交換条件で宿題をさせることのリスク

交換条件で宿題をさせることのリスク-記事の見出し画像

こんにちは。児童カウンセラーの竹宮です。

今日は、「交換条件で宿題をやらせること」についてお話ししたいと思います。

「●●したら、宿題やろうね」
「ゲームは、宿題が終わったらにしよう」
「ご飯の後にちゃんとやろうって、約束したよね?」

日常の中で、親御さんがこんなふうにお子さんに声をかける場面は、よく見かけます。私も、子どもを持つ一人の親として、その気持ちは本当によくわかります。
ですが、今回はあえてこの「交換条件」という方法に潜む、意外なリスクについて掘り下げてみたいと思います。


目次


宿題をやらせるには「条件」が必要?

特に小学生、中学校お子さんを前にすると、どうしても「せめて宿題だけでもやって欲しい…」という責任感が生まれていきます。

その気持ちが、「ゲームするなら宿題をやろう」といった“交換条件”という形で現れるのも、無理のない流れです。

でも、ここでちょっと立ち止まって考えてみてください。

この方法で、お子さんは本当に「宿題をする意味」を理解できているのでしょうか?


一般的な考え方:「報酬」でやる気を引き出す

行動心理学では、「報酬によって行動を強化する」考え方があります。
これは「オペラント条件付け」とも呼ばれ、簡単に言うと、「○○したらいいことがある」と学習することで、行動が習慣化していくという仕組みです。

大人でも、「仕事を頑張ったら給料が増える」と思えばやる気が出ますよね。
このように、行動と報酬をセットにすることで、やる気を引き出すという考え方は、実際に多くの場面で使われています。

それゆえ、「ゲームをしたいなら、宿題を終わらせよう」と言いたくなるのも自然なことなのです。


それは「報酬」ではなく「交換条件」かもしれません

ただし、ここで注意したいのは、「報酬」と「交換条件」は似ているようで、実は少し意味が違うということです。

「報酬」は、自分の行動の結果として得られるごほうび。
「交換条件」は、「これをやってくれたら、これをあげるよ」と、取引のような形です。

この違いは、小さなようでいて、実は子どもの心に与える影響が大きいのです。

交換条件での宿題は、「やる意味があるからやる」ではなく、「これをやらないと、好きなことができないからやる」という構図を生み出します。

つまり、「自分の学び」のはずだったものが、「交渉材料」や「プレッシャー」に変わってしまうのです。

交換条件がもたらす“静かな副作用”

こういったやり取りを繰り返すうちに、子どもの中には次のような気持ちが生まれやすくなります。

・「宿題=楽しくないこと」と刷り込まれる
・「やりたくないことをやらされている」と感じる
・「親は僕がゲームをするのをコントロールしてる」と不満を持つ

さらに怖いのは、「親が求めていることをやらなければ、愛されない」という認知が育ってしまうケースです。

もちろん、親としては愛情ゆえに言っているだけです。ですが、子どもの心はまだ未熟で、理屈よりも感情で物事を受け止めるものです。

「また今日も怒られたな」
「ちゃんとやってないとダメなんだな」
そんな風に感じさせてしまうリスクがあることは、覚えておいて損はありません。


「でも、宿題は大事じゃないの?」

ここまで読んで、「とはいえ、宿題をやらせないままでいいの?」と思われたかもしれません。

その疑問、とてもまっとうだと思います。

勉強は大切ですし、学ぶことの積み重ねは、子どもにとって将来の財産にもなります。
だからこそ、どうにかしてやらせたい。その気持ちが湧いてくるのは当然なのです。

しかしながら、「勉強は大事だから、やらせる」というロジックは、子どもにとって必ずしも自然には響きません。

たとえば、大人が「健康のために毎日ジョギングをしよう」と思っても、三日坊主で終わることってありますよね。
「いいこと」だからといって、実行するモチベーションになるとは限らないのです。


子どもが自分で「意味づけ」できるかどうか

学びというのは、本来は「本人が必要だと感じたとき」に、もっとも力を発揮するものです。

誰かに言われてやる勉強より、自分から「知りたい」「分かりたい」と思ってやる学びのほうが、何倍も頭に残ります。

交換条件を使って、短期的に「やらせる」ことはできても、長期的に「意味づけ」を育てることはできません。

たとえば、野球にハマった子どもが、バッティングの理屈を調べたり、プロ野球選手の成績をノートにまとめたりするのは、誰かに言われたからではありませんよね。

「自分の興味」と「学び」がつながった瞬間、それは本当の意味での“勉強”になるのです。

勉強する子どものイメージ

「将来、本人が困るんじゃないか…」という不安

ここでまた、別の不安が湧いてくる方もいらっしゃるかもしれません。

「今、やらないと、将来困るのは本人なのでは?」
「そのとき、親として後悔しないだろうか…?」

とてもよく分かります。

見ているだけで、どうにかしたくなる。
放っておくなんて、できるはずがない。
子どもに苦労させたくない。

その気持ちは、どれも親として自然な感情です。

ですが、その反面、いま子どもが感じている「やらされている感」や「コントロールされている感覚」は、将来の“自律”を遠ざけてしまうリスクもあるのです。

本人が困るのは、悪いことではない?

「今はいいかもしれない。でも、このままだと本人が後で困るんじゃないか」
不登校のお子さんを持つ保護者の方から、何度となく聞いた言葉です。

たしかに、勉強しないまま学年が上がっていくと、教科書の内容が難しくなっていきます。
周りと比べて「分からないこと」が増えると、焦りや不安を感じるかもしれません。

けれど、それは必ずしも「悪いこと」とは言い切れません。

なぜなら、「困ること」には、人を動かす力があるからです。

「困って初めて気づく」こともある

たとえば、旅行に出かける日にスマホを忘れたら、かなり焦りますよね。
地図も見られないし、予約情報も確認できない。そんな不便さを一度経験すると、「次は絶対に忘れないようにしよう」と強く思うものです。

これは一種の“学び”です。

人は、失敗や不便を通して、自分に必要なことを肌で感じ、それを次の行動に活かしていきます。

子どもも同じです。

たとえ今は「宿題をやらない」ことで、後で困ったとしても、その経験から「どうにかしたい」と自分で思うことができれば、それは大きな力になります。

「やらされる」ではなく「やってみようかな」の種を育てる

逆に言えば、親が先回りして困らせないようにすると、「本人の中で芽生えるはずの動機」が育ちにくくなることもあります。

少し厳しい言い方になりますが、これは「学びの機会を奪ってしまう」ことでもあるのです。

もちろん、放っておくという意味ではありません。

大事なのは、「あなたがどうしたいかを大切にするよ」という姿勢です。

子どもにとって、「自分の判断を尊重してもらえる」という体験は、自信や自己決定感につながります。

それが、将来的な「自分で選んで動ける力」につながっていくのです。


「任せる」と「見捨てる」の違い

ここで誤解してほしくないのは、「任せる」ということが、「放置する」とイコールではないという点です。

子どもが宿題をやらなくても、何も言わずに放っておく。それは「無関心」に近い行動です。

一方、「あなたがどうしたいのかを見守る。でも、気になることがあればいつでも話そうね」と伝えるのは、「信頼」と「関心」の表現です。

これは、子どもにとって大きな違いになります。

「どうしても宿題をやってほしい」と思ってしまうときほど、一度この違いを意識してみてください。


親の不安が、知らず知らず子どもに伝わっていることも

親が「このままだとダメかもしれない」と思っていると、子どもはそれを敏感に察します。

たとえ言葉で「大丈夫だよ」と言っていても、態度や声のトーン、表情に不安がにじむと、子どもは「自分は親にとって、あまり良くない子どもなんだ」と感じてしまうことがあります。

これは、子どもの自己肯定感に影響を与える原因にもなります。

だからこそ、「自分が不安だから、子どもに行動させたいのかもしれない」と気づけるだけでも、子育てのスタンスが少し楽になります。


「今の気持ちに名前をつけてみる」という手

では、親自身の不安にどう向き合えばいいのでしょうか。

一つの方法は、「今の自分の気持ちに名前をつけてみる」ことです。

たとえば、

・「将来への焦り」
・「ちゃんとした親でいたい気持ち」
・「周囲と比べてしまう焦燥感」
・「子どもが嫌われないか心配な気持ち」

こんなふうに、自分の気持ちを言葉にしてみるだけで、ぐるぐるしていた感情が少し整理されます。

これは心理学で「ラベリング」と呼ばれる方法で、心を落ち着ける効果があります。

不安な気持ちを無理に消す必要はありません。
ただ、それを「見える形」にしてみると、感情に振り回されにくくなるのです。


宿題より大切な「自分を信じる体験」

最終的に、子どもにとって何より大事なのは、「自分で選んで、自分で行動できた」という実感です。

それはたとえ、宿題ではなくても構いません。

・自分で好きな本を読む
・自分から台所を手伝う
・自分で時間を決めてゲームを終わらせる

こういった日常の小さな選択を、自分でやってみて、「できた」「やれた」と感じること。

その積み重ねこそが、自信と主体性を育てていきます。

「勉強がすべてじゃない」と言い切れなくてもいい

ここまで読んで、「そうは言っても、勉強は大事だし…」とまだモヤモヤする方もいらっしゃるかもしれません。

そのモヤモヤ、自然なことだと思います。

「全部を任せて、何もしないのも違う気がする」
「かといって無理にやらせたくもない」
その揺れの中にいることが、親として真剣に向き合っている証だと思います。

大切なのは、「100か0か」ではなく、「その間のグラデーションの中で、何ができるか」を考えることです。

その中に、「交換条件以外の伝え方」もきっとあるはずです。


子どもを信じて任せる時間を増やしていく

子どもの状況は一人ひとり違いますし、家庭の環境や本人の特性によって、対応の仕方も様々です。

ですから、私は安易に「これで大丈夫です」と言うことはできません。

けれど、それでも一つだけお伝えしたいことがあります。

それは、「焦らなくていい」ということです。

子どもが何かを選び取っていく力は、少し時間がかかっても、ゆっくり育っていきます。

その芽を信じて、必要以上に急がず、今できることを少しずつやっていく。

その積み重ねが、きっと意味のある形になります。


おわりに

子どもの学びをどう捉えるか。
親の不安とどう向き合うか。
どれも簡単なテーマではありません。

ですが、「やらせる」以外にも「任せる」という選択肢があること。
「今困ること」には、未来の力につながる側面もあること。

この二つの視点が、あなたの中に少しでも残ってくれたら嬉しいです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

子どもに感情をぶつけないための最適な方法

子どもに感情をぶつけないための最適な方法-記事の見出し画像

こんにちは。
ToCoの不登校カウンセラー、竹宮です。

子どもに対してイライラしてしまった経験、きっと誰しも一度はあると思います。
特に、子どもが学校に行けない状態が続いていると、親の心もすり減っていきますよね。
「なぜ行かないの?」「ちゃんと話してくれればいいのに」と思いながら、ある日突然、声を荒らげてしまった……そんなことはありませんか?

今日は、「子どもに感情をぶつけないためにはどうしたらいいのか?」というテーマでお話ししてみたいと思います。
一見よくある話題かもしれませんが、世の中で広まっている方法の中には、現実にはうまくいかないものもあります。
だからこそ、今回は「もっと実行しやすくて、実際に効果がある方法」を一緒に考えていきたいのです。


目次


「怒りを我慢する」のが正解なのか?

まず、よくあるアドバイスに「怒りが湧いたらまずは6秒数えましょう」というものがあります。
いわゆる「6秒ルール」と呼ばれる考え方ですね。怒りのピークは最初の数秒間だと言われ、その間をやり過ごせば冷静さが戻るという理屈です。

確かに理にかなっているようにも思えます。
「カッとしたときはとにかく我慢」と聞けば、努力で何とかなるような気がします。

でも、本当にそれでうまくいくでしょうか?

私の元に相談に来られる方の多くは、

「6秒待ったのに、余計にイライラした」

とおっしゃいます。


なぜなら、我慢している間も、子どもは目の前で泣いていたり、ふてくされた態度だったり、あるいは無言で睨んできたり……そうなると、「よけい腹が立ってきた」という状態になってしまうのです。

ここで大切なポイントがあります。

人は「その場にとどまったまま怒りを収める」のがとても難しいということです。
怒りのもとが目の前にある限り、脳が「まだ危険だ」と判断してしまうからです。

その場にいる限り、脳は戦闘モードのまま

これは脳の仕組みによる反応です。
人の脳には、外からの刺激に素早く反応する扁桃体という部位があります。
この部分は、怒りや恐れといった強い感情に深く関係しています。

簡単に言うと、「これは危険かも!」と感じたとき、扁桃体がブザーを鳴らして全身に警戒モードを伝えるわけです。
この仕組みは、私たちの祖先が猛獣に遭遇したときにすぐ逃げたり戦ったりできるように備わったものです。

でも今、目の前にいるのはライオンではなく、自分の子どもです。

それでも、脳はそれを区別できません
子どもの反抗的な言動や不満そうな態度を「脅威」とみなしてしまうのです。

だから、目の前に子どもがいる状態で怒りを抑えようとすると、かなり無理が生じます。
6秒、10秒、30秒と数えても、怒りが消えるどころか燃え上がってしまう。
この現象、実感がある方も多いのではないでしょうか。

「その場を離れる」が一番シンプルで効く

そこで提案したいのが、

「その場から一度離れる」

という方法です。

物理的に数メートルでもいい。部屋を移動して、キッチンに立つ。トイレに行く。ベランダに出て空を見上げる。
できれば、声も視界も届かないところまで離れられると理想です。

一見、逃げているようにも感じられるかもしれません。
でも、これは感情のコントロールを取り戻すための、いわば「戦略的退避」です。

大人だって、感情を完全にコントロールするのは簡単ではありません。
瞬間的に高まる感情を「自分の中だけで処理しよう」とすると、心の負荷はどんどん蓄積していきます。

離れることで、「脅威」と感じていた対象が視界から消える。
そうすると、脳も少しずつ落ち着いてきます。怒りが2段階、3段階と、レベルダウンしていきます。

私は実際、カウンセリング中にもこの方法を勧めることがあります。
実行された方からは「怒りの強さがまるで違った」「言いすぎる前に落ち着けた」といった声が多く寄せられています。

ただ、現実には「離れられない場面」もありますよね。
車の中、公共の場、あるいは目を離せないタイミング……そんなときはどうすればいいのでしょうか?

離れられないときにできる「見えない距離のとり方」

子育てや介護など、逃げられない場面でどう感情を処理するか。
これは、非常に現実的で、かつ重要なテーマです。

一つのヒントになるのが、「物理的に離れられなくても、意識の焦点をずらす」という方法です。

私たちの脳は、見ているもの・聞こえているもの・考えていることに影響されて、感情が動きます。
つまり、目の前の「子どもそのもの」をずっと見ている限り、怒りのスイッチは入り続けるのです。

意識の焦点をズラすだけでも変わる

たとえば、話をやめて視線をそらす。壁のシミでも何でも構いません。
スマホの画面を開いて、天気予報でもニュース一覧でも見てみる。
この行動には、「今の自分をちょっとずらす」という意味があります。

深呼吸をしながら、頭の中で「今、自分は怒りに夢中になりそうなんだな」と言語化するのも効果的です。
これは心理学で「メタ認知」と呼ばれる考え方で、簡単に言えば「自分を一歩引いて見る力」のことです。

何か特別なスキルが必要なわけではありません。
「一歩引く」という小さな選択をするだけで、気持ちは確実に変わります。

「イメージの中で離れる」小さな工夫

実際にその場を動けないときでも、「頭の中でイメージを切り替える」方法も有効です。

子どもの表情が気になって腹が立ちそうになったときは、目の前の出来事をニュース映像のように見る。
自分を俯瞰して見るような感覚を持つことで、怒りの渦から抜け出す助けになります。

あるいは、「今は自分の中のスイッチが入っているだけ」と言葉にしてみるだけでも、距離ができます。
この“ちょっとした工夫”が積み重なると、怒りをぶつける頻度は驚くほど下がっていきます。

感情を持つことは自然なことです。
でも、それをぶつけずに済む方法があるなら、そちらを選んでいけたら気持ちが少しラクになりますよね。

叱る親の画像

「我慢」だけでは疲れ果ててしまう理由

よく、「怒らないように深呼吸して耐えてください」と言われることがあります。
確かに、衝動的に怒鳴ってしまうよりはいいかもしれません。
でも、問題はその“耐える”という行動が、自分のエネルギーをどれだけ消耗しているかです。

怒りを感じているとき、私たちの身体はかなりのストレス状態にあります。
心拍数が上がり、筋肉は緊張し、交感神経がフル稼働している状態。
そこで無理に我慢すると、怒りの感情は消えるどころか体内に圧縮されていきます。

結果として、

「その場では耐えたけど、あとでどっと疲れた」
「寝るまでずっとモヤモヤしていた」

そういう経験、ありませんか?

人は“ただ耐える”だけでは、感情の処理が完了しないんです。
怒りがどこにも行き場を失ったまま、体と心に蓄積されていきます。

我慢して我慢して、ある日突然爆発してしまう。
あるいは、言葉にならない疲れとなって自分を責めてしまう。
こうした連鎖は、誰にとってもつらいものです。

感情は「処理する」もの。ためこまない。

じゃあ、怒りはどう扱えばいいのか?
そのカギは「感情を処理する」という考え方にあります。

処理とは、「感じたことを自覚し、それを無理のない形で外に出していくこと」です。
怒ることそのものを悪者にせず、「今、自分はこう感じているんだな」と自分に気づいてあげる。
そして、無理のない範囲で誰かに話す、紙に書く、声に出す……そうした出口を持つことが大事です。

たとえば、

  • ノートに「今日はこういうことで腹が立った」と書き出す
  • パートナーや信頼できる人に「つい怒りそうになった」と話す
  • カウンセリングで「感情の背景」を整理してみる

こうした行動は、“ためこまない習慣”をつくってくれます。

感情がゼロになることはありません。
でも、「怒ってもいい」「でも、ぶつけない選択肢がある」と思えるだけで、心はずいぶん軽くなるものです。

感情をぶつけてしまった後の“回復の仕方”

とはいえ、どんなに気をつけていても、感情をぶつけてしまう瞬間はあります。

イライラが頂点に達し、「もういい加減にして!」と叫んでしまった。
あとで自己嫌悪に陥り、「またやってしまった……」と落ち込む。
そんな日も、ありますよね。

でも、そこで自分を責めすぎないでください。

親だって人間です。
怒ってしまったことよりも、「そのあと、どう対応するか」のほうがずっと大事です。

おすすめなのは、次の3つのステップです:

1. 落ち着いたあとに「自分の感情」を言葉にする

「さっきは、ちょっと怒りすぎちゃった。ごめんね。びっくりさせたと思う」
「本当は心配だった。でも言い方が強くなってしまった」

このように、怒った理由を“感情の背景”として伝えると、子どもは「責められた」ではなく「気持ちを教えてくれた」と受け取りやすくなります。

2. 子どもの反応に期待しすぎない

謝ったからといって、子どもがすぐに優しくなるとは限りません。
反応がなくても、ふてくされていても、それでいいのです。
目的は“自分が感情を整理すること”です。

期待しすぎると、「せっかく謝ったのに!」とまた怒りが湧いてしまいます。
相手のリアクションより、自分の回復を大事にしてください。

3. 小さな信頼の積み重ねを意識する

一度の衝突で親子関係が壊れることは、まずありません。
大事なのは、「その後どう向き合うか」の積み重ねです。

子どもと一緒におやつを食べる、散歩に誘う、何気ない会話をする。
そうした“小さな関わり直し”が、信頼を回復する土台になります。

怒ってしまった日のあとこそ、「関係をつくり直すチャンス」なんです。

まとめ:ぶつけない=無理をしない、ということ

怒りをぶつけないようにするには、「我慢」より「仕組み」が大事です。

  • 物理的・心理的に距離を取る
  • 感情に気づき、言語化して処理する
  • ぶつけたあとも、自分をケアする

この3つの習慣を持つだけで、感情に振り回される頻度は確実に減っていきます。

「怒ってはいけない」と自分にプレッシャーをかける必要はありません。
むしろ、「怒っても大丈夫。でも、ぶつけない工夫ができる」と思えた方が、ずっとラクに生きられるはずです。

私たち大人が感情と向き合う姿は、そのまま子どもにとっての“感情の扱い方”のモデルになります。
完璧を目指さなくても、ちょっとした工夫と回復の力があれば、親子の関係はゆっくりと整っていきます。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

引きこもりを徐々に解消する遊び5選

引きこもりを徐々に解消する遊び5選-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は現在、不登校予防・再登校支援を専門に行うToCo株式会社の顧問も務めております。

自宅にこもる時間が長くなると、生活リズムだけでなく、外に出ることや人と関わること自体が大きなハードルになります。こうした状態にあるお子さんに「外に出よう」「人と話そう」と直接働きかけても、うまくいかないことがほとんどです。
そこで私が提案したいのは、「遊び」を通じて行動の範囲を広げていく方法です。

ここでいう遊びとは、気分転換や暇つぶしだけではありません。外に出るきっかけになり、親子の会話が自然に増え、自信や安心感を少しずつ回復できる仕組みとしての遊びです。

以下でご紹介する5つの遊びは、多くのご家庭のヒアリングから実際に効果があったものから厳選しています。


目次


1. レジャー施設で「できる」を体験する

引きこもり状態のお子さんにとって、外に出ること自体が強いストレスになっている場合があります。そこでおすすめなのが、「スポッチャ」のような複合型レジャー施設です。バッティング、バスケ、カラオケ、ボウリング、アーチェリー、ゲーム……多種多様な遊びが一か所に集まっており、好きなものを自由に選べます。

学校のようにルールや他者との比較が求められる場所ではなく、「自分のペースで楽しめる場所」というのが最大の利点です。さらに、親が積極的に一緒に遊ぶことで、お子さんとの対話が自然と増えていきます。「今日はどれが楽しかった?」「次は何してみようか?」といった軽いやりとりを重ねる中で、親子の間にポジティブな共有感覚が生まれます。

また、スポッチャには「成功体験のハードルが低い」という特徴もあります。得意でなくても少しやってみるだけで「できた感覚」が得られやすい。そうした体験は、引きこもりによって低下しがちな自己効力感(=自分にはできるという感覚)を回復させるうえで重要な役割を果たします。


2. 街中ビンゴで散歩に「楽しさ」を持たせる

次に紹介するのは「街中ビンゴ」です。これは、あらかじめ作っておいたビンゴカードに「犬の散歩」「30階建て以上のビル」「丸いポスト」などの街中で見られる要素をマスとして配置し、親子でそれを探しながら散歩するという遊びです。

単なる散歩に出るのは難しくても、「ゲームをするために出かける」と目的が加わると、子どもは動きやすくなります。ゲーム感覚なので緊張が和らぎ、「やらされている」と感じにくいのです。探しながら歩くという軽いミッションがあるため、外の風景を意識的に見るようになり、頭も自然と働きます。

また、親子で「見つけた!」「あっちにありそう」とやりとりする中で、自然な会話が生まれます。これが大切です。
引きこもっていると、会話の数自体が減り、親子関係もぎこちなくなりがちです。街中ビンゴは、会話の糸口を作り直す実用的な仕掛けになります。

距離が長くなくても十分成立しますし、その日の気分や体調に応じて調整がしやすい点でも導入しやすい遊びです。
また慣れてきたら、ビンゴの内容を子どもと一緒に作ることもおすすめです。

続けて、室内でできる遊び3つを紹介いたします。それぞれが「対話を生む」「心理的負荷が少ない」「取り組みやすい」という観点から、引きこもり状態の緩和に役立ちます。


3. 水平思考推理ゲームで「考える力」と会話を引き出す

室内でも子どもの関心を引きやすいのが、「水平思考推理ゲーム」です。いわゆる“なぞなぞ”に近いのですが、質問を重ねながら真相に迫っていく形式のゲームで、遊びながら会話を増やすのに非常に適しています。

たとえば、出題者が以下のような問題を出します。

「部屋に6つのリンゴが籠に入っています。6人の子どもが1つずつリンゴをもらいました。
でも、籠の中にはリンゴが1つ入ったままです。なぜでしょうか?」

回答者は「リンゴは切ったり割ったりしましたか?」「誰かがリンゴを戻しましたか?」などとYes/Noで答えられる質問を繰り返して真相を探ります。

ここでおすすめしたいのが、ポール・スローンが手がける作品集で、大小さまざまな問題が収められています。
内容が重すぎたり難しすぎたりすると気分が落ち込みやすいため、ひねりが面白いものを選ぶのがポイントです。

この遊びの良いところは、正解がすぐに分からず、試行錯誤を重ねることで会話が自然と続くことです。また、相手の考え方を否定せず、「その発想面白いね」と受け止めることで、安心して言葉を交わせる関係性も築きやすくなります。
子どもが話す機会を失っていると感じているご家庭にとって、会話のきっかけをつくる実践的な手段になるでしょう。


4. 立体4目並べで「小さな勝負」を通して関わる

遊びの中には、「勝ち負け」があるからこそ集中できるものがあります。けれども、不登校や引きこもりの状態にある子どもにとっては、敗北体験が逆効果になることもあります。そこでおすすめなのが、「立体4目並べ」です。

これは、縦・横・斜めだけでなく、立体的な配置も含めて4つ揃えるゲームで、数分で1ゲームが終わる手軽さがあります。最大のポイントは、「負けたときのダメージが少ない」という点です。短時間で決着がつき、負けたとしても「ちょっと見落としてた」といった感覚で済むため、対戦を繰り返すことへの心理的ハードルが低くなります。

また、1対1で向き合いながらも、あくまでゲームに集中できるため、直接的な会話が苦手なお子さんとも「関わる空間」を共有しやすくなります。遊びながら徐々に口数が増えてくるケースも少なくありません。
あまりにも喋らせようとせず、まずは「対話がなくても気まずくない関係性」をつくることが先決です。その足がかりとして、このような軽めの対戦ゲームは効果的です。


5. Switch/Wii Sportsで「体を動かす習慣」をつくる

最後に紹介するのは、家庭用ゲーム機を使ったスポーツゲームです。特に「Switch Sports」や「Wii Sports」のように、リモコンを振るだけでテニスやボウリングができるタイプのゲームは、動作がシンプルで、年齢や得意・不得意に関係なく一緒に楽しめます。

引きこもりの状態では、身体を動かす機会が極端に減り、気分の落ち込みや不眠などにもつながりやすくなります。しかし、「運動しなさい」と言われて素直に動く子どもはまずいません。そこで、「ゲームで遊んでいるうちに自然と体が動く」という仕組みが、本人の抵抗感を減らす助けになります。

また、得点を競ったり、ラリーを続けたりといった簡単な目標があることで、親子の中で笑いや達成感が生まれます。笑顔やちょっとしたリアクションのやり取りが続くこと自体が、家の中の雰囲気を和らげ、本人にとって「一緒にいるのが心地よい」と感じられる体験になります。

ゲーム機がすでに家にあるご家庭は、再起動のきっかけとして非常に使いやすいツールです。あくまで「共に遊ぶ」ことを意識し、親が主導しすぎないことがポイントです。

これらの5つの遊びは、「家の外に出る」「人と関わる」ことを、段階的に、そして自然な形で再開していくための手段として活用できます。

遊びを通じた交流が、不登校の長期化を防ぐ

これまでご紹介してきた5つの遊びは、いずれも「子どもを外に連れ出す」あるいは「関わりを取り戻す」ための実践的な手段です。そして、これらの遊びを通じて親子のやりとりが少しずつ回復してくると、もう一つ大きな変化が現れ始めます。それが、生活リズムの改善です。

不登校や引きこもりが長期化する背景には、昼夜逆転や活動時間の極端な減少といった、生活の構造自体の崩れがあります。
このような生活リズムの乱れは、ただの習慣の問題ではありません。夜型の生活が続くと、体内時計が狂い、気分や意欲、集中力といった面にも影響が出てきます。結果として、「外に出たくても出られない」「何かを始めようとしても体がついてこない」といった状態が固定化されてしまうのです。

しかし、日中に人と関わる時間が少しでも増えてくると、そのリズムに変化が生まれます。
たとえば、「午前中に街中ビンゴをする」「午後からスポッチャに行く」といった活動が入ることで、夜更かしを控えるようになったり、朝食をとるようになったりします。
ここに無理な働きかけはありません。「楽しいから起きる」「遊ぶ約束があるから起きる」といった前向きな理由で動き始めることが、長い目で見たときに最も効果的なのです。

また、遊びの中で生まれる親子の会話も重要な役割を果たします。「この子、こんなことを考えていたのか」「最近はこういうことに興味があるのか」といった発見を通して、親御さん自身も子どもの今の状態をより具体的に理解できるようになります。
そうした理解は、日常生活の中での声のかけ方や関わり方にも自然と反映されていきます。

繰り返しになりますが、不登校は放っておけば回復するものではありません。
特に、生活リズムが崩れ、家庭内の会話が減り、外との接点がなくなっていく状況が続けば、本人の「戻りたい気持ち」すら薄れていきます。だからこそ、いま親子で一緒に過ごす時間を遊びの中に設けることが、先を見据えた第一歩になります。

ほんの少しでも笑える時間、話せる時間、動ける時間があること。それが、明日の再挑戦につながっていきます。今回紹介した遊びが、今のご家庭に合う形で、小さな変化のきっかけとなれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校は「◯◯のせい」ではない。

不登校は「◯◯のせい」ではない。記事の見出し画像

こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。
今日のテーマは「不登校は『◯◯のせい』ではない」です。


目次


「どうしてうちの子だけ?」と思ったことはありませんか?

不登校の相談を受ける中で、保護者の方から一番よく聞くのがこの言葉です。
「うちの子に限って、どうして?」「原因がわからないんです」
そして、その言葉のあとには、ほとんど必ず「たぶん、〇〇のせいなんだと思います」という一文が続きます。

ゲームのやりすぎ。
YouTubeの見すぎ。
友達とうまくいかなかった。
先生と合わなかった。
親の接し方が悪かった。

こういった「原因探し」は、ごく自然な反応です。
むしろ、わが子のことであればあるほど、理由を知りたくなるのは当たり前のことです。

でも、今日はあえて踏み込んでいきたいと思います。
不登校は「何かのせい」で起きているわけではないということを。


年々増え続ける不登校の背景

文部科学省の調査によると、令和5年度時点で小中学生の不登校の数は35万人を超えています。
過去最多です。そして、これは毎年更新されています。

35万人。
これはもはや「特別な家庭の話」ではありません。
どこにでもある、ごく普通の家庭でも起きていることなのです。

ここで、ちょっと考えてみてください。
これだけの数がいるということは、もはや個別の家庭や本人の「問題」では説明できません。
構造的な背景があると考える方が、自然です。


今の学校の「当たり前」って、どんなもの?

不登校の背景には、日本の学校教育の構造的な特徴が大きく関わっています。
特に公立の小中学校に顕著ですが、いまだに多くの場面で「画一的であること」がよしとされています。

たとえば、

授業中は静かに座って話を聞くこと。
先生の指示には従うこと。
集団行動を乱さないこと。
テストの点数で評価されること。

これらのルールに「合う子」にとっては、学校は過ごしやすい場所です。
けれど、「合わない子」にとっては、かなり苦しい場所になりやすいのです。

たとえば、じっとしているのが苦手な子。
思ったことをすぐに口に出してしまう子。
グループ活動よりも、一人で考える方が得意な子。

こうした子どもたちは、学校の「標準仕様」から外れてしまいやすいのです。


「適応できない子」ではなく、「多様性に対応できない仕組み」

「学校に行けない」というと、多くの人は「本人の問題」と捉えがちです。
けれど、少し見方を変えてみましょう。
そもそも、どんな子でもすんなりと適応できるような仕組みでしょうか?

たとえば、あるお子さんは、クラスの騒がしさに耐えられずに不登校になりました。
学校側は「感覚が過敏なんですね」と受け止めましたが、その子にとっては「普通の感覚」だったのです。

別の子は、毎朝の登校時間に極度のストレスを感じていました。
けれど、始業時間は全国ほぼ一律です。
その子にとって「毎日8時半に着席する」ことは、大人で言えば「毎朝5時に職場で朝礼」くらいの感覚でした。

このように見ていくと、「子どもに問題がある」というより「子どもに合わせる仕組みがない」だけなのかもしれません。

学校の現実:「合わない子」が増えている理由

「不登校」はもはや例外ではない

子どもの数が減っているのに、不登校は増えている。
この事実が意味するのは、「今の学校システムに合わない子が、年々増えている」ということです。

私たちはよく、「うちの子は学校に合わなかったんです」と言うとき、どこか申し訳なさそうな言い方をしてしまいます。
でも、本来「合わなかった」というのは、個人と制度の相性の問題です。
合わなかったということは、どちらが悪いわけではないケースもあります。


画一的な教育の中で、何が評価されていないのか

「静かに座って聞く」子が良い子?

多くの学校では、いまだに「静かに指示を聞ける子」が高く評価されます。
でも、これは学習態度のひとつの型にすぎません。

実際には、以下のような子どもたちもたくさんいます:

  • 興味のあることには驚くほど集中する
  • 話すことで考えを深めるタイプ
  • 音や光に敏感で、教室では疲弊してしまう
  • 手を動かすことで理解が進む

ところが、こうした子たちは「落ち着きがない」「話を聞かない」「成績が安定しない」などの評価を受けやすいのが現状です。


私立や一部の公立校では「変化」も始まっている

もちろん、すべての学校が昔ながらのやり方に固執しているわけではありません。
最近では、探究学習やプロジェクト型学習を取り入れる学校も増えてきました。
私立の中高一貫校や、新しいタイプの公立校などでは、子ども自身の興味や主体性を重んじる授業も増えています。

実際、そういった学校では、いわゆる「不登校だった子」が生き生きと学んでいる例も少なくありません。
ただ、こうした学校がまだ「例外」であるというのが現状です。


「学校に行くかどうか」よりも大事なこと

ここまでの話を聞いて、「じゃあ、学校に行かなくていいの?」と不安になる方もいるかもしれません。

ですが、今日お伝えしたいのは「学校のせいにしよう」ということではありません。
そして、「家庭がすべて悪い」ということでもありません。

むしろ、「どちらか一方のせい」と考えること自体が、不登校の本質を見えにくくしてしまうのです。


親としてできること

不登校の理由は多岐にわたります。
ただ、共通して言えるのは、「学校という一つの基準」だけで子どもを見てしまうと、本人がとても苦しくなってしまうということです。

学校で評価されない点を、家庭では認めてあげてほしいと思います。
たとえば、空想が好きな子は、想像力が豊かです。
おしゃべりが多い子は、言葉のセンスがあるかもしれません。

もちろん、道徳的に逸脱した行動はしっかり注意すべきです。
でも、それとは別に「この子の良さ」を学校の成績や出席日数以外からも探してみてください。


「小さな頃はよかったのに」と感じたら

幼い頃は、子どもの良さを素直に受け止められたのに、
小学校・中学校に上がるにつれて「評価」の目が厳しくなってしまう。
そんなふうに感じている方も、多いのではないでしょうか。

乳幼児期は、ただ元気に笑ってくれるだけで嬉しかったはずです。
でも、成長とともに「できること」が増えてくると、
いつのまにか「できないこと」ばかりが目についてしまいます。


少し視点を変えてみる

不登校は、「育て方のせい」でも「本人のせい」でもありません。
社会全体の仕組みの中にある、すれ違いがきっかけになっていることが多いのです。

だからこそ、視点を変えることが、とても大切です。
「学校に行かないこと」が問題なのではなく、「学校に行かない子どもに対する見方」が問われているのかもしれません。

「家庭の評価軸」のつくり方

子どものよさを言語化して伝える

学校の成績や通知表は、どうしても数字や記号での評価になります。
でも家庭は、それ以外の「物差し」が使える場所です。

たとえば:

「人の気持ちに気づけるって、すごいことだよ」
「面白いアイデアを思いつくところ、お母さんも尊敬してる」
「人と違う考え方ができるの、将来の強みになるよ」

こうした言葉を子どもが無理なく受け取れるタイミングで、自然に届けることが大切です。
大げさに褒める必要はありません。
普段の生活の中で、事実として伝えるだけでも、十分効果があります。


「道徳的に外れた行動」にはどう向き合うか?

寄り添うことと、甘やかすことは違う

誤解されやすいのですが、「学校に行かないことを責めない」という態度と、「子どもを全肯定する」という姿勢は、同じではありません。

たとえば、

人を傷つけるような言動
生活リズムの完全な崩壊
他者を侮るような態度

これらは、きちんと注意した方が良いです。

ただし、注意の目的は「正すこと」ではなく、「考えるきっかけを渡すこと」です。
子どもが自分で「どうありたいか」を選べるように、対話の余地を残す。
それが、家庭での倫理教育の役割です。


「他の子はできているのに」と思ってしまったとき

比較したくなる自分を責めないでください

SNSやママ友の会話、塾の面談。
子育てをしていると、どうしても他の子どもの様子が入ってきます。
すると、「なぜうちの子だけ…」という思いが芽生えてしまうこともありますよね。

でも、比較したくなるのは、親として自然な感情です。
まずは、その気持ちを無理に消そうとしないでください。
大事なのは、「比較の後に、どんな視点に立ち戻るか」です。

「この子にとって何が必要か?」という軸を取り戻すことで、親の言動がぶれなくなります。


「誰のせいでもない社会」で育てるという覚悟

誰も悪くない。だからこそ、考える

不登校という現象を「親のせい」「学校のせい」「本人のせい」など、どこか一つに押し付ける考え方は、もう限界を迎えています。

この時代に必要なのは、「誰のせいでもない」としながらも、「だからこそ、どう育てるか」を考え続ける親の姿勢です。

完璧である必要はありません。
ただ、「この子の存在自体を愛して受け入れる」という態度が、子どもにとっての安全基地になります。


子育てに「正解」はありません。でも、視点は変えられます。

子育てをしていると、「これでいいのかな」と悩むことばかりです。
でも、不登校は決して「失敗」ではありません。

むしろ、「この子らしい育ち方って何だろう?」と、改めて考える機会になります。

学校という場所だけでなく、家庭の中にも子どもを支える軸は作れます。
社会の変化とともに、評価の物差しも変わっています。

その中で、親としてできることは:

学校では評価されない子どもの良さを認めること
社会の構造に目を向け、無理な期待を手放すこと
子どもが「自分は大丈夫かも」と思えるような接し方をすること

それだけで、子どもの心に残るものは大きく変わっていきます。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

母親/父親だけで不登校の子どもを支援することについて

母親/父親だけで不登校の子どもを支援することについて-記事の見出し画像

こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。

今日は「お母さん(またはお父さん)だけで不登校のお子さんを支えること」について書きたいと思います。


目次


よく「家庭の中で協力体制が整っていないと再登校は難しい」といった声を耳にします。たしかに理想を言えば、家族みんなが一丸となってサポートするのが望ましいです。でも、現実にはそういかないご家庭も多いのではないでしょうか。

たとえば、お父さんが子どもとの関わりに消極的だったり、逆に厳しく接してしまうことがある。あるいは、仕事で忙しく、家にいても「自分の時間」に徹してしまうタイプだったりもします。

そうなると、「私だけで何とかしないといけない」とお母さんが抱え込んでしまうことがあります。そして、その責任感の強さが、逆にご自身を追い詰めてしまう。こうした状況、実はとてもよくあるものです。

「家族全体で協力を」は正論だけれど

不登校支援に関する本やネット記事では、よく「家庭での協力体制づくりが大切」と書かれています。お父さんとお母さんが足並みを揃えて子どもに関わることが、安心感につながる——それ自体は間違っていません。

ただ、この言葉がプレッシャーになってしまうこともあります。

「うちは協力なんてできない」 「夫に話しても、そもそも理解してもらえない」

そんなふうに感じる方にとって、「協力体制を作りましょう」は、理想論に聞こえるのではないでしょうか。

その結果、協力できない自分たちの家庭に問題があるのでは、と余計に自信を失ってしまう。これは、本来前に進むためのアドバイスが、ブレーキになってしまっている状態です。

一人で向き合う現実と、そこにある力

実際、私のもとに相談に来る方の中にも、「夫は非協力的だから、自分一人でやるしかない」とおっしゃる方は多くいらっしゃいます。

ですが、そういったご家庭でも、お子さんが少しずつ元気を取り戻し、再登校につながったケースはたくさんあります。

大切なのは、「一人で全部を完璧にやろうとしないこと」だと思っています。

サポートの主軸を担うお母さんが、自分自身の負担に気づかず、無理をしすぎてしまうと、結果的に家の中の空気がギスギスしてしまうことがあります。子どもはとても敏感なので、その空気をすぐに察知します。

むしろ、完璧を目指すよりも、今できる範囲で「安心できる空間」を少しずつ作っていく。たとえば、朝「おはよう」と声をかける。好きなご飯を用意する。何も言わずにそっとしておく——そういう小さな積み重ねの方が、ずっと大きな支えになります。

子どもにとって「一人の安心できる大人」がいることの意味

不登校のお子さんにとって、「安心できる大人」がひとりでもいるということは、それだけで大きな支えになります。

たとえば、学校に行けない日が続く中で、「今日も家にいていいんだ」と思える空気があること。「無理に登校を促されない」という安心感があること。これだけで、子どもの心の緊張は少しずつほぐれていきます。

ここでポイントになるのが、「安心感」と「放任」は違うということです。

「安心感」は、子どもが受け入れられていると感じる状態です。「あなたはあなたのままで大丈夫」と伝えることです。

一方で「放任」は、関心を持たれない、ケアされないと感じる状態です。「どうでもいいと思われてるのかな」と子どもが感じてしまうこともあります。

これは、言葉だけでなく、表情や態度、空気感に出るものです。

だからこそ、お母さんが一人で関わる場合でも、「見守ってるよ」「気にしてるよ」「気にかけてるよ」というメッセージが、少しずつでも伝わるように意識してみてください。

親子の会話の画像

少しずつ巻き込んでいく、という視点

では、家族の中で「今は自分しか動けない」状況の中から、どうやって少しずつお父さんを巻き込んでいくのか。この部分に悩まれる方も多いと思います。

まず大前提として、「いきなり理解してもらおうとしない」ことです。

人は、自分に関係があると感じられない話にはなかなか関心を持てません。たとえば、「子どもが不登校になっていて」「繊細な声かけが大事で」「今日の様子はこうだった」などと、一気に状況説明を始めても、聞く側には入りづらいことがあります。

これは、理解力や愛情の問題ではなく、「情報の量」と「タイミング」の問題です。

ですので、最初はほんの小さなことからで構いません。

たとえば、 「今日、○○(子どもの名前)、久しぶりに自分からお皿を運んでくれてね」 「夕方、ちょっとだけリビングに出てきたのよ」 というような、ごく短いエピソードを、何気なく共有してみてください。

これには、「状況を共有する」という目的だけでなく、「あなたにも関係ある話なんですよ」と、さりげなく伝える意味があります。

一度で響かなくても大丈夫です。こういうやり取りを繰り返す中で、少しずつ「子どもの今」が身近に感じられてきます。

そして、これが大切なのですが……人は「頼られると、役割を感じる」ものです。

「ちょっと声だけでもかけてもらえると嬉しいんだけど」 「夜、一緒にテレビ見てると子どもが安心するみたい」 など、負担にならない範囲でお願いをしてみるのも、一つの方法です。

反応が薄くても、それは「嫌だ」というより「どう関わったらいいかわからない」だけかもしれません。

だからこそ、急がず、焦らず、できるだけ短く、具体的に。「これをしてほしい」というより「これ、助かるんだけど」という伝え方のほうが、すっと心に入りやすいです。

「お父さんなりの関わり方」がある

一つ注意したいのは、「お母さんと同じように関わってもらおうとしない」ことです。

お母さんが感情を受け止めたり、様子を丁寧に観察したりするタイプであればあるほど、お父さんのシンプルな反応や無言の姿勢に対して「それじゃ伝わらない」と感じてしまうことがあります。

ですが、お父さんなりの関わり方というのも、ちゃんとあります。

たとえば、特別な会話がなくても、決まった時間に家に帰る。子どもが話しかけてきたら、素っ気ないようでいてちゃんと受け答えする。それだけでも、子どもは「あ、見てもらってる」と感じることがあります。

「なにかしてもらう」より、「存在としてそこにいること」が安心になることもあるのです。

その意味でも、無理にお父さんを変えようとするより、「今のスタイルでできること」を見つけていく方が、結果的にうまくいくことが多いです。

「一人でやる」ことの価値を、見失わないで

ここまで「巻き込む工夫」について書いてきましたが、最後にひとつ強調したいことがあります。

それは、「一人で子どもを支えている今のあなた自身には、大きな価値がある」ということです。

たしかに、時に孤独で、不安で、出口が見えない日もあるかもしれません。でも、お子さんにとっては、今そばにいてくれるあなたが、世界の中で一番の安心なのです。

このことは、誰かに評価されるものではありませんが、確かに存在する力です。

ですから、自分を責めないでください。

そして、支え方を少しずつ工夫しながら、できるタイミングで周囲を巻き込んでいく。そのプロセス自体が、親子にとって大切な時間になります。

目指す先が「再登校」であっても、そこに至るまでの道のりに、たくさんの意味があります。

今日の文章が、そんな道のりを歩く中で、少しでも気持ちを軽くできたなら嬉しく思います。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

ゲームと不登校

こんにちは。
ToCoの不登校カウンセラー、竹宮です。

今日は「ゲームと不登校」というテーマについて書きたいと思います。

お子さんが学校に行けなくなり、家に引きこもって、ゲームばかりしている……。
そんな状況を見て、心配になる保護者の方は本当に多いです。

「ゲームばかりしているから、ますます学校に行けなくなるんじゃないか」
「エネルギーが吸い取られて、どんどん現実から遠ざかっている気がする」

こんなふうに思うのは、ごく自然なことです。
私自身、相談を受ける中で、何度もこうした声を耳にしてきました。

今日はそんな「ゲーム=悪いもの」と思いがちな見方に、少しだけ新しい視点を加えてみたいと思います。


目次



よく聞くアドバイス:「ゲームを取り上げましょう」

まず、世の中でよく言われているのは、
「ゲームは悪影響だから、取り上げるべき」というアドバイスです。

確かに、長時間のゲーム漬け生活は、健康にも、生活リズムにも良い影響を与えません。

だから、「ゲームを取り上げれば生活が改善するのでは?」と考えるのは、ある意味当然です。

実際に、

「ゲームを禁止したら、子どもが部屋から出てくるようになった」
「スマホを取り上げたら、昼夜逆転が直った」

という例も存在します。

一見、合理的な方法に思えます。


でも、本当に「取り上げる」だけで解決するのでしょうか?

