不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。今回は、不登校に関する論文、「第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会2023年 教育講演『不登校の実情と対応』(藤田光江著)」をもとに、不登校の実情や対応策について考察を加えながらお話しいたします。この文章では、特に小中学生のお子様が不登校であるお母様に向けて、具体的な視点や助けとなるアプローチをお届けします。
第1章 不登校という現実とその定義
日本では、不登校が子どもたちやその家族にとって深刻な社会的問題となっています。藤田光江氏の論文によると、文部科学省は不登校を以下のように定義しています。
「心理的、情緒的、身体的、または社会的な要因や背景により、児童生徒が30日以上学校を欠席し、登校しない、またはしたくてもできない状況」
さらに、2024年の文部科学省の統計によれば、不登校児童生徒の数は34万6482人に上りました。この数字は、不登校が「特殊なケース」ではなく、「どの家庭にも起こり得る現象」であることを示しています。この認識を持つことが、最初の一歩です。
第2章 子どもの「小さなサイン」を見逃さない
不登校は突然始まるものではなく、多くの場合、小さなサインが積み重なっていく過程があります。藤田氏の論文によれば、不登校の初期徴候として以下のような身体症状が多く見られるとされています。
「学校がある日の朝に頭痛や腹痛を訴える」「朝起きられない」「生活リズムの乱れ」などの身体的な訴え。
これらは単なる体調不良ではなく、心理的な負担が身体に現れた可能性を示唆しています。また、藤田氏の分析によると、不登校のきっかけとして、子どもが「先生のこと」「友人関係」「生活の乱れ」「身体の不調」を挙げるケースが多いとされています。
これに対して保護者の方ができる第一歩は、子どもの発言や行動を注意深く観察し、サインを見逃さないことです。例えば、以下のような点に着目してください。
- 頻繁に体調不良を訴えるタイミングや状況を記録する。
- 学校や友人関係の話題に対する子どもの反応を観察する。
- 食欲や睡眠の質が以前と比べて変化していないか確認する。
こうした観察は、子どもが抱える問題を早期に発見するだけでなく、後に専門家へ相談する際の重要な資料にもなります。
第3章 不登校の背景にある複雑な要因
不登校の原因は、単一の要因だけで説明できるものではありません。藤田氏の論文では、以下のような複数の要因が不登校の背景にあると指摘されています。
「心理的要因(自己評価の低下、友人関係のトラブル)」「身体的要因(起立性調節障害、慢性緊張型頭痛、過敏性腸症候群など)」が複雑に絡み合っている。
例えば、起立性調節障害により朝起きるのが困難になり、それが学校への遅刻や欠席を引き起こすことがあります。また、慢性緊張型頭痛は、子どもが感じるストレスが頭痛として現れることが多いとされています。
親が最も気をつけるべきなのは、子どもの「仮病」と決めつけないことです。不登校に関連する身体症状は、子どものストレスや不安の「SOSサイン」であり、親がこれを理解し、適切に対応することが子どもを救う第一歩となります。
第4章 専門家との連携とその活用法
不登校に直面した場合、保護者がどのタイミングでどこに相談すればよいのか迷うことが多いでしょう。藤田氏は、医療機関や学校のカウンセラー、地域の支援機関との連携の重要性を強調しています。
「初期の段階ではかかりつけ医が身体症状を確認し、器質的な疾患がない場合は心理的要因に着目する」ことが推奨される。
また、学校内では養護教諭やスクールカウンセラーとの連携が、不登校の子どもを支えるうえで重要な役割を果たします。もし子どもが学校に行くこと自体を拒否する場合、地域の適応指導教室やフリースクールなどの利用が効果的とされています。
こうした専門家や支援機関を利用する際には、親が「完璧な解決策を求める」よりも、「子どもに合った小さな改善を見つける」姿勢で臨むことが大切です。小さな成功体験を積み重ねることで、子ども自身が少しずつ自信を取り戻すことにつながります。
第5章 支援的対話と子どもへの寄り添い方
不登校の子どもと接するうえで、お母様が果たす役割は非常に大きいものです。藤田氏の論文では、支援的精神療法の重要性が繰り返し強調されています。
「治療者が子どもの悩みや不安を傾聴し、その気持ちを理解しながら、子どもの存在や努力を支持することが基本である」。
