はじめに
現代の日本社会では、不登校や引きこもりが増加しています。その原因は多岐にわたりますが、共通するのは「子どもが孤立している」という状況です。不登校が始まると、子どもだけでなく親も精神的に追い詰められ、家庭全体が苦しい状況に陥りがちです。しかし、その苦しい状況にあっても、解決のためには「会話の機会を増やすこと」が何よりも重要です。ここでは、不登校問題の解決に向けた一つの提案として、親子の会話の重要性について考えていきます。
子どもの孤立と自己否定
不登校の子どもたちは、家庭内でも学校でも「自分は必要とされていない」という思いにとらわれやすくなります。学校に行けないことで、自己肯定感はどんどん下がり、「自分はダメな人間だ」「自分は迷惑をかけている」といった自己否定の感情が膨らみます。この自己否定が強まると、外の世界との接点を持つこと自体が苦痛に感じられるようになり、結果として引きこもりに至るケースも少なくありません。
ここで重要なのは、「子どもを一人にしない」ということです。不登校が続くと、親はどうしても子どもとのコミュニケーションを避けてしまうことがあります。気まずさや心配が先に立ち、「何を話せばいいのか分からない」「余計なことを言って子どもを傷つけたくない」と思いがちです。しかし、親子の会話が減少すると、子どもは自分の中にあるネガティブな感情をどんどん内に溜め込んでしまいます。
親子共に落ち込んでしまう現実
不登校の問題は、単に子どもだけの問題ではありません。親もまた、子どもの状態に対して大きなショックを受け、心配や焦り、無力感にさいなまれます。特に、「なぜ自分の子どもだけが不登校なのか」「自分の育て方が悪かったのか」と自分を責める親も少なくありません。
しかし、親が落ち込んでしまうと、子どもはさらに「親に申し訳ない」という気持ちを抱くようになります。これは悪循環を生み、親子共に深い苦しみの中で身動きが取れなくなります。ここで大切なのは、不登校を特別なものにしすぎないことです。もちろん、深刻な問題であることは間違いありませんが、それによって家庭の日常が大きく変わってしまうと、子どもにとって「自分のせいで家族が壊れてしまった」といったさらなる罪悪感を生む可能性があります。
日常の維持と会話の場としての食事
では、具体的に親子の会話の機会を増やすためにはどうすればよいのでしょうか? その基本は「食事の場」にあります。食事というのは、人間が生きる上で欠かせないものであり、また家族が自然と顔を合わせる貴重な機会です。だからこそ、この食事の場を大切にすることが重要です。
不登校の子どもは、自室にこもりがちで、食事も自室で一人で取ることが多くなりがちです。しかし、これでは親子のコミュニケーションが希薄になり、子どもが孤立感を深めてしまうだけです。たとえ子どもが無理をしてでも、リビングで家族と一緒に食事を取ることを促すべきです。この場で無理に会話をしようとしなくてもよいのです。最初はただ一緒に食べるだけでもかまいません。
無理のない会話の始め方
親としては、子どもとの会話を「何か問題を解決するための手段」として捉えがちです。しかし、会話はあくまで「お互いの存在を確認するための時間」と考えるべきです。つまり、「何を話すか」ではなく、「同じ時間を共有すること」に重きを置くべきです。
例えば、子どもが食事中に無言でも、無理に話しかける必要はありません。親が楽しそうに食事をしたり、くつろいでいるだけでも十分です。その場の雰囲気が和やかであれば、子どもも少しずつリラックスし、次第に口を開くようになります。
また、子どもが話しかけてきたときには、全身全霊で耳を傾けることが大切です。このとき、親はアドバイスや説教をするのではなく、ただ聞くことを心掛けてください。子どもは自分の気持ちを話すことで、自分の中で整理しようとしているのです。そのプロセスを尊重することが、親としての最大のサポートになります。
子ども部屋での食事が引き起こす孤立
子ども部屋で一人で食事を取ることは、子どもをさらに孤立させる要因となります。食事は単なる栄養摂取の場ではなく、人と人とがつながりを持つ大切な時間です。だからこそ、子どもがどれほど抵抗を示しても、可能な限り家族と一緒に食事を取ることが重要です。
もちろん、子どもが完全に拒絶する場合もあります。そのようなときには、無理強いするのではなく、少しずつ段階を踏んで進めることが大切です。例えば、最初はリビングで一緒に食事をするだけでなく、同じ時間に同じ場所にいることから始めても良いでしょう。子どもが少しずつリビングに顔を出すことに慣れれば、自然と会話の機会も増えていきます。
親の焦りと心の余裕
親としては、子どもがいつまでも学校に行けない状態が続くことに焦りを感じるのは当然です。しかし、その焦りが子どもに伝わると、子どもは「親の期待に応えられない自分」を責めることになります。焦りや不安を抱えていると、つい子どもに「どうして学校に行けないの?」「いつになったら行けるの?」と詰め寄ってしまいがちですが、これは逆効果です。
親はまず、自分の気持ちに余裕を持つことが重要です。そのためには、自分自身のストレスケアやリフレッシュの時間を意識的に作ることが必要です。親が心に余裕を持てば、自然と子どもに対して優しく接することができ、子どもも安心して自分の気持ちを表現できるようになります。
まとめ
不登校の問題に対して、親ができる最大のサポートは「子どもとの会話の機会を増やすこと」です。会話とは、ただ言葉を交わすだけではなく、同じ時間を共有し、相手の存在を認める行為です。そのためには、食事の場を大切にし、親子で一緒に過ごす時間を意識的に作ることが重要です。
また、親は焦らずに、子どものペースに合わせてゆっくりと進めることが求められます。子どもが無理をしてでもリビングで一緒に食事をすることができれば、それが会話の糸口となり、少しずつ信頼関係を築いていくことができます。
最後に、不登校という問題を「特別なもの」として捉えすぎず、家庭の日常を維持することが重要です。子どもは親が想像する以上に繊細であり、家族の雰囲気や態度に敏感です。親が落ち着いて日常を送ることで、子どもも安心して自分の気持ちを整理し、少しずつ前向きに変わっていくことができるのです。
ToCo(トーコ)株式会社について
当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。
代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。
導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。