ここで、少し立ち止まって考えてみたいと思います。

ゲームを禁止すると、一時的には行動が変わるかもしれません。
でも、それは本当に「根本解決」と言えるでしょうか。

たとえば、私たち大人も、
何かに追い詰められたり、うまくいかない時、
「ついスマホで動画を見続けてしまう」
「現実逃避するために、ゲームに熱中してしまう」
こんな経験があるのではないでしょうか。

それと同じで、子どもたちも、
学校でうまくいかなかったり、人間関係で傷ついたりした心を、
ゲームという手段で守ろうとしていることが多いのです。


家族と遊ぶゲームは「悪い」どころか、むしろプラスになることも

ここで、もう一つの視点を持ってみましょう。

確かに、子どもが自室にこもり、一人きりで朝から晩までオンラインゲームに没頭しているのは、あまり良い状態とは言えません。

ですが、もしリビングで、家族と一緒にSwitch Sportsやマリオカートを楽しんでいたらどうでしょうか。

それも「ただのゲーム遊び」とひとくくりにできるでしょうか?

私は、ここに大きな違いがあると考えています。

一人でゲームをすることと、家族とゲームをすることは、まったく意味が違います。

一人きりでのゲームは、外の世界との接点を断ってしまう恐れがあります。
しかし、家族と一緒に遊ぶゲームは、「コミュニケーションの場」を作ってくれます。

たとえば、
「お母さん、マリオカート、全然勝てないじゃん!」
「お父さんの動き、めっちゃ変だよ!」
そんな何気ないやりとりが、閉ざされかけた心を、少しずつ外に向けていきます。


なぜ「家族と一緒」が大事なのか

ここで少し専門的な言葉を出します。

「情緒的な安全基地」という概念があります。
これは、言い換えると「安心して戻れる場所がある」という意味です。

子どもは、外の世界で疲れたり傷ついたりしても、
「ここに戻れば大丈夫」と思える場所があると、また外にチャレンジしようという気持ちになれます。

ゲームを通じて家族と笑い合う時間は、まさにその「安全基地」を強める働きを持っています。

つまり、
家族と一緒にゲームをすることは、ただの娯楽ではなく、子どもにとっての心の支えになりうるということです。


よくある心配:「でも、そんなふうにゲームを認めたら、余計に引きこもるのでは?」

ここで、多くの保護者の方が抱える葛藤についても触れておきたいと思います。

「一緒にゲームするのが大事なのは分かるけど、認めたら本当に学校に行かなくなりそうで怖い」
そんな不安の声もよく耳にします。

この気持ち、とてもよく分かります。
親としては、ただ現状を肯定するだけでいいのか、本当に迷いますよね。

しかしながら、子どもが家族とゲームを楽しめるようになるというのは、
「外の世界とつながる力」を少し取り戻し始めているサインでもあります。

このような理由で、
むしろ、家族と一緒に楽しめる段階に来たことを前向きに捉えていいのです。

焦る気持ちが出てきたときは、
「これは、外の世界への第一歩なんだ」と、小さく受け止めてみてください。


「ゲームを取り上げる」か「一緒に遊ぶ」かの選択

ここまで読んできて、こんなふうに感じた方もいるかもしれません。

「じゃあ、結局どうすればいいの?」

この答えは、とてもシンプルです。

「取り上げる」よりも「一緒に遊ぶ」方が、子どもにとってプラスになる可能性が高い。

もちろん、無理に一緒に遊ぶ必要はありません。
親御さん自身が、あまりにストレスを感じてしまうなら、少し距離を取ることも大事です。

でも、「ゲーム=悪」と単純に切り捨てるのではなく、
使い方によっては、家族の絆を取り戻すきっかけになるかもしれない、そんな視点を持っていただけたら嬉しいです。

家族でゲームを楽しむために、まず大事なこと

まず、大前提としてお伝えしたいのは、
「親が無理をしすぎないこと」です。

子どもと関わるために、無理にゲームに付き合おうとすると、
ストレスが溜まったり、途中でイライラしてしまったりすることがあります。

それでは、せっかくの「楽しい時間」が台無しになってしまいます。

ですから、

「自分が楽しめる範囲で」
「無理なくできる形で」

子どもとのゲーム時間を持つことをおすすめします。

たとえば、
・1日30分だけ一緒にプレイする
・休日の午後だけ一緒に遊ぶ
というように、ルールを決めてしまうのもいい方法です。


おすすめのゲーム選び:勝ち負けが緩やかなものを

どんなゲームを選ぶかも、大事なポイントです。

オススメなのは、勝ち負けがあまりシビアでないゲームや、笑いが起きやすいゲームです。

具体的には、
Switch Sports(体を動かしながらプレイできる)
マリオカート(勝ち負けよりも、ワチャワチャ感が楽しい)
マリオパーティ(ミニゲームが多く、リズムよく楽しめる)

こういったものが適しています。

一方で、
・ランキングやスコアがシビアに出るゲーム
・PvP(プレイヤー同士が直接対戦する)中心のゲーム
は、あまりオススメしません。

なぜなら、
「負けた・勝った」で感情が大きく動きやすく、かえってストレスになる場合があるからです。


こんなトラブルには気をつけて

家族でゲームを楽しむ中でも、起こりがちなトラブルはいくつかあります。

代表的なものを紹介し、それぞれ対策も一緒に書きますね。

① 勝敗にこだわりすぎる

特に小学校高学年くらいになると、勝ち負けに敏感になる子もいます。

「負けたら癇癪を起こす」
「勝てないとふてくされる」

そんな時は、
「ゲームの目的は勝つことだけじゃないよね」
と、ゆるく伝えていくのが効果的です。

たとえば、
「一緒に笑えたらOK!」
「楽しかったら勝ち負け関係ないよね」
という雰囲気を作るだけでも、少しずつ変わってきます。

最初から完璧にできなくても大丈夫です。
親自身も、多少負けたり失敗したりして「まあ、いっか」と笑って見せることが、子どもにとって大きなヒントになります。


② 遊びすぎてしまう

楽しくなって、つい時間を忘れてしまうのもよくあることです。

ただし、ゲーム時間が長くなりすぎると、
「昼夜逆転」
「食事を忘れる」
「外出が減る」
といった問題にもつながりやすくなります。

対策としては、
あらかじめ「ここまで」と決めておくことが大事です。

たとえば、
「1時間だけね」と時計をセットする。
「ごはんまでの時間だけね」と軽く宣言しておく。

これだけでも、ゲーム終了時のストレスはかなり減ります。

また、ゲームが終わった後に、
「楽しかったねー!」
と必ず一言まとめることで、ゲームをポジティブな思い出として区切ることができます。


③ 親が勝ちすぎる、または下手すぎる

地味にありがちなのが、親が強すぎる/弱すぎる問題です。

親が強すぎると、子どもが不機嫌になりやすいですし、
逆に親が弱すぎると、子どもが白けてしまうこともあります。

この場合は、あまり「勝ち負け」にこだわらず、
「わざと負ける」ことも戦略として使うのがオススメです。

少し子どもを勝たせてあげることで、気持ちよく遊べる空気を作ることができます。

もちろん、子どもが年齢的に「わざとだ」と気付くこともありますが、
それでも「楽しく遊ぶために手加減してくれている」と感じられれば、それはそれで良い経験になります。


リビングでゲームをする意味

「リビングでゲームをする」というのは、ただの場所の話ではありません。

リビング=家族が自然に集まる場所です。
つまり、リビングで遊ぶことで、子どもは自然に家族の中に溶け込むことができます。

自室にこもる時間が長くなっている子ほど、
「自分からリビングに出てくる」こと自体が、とても大きな一歩です。

だから、
「リビングで一緒にゲームをする」というだけで、実はものすごく価値のある行動なのです。


家族の過ごし方は完璧じゃなくていい

ここまで読んで、
「全部うまくできる気がしない」
と感じた方もいるかもしれません。

でも、それでいいのです。

大切なのは、完璧を目指さないことです。

一緒に笑えた日が1日あったら、それだけで十分です。
うまくいかない日があっても、それはそれで当たり前です。

焦らず、比べず、
「今日、ちょっとでも笑顔が見えたな」
そんなふうに、小さなサインを拾いながら進んでいけたら、それが一番だと思います。


まとめ:ゲームを「敵」と見なさない視点を持とう

ゲームは、確かに生活リズムや健康に影響を与えることもあります。

しかしながら、
使い方次第で、家族の関係を育てるツールにもなり得る
ということを、ぜひ覚えておいてほしいです。

子どもがゲームをしているからといって、ただ不安に飲み込まれる必要はありません。

その先に、
「家族とつながる」「外の世界に一歩踏み出す」可能性が、
きちんとあるからです。

まずは、
無理せずできる範囲で、一緒に笑える時間を作ることから。

それが、学校復帰や社会復帰に向かうための、
最初の、そしてとても大切なステップになるはずです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

GW明けに不登校が急増する理由と、家庭で出来る対策

GW明けに不登校が急増する理由と、家庭で出来る対策-記事の見出し画像

こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。
今日は「ゴールデンウィーク明けに不登校が急増する理由」と「家庭でできる対策」について書きたいと思います。

この時期になると、保護者の方からこんな声をよく聞きます。

「GWまでは頑張って登校していたのに、急に行けなくなってしまいました」
「休み明けが怖いと言っています。どう接したらいいかわかりません」

ゴールデンウィーク明けに不登校が増えるのは、実は珍しいことではありません。
けれど、それを単純に「怠け」や「甘え」と捉えてしまうと、お子さんの心に大きな負担をかけてしまいます。

今日は、よくある考え方に少し疑問を投げかけながら、家庭でできる現実的な工夫について考えてみたいと思います。


目次


ゴールデンウィーク明けは「心の限界」が表れやすい

まず、よく言われることとして、

「長い休みで生活リズムが崩れたから不登校になる」

という話を耳にすると思います。
たしかに、リズムの乱れも一因ではあります。

でも、私はこの説明だけでは少し足りないと感じています。
生活リズムが多少崩れても、楽しく学校生活を送れている子は、自然と戻っていけることが多いからです。

つまり、問題は「リズム」よりも「心の疲れ」のほうが大きい場合がある、ということです。

たとえば、最初は緊張しながらも新しいクラスや先生に馴染もうと頑張っていた子。
友達との関係を築こうと、一生懸命まわりに合わせていた子。
そういった努力は、表からは見えにくいけれど、実は相当なエネルギーを使っています。

ゴールデンウィークというひと休みを挟んで、その緊張の糸がぷつりと切れてしまう。
これが、休み明けに不登校が急増する大きな理由の一つだと考えています。


よくあるアドバイスとその問題点

ここで、よく言われるアドバイスに注目してみましょう。

「とにかく朝起きさせて学校に行かせなさい」

こうした言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

このアドバイスの背景には、「学校に戻ることが正しい」「まずは行動することが大事」という考え方があります。
たしかに、軽い抵抗感であれば、行動から気持ちが後からついてくることもあります。

しかしながら、心の疲弊が限界に達している子に対しては、この方法は逆効果になることが少なくありません。
無理やり登校させることで、心のエネルギーが完全に枯れてしまい、長期的な不登校に繋がることもあるからです。

具体例で言うと、風邪をひいて高熱が出ている子どもに、「気合いで学校行こう!」と言うようなものです。
もちろん、本人の状態を見ずに無理を強いるのは、よい結果にはなりません。


心の葛藤を抱える保護者の悩み

とはいえ、保護者の立場としては、

「このまま休ませたらずっと学校に行けなくなるのでは?」

という不安が湧くのも当然です。
子どもの将来を思えばこそ、心配になるのは自然なことです。

また、

「ここで甘やかしたらダメなのでは?」

という葛藤も、多くの方が抱えるところです。

このように、単純に「休ませるか」「行かせるか」だけの問題ではないことが、保護者をより苦しめています。


では、家庭でできる現実的な工夫とは?

その反面、私はこう考えています。

「無理に学校に行かせる」か「何もせずにただ休ませる」かの二択ではない、と。

家庭でできることは、もっと柔軟で、もっと子どもの気持ちに寄り添った形で用意できます。

たとえば、次のような対応が考えられます。

  • 朝は起きるけれど、学校には行かない選択肢を認める
  • 学校の話題を無理に振らず、普段通りの会話を心がける
  • 「学校に行かないこと=悪いこと」というメッセージを無意識に送らない
  • 少し元気が出た時にだけ、軽く外に出る機会を作る(散歩でも十分です)

こういった小さな工夫が、子どもの心に余裕を作り、回復への道筋をつくっていきます。


「休む勇気」も、子どもには必要です

ここで大事にしたい考え方は、

「休むことも一つの大切な力である」

という視点です。

大人でも、心が限界に達した時に「しっかり休む」という判断はとても難しいものです。
それを、小さな子どもが自分で感じ取り、休もうとしている。
これは、決して「甘え」ではありません。

例えるなら、走り続けたマラソンランナーが、自分の体調に異変を感じて立ち止まるようなものです。
その判断ができるのは、むしろ成長の証だと考えることもできます。

悩む小学生の画像

保護者自身も、心の余白を持つことが大切です

ここからは、保護者の方自身の心のケアについても触れていきたいと思います。

不登校になると、どうしても「子どもをなんとかしなきゃ」という気持ちが強くなります。
でも、それだけだと保護者の方自身が心のエネルギーを消耗してしまうのです。

たとえば、毎日「なんとか登校させよう」と試みてはうまくいかず、自己嫌悪に陥る。
あるいは、子どもの気持ちを考えすぎて、自分まで疲れ切ってしまう。

こういった状態は、よくあることです。

しかしながら、このような理由で保護者の方が限界に近づいてしまうと、結果的に親子で共倒れになってしまう危険もあります。

だからこそ、自分自身にも「少し休んでいい」と許可を出すことが、非常に大切です。


よくある誤解:「親が強くなれば子どもも強くなる」

世間ではよく、

「親が強くあれ」

と言われることがあります。

確かに、保護者の安定した姿は、子どもに安心感を与えることにつながります。
ですが、「強くならなきゃ」と自分を追い込むことは、違うのです。

本当に大切なのは、「強がること」ではありません。
「正直に疲れたと言えること」「時には頼ること」を大人自身が示してあげることです。

たとえば、

「ママもちょっと疲れちゃったから、今日は早めに寝るね」

と子どもに伝えるだけでも、子どもは「疲れたら休んでいいんだ」と学びます。

強さとは、無理をして固くなることではなく、柔らかく変化できることだと、私は思っています。


実際に役立つ、家庭での具体的なサポート

では、ここからはもう少し具体的に、家庭でできる対応について整理してみましょう。

1. 小さな「できた」を一緒に喜ぶ

学校に行けるかどうかに限らず、日常の中でできたことを一緒に喜びます。

たとえば、

  • 朝起きられた
  • ごはんを一緒に食べられた
  • 外に一歩出られた

こんな小さな出来事でも、「できたね」と声をかけるだけで、子どもの自己肯定感は少しずつ回復していきます。

ここで注意したいのは、「すごいね!」と過剰に持ち上げないことです。
淡々と、自然に伝えることが大切です。

「今日は散歩行けたね。気持ちよかったね」

このくらいの温度感が、子どもにとって一番安心できるのです。


2. 不安を否定しない

子どもが「学校怖い」「行きたくない」と言ったとき、つい

「大丈夫だよ、頑張ればなんとかなる」

と言ってしまいたくなるかもしれません。

ですが、不安な気持ちを否定されると、子どもは「わかってもらえない」と感じてしまいます。

大事なのは、まずその不安を受け止めることです。

たとえば、

「怖いって感じるのは自然なことだよ」
「そんなふうに思うんだね」

と、受け止めるだけで十分です。
そのあとで、無理に励ます必要はありません。

子どもは、自分の気持ちを受け止めてもらえたと感じたとき、少しずつ安心していきます。


3. 日常生活のリズムを守る

学校に行かない日でも、できる範囲で生活リズムを整えることは役立ちます。

  • 朝は一定の時間に起きる
  • 朝ごはんを食べる
  • 夜はなるべく同じ時間に寝る

これだけでも、子どもの心と体のバランスは安定しやすくなります。

「完璧にやらなきゃ」と思わず、「できる日はやる」「無理な日は休む」で十分です。

ここでもまた、柔軟さが鍵になります。


焦らず、遠回りを恐れない

不登校の回復は、「まっすぐ一直線」には進みません。
良くなったり、後退したりをくり返しながら、少しずつ前に進んでいきます。

たとえば、3日学校に行けたのに、また1週間休んでしまったり。
朝までは「行く」と言っていたのに、玄関で動けなくなったり。

そんな時、どうしても焦りや不安が押し寄せてきます。

でも、そこで無理に押し出すのではなく、

「今はまだ、準備の時期なんだ」

と考えてみてください。

植物が芽を出す前に、土の中でじっと根を張る時間があるように、目に見えない成長も確実に進んでいます。


最後に 〜親子で「柔らかくある」こと〜

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。

ゴールデンウィーク明けの不登校は、親にとっても子にとっても、大きな試練です。
でも、試練だからこそ、今までとは違う「柔らかい関わり方」を考えるチャンスでもあります。

「無理に立たせる」よりも、「安心して休める」こと。
「正解を求める」よりも、「今ここにいる」こと。

そんな風に、親子で少しずつ柔らかくなれたら、きっと大丈夫です。

焦らず、比べず、責めず。
遠回りのように見える時間も、必ず子どもの力になります。

一緒に、ゆっくり進んでいきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

子どもが将来の夢を、職業で語ることのリスク

子どもが将来の夢を、職業で語ることのリスク-記事の見出し画像

こんにちは。ToCoの不登校カウンセラー、竹宮です。

今日は「将来の夢を職業でしか語らない日本」というテーマで書いていきます。
お子さんが不登校になったとき、保護者の方は「この子は将来、どうやって生きていくんだろう」と不安になることがあると思います。

とくに、将来のことを考えるタイミングで「夢は何?」「どんな仕事がしたいの?」という話が出てくると、そこでつまずいてしまう子も多いんです。

でも、ここにはひとつ、大きな落とし穴があります。


目次


「夢=職業」という前提が苦しさを生む

日本では、小学校の頃から「将来の夢は?」と聞かれることがよくあります。
多くの子どもは「サッカー選手」「ケーキ屋さん」「お医者さん」などと答えます。

もちろん、これは悪いことではありません。
職業を夢として語るのは、わかりやすくて、答えやすいからです。

でも中学生、高校生になっても、「将来の夢は職業の名前で言うものだ」という感覚が強く残ってしまうと、次のような悩みにぶつかります。

  • どんな仕事がしたいかわからない
  • 特別に好きなことがない
  • 好きなことが仕事になるイメージが持てない
  • 職業で語れない夢は「ダメな夢」だと感じてしまう

この時点で、「夢を持っていないといけない」「将来の目標がないのはおかしい」と自分を責めてしまう子がいます。


不登校と「夢=職業」プレッシャーの関係

実はこの構造は、不登校とも深く関係しています。

不登校の背景には、「学校の中で自分の価値を見いだせなかった」という思いがある子が多いです。
そんな中で「夢=職業」「職業=社会で役立つこと」という考え方が刷り込まれると、こう感じてしまうのです。

「学校にも行けてない自分が、将来の夢を語るなんて…」
「どうせ何者にもなれない」

これは、とても危険な考え方です。
なぜなら、「夢がない=ダメな自分」と無意識に思い込んでしまうからです。


よくあるアドバイスが、逆効果になるとき

「将来の夢を持とう」
「目標があれば頑張れるよ」
「夢があれば学校にも行けるようになるかもね」

こうした言葉は、悪気なく言われがちなアドバイスです。
でも、これが子どもにとっては大きなプレッシャーになることがあります。

たとえば、今は部屋から出るのもしんどい子にとって、「将来」や「夢」を問われるのは、100m先にあるものを指差されて「今すぐ走れ」と言われているようなものです。


「夢=職業」しか見えていないと、夢が遠くなる

たとえば、「人の役に立ちたい」と思っている子がいたとします。
それを「看護師」「介護士」「先生」といった職業に直結させようとすると、急にハードルが上がってしまいます。

でも、「まずは家の中で、自分にできることで人を喜ばせてみる」ことだって、その夢の一歩です。

夢は、職業だけではなく、あり方・価値観・生活スタイルにも表れるものです。
「こうなりたい」が最初にあって、その後に必要なスキルや手段がついてくることもあるのです。

「職業としての夢」にしがみつくリスク

ここまで、「将来の夢は職業で語るべきだ」という前提が、子どもにプレッシャーを与えることについて書いてきました。
ここからは、その「職業としての夢」が持つリスクを、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。


「夢が壊れる」ことのダメージ

職業としての夢を持つこと自体は悪いことではありません。
ですが、それを唯一の正解のように子どもに提示すると、失敗や挫折が起きたとき、子どもは「自分の存在そのものが否定された」と感じやすくなります。

たとえば、

  • 声優になりたい → オーディションに受からなかった
  • 看護師になりたい → 成績が届かない
  • プログラマーになりたい → 数学が苦手だった

このとき、職業としての夢が「アイデンティティ」と直結していると、夢が崩れた瞬間に「自分も崩れる」ような感覚に陥ります。

この感覚が強いほど、立ち直るのに時間がかかります。
特に、自己評価がもともと低い子や、周囲との比較で苦しんできた子ほど、「自分にはもう居場所がない」と感じやすいです。


「夢=職業」が子どもの選択肢を奪う

さらに、「夢=職業」と決めつけることのもう一つのリスクは、多様な生き方の選択肢を奪ってしまうことです。

たとえば、

  • 地域でのんびり暮らしたい
  • 毎日決まった時間に起きなくてもいい生活がしたい
  • 家族や動物と静かに過ごす時間を大切にしたい

こういったライフスタイル志向の夢は、「仕事」とは別のベクトルにあります。
しかし、職業ありきで将来像を描く教育や社会の中では、「それって夢なの?」という空気がどこかにある。

結果として、「働くことでしか価値がない」「職業に就かない人生は失敗」というメッセージを無意識に受け取ってしまうのです。


不登校の子が「夢」を抱えられない理由

不登校の子どもにとって、「将来」や「夢」という言葉は、ときに現実から遠すぎて、ただの不安材料になることがあります。

特に次のような状況では、それが顕著です。

  • 学校に行けない自分を責めている
  • 同級生と比べて“遅れている”ことを気にしている
  • 社会や大人への信頼が揺らいでいる

この状態で「夢を持とう」「将来のために今をがんばろう」と言われても、心は動きません。

むしろ、「将来のことなんか考えられない自分はダメなんだ」というメッセージに変換されてしまう。
その結果、焦りと自己否定ばかりが膨らんでいくのです。


親として直面する葛藤

ここで、保護者としての葛藤にも触れておきたいと思います。

親御さんにとって、「夢を持ってほしい」という思いは、希望を見たいという自然な気持ちです。

  • このまま社会に出られなかったらどうしよう
  • 夢や目標があれば、きっと元気になれるはず
  • やる気があれば、何かが変わるのでは?

こうした期待は、とてもよく分かります。

ただ、その期待が強くなりすぎると、知らず知らずのうちに「正解の形」を子どもに押し付けてしまうことがあります。

たとえば、「やりたいことがあるなら、勉強しなきゃ」「夢があるなら学校に行けるよね」というように。
これは裏を返せば、「夢がないと努力しないとダメ」「今のままじゃダメ」と聞こえてしまう可能性もあるのです。


「夢を持たせよう」としない勇気

大切なのは、「夢を持て」という目的を子どもに押しつけるのではなく、その子が自分で“何を心地よいと感じるか”に気づける環境をつくることです。

夢は、職業ではなく、「感覚」から始まることもあります。

  • なんとなく、居心地がいい場所
  • 無理をしないで過ごせる人間関係
  • 自分の好きなことが咎められない空間

これらを少しずつ取り戻していく中で、「こういう毎日がいいな」「こういう生き方がしたいな」という感覚が芽生えてきます。

それが職業に変換されるのは、ずっと後でもいいんです。


まとめ:職業以外の「夢を持つ」大切さ

まとめとして、お伝えしたいことがあります。

「夢」は、未来に何かを成し遂げることじゃなくても構いません。
今この瞬間、自分に正直に過ごすこと。それも立派な“夢を生きている”状態です。

  • 今はまだ何者でもないけど、何者かにならなくていい
  • 自分の好きに素直でいる時間を、大事にする
  • 「将来」ではなく、「今ここ」に小さな希望を見つける


「夢が見えないこと」を不安に思う方も多いですが、夢を職業で語らない選択肢があってもいいんです。

どうか、「何になりたいか」よりも、「どうありたいか」を大切にしてあげてください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

友だち100人から解き放たれよう

友だち100人から解き放たれよう-記事の見出し画像

こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。

今日は「友だち100人から解き放たれよう」というテーマでお話ししたいと思います。

きっかけは、ある保護者の方との会話でした。
「スーパーで流れてるあの歌を聞くと、なんだか胸がざわざわするんです」
——そんな一言から始まりました。

おそらく、多くの方が耳にしたことがあると思います。
「ともだち100人できるかな♪」という、あの有名な子どもの歌「一年生になったら」です。
お買い物中やテレビのCM、運動会のBGMなんかにも使われたりして、ふとした瞬間に流れてくる曲です。

でも、よく考えてみると、この歌。
本当に素敵な歌でしょうか?

今日は、この歌に込められたメッセージを、ちょっと立ち止まって考えてみたいと思います。


目次



「友だち100人できるかな」という無言のプレッシャー

この歌が初めて登場したのは1966年。
当時の日本は高度経済成長の真っ只中で、「集団」「協調」「みんなで同じ方向を向く」ことが良しとされる時代でした。

そんな時代背景の中で、「友だちは多いほうがいい」「たくさんの人と仲良くするのが正しい」という価値観が、無意識のうちに子どもたちに刷り込まれていきました。

もちろん、友だちが多いこと自体を否定するわけではありません。
誰かと関われること、つながりを持てることは、大人になってもとても大事です。

ただ、この「100人できるかな」というフレーズ。
少し冷静に考えてみると、なかなかに重たいんですよね。


「みんなと仲良くしよう」がもたらす心のひずみ

よく学校で言われる「みんなと仲良くしよう」という言葉も、実は似た構造を持っています。

この言葉、悪気はないんです。
先生たちも善意で言っているし、「いじめをなくしたい」という願いから出てきたものだったりします。

でも、言われる側の子どもたちはどう感じるでしょうか?

本当は苦手な子がいるのに、それを我慢して笑わなきゃいけない。
「仲良くしなきゃいけない」から、距離を取ることもできない。

その結果、自分の心を押し殺すようになります。
そして少しずつ、自分がどう感じているのかが分からなくなってしまうのです。


「友だちが多い=いいこと」という呪縛

「うちの子、友だちが少ないんです」
「学校に行っても一人でいることが多くて……」

そんな声を聞くたびに思うのは、
「それって、本当に問題なんでしょうか?」という疑問です。

もちろん、親として心配になる気持ちはとてもよく分かります。
私も我が子が一人でいると聞けば、何かトラブルがあるんじゃないかと不安になります。

でも、それは私たち大人が、
「友だちはたくさんいるべき」
「ひとりぼっちはかわいそう」
という“常識”を疑っていないからこそ、湧いてくる感情なのかもしれません。


ひとりでいること=悪ではない

一人で過ごす時間が好きな子。
静かに本を読んでいるほうが安心する子。
深く関われる一人の友だちがいれば、それで十分な子。

そんな子どもたちにとって、「100人の友だち」は必要ないどころか、むしろ重荷になります。

実際、友だちが多すぎることで疲れてしまったり、トラブルが増えてしまったりすることもあります。
中には「人間関係を回すこと」に精一杯で、自分自身を見失ってしまう子もいます。

それでも、「ひとりでいるのは変」とされてしまうのが、今の社会です。


子どもの「ひとり時間」を大人がどう見るか

ここで一度、立ち止まって考えてみてください。

「この子はひとりでいるけれど、困っているのかな?」
「それとも、自分なりのペースで安心して過ごしているのかな?」

同じ“ひとり”でも、その背景は全然違います。

そして、前者と後者を見分けられるかどうかは、親や大人のまなざしにかかっています。
「寂しそうだから」「かわいそうだから」と思い込んで、無理に友だちを作らせようとすると、子どもはますます混乱してしまいます。


「100人」より「たった一人」の安心

「友だちは多いほうがいい」と言われる一方で、実際に子どもたちの口からよく聞くのは、
「一人だけでも、ちゃんと話せる子がいればいい」
という声です。

大人でもそうですよね。

知り合いは多くても、本音で話せる相手って、そう何人もいないと思います。
むしろ、たった一人でも「自分のことを分かってくれる」と思える人がいれば、すごく心強いものです。

にもかかわらず、子どもにだけ「広く・浅く・みんなと仲良く」という無理をさせるのは、少し違う気がしています。

小学生の登校画像

「友だちを作る」は目標じゃなく、結果

不登校や登校しぶりがあると、保護者の方が「まずは友だちを作って」と考えることがあります。
けれど、私はこの順番に、少し疑問を感じています。

友だちは、「作る」ものというより、「できる」ものです。
何かに夢中になっているときや、好きなことに取り組んでいるとき。
同じ空間で自然に時間を過ごしているうちに、気が合う相手が現れて、少しずつ関係ができていく。

それが本来の友だち関係なのではないでしょうか。

つまり、「友だちを作る」は目的ではなく、何かに取り組んだ“結果”なのです。


目的を「友だち」から「安心」に変える

では、不登校の子どもが学校に行けるようになるには、どうしたらいいのでしょうか?

私は、「安心できること」が最優先だと思っています。

たとえば、教室に入らなくても大丈夫な場所がある。
無理に人と話さなくても、自分のペースで過ごせる。
わかってくれる大人が一人でもいる。

そういう「安心の土台」があると、少しずつ心がほぐれていきます。

その結果、「誰かとちょっと話してみようかな」と思えるようになる。
そうやって、自分から関わろうとする気持ちが芽生える瞬間がやってきます。


「友だちがいないと不安」なのは、子どもじゃなくて親かもしれない

ここまで読んでくださった方の中には、もしかするとこんな気持ちになっている方もいるかもしれません。

「でも、うちの子は本当に一人ぼっちで大丈夫なの?」
「子どもの将来を考えると、やっぱり人間関係が心配です」

すごくよくわかります。
私も、保護者として同じように感じることがあります。

でも、だからこそ一度だけ、自分に問いかけてみてください。

「この不安は、本当に“子ども自身”のものだろうか?」
「それとも、“自分”が抱えている不安かもしれない?」

子どもがひとりでいても、落ち着いた表情をしている。
好きなことを楽しんでいる。
そんな姿があるなら、きっと大丈夫です。


解き放たれるということ

「友だち100人できるかな」という歌は、明るくて、元気で、無邪気な印象があります。

でも、その裏には「みんなと仲良くするのが正しい」「孤立するのは悪いこと」という、見えないメッセージが含まれているようにも思えます。

その価値観から、少しだけ距離をとってみる。
「友だちが少ない=ダメなこと」ではなく、
「自分らしくいられる関係があれば、それでいい」と考えてみる。

それは、子どもだけでなく、大人自身が抱えていた思い込みから「解き放たれる」ことでもあります。


まとめ

「友だち100人できるかな」という歌が投げかけてくる価値観は、時に子どもたちを縛るものにもなり得ます。

子どもが本当に必要としているのは、「たくさんの友だち」ではなく、「安心していられる空間」と「わかってくれる人」です。

そして、その安心があってこそ、自然な形で人との関係が築かれていきます。

焦らなくて大丈夫です。
「ひとりでいる子」を見たとき、「かわいそう」と感じる気持ちが湧いたら、少し立ち止まってみてください。

もしかしたらその子は、「たくさんの誰か」ではなく、「たった一人の自分」を、大切にしているのかもしれません。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからも、子どもたちが「自分のままでいていい」と思える社会のために、発信を続けていきます。

— 竹宮(ToCo 不登校カウンセラー)


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校から抜け出すために必要なアウトプットとは?

不登校から抜け出すために必要なアウトプットとは?-記事の見出し画像

こんにちは。不登校カウンセラーの竹宮です。
今日は「不登校から抜け出すためにはアウトプットが必要」というテーマでお話ししたいと思います。

不登校のお子さんを持つ保護者の方とお話をしていると、よく出てくる言葉があります。
それは、「どうすればこの子が変わるんでしょうか」というものです。

もちろん、答えは一つではありません。
ですが、今回はその“変わる”ための一つのヒントとして、「アウトプット」という視点をご紹介してみたいと思います。

参考:文部科学省「今後の不登校への対応の在り方について(報告骨子)


目次



「休ませるのが大事」と言われるけれど…

不登校の初期対応として、「まずはとにかく休ませましょう」「無理をさせないで見守りましょう」と言われることが多いです。
このアドバイスには、大切な意味があります。
心がすり減っている時に、さらに外からプレッシャーをかけても、良くなるどころか逆効果になることが多いからです。

ただ、ここで少し立ち止まって考えてみたいのが、“休む”という状態が長引いた時の話です。

例えば、家でゲームをして、動画を見て、お菓子を食べて、寝る。
外に出ない日が続き、人と話す機会も減る。
そんな生活が何ヶ月も続いたとき、子どもたちの表情に、少しずつ変化が見えてきます。

はじめのうちは「学校に行かなくていい」という安心感で、明るさが戻ることもあります。
けれど、それが半年、1年と続くと、なんとなく目の力が弱くなるような感じを受けることがあります。

何もしていないわけではないんです。
YouTubeで知識を得たり、SNSで流れてくる情報を見たり、ゲームの中で戦略を考えたりしている。
つまり、インプットはしているんです。

でも——アウトプットはどうでしょうか。


インプットばかりだと、心は動かない

「アウトプット」という言葉は、少し堅く聞こえるかもしれません。
簡単に言えば、「自分の内側から外に出すこと」です。

たとえば、

  • 誰かと話すこと
  • 散歩に出てみること
  • 絵を描いてみること
  • 自分に手紙を書くこと

これらは全部、アウトプットです。
頭や心の中にあるものを、外に向けて出す行動です。

人は、インプットだけを続けていると、なかなか現実が動きません。
新しい情報が入ってくるばかりで、それが自分の中で消化されずに滞ってしまうんです。

まるで、食べ物をどんどん口に入れているのに、体を全く動かさない状態に似ています。


「話す」は最強のアウトプット

中でも効果が高いと感じるのが、「話す」というアウトプットです。
これは、言葉を使って自分の考えや感情を整理することになります。

「うちの子は全然話さないんです」とおっしゃる保護者の方も多いです。
それも無理はありません。子どもにとっては、話すこと自体がストレスになることもあるからです。

ただ、「話す」と言っても、誰かと向き合って会話をしなくてもいいんです。
例えば、

  • 一人でブツブツつぶやく
  • 鏡の前で独り言を言う
  • 空想の相手に語りかける

こういう形でも、効果はあります。
言葉に出すという行為が、心をほぐしてくれるからです。

心理学ではこれを「言語化」と呼びます。
自分の気持ちや状態を言葉にすることで、曖昧なモヤモヤが少しずつ整理されていくんです。


散歩やちょっとした外出も立派なアウトプット

もう一つ、取り入れやすいアウトプットが「身体を動かすこと」です。
中でも、散歩はかなりおすすめです。

歩くことで、呼吸が深くなります。
景色が変わることで、脳が刺激を受けます。
それだけでも気分が少しだけ上向くことがあります。

もちろん、いきなり外に出るのはハードルが高いと感じる子もいます。
そんなときは、ベランダに出てみる、窓を開けて外の空気を吸ってみる、でもいいと思います。

少しだけ、外の世界と自分の間に接点を作る。
これが大事です。


「自分に手紙を書く」という方法

これは少し珍しく聞こえるかもしれませんが、私が時々おすすめする方法に「自分に手紙を書く」というものがあります。
用意するのは紙とペンだけ。スマホのメモアプリでも構いません。

書き方に決まりはありません。
今日思ったこと、イライラしたこと、嬉しかったこと、何でもいいです。

たとえば、 「今日は何もしていない気がするけど、なんか疲れてる」 「ゲームのストーリーが面白かった」 「明日ちょっとだけ外に出てみようかな…無理かな」

こんなふうに、正直な気持ちを書いてみるだけで、少しだけ心が軽くなることがあります。

誰にも見せる必要はありません。
むしろ、見せないつもりで書くほうが、自由になれます。

手紙を書く子どもの写真

アウトプットが「現状維持のレール」を外れる理由

ではなぜ、アウトプットをすると現状が動き始めるのでしょうか。

これには、脳と心のはたらきが関係しています。
人間の脳は、刺激を受けるとその都度、反応を変えます。
インプットだけの状態では、この反応が単調になります。

たとえば、

  • 同じ動画を毎日見る
  • 毎日似たようなゲームをする

こうした生活の中では、脳の中の回路は少しずつ固定化していきます。
そして、「いつも通り」が繰り返されていくんです。

しかし、アウトプットがあると、そこに“変化”が生まれます。
自分の考えを言葉にしてみる。
ちょっと外に出てみる。
誰かと目を合わせる。

それだけで、脳は「おや?」と反応します。
新しい経験として、処理が始まります。

この「小さな変化」が、今までのパターンから外れる第一歩になるのです。


「やったほうがいいのはわかるけど、うちの子には難しい」

ここまで読んでくださった方の中には、こう思った方もいるかもしれません。

「話すのがいいのは分かった。散歩もいいと思う。でも、うちの子にはそれが難しいんです」

——このお気持ち、本当によく分かります。

無理にやらせようとしても、反発されてしまう。
機嫌を損ねて、親子関係が悪くなるのが怖い。
そんな経験を、私もたくさんのご家庭から伺ってきました。

このとき大切なのは、「何をするか」よりも「どんな風に関わるか」です。

たとえば、話すことを促したいなら、「今日は何か話したいことある?」と聞くよりも、
「さっきYouTubeで変なCM見たんだけどさ」と、親が何でもない話をしてみる方が効果的なことがあります。

散歩も、「外に出てきたら?」と誘うより、
「ちょっと郵便ポストまで付き合ってくれる?」と軽く声をかける方が、子どもは動きやすかったりします。

要するに、きっかけは“小さくて、ゆるいもの”の方が成功しやすいのです。


成功体験は「頑張って何かを成し遂げたこと」じゃなくてもいい

もう一つ、誤解されがちなことがあります。
それは、「動き出すには、成功体験が必要」という考え方です。

たしかに、成功体験は自信につながります。
でも、それが「大きな成功」である必要はないのです。

  • 朝起きて顔を洗えた
  • 外に出て5分歩いた
  • 自分の気持ちをメモに書けた

こうした小さなことでも、「今日はできたな」と思えるだけで、心の中に変化が起きます。

とても地味なことですが、こういう変化が積み重なることで、「動ける自分」という実感が少しずつ育っていくんです。


「また戻ってしまうんじゃないか」という不安も自然なこと

もうひとつ、保護者の方がよく感じるのが、「少し動き出したと思ったら、また元に戻ってしまった」という不安です。

でも、これは“後退”ではありません。
むしろ“自然な波”です。

気分や体調、外部の刺激などで、状態が日によって変わるのは当たり前です。
それを「せっかく良くなったのに…」と捉えると、お互いに苦しくなってしまいます。

少し進んで、戻って、またちょっと進む。
そんな風に、階段をゆっくり上るように考えてみてください。


「何もしない時間」にも意味がある

ここまでアウトプットの大切さをお伝えしてきましたが、誤解してほしくないこともあります。
それは、「何もしない時間=悪い時間」ではないということです。

アウトプットは大事。でも、それが“義務”になってしまっては意味がありません。

本人の中で、「少しやってみようかな」という気持ちが育ってくるタイミングが大切です。
その種が育つには、「何もしない時間」も必要なんです。

植物の種も、土の中でじっとしている時期があります。
見た目には変化がなくても、水を吸い、温度を感じ、少しずつ発芽の準備をしています。

お子さんの心の中でも、同じようなことが起きているかもしれません。


親が「見えない変化」に気づけると、大きな力になる

私がカウンセリングをしていて感じるのは、
「目に見える変化」よりも、「見えにくい変化」の方が、実は重要なことが多いということです。

  • 自分からお風呂に入るようになった
  • イライラした後に、自分で部屋にこもるようになった
  • 何も言わずに、ふと散歩についてきた

こうした些細な変化に、親が「気づいて」「認めて」あげるだけで、子どもはふっと楽になることがあります。

「変わろうとしている自分に、気づいてくれてるんだ」と感じられるからです。


ToCoの支援でも大切にしていること

私たちToCo(トーコ)でも、アウトプットの機会を大切にしています。

子ども自身が「話す」「自分の考えを言語化する」ことで、少しずつ自己理解が深まり、
家族との関わりもスムーズになっていく事例が多くあります。

また、保護者の方も「ただ見守るだけではなく、何を意識していけばいいのか」を具体的に学びながら、無理のない関わり方を見つけていくことができます。


まとめ

不登校から抜け出すためには、「アウトプット」がひとつの鍵になるというお話をしました。
人は、インプットだけでは変化しにくく、心が少しずつ停滞してしまうことがあります。

だからこそ、小さなアウトプット——話すこと、動くこと、書くこと——を習慣にすることで、
“今の状態”から外へ向かうレールを、自分の中に引いていくことができます。

でも、それを無理にやらせようとする必要はありません。
親ができるのは、「きっかけ」を与えることと、「変化に気づくこと」です。

最終的には、子どもが自分のペースで、ゆっくりと外に向かっていくこと。
それが、もっとも確かな回復のサインです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

会話が苦手な人への処方箋

会話が苦手な人への処方箋-記事の見出し画像

こんにちは。ToCo(トーコ)の不登校カウンセラー、竹宮です。
今日は「会話が苦手な人へ」というテーマで書いてみたいと思います。

私たちは、「会話が得意な人」のイメージに振り回されすぎている気がします。テンポよく返す、内容が面白い、誰とでもすぐ打ち解けられる……。そんな人を見ると、思わず「自分は無理だな」と感じてしまう方も少なくないのではないでしょうか。

でも、会話というのは本来、もっと多様で、もっと自由なものです。
今日はそのことを、少し違った角度から考えてみます。

参考:文部科学省「子どもたちの 未来をはぐくむ家庭教育


目次


よくあるアドバイスが辛い理由

「会話が苦手です」と相談すると、決まって出てくるアドバイスがあります。

「練習あるのみですよ」
「数をこなせば慣れてきます」
「人前で話す機会を増やしましょう」

こうしたアドバイスが悪いわけではありません。ある程度の場数が自信につながることもあります。

でも、これらは“ある程度うまくやれること”が前提になっています。つまり、「とにかく実践!」というアドバイスは、実はある程度スキルや安心感がある人にしか届かない場合があるんです。

本当に苦手な人にとっては、「自転車の乗り方を教える代わりに、とりあえず坂道を下らせる」ようなやり方に感じられます。

「話さなきゃ」と思うほど話せなくなる

会話に苦手意識のある人ほど、「うまく話さなきゃ」「ちゃんと受け答えしなきゃ」と思いがちです。でも、そう思えば思うほど言葉が出てこない。頭が真っ白になる。自分が何を言いたいのかすらわからなくなってしまう。

これは、会話というものを「自分が何かをうまく表現する場」として見ているから起こる現象です。

でも、会話って本当に“自分をうまく表現するもの”なんでしょうか?


