと、心と身体のバランスが崩れ、さらにエネルギーを消耗しやすい悪循環に陥ってしまいます。このような状態にある子どもたちにとって、散歩は、身体を整え、活力を取り戻すための第一歩となるのです。

運動不足が身体に与える影響は、想像以上に深刻です。例えば、長時間座ったり寝転んだりして過ごす生活が続くと、血液の循環が滞り、筋肉が硬くなることがあります。その結果、肩こりや頭痛、倦怠感などの身体症状が現れることがあります。さらに、不登校の子どもたちに共通する悩みとして挙げられるのが「昼夜逆転」の問題です。日中は体を動かさないためエネルギーが消耗されず、夜になっても眠れない。そのため、睡眠のリズムが乱れ、朝起きることができなくなるというサイクルが生まれます。これは、運動不足と深い関係があります。

散歩には、このような身体の不調を改善する力があります。歩くという動作は、私たちの心拍数を自然に上げ、血液の循環を促進します。これにより、体内に溜まった老廃物や余分な水分が排出されやすくなり、むくみやだるさの解消につながります。さらに、散歩は身体の緊張を和らげ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させる効果もあります。これにより、気分が穏やかになり、不安感や落ち込みが軽減されるのです。日々のストレスや不安を抱える不登校の子どもにとって、散歩は心身をリセットするための重要な手段となります。

また、散歩を日課として取り入れることで、昼夜逆転の改善にもつながります。朝の光を浴びながら歩くことで、体内時計が整えられ、自然な形で眠りのリズムを取り戻すことができます。これにより、夜には自然と眠気を感じ、朝スムーズに起きられるようになるでしょう。たとえ数分の短い散歩であっても、毎日続けることで子どもの身体に大きな変化が現れます。

「うちの子は外に出たがらない」という声もよく耳にします。たしかに、最初の一歩を踏み出すことは容易ではありません。その場合は、親御さん自身がまず散歩を始めてみることをお勧めします。子どもがついて来ないとしても構いません。「お母さん、少し歩いてくるね」と声をかけるだけでも、子どもにとっては刺激になります。家族が外に出る姿を目にすることで、子ども自身が徐々に興味を持ち、やがて「少しだけなら」と一緒に歩いてみようと思える日が来るかもしれません。

親御さんが散歩に誘うときには、プレッシャーをかけないことが大切です。「外に出ないとだめだよ」と叱るような言い方ではなく、「ちょっとだけ空気を吸ってみない?」という軽い提案にとどめると良いでしょう。また、最初から長時間歩く必要はありません。近所の道を5分ほど一緒に歩くことから始めても十分です。散歩が楽しいと思えるようになれば、次第にその距離や時間を増やしていくことができます。

このように、散歩には不登校の子どもが抱える運動不足や身体の不調を改善し、心身のバランスを取り戻す力があります。毎日少しずつでも散歩を取り入れることで、子どもたちの身体が元気を取り戻し、学校生活への準備が整っていくのです。

2. 「人の営みを見聞きする」ことで視野が広がる

散歩には、ただ身体を動かす以上の意味があります。それは、外の世界に触れることで「人の営みを見聞きする」機会を得られるという点です。不登校の子どもたちは、日常的に自宅や自室に閉じこもることで、世界との接点を失ってしまうことが少なくありません。その結果、自分の悩みが世界のすべてであるかのように感じ、選択肢や可能性を狭めてしまうことがあります。しかし、散歩というシンプルな行動が、外界との接触を取り戻し、自分の悩みを相対化するための大切なきっかけとなるのです。

たとえば、近所の公園を歩いてみると、そこにはいろいろな人々の営みが広がっています。小さな子どもと遊ぶ親子、ジョギングに汗を流す中高年の人たち、飼い犬と楽しそうに散歩する人――それぞれが自分の時間を過ごし、それぞれの日常を生きています。こうした風景に触れるだけでも、自分が抱える問題が、決して特別なものではないと気づくことができます。自室で一人、自分の考えや悩みの渦に巻き込まれていると、どうしても視野が狭くなりがちです。しかし、散歩を通じて多様な人々の姿を目にすることで、「自分の苦しみだけが世界のすべてではない」と感じられるようになるのです。

ある中学生の男の子の例をご紹介しましょう。その子は、成績のプレッシャーから学校に行けなくなり、半年以上自室で過ごしていました。両親は心配するあまり、何とか外に連れ出そうと必死でしたが、本人は「無理」「どうせ意味がない」と拒否を繰り返していました。そこで、母親が始めたのは、毎朝一人で近所を散歩することでした。子どもを誘うのではなく、自分自身が散歩を習慣にしたのです。朝日を浴びながら歩いて帰ってくる母親の姿を目にして、やがて男の子は「少しだけなら」と一緒に歩くようになりました。

散歩を始めて数週間が経った頃、彼はこう言ったそうです。「散歩していると、他の人たちがみんな何かしているのが分かる。仕事に行く人や、子どもを連れたお母さんとか。みんなそれぞれ悩みとか大変なことがあるんだろうけど、頑張っているんだよね。」この言葉から分かるのは、彼が外の世界に目を向け、自分だけが苦しいわけではないと感じられるようになったということです。

また、散歩中に聞こえてくる人々の会話や生活音も重要なポイントです。たとえば、近所の商店街を歩いていると、お店の人とお客さんの何気ないやり取りや、道行く人の楽しそうな笑い声が耳に入ります。こうした何気ない日常の音は、心の中に新しい風を吹き込む効果があります。不登校の子どもたちは、部屋の中で同じ空気や音に囲まれて過ごすことが多く、それが閉塞感を助長することがあります。しかし、散歩を通じて多様な人々の声や行動を耳にすると、「世界は広い」「まだ自分の知らないことがたくさんある」ということに気づけるのです。

もちろん、初めて散歩に出るときには、子どもにとってハードルが高い場合もあります。その場合は、静かな住宅街や人通りの少ない道を選ぶとよいでしょう。無理に賑やかな場所に連れ出す必要はありません。少しずつ慣れてきたら、公園や商店街など、人々の営みが感じられる場所を散歩コースに加えてみてください。また、子どもが自ら「ここに行ってみたい」と言い出したら、その希望を尊重することも大切です。

さらに、親御さん自身も、散歩を通じて新しい発見を楽しむ姿勢を見せることが重要です。「あそこの花壇がきれいだね」「あのパン屋さん、いい匂いがするよ」など、何気ない話題を子どもと共有することで、散歩の時間が特別なものになっていきます。散歩の途中で気に入ったお店を見つけて、そこで一緒に買い物をしたり、軽くお茶をするのも良いでしょう。そのような小さな楽しみを通じて、外の世界へのポジティブなイメージが育まれていきます。

人の営みを見聞きすることは、不登校の子どもたちにとって、自分の悩みを相対化し、前向きな気持ちを取り戻すための大切なステップです。「外の世界には、自分とは違う生き方をしている人たちがいる」という事実に気づくことで、心の中に余白が生まれ、悩みの渦から少しずつ抜け出すことができるのです。

3. 自然の大きな流れを感じる

散歩のもう一つの大きな効用は、「自然の大きな流れを感じる」という点にあります。不登校や引きこもりの子どもたちにとって、日々の生活は狭い範囲に閉じこもりがちです。家や自室で過ごす時間が長くなるほど、四季の移り変わりや自然の美しさといったものから遠ざかり、「時間がただ過ぎていくだけ」と感じることが増えてしまいます。その結果、閉塞感や無力感が深まり、「今」という瞬間を楽しむことが難しくなります。しかし、自然と触れ合う機会を持つことで、そうした感覚が変わり始めるのです。散歩は、そのための最も身近で手軽な方法の一つです。

自然には、私たちの気持ちを癒し、悩みを和らげる力があります。たとえば、春の散歩では、新緑や満開の桜を目にすることで、冬の間閉じこもっていた命が再び動き始める様子を感じることができます。夏には木陰の涼しさや蝉の鳴き声が、暑さの中にも心地よい静けさを与えてくれます。秋には紅葉の鮮やかな色彩に目を奪われ、冬には冷たい空気の中に漂う凛とした静けさを感じることができます。これらの四季折々の景色は、日常の忙しさや閉塞感から私たちの意識を解き放ち、「今、この瞬間」を五感で味わう時間を提供してくれます。

私が関わったある不登校の中学生の女の子の話です。彼女は、友人関係の悩みから学校に行けなくなり、一日の大半を自室で過ごしていました。部屋のカーテンも閉め切り、季節の変化を感じることもない生活が続いていました。そんな彼女が、母親と一緒に近所の小さな公園を散歩することから、少しずつ心を開いていきました。最初は渋々歩いていましたが、春になると「桜がきれいだね」と言葉を発するようになり、夏には「木陰が涼しくて気持ちいい」と笑顔を見せることも増えました。

その変化のきっかけになったのは、自然の美しさや大きな流れを感じ取ったからだと彼女自身が後に語っています。「自然って、どんなに辛いことがあっても勝手に変わっていくんだよね。私が悩んでても、桜は咲くし、葉っぱは色づく。それを見てたら、悩みすぎるのも馬鹿らしくなるっていうか、今を楽しんでいいんだなって思えた」と言っていました。この言葉は、自然が私たちに与えてくれる力の大きさを物語っています。

また、自然に触れることで、人生の一回性を感じ取ることもできます。私たち人間もまた、自然の一部であり、限りある時間の中で生きています。木々が芽吹き、葉を茂らせ、やがて落葉していくサイクルは、私たちの人生にも重なる部分があるでしょう。どんなに苦しい時期があっても、それは永遠には続かず、必ず次の季節がやってくるのです。このことに気づくと、今の悩みが少し小さく感じられるようになります。

特に不登校の子どもたちは、未来を悲観しがちです。「自分はもうダメだ」「これから何も変わらない」という閉じた思考に陥ることが多いのですが、自然の変化を感じることで、そうした考えに風穴が開くことがあります。目の前に広がる景色が変わり続けることを実感するうちに、「自分の人生もまた、今の状態がずっと続くわけではない」と思えるようになるのです。この気づきは、不登校というトンネルから抜け出すための大きな力となります。

親御さん自身もまた、自然の中で過ごす時間を通じて、子どもとの絆を深めることができます。たとえば、散歩中に見つけた花や虫について話し合ったり、「あの雲の形が面白いね」といった何気ない会話を楽しむことができます。そのようなやり取りを通じて、親子の関係が穏やかになり、子どもにとって安心感を与える場面が増えていきます。そして、親が自然を楽しむ姿を見せることが、子どもにとって外の世界への興味を育むきっかけにもなります。

散歩の魅力は、特別な道具や環境を必要とせず、今いる場所で始められることにあります。たとえ近所の小さな道でも、そこには季節の変化や自然の豊かさが溢れています。子どもが外出に消極的であれば、親御さんが先に始めてみるだけで十分です。「一緒に見に行こう」という誘い方ではなく、親自身が楽しそうに自然を感じている姿を見せることで、子どもが自発的に興味を持つようになることが多いのです。

自然と触れ合う時間は、不登校の子どもたちが「今」を感じ、未来に希望を持つための大切な一歩となります。散歩を通じて、ぜひ自然の大きな流れを感じてみてください。その中で、親子ともに新しい発見や喜びを見つけることができるはずです。

結び

散歩は、不登校や引きこもりに悩む子どもたち、そしてその親御さんにとって、シンプルながらも大きな力を持つ行動です。「身体のデトックス」「人の営みを見聞きする」「自然の大きな流れを感じる」という三つの効用を通じて、心と身体に新たな風を送り込み、閉じこもった状況から一歩を踏み出すきっかけを作ることができます。

散歩は、すぐに効果が現れる魔法ではありません。しかし、親子で一歩ずつ外の世界に触れることで、少しずつ心がほぐれ、次の行動に向かうエネルギーが生まれていきます。どうか焦らず、無理をせず、散歩を日々の生活の中に取り入れてみてください。その小さな一歩が、やがて大きな変化をもたらす種になっていきます。

親の言葉が子どもに伝わらない訳

親の言葉が子どもに伝わらない訳のイメージ

親として、日々子どもに向き合う中で「どうして伝わらないのだろう」と悩む瞬間は、どんな家庭でも一度は訪れるものです。特に、不登校や引きこもりといった問題を抱える子どもを持つ親御さんにとって、この「伝わらない」という壁は非常に重く感じられることでしょう。「学校に行ってほしい」「少しでも前向きになってほしい」「なんとか状況を改善したい」という思いを込めて言葉をかけているにもかかわらず、その言葉が届いていないように感じられる――その苦しさは私も日々、多くの親御さんから聞いています。

私自身、不登校や引きこもりを専門とする児童カウンセラーとして、親子間のコミュニケーション問題に深く関わってきました。この「言葉が伝わらない」という問題には、多くの原因が複雑に絡み合っています。そして、原因を正確に理解しないまま言葉を投げかけても、状況が好転することは少なく、むしろ親子間の溝を深める結果を招くことさえあります。本稿では、親の言葉が子どもに伝わらない「3つの理由」を掘り下げ、親子のコミュニケーションの質を改善するためのヒントをお伝えします。


理由1:言葉は「そのまま」伝わるものではない

私たちは普段、言葉を交わす際に「相手にそのままの意味で伝わるだろう」と考えがちです。特に、親が子どもに声をかけるときには、その言葉が意図通りに受け取られ、理解されることを当然視してしまうことがあります。けれども、実際には「そのまま伝わる」ことは非常に稀であるという現実をまず理解する必要があります。

言葉のズレ:同じ言葉が異なる意味を持つ

具体例を挙げてみましょう。親が「明日の準備はできたの?」と尋ねたとします。この言葉の中に、親としてはさまざまな意図が込められています。明日の授業のための教科書やノート、筆記用具、そして宿題がきちんと揃っているかどうか――そうした「準備」の全体像が当然のように含まれているはずです。しかし、子どもにとっての「明日の準備」とは、単に「明日学校があることを知っている」程度の認識であったり、カバンを部屋の片隅に置いただけで「準備ができた」と感じてしまうことがあるのです。

親と子どもの間で、このようなすれ違いが起こるのはなぜでしょうか。それは、私たち一人ひとりが「スキーマ」と呼ばれる独自の認識の枠組みを持っているからです。スキーマとは、過去の経験や知識、価値観に基づいて作られる思考のフィルターのようなものです。親と子どもでは、これまでの経験の質や量が大きく異なるため、同じ言葉を聞いてもその解釈が大きくずれることがあります。

スキーマの違いがすれ違いを生む

たとえば、親が「計画を立てなさい」と言った場合を考えてみます。親にとっての「計画」とは、目標を定め、その目標に向けた具体的な行動を段取りよく組み立てることを意味します。一方で、子どもにとって「計画を立てる」とは、「やりたいことをとりあえず頭の中で思い浮かべる」程度の曖昧なものかもしれません。このズレは、子どもの経験値や思考の幅がまだ狭いことに起因しています。

特に不登校や引きこもりの子どもたちは、自分の失敗体験やトラウマから、否定的なスキーマを形成していることが少なくありません。「自分はどうせダメだ」「何をやっても意味がない」という思い込みが強い場合、親がどれだけ励ましや助言をしても、その言葉が肯定的に受け取られることは難しくなります。むしろ、「また怒られるかもしれない」「無理なことを押し付けられる」という恐れの感情が先に立ち、親の言葉が意図した以上にネガティブに受け取られることもあります。

このようなスキーマの違いを理解せずに、ただ「もっとしっかり準備しなさい」「ちゃんと聞いてくれないから伝わらないんだ」と感情的になると、親子間の信頼関係が損なわれる可能性があります。逆に、この違いを理解し、子どもの認識の枠組みに合わせて言葉を選び直すことで、伝わる確率を大きく高めることができるのです。

伝わるためのヒント

言葉がそのまま伝わらないという現実を踏まえた上で、親御さんが意識すべきことがあります。それは、具体的でシンプルな言葉を使い、子どもの認識の枠組みを少しずつ広げていくことです。たとえば、「明日の準備をしなさい」と言うのではなく、「宿題が終わっているか確認してみよう」「明日の授業で使う教科書はカバンに入れた?」といったように、具体的な行動を一つずつ確認する形に変えるだけで、子どもが受け取る情報は大きく変わります。

また、子どもが「準備ができている」という答えを返したときには、「どんな準備をしたのか教えてくれる?」と尋ねることで、子どもの認識を明確にすることができます。このように、具体的で丁寧なコミュニケーションを心がけることが、親の言葉を伝える第一歩となるのです。


理由2:情報の優先順位が違うという現実

親御さんが「重要だから聞きなさい」と一生懸命に伝えているにもかかわらず、子どもはその瞬間にスマホや漫画、ゲームに夢中になっていてまるで話を聞いていない。こんな場面は、多くの家庭で日常的に見られる光景ではないでしょうか。このとき、親御さんは「どうしてこんなに大事な話をスルーできるの?」と感じるかもしれませんが、子どもにとってはその瞬間に夢中になっていることが、親の言葉よりも重要だと感じられているのです。

子どもの優先順位を理解する

なぜ子どもは、親の言葉よりも目の前の楽しみに没頭してしまうのでしょうか?この背後には、子どもの脳の発達段階が関係しています。特に思春期の子どもたちの脳は、感情や欲求を司る部分が非常に活発に働いています。これは、目の前の楽しいことや関心を引くものに対して非常に敏感であることを意味します。反対に、理性や長期的な視点で物事を考える力はまだ未熟なため、「今が楽しければいい」という考え方に引っ張られやすくなります。

たとえば、親が「今のうちに勉強しておけば、将来いい大学に行けるよ」と伝えても、子どもにとって「将来」という概念があまり現実味を帯びていない場合、そのアドバイスはほとんど意味を持たないのです。それよりも、今手にしているスマホゲームや友達とのLINEのほうが、圧倒的に現実的で魅力的に感じられるのです。

親の言葉を優先順位に組み込む工夫

子どもが目の前のことに夢中になり、親の言葉が届かないのは、彼らにとってその言葉が「現時点での優先順位の低い情報」として扱われているからです。この場合、単に大きな声で繰り返したり、子どもが気に入らないことを禁止したりしても、根本的な解決にはなりません。むしろ、親の言葉が「叱責」や「圧力」として認識され、子どもの中でさらに拒絶感を高めてしまうこともあります。

では、どうすれば親の言葉を子どもの優先順位の中に組み込むことができるのでしょうか?その鍵は、「親の言葉を子どもの世界とつなげること」にあります。

たとえば、親が「宿題をやりなさい」と伝えるとき、ただ命令するのではなく、「宿題が終わったら一緒にゲームをしよう」「終わったら夕飯にあなたの好きなデザートを出すね」といった具体的な動機付けを加えることで、子どもの中で宿題の優先順位を上げる工夫ができます。このように、子どもが自然と「やってみよう」と思える状況を作ることが重要です。

叱責よりも共感を優先する

不登校や引きこもりの子どもたちは、そもそもストレスや不安感を抱え、心が疲弊している場合が多いです。そのような状況で親から「なんでやらないの?」「ちゃんと聞きなさい!」と叱られると、子どもはますます心を閉ざし、言葉が届きにくくなります。

ここで大切なのは、まず共感を示すことです。たとえば、子どもが宿題をやらない場合、「どうしてやらないの?」と詰め寄るのではなく、「今日は宿題をやるのがしんどいのかな?」と子どもの気持ちを理解しようとする姿勢を見せることが大切です。こうすることで、子どもは親の言葉を「自分を責めるもの」としてではなく、「自分を理解しようとしているもの」として受け取りやすくなります。

遊びの時間を活用した伝え方

また、親子で一緒に楽しめる時間を増やすことも効果的です。たとえば、ゲームや散歩、料理など、子どもが好きな活動を通じて自然にコミュニケーションを取ることで、親の言葉が「強制的な指示」ではなく「信頼できるアドバイス」として受け入れられやすくなります。

ある不登校の子どもとその親のケースを紹介しましょう。この親御さんは、子どもが学校に行かないことで最初は毎日叱っていました。しかし、親が態度を改め、子どもと一緒に好きなアニメを観たり、料理をする時間を増やした結果、子どもとの関係が改善し、少しずつ学校の話題も受け入れられるようになりました。このように、信頼関係を築くための「一緒に楽しむ時間」は、親の言葉が伝わるための土台になるのです。


理由3:子どもは「自分の世界」に閉じこもる

親の言葉が伝わらない理由の中で、最も厄介なのが「子どもが自分の世界に閉じこもってしまう」状況です。特に不登校や引きこもりの子どもたちは、自分にとって安心できる世界の中で心を守り、外界との接触を避けようとする傾向があります。この「自分の世界」の中にいる子どもたちに言葉を届けるには、単純なコミュニケーションでは足りません。子どもがどのようにしてその世界に閉じこもるようになったのかを理解し、そこに寄り添いながらアプローチする必要があります。

なぜ「自分の世界」に閉じこもるのか?

子どもが自分の世界に閉じこもる理由はさまざまです。学校でのいじめや友人関係のトラブル、学業のプレッシャー、あるいは親とのコミュニケーション不足が原因となることが多いです。このような問題が重なると、子どもは次第に「どうせ自分なんて」と自分を否定する思考に陥り、現実から目を背けるようになります。

特に不登校の子どもたちは、学校という「現実の社会」に直面することが大きな負担となっている場合が多いです。親としては「学校に行きなさい」「友達ともっと話しなさい」と伝えたくなるものですが、そうした言葉は子どもにとって「安全な自分の世界」を脅かすものとして受け取られてしまいます。その結果、親の言葉をさらに拒絶し、ますます自分の世界に閉じこもってしまうのです。

子どもの世界に「入り込む」ために

子どもが自分の世界に閉じこもっている場合、親がその世界の外から言葉をかけても届きにくいことが多いです。ここで重要なのは、親が子どもの世界に「入り込む」ことです。子どもの趣味や興味に寄り添い、それを通じてコミュニケーションを図ることで、徐々に外の世界とのつながりを作っていくのです。

たとえば、子どもがゲームに夢中になっている場合、親がそのゲームの内容を理解し、一緒にプレイすることで会話のきっかけを作ることができます。あるいは、子どもが好きなアニメや漫画について話を聞くことで、「親が自分の世界を理解しようとしてくれている」と感じることができます。このように、親が子どもの世界を受け入れる姿勢を見せることが、次のステップへの足掛かりとなるのです。

小さな成功体験を積み重ねる

自分の世界に閉じこもる子どもたちは、外の世界に対して強い不安感を抱いています。この不安を軽減するためには、小さな成功体験を積み重ねることが効果的です。たとえば、「今日は一緒に学校の近くまで散歩してみない?」といった簡単な提案を通じて、子どもが少しずつ外の世界に触れる機会を作ることができます。

また、子どもが「できた!」と実感できる瞬間を意識的に作ることも重要です。親が一方的にアドバイスするのではなく、「これができたら一緒にお祝いしよう」という形で達成感を共有することで、子どもが外の世界への興味を持つきっかけを与えられます。

自分の世界から抜け出すには時間が必要

最後に強調したいのは、子どもが自分の世界から抜け出すには、必ず時間が必要だということです。親として焦る気持ちは理解できますが、無理に引っ張り出そうとすればするほど、子どもはその世界にしがみつくようになってしまいます。

大切なのは、親が「子どもは必ず変わることができる」という信念を持ち続けることです。そして、子どものペースを尊重しながら、少しずつ外の世界への橋渡しをしていくことが、長期的な解決への道筋となるのです。


親の心構えが「伝える力」を変える

ここまで、子どもに言葉が伝わらない理由と、その背後にあるスキーマや優先順位の違い、自分の世界に閉じこもる心理について解説してきました。しかし、子どもに言葉を届けるために最も大切な要素は、実は「親自身の心構え」です。親の姿勢や考え方が変わることで、同じ言葉であってもその伝わり方が大きく変わるのです。

親として、子どもの未来を案じ、なんとかして良い方向に導こうとすることは当然のことです。しかし、焦りや不安が前面に出ると、その気持ちが言葉に表れ、かえって子どもを追い詰めてしまうことがあります。ここでは、親の心構えを整えるための具体的な方法について考えていきます。

「すぐに伝わる」ことを期待しない

親が言葉を伝える際によく陥りがちな誤解の一つが、「言葉はすぐに伝わるべきだ」という考えです。しかし、子どもが不登校や引きこもりの状態にある場合、その状況に至るまでにさまざまな心の葛藤や問題が積み重なっています。したがって、一度の声かけや説得で状況が変わることを期待するのは現実的ではありません。

ある親御さんの例を挙げます。このお母さんは、不登校になった中学生の息子に対し、「学校に行くことが大事なんだ」と繰り返し説得を試みました。しかし、息子は頑なに耳を塞ぎ、話を聞こうとしませんでした。その後、カウンセリングを通じて、お母さんは「伝わるには時間がかかる」ということを理解し、声かけを少しずつ柔らかいものに変えていきました。結果として、息子は少しずつ心を開き、最終的には親子で学校復帰への道を話し合えるようになったのです。

親の言葉がすぐに伝わらないことは、決して親としての努力が足りないという意味ではありません。むしろ、言葉が届くためには、子どもがその言葉を受け入れる準備が整う時間を待つことが重要です。「時間をかけていい」という意識を持つことが、親自身の心の余裕にもつながるのです。

子どもの視点に立つ努力をする

親の立場から見ると、「なぜこんな簡単なことがわからないの?」と思う場面も少なくないでしょう。しかし、ここで一度、子どもの視点に立って物事を考えてみることが大切です。子どもにとって、親からの言葉がどのように聞こえているのか、どのように感じられているのかを想像してみてください。

たとえば、親が「学校に行くことは将来のために必要だ」と伝える場合、その言葉は親の立場から見れば当然のことです。しかし、学校生活で傷ついた経験を持つ子どもにとっては、「その言葉がまた自分を苦しい場所に戻そうとしている」と感じられるかもしれません。このズレを意識しないまま言葉を重ねると、子どもは「親は自分の気持ちを理解していない」と感じ、ますます距離を取ろうとするでしょう。

ここで大切なのは、「自分が子どもの立場だったらどう感じるか」を意識することです。そして、子どもの感じ方に寄り添いながら、「一緒に考えよう」「どうしたら少しでも楽になる?」といった言葉をかけることで、子どもが安心して心を開けるようになります。

「親が変わる」姿を見せる

子どもにとって、親は最も身近な存在であり、同時に「自分をどう見ているのか」を知るための大きな鏡でもあります。そのため、親自身が変わる姿を見せることが、子どもにとって大きな影響を与えます。

たとえば、親が日々イライラしていたり、感情的になりやすい状況にある場合、子どもはその姿を見て「自分のせいで親がこんなに苦しんでいる」と罪悪感を抱くことがあります。一方で、親が落ち着いており、子どもと向き合う時間を大切にしている姿を見せると、子どもは「自分がどんな状況でも親は自分を受け入れてくれる」と感じられるようになります。

また、親が趣味や楽しみを見つけ、笑顔で過ごす姿を見せることも重要です。不登校や引きこもりの子どもを持つ親は、子どもに対する心配や責任感から自分自身を追い詰めがちです。しかし、親が「自分を大切にする」ことを実践している姿を見せることで、子どもも「自分を大切にしていいんだ」と感じられるようになります。

失敗を恐れない心の余裕を持つ

最後に、親の心構えとして最も大切なのは、「失敗してもいい」という心の余裕を持つことです。不登校や引きこもりの解決には、必ず試行錯誤が伴います。親として一生懸命に取り組んでも、思ったような結果が出ないことも多いでしょう。しかし、それは失敗ではなく、改善への一歩なのです。

たとえば、ある親御さんが、子どもとのコミュニケーションを改善するために毎晩声をかけ続けていましたが、子どもはなかなか反応を示しませんでした。それでも親御さんはあきらめず、別のタイミングや方法で声をかけることを試しました。最終的に、子どもが「親が自分を見捨てずに向き合い続けてくれる」という安心感を得たことで、少しずつ前向きな行動が見られるようになったのです。

親としての努力は、たとえ結果がすぐに見えなくても、必ず子どもに影響を与えています。「失敗してもいい」「またやり直せばいい」と考えることで、親自身も無理なく向き合い続けることができるでしょう。


親子で共に進む道を作る

親の言葉が子どもに伝わるためには、子どものスキーマや心理状態を理解し、共感をもって接することが不可欠です。しかし、何よりも重要なのは、親自身が心の余裕を持ち、子どもの成長を信じながら向き合う姿勢です。

「伝わらない」という現象は、決して親としての失敗ではありません。それは、子どもが自分なりのペースで物事を考え、成長している証でもあります。親子で一歩ずつ進む道を共に作りながら、言葉を通じて信頼関係を深めていきましょう。その先に、親の思いがしっかりと届き、子どもが自分の未来に向けて歩み出す瞬間がきっと訪れるはずです。

不登校のシグナル、家庭の特徴

不登校のシグナル、家庭の特徴の見出し

私は、不登校や引きこもりの問題に特化した児童カウンセラーとして、多くの親子と向き合ってきました。不登校は「ただ時期が来れば解決する」ものではありません。見守るだけで自然に元気を取り戻すケースはごくわずかで、多くの場合、家庭や学校、そして社会の環境が改善されなければ、子どもたちの心は傷つき続けます。そして、それらの改善は子ども自身が一人で成し遂げられるものではありません。だからこそ、親として、家族として、「気づき」と「具体的なアクション」が求められるのです。

本稿では、不登校に繋がりやすい「3つの家庭の特徴」についてお話しします。不登校を引き起こす原因には、いくつもの要因が絡み合っていますが、その中で特に共通して見られる家庭環境の特徴を取り上げます。あなたの家庭に当てはまる点がないか、一度立ち止まって見直すきっかけにしていただければと思います。

家庭の特徴要点必要な行動
1. 子どもが学校のことを話さない子どもが学校生活の悩みを抱えている可能性が高い。親が関心を持たない態度も原因になり得る。子どもが話しやすい雰囲気を作り、日常的に学校の話題を自然に引き出す努力をする。話を否定せず共感する。
2. 家族で食卓を囲まない食卓を囲む機会が減ると家庭内の会話が減少し、子どもが孤独感を抱えやすくなる。家庭の一体感も失われる。定期的に家族で食卓を囲む時間を作る。食事中はポジティブな話題を選び、テレビやスマホを避けて会話に集中する。
3. 家庭内がピリピリしている親の口論や不一致が日常化すると、子どもが家庭での安心感を失い、自己否定感を持つ原因になる。親同士で教育方針を一致させ、子どもの前で口論を避ける。親が感情をコントロールし、家庭の雰囲気を穏やかに保つ。

特徴1. 子どもが「学校のことを話さない」家庭

まず最初に取り上げたい特徴は、子どもが学校について家庭でほとんど話さないという点です。「うちの子は学校のことを話さないけど、それって普通なんじゃない?」と思われる親御さんも少なくないでしょう。しかし、この「話さない」という現象は、不登校やその予兆を考える上で極めて重要なシグナルであることが多いのです。

背景に潜む問題

子どもが学校について話さない背景には、いくつかの要因が考えられます。

  1. 学校生活に悩みを抱えている
    子どもが学校で辛い思いをしている場合、そのことを親に話したくないと思うのは自然な反応です。「親を心配させたくない」「言ってもどうせ理解してもらえない」「自分の問題は自分で解決しなければならない」など、子どもの心にはさまざまな葛藤が渦巻いています。 特に、小学校高学年から中学生にかけては、友人関係のトラブルや教師との摩擦、成績へのプレッシャーなどが積み重なり、学校生活に居場所を感じられなくなる子どもが増えます。この段階で子どもがその悩みを親に話せていれば、深刻な不登校に発展することを防ぐ可能性が高いのですが、話さないままでいると、心の中にストレスが溜まり続けてしまいます。
  2. 親が学校生活に関心を持っていない
    一方で、親側の無意識な態度が、子どもに「話しても無駄だ」と思わせてしまうケースも少なくありません。「学校で何かあったの?」と声をかけても、親が忙しそうにしていたり、そもそも話を聞く時間を取らなかったりすると、子どもは「どうせ真剣に聞いてくれない」と感じてしまいます。また、親が学校についての話をネガティブに受け止める場合も、子どもは話すことを避けるようになります。 例えば、「そんなの気にすることないよ」「みんな同じだよ」といった言葉。これは、親としては励ましのつもりかもしれませんが、子どもにとっては「私の悩みは重要じゃないんだ」というメッセージとして受け取られがちです。