この姿勢は、お母様にも当てはまる重要な心構えです。具体的には、子どもの言葉を否定せず、批判せず、まずはその気持ちに寄り添うことが求められます。たとえば、次のような対話を心がけると良いでしょう。
- 子どもが「学校に行きたくない」と言った場合:「そうなんだね。どうしてそう思うのか、話してみてくれる?」と優しく問いかける。
- 子どもが「先生が嫌い」と言った場合:「先生にどんなことをされて嫌だったの?」と具体的な感情を引き出す。
- 子どもが「誰にも話したくない」と言った場合:「分かったよ。話したくなったらいつでも言ってね」と受け入れる姿勢を示す。
藤田氏も述べているように、不登校の子どもに「頑張れ」という言葉をかけるのは逆効果になることが多いです。代わりに、「どんな状態でも、あなたは大切な存在だよ」というメッセージを伝えることが重要です。
第6章 行動療法と子どもの自信を引き出すアプローチ
藤田氏の論文では、行動療法の一環として「登校カレンダー」や「頭痛ダイアリー」の利用が挙げられています。
「登校カレンダーは、少しでも登校したらお気に入りのシールを貼る方法で、モチベーションの向上につながる」。
「頭痛ダイアリーは身体症状を記録するだけでなく、生活リズムの把握にも役立つ」。
これらの方法は、子どもが達成感を得られるような仕組みを作ることが目的です。特に、何らかの形で「成功体験」を積み重ねることが、不登校解決への大きな一歩となります。
これを家庭でも応用する方法として、以下のような工夫が考えられます。
- 目標の分解:例えば「週1回登校する」という大きな目標を、「朝制服に着替える」「学校まで行ってみる」といった小さな行動に分解する。
- 成功の視覚化:カレンダーやノートに、できたことを記録し、本人が目で見て成長を実感できるようにする。
- 子どものペースを尊重:無理に進めるのではなく、子どもが自分の意思で一歩を踏み出せるように環境を整える。
第7章 親の葛藤と向き合うために
お母様方にとって、子どもの不登校は時に「どうしてうちの子だけが」と感じさせるものかもしれません。ですが、この苦しい状況の中で、お母様ご自身の感情に向き合うことも忘れてはいけません。藤田氏も指摘しているように、不登校の対応では、親が「子どもを治さなければ」という強迫観念にとらわれることで、かえって子どもの状態を悪化させてしまうケースが見られます。
「保護者は子どもの症状を治そうと躍起になるほど、子どもの訴えが強くなることがある」。
この状況を避けるためには、親が自身の心を保つための方法を見つけることも重要です。以下のようなアプローチが役立つでしょう。
- 信頼できる人に相談する:親自身の不安を共有できる友人や家族、専門家の存在が心の支えとなります。
- 情報収集をしすぎない:不登校についての情報を集めすぎることで、かえってプレッシャーを感じる場合もあります。情報は必要最低限に留めましょう。
- 自分を責めない:子どもの不登校は親の責任ではありません。この点を強く意識してください。
第8章 不登校に向き合う「長期的視点」
不登校の解決には短期的な成功を期待するのではなく、長期的な視点を持つことが求められます。藤田氏も、不登校解決の目標として次のように述べています。
「最終目標は、子どもが元気になり、打ち込める何かを見つけ、将来社会に出ていくこと」。
この言葉は、不登校そのものを「解決」することがゴールではないことを示しています。むしろ、「子どもが自分らしく生きる力を育むこと」が最終的な目標と言えます。
親としてできることは、目先の「学校復帰」にこだわるのではなく、以下のような目標を念頭に置くことです。
- 子どもが自信を取り戻すプロセスを見守る。
- 子どもが安心できる環境を家庭内外に作る。
- 子どもが新しい興味や関心を見つけられるよう支援する。
第9章 おわりに:親と子どもの未来のために
不登校は、一朝一夕で解決する問題ではありません。それでも、親が子どもの変化を受け入れ、小さな一歩を共に歩むことで、未来への扉が少しずつ開いていくのです。藤田氏も以下のように結論づけています。
「不登校は誰にでも起こりうることであり、子どものあるがままを受け止め、支え続けることが重要」。
お母様方が子どもと共に過ごすこの時間は、確かに試練の時期かもしれません。しかし、どうか焦らず、子どもの未来を信じて寄り添い続けてください。
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