会話はもっとラフでいい

ここで、ちょっと違った視点を紹介したいと思います。

会話がうまくなりたいとき、「司会者のようになりましょう」と言われたらどう感じるでしょうか。たいていの人は無理だと思うはずです。ですが、「ネットサーフィンのように会話を楽しんでください」と言われたら、少しイメージが変わってくるかもしれません。

これは、あるエクササイズの話です。

複数人で会話をしているとき、その場に流れる話題や雰囲気を、「全部理解しよう」「全部追いかけよう」とせずに、「波乗り」のように乗ってみる。
相手の発言を“分析”するのではなく、ただ“受けてみる”。そして、自分の発言も“正解”を出そうとせず、軽く混ざってみる。

これは、少し遊びに似ています。


エクササイズとしての「会話の波乗り」

この会話の波乗りは、ちょっとしたエクササイズにもなります。

たとえば、こんなふうにしてみてください。

  • 複数人の会話に、メモやスマホを使わずに加わる
  • 誰が何を言ったかを全部記憶しようとせず、印象に残ったことだけを心にとどめる
  • 発言の内容を“整理”しようとせず、あえてそのままにしておく
  • 話すときに「意味のあることを言おう」としない

このとき大事なのは、「明確な目的」を持たないことです。
考えながら喋るのではなく、感じながら関わる。

つまり、「喋るために喋る」のではなく、「交わるために混ざる」感覚です。

ママ友の会話イメージ。

自分の発言にこだわりすぎない

よく、「自分が何を言うか」にばかり気を取られる方がいます。
でも、会話において「何を言ったか」よりも大事なのは、「どうそこにいたか」だったりします。

たとえば、友人と雑談しているとき、何を言ったか一言一句覚えている人はほとんどいません。でも、会話の“雰囲気”や“空気感”は覚えている。

つまり、人との会話って、情報のやりとりだけではなく、空間を共有することでもあるんです。

「意味のあることを言わなければならない」という思い込みを手放してみると、少しずつ自分の中に余裕が生まれてきます。


「話をまとめよう」としない勇気

話しているとき、「何を言いたいのか分からなくなってしまう」と感じることはありませんか?
実はそれ、とても自然なことです。会話は原稿用紙に書く小論文ではありません。起承転結がなくてもいいんです。

むしろ、「ちゃんとまとめなきゃ」「分かりやすく伝えなきゃ」と思うと、逆に身動きが取れなくなってしまいます。

これは、料理を作るときに「見た目も味も完璧にしなきゃ」と思って、結局キッチンに立つのをやめてしまう感覚に似ています。

だからこそ、会話では「途中でもいい」「つながっていなくてもいい」という感覚が大切です。


会話の「対話モデル」に気づく

ここで、少し専門的な話をしてみます。

会話というのは、私たちが無意識のうちに選んでいる“対話の仕方”によって大きく変わってきます。この「対話モデル」は、人によってまちまちです。

たとえば、「きちんと整理してから話す」タイプの人もいれば、「とりあえず口に出しながら整理する」タイプの人もいます。どちらが優れている、という話ではありません。

でも、会話が苦手な人の多くは、「きちんと整理してから話すべき」というモデルに縛られていることが多いです。

一方で、親しい友人と話しているときは、「言葉にならないままでもとりあえず出す」「話しながら考える」ことが自然とできています。そこには“慣れ親しんだ対話モデル”が働いているわけです。

この感覚があると、少し気が楽になります。
「うまく伝えなきゃ」ではなく、「今の自分に合ったやり方で混ざってみよう」と思えるからです。


“考える”より“交じる”こと

少し極端な言い方かもしれませんが、会話がしんどいときには「考えるな、交じれ」という視点が有効です。

もちろん、無理に話す必要はありません。でも、「参加しないといけない」と感じる場面では、“何かを言う”よりも“そこにいる”ことの方が大事です。

会話というのは、本来「遊び」に近い側面があります。
ゲームのように、勝ち負けや正解があるものではなく、「どんなふうにその場に参加するか」を楽しむものです。

そう考えると、「ちゃんとしたことを言おう」「面白い話をしよう」という力みは、少しずつ手放してもいいのではないでしょうか。


実際にやってみるためのヒント

ここまで読んで、「それでも難しそう」と思う方もいるかもしれません。
ですので、最後に、実践しやすい形に落とし込んでみます。

次のような場面をイメージしてみてください。

複数人での雑談のときに試したいこと

  • 誰かの発言を、無理に理解しようとしない
  • 「あ、この人が○○って言ったの面白いな」と、軽く受け止めてみる
  • 自分の番が来たとき、「とくにないんだけどね〜」と前置きして、思いついたことをぽつりと話してみる
  • 「それ、ちょっと分かるかも」だけでも、立派な発言です
主婦の会話イメージ。

ポイントは、「内容」より「タイミング」と「混ざり方」に目を向けることです。


「うまく喋らなきゃ」を手放すと、他者が見えてくる

最後に、少しだけ本質的な話をします。

会話というのは、“自分を表現する場”のようでいて、実は“他者と共にいる場”でもあります。

つまり、自分の発言にこだわるということは、裏を返せば、他者の言葉や存在を「背景化」してしまうことにもつながります。
「ちゃんとしよう」とすればするほど、周りの人の声が聞こえなくなっていく。

逆に、「うまく喋らなくてもいい」と思えるようになると、不思議と周りの人の言葉が自然に入ってくるようになります。
会話がキャッチボールというより“水の流れ”に近いものだと気づける瞬間です。


まとめると

「会話が苦手です」と感じている方の多くは、話すことそのものよりも、「うまくやらなきゃ」「伝わらなきゃ」というプレッシャーに苦しんでいるように見えます。

だからこそ、「うまく伝えること」より「そこに混ざること」を意識してみてください。

話すときに力が入ってしまう人は、まず力を抜くところから始めてみてください。
そして、会話を“練習”ではなく“波乗り”のように捉えてみてください。

ToCoでは、不登校や学校生活への不安だけでなく、このような「人との関わり方の難しさ」にも、一緒に取り組んでいます。
家族や学校での対話をテーマに、話すことに少しずつ慣れていく支援も含まれています。
興味がある方は、サービス詳細をご覧ください。

会話が得意である必要はありません。
でも、「会話が怖くない」と思えるだけで、日常は少し変わります。

そんなふうに、ゆるやかに変化を感じられることを願っています。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校リスクの高い家庭の特徴(調査報告)

不登校リスクの高い家庭の特徴(調査報告)-記事の見出し画像

こんにちは。ToCoの不登校カウンセラー、竹宮です。
今日は「不登校リスクの高い家庭の特徴」について書きたいと思います。

不登校と聞くと、多くの方が「学校に何か問題があったのかな」と想像するかもしれません。もちろん、学校での人間関係や学業のプレッシャーは大きな要因になります。でも、それだけではありません。

私たちToCoでは、これまで年間1,000世帯以上のご家庭を支援してきました。そして、支援の中でアンケート調査も行った結果、不登校の「きっかけ」と「継続の要因」には、少し意外な傾向が見えてきました。

今日はその調査結果をもとに、「どんな家庭に不登校リスクが高まりやすいのか」、そして「どうすればそのリスクを下げられるのか」について、一緒に考えてみたいと思います。


目次


不登校要因の調査結果

ToCoは、継続登校まで支援させていただいた1,092世帯にアンケートを取りました。
「不登校のきっかけ」と「継続要因」を尋ねたところ、以下のような結果になりました。

【不登校のきっかけ】(最も影響が大きかった項目)

1位:学校の人間関係(527件)
2位:子どもの情緒的混乱(319件)
3位:学業や成績(166件)
4位:子どもの生活習慣(38件)
5位:教師との相性(26件)
6位:親子の対話(14件)
7位:学校の規則やイベント(2件)

この数字を見て、「やっぱり人間関係か」と思った方もいるかもしれません。
確かに、最初の“きっかけ”としては人間関係の影響が最も大きいです。

ですが、注目すべきは「継続の要因」です。

【不登校の継続要因】(最も影響が大きかった項目)

1位:子どもの生活習慣(388件)
2位:親子の対話(331件)
3位:学業や成績(214件)
4位:学校の人間関係(107件)
5位:子どもの情緒的混乱(52件)
6位・7位:学校の規則や教師との相性(0件)


最も多かったのは「子どもの生活習慣」、次に「親子の対話」でした。つまり、学校に行けなくなった理由と、行けない状態が続く理由は、違うということです。


不登校解決の一般論に潜む落とし穴

見守り続けることのリスク

よくある不登校に悩む保護者へのアドバイスに、「子どもが学校に行けなくなったら、まずは休ませてあげてください」というものがあります。
これは決して間違いではありませんし、必要なケースも多いです。

でも、この言葉が「とりあえず何もしなくていい」という印象を与えてしまうことがあります。
気持ちが落ち着くまで、様子を見る――それ自体は大切ですが、時間が経つと別の問題が出てくるのです。

その一つが、生活リズムの崩れです。

最初は「朝起きられない」「夜眠れない」という程度だったものが、2週間、1ヶ月と経つうちに、「昼夜逆転しているから登校できない」「何をするにもやる気が起きない」状態になってしまう。
この段階に入ってしまうと、本人の中に「行きたい」という気持ちが少し出てきたとしても、体がついていかないことが多いです。

親子の対話は“多ければいい”ではない

もう一つ、見落とされがちなのが「親子の対話」です。

不登校の継続要因として2位になったこの項目ですが、「家ではたくさん話しているつもりなんですが…」という保護者の方も少なくありません。

実は、親子の対話には“質”が大きく関係します。
たとえば、子どもの話にすぐアドバイスで返してしまうと、「話してもどうせ説教される」と感じて口を閉ざすようになります。

また、子どもが感じていることを、親が「そんなこと気にしなくていいよ」と軽く流してしまうのも、よくあるすれ違いです。

本人の中では深刻な問題なのに、それを軽く扱われたと感じた瞬間に、心の扉が閉じてしまいます。

「どうしたの?」「最近、元気ないけど大丈夫?」と聞くよりも、「今朝は寒かったね」とか、「お昼は何食べようか」みたいな、日常的な話から始めるほうが、かえって会話がしやすくなることもあります。

不登校リスクが高まりやすい家庭には、どんな共通点があるのか?

ToCoでの支援経験と調査結果を照らし合わせていくと、「このタイプの家庭は、少し注意が必要かもしれない」と感じるパターンがあります。
いくつかの例をご紹介します。

① 子どもの生活リズムにあまり関与していない

これは、共働きや忙しい家庭に多く見られます。
朝は各自バラバラに起きて準備し、夜も遅く帰ってきた親と、すでにスマホやゲームに集中している子どもが、あまり交わらずに一日が終わる。そんな日が続いているケースです。

生活習慣というと、「夜ふかしがよくない」といった話に矮小化されがちですが、本質はそこではありません。

「生活にリズムがある」ということは、「次に何があるかが予測できる」「誰かと一緒に動く」ということです。
それが薄れてくると、子どもの中で「社会とのつながり」の感覚がだんだんと希薄になります。

② 子どもとの雑談が少ない

「うちは親子の対話はできている方だと思います」というご家庭でも、その内容を聞いてみると、「将来の話」「進路の話」「なぜ学校に行けないのか」といった“重たいテーマ”が中心になっていることがあります。

もちろん、それらの話が悪いわけではありません。
ただ、常に“答え”を探す対話だけになってしまうと、子どもは疲れてしまいます。

「何を話すか」よりも、「話す時間を一緒にどう過ごすか」。この視点を持つことで、親子の会話はもっとラクになります。

③ 良かれと思って、言いすぎてしまう

「本当は行きたいって思ってるでしょ?」「明日こそは行こうよ」
このような言葉は、親として自然な気持ちから出るものだと思います。

でも、子どもにとっては「気持ちをわかってもらえてない」と感じることもあります。

子どもが動き出すには、「気持ちの準備」と「実際に動ける状態」の両方が必要です。
どちらか一方だけがあっても、登校にはつながりにくいのです。


継続登校に向けた小さな工夫

では、具体的にどんなことを意識すればいいのでしょうか?
ここでは、どのご家庭でも取り入れやすい、小さな工夫を3つご紹介します。

① 朝の「おはよう」は同じ時間に

「毎朝、7時半に“おはよう”だけ言う」と決めてしまうのも一つの方法です。
子どもが起きていようと寝ていようと、関係ありません。

毎日同じタイミングで、同じ声がかかること。
これは、生活の中で“予測できる安心”を作ることにつながります。

② 話さなくても、同じ場所に“いる時間”を増やす

会話のハードルが高いときは、無理に言葉を交わさなくても構いません。
たとえば、同じ部屋で別々のことをする時間を、少しずつ増やしてみてください。

一緒にテレビを見る、同じ机でお互い違う作業をする、ただそれだけのことでも、「自分は一人じゃない」という感覚につながります。

③ “目的のない外出”をしてみる

「買い物ついでにちょっと外の空気を吸いに行く」くらいの軽い外出を提案してみてください。
登校に直結しなくても、体を外に出す感覚を取り戻すことが、回復への第一歩になります。


「うまくいかない時期」こそ、リスクを減らすチャンス

ここまで読んでいただき、「うちは全部当てはまっているかも…」と不安になった方がいたら、安心してください。
むしろ、今気づけたことが、とても大きな一歩です。

不登校のきっかけは、親がコントロールできるものではないことが多いです。
でも、「継続してしまう要因」は、少しずつ整えることができます。

生活習慣や親子の関係性は、変えようと思えば家庭の中で動かせるものです。
焦らなくて大丈夫です。できるところからでいいんです。


明確な“解決策”がないからこそ、大切にしたいこと

ToCoでは、ご家庭の状況に応じたサポートを行っています。
不登校要因の診断だけでなく、生活改善の支援や、学校との橋渡しなど、継続登校まで寄り添う支援をしています。

でも私たちが本当に大切にしているのは、“解決”よりも“回復”です。

「いつから行けるようになるのか」ではなく、
「その日まで、どうやって心を守るか」
「一緒に待つ時間を、どれだけ健やかに保てるか」

そんな視点を大事にしています。もし不登校にお悩みの方は、ぜひご相談ください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

【夫婦仲】簡単な測定法と、家庭への影響について

【夫婦仲】簡単な測定法と、家庭への影響について-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問も務めております。
ここでは「夫婦関係が家庭に与える影響」を、臨床現場での経験と心理学の知見に基づいて論じていきます。

参考:文部科学省「文部科学省における家庭教育支援について


目次


「夫婦仲」を簡単に確かめる質問

夫婦関係というのは、年数と共に表面的な会話や日常のやり取りに終始しがちで、内面でのつながりが希薄になっていくことがあります。ただ、それが問題かどうかを判断するのは難しい。けれど、「なんとなく冷めている」「ケンカはしないけど会話が少ない」程度では、危機感を持ちにくいものです。

そんな中、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の心理学教授アーサー・アーロン氏の研究が示す「自己への内包」という概念は、夫婦仲を客観的かつ簡潔に測る手段として有効です。

「自身にとって相手はどんな存在ですか?下記の中から一番近いものを選んでください」

完全に離れた円は心理的距離がある状態、ほぼ重なった円は相互に深くつながっている状態とされ、選んだ円の重なりが少ない夫婦ほど、後の離婚率が高まる傾向にあると報告されています。この図は、冷静な自己認識を促すと同時に、夫婦間の無意識な距離をあぶり出す働きがあります。

目に見えない「空気」が子どもに与える影響

では、夫婦の関係が家庭全体、特に子どもにどう影響するのでしょうか。表面上は穏やかに見えていても、夫婦間に無言の緊張や疎遠さがあると、それは家庭の「空気」となって子どもに伝わります。とくに小中学生は、言葉ではうまく説明できなくても、大人の表情や雰囲気、声のトーンといった非言語の要素にとても敏感です。

私は児童心理司として数多くの家庭を訪問してきましたが、不登校の相談を受けたとき、子どもが「自分のせいで親が喧嘩している」と感じていたり、逆に「自分がいなくなれば両親はもっとうまくいくのでは」と思い詰めていたケースもあります。実際には親同士の関係が原因とは限らないにもかかわらず、子どもがそう思い込んでしまうのは、家庭内に明確な言葉では説明できない「緊張感」があるからです。

アーロンの「自己への内包」の理論を援用するなら、夫婦が互いの感情に自然と共鳴し合えている関係であれば、その雰囲気は子どもにも安心感を与える材料となります。

たとえば、父親が疲れて帰宅したとき、母親がその変化に気づき、自然に気遣いを示す。そして父親もまた、子どもの些細な表情の変化に反応できる。こうした「感情の連鎖」は、家庭のなかに情緒的な安全地帯を生みます。逆に、夫婦の感覚が断絶していれば、家庭内の誰もが孤立しやすくなります。

家庭は、子どもにとって日々の「基準」になります。何が当たり前で、何が安心で、何が危険か──それらを判断する土台が家庭です。その土台の芯にあたるのが、実は夫婦関係です。円の重なりが少ない状態を放置してしまえば、親子の関係にも微妙な「ずれ」が生まれていきます。だからこそ、夫婦仲を“円の重なり”というイメージで確認し、必要があれば意識的に距離を詰める努力を始めることが、家庭全体の安定にとっても意味を持ちます。

夫婦のつながりが保つ「家庭の地盤」

夫婦仲の「円の重なり具合」を意識することが、なぜ家庭にとってそこまで重要なのでしょうか。それは、夫婦の関係性が家庭の「地盤」だからです。地盤がしっかりしていれば、たとえ突発的な出来事があっても家庭は崩れません。しかし、地盤が脆ければ、どんなに表面をきれいに整えても、子どもが安心して立つことはできません。

この「地盤の強さ」は、決して外からはわかりません。人前では笑顔でいても、内側に距離があれば、家庭内でのコミュニケーションはすれ違いが増えていきます。例えば、子どもが不調を訴えたとき、一方の親が「よくあること」と軽く扱い、もう一方は心配で動こうとする。ここで夫婦の感覚がかみ合わなければ、対応がバラバラになり、子どもは「自分の気持ちが誰にも届かない」と感じてしまうことがあります。

ToCo株式会社では、再登校を目指す支援のなかで家庭とのやりとりも多く行いますが、子どもが安定して動き出せる家庭には、必ずといっていいほど、夫婦間で感情や意図が共有されている土壌があります。お互いが感覚を「内包」し合えている関係では、たとえ意見の違いがあっても、軸はぶれず、支え合う姿勢が自然と生まれるのです。

ですから、夫婦仲を確認することは、何か問題が起きたときの「責任の所在」を追及するためではありません。むしろ、まだ何も起きていない段階で、地盤の状態を確認するための行為です。

アーロンの「重なりの円」は、毎日見る必要はありません。ただ、半年に一度でも、一年に一度でも、静かに立ち止まって「私たちは、今どの円にいる?」と考える。その小さな問いが、家庭の地盤を強固にしていきます。

家庭内の問題は、目に見えるところから始まるとは限りません。大切なのは、目に見えないつながりを見逃さず、少しでも「今よりも近づく」努力を夫婦で共有していくことです。それが結果的に、子どもにとっても落ち着ける場所を作ることにつながっていきます。夫婦仲は、子育てにおいて「背景」ではなく「中心」です。その中心がしっかりしているかを確かめることが、家庭の安定を築くための第一歩となるのです。

まとめ

今回取り上げた「夫婦仲」というテーマは、不登校という現象そのものから少し離れて見えるかもしれません。しかし、現場で多くのご家庭と関わる中で、私は何度も実感してきました。子どもが安心して前を向くためには、まず家庭という足場が安定していなければならないということ。そしてその足場の要が、夫婦のつながりであるということです。

アーサー・アーロン教授の「自己への内包」の理論と、それをもとにした“円の重なり”というシンプルな図は、私たちが日常の中で見落としがちな「心の距離感」に気づかせてくれます。それは、夫婦関係において「今、どの位置にいるのか」「どのくらい互いを感じ取れているのか」を、具体的に可視化する手段でもあります。

夫婦仲を確かめるという行為は、決して責め合うためでも、関係を再構築しなければならないという義務感から行うものでもありません。ただ、「気づく」ための行為です。自分と相手の間にどれだけ感覚が通い合っているかを知ること、それだけでも家庭の空気は少し変わります。そしてその変化は、必ず子どもにも伝わります。

子どもが抱える不安や不調は、外からの刺激や学校との関係だけでなく、家庭内の“気づかれない圧”が原因であることも少なくありません。その圧力を減らし、家庭をもっと柔らかく、安心できる空間にするためには、まず夫婦がお互いを「感じ取ろうとする」ことが必要です。

夫婦の距離が縮まると、親子の距離も自然と整います。無理に完璧を目指す必要はありません。ただ、今より少しだけ、相手の感覚に目を向ける。その小さな姿勢の積み重ねが、家庭の空気を変え、子どもが安心して「また動いてみようかな」と感じられる足場をつくっていくのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

友達を作らなくてもいい

友達を作らなくてもいい-記事の見出し画像

目次


「友達がいない」という不安を抱える親子へ

春になると、街のあちこちに真新しいランドセルや制服を身にまとった子どもたちの姿が見られるようになります。親としては、その姿に微笑ましさとともに不安も感じるのではないでしょうか。子どもが新しい環境にうまく馴染めるか、友達ができるか、先生とうまくいくか。そのような心配は、子育て中の親にとって避けられないものです。

特に「友達ができるかどうか」は、多くの親が強く気にするポイントです。自分の子どもが休み時間に一人でいたらどうしよう。グループに入れなくて、お昼ご飯をひとりで食べていたら辛いんじゃないか。誰かと一緒に下校していなかったら、仲間外れにされているのでは……。そういう思いが、子どもの様子を観察するたびに頭をよぎるかもしれません。

実際、「友達ができたか?」という質問を新学期の数日以内に投げかけてしまう親は少なくありません。ある意味それは当然のことです。学校という場所は、勉強だけでなく社会性を学ぶ場でもあるという認識が強くあり、そこに「友達」が関係してくるのは自然な流れです。

しかし、必要な言葉は「友達を作らなくてもいい」かもしれません。

これは決して人間関係を否定する意図でもありません。むしろ、心の安全と成長を守るためのメッセージです。
「誰とでも仲良くしなさい」の言葉の裏に、どれほど大きなプレッシャーが潜んでいるのか。無理に友達を作ろうとして、自分をすり減らしてしまう子どもがどれほど多いのか。私はそれを、親として、そしてカウンセラーとして、日々目にしています。

新しい環境で不安を抱える子どもたちを、どう支えればいいのか。どんな言葉をかければ、自分らしくいられるのか。そして、何より親自身がどのような視点で子どもの「人間関係」と向き合うべきか。そのヒントを、一緒に探していきましょう。

参考データ:文部科学省「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」

「友達づくり」は学校生活の一部にすぎない

小学校でも中学校でも、学校という場所は何より「学びの場」であるということを、まずは再確認しておきたいと思います。先生の話を聞いて、自分で考える力を養う。そうした教育活動こそが、本来の学校生活の核です。

ところが、実際の学校生活では「友達関係」に注目が集まりがちです。先生も保護者も、「友達を大切に」「友達と協力して」と繰り返します。運動会も、修学旅行も、合唱コンクールも、ほとんどの行事は「仲間との協力」が前提となっています。それ自体は悪いことではありません。むしろ、協調性やコミュニケーション能力を養うには最適です。

ただ、ここにひとつ大きな落とし穴があります。それは、「友達ができない子は、学校生活がうまくいっていない」という誤解です。

実際には、ひとりでいることを好む子どももいます。自分の世界を大切にしたい子もいます。グループに入って無理に笑うより、一人で本を読んでいる方が心が穏やかになる子もいるのです。それにも関わらず、「友達がいない=問題がある」と判断されてしまうことが非常に多いのが現状です。

このような誤解の中で苦しむのは、ほかならぬ子どもたち自身です。周囲の目を気にして、無理に誰かと関わろうとしてしまう。自分を押し殺してでも輪に入ろうとしてしまう。その結果、疲弊し、自己肯定感を失っていくのです。

「友達がいない」と聞いても、すぐに問題視しないこと。そこに焦りを感じる必要はありません。学校は本来、「自分らしさを育む場」であるべきです。そして、その「自分らしさ」は、必ずしも友達という枠の中で育まれるものではありません。

だからこそ、私は繰り返し伝えます。「友達を作らなくてもいい」。それは、子どもの世界を狭める言葉ではなく、むしろ可能性を開くための言葉なのです。

「友達ができない=劣っている」は幻想

新学期が始まって数日が経つと、子どもたちの間で自然と“序列”のようなものが生まれ始めます。目立つ子、人気のある子、誰とでもすぐ仲良くなれる子――そうした子どもたちが早々に友達の輪を築いていく様子を見て、親も子も、無意識のうちに「友達が多いことが正しい」「友達が少ない=劣っている」と感じてしまいがちです。

しかし、それは完全に幻想です。

そもそも、「友達が多い=人間的に優れている」といった価値観は、一体誰が決めたのでしょうか?学校の中で目立つ子が、必ずしも心の豊かな子とは限りません。友達が少ない子が、劣っているわけでもありません。むしろ、慎重で観察力があり、自分のペースで人との距離を測れる子こそ、将来にわたって安定した人間関係を築ける資質を持っているとも言えるのです。

「友達がなかなかできない」という現象には、いくつかの要素が関係しています。性格の問題だけではありません。周囲の環境、同じクラスにどんな子がいるか、先生の指導方針、学校の雰囲気など、多くの要素が影響しています。そして何より、「相性」があります。たとえ良い子同士であっても、相性が合わなければ、無理に仲良くする必要はありません。

ですが、子どもたちの間では「仲良し=善」「ひとり=悪」という空気が強く存在しています。これは、アニメやドラマなどの影響もありますし、大人たちの会話の中にも無意識の偏見が含まれていることが多いのです。

たとえば、親同士がこんな会話をしていたらどうでしょうか。

「うちの子、もう友達ができて毎日遊んでいるんですよ」 「え〜すごい!うちはまだみたいで心配で…」

この一言が、子どもにとってどれほどプレッシャーになるか。友達の有無を成績のように比較されると、子どもは「できなかった自分」を否定的に受け止めてしまいます。まるで「友達がいないことは失敗」のように感じてしまうのです。

しかし、人との関係はテストの点数のように評価できるものではありません。何人と話したか、何人と連絡先を交換したか、それは本質ではありません。もっと大事なのは、その関係の中に「安心感」があるか、「尊重」があるかということです。

また、友達ができないことで落ち込んでしまう子どもに、こんな声かけをしてしまう親もいます。

「もっと自分から話しかけなさいよ」 「挨拶くらいちゃんとしないと、友達できないよ」

こういった言葉は、子どもにとって“ダメ出し”に聞こえます。もちろん、社会性を育てるための助言として意図されているのでしょう。でも、傷ついている子どもに必要なのは、戦い方のアドバイスではなく、安心して休める場所です。

「無理して友達作らなくていいよ」 「ひとりでいても、何も悪くないよ」

そんな風に伝えてもらえたら、どれほど救われる子がいるでしょうか。

「友達になろう」という言葉の裏にあるプレッシャー

新年度、特に入学やクラス替え直後には、先生や親が子どもに頻繁に投げかける言葉があります。

「新しい友達作ってね」 「まずは誰かに声をかけてみよう」 「困っている子がいたら声かけようね」

このようなフレーズは、一見優しさと善意に満ちた言葉に思えます。実際、悪意が込められているわけではありませんし、社会性を育てる教育の一環としても機能しています。

しかし、それがノルマやミッションのように聞こえてしまうこともあるのです。

子どもにとって、見知らぬ人に話しかけるという行為は、想像以上にエネルギーのいることです。自分がどう思われるか、変に思われないか、嫌がられないか……そうした不安を抱えながら「友達になろう」と声をかけるのは、心の強さが求められます。

しかも、それがうまくいかないと、「やっぱり自分はダメなんだ」と自己否定につながりやすいのです。つまり、「友達を作ろう」という言葉は、子どもによっては「作らなければならない」「作れない自分は失格」というプレッシャーになり得るのです。

特に、集団において自分のポジションを探るのが苦手な子や、敏感で繊細な子にとっては、「友達を作ることが当然」とされる空気は非常に息苦しいものです。大人でも、初対面の人に話しかけるのが苦手な人はたくさんいますよね。それを子どもにだけ「できて当たり前」と押しつけるのは、少し乱暴ではないでしょうか。

また、先生が子どもたちに「みんなで仲良くしよう」「友達100人作ろうね」と言うと、それを文字通り受け取ってしまう子どももいます。人によっては、その期待に応えようと必死になり、自分の本心を無視して関係を築こうとしてしまいます。自分に合わない子とも無理に仲良くしようとし、心がすり減っていくのです。

だからこそ、「友達になろう」という言葉は慎重に使うべきです。友達づくりを推奨するのではなく、「一人でいても悪くない」「誰かと話さなくても、そのままで大丈夫」というメッセージを、同時に伝える必要があります。

本当に優しさを持った人間とは、誰に対しても敬意を持って接することができる人です。無理に誰かとつながるのではなく、心が自然と近づく相手と、時間をかけて関係を築いていく。それが、本来の「友達」であるべきです。

「友達の輪」は、ときに壁にもなる

学校生活において、「友達の輪」という言葉はポジティブなイメージで語られることがほとんどです。「友達の輪が広がる」「輪の中で楽しむ」など、何かと良いことの象徴として扱われます。

しかし、輪は内側と外側を分ける構造となります。

つまり、誰かが輪をつくるということは、同時に「その外にいる誰か」が必ず生まれるということなのです。子どもたちはその構造を直感的に理解しています。輪の中に入っているか、弾かれているか、あるいは入っていてもいつ出されるかわからない。そんな不安定な立場の中で、多くの子どもが神経をすり減らしています。

新学期の4月、特にこの「輪」が急速にできあがっていく時期です。最初の数日で誰と一緒にいるかによって、その後の人間関係がある程度決まってしまうような空気があるのです。これは高校生、中学生、小学生でも共通です。

そのため、子どもたちは焦ります。「どこかのグループに入らないと」と。まるで椅子取りゲームのように、居場所が限られているかのような感覚に襲われ、誰かと早くつながらなければ、自分の居場所がなくなってしまうと思い込むのです。

ここで問題なのは、「輪に入ることがゴール」になってしまうことです。本来、友達とは信頼関係を築き、気の合う人同士が自然にできるものです。しかし、輪に入りたいという気持ちが強くなりすぎると、「誰でもいいから一緒にいたい」「嫌われてもいいからついていくしかない」といった依存的な関係を生み出しやすくなります。

さらに怖いのは、一度輪ができると、それを守ろうとする心理が働くことです。その結果、輪の外にいる子に対して無意識に壁をつくってしまう。「この子は違うグループの子」「あの子はちょっと変わってるから…」という線引きが生まれます。そしてそれが、無視や排除といった形で表面化していくこともあります。

また、輪の中にいる子どもも安心ではいられません。常に「この輪から外されないように」という緊張感の中で過ごすことになります。何か意見を言うと嫌われるかもしれない。違う行動を取ると裏切り者扱いされるかもしれない。そういった不安が、輪の中にいるはずの子どもたちをも苦しめているのです。

つまり、「友達の輪」というものは、うまく機能すれば支え合いの場になりますが、構造としてはとても不安定で、排他的になりやすい面を持っています。

だからこそ、私たち大人は「輪に入ること」を目標にしない姿勢を子どもに伝える必要があります。「無理に入らなくていい」「一人でいることも素敵だよ」という価値観を共有することで、輪の“外”を恐れない心を育てていくことができるのです。

人間関係で大切なことは「敬意」

では、友達を作ることよりも本当に大切なこととは何でしょうか?

それは「敬意」です。誰かを尊重する気持ち、違いを認める態度、自分自身を過小評価しない誇り。これらがあってこそ、人との関係が健全に成り立ちます。そしてこれは、友達かどうかに関係なく、すべての人間関係に共通する軸なのです。

友達になる、ならないというのは、一種の“選択”です。しかし、敬意を持って接することは基本となります。好き嫌いとは関係なく、目の前の人に対して最低限の礼儀と配慮を持って接する。それができる子どもは、たとえ友達が少なくても、必ず誰かから信頼されます。

反対に、「仲良し」だけれど敬意がない関係は、すぐに壊れます。たとえば、いじめの加害者はよく「遊びだった」「仲良かったから冗談のつもりだった」と言います。しかし、それは敬意のない関係です。「嫌だ」と感じている相手の気持ちを無視している時点で、それは友情ではありません。

私たち親が子どもに教えるべきなのは、「友達と仲良くすること」ではなく、「すべての人に敬意を持つこと」です。たとえクラスメイトと距離を置いていたとしても、その子の考えや好み、家庭環境を馬鹿にしないこと。表面的に仲良くするのではなく、心の奥で他者を尊重すること。

そして同じくらい大切なのは、自分自身に対しても敬意を持つことです。自分の感じ方や考え方を大切にし、「一人でいたい」という気持ちも否定しない。それができるようになると、無理に輪に入る必要もなくなり、自分らしさを守れるようになります。

「友達がいてもいなくても、自分を大事にできているなら、それで充分立派だよ」

このメッセージを、ぜひ子どもたちに届けてあげてください。誰かに合わせるより、自分に敬意を持てることの方が、よほど難しくて、価値のあることなのです。

居場所はひとつじゃない

学校という場所は、子どもたちにとって社会の最初の縮図です。そしてその中で、子どもたちは「居場所」を求めます。誰かと笑い合える場所、安心できる空間、自分の存在が認められていると感じられる環境。それが「居場所」です。

ですが、現実には、学校という一つの場所の中だけで、すべての子どもが安心して過ごせるわけではありません。クラスの中に自分と合う人がいないこともあります。部活に馴染めないこともあります。先生と相性が悪いことだって、当然あります。

それなのに、多くの子どもは「学校の中で居場所がない=自分が悪い」と考えてしまいます。周りにうまく溶け込めないことを、自分の性格のせいにしてしまうのです。

そして親もまた、無意識のうちに「学校でうまくやれているか」を基準に子どもの社会性を判断してしまいがちです。「クラスに友達いるの?」「今日は誰と遊んだの?」そんな会話が続くと、子どもは「学校の中で居場所をつくらなきゃいけないんだ」というプレッシャーを背負い込んでいきます。

でも、本当に大切なことは、ひとつの場所で全てを完結させないことです。居場所は、たくさんあっていい。むしろ、たくさんあったほうがいいのです。

家が居場所であること。家族との時間が心を守ってくれること。それだけでも、十分かけがえのない支えです。親が「学校だけが全てじゃないよ」と本気で思えていれば、子どもはずっと楽になれます。

また、習い事や地域の活動、趣味のコミュニティ、ネット上の健全な関係など、学校とは違う場所に安心できるつながりを持っている子は、学校で孤立しそうになっても心が折れにくくなります。選択肢があるというのは、心の逃げ道があるということ。どこかでつまずいても、別の場所で自分を取り戻せるからです。

特に今の時代は、リアルだけでなくオンラインの世界でも、自分と似た価値観を持つ人とつながれるようになりました。昔のように「学校が世界の全て」ではなくなっています。だからこそ、私たち大人が視野を広げ、「学校の中だけで居場所をつくらなきゃ」という呪縛を解いてあげることが必要です。

学校はあくまでひとつの環境です。向いていない子もいて当然です。そういう子にこそ、「学校に馴染めなくても大丈夫」「君にはもっと別の居場所がある」と伝えてあげること。それが、本当に必要な親の支援だと思うのです。

子どもが安心して戻ってこられる場所、それが家庭であること。その信頼があれば、学校で居場所が見つからなくても、子どもは折れずにいられます。

おわりに:誰のものでもない、自分のペースで歩ける子へ

ここまで、「友達を作らなくてもいい」というテーマで、学校生活や人間関係、親の関わり方についてお話してきました。しかし「友達がいらない」と言いたいのではありません。友達ができること、それ自体は素晴らしいことです。

ただ、「作らなきゃダメ」という空気に支配されて、自分を曲げたり、心を削ったりしてしまうことの方が、ずっと問題だと思っているのです。

4月というのは、子どもたちにとってとても特別で、同時にとても繊細な時期です。まわりは新しい友達を作っているように見えて、自分だけが取り残されているように感じる子もたくさんいます。無理にグループに入ろうとして傷つくこともあります。ちょっとした言葉や態度で、大きく自信を失ってしまうこともあります。

そんな時、子どもが帰ってくる場所である私たち大人が、何を言ってあげられるか。それがすべてだと思うのです。

「ひとりでも大丈夫だよ」 「ゆっくりでいいよ」 「無理しなくていい」

そう言ってあげられるだけで、子どもは少し楽になります。親が自分を否定せず、信じてくれている。それだけで、また明日、学校へ行こうと思えるのです。

この春、すぐに友達ができる子もいれば、なかなか関係が築けない子もいます。でもそれは、勝ち負けではありません。どちらが偉いわけでも、どちらが間違っているわけでもない。それぞれが、それぞれのペースで、少しずつ居場所を見つけていけばいいのです。

そして子ども自身が、自分の「心地よい距離感」を知り、誰にも合わせすぎず、自分らしく生きていけるようになること。それこそが、人生における本当の強さだと私は信じています。

だから、無理して輪に入らなくてもいい。 気の合う人がいなければ、一人でいてもいい。 居場所は、ひとつじゃなくていい。

大人がこの価値観をしっかり持っていれば、子どもはもっと自由になれます。もっと自分を肯定できるようになります。そして、そういう子どもこそ、いつか本当に信頼できる友達と出会えたときに、深く、あたたかい関係を築けるようになるのです。

どうかこの春、自分のペースでゆっくり歩いているすべての子どもたちに、あたたかい目を向けてあげてください。彼らが「誰かになる」ことではなく、「自分である」ことに誇りを持てるように。私たち大人は、焦らず、寄り添い続けましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

新学期にスムーズに登校するための接し方とは?

新学期にスムーズに登校するための接し方-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、数多くの保護者の方々と向き合いながら、子どもたちの学校復帰をサポートしてきました。

新学期が始まるとき、お子さんがスムーズに登校できるかどうかは、多くの親御さんにとって重要な関心事です。特に、過去に不登校の経験があったり、学校に対する不安を強く感じているお子さんをお持ちのご家庭では、「どうすれば新学期を乗り越えられるのか」と悩まれることも多いでしょう。

本稿では、新学期に対する子どもの心理と対策について、データを交えながら詳しく説明していきます。


目次


第一章:新学期が不安になる子どもの心理

1.1 新学期が子どもに与える心理的負担

新学期は、子どもにとって環境の変化が大きい時期です。クラス替えや担任の変更、授業内容の進行、新しい友人関係の構築など、さまざまな要素が絡み合いながら、子どもたちに影響を与えます。こうした環境の変化に不安を感じること自体は自然なことですが、特に不登校の経験がある子どもにとっては、その不安がより強く表れやすく、場合によっては「学校に行きたくない」「登校が怖い」といった強い拒否感を示すこともあります。

文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査(令和5年度)」によると、小中学生の不登校児童生徒数は約35万人と過去最多を更新しており、その背景として以下の要因が指摘されています。

  1. 無気力・不安(約49%)
  2. 生活リズムの乱れ(約16%)
  3. 対人関係の不適応(約12%)
  4. 学業不振(約5%)
不登校児童生徒について把握した事実
文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」

このデータからも分かるように、不登校は単なる「怠け」ではなく、深刻な心理的要因が関わっていることが多いのです。特に「無気力・不安」に分類されるケースが約半数を占めており、新学期においては「うまくやれるだろうか」「また失敗したらどうしよう」といった不安感が強く影響することがわかります。

また、国立教育政策研究所の報告によると、不登校の子どもが学校復帰を考える際、最も大きな障害となるのは 「再び学校に行けるかどうか分からないという不安」 だとされています。これは、「登校しても大丈夫なのか」「また辛くなってしまうのではないか」という自己疑念が、学校復帰の足かせになっていることを意味します。

このことから、新学期の不安を軽減し、登校のハードルを下げるためには、「行こうと思えば行ける」という感覚を持たせること が重要になります。

1.2 不登校経験のある子どもに特有の心理的特徴

不登校経験のある子どもたちは、以下のような心理的特徴を持ちやすいことが知られています。

① 自信の喪失と自己評価の低下

不登校を経験した子どもは、過去に「行けなかった」「途中でやめてしまった」という経験を持つため、自信を失いやすくなります。「どうせ自分はまた行けなくなる」「みんなと同じようにできない」と考え、自己評価が低くなってしまうのです。

日本心理学会の研究(2023年)によると、不登校経験者の約70%が「自分に自信が持てない」と回答しており、その理由として「学校に行けなかったことが影響している」と述べています。

② 環境変化に対する強い抵抗感

不登校の経験がある子どもは、学校に対して「慣れ親しんだ場所ではない」という意識を持ちやすくなります。そのため、新学期のような環境の変化には特に敏感になり、ストレスを感じやすくなります。
このような子どもにとっては、新学期が「未知の環境」になってしまうため、不安が倍増するのです。

③ 先延ばし思考と回避行動

「行かなきゃいけないとは思うけど、怖い」
「明日から頑張ればいいや」

このように、不安が大きすぎると、人は目の前の課題を先延ばしにする傾向があります。これを心理学では「回避行動」と呼びます。

回避行動が続くと、「行かないことが当たり前」になり、再登校のハードルがどんどん上がってしまいます。こうした思考の癖を変えるためには、「少しずつ慣らしていく」「行動を習慣化する」といった対策が必要になります。

1.3 親が気づくべき「新学期のサイン」

子どもが新学期に対して不安を抱えている場合、いくつかのサインを出すことがあります。例えば、

  • 「学校の話題を避ける」 → 新学期の話をすると黙り込む、話を逸らす
  • 「体調不良を訴える」 → 朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と言う
  • 「イライラしやすくなる」 → ちょっとしたことで怒る、反抗的になる
  • 「夜更かしが増える」 → 生活リズムが乱れ、朝起きられなくなる

こうしたサインを見逃さず、適切なサポートを行うことが大切です。

第二章:新学期に向けた心構え

不登校経験のある子どもが新学期を迎える際、親の対応が登校の成否を大きく左右します。ここで重要なのは、「共感」と「具体的な準備」のバランスをとること です。
ただし、「子どもの気持ちに寄り添う」ことと、「行かなくてもいいよ」と受け入れることは異なります。不登校を長期化させないためには、親の言葉がけや行動が決定的な役割を果たします。本章では、親ができる適切な接し方 について詳しく解説します。

2.1 子どもの不安に寄り添うことの重要性

不登校経験のある子どもは、学校に対して「怖い」「失敗するかもしれない」という強い不安を抱いています。この不安を無視したり、否定したりすると、かえってプレッシャーになり、登校意欲がさらに低下してしまいます。

例えば、次のような対応は避けるべきです。

  • 「また学校休むの?」と責める → 自己否定感を強め、親との信頼関係を損なう
  • 「頑張れば行けるよ」と励ます → 子どもにとっては「頑張れない自分はダメ」というメッセージに聞こえる
  • 「行かなくてもいいよ」と逃げ道を与える → 登校するための努力を放棄するきっかけになる

では、どのように声をかけるのが適切なのでしょうか?

共感のある声かけの例

「新しいクラス、ちょっと不安だよね」 → 子どもが「そうだよね」と気持ちを整理しやすくなる
「最初は緊張するよね。でも、去年も頑張ってたよね」 → 以前の成功体験を思い出させる
「どうしたら行きやすくなると思う?」 → 子ども自身に考えさせることで、自主性を育む

このように、「不安な気持ちを認めつつ、解決策を探る」スタンスが重要です。

2.2 「生活リズムの安定」が登校の鍵

不登校の子どもに共通する特徴の一つとして、「生活リズムの乱れ」があります。文部科学省の調査でも、不登校の約16%が「生活リズムの崩れ」を理由として挙げています。夜更かしや昼夜逆転が続くと、朝起きられず、結果的に登校の機会を失ってしまうのです。

したがって、新学期に向けては、以下のようなリズム調整が必要になります。

  1. 朝決まった時間に起きる → 休み中でも、登校時間に合わせて起床する
  2. 夜のスマホ・ゲームの時間を短縮する → 睡眠の質を向上させる
  3. 学校の時間割に近い生活を送る → 昼寝を避け、日中の活動を増やす

特に、「朝起きられない」問題は、登校を妨げる大きな要因になります。親が「学校に行く前提」の生活習慣を意識的に作ることが重要です。

2.3 「学校に行く流れ」とは?