親としてできること

では、子どもが学校について話さなくなった場合、親としてどのように接するべきなのでしょうか。

  • 話を引き出す努力を惜しまない
    例えば、「今日は何が楽しかった?」とポジティブな切り口で質問することから始めてみてください。また、「学校で困っていることはない?」と、具体的に困り事に焦点を当てるのではなく、軽い雑談の中で学校の話題を自然に引き出すのも効果的です。
  • 話す時間を意識的に作る
    子どもが自然と話せる環境を作るためには、家庭内で一緒に過ごす時間を増やすことが大切です。忙しい日常の中でも、1日のうち少しの時間でも「話せる時間」を設ける意識を持ちましょう。
  • 子どもの気持ちを受け止める
    子どもが勇気を出して話してくれたとき、親として一番大切なのは、その気持ちを否定しないことです。たとえ「大したことがない」と思える悩みでも、「そうだったんだね」と共感する姿勢を見せることで、子どもは安心して話せるようになります。

特徴2. 家族で食卓を囲まない家庭

次に挙げる特徴は、食事が家族でバラバラになっている家庭です。近年の共働き世帯の増加や、子どもの習い事の多様化により、家族揃って食卓を囲む機会が減っている家庭が増えています。一見、食事の時間がバラバラになることはそれほど大きな問題ではないように思われるかもしれませんが、この状況が引き起こす心理的影響は決して軽視できません。

背景に潜む問題

食事が家族バラバラになることで、以下のような問題が生じます。

  1. 家族間の会話の減少
    食事の時間は、本来家族が日常の出来事を共有する大切な時間です。しかし、各自が別々の時間に食事を取るようになると、家庭内でのコミュニケーションが激減します。この結果、子どもが学校や友人関係で感じている不安を話す場が失われ、孤独感を感じやすくなります。
  2. 家庭の一体感の喪失
    食卓を囲むことがない家庭では、家庭全体が「それぞれが別々の生活を送っている」という感覚に陥りやすくなります。子どもにとって、家庭は唯一安心できる「心の拠り所」であるべきですが、その家庭が分断されているように感じられると、学校や社会でのストレスを一人で抱え込むことになります。
  3. 心の余裕の欠如
    忙しさの中で食事が「ただ栄養を取るだけの時間」になってしまうと、親も子も心に余裕がなくなります。これは、イライラしやすくなる、物事を前向きに考えられなくなる、といった形で家庭全体の雰囲気に影響を及ぼします。

親としてできること

食事がバラバラな状態を改善するためには、親が意識的に取り組むことが必要です。忙しい現代社会においては難しい面もあるかもしれませんが、家庭内での食事の時間を大切にすることは、子どもの心の安定に直結します。以下に具体的な提案を挙げます。

1. 「家族全員で食卓を囲む日」を意識的に作る

週に一度でもよいので、「家族全員で夕食を食べる日」を決めてみましょう。その際、テレビやスマホはオフにし、食事中の会話に集中する環境を整えます。例えば、「今日はみんなで好きな料理を作ろう」というテーマを設けると、食卓の時間がより楽しみになります。

  • たとえ短い時間でも、家族が顔を合わせて話すことが重要です。
  • 子どもが話しやすいよう、学校や成績の話題よりも、日常的な出来事や興味のある話題を取り上げてください。

2. 生活スケジュールを調整する努力をする

共働きや塾通いで家族の生活時間がずれている場合でも、食事の時間を共有する努力をしてみましょう。朝食を一緒に取るのも効果的です。
特に、子どもが夕方に帰宅し、親が仕事で遅くなる場合、子どもが親の帰宅時間まで少し待ってでも一緒に夕食を取る習慣を持てると良いでしょう。

  • 無理のない範囲でスケジュールを調整し、「一緒に食事をする」という優先順位を家庭全体で共有することが大切です。
  • 親自身が忙しい場合、休日を利用して食事の時間を補完するのも一つの方法です。

3. 食卓を「ポジティブな場所」にする

もし家庭内で意見の衝突やストレスを抱えている場合、食卓での会話をポジティブな内容にするよう心がけましょう。食事中の空気が緊張していると、子どもは食卓に居づらさを感じてしまいます。

  • 「今日一番楽しかったこと」を家族それぞれが話すルールを作ると、会話が明るいものになります。
  • 子どもの発言に対して「それは面白いね」と興味を示し、否定的な意見は避けるようにしましょう。

4. 手軽に取り組める「家族の食のイベント」を設ける

家族全員での食事が難しい場合でも、「おやつタイム」や「休日のブランチ」など、小さなイベントを取り入れてみてください。例えば、「週末にみんなでパンケーキを作る」「お昼にピクニックをする」といった軽い取り組みでも、家庭の一体感を育むことができます。

  • 「一緒に料理をする時間」は、食卓での会話を自然に増やすきっかけになります。
  • 料理を通じて、子どもが「家族と一緒にいる時間は楽しい」と感じられるようにすると良いでしょう。

5. 親が率先して習慣を見直す

忙しい中で子どもに「一緒に食事をしよう」と強制するのは難しい場合があります。そのため、親自身がまず食事の時間を丁寧に取り、ゆったりとした気持ちで子どもと接するよう心がけてください。

  • 「自分一人でも丁寧に食べる」姿を見せることが、子どもの心に安心感を与えます。
  • 食事中に愚痴や批判を口にしないことで、食卓が「安心できる空間」であると子どもに伝わります。

家庭での食事は、ただ体を養うだけでなく、子どもの心を満たすための大切な時間です。一緒に食卓を囲む習慣が復活すれば、家庭内での会話が増え、子どもの学校生活や心の悩みを共有する機会も自然と生まれます。少しの意識改革が、家庭全体の雰囲気を大きく変えるきっかけとなるでしょう。

食事風景

特徴3. 家庭内がピリピリしている家庭

最後に挙げる特徴は、家庭内の雰囲気がピリピリしている家庭です。不登校の子どもを持つ家庭では、親自身が不安や焦りを抱えることが少なくありません。その結果として、親同士や親子間の関係がぎくしゃくし、家庭全体に緊張感が漂っているケースが見受けられます。この「ピリピリした空気」が子どもに与える影響は非常に大きく、子どもが家庭で安心感を得られない要因の一つになっています。

背景に潜む問題

家庭内がピリピリしている原因としては、次のようなケースが挙げられます。

  1. 親同士の口論が多い
    夫婦間での意見の衝突や口論が日常化している場合、子どもはその影響を強く受けます。特に、子どもの前で頻繁に口論を繰り広げる家庭では、子どもが「自分の存在が家庭の問題の原因なのではないか」と感じることがあります。これは、子どもにとって極めて大きなストレスとなり、自分の価値を否定するような気持ちを抱かせる要因になります。 また、家庭内の争いがエスカレートして暴言や感情的なやり取りが日常化すると、子どもは家庭に安心感を持てなくなり、家庭という場が「ストレスの発生源」にすらなってしまいます。
  2. 親同士の教育方針の不一致
    子どもの教育に関する考え方が親同士で大きく異なる場合、親がそれぞれ異なる要求を子どもに突きつけることがあります。例えば、片方の親が「もっと勉強を頑張れ」とプレッシャーをかけ、もう片方の親が「無理しなくていい」と言うようなケースです。こうした矛盾したメッセージを受け取ると、子どもはどちらの親の期待に応えるべきか分からず、混乱を深めます。 このような状況は、子どものストレスを高めるだけでなく、親自身の間にさらなる摩擦を生み出し、家庭内の緊張感を悪化させます。
  3. 親の感情的な不安定さ
    親が不登校の状況に焦りを感じ、「なぜうちの子だけがこうなってしまったのか」と自分を責めたり、子どもに対して強い不満を抱いたりするケースも見られます。このような感情は、無意識のうちに子どもに伝わります。「また怒られるかもしれない」「親に迷惑をかけている自分はダメなんだ」といった考えに至り、子どもがさらに自分の殻に閉じこもる悪循環を生み出します。

ピリピリした雰囲気が生む影響

家庭内のピリピリ感が続くと、子どもの心にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

  1. 「家に居場所がない」という感覚
    家庭は本来、子どもが外の世界でのストレスを癒やし、安心感を得られる場所であるべきです。しかし、家庭内が常に緊張した空気に包まれていると、子どもは「家にいても休まらない」と感じます。これにより、ますます孤立感を深め、学校や家庭という社会の2大柱から距離を取るようになります。
  2. 感情のコントロールが難しくなる
    ピリピリした雰囲気の中で育つと、子ども自身が感情を安定させる力を失いやすくなります。親の不安定さがモデルとなり、子どももストレスを感じたときに怒りや不安を爆発させることが増えるのです。
  3. 将来的な人間関係の影響
    子ども時代に家庭内の不安定さを経験すると、大人になってからも他者との関係構築に苦労することがあります。信頼関係を築く基盤が十分に形成されないため、「人を信じるのが怖い」と感じることが多くなります。

親としてできること

家庭内のピリピリした雰囲気を和らげるには、親がまず自分たちの行動や感情に目を向けることが重要です。

  • 夫婦間での話し合い
    教育方針の不一致が原因の場合、まず夫婦間で冷静に話し合い、子どもに矛盾したメッセージを送らないようにすることが大切です。どちらか一方が主導権を握るのではなく、双方の意見を尊重し合い、共通のゴールを見つけることが必要です。
  • 感情のコントロールを意識する
    親自身が不安定な状態でいると、それが家庭全体に広がります。心が疲れたときには、自分自身のストレス解消法を見つけることを心がけてください。深呼吸や趣味の時間を持つことでも、心に余裕が生まれます。
  • 子どもの前で口論を避ける
    子どもの目の前で意見の対立を見せるのは避けるべきです。口論になりそうな場合は、一度落ち着いてから話す機会を設けるようにしましょう。子どもにとって家庭が安心できる空間であることを最優先に考えるべきです。

総括:子どもが安心できる家庭を目指して

これまで述べてきた「子どもが学校について話さない」「食事が家族バラバラ」「家庭内がピリピリしている」という3つの特徴には、いずれも共通しているポイントがあります。それは、子どもが家庭という場所で安心感を得られていないということです。

子どもが不登校になった場合、親としては「どうしてうちの子が?」という気持ちが湧き上がり、自分を責めたり、子どもに対して怒りを感じたりすることがあるかもしれません。しかし、まず最初に意識してほしいのは、子どもが何を感じ、何を必要としているかを理解する努力をすることです。

不登校の背景にはさまざまな要因が絡み合っていますが、家庭が「安全基地」である限り、子どもは再び外の世界に向き合う力を取り戻せる可能性があります。そのためには、以下の3つを意識することが大切です。

  1. 子どもの気持ちを受け止める
    子どもが何かを話そうとしたとき、親としてその気持ちを全力で受け止めることが重要です。アドバイスをする前に、まず子どもの話に耳を傾ける姿勢を持ちましょう。
  2. 家庭内のコミュニケーションを大切にする
    忙しい毎日の中でも、家族揃って過ごす時間を意識的に作りましょう。特に食事の時間は、家族全員が顔を合わせ、日々の出来事を共有する貴重な機会です。
  3. 親自身の心の余裕を持つ
    親がストレスを抱えすぎると、その影響が家庭全体に及びます。自分を追い詰めすぎず、時には助けを求めることも必要です。

子どもが家庭で「受け入れられている」と感じることが、不登校を乗り越える第一歩となります。この文章が、家庭を見直し、子どもに寄り添うためのヒントとなれば幸いです。

親の愛情の過不足は、子どもが決める

親の愛情の過不足は、子どもが決めることのイラスト

「こんなに愛しているのに、どうしてこの子はわかってくれないのだろう?」

不登校や引きこもりの子どもを持つ親御さんが抱える苦悩の中で、このような問いは決して珍しいものではありません。愛情を注いでいるという自負もある、子どもを思い、学校に戻れるよう願っている。それでも、子どもの心が離れていく感覚に戸惑い、時に親自身が深く傷ついてしまう。

私は、不登校や引きこもりの相談を専門とする児童心理カウンセラーとして、長年こうした親子と向き合ってきました。その中で感じるのは、親の愛情と子どもの反応がすれ違う瞬間にこそ、問題の根が隠れているということです。そして、そのすれ違いは単純な誤解ではなく、「親の愛情の過不足」が原因であることが少なくありません。

親の愛情は、いわば自転車の補助輪です。子どもが自分でバランスを取り、漕ぎ出せるようになるまで支えるもの。しかし、その補助輪がいつまでも外れなかったり、反対に早々に外されてしまったりすると、子どもは転び、立ち上がる力を失ってしまうかもしれません。では、どうすれば適切なタイミングで補助輪を調整できるのでしょうか?

本稿では、親の愛情が子どもにどう影響を与えるのか、そしてその愛情をどう調整すべきかについて考えていきます。子育てに悩む親御さんにとって、新たな気づきと視点を提供できることを願っています。


愛情の形が子どもを縛るとき

母親の苦悩

Aさんは、私のカウンセリングルームを訪れたとき、目に涙を浮かべながらこう話しました。

「私は、この子が赤ちゃんの頃から、全力で愛してきたつもりなんです。でも、中学生になったあたりから反抗的になり、ついに学校に行けなくなりました。どうして、私の愛情が届かないのでしょうか?」

Aさんの言葉には、自分の子育てに対する自信と、それが否定されたように感じる痛みが滲んでいました。彼女の息子さんは、中学2年生。成績優秀で、小学生の頃までは親の期待に応えるように頑張っていました。しかし、成長するにつれ、母親の言葉に素直に従わなくなり、最終的には学校に通えなくなってしまったのです。

「私は悪い母親だったのでしょうか?」と問いかける彼女の姿は、私の心に深く刻まれました。しかし、この問いの裏には、ある重要なすれ違いが隠れていました。それは、「親が注ぐ愛情の形」と「子どもが求める愛情の形」が違っていたことです。

愛情の過剰が子どもを追い詰める

Aさんは、息子が小さい頃から「この子の将来を思って」という言葉をよく口にしていました。宿題をきちんとやらせ、習い事にも通わせ、テストの結果を確認して次のステップを考える。いわゆる「熱心な母親」でした。しかし、息子さんにとって、この「熱心さ」は次第にプレッシャーとなり、自分の気持ちを押し殺す習慣を生むきっかけとなっていたのです。

息子さんが学校に行けなくなった背景には、「親の期待に応えることでしか、自分の価値を証明できない」という考えが根付いてしまったことがありました。親が愛情をもってサポートしていたつもりでも、子どもはその愛情を「自分を支配するもの」と感じることがあります。

不足する愛情がもたらす孤独

愛情不足の家庭環境

一方、別のケースでは、愛情の不足が子どもを不登校に追いやる要因になった例もあります。Bさんの家庭では、両親共働きで多忙を極めていました。小学生の娘さんは、学童保育に通いながら、一人で過ごす時間が多かったと言います。

娘さんは次第に「お母さんが忙しいのは仕方がない」「自分が手のかからない子でいれば、迷惑をかけずに済む」と考えるようになりました。これが表面化したのは中学生になってからでした。「学校に行きたくない」という言葉は、実は「自分は愛されているのか?」という問いだったのです。

子どもの孤独感

子どもが「自分は親から注目されていない」と感じると、心に孤独感が生まれます。特に思春期の子どもは、自分の存在価値を親からの愛情を通じて確認しようとするものです。この孤独感が蓄積すると、やがて心が萎縮し、社会に向かう力が失われてしまいます。

Bさんの娘さんは、最終的に「学校に行けない」と自分の状況を言葉にできるようになるまで、多くの時間を費やしました。その過程で彼女は「親に迷惑をかける自分」を嫌い、ますます内向的になっていったのです。

愛着障害という目に見えない影響

愛情の過不足が長期間続くと、子どもの心に「愛着障害」という深刻な影響が生じることがあります。愛着障害は、幼少期に親との安定した信頼関係が築かれなかったことによって生じる心の問題です。

愛着障害が生む困難

愛着障害を持つ子どもは、次のような特徴を示すことが多いです。

  • 他者に対する強い不信感
  • 過度な自己防衛
  • 対人関係の構築が困難
  • 自己否定的な思考

例えば、C君は、小学生の頃から親との関係が不安定でした。母親は、彼が幼少期に育児ノイローゼを経験し、彼との距離を取ることが多かったと言います。その結果、C君は「自分は誰からも愛されていない」と感じるようになり、不登校だけでなく、クラスメイトとの交流にも問題を抱えるようになってしまいました。

親子の愛情のイメージ

子どもの声に耳を傾ける

愛情の過不足に気づくためには、親が子どもの声に耳を傾ける姿勢が必要です。しかし、子ども第四章:子どもの声に耳を傾ける

親が子どもの愛情の「適量」を見極めるために、何より重要なのは「子どもの声に耳を傾けること」です。しかし、子どもの声とは、必ずしも言葉として分かりやすい形で発せられるものではありません。むしろ、態度や行動の変化、時に沈黙さえも、親へのメッセージである場合が多いのです。

子どもが発する「見えない声」

親の愛情が適切でないとき、子どもは無意識のうちにサインを発します。たとえば、不登校や引きこもりという行動自体も、実は「自分を見てほしい」「自分の気持ちに気づいてほしい」という叫びであることが少なくありません。

中学1年生のD君は、学校に行きたくない理由を何も話さず、部屋にこもるようになりました。親御さんが心配して声をかけても、「うるさい」と言って顔を背けてしまう。両親は、「この子は何も考えていないのではないか」と不安になり、時には怒りを爆発させてしまいました。

しかし、D君が実際に感じていたのは、「自分の気持ちを分かってもらえない」という孤独感でした。母親が「学校に行きなさい」と繰り返すたびに、「自分の苦しさに気づいてくれない」という思いが膨らみ、彼はますます心を閉ざしていったのです。

子どもの態度や行動に隠れた意味

子どもが発する「声」をキャッチするためには、親は子どもの態度や行動の背景にある感情を想像する必要があります。例えば、以下のような行動が見られた場合、それは子どもの心の叫びである可能性があります。

  • 親の顔色を伺う
    「自分が親に負担をかけているのではないか」と感じ、親を怒らせたくないと考えている可能性があります。これは、愛情が過剰になりすぎてプレッシャーを与えているサインです。
  • 些細なことで嘘をつく
    「親の期待に応えられない自分を隠したい」という気持ちが背景にあるかもしれません。子どもがこうした態度を取る場合、親が「完璧」を求めすぎていないかを振り返る必要があります。
  • 何を聞いても無反応である
    親の愛情が不足し、関心を向けられていないと感じている可能性があります。「どうせ何を言っても無駄」と思い、表現を諦めてしまっている場合もあります。

これらの行動が見られるとき、親としての対応を変えるタイミングだと受け止めることが大切です。

沈黙の時間も「耳を傾ける」姿勢

子どもがすぐに本音を話さない場合もあります。しかし、無理に言葉を引き出そうとするのは逆効果です。むしろ、親が「話してもいい」「話したくなったらいつでも聞くよ」という雰囲気を作ることが、子どもの心を開く第一歩となります。

例えば、D君のケースでは、母親が「学校に行かなければ」という焦りを一旦手放し、「お母さんはただ、あなたが元気でいてくれるだけで嬉しいよ」と声をかけました。それを聞いたD君は最初こそ反応を示しませんでしたが、しばらくしてから「ちょっとだけ話してもいい?」と切り出し、学校で感じていたストレスや不安を打ち明けてくれました。

このように、子どもの沈黙の時間も「耳を傾ける」一環として受け入れる姿勢が、親子関係を改善するための鍵になります。

愛情の調整は双方向の対話から

親が子どもの声を聞き取ろうとすることは、愛情の調整に直結します。そして、調整とは「子どもの声を受け止めた上で、親も自分の気持ちを正直に伝えること」です。

例えば、「あなたのためを思ってあれこれ言ったけど、少し押し付けすぎてしまったかもしれないね」と素直に話すことで、子どもは「親も自分を理解しようとしている」と感じます。こうした双方向の対話が愛情のバランスを整える基盤となります。

子どもが安心して話せる環境を

最後に重要なのは、子どもが「自分の気持ちを話しても大丈夫だ」と感じられる環境を作ることです。これは、親が無条件の愛情を示すことによって初めて可能になります。子どもが間違えたり、学校に行けなかったりしても、それを責めるのではなく、「どんなあなたでも愛している」というメッセージを伝えることで、子どもは親に心を開くことができるのです。

「子どもの声に耳を傾ける」というのは、単に「話を聞く」こと以上に、子どもの感情やサインを受け取り、そこから愛情を再調整するプロセスそのものです。そのプロセスがあって初めて、親子の愛情は互いにとって適切な形へと進化していくのです。

最後に:愛情のバランスを模索し続ける

結局のところ、「親の愛情の過不足は、子どもが決める」という言葉が示すように、愛情は一方的に与えるものではなく、双方向で形を変えるものです。親として完璧である必要はありません。大切なのは、子どもの反応に目を向けながら、愛情を調整する努力を続けることです。

そして、一人で悩まないことを心に留めてください。専門家や信頼できる仲間とともに、子どもとの未来を切り開いていくのです。親子で共に成長する道を歩み続けましょう。

スマホ制限を子どもにどう伝えるか

スマホ制限を子どもにどう伝えるか、を考える

序章:スマホとの付き合い方が子どもの未来を左右する

「スマホは便利な道具ですが、同時に子どもの健康や生活習慣、そして学びの基盤を大きく左右する存在でもあります」と言うと、多くの親御さんがうなずかれるでしょう。確かに、連絡手段や学習ツールとしてのメリットは計り知れません。しかし、スマホが子どもの生活に与える影響は、単なる便利さにとどまらず、深刻な問題を引き起こすことがあります。

私は、日々不登校や引きこもりの相談を受ける中で、スマホの過剰使用がその一因となっているケースを数多く目の当たりにしています。不登校の要因は複雑で、単一の原因で語ることはできませんが、「生活習慣の乱れ」や「昼夜逆転」のきっかけとしてスマホが大きく影響していることは明らかです。

この随筆では、スマホ制限をどのように子どもに伝え、実践すればよいのかについて考えます。特に、健康や学び、不登校との関連性を中心にお話ししながら、子どもからの反発にどう対応すればよいか、親としての適切なアプローチを提案していきます。


子どもの生活習慣と健康を守るための第一歩

まず、スマホの過剰使用がどのように生活習慣を乱すかを考えてみましょう。多くの子どもが、夜遅くまでスマホを操作することで睡眠時間が削られ、翌朝起きられない状態に陥っています。これが繰り返されると、昼夜逆転の生活が定着し、学校に行けないという結果を招くのです。

睡眠不足が子どもに与える影響は、単なる「眠い」という状態にとどまりません。注意力や集中力の低下、学習能力の減退、さらには免疫力の低下まで引き起こします。このような状況に陥れば、学校生活においてさらに困難を抱え、不登校へとつながる悪循環が始まります。

こうした問題を未然に防ぐためには、生活習慣の基盤をしっかりと築く必要があります。そのためには、スマホの使用時間を制限し、適切なルールを設けることが不可欠です。

スマホが引き起こす不登校の要因

不登校の相談を受ける中で、私はスマホが直接的または間接的な要因となるケースに何度も出会いました。

例えば、SNSでのトラブルやオンラインゲームの依存が原因で学校生活への意欲を失うケースが挙げられます。SNSは一見、友人とのつながりを強めるツールのように思えますが、同時に「誰かと比べる」「見えないプレッシャーを感じる」という負の側面を持っています。これにより、精神的なストレスを抱え込む子どもが少なくありません。

また、オンラインゲームは瞬間的な達成感を得られる一方で、長時間に及ぶプレイが学業や生活のリズムに悪影響を及ぼします。一度「ゲームの世界が居心地がいい」と感じてしまうと、現実の学校生活に戻るハードルがますます高くなります。

こうした状況に陥った場合、ただ「スマホをやめなさい」と叱るだけでは解決しません。むしろ、子どもを追い詰めてしまい、親子関係を悪化させる可能性さえあります。

子どもの反発を予測する

「どうしてスマホを使っちゃいけないの?」「友達とつながることは悪いことなの?」子どもは必ずと言っていいほど、こうした反発を口にするでしょう。特に思春期に差し掛かったお子さんは、自分の自由を侵害されたと感じ、感情的になることも珍しくありません。

子どもの反発にどう対応すればよいのでしょうか。それには、親が冷静さを保ち、子どもの心情を理解しながら対話を重ねることが大切です。子どもにとって「スマホ=友達との大切なつながり」となっている以上、親が一方的に「悪いからダメ」と決めつけても、納得させることは難しいのです。

この段階で重要なのは、制限の理由を具体的に伝えることです。「健康を守るため」「学校生活を大切にするため」という目的を子どもに理解させることが、スマホ制限を受け入れさせる鍵となります。


スマホ制限を実践するための具体策

前章では、スマホが子どもに及ぼす影響と反発への理解について触れました。この章では、実際にスマホ制限をどのように導入し、効果的に進めていくかについて具体的な方法をお伝えします。

1. ルール作りは親子で行う

スマホの利用を制限するためには、親が一方的にルールを押し付けるのではなく、子どもと一緒にルールを作ることが重要です。このプロセスを通じて、子ども自身が納得感を持ち、ルールを守りやすくなります。

具体的には、以下の手順を試してみてください。

  1. ゴールを共有する
    まず、「スマホの使い方を改善することで、健康的な生活を送る」「学校生活をスムーズに進める」という共通の目的を子どもと話し合います。子どもにとっても意味のあるゴールを見つけることで、協力的な姿勢を引き出すことができます。
  2. スマホの利用実態を把握する
    子どもが現在どのくらいスマホを使っているのか、どんなアプリやサービスを利用しているのかを一緒に確認します。これをベースに、無理のない範囲での制限を設定します。
  3. 具体的なルールを決める
    例えば以下のようなルールを話し合いながら決めていきます:
  • スマホを使っていい時間帯(例:20時以降は使用禁止)
  • 使用時間の上限(例:1日2時間まで)
  • 勉強や家族との時間を優先する条件(例:宿題が終わったら30分間使用可能)

ルールは「守らなければ罰がある」という形ではなく、「守ると何か良いことがある」というプラスの要素を盛り込むと効果的です。

2. ルールを実践するための工夫

ルールを決めたあと、次に重要なのはそれをいかに実践し、継続するかです。ここでは、実際に役立つ工夫をいくつかご紹介します。

1. スマホ管理アプリの活用
家庭用のスマホ管理アプリを活用することで、使用時間の制限や特定アプリのブロックを簡単に設定できます。これにより、「親が直接監視する」プレッシャーを軽減し、ルールを守りやすい環境を作ります。

2. スマホを使わない時間を楽しく過ごす代替案を用意
「スマホをやめなさい」ではなく、「スマホを使わない時間をこう過ごそう」と提案することがポイントです。家族での会話や外出、子どもが興味を持てる趣味を一緒に探してあげるとよいでしょう。

3. 親自身もルールを守る
子どもがスマホを制限されている中で、親が四六時中スマホをいじっている姿を見せると、「不公平だ」と感じてしまいます。親も「家族との時間はスマホを置く」といった行動を示すことで、子どもはルールに納得しやすくなります。

3. 子どもの反発にどう向き合うか

スマホの制限を導入すると、多くの子どもが「嫌だ」「なんで僕だけ?」と反発します。このとき、感情的に対応するのは避けなければなりません。

冷静に繰り返し理由を伝える
子どもはすぐに親の意図を理解できないことがあります。何度でも丁寧に、「健康を守るため」「生活習慣を整えるため」と伝え続けることが大切です。

反発を感情的に受け止めない
子どもが怒ったり泣いたりしても、それを否定するのではなく、「君がそう思うのもわかるよ」と共感を示します。そのうえで、「でもこのルールは必要なんだ」と一貫した姿勢を保つことが大事です。

柔軟性を持つ
ルールを完全に押し通すのではなく、子どもの状況に応じて調整する余地を残します。例えば、「テスト期間中は30分延長する」といった譲歩を示すことで、子どもも「親は自分を理解しようとしている」と感じられます。

スマホ制限について話し合う家族。

スマホ制限がもたらすメリット

ここまで、スマホ制限の必要性や具体的な方法についてお話ししましたが、それを実行することで子どもがどのようなメリットを得られるのかを考えてみましょう。これは、制限を嫌がる子どもに「やらされている感」ではなく、「やってよかった」と実感させるためにも重要なポイントです。

1. 健康的な生活リズムの回復

スマホ制限の最も大きな効果の一つは、睡眠時間が確保されることです。特に、夜遅くまでスマホを操作することで引き起こされていた「昼夜逆転」を解消できる可能性が高まります。

十分な睡眠は、子どもの身体と心に大きな恩恵をもたらします。例えば、朝起きられるようになることで学校に通う意欲がわき、生活にリズムが生まれます。また、睡眠によって学習に必要な脳の機能が回復し、集中力や記憶力も向上します。

一度健康的な生活リズムを取り戻すと、子ども自身がその快適さに気づき、「もう一度昼夜逆転の生活に戻りたい」とは思わなくなることが期待されます。

2. 学習や趣味に使える時間の増加

スマホを制限することで、それまで画面に費やしていた時間を別の活動に振り分けることができます。この時間を活用して、例えば以下のようなメリットが得られます:

  • 学業への集中
    スマホを触らない時間が増えることで、勉強に集中しやすくなります。多くの子どもが、スマホの通知やゲームの誘惑に負けて学習時間を削っていますが、それがなくなるだけで学業の成果に大きな変化が見られるでしょう。
  • 新しい趣味の発見
    スマホの代わりに、読書やスポーツ、音楽など新しい趣味を見つける機会が生まれます。特に、親子で楽しめる活動を取り入れることで、親子関係の強化にもつながります。
  • 自己肯定感の向上
    スマホ依存の状態では、子どもはゲームのスコアやSNSの「いいね」数で一喜一憂することがあります。しかし、それ以外の活動に時間を使うことで、他者に評価されることに頼らない自己肯定感を育むことができます。

3. 精神的な安定

スマホの過剰利用は、子どものメンタルヘルスにも影響を及ぼします。特にSNSにおいては、他人と自分を比較して落ち込む「SNS疲れ」や、メッセージにすぐ返信しなければならないプレッシャーが子どもに負担をかけています。

スマホを制限することで、これらのストレス要因が軽減されます。最初はスマホがないことで不安を感じるかもしれませんが、次第にその状態に慣れ、心の安定を取り戻すことができるでしょう。

また、スマホを使わない時間に親子の会話が増えることで、親が子どもの悩みを聞き出しやすくなり、不安や問題を早期に解決できる可能性も高まります。

要点必要な考えや行動
スマホ制限の重要性スマホの過剰使用は、生活習慣の乱れや健康被害、不登校の原因になり得る。
生活習慣の影響夜更かしや昼夜逆転は、集中力や免疫力の低下を招き、学校生活への支障を引き起こす。
スマホと不登校の関連SNSやゲーム依存は、現実逃避や学校へのストレス増加を引き起こすリスクがある。
反発への対応スマホ制限への反発は、自由の侵害と感じる子どもに多い反応。
ルール作りの方法子どもが納得するルールを作るには、親子での話し合いが必要不可欠。
親の姿勢と信頼関係子どもは親の行動を見て学ぶため、親自身のスマホ利用も見直す必要がある。

結び:スマホ制限は親子の絆を深めるチャンス

スマホの制限は、単に「子どもの行動を抑制する」ためのものではありません。むしろ、親子が共に成長し、新たな絆を築くための重要な機会だと考えるべきです。

多くの親御さんが、スマホの使い方を巡って子どもと衝突し、どうすれば良いか分からなくなることがあります。ですが、このプロセスを通じて、親は「子どもの心に寄り添う力」を養い、子どもは「ルールを守りながら自分をコントロールする力」を身につけていきます。こうした経験は、単なるスマホ制限を超えて、子どもが未来に向けて生きる上での基盤となるのです。

不登校が増え続けている3つの背景 2024年11月現在

不登校が増え続けている3つの背景

日本の小中学校で、不登校の児童生徒数が過去最多となったことが、今年の調査結果から明らかになりました。文部科学省の発表によると、小中学校での不登校児童生徒は346,482人に上り、全児童生徒の約3.7%を占めています。この数字は、前年から15.9%増加しており、不登校が社会全体で深刻化している現状を浮き彫りにしています。

私は、児童心理カウンセラーとして、日々不登校の子どもたちとその家族と向き合っています。不登校は、単なる「登校しない」という事象ではなく、その背後には多くの心理的・社会的要因が絡み合っています。見守るだけでは解決しない、不登校という問題に直面したとき、親御さんが理解し、対処すべき視点についてお伝えします。

この度、不登校が年々増え続ける事象について政府データを中心に調査を行い、分かったことは「教員不足」「女性の社会進出」「インターネットやゲームの普及」の3つの背景でした。


理由1. 教員不足がもたらす影響

不登校が増加し続ける背景には、学校現場での教員不足という重大な課題が横たわっています。文部科学省の最新データでは、2024年現在、全国の公立小中学校の教員充足率が低下していることが報告されています。特に、学級規模が大きい都市部や、教員の確保が難しい過疎地では、その影響が顕著です。加えて、臨時教員や非常勤講師に頼るケースも増え、学校現場の人材の質と安定性が揺らいでいる現状があります。