登校のハードルを下げるためには、「学校に行くことが自然な流れ」となる環境作りが不可欠です。例えば、以下のような準備を整えておくと、子どもがスムーズに動き出しやすくなります。

  • 「制服を用意する」 → 親が手伝うことで、「学校に行く前提」の空気を作る
  • 「通学路を一緒に歩いてみる」 → 事前にルートを確認することで、登校のハードルを下げる
  • 「仲の良い友達と約束をする」 → 誰かと一緒に行くことで、安心感を持たせる

このとき、「〇〇しておきなさい」と指示するのではなく、「一緒にやろうか?」 という形で関わることがポイントです。

2.4 親が意識すべき「適度な距離感」

不登校からの再登校では、親がどこまで介入すべきか が大きな課題となります。関わりすぎると子どもが自立できなくなり、放任すると再び登校意欲が低下するという難しいバランスが求められます。

適切な距離感を保つために、以下のようなスタンスを意識しましょう。

「助けが必要なときは手を貸す」 → 例えば「準備を手伝う」「送迎をする」など、最小限のサポートを行う
「行動は子ども自身に決めさせる」 → 「どうしたい?」と問いかけることで、登校の決定権を本人に持たせる
「結果にこだわりすぎない」 → 1日行けなかったとしても、次の日に再挑戦できるよう励ます

「学校に行くこと」は大切ですが、「その過程」も同じくらい重要 です。親が焦ると、子どももプレッシャーを感じ、逆効果になります。

第三章:新学期にスムーズに登校するための接し方

新学期は、子どもにとって大きな環境の変化があるタイミングです。不登校の経験がある子どもにとっては、「また学校に行けなくなるのではないか」「クラスに馴染めるだろうか」など、不安が増す時期でもあります。そのため、新学期をスムーズに迎えるためには、親の適切な関わり方 が欠かせません。

本章では、新学期に向けて親ができる具体的なサポート方法を詳しく解説します。


3.1 新学期の不安を減らすための準備

「学校が遠い存在」にならないようにする

長期の不登校や長期休暇の間、学校との関わりが薄れると、子どもにとって学校が「遠い存在」になり、再登校のハードルが高くなります。新学期に向けて、以下のような準備をしておくと、登校への心理的負担を減らせます。

  1. 学校の話題を日常に取り入れる
    • 「新しい先生、どんな人かな?」
    • 「夏休みの宿題はどんなのがあった?」
    • 「○○くん(友達)、元気かな?」
  2. 事前に学校へ足を運ぶ機会を作る
    • 始業式の前に登校し、校舎の雰囲気に慣れる
    • 担任の先生と事前に話しておく
    • 学校の近くを散歩し、通学の感覚を取り戻す
  3. 生活リズムを学校モードに戻す
    • 朝起きる時間、食事のタイミング、勉強の時間を整える
    • 夜更かしを避け、登校時間にスムーズに起きられるようにする

学校に行くことが「特別なこと」ではなく、「当たり前の日常の一部」だと感じられるように準備をしていくことが大切です。


3.2 「行きたくない」と言われたときの対応

新学期が近づくと、子どもが「学校に行きたくない」と口にすることがあります。このとき、「どうして?」「行かないとダメだよ」と無理に説得すると、子どもはさらにプレッシャーを感じてしまいます。

■ 「行きたくない」の裏にある本当の気持ちを探る

子どもが「行きたくない」と言うとき、実際には「行けない」「どうしていいかわからない」という心理が隠れています。

例えば、次のような不安を抱えていることが多いです。

  • 「クラスに馴染めるか不安」 → 「先生や友達と話せるかな…」
  • 「勉強についていけるか心配」 → 「みんなより遅れてるかも…」
  • 「学校のルールが怖い」 → 「宿題や決まりごとが守れないかも…」
  • 「そもそも学校に行く意味が分からない」 → 「どうして行かなきゃいけないの?」

これらの不安に寄り添うために、次のような言葉をかけるのが効果的です。

  • 「久しぶりだから不安だよね。でも、一緒にできることを考えてみようか。」
  • 「どんなことが不安なのか、少しずつ話してくれると嬉しいな。」
  • 「学校に行くかどうかはまだ決めなくてもいいから、まずは準備だけしてみようか。」

親が「解決しなきゃ!」と思いすぎると、子どもは余計に追い詰められます。焦らず、不安を一つずつ整理していくことが重要です。


3.3 新学期の朝、スムーズに登校するための工夫

■ 朝の支度をスムーズにするためのポイント

新学期初日は、登校への緊張がピークになります。朝の準備をスムーズにするために、次のポイントを押さえましょう。

  1. 前日の夜に準備を済ませる
    • 制服や持ち物を整える
    • 明日のスケジュールを確認する(何時に家を出るかなど)
  2. 朝は時間に余裕を持つ
    • バタバタするとストレスが増すので、普段より少し早めに起こす
    • 「早くしなさい!」ではなく、「ゆっくりでいいよ」と声をかける
  3. 登校のハードルを低くする
    • 「今日は途中まで一緒に行こうか?」
    • 「まずは学校の門まで行ってみようか」
    • 「一日全部じゃなくてもいいから、午前中だけ行ってみる?」

いきなり「フルで登校しなければならない」と思うとプレッシャーになるので、「まずは学校に向かうこと」 を目標にするのがポイントです。


3.4 まとめ:親の適切なサポートが「新学期のスムーズな登校」につながる

新学期にスムーズに登校するために、親ができるサポートとして、次のようなポイントが重要です。

・「学校を遠い存在にしない」ために、事前準備をする
「行きたくない」と言われたときは、不安の原因を探る
朝の準備をスムーズにし、登校のハードルを下げる

親が「新学期をどう迎えるか」に焦点を当て、事前の準備や登校のサポートを行うことで、子どもが少しずつ学校に向かいやすくなります。

不登校経験のある子どもにとって、新学期は大きなハードルですが、「少しずつでも前に進めるように」と考えることが、親子にとって最も大切な視点です。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

学校に不登校を相談する前の準備とは?

学校に不登校を相談する前の準備とは-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの子どもたちと保護者の方々に関わってきました。不登校の問題は、家庭だけでなく学校との関係性が大きな鍵を握っています。

しかし、保護者の方々の中には、「学校とどう連携すればいいのか分からない」「学校に相談しても状況が変わらない」と感じている方も少なくありません。今回は「不登校の子のために親が知っておくべき学校との連携」というテーマで、具体的なポイントをお伝えします。


目次


参考:文部科学省「不登校への対応について」

第1章 不登校の背景を学校と共有する重要性とは?

不登校の背景には、子ども自身の心理的負担や学校内での人間関係、学業のつまずきなど、さまざまな要因が絡み合っています。しかし、その要因が学校側に十分に伝わっていない場合、適切な支援が行われず、状況が長期化してしまうことがあります。学校と保護者が正確な情報を共有し、現状を共通理解することが、再登校への第一歩です。

1.1 学校は「子どもの現状」を正確に把握できているか

学校側は、子どもが登校していない間の様子を把握することが難しい状況にあります。特に長期間の不登校の場合、担任や学年主任が「子どもが今、どのような状態なのか」「何を不安に感じているのか」を把握していないケースが多いです。そのため、保護者が学校に対して、子どもの状況を具体的かつ継続的に伝えることが求められます。

例えば、以下の情報は学校との共有が重要です。

  • 子どもが不安に感じていること(友人関係、授業の進度、教師との関係など)
  • 自宅での生活リズムや学習状況
  • 心理的な状態(無気力、焦燥感、強い不安など)

これらの情報が学校側に伝わることで、子どもにとって適切な関わり方が見えてきます。

1.2 「問題点」より「子どもの願い」を伝える

学校に状況を伝える際、つい「学校の対応が悪かった」「クラスの雰囲気が合わない」といった問題点にフォーカスしてしまうことがあります。しかし、学校側に改善を求める場合も、子どもの「願い」や「望んでいること」を伝える方が、建設的な関係を築きやすくなります。

例えば、「〇〇先生の授業が分かりづらい」と伝えるより、「子どもは授業内容について、もう少しゆっくり進めてもらえると安心できると言っています」と伝える方が、学校側も柔軟に対応しやすくなります。子どもの立場に立った「前向きな希望」として伝えることが、学校との良好な連携につながります。

学校での三者面談

1.3 「学校に期待すること」を具体的に伝える

学校側も不登校の子どもへの対応に苦慮していることが多く、「どう関わればよいか分からない」という戸惑いを抱えています。そのため、保護者が「何を学校に期待しているのか」を具体的に伝えることで、学校側はより的確な対応ができます。

例えば、「週に1回、担任の先生から手紙をもらえると安心するようです」や「オンラインで少しでも授業の様子が分かると、復帰へのハードルが下がるかもしれません」といった具体的な提案は、学校側も動きやすくなります。

1.4 担任任せにせず、複数の教職員とつながる

不登校の子どもへの対応は、担任だけに任せてしまうと限界があります。担任の先生が熱心であっても、多忙な業務の中で十分に関わる時間を取れないこともあります。そのため、スクールカウンセラーや学年主任、特別支援コーディネーターなど、複数の教職員と情報共有を進めることが望ましいです。

「誰がどの役割を果たしてくれるのか」「どの先生が子どもと気が合うか」を見極めながら、複数の関係者と連携していくことで、より多角的なサポートが可能になります。況が変わればまた調整する」といった姿勢で、焦らず段階的に進めていくことが大切です。


第2章 学校との連携がうまくいかない時の原因とは?

学校との連携を試みても、思うように進まないケースもあります。学校側の対応が消極的であったり、子どもの状況に対する理解が不足している場合、保護者としては「どうして学校は動いてくれないのか」と不安や不満を抱くこともあります。この章では、学校との連携がうまくいかない原因と、それを解消するための具体的な対策について説明します。

2.1 学校側の「不登校に対する理解不足」

学校側は「不登校は家庭の問題」と捉えてしまう傾向があります。また、子どもが学校を拒否している理由を十分に理解せず、「本人がそのうち戻ってくるだろう」と様子見を続けてしまうケースもあります。このような状況では、保護者が学校に対して「我が子の状況は特別な配慮が必要である」ということを丁寧に説明する必要があります。

2.2 保護者が「学校に遠慮しすぎている」

一方で、保護者の方が学校との関係を悪化させたくないあまり、意見を伝えにくく感じてしまうケースもあります。しかし、不登校の解決には学校との連携が不可欠であり、「学校にお願いして申し訳ない」と感じる必要はありません。むしろ、子どものために必要なサポートを求めることは、親の当然の役割です。

2.3 「学校の限界」を見極めたうえでの関わり方

学校にもできることとできないことがあります。学校の対応が不十分であっても、全面的に依存するのではなく、「学校に求めること」と「家庭でできること」のバランスを見極めることが大切です。学校側が対応できない部分については、家庭で補完する形で支えていくことで、子どもの安心感が高まります。

第3章 再登校に向けた学校との具体的な連携ステップ

学校との連携が進むことで、子どもの不登校状態からの回復は大きく前進します。しかし、再登校に向けた支援は単に「学校に戻ること」をゴールとせず、「子どもが学校で安心して過ごせる環境を整えること」に焦点を当てる必要があります。ここでは、再登校に向けた学校との具体的な連携ステップについて、実践的な方法を解説します。


3.1 再登校の「タイミング」は子ども主体で決める

再登校に向けた連携で最も重要なのは、「いつ学校に戻るか」を子どもの気持ちを軸に決めることです。親としては「早く戻ってほしい」という焦りが生まれがちですが、子どもがまだ心理的に準備ができていない段階で無理に登校を促すと、再登校が長続きせず、再び不登校状態に戻ってしまうことが多いのです。

しかし、「子どもが戻りたいと言うまで待つ」という姿勢だけでは、状況が長期化してしまう恐れがあります。そこで、学校との連携では、「子どもがどの段階で戻れそうか」「どのような条件が整えば戻りやすいか」を見極めることが重要です。

具体的なステップ:

  • 担任の先生やスクールカウンセラーと定期的に情報交換を行い、子どもの心理状態や意欲の変化を把握する。
  • 子どもと「学校に戻ったときに不安に感じること」を具体的に話し合い、不安要素を一つずつ減らす取り組みを学校と共有する。
  • 「別室登校」「短時間登校」「放課後の個別対応」など、子どもが段階的に学校に慣れる方法について、学校と柔軟に調整する。

3.2 「復帰後の環境」を事前に整える

再登校がスムーズに進むかどうかは、学校側の「受け入れ態勢」が整っているかに大きく左右されます。子どもが不安を感じる要素を取り除き、「戻っても大丈夫」と思える環境を学校と共に整えることが不可欠です。

環境調整の具体的なポイント:

  • 学習面の配慮
    長期間の不登校の場合、授業の進度についていけるかどうかが子どもの大きな不安材料です。学校側と相談して、復帰後の学習サポート体制(補講、個別指導、プリント補助など)を整える必要があります。ただし、無理に「遅れを取り戻す」ことを目的とせず、「自分のペースで学び直せる」という安心感を与えることが大切です。
  • 人間関係の調整
    不登校のきっかけが友人関係の場合、復帰後に同じクラスで過ごすことへの抵抗感があります。この場合、学校側と「席替えの配慮」「グループ活動の調整」「特定の友人との距離の確保」など、子どもが少しずつ人間関係を再構築できる環境を作ることが求められます。
  • 教職員の理解と関わり方の調整
    子どもが戻った時に、担任だけでなく教科担当の先生や学年主任が「今の子どもの心理状態」を正しく理解していることが大切です。保護者は、学校側に対して「どのような声かけが有効か」「子どもが安心して話せる教職員は誰か」といった情報を共有し、復帰後の関わり方を事前にすり合わせる必要があります。
学校側との面談

3.3 再登校の「初期段階」を丁寧にサポートする

再登校の初期段階は、子どもにとって非常に大きな心理的ハードルです。この段階でのサポートが不十分だと、せっかく再登校してもすぐに「もう無理だ」と感じてしまい、再度の不登校につながることがあります。学校側と密に連携し、再登校の初期段階を丁寧にサポートすることが、長期的な安定につながります。

再登校初期のサポートポイント:

  • 「登校日数」にこだわらず、学校との接点を増やす
    最初は「毎日登校する」ことを目標にせず、「週に1回でも登校できたら十分」と考え、子ども自身が「できた」という達成感を積み重ねることが重要です。学校側には「登校日数よりも、まずは学校との関係を取り戻すこと」を目的とするよう伝え、柔軟な対応をお願いしましょう。
  • 「教室に入れない場合」も想定したプランを準備
    再登校した直後、教室に入れずに保健室や別室で過ごすこともよくあります。この場合も「教室に入れない=失敗」と捉えず、「学校の空間に慣れるステップ」として位置づけることが大切です。学校側と「教室以外の安心できる場所」「特定の先生が見守る時間帯」などをあらかじめ調整しておくことで、子どもは「万が一の逃げ場がある」と安心できます。

3.4 「親の役割」はあくまで伴走者

再登校に向けた過程では、親が「子どもを引っ張る役割」を担おうとすると、かえって子どもにプレッシャーを与えることになります。親はあくまで「伴走者」として、子どもが安心して学校に戻れる環境を整える役割に徹することが大切です。

伴走者としての関わり方:

  • 学校側と子どもの間に立って、双方の思いを丁寧に伝えながら橋渡し役を務める。
  • 「登校できたかどうか」ではなく、「学校に行こうと考えたこと」を評価する。
  • 子どもが不安を口にした時は、否定せずに「それは大変だったね」と共感する。

第4章 学校との連携を長期的に維持するポイント

再登校が実現しても、そこから安定した学校生活を継続するには、学校との連携を長期的に維持していくことが不可欠です。再登校直後は、子ども自身も不安を抱えながら環境に慣れようとしています。しかし、登校が続くことで少しずつ安心感が芽生える一方で、些細な出来事で再び心のバランスを崩してしまうことも少なくありません。そのような時に、保護者と学校が継続的に情報を共有し、柔軟に対応していくことで、子どもは「困った時には守ってもらえる」という安心感を持つことができます。


4.1 「再登校後の不調」を想定して備える

再登校後、最初の数週間は順調に見えても、子どもが新たなストレスを感じ始めるのは少し時間が経ってからです。友人関係の微妙な変化、学業へのプレッシャー、教師との関係性など、さまざまな要因が重なることで、子どもは「やっぱり無理かもしれない」と感じ始めることがあります。

この「再登校後の不調」は、保護者と学校が見逃しがちなポイントです。しかし、ここで迅速かつ丁寧に対応することで、再度の不登校を防ぎ、安定した学校生活を継続できる可能性が高まります。

不調のサインに気づくポイント:

  • 「朝、登校準備に時間がかかるようになった」「お腹が痛い、頭が痛いと言い出す」など身体症状の増加。
  • 学校から帰宅後、以前よりも疲れやすくなり、何も話したがらなくなる。
  • 学校での出来事に対して否定的な発言が増え、再登校前のネガティブな気持ちが戻ってきている。

不調を感じた時の対応:

  • 早めに担任やスクールカウンセラーに状況を伝え、「しばらく様子を見ましょう」ではなく、具体的な対策を一緒に検討する。
  • 一時的に別室登校や短時間登校を取り入れるなど、柔軟な選択肢を提示する。
  • 子ども自身にも「調子が悪い時は、学校と相談して無理をしない方法がある」と伝え、不安を和らげる。

4.2 「担任任せ」にならない関係づくり

再登校後は、どうしても担任の先生との関係が中心になりますが、長期的な連携を維持するためには、担任だけに依存せず、複数の教職員と関係を築いておくことが重要です。担任の異動や学年の変化によって状況が変わった場合も、子どもの状況を理解している複数の教職員とつながっていることで、継続的な支援が途切れることを防げます。

関係構築のポイント:

  • スクールカウンセラーとの定期面談
     担任だけでなく、スクールカウンセラーとも定期的に面談を行い、子どもの状況を共有しておくと、担任が変わった場合にも継続的なフォローが期待できます。
  • 特別支援コーディネーターとの連携
     学校には特別支援コーディネーターが配置されていることが多く、学習面や心理的配慮が必要な子どもへのサポート体制について相談することができます。担任が多忙な時にも、コーディネーターが間に入ることで、スムーズな対応が可能になります。
  • 学年主任や管理職とも関係を築く
     学年主任や校長・教頭とも定期的に情報を共有しておくことで、学校全体の方針として子どもへの配慮が継続されやすくなります。

4.3 「学校からの情報」を積極的に引き出す

再登校後も、子どもは家庭で学校の出来事を細かく話すことは少なくなります。特に、うまくいっていない時ほど、自分の気持ちを言葉にできずに抱え込んでしまうケースが多いです。そのため、保護者としては、学校側から積極的に情報を引き出し、子どもの状況を把握することが重要です。

情報共有の方法:

  • 定期的な面談や電話連絡の依頼
     再登校後も「順調そうだから大丈夫」と思わず、定期的に担任やスクールカウンセラーと面談を行い、子どもの様子を確認します。必要があれば、電話連絡やメールで簡単に状況を把握するだけでも、安心材料になります。
  • 「困った時のサイン」を学校側と共有
     子どもが再び不安を抱え始めた時に現れるサイン(疲れやすくなる、教室に入れなくなる、授業中にぼんやりしているなど)を学校側に伝え、「このような様子が見られたら早めに知らせてほしい」と依頼しておくことで、早期対応が可能になります。
  • 子どもと話す「きっかけづくり」
     学校での出来事について子どもから話を引き出すために、「今日は〇〇先生と話せた?」「お昼は誰と食べた?」など、具体的で答えやすい質問を心がけることで、子ども自身の思いを少しずつ言葉にできるようになります。

4.4 「学校との関係」が途切れそうな時の対応

再登校が軌道に乗ると、学校側も「もう大丈夫だろう」と安心してしまい、連携が途切れがちになります。しかし、長期的に安定した学校生活を送るためには、学校との関係を意図的に維持し続けることが重要です。

関係を維持する工夫:

  • 定期的に短い面談を申し込む
     「特に問題はなさそうでも、今の状況を知りたい」という理由で、短時間の面談や電話連絡を依頼することで、学校側にも「引き続き気にかけている」という姿勢が伝わります。
  • 学校行事や保護者会への積極的な参加
     学校行事や保護者会への参加を続けることで、担任だけでなく他の教職員とも顔を合わせ、子どもの状況について自然な形で情報交換ができます。
  • 「困った時だけ連絡する」のではなく、ポジティブな情報も共有
     子どもが学校で「うまくいったこと」「前よりも成長したこと」を学校側に伝えることで、教職員も子どもの変化をポジティブに捉え、さらなるサポートへのモチベーションが高まります。

第5章 子どもと学校との「信頼関係」を築くための支援とは?

学校との信頼関係を築くことは、再登校後の安定した学校生活を維持するための重要な要素です。不登校を経験した子どもは、学校に対して「自分の気持ちを分かってもらえなかった」「助けてもらえなかった」というネガティブな記憶を抱えていることが多く、再登校後も「また同じことが起きるのではないか」と心のどこかで不安を感じています。その不安を和らげ、学校との信頼関係を再構築するには、保護者の適切な関わりとサポートが欠かせません。


5.1 「学校での安心感」を少しずつ積み重ねる

再登校後の子どもは、学校にいるだけで大きなエネルギーを消耗しています。そのため、最初のうちは「頑張って登校している」というだけで十分です。保護者としては、「教室で過ごせた」「授業を最後まで受けられた」といった成果を求めるのではなく、「学校に行けた」「先生と目を合わせられた」といった小さな成功体験を積み重ねることを大切にしてください。

安心感を積み重ねるための具体的な方法:

  • 「学校で頑張れたこと」を子ども自身に気づかせる
     「今日は教室に入れたね」「友達と少し話せたね」といったポジティブな声かけを意識することで、子ども自身が「自分は頑張れている」と自覚できます。
     ただし、「頑張ったね」「偉いね」といった単純な褒め方ではなく、「〇〇ができたこと、すごいと思うよ」と、具体的に認める言葉をかけることで、子どもの達成感はより深まります。
  • 学校側と「子どもの頑張り」を共有する
     担任の先生に「今日は〇〇ができたと話していました」と伝えることで、学校側も子どもの努力に気づき、よりきめ細かいサポートを続けやすくなります。また、学校側からも「最近〇〇ができるようになりました」とフィードバックがあると、子どもは「学校も自分のことを見てくれている」と感じ、安心感が増します。
  • 「学校外での成功体験」を学校に伝える
     学校での成功体験だけでなく、家や習い事での小さな達成も学校側と共有することで、教職員は子どものポジティブな変化に気づきやすくなります。「最近、家で読書を始めた」「習い事で友達と話せるようになった」といった情報は、学校での関わり方のヒントになります。

5.2 「子ども自身の気持ち」を学校に伝え続ける

再登校後も、子どもは自分の気持ちを学校の先生にうまく伝えられないことが多いです。「学校で困っていること」「苦手なこと」「安心できること」を先生に伝えられず、心の中でモヤモヤを抱えたまま過ごしているケースは少なくありません。
そこで、保護者が「子どもの気持ちの代弁者」として、学校側に子どもの内面を丁寧に伝え続けることが、信頼関係の構築につながります。

子どもの気持ちを伝える際のポイント:

  • 「子どもの言葉」をそのまま伝える
     「〇〇ちゃんは、最近〇〇について少し不安に感じていると言っていました」「〇〇先生の授業が少し速く感じるみたいです」と、子どもの言葉をできるだけそのまま伝えることで、教職員は子どもの気持ちをよりリアルに理解できます。
  • 「要望」ではなく「気持ち」として伝える
     「〇〇してほしい」と学校側に要望を伝えるのではなく、「子どもは〇〇に不安を感じている」といった事実として伝えることで、学校側も柔軟に対応しやすくなります。
  • 子どもの「良い変化」も積極的に共有する
     「最近、〇〇が少しずつできるようになっています」とポジティブな変化を学校側に伝えることで、先生たちも「子どもは頑張っている」と感じ、信頼関係が深まります。

5.3 「学校で困った時の逃げ場」を確保する

学校での信頼関係がまだ十分に築かれていない段階では、子どもは「困った時にどこに行けばいいのか分からない」という不安を抱えています。この「逃げ場がない」という感覚が、再び不登校に戻ってしまう要因になりかねません。
そこで、学校側と連携して、子どもが「困った時に頼れる場所」を確保しておくことで、安心感を高めることができます。

逃げ場を確保する具体的な方法:

  • 「保健室登校」や「別室対応」の選択肢を残しておく
     再登校後も、教室で過ごすことが難しくなった時に、保健室や別室で過ごせる選択肢があると、子どもは「無理しなくていい」と感じられます。
     ただし、「保健室に行く=失敗」と子どもが感じないように、「ちょっと休憩する場所」「気持ちを落ち着ける場所」としてポジティブに位置づけることが大切です。
  • 「特定の先生」を避難先に設定する
     子どもが信頼できる先生がいる場合、「何かあったら〇〇先生のところに行ってもいいよ」と伝えておくことで、子どもは「いざという時の避難先」を持てます。
     学校側とも事前に「〇〇先生が避難先として対応する」という共通認識を持っておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。

5.4 「子どもの意見」を学校生活に反映させる

子どもが学校に対して信頼感を持つためには、「自分の意見が尊重されている」と感じることが重要です。不登校を経験した子どもは、「学校は自分の気持ちを分かってくれない」と感じることで、さらに心を閉ざしてしまうことがあります。
そこで、学校との連携では「子どもの意見を学校生活に反映させる」という視点を持つことで、子ども自身が「学校は自分を大切にしてくれている」と感じやすくなります。

意見を反映させるための方法:

「困った時のサイン」を子どもと共有しておく
 「教室にいられなくなった時は、保健室に行ってもいいよ」「先生にサインを出していいよ」といったルールをあらかじめ決めておくことで、子どもは「自分で状況をコントロールできる」という自信を持てます。

「登校スケジュール」を子どもと一緒に決める
 再登校の際、登校日数や時間帯、別室で過ごすかどうかなどの選択肢を子どもと一緒に考え、「自分で決めた」という感覚を持たせることが大切です。

「授業の受け方」を柔軟に調整する
 「全部の授業を受けるのがしんどい」と感じている場合は、「まずは1時間目だけ参加」「得意な教科から入る」といった方法を、子どもと話し合いながら決めます。
 学校側にも「〇〇は、今のところこのスタイルでやってみたいそうです」と伝えることで、子どもの意思が尊重されていると感じやすくなります。

まとめ:親と学校の「協働」が子どもの継続登校を支える

各章要点必要な行動
不登校の背景共有学校に子どもの状況・心理状態を具体的に伝え、共通理解を深めることが再登校への第一歩。子どもの不安、生活リズム、心理状態を正確に学校へ伝え、希望するサポート方法を明確に伝える。
連携がうまくいかない時学校側の不登校への理解不足や、保護者の遠慮が連携を妨げる原因になる。学校の限界を見極めつつ、具体的なサポートを求め、複数の教職員との関係構築を図る。
再登校へのステップ再登校は子どもの心理的準備を見極めながら、段階的かつ柔軟に進める必要がある。無理のないスケジュールで段階的に復帰し、学習・人間関係・教職員の関わり方の環境調整を進める。
連携の維持再登校後も継続的な情報共有と複数の教職員との関係構築が、安定した学校生活を支える。定期的な面談や情報共有を続け、子どもの変化に気づきやすい関係を維持する。
信頼関係の構築子どもが「学校は自分を理解している」と感じることで、長期的な安心感につながる。子どもの気持ちを代弁し、学校との関係を築き、安心できる逃げ場の確保や意見の反映を促す。

再登校後の安定した学校生活は、保護者と学校が継続的に連携し、子どもを支え続けることで実現します。
子どもが「学校は自分を理解してくれている」「困った時には助けてくれる」と信じられる環境を整えることが、不登校の再発を防ぎ、将来的に子どもが自信を持って社会に踏み出すための土台となります。

最後に強調したいのは、保護者と学校の関係は「親が学校にお願いする立場」ではなく、「子どもを一緒に支えるパートナー」という協働の姿勢であるべきだということです。お互いの立場や意見を尊重しながら、子どもが安心して自分らしく成長できる環境を整えていくことが、私たち大人の大切な役割です。

再登校はゴールではなく、子どもの未来につながる新たなスタートです。学校と連携しながら、子どもが自分のペースで前に進めるよう、温かく見守っていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校と発達障害:知っておきたい基礎知識と、家庭で出来るサポート

不登校と発達障害-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問を務めております。近年、小中学生の不登校と発達障害の関連性が注目されています。不登校の背景にはさまざまな要因がありますが、その中でも発達障害の特性が関係するケースは少なくありません。

本稿では、不登校と発達障害に関する基礎知識を整理し、家庭でできる具体的なサポートについて詳しく解説していきます。お子さんが不登校の状態にあるご家庭では、日々の対応に悩みや戸惑いを感じていることと思います。
しかし、適切な理解とサポートによって、お子さんの状況は変わる可能性があります。ぜひ最後までお読みいただき、実践できる部分から取り入れてみてください。

参考:文部科学省「発達障害の関連リンク」


目次


第1章:不登校と発達障害の関係性とは?

不登校が増加傾向にあることは、多くの保護者の方も耳にされているのではないでしょうか。文部科学省の調査によると、2023年度の小中学校の不登校生徒数は34万6482人に達し、過去最多となりました。特に小学生の不登校は近年急増しており、学校生活に適応することが難しい子どもが増えている実態が浮き彫りになっています。

不登校の背景には、学業不振やいじめ、家庭環境の変化などさまざまな要因が挙げられます。その中でも、発達障害を抱える子どもが不登校になるケースは珍しくありません。
発達障害とは、脳の機能的な特性によって学習や行動、対人関係などに困難を抱える状態を指します。発達障害には、主に以下のような種類があります。

1. 自閉スペクトラム症(ASD)

ASD(Autism Spectrum Disorder)は、対人関係やコミュニケーションの難しさ、こだわりの強さ、感覚過敏などの特性を持つ発達障害です。

ASDの子どもは、集団生活においてさまざまな困難を抱えやすい傾向があります。例えば、以下のような場面で学校生活に適応しにくくなることがあります。

  • 暗黙のルールが理解しにくい:「空気を読む」ことが苦手で、友人関係にトラブルを抱えやすい
  • 予定の変更に対応しづらい:急な時間割変更や行事の予定が変わると強いストレスを感じる
  • 感覚過敏がある:教室の騒音や蛍光灯の光、体育の授業の汗の匂いなどが強い不快感を引き起こす

こうした困難が積み重なると、学校に行くこと自体が大きなストレスとなり、不登校につながることがあります。

2. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。

ADHDの子どもは、学校生活において次のような困難を抱えることがあります。

  • 授業中にじっと座っていられない:周囲の子どもと比べて落ち着きがなく、教師から注意を受けることが多い
  • 忘れ物が多い:宿題や持ち物を忘れやすく、自己管理が苦手
  • 感情のコントロールが難しい:カッとなりやすく、衝動的な発言や行動をしてしまう

ADHDの子どもは「やる気がない」と誤解されやすく、叱責を受けることで自己肯定感が低下し、学校に行く意欲を失ってしまうことがあります。

3. 学習障害(LD)

LD(Learning Disability)は、知的発達には問題がないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習分野に著しい困難を抱える発達障害です。

LDの子どもは、以下のような困難を経験することがあります。

  • 文章を読むのが極端に遅い(読字障害)
  • 板書をノートに写すのに時間がかかる(書字障害)
  • 簡単な計算問題でもミスが多い(算数障害)

学習に対する苦手意識が強くなると、「どうせやってもできない」と考えるようになり、登校意欲が低下してしまうことがあります。


発達障害がある子どもが不登校になりやすい理由

発達障害を持つ子どもが不登校になる背景には、いくつかの共通する要因があります。

1. 学校環境が合わない

学校は「集団行動が基本」となる場であり、発達障害の特性を持つ子どもにとっては過酷な環境になりやすいです。授業の進め方やルールが一律であるため、柔軟な対応が求められる場面で適応しにくくなります。

2. 失敗体験が積み重なる

発達障害の子どもは、「努力しても報われない」という経験を繰り返すことが多くなります。特に、ASDの子どもは友達との関係がうまくいかない、ADHDの子どもは授業中に注意を受けることが多いなど、周囲と比べて劣等感を抱きやすいです。こうした経験が蓄積すると、「学校に行くこと自体が苦痛」と感じるようになります。

3. 過度なストレスによる身体的な不調

強いストレスがかかると、頭痛や腹痛、吐き気などの身体症状が現れることがあります。発達障害の子どもは、自分の気持ちを言葉で表現することが難しい場合があり、ストレスを体調不良として訴えることが多くなります。この状態が続くと、保護者は「本当に体調が悪いのか、それとも学校に行きたくないだけなのか」と判断に迷うことになります。

以上のように、発達障害の特性が不登校につながるケースは少なくありません。では、家庭でどのようにサポートすればよいのでしょうか?

第2章:家庭でできる不登校の子どもへの実践的なサポート

ここでは、発達障害が関係する不登校のケースにおいて、家庭で具体的にできる対応を解説します。どこにでも書かれているような「生活リズムを整える」「見守る」では解決しません。お子さんの状況に応じて、実際に成果を上げやすい方法を詳しくご紹介します。


1. 「不登校の原因」を正しく見極めるためのポイント

発達障害のあるお子さんが学校を休むようになると、多くの親御さんは「いじめがあったのか?」「先生との関係が悪いのか?」と外部要因を探しがちです。しかし、発達障害の特性による不登校は、「本人の特性」と「学校環境」のミスマッチによって生じることが多く、他者とのトラブルが直接的な原因ではない場合もあります。

チェックすべきポイント

以下のような視点から、お子さんが学校に行けなくなった背景を整理してみてください。

① 学校環境の負担が大きすぎる

  • 音や光に過敏で、教室が苦痛(蛍光灯のチカチカ、騒音、匂いが耐えられない)
  • 時間割の変更や行事ごとが極端にストレスになる(予定変更に適応しにくい)
  • 先生の指示が抽象的で、何をすればいいのかわからず怒られる

② 人間関係の困難がある

  • クラスメイトとの会話がかみ合わず、孤立しやすい
  • 友達を作ろうとすると過度に執着し、トラブルになりやすい(ASD傾向)
  • すぐに感情的になり、喧嘩をしてしまう(ADHD傾向)

③ 学習面での苦手意識が強い

  • 板書のスピードについていけず、ノートがとれない(LDの可能性)
  • 計算や漢字の暗記が極端に苦手で、授業が苦痛
  • 先生の話を聞きながら理解することが難しく、内容が頭に入らない

実践的なアクション

お子さんが「学校に行きたくない」と言ったとき、「なぜ?」と聞いても本当の理由が出てこないことがほとんどです。本人も、何が苦痛なのか正確に説明できないからです。

そこで、親御さんがすべきことは以下の2つです。

  1. 学校生活を具体的にイメージさせる質問をする
    • 「休み時間はどこで過ごしていたの?」
    • 「今日の授業で一番嫌だったのはどこ?」
    • 「先生にどんなことを言われるとつらい?」
    • 「給食の時間はどんな気持ちだった?」
  2. 記録を取る
    • 学校に行けた日と行けなかった日で、前日や朝の様子に違いはあったか?
    • 体調不良を訴える頻度やタイミングにパターンはあるか?
    • どんな話題を振ると急に機嫌が悪くなるか?

親御さんが「お子さんのストレスポイント」を客観的に把握することで、適切なサポートが見えてきます。


2. 不登校を長期化させないための家庭での接し方

発達障害を持つ子どもの不登校は、適切な対応ができないと長期化しやすい特徴があります。「とりあえず様子を見よう」と受け身の対応をすると、家での居心地が良くなりすぎて学校への戻り方がわからなくなってしまいます。

では、どのように接すればよいのでしょうか?

①「学校に行くかどうか」を議論の中心にしない

  • 「いつになったら行くの?」は禁句
  • 代わりに「今日はどんな気持ち?」と、その日の状態に目を向ける
  • 「じゃあ明日はどうする?」と1日単位で考えさせる

② 家庭での生活リズムを「学校に近い形」に整える

  • 朝は決まった時間に起こす(学校がない日でも)
  • 日中は家でダラダラさせない(寝転んでスマホを見続けるのは避ける)
  • 昼食の時間を固定する(生活リズムの軸を作る)
  • ゲームや動画のルールを決める(夜更かしを防ぐため)

③ 「家にいることが心地よすぎる状態」にしない

不登校が続くと、家が「最も安心できる場所」となり、外に出ること自体が困難になっていきます。そのため、意識的に以下のような行動を取り入れましょう。

  • 毎日外に出る機会を作る(買い物、散歩、図書館など)
  • 学校以外の人と接する機会を持つ(親戚、習い事、支援機関など)
  • 好きなことをする時間を、家の外でも作る(例えばカフェで読書など)

家の中に閉じこもる時間が長くなるほど、学校復帰のハードルが上がります。


3. 学校復帰に向けたステップの作り方

発達障害のある子どもは、いきなり「明日から普通に学校に行く」のは難しいです。そのため、段階的に学校に戻る「ステップ」を作ることが重要になります。

実践的なステップの例

  1. 学校に関する話題を増やす(「今日は○○先生から連絡があったよ」など)
  2. 学校の宿題を少しだけやる(完全に学習を止めないため)
  3. 登校時間に近い時間に起きる習慣をつける
  4. 「学校に寄る」だけの機会を作る(校門まで行く、先生に会うなど)
  5. 短時間だけ学校に行く(まずは1時間、次に半日など)

このように、一歩ずつ「学校に行くこと」への抵抗感を減らすことが大切です。

まとめ

発達障害のあるお子さんの不登校は、環境のミスマッチによるものが多く、単に「甘え」や「怠け」ではない可能性があります。
そして、発達障害だからどうしようもないのではなく、家庭での対応次第で状況を変えていくことが可能です。「何が問題なのか」を正しく把握し、適切なサポートを行うことで、学校復帰の可能性を高めることができます。焦らず、お子さんに合った方法を試してみてください。

要点具体的な行動
不登校の原因を見極めるお子さんの困りごとを把握し、「学校環境の負担」「人間関係」「学習面」のどこに問題があるのか整理する。具体的な質問をして、本音を引き出す。
「学校に行くかどうか」の議論を避ける「いつ行くの?」とプレッシャーをかけず、その日の気持ちを確認しながら、少しずつ学校の話題に触れる。
生活リズムを学校に近づける朝決まった時間に起こし、日中に活動時間を確保する。昼食の時間を一定にし、夜更かしを防ぐためにゲームや動画のルールを設定する。
家庭を「心地よすぎる場所」にしない毎日外出する習慣をつける(散歩、買い物など)。学校以外の人との交流機会を増やし、家の外で楽しい時間を持つ。
学校復帰のためのステップを作るまずは学校に関する話を増やし、次に短時間の登校を試すなど、段階的に慣れさせる。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校の子と親の「心の距離」を縮める、今日からできるコミュニケーション術

不登校の子と親の「心の距離」を縮める、今日からできるコミュニケーション術-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

不登校に直面する保護者の多くが、「どう接したらよいのかわからない」「子どもと話す機会が減ってしまった」と悩みを抱えています。
しかし、親子のコミュニケーションが途絶えると、不登校の長期化や家庭内での孤立を招くリスクが高まります。本稿では、今日から実践できる「心の距離」を縮めるコミュニケーション術について、具体的な方法とその心理的背景を詳しく解説していきます。

参考:文部科学省「不登校対策(COCOLOプラン等)について」


目次


第1章:子どもの感情を理解し、受け止めることの重要性

不登校の子どもの心理

不登校の子どもたちは、学校に行けないことへの罪悪感や、親に迷惑をかけているという後ろめたさを抱えていることが少なくありません。特に、もともと真面目で頑張り屋の子ほど、「行かなければならないのに行けない」という自己否定のループに陥りやすい傾向があります。その結果、「自分はダメな人間だ」と感じ、自信を失い、家にこもる状態が続いてしまうのです。

こうした子どもの心理状態を理解せずに、「どうして学校に行かないの?」「いつまでこのままなの?」と問い詰めると、子どもはますます追い詰められ、親との心の距離が広がってしまいます。

子どもが抱えている本当の気持ちを知るためには、まず「親が子どもの感情を受け止めること」が欠かせません。ここで大切なのは、「なぜ行かないのか」と理由を問い詰めるのではなく、「今どんな気持ちでいるのか」に焦点を当てることです。

たとえば、子どもが言葉少なげにしている場合、「最近、なんとなく気分が沈んでいる?」とそっと尋ねてみるのもよいでしょう。もし子どもがうなずいたなら、「そうなんだね。ずっとつらかったね」と共感の言葉をかけることで、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じ、少しずつ話しやすくなります。

不安を大きくしないための言語化

また、不登校の子どもたちは、自分の気持ちをうまく言語化できないことがよくあります。特に小学生の子どもは、「学校が嫌だ」とは言うものの、具体的に何が嫌なのか説明できないことが多いのです。
こうした場合、「学校のどんなことがしんどいのかな?」「教室に入るのがつらいの?」「勉強が大変なの?」と、いくつかの選択肢を示してあげると、子どもが自分の気持ちを整理しやすくなります。もし、どの質問にも答えられないようであれば、「話したくないときは、無理に話さなくてもいいからね」と伝え、無理に聞き出そうとしないことも大切です。

さらに、子どもの話を聞く際には、「否定しない・アドバイスをしない」ことを意識しましょう。例えば、子どもが「学校に行くのが怖い」と話したときに、「そんなの気の持ちようだよ」「みんな頑張っているんだから、あなたも頑張りなさい」といった言葉をかけると、子どもは「この人にはわかってもらえない」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

親としては励ましたい気持ちがあるかもしれませんが、不登校の子どもにとって、もっとも必要なのは「共感されること」です。「怖いんだね」「毎朝、学校のことを考えると胸が苦しくなるのかな」と子どもの感情に寄り添いながら話すことで、子どもは安心して気持ちを話せるようになります。

また、言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションも大切です。親の表情や態度は、子どもに大きな影響を与えます。例えば、親が険しい顔をしていたり、ため息をついたりしていると、子どもは「自分のせいで親がこんなに疲れている」と感じ、さらにプレッシャーを感じてしまいます。逆に、穏やかな表情で、落ち着いた声のトーンで話すと、子どもは安心して自分の気持ちを伝えやすくなります。親が子どもの話を聞くときには、意識的に表情を柔らかくし、「あなたのことを大切に思っているよ」という気持ちを伝えることが重要です。

このように、子どもの感情を理解し、受け止めることは、不登校から抜け出すための第一歩となります。子どもが「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じることで、親子の信頼関係が深まり、少しずつ前向きな行動へとつながっていきます。

第2章:日常生活の中でのコミュニケーションの工夫

不登校の子どもとの「心の距離」を縮めるには、特別な場面での対話だけでなく、日常生活の中での関わり方が大きな影響を与えます。多くの保護者は、子どもとしっかり話そうとして「時間を作って真剣に向き合う」ことを考えがちですが、それが逆にプレッシャーとなり、子どもが話しづらくなってしまうこともあります。不登校の子どもにとっては、「向き合う対話」よりも「自然な会話」が重要なのです。

共通の時間を増やすことの大切さ

不登校の子どもは、学校に行かないことで「親と顔を合わせるのが気まずい」と感じたり、「どうせ叱られるのではないか」と警戒心を抱いていたりすることがあります。そのため、親子の関係を改善するためには、意識的に「同じ空間で過ごす時間」を増やすことが大切です。ただし、「話すこと」を目的にするのではなく、「一緒に何かをする」ことに重点を置くのがポイントです。

例えば、一緒に食事をする時間を増やすことは有効な手段のひとつです。食卓を囲むことは、言葉を交わさなくても「家族としてのつながり」を感じられる大切な時間です。無理に会話をしようとせず、同じ空間で食事をすること自体を大事にするだけでも、子どもに安心感を与えます。また、子どもが自分から話し出したときに、さりげなく相槌を打つことで、「親は自分を受け入れてくれている」という感覚を持たせることができます。

また、子どもの好きなことに親が関心を示すのも、自然なコミュニケーションのきっかけになります。不登校の子どもは、ゲームやアニメ、動画視聴などに没頭していることが多いですが、それを「時間の無駄」などと否定せず、「どんなゲームをしているの?」「このキャラクター、どんなところが好き?」といった形で興味を持って話しかけることで、子どもは「親に認められた」と感じやすくなります。このような日常的な関わりを続けることで、親子の信頼関係が深まり、子どもが自分の気持ちを話しやすくなる土台ができます。

親からの一方的な会話にならない工夫

子どもとの会話では、「親が話す時間を短くし、子どもが話す時間を長くする」ことが理想的です。しかし、不登校の子どもは自分から話し出すことが難しいため、親が主導で会話を進める場面も出てくるでしょう。その際に気をつけるべきなのは、「問い詰めるような話し方をしない」「アドバイスを押しつけない」ことです。

例えば、「学校に行かない理由を教えて」と直接聞いてしまうと、子どもは「正しい答えを言わなければならない」と感じ、余計に口を閉ざしてしまいます。そのため、「最近、家で過ごす時間が増えたけど、何か楽しいことはあった?」といったように、答えやすい話題から入るのが効果的です。まずは子どもがリラックスして話せる環境を作り、徐々に心を開いてもらうことを意識しましょう。

また、親が「こうしたほうがいい」「こうすればうまくいく」とアドバイスをするのも避けたほうがよいでしょう。たとえば、「朝早く起きる習慣をつけたほうがいいよ」と言うと、子どもは「できていない自分はダメなんだ」と感じてしまいます。
代わりに、「朝起きるのがしんどいのは、夜なかなか眠れないのかな?」と、子どもがどう感じているかを尋ねる形にすることで、プレッシャーを与えずに話を深めることができます。

「会話がなくてもOK」という安心感を持たせる

不登校の子どもは、親と話すこと自体に緊張を感じることがあります。特に、長期間学校に行っていない場合、「親と話すと学校の話になってしまうのでは」と警戒し、できるだけ会話を避けようとする子もいます。このような場合、「話さなくてもいい」「会話がなくても大丈夫」という空気を作ることが大切です。

具体的には、子どもがリビングに来たときに、無理に話しかけるのではなく、親が普段通りに過ごしている姿を見せることが有効です。例えば、親が新聞を読んでいたり、料理をしていたりすると、子どもは「何か話さなければならない」というプレッシャーを感じずに済みます。そして、もし子どもが何か話し始めたときには、手を止めてしっかり耳を傾けることで、「親は自分の話をちゃんと聞いてくれる」と感じるようになります。

また、散歩やドライブなど、横並びの状態で過ごす時間を増やすのも良い方法です。面と向かって話すのが苦手な子どもでも、並んで歩いていると自然と会話が生まれやすくなります。「天気がいいね」「この道、前に通ったことある?」といった些細な話題から始めることで、子どもが会話に参加しやすくなるのです。

このように、日常生活の中で自然な形で関わりを持つことが、子どもとの「心の距離」を縮める上で非常に重要です。親が「会話をしなければならない」と意気込むと、子どもは逆に緊張してしまうため、「同じ空間にいること自体が大事」と考え、ゆるやかに関わっていくことが大切です。

第3章:親自身の心のケアとサポートの重要性

不登校の子どもと向き合うことは、親にとっても精神的な負担が大きいものです。多くの保護者が「このままでいいのか」「何か間違ったことをしているのではないか」と悩み続けています。また、周囲の目や親族からの心ない言葉に傷つき、自分を責めてしまうことも少なくありません。しかし、親が不安や焦りを抱えたままだと、それは必ず子どもにも伝わり、状況を悪化させる要因となってしまいます。子どものためにも、まずは親自身が心のケアを意識することが大切です。

親の不安が子どもに与える影響

不登校の子どもは、親の感情を敏感に感じ取ります。特に、小学生の子どもは親の表情や態度の変化を直感的に察知する能力が高いため、親が焦りや不安を抱えていると、それを「自分のせいだ」と受け止めてしまうことがよくあります。

例えば、親が「なんとかして学校に行かせなければ」と思っていると、その緊張感が日常の何気ないやり取りにも表れます。たとえば、「今日はどうするの?」「そろそろ学校のこと考えようか?」といった言葉が、知らず知らずのうちにプレッシャーになってしまうのです。子どもは親を悲しませたくない、怒らせたくないという思いを持っているため、「学校に行かなければ」と焦りながらも動けない状況に追い込まれ、ますます心を閉ざしてしまうことがあります。

また、親自身が落ち込んでいたり、疲れ果てていたりすると、子どもは「自分のせいで親がこんなに苦しんでいる」と感じ、余計に自己肯定感が低下してしまいます。そのため、親が心の安定を保つことは、子どもの回復にも大きく影響するのです。

親自身のメンタルケアの方法

不登校の子どもと向き合うには、親自身が心の余裕を持つことが不可欠です。とはいえ、「ストレスを溜めないようにしよう」と考えても、現実的には難しいものです。そこで、親自身が気持ちを整理し、適切にケアをするための具体的な方法を紹介します。

① 一人で抱え込まない
不登校の問題は、親一人で解決できるものではありません。親だけで何とかしようとすると、どうしても視野が狭くなり、冷静な判断ができなくなってしまいます。信頼できる専門家や、不登校の子どもを持つ親同士のコミュニティなどに相談し、「一人ではない」と感じることが重要です。

② 生活リズムを整える
子どもの不登校が続くと、親自身の生活リズムも乱れがちになります。例えば、夜遅くまでインターネットで不登校に関する情報を調べ続けたり、朝の登校時間に合わせて過度に神経を使ったりすることで、親自身が疲弊してしまうケースも少なくありません。しかし、親が健康的な生活を送ることは、子どもに安心感を与えるためにも重要です。

特に、食事や睡眠の質を意識することが大切です。親が食事をきちんと摂り、規則正しい生活をしていると、子どもも自然とそのリズムに影響を受けます。逆に、親が疲れ果てた様子でいると、子どもも「家の中が落ち着かない」と感じ、余計に部屋にこもってしまうことがあります。

③ 「今できること」に目を向ける
不登校の子どもを持つ親は、「どうすれば学校に戻れるのか」「いつになったら元の生活に戻るのか」と将来のことばかり考えてしまいがちです。しかし、先のことを考えすぎると、不安が増し、焦りが強くなります。そのため、「今できること」に意識を向けることが大切です。

例えば、「今日は子どもと一言でも会話ができた」「一緒にご飯を食べられた」といった小さな積み重ねを大切にすることで、少しずつ前向きな気持ちを持つことができます。「学校に行かせなければならない」というプレッシャーを手放し、「今の子どもを受け入れる」という視点に切り替えることで、親自身の心の負担も軽くなります。

第4章:親子の信頼関係が回復した先にあるもの

不登校からの回復には時間がかかります。その過程で大切なのは、「親子の信頼関係を回復すること」です。子どもが安心して親と話せるようになり、自分の気持ちを素直に表現できるようになれば、少しずつ前向きな行動が増えていきます。

多くの保護者が「子どもを学校に戻したい」と思うのは当然ですが、大切なのは「子どもが自分の力で一歩を踏み出せる状態を作ること」です。そのためには、「親が子どもに安心感を与えられる存在であること」が何よりも重要です。

不登校の子どもは、「自分はダメな人間だ」「どうせ理解してもらえない」と思い込んでしまうことがよくあります。しかし、親が適切に関わることで、子どもは「自分は大丈夫だ」「受け入れてもらえている」と感じることができるようになります。そうした積み重ねが、最終的には学校復帰や社会との関わりを再構築する力へとつながっていくのです。

これまで述べてきたように、不登校の子どもと親の「心の距離」を縮めるためには、焦らず、日常の中で少しずつ信頼関係を築いていくことが大切です。そして、そのためには、親自身が冷静で、穏やかな気持ちでいられることが不可欠です。「子どもが学校に行くこと」だけを目標にするのではなく、「親子の関係を良くすること」を大切にすることで、子どもは安心して前に進むことができるようになります。

最後に、不登校は決して親のせいではありません。そして、どの子どもにも必ず回復のタイミングが訪れます。親が適切に関わり、支えていくことで、そのタイミングを早めることができるのです。本稿が、少しでもその手助けになれば幸いです。

要点必要な行動
子どもの感情を理解する子どもが感じている不安やプレッシャーに寄り添い、「なぜ行かないのか」ではなく「今どんな気持ちか」を聞く。共感の言葉をかけ、安心できる環境を作る。
自然なコミュニケーションを増やす向き合う対話より、食事や散歩などを通じた「さりげない会話」を大切にする。子どもの興味に関心を持ち、一緒に過ごす時間を増やす。
親の不安を子どもに伝えない焦りやストレスを子どもに押しつけないようにし、親自身が心の余裕を持つ。生活リズムを整え、相談できる場を確保する。
今できることに目を向ける「学校に行かせる」ことにとらわれず、「今日は会話できた」「一緒に食事できた」といった小さな前進を喜び、積み重ねる。
子どもが前向きになる環境を作る無理に学校を勧めず、子どもが「安心できる場所」で自信を回復できるようサポートする。親子の信頼関係を最優先に考える。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校の子どもの進路選択ガイド:高校・大学・就職、後悔しないための道筋とは?

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

お子様が不登校の状態にあると、進路についての悩みは尽きないことと思われます。「このままでは高校に行けないのでは?」「大学進学や就職はできるのだろうか?」と、不安を感じる保護者の方も多いはずです。しかし、焦って誤った選択をすると、お子様の将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本稿では、不登校のお子様の進路選択について、後悔しないための道筋を詳しく解説します。高校・大学・就職のそれぞれの選択肢と、不登校からの回復を前提とした進路の選び方について、具体的なアプローチをお伝えします。

参考:文部科学省「不登校に関する基礎資料」


目次


1. 不登校が進路選択に与える影響

まず、不登校の経験が進路選択にどのような影響を及ぼすのかを正しく理解することが重要です。不登校の期間が長引くと、学力の遅れ、対人関係の困難、自己肯定感の低下など、さまざまな問題が生じます。これらが進路選択にどのように関わるのか、具体的に見ていきましょう。

1-1. 学力の遅れと進学への影響

不登校の間は学校の授業を受けていないため、学力が低下することが多く、特に主要科目(国語・数学・英語など)において大きな影響を受けることがあります。

たとえば、中学時代に不登校だった生徒が高校進学を考えた際、内申点の不足や学力試験のハードルが問題になります。全日制高校は一定の学力を求めるため、学習の遅れを取り戻さなければ選択肢が狭まります。また、大学進学を考える場合、高校時代の成績や受験勉強の影響を受けるため、不登校の影響が長期にわたって残る可能性があります。

1-2. 社会性の発達と就職への影響

学校に通わない期間が長くなると、対人関係の構築が難しくなることがあります。特に、集団生活に適応する力が低下し、コミュニケーションを避ける傾向が強まることが多いです。

就職の際には、学歴だけでなく「コミュニケーション能力」や「協調性」などが重視されます。不登校の影響で人間関係を築くのが苦手になっていると、就職活動や職場での適応に苦労するケースもあります。

1-3. 自己肯定感の低下と選択肢の制限

長期間の不登校経験があると、「自分は何をやってもダメだ」と感じ、自己肯定感が低下しやすくなります。すると、新しい挑戦を避ける傾向が強まり、進学や就職に対して消極的になってしまうことがあります。

進路選択は、本人が「やってみよう」と思えるかどうかが重要です。自己肯定感が低い状態では、挑戦する意欲が湧かず、結果として選択肢が狭まってしまうのです。

このように、不登校は進路選択にさまざまな影響を及ぼします。しかし、適切な支援を受けながら準備を進めることで、不登校の影響を最小限に抑え、希望する進路を目指すことが可能です。

2. 不登校の子どもが高校進学を目指す際の選択肢

不登校のお子様が高校進学を目指す場合、大きく分けて「全日制高校への進学」「通信制・定時制高校への進学」の2つの選択肢があります。それぞれの特徴と、お子様の状況に応じた適切な選び方について解説します。

2-1. 全日制高校への進学

多くの保護者の方がまず考えるのが、一般的な全日制高校への進学でしょう。不登校経験があっても、全日制高校に進学することは十分に可能です。ただし、学校選びと準備が非常に重要になります。

(1)進学のためのハードル

  • 内申点の影響
    中学時代に不登校が長引くと、成績がつけられず、内申点が低くなりがちです。多くの公立高校では内申点を重視するため、不登校期間が長かった場合、一般入試の選択肢が狭まることがあります。
  • 学力試験への対応
    受験科目の学習が十分に進んでいない場合、一般入試での合格が難しくなります。そのため、学習の遅れを取り戻すことが必要になります。
  • 面接や作文の重要性
    不登校経験がある場合、面接や作文試験で「なぜ不登校だったのか」「高校でどのように過ごしたいか」を問われることがあります。ここでしっかりとした回答ができるよう準備が必要です。

(2)不登校生を受け入れやすい高校の特徴

最近では、不登校経験者を積極的に受け入れる高校も増えてきています。こうした高校には、以下のような特徴があります。

  • 特別支援体制が整っている
    カウンセリングや個別指導が充実しており、不登校経験者が安心して通学できる環境を提供している。
  • 出席扱い制度を活用できる
    たとえば、フリースクールや家庭学習の一部を「出席」として認める制度を採用している学校もあります。
  • 学び直し支援が充実している
    学力補充のための特別クラスや、個別指導のプログラムがある。

2-2. 通信制高校・定時制高校への進学

不登校経験が長く、全日制高校への進学が難しい場合、通信制高校や定時制高校を選ぶケースもあります。

(1)通信制高校の特徴

通信制高校は、通学の負担を減らしながら高校卒業資格を取得できる仕組みになっています。

  • 自宅学習が基本:レポート提出やオンライン授業で単位を取得する形式。
  • スクーリング(登校日)が少ない:週1回程度の登校が求められる学校もあるが、全日制よりは負担が軽い。
  • 学習のペースを自分で調整可能:不登校経験がある生徒でも、無理なく学習を進められる。

ただし、通信制高校は自主学習が基本のため、自己管理能力が求められます。「学習のモチベーションが続かない」「誰かのサポートがないと勉強が進まない」といったタイプのお子様には、十分なサポート体制があるかを確認することが大切です。

(2)定時制高校の特徴

定時制高校は、夕方から夜にかけて授業が行われるスタイルの高校です。

  • 対面授業が中心:通信制と異なり、基本的には学校に通いながら授業を受ける。
  • 学力不問で入学できる学校もある:一部の公立定時制高校は、学力試験なしで入学できる。
  • 社会人や年齢の異なる生徒と学ぶ機会がある:異年齢の人と交流できるため、社会性を身につける場にもなる。

2-3. 進学のために必要な準備

お子様が高校進学を希望する場合、不登校の状況から抜け出し、学習のリズムを取り戻すことが必要不可欠です。そのために、以下のような取り組みが有効です。

  1. 学習習慣をつける
    • まずは1日30分でも良いので、学習時間を確保する。
    • 不登校期間が長い場合、基礎学力(小学校レベルからの復習)を重視する。
  2. 再登校の準備をする
    • 高校進学後の環境変化に適応できるよう、徐々に外出や他者との交流機会を増やしていく。
    • 再登校支援サービスを活用し、無理のない形で学校生活へ戻る準備を進める。
  3. 志望校の情報を集める
    • 学校説明会やオープンキャンパスに積極的に参加し、お子様に合う環境かどうかを確認する。
    • 進学後に続けられるかどうかを第一に考え、通学時間やサポート体制を重視する。

不登校の期間が長くても、高校進学は十分に可能です。ただし、進学後に再び学校に行けなくなるケースを防ぐために、「高校に入ること」ではなく「高校生活を続けること」を意識した準備が必要です。

3. 不登校からの大学進学

不登校を経験したお子様が大学進学を目指す場合、高校以上に「自分に合った学びの環境」を見極めることが重要になります。不登校経験があるからといって大学進学が難しいわけではありませんが、適切な準備をしないと、進学後に授業に出られなくなるなどの問題が生じる可能性があります。本章では、不登校経験者の大学進学の選択肢と、成功するためのポイントを解説します。


3-1. 不登校経験者が大学進学を目指す際のハードル

大学進学に向けた道のりは、不登校の期間や理由によって異なりますが、以下のような共通する課題があります。

  • 学力不足の問題
    高校時代の不登校期間が長かった場合、受験科目の学習が十分にできていない可能性があります。特に、一般入試では高校3年間の内容を問われるため、基礎学力が不足していると合格が難しくなります。
  • 受験方式の選択
    不登校経験者の場合、一般入試よりも総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試を活用したほうが合格しやすいことがあります。これらの入試では、学力試験よりも面接や志望理由書が重視されるため、不登校経験を前向きに伝えることができれば有利になる可能性があります。
  • 大学進学後の適応
    高校と異なり、大学は自主的に学ぶ場です。不登校経験があると、「講義に出席できない」「課題を計画的に進められない」などの問題に直面することがあります。そのため、進学前に学習習慣や生活リズムを整えておく必要があります。

3-2. 大学進学の選択肢

不登校を経験したお子様が大学進学を目指す場合、以下のようなルートがあります。

(1)一般入試(学力試験)

一般入試は、共通テストや各大学の個別試験を受けて合格を目指す方法です。

  • メリット:受験対策をしっかり行えば、どの大学にも挑戦できる。
  • デメリット:学力試験がメインのため、不登校期間が長く学習が遅れている場合は不利。

(2)総合型選抜(旧AO入試)

学力試験よりも「学ぶ意欲」や「将来の目標」を重視する入試方式です。

  • メリット:不登校経験を逆に強みに変えられる。面接や志望理由書で「なぜ大学で学びたいのか」をしっかり伝えることができれば合格の可能性が高まる。
  • デメリット:志望理由の記載難易度が高い。面接の準備に時間がかかる。

(3)推薦入試(学校推薦型選抜)

高校の推薦を受けて出願する入試方式。公募制推薦(学力試験あり)と指定校推薦(試験なし)の2種類がある。

  • メリット:指定校推薦であれば、基本的に合格が保証される。
  • デメリット:内申点や高校での成績が重視されるため、不登校期間が長かった場合は選択肢が限られる。

(4)オンライン大学・通信制大学

通学が難しい場合、オンラインで学位を取得できる大学を選ぶという方法もある。

  • メリット:自宅で学習できるため、不登校経験があっても無理なく進学できる。
  • デメリット:自主的に学習を進める必要があるため、自己管理能力が求められる。

3-3. 大学進学のために必要な準備

大学進学を成功させるためには、単に合格するだけでなく、入学後に継続して学べる環境を整えることが重要です。

  1. 学習習慣を取り戻す
    • まずは、毎日決まった時間に学習する習慣をつける。
    • 大学受験を考える場合、高校の基礎科目を重点的に復習する。
  2. 志望理由を明確にする
    • 特に総合型選抜を利用する場合、「なぜこの大学で学びたいのか?」を具体的に言語化できるようにする。
    • 過去の不登校経験をどのように乗り越え、今後に生かしたいかを整理する。
  3. 再登校支援を活用する
    • 大学進学後に学び続けるためには、生活リズムを整え、通学への不安を解消することが重要。
    • 一部の民間サービスや塾では、大学進学を見据えた学習サポートや生活改善のプログラムを提供している。

4. 不登校経験者の就職

高校や大学に進学せず、直接就職を目指す場合、不登校経験が社会での適応に影響を及ぼすことがあります。不登校経験者の就職活動には特有の課題があり、これを理解し適切な準備をすることが重要です。


4-1. 不登校経験者が就職で直面する課題

不登校のまま社会に出る場合、次のような課題に直面しやすくなります。

  1. 履歴書の空白期間の説明が必要
    就職活動では、履歴書や面接で「なぜ高校や大学に通わなかったのか?」を問われることが多く、不登校の期間をどのように説明するかが重要になります。正直に話すことは大切ですが、単に「学校に行けなかった」と伝えるだけでは不利になりやすいため、「その期間に何をしていたのか」「今はどう向き合っているのか」を前向きに説明する準備が必要です。
  2. 対人スキルの不足
    学校生活を通じて培われる「人と関わる経験」が不足しているため、職場での人間関係に不安を感じることが多いです。特に、上下関係のある環境に馴染めず、職場のルールやコミュニケーションの壁を感じるケースが少なくありません。
  3. 継続的に働くことが難しくなる可能性がある
    不登校が長引いた場合、「継続的に働くこと」そのものに心理的なハードルを感じることがあります。たとえば、「決まった時間に出社するのが苦痛」「仕事のストレスに耐えられない」「同僚と馴染めずに孤立する」といった問題が発生することがあります。

4-2. 不登校経験者の就職に向けたフォローアップ

上記の課題を持っていても、適切な準備をすれば就職の道は開かれています。ここでは、主な就職ルートについて詳しく説明します。

(1)職業訓練校を活用する

職業訓練校(ハロートレーニング)は、実践的なスキルを身につけながら、就職に必要な知識を学べる機関です。特に、不登校経験者にとって、専門スキルを身につけることで「学歴」ではなく「能力」で評価される道を作ることができます。

  • メリット:学歴が不問で、実践的なスキルを短期間で習得できる。
  • デメリット:受講期間中のモチベーション維持が必要。

特に、IT、介護、調理、デザイン、製造業など、手に職をつけられる分野は、不登校経験があっても成果を出しやすい仕事が多く、就職に結びつきやすい傾向があります。

(2)インターンシップやアルバイトから始める

いきなり正社員として働くことが難しい場合、アルバイトやインターンシップを通じて、仕事に慣れていく方法があります。

  • メリット:社会経験を積みながら、自分に合った仕事を見極めることができる。
  • デメリット:正社員への道が保証されるわけではないため、キャリアアップの道を考える必要がある。

コンビニや飲食店、工場、倉庫作業など、比較的ハードルの低い職種から始め、徐々に社会での適応力を高めていくのが有効です。また、アルバイト先で評価され、正社員登用されるケースもあります。

(3)就労支援サービスを利用する

不登校経験者や引きこもり状態にある若者向けの就労支援サービスを活用することで、段階的に社会復帰することが可能です。

  • メリット:専門家のサポートを受けながら、無理なく就職活動を進められる。
  • デメリット:支援機関によってサービス内容に差があるため、自分に合ったプログラムを選ぶ必要がある。

ToCoでは、再登校支援だけでなく、社会復帰に向けたサポートも行っています。たとえば、「企業訪問」や「職場体験」などを通じて、実際の職場環境を知り、仕事への不安を軽減するプログラムを提供しています。

(4)資格取得を目指す

学歴ではなく、資格を武器にすることで、就職の選択肢を広げることができます。特に、不登校経験がある方には、以下のような資格取得を目指すのがおすすめです。

  • IT系資格(ITパスポート、基本情報技術者試験など):オンラインで学べるため、自宅学習でも取得可能。
  • 医療・介護系資格(介護職員初任者研修、登録販売者など):資格を取得すれば、未経験からでも就職しやすい。
  • クリエイティブ系資格(Webデザイン、動画編集、イラスト制作など):フリーランスや在宅ワークの道も開ける。

4-3. 就職成功のために必要な準備

不登校経験者が就職を成功させるためには、単に「仕事を探す」だけでなく、社会に適応するための準備が不可欠です。

  1. 生活リズムを整える
    • 毎朝決まった時間に起きる習慣をつける。
    • 週に数回でも外出する機会を増やし、人と接することに慣れる。
  2. コミュニケーション能力を向上させる
    • 家族や信頼できる人と積極的に会話する。
    • ボランティア活動や地域のイベントに参加し、人と関わる機会を作る。
  3. 履歴書・面接対策を行う
    • 不登校期間について、前向きに説明できるようにする。
    • 模擬面接を受けて、話し方や表情に慣れる。

5. まとめ——後悔しない進路選択のために

不登校からの進路選択は、「どこに進むか」だけでなく、「その進路をどのように進んでいくか」が重要です。そのために、以下の点を意識してください。

  • 現在の状態を正しく把握し、焦らずに進路を考える
  • 短期的な目標と長期的な目標を分けて考える
  • お子様の得意なことや興味のあることを活かす
  • 進路を決めた後の準備をしっかり行う

大切なのは、「お子様がなるべく後悔しない選択をすること」です。一歩ずつ着実に前に進めるよう、環境を整え、支援を活用しながら、お子様と一緒に最適な選択を見つけていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

【不登校タイプ別診断】不登校の4つの原因と今日からできる対応策

【不登校タイプ別診断】不登校の4つの原因と今日からできる対応策-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
不登校は単なる怠けや甘えではなく、必ず何らかの要因が存在します。その要因を見極め、適切に対応することで、再び学校へ向かうきっかけを作ることができます。本稿では、不登校の子どもに見られるタイプごとに原因を整理し、それぞれに適した対応策を詳しく解説します。

参考:文部科学省「不登校対策(COCOLOプラン等)について」


目次


不登校のタイプとそれぞれの特徴

不登校の要因は子どもによって異なりますが、大きく以下の4つのタイプに分類できます。

  1. 環境適応が難しいタイプ
  2. 心のエネルギーが低下しているタイプ
  3. 家庭環境の影響を受けているタイプ
  4. 自由志向が強いタイプ
タイプ特徴必要な行動
環境適応が難しい学校の人間関係や学習の負担が原因で、登校がストレスになっている。具体的な負担を特定し、学習支援や人間関係の調整を行う。短時間の登校から始める。
心のエネルギーが低下精神的な疲労が蓄積し、学校に行く気力がなくなっている。無理に登校を促さず、生活リズムを整えながら回復を優先。学校とのつながりを維持する。
家庭環境の影響を受けている親との関係や家庭の雰囲気が不登校に影響している。親子の会話を増やし、見守るだけでなく適切な働きかけを行う。外出の習慣をつける。
自由志向が強い学校に行く必要性を感じず、家庭での生活に満足している。学校に行く意義を説明し、家庭のルールを工夫する。外での活動時間を増やす。

それぞれのタイプごとに、具体的な特徴と対応策を説明します。

1. 環境適応が難しいタイプ

このタイプの子どもは、学校という集団生活の場に適応しにくく、強いストレスを感じています。例えば、以下のような特徴が見られることが多いです。

  • 友人関係がうまくいかず、学校で孤立しがち
  • 授業についていくのが難しく、自己肯定感が低下している
  • 音や匂い、人の多さに敏感で、学校の環境に強い疲労を感じる

こうした子どもは、環境への適応に困難を抱え、その負担が蓄積することで登校が難しくなります。特に、学校内でのトラブルが明確な場合は、それが登校拒否の直接的な原因になっていることが多いです。

対応策

このタイプの子どもの場合、「なぜ学校に行けないのか」を明確にすることが最優先です。「学校が嫌」という言葉だけで終わらせず、子どもの心情に配慮しながら、何が負担になっているのかを具体的に言語化することが重要になります。

例えば、授業が理解できないことで苦しんでいる場合、学習サポートを行うことで負担を軽減できるかもしれません。一方で、人間関係が原因の場合は、学校と連携して席替えや関わる人を調整するだけでも状況が改善することがあります。

また、環境の変化に対する不安が強い子どもには、いきなり再登校を促すのではなく、少しずつ学校との接点を増やしていく方法が効果的です。保健室登校や、短時間の登校を取り入れることで、負担を軽減しながら学校生活に戻る準備ができます。

2. 心のエネルギーが低下しているタイプ

このタイプの子どもは、精神的な疲労が蓄積し、学校へ行く気力そのものがなくなっている状態です。以下のような特徴が見られます。

  • 朝起きるのが極端に難しい
  • 家でも無気力で、好きだったことにも興味を示さない
  • 「学校に行かなければ」とは思っているが、体が動かない

この場合、学校へ行かないこと自体が問題というよりも、まず「なぜ心のエネルギーが低下しているのか」を探ることが重要です。長期間のストレス、過去の挫折経験、プレッシャーによる精神的な疲労などが背景にあることが多く、焦って登校を促すことで逆効果になる場合もあります。

対応策

このタイプの子どもの場合、まずは心のエネルギーを回復させることが最優先です。ただし、単に「休ませる」だけでは、回復の目処が立たないこともあります。

重要なのは、子どもの心の状態を観察しながら、少しずつ「生活リズムを整える」「外の世界との接点を作る」といった段階を踏むことです。朝のリズムを整えるために、最初は家の中での簡単なルーティン(食事の時間を決める、軽い運動をするなど)から始めるのがよいでしょう。

また、無理のない範囲で「学校に行くことへの心理的なハードル」を下げることも重要です。例えば、担任の先生と定期的に連絡を取る、プリントや宿題を自宅で取り組むといった方法で、学校と完全に切り離された状態を作らないことが回復への近道になります。

3. 家庭環境の影響を受けているタイプ

このタイプの子どもは、家庭の状況や親との関係が不登校に影響しているケースです。決して親が悪いというわけではなく、家庭の雰囲気や親の関わり方が、子どもの学校生活に影響を与えることは珍しくありません。

  • 家庭での会話が少なく、気持ちを話せる環境がない
  • 兄弟姉妹との関係にストレスを感じている
  • 親が過度に心配し、学校に行かないことを受け入れすぎている
  • 家が快適すぎて、学校に行く必要性を感じなくなっている

このタイプの場合、不登校の直接的な原因が家庭にあるため、子ども本人の意思だけで解決することが難しい傾向があります。親の接し方を少し変えるだけで、状況が改善することもあります。

対応策

家庭環境が影響している場合、まずは「親子の関係性」を見直すことが重要です。親が良かれと思ってやっていることが、かえって子どもにとって負担になっていることもあります。

例えば、子どもが不登校になると、多くの親は「無理に学校へ行かせるのは逆効果」と考え、見守る姿勢をとります。しかし、ただ受け入れるだけでは、「このままでいいんだ」と思わせてしまい、結果的に長期化することがあります。不登校から抜け出すためには、見守るだけではなく、適切なタイミングで「学校に戻る方向へ導く」働きかけが必要です。

また、家庭内の会話が不足している場合は、まず「学校の話ではない会話」を増やしてみることが効果的です。いきなり「学校に行こう」と言われるとプレッシャーを感じますが、日常的な雑談が増えることで、子どもが心を開きやすくなります。信頼関係ができれば、登校に向けた話し合いもスムーズになります。

さらに、家の中が快適すぎることで不登校が長引いている場合は、少しずつ「外に出る習慣」を作ることも大切です。短時間でも外の空気に触れることで、生活リズムが整い、学校へ行くきっかけを作りやすくなります。

4. 自由志向が強いタイプ

このタイプの子どもは、学校に行く意味を見出せず、自分の好きなことに時間を使いたいという意識が強い傾向があります。いわゆる「学校に行く必要性を感じない」状態です。

  • 「学校に行かなくても困らない」と考えている
  • 家でゲームや動画視聴、創作活動などに没頭している
  • 規則や集団行動を窮屈に感じる

こうした子どもは、特定の強いストレスがあるわけではなく、「学校よりも家のほうが楽しい」と感じていることが多いです。しかし、このままでは社会的な経験が不足し、将来的に困難を感じる場面が増える可能性があります。

対応策

このタイプの子どもに対しては、「学校に行かなければダメ」という圧力をかけるのではなく、「学校に行くことの意味」を納得させることが重要です。

例えば、学校では勉強だけでなく、人との関わり方や集団の中での適応力を学ぶ場でもあります。将来的に好きなことを仕事にするにしても、最低限の学力や対人スキルは必要になります。そうした「学校に行くことで得られるもの」を、子どもの関心に合わせて伝えると、納得しやすくなります。

また、家庭でのルールを工夫することも効果的です。例えば、「昼間は動画やゲームを制限する」「外に出る時間を増やす」など、家の環境を少しずつ変えることで、「家にいるより学校に行くほうがいいかも」と思わせることができます。

まとめ

不登校の原因は子どもによって異なり、それぞれに合った対応が必要です。

  • 環境適応が難しい子どもには、ストレスの原因を特定し、負担を軽減する
  • 心のエネルギーが低下している子どもには、回復を優先しながら少しずつ学校との接点を作る
  • 家庭環境の影響がある場合は、親の関わり方を見直し、適切な働きかけをする
  • 自由志向が強い子どもには、学校へ行く意味を理解させ、生活習慣を整える

不登校は、適切な対応をすれば改善できるケースが多くあります。大切なのは、子どもの状況を冷静に見極め、段階的に学校へ戻るための環境を整えていくことです。焦らず、しかし現状を放置せず、一歩ずつ前に進めるように支援していきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

親ができる、子どもの学校ストレスへの対策5点

親ができる、子どもの学校ストレスへの対策5点-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの保護者の方々と向き合いながら、子どもたちの学校ストレスとその対策について考えてきました。

本稿では、学校という環境の特殊性とストレス、その危険性と親にできる5つの対策について紹介していきます。

参考:文部科学省「学校における子供の心のケア-サインを見逃さないために


目次


学校が強いる集団生活のメリット・デメリット

学校は、子どもたちが学力を身につける場であると同時に、社会性を育む場所でもあります。集団生活を通じて、子どもたちは人間関係を学び、協調性や責任感を養っていきます。しかし、その一方で、学校という環境がすべての子どもにとって適切とは限らず、集団生活のあり方が子どもにとって大きなストレスとなることもあります。

学校生活のメリット

  1. 社会性の発達
    学校は、家族以外の人と長時間過ごす最初の社会です。ここでは、友達と協力したり、意見を調整したりする経験を積むことができます。これにより、子どもは相手の気持ちを考える力や、トラブルを解決するスキルを身につけることが期待されます。
  2. ルールや規律を学ぶ
    学校には、時間割、校則、学級活動など、一定のルールが存在します。これらを守ることを通じて、子どもは社会に出たときに必要となる規律を身につけることができます。例えば、「時間を守る」「順番を待つ」「集団のルールを尊重する」といった基本的な社会的行動は、学校での経験を通じて学ぶことが多いです。
  3. 挑戦する機会が増える
    学校では、勉強以外にも運動会、合唱コンクール、修学旅行など、さまざまな活動があります。これらのイベントを通じて、子どもは努力することの大切さや、成功・失敗から学ぶ機会を得ることができます。特に、普段はあまり目立たない子でも、特定の活動で才能を発揮することがあります。
  4. 学習の機会
    もちろん、学校は学力を身につける場でもあります。授業を通じて、読み書き計算の基礎から、論理的思考や問題解決の能力まで、多くの知識を得ることができます。先生がいる環境で学ぶことで、自宅学習だけでは得られない指導を受けることができます。

学校生活のデメリット

  1. 集団のルールが個人に合わないことがある
    学校は、多くの子どもを一律に指導する場であるため、個々の特性に配慮しきれないことがあります。例えば、じっと座っているのが苦手な子や、静かな環境で集中したい子にとっては、学校のルールが過度なストレスになることがあります。また、体育や音楽のような特定の授業が苦手な子どもは、劣等感を抱きやすくなります。
  2. いじめや人間関係のストレス
    学校では、さまざまな性格や価値観を持つ子どもたちが共に生活します。その中で、いじめや仲間外れといった問題が発生することがあります。特に、クラスの固定された人間関係の中では、一度トラブルが起こると逃げ場がなくなり、ストレスが慢性的になることがあります。
  3. 学習のペースが合わないことによるストレス
    学校の授業は、平均的な進度に合わせて進められるため、理解が遅い子には難しく、逆に先に進みたい子には退屈に感じることがあります。どちらのケースでも、学校での学びが苦痛になり、勉強に対するモチベーションが低下する要因となります。
  4. 教師の対応の影響
    教師の指導方法が子どもに合わない場合、それが大きなストレスになることがあります。例えば、厳しい指導を受けることで萎縮してしまったり、逆に放任されることで不安を抱えたりすることもあります。また、教師の価値観が強く押し付けられる環境では、個性が尊重されにくくなります。
  5. 家庭と学校の価値観のギャップ
    家庭で育てられた価値観と、学校の方針が大きく異なる場合、子どもは戸惑いを感じることがあります。例えば、「家では自由に意見を言えるのに、学校では先生の言うことが絶対」という環境では、自己表現の仕方が分からなくなることがあります。

集団生活が合わない子どもの特徴

これらのメリット・デメリットを考えると、学校の集団生活がすべての子どもに適しているわけではないことが分かります。実際、集団生活が苦手な子どもにとっては、学校のルールや人間関係が大きな負担となり、不登校につながることもあります。

特に、以下のようなタイプの子どもは、学校生活のデメリットの影響を受けやすい傾向があります。

  • 繊細で感受性が強い子
  • 一人でいることを好む子
  • 競争や比較を苦手とする子
  • 自分のペースで学びたい子
  • ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

このような子どもにとって、学校の集団生活はストレスの原因となり、不登校や引きこもりにつながるリスクが高くなります。そのため、親としては、学校が子どもに与えている影響を慎重に観察し、子どもにとっての適切な環境を考える必要があります。


学校によるストレスの種類

学校は、子どもたちにとって学びや成長の場であると同時に、さまざまなストレスの要因を含む環境でもあります。すべての子どもが同じように学校を楽しめるわけではなく、学校での生活が大きな負担となるケースも少なくありません。本章では、学校において子どもが感じるストレスの種類について詳しく解説し、その影響について考えていきます。

1. 学業に関するストレス

① 授業の進度や内容の難易度の不一致
学校の授業は、多くの子どもにとって適度な難易度になるよう設計されていますが、すべての子どもにとって「ちょうどいい」わけではありません。授業の進度が速すぎて理解が追いつかない子どもは、学習に対する自信を失い、自己肯定感が低下していきます。一方で、授業が簡単すぎる子どもは退屈を感じ、学習意欲を失うことがあります。どちらのケースでも、学校が「学ぶ楽しさを感じる場」ではなく、「苦痛を感じる場」になってしまう可能性があります。

② テストや成績のプレッシャー
小学校高学年になると、成績が本格的に評価されるようになり、中学では定期テストの結果が内申点にも影響します。このように、学業に対するプレッシャーが年々増していくことで、子どもは「良い成績を取らなければならない」という重圧を感じるようになります。特に、完璧主義傾向が強い子や親の期待を強く感じる子は、テスト前に極度の不安を抱えたり、失敗を恐れて挑戦を避けるようになったりすることがあります。

2. 人間関係によるストレス

① いじめや対人トラブル
学校における最大のストレス要因の一つが、いじめや友人関係のトラブルです。いじめには、暴力や暴言といった目に見えるものだけでなく、無視や仲間外れといった陰湿なものもあります。こうした問題が発生すると、子どもは学校に行くこと自体が苦痛になり、不登校につながることがあります。

② 先生との相性
学校生活において、子どもが最も長く接する大人は担任の先生です。教師の態度や指導方法が、子どもの心理に大きな影響を与えることは言うまでもありません。厳しすぎる指導や理不尽な叱責、逆に放任されすぎることで不安を感じることもあります。また、先生が特定の生徒をひいきしているように見えると、子どもは不公平感を抱き、学校への不信感を強めることもあります。

3. 学校のルールや環境によるストレス

① 校則や規律の厳しさ
学校では、一定の秩序を維持するためにルールが設けられています。しかし、そのルールが厳しすぎたり、合理性に欠けたりする場合、子どもにとって強いストレスになります。たとえば、「前髪の長さが決められている」「靴下の色に指定がある」「休み時間の過ごし方が制限されている」といった校則に対し、納得できない子どももいます。「なぜ守らなければならないのか」が理解できないルールを押し付けられることで、学校に対する不信感や反発心が生じることがあります。

② 集団行動の負担
日本の学校では、「みんなで一緒に行動すること」が重視される傾向があります。たとえば、給食当番、清掃当番、班行動など、さまざまな場面で協調性が求められます。しかし、一人で静かに過ごすことを好む子や、自分のペースで動きたい子にとっては、これが大きなストレスになることがあります。「集団のペースに合わせなければならない」という圧力が、学校生活そのものを苦痛に感じさせる原因になり得ます。

4. 身体的ストレス

① 朝の早起きと生活リズムの強制
学校の始業時間は多くの場合8時台であり、これに間に合うためには早起きをしなければなりません。特に低学年のうちは、まだ生活リズムが安定していない子どもも多く、朝早く起きること自体がストレスになっていることがあります。さらに、部活動や宿題によって夜遅くまで活動を強いられると、慢性的な睡眠不足につながり、心身の不調を引き起こす原因にもなります。

② 長時間の座学と運動不足
学校では1日に5~6時間、座って授業を受けることが求められます。しかし、じっと座っていることが苦手な子どもにとっては、これが大きな負担になります。また、最近は休み時間に自由に遊べる時間が減っている学校もあり、身体を動かす機会が少なくなることでストレスが蓄積することもあります。

5. 家庭とのギャップによるストレス

学校と家庭の考え方や価値観が異なると、子どもは「どちらに合わせればいいのか」と悩むことがあります。例えば、家では「自分の好きなことを大切にしていい」と言われていても、学校では「みんなと同じように行動しなさい」と求められることがあります。こうしたギャップが大きくなると、子どもはアイデンティティの揺らぎを感じることがあり、精神的な負担となることがあります。

このように学校にはさまざまなストレスの要因が存在します。もちろん、すべての子どもがこれらのストレスを感じるわけではありませんが、特定の要因が強く影響すると不登校のきっかけとなることがあります。


学校ストレスを強く感じてしまう子どもの特徴

学校生活は多くの子どもにとって、学びや成長の場となる一方で、強いストレスを感じる場にもなり得ます。しかし、すべての子どもが同じようにストレスを感じるわけではありません。特に学校の環境や人間関係が負担になりやすいタイプの子どもは、不登校のリスクが高くなることがあります。本章では、学校ストレスを強く感じやすい子どもの特徴を詳しく解説し、それぞれの子どもがどのような状況で困難を抱えやすいのかを考えていきます。

1. 繊細で感受性が強い子

① 小さなことでも深く考え込んでしまう
繊細な子どもは、周囲の状況や他人の言葉に対する感受性が高いため、些細な出来事でも心に大きな影響を受けます。たとえば、先生のちょっとした注意や、友達の何気ない一言でも、「自分は嫌われているのではないか」「もう学校に行きたくない」と感じてしまうことがあります。

② 周囲の期待に敏感
「親や先生の期待に応えなければ」と強く感じる子どもほど、学校でのプレッシャーを抱え込みやすくなります。完璧主義の傾向がある場合、「うまくやらなければならない」という気持ちが強まり、失敗を過度に恐れるようになります。その結果、学校生活がストレスの源になり、不安が高まることがあります。

2. 一人でいることを好む子

① 集団行動が負担になる
学校では、授業や給食、清掃活動など、多くの時間を集団で過ごすことが求められます。しかし、一人でいることを好む子どもにとっては、これが大きな負担になります。特に、常にグループで行動しなければならない環境では、自分のペースを保つことが難しくなり、ストレスを感じやすくなります。

② 友達付き合いが苦手
学校生活では、友達関係の維持が重要視される場面が多くあります。しかし、人と話すことが苦手だったり、特定の友人がいなかったりする子どもは、「友達を作らなければならない」というプレッシャーを感じやすくなります。その結果、無理に人付き合いをしようとして疲れたり、孤独感を深めたりすることがあります。

3. 競争や比較を苦手とする子

① テストや成績のプレッシャーに弱い
学校では、定期的にテストが行われ、成績によって評価が決まります。競争心が強い子どもにとっては、これはモチベーションになることもありますが、競争や比較を苦手とする子どもにとっては、強いストレス要因になります。特に、努力しても成績が伸びにくいと感じると、「どうせやっても無駄だ」と考えてしまい、意欲を失うことがあります。

② 体育や発表など、人前に出ることへの抵抗感
学校では、体育の授業や学芸会、発表の場面など、多くの人の前で何かをする機会が頻繁にあります。こうした場面で「失敗したらどうしよう」と不安を感じる子どもは、学校に行くこと自体が怖くなり、不登校の引き金になることがあります。

4. 自分のペースで学びたい子

① 授業の進め方が合わない
学校の授業は、多くの子どもが理解できるペースで進められますが、それがすべての子どもに合っているわけではありません。学ぶスピードが速い子にとっては「退屈」、遅い子にとっては「ついていけない」と感じることがあり、それがストレスの原因になります。

② 興味のあることに集中したい
自分の興味のあることに没頭したい子どもにとっては、学校の授業が「やりたくないことをやらされる時間」と感じられることがあります。その結果、学校生活への意欲が低下し、不登校につながることがあります。

5. ルールに強く縛られることに抵抗を感じる子

① 学校の規則に納得できない
学校のルールに対して、「なぜ守らなければならないのか?」と疑問を抱く子どももいます。特に、自分の考えをしっかり持っている子は、納得できない規則に従うことをストレスに感じることがあります。たとえば、「髪型の自由がない」「服装の細かい決まりがある」といった校則が、自分の価値観と合わないと感じることで、学校への不満が蓄積していくことがあります。

② 自由に考えることが制限されることへの違和感
自分の意見を持ち、独自の考えを大切にしたい子どもにとって、学校の「先生の指示に従うことが基本」というルールは窮屈に感じられることがあります。その結果、「自分の考えを抑えなければならない環境」に強いストレスを感じ、学校生活が苦痛になることがあります。

以上のように、学校ストレスを強く感じる子どもには、それぞれ異なる特性があります。しかし、共通しているのは、「その子にとって学校が合わない要因がある」ということです。学校に適応しにくい子どもを「弱い」とか「甘えている」と考えるのではなく、「どの部分で負担を感じているのか?」を理解することが大切です。


親ができる対策①「情報を得る」

学校のストレスが子どもに大きな影響を与えていると感じたとき、親として何ができるでしょうか。不登校や学校ストレスへの対応でまず重要なのは、「正しい情報を得る」ことです。

親が学校の仕組みや不登校の現状を知らないまま、感情的に対応してしまうと、かえって子どもの負担を増やしてしまうことがあります。そこで、本章では、親が知っておくべき情報と、その活用方法について詳しく説明していきます。

1. 不登校に関する正しい知識を持つ

不登校についての理解がないまま、「学校に行かないと将来困る」「今のうちに立ち直らせないとダメになる」と考えてしまうと、親自身が焦り、不適切な対応を取ってしまうことがあります。しかし、近年の研究やデータから、不登校の子どもすべてが将来困るわけではないことが分かっています。

① 不登校の子どもの数は増えている
文部科学省の調査によると、不登校の小中学生の数は年々増加し、35万人を超えています。特にコロナ禍以降、その傾向は加速しており、学校の環境が合わない子どもが増えていることが分かります。このような状況の中で、不登校は決して珍しいことではなく、特定の家庭や子どもに限った問題ではないことを理解することが重要です。