1. 教員不足の現実と現場への影響

教員不足により、現場では以下のような問題が生じています。

  • 学級経営の質の低下
    教員一人あたりが担う児童生徒数が増えることで、学級経営が行き届かなくなっています。児童生徒が個別に抱える問題や、学級内の対人関係のトラブルが見過ごされるケースが増えています。不登校に至る兆候が見られたとしても、教員が早期に気づき、適切なフォローを行うことが難しい状況です。
  • 心理的ケアの不足
    不登校の子どもたちの多くは、心の不安や抑うつを抱えています。文部科学省の調査では、不登校児童の約23.1%が不安や抑うつの相談を抱えていることがわかっています​。本来であれば、教員が日常的に声をかけたり、子どもの小さな変化に気づくことが重要です。しかし、教員が過剰な負担にさらされると、こうした心のケアをする余裕がなくなります。
  • 負担増による教員のメンタル不調
    教員自身も、業務量の増加や長時間労働によって疲弊しています。長時間労働が当たり前になり、教員のメンタル不調が増加していることが報告されています。こうした状況では、児童生徒の心理面や学力面でのサポートがおろそかになりがちです。

2. 教員不足の背景にある社会的要因

教員不足が深刻化している背景には、いくつかの社会的要因があります。

  • 若手教員の減少と高齢化
    教職はかつて「安定した職業」として人気がありましたが、昨今の過重労働や精神的負担の大きさから、教員を目指す若者が減少しています。また、すでに勤務している教員の高齢化も進み、現場では体力的に厳しい状況にある教員が多いことが課題となっています。
  • 待遇改善の遅れ
    教員の待遇や環境改善が他の職種と比べて進んでいない点も見逃せません。長時間労働に対する報酬が見合わないと感じる教員が多く、離職率が高まっています。
  • 制度的な問題
    教育政策の変遷により、学校現場には次々と新しい取り組みや課題が課されてきました。例えば、いじめや不登校対応、ICT教育の導入などは、現場の負担を増大させる一因です。教員が授業準備や児童生徒への直接対応に集中できる時間が減り、結果として問題を早期に察知しにくくなっています。

3. 教員不足が不登校に与える具体的な影響

不登校の増加と教員不足は密接に関連しています。ここでは、教員不足がどのように不登校に影響を与えるかを、具体例を交えて考察します。

特別な支援が必要な子どもたちへの配慮が欠ける
発達障害や情緒障害を抱える子どもたちにとって、適切な支援が得られないことは、不登校につながりやすい要因の一つです。こうした子どもたちは、通常よりも繊細なケアを必要としますが、教員が多忙な中で十分な配慮を行うことは難しくなっています。

「孤立」の兆候を見逃すリスク
ある不登校児童の事例では、学校で友人関係がうまくいかず、徐々に孤立していったものの、担任教員がそれに気づいたのは欠席が目立ち始めた後のことでした。本来であれば、児童が教室内で孤立感を覚え始めた段階で教員がフォローすることで、登校意欲を維持できた可能性がありました。しかし、教員が多忙を極める状況では、こうした微妙な変化を察知することが難しくなっています。

個別対応が不十分になる
不登校の要因は、一人ひとり異なります。「学業不振による自己肯定感の低下」「家庭内の問題」「いじめ」など、複雑な事情を抱える子どもたちに対し、個別に対応するには時間と労力が必要です。しかし、教員不足の現状では、児童生徒への個別対応が難しい状況が続いています。


理由2. 女性の社会進出と家庭環境の変化

近年、日本では女性の社会進出が目覚ましい進展を見せています。政府や企業による男女平等推進の取り組みや、女性の就業を支援する制度の拡充により、多くの女性が社会の第一線で活躍するようになりました。しかし、その一方で、家庭環境の変化が子どもたちに与える影響も少なからず指摘されています。不登校の増加も、こうした社会的変化と無関係ではありません。

1. 女性の社会進出と家庭環境の変化がもたらす影響

女性が職場で活躍する一方、家庭内の役割分担や子どもとの時間の過ごし方に変化が生じています。以下に、具体的な影響を挙げます。

  • 家庭でのコミュニケーション不足
    共働き世帯の増加により、子どもと親が一緒に過ごす時間が減少しています。厚生労働省の調査によると、共働き家庭は1980年代には約30%程度でしたが、2020年代には約70%を占めるようになっています。この背景には、女性の就労機会の拡大だけでなく、家計を支えるための現実的な必要性もあります。 しかしながら、親と子のコミュニケーション時間が減少すると、子どもが日常生活で抱える小さな不安や悩みが家庭内で解消されず、孤立感を深めてしまうことがあります。「お母さんに相談したいけど忙しそうで話しかけられない」といった声が、児童心理カウンセリングの現場でもしばしば聞かれます。
  • 家庭環境の変化によるストレスの増加
    親が仕事で多忙な場合、家庭での規則正しい生活リズムを維持することが難しくなりがちです。特に小学生や中学生といった成長過程の子どもたちにとって、家庭の安定感や安心感は、学校生活のストレスを軽減する大きな要素です。これが失われると、学校での人間関係や学業のプレッシャーが増幅され、不登校につながるリスクが高まります。

2. 不登校児童生徒に与える具体的な影響

家庭環境の変化が、子どもたちにどのような影響を与えているのか、不登校に至るまでの過程を実例で紹介します。

  • 「孤立感」との闘い
    子どもが不登校に至る一つの典型例として、「孤立感」が挙げられます。例えば、ある中学生の事例では、家庭内で親が仕事に追われており、放課後や休日も家族で過ごす時間がほとんどありませんでした。この子どもは学校でいじめに遭い始めましたが、家庭でその事実を話すことができず、次第に「誰にも理解されない」という感情を募らせました。その結果、学校生活への拒否感が強まり、不登校が長期化したのです。
  • 生活リズムの崩れ
    共働きの家庭では、どうしても子どもの生活リズムが乱れがちになる場合があります。親が帰宅する時間が遅くなることで、夕食の時間が遅れたり、夜更かしの習慣がついたりすることがあります。生活リズムの乱れは、不登校児童生徒の23.0%が抱える「朝起きられない」「昼夜逆転」といった問題を助長し、不登校の一因となることが調査からも明らかです。
  • 自己肯定感の低下
    忙しい親とのコミュニケーション不足により、子どもは「自分は親にとって重要ではないのでは」と感じることがあります。このような自己肯定感の低下は、学校での友人関係や学業への意欲にも影響を与え、不登校の背景要因となる可能性が高いです。

3. 女性の社会進出と家庭のバランスを取るために

女性の社会進出そのものは、決して否定されるべきものではありません。むしろ、社会の多様性を広げ、経済を活性化する大きな原動力となっています。しかしながら、子どもたちの健全な成長を守るためには、家庭と社会のバランスを取る工夫が必要です。

  • 家族の時間を確保する工夫
    たとえ短い時間でも、親が子どもとしっかり向き合うことが重要です。例えば、仕事から帰った後、子どもと一緒に夕食をとる、就寝前に今日あった出来事を話し合うといった習慣を取り入れるだけでも、子どもは「自分は大切にされている」と感じることができます。
  • パートナーシップの見直し
    子育てを母親一人に任せるのではなく、父親も積極的に家庭の役割を担うことが求められます。家事や育児の分担を進めることで、母親の負担を軽減し、家庭全体が安定した環境を維持することが可能となります。

4. 女性の社会進出と不登校問題の共存を目指して

女性の社会進出と不登校の問題は、どちらも現代日本が抱える重要なテーマです。一方を選ぶのではなく、両者が共存できる社会を目指すことが、私たちの目指すべき未来ではないでしょうか。

親が子どもにかけられる時間が少なくなったとしても、その分「質の高い時間」を共有することができます。親子のつながりを深め、子どもの不安を軽減する努力は、不登校予防に直結します。そして、家庭の中での「居場所」を強く感じられる子どもたちは、たとえ学校生活で困難に直面しても、その困難を乗り越える力を持つことができるのです。

家庭環境の変化を前向きに捉え、親が主体的に家庭と仕事のバランスを取る工夫をすること。それが、女性の社会進出と子どもたちの健全な成長を両立させる鍵となります。


参考:令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果より


理由3. インターネットやゲームの普及による影響

現代の子どもたちの生活において、インターネットやゲームは欠かせない存在となっています。一方で、それらの過剰な使用が子どもたちの心身や生活リズムに悪影響を及ぼし、不登校の原因の一つになり得ることが指摘されています。2024年現在の統計やカウンセリング現場での事例から、インターネットやゲームの普及が不登校にどのように影響しているかを詳しく考察します。


1. インターネットとゲームが子どもに与える影響

インターネットやゲームは、現代の子どもたちにとって重要な娯楽や情報収集の手段であり、時には学びのツールとしても活用されています。しかし、その便利さが裏目に出る場合も少なくありません。

  • 依存症への懸念
    日本小児科学会の報告によると、近年、ゲーム依存やインターネット依存の傾向が子どもたちの間で増加しています。依存症の兆候として、時間の管理ができなくなり、生活全体がインターネットやゲーム中心になってしまうケースが挙げられます。2024年現在、不登校児童生徒の中には、ネットやゲームに没頭することで現実から逃避し、学校に行けなくなるケースが増加しているとされています。
  • オンラインコミュニケーションによるストレス
    SNSやオンラインゲームでは、子どもたちが他者とつながる新たな方法を提供しますが、これが逆にストレスの原因となることもあります。例えば、「SNSでの友人関係のトラブル」や「オンラインゲーム内でのいじめ」など、ネット上での人間関係が原因で不登校に至る子どもも少なくありません。
  • 夜更かしや生活リズムの乱れ
    カウンセリング現場では、夜遅くまでゲームやインターネットを利用し、翌朝起きられないという相談が多く寄せられます。不登校児童生徒の23.0%が生活リズムの乱れを訴えていることからも、ネットやゲームの過剰な使用がその一因であることは明らかです。

2. ネットやゲームの普及が不登校につながるプロセス

インターネットやゲームの普及が不登校に至るまでのプロセスを具体的に見ていきます。

  • 逃避としてのデジタル依存
    学校でいじめや学業のプレッシャーに直面している子どもにとって、ネットやゲームは「逃げ場」として機能することがあります。例えば、学校で孤立感を覚える子どもが、オンラインゲームで「仮想の友人」と関わりながら安心感を得るケースがあります。しかし、それが長時間化すると現実世界との関わりが希薄になり、登校意欲を失うことが少なくありません。
  • ネット上の人間関係におけるトラブル
    SNSやオンラインゲームでは、リアルな学校生活以上に人間関係のトラブルが発生しやすい面があります。例えば、SNS上で仲間外れや誹謗中傷を受けた子どもが、現実の学校生活にも影響を及ぼし、不登校に至るケースが見られます。文部科学省の調査では、不登校児童の約13.3%が友人関係に関する問題を抱えていることが明らかになっています。
  • デジタルデバイスがもたらす孤立感
    スマートフォンやタブレットが普及したことで、家庭内での親子間のコミュニケーションが減少する傾向にあります。親が忙しい時間を埋める形で子どもがゲームやネットに没頭し、その結果、家族との絆が希薄になりがちです。このような孤立感が不登校につながることもあります。

3. 解決に向けた具体的な対策

インターネットやゲームの普及を完全に否定するのではなく、適切に管理し、子どもたちの生活に良い形で取り入れることが重要です。以下に具体的なアプローチを示します。

  • 時間管理のルールを設定する
    子どもがインターネットやゲームを利用する時間に制限を設けることは、不登校予防の第一歩です。例えば、平日は1時間、休日は2時間といった具体的なルールを親子で話し合い、納得の上で設定することが効果的です。また、就寝時間を決め、デバイスを夜間には使用できないようにするルールも推奨されます。
  • 親子間でデジタル利用を共有する
    子どもがどのようなゲームやSNSを利用しているかを親が把握することは、重要な対策です。一緒にゲームをプレイしたり、SNSの使い方について話し合ったりすることで、親子の絆を深めると同時に、子どもがトラブルに巻き込まれるリスクを軽減することができます。
  • 現実世界での居場所を作る
    子どもが現実世界で安心して過ごせる居場所を提供することも大切です。学校外の活動や趣味を通じて友人関係を築く機会を増やすことで、デジタル依存からの脱却を支援できます。地域のクラブ活動など、ネット以外での社会との接点を作ることが有効です。

4. デジタル時代における不登校問題の克服

インターネットやゲームが不登校の引き金になることもあれば、それらを活用して不登校児童を支援する手段になることもあります。例えば、オンライン授業やネットを活用したカウンセリングサービスは、子どもたちが学校とつながり続けるための有力な手段です。

しかし、親や教育者が目を光らせるべきなのは、子どもがネットやゲームを利用する「目的」と「時間」です。それが適切でない場合、デジタル環境が子どもを孤立させる原因となることを認識し、必要に応じてサポートを提供することが大切です。

デジタル時代の子どもたちにとって、インターネットやゲームは避けられない存在です。だからこそ、親や教育者がその影響を正しく理解し、子どもが健全に利用できる環境を整える努力が必要です。それが、不登校予防の大きな一歩となるのです。


結びに代えて:変わりゆく時代と不登校に向き合うために

不登校が過去最多を記録する現代、日本の教育環境と社会全体が、大きな変化の只中にあることを強く感じます。教員不足、女性の社会進出による家庭環境の変化、そしてインターネットやゲームの普及。これらの要因が複雑に絡み合い、子どもたちの生活や心にさまざまな影響を及ぼしています。

不登校は単なる「学校に行けない」という現象ではなく、時代を反映した社会全体の問題です。そしてその解決には、私たち大人一人ひとりが、子どもたちに何を与え、どのように寄り添うべきかを考え、行動することが求められます。


不登校への理解を深め、解決へつなげる

本稿で取り上げたように、不登校はその背景に多くの原因を含んでいます。教員不足による学校現場の負担増は、子どもたちの微細な変化に気づく機会を減少させています。女性の社会進出が進む中で、家庭環境が多忙化し、子どもたちが家庭で安心できる居場所を見つけられないことも問題の一因です。さらに、インターネットやゲームの普及による生活リズムの乱れやオンラインでの孤立感は、不登校を助長する要因となっています。

しかし、これらは同時に、私たちが解決策を考え、子どもたちの成長を支えるためのヒントを与えてくれる問題でもあります。社会全体でこれらの課題に向き合うことで、子どもたちが再び学校や社会とつながりを持てる環境をつくることができるはずです。


不登校は「成長のプロセス」として捉える

不登校になった子どもたちに対して、親御さんが「学校に行くことこそが正しい」という一面的な考えにとらわれる必要はありません。不登校は、子どもが自分の内面や環境とのバランスを取ろうとする一つのプロセスと捉えることができます。このプロセスを通じて、子どもは自分にとって必要なものや、自分の価値観に気づく機会を得ることができるかもしれません。

「どうして学校に行けないのか?」と問いかけるよりも、「何に悩んでいるのか?」「どうすれば安心できるのか?」と寄り添う姿勢が、子どもの心を解きほぐす鍵となります。


親としてできる最初の一歩

親御さんにできることは、必ずしも特別なことではありません。日常生活の中で、子どもの話を聞く時間を作り、子どもに「大切にされている」という感覚を与えることが何より重要です。家庭が子どもにとっての安全基地となれば、学校や社会との接点を再び持つ勇気が芽生えることもあります。

また、必要であれば学校や専門機関に相談することも大切です。不登校は一人で抱え込むべき問題ではありません。教育支援センターやスクールカウンセラー、地域のNPOなど、多くのサポート体制が存在します。これらを積極的に活用し、親もまた子どもと一緒に支援を受けながら向き合う姿勢が求められます。


子どもたちの未来のために

不登校が増加している現状は、確かに深刻です。しかし、それは同時に、私たちが子どもたちの声に耳を傾け、彼らが成長する過程を支える新たな機会を示しています。社会が変化する中で、親や教育者ができることは、子どもたちの「困難」と「可能性」を正しく理解し、支援の手を差し伸べることです。

子どもたちが自分のペースで学校生活に戻り、社会の一員として成長していける未来を信じて、私たちは歩みを止めることなく支援を続けていきたいと思います。そのための一歩として、ぜひ今日、子どもに向けて優しい言葉をかけてみてください。その一言が、子どもの心に小さな光を灯すきっかけになるかもしれません。

不登校になった子どもへの具体的な声のかけ方

不登校になった子どもへの具体的な声のかけ方

はじめに:不登校を「親としてどう向き合うか」

「うちの子、学校に行かなくなったんです。」
こう語り始める親御さんの声を、私はこれまで何度も耳にしてきました。その声には、不安や焦り、そしてどこか自分を責めるような響きが含まれています。しかし、子どもが不登校になる背景には必ずしも単純な理由だけがあるわけではありません。そしてその解決も、単純な「これをすればいい」というものではないのです。

私たちの提供する「ToCo」のサービスでは、「不登校の子どもが抱える本当の理由を掘り下げること」から始めます。ここで大切なのは、親がその理由を知り、それに適切に向き合う姿勢を持つことです。「学校に行かなくてもいい」とただ見守るだけでは、多くの場合、不登校が長期化してしまいます。一方で、急かしたり、強引に解決しようとするアプローチも子どもを追い詰める結果となります。

本稿では、不登校になった子どもへの具体的な声のかけ方について、心理カウンセラーとしての視点を交えてお話しします。「どんな言葉をかけたらいいのか」「どんな対応が子どもにとって助けになるのか」という具体的なヒントを見つけていただければ幸いです。


1. 「不登校は子どものサイン」:見えている現象の裏側に目を向ける

不登校は、子どもが自分の内面で何かに苦しんでいるサインです。それが明確に表れる形として「学校に行きたくない」があります。ですが、親御さんにとってこの状況は非常にわかりにくいことがあります。例えば、子どもが「学校が嫌い」と言ったとしても、それが人間関係の問題なのか、勉強のプレッシャーなのか、はたまた家庭内の何かが影響しているのか、一筋縄ではいかないことが多いのです。

「どうして行きたくないの?」は禁句

「どうして学校に行きたくないの?」と聞きたくなる気持ちは、とてもよくわかります。しかし、この問いかけは、子どもにとって重荷になりやすいものです。「どうして」と問われることで、子どもは理由を説明しなければならないと感じます。ですが、本人もその理由を整理できていないことがほとんどです。さらに、親が答えを求める姿勢は、子どもに「説明できない自分はおかしい」という自己否定感を生むことさえあります。

ここでのポイントは、子どもの「行きたくない」という言葉を否定せずに受け止めることです。

会話例1:「行きたくないんだね」と受け止める

子ども:「学校行きたくない。」
親:「そうなんだね、行きたくないんだね。」
子ども:「うん…。」
親:「どんな感じなのか、少しだけ教えてもらえたら嬉しいな。でも話したくなかったらそれでも大丈夫だよ。」

このように「受け止める」「無理に聞き出そうとしない」ことで、子どもが少しずつ心を開ける状態を作り出します。


2. 子どもの「心の声」を見逃さない

不登校に至る子どもたちの心の中には、さまざまな葛藤があります。それをすべて言葉で表現するのは難しいため、親としては子どもの行動や表情、態度から「心の声」を読み取ることが求められます。

表面だけを見ると逆効果になる場合も

例えば、子どもが毎日ゲームをしていたり、YouTubeを見続けているとき、親は「怠けている」「好き勝手している」と感じるかもしれません。ですが、その背景には「現実から逃げたい」「自分を守るために何かに没頭している」という心情が隠れていることが多いです。

会話例2:無関心ではなく、優しい観察を

子どもがゲームに夢中になっている。
親:「今のゲーム、すごく面白そうだね。どんなところが楽しいの?」
子ども:「これ、ストーリーがすごいんだよ。」
親:「そうなんだ。どんな話か教えてくれる?」
子ども:「うん、これはね…」

このように、子どもの興味を否定せず、共感を持って接することで「自分は受け入れられている」という安心感を育むことができます。


3. 「否定」よりも「共感」でつなぐ

親は時に、子どもの言動を否定したくなることがあります。「学校に行かないなんて、ダメだ」「ちゃんと頑張らないと」といった言葉は、親自身の焦りや不安から生まれます。ですが、これらの言葉は子どもにとって大きなダメージを与える可能性があります。

子どもを「丸ごと受け入れる」姿勢

不登校の子どもたちは、自分を責めている場合が多いです。「行けない自分はダメだ」と思い込んでいることも少なくありません。そんなとき、親が子どもを否定する言葉をかけると、子どもの自己否定感をさらに強める結果となります。

会話例3:共感しながら希望を伝える

子ども:「どうせ学校行っても無理だし。」
親:「そう思っているんだね。無理だって感じてるの、すごく辛いよね。」
子ども:「うん…。」
親:「でもね、お母さんは、あなたには無理じゃない時が来るって信じてるよ。今はちょっと休んでもいいけど、一緒に少しずつ考えていこうね。」


4. 「具体的な小さな一歩」を一緒に考える

不登校の解決には、「具体的な小さな一歩」を踏み出すことが重要です。いきなり「明日から学校に行こう」と言うのではなく、「今日は1時間だけ登校してみる」「学校の近くを一緒に歩いてみる」といった小さなステップを提案することで、子どもが挑戦しやすくなります。


会話例4:選択肢を提案する

子ども:「学校なんてもう嫌だ。」
親:「そう感じるんだね。今すぐ行けなくてもいいけど、ちょっとだけ学校の近くまで行ってみるとか、一緒にやってみない?」
子ども:「うーん、ちょっとだけなら…。」
親:「ありがとう。一緒に頑張ってみようね。」


5. 「待つ」ことと「進む」ことのバランス

不登校の子どもへの対応で重要なのは、「待つこと」と「進むこと」のバランスを取ることです。「いつか子どもは自分で立ち直る」と信じて完全に放任するのは危険ですが、一方で親が焦って無理に解決を急ぐと、子どもの心にさらなる負担をかけてしまいます。このバランス感覚を保つためには、親自身が冷静さを失わないことが不可欠です。

「待つ」ことの意味

「待つ」というのは、子どものペースを尊重することです。子どもが自分の感情を整理し、自分なりのペースで前を向けるようにするには、十分な時間が必要です。「学校に行きたくない」と言っている子どもに対し、親がすぐに結論を急いでしまうと、子どもはますます壁を感じてしまいます。

会話例5-1:安心感を伝えつつ見守る

子ども:「もう学校のことは考えたくない。」
親:「そう感じるんだね。今は無理しないで、学校のことを考えない時間を作るのも大事だよ。お母さんは、あなたがどんなペースでも応援しているからね。」
子ども:「うん…。」

子どもが何も話さなかったり、素っ気ない態度を取ったとしても、親が根気強く同じ姿勢を貫くことで、子どもは「話しても大丈夫なんだ」と感じるようになります。

「進む」ことの意味

一方で、ただ「待つ」だけではなく、小さな一歩を促すことも大切です。不登校の原因がどんなものであれ、最終的には社会との接点を回復することが目標となります。そのためには、適切なタイミングで子どもを促し、小さな挑戦を後押しする必要があります。

会話例5-2:進む選択肢を一緒に考える

子ども:「学校なんてもう行かなくてもいいよね?」
親:「そう感じているんだね。でもね、学校だけが選択肢じゃないけど、少しずつ何かに挑戦することは大事だと思うんだ。一緒に何ができるか考えてみようか?」


6. 不登校の背景にある「心の声」を掘り下げる

子どもが不登校になる背景には、いくつもの要因が絡み合っています。それを解きほぐすためには、「心の声」に耳を傾ける姿勢が必要です。ここで大切なのは、「親の価値観」ではなく、「子どもの価値観」を理解することです。

心の声を探るポイント

  1. 子どもの行動に隠されたメッセージ
     子どもの言動には必ず理由があります。例えば、急に食欲がなくなったり、反対に過剰に食べるようになった場合、それはストレスの表れかもしれません。
  2. 子どもの趣味や興味に目を向ける
     不登校中に子どもが夢中になることは、心の支えである場合が多いです。それを否定するのではなく、理解しようとする姿勢が大切です。
  3. 家庭内での雰囲気を見直す
     家庭の中で安心感を持てているかどうかも重要です。親の喧嘩や過剰な期待が、知らず知らずのうちに子どもに影響を与えていることもあります。

会話例6:心の声を探る問いかけ

子ども:「何もしたくない。」
親:「そうなんだね。何もしたくないときって、どんな気持ちになる?」
子ども:「うーん…。なんか、ずっとモヤモヤしてる感じ。」
親:「そうか、モヤモヤしてるんだね。その感じ、もう少しだけ教えてもらってもいいかな?」

このように、子どもの言葉を否定せず、さらに掘り下げて聞くことで、子ども自身が自分の気持ちを整理するきっかけを作ることができます。


7. 親自身のケアも忘れない

子どもが不登校になると、親自身も多大なストレスを抱えるものです。「自分の育て方が悪かったのでは」「どうしたら解決できるのか」と悩み、精神的に追い詰められることがあります。ですが、親が心身ともに疲れてしまっては、子どもを支えることは難しくなります。

親ができるセルフケアのポイント

  1. 一人で悩まない
     信頼できる第三者や専門家に相談することは、心の負担を軽くします。
  2. 自分を責めない
     不登校は誰のせいでもありません。親自身を責める気持ちは、結果的に子どもにも伝わってしまいます。
  3. リラックスできる時間を作る
     趣味や散歩など、自分をリフレッシュさせる時間を意識的に持つことで、冷静に子どもに向き合う力が生まれます。

おわりに:未来はいつでも作り直せる

不登校は、子どもと親にとって大きな試練です。しかし、それは子どもが自分の人生を見つめ直し、より良い未来を築くための重要な時間でもあります。親としては、焦らず、寄り添い、そして必要なときには専門家の力を借りながら、一歩ずつ進んでいきましょう。

不登校を引きこもりにしないための家庭で出来る5つの工夫

不登校を引きこもりにしないための、家庭で出来る5つの工夫

不登校の子どもを持つ親御さんにとって、その状況は大きな試練です。特に、子どもが家からも出なくなり、いわゆる「引きこもり」状態になることを恐れている方も多いのではないでしょうか。私たちが提供する「ToCo」サービスでも、最初にご相談をいただく際には、「どうすればこの状態を悪化させないで済むのか」といった切実な声をよく耳にします。

私自身、児童心理カウンセラーとしてこれまで数多くのケースを見てきましたが、引きこもりを防ぎ、不登校からの回復を支援するには、子どもの「自尊心」を回復させることが最も重要であると確信しています。ただ待つだけでは、不登校の状態は長引きやすく、子どもにとっても親にとっても辛い日々が続いてしまいます。そこで、今回は家庭で実践できる5つの工夫をお伝えします。どれも特別な道具や環境を必要とせず、今日から始められるものばかりです。


工夫①「食事を一緒にする」

食卓は、家族が顔を合わせる貴重な場です。特に不登校の子どもにとって、自室に閉じこもる生活が続くと、家族とのつながりすら希薄になりがちです。そのような時こそ、毎日の食事を「一緒にすること」が力を発揮します。

食事には、単なる栄養補給以上の意味があります。目の前に並ぶ食べ物が、子どもの心の壁を少しずつ崩していくことがあるのです。たとえば、子どもが好きな料理を一緒に作ってみるのも良いでしょう。「今日の献立は何がいい?」と尋ねたり、料理を手伝ってもらったりするだけでも、自然な形で会話が生まれます。特に、不登校であることに対するプレッシャーや批判を感じさせずに話しかけることがポイントです。

親が意識すべき点は、子どもを「責める」ような雰囲気を作らないことです。「どうして学校に行かないの?」などの質問は、子どもにとってストレスになります。それよりも、「今日のカレー、おいしくできたね」「このお味噌汁、体が温まるね」といった何気ない会話が、子どもとの関係を温める第一歩になります。

工夫②「手伝いをさせる」

不登校が続くと、子どもは「自分なんて何もできない」という無力感に苛まれることがあります。この気持ちは、引きこもりを引き起こす大きな要因のひとつです。ここで重要なのが、家庭の中での「役割」を与えることです。その最もシンプルな形が「手伝いをさせる」という工夫です。

例えば、食卓の準備や片付け、洗濯物を干すといった簡単な家事をお願いしてみましょう。「お手伝いをしてくれてありがとう」と感謝を伝えることが何より大切です。この小さな行動の積み重ねが、子どもにとって「自分は役に立っている」という感覚を育て、自尊心を回復させる助けになります。

また、「上手にできるかどうか」にはこだわらないでください。たとえ不器用であっても、何かをやろうとする意欲を称賛する姿勢が、子どもの心を動かします。「お皿を洗ってくれたんだね、すごい!」といった言葉がけ一つで、子どもの自己評価は少しずつ上向きになります。

工夫③「一緒に外に出る」

引きこもりの予防において、外の空気を吸うことは非常に効果的です。しかし、「外に出なさい」と命令するだけでは、子どもはますます抵抗感を強めてしまいます。だからこそ、「一緒に外に出る」工夫が必要です。

まずは短時間、身近な場所から始めましょう。例えば、「近くのスーパーに一緒に行こう」といった軽い提案が良いです。このとき、子どもが嫌がった場合には無理強いしないことが肝心です。重要なのは、外出を「楽しさ」と結びつけることです。季節の変化を感じられる公園散歩や、子どもの興味を引く場所を訪れるのも効果的です。

また、子どもが少しでも外出できたら、その努力を褒めてあげてください。「今日は一緒に外に出られて嬉しかった」と感謝を伝えることで、次への意欲が湧いてきます。外に出る習慣がつくと、徐々に社会とのつながりも取り戻すことができます。

参考記事:不登校の子どもが始めやすい外出:一歩ずつ踏み出すためのヒント

工夫④「小さなことを褒める」

子どもが不登校になると、親としてはつい「もっと頑張ってほしい」「学校に戻ってほしい」と大きな期待をかけてしまいがちです。しかし、子どもはそのプレッシャーに耐えられず、かえって心を閉ざしてしまうことがあります。だからこそ、小さなことでも積極的に褒める習慣を持つことが大切です。

たとえば、子どもが朝起きられたら、「早起きできて偉いね」と声をかける。宿題の1ページでも手を付けたら、「やろうとしたことがすごいね」と称賛する。このような具体的な褒め言葉が、子どもに「できる自分」を意識させ、自信を取り戻すきっかけになります。

注意すべき点は、結果だけを褒めるのではなく、過程に目を向けることです。「最後までやり遂げられなくても、やろうとしたことが素晴らしい」といった声がけが、子どもに安心感を与えます。

工夫⑤「子どもを避けない」

不登校や引きこもりの問題が長引くと、親自身が子どもにどう接すればいいのか分からなくなり、距離を取ってしまうケースがあります。しかし、これが子どもにとっては「自分は愛されていない」という誤解につながり、さらに孤立を深めてしまいます。

「子どもを避けない」とは、積極的に干渉することではありません。むしろ、子どもの存在を受け入れ、穏やかに寄り添う姿勢を持つことです。たとえば、子どもが話しかけてきたら、手を止めて話を聞く。視線を合わせて、「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを伝えることが重要です。

また、親自身の感情の安定も大切です。親がイライラしていると、子どもにもその不安定さが伝わり、ますます心を閉ざしてしまいます。適度にリラックスする時間を持ち、自分を労わることも忘れないでください。


工夫狙い必要な行動
食事を一緒にする家族とのつながりを取り戻し、安心感を与える。一緒に食卓を囲み、子どもの好きな料理を作り、自然な会話を心がける。
手伝いをさせる子どもの役立つ感覚を育み、自尊心を回復させる。簡単な家事を依頼し、「ありがとう」「助かったよ」と感謝を伝える。
一緒に外に出る外の空気に触れ、閉じこもりを防ぐきっかけを作る。近所の散歩やスーパーなど、短時間で気軽な外出から始め、楽しさを伝える。
小さなことを褒める小さな成功体験を積み重ね、自己肯定感を高める。行動の結果より過程を重視し、具体的な言葉で子どもの努力を称賛する。
子どもを避けない子どもに愛されている実感を与え、孤立を防ぐ。穏やかに寄り添い、子どもが話しかけてきたら手を止めて耳を傾ける。

結論:子どもの「心の回復」は家庭から

不登校や引きこもりを防ぐための家庭での工夫は、どれも難しいものではありません。ただし、それを継続するには、親の根気と子どもへの深い理解が必要です。子どもの自尊心を少しずつ回復させ、社会とのつながりを取り戻すために、今回ご紹介した5つの方法をぜひ試してみてください。

「ToCo」では、不登校の背景にある原因を共に探り、一人ひとりに合った支援を提案しています。ただ見守るだけでは解決しない問題に対し、親子で前向きな一歩を踏み出すお手伝いをしています。ぜひ、私たちに相談しながら、一緒に子どもの未来を切り開いていきましょう。

不登校予防としてのサードプレイス

はじめに

不登校や引きこもりの支援に携わる者として日々多くの親子と接している中で、ひとつ痛感することがあります。それは、子どもが自分の居場所を学校だけに限定してしまうと、その「唯一の場所」でうまくいかなかったときのダメージが大きいということです。学校に行けなくなった子どもたちは、家族との関係がぎこちなくなり、孤独感や無力感にさいなまれてしまいがちです。私自身も、子どもが不登校になり、その対応に悩んだ経験を持つ親として、その苦しさを身をもって理解しています。

ToCoでは子どもたちの不登校が続く原因を特定し、それに対処するアプローチを重視しています。ToCoの考え方は、「ただ見守るだけではなく、適切な対処が必要である」というものです。多くの親が「見守るしかない」と感じがちですが、不登校の本質的な解決にはそれ以上の支援が求められます。学校以外の「サードプレイス」、つまり塾や習い事などの居場所を子どもに持たせることで、不登校の予防や改善に大きな役割を果たすことができるのです。


不登校を防ぐための「サードプレイス」とは?