② 不登校の原因は多様
「学校に行きたくない」という気持ちの背景には、さまざまな要因が関係しています。いじめや学業のプレッシャー、人間関係のストレスなど、子どもによって理由は異なります。そのため、「なぜ学校に行けないのか」を単純に判断せず、多角的に考えることが大切です。

③ 「不登校=逃げ」ではない
「学校に行かないことは逃げだ」と考える親は少なくありません。しかし、子ども自身が「学校に行きたいのに行けない」状態であることが多く、その背景には強いストレスや心理的な負担が隠れています。大切なのは、「どうすれば子どもが安心して学校に行けるようになるのか」を考えることであり、単に「無理やり行かせること」ではないのです。

2. 学校の制度や支援について知る

不登校や学校ストレスの問題を考える際には、学校がどのような対応を取れるのかを知ることも重要です。

① 学校は不登校の子どもへの対応を求められている
文部科学省は、不登校の子どもに対して適切な支援を行うよう、各学校に指示を出しています。学校側が「不登校は家庭の責任」と考える時代は終わりつつあり、適切な支援策を講じることが求められています。そのため、学校と建設的に話し合いながら、子どもにとって最善の方法を探ることが可能です。

② 学校外のサポート機関を活用する
不登校支援を行う機関やサービスは増えています。たとえば、ToCo(トーコ)株式会社では、子どもがスムーズに再登校できるようサポートを提供しています。こうした専門的な支援を受けることで、親だけで抱え込むのではなく、適切な対応を取ることができます。

3. 情報を得た上で、親ができること

① 子どもの状態を把握する
情報を集めたら、まずは自分の子どもがどのような状況にあるのかを客観的に分析することが重要です。学校でのストレスの原因は何か、どのようなことに悩んでいるのかを理解することで、適切な対応が見えてきます。

② 学校との連携を考える
情報をもとに、学校とどのように話し合うかを考えます。いきなり「学校を休ませます」と伝えるのではなく、「どのような対応が可能か」を相談することで、子どもにとって最適な環境を整えることができます。

③ 再登校に向けた準備をする
不登校が長引くと、再登校へのハードルが高くなります。そのため、子どもが学校に戻る際に負担を感じにくい方法を考え、必要であれば専門的な支援を活用することも検討します。ToCoでは、再登校をスムーズに進めるためのプログラムを提供しており、親だけでは難しい対応もサポートしています。

「情報を得ること」は、不登校対応の第一歩です。感情的にならず、正しい知識をもとに冷静に対応することで、子どもにとって最適な方法を見つけることができます。

親ができる対策②「相談相手になる」

不登校や学校ストレスに直面した子どもにとって、親の存在は非常に大きな意味を持ちます。特に、子どもが自分の気持ちを打ち明けられる「相談相手」になれるかどうかは、その後の対応に大きな影響を与えます。

多くの親御さんが、「うちの子は何も話してくれない」「何を考えているのか分からない」と悩まれます。しかし、それは子どもが何も考えていないのではなく、「どう話せばいいのか分からない」「話しても理解してもらえないのではないか」と思っている場合が多いのです。本章では、親が相談相手として信頼されるためにできることを具体的に解説していきます。

1. 子どもが相談しにくい理由を知る

子どもが学校での悩みを親に話せない理由はいくつかあります。

①「心配をかけたくない」と思っている
子どもは、親に心配をかけたくないという気持ちを強く持っています。特に、普段から「頑張りなさい」「学校は行くものだ」と言われている場合、「学校がつらい」と話すことで親をがっかりさせてしまうのではないかと不安になります。そのため、親の前では何もなかったように振る舞うことがあります。

②「否定されるのではないか」と不安を抱えている
「甘えているだけじゃないの?」「みんな頑張っているんだから」など、子どもの気持ちを否定するような言葉をかけられた経験があると、それ以降、話しにくくなってしまいます。特に、子ども自身が「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいる場合、親からの否定的な言葉はさらに追い詰めることになります。

③「どう話せばいいか分からない」と感じている
子ども自身も、自分の気持ちを整理できていないことがあります。「なぜ学校に行きたくないのか分からない」「言葉にすると余計につらくなる」と思っている場合、あえて話さない選択をすることがあります。

これらの背景を理解したうえで、親が「安心して話せる環境」を作ることが重要です。

2. 相談しやすい雰囲気を作るために

子どもが自然に相談できる環境を整えるには、次のポイントを意識することが大切です。

① すぐに解決しようとしない
親としては、子どもの悩みを聞いたら「どうすれば解決できるか」を考えてしまいがちです。しかし、子どもが求めているのは「アドバイス」ではなく、「ただ話を聞いてもらうこと」である場合が多いです。特に、初めて悩みを打ち明けるときには、親が「どうすればいいか」よりも「そうだったんだね」「大変だったね」と共感する姿勢を示すことが大切です。

② 子どものペースに合わせる
無理に「話しなさい」と迫ると、かえって口を閉ざしてしまうことがあります。子どもが話したいときに話せるよう、自然な雰囲気を作ることが大切です。例えば、「今日はどうだった?」と軽く聞くだけにしたり、食事中や散歩中などリラックスできる環境で会話をするのも効果的です。

③ 親自身の気持ちを伝える
「あなたのことを心配しているよ」「何があっても味方だからね」と伝えることで、子どもは安心感を持つことができます。ただし、「学校に行かないと将来大変になるよ」「早く行ってほしいと思っているよ」といったプレッシャーを感じさせる言葉は逆効果になるため注意が必要です。

3. 相談しやすい親になるためにできること

① 普段から子どもの話に耳を傾ける
学校のことに限らず、普段から子どもの話をしっかり聞く姿勢を持つことが大切です。「学校どうだった?」と聞いても「別に」としか返ってこない場合でも、子どもが好きなこと(ゲームや趣味など)についての話を聞くことで、会話のきっかけを作ることができます。

② 否定せずに受け止める
「それはおかしいよ」「そんなことで悩んでいるの?」といった否定的な言葉は、子どもの気持ちを閉ざしてしまいます。子どもの話がどんな内容であっても、まずは「そうなんだね」と受け止めることを意識しましょう。

③ 親も相談する姿を見せる
子どもは、「相談することは恥ずかしいこと」「弱い人がすること」と思っている場合があります。親自身が「今日はこんなことがあってちょっと落ち込んじゃったんだ」「お母さんもこういうことで悩むことがあるよ」と話すことで、相談することは自然なことだと伝えることができます。

「相談相手になる」ということは、すぐに解決策を提示することではなく、「子どもが安心して話せる存在になる」ということです。子どもが悩みを打ち明けやすい環境を作ることで、少しずつ前向きな変化が生まれます。

親ができる対策③「初動を大切にする」

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親がどのように対応するかによって、その後の展開が大きく変わります。最初の対応次第で、不登校が長期化するか、それとも適切なサポートを受けながら再登校につなげられるかが決まることもあります。

この章では、親が初めにどのように対応すべきか、また避けるべき対応について詳しく解説していきます。

1. 最初の対応が不登校の長期化を左右する

「学校に行きたくない」と子どもが言い出したとき、親は戸惑いや不安を感じるものです。しかし、最初の対応を間違えると、子どもはさらに追い詰められ、不登校が長期化する可能性が高まります。

① 感情的にならないことが最も重要
親としては、「どうして急に?」「甘えているだけでは?」と焦りを感じるかもしれません。しかし、そこで感情的になってしまうと、子どもは「話しても分かってもらえない」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

② すぐに「学校に行きなさい」と言わない
「行きたくない」と言った子どもに対して、すぐに「そんなこと言わずに行きなさい」と返してしまうと、「親には分かってもらえない」と思い込み、以降本当の気持ちを話さなくなってしまいます。また、学校のストレスが強い状態で無理に登校させると、かえって状況が悪化することもあります。

③ まずは話を聞く姿勢を持つ
最初にやるべきことは、「なぜ学校に行きたくないのか」を聞くことです。ただし、無理に理由を聞き出そうとすると、かえって子どもは話したがらなくなるため、落ち着いた雰囲気で「何かあったの?」と優しく問いかけることが大切です。

2. 子どもの気持ちを尊重する姿勢を持つ

不登校の子どもは、「学校に行けない自分はダメだ」と思い込んでいることが多いです。親が「どうして行けないの?」「みんな頑張っているのに」と責めるような言葉をかけると、子どもの自己肯定感はさらに低下し、学校への恐怖心が強まってしまいます。

① 「学校に行けないのは弱いことではない」と伝える
「今は少し休んでもいいんだよ」と安心させる言葉をかけることで、子どもは落ち着きを取り戻します。不登校の原因を探る前に、まずは「大丈夫だよ」と受け止めることが重要です。

② 「休むこと=悪いこと」ではないことを理解する
「1日休んだからといって、大きな問題になるわけではない」ということを親が理解し、それを子どもにも伝えることが大切です。無理に登校を促すよりも、「今日はゆっくり考えよう」と話すことで、子どもは安心します。

3. 避けるべき対応

初動対応で避けるべき対応について、具体的に説明します。

①「甘え」「怠け」と決めつける
「ただの甘えでしょ?」「みんなも同じように頑張っているよ」といった言葉は、子どもを追い詰める原因になります。子どもにとっては、学校のストレスは親が想像する以上に大きなものです。決して「怠け」ではなく、「行きたくても行けない」状態であることを理解しましょう。

②「昔はこうだった」と比較する
「お母さんの時代は、こんなことで休まなかった」など、過去の話を持ち出すのは逆効果です。子どもは「自分が弱いせいだ」と思い込み、さらにプレッシャーを感じてしまいます。

③ 無理に理由を聞き出そうとする
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、すぐに「どうして?」と詰問すると、かえって話しにくくなります。「話せる範囲でいいよ」と伝え、焦らず待つことが大切です。

4. 初動の対応が落ち着いた後の進め方

最初の対応で子どもが安心したら、次のステップとして、学校への対応や今後の方針を考えます。

① 学校との連絡をどうするか決める
欠席する場合は、学校に連絡が必要になります。子どもが「親に言ってほしい」と望む場合は、親が学校と連絡を取るようにしましょう。「今日は体調が悪いのでお休みします」と伝えるだけでも大丈夫です。

② 無理のない範囲で子どもと話し合う
ある程度落ち着いたら、「これからどうしていくか」を子どもと話し合います。ただし、「いつまでに復帰するか」を決める必要はありません。まずは、「今どう感じているか」を聞くことが大切です。

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、親の対応次第でその後の展開が大きく変わります。感情的にならず、まずは子どもの気持ちを尊重しながら話を聞くことが大切です。最初の対応を間違えなければ、子どもは「話してもいいんだ」と安心し、解決への道筋が見えてきます。

親ができる対策④「学校との適切な交渉」

不登校や学校ストレスに直面したとき、親がどのように学校と関わるかは、子どもの状況を改善するうえで重要なポイントになります。しかし、学校と適切に交渉することは、決して簡単ではありません。「先生にどう伝えればいいのか分からない」「相談しても真剣に取り合ってもらえない」と感じる保護者も少なくありません。

本章では、学校と適切に交渉し、子どもにとってより良い環境を整えるための具体的な方法について解説します。

1. 学校と話し合う目的を明確にする

学校との交渉において最も大切なのは、「何を目的とするか」を明確にすることです。漠然と「子どもが学校に行きたがらない」と伝えるのではなく、「どうすれば子どもが安心して通えるようになるか」を話し合う姿勢が求められます。

①「学校に復帰させること」が目的ではない
学校との話し合いの場では、「すぐに登校を再開させる」ことを目標にしないことが大切です。学校側も、「とにかく学校に戻すこと」が目的になってしまうと、子どもにとって逆効果になる可能性があります。大切なのは、「学校への不安を減らし、少しずつ適応できる環境を整えること」です。

② 具体的な課題を整理する
学校と交渉する前に、親として「子どもが何に困っているのか」「どのようなサポートが必要なのか」を整理しておくことが重要です。たとえば、

  • 授業の進度についていけない
  • 特定のクラスメートとの関係が負担になっている
  • 先生の対応が厳しく、萎縮してしまう
  • 朝の登校が特にストレスになっている

など、具体的に課題を把握することで、学校に対して適切な対応を求めやすくなります。

2. 学校との話し合いの進め方

学校と適切に話し合うためには、いくつかのポイントがあります。

①「敵対的な態度」は避ける
「学校が悪い」「先生の対応が間違っている」といった敵対的な姿勢で話を始めると、学校側も防御的になり、建設的な話し合いが難しくなります。あくまで「協力して子どものためにできることを考える」というスタンスで臨むことが大切です。

② 担任だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも話す
担任の先生だけに相談しても、状況が改善しない場合があります。そのような場合は、スクールカウンセラー、学年主任、教頭や校長といった他のスタッフとも話し合うことを検討しましょう。特にスクールカウンセラーは、不登校の子どもへの支援経験があることが多く、親身になって相談に乗ってくれるケースが多いです。

③ 学校側が対応可能な範囲を理解する
学校には学校の事情があり、すべての要求を受け入れることは難しい場合があります。そのため、あらかじめ「どこまで対応が可能なのか」を確認しつつ、無理のない範囲で調整することが大切です。

3. 学校に伝えるべき具体的な要望

学校との話し合いでは、以下のような要望を伝えることが考えられます。

① 登校のハードルを下げる
「いきなりフルタイムで登校するのは難しい」という場合、

  • 午前中だけ登校する
  • 保健室登校を認めてもらう
  • 放課後に先生と個別に面談する

といった段階的な対応を提案するのも一つの方法です。

② 学習のサポートを求める
学校を休んでいる間、学習の遅れを取り戻すために、

  • 宿題の量を調整してもらう
  • プリントや授業内容を共有してもらう
  • 家庭学習の方法についてアドバイスをもらう

といった支援を求めることができます。

③ 人間関係に関する配慮
もしクラス内の人間関係がストレスの原因になっている場合、

  • クラス替えを検討してもらう
  • 座席の配置を調整してもらう
  • グループワークの組み合わせに配慮してもらう

といった対応を相談することが可能です。

4. 学校に期待しすぎないことも大切

学校と話し合いを重ねても、必ずしも希望通りの対応をしてもらえるとは限りません。学校の体制や先生の考え方によっては、「これ以上の対応は難しい」と言われることもあります。その場合、学校だけに頼るのではなく、他の選択肢を検討することも必要です。

① 再登校支援の専門機関を活用する
ToCo(トーコ)株式会社では、学校と家庭の間に立ち、子どもの再登校をサポートするプログラムを提供しています。学校が十分な対応をしてくれない場合でも、専門的な支援を受けることで、親子の負担を軽減しながら再登校を目指すことができます。

② 学校以外の学びの場を考える
一時的に学校を休んでいる間も、学びの機会を失わないよう、オンライン学習や家庭学習を活用することができます。「勉強が遅れるのが不安」という子どもに対して、「自分のペースで学習できる場」を用意することで、安心感を持たせることができます。

学校との適切な交渉は、子どもが安心して学校に戻るための重要なステップです。感情的にならず、具体的な課題を整理し、協力的な姿勢で話し合うことが大切です。学校側が十分な対応をしてくれない場合は、専門機関のサポートを活用することで、より適切な支援を受けることが可能です。

親ができる対策⑤「家庭を安全地帯にする」

学校がストレスの原因となっている子どもにとって、家庭がどのような環境であるかは非常に重要です。不登校や学校ストレスを抱える子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であるかどうかが、その後の回復や再登校に大きく影響します。逆に、家庭がプレッシャーの場になってしまうと、子どもはますます心を閉ざしてしまうことになります。

1. 家庭が「安全地帯」であることの重要性

不登校の子どもにとって、学校はストレスの源となっています。そのため、学校以外に安心して過ごせる場所が必要になります。それが家庭です。

① 「逃げ場」があることで安心できる
学校で強いストレスを感じているとき、家庭まで居心地の悪い場所になってしまうと、子どもは心を休めることができません。「学校では頑張らなきゃいけない、家でも怒られる」となると、ますます追い詰められます。しかし、「家では安心していられる」と思えるだけで、心の負担が軽減されることがあります。

② 自己肯定感を回復する場になる
学校での人間関係や学業のプレッシャーによって、自己肯定感が低下している子どもは多いです。家庭で「ありのままの自分を受け入れてもらえる」と感じることで、自己肯定感を回復し、次の一歩を踏み出すエネルギーを蓄えることができます。

③ 安心できる環境が再登校の第一歩になる
不登校の子どもが再登校するためには、まず「外の世界は怖くない」と感じることが大切です。そのためには、家庭の中でまず安心感を得ることが必要になります。家庭がプレッシャーの場ではなく、リラックスできる場であることが、学校復帰への第一歩になります。

2. 子どもが安心できる家庭環境を作るために

では、具体的にどのように家庭を「安全地帯」にすればよいのでしょうか?

① 「学校に行かないこと」を責めない
子どもが学校に行けない状態のときに、「どうして行かないの?」「いつになったら行くの?」と責めることは逆効果です。不登校の子どもは、「行かなきゃいけない」と頭では分かっていても、心と体が動かない状態になっています。そこにプレッシャーをかけると、ますます状況が悪化してしまいます。

② ルールを押し付けすぎない
「何時に起きなさい」「勉強しなさい」など、過度なルールを設けることも、子どもにとってはストレスになります。もちろん、生活リズムを整えることは大切ですが、最初から厳しく管理しすぎると、家庭でも居心地が悪くなってしまいます。まずは、子どもがリラックスできる環境を優先し、少しずつ生活リズムを整えていくことが大切です。

③ 子どもの好きなことを尊重する
不登校の子どもは、自己肯定感が低くなっていることが多いため、「好きなこと」や「得意なこと」に集中できる時間を作ることが重要です。たとえば、ゲームや読書、絵を描くことなど、何かに没頭できる時間があることで、少しずつ「自分にはできることがある」と感じることができます。

④ 会話の機会を増やす
子どもが安心して話せる環境を作るために、親子の会話を増やすことも大切です。ただし、「学校の話をしなさい」と無理に話題を限定するのではなく、日常的なことや子どもの興味のあることについて話すことで、自然とコミュニケーションを取ることができます。

3. 親自身の心のケアも重要

親が「家庭を安全地帯にしよう」と思っていても、親自身が疲れてしまっていては、子どもにとって安心できる環境を作ることは難しくなります。そのため、親自身の心のケアも重要です。

① 一人で抱え込まない
不登校の問題は、親だけで解決しようとすると大きな負担になります。学校や専門機関に相談しながら、親自身の気持ちを整理することも大切です。

② 完璧を求めすぎない
「ちゃんとサポートしなければ」と思いすぎると、親自身がプレッシャーを感じてしまいます。親も「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

③ 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門家に相談したりすることで、親自身の不安を軽減することができます。たとえば、ToCo(トーコ)では、親のサポートも含めた支援を行っており、不登校の子どもを持つ親がどのように対応すればよいかを具体的にアドバイスしています。

不登校の子どもにとって、家庭が「安心できる場所」であることは非常に重要です。家庭が安全地帯であれば、子どもは少しずつ自己肯定感を取り戻し、再登校に向けた準備を進めることができます。

親が無理をしすぎず、子どもの気持ちを尊重しながらサポートすることで、子どもは安心感を得て、自分のペースで前に進むことができます。


まとめ

ここまで、学校ストレスに対する親の対応として、具体的な5つの対策を詳しく解説してきました。最後に、それぞれのポイントを振り返りながら、改めて「親ができること」について整理していきます。

学校ストレスの正体を知ることが大切

学校は、子どもにとって学びの場であると同時に、大きなストレスの要因にもなり得ます。学校によるストレスには、学業のプレッシャー、人間関係のトラブル、学校のルールへの適応、身体的な負担など、さまざまなものがあります。特に、繊細で感受性が強い子、一人でいることを好む子、競争や比較を苦手とする子にとって、学校の環境は大きな負担になりやすいことが分かっています。

このような子どもの特性を理解し、**「なぜ学校がつらいのか?」**を冷静に分析することが、適切な対応の第一歩になります。

親ができる5つの対策のポイント

情報を得る
不登校や学校ストレスについて、正しい知識を持つことが大切です。「不登校=悪いこと」「学校に行かないと将来困る」といった思い込みを捨て、冷静に現状を把握しましょう。学校の制度や支援機関の活用方法についても知識を得ることで、より適切な対応が可能になります。

相談相手になる
子どもが悩みを抱えているとき、親が最も信頼できる相談相手になることが重要です。子どもが安心して話せる環境を作り、無理に解決策を押し付けるのではなく、「話を聞くこと」に徹することが大切です。

初動を大切にする
「学校に行きたくない」と子どもが言い出したときの対応が、その後の展開を左右します。焦らず、感情的にならず、「まずは話を聞く」ことを最優先にしましょう。「とりあえず今日は休もう」と伝え、安心感を与えることが大切です。

学校との適切な交渉
学校と話し合う際には、感情的にならず、「子どもが安心して学校に戻れる環境を整えるために、どのような対応が可能か」を具体的に相談することが重要です。担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーや管理職とも連携し、無理のない形で調整を進めていきましょう。

家庭を安全地帯にする
学校がストレスの原因になっている場合、家庭が「安心できる場所」であることが重要です。「学校に行けないこと」を責めず、子どもの好きなことを尊重しながら、少しずつ自己肯定感を回復させていくことが大切です。

再登校のために親が意識すべきこと

不登校が長引くと、子ども自身が「学校に戻るのが怖い」と感じるようになり、再登校のハードルが高くなってしまいます。そのため、早い段階から「どうすればスムーズに学校に戻れるか」を考えておくことが重要です。

学校との連携を続ける
学校と連携しながら、子どもが少しずつ学校に戻るための環境を整えていくことも大切です。いきなり通常登校を目指すのではなく、保健室登校や短時間登校など、段階的に慣らしていく方法を検討しましょう。

子どものペースを尊重する
「いつまでに学校に戻るか」を決めるのではなく、「子どもが安心して学校に行けるようになること」を目標にしましょう。無理に急がせるのではなく、子ども自身が「行ってみようかな」と思えるタイミングを見極めることが重要です。

親自身も無理をしないことが大切

不登校の問題に向き合うことは、親にとっても大きな負担になります。「なんとかしなければ」と焦るあまり、親自身がストレスを抱えてしまうことも少なくありません。しかし、親が疲れ切ってしまっては、子どもにとってもよい影響を与えません。

① 相談できる相手を持つ
夫婦間で話し合ったり、専門機関に相談したりすることで、親自身の気持ちを整理することができます。一人で抱え込まず、サポートを受けながら対応していきましょう。

②「完璧な対応」を求めない
親としては、「正しい対応をしなければ」と思いがちですが、完璧な対応をすることは誰にもできません。「できる範囲でやればいい」と考え、無理をしすぎないことが大切です。

学校ストレスや不登校の問題は、一朝一夕で解決できるものではありません。しかし、親が適切な対応を取ることで、子どもは少しずつ前向きな気持ちを取り戻し、再び学校に向かう力を蓄えていくことができます。

焦らず、子どもの気持ちを尊重しながら、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。そして、必要に応じて専門的な支援を活用することで、親子の負担を軽減しながら、より良い方向へ進むことができます。

学校ストレスに悩む子どもたちが、自分のペースで安心して歩んでいけるように、親としてできることを考えながら、温かくサポートしていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策

不登校の継続要因に「勉強」が挙げられる理由とその対策-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防および再登校支援事業を行うToCo株式会社の顧問として、これまで多くの不登校の子どもと向き合い、その原因や解決策を探ってきました。

不登校が長引く要因の一つとして「勉強の遅れ」が挙げられます。勉強の遅れは、単に学力の問題ではなく、子どもの心理状態や自己評価にも大きな影響を及ぼし、再登校を阻む大きな壁となるのです。本稿では、「なぜ勉強が不登校を長引かせるのか」「その結果、どのような悪循環が生まれるのか」「それを解決するためにはどのような方法があるのか」について詳しく論じていきます。

まずは、不登校が続く要因としての「勉強」に焦点を当て、その影響について詳しく見ていきましょう。

参考:文部科学省「令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要


目次


勉強が不登校の続いてしまう要因となる理由

不登校の子どもにとって、「勉強」は単なる学習課題ではなく、大きな心理的負担となることが少なくありません。学校に行かないことで授業についていけなくなると、その遅れが焦りや劣等感を生み、さらなる不安や自己否定感につながるのです。では、具体的にどのようなメカニズムで「勉強」が不登校を長引かせるのかを見ていきます。

1. 学習の遅れによる自己肯定の低下

不登校が続くと、当然ながら学校の授業は進みます。特に、小学校高学年から中学生にかけては、学習内容がより抽象的になり、前提となる基礎知識がないと理解が難しくなる単元が増えていきます。例えば、小学校で分数や割合に苦手意識がある子は、中学数学の方程式を理解することが困難になります。同じように、国語の読解力が不足していると、社会や理科の教科書の内容すら難しく感じるようになります。

この「ついていけない」という感覚が積み重なることで、子どもは次第に「自分は勉強ができない」「学校に戻っても授業についていけない」と考えるようになります。そして、「どうせ頑張っても追いつけない」「もう手遅れだ」といった思考に陥り、学習意欲そのものを失ってしまうのです。

2. 周囲との差を意識することによる劣等感の増幅

子どもたちは、想像以上に「周囲との比較」を意識しています。不登校の期間が長くなるほど、学校にいる同級生と自分との差が開いていることを痛感する機会が増えていきます。

例えば、学校にいる友達が「今日の授業、難しかったけど何とか理解できたよ」と話しているのを聞いたとき、不登校の子どもは「そもそも何の授業をしているのかもわからない」と強く意識してしまいます。また、久しぶりに登校した際に、先生が「この問題、簡単だよね」と発言しただけでも、「自分にとっては簡単ではない」と感じ、ますます自信を失うことになります。

こうした経験が重なることで、「自分は他の子より劣っている」という意識が強まり、それが再登校の妨げになるのです。

3. 「勉強しなければならないのに、できない」というジレンマ

不登校の子どもたちは、多くの場合、「勉強しなければいけない」という意識を持っています。親や教師からの言葉だけでなく、社会全体の価値観として「勉強は大切」「勉強しないと将来が不安」という認識があるからです。しかし、不登校の状態が続くと、「やらなければいけないのに、やれない」「やる気が起きない」というジレンマに苦しむことになります。

このジレンマがストレスとなり、勉強に対する苦手意識をさらに強めてしまうことがあります。親が「勉強しなさい」と強く促したり、「このままでは将来が大変だ」と不安を煽るような言葉をかけたりすると、子どもはより強いプレッシャーを感じるようになります。その結果、勉強をすることそのものがストレスになり、「学校に戻ること=嫌なこと」と認識してしまうのです。

4. テストや成績による不安

不登校の子どもたちにとって、定期テストや成績評価は非常に大きなプレッシャーになります。仮に学校に戻りたいという気持ちがあっても、「テストで悪い点を取ったらどうしよう」「赤点を取ったら親に怒られるかもしれない」といった不安が頭をよぎることが多いのです。

特に、中学に入ると高校受験が意識されるようになり、学校の成績が重要視されます。「不登校の期間が長かったから、受験に不利になるのではないか」という不安を抱えることで、学校に戻ること自体を諦めてしまうケースもあります。

このように、学習の遅れが単なる知識の不足ではなく、心理的な負担として積み重なり、不登校を長引かせる原因になっているのです。


以上のように、「勉強ができない」「勉強の遅れが取り戻せない」「周囲との差が大きくなりすぎた」という意識が、不登校の継続につながっています。こうした状況に対処するためには、単に学習の機会を与えるだけではなく、子どもの心理的負担を軽減しながら、段階的に学習習慣を取り戻すことが重要です。

不登校が長引くほど、勉強による再登校のハードルは高まる

不登校の期間が長くなるほど、勉強が再登校の大きな障壁となってしまいます。それは単に「勉強が遅れるから」という理由だけではありません。時間の経過とともに、学習の遅れが子どもの自己評価や人間関係に影響を与え、結果的に学校に戻ることをより困難にしてしまうのです。ここでは、不登校の長期化が勉強面に与える影響と、それがどのように再登校の妨げになるのかを詳しく見ていきます。

1. 学習の遅れが加速度的に広がる

不登校の初期段階では、子ども自身も「少し休んでから戻るつもりだった」「数日分の授業なら何とかなる」と思っていることが多いです。しかし、1週間、1か月と時間が経つにつれて、授業の進度との差が広がり、取り戻すべき内容が膨大になっていきます。

特に、中学校に入ると、授業のスピードは小学校よりも速くなり、科目ごとに専門性が増します。例えば、数学では一次関数や方程式といった内容が基礎となり、それが理解できないと後の単元も理解しにくくなります。同じように、英語では文法や単語の積み重ねが重要になるため、一度遅れるとキャッチアップするのが非常に難しくなります。

また、学校のカリキュラムは、過去の学習内容を前提に進むため、一度でも「わからない」状態になると、その先の内容も理解しづらくなるという負のスパイラルに陥ります。このように、学習の遅れは単なる「取り戻すべき量」の問題ではなく、「理解するための基盤」が崩れてしまうという問題を引き起こすのです。

2. 「今さら戻ってもついていけない」という心理的ハードル

不登校が数か月以上続いた場合、子どもが抱える心理的なハードルはさらに高まります。単純な学習の遅れに加え、「戻ったときに授業についていけるのか」「周りの友達にどう思われるか」といった不安が膨らんでいくのです。

例えば、国語の授業で「この前の文章、みんな覚えてるよね?」と先生が発言したとき、不登校の子どもは「何の話をしているのかわからない」と感じます。それが一度や二度ではなく、授業のたびに続くことで、「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、次第に学校へ戻る意欲を失ってしまうのです。

また、定期テストや小テストがあると、「どうせ点が取れないから行きたくない」と思うようになります。実際に、学校に戻った子どもたちの中には「テストで名前を書くだけだった」「提出物も出せず、成績がつけられなかった」という経験をした子もいます。こうした状況は、「学校に戻った後の困難」をイメージさせ、ますます再登校を遠ざける要因となります。

3. 勉強の遅れが人間関係にも影響を及ぼす

不登校の子どもが学校に戻った際、最も恐れることの一つが「周囲の反応」です。特に、勉強に関する話題は、クラスメイトとの距離を感じやすい場面の一つです。

例えば、休み時間に友達が「数学の宿題、難しかったね」と話しているとき、不登校だった子どもは「そもそもその宿題が何なのかも知らない」と感じます。また、グループワークなどで先生から「この前の授業でやったことを復習して」と指示されたとき、他の子がスムーズに取り組んでいるのに対し、自分だけ何をすればいいのかわからない状況になることもあります。

このような場面を経験すると、「友達と話が合わない」「自分だけ取り残されている」という感覚が強まり、再登校に対する不安がますます大きくなります。学校は勉強をする場であると同時に、友人関係を築く場でもあります。そのため、勉強の遅れが人間関係にも影響を与え、「学校に戻りたくない」という気持ちを強めてしまうのです。

4. 長期化すると「不登校の生活が当たり前」になってしまう

不登校が長引くと、子どもの中で「学校に行くこと」よりも「家で過ごすこと」が当たり前の生活になっていきます。最初の頃は「また学校に戻るつもりだった」と思っていた子どもも、数か月が経過すると「どうやって戻ればいいのかわからない」「もうこのままでいいのではないか」と考えるようになります。

この状態が続くと、勉強に対する意欲も徐々に薄れていきます。「どうせ学校に行かないのだから、勉強しなくてもいい」「今さら頑張っても意味がない」という考えが強まり、学習習慣そのものが崩れてしまうのです。

また、学習の遅れが「学校復帰のための課題」ではなく、「自分の価値を測るもの」として感じられるようになると、「勉強ができない=自分には価値がない」という自己否定につながることもあります。このような状態では、学校に戻るための一歩を踏み出すことがますます難しくなってしまいます。

学習の遅れが再登校を難しくする悪循環を断ち切るために

不登校が長引けば長引くほど、勉強が再登校の妨げになることは明らかです。しかし、「このままではいけない」と焦って無理に勉強を押し付けることは逆効果です。重要なのは、子どもが勉強に対して「できない」「ついていけない」というネガティブな感情を抱かずに済むような環境を整えることです。

塾よりも学校連携が優先される理由

不登校が続く中で、「学習の遅れを取り戻すために塾に通わせるべきか」と考える保護者の方は少なくありません。確かに、塾は学力向上を目的とした場であり、学校に戻る前に学習を補う手段として魅力的に映ることもあるでしょう。しかし、不登校の子どもにとって、塾が必ずしも最適な選択肢とは限りません。むしろ、塾よりも学校との連携を優先することが、不登校からの回復において重要なポイントになります。

では、なぜ塾よりも学校との関わりを重視すべきなのか、その理由について詳しく説明していきます。

1. 不登校の本質的な問題は「学力不足」ではなく「学校適応」

不登校が続く要因の一つとして「勉強」が挙げられることは確かですが、学力不足そのものが不登校の主原因というわけではありません。むしろ、「学校に行くことへの不安」「友人関係の悩み」「先生との関係の問題」などが根本的な理由となっていることが多いのです。

そのため、学力を塾で補えばすぐに学校へ戻れるかというと、そう単純な話ではありません。たとえ塾で学習の遅れを取り戻したとしても、「学校へ行くことへの抵抗感」や「学校の環境に適応する力」が育まれなければ、再登校は難しいのです。

例えば、塾で勉強を頑張った子どもが「勉強は少しできるようになったけれど、学校に行くのは怖い」と感じるケースは少なくありません。塾は学習指導が中心であり、学校生活への適応をサポートする仕組みは整っていないため、学校復帰に必要な「集団生活への慣れ」や「学校との関係を再構築する力」を養うことができないのです。

2. 塾は「勉強ができる子」を前提とした環境である

塾は基本的に「学習を進める場」であり、「学習の遅れを取り戻す場」として設計されているわけではありません。特に集団指導の塾では、ある程度の学力があることを前提に授業が進められるため、長期間不登校だった子どもがいきなり塾に入ると、ついていけずに挫折する可能性が高くなります。

また、塾には学校と異なり「成績向上」や「受験対策」に特化した競争的な環境があります。これが不登校の子どもにとってストレスとなることもあります。例えば、塾では定期的に確認テストが実施されることが多く、「勉強ができるかどうか」が可視化される場面が増えます。不登校の期間が長く、学習の遅れがある子どもにとっては、こうした環境が「できない自分」を強く意識させてしまい、学習への意欲を失わせることにもつながります。

また、塾の講師は「勉強を教えるプロ」ではあっても、「不登校支援の専門家」ではありません。不登校の子どもが抱える心理的な課題に対する理解が不足していることも多く、子どもの気持ちに寄り添った適切な対応ができないこともあります。

3. 学校との関係を再構築することが重要

不登校からの回復には、「学校との関係を再構築すること」が非常に重要です。つまり、学習の遅れを取り戻すこと以上に、「学校に戻りやすい環境を整えること」が求められます。そのためには、学校と適切な形でつながりを持ち続けることが不可欠です。

学校との関係が切れてしまうと、復帰のタイミングを見失い、「戻るべき場所がない」と感じてしまうこともあります。しかし、学校と定期的にコミュニケーションを取りながら進めることで、「いつでも戻れる場所がある」という安心感を持つことができるのです。

4. 塾の利用が有効なのは「居場所」としての機能を果たす場合

ここまで、塾の限界について述べてきましたが、すべての塾が不登校の子どもにとって不適切というわけではありません。塾の中には、学習指導だけでなく、子どもの居場所としての役割を果たすものもあります。例えば、少人数制や個別指導の塾で、学習のサポートと同時に心理的なケアを行っている場合、子どもにとって安心できる環境になることもあります。

しかし、その場合でも、塾の利用を「学校復帰の手段」として捉えるのではなく、「子どもの社会的な居場所の一つ」として考えることが重要です。学校に戻るための準備として塾を活用するのではなく、「外部の人と関わる機会を作る」「生活リズムを整える」といった目的で利用する方が、子どもにとってプラスになるケースが多いです。

学校との連携を重視し、適切な学習支援を行うことが鍵

不登校の子どもにとって、学習の遅れを取り戻すことは重要ですが、それ以上に「学校に戻れる環境を整えること」が最優先事項です。塾は学習指導の場としては有効ですが、「不登校支援」には向いていません。学力向上だけでなく、学校への適応を促すためには、学校との関係を維持しながら進めていくことが必要不可欠です。

勉強のハードルを下げるための親の接し方、行動

不登校が続く中で、保護者の方が特に気にされるのが「勉強の遅れ」についてです。

「このままで将来は大丈夫なのか」「学校に戻ったとき、ついていけるのか」といった不安を抱えるのは、ごく自然なことです。しかし、その不安が強すぎると、子どもに対して「勉強しなさい」とプレッシャーをかけてしまったり、「勉強をしないと将来困るよ」と無意識のうちに不安を煽ってしまったりすることがあります。

不登校の子どもはすでに、「勉強が遅れている」「授業についていけるか不安」という気持ちを抱えていることが多いです。そんなときに、親からのプレッシャーが加わると、勉強に対する抵抗感がさらに強まり、ますます手をつけなくなってしまうことがあります。

では、どうすれば子どもが勉強に対する抵抗感を減らし、少しずつ学習の習慣を取り戻せるのでしょうか。ここでは、親ができる具体的な接し方や行動について詳しく説明していきます。

1. 「今すぐ取り戻さなければならない」という意識を手放す

保護者の方がまず意識すべきことは、「今すぐに勉強の遅れを取り戻す必要はない」ということです。不登校が長引いた子どもにとって、「勉強しなければならない」という気持ちがストレスになり、それが逆に学習への意欲を削いでしまうことがあります。

勉強ができないことを責めたり、急いでキャッチアップさせようとすると、子どもは「勉強は苦しいもの」と認識し、ますます避けるようになってしまいます。重要なのは、「まずは勉強に対する心理的なハードルを下げること」です。そのためには、「少しずつでもいいからやってみよう」というスタンスで関わることが大切です。

2. 「勉強しなさい」と言わず、環境を整える

不登校の子どもに対して、「勉強しなさい」と言うことは逆効果になりやすいです。親から勉強を強制されることで、かえって反発心が生まれ、勉強そのものを避けるようになるケースが多いからです。

大切なのは、「勉強をやるかやらないかは本人に委ねる」ことです。ただし、完全に放置するのではなく、「勉強しやすい環境」を整えることが重要になります。例えば、以下のような工夫が考えられます。

  • リビングに勉強できるスペースを作る
    勉強部屋にこもることがプレッシャーになる子も多いため、リビングやダイニングなどで気軽に勉強できる環境を用意する。
  • 親が本を読んだり、一緒に学ぶ姿勢を見せる
    親がスマホやテレビばかり見ていると、子どもも同じように過ごしがちです。親自身が読書や資格の勉強をする姿を見せることで、「学ぶことは自然なこと」と思えるようになります。
  • 勉強の話題をプレッシャーにならない形で出す
    「勉強しなさい」ではなく、「今日はどんなことをした?」と軽く話を振る程度に留める。興味を持てる話題を出し、学ぶことを自然な流れにする。

3. 「小さな成功体験」を積ませる

勉強への抵抗感を減らすには、「できた!」という成功体験を積ませることが重要です。いきなり難しい問題を解かせるのではなく、簡単な問題から始め、「少しずつできる」という感覚を持たせることが大切です。

例えば、以下のような工夫が有効です。

  • 子どもが好きな分野から始める
    算数や英語が苦手なら、好きな歴史の本を読むだけでも学習になります。「興味が持てることから学ぶ」ことで、学習のハードルを下げることができます。
  • 問題を解くのではなく、動画や本で学ぶ
    「勉強=問題を解くこと」と考えるとハードルが上がります。まずは教育系のYouTube動画や、学習漫画などを活用して、知識を増やすところから始めるのも有効です。
  • できたことをしっかり褒める
    「たった1問しか解いてない」「こんな簡単なことができただけ」と思わずに、「やろうとしたこと」そのものを褒めることが大切です。「少しでもやったことがすごい」「昨日よりも進んだね」と声をかけることで、子どもは「やってよかった」と感じ、勉強への抵抗感を減らすことができます。

まとめ:勉強を再登校への妨げとしないために

不登校の子どもにとって、「勉強」は大きな心理的負担になりやすいものです。しかし、親が焦って勉強を強要すると、かえって逆効果になってしまうこともあります。重要なのは、子どもが「学ぶことに対してポジティブな気持ちを持てるようになること」です。そのためには、無理に勉強を押し付けるのではなく、子どもが少しずつでも学習習慣を取り戻せるように環境を整えることが大切です。

不登校は決して「そのまま放置すれば解決する問題」ではありません。適切な学習支援と環境調整を行いながら、子どもが再び学校に戻るための準備を整えていくことが、何よりも重要なのです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

小学校の不登校、中学校の不登校の特徴

小学校の不登校、中学校の不登校の特徴-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は現在、不登校予防や再登校支援を行うToCo(トーコ)株式会社の顧問を務めております。

日本では近年、不登校の児童生徒が増加し続けており、小学校と中学校ではその特徴や背景に違いがあります。本記事では、データをもとに不登校の現状を整理し、小学校と中学校それぞれに多い不登校のきっかけを詳しく分析していきます。さらに、新学期に向けた注意点や、日常的にできる不登校対策についても具体的にお伝えします。

不登校の問題は一朝一夕で解決するものではありません。しかし、適切な対応をすれば、子どもが再び学校へ戻れる可能性は十分にあります。まずは現状を正しく理解し、親として何ができるのかを一緒に見ていきましょう。


目次


データで見る小・中学校の不登校

日本の小・中学校における不登校児童生徒数は、年々増加傾向にあります。文部科学省の統計によれば、2023年度の不登校児童生徒数は346,482人に達し、これは小・中学校在籍者数全体の約3.72%を占めています。特に中学校における不登校の割合は顕著で、中学生216,112人、小学生130,370人という内訳になっています。

この数字を10年前と比較すると、その増加率は驚異的です。2010年度の不登校児童生徒数は119,891人でしたが、2023年度には346,482人と、約2.9倍に増加しています。特に近年は、毎年1万人単位で増え続けており、今後もこの傾向は続くと考えられます。

また、不登校の期間について見ると、90日以上欠席する長期不登校が全体の約44.5%を占めています。中でも、1年間の出席日数が0日の児童生徒は約3.1%に達しており、完全に学校と接点を失ってしまっているケースも少なくありません。

出典:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)

学年別の不登校傾向

学年ごとに不登校の発生率を分析すると、以下のような傾向が見えてきます。

  • 小学校では高学年(特に5・6年生)で不登校が増える
  • 中学校では1年生から増加し、2年生でピークを迎える

小学校では環境の変化に適応できないことが主な原因となることが多く、中学校では学業や人間関係のストレスが不登校につながることが多いです。

このデータから分かることは、不登校の問題は決して一部の子どもだけに起こる特異なものではなく、どの家庭にも起こりうるということです。では、なぜ小学生や中学生が不登校になるのか、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

小学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校のきっかけは、中学生の不登校とは異なり、比較的曖昧で漠然とした理由で始まることが多いです。中学生のように「勉強についていけない」「人間関係のトラブルが深刻化した」という明確な原因があるというよりも、「なんとなく学校に行きたくない」「朝になるとお腹が痛くなる」といった形で、本人も自覚できないまま不登校へ移行してしまうことが少なくありません。

では、具体的にどのような要因が小学生の不登校につながるのでしょうか。

1. 環境の変化によるストレス

小学生の不登校の大きなきっかけの一つが、環境の変化です。小学生は精神的にまだ未熟であり、環境の変化に対する適応能力も大人ほど発達していません。そのため、ちょっとした変化でも大きなストレスとなり、不登校につながることがあります。

具体的には、以下のような環境の変化が影響を与えることが多いです。

  • 入学や進級に伴うクラス替え
  • 担任の先生の交代
  • 親の転勤や引っ越し
  • 親の離婚や家庭内の不和

特に、担任の先生との相性が合わないことが、不登校のきっかけとなることが多くあります。小学生にとって、担任の先生は学校生活の中で大きな存在です。その先生が厳しかったり、自分を理解してくれないと感じたりすると、「学校が怖い」「行きたくない」という気持ちにつながることがあります。

また、家庭環境の変化も不登校に大きく影響します。親の転勤や離婚があった場合、子どもは大きなストレスを感じます。子どもは大人のように感情を言語化することが難しいため、「学校に行きたくない」という形でストレスを表現することがあるのです。

2. 友人関係のトラブル

小学生の不登校のきっかけとして、友人関係のトラブルも大きな要因の一つです。

小学生の段階では、まだコミュニケーション能力が十分に発達していないため、ちょっとした言い争いや意見の食い違いが大きなストレスになりやすいという特徴があります。特に低学年では、「昨日までは仲が良かったのに、今日は無視される」といったことが頻繁に起こります。

また、最近ではSNSやオンラインゲームを通じたコミュニケーションの増加により、学校以外の場でのトラブルが学校生活に影響を及ぼすケースも増えています。例えば、ゲーム内でのトラブルがきっかけで友人関係が悪化し、学校へ行きづらくなることもあります。

3. 学校生活への適応の難しさ

小学校のカリキュラムは、学年が上がるにつれて徐々に厳しくなります。そのため、勉強や集団生活に適応できない子どもは、不登校になりやすい傾向があります。

特に以下のような要因を持つ子どもは、学校生活に適応することが難しくなり、不登校につながることがあります。

  • 集団行動が苦手(発達特性の影響など)
  • 聴覚過敏や感覚過敏があり、学校の音や刺激がつらい
  • ルールや指示に従うことが難しい

発達特性を持つ子どもは、普通の授業や学校生活のルールに適応するのが難しいことがあります。例えば、「大勢の人と一緒にいるのが苦手」「音に敏感で教室のざわざわした雰囲気が耐えられない」といった理由で、学校に行きづらくなることもあります。

また、小学4年生~6年生頃になると、学習内容が難しくなり、勉強についていけなくなることが原因で不登校になる子どもも増えます。特に「みんなの前で当てられるのが怖い」「テストの点数が悪くて恥ずかしい」といった感情が、不登校につながることも少なくありません。

小学生の不登校の特徴まとめ

  • 環境の変化(クラス替え、先生の交代、親の転勤や離婚など)が大きな影響を与える
  • 友人関係のトラブルが直接的な不登校のきっかけになることが多い
  • 学習面のつまずき集団生活の苦手さが原因になることもある
  • 「なんとなく行きたくない」という曖昧な形で始まることが多く、早期の対応が重要

小学生の不登校は、最初は「ちょっと休みたい」程度の気持ちから始まり、気づけば長期化してしまうことが少なくありません。そのため、「何となく休みがちになっている」と感じた時点で、早めに対応をすることが重要です。

親子-向き合う

中学校に多い不登校のきっかけ

小学生の不登校が「なんとなく行きたくない」「環境の変化に適応できない」という比較的漠然とした理由で始まることが多いのに対し、中学生の不登校はより明確な要因や深刻なストレスが背景にあることが多いのが特徴です。

中学生になると、学業の難易度が上がり、対人関係が複雑化し、自己意識が高まるため、小学生の頃にはなかった新たな悩みが生じます。また、思春期特有の心理的変化も影響し、不登校がより長期化しやすくなる傾向があります。

では、中学生の不登校の主なきっかけを詳しく見ていきましょう。

1. 学業の負担が増大し、ついていけなくなる

中学生の不登校の最も大きな要因の一つが、学習内容の難化によるストレスです。小学校の頃は比較的ゆるやかだった学習進度も、中学校に入ると一気にレベルが上がります。

特に、以下のような場面でつまずきを感じる生徒が多いです。

  • 授業のスピードが速くなり、理解が追いつかなくなる
  • 数学や英語など、苦手科目が明確になり、成績が低下する
  • テストや成績表による評価が厳しくなり、自己肯定感が下がる
  • 授業で当てられるのが怖くなり、授業に出ることが不安になる

中学生は「自分はできるのか」「周りと比べて劣っていないか」を強く意識する年齢です。そのため、小学校では「まぁ何とかなる」と思っていた勉強も、中学校では「もう無理だ」「学校に行っても意味がない」と感じ、不登校につながるケースが増えます。

また、中学校の先生は科目ごとに変わるため、「先生との相性が悪い」「分からないところを質問しにくい」といった問題も発生しやすくなります。授業についていけなくなり、学校に行くのが嫌になる――こうした流れで不登校に至るケースは非常に多いのです。

2. 対人関係の悩みが深刻化する

小学校の頃は、友人関係のトラブルがあっても、その日のうちに仲直りするケースが多いですが、中学生になると関係性がより複雑になり、トラブルが解決しにくくなります。

特に以下のようなケースで不登校になる生徒が増えます。

  • いじめや仲間外れに遭う(直接的な暴力だけでなく、無視や陰口も含む)
  • グループの中での立ち位置に悩む(クラスや部活動内での孤立)
  • 友人関係の変化についていけない(小学校時代の友達と疎遠になる)
  • SNSやオンラインゲーム上でのトラブル(LINEグループから外される、悪口を言われるなど)

中学生は小学生よりも「人間関係の軋轢」に敏感になります。「無視された」「仲間に入れてもらえなかった」など、小さなことでも大きなショックを受け、それが学校に行きたくない理由になることがよくあります。

また、最近では、学校内だけでなく、SNSやオンラインゲーム上でのトラブルが不登校の引き金となるケースも増えています。「学校では普通に接しているのに、ネット上では悪口を言われる」というような、表と裏の顔を使い分けるケースもあり、親や先生が気づかないうちに子どもが傷ついていることも少なくありません。

3. 部活動や学校行事によるプレッシャー

中学校に入ると、多くの生徒が部活動に参加します。部活動は友人関係を深めたり、自己成長の機会を得たりする場にもなりますが、「厳しすぎる指導」や「上下関係のストレス」が不登校のきっかけになることもあります。

特に以下のような状況に当てはまる場合、不登校になるリスクが高まります。

  • 顧問や先輩からの厳しい指導が耐えられない
  • 部活の練習が過度に厳しく、疲労がたまりすぎる
  • 試合やコンクールで結果を出さなければならないプレッシャーが強い
  • 部活動と勉強の両立ができず、ストレスを抱える

また、体育祭や文化祭といった学校行事が大きな負担になることもあります。目立つのが苦手な子どもにとって、学校行事は「避けたいイベント」になりやすく、その時期に一度休むと、そのまま不登校に移行してしまうことがあります。

4. 思春期特有の心理的要因

中学生は、精神的に大きく成長する時期です。しかし、その分だけ「自分はどう思われているのか」「このままでいいのか」といった悩みも増え、不登校につながるケースが多くなります。

具体的には、以下のような心理的変化が関係します。

  • 「完璧主義」で、失敗を極度に恐れる
  • 「過敏性」が強く、ちょっとしたことで深く傷つく
  • 「反抗期」があり、大人の言うことに反発したくなる
  • 「将来への不安」が強まり、学校に行く意味を見出せなくなる

特に「完璧主義」の子どもは、ちょっとした失敗でも強い挫折感を味わい、学校に行くこと自体が苦痛になりやすいです。また、思春期の不安定な心理状態の中で、親や先生とのコミュニケーションが上手くいかず、不登校に拍車をかけることもあります。

中学生の不登校の特徴まとめ

  • 学業の負担が増え、授業についていけなくなることが原因になる
  • 友人関係の悩みが深刻化し、解決しにくくなる
  • 部活動や学校行事によるストレスが影響を与えることがある
  • 思春期特有の心理的変化が、不登校の引き金となる

中学生の不登校は、小学生の不登校よりも長期化しやすいという特徴があります。そのため、できるだけ早い段階で不登校の兆候に気づき、適切な対応を取ることが重要です。

母と中学生の娘の会話

新学期に向けて注意すべき点

新学期は、不登校の子どもにとって大きなストレスがかかるタイミングです。特に4月の新学期や9月の2学期開始時は、「環境が変わる」「新しい人間関係が始まる」「学習内容が進む」などの要因が重なり、精神的な負担が増します。

すでに不登校気味の子どもにとっては、「新しいスタートを切らなければならない」というプレッシャーが大きく、さらに不登校が進行してしまうこともあります。また、これまで問題なく通学していた子どもでも、新学期を機に学校への違和感を強く感じ、不登校を引き起こすことがあります。

では、新学期に向けてどのような点に注意し、どのようなサポートができるのかを詳しく見ていきましょう。

1. 「新学期だから頑張ろう」というプレッシャーをかけすぎない

親としては、「せっかくの新学期だから、気持ちを切り替えて頑張ってほしい」と思うかもしれません。しかし、「頑張って行こうね」「そろそろ学校行かないとね」といった言葉が、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。

不登校の子どもは、すでに「学校に行かないといけない」という気持ちをどこかで持っています。それでも行けないのは、「行こうとすると不安やストレスで体調が悪くなる」「学校に対する恐怖心がある」などの理由があるからです。

そのため、新学期に向けては、無理に学校に行かせようとするのではなく、まずは子どもの気持ちに寄り添い、話を聞くことが大切です。

✔ NGな声かけ

  • 「新学期からはちゃんと行こうね」 → プレッシャーになり、不安が増す
  • 「みんな頑張ってるんだから、あなたも頑張らないと」 → 他人と比較されることで自己肯定感が下がる
  • 「いつまでも休んでいたら、将来困るよ」 → 長期的な不安を煽ることで余計に動けなくなる

✔ 望ましい声かけ

  • 「新学期、不安なことはある?」 → 子どもが抱えている気持ちを引き出す
  • 「学校に行くことだけが大事なんじゃなくて、どうすれば安心して過ごせるか考えようね」 → 子どもに寄り添いながら、前向きな選択肢を一緒に探す

2. 生活リズムを整えることを優先する

新学期が始まる直前になって、「学校に行く準備をしなさい」「朝起きられるようにしなさい」と急に言われても、子どもにとっては大きな負担になります。特に、長期間の不登校で生活リズムが崩れている場合、新学期直前に無理に元に戻そうとすると、かえって不安定になってしまうことがあります。

そのため、新学期の2週間ほど前から、少しずつ朝の時間を整えることを意識すると良いでしょう。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

  • 起きる時間を少しずつ早める(いきなり学校の時間に合わせるのではなく、15~30分ずつ調整)
  • 朝日を浴びる習慣をつける(体内時計を整えるために、起きたらカーテンを開ける)
  • 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす(急に禁止するのではなく、少しずつ短縮していく)

「学校に行けるかどうか」よりも、まずは朝起きる習慣をつけることが最優先です。朝のリズムが整ってくると、自然と気持ちも安定しやすくなります。

3. 学校に関する不安を具体的にする

新学期が近づくと、子どもは漠然とした不安を感じやすくなります。しかし、その不安を「学校に行きたくない」という形でしか表現できないことが多いです。

そこで、「何が一番不安なのか?」を具体的にしていくことが大切です。

✔ 不安を具体化するための質問

  • 「先生との相性が心配?」
  • 「友達とうまくやれるか不安?」
  • 「授業についていけるかどうかが気になる?」

不登校の子どもは、「とにかく学校が怖い」という気持ちを持っていることが多いですが、その「怖さ」の正体を探ることで、具体的な対策を立てることができます。

例えば、「授業についていけるか不安」という場合は、最初の1週間は無理に授業を受けさせるのではなく、まずは登校して雰囲気に慣れることを目標にするといった調整が可能です。

また、「友達とうまくやれるか不安」という場合は、事前に学校の先生と相談し、サポートしてもらうという対応ができます。

まとめ

新学期は、不登校の子どもにとって大きな転機となる時期です。しかし、焦って登校を促してしまうと、かえって子どもにプレッシャーを与え、不登校が悪化することもあります。

  • 「頑張って行こうね」とプレッシャーをかけない
  • 生活リズムを少しずつ整える
  • 不安を具体化し、解決策を探る

こうしたポイントを意識しながら、子どものペースに寄り添っていくことが何よりも大切です。

母と娘の会話のイメージ

日常的にできる不登校対策

不登校の子どもが再び学校へ行くためには、日々の生活の積み重ねが重要になります。不登校の対応は「学校に行かせること」だけが目的ではなく、子どもが安心できる環境を整え、再登校に向けた準備をしていくことが大切です。

特に、日常的に意識してほしいのは次の3点です。

  1. 生活リズムを整えること
  2. 家族の時間を大切にすること
  3. 夫婦喧嘩に注意すること

これらは、すぐに効果が出るものではありません。しかし、時間をかけて意識していくことで、子どもが少しずつ前向きになり、「学校に行ってみようかな」と思える環境をつくることができます。では、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

1. 生活リズムを整えること

不登校の子どもは、学校に行かなくなることで昼夜逆転しやすくなります。朝起きる時間が遅くなると、自然と夜も眠れなくなり、生活リズムが崩れてしまいます。そして、「朝起きられないから学校に行けない」という状態が続くと、ますます不登校が長期化してしまうのです。

✔ 生活リズムを整えるためのポイント

① いきなり「早起きしなさい」と言わない
「明日からちゃんと朝7時に起きなさい!」と言っても、急に生活リズムを変えるのは難しいものです。いきなり理想の時間に戻そうとすると、子どもはプレッシャーを感じ、余計に朝起きられなくなってしまいます。

そこで、15分ずつ起きる時間を早めるなど、少しずつ調整していくのが効果的です。例えば、今朝9時に起きているなら、次の週は8時45分、その次の週は8時30分といった具合に、ゆるやかに改善していきましょう。

② 朝起きたらカーテンを開ける
人間の体内時計は、朝日を浴びることでリセットされる仕組みになっています。朝になったらカーテンを開けて日光を浴びるだけでも、少しずつ生活リズムを整える助けになります。

③ 昼間に軽い運動をする
不登校の子どもは家の中で過ごす時間が長くなりがちですが、日中に体を動かすことが夜の快眠につながります。散歩に誘ったり、買い物についてきてもらったりするだけでも、体内リズムが整いやすくなります。

④ 夜のスマホやゲームの時間を少しずつ減らす
スマホやゲームの長時間使用は、寝る時間が遅くなる原因の一つです。しかし、いきなり「夜のスマホは禁止!」とすると、かえって反発を招くこともあります。まずは「30分だけ短くする」など、少しずつ調整していくことを意識しましょう。

2. 家族の時間を大切にすること

不登校の子どもは、「学校に行っていない自分はダメなんじゃないか」と自己否定感を持ちやすくなります。そのため、「家では安心して過ごせる」と感じられるような家庭環境を作ることが大切です。

✔ 家族の時間を増やすための工夫

① 一緒に食事をする
家族そろって食事をする時間は、子どもが安心感を得る大切な時間になります。不登校の子どもは、食事の時間がバラバラになりがちですが、できる限り「一緒にご飯を食べる習慣」を作ることで、家庭内のつながりが深まります。

② 子どもが好きなことに親も関心を持つ
例えば、子どもがゲームやアニメに夢中になっているなら、「何をやってるの?」「一緒にやってみてもいい?」と興味を示してみるのも良い方法です。親が子どもの趣味に関心を持つことで、子どもは「自分のことを理解してくれている」と感じ、親子関係が良くなります。

③ 週末に軽いお出かけをする
遠くに行く必要はありません。近所の公園に散歩に行く、カフェでお茶をするなど、ちょっとした外出が気分転換になります。特に、長期間家にこもっていると気分が落ち込みやすくなるため、「学校に行く前に、まずは外に出ることに慣れる」という意味でも効果的です。


3. 夫婦喧嘩に注意すること

意外に思われるかもしれませんが、家庭内の雰囲気は、不登校の子どもの心理状態に大きな影響を与えます

✔ 子どもは親の雰囲気を敏感に感じ取る

子どもは、親の表情や言葉のトーンから、「お父さんとお母さんの仲が悪い」「家の中がピリピリしている」と感じ取ります。そして、それがストレスになり、不登校が長引いてしまうことがあります。

特に、親が夫婦喧嘩をしている場面を子どもが目にすると、次のような気持ちを抱くことがあります。

  • 「自分が不登校だから、親がケンカしているんじゃないか」(罪悪感)
  • 「家の中が居心地悪い」(安心感の欠如)
  • 「親に相談しづらい」(気持ちを話せなくなる)

これが積み重なると、子どもはますます閉じこもりがちになり、不登校の解決が遠のいてしまいます。

✔ 夫婦間の意見の違いを子どもの前で見せすぎない

不登校の対応について、夫婦で意見が違うこともあるでしょう。例えば、

  • 父親:「厳しくしないとダメだ」
  • 母親:「無理に行かせず、まずは見守るべきだ」

こうした意見の違いはよくあります。しかし、それを子どもの前でぶつけ合うと、子どもは「どちらの親の言うことを聞けばいいの?」と混乱してしまいます。

夫婦で意見が合わないときは、子どものいない場所で話し合い、意見のすり合わせをすることを心がけましょう。

まとめ

日常的な積み重ねが、不登校の改善につながります。

  • 生活リズムを少しずつ整える(急に変えようとせず、徐々に調整)
  • 家族の時間を大切にし、安心できる環境を作る
  • 夫婦喧嘩を避け、子どもに不安を与えないようにする

子どもが学校に行くためには、まず「家が安心できる場所であること」が何よりも大切です。できることから少しずつ始め、子どもが「学校に行ってみようかな」と思える環境を整えていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

子どもが学校に行きたくないと言った時の初動

子どもが学校に行きたくないと言った時の初動についての記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
「学校に行きたくない」と子どもが訴えたとき、親としては戸惑いを感じると思います。昨日まで普通に登校していたのに突然拒否するケースもあれば、以前から不安そうな様子が見えていたケースもあるでしょう。

この時、保護者の対応次第で子どもの心理状態は大きく変わります。適切な初動をとることで、問題の長期化を防ぐことができます。

参考:文部科学省「不登校への対応について


目次


第1章:初回は休ませる

「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、最も避けたいのは 焦って無理に登校させること です。
もちろん、理由が単なる気分的なものであれば登校したほうが良い場合もあります。しかし、強いストレスを抱えたまま無理に登校させると、状況が悪化しやすくなります。

では、なぜ初回は休ませたほうが良いのでしょうか?


1. 休ませることの目的を理解する

初めて「行きたくない」と言ったときに休ませるのは、「登校のハードルを下げるため」ではなく、「子どもが抱えている問題を整理する時間を確保するため」です。

休むこと自体を「特別なこと」にはせず、以下のような目的意識を持つことが重要です。

  • 子どもの状態を観察する
    → 何が原因なのかを整理し、状況を把握する時間を作る。
  • ストレスが蓄積するのを防ぐ
    → 無理に行かせることで悪化する可能性があるストレスを、一時的にリセットする。
  • 長期化を防ぐための対策を考える
    → 休むことを一つのきっかけとして、今後の対応を計画する。

このように、単に「休ませる」のではなく、目的を持った「適切な休息」をとることが大切です。


2. 休ませるべきケースと休ませないほうが良いケース

全ての「学校に行きたくない」が同じ重さを持つわけではありません。そのため、休ませるかどうかの判断は慎重に行う必要があります。

休ませたほうが良いケース

  • 学校の話題を出すと涙ぐむ、またはパニックを起こす
    → 強い不安や恐怖がある可能性が高い。
  • 身体症状(頭痛、腹痛、吐き気など)が頻発する
    → ストレスによる身体反応の可能性がある。
  • 理由を聞いても、明確な説明ができず苦しそうにしている
    → 本人も整理できていない状態。時間をかけて話をする必要がある。
  • 登校を強く促すと、家の中で暴れる、塞ぎ込むなどの行動が見られる
    → 無理に行かせると逆効果になる可能性がある。

こうした場合、無理に登校させるのは逆効果です。一旦休ませ、冷静に状況を整理する時間を確保しましょう。

登校を促したほうが良いケース

  • 宿題が終わっていない、テストが嫌だなど、明確な理由がある
    → 単なる回避行動の可能性が高い。
  • 友達とケンカしたが、大きな問題ではなさそう
    → 一時的な対人関係のトラブルは、むしろ学校で解決することが望ましい。
  • 「なんとなく行きたくない」と言うが、気分的なものに見える
    → 休むことで「行かなくてもいい」と思うリスクがある。

このようなケースでは、できるだけ登校を促しつつ、「行けば何とかなる」という経験を積ませることが重要です。


3. 休むことが「楽な選択」にならないようにする

ここで注意したいのは、「休むことが当たり前になると、登校がさらに難しくなる」という点です。

特に、「休んだ日は好きなことをしてOK」という雰囲気になってしまうと、子どもは 「休んだほうが楽だ」と学習 してしまいます。

そのため、休んだ日は以下の点を意識しましょう。

  • 生活リズムを崩さない(朝食は通常どおり、日中はリビングで過ごす)
  • 宿題を先生に確認して取り組ませる
  • 休むことを「解決のための時間」と位置づける

「今日は休むけど、これからどうしていくか考える時間にしようね」と声をかけることで、休むことが「目的」ではなく「手段」だと理解しやすくなります。


4. 親の姿勢が子どもの安心感を左右する

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親が慌てると、その不安が子どもに伝染します。

親が焦って「どうして?何があったの?」と詰め寄ると、子どもは余計にプレッシャーを感じ、口を閉ざしてしまうことがあります。

逆に、「そうか、今日は行きたくないんだね」と一度受け止めることで、子どもは安心し、自分の気持ちを整理しやすくなります。

大切なのは、休むことを特別扱いせず、冷静に対応することです。


5. 学校との連携の準備をする

子どもが「行きたくない」と言った時点で、保護者がすべきことの一つが 学校との連携を考えること です。

初回の段階では、学校に対して「今朝、子どもが学校に行きたくないと言っています。今日は休ませる予定ですが、担任の先生と少しお話しできればと思います」と簡単に連絡を入れておくと良いでしょう。

この時点で、子どもにとって負担にならない範囲で 学校での様子を知ること が重要です。
たとえば、

  • 最近の授業の様子
  • クラスで何かトラブルがあったか
  • 先生が気づいている変化

こうした情報を集めることで、次の対応が取りやすくなります。

第2章:当日の時間の使い方

ここまでで「初回は休ませる」ことの理由についてお話ししました。ただし、学校を休ませることは「問題を解決する手段」であり、「最終的な目的」ではありません。

子どもが休んだその日を どのように過ごすか が、今後の登校を左右する重要なポイントとなります。

もし、何もせずに一日が終わると、「休んだら楽だった」「また休んでもいいかも」という気持ちが芽生えやすくなります。一方で、「学校に行けなくなった自分はダメだ」と思い込み、より気持ちが沈んでしまうこともあります。

休むこと自体は悪いことではありませんが、休んだ日の過ごし方を工夫しなければ、不登校の長期化に繋がる可能性が高まります。

では、当日の時間をどのように使うべきか、具体的に見ていきましょう。


「学校に行きたくない」と言って休んだ日は、子どもにとって 「自分の気持ちと向き合う時間」 です。

ただし、子どもに「今日は自分の気持ちを整理してね」と言っても、うまくできるわけではありません。そこで、親が適切にサポートすることが大切です。

ここでは、当日を 午前・午後・夜 の時間帯に分けて、適切な対応を考えていきます。

1. 午前:気持ちを落ち着ける時間

朝、学校に行かないと決まると、子どもは「ほっとしたような」「罪悪感があるような」複雑な気持ちを抱えます。

この時間帯にやるべきことは、次の3つです。

① 生活リズムを崩さない

休んだ日は 「いつも通りの朝を過ごす」 ことが重要です。

  • 朝ごはんを食べる(できれば家族と一緒に)
  • 着替える(パジャマのまま一日を過ごさない)
  • 布団やベッドにこもらない

「せっかく休んだんだから、ゆっくり寝かせておこう」と思うかもしれませんが、ダラダラと寝続けると、頭が働かず気持ちの整理もうまくいきません。

「今日は家にいるけど、普通の生活をしようね」と伝え、学校に行く日と大きく変わらない朝の習慣を続けましょう。

② 子どもの気持ちを整理する時間を作る

子どもは「何が嫌で学校に行きたくなかったのか」を 自分でも整理できていないことが多い です。

そのため、親が「どうして行きたくないの?」と問い詰めても、うまく言葉にできないことがほとんどです。

そこで、次のような方法を試してみましょう。

  • 「今の気持ちを書き出してみようか?」と提案する
    → 文字にすることで、漠然とした不安が整理しやすくなる。
  • 「どんなことがあると、学校に行きたくないと思う?」と具体的に聞く
    → 「先生が怖い」「友達が冷たい」「授業が分からない」など、何が原因なのか探る。
  • 「昨日までは普通に行けていたけど、今日はどうだった?」と前日との違いを考えさせる
    → 急に登校できなくなった背景を探るヒントになる。

このとき、子どもが「分からない」と言ったら無理に答えを出そうとしないことも大切です。 「そうだよね、まだ整理できてないかもしれないね」 と寄り添うことで、子どもが安心して考えられる環境を作れます。

③ 学校に連絡を入れる(親が対応)

休むと決めた場合、 学校には必ず連絡を入れる ことが大切です。

この際、「体調不良」とだけ伝えるのではなく、できるだけ 担任の先生と直接話す のが望ましいです。

伝えるべき内容の例:

  • 「今朝、子どもが学校に行きたくないと言い出しました。」
  • 「本人に理由を聞いていますが、まだ整理できていないようです。」
  • 「今日一日は家で様子を見ますが、何か学校で気になることはありましたか?」

先生からの情報が、子どもの状況を理解する手がかりになることもあります。


2. 午後:具体的な対策を考える時間

午前中は「気持ちを落ち着ける時間」でしたが、午後は 「これからどうするかを考える時間」 です。

ここで重要なのは、休むことを特別なことにしないこと です。

① 「休めば楽になる」と思わせない工夫

子どもが「休むこと=自由に過ごせること」と認識すると、登校のハードルが一気に上がります。

そのため、午後は次のようなルールを作るとよいでしょう。

  • ゲームやスマホの使用時間を制限する
    → 「学校に行かない日だからこそ、使う時間を考えよう」と伝える。
  • 学校の課題を少しでもやる
    → 宿題や教科書を開くだけでも、「学校と完全に切り離される」ことを防げる。
  • リビングで過ごす時間を作る
    → 一日中自室にこもると、「外に出る」ことがより苦痛になる。

② 子どもと一緒に対処法を考える

子ども自身に「これからどうするか」を考えさせることが大切です。

  • 「明日、学校に行けそう?」
  • 「もし行くとしたら、何が不安?」
  • 「先生に相談できたら少し楽になる?」

ここで 無理に登校を約束させる必要はありません
ただし、「どうすれば行けそうか」を一緒に考えることが重要です。


3. 夜:翌日の準備と安心感を与える時間

夜は、「明日どうするか」を整理する時間です。

  • 「明日はどうする?」と確認する(プレッシャーをかけすぎないように)
  • 準備だけはしておく(ランドセルや制服を揃えておく)
  • 「いつでも相談していいよ」と伝える(親が味方であると感じさせる)

ここで改めて確認したいのは、休むこと自体は問題ではなく、休んだ後の対応が不登校に繋がるかどうかを決める という点です。

1日休んだらスッキリして、翌日から普通に行けた場合は問題ありません。しかし休んだことで安心して、翌日も「また行きたくない」と言い始めた場合は、早めの対策が必要です。

なぜなら、不登校は 「急に起こるもの」ではなく、「少しずつ登校が難しくなっていくプロセス」 を経て長期化することが多いからです。

では、不登校に繋がらないようにするためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?

第3章:不登校に繋げないための工夫

不登校を防ぐためには、「休み方」を間違えないことが最も重要です。

  • 「休めば解決する」思考にならないようにする
  • 「登校しやすい環境」を少しずつ整えていく
  • 「親も一緒に考える」という姿勢を持つ

これらを意識しながら、具体的な工夫を見ていきましょう。


1. 「休めば解決する」という誤解を防ぐ

子どもが「行きたくない」と言ったとき、すぐに休ませることで「嫌なら休んでもいいんだ」と学習してしまうと、登校のハードルがどんどん高くなってしまいます。

これは、子どもが「休むことの快適さ」に慣れてしまうためです。

そのため、次のような意識を持つことが大切です。

① 休むことを「解決策」ではなく「一時的な対応」と伝える

「休むのはいいけれど、それで問題がなくなるわけじゃないよね」と、子どもが 「休めばすべてが解決するわけではない」と理解する ように促しましょう。

たとえば、こんな声かけが効果的です。

  • 「今日はお休みして気持ちを落ち着けるのはいいけれど、学校のことは考えないままでいいのかな?」
  • 「休んだことで少し落ち着いたら、どうすれば行きやすくなるか考えてみようね。」

「休む=問題を先送りにしているだけ」ということを、無理のない範囲で伝えることが大切です。

② 休むことのルールを決める

休むことが続くと、不登校になりやすくなります。そのため、「休むことのルール」を決めておくと、ズルズルと長引くのを防げます。

たとえば、次のようなルールを設定すると良いでしょう。

  • 昼間はリビングで過ごす(自室にこもらない)
    → 自室に閉じこもると、気持ちの整理が難しくなるため。
  • 休んでも、学校の時間割に沿って何かする(勉強・読書など)
    → 何もせずに過ごすと、「休む=楽になる」という意識が強くなるため。
  • ゲームやスマホの使用時間は学校が終わる時間までは制限する
    → 「休んだ方が楽しい」と思わないようにするため。

このように、「休むことを無条件に快適なものにしない」という工夫が、不登校を防ぐポイントになります。


2. 登校しやすい環境を整える

「行きたくない」と言った背景には、必ず何かしらのストレスがあります。

そのため、「学校に行くことのハードルを下げる」工夫をすることで、登校を促しやすくなります。

① 「全部行くのは無理」なら「少しだけ行く」を目標にする

「朝から夕方まで学校にいるのが無理」なら、まずは「午前中だけ」「3時間目から行く」などの選択肢を作ると良いでしょう。

  • 「午前中だけ行って、給食を食べずに帰ってきてもいいよ。」
  • 「今日は3時間目から行ってみようか?」

このように 「全部登校するのは無理でも、一部だけならできるかも」 という視点を持たせることが重要です。

② 「学校がつまらない」「意味がない」と言う場合の対応

「学校が嫌」という理由が、単純に「つまらない」「行く意味がない」といったものである場合、次のようなアプローチが有効です。

  • 「学校に行くことには、今すぐは分からないけど、将来のためになることがあるよ。」
  • 「今は楽しくないかもしれないけど、大人になったときに『行ってよかった』と思うことがあるかもしれないよ。」

また、「学校の何が嫌なのか」を一緒に整理するのも効果的です。

  • 授業がつまらないのか
  • 先生が苦手なのか
  • 友達との関係が難しいのか

原因を特定し、それぞれの対策を考えることが、登校を後押しするカギになります。


3. 親の関わり方がカギを握る

子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親の対応次第で状況が大きく変わります。

① 「見守る」だけではなく、一緒に解決策を考える

「子どもが行きたくないなら、無理に行かせない」という考えは、一見優しさのように思えます。

しかし、「そのまま何もしない」=「問題を放置する」ことになりやすい ため、適切な対応とは言えません。

親として大切なのは、「どうすれば学校に行けるようになるか、一緒に考える」 姿勢を持つことです。

② 「大丈夫だよ」と言いすぎない

「学校に行きたくない」と言われると、つい「大丈夫だよ」と言って安心させたくなるかもしれません。

しかし、子どもにとっては「何が大丈夫なの?」と逆に不安が増してしまうことがあります。

代わりに、次のような声かけを意識してみましょう。

  • 「大丈夫かどうか、一緒に考えてみようか?」
  • 「何が不安か分からないままだと、もっとしんどくなるかもしれないね。」

「親が一緒に考えてくれる」という安心感 を持たせることが、不登校を防ぐカギになります。

「学校に行きたくない」という子どもの言葉は、単なる気まぐれではなく、何かしらのサインです。そのため、初回は冷静に受け止め、一時的な休息を認めつつ適切な対応を進めることが重要です。

その日の過ごし方や親の関わり方次第で、不登校に繋がるかどうかが決まります。「休めば解決する」という誤解を防ぎ、登校しやすい環境を整えながら、子どもと一緒に前向きな解決策を考えていきましょう。焦らず、一歩ずつ対応することが大切です。

各章のまとめ

各章要点必要な行動
初回は休ませる「学校に行きたくない」と言われたら、無理に登校させず、一時的に休ませる。ただし、休むこと自体を目的にせず、問題を整理する時間とする。休む理由を整理し、子どもの状態を観察する。学校に連絡し、状況を共有する。生活リズムを崩さず、休むことを特別視しない。
当日の時間の使い方休んだ日をどう過ごすかが、今後の登校を左右する。何もせずに終わると「休むほうが楽」と感じ、不登校に繋がりやすくなる。朝は普段通りに起きて朝食をとる。気持ちを整理する時間を作り、学校と連絡を取る。午後は今後の対策を話し合い、ゲームや動画の時間を制限する。
不登校に繋げないための工夫「休めば解決する」と思わせないようにし、登校のハードルを下げる工夫が必要。親が「見守る」だけではなく、一緒に解決策を考える姿勢が重要。休むルールを決め、昼間はリビングで過ごさせる。部分登校の選択肢を考える。子どもが不安に感じるポイントを整理し、少しずつ解決策を見つける。

ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

引きこもりの実態と不登校との関係

引きこもりの実態と不登校との関係-記事の見出し画像

目次


1. 引きこもりの定義・実数

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問を務めております。本稿では、「引きこもりの実態と不登校との関係」について、小中学生の不登校のお子様を持つ保護者の皆様に向けて、実態を深掘りしつつ、具体的な対応策をお伝えいたします。

参考:文部科学省「今後の不登校への対応の在り方について

まず、「引きこもり」という言葉について改めて定義を確認してみます。
引きこもりとは、社会的参加を長期間にわたり回避し、家庭内に閉じこもって生活する状態を指します。この「社会的参加」とは、学校への登校や就労、地域社会での活動、友人との交流など、他者と積極的に関わる行動を意味します。内閣府の定義では、6ヶ月以上にわたって家庭にとどまり続け、必要最低限の外出以外の社会参加をしていない状態が「引きこもり」とされます。

この「6ヶ月以上」という期間は、単なる一時的な疲れや生活習慣の乱れとは異なり、慢性的かつ固定化しやすい問題であることを示しています。
特に、学校に行けない日が続くことで「不登校」となり、さらに引きこもりへと状態が移行してしまうことがあります。この点において、不登校と引きこもりは密接に関連しています。

引きこもりの実態

では、実際にどのくらいの子どもたちが引きこもりの状態にあるのでしょうか?内閣府の「子ども・若者の意識と生活に関する調査」(2023年度)によると、引きこもりの状態にある若者の年齢層は若年化の傾向にあります。
注目すべきは、14歳以下が12.4%、15〜19歳が17.3%という数字です。この結果は、義務教育を受けるべき小中学生の段階から、すでに引きこもり状態に陥っている子どもが少なくないことを示しています。

引きこもりになった年齢(内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査-ひきこもりに関する状況」2023年度)
引きこもりの期間(内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査-ひきこもりに関する状況」2023年度)

また、引きこもり状態にある人たちの家庭内での活動についても、深刻なデータが出ています。内閣府の調査によれば「自宅でよくしていること」の回答でインターネットを選んだ人は78.5%、ゲームを選んだ人が66.7%(複数回答)でした。これらの活動自体が問題というわけではありませんが、コミュニケーションがデジタル空間に偏り、リアルな対人関係や社会活動が疎かになることは、引きこもり状態を固定化させてしまうリスクがあります。

さらに、引きこもり状態の子どもたちの過半数が「半年の間、家族以外と会話をしていない」という実態も見逃せません。人と話す機会が少ないと、自然と会話力や社会性が低下してしまいます。また、孤立感や疎外感が募り、外部の世界に対する不安が増大します。これは、子どもたちが「自分はこのままで良いのだろうか」「外に出たいけれど、どうすればいいのか分からない」と感じ、ますます引きこもりから抜け出せなくなる悪循環を引き起こします。

2. 引きこもりのきっかけ

引きこもりの状態にある子どもたちの多くは社会的なつながりを持たず、家庭内での生活の大半をインターネットやゲームなど部屋での活動に費やしています。では、なぜ子どもは外の世界と距離を置くようになるのでしょうか。その背景には、学校関係や人間関係の問題が深く関わっています。

内閣府の調査によると、引きこもりのきっかけとして「学校関係」と「人間関係」が全体の35%を占めています。その中でも「不登校」が全体の18.5%を占めており、学校生活に適応できなかったことが引きこもりの要因となるケースが多いことが分かります。このデータをもとに、具体的にどのような出来事が子どもを引きこもりに追い込むのかを詳しく見ていきましょう。

引きこもりの最も大きな理由(内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査-ひきこもりに関する状況」2023年度)

学校が引きこもりのきっかけになる理由

学校は、子どもが社会性を学び、友人関係を築く場であると同時に、さまざまなストレスが生じる場でもあります。学校生活の中で発生する問題のうち、引きこもりのきっかけとなりやすいものを以下に挙げます。

① いじめや人間関係のトラブル

いじめは、不登校や引きこもりを引き起こす大きな要因の一つです。特にSNSの普及により、学校外でも誹謗中傷や仲間外れが発生しやすくなっています。いじめを受けた子どもは学校に行くことに強い恐怖心を抱き、次第に登校を避けるようになります。そして、その状態が続くと外出すること自体が怖くなり、家の中に閉じこもるようになるのです。

また、いじめがなくても人間関係の不和がストレスとなり学校に行きづらくなることがあります。友人グループの中で孤立したり、先生との相性が悪かったりすると、学校が「居場所のない場所」になってしまい、次第に足が遠のいてしまうのです。

② 学業の遅れと自信の喪失

授業についていけない、成績が思うように伸びない、といった学業面のストレスも、不登校や引きこもりの大きな要因となります。特に周囲の友達と比較される環境では、学習が遅れてしまった子どもは「どうせ頑張っても無理だ」と感じ、学ぶ意欲を失ってしまうことがあります。

一度「分からない」という状態が続くと授業に出るのが苦痛になり、学校に行くこと自体を避けるようになります。その結果、不登校が長期化し、やがて引きこもりへと移行してしまうのです。

③ 学校のルールや雰囲気が合わない

学校の規則が厳しすぎたり、先生の指導方法が合わなかったりすると、子どもは強いストレスを感じます。例えば校則が厳しく、少しの違反でも厳しく指導される環境では、萎縮してしまい登校が難しくなることがあります。また、集団生活に馴染めない子どもにとっては、学校という場そのものが苦痛となることもあります。

家庭環境が引きこもりのきっかけになる場合

学校関係の問題が引きこもりの直接的なきっかけとなることが多い一方で、家庭環境が間接的に影響を及ぼすケースもあります。例えば、以下のような家庭環境では、引きこもりが助長される可能性があります。

① 家庭内の不和や過干渉

家庭内での親子関係が良好でない場合、子どもは安心できる居場所を失い、社会との関わりを避けるようになります。例えば親が過度に厳しく接したり、逆に無関心であったりすると、子どもは自己肯定感を低下させ、引きこもる傾向が強くなります。また親が過干渉であったり、進路や学業に対して過度に期待をかけたりすると、子どもはプレッシャーを感じて逃げ場を求めて家に閉じこもることもあります。

② 生活習慣の乱れ

夜更かしや昼夜逆転の生活が続くと、学校に行くリズムが崩れて不登校や引きこもりに発展することがあります。特に、インターネットやゲームの過剰利用が習慣化すると昼夜逆転が固定化し、社会生活との接点を持つのが難しくなります。

3. 不登校と引きこもりの共通点

不登校が長期化すると子どもが家に閉じこもることが増え、引きこもりへと移行する可能性が高まります。この「不登校」と「引きこもり」は連続した状態でもあり、共通点も持っています。

不登校と引きこもりに共通する心理的特徴

不登校と引きこもりにある子どもたちは、共通して以下のような心理状態を抱えています。

① 外の世界に対する不安と恐怖

不登校の子どもは、多くの場合「学校に行くのが怖い」と感じています。その理由は、いじめや人間関係のトラブル、学業不振、先生との関係悪化などさまざまです。最初は「行きたくない」「ちょっと休みたい」という軽い気持ちで休むことが多いのですが、それが続くうちに「学校に行くのが怖い」という気持ちが強くなっていきます。

この状態が続くと、次第に「学校に行かない理由」が変化します。最初は「嫌なことがあるから行きたくない」と思っていたものが、次第に「学校に行かない期間が長くなりすぎて、今さら行けない」という気持ちに変わっていくのです。

そして、不登校が長期化すると、学校だけでなく、外の世界全体に対して恐怖を感じるようになり、引きこもりへと移行してしまうことがあります。

② 自己肯定感の低下

不登校や引きこもりの子どもは、自分自身に対する評価が低くなりがちです。「学校に行けない自分はダメだ」「みんなと違う自分はおかしい」といった考えが強まり、自己肯定感がどんどん下がっていきます。

特に、学校に行かない期間が長くなると、子どもは「周りのみんなは普通に学校に行っているのに、自分だけできない」と感じ、劣等感を抱くようになります。こうした感情は、外の世界との接触をさらに避ける原因となり、引きこもりの状態を強化してしまいます。

③ 時間の感覚が薄れる

不登校や引きこもりの子どもは、1日のリズムが乱れやすく、昼夜逆転の生活になることが少なくありません。特に、インターネットやゲームの利用が習慣化すると、気づかないうちに昼夜が逆転し、生活リズムが大きく崩れてしまいます。

自宅でよくしていること(内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査-ひきこもりに関する状況」2023年度)

このような生活を続けるうちに、「今日も学校に行けなかった」「今週も外に出なかった」といった感覚が薄れ、1日が1週間、1週間が1ヶ月、1ヶ月が1年、1年が10年とあっという間に過ぎてしまうことがあります。こうして時間の感覚が曖昧になり、「何かを始めよう」という気持ちを持ちにくくなってしまうのです。

不登校から引きこもりへの移行

不登校の子どもが必ずしも引きこもりになるわけではありませんが、多くの場合、不登校の状態が長引くと引きこもりへと移行してしまうリスクが高くなります。そのプロセスを簡単に説明すると、以下のような段階を踏むことが多いです。

  1. 学校に行きたくない理由がある(いじめ、勉強の遅れ、先生とのトラブルなど)
  2. 休みがちになる(最初は数日、次第に1週間、1ヶ月と増えていく)
  3. 「学校に行かないこと」が習慣化し、外出する機会が減る
  4. 家庭内での活動が中心になり、インターネットやゲームに依存し始める
  5. 社会との接点がなくなり、引きこもり状態へと移行する

このプロセスの中で重要なのは、早い段階で適切な対応を取ることです。特に、学校を長期間休むようになった時点で、保護者が「様子を見よう」と放置してしまうと、次第に外の世界と距離ができてしまい、引きこもりへと移行しやすくなります。

不登校と引きこもりの違いとは?

ここまで不登校と引きこもりの共通点について述べてきましたが、両者にはいくつかの違いもあります。

  • 不登校の段階では、外出する機会がまだ残っている(買い物や友達との遊びなど)
  • 引きこもりの段階では、家族以外との接触がほぼなくなる
  • 不登校の子どもは「いつかは学校に戻りたい」と考えていることが多いが、引きこもりの子どもは「どうやって戻ればいいか分からない」と感じている

つまり、不登校の段階で適切な介入を行うことで、引きこもりへの移行を防ぐことができるのです。

4. 見守るだけでは変わらない理由

ここまで、不登校と引きこもりには共通点が多く、不登校が長期化することで引きこもりへと移行する可能性が高まることを説明しました。しかし、ここで重要なのは「子ども自身がこの状態を望んでいるわけではない」という点です。

確かに、お子様が「学校には行きたくない」と言うことはあるかもしれません。しかし、それは「何もしたくない」「ずっとこのままでいたい」という意味ではありません。むしろ、「どうすればいいか分からない」「戻るきっかけがつかめない」という不安や迷いを抱えていることがほとんどなのです。

このような状態にある子どもに対し、「無理に学校へ行かせるのはよくないから、本人が動き出すまで待とう」と考える保護者の方も多いでしょう。しかし、「見守るだけ」では多くの場合、状況は変わりません。むしろ、時間が経つほどに社会復帰のハードルは上がり、引きこもりの状態が固定化してしまう危険性があるのです。

時間が経つほど抜け出しにくくなる理由

「今はまだ休む時期」「そのうち自分から動き出すだろう」と考え、何もアクションを起こさずにいると、お子様は次のような状態に陥る可能性が高まります。

① 生活リズムの乱れが固定化する

不登校や引きこもりの状態が続くと、昼夜逆転の生活になることがよくあります。特に、インターネットやゲームに依存するようになると、夜遅くまで活動し、昼間に眠るというリズムが定着してしまうのです。

この状態が続くと、朝起きて学校へ行く生活がどんどん遠ざかり、「学校に戻る」という選択肢が現実味を失ってしまいます。最初は「少し休みたい」という気持ちだったとしても、半年、1年と時間が経つうちに、「どうやって戻ればいいか分からない」「今さら学校に行ってもついていけない」という不安が強くなり、ますます動き出せなくなってしまうのです。

② 自己肯定感が低下する

学校に行かない期間が長くなると、子どもは「自分は普通のことができない」と感じるようになります。特に、周囲の友達が学校に通い、勉強や部活動に励んでいるのを見たり聞いたりすると、劣等感が強まり、「自分だけが取り残されている」という意識が芽生えてしまいます。

このような状態になると、「学校に戻ること」そのものがプレッシャーとなり、「行きたいけど行けない」「何をするにも自信が持てない」という悪循環に陥ります。結果として、「今さら戻るのは無理だ」「もう自分の人生は終わりだ」と考えるようになり、積極的に行動を起こす意欲を失ってしまうのです。

③ 家庭が「居心地の良い避難所」になる

子どもにとって、家庭は本来安心できる場所であるべきですが、長期間引きこもっていると、「家庭の外=危険、家庭の中=安全」という極端な意識が生まれることがあります。

たとえば、「家にいれば何も嫌なことが起こらない」「親は何も言わずに受け入れてくれる」といった環境が続くと、外に出ることの必要性を感じなくなります。こうして、「外の世界に出ること」がますます怖くなり、引きこもり状態が強化されてしまうのです。

「見守ること」と「放置すること」は違う

ここで大切なのは、「見守ること」と「放置すること」の違いを理解することです。

確かに、不登校や引きこもりの子どもに対して、頭ごなしに「学校に行きなさい!」と強制するのは逆効果になりかねません。しかし、何のアクションも起こさずにいると、お子様は「このままでいいのかな?」という迷いすら抱かなくなってしまいます。

適切な見守りとは、お子様の状況を理解しつつ、「どうすれば動き出せるか」を一緒に考え、具体的なサポートを提供することです。そして、そのためには不登校のメカニズムを知って、適切な対処を行うことが重要になります。

注意しなければいけないことは、「不登校のきっかけ」と「不登校が続いてしまう原因」が異なるケースが多い点です。例えば学校の人間関係がきっかけで登校できなくなったとしても、1ヶ月経っても不登校のままである要因は別にある、という点です。不登校が引きこもりになる前に、子どもへの適切な支援を行っていきましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

新学期に向けた家庭で出来る不登校対策とは?