「サードプレイス」という言葉は、家庭(ファーストプレイス)や学校(セカンドプレイス)以外の第三の居場所を意味します。子どもが学校に行けなくなったときに、そこに代わる居場所としての「サードプレイス」は、非常に大きな意味を持ちます。学校では必ずしも評価されない個性や才能が評価される場であり、また学校での人間関係とは異なる価値観や生き方を学べる場でもあります。特に、塾や習い事など、勉強や趣味の分野で仲間と過ごせる場所は、子どもが「自分にもできることがある」という自己肯定感を持つ機会を増やします。

不登校になりやすい子どもたちの中には、学校において「自己肯定感の低さ」や「不安感」を抱えやすい傾向が見られます。学校での人間関係にうまくなじめないこともあれば、勉強や部活動でのプレッシャーに耐えられなくなってしまうこともあります。こうした背景の中で、塾や習い事といったサードプレイスが、その「逃げ場」としてだけでなく、「挑戦する場」としての役割を果たすのです。

また、サードプレイスに通うことで、子どもたちは異なる価値観を持つ大人や仲間と触れ合い、「学校以外にも多様な世界がある」と実感できるようになります。これは将来、社会に出たときに非常に大きな財産となります。つまり、サードプレイスは、不登校予防だけでなく、子どもの人間的成長や生きる力の育成にも寄与するのです。


学校だけが「唯一の世界」になることの危険性

親としては、学校でうまくやってほしい、そこに適応してほしいという思いが強くなるものです。しかし、学校だけを「唯一の世界」として子どもに受け入れさせてしまうと、そこでうまくいかなかったときに子どもが感じる失望感や挫折感は計り知れません。学校でつまずいた子どもたちは、他に居場所がなければ、孤独感に押しつぶされてしまうのです。

子どもが学校に行けなくなると、家庭での関係も悪化しやすくなります。子どもが部屋に閉じこもってしまい、親との会話が減り、お互いに気を遣いすぎて本音で話すことができなくなってしまう家庭は少なくありません。こうした状況が続くと、子どもはますます「自分はダメな存在だ」という自己否定感に陥り、不登校が長引く原因にもなりかねません。

そのため、家庭や学校以外に「居場所」を確保することは、不登校予防において極めて重要です。学校に居場所を見つけられない子どもたちにとって、サードプレイスは救いの手となりうるのです。

親ができること:サードプレイスの選択と支援

サードプレイスの確保にあたっては、親が適切な選択を行い、子どもが安心して通えるよう支援することが重要です。例えば、塾や習い事など、子どもの興味や関心を引き出せる場所を見つけることが大切です。勉強に対する興味がある場合は学習塾、スポーツに興味がある場合は地域のスポーツクラブといった具合に、子どもが自然とその場に行きたいと思える場所を見つけてあげましょう。

もちろん、サードプレイスに通わせることが万能な解決策ではありません。場合によっては、家庭や学校との連携が必要になることもあります。特に不登校が続いている場合、家庭内での支援だけでは解決が難しいことも多々あります。私たちToCoでは、不登校が続く要因を特定し、それに対する具体的な対処方法を親とともに考え、実践的な支援を提供しています。不登校の本質的な解決には、こうした専門的なアプローチが欠かせません。


ToCoの再登校支援サービスが目指すもの

ToCoの再登校支援サービスは、不登校の要因を明確にし、子ども一人ひとりに合った解決方法を見つけ出すことを重視しています。多くの家庭では、「いつかまた学校に行けるように」と見守ることしかできない状況に陥りがちですが、見守るだけでは不登校の状態は長引きやすいのです。

ToCoの支援では、不登校になった「きっかけ」ではなく、不登校が続いてしまう「要因」に目を向け、そこに適切な対処を行います。これは、従来のカウンセリングとは異なるアプローチです。具体的には、認知行動療法を用いた再登校支援プログラムを通じて、子どもが抱える不安や課題に対処し、自ら解決できる力を養います。また、AIを活用した診断により、個々の子どもに最適な対処法を提供しています。このようにして、子どもが自立し、自分の力で不登校の問題を乗り越えていける環境を整えることができるのです。


学校外の「居場所」が子どもの成長に果たす役割

サードプレイスは、子どもがさまざまな価値観や考え方に触れることができる場です。学校という単一の環境に留まると、どうしても同じような価値観に染まりがちですが、塾や習い事で出会う他の大人や子どもたちとの交流は、柔軟な視点と自己肯定感を育てます。特に、子どもが自分の興味を活かし、安心して試行錯誤できる場所があることで、「ここでなら自分らしくいられる」という自信が芽生えるのです。

実際、学校に行けなくなった子どもたちがサードプレイスに通い始めると、自分に自信を持てるようになることが多く、再登校へのステップとして大きな助けになることがよくあります。これは、不登校になりやすい子どもたちが持つ「自己否定感」や「他者からの評価への過度な不安感」に対して、サードプレイスが心理的な安定を与えてくれるためです。

学校以外の世界を知ることの利点

親として、子どもが学校で勉強し、成長してほしいと思うのは自然なことです。しかし、学校だけにすべての成長が依存してしまうと、子どもは社会に出たときに「学校以外の価値観」に戸惑うことになります。サードプレイスでは、多様な価値観や異なる生活様式を学ぶことができ、将来の多様な人間関係や職場環境に適応する力を養うことができます。学校だけでは学べない社会性や生き抜く力が、こうした場で自然と身につくのです。

また、サードプレイスを通じて出会う大人たちは、学校の先生とは異なる視点で子どもを見てくれます。塾の講師や習い事の指導者は、子どもの学力やスキルに注目するだけでなく、時にはその「人間性」を尊重し、異なる角度からのサポートを提供します。これは、子どもにとって「自分は見守られている」「自分は認められている」と感じられる貴重な体験です。


結論

学校での学びと成長は確かに重要ですが、子どもにとっての「唯一の世界」が学校であることは危険です。サードプレイスとしての塾や習い事を通じて、多様な価値観や新しい挑戦を経験することは、不登校予防に大きな効果をもたらします。そして、必要であれば、ToCoの再登校支援サービスなどを活用し、専門的なサポートを受けることで、子どもが自分の力で未来を切り開いていけるよう手助けしましょう。

自分の子どもが学校を休んだ日の対応

先日、私の小学生の子どもが風邪で学校を休みました。最初の日は単純に体調不良でしたが、翌朝になると別の問題が浮上しました。「昨日ズル休みしたと思われているかも…」と、子どもが再び登校を渋りだしたのです。私は、普段から不登校や引きこもりの支援に携わる仕事柄、この小さな躊躇が「不登校の芽」になる可能性もあると感じました。実際、不登校の多くは些細なきっかけから始まることが少なくありません。

今回、この経験から親としても専門家としても学び得たことを、皆さまにお伝えしたいと思います。

1. 「ズル休みしたと思われたくない」その小さな不安

小学生の子どもにとって、クラスの同調圧力や「ズル休み」への周囲の評価は意外と大きな負担になります。特に「周りと同じであること」に敏感な年代のため、「自分だけ違う行動を取った」という事実が翌日以降の登校に対するハードルになりやすいのです。

子どもが「ズル休み」と見なされることに不安を抱く姿を目の当たりにした時、私はこの小さな不安が、将来的な不登校のリスク要因になると直感しました。私が勤めるToCo株式会社でも、「見守るだけ」ではその不安が消えず、不登校が固定化されるケースが多いことが分かっています。問題を早期に見極め、適切な対処をすることが大切です。

2. 思い悩んだ末の「1日休ませる」という選択

子どもの不安を取り除くためには、どうしたら良いかと悩みました。ここで私がとったのは、担任の先生と相談して、あえてもう1日休ませるという選択でした。最初は「学校に行きたくないから」と休ませてしまうと、これが一度きりでは済まなくなり、繰り返しになってしまうのではないかと心配しました。しかし、そのまま無理に登校させて、子どもが負のイメージを抱えたまま学校に行くのも逆効果です。

この選択が正しかったかどうか、私は自信を持って選択したわけではありません。しかし、親として「今の気持ちを尊重するけれども、学校から完全に逃げるわけではない」という中立的なスタンスを保つことを大切にしました。最初から簡単に休ませるとズルズルと不登校につながりやすくなりますが、今の気持ちを尊重することで、子どもも安心できる面があります。

3. 勉強することを条件に「休み=楽しい」を防ぐ

不登校の問題に関してToCoでは、休んだ際の「時間の過ごし方」に注目しています。休むといっても、完全に「自由」や「楽しい時間」にしてしまうと、「学校に行かない=好きなことができる」という認識を子どもが持ってしまう危険があります。

そこで、子どもに「病気ではないから学校と同じように勉強すること」を約束させました。具体的には、私がリモートワークをしているリビングで、隣に子どもが座り、宿題や学習ドリルを進めるようにしました。こうすることで、「学校に行く代わりにリビングで勉強する」というスタンスを取りつつ、子どもが「休み=楽しい時間」と誤解しないようにしました。これは個人的に「マシダ作戦」(≒これなら学校に行ったほうがマシダ)と名付けています。

子どもはリビングで私と一緒に机に向かい、意外と楽しそうに勉強をしていました。子どもが集中できる環境を保ち、少しでもリズムが崩れないように心がけました。このように、「休み=楽しい」という誤った認識を防ぐことが、再び学校へ戻るための小さな一歩であることを実感しました。

4. 次の日

翌朝になると、子どもは再び明るい顔で「学校に行ってくる!」と言って登校していきました。この瞬間、私はホッと胸を撫で下ろしつつ、「やはり見守るだけではなく、適切な対応が必要なのだ」ということを再確認しました。

「部屋に閉じこもらせず、リビングで勉強させる」という工夫で、「学校を休んだら家でのんびりできる」という感覚を防ぐことができました。ToCoで働く中で、こういったちょっとしたサポートが将来的な不登校リスクを減らすことに繋がると確信しています。

5. 「休む日」にもルールを作ることの重要性

今回の経験を通して改めて感じたのは、家庭での「休む日」のルールづくりの重要性です。たとえば、子どもが休んだ日は、好きなテレビを見たりゲームをしたりする時間を設けない、もしくは厳しく制限するというルールです。これにより、「学校を休むと楽しいことができる」という印象を持たせないようにします。私の場合も、子どもに「風邪は治ったけど、今日も家で勉強すること」を条件に一日を過ごしました。このような規律を家庭内で守ることで、日常のルーチンから大きく外れることなく、学校へ戻ることへの抵抗感を少しでも減らすことができたと思います。

一方で、休んだ日だからこそ少しだけ楽しい活動も入れる工夫もしました。昼食後に一緒に軽い散歩に出かけることで、自然と気分転換を図れるようにしました。このような活動は短時間で抑えつつ、「休む日も単なる遊びの時間ではない」というバランスをとることで、子どもの気持ちを落ち着けるのに役立ったのです。

6. 周囲のサポートも大切

休みが続くことで、子ども自身も「どうして自分だけが学校に行けないのだろう」と自責の念を抱きがちです。また、親としても、「自分の対応が間違っているのではないか」という不安に駆られることもあります。こういったときに、学校の先生や第三者のサポートを積極的に頼ることが重要です。私も今回のケースでは、子どもにとっての居心地の良さを第一に考えつつ、学校側の先生に相談しました。担任の先生から「もう一日休ませても構いませんよ」と言われたことで、私自身も心が軽くなり、冷静に対処できるようになりました。

学校だけでなく、同じ悩みを抱える親同士のコミュニティも心強いサポートになります。子どもが学校に通えない日々が続いたとしても、「親として、どうにかできる」という自信が少しでも持てるようなサポートを受けることが大切だと考えます。

7. 不登校の予防と家庭の対応力を高めるために

今回の一件は、にとって多くの学びをもたらしてくれました。不登校はある日突然始まるわけではありません。子どもの小さな「不安」や「気持ちの変化」を早期に察知し、親として適切に対処することで、不登校を防ぐ可能性が高まります。しかし、こうした対応は決して一筋縄ではいきません。

子どもが学校を休みたいと言い出した時、その原因がわからないと親として戸惑います。しかし、親としてできることは、「休みたい」という子どもの気持ちに共感しつつも、家庭内でしっかりとしたルールを設け、家庭と学校の両方で「一貫したメッセージ」を示すことだと痛感しました。そしてその過程で、子どもが一人で不安を抱えないように寄り添うことも重要です。

親子の絆は、こうした悩みの瞬間にこそ深まります。親が自分の気持ちを尊重しながら適切に対応してくれることがわかれば、子どもも安心して自分の気持ちを正直に伝えることができるようになります。長い目で見れば、こうした絆の積み重ねが、子どもが学校での問題や社会生活の中で困難に直面した際の心の支えとなり、自己肯定感を育てる礎になります。

家庭でできる対応を実行しながら、必要に応じて支援サービスを利用することは逃げではありません。専門家が不登校の要因を分析し、再登校へのプランを立ててくれることで、親も「見守るだけでいいのか」「どのようにサポートすべきか」といった迷いを解消しやすくなります。ToCoでは、不登校支援のエキスパートが各家庭に合わせたアドバイスを行い、親御さんが子どもを適切に支えることができるような情報やアプローチを提供しています。

不登校になった子どもとの対話法

はじめに

初めて不登校を宣告された時、どのような気持ちになったでしょうか。驚き、不安、あるいは怒り、さまざまな感情が頭を巡り、「どうしてわが子が?」と心が混乱するかもしれません。しかし、不登校はけっして特別なことではありません。多くの子どもが抱えるこの問題に、真摯に向き合い、理解し、支えていくために、まずはお母さまが落ち着きを取り戻し、「対話」という一つの方法でお子さんの気持ちに寄り添う準備を始めていただきたいと思います。

不登校のお子さんとどう対話をしていけば良いのか。何を語り、どう受け止めれば良いのか。お子さんが心を閉ざしてしまっている時期に、どうやって扉を開いてもらえるのか。本稿では、「対話」を通じて、不登校のお子さんに寄り添うための考え方と具体的なアプローチについてお話ししていきます。


第1章:不登校という現象を理解する

まず、不登校とはどういうものなのかを理解することが重要です。不登校は単に「学校に行かない」という行動だけを指すものではなく、子どもの内面に深く根ざした感情や、生活全般にわたる変化を含んでいます。近年では、不登校の原因は一つに限らず、いじめや家庭環境、学校の環境、発達特性、自己肯定感の低下など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることがわかってきています。

子どもが不登校になる理由を一概に決めつけず、「なぜ行かないのか」ではなく、「なぜ行けないのか」と考えることが大切です。不登校には、子どもが自分の内面や周囲の環境に対して真剣に向き合おうとしているサインが含まれています。「学校に行かない」という行動の背後にある子どもの苦悩や葛藤を、お母さまが丁寧に理解することが第一歩となります。

第2章:子どもに寄り添う心の姿勢

不登校のお子さんに寄り添う上で最も重要なのは、「寄り添う姿勢」をお母さま自身が身につけることです。これを理解するには、まず「聞く」ことから始めなければなりません。

不登校の子どもが最も求めているものは、無理に引き戻そうとする「解決」ではなく、自分の気持ちをわかってもらえる「安心感」です。多くの親は、子どもが学校に行けるようにとアドバイスや励ましの言葉を投げかけますが、そうした言葉がかえって子どもを追い詰めてしまう場合も少なくありません。子どもが本当に求めているのは、学校に行かない自分でも愛され、受け入れられるという信頼です。そのためには、まずお母さまが子どもの気持ちに寄り添い、「何も否定せずに聞く」という姿勢を持つことが必要です。

第3章:子どもとの対話の基本 – 聞く力

お母さまにとって、「聞く」という行為は単なる聞き流しではなく、子どもの話をじっくりと受け止め、共感することが求められます。ここで重要なのは、「質問しないこと」です。質問は、どうしても相手に回答を求める形になり、子どもが防御的になりやすい傾向があります。代わりに、相づちや表情、うなずきで子どもが話しやすい空気を作ってあげると良いでしょう。

例えば、子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、すぐに「どうして?」と理由を尋ねるのは避けましょう。「そうなんだね。行きたくないって感じるんだね。」と、相手の言葉をそのまま受け入れるだけで十分です。自分の気持ちを否定されず、受け止めてもらえると感じられると、少しずつ子どもは心を開いてくれるようになります。

第4章:対話のゴールを「共感」に設定する

不登校のお子さんと対話する際、解決を急がず、共感をゴールに設定することが大切です。多くの親は、つい「解決」を目指しがちですが、子どもが今の状況から立ち直るためには、まず自分の感情や思いを誰かに共感してもらうことが必要です。

共感するためには、「感じている気持ちを認める」ことから始めましょう。たとえ学校に行かない理由が曖昧であったとしても、その気持ちをそのまま受け止め、「辛かったんだね」「無理しないでね」といった言葉をかけてあげることで、子どもは自分が理解されていると感じるようになります。理解される経験が増えると、子どもは次第に安心感を持ち、不登校に関しての考え方や感情も柔らかく変化していきます。

第5章:言葉でなく「存在」で支える

不登校の子どもにとって、親がそばにいてくれること自体が大きな支えになります。日常生活の中で、言葉を交わすことに抵抗がある場合も多いため、無理に話しかけようとせず、ただ一緒に過ごす時間を大切にすることが大切です。特に、子どもがリラックスして過ごせる時間帯や場所で一緒に過ごすことで、自然と子どもが心を開きやすくなります。

例えば、一緒に食事をしたり、テレビを見たり、散歩に出かけたりすることで、親子の距離が縮まる場合があります。話しかけなくても、お母さまがそばにいること自体が、子どもにとって「安心」を与える要素となります。

第6章:お母さまの心のケアも忘れずに

不登校の子どもを支えるためには、お母さま自身の心のケアも重要です。不安や焦りが募ると、どうしてもその感情が子どもに伝わり、無意識のうちにプレッシャーをかけてしまうこともあります。自分を追い詰めず、気持ちの整理をするためにも、友人や専門家に相談したり、自分の時間を大切にすることが不可欠です。

第7章:信じる力

最後に、不登校のお子さんに対して必要なのは、「信じる力」です。子どもは親が信じてくれることで自分を信じられるようになります。不登校という状況は確かに不安ですが、お母さまが子どもの成長を信じ、今は休息が必要だと受け入れることで、子どもも安心して自分を見つめ直すことができます。

学校に戻るか戻らないかは結果にすぎません。重要なのは、その過程でお母さまがいかに子どもを信じ、支え、待つことができるかです。この信頼があれば、子どもはやがて自分の道を見つけて歩き出すでしょう。


結論

不登校の子どもとの対話は決して簡単なものではありません。しかし、お母さまが一歩ずつ対話の姿勢を育み、共感と理解を持って寄り添うことで、子どもも安心して自分を開くことができます。不登校はある意味、子どもが成長し、自分の気持ちや考えを整えるための大切な期間です。お母さまが支え、信じることで、子どもはまた自分らしい道を歩み始めることでしょう。お子さまとお母さまが、対話を通じてお互いに理解を深め合い、新たな絆を育んでいけることを心より願っています。

キーワード要点必要な行動
不登校の理解不登校は多くの要因が絡んで生じる。行動だけでなく、子どもの内面の苦悩を理解することが大切。子どもが「行かない」理由ではなく「行けない」理由を丁寧に考え、無理に解決を急がない。
寄り添う姿勢子どもが安心感を持つには、否定せずに気持ちを受け止める「寄り添う姿勢」が重要。子どもの話を遮らず受け入れ、無理に励ますよりも「安心できる存在」であることを意識する。
聞く力聞くことは単なる傾聴ではなく、質問を避け、相づちやうなずきで話しやすい環境を作るのが基本。質問せず、共感の態度で「うんうん」「そうなんだ」と受け止め、子どもが話しやすくなる空気をつくる。
共感をゴールに解決を急がず、子どもの気持ちに共感することが最優先。理解される安心感が成長につながる。「辛かったね」「無理しないで」などの共感の言葉を使い、子どもが安心できる対話を目指す。
存在で支える言葉でなく、そばにいるだけで子どもに安心感を与えることができる。無理に話しかけなくても良い。一緒に食事や散歩などをする時間を増やし、自然と子どもが話せるタイミングを待つ。
お母さまのケアお母さま自身のケアも重要。焦りや不安が子どもに伝わらないよう、心のケアを意識する。周囲や専門家に相談し、自分の心をケアしながら子どもと向き合う余裕を持つ。
信じる力お母さまが子どもを信じることで、子どもも自分を信じられるようになる。子どもの成長を信じることで自立を見守る姿勢を大切にする。

再登校の鍵は「子ども・親・学校」のリボンモデル

不登校という問題に直面するご家庭へ

不登校は単なる「学校に行かない」という現象ではありません。そこには家庭環境や学校との関係も深く関わっています。不登校が続くと、子どもがどこにも属していないような疎外感に陥り、将来への不安も強まります。そんな子どもに寄り添いながら、どうにかして学校へと繋ぎ戻してあげたい——私もそうだったので、そう願うの親御様の気持ちは、よくわかります。

しかし、子どもをただ「再登校させたい」と願っても、残念ながら物事は簡単に進みません。不登校の解決は、親と子ども、そして学校という三者がそれぞれの役割を果たしながら進む必要があるからです。この三者の役割を「リボンモデル」として考えることで、再登校への道筋が少しずつ見えてくるのです。

リボンモデルの基盤: 子ども・親・学校の三つの役割

リボンモデルとは、子ども、親、そして学校がそれぞれ手を繋ぎ合いながら再登校への支援を行う考え方です。三者がしっかりと結ばれることで、子どもが再び学校と関わりを持ち、自ら一歩を踏み出すための足場ができるのです。ここで大切なのは、親が「子どもと学校の橋渡し役」となること。特に不登校の初期段階や子どもが学校に対して恐れや不安を抱えている場合には、親が果たすべき役割が大きくなるのです。

親の役割: 橋渡し役としての重要性

不登校の子どもを支えるうえで、母親が特に重要な役割を果たす場面が多くあります。不登校になっている子どもにとって、親は最も安心できる存在であり、家庭は唯一の安全基地です。しかし、この安全基地があることで、逆に外の世界への挑戦が弱まってしまうこともあります。子どもは家にいることで「自分はこの場所にいればいいんだ」と安心し、次第に学校や社会との関わりを避けてしまうのです。

そこで、母親には、子どもの安心感を守りながらも、少しずつ外の世界へと目を向けさせる役割が求められます。ただし、無理に押し出すような支援は逆効果です。子どもの気持ちを受け入れながらも、学校への橋渡し役となることで、再登校への小さな一歩を踏み出させるきっかけをつくるのです。

子どもと学校を繋ぐ親という役割

「親が橋渡し役になる」というのは、実際にどのような行動を指すのでしょうか?まず大切なのは、学校側が子どもの状況を把握できるよう、親が情報を伝えることです。学校の先生たちは子どもの個別の事情を深く理解しているわけではなく、また、親からの要望や相談がなければ、軽々しく手を出すことができません。そのため、親が学校に対して「今、子どもはどんな状況にあるか」「どんな支援が必要か」を伝えることが必要です。

ここで誤解してはいけないのは、「すべてを学校任せにしてしまう」ことです。不登校になっている子どもは、学校に対してすでに恐怖や不安を抱いていることが多く、何のサポートもなく「行ってみよう」と促されても、心理的なハードルは高いのです。そのため、親が橋渡し役として子どもと学校の間に立ち、必要な助力を整えていくことが不可欠です。

例えば、以下のようなサポートが考えられます。

  • 学校に登校する際の特別な配慮を依頼する
  • 子どもが負担を感じにくいよう、短時間からの登校や一部授業への参加を交渉する
  • 学校内で信頼できる教職員を選び、個別に面談を設ける機会を作る

このように、親が間に立ち、学校に子どもの状況を伝え、必要なサポートを取り付けることで、子どもが安心して学校へ向かえる環境が整います。

親がそっと離れるタイミング

子どもが再登校を果たす準備が整ったならば、次に親が心がけるべきことは「そっと距離を置く」ということです。橋渡し役としてしっかりとリボンを結び、それぞれのサポート体制が整えば、いよいよ子ども自身が学校と向き合う時間がやってきます。

親が過剰に関わり続けると、子どもは自分で問題に向き合う機会を失いがちです。特に小中学生の時期は、自立の一歩を踏み出すための貴重な時間です。この段階で親が一歩引くことは、子どもの成長と自立を促すために重要な役割を果たします。

もちろん、再登校が始まっても、順調にいかない日もあります。そんな時こそ、母親が自分の心を落ち着かせ、見守る姿勢を保つことが大切です。子どもが再び不安に襲われた際に、帰れる場所として家庭が存在していることこそが、子どもにとっての心の支えとなるのです。

学校とのコミュニケーションを大切にする

リボンモデルにおいて、学校もまた重要な存在です。しかし、学校側は家庭内の状況について詳細を知る機会が少なく、どのように対応すればよいか分からないケースも多くあります。そのため、学校に対しても適切な情報共有と依頼が必要です。

例えば、以下のようなポイントで学校と連携を深めることが大切です。

  • 子どもの状況を定期的に伝える
  • 再登校に向けた段階的なプランを共有し、学校からのフィードバックも受ける
  • 子どもの要望や苦手な点について具体的に伝える

こうしたコミュニケーションを通じて、学校側もどのように支援すれば良いかが見えてきます。親が積極的に情報を伝えることで、学校側も子どもの状況を理解し、無理のない形での登校支援が可能になります。


結論: リボンを繋げるのは親だけ

不登校は、親だけでも学校だけでも解決が難しい複雑な問題です。しかし、親が橋渡し役となり、子ども・親・学校の三者が力を合わせることで、少しずつでも再登校への道筋が見えてきます。親が安心感を与え、学校が受け皿となり、子どもが自分のペースで歩き出せる環境を作り上げることが大切です。

リボンモデルによって結ばれた絆は、単なる不登校の解決にとどまらず、子どもの成長と自立、そして将来への基盤となる大切な力を育むことに繋がります。不登校の問題に直面しているからこそ、今一度、家庭と学校の間を結び直し、子どもが自分の道を歩む手助けをしていきましょう。

【体験者寄稿】不登校に向き合ったから起業を選べた

ToCo体験者寄稿「不登校に向き合ったから起業を選べた」

僕が「学校に行きたくない」と言ったのは、中学2年の春だったと思います。朝起きて制服に袖を通そうとしても、学校の門をくぐるイメージが頭に浮かんでこなくて、体が重く感じて、心もどこか冷たくなっていました。親には、どんな言葉で「学校が辛い」と伝えたのか、今でもあまり覚えていません。ただ、何かが限界に達していたのです。

学校を休み始めた頃は、家族にも友達にも心配をかけている自覚がありましたが、どうしても体と心が言うことを聞かなくて、自分ではどうすることもできなかったのです。

不登校になった理由

どうして僕が学校に行けなくなったのか。周りから見ると些細なきっかけに見えたかもしれません。実際、学校で大きな事件が起きたわけでもありません。友達関係にトラブルがあったわけでもないし、いじめもありませんでした。ただ、僕自身が感じていた「孤独感」と「無力感」が少しずつ心を蝕んでいたのです。

クラスでの輪に入れないというか、みんなが楽しそうに話している輪の外にいつも自分がいる気がしていました。自分を偽ってまで、みんなに合わせようとするのも辛くて、結局、少しずつ自分を閉ざしてしまっていたのです。そしてそれが、知らないうちに僕の心を少しずつ追い詰めていきました。

家族の変化

僕が家で一日中過ごすようになってから、最初のうちは家族もどうしていいか分からなかったようでした。親も学校に行ってほしいのは分かっていたけれど、僕がどうして行けないのかが理解できなかったのだと思います。ある日、僕の部屋に入ってきた母が、ポツリと「どうして学校が嫌なの?」と聞いてきました。

でもその時の僕には、その質問に答える気力がありませんでした。自分でも本当に何が辛いのか分からないし、うまく言葉にできない。でも、親がただ「行け」と言うのではなく、僕の気持ちを理解しようとしている姿勢に少し驚いたのを覚えています。その後も母は何度も僕の気持ちを聞いてくれましたが、最初の頃は上手く話せませんでした。

僕が後から聞いた話ですが、この時、母はToCoというサービスに出会ったようです。そしてこのサービスを通して親自身も子どもへの接し方について学び、少しずつ変わっていったのだそうです。ToCoを通じて母がどう学んだのか、どんなことを知ったのかは詳しくはわかりませんが、確かに僕の気持ちを理解しようとしてくれるようになったのはその頃からでした。

ゲームとパソコンに夢中だった日々

不登校になった当初、僕の生活はゲームとパソコンにどっぷり浸かるものでした。現実から逃げるように、一日中画面の中で過ごしていました。親は「またゲームばかり」と心配していたけれど、僕にとってその時間は唯一の居場所でした。学校に行かなくてもゲームの世界では自由で、自分が何者であるかを忘れて夢中になれる場所だったのです。

しかし、だんだんとその生活も虚しさを感じるようになりました。現実から逃げ続けているだけで、何かを成し遂げているわけではない、ただ時間が過ぎていく。毎日同じことを繰り返し、何も変わらない生活に自分が何か大事なものを失っているような気がしたのです。

再登校を考え始めた理由

ゲームとパソコンだけの生活に飽きが来ていた頃、親が僕の気持ちを理解しようとしてくれたことが、少しずつ僕を変え始めていました。今まで僕の気持ちを汲んでくれなかったと感じていた親が、「学校に行く行かないは自由だ」と言ってくれたのです。その言葉に最初は戸惑いましたが、それからは自分の将来について考える時間が増えました。

再登校を選ぶのか、このまま家に居続けるのか、あるいは他にできることがあるのか。迷いが生じる中で、ある日親が僕の進路について一緒に話し合ってくれたことがありました。それまでは話し合うことすら億劫だったのですが、親が僕の選択肢を尊重してくれると感じたことで、自分の未来について真剣に考え始めたのです。

ゲームクリエイターとしての起業を決意

その時に思い浮かんだのが「ゲームクリエイターになること」でした。僕はゲームが好きでしたし、いつか自分でゲームを作りたいという漠然とした夢を持っていました。しかし、不登校で学校に行っていない自分がその夢を実現できるのか、半信半疑でした。

親がその夢を否定せずにいろいろな情報を調べて提供してくれたり、将来の道を一緒に模索してくれたりする中で、僕は少しずつ「自分でも何かできるかもしれない」と思うようになったのです。最初は小さな一歩でしたが、僕は自分の手で小さなゲームを作り始め、気づけばその作業に夢中になっていました。

不登校での経験が活きる場所

僕がゲームクリエイターとしての道を選んだ背景には、不登校での孤独な経験がありました。誰かに寄り添ってもらえない苦しみ、誰にもわかってもらえない孤独。これらの経験は、ゲームを通じて人とつながることの大切さを強く感じさせるものでした。

親が変わってくれたからこそ、自分が置かれていた状況に向き合うことができ、自分にとって本当に必要なことは何かを考え、行動に移す勇気を持てたのです。そしてその結果、ゲームクリエイターとして起業する道を選ぶことができました。

最後に

僕が起業という選択肢を選んだのは、単なる逃げではなかったと振り返っています。不登校に向き合えたからこそ、僕は自分の人生について深く考え、その先に何ができるのかを見つけることができました。再登校も可能な状態まで持ち戻しましたが、その上で別の道を選ぶ選択をしました。もちろんゲームクリエイターとしての道は簡単なものではありませんが挑戦しがいのある未来です。

最後にToCoさん、僕の人生を変えてくれてありがとうございました。母と一緒に感謝しています。


ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校を「解決」、という言葉の落とし穴

不登校を「解決」、という言葉の落とし穴のイメージ

はじめに:「解決」を求める気持ち

お子さんが不登校になると、多くの親御さんが最初に「どうすれば不登校を解決できるのだろう」と考えるかもしれません。特にこれまでお子さんが学校で順調に過ごしていた場合、「何とかして学校に戻してあげたい」「他の子と同じように通えるようにしてあげたい」と、心が焦るのは当然のことです。子どもが学校に通えない現実を目の当たりにすると、親としては不安で、何か原因を見つけ出し、その原因を取り除くことで解決を目指したくなるものです。

けれども、ここで注意したいのは、「不登校を解決する」という言葉自体が、実は私たちの心に「落とし穴」を作っている可能性があるということです。この「解決」という考えが、結果的にお子さんとの距離を広げてしまったり、お子さんの気持ちを見えなくしてしまうことがあるのです。

不登校の「原因」を探る危うさ

不登校が始まると、多くの親御さんはお子さんが不登校になった「原因」を探し始めます。学校のクラスの人間関係か、担任の先生との相性か、あるいは勉強のつまずきなのか――こうした理由を探し出して解決すれば、再び登校できるようになると考えるのも無理はありません。しかし、実は「原因を探して、それを取り除くことで解決する」という考えが、お子さんの気持ちを見失う原因になる場合があります。

不登校の原因は、往々にして一つではありません。小さな要因が重なり合い、気づかぬうちにお子さんの心に負担がかかっていることも多いのです。そして、原因を追究するあまり、お子さんが抱える「今の気持ち」を見過ごしてしまうことがあります。例えば、「クラスの友達と少し話しづらいから学校に行きたくない」という表面的な理由があったとしても、根底には「学校生活全般に疲れてしまった」や「そもそも学校に馴染むことができなかった」など、複雑で根深い感情が隠されていることも多いのです。

「戻す」ことへの執着が生むプレッシャー

不登校になった子どもを学校に「戻す」ことに執着しすぎると、その言葉自体が子どもにとって大きなプレッシャーとなります。「また学校に戻らなければいけない」「他の子と同じように通わないといけない」と感じることで、さらに気持ちが閉ざされてしまうことがあるのです。

お子さんにとって、学校に行くことが苦痛であるにもかかわらず、「普通に通うべきだ」と感じてしまうと、自己嫌悪や無力感に陥ってしまうこともあります。「自分は普通じゃない」「みんなができることが自分にはできない」という思いが重なることで、ますます自信を失い、さらには家の中でも居場所を感じられなくなってしまう場合さえあります。

「解決」という目標が親子の距離を生むことも

不登校になったお子さんを「どうにかして学校に行かせてあげたい」と思う気持ちは自然ですし、親御さんとして当然の愛情でもあります。しかし、この「解決」という目標が前面に立つとき、しばしば親子の間に「距離」が生じてしまうこともあります。

例えば、毎朝「今日は行ける?」「少しだけ頑張ってみよう」と声をかけることは、お子さんにとってプレッシャーを感じさせる可能性があります。「親が自分に学校に行ってほしいと願っているのはわかるけど、それに応えられない自分が情けない」「自分が悪いんだ」と思い込み、罪悪感を抱えてしまうお子さんも少なくありません。また、親の期待が重荷となって、親子の会話がぎこちなくなったり、本音を隠すようになったりすることもあります。

さらに、親御さんが「解決」を目指すことに集中すると、知らず知らずのうちにお子さんが抱えている複雑な感情や不安に目が向きづらくなってしまうことがあります。お子さんは「学校に戻るために努力する」という気持ちよりも、「今は学校に行かない自分の気持ちを理解してほしい」と感じていることが多いものです。

「不登校は悪いこと」という思い込みを見つめ直す

不登校について話すとき、私たちの中にはどこか「学校に行かないことは悪いことだ」「みんなと同じように学校に通うことが正しい」という思い込みが根強くあります。学校という場所は社会の中でのルールや協調性を学ぶ場であり、大切な場所でもあるため、その考え方自体が間違っているわけではありません。しかし、その「正しい」「普通」という考え方に縛られてしまうと、不登校を受け入れることがとても難しくなってしまうのも事実です。

不登校は、何かしらの理由やきっかけで生じる一時的な「状態」であり、「お子さんの人間性の問題」ではありません。むしろ、不登校になっている時期こそ、お子さんが抱える心の課題や内面的な葛藤に目を向ける大切な機会なのです。子どもが「どうしても学校に行けない」と感じているのには、それなりの理由があり、その感情に寄り添いながら理解しようとすることが、親としてできる第一歩ではないでしょうか。

「解決」よりも「変化」を見守る

不登校に対して「解決」という明確なゴールを目指すのではなく、「変化」を見守るという姿勢が時に重要です。不登校は、「行かないこと」にもさまざまな段階や意味が含まれています。

お子さんが一時的に学校を避けることで、何かを考えたり、休んだり、自分の気持ちに向き合ったりする時間が必要な場合もあります。また、お子さん自身が学校に行かないことで得られる安心感や、家族とのコミュニケーションを通じて少しずつ自分のペースを取り戻していくこともあるでしょう。

「解決」に囚われず、お子さんの「今の心の状態」を理解し、変化を見守ることで、不登校という経験自体が一つの成長のプロセスになることがあります。例えば、お子さんが少しずつ家の外で気の合う友人を見つけたり、オンライン学習や趣味に集中する時間を得ることで、自己肯定感を取り戻すこともあります。そして、結果的にお子さん自身が「もう一度学校に行ってみようかな」と自らの意思で前向きな行動を取る場合もあります。

最後に:不登校の要因を一緒に解きほぐすということ

不登校に対する一番の落とし穴は、「解決」を焦るあまり、「今の気持ちや状況」をおざなりにしてしまうことです。お子さんが不登校になったとき、親御さんとしては未来のことが気になるのも当然ですが、「今、お子さんが何を感じているのか」に焦点を当てることが、長期的な解決の糸口になるのです。

お子さんと向き合う中で、少しずつ不登校の背景にある要因が明らかになることも多いものです。そして、お子さんが自分の感情を安心して言葉にできるようになると、自分自身でも不登校の要因について冷静に考えることができるようになります。

こうしたプロセスを経ることで、お子さんが自分の意思で「もう一度学校に行ってみようかな」と思う日が訪れることも少なくありません。このように、自分の内面と向き合い、「再登校」という選択を自らの意思で選ぶことで、以前よりも自信を持って学校生活を送れるようになることもあります。

そして、たとえ最終的に「学校に戻る」という選択を取らなかったとしても、不登校の要因を一緒に解きほぐし、その中で心の整理ができたことで、お子さんは「不登校に押しつぶされていた日々」から抜け出せるようになります。これは、お子さんにとって大きな前進です。不登校という重圧の中で苦しむよりも、心が軽くなり、「自分はこれでいいんだ」と思えるようになることで、未来に向かって前を向く力を取り戻していけるのです。親が一緒に要因を解きほぐす姿勢を持つことが、こうした変化の原動力になるのです。


ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校予防フローチャート

不登校予防フローチャート見出し
不登校予防フローチャート

上記の不登校予防フローチャートは、子どもが「学校に行きたくない」と言ったときの対処を簡易的に表したものです。

欠席から不登校になりにくくするためには、子どもの不安やストレスを理解し、少しずつ対処していくことが鍵となります。ご家庭によって適切な対処は異なりますが、一つの基本的な型として参考にしていただけますと幸いです。


1. 子どもが「学校に行きたくない」と言う

子どもが「学校に行きたくない」と話したときは、すぐに反応せず、冷静に受け止めましょう。子どもの一時的な気持ちである場合もあるため、数日間様子を見ることが大切です。もし、4日以上続くようであれば、別のステップでさらに深い対応を始めます。

2. 行きたくない理由を聞く

理由を聞く際には、子どもを責めず、話を傾聴することが重要です。子どもが安心して話せるように、親の価値観を押し付けず、気持ちを受け止める姿勢を示しましょう。このステップで大切なのは、子どもが「自分の気持ちが理解されている」と感じることです。

3. 体調を確認する

子どもが学校に行きたくない理由が、体調不良によるものかどうかを確認します。もし体調を崩している場合は、無理せず休ませ、健康回復を優先します。軽度の場合は、次のステップでさらなる対応を検討し、学校に行けるかどうかを一緒に話し合いましょう。

4-A. 担任の先生と連携する(体調不良の場合)

体調不良が理由で欠席する場合、担任の先生と連絡を取り合うことが大切です。放課後の電話相談などを依頼し、学校側と状況を共有しましょう。先生と話し合うことで、宿題や授業の内容を確認でき、無理のない範囲で家庭学習をサポートすることが可能になります。

4-B. 軽度の場合の対応(登校可能性がある場合)

軽い体調不良の場合、子どもが自身で担任の先生に理由を伝えられるよう促しましょう。これにより、子ども自身が気持ちを整理する機会を持つことができます。また、担任の先生に早めに状況を共有することで、登校の後押しをお願いすることが可能です。

5. 学校に行きたくない理由を紙に書き出す

子どもが「行きたくない」と感じている理由を一緒に紙に書き出すことは、気持ちを整理するのに役立ちます。口頭で話すよりも、書き出すことで悩みや不安が視覚化され、対策を考えるための第一歩になります。親は指導するのではなく、子どもと一緒に取り組む姿勢を大切にしてください。

6. 子どもと一緒に対策を考える

学校に行くことをゴールにせず、ストレスや不安をどう乗り越えるかに焦点を当てて話し合います。この段階では、子ども自身が解決方法を考えるプロセスに親も伴走し、無理強いせずに一緒に向き合うことが重要です。焦らず、子どものペースを尊重して進めましょう。

7. 担任の先生と連携する(定期的な話し合い)

不登校が長引く場合、担任の先生と定期的に連絡を取り合い、子どもと一緒に話す機会を設けてもらいます。学校側には不登校に対するノウハウがあるため、連携することで新たな対策が見えてくることも多いです。また、学校との連絡を密にすることで、子どもが学校に戻る際の心理的なハードルを下げることにもつながります。

8. 通常の生活を続ける

不登校が続いても、できるだけ通常の生活を保つように心がけます。親子ともに家に閉じこもらず、外出の機会を設けてリフレッシュすることが大切です。また、家庭内が暗い雰囲気にならないよう、日常生活を前向きに過ごす工夫をしましょう。

9. 翌朝の様子を見る

前日の対策がどう影響したか、翌朝の子どもの様子を確認します。子どもの気持ちが少しでも前向きになっている場合は、それを大切にサポートしていきましょう。登校が難しい場合は、再度フローチャートに戻りながら、焦らず取り組みます。


突然お子様が休みたいと言われると、動揺されたり、声掛けに悩まれることもあると思います。そのような時には、このフローチャートを一つの参考としてご活用ください。


ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校の子どもが学校に行けるようになったきっかけは?

不登校の子どもが学校に行けるようになったきっかけは?

不登校という現象とその背景

近年、日本社会で「不登校」という現象がますます顕著になってきています。不登校は一部の家庭に限られた特異な事象ではなく、社会全体に根ざした問題となりつつあります。文部科学省の統計でも、不登校の児童・生徒数は増加の一途をたどり国内で30万人を超えました、その背後には、学業へのプレッシャーや、友人関係の複雑化、さらには家庭環境の変化や、社会的な価値観の多様化など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているのです。

不登校の子どもたちが抱える心の中には、多くの葛藤や苦悩が潜んでいます。その一方で、周囲の大人たちは「なぜ学校に行けないのか?」と疑問を抱き、時には「行くのが当たり前」という固定観念で子どもを責めてしまうことさえあります。しかし、子どもが不登校になるには、必ずと言ってよいほど深い理由があるのです。その理由を無視したまま、ただ学校に行かせようとするだけでは、本当の解決には至りません。

本稿では、過去に支援させていただいた不登校の子どもたちが学校に行けるようになるための具体的なきっかけや、その過程で彼らが経験する内面的な変化、そして支えとなる環境やサポートについて考察していきます。(性別や状況などは編集しています)学校復帰のきっかけを探ることで、社会全体として不登校問題にどう向き合うべきかについてのヒントを探ります。

事例1. 突然の不登校

ある日、小学生のA君は学校に行くために玄関まで出たものの、そこで足がすくんでしまい、結局学校に行けずに家に戻ってしまいました。親は「どうして行かないの?」と問いかけましたが、彼には答える言葉が見つかりませんでした。「行きたくないわけではない、でも体が動かない」―それが彼の本音だったのです。その後、親が優しく寄り添い、「学校だけが全てではない」という言葉をかけ続けたことで、少しずつ学校への恐怖心が和らぎ、勇気が芽生えました、「行きたいときに行っていい」と感じられるようになり、徐々に登校への気持ちを高めていきました。

不登校に至るまでの過程は、決して一夜にして起こるものではありません。多くの子どもたちは、最初から学校に行けなくなるわけではなく、徐々に少しずつ心のバランスを崩していき、最終的に学校に足が向かなくなってしまうのです。その過程で、子どもたちが抱える葛藤や苦悩は多岐にわたります。

まず、学業に対するプレッシャーが大きな要因となります。成績に対する期待や、テストの順位、受験への不安が重なり、学ぶことが楽しいと思えなくなってしまうことがよくあります。また、教師や保護者からの「頑張らなければならない」という励ましの言葉も、時には子どもにとって大きなプレッシャーとなります。さらに、友人関係の問題も見逃せません。些細なすれ違いやいじめ、あるいは集団に溶け込めないといった不安が、子どもたちにとって大きなストレスの要因となり、不登校を引き起こすことがあります。A君の場合は適切な対応が登校に繋がりましたが、子どもの問題と軽く見てしまうと状況はより悪化してしまいます。

事例2. 不登校の子どもが抱える内面的な苦悩

Bさんという中学生は、不登校になってからというもの、毎日鏡を見るのが辛くなりました。「学校に行けない自分はダメな人間だ」と思い込んでしまい、次第に自分の姿を見るのも嫌になってしまったのです。家族が心配して声をかけても、彼女は心を閉ざし、自分の部屋に閉じこもるようになりました。親も彼女を支えたいと思いつつ、どのように接したら良いかわからず、もどかしさを感じていました。ある時、NPOスタッフの紹介でフリースクールに通い始め、同じ悩みを抱える仲間と出会います。自分の苦悩を共感してもらえることで、次第に自己否定感が薄れていき、再び他者と接する勇気を得られるようになりました。

不登校が長引くにつれ、子どもたちの内面にはさらなる葛藤が生まれます。特に、「自分はなぜ行けないのだろう」という自己嫌悪や、「親に申し訳ない」という罪悪感が積み重なり、自己肯定感が低下していくのです。不登校の子どもたちは、ただ学校に行けないというだけでなく、自己存在そのものを否定するような感覚に苛まれることが多々あります。

多くの不登校の子どもたちが、Bさんと同じように自己嫌悪の渦に巻き込まれます。「学校に行けない自分は価値がない」という思い込みが深まると、さらに学校が遠ざかり、外の世界との接点が少なくなります。こうして、不登校という現象は単に「学校に行かない」だけでなく、子どもたちの心を蝕む深刻な問題へと発展していくのです。

事例3. 周囲のサポートとその効果

C君という中学生がいました。彼は勉強が得意で、成績も良かったのですが、ある日突然学校に行けなくなってしまいました。原因は「優等生でなければならない」という強いプレッシャーでした。親や教師はC君の成績に対して期待をかけ続け、彼自身もそれに応えようとしていたのです。しかし、それが重荷となり、ついに心が折れてしまいました。C君の家庭では、彼が学校に行けなくなったことを受けて、親が「学校よりも今は体が大切だ」と伝えるようになりました。親は、C君が「休むことも大事である」ということを理解できるように、家で一緒に趣味の時間を作ったり、外出してリフレッシュする機会を設けました。また、教師も家庭訪問を行い、成績にとらわれず、彼の心の健康が第一であることを伝えました。このような環境が整うことで、C君は少しずつ心を開き、自分を受け入れることができるようになったのです。

不登校の子どもが学校復帰に向かうためには、周囲のサポートが欠かせません。しかし、「ただ優しくする」「ただ放っておく」だけでは十分ではありません。不登校から立ち直るためには、家族、学校、そして専門家が協力し合い、段階的かつ持続的なサポートが必要です。

周囲の大人たちが「学校に行かせること」だけを目指すのではなく、「子ども自身の心の回復」を優先することで、子どもたちは少しずつ自己肯定感を取り戻し、再び社会と向き合う準備が整っていきます。

事例4. 思いがけないきっかけ

Dさんという小学生の女の子は、長い間不登校でしたが、ある日、昔の友人から手紙が届きました。その手紙には、彼女がいなくて寂しいという思いが込められており、友人たちが待っているという内容が書かれていました。その手紙を読んだ瞬間、Dさんは「自分は一人じゃないんだ」という気持ちになり、久しぶりに学校へ行ってみようという気持ちが芽生えたのです。友人の存在が、彼女にとって学校復帰への大きな一歩となりました。

学校に戻るきっかけは、実に多様です。一人ひとりの子どもにとって、復帰を決断するタイミングや理由は異なります。しかし、共通しているのは「自分の居場所がある」と感じられること、そして「自分が認められている」という安心感です。

このように、学校復帰のきっかけは、家族の理解や友人からの支えなど、さまざまな形で訪れることがあります。それがどんなに些細なことであっても、子どもにとって大きな意味を持ち、不登校からの一歩を踏み出す勇気につながるのです。

事例5. 学校の寄り添い

E君という中学生は、長期の不登校から学校に復帰した後も、授業中に胸が締め付けられるような不安感に襲われることがありました。周囲にはその不安を打ち明けられず、ただ「普通にしていなければ」という気持ちが強くなるばかりで、次第に心に重圧がかかり始めました。しかし、学校に相談したところ、担任の先生が「無理に周りに合わせる必要はないよ」と伝えてくれたことで、E君は少しずつ自分らしさを取り戻せるようになりました。

学校に再び通い始めた子どもたちは、外から見ると一見元通りに見えますが、実際の心の状態はまだ不安定な場合が多くあります。再登校後も、環境の変化や他者からの目線に敏感になってしまい、心の中で再び不安が芽生えることもあります。学校に戻るという「一歩」は踏み出したものの、その道を歩き続けるためには、周囲の理解と継続的な支援が不可欠です。

E君のように、再登校を果たした後も、子どもたちの心の回復にはまだ時間が必要です。学校に戻ったからといってすぐに元気になれるわけではなく、時には不安がぶり返したり、過去の出来事がふと頭をよぎることもあるのです。再登校後もサポートが続けられる環境があれば、子どもたちは少しずつでも自信を持って社会と向き合う力を養うことができます。

事例6. 不登校の経験が子どもに与える影響と成長

Fさんという少女は不登校を経験する中で、「自分が好きなことを学ぶ楽しさ」に気づきました。学校の枠組みから一時的に外れたことで、自由な時間を得た彼女は、本を読んだり、絵を描いたりと、自分が心から楽しめる活動に打ち込むようになったのです。その中で「自分はクリエイティブな活動が好きなんだ」という新たな一面を発見しました。

不登校を経験した子どもたちは、一見するとマイナスの経験を背負っているように思われがちですが、実はその経験がその後の人生において、彼らに深い理解力や共感力、自己洞察の力を育むことも少なくありません。不登校の期間を経て、彼らは自分自身と向き合い、自分が本当に何を求めているのか、どう生きていきたいのかを深く考える機会を得ます。

こうした自己発見の経験は、その後の彼女の人生において大きな糧となり、不登校を通して自分らしさを見つけられた彼女は、学校復帰後も自分の意見や感じたことを素直に表現できるようになりました。このように、不登校の経験が子どもたちに新たな価値観や自己理解をもたらすことは少なくないのです。

事例7. 再発防止の鍵

Gさんという小学生は、復帰した後も両親から「ちゃんと行き続けなければ」というプレッシャーを感じ続けていました。彼は学校に行けるようになったものの、そのプレッシャーによって再び不安を感じ、最終的には再度不登校となってしまいました。しかし、その後、両親が彼の気持ちに寄り添い、学校ではなく「彼自身」を大切にするような声かけを始めたことで、Gさんは再び学校に戻ることができました。

不登校は子ども自身の問題と捉えられがちですが、実はその背後には大人の関わり方が大きく影響しています。不登校の子どもたちは、家族や教師、カウンセラーなど大人のサポートによって安心感を得たり、自信を取り戻したりすることができます。しかし、無理に学校に行かせようとする、あるいはプレッシャーをかけてしまうと、再び不登校になってしまうリスクもあります。

不登校からの回復をサポートする際には、「学校復帰そのもの」が目標ではなく、「子どもが健やかな心で生きること」が目標であるべきです。学校に行かせることだけに囚われるのではなく、子どもが自分らしさを大切にし、自分のペースで進むことを尊重することが、不登校の再発を防ぐための重要なポイントです。

事例8. 「第三の居場所」の重要性

高校生のHさんは不登校の間、地域の絵画教室に通うようになりました。そこでは、同じような悩みを抱える仲間たちもいて、彼女は初めて「自分だけじゃない」という感覚を持つことができました。自由に過ごせる時間の中で、彼女は自分のペースで他者と関わることができるようになり、徐々に学校へ戻る気持ちも芽生えてきたのです。

不登校の子どもたちが社会と再び接するためには、学校や家庭以外の「第三の居場所」が大きな役割を果たすことがあります。この第三の居場所とは、地域のフリースクールやNPOが運営する居場所、カウンセリング施設など、子どもが安心して過ごせる場所を指します。学校や家庭のような圧力がかからず、子どもが自分らしくいられる環境であるため、心を開きやすく、自分と向き合うための時間を持つことができるのです。

Hさんのように、第三の居場所は子どもたちに「自分が受け入れられている」と感じられる場所であり、学校復帰のための準備段階として非常に有効です。また、これらの施設はただ単に子どもが過ごす場所としてだけでなく、自己理解や他者理解を深めるための場としても機能しています。こうした第三の居場所があることで、不登校の子どもたちが少しずつ学校や社会と再び接するきっかけを掴むことができるのです。

事例9. 子どもたちが自ら選ぶ「自分の居場所」という選択

Iさんという中学生は、最終的に学校ではなくフリースクールを選びました。彼にとって、学校は自分にとって息苦しい場所であり、フリースクールのほうが自分らしく過ごせると感じたからです。彼はフリースクールで自分のペースを大切にしながら勉強を進め、少しずつ社会との接点を取り戻していきました。

不登校の経験は、子どもたちにとって厳しい試練である一方で、「自分が心から安心できる場所」について考える貴重な機会でもあります。学校に戻るかどうか、社会との接点をどこに見つけるかは、最終的には子ども自身が選ぶべきです。大人が無理に選ばせるのではなく、子どもが「ここなら安心できる」と感じる場所を見つけることが、不登校からの回復において重要な要素となります。

Iさんのように、「自分の居場所」を自ら選ぶ経験は、子どもたちにとって大きな意味を持ちます。学校復帰を最終目標とするのではなく、子ども自身が自分の心の声に耳を傾け、「ここならば自分を表現できる」という居場所を見つけられることが、人生において重要な意味を持つのです。

結び:不登校の経験がもたらす未来への希望

不登校は、決して子どもたちにとって「失敗」や「挫折」ではありません。それは一人ひとりの子どもが自分の内面を見つめ、自分にとって本当に大切なものを見つけ出す過程なのです。不登校の経験を通じて、子どもたちは自分と向き合い、自分が何を大切にするべきか、どのように生きていきたいかを深く考える力を養います。

そして、彼らが再び社会と向き合うためには、何よりも「自分はありのままでいい」と感じられるような環境が必要です。学校、家庭、地域社会が一体となって支え合い、子どもたちが自分自身を受け入れ、自信を持って歩み出せるような社会を築いていくことが求められます。

不登校の子どもたちが学校に行けるようになるきっかけは、必ずしも大きな出来事ではありません。些細な出来事、ほんの小さな支えが、彼らにとって未来への扉を開く力となるのです。不登校の経験を経て社会に復帰する子どもたちは、逆境を乗り越えた強さと、自分を見つめ直した深い人間性を持っているのです。そして、その経験は将来、彼らが他者を思いやり、社会に貢献する力へとつながることでしょう。

事例再登校のきっかけ気持ちの変化
A君玄関まで出たが恐怖で学校に行けず。その後、親の寄り添いと励ましが少しずつ勇気を与えた。「行かなければ」という焦りから、「行きたいときに行こう」という気持ちに変化。少しずつ安心感を持つ。
Bさん友人との交流を支援するNPOスタッフの紹介で、気軽に話せるフリースクールへ通い始めた。自分の悩みが共感され、自己否定感が薄れたことで、徐々に他者と接する意欲が湧き上がる。
C君学業のプレッシャーが原因で不登校に。家庭での「学校に行かなくても大丈夫」という言葉で気持ちが軽くなり復帰。成績へのプレッシャーが減り、自分を大切にしてくれる家庭の支えを感じ、学校への恐怖が薄れる。
Dさん昔の友人からの「待っているよ」という手紙で孤独感が薄れ、学校に戻る勇気を持てた。自分にとって大切な存在がいることを再確認し、「自分も一緒に過ごしたい」という気持ちに変わる。
E君再登校後も不安を抱えていたが、担任から「無理をしないで良い」と言われ安心感を持ち始めた。自分のペースを認めてもらえたことで、不安が和らぎ、少しずつ学校に馴染む意欲が湧いてきた。
Fさん家族が提案した趣味の活動に集中するうち、自分が本当にやりたいことが見えてきて、登校への意欲が芽生えた。「好きなことを学びたい」という気持ちが強まり、自信を取り戻し、自分のペースで学校に戻る決意をする。
Gさん両親の「学校が全てではない」という励ましで自信が回復し、学校に行く決心を再度持つことができた。無理をさせない家族の姿勢で、「行かないことも許される」安心感を持ち、登校に向けた意欲が回復する。
Hさん地元の絵画教室での新しい友人関係から勇気を得て、学校でも少しずつ他者と関わる意欲が生まれた。「ここなら安心」と思える居場所ができ、自己肯定感が増し、学校に行っても自分らしくいられる気持ちになる。
Iさんフリースクールでの学びが自分に合っていると感じ、最終的に自分の意思で学校への通学も選択する。自らが納得して選べたことで、自信を持って進む気持ちが生まれ、学校も自分の選択肢の一つと捉える。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校になった時、学校と連携すべき行動5選

不登校になった時、学校と連携すべき行動5選

5つの行動とは

行動要点内容
担任の先生と親の面談不登校の原因ではなく、登校の障害を話し合い、具体的な支援策を共有する。子どもが登校に感じているストレスを確認し、学校側と「どう乗り越えるか」を話し合う。面談前に子どもから不安要素を可能な範囲で把握し、冷静に共有する。
担任の先生と子どもの面談親には話せない思いを担任の先生には話せる場合があるため、定期的な対話の場を設ける。担任と子どもが週3回ほど短時間で話せる時間を確保する。子どもが話しやすい環境を整え、無理に登校を促さず、気持ちや不安を冷静に聞けるよう調整する。
先生の家庭訪問を調整学校を遠い存在にしないため、子どもがリラックスして会えるタイミングで訪問する。家庭訪問の前に、オンラインでの対話で信頼関係を築いておく。家庭訪問を学校復帰への「強制」にしない配慮を示し、家庭と学校で協力し訪問の目的を共有する。
クラスの人間関係を整理クラスでの人間関係を整理し、登校の障害を減らしていくことで心理的な負担を軽減する。担任を通して相手の生徒と話し、誤解や心の負担を減らす。友人関係のプレッシャーを和らげ、子どもが孤立を感じないように先生がサポートできるよう依頼する。
家庭学習と宿題の実施授業の遅れを減らし、家庭内での学習習慣を確保することで学業面の不安を緩和する。担任から進捗や課題を確認し、家庭学習を進める。自宅での学習の習慣化を進めると同時に、学校での学びが重要であることを伝え、登校の動機づけにつなげる。

日本における不登校は、子どもと親、そして学校にとって切実な課題です。さまざまな理由から学校に通えなくなった子どもたちは、心身に不安やストレスを抱え、その状態が長引けばますます学校へのハードルが高くなってしまいます。

親としては子どもに寄り添いながらも、学校との連携が不可欠です。そして、ここで注意すべきは、ただ「登校を促す」ことに固執せず、子どもが安心して登校できる環境を整えることに重点を置くという姿勢です。本稿では、不登校の子どもが少しでも登校への第一歩を踏み出せるよう、学校との連携において取り組むべき具体的な行動を5つ紹介します。担任の先生や学校との効果的な協力体制を構築し、子どもが自身のペースで成長を実感できるよう、親としてどのように関わるべきかを掘り下げていきます。

行動① 担任の先生と親の面談

不登校が始まると、多くの親はまず「なぜこうなってしまったのか」と、その原因に思いを巡らせます。しかし、この問いの問題は、そのほとんどが“学校に戻るための具体的な対策”に結びつかないからです。原因を探ることは一見有効に思えますが、実際には過去の出来事を振り返るだけで、次に進むための方策には直結しないことが多いのです。

そこで、「不登校になってしまった理由」ではなく「登校するための障害とは何か」に焦点を当て、そこから問題を解決するための行動を考えていくことが重要です。

まず、担任の先生との面談において、親が学校側と連携し、子どもの状況を正しく共有することが求められます。しかし、ここでも注意すべきは、原因の解明にこだわらない姿勢です。不登校の原因が何であれ、すでに現在の状況は「学校に行けていない」という事実であり、それに対処する方策を話し合うことが必要です。多くのケースで、不登校の直接的な原因が解明されたところで、その事実が解決への具体的な手段に変わることはありません。だからこそ、学校側と保護者の間では、不登校の理由について議論するのではなく、いかにして登校へのハードルを減らせるかに注力するべきなのです。

この「登校へのハードル」とは、子どもが抱えているストレスや不安、学校に対する抵抗感を指します。担任の先生と話す際には、具体的にどのような要素が子どもにとって苦痛であるか、またその苦痛を和らげるために何ができるかを冷静に話し合いましょう。ここで肝心なのは、子どもに対して無理強いをしないことです。親が過度に「学校に行くべきだ」と言い過ぎれば、子どもはさらに心を閉ざしてしまう可能性があります。子ども自身の声を尊重しつつ、親としての願望や希望は一旦置いて、あくまで客観的に現状を把握することが重要です。

また、面談を行う前に、子どもの心の準備も整えておく必要があります。多くの子どもは、親との会話の中で「どうして学校に行けないのか」という質問をされると、大きなプレッシャーを感じます。これは、子ども自身も自分の気持ちをうまく言葉にできないからです。たとえば「学校が怖い」「友達と会うのがつらい」といった感情はあっても、それがなぜなのかまでは説明できないことが多いのです。そのため、事前にできるだけ子どもから「今、学校に行くとどう感じるか」「学校に行くことを考えるとどんなことが頭に浮かぶか」を具体的に聞いておき、登校に対するストレスの原因をおおまかにでも把握しておくと、先生との面談もスムーズに進みやすくなります。

(参考:不登校中の子どもとの対話のポイント

さらに、親が学校側に対して不満や要求を伝える場面では、慎重な姿勢を保つことが大切です。学校との連携は、あくまで協力関係でなければなりません。特に「学校がもっとサポートしてくれるべきだ」という主張を強めると、学校側も緊張感を持ちやすく、コミュニケーションがうまくいかない場合が少なくありません。学校の教師も、人員や時間の制約の中で多くの生徒を支援しています。

そのため、学校のサポートを期待する一方で、保護者自身が家庭でどのようなフォローが可能かを考え、それを先生と共有することが重要です。例えば、「家庭で子どもがリラックスできる時間を増やしてみます」「授業の内容は家庭で確認してフォローします」といった姿勢を示すことで、学校と家庭の協力体制が築かれやすくなります。

このようにして、担任の先生と親の面談は「登校するための障害をどう乗り越えるか」をテーマにすることで、具体的で効果的な支援の道筋を探るものとなります。

要点1. 原因究明よりも行動へ

不登校の原因を探ることは重要ですが、それよりも「登校を妨げているものは何か」という視点が大切です。原因究明にこだわりすぎると、具体的な解決策が見えにくくなります。

要点2. 学校との連携と子どもの声

担任との面談では、原因論ではなく、登校のハードルを下げるための具体的な方策を話し合うことが重要です。子どもの気持ちに寄り添い、無理強いせず、客観的に状況を把握することが求められます。

要点3. 家庭での準備と学校との協力

面談の前に、子どもと事前に話し合い、学校に対する不安や抵抗感を把握しておくとスムーズです。また、学校に対しては、不満を訴えるのではなく、協力的な姿勢を示すことが大切です。

行動② 担任の先生と子どもの面談

不登校の子どもが親と話す際、親の期待や失望を感じてしまい、正直に思いを伝えられないことがあります。これは、子どもが無意識に「親に迷惑をかけたくない」「心配をかけたくない」と感じてしまうからです。また、子どもは親に対して自分の弱みを見せたくないという思いから、強がりを言ったり、反発するような態度を取ったりしがちです。そのため、不登校の子どもが抱えている本当の思いを引き出すには、親ではなく担任の先生と直接面談することが大きな助けになります。

とはいえ、担任の先生もまた、子どもがどこまで本音で話せる相手なのかは状況次第です。特に、不登校の原因が担任の先生の対応に起因している場合や、先生に対して強い恐怖心や不信感がある場合には、逆効果になりかねません。こうしたケースでは、担任以外の学年主任や生活指導担当の先生など、別の信頼できる教員と話す機会を調整するのが適切です。

担任の先生との面談を行う場合、親としては子どもと先生の対話を週に2〜3回、短時間でもいいので確保するように依頼することが理想的です。頻度が少ないと、子どもが先生とのコミュニケーションを疎遠に感じてしまい、話をすること自体が負担になってしまう可能性があるからです。例えば、週に1回の対話だけでは、先生と話すことが「特別なこと」と感じられ、プレッシャーとなってしまう場合があります。そのため、日常的に少しずつ先生との接点を持つことで、子どもは徐々に学校に対する抵抗感を減らし、リラックスした状態で先生と向き合えるようになります。

ここで重要なのは、面談の内容が登校の促しに終始しないようにすることです。不登校の子どもが先生と話す際に「いつ登校する?」や「何が嫌なの?」といった質問ばかりをされると、学校へのプレッシャーが増してしまい、ますます心を閉ざしてしまう可能性があります。先生との会話が登校を強要するものではなく、子どもが現在感じている不安や葛藤を自由に話せる場として機能するように、会話の進め方について先生と親が事前に相談することも大切です。

また、面談の際に子どもが特定のストレスや不安を語った場合、先生がその場で対応を考えるのではなく、保護者に情報をフィードバックし、保護者との協力のもとで具体的な対策を練るようにしましょう。たとえば、子どもが「教室の雰囲気が怖い」と感じていると話した場合、先生と保護者が協力してどのような環境改善が可能かを一緒に考えることが有効です。保護者と先生が共通の理解を持ち、子どもが安心して自分の思いを話せる環境を整えていくことで、子どもは学校との距離感を徐々に縮めていくことができます。

さらに、先生との面談を行う中で、子どもが特定の問題に対して真剣に向き合っている姿勢を保護者が評価し、感謝の言葉を伝えることも効果的です。「先生と話してくれてありがとう」「自分の気持ちを少しでも伝えようとしてくれて嬉しい」という言葉は、子どもにとって大きな励みとなります。学校に通えない自分がどこかで「親の期待を裏切っている」と感じていることが多いため、親からのポジティブなフィードバックは、子どもにとって安心感と自信を取り戻すきっかけになります。

このように、担任の先生や他の教員との面談を適切に利用することで、子どもが少しずつ心を開き、不安やストレスを乗り越えるための準備が整えられていくのです。

要点1. 子どもと親のコミュニケーションの難しさ

不登校の子どもは、親に心配をかけたくないという思いから、本当の気持ちを打ち明けにくいことがあります。また、親の期待に応えたいというプレッシャーから、無理をしてしまうこともあります。そのため、子どもが抱えている問題を正確に把握するためには、第三者の視点が必要となります。

要点2. 担任の先生との連携の重要性

担任の先生は、子どもと日常的に接しているため、子どもの様子を最もよく把握している人物です。しかし、担任の先生も万能ではなく、子どもが心を開けない場合もあります。そのため、学年主任や生活指導担当の先生など、別の教員と連携することも重要です。

要点3. 効果的な先生との面談

先生との面談では、登校を促すのではなく、子どもの話をじっくりと聞くことが大切です。面談の頻度を週に2~3回程度に設定し、子どもがリラックスして話せるような雰囲気作りを心がけましょう。また、面談の内容を保護者にフィードバックし、学校と家庭で連携して子どもをサポートすることが重要です。

3. 先生の家庭訪問を調整

不登校が長引くと、家庭と学校の双方からの支援がますます重要になります。その際、家庭訪問は子どもが学校との接点を感じながらも安心して話せる有効な手段となり得ます。しかし、これは慎重に行うべきアプローチです。家庭訪問は、保護者から見れば「学校側の手厚いサポート」として受け取れるものの、同時に学校側には多大な負担がかかります。そのため、家庭訪問を依頼する際には、慎重に計画を立て、タイミングを見極めることが重要です。

まず、家庭訪問の前提として、ある程度オンライン(電話・ビデオ面談など)での対話が進んでいることが望ましいです。オンラインでのやり取りを通じて、先生と子どもが少しでも打ち解けていると、家庭訪問の際にも心理的な負担が軽減されます。子どもが全く先生との接触がないままに突然家庭訪問をされると、かえって緊張やプレッシャーが増し、子どもがさらに心を閉ざしてしまうリスクがあるからです。そのため、事前にオンラインや電話でのコミュニケーションを一定の頻度で取り、子どもが「先生に会っても大丈夫かも」と思える状態を目指します。

家庭訪問を依頼する場合、先生が家に来ることの意味を子どもにしっかりと伝えることが肝要です。「先生が家に来てくれるから、学校に行けるように話してね」というようなプレッシャーをかけるのではなく、「先生が少し顔を見せに来てくれるみたいだよ」というニュアンスで、できるだけリラックスした雰囲気を保ちましょう。

家庭訪問の目的を「学校への復帰」に結びつけるのではなく、「ただ話をするため」という形で伝えると、子どもが構えずに済みます。親としては、家庭訪問が学校への復帰に直接つながることを期待したいところですが、それが子どもに重圧として伝わらないよう配慮することが大切です。

また、家庭訪問は学校側にとっても特別な時間を割いて行う活動であることを理解しましょう。例えば、家庭訪問の依頼が学校側にとってどれほど負担になるかについて、保護者が十分に理解しているかどうかが重要です。先生が家庭訪問を行うためには、通常の業務以外の時間を使う必要があるため、学校側からしても慎重に対応せざるを得ません。こうした状況を理解し、保護者としても家庭訪問は先生への負担が大きいと知った上で、先生に対して感謝の意を持って臨むことが大切です。

また、先生が家庭訪問を行う場合、その時間を有効に活用するため、事前に先生とどのような内容について話すべきかを相談しておきましょう。例えば、子どもが学校についてどのように感じているか、現在抱えている不安や問題について、先生と親が共通の認識を持っていると、家庭訪問がただの形式的なものではなく、具体的な成果を得る機会となります。さらに、子どもが話しやすい雰囲気を保つために、家庭訪問の日程や時間帯も子どものリズムに合わせるとよいでしょう。例えば、子どもが気分の良い時間帯に訪問を設定することで、リラックスした会話が生まれやすくなります。

最後に、家庭訪問が実現した場合、その成果を学校と共有し、今後の支援体制を継続していくことが重要です。例えば、家庭訪問で得られた子どもの心境や現状を学校全体にフィードバックすることで、担任以外の先生も子どもを理解し、学校全体で支える態勢が整うことになります。家庭訪問を通して、子どもが少しでも学校に近づく心境になった場合、次の段階としての具体的な行動計画を担任の先生と保護者で再度練り直すと良いでしょう。例えば、少しずつ登校できる環境づくりとして、無理のない範囲で短時間の登校を試みるなど、子どもの状況に合わせた柔軟な対応が可能になります。

このように、家庭訪問は学校と家庭が一体となって行うサポートの一環であり、タイミングや配慮の仕方が大きな成果を生む重要な要素です。

要点1. 家庭訪問は慎重な計画と準備が必要

家庭訪問は、不登校の子どもと学校との橋渡しとなる有効な手段ですが、安易に行うべきではありません。事前にオンラインでのコミュニケーションを取り、子どもが先生に安心して話せる環境を整えることが大切です。また、家庭訪問の目的を「学校復帰」ではなく、「ただ話す」という形で伝えることで、子どもの負担を軽減できます。

要点2. 学校側の負担を理解し、協力的な姿勢で相談

家庭訪問は、学校側にとっても多大な負担となる活動です。そのため、保護者は、家庭訪問を依頼する際に、学校側の立場を理解し、感謝の気持ちを持って接することが重要です。また、家庭訪問で得られた情報を学校と共有し、今後の支援に繋げることも大切です。

要点3. 家庭訪問を効果的に行うための準備

家庭訪問を効果的に行うためには、事前に先生と相談し、訪問の目的や内容を明確にすることが大切です。また、子どもの様子やリズムに合わせて、訪問の日時や時間帯を設定することも重要です。家庭訪問を通して、子どもが少しでも学校に近づく心境になった場合は、次の段階として具体的な行動計画を立てることが求められます。

行動④. クラスの人間関係を整理

不登校の背景には、クラスでの人間関係が関係しているケースが少なくありません。学校生活の中で、子どもが他の生徒とどのような関わりを持っているかは、不登校を乗り越える際に大きな影響を与えます。文部科学省の調査によると、約15%の不登校児がクラスでの人間関係を「登校しづらくする要因」として挙げています。この「人間関係」とは必ずしも直接的ないじめを指すものではなく、微妙な対人関係の摩擦や、些細な衝突によるストレスも含まれます。こうした関係のこじれが、子どもの学校への抵抗感を生んでいることがあるのです。

(参考:不登校の実態2024年データ

不登校の原因がいじめの場合は、学校側に厳密な調査と対応を求めることが不可欠です。いじめが関係している場合には、担任の先生だけでなく、学年主任や校長、場合によってはスクールカウンセラーや教育委員会も含めたチームで対応することが必要です。

しかし、いじめとまではいかない軽微な人間関係のトラブルが原因の場合、その対処には配慮が求められます。例えば、クラスメートとの些細な意見の食い違いや、思い違いによるすれ違いが原因の場合、子ども自身が感じている「気まずさ」や「不安」を減らすためのサポートが有効です。

このような場合、親が子どもを無理に説得しようとするのではなく、担任の先生と協力して慎重に対応を進めるのが効果的です。たとえば、担任の先生が中立的な立場から、子どものトラブル相手の生徒と話をしてみることをお願いするのも一つの方法です。この対話は、決してその相手を問い詰めたり、非難することが目的ではありません。むしろ、相手の生徒がどう感じているかを穏やかに話し、子どもの受けた印象が「誤解」であった可能性を示すことが狙いです。先生を通して、例えば「相手も非難する意図で言った訳ではなかったよ」「君が言った言葉は、相手は特に傷ついたりしていないみたいだよ」というように伝えてもらうことで、子どもの心の負担が軽減される可能性があります。

こうしたアプローチには、周囲の反応や状況のフィードバックを通して「自分が孤立しているわけではない」「些細なことを気にしすぎていたかもしれない」と感じられるようになる効果があります。人間関係における不安や緊張感が少しずつ和らげば、子どもも徐々に学校に対する心理的なハードルを下げることができるでしょう。

また、人間関係の調整を行う際には、担任の先生が子どもの話を一方的に受け取るのではなく、客観的な視点で関係性の背景を理解するよう努めることが求められます。親としても、子どもが語る内容をそのまま担任に伝えるのではなく、子ども自身の思いをやんわりと伝えつつ、先生が偏りなく対処できるようにサポートする姿勢が大切です。例えば、親としても「あの子と仲が悪いという話があったが、子ども自身ももしかしたら敏感になりすぎているかもしれないので、先生にも様子を見ていただけると助かります」といった形で、中立的に話を持ちかけると良いでしょう。

さらに、親や先生が子どもに対して「学校には楽しい面もあるよ」「他にも話しやすい子がいるかもしれない」と、ポジティブな視点を持たせることも効果的です。しかし、子どもが無理に友達を作ることを強要したり、「もっと頑張って」といった精神論を持ちかけたりすることは逆効果です。子ども自身が自発的に人間関係を再構築しようとする気持ちを持てるよう、親も担任の先生も見守る姿勢でいることが重要です。学校内での人間関係の調整を適切にサポートすることで、子どもが安心してクラスに戻るための足掛かりを作っていくことができるでしょう。

このようにして、子どもが抱える人間関係の不安を少しずつ解消する手助けをすることで、学校という環境に再び安心感を感じることができるようになります。

要点1. 不登校の原因と人間関係

不登校の原因として、クラス内の人間関係が大きな影響を与えているケースが多く見られます。これは、いじめのような直接的なものだけでなく、微妙な対人関係の摩擦や誤解など、様々な要因が考えられます。これらの問題が、子どもに学校に対する不安や抵抗感を生み出し、不登校につながることがあります。

要点2. 人間関係の問題への対応

人間関係が原因の不登校に対しては、学校、教師、親が協力して慎重に対応することが重要です。例えば、担任の先生が中立的な立場で、トラブル相手の生徒と話をしたり、子どもに状況を客観的に伝えたりすることで、子どもの不安を軽減することができます。また、親も、子どもの話を一方的に伝えるのではなく、教師に客観的な情報を提供し、協力的な姿勢を示すことが大切です。

要点3. ポジティブなアプローチ

子どもに無理に友達を作らせたり、精神論で励ますのではなく、子どもが自ら人間関係を再構築できるよう、周囲が見守ることが重要です。学校での楽しい面や、他の友人の存在などを伝え、学校という環境に再び安心感を感じられるようにサポートすることが求められます。

5. 家庭学習と宿題の実施

不登校が長引くにつれて、子どもが授業から遅れを取ることは避けられなくなります。この学業の遅れがさらに子どもの不安やストレスを増幅させ、「授業についていけないのなら学校に戻れないかもしれない」というプレッシャーを感じさせてしまいます。そのため、家庭学習と宿題の実施は、登校への不安を和らげるためにも、非常に重要な要素です。子どもが少しずつでも学習を続けていることで、学校に戻った際に周囲と大きく差がつかないように支援することができます。

まず、家庭学習を行うにあたって、保護者が担任の先生から授業の進捗や課題内容を定期的に聞き出し、それをもとに子どもが取り組みやすい範囲で学習を進めていくのが望ましいです。この「進捗を知っている」という感覚が、子どもに「置いて行かれていない」という安心感をもたらします。たとえば、週に1回、担任の先生に授業内容を確認し、特に大事なポイントや理解しておくべき内容を共有してもらうと良いでしょう。その内容をもとに、家庭で無理のない範囲で子どもに学習を促すことが可能です。

家庭学習にはもう一つの利点があります。家にいる時間を「楽で快適な空間」としてだけではなく、学びを含む「成長の場」として子どもに認識させることができる点です。不登校が長期化するケースでは、家庭が子どもにとってあまりにも居心地の良い避難所になり、学校への再登校が心理的に遠ざかってしまうことがあります。

そこで、家庭内で定期的な学習時間を設け、学習を行うことで「いっそ学校に行って授業を受けた方が良いかもしれない」と思えるような環境を整えることができます。具体的には、「家で学ぶことも大事だけど、やっぱり先生に教えてもらったほうが分かりやすいよね」などと親が話してみたり、学校で学ぶことの利点をさりげなく伝えると良いでしょう。

合わせて、子どもが不登校であることを理由に、「休養が必要だから」と甘やかしてしまい、学業をまったく求めない生活を送らせることには注意が必要です。不登校は決して「病気」ではありません。過剰にケアをしすぎると、かえって学校に戻る意欲を削いでしまう可能性があります。家庭内での学習は、プレッシャーをかけずにゆるやかに行う一方で、少しずつ自分で計画を立てたり、学習の目標を持てるように手助けすると良いでしょう。たとえば、学習内容に小さな区切りを作り、達成感を得られるようにすることで、子どもの自己効力感を高めることができます。「今日は算数のこの部分だけやってみよう」「次の週末までにこの問題を解けるようにしよう」といった小さな目標を設定し、達成したら褒めることが効果的です。

また、子どもの学習に関しては、親が全面的に手を出さないことも重要です。不登校の子どもに過剰な手助けをすると、子どもが自分の力で問題を解決する意欲を失ってしまう可能性があります。たとえば、宿題を手伝うにしても、最初の一問だけを一緒に解き、次は自分で解いてみるよう促すと良いでしょう。子どもが自分で学ぶ楽しさを感じられるよう、親はサポートに徹することが大切です。学習の過程で「分からないところがあったら手伝うけど、自分で考える時間も大切だよ」と声をかけることで、子どもに自己主導的な学習態度を持たせることができます。

さらに、家庭学習の進捗を学校と共有することも、再登校をスムーズにする要素となります。家庭で行っている学習の成果を担任の先生に伝えることで、学校側も子どもの努力を理解し、登校再開時のサポートがしやすくなります。たとえば、「家でこの範囲は頑張って勉強しました」と担任の先生に伝え、授業でその範囲が出た際に配慮してもらうようお願いすることも一つの手です。これにより、再登校時に子どもがついていきやすい環境を整えられるのです。

家庭学習と宿題を通じて、子どもが少しずつ学業に対する自信を取り戻し、学校生活への準備が整っていくことが期待できます。

要点1. 登校への不安軽減と学力維持

不登校が長引く中で、家庭学習は子どもが学校に遅れをとる不安を解消し、学力維持に不可欠です。家庭学習を通して、学校に戻った際に周囲との差を感じにくくなり、登校への抵抗感を減らすことができます。

要点2. 家庭環境の転換と学習意欲の向上

家庭学習は、家庭を単なる休息の場から学びの場へと転換させます。これにより、子どもは「学校で学ぶ方が良い」という意識を持ち、自然と学校への意欲が湧いてきます。

要点3. 子供の主体性と自信の育成

家庭学習では、子どもに過度な干渉をせず、自分で課題を見つけ、解決する機会を与えることが重要です。小さな目標を設定し、達成感を味わうことで、子どもの自信と自己効力感を高めることができます。

まとめ

不登校への対応には、親の忍耐と柔軟な視点、そして学校との緊密な連携が求められます。担任の先生と親の面談で「登校の障害」について具体的に把握し、担任の先生と子どもが週数回の対話を重ねることで、子どもが少しずつ学校と関わる気持ちを取り戻すことが期待できます。

また、オンラインでの会話が進んだ段階で家庭訪問を行うことで、子どもにとって学校が身近な存在となり、登校への不安が和らぎます。さらに、クラス内の人間関係に配慮し、担任の先生を介した調整を行うことで、対人関係の緊張を軽減できます。そして、家庭内で学習の習慣を取り戻すことで、学業面での不安が解消され、再登校へのモチベーションが高まるでしょう。

これらの行動は、単に「登校を促す」ものではなく、子どもが安心して学校生活に戻れるための「支え」を築くためのものです。焦らず、一歩一歩子どもの気持ちに寄り添いながら進めていくことで、子どもは学校に戻り、社会とつながるための自信を少しずつ育むことができるでしょう。


ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校を長期化させないための5つの行動

不登校を長期化させないための5つの行動

5つの行動とは

行動要点必要な行動
1. 会話の機会を作る子どもが一人で悩み続け、内向的にならないよう、家庭内で自然に会話を生み出す場を設けることが重要です。親子のコミュニケーションが信頼関係を育みます。食事は一緒に取り、日常の些細な話題や子どもの関心事に触れながら会話を楽しむことで、自然な交流が生まれ、子どもが心を開きやすい環境を整えます。
2. 病人のように扱わない子どもに過度な気遣いや甘えを与えると、自分が「問題を抱えた存在」だと思わせてしまいます。成長を促すためには、自然な態度で接することが大切です。落ち込んでいる日も過剰に構わず、普段通りに接します。小さな家事など家庭内の役割を任せることで、子どもが家族の一員として必要とされている感覚を持ち、自信を取り戻せるようにします。
3. 親が暗くならない親が落ち込み、家庭内の雰囲気が重くなると、子どもはさらに家から出ることが難しくなります。親が心の余裕を持ち、家庭を「安心できる場」にすることが大切です。二人親であれば、夫婦の対立や口論を子どもに見せないように配慮し、一人親の場合も生活リズムを保ちながら日常を維持することで、家庭内の安定感を保ちます。
4. ゲームやスマホは制限するデジタル依存により、学校や社会への関心が薄れることを防ぐため、ゲームやスマホの使用を管理し、現実とのバランスを取ることが必要です。リビングでのみ使用するなど家庭内ルールを設定し、使用時間を制限します。家族で参加できるアクティビティを導入し、デジタル依存に代わる楽しみを見つけさせます。
5. 行きたくないのか、行く気力がないか見極める学校に対して興味を失っているのか、精神的に行けない状態かを見極め、子どもの本音を理解することが重要です。状況に合わせた適切なサポートを行いましょう。興味のある活動を見つけて挑戦させる、または小さな成功体験を積ませるなど、子どもが「自分には価値がある」と感じられる機会を提供し、徐々に自信を回復させます。

はじめに: 不登校という「今」に立ち向かうために

不登校に直面する家庭は、日々の生活の中で途方もない孤独や不安に苛まれることがほとんどです。「学校に行けない」という事実を目の当たりにする親も子どもも、それまで当たり前だと思っていた「普通の生活」が音を立てて崩れるような感覚に襲われます。しかし、不登校はその時点で子どもの人生が決まってしまうわけではなく、まだまだこれから多くの可能性があります。この現実に直面したとき、親や家族に求められるのは「現状を受け入れる」一方で、「未来を開く行動」を起こすことです。

それでは、不登校を長期化させないためには、どうしたらよいのでしょうか?
一般的なアドバイスや情報だけではなく、実際に効果のある具体的な行動をとる必要があります。本稿では、不登校が始まってから長期化させないために、親が意識すべき5つの行動について考察していきます。


行動1: 会話の機会を作る – 日常の中で共に過ごす時間

不登校が始まると、まず子どもが自分の殻に閉じこもるようになることが多いです。部屋に引きこもりがちになり、家族とも顔を合わせない日々が続くと、親としてはどうしても心配や焦りが募ります。この段階で重要なのは、無理に問い詰めたり「学校に行かない理由」を聞き出そうとしたりするのではなく、自然な形で会話のきっかけを作り出すことです。例えば、食事はできる限り一緒にとり、ちょっとした家事を手伝ってもらうことで、子どもが自分の殻に閉じこもり続けないようにすることが大切です。

会話のきっかけとして効果的なのは、子どもが興味を持っていることや、好きな話題に焦点を当てることです。もし子どもが部屋で本を読んでいるならば、その本の内容に触れたり、テレビで見ている番組について話しかけたりすることができます。ポイントは「学校の話題」を避けつつ、リラックスした雰囲気で自然に会話が流れるようにすることです。このようにして親子の間に小さな交流の場を持ち、会話が生まれる環境を保つことで、少しずつ心の扉が開かれていきます。

さらに、食卓での会話は特に効果的です。家族全員での食事の場では、自然と会話が広がることが多く、子どもが自分の思いや考えを共有しやすい雰囲気が生まれます。ここで注意すべきなのは、「学校に行かなければならない」といった暗黙の圧力をかけないことです。焦らず、日常の些細な話題に耳を傾ける姿勢を示すことが、子どもの信頼を取り戻す第一歩になります。食事の場は、親子の間に信頼関係を築く上で非常に重要な役割を果たします。


行動2: 病人のように扱わない – 自立と成長を尊重する姿勢

不登校に陥った子どもを、過度に甘やかしたり、病人のように扱うことは逆効果です。ここでいう「病人扱い」とは、親が過剰に気を使い、子どもの機嫌を伺うような行動を指します。確かに、不登校の背景にはさまざまな要因が存在し、子どもが傷ついている可能性もあります。しかし、過度な優しさや迎合的な態度は、かえって子どもに「自分は親にとって問題を抱えた存在だ」という無意識のメッセージを伝えることになりかねません。

不登校だからといって、子どもが一切外出しない、社会生活から離れてしまう必要はありません。むしろ、散歩に出かけたり、買い物に付き合ったり、家族と一緒に活動する機会を増やすことが、子どもにとっての精神的なリハビリテーションとなります。家庭という場が子どもにとって唯一の生活の場であり続ける限り、外界との接触がないままでは自尊心や活力が衰えていく危険性が高まります。

この「病人扱いしない」姿勢は、家の中での小さな習慣から始まります。たとえば、子どもが気分が落ち込んでいる日であっても、できるだけ普段通りに声をかける、助けが必要な時に手を貸す、といった自然な接し方を心がけることが重要です。また、何か小さな家事を頼むことで、子ども自身が家族の一員であり、自分にも役割があると感じるきっかけを提供することが大切です。小さな「役割」を与えることで、子どもは自分が必要とされていることを実感し、自信を取り戻す契機になります。


行動3: 親が暗くならない – 子どもにとっての「安心の場」を保つ

不登校が始まると、親としては心が暗く沈みがちです。「どうしてうちの子が……」という思いが頭をよぎり、無力感や焦燥感に苛まれることは少なくありません。しかし、ここで重要なのは、親が家庭という場を「暗く重い空間」にしないことです。もし家庭が重苦しい雰囲気で満たされてしまえば、子どもはさらに家から逃げることができなくなり、孤立感が深まってしまいます。

二人親の場合は、特に夫婦間の不和を子どもに見せないよう注意が必要です。不登校が起きると、夫婦間で意見が対立することが少なくありません。「どう接すればよいのか」「どこまで干渉すべきか」といった考えの違いが、子どもの前での口論に発展することがあります。しかし、家庭内での争いは、子どもにとって大きなストレスとなり、不登校を長期化させる一因にもなりかねません。

一人親の場合も同様で、生活が不安定にならないように心がけることが大切です。経済的な負担や生活リズムの変化が、親子の関係に影響を与えることが多いですが、リモートワークが可能であれば、家にいる時間を増やして子どもと過ごす機会を作るなど、無理のない範囲で工夫することが求められます。


行動4: ゲームやスマホは制限する – 中毒性の高い娯楽からの脱却

不登校が長期化する原因の一つに、ゲームやスマートフォンへの依存が挙げられます。特に、子どもが学校生活を避けるようになると、家庭での唯一の娯楽としてゲームやスマホに過度に依存するケースが多く見られます。これらのデジタル機器は、瞬時に快楽を与え、現実逃避の手段として非常に強力です。夢中になればなるほど、学校という現実から距離を置きやすくなり、その結果、外の世界に対する興味や関心が薄れてしまいます。

ここで重要なのは、子どもがデジタル依存に陥らないようにするための家庭内ルールを設定することです。例えば、「リビングでのみ使用して良い」「使用時間を1日2時間までとする」など、具体的なルールを決めましょう。リビングでしか使用できないという制限を設けることで、親の目が届く範囲での利用に限定され、子どもが自分の部屋にこもってひたすらゲームやスマホを使うことを防ぐ効果があります。

ただし、単にルールを押し付けるだけでは、子どもにとっては窮屈で反発を招きやすいです。そのため、子どもと一緒に話し合いながら、納得してもらえる形でルールを設定することが重要です。また、ゲームやスマホを手放すためには、代わりの娯楽や充実した活動を見つけることも必要です。たとえば、家族で一緒に楽しめるボードゲームや、趣味の一環として親が参加するスポーツやアウトドア活動など、家庭の中で新たな楽しみを見つけられるように工夫しましょう。

ここで大切なのは、ゲームやスマホの利用を「完全に禁止する」ことを目標にするのではなく、「使い方を管理し、適度に利用する」ことです。絶対的な禁止は反発を招きがちであり、かえって隠れて使用するリスクもあります。親が一方的に管理するのではなく、適切な距離感で子どもに向き合い、日常生活の中に健全な利用習慣を築く手助けをする姿勢が求められます。


行動5: 行きたくないのか、行く気力がないのか見極める – 子どもの本当の気持ちを理解する

不登校の背景にはさまざまな原因が潜んでいます。中でも、子ども自身が「学校に行きたくない」のか「学校に行く気力がない」のか、この違いを見極めることは非常に重要です。この2つは一見似ているように思えますが、実は全く異なる心理状態を反映しています。

まず、「学校に行きたくない」場合について考えてみましょう。この場合、子どもは学校に行く意味や価値を見出せなくなっている可能性があります。もしくは、学校以外に興味や関心が強くあるため、学校生活に対して魅力を感じられなくなっているのかもしれません。こうした子どもには、無理に学校に戻すことを強制するのではなく、「他の挑戦を応援する」選択肢も考慮する必要があります。たとえば、興味のある分野の習い事や地域の活動に参加させるなど、学校以外の場での経験を通じて自己成長の機会を与えることが大切です。新しい環境での成功体験や人との交流が、自然と学校への関心を引き戻すきっかけになるかもしれません。

一方で、「行く気力がない」という場合は、子どもが心理的に大きな負担を抱えている可能性が高いです。このケースでは、ただ単に「やる気がない」という一言では片付けられません。子どもは何らかのストレスや不安によって、学校に向かう力を失っているのです。このような場合、親ができることは、まず子どもの気持ちをしっかりと受け止め、その上で具体的なサポート方法を考えることです。たとえば、子どもが「友達関係で悩んでいる」「先生との関係がうまくいっていない」など、特定の要因がある場合には、早期に学校に相談し、状況を改善する努力が必要です。学校の協力を得ながら、子どもが少しずつ安心して通える環境を整えることで、再び登校する気力を取り戻す可能性が高まります。

また、日常生活の中で子どもが小さな成功体験を積み重ねられるように手助けすることも有効です。家事の手伝いや簡単な目標を達成させるなど、子どもが「自分はやればできる」という感覚を取り戻す機会を増やしていきましょう。小さな達成感を積み重ねることで、自信を回復し、最終的には学校へ戻る力が湧いてくるのです。


おわりに: 子どもを支えることに向き合う

不登校が始まると、親もまた自分自身と向き合うことを求められます。「どうすればよいか分からない」という不安や、他の家族や友人に相談できない孤独感、そして時には「自分が悪かったのではないか」という罪悪感にさいなまれることもあるでしょう。しかし、ここで一つだけ強調したいのは、親が冷静であることが、子どもにとって最大の安心材料となるということです。不登校という現実に直面しながらも、親が「どうするべきか」を真剣に考え、子どもに対する一貫した姿勢を保つことが、子どもが社会復帰への道を歩むための支えとなります。

不登校を長期化させないために大切なのは、親が焦らず、そして甘やかしすぎず、時には厳しさを持って対応することです。子どもに「自分は必要とされている」「家族に愛されている」という実感を与えるために、親は日常の中で小さな行動を積み重ねていく必要があります。この覚悟を持って、子どもと向き合う日々を過ごすことで、やがて子どもが自分の足で立ち上がり、再び学校生活に戻る日が訪れるかもしれません。

親が変わることで、子どもは変わります。そして、家庭の中での温かい支えと信頼が、子どもの未来を照らす一筋の光となるでしょう。


ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校の現状(文部科学省 2024年データから)

不登校の現状 文部科学省2024データ

近年、日本の不登校問題はかつてない規模で拡大しており、2024年の最新データもその深刻さを示しています。不登校の増加傾向は11年連続で続いており、特に小中学校の不登校者数は過去最多を記録しています。また、学校に行かないという単なる「欠席」の枠を超え、子どもたちの心理的な健康や家庭のあり方など、深い要因が関与していることが明らかになりつつあります。本記事では、最新のデータを基に、保護者の方々が知っておくべき不登校の現状と背景について解説します。

1. 不登校の更なる増加

不登校児童生徒数の推移
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、2023年度における小中学校の不登校児童生徒数は約34万6千人に達し、前年から約4万7千人増加しています。これは、在籍する児童生徒1000人あたり約37.2人が不登校であることを意味し、少子化が進む中で不登校率が増加し続けている現実を浮き彫りにしています。

このように、不登校は特定の子どもたちだけの問題ではなく、広範にわたる社会現象となっています。さらに注目すべきは、小学校からの不登校の増加が顕著である点です。小学校低学年でも早い段階で学校に適応できない子どもが増えており、これがその後の中学校、高校と続いていくケースが多く見られます。こうした背景には、学校生活への適応が難しい子どもたちが増え、そのまま中学校、高校へと進学する際に、さらに不登校が深刻化している現実があると考えられます。

2. 小中学校における不登校の状況

小・中学校における不登校の状況について
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」
不登校児童生徒数と1,000人当たりの不登校児童生徒数
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

データによると、不登校児童の割合は小学校で21.4人(1000人当たり)、中学校で67.1人に上っており、中学生の不登校率が非常に高いことが分かります。この数値は単に「学校に行かない」子どもが増えたというだけでなく、学校という場所に適応できない、またはその環境に魅力を感じられない子どもが増加していることを示しています。実際、「学校生活にやる気が出ない」「生活リズムが整わない」「不安や抑うつ感を訴える」といった相談が、不登校児童生徒についての調査で多く寄せられており、このような心の不調が根本にあることが確認されています。

3. 全国の不登校児童生徒数

全国1,000人当たりの不登校児童生徒数
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

全国的に見ても、不登校の問題は地域差を伴って広がっており、特に都市部やその周辺地域で不登校率が高い傾向が見られます。各地域の教育委員会が対応策を講じていますが、根本的な改善には至っていないのが現状です。地域ごとの教育環境や家庭環境の違いが、不登校の原因の一因とも考えられています。また、都市部ではSNSやゲームなどのデジタル環境にアクセスしやすく、学校生活の中での人間関係が希薄になりがちであると指摘する声もあります。こうした背景が不登校率の上昇に影響している可能性もあると考えられます。

4. 不登校の要因

不登校児童生徒について把握した事実
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

2023年度の調査では、不登校の背景にある具体的な要因として以下のような事実が挙げられています:

  • 学校生活への意欲の欠如:32.2%の不登校児童が「学校生活に対してやる気が出ない」と答えています。これにより、彼らが学校へ通うことの意義を見出せず、学習意欲や登校意欲が大きく損なわれていることがわかります。
  • 不安・抑うつの増加:23.1%が「不安や抑うつ」を訴えており、心理的な支援が必要とされていることが示唆されています。こうした子どもたちは、ただ休ませるだけでは根本的な解決にならず、心理的なケアが重要です。
  • 生活リズムの乱れ:23.0%が「生活リズムの乱れ」を理由に不登校となっており、夜更かしやゲーム依存などの影響も懸念されています。

これらのデータは、不登校が単なる「怠け」や「気の弱さ」ではない、多様な問題が重なり合っていることを示しています。上記の調査においても、「学校生活に対する意欲の欠如」や「生活リズムの乱れ」「不安・抑うつ」が報告されているように、心理的要因が大きなウェイトを占めています。これは、子どもたちが日常の生活や学業のプレッシャーを感じ、自己肯定感が低下していることを示唆しています。特に、友人関係の問題や成績不振など、学校での生活全般にわたって精神的な負担がかかっている子どもが多く見られます。

また、学校環境自体の変化も一因として挙げられます。教師の負担が増え、個別対応が難しくなっている状況では、学校側が子どもの心のケアに十分対応できないケースもあります。さらに、インターネットやSNSの普及によって、子どもたちが他者と比べやすくなり、そこから自己嫌悪や孤独感が生じることも指摘されています。子どもたちが本来持つべき「自分らしさ」や「自己肯定感」が損なわれ、不登校につながる例も多くなっているのです。

5. 不登校が家庭に与える影響

不登校問題は子どもだけでなく、家庭全体にも大きな影響を与えています。家庭内での摩擦や親子間のすれ違いが増えるといった声も多く、不登校の子どもを持つ親は、子どもが学校に行かないことへの不安や、周囲からの視線に悩むことが少なくありません。さらに、働く親が仕事を調整したり退職を余儀なくされたりするケースも見られ、経済的な負担や精神的なストレスが家庭にのしかかる状況です。

こうした家庭の変化は、親子関係にも大きく影響します。特に、不登校を「甘やかし」や「子どもの問題」と捉える親の場合、子どもの気持ちや状況を理解できず、結果的に親子のコミュニケーションが断絶する事態も少なくありません。

しかし、子どもが抱える問題に対する理解が進むことで、親が子どもと一緒に問題に向き合う姿勢が生まれ、家庭環境が改善に向かうこともあります。親が不登校の原因を理解し、柔軟に対応する姿勢を持つことが、子どもが安心して自分の悩みを話せる場作りの第一歩となるのです。

6. 不登校に対する学校と社会の支援

現在、不登校の子どもたちへの支援策は徐々に充実しています。教育現場では、学校外での学びの場やオンライン授業を提供する試みが行われ、子どもが家庭や別の場所から学べる選択肢が広がっています。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置も増え、心理的なサポートが得やすくなっています。これにより、子どもたちは学校以外の環境で自分のペースで学べる機会を持つことができるようになりました。

さらに、文部科学省は「学びの多様化」を掲げ、不登校の子どもたちが無理なく学べる環境作りに力を入れています。たとえば、「学びの多様化学校」や「COCOLOプラン」の展開により、不登校の子どもたちが学校外で学ぶ選択肢や支援体制を整備することが進められています。これにより、従来の学校教育にとらわれない学びの場が増え、子どもたちが社会とのつながりを持ちながら成長できる機会が広がっています。

7. 保護者が取るべき対応と心構え

不登校は子どもにとってつらい体験ですが、親にとっても大きな負担であり、どう対応すべきか悩むことも多いものです。ここで重要なのは、子どもを責めたり無理に登校させようとするのではなく、まずは子どもが何を感じているのか、どのような状況にあるのかを理解する姿勢です。特に、子どもが「なぜ学校に行きたくないのか」を話しやすい環境を作ることが大切です。

例えば、子どもが不安や抑うつを抱えている場合、無理に学校に戻そうとすることは逆効果になることが多く、子どもがさらなる心理的負担を感じる原因となります。逆に、学校に行かないことを選んだ子どもに対して、「別の形で学び続けることができる」「社会とつながる方法は他にもある」という視点を持つことが重要です。親が柔軟な姿勢で対応することで、子どもが自分のペースで自己を見つめ直し、次のステップに進むきっかけが生まれるのです。

また、保護者自身もサポートを受けることが重要です。不登校の問題に直面すると、親も孤独感や不安感を抱きがちですが、同じ悩みを持つ保護者が集まるサポートグループや専門家の相談を活用することで、気持ちが楽になり、冷静に対応できるようになることがあります。親が心の余裕を持つことで、子どもにもその安心感が伝わり、より良い親子関係を築く助けとなるでしょう。

9. 不登校の問題を社会全体でどう支えるか

不登校は、学校だけの問題でも親子だけの問題でもありません。社会全体で子どもたちが安心して学べる環境を構築することが必要です。たとえば、地域での支援体制を整えることや、学校外での学びの場を提供することなどがその一環です。さらに、近年は地方自治体でも不登校支援に積極的な取り組みが進んでおり、教育支援センターや地域の教育カウンセラーによる支援が充実しています。

これらの取り組みを効果的に活用することで、家庭だけでは解決が難しい問題にも、地域の力を借りながら取り組むことが可能です。子どもが学校外で学ぶことや、地域社会とのつながりを持つことは、自己肯定感の向上にもつながり、不登校解消の一助となるでしょう。

また、将来的には学校の役割や学びの在り方そのものを見直す必要もあります。固定的な学校教育の枠を超え、子どもたちが自らの個性や興味を活かして学べる柔軟な教育制度が求められています。社会全体で支援体制を整え、学校外での学びが「特別」ではなく、誰もが選べる一つの選択肢として位置づけられる社会を目指すことが、不登校解消の鍵となるでしょう。

10. 結論:不登校という現実と向き合うために

2024年の不登校に関する最新の状況は、私たちがこれまでの不登校への認識を見直し、より柔軟で多様な対応が求められていることを示しています。不登校は単なる「欠席」や「サボり」とは異なり、子どもたちが抱える多様な問題が複雑に絡み合った現象です。現代社会においては、こうした現実に対して無理に子どもを学校へ押し戻すのではなく、子どもの心の声に耳を傾け、彼らが自分のペースで学び、成長できる環境を整えることが最も重要です。

今後、学校や地域社会、家庭が一体となって、不登校という課題に取り組む姿勢が求められます。特に保護者は、子どもの行動を表面的に判断するのではなく、その背後にある心の状態や不安を理解し、寄り添う姿勢が必要です。そして、子どもが学校以外でも安心して学べる環境があることを示すことで、子どもたちが将来に向けて希望を持てる社会を築くことができます。不登校という現象が増加する中で、私たち大人ができることは、子どもたちが自分を信じ、自分らしい生き方を選択できる支援を惜しまないことです。

こうして、社会全体で「不登校」という課題に向き合う姿勢が広がることで、子どもたちが安心して自分の未来を築いていける道が開かれることを願っています。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校とは

不登校とは

はじめに:不登校が意味するもの

「不登校」という言葉が示す意味は、単なる学校への欠席ではありません。一般的には「怠け」「甘え」といったネガティブなイメージが付きまとうことが多いですが、これを単純にそう定義してしまうことは不登校の本質を見失わせます。現代の不登校は、子どもが自分の力で生き延びようとするための、ある種の「防衛行動」とも捉えるべきです。

文部科学省の定義によれば、「不登校児童生徒」とは、心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、年間30日以上学校に通えない、もしくは通いたくとも通えない状況にある者を指します。この定義が示すように、不登校の背景には、子どもが自らの意思で登校しない選択をしているのではなく、深い内的な葛藤や外的な要因があるのです。

1章:不登校の背景とその複雑化

不登校の背景には、多くの要因が絡み合っています。不安や恐怖、無気力、自己評価の低下、家庭環境、社会からの期待など、現代の不登校は一言では語り尽くせない複合的な要素を含んでいます。

情緒的な混乱

不登校の要因として、最も多いのが「情緒的混乱」です。これは子どもが学校に行きたい気持ちがあっても、学校に足を運ぶときに強い不安や恐怖感を覚えるという状態を指します。この不安の根底には、「友人関係のトラブル」「教師との相性」「学校内の環境」などが潜んでいることが多く、単なる「学校が嫌だ」という理由とは異なります。恐怖や不安といった感情が積み重なると、登校への意欲がどんどん削がれていきます。

無気力の増加

また、不登校の原因として「無気力」も重要な要因とされています。これは子どもが学校に対して興味や関心を失ってしまう状態を意味し、勉強への意欲や友人との交流に対しても無関心になります。こうした状態に陥る理由として、学業の遅れ、勉強に対する自己評価の低下、または未来への不安などが考えられます。無気力の裏には自己評価の低さが隠されており、「自分なんて」という思い込みが不登校を悪化させる要因となっているのです。

家庭や社会の影響

さらに、不登校の背景には家庭や社会の影響も大きく関わっています。家庭内の環境が安定していない場合や、保護者が過度に期待をかける場合、子どもはプレッシャーを感じてしまいます。特に、保護者による虐待や過干渉といった家庭内の問題は、不登校の要因として非常に大きな影響を与えます。加えて、社会が押し付ける競争の激しさや学歴重視の風潮も、子どもにとっての大きな負担となっています。

2章:不登校の継続とその課題

不登校の状態が長期化する問題は、学校側と家庭側の双方において重大な課題とされています。平成19年度の調査によると、不登校の状態が前年度から継続している児童生徒は全体の約半数にのぼり、その傾向は学年が上がるにつれて増加しています。

小学校における主な継続理由は「心」の悩み

不登校状態が継続している理由(小学校、30日以上欠席者)
(資料)文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

小学校においては、不登校が継続している理由として、「不安など情緒的混乱」と「無気力」が高い割合を占めており、不登校の解消には「心の問題」としての対応策が求められます。一方、「あそび・非行」「いじめ」「教職員との関係」などが挙げられる割合は低く出ています。

中学校における継続理由は多様化・複雑化

不登校状態が継続している理由(中学校、30日以上欠席者)
(資料)文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

小学校同様、「不安など情緒的混乱」と「無気力」が高い割合を占め、次いで「いじめを除く他の児童生徒との関係」が多くなっています。また、「あそび・非行」が約1割となり、小学校と比較して大きく増加していることがわかります。
このことから、中学校における不登校の解消には、「心の問題」に加えて、「人間関係づくり」や「非行防止」としての対応策も必要となります。さらに中学校は卒業後の進路選択の時期でもあり、将来の自立に向けた「進路の問題」として考える必要もあります。

小学校から中学校への移行期

小学校から中学校への移行期
(資料)文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

特に、小学校から中学校に進級する際に不登校率が急増するという現象があります。小学校6年生から中学校1年生への進級時には、不登校率が約3.1倍に増加するといわれています。この増加は、子どもが新しい環境に適応することに不安やストレスを感じているからに他なりません。小学校と中学校の環境差は大きく、学習内容の難易度も上がり、友人関係も一新されることから、これらの変化に適応できない子どもが不登校に至りやすくなるのです。

中学3年生と不登校の長期化

学年別にみる不登校継続割合
(資料)文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

さらに、中学3年生になると不登校が継続する率が62.9%に達し、これは他の学年よりも顕著に高い割合です。中学3年生は高校進学を控えた重要な時期であり、進路選択というプレッシャーが重くのしかかるため、不登校が長期化しやすくなります。この時期における不登校は、単なる学校生活の拒否にとどまらず、未来に対する不安や自己評価の低さが影響していると考えられます。

3章:不登校児童生徒への支援方法

不登校の解消には、単に学校に通わせることを目的とするのではなく、子どもが感じる不安や無気力の原因を見極め、適切に支援することが求められます。不登校に対する支援は、単に学校側からの働きかけにとどまらず、家庭や地域社会、さらには個別の特性に応じた柔軟な対応が必要です。

学校からのアプローチ

「指導の結果登校する又はできるようになった児童生徒」に特に効果のあった学校の措置
(資料)文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

学校側が不登校児童生徒に対して行う支援方法としては、「家庭訪問」「電話連絡」「迎え入れ」などが一般的です。家庭訪問では、教師が家庭環境や生活面でのサポートを提供し、子どもが抱える問題を見つける手助けをします。また、電話や迎え入れといった直接的なアプローチも、不登校児童生徒に対する積極的な関わりとして効果があります。

家庭での支援

家庭でも、子どもが登校することを無理強いせず、安心して過ごせる環境を提供することが重要です。過度な期待や叱責は、子どもの心理的負担を増すだけで、不登校の解消に逆効果をもたらします。親は子どもに寄り添い、どのような選択肢があるかを冷静に話し合うことが必要です。不登校は一時的な現象ではなく、子どもの成長や将来の選択に関わる深い問題であることを理解しなければなりません。

地域社会と協力した支援

地域社会もまた、不登校児童生徒の支援において重要な役割を果たします。放課後の学習支援や居場所づくり、または心理カウンセラーによるサポートなど、地域社会が提供できる支援の幅は広がっています。不登校の子どもが家に閉じこもりがちな状況を改善するためには、地域での活動を通じて新しい交流の場を提供することが大切です。

結論:不登校は「甘え」ではなく「SOS」のサイン

不登校とは、子どもが感じる困難や苦痛が表面化した「SOS」のサインであるといえます。学校生活に適応できない、もしくは無理に適応しようとすることで心身に限界が来た結果が不登校として現れているのです。その原因は複雑で多様であり、単純な解決策を見つけることは困難ですが、不登校を解消するためには、子どもが心から安心して過ごせる環境を提供することが第一歩です。

不登校は、子どもにとって自らを守るための行動であり、社会がそのサインを見落としてはなりません。子どもが不登校という選択をした背景には、周囲に対する無言のメッセージが隠されていることを理解し、支援を続けることで子どもたちが再び学びと社会に希望を持てる未来を築くことができるのです。

参考文献

文部科学省 不登校の現状に関する認識
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf

文部科学省 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

国立教育政策研究所 不登校とは
https://www.nier.go.jp/shido/centerhp/1syu-kaitei/1syu-kaitei090330/1syu-kaitei.3futoko.pdf

ToCo(トーコ)株式会社について

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代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

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不登校の鍵は愛着障害

不登校の鍵は愛着障害

はじめに

現代の教育現場では、不登校という問題が深刻化しています。多くの親や教師が、子どもが学校へ行かなくなったときに感じるのは「どうすればいいのか」という戸惑いや不安です。しかし、その根本的な原因にたどり着くことができなければ、どれだけ対策を講じても問題は根本的には解決しません。そして、意外にもこの不登校の問題は、幼少期の「愛着障害」に密接に関わっていることが多いのです。

愛着障害とは、幼少期において母親などの養育者との間で十分な「情緒的な絆」が形成されないことによって生じる心理的な障害です。子どもは生まれてからまず母親を求め、そこで築かれる愛着を通じて人間関係や自己肯定感の基盤を形成します。しかし、その愛着形成が阻害された場合、やがて成長するにつれ、様々な対人関係の困難や社会生活での適応不全が生じやすくなります。不登校の根底に愛着障害が存在している場合、その理解と対応が鍵を握るのです。

本稿では、不登校の背景にある愛着障害について詳しく探りながら、問題解決のために親や教育者がどのように向き合うべきかを考察します。

愛着の形成とその重要性

愛着の発生と役割

愛着とは、乳幼児が主に母親との間に形成する「情緒的な絆」を指します。赤ちゃんが生まれて間もなく、母親に抱かれ、見つめられることで心の安定がもたらされます。そして、この絆は成長において自己肯定感や社会的な信頼感の基礎となります。愛着がしっかりと形成されると、子どもは成長する過程で自信を持ち、他者と信頼関係を築く力を養うことができるのです。

愛着の形成が良好であれば、子どもはたとえ親と一時的に離れても、心に安定を保つことができます。しかし、愛着が未成熟である場合、外界に対して不安や恐怖心が先立ち、対人関係で過度な依存や逆に無関心を示すなどの行動が見られることが多くなります。適切な愛着は子どもにとって「心の安全基地」であり、そこが揺らぐと様々な問題が生じるのです。

愛着形成の阻害要因

愛着が十分に形成されない原因として、母親や養育者が心の余裕を失っている状況が挙げられます。例えば、母親が精神的な不安定さを抱えていたり、離婚や家庭内の混乱が頻繁に起こる場合、子どもに安心感を与える環境が提供されにくくなります。また、母親の過度な依存や虐待、ネグレクトなどが存在すると、愛着形成は著しく阻害されます。

また、社会の変化によっても愛着形成は影響を受けます。例えば、女性の社会進出が進み、保育園などでの育児が一般化したことによって、母親と長時間過ごす機会が減少したことも愛着形成を阻害する要因の一つとして考えられます。しかし、必ずしも保育園や託児が悪影響を及ぼすわけではありません。3歳以降であれば母子分離も問題とされないことが多く、むしろ育児に対する理解やサポートの充実が重要です。

愛着障害の種類と特徴

愛着障害には、大きく分けて「反応性愛着障害」と「脱抑制型愛着障害」の二種類があります。それぞれがどのような特徴を持つのかを見ていきましょう。

反応性愛着障害

反応性愛着障害は、適切な愛着形成の機会を与えられず、母親や養育者に対して十分な信頼や安心感を抱けない状態です。この障害を持つ子どもは、愛情に対して反応せず、養育者との間に距離を置こうとする傾向があります。主な症状としては以下のようなものが挙げられます。

  • 母親への接近や接触を避ける
  • 呼びかけに反応せず無関心な態度を示す
  • 母親からの愛情や慰めに対して無反応である

これらの症状は、他者への不信感や自己肯定感の低さの表れであり、学校においても他者との関係を築くことが難しくなりがちです。学校生活で周囲と壁を作り、自分の殻に閉じこもるような行動に繋がりやすいのも、この愛着障害の特徴です。

脱抑制型愛着障害

脱抑制型愛着障害は、母親との間に適切な境界が形成されず、誰にでも過度に甘えたり依存する傾向を持つ状態です。この障害を持つ子どもは、母親から離れても不安を感じず、他者に対しても境界なく接近することがあります。主な症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 誰にでもすぐに懐き、過剰に甘える
  • 母親から離れても不安や恐怖を感じない
  • 母親からの愛情や好意に対して過剰に反応する

脱抑制型愛着障害の子どもは他者に対して過度な親密さを見せるため、周囲との適切な距離感を持つことが難しくなります。また、家庭や学校において人間関係の問題が生じやすく、不登校の一因となる場合も少なくありません。

不登校と愛着障害の密接な関係

不登校の背後には、愛着障害が隠れていることが多いです。愛着障害を抱えた子どもは、他者と健全な関係を築くことが難しく、その結果、学校という場での適応に大きな困難を抱えます。学校生活には集団生活の中での協調や、他者とのコミュニケーションが不可欠です。しかし、愛着障害を抱える子どもにとっては、学校は「他者に囲まれた場」として強い不安を引き起こす場所になりがちです。

さらに、不登校の子どもが家庭で感じる居心地の良さが、愛着障害によって阻害されている場合もあります。家庭が子どもにとって安心できる場所でない場合、子どもは居場所を求めることができなくなり、学校へ通うことへの不安も増幅されるのです。愛着障害が解消されないままでは、不登校を根本的に解決することが困難なのです。

親が直面する愛着障害の連鎖

愛着障害の問題において、非常に重要なのが「親自身の愛着障害」です。子どもに愛着障害が見られる場合、その親もまた同じように幼少期に愛着障害を抱えていたことが多いとされています。これは「愛着の連鎖」とも呼ばれ、親が自らの愛着問題を解消できないまま育児に携わると、子どもに同じ問題を引き継がせてしまう可能性が高まるという現象です。

愛着障害を抱える親は、子どもに対して不安定な愛情を注ぎがちです。「本当に愛しているのだろうか」「自分は子どもを幸せにできるのだろうか」といった自己疑念が絶えず湧き上がり、それが子どもに伝わります。このような親から育てられた子どもは、愛情の一貫性を感じられず、また不安定な愛情を与えられることにより愛着障害を発症しやすくなります。

愛着障害の図

愛着障害の克服と不登校解消への道

ここまで述べたように、不登校問題の解決には、まず愛着障害に向き合うことが不可欠です。愛着障害は決して治らないものではありません。むしろ、理解し、適切なサポートを受けることで、徐々に改善が期待できるのです。そのためには、親子双方が「愛着」というテーマを正面から見つめ直し、健全な親子関係の構築に努める必要があります。

家庭の居場所作り

不登校の子どもが学校に戻るためには、まず家庭が安心できる居場所である必要があります。家庭が子どもにとって心の拠り所となり、親が温かく支えてくれる存在であると感じることで、学校という外の世界へ再び目を向けることができるのです。親が子どもに対して無条件の愛情を示し、どんな状態であっても「ここにいていいんだ」と感じさせることが最初の一歩です。

親自身の愛着障害に向き合う

愛着障害の克服には、親自身もまた自らの愛着障害と向き合い、必要であれば専門的なサポートを受けることが必要です。親が自己理解を深め、愛情を与える力を取り戻すことで、子どももまたその愛情を受け入れやすくなります。親が心から子どもを愛し、支えたいと願う姿勢を見せることで、子どももその姿勢に応じて成長していきます。

結論

不登校の問題解決には、愛着障害への理解が欠かせません。不登校の背後には、往々にして愛着形成の問題が潜んでおり、それが親子関係や学校生活において様々な問題を引き起こしています。親がまず自分の愛着問題に向き合い、家庭の中で安心できる居場所を子どもに提供することが、不登校の解消に向けた一歩です。そして、愛着障害は決して克服できない問題ではありません。理解し、向き合うことで、親子の間に新たな絆が生まれ、子どもは自信を持って社会へと歩みを進めることができるようになるのです。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

傾聴の基本と応用。子どもが伸び伸びと外で挑戦できるように。

傾聴の基本と応用。子どもが伸び伸びと外で挑戦できるように。

はじめに

「子どもは親の言うことを素直に聞くべきだ」——かつての日本社会ではこのような考え方が主流でした。しかし、近年の児童心理学の発展とともに、「子どもは育てるものではなく、育つもの」という新しい視点が注目されています。この言葉は単なるキャッチフレーズではなく、親子の関係や教育の根本を考え直す上で非常に重要な意味を持っています。

現代の日本社会において、不登校や引きこもりの問題は依然として深刻です。子どもが学校に行きたがらなかったり、家から出たがらなかったりする状況は、単に怠けや甘えと決めつけては解決しません。むしろ、家庭の信頼関係やコミュニケーションの不足がその背景に隠れていることが多いのです。

そこで、今回は「傾聴」という心理的なスキルについて、その基本から応用までを掘り下げ、子どもとの信頼関係をどのように構築し、問題を解決していくのかについて考えていきたいと思います。

傾聴とは何か

傾聴とは、相手の言葉や感情に対して注意深く耳を傾け、共感的に理解しようとする姿勢のことです。単に「話を聞く」という行為とは異なり、相手の内面的な感情や考え方にまで焦点を当て、その心情に寄り添うことを目指します。傾聴の基本には、以下の三つの要素があります。

1. 子どもを受け入れる

まず、子どもの言葉や感情を評価したり否定したりせず、そのまま受け入れることが大切です。「なんでそんなことを考えるの?」「それは間違っているよ」と否定から入ると、子どもは心を閉ざしてしまいます。大人の価値観や常識から逸れているように感じても、子どもが感じた事実は子ども自身にとって重要なものです。その感情を否定せずに受け止める姿勢が、信頼関係の土台を作ります。

2. 共感を示す

ただ話を聞くだけでは不十分です。話し手である子どもが「自分の気持ちを理解してくれている」と感じられるよう、共感的な態度を取ることが求められます。例えば、子どもが学校でいじめにあった経験を語っているときには、「それは本当に辛かったね」「嫌な思いをしたんだね」と、子どもの感情に寄り添う言葉をかけることが大切です。

3. 子どもの話を引き出す

傾聴は一方的な受動的行為ではなく、話し手が自分の思いをより深く表現できるようサポートすることでもあります。「その時、どう感じたの?」や「もう少し詳しく教えてくれる?」といった質問を投げかけることで、子どもが自分の内面を見つめ直し、自らの言葉で語る機会を提供します。

傾聴の基本から応用へ

では、傾聴の基本を理解したうえで、具体的にどのように応用していくべきでしょうか。家庭内での信頼関係を築くためには、基本的な傾聴のスキルを実践しつつ、子どもとの対話を深める工夫が必要です。

無言のメッセージに気づく

子どもは必ずしも自分の気持ちを言葉にして表現できるわけではありません。特に、内向的で感情を外に出しづらい子どもにとって、自分の思いを伝えるのは困難です。そのため、親は子どもの仕草や表情、沈黙からも心情を読み取る努力をすることが重要です。「今日は学校のことを話したくないんだな」「何か不安そうな表情をしているな」といったサインを見逃さないようにし、それを元に会話を始めることが信頼関係の構築につながります。

質問の仕方を工夫する

親として、子どもに「どうして?」と問い詰めたくなる場面は少なくありません。しかし、問い詰めるような質問は子どもにとっては圧力となり、正直な気持ちを語ることを妨げます。「どうして学校に行きたくないの?」という質問は、「何があったのかな?」や「最近、どんなことがあった?」というように、より柔らかく具体的な質問に変えることが効果的です。質問の仕方を工夫することで、子どもが自ら話しやすい環境を整えられます。

傾聴の実践と効果

子どもは育てるものではなく、育つものである

「子どもは育てるものではなく、育つもの」という考え方は、親が子どもに対してコントロールや支配をせず、成長を見守り、必要な支援を行うことを意味します。これは単に「放任主義」とは異なり、子どもが自己成長を遂げる過程でのサポートが重要であるという考え方です。親の役割は、子どもが自分の意思で行動し、自己の価値を見出していくための環境を整えることにあります。

過干渉がもたらす弊害

過干渉や過保護は、子どもにとって一見「愛情深い」行為に見えるかもしれませんが、実際には子どもの自立を妨げる結果につながることがあります。子どもが何か困難に直面したとき、親がすぐに手を差し伸べてしまうと、子どもは自分で問題を解決する経験を積む機会を失います。困難に直面することは成長の一部であり、そのプロセスを見守ることが重要です。

信頼の失われた子どもたち

子どもが自分の考えや感情を尊重されないまま育つと、親に対する信頼を失いやすくなります。親が子どもの意見を否定したり、自分の価値観を押し付けたりすることが続くと、子どもは「どうせ話しても無駄だ」と感じ、心を閉ざしてしまいます。この状態が長引くと、不登校や引きこもり、さらには非行といった問題行動に発展することも少なくありません。

傾聴の意味を子どもに伝える

傾聴の重要性は、親だけが理解していれば良いわけではありません。子ども自身も、他者と良好な関係を築くためのスキルとして、傾聴を身につけることが大切です。では、どのようにして子どもに傾聴の意味を伝え、実践させることができるでしょうか?

親が傾聴の手本を見せる

子どもは親の行動をよく観察しています。親が日常的に傾聴の姿勢を示すことで、子どもも自然とその態度を学ぶことができます。例えば、親が兄弟間のトラブルに対して公正な立場で話を聞き、互いの意見を尊重して解決策を見つけようとする姿勢を見せることが、子どもへの良いお手本となります。

小さな成功体験を積ませる

傾聴を実践することによって得られる成果を、子どもが実感できるようにすることも重要です。例えば、友達とのけんかの際に「相手の話をよく聞いてみよう」とアドバイスし、その結果として和解できた経験を振り返るといった形で、傾聴の効果を確認させると良いでしょう。このような成功体験が子どもの自信を育み、他者への共感を育てる一助となります。

傾聴がもたらす親子関係の変化

傾聴の実践を通じて、子どもは次第に自分の感情を素直に表現することができるようになります。また、親も子どもの成長や変化を受け入れる姿勢を身につけ、親子関係はより深い信頼に基づいたものへと変化していきます。この信頼関係が築かれることで、不登校や引きこもりの問題を未然に防ぐことができるだけでなく、子どもの自己肯定感や対人スキルの向上にも寄与します。

自己肯定感の向上

傾聴によって、子どもは自分の感情や考えが尊重される経験を積みます。これは自己肯定感の向上につながり、自己表現や対人関係に対する不安が軽減されます。親に「自分は受け入れられている」と感じることで、子どもは積極的に自己表現をし、他者とのコミュニケーションを楽しむことができるようになるのです。

問題解決能力の向上

傾聴を通じて子どもは自己反省や問題解決のスキルを学びます。親が子どもの意見を受け入れ、その上で問題を一緒に解決する姿勢を見せることで、子どもは「問題をどう捉え、どのように解決していくか」を学ぶ機会を得ます。このスキルは学校生活や将来の社会生活において非常に重要です。

結論

傾聴は単なる技術や方法論ではなく、子どもとの信頼関係を築くための「心構え」でもあります。親が子どもの言葉や感情を受け入れ、共感し、対話を深めることで、子どもは自らの成長を実感し、自己肯定感を高めていくことができます。

「子どもは育てるものではなく、育つもの」という考え方は、親が子どもを信じ、成長を見守る姿勢を示すことを意味します。そして、そのための鍵となるのが傾聴です。家庭内での信頼関係を深めるために、まずは親が傾聴の姿勢を身につけ、それを日常生活の中で実践していくことが求められます。

親子の信頼関係が強まることで、子どもは困難な状況においても自らの力で立ち向かうことができるようになります。傾聴の基本と応用を理解し、日々の生活の中で少しずつ取り入れていくことで、子どもたちがより良い成長を遂げ、家庭が安心できる居場所となることを願っています。

おわりに

本稿では、傾聴の基本から応用までを通じて、家庭内での信頼関係の重要性について述べてきました。不登校や引きこもりの問題に直面したとき、一方的に解決策を押し付けるのではなく、子どもの声に耳を傾け、共感し、対話を深めることが解決の第一歩です。親として、また大人として、子どもたちに寄り添い、成長を支えていくことが、今後の社会にとっても重要な使命であると言えるでしょう。

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導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校解決の鍵は会話の機会を増やすこと

不登校解決の鍵は会話の機会を増やすこと

はじめに

現代の日本社会では、不登校や引きこもりが増加しています。その原因は多岐にわたりますが、共通するのは「子どもが孤立している」という状況です。不登校が始まると、子どもだけでなく親も精神的に追い詰められ、家庭全体が苦しい状況に陥りがちです。しかし、その苦しい状況にあっても、解決のためには「会話の機会を増やすこと」が何よりも重要です。ここでは、不登校問題の解決に向けた一つの提案として、親子の会話の重要性について考えていきます。

子どもの孤立と自己否定

不登校の子どもたちは、家庭内でも学校でも「自分は必要とされていない」という思いにとらわれやすくなります。学校に行けないことで、自己肯定感はどんどん下がり、「自分はダメな人間だ」「自分は迷惑をかけている」といった自己否定の感情が膨らみます。この自己否定が強まると、外の世界との接点を持つこと自体が苦痛に感じられるようになり、結果として引きこもりに至るケースも少なくありません。

ここで重要なのは、「子どもを一人にしない」ということです。不登校が続くと、親はどうしても子どもとのコミュニケーションを避けてしまうことがあります。気まずさや心配が先に立ち、「何を話せばいいのか分からない」「余計なことを言って子どもを傷つけたくない」と思いがちです。しかし、親子の会話が減少すると、子どもは自分の中にあるネガティブな感情をどんどん内に溜め込んでしまいます。

親子共に落ち込んでしまう現実

不登校の問題は、単に子どもだけの問題ではありません。親もまた、子どもの状態に対して大きなショックを受け、心配や焦り、無力感にさいなまれます。特に、「なぜ自分の子どもだけが不登校なのか」「自分の育て方が悪かったのか」と自分を責める親も少なくありません。

しかし、親が落ち込んでしまうと、子どもはさらに「親に申し訳ない」という気持ちを抱くようになります。これは悪循環を生み、親子共に深い苦しみの中で身動きが取れなくなります。ここで大切なのは、不登校を特別なものにしすぎないことです。もちろん、深刻な問題であることは間違いありませんが、それによって家庭の日常が大きく変わってしまうと、子どもにとって「自分のせいで家族が壊れてしまった」といったさらなる罪悪感を生む可能性があります。

日常の維持と会話の場としての食事

では、具体的に親子の会話の機会を増やすためにはどうすればよいのでしょうか? その基本は「食事の場」にあります。食事というのは、人間が生きる上で欠かせないものであり、また家族が自然と顔を合わせる貴重な機会です。だからこそ、この食事の場を大切にすることが重要です。

不登校の子どもは、自室にこもりがちで、食事も自室で一人で取ることが多くなりがちです。しかし、これでは親子のコミュニケーションが希薄になり、子どもが孤立感を深めてしまうだけです。たとえ子どもが無理をしてでも、リビングで家族と一緒に食事を取ることを促すべきです。この場で無理に会話をしようとしなくてもよいのです。最初はただ一緒に食べるだけでもかまいません。

食卓での会話

無理のない会話の始め方

親としては、子どもとの会話を「何か問題を解決するための手段」として捉えがちです。しかし、会話はあくまで「お互いの存在を確認するための時間」と考えるべきです。つまり、「何を話すか」ではなく、「同じ時間を共有すること」に重きを置くべきです。

例えば、子どもが食事中に無言でも、無理に話しかける必要はありません。親が楽しそうに食事をしたり、くつろいでいるだけでも十分です。その場の雰囲気が和やかであれば、子どもも少しずつリラックスし、次第に口を開くようになります。

また、子どもが話しかけてきたときには、全身全霊で耳を傾けることが大切です。このとき、親はアドバイスや説教をするのではなく、ただ聞くことを心掛けてください。子どもは自分の気持ちを話すことで、自分の中で整理しようとしているのです。そのプロセスを尊重することが、親としての最大のサポートになります。

子ども部屋での食事が引き起こす孤立

子ども部屋で一人で食事を取ることは、子どもをさらに孤立させる要因となります。食事は単なる栄養摂取の場ではなく、人と人とがつながりを持つ大切な時間です。だからこそ、子どもがどれほど抵抗を示しても、可能な限り家族と一緒に食事を取ることが重要です。

もちろん、子どもが完全に拒絶する場合もあります。そのようなときには、無理強いするのではなく、少しずつ段階を踏んで進めることが大切です。例えば、最初はリビングで一緒に食事をするだけでなく、同じ時間に同じ場所にいることから始めても良いでしょう。子どもが少しずつリビングに顔を出すことに慣れれば、自然と会話の機会も増えていきます。

親の焦りと心の余裕

親としては、子どもがいつまでも学校に行けない状態が続くことに焦りを感じるのは当然です。しかし、その焦りが子どもに伝わると、子どもは「親の期待に応えられない自分」を責めることになります。焦りや不安を抱えていると、つい子どもに「どうして学校に行けないの?」「いつになったら行けるの?」と詰め寄ってしまいがちですが、これは逆効果です。

親はまず、自分の気持ちに余裕を持つことが重要です。そのためには、自分自身のストレスケアやリフレッシュの時間を意識的に作ることが必要です。親が心に余裕を持てば、自然と子どもに対して優しく接することができ、子どもも安心して自分の気持ちを表現できるようになります。

まとめ

不登校の問題に対して、親ができる最大のサポートは「子どもとの会話の機会を増やすこと」です。会話とは、ただ言葉を交わすだけではなく、同じ時間を共有し、相手の存在を認める行為です。そのためには、食事の場を大切にし、親子で一緒に過ごす時間を意識的に作ることが重要です。

また、親は焦らずに、子どものペースに合わせてゆっくりと進めることが求められます。子どもが無理をしてでもリビングで一緒に食事をすることができれば、それが会話の糸口となり、少しずつ信頼関係を築いていくことができます。

最後に、不登校という問題を「特別なもの」として捉えすぎず、家庭の日常を維持することが重要です。子どもは親が想像する以上に繊細であり、家族の雰囲気や態度に敏感です。親が落ち着いて日常を送ることで、子どもも安心して自分の気持ちを整理し、少しずつ前向きに変わっていくことができるのです。

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スマートフォン制限の是非:フランスのデジタルブレイク実験を通して

スマートフォン制限の是非:フランスのデジタルブレイク実験を通して

子どものスマートフォン利用を制限すべきか否か。一つの参考となる取り組みが、フランスで国を挙げて進められています。

フランスでは、2018年に学校でのスマートフォン使用が禁止されました。これは、スマートフォンが引き起こすいじめやハラスメント、学力低下、そして心身の健康への悪影響といった問題に対処するための一つの試みでした。当初は、授業中のみの禁止でしたが、2024年、より厳格な規制へと移行し、一部の学校では、生徒が学校にスマートフォンを持ち込むことを全面的に禁止する「デジタルブレイク」が施行されました。

このフランスの取り組みは世界で大きな注目を集めました。その背景には、スマートフォンは現代社会において、コミュニケーションや情報収集に不可欠なツールであり、それを禁止することは、子どもたちの成長を妨げるのではないかという懸念があるからです。しかし、フランス政府は、スマートフォンの弊害を深刻に捉え、子どもたちの未来を守るために、あえてこの決断を下したのです。

「学校や大学での携帯電話の使用禁止とデジタルブレイク」

なぜ、フランスの学校はスマートフォンを禁止したのか

フランス政府が学校でのスマートフォン禁止を決めたのには、大きく3点の理由があります。

  1. 学力面:
    スマートフォンに気を取られて授業に集中できず、成績が伸び悩んでいる子どもが増えていました。いくつかの研究では、スマートフォンを禁止した学校に通う子どもたちの学力向上が見られました。これは、スマートフォンの誘惑から解放され、授業に集中できるようになったことが大きな要因と考えられます。
  2. 心身の健康への影響:
    長時間のスマートフォン使用は、睡眠不足や視力低下、さらにはうつ病などの精神的な問題を引き起こす可能性も指摘されています。また禁止により、友達と直接顔を合わせて遊ぶ時間が増えることで、コミュニケーション能力や協調性も高まることが期待できます。
  3. いじめやハラスメント:
    スマートフォンを使った誹謗中傷や陰口、さらには暴力的な動画の拡散など、子どもたちの間で深刻な問題となっていました。スマートフォンの利用を制限することによって、そのような悪意をぶつけられたり、発信する機会を大幅に減少することができます。またこれらの問題により増えていた不登校に歯止めをかけることも各学校で期待されています。

これらの問題を解決するために、フランス政府は学校でのスマートフォン使用を全面的に禁止し、子どもたちがスマートフォンから解放される時間を増やそうとしているのです。

参考:スマートフォンの各種研究

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)

PISA調査とは?

OECD生徒の学習到達度調査(PISA)は、経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに実施している国際的な学習到達度調査です。15歳を対象に、読解力、数学、科学の力を測ることで、各国の教育の質を比較することを目的としています。PISA調査は、単に知識の量を測るだけでなく、複雑な問題解決能力や批判的思考力など、21世紀型スキルと呼ばれる能力を評価する点に特徴があります。

スマートフォン使用時間と成績の関係

PISA調査の結果を分析した研究では、スマートフォンを頻繁に利用する生徒ほど、読解力や数学の成績が低い傾向があることが示されています。この結果は、多くの国で共通して見られる傾向であり、スマートフォン利用と学力との間に負の相関関係があることを示唆しています。

アメリカの青少年リスク行動調査(YRBS)

YRBS調査とは

アメリカの青少年リスク行動調査(Youth Risk Behavior Surveillance System, YRBS)は、米国疾病予防管理センター(CDC)が2年ごとに実施している大規模な調査です。12歳から18歳までの高校生を対象に、喫煙、飲酒、薬物使用、性的行動、暴力、うつ病、自殺念慮など、様々なリスク行動に関するデータを収集しています。YRBSは、アメリカの青少年の健康状態を把握し、予防対策を講じるために重要な情報源となっています。

スマートフォン使用時間と精神疾患の関係

YRBS調査の結果、スマートフォンを頻繁に使用する生徒は、うつ病や不安障害のリスクが高いということが繰り返し報告されています。この結果は、PISA調査と同様に、スマートフォン利用と精神的な健康状態との間に、ある程度の相関関係があることを示唆しています。

東北大学加齢医学研究所の調査結果

スマートフォンと学力

フランスに学ぶスマートフォンとの付き合い方

フランスはスマートフォンの中毒性や子どもの健全な生活への影響を専門家によって調査した上で、全面的な禁止を表明しています。
スマートフォンそのものは道具であり、制限することは子どもを信用しないことのように見えて抵抗があるかもしれません。
しかし治療にも使われる麻薬が個人には利用を制限されているように、「スマートフォンの持つ影響が思春期の子どもたちにどこまで強く影響するか」、を一度考えてみるべきではないでしょうか。

ただ、もし制限を検討する際はお子さんに理由も説明することを推奨します。ただ親の命令として禁止するのと、スマートフォンが子ども自身に与えるリスクを知った上でルールとして決めるのでは、納得感・遵守・持続性に大きな差が出ます。

そして親自身もその依存性に負けないことが、教育の観点からは大切になってきます。スマートフォンに向き合っている間は子どもの表情も見れず、目を見ての会話もできません。

スマートフォンは無くてはならないツールになりました。だからこそ、生活の中心とするのか、一部とするのか、その選択は子育てにおいて重要になります。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

子どもにはストレスの避け方ではなく、乗り越え方を伝える

子どもにはストレスの避け方ではなく、乗り越え方を伝える

 例えば、学校に行くことを子どもが嫌がった場合、親はつい無思考に「大丈夫だよ」と声をかけてしまいがちです。しかし、単に不安を解消するだけでなく、緊張に打ち勝つための具体的な方法を一緒に考えていくことが重要です。

現代社会は、子どもたちを取り巻く環境が複雑化し、多様なストレス要因が存在します。学校での人間関係、学業の難しさ、将来への不安など、子どもたちは様々なストレスに直面しています。こうした状況下で、多くの親御さんが「子どもをストレスから守りたい」という気持ちを抱くのは当然のことで、大切な愛情です。本稿では、その親心を「守る」ではなく「育てる」に向ける方法について紹介していきます。

「授人以魚 不如授人以漁」と老子は言いました。これは「飢えている人へ、あなたは魚を与えるべきか、魚の釣り方を教えるべきか」 という問いかけで、「人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、釣り方を教えれば一生食べていける」という見方を示した格言です。
子どもを育てる上でも、常に問題から子どもを守り続けるのではなく、自ら問題を解決できる力を育むことが、子ども自身の将来にとって大切なのではないでしょうか。

ストレスから逃げることのリスク

子どもでも大人でもストレスを完全に取り除くことは不可能なため、過度に子どもからストレスを取り除くことは、子どもの将来への悪影響になる可能性があります。なぜなら、ストレスを避けることに慣れた子どもは、将来、どこかで訪れる困難な状況に対して乗り越える力がないため、克己して機会を掴みとる道を自ら閉じてしまう恐れがあるからです。

ストレスを抱え込んだままにしておくと、子どもは不安を自分で大きくしてしまうことがあります。また、辛いことに対して逃げることが最初の選択肢になってしまうと、困難を克服する力が育ちません。ストレスに立ち向かう経験を積むことは、子どもたちが自己肯定感を高め、自己効力感を育む上で不可欠なのです。

不安を放置すると

不安に立ち向かうための具体的な方法

 では、具体的にどのように子どもにストレスに立ち向かう力を養えばよいのでしょうか。まず、子ども自身が抱えている不安を、漠然とした「不安」と捉えないことが必要です。
不安について【感情、思考、行動】の3つの要素に分けて考えることで、子どもは自分の不安を客観的に捉え、その原因を特定することができます。

1つ目は、感じていること。「心臓がドキドキしている」「体が震えている」「手が湿っている」「お腹が痛くなる」などの体の動きは、怖いという感情を伝えています。

2つ目は、考えていること。感じていることを何とかするために、「ここから逃げよう」「そんなことできない」「お家に帰りたい」「お母さんか誰かに助けてほしい」などの考えが出てきます。

3つ目は行動で、考えていることから具体的に何かをすること。その場所から離れたり、部屋に隠れたり、気分を楽にしてくれそうな人のそばにいようとする、などです。この行動はまた、新しい感情を生み出します。

子どもが自分の不安を具体的に表現できるようになったら、次に、その不安を小さくする方法について一緒に考えてみましょう。

学校に行きたくないと言っていた子どもとの対話例を紹介します。

親:ねぇ、ちょっと座って話を聞かせてくれる?  〇〇の気持ち、もっとよく知りたいなって思ってるんだ。

子:うん。

親:この3つの丸、見てくれる?  これはね、私たちの体や心で起こっていることを 「感じていること」「考えていること」「していること」 に分けて表してるんだ。最近、学校に行きたくないって思ったことあったよね?  そのときのことをちょっと一緒に考えてみようか。  いつ頃だったか覚えてる?

子:うん、先週。

親:そのとき、どんな気持ちだった?  朝、学校に行く前かな?

子:うん。

親:朝、学校に行こうとして、お母さんが起こしたとき、〇〇はどう思ったのかな?

子:行きたくなかった。

親:そうだよね。  「行きたくない」って思ったんだね。  じゃあ、ここに書いてみようか。(思考の丸に 「行きたくない」 と書く)  他にも何かあったかな?

子:寝てたのに起こされたから、ちょっと怒っちゃった。

親:そうだね、寝てたのに起こされたから、少し怒ったのかもしれないね。  じゃあ、ここに 「寝ていた」 って書いてみよう。(行動の丸に書き込む)  学校に行きたくないって思ったときにしていたこと、これだね。  その後、どうしたかな?

子:泣いちゃった。

親:そうだったね。(行動の丸に 「泣く」 と書く)  どうして泣いちゃったのかな?

子:宿題を忘れて、先生に怒られるのが怖かった。

親:そうか、宿題を忘れて、先生に怒られるのが怖かったんだね。(思考の丸に 「宿題を忘れた」 「先生が怒る」 と書く)  先生が怒るかもしれないって考えると、体はどうだった?  どこか痛かったり、変な感じがしたりしたかな?

子:お腹が痛くなって、気持ち悪かった。  心臓もドキドキしてた。

親:そうだったんだね。  お腹が痛くなったり、心臓がドキドキしたりするってことは、〇〇はとっても不安だったってことだよね。(感情の丸に 「心臓がドキドキする」 「お腹の調子が悪い」 と書く)  よくできたね。  見てごらん、〇〇が怖いと感じるとき、体の中でこんな風に色々起こってるんだね。

親:この3つの丸を見てみよう。  〇〇が寝ていた時(していることを示しながら)、宿題を忘れて、先生に怒られるかもしれないって思ったんだね。合ってる?

子:うん。

親:泣いてたとき、お腹の調子はどうだった?

子:もっと悪くなった。

親:そうか、もっと悪くなっちゃったんだね。  そのとき、心の中ではどんなことを考えてたかな?

子:お母さんに怒られたこと。  お母さんが怒るから悲しい。

親:そうだね。(思考の丸に 「お母さんに怒られて悲しい」 と書く)  見てごらん。  1つの丸で何かが起こると、他の丸でも何かが起こってるね。(それぞれの丸から矢印を引き、隣の丸とつなぐ)  つまり、〇〇が 「宿題を忘れて先生に怒られる」 って思うと、お腹の調子が悪くなって、学校に行けなくなっちゃう。  そうするとお母さんが心配して怒って、〇〇はもっと悲しい気持ちになっちゃうんだね。  見てごらん、私たちの気持ちって、こういう3つの部分からできていて、この3つはお互いに影響し合ってるんだね。

親: じゃあ、行動の丸で考えてみようか。宿題を忘れてしまって、学校に行きたくない気持ち、よく分かるよ。でも、もし学校に行けなかったら、どうなると思う? 

子: 先生に怒られるし、お母さんもきっとがっかりする。 

親: そうか、そう思うんだね。じゃあ、もし学校に行って先生に正直に話したら、どうなると思う? 

子: 怒られるかも。

親: そうかもしれないね。ただ、先生は宿題を忘れたから〇〇が休むよりも、行ってちゃんと話してくれる方が嬉しいんじゃないかな。

脱感作法による自己強化

不安を小さくすることに成功したら、子どもを心から褒めて励ましましょう。この方法は、脱感作法と呼ばれるもので、ネガティブな感情を抑止して成功体験を重ねることで、自己肯定感を高める効果があります。

例えば、テスト前に緊張していた子どもが、深呼吸をすることで落ち着きを取り戻し、テストで良い点を取ることができたとします。この時、「よく頑張ったね!緊張していたけど、落ち着こうと工夫したからきっと良い結果になったんだね」と具体的に褒めることで、子どもは自信を持つことができます。

最後に

子どもにストレスの乗り越え方を教えることは、決して簡単なことではありません。しかし、子どもが将来、社会で自立して生きていくためには、不可欠なことです。親は、子どもが困難な状況に直面した際に、寄り添い、励まし、具体的なアドバイスを与えることで、子どもが自ら問題を解決できるようサポートしていくことが重要です。

ストレスから「逃げる」のではなく、「乗り越えていく」ことを教える。それは、子どもたちが自信を持って未来に向かって歩んでいくための第一歩となるはずです。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

欠席を不登校にしないために親ができること

欠席を不登校にしないために親ができること

「学校に行きたくない」

この子どもからの切実な言葉に、多くの親は戸惑いを隠せないでしょう。なぜなら、学校は社会性を育み、知識を習得する場所であり、子どもたちの成長にとって欠かせないものだと考えられてきたからです。しかし、果たして学校が全ての子どもにとって最適な場所と言えるでしょうか。

子どもが学校を欠席されるということは、何かしらのSOSを発していらっしゃる可能性が高いです。体調不良、人間関係の悩み、学習の遅れなど、その理由は様々です。ここで大切なのは、欠席を単なる問題として捉えず、子どもたちが何を伝えようとしているのか、その背景にある感情に目を向けることです。

なぜ子どもは学校に行きたがらないのか。

もしかしたら、特定の科目についていけずに自信を失っているのかもしれません。
また、クラスメイトとの人間関係で悩んでいるのかもしれません。
あるいは、単に疲れていて休みたいと思っているのかもしれません。

重要なことは、子どもたちの心の声に耳を傾けることです。まずは、子どもたちが安心して話せるようなオープンな雰囲気を作り、焦らずにじっくりと話を聞いてあげましょう。否定的な言葉や判断をせず、共感の言葉をかけてあげることで、子どもたちは自分の気持ちを素直に打ち明けられるようになるでしょう。欠席を責めるような姿勢は避けましょう。

従来、欠席は良くないことだと考えられ、子どもたちは欠席すること自体に罪悪感を抱きがちでした。しかし、状況によっては、欠席することが子どもたちの心身の健康を守るために必要となる場合もあります。

無理して学校に通うことで、かえって精神的な負担が増大し、不登校へとつながる可能性も否定できません。欠席は、子どもたちが自分の心と体と向き合い、休息を取るための貴重な機会でもあるのです。例えば、人間関係で悩んでいる場合は、学校から離れて心を落ち着かせることで、問題解決の糸口が見つかることもあるでしょう。欠席を認めることは、子どもたちの信頼を得る上で非常に重要です。子どもたちは、自分の気持ちを理解してもらえたという安心感を得ることで、再び学校へ行く意欲を取り戻せるでしょう。

欠席したことを理由に、子どもを責めたり、過去の失敗を蒸し返したりするべきではありません。

そのような言動は、子どもの心に深い傷を負わせ、次の登校を困難にするでしょう。むしろ、欠席したことを認め、その気持ちを尊重することが大切です。子どもたちにかける言葉は、彼らの心に大きな影響を与えます。例えば、「また休んでいるのか」「ちゃんと勉強しているのか」といった言葉は、子どもたちを傷つけ、自信を喪失させてしまう可能性があります。代わりに、「今日はゆっくり休んでね」「何かしたいことはあるかな?」など、温かい言葉をかけてあげましょう。過去の失敗を引きずることは、子どもたちの成長を妨げます。過去のことは過去のこととして受け止め、これからのことを前向きに考えていくことが大切です。

欠席中も、学習の機会を設けることは重要です。ただし、学校と同じように厳しく勉強をさせるのではなく、子どもの興味関心に合わせた学びを提供することが望ましいです。例えば、オンライン学習や読書など、子どもが楽しみながら取り組めるような活動を取り入れることで、学習意欲を高めることができます。

親は、子どもにとって最も身近な存在であり、子どもたちの成長を支える重要な役割を担っています。子どもたちが困難に直面した際には、共感し、寄り添い、共に解決策を探していくことが求められます。子どもたちの気持ちを理解するためには、彼らの立場に立って考えてみる必要があります。なぜ学校に行きたがらないのか、何が悩んでいるのか、子どもたちの視点から問題を捉えてみましょう。

ただし、欠席が不登校にならないような工夫も必要です。

子どもが学校を休むことは、心身に何らかのサインを発している可能性があります。しかし、その一方で、欠席をきっかけに、学校から離れてしまう、いわゆる「不登校」へとつながってしまうケースも少なくありません。欠席が不登校に発展しないよう、親としてできることは何でしょうか。

欠席中に大切なのは、子どもを甘やかすことなく、一方で、厳しすぎる態度も避けることです。例えば、「学校を休んでいるのだから、好きなものを食べに行こう」と、外食に連れ出したり、「今日は特別だから、ゲームをしてもいいよ」と、普段できないことを許すような行動は、子どもにとって学校を休むことのメリットを大きくしてしまう可能性があります。学校を休むことは特別なこと、楽しいことという印象を与えてしまい、結果的に学校へ行く意欲を低下させてしまう恐れがあるのです。

もちろん、子どもが辛い思いをしているのであれば、優しく寄り添い、話を聞いてあげることは大切です。しかし、同時に、学校へ行くことの大切さ、学ぶことの楽しさについても伝えていく必要があります。例えば、「今は学校がつらいかもしれないけれど、〇〇(好きなこと)を学ぶために、学校で必要な知識を身につけることは大切なんだよ」と、将来の目標と結びつけて話してみるのも良いでしょう。

さらに、欠席中に限らず、普段から家庭学習の習慣を身につけることも大切です。例えば、一緒に問題を解いたり、読書をしたりする時間を設けることで、学習に対する意欲を高めることができます。

大切なのは、一貫性のある態度で子どもに接することです。例えば、今日は甘やかして、明日は厳しく叱るといったように、態度がコロコロ変わってしまうと、子どもは混乱してしまい、何をすれば良いのか分からなくなってしまいます。

欠席中の過ごし方だけでなく、学校へ行く前の準備も大切です。登校前には、一緒に朝食を食べたり、今日の予定を確認したりするなど、学校へ行くことを意識した行動を取り入れるようにしましょう。また、学校で困ったことがあったら、いつでも相談に乗ることを伝えてあげることも大切です。

欠席は、子どもたちが成長するための過程で起こりうる一つの現象です。

大切なのは、欠席を単なる問題として捉えるのではなく、子どもたちが何を必要としているのか、その個々の状況に合わせて適切な対応をしてあげることです。親は、子どもの成長をサポートするパートナーとして、子どもたちと一緒に歩んでいくことが大切です。子どもたちの可能性を信じ、彼らの成長を応援してあげましょう。「欠席」という言葉に、ネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、欠席は、子どもたちが自分自身と向き合い、成長するための貴重な機会でもあるのです。親は、その機会を最大限に活かすために、子どもを信じて、共に歩んでいきましょう。子どもたちは、それぞれ異なる個性と才能を持っています。学校という枠組みにとらわれず、子どもたちの可能性を信じ、様々な選択肢を提示してあげることが大切です。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

不登校にも未病という考えを

不登校にも未病という考えを

不登校という名の「病」

 国内の小中高生の不登校は年々増加して30万人を超え、社会問題として深刻化しています。学校に行きたくない、行けないという悩みを抱える子どもたちは、決して少なくありません。その原因は多岐にわたり、いじめ、学業の遅れ、家庭環境の問題、そして漠然とした不安感など、実に様々です。

多くの人々は、不登校になった子どもを「治す」という視点で捉えがちです。しかし、当社が長年、不登校の子どもたちの支援に携わる中で、この「治す」という表現に違和感を抱いてきました。不登校は、風邪をひくように、ある日突然発症するものではありません。それは、様々な要因が積み重なり、徐々に形成されていく、いわば「病」なのです。

未病という概念

ここで、東洋医学の概念である「未病」という言葉を思い出してください。「未病」とは、まだ病気に至っていない状態、つまり病気になる前の段階のことです。東洋医学では、病は一朝一夕に発生するのではなく、体内のバランスが徐々に崩れていく過程で起こると考えられています。そして、このバランスの崩れを早期に察知し、適切なケアを行うことで、病気を未然に防ぐことができるというのです。

この「未病」という概念を、不登校に当てはめて考えてみます。不登校になる前の段階、つまり「未病」の状態とは、どのような状態でしょうか。それは、例えば、学校での人間関係に悩んでいる、勉強についていけない、将来への不安を感じている、といった状態です。これらの兆候は、必ずしも不登校につながるとは限りませんが、放置しておくと、いずれ不登校という「病」へと発展する可能性があります。

不登校の「未病」を診断する

ToCo株式会社では、この「未病」の状態を早期に発見し、適切な介入を行うためのサービスを開発しました。このサービスでは、子どもたちの心の状態を定量的に評価し、不登校になる可能性を予測します。
不登校になってからでは、治療に時間がかかり、子どもたちの心身に大きな負担をかけることになります。しかし、未病の段階で発見することで対処の負担は減らすことができます。

ただもちろん早期発見が目的ではなく、どのように早期介入を行うか、が重要です。早期介入とは、問題が深刻化する前に、適切な支援を行うことです。例えば、カウンセリングを受ける、信頼できる大人に相談する、興味のある活動に参加するなど、様々な方法が考えられます。

当社では、診断の結果を元に不登校予防プログラムを開発しました。4つの不登校の因子への対処法を明示することで、問題となっている要因に適切な対処を行うことができます。

社会全体で「未病」を意識する

不登校は、個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。学校、家庭、地域社会、そして私たち一人ひとりが、子どもたちの心の状態に目を向け、未病の状態に気づき、適切なサポートを提供していくことが重要です。

「不登校」という言葉と聞くと、暗い未来しか想像できない人もいるかもしれません。しかし、大人たちは子どもの可能性を信じ、成長を支えていく役割を担っています。

「不登校」という名の「病」を、未病の段階で食い止め、子どもたちが健やかに成長できる社会を創っていく。この理念のもと、私たちはこれからも活動を続けていきます。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。

静寂の力、ブラジルX停止が教えてくれたこと

ブラジルの沈黙と、育まれる心の風景

ブラジルでは、ある出来事が人々の心に静かな波紋を広げていた。それは、X(旧ツイッター)という巨大な情報プラットフォームが、突如として国から姿を消した出来事である。

Xの停止は、ブラジル社会に大きな変化をもたらした。情報過多に疲れていた人々、特に子育て世代は、この変化をどう受け止めたのだろうか。

情報の洪水から解放された日常

Xのタイムラインは、常に新しい情報で溢れていた。政治、経済、エンタメ、そして無数の個人的な意見。それはまるで、巨大な情報の水流が絶え間なく私たちを押し流していたかのようだった。特に子育て中の親たちは、この情報洪水に翻弄されていた。

「〇〇が体に悪い」「△△の教育法が効果的」といった情報が、毎日のように飛び交う。それらの情報が正しいのか、それとも単なる噂なのか、判断に迷うことも多かった。情報過多は、親たちの不安を煽り、子育てに対する自信を揺るがす原因にもなっていた。

Xの停止は、そんな情報過多の状況に終止符を打った。かつて、スマホを手に取ると自然と開いていたXのアプリを開く動作がなくなった。代わりに、人々は目の前の子供たちの笑顔や、家族との会話に意識を向けるようになった。

対話の復活、そして心のつながり

Xのタイムラインでは、匿名性を盾に、誹謗中傷や炎上といったネガティブな情報が拡散されることも少なくなかった。それらの情報に接することで、人々は不安や怒りといったネガティブな感情を抱きやすくなっていた。

Xがなくなったことで、ブラジルの人々は直接対話をする機会が増えた。近所の人と立ち話をする、家族で食卓を囲んで語り合う、地域のコミュニティに参加する。これらの対話の中で、人は温かい言葉や共感に触れ、心の平安を取り戻すことができた。

特に、子育て中の親たちは、同じ境遇の親同士で悩みを共有したり、育児のヒントを交換し合ったりするようになった。オンラインコミュニティの匿名性とは異なり、顔が見える対話の中で、人はより深く互いを理解し、信頼関係を築くことができる。

デジタルデトックスがもたらす心の豊かさ

Xの停止は、いわば強制的なデジタルデトックスの時間となった。ブラジルの人々は、スマートフォンから離れ、自然の中に身を置く機会が増えた。子供たちと公園で遊ぶ、読書をする、趣味を楽しむ。これらの活動を通して、人々は心の余裕を取り戻し、創造性を育むことができた。

また、睡眠の質の向上も報告された。Xの通知に振り回されることなく、質の高い睡眠をとれるようになったことで、心身のリフレッシュにつながった。

子育てにおける変化

ブラジルのX停止は、子育てのあり方にもいくつかの影響を与えたと考えられる。

Xのタイムラインは、育児に関する情報で溢れていた。最新の育児法、子どもの発達段階、そして数えきれないほどの育児グッズの広告。これらの情報に日々触れることで、親たちは常に「正しい子育て」を求め、多大なプレッシャーを感じていた。

しかし、Xの停止によって、この情報過多の状況は一変する。育児に関する情報は、書籍や育児雑誌、あるいは地域のコミュニティなど、より信頼できる情報源から得られるようになった。親たちは、自分たちで情報を吟味し、自分の子育てに合った方法を選ぶことができるようになった。

対面コミュニケーションの復活

X上での育児コミュニティでは、匿名性を利用した誹謗中傷や、根拠のない情報が拡散されることも少なくなかった。これらに悩まされていた親たちは、Xの停止を機に、地域の親子教室や子育てサークルに参加するようになった。

対面でのコミュニケーションでは、匿名性はなく、お互いの顔を見ながら意見交換ができる。共感や励ましの言葉、そして具体的なアドバイスを直接受け取ることができることで、親たちは孤立感を解消し、子育ての喜びを共有できるようになった。

デジタルデバイスとの付き合い方

Xの停止は、親たちがデジタルデバイスとの付き合い方を見直すきっかけとなった。以前は、スマートフォンを手放せない状態だった親たちも、子どもとの時間を大切にするために、あえてデバイスの使用時間を制限するようになった。

その結果、子どもたちは親との触れ合いをより多く得ることができるようになり、親子関係が深まるという声も聞かれた。また、デジタルデバイスから離れることで、子どもたちは創造性を育み、読書や遊びなど、より多様な活動を楽しむようになった。

自然との触れ合いが増加

Xの利用時間が減るにつれて、親たちは子どもと一緒に自然の中へ出かける機会が増えた。公園で遊ぶ、近所の川で水遊びをする、キャンプに行くなど、自然の中で過ごす時間は、子どもたちの心身の発達に良い影響を与える。

自然の中で遊ぶことは、子どもたちの五感を刺激し、創造性を育むだけでなく、ストレスを軽減し、心の安定をもたらす。また、自然の中で様々な体験をすることで、子どもたちは生きる力や問題解決能力を身につけることができる。

未来への展望

Xの停止は、ブラジル社会に大きな変革をもたらした。それは、テクノロジーの進歩が必ずしも幸せをもたらすわけではないという事実を私たちに突きつけた。

この経験は、私たちにデジタルテクノロジーとの向き合い方を改めて考えさせる。テクノロジーは、便利で豊かな生活をもたらしてくれる一方で、私たちの心を蝕む可能性も孕んでいる。

大切なのは、テクノロジーを道具として使いこなし、自分にとって本当に必要な情報を選び取ることである。そして、テクノロジーに頼りすぎず、対話や体験を通して人間関係を築き、心の豊かさを育んでいくことである。

ブラジルの経験は、私たちに、テクノロジーと共存しながらも、人間としての心を大切にすることの重要性を教えてくれる。

ToCo(トーコ)株式会社について

当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。

代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。

導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。