新学期に向けた家庭で出来る不登校対策とは-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防と再登校支援を専門とし、ToCo(トーコ)株式会社の顧問として多くの家庭が抱える課題に寄り添いながら解決策を提案してきました。

新学期が近づくにつれ、不登校に関するご相談が増える傾向にあります。「うちの子は大丈夫だろうか」「また学校に行けなくなってしまうのではないか」と不安を抱える保護者の方々に向けて、家庭でできる不登校対策を詳しくお伝えしていきます。

本記事では、新学期における不登校の実態と傾向、不登校になりやすい理由、子どもの兆候の見つけ方、そして具体的に家庭で実践できる予防策について解説します。これまでの経験から導き出した実践的なアドバイスを盛り込みながら、保護者の皆さまにとって役立つ情報を提供することを目指しました。

参考:文部科学省「不登校に関する基礎資料


目次


第一章:新学期における不登校の傾向と実態

新学期が始まると小中学生の不登校が急増することは、学校界隈ではよく知られている事実です。特に、夏休み明けや春休み明けのタイミングでは、不登校の子どもが一気に増える傾向にあります。では、なぜこの時期に不登校が増えるのでしょうか?

文部科学省の調査によると、小中学生の不登校の発生率は年々上昇しています。かつては「不登校=特殊なケース」と考えられていましたが、現在では決して珍しいことではなくなりました。特に新学期は、これまで普通に通っていた子どもが突然学校へ行けなくなるケースが多発する時期です。

1.1 休み明けに急増する不登校

夏休みや冬休みが終わると、一部の子どもは登校を渋るようになります。これは単なる「休みボケ」ではなく、心理的なハードルが一気に高まるためです。

長期休暇中、子どもは学校のストレスから解放され、自分のペースで過ごせます。しかし、休みが終わると、そのストレスが再び襲ってきます。「あの先生とまた顔を合わせるのか」「クラスメイトにどう思われるだろう」「勉強についていけるか不安だ」といった不安が膨れ上がり、登校が難しくなるのです。

特に、前学期の終わりに何らかのトラブルを抱えていた場合、その不安はさらに強まります。例えば、学級内の人間関係に悩んでいた子どもや、成績の低下にショックを受けた子どもは、「新学期に行くのが怖い」という感情を抱えがちです。

1.2 「4月と9月」は不登校の壁ができる時期

新学期に不登校が増える理由の一つに、「環境の変化による心理的な負担」があります。

・4月の新学期は、クラス替えや担任の変更があり、新しい環境に適応しなければなりません。「また一から友達を作らなければならない」「新しい先生とうまくやれるだろうか」という不安が、不登校につながるケースが多いです。

・9月の二学期は、夏休み中の生活リズムの乱れが影響します。長期休暇中は遅寝遅起きの習慣がついてしまい、朝早く起きて登校すること自体が負担になりやすくなります。また、学習面での遅れが気になり、授業についていけるかどうかの不安が強まる時期でもあります。

1.3 親が「うちの子は大丈夫」と思っていても油断できない

「うちの子はこれまで学校に行けていたから、新学期も問題ないだろう」と思っていると、突然不登校の兆候が現れることがあります。不登校の原因は、目に見える問題だけではなく、子どもの内面で静かに進行していることも多いのです。

例えば、前年度は何とか頑張っていた子どもが、新学期を迎えた途端に気持ちが折れてしまうケースがあります。これは、「もう頑張れない」「これ以上は無理だ」と感じる限界点が、新学期のタイミングで訪れるためです。

また、不登校経験のない子どもでも、突然「学校に行きたくない」と言い出すことがあります。これは、長期休暇中に「学校がない生活」の快適さを知り、再び学校へ戻ることが苦痛に感じるためです。

第二章:新学期に不登校になりやすい理由

では、新学期になると不登校が増える理由は具体的に何なのでしょうか?

新学期に不登校が発生しやすい理由は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

2.1 環境の変化によるストレス

新学期は、子どもにとって大きな環境の変化を伴います。クラス替え、新しい担任、新しい友人関係——これらの要素は、子どもにとって大きな心理的負担となります。

特に、内向的な性格の子どもは、新しい環境への適応に時間がかかるため、新学期は極度のストレスを感じやすくなります。また、「去年うまくいったから今年も大丈夫」とは限らず、些細なきっかけで不登校になってしまうことも少なくありません。

2.2 学業の負担と自己肯定感の低下

新学期が始まると、学習内容が難しくなるため、勉強についていけなくなる子どもが増えます。「授業が分からない」「テストの点数が悪い」といった状況が続くと、子どもは自信を失い、登校を避けるようになります。

特に、「完璧主義」の傾向がある子どもは、少しの失敗でも「自分はダメだ」と思い込みやすく、不登校へとつながりやすいです。

2.3 友人関係の不安

新学期になると、「誰と一緒にいるか」という問題が再び浮上します。仲の良い友人とクラスが分かれてしまったり、新しい友人関係を築かなければならなかったりすることで、子どもは大きなストレスを抱えます。

特に、過去にいじめやトラブルを経験した子どもは、「また同じことが起きるのではないか」と恐怖心を抱き、不登校に陥るケースが少なくありません。

第三章:子どもの不登校兆候の見つけ方

新学期に向けて、不登校の兆候を見つけることは非常に重要です。多くの保護者は、子どもが「学校に行きたくない」と口にするまで気づかないことが多いですが、実はその前から様々なサインが現れています。早期に兆候を察知し、適切な対応を取ることで、不登校を未然に防ぐことが可能です。ここでは、子どもが発する「心のSOS」に気づくためのポイントをお伝えします。

3.1 身体的なサインを見逃さない

子どもが不登校になりかけているとき、まず表れるのは「体調の変化」です。これは心理的ストレスが身体的な症状として現れるためで、以下のような兆候が見られることが多いです。

  • 朝になると腹痛や頭痛を訴える
    夜は元気に過ごしているのに、登校時間が近づくと突然「お腹が痛い」「頭が痛い」と言い出す場合は要注意です。これが週に数回続く場合、不登校の前兆である可能性が高くなります。
  • 食欲の変化
    ストレスが強いと、食欲が極端に増減します。「急に食べなくなった」「好きだった食べ物を残すようになった」「お菓子ばかり食べるようになった」などの変化が見られたら、子どもが心理的なストレスを抱えている可能性があります。
  • 睡眠の乱れ
    不登校の兆候として多いのが「睡眠障害」です。夜更かしが増え、朝起きるのがつらくなると、登校がますます困難になります。また、夜中に何度も目を覚ます、悪夢をよく見る、寝る前に不安そうにするなどの様子があれば、学校へのストレスが関係している可能性が高いです。
  • 疲れやすい、だるそうにしている
    心理的な負担が大きくなると、子どもは常に「疲れた」と感じるようになります。特に、休日は元気に遊んでいるのに、平日になると「疲れた」「だるい」と言い出す場合、学校生活への不安やストレスが影響しているかもしれません。

3.2 行動の変化に注意する

子どもが不登校になりかけているとき、日常の行動に微妙な変化が現れます。特に以下のような行動は、子どもが「学校に行くのがつらい」と感じているサインかもしれません。

  • 学校の話を避ける
    以前は「今日、学校でこんなことがあったよ」と話していたのに、急に学校の話題を避けるようになった場合、何かしらの悩みを抱えている可能性があります。特に、「先生はどう?」と聞いたときに曖昧な返事をする、あるいは「別に」「普通」としか答えなくなる場合は要注意です。
  • 準備をしなくなる、忘れ物が増える
    学校へ行くことへの関心が薄れると、宿題をやらなくなったり、持ち物の準備を後回しにしたりするようになります。これまできちんとしていた子どもが、急に「忘れ物が多くなる」「宿題をやらなくなる」といった変化を見せた場合、学校への意欲が低下している可能性があります。
  • 登校時間が近づくと不機嫌になる
    朝になるとイライラしたり、些細なことで怒ったりするのも、不登校の兆候の一つです。学校へ行くことを考えるだけでストレスを感じているため、登校前に機嫌が悪くなることがよくあります。

3.3 子どもの「心の声」を聞く方法

子どもが不登校の兆候を見せているとき、一番大切なのは「無理に問い詰めないこと」です。「どうして行きたくないの?」と問い詰めると、子どもは「責められている」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

代わりに、子どもが話しやすい雰囲気を作ることが大切です。例えば、学校とは関係のない話題から始め、リラックスした状態で「最近どう?」とさりげなく尋ねると、子どもは少しずつ本音を話し始めることがあります。また、親が「学校に行かせなければ」という気持ちを抑え、「あなたが大切だよ」というメッセージを伝えることが、子どもに安心感を与えるポイントです。

第四章:家庭で実践できる不登校予防

不登校を未然に防ぐためには、家庭でのサポートが非常に重要です。ここでは、具体的な予防策について詳しくお伝えします。

4.1 朝の習慣を整える

新学期に向けて最も効果的な対策の一つが、「朝の習慣を整えること」です。夏休みや春休みの間に夜更かしや寝坊の習慣がついてしまうと、学校が始まったときに登校が苦痛になりやすくなります。

具体的な対策:

  • 休み中でも「平日と同じ時間に起きる」習慣を作る
  • 朝ごはんをしっかり食べることで体内リズムを整える
  • 午後は外に出て日光を浴びる(体内時計をリセットする効果がある)

4.2 子どもの不安を和らげる

新学期が近づくと、多くの子どもが「ちゃんとやっていけるかな」「友達と仲良くできるかな」と不安を抱きます。こうした不安を和らげるために、親ができることは何でしょうか?

  • 「大丈夫だよ」と言葉で安心させる
    「新学期、楽しみだね!」とポジティブな声かけをすることで、子どもは「大丈夫なんだ」と思えるようになります。
  • 学校の話を楽しい話題にする
    「今年はどんなことが楽しみ?」と聞くと、子どもは前向きな気持ちを持ちやすくなります。
  • 小さな成功体験を積ませる
    夏休みの間に「できた!」という経験を増やしておくと、新学期に対する自信がつきます。

4.3 「行くのが当たり前」にしない

「学校に行くのが当たり前」と思わせるのではなく、「学校に行くことで楽しいことがある」と感じられる環境を作ることが大切です。そのためには、子どもの気持ちに寄り添いながらも、少しずつ登校に向けた準備を進めていくことが重要です。

第五章:家庭での具体的なサポート方法

ここまで、新学期に不登校が増える理由やその兆候、そして予防のための基本的な対応についてお伝えしてきました。しかし、「兆候に気づいたけれど、実際にどう対応すればいいのかわからない」「すでに学校を休みがちになっているけれど、どうすれば登校を促せるのか」と悩む保護者の方も多いでしょう。

そこで本章では、家庭でできる具体的なサポート方法について詳しくお伝えします。不登校を防ぐためには、子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつ前向きな変化を促していくことが重要です。

5.1 「無理に行かせる」のではなく、「行きやすい環境」を作る

不登校の兆候がある子どもに対して、「明日は絶対に学校に行きなさい!」と強制することは逆効果です。子どもは「行かなきゃいけない」というプレッシャーに押しつぶされ、ますます登校が難しくなってしまいます。

そこで大切なのは、「学校に行くこと」をゴールにするのではなく、「学校に行きやすい環境を作る」ことです。そのために、次のようなアプローチが有効です。

まずは学校の話をしすぎない
「学校はどう?」と何度も聞かれると、子どもはプレッシャーを感じます。学校について話すよりも、日常の楽しい話題を増やし、子どもが安心できる雰囲気を作ることが大切です。

「行かなくてもいい」とは言わないが、「行かないとダメ」とも言わない
「別に行かなくてもいいよ」と言ってしまうと、子どもは「もう行かなくていいんだ」と思い込んでしまいます。一方で、「行かないとダメ!」と強く言うのもプレッシャーになります。「どうしたら行きやすくなるかな?」と、子どもの気持ちを引き出すような声かけが効果的です。

学校とつながりを持ち続ける
完全に学校と断絶すると、復帰のハードルが高くなります。担任の先生と連携しながら、「宿題だけ提出する」「放課後に先生と少し話す」など、少しでも学校とつながりを持ち続けることが重要です。

5.2 「朝の支度」がスムーズにできる工夫

登校を渋る子どもの多くは、「朝の準備」そのものに心理的な負担を感じています。

例えば、制服を着るだけで「学校へ行かなければならない」とプレッシャーを感じたり、ランドセルを背負うと「今日も嫌なことがあるかもしれない」と不安になったりすることがあります。

そこで、朝の支度をスムーズにするために、次のような工夫を取り入れてみてください。

朝起きる時間を一定にする
生活リズムを整えることは、不登校予防において非常に重要です。休日も含め、毎日同じ時間に起床する習慣をつけましょう。

制服を着るのを手伝う
制服を着ることが負担になっている場合は、「一緒に着替えようか?」と声をかけ、少し手伝ってあげるのも効果的です。「今日はとりあえず着替えるだけでもいいよ」と、ハードルを下げることも大切です。

朝食の時間を楽しみにする
「朝起きたら好きなパンがあるよ」「朝ごはんの後に少しゲームしよう」など、朝起きること自体をポジティブなものにする工夫をしてみましょう。

家の中の動線を変える
登校を嫌がる子どもの中には、「玄関を通ること」自体にストレスを感じている場合もあります。例えば、登校時間になったらリビングでしばらく過ごすなど、いつもと違う動線を作ることで、心理的な負担を和らげることができます。

5.3 「小さな成功体験」を積み重ねる

子どもが学校に行くことを不安に感じている場合は、「登校=大きな負担」と思い込んでいることが多いです。そこで、学校に関する「小さな成功体験」を積み重ねることで、「行けるかもしれない」と思えるようにすることが大切です。

「校門まで行ってみる」「教室の前まで行く」など、段階的に進める
「最初から1日フルで登校しなければならない」と思うと、子どもは大きなプレッシャーを感じます。「まずは校門まで行く」「保健室にだけ行ってみる」など、ハードルを低く設定することで、少しずつ慣れていくことができます。

友達と一緒に登校する機会を作る
仲の良い友達と一緒に登校することで、学校への不安が和らぐことがあります。可能であれば、登校前に近所の友達と合流できるような環境を作るのも良いでしょう。

学校以外の「成功体験」を増やす
「学校に行けなかった」という経験が積み重なると、子どもは「自分はダメだ」と思い込んでしまいます。そのため、学校以外の場で小さな成功体験を積むことも大切です。例えば、「料理を手伝った」「好きな本を1冊読んだ」「習い事で先生に褒められた」といった経験が、自信につながります。

第六章:まとめ 〜家庭での関わり方が不登校を左右する

新学期は、不登校が増えやすい時期です。しかし、子どもの小さなサインに早く気づき、適切なサポートをすることで、学校へ行くことへのハードルを下げることができます。

  • 不登校の兆候を見逃さないこと
  • 無理に行かせるのではなく、「行きやすい環境」を作ること
  • 朝の習慣を整え、心理的な負担を減らすこと
  • 小さな成功体験を積み重ねること

こうした工夫をすることで、子どもが「学校に行けるかもしれない」と思えるようになり、不登校を防ぐことができます。

不登校に悩むと、親も「どうすればいいの?」と不安になってしまいます。しかし、焦らず子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつサポートしていくことが何よりも大切です。

お子さんが新学期を迎えるにあたって、少しでも前向きな気持ちになれるよう、この記事が参考になれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校解決にどれくらいの費用と時間をかけるべきか?

不登校解決にどれくらいの費用と時間をかけるべきか-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。また、不登校予防や再登校支援を専門とするToCo株式会社の顧問も務めております。
本日は、「不登校解決にどれくらいの費用と時間をかけるべきか?」というテーマについて、お話しさせていただきます。

参考:文部科学省「不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援について」


目次


不登校業界における金銭トラブル

近年、不登校支援をうたう業者との間で、金銭トラブルが増加しています。無料相談を受けた後、高額なサービスを強引に勧められたり、効果が見られないにもかかわらず返金に応じてもらえなかったりといった事例が報告されています。例えば、ある保護者の方は、無料相談に参加した後、数十万円のプログラムを契約するよう強く勧められ、断りきれずに契約してしまったものの、期待した効果が得られず、返金もされなかったといいます。このようなトラブルは、保護者の焦りや不安につけ込む悪質な業者によって引き起こされることが多いのです。

また、料金体系が不明瞭なまま契約を迫られるケースも見受けられます。具体的なサービス内容や料金が明示されていない場合、後になって予想外の高額請求を受ける可能性があります。不透明な料金設定や強引な勧誘には、十分な警戒が必要です。

さらに、効果を誇大に宣伝し、実際には期待した成果が得られないケースも報告されているため、過度な宣伝文句に惑わされないよう冷静な判断が求められます。不登校の解決には、各家庭やお子様の状況に応じた適切な支援が必要であり、万能な解決策は存在しません。

このような金銭トラブルを避けるためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 料金体系の明確化:サービスを受ける前に、具体的な料金や追加費用の有無を確認しましょう。
  • 契約内容の確認:契約書や利用規約をしっかりと読み、不明点は質問し、納得してから契約を結ぶことが大切です。
  • 第三者の評価を参考にする:口コミや評判、第三者機関の評価などを調べ、信頼性のある業者を選ぶよう心がけましょう。

お子様のために最善の支援を求めるあまり、焦って判断してしまうこともあるかもしれません。しかし、冷静に情報を収集し、信頼できる支援を選ぶことが、お子様の未来にとって最も重要です。

費用ではなく、企業を見よう

不登校支援を選ぶ際、費用の多寡だけで判断するのは危険です。高額なサービスが必ずしも高品質であるとは限らず、逆に低価格でも効果的な支援を提供している企業も存在します。重要なのは、提供されるサービスの内容や企業の信頼性です。

消費者庁も、「サービス価格が明示されていない場合は十分に注意しましょう」と注意喚起を行っています。料金を公開していない企業にはその理由があると考え、慎重に判断することが求められます。例えば、料金を明示しないことで、個別に高額な料金を請求する可能性や、サービス内容に自信がないために詳細を隠している場合も考えられます。Topページやサービスページが事例や無料相談などで占められていて、料金の記述が無い場合は注意が必要です。

また、企業の実績や支援内容を確認することも重要です。具体的な支援事例や成功率、専門家の資格や経験などを調べることで、その企業が信頼に足るかどうかを判断できます。例えば、ToCo株式会社では、再登校支援サービスの詳細や料金を公式サイトで明示しています。さらに、具体的な支援事例や導入効果も公開しており、透明性の高い情報提供を行っています。

さらに、第三者機関の評価や口コミも参考になります。実際にサービスを利用した保護者の声や、専門家からの推薦など、多角的な情報を集めることで、より客観的な判断が可能となります。ただし、口コミだけに頼らず、公式な情報や直接の問い合わせを通じて確認することも大切です。

最終的には、費用対効果を考慮しつつ、お子様やご家庭の状況に最適な支援を提供してくれる企業を選ぶことが重要です。費用だけでなく、企業の信頼性や支援内容、透明性など、多角的な視点から判断し、後悔のない選択をしていただくことが推奨されます。

不登校解決と時間の関係

不登校の問題を考えるうえで、費用と並んで重要なのが「時間」です。お子様が学校に行かなくなったとき、「しばらく様子を見よう」「本人が落ち着くまで待とう」と考える保護者の方も多いかもしれません。しかし、不登校が長引くほど、解決の難易度は格段に上がることが証明されています。

お子様にとって、最初の数週間は「学校に行かない」という状態が非日常です。しかし、それが何カ月も続くと、「家にいるのが普通」という状態に変わり、それが「コンフォートゾーン(快適領域)」になってしまいます。人間は基本的に、現状を維持しようとする心理が働くため、一度コンフォートゾーンが確立されると、そこから抜け出すことが非常に難しくなります。

特に、不登校が半年以上続くと、次のような心理的変化が起こることが知られています。

  • 「学校に行く」こと自体が非現実的に思える
    学校に行くことが「遠い過去の出来事」のように感じられ、登校すること自体に強い抵抗感を抱くようになります。
  • 社会的スキルが低下し、友達との関係が薄れる
    長期間、人と関わらない生活が続くと、コミュニケーションの機会が減り、対人関係に自信がなくなります。
  • 自己肯定感が低下し、「自分はダメな人間だ」と思い込む
    「学校に行けない自分」を責めるようになり、自己否定が強まることでますます外の世界に出にくくなります。

このような悪循環に陥ると、「子どもが自分から行きたいと言うまで待つ」という選択肢は、現実的ではなくなってしまいます。もちろん、お子様の気持ちを無視して無理に学校に連れて行くことは逆効果ですが、保護者が「どうすれば登校へのハードルを少しでも下げられるか」を常に考え、働きかけることが重要です。

早期解決の重要性

ここで、一つ考えてみていただきたいのは、「不登校が始まったばかりの時期」と「不登校が長期化した後」では、解決にかかる時間が大きく異なるという点です。

例えば、不登校になって1カ月以内の段階で適切な介入を行えば、多くの場合、3カ月以内に登校を再開できる可能性があります。しかし、1年以上続いた場合、元の生活に戻るまでに数年を要することも少なくありません。それほど、時間の経過は大きな影響を与えるのです。

では、なぜ早い対応が効果的なのでしょうか?その理由は、人間の心理と環境の変化にあります。次の章では、行動心理学の観点から、短期間での解決がなぜ有効なのかを解説します。

行動心理学から見た短期解決の利点

人間の行動は、環境に強く影響を受けます。例えば、初めて職場に出勤した日を思い出してください。慣れない環境に緊張し、ストレスを感じたかもしれません。しかし、1カ月もすると、その環境に慣れ、違和感がなくなっていたのではないでしょうか?

この現象は「環境適応」と呼ばれ、人は1カ月ほどで新しい状況に順応する性質を持っています。これは、不登校の解決にも大きく関わります。例えば、以下のようなステップを踏むことで、お子様の環境を変え、登校へのハードルを下げることが可能になります。

  • 家庭内のルールを変える
    学校に行かない状態が続くと、昼夜逆転やゲーム漬けといった生活リズムの乱れが生じやすくなります。まずは「朝起きる」「外に出る」といった基本的なルールを設定し、学校に行かない間も規則正しい生活を送ることが大切です。
  • 外に出る習慣をつくる
    学校に行かない日が続くと、家の外に出ること自体が大きなストレスになります。そのため、まずは「週に1回、親と一緒に散歩する」「図書館やカフェに行く」といった、小さな変化を加えることが有効です。

「慣れ」の前に動く

行動心理学の観点から見ても、不登校が長引くと、それ自体が「日常」になり、変化を起こすのが難しくなります。そのため、短期間のうちに適切な働きかけを行い、環境を少しずつ変えることが、不登校解決のカギとなります。

まとめ:不登校解決にかけるべき費用と時間

不登校の解決には、「どれだけ費用をかけるか」ではなく、「どのように正しく投資するか」が重要です。そして、それと同じくらい「どれだけ早く行動できるか」が結果を大きく左右します。

  • 不透明な料金体系の業者には注意し、信頼できる企業を選ぶ
  • 長引けば長引くほど解決が難しくなるため、早期対応を心がける
  • 行動心理学を活用し、少しずつ環境を変えることが効果的

「子どもが行く気になるまで待とう」と思っている間に、不登校は固定化してしまいます。かといって、無理に学校に行かせることも逆効果です。重要なのは、親が適切なサポートを行い、お子様が自然に学校に戻れるような環境を整えることです。

ToCo株式会社では、こうした問題に直面しているご家庭向けに、具体的な解決策を提供しています。お子様の状況に合わせた支援を行い、スムーズな再登校をサポートすることが可能です。お悩みの際は、ぜひご相談ください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?

私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問も務めております。
本日は、「私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?」というテーマについてお話しします。

多くの保護者の方々は、私立中学校に通うお子様が不登校になる可能性を低く見積もりがちです。「せっかく頑張って合格したのだから、楽しく通えるはず」「優秀な子が集まっているのだから、不登校になる子は少ないだろう」──このように考えている方も多いのではないでしょうか?
しかし、実態としては、私立中学校でも不登校の問題は深刻です。

2023年度の日本の私立中学校における不登校児童数8,120人に上ります。これは、公立中学校に比べて割合としては少ないものの、「不登校になりにくい」と思われている私立中学校でも、相当数の子どもが学校に通えなくなっていることを意味します。

私立中学校での不登校は、公立中学校とは異なる要因が絡んでいることが多く、対策も異なります。本稿では、私立中学校で不登校になりやすい理由を具体的に掘り下げ、保護者がどのように対応すればよいかを詳しく解説していきます。


目次


私立中学にも不登校はある――「まさかうちの子が」とならないために

「私立だから大丈夫」という誤解

「私立に入れたのだから、不登校の心配はない」と考えていませんか?
実は、この考えが落とし穴です。多くの保護者が、私立中学校における不登校の実態を知らず、「うちの子は大丈夫」と思い込んでしまう傾向にあります。しかし、これは大きな誤解です。

私立中学校では、生徒の質が高い=不登校が少ないというイメージが先行しがちですが、現実には、むしろ私立特有の環境が子どもにとって過度なプレッシャーとなり、不登校を引き起こしてしまうことがあるのです。

例えば、私立中学校に通う生徒の多くは、小学生の頃から厳しい受験勉強を経験しています。長い期間、勉強中心の生活を送り、ようやく合格を勝ち取った子どもたちは、「入学することがゴール」となりがちです。その結果、入学後の学習環境についていけなくなり、燃え尽き症候群のような状態になってしまうこともあります。

また、私立中学校では、同じレベルの学力を持つ子どもたちが集まるため、小学生時代に「学力が武器」だった子どもが、自信を失いやすくなるという問題もあります。「小学校では成績トップだったのに、中学校に入ったら普通になってしまった……」と感じる子どもは少なくありません。このようにして、学力をアイデンティティの拠り所にしていた子どもほど、不登校になりやすい傾向があるのです。

さらに、私立中学校の校風や指導方針が、必ずしも全ての子どもに合うとは限りません。偏差値の高さだけで学校を選んだ場合、入学後に「思っていた雰囲気と違う」「人間関係がうまくいかない」といった悩みを抱え、不登校に繋がるケースもあります。

「私立でも不登校になる可能性はある」と考えることが重要

「私立だから大丈夫」と思い込んでしまうと、子どもの小さなサインを見落としやすくなります。

  • 「最近、学校の話をしなくなった」
  • 「朝、起きるのが極端につらそうになった」
  • 「成績が悪くなったわけではないのに、学校を休みたがる」

こうした変化は、子どもが学校に対してストレスを感じ始めているサインかもしれません。

不登校は、ある日突然起こるわけではなく、徐々に進行していくものです。「私立だから」という理由で安心せず、日々の子どもの様子を注意深く見守ることが大切です。


不登校になりやすい理由①「受験ゴールで燃え尽きてしまう」

受験後に「燃え尽きる」子どもたち

小学生の頃から塾に通い、毎晩遅くまで勉強し、休日もほとんど塾の授業や宿題に追われる生活。こうした努力の末、私立中学校に合格した子どもたちは、「合格」という目標を達成した途端に、エネルギーが尽きてしまうことがあります。

これは、いわゆる「燃え尽き症候群」の一種です。受験勉強のプレッシャーから解放されると同時に、「もう頑張らなくてもいい」という気持ちになり、学校生活に対する意欲を失ってしまうのです。

文部科学省の調査では、中学生の不登校の理由のトップが「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった(32.2%)」という結果になっています。このデータからも分かるように、受験がゴールとなり、その後の目標を見失ってしまうことが、不登校の原因の一つになっているのです。

対策:「受験合格」がゴールではないことを伝える

この問題に対処するには、受験の段階から「合格が最終目的ではない」ことを子どもに伝えることが重要です。

具体的には、以下のような点を意識するとよいでしょう。

  1. 「受験の先」に目を向ける習慣をつける
    受験は、あくまでも人生の通過点であり、そこからさらに成長していくためのステップの一つに過ぎません。「合格したら終わり」ではなく、「その先にどんな楽しいことが待っているか」を親子で話し合うことが大切です。
  2. 入学後の生活を具体的に想像させる
    「どんな部活に入りたいか?」「どんな友達を作りたいか?」など、合格後の生活を具体的に考えさせることで、受験だけに集中しすぎることを防げます。
  3. 成功体験を「受験」以外にも持たせる
    受験以外にも、小さな成功体験を積み重ねることで、「勉強以外にも楽しいことがある」と思えるようになります。

このように、受験がゴールではなく、新たなスタートであることを伝え、受験後のモチベーション低下を防ぐことが、不登校を防ぐ上で重要です。

不登校になりやすい理由②「勉強面のアイデンティティが崩れる」

「小学校では優秀だったのに……」という現実

私立中学校に進学する子どもたちは、小学生時代に塾通いを経験し、学力で高い評価を得ていた子が多いです。「勉強が得意」「テストで良い点を取ることが誇りだった」「クラスで一番だった」という経験は、彼らの自尊心を形作る重要な要素となります。

しかし、私立中学校に入ると状況は一変します。今まで「学年トップ」だった子も、周囲を見渡せば同じレベルの生徒ばかり。自分の「強み」だった勉強が通用しないと気づいた瞬間、アイデンティティが崩れ、精神的に大きなダメージを受けるのです。

たとえば、こんなケースがあります。

  • 小学校時代は「勉強が得意な自分」が誇りだったのに、中学校では普通レベルになってしまった。
  • どんなに頑張っても、学年トップの座には届かない。
  • それまで親や先生に褒められてきた「成績」という評価基準がなくなり、自分が価値のない人間に思えてしまう。

これらの経験は、子どもの自己肯定感を大きく傷つけ、「どうせ自分はダメなんだ」「頑張っても意味がない」と思い込ませてしまいます。そして、勉強への意欲を失い、学校そのものに行く意味を感じられなくなるのです。

対策:「勉強ができる=価値がある」という考えを変える

この問題に対処するためには、「勉強ができること=人間として優れていること」ではないという価値観を、親子で共有することが重要です。

  1. 「努力の過程」を評価する習慣をつける
    点数や順位ではなく、「どれだけ頑張ったか」を認めるようにしましょう。たとえば、「結果よりも、コツコツ勉強したことがすごい」といった声かけを意識することで、子どもは結果に一喜一憂せず、努力そのものを大切にするようになります。
  2. 「できること」を広げる機会を作る
    勉強だけが子どもの価値ではありません。スポーツ、音楽、アート、プログラミングなど、他の分野にも目を向けることで、「自分には勉強以外にも強みがある」と気づくことができます。
  3. 「勉強ができるのは能力ではなく、適性の問題」だと伝える
    学力は、生まれ持った才能ではなく、環境や努力の積み重ねによるものです。「今まで塾の勉強が合っていただけで、中学の勉強はまた違うもの」と考えることで、「できなくなった自分=価値がない」とは思わなくなります。

このような考え方を身につけることで、「勉強が得意」というアイデンティティが揺らいでも、他の部分で自信を持つことができるようになります。


不登校になりやすい理由③「偏差値重視で校風が合わない」

「偏差値の高い学校=良い学校」ではない

私立中学校の選び方として、「偏差値の高い学校に行くことが成功」という考え方が一般的です。しかし、この価値観に従って学校を選んだ結果、子どもが不登校になってしまうケースが少なくありません。

特に、以下のようなケースでは注意が必要です。

  • 「とにかく偏差値の高い学校を目指そう」と親が決めた
  • 「友達が受験するから、自分も同じ学校に行きたい」と決めた
  • 学校の特色や校風を十分に調べず、学園祭やパンフレットの印象だけで決めた

子どもはまだ、「自分に合う環境とは何か」を正しく判断するのが難しい年齢です。親が「良い学校」と思って選んでも、子どもにとっては「合わない学校」だったということは珍しくありません。

対策:「偏差値」よりも「子どもに合う環境」を優先する

  1. 学校選びの際、実際の雰囲気を確認する
    偏差値だけでなく、学校の雰囲気を肌で感じることが重要です。最近では、学校の口コミを確認できるサイト(https://school-reviews.com/)などもあるため、事前に調査するのもおすすめです。
  2. 「どういう学校なら楽しく通えるか?」を話し合う
    「校則が厳しすぎると辛い」「競争が激しい学校は合わないかも」など、事前に子どもの性格と学校の特色が合うかを考えておくことが大切です。
  3. 入学後に「合わない」と感じたら、転校を検討するのも選択肢
    どうしても学校が合わない場合は、無理に通わせ続けるのではなく、転校を視野に入れることも一つの手です。しかし、環境の変化はデメリットが大きいため事前の学校選択がより重要です。

学校選びの段階から、「偏差値」よりも「子どもにとって相性が良いかどうか」を優先することが、不登校を防ぐための大きなポイントとなります。


私立中学校で不登校にならないために

私立中学校は、公立に比べて教育環境が整っている反面、「受験ゴールによる燃え尽き」「学力アイデンティティの喪失」「偏差値重視のミスマッチ」といった独自の不登校リスクが存在します。

では、親としては何を意識すればよいのでしょうか?

  1. 受験はゴールではなく、スタートであることを伝える
    → 受験の成功にとらわれず、その後の学校生活を楽しむことを意識させる。
  2. 勉強以外の成功体験を持たせる
    → 学業以外の分野でも「自分には価値がある」と感じられる機会を作る。
  3. 学校選びは「偏差値」よりも「相性」を重視する
    → 校風や雰囲気が子どもに合っているかをしっかり確認する。

不登校は突然起こるものではなく、小さなサインの積み重ねによって生じます。早めに気づき、適切な対応をすることで、未然に防ぐことができます。

「私立だから安心」ではなく、「私立だからこそ注意すべき点がある」と認識し、お子様の変化を見逃さないようにしましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

ソーシャル・エモーショナル学習 〜社会を生き抜く力を育む〜

ソーシャル・エモーショナル学習-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの子どもたちとその保護者の方々と向き合ってきました。不登校は決して珍しいことではなく、日本の小中学生の中でも増加傾向にあります。しかし、親としてどのように子どもを支えればよいのか、その答えを見つけることは容易ではありません。

今回お伝えしたいのは、子どもが社会の中で生き抜く力を身につけるために有効な「ソーシャル・エモーショナル学習(SEL)」についてです。これは、単なる学力や知識ではなく、感情や対人関係を適切に理解し、管理しながら社会と関わっていく力を養う学習法です。不登校の背景には、対人関係の悩みや自信の喪失、感情のコントロールの難しさがある場合が多く、SELを学ぶことが状況改善の大きな助けになると考えています。

参考:文部科学省「生徒指導提要


目次


ソーシャル・エモーショナル学習(SEL)とは?

ソーシャル・エモーショナル学習(Social Emotional Learning、以下SEL)は、1960年代にイェール大学の研究プロジェクトとして始まりました。その後、アメリカのCASEL(Collaborative for Academic, Social, and Emotional Learning)が中心となり、学校教育の中にSELを取り入れることを推進しています。SELは単なる「情緒教育」ではなく、自己理解、感情のコントロール、対人スキル、意思決定能力を統合的に育むプログラムです。

日本ではまだ広く浸透していませんが、欧米では教育現場だけでなく、企業研修や社会人向けのプログラムにも取り入れられています。なぜなら、どんなに優れた知識や技術を持っていても、感情を適切に扱えず、人間関係を築けなければ、社会の中で成功することが難しいからです。

特に、不登校の子どもたちにとってSELは重要な学習要素です。学校に行けなくなった背景には、対人関係でのストレスや自己肯定感の低下、感情のコントロールの難しさがあることが多いため、それらを改善するための具体的な手段としてSELが有効なのです。


SELの5能力

① Self Awareness(自己の理解)

自己の理解とは、自分の感情や思考、強みや弱みを客観的に認識する力のことです。不登校の子どもたちは、自分の気持ちをうまく言葉にできなかったり、「なぜ学校に行きたくないのか」が分からなかったりすることが多くあります。

例えば、ある日突然「学校に行きたくない」と子どもが言ったとしても、その理由が明確に説明されることは少ないでしょう。しかし、よく話を聞いてみると、「友達との関係がうまくいかない」「授業が分からないことで自信をなくしている」「先生に怒られるのが怖い」といった背景が見えてくることがあります。

親としてできることは、子どもの感情に寄り添いながら「今、どんな気持ちなのか」を言語化するサポートをすることです。「何が嫌なの?」と問い詰めるのではなく、「最近、学校でどんなことがあった?」と出来事を話しやすい形で聞くことが大切です。子ども自身が自分の感情を理解し、それを適切に表現できるようになることで、不登校の原因の一端を明らかにし、解決に向けた第一歩を踏み出せるのです。

② Self Management(セルフマネジメント)

セルフマネジメントとは、自分の感情をコントロールし、ストレスに適応する力のことです。不登校の子どもたちは、ストレスに対処する手段を持たないまま問題に直面し、結果的に「学校に行かない」という選択をしてしまうことがあります。

ここで重要なのは、「感情をコントロールする力」は生まれつき備わっているものではなく、学習によって身につけられるということです。例えば、大人でも仕事で失敗したときに「もうダメだ」と落ち込むことがありますが、「次はこうしよう」と前向きに切り替えられる人もいます。その違いは、生まれつきの性格ではなく、これまでに培った「感情の管理スキル」によるものなのです。

親ができるサポートの一つとして、「感情の整理法」を教えることが挙げられます。例えば、「気持ちが落ち込んだときは、深呼吸をしてからお気に入りのノートに気持ちを書き出す」「嫌なことがあった日は、お風呂に入ってリラックスする」など、具体的な対処法を一緒に考えることで、子ども自身が感情をコントロールする力を育むことができます。

③ Social Awareness(社会や他者の理解)

社会や他者の理解とは、自分以外の人々の感情や立場を理解し、共感する力のことです。不登校の子どもたちにとって、この力は特に重要です。なぜなら、不登校に至る原因の多くは、他者との関係性の中で生まれる「分かってもらえない」「どう接していいか分からない」といった悩みだからです。

学校は、勉強を学ぶ場であると同時に、集団の中で人間関係を築く場でもあります。しかし、クラスの中で「空気が読めないと言われる」「友達と話が合わない」「先生が何を考えているのか分からない」と感じる子どもにとって、学校は居心地の悪い場所になりがちです。その結果、「学校に行かなくていいなら、楽だ」と思い、不登校が長期化することもあります。

では、どうすれば社会や他者の理解を深めることができるのでしょうか?

まず、親ができることは「共感の経験を積ませる」ことです。たとえば、「友達が怒っていたら、どんな気持ちになっているのかな?」「先生が厳しく指導するのは、どんな理由があると思う?」と、日常の出来事を一緒に考える時間を持つのも有効です。ポイントは、子どもが自分の意見を言いやすい雰囲気を作ること。正しい答えを求めるのではなく、「そんなふうに感じたんだね」と受け止めることが大切です。

また、映画や本を活用するのもおすすめです。フィクションの世界には、さまざまな立場の人々が登場します。たとえば、『ズートピア』のような映画は、「偏見を持たれる側」「誤解をされる側」の視点を学ぶのに最適です。物語を通じて「もし自分がこの立場だったら?」と考える習慣をつけることで、子どもは少しずつ他者の気持ちを理解する力を養っていくのです。

④ Relationship Skills(対人関係スキル)

対人関係スキルとは、人と適切にコミュニケーションをとり、良好な関係を築く能力です。不登校の子どもたちは、「どう話せばいいのか分からない」「話しかけてもらえないと、自分からは話せない」という悩みを抱えていることが多いです。

ここで重要なのは、「コミュニケーション能力は、生まれつきの才能ではなく、学習できるスキルである」ということです。たとえば、人と会話をするときの基本として「相手の話をよく聞く」「自分の気持ちをシンプルに伝える」といったことを、練習によって身につけることができます。

親ができるサポートとしては、「会話の練習をする」ことが挙げられます。たとえば、子どもが友達と話すのが苦手なら、「どうやって話しかければいいか、一緒に考えてみよう」とロールプレイをするのも有効です。「〇〇君が好きなスポーツの話をしてみるのはどう?」と具体的なアドバイスをすることで、子どもは会話の糸口をつかみやすくなります。

また、「あいづちの打ち方」や「相手の話を広げる質問の仕方」を学ぶことも大切です。「へえ、そうなんだ!」と相手の話に興味を持つ姿勢を示すだけで、会話はスムーズに進むようになります。こうしたスキルは、学校だけでなく将来の職場や社会生活でも役立つ重要な能力です。

⑤ Responsible Decision Making(責任ある意思決定)

責任ある意思決定とは、自分の選択が周囲にどのような影響を与えるかを考え、適切な判断を下す力のことです。不登校の子どもたちにとって、このスキルは「学校に行くかどうか」を自分で考える上で非常に重要です。

「学校に行きたくない」という気持ちは、決して否定されるべきものではありません。しかし、「行かない」という選択を続けることで、将来的にどんな影響があるのかを、子ども自身が理解することも必要です。

ここで大切なのは、「子どもに考えさせる機会を作る」ことです。たとえば、「学校に行かないことで、困ることは何があるかな?」「行った場合、少しでも楽になる方法はある?」と、一緒に選択肢を考える時間を持つことが効果的です。「どうしたい?」と問いかけることで、子どもは自分の行動について責任を持つ意識が芽生えます。

また、小さな成功体験を積むことも重要です。「今日は玄関まで行けた」「学校の前まで行けた」という一歩一歩の成功を積み重ねることで、「やればできる」という自信につながります。この積み重ねが、最終的に再登校への道を開くことになるのです。


「成長マインドセット」の重要性

不登校の子どもたちが再び社会に向き合い、自分の未来に希望を持つためには、「成長マインドセット(Growth Mindset)」の獲得が欠かせません。これは、アメリカの心理学者キャロル・ドゥエックが提唱した概念で、「能力や才能は生まれつき決まっているものではなく、努力と工夫によって成長できる」という考え方を指します。

この考え方の対極にあるのが「固定マインドセット(Fixed Mindset)」です。これは、「自分の能力には限界があり、努力しても変わらない」という思い込みのことを指します。不登校の子どもたちは、過去の失敗体験や他者との比較の中で、「どうせ自分はできない」「頑張っても意味がない」と感じてしまい、固定マインドセットに陥っていることが多いのです。

この章では、不登校の子どもに「成長マインドセット」を持たせることの重要性と、それを育むための親の関わり方について詳しく解説します。


なぜ「成長マインドセット」が不登校の克服に必要なのか?

不登校になる理由はさまざまですが、多くの子どもが「失敗の恐怖」「自信の喪失」「周囲との比較」によって学校に行くことをためらっています。

例えば、学校の授業についていけなくなった子どもは、「自分は勉強ができない」「もう取り返しがつかない」と考え、努力する気力を失います。また、友人関係でのトラブルを経験した子どもは、「自分は人と関わるのが下手だ」「どうせまた傷つく」と思い込み、新しい関係を築くことを避けるようになります。

しかし、成長マインドセットを持つことで、こうした思考を「今はできなくても、努力すれば変わる」「失敗は学びのチャンス」というポジティブなものに変えることができます。これにより、不登校の子どもが「少しずつでも前に進んでみよう」と思えるようになるのです。

「成長マインドセット」を持つ子どもと持たない子どもの違い

固定マインドセット成長マインドセット
「自分には才能がない」「今はできないけれど、努力すればできるようになる」
「勉強しても意味がない」「勉強を続ければ少しずつ成長できる」
「友達ができなかったから、もうダメだ」「前はうまくいかなかったけれど、次は違う方法を試してみよう」
「失敗は恥ずかしいこと」「失敗は成長のために必要な経験」

この違いが、長期的な行動の変化を生み出します。

では、親として子どもに「成長マインドセット」を育むためには、どのような関わり方をすればよいのでしょうか?


親ができる「成長マインドセット」の育成方法

① 結果ではなく「努力のプロセス」を認める

不登校の子どもは、「結果」によって評価されることに敏感です。学校のテストの点数や、友人関係の成功・失敗ばかりが重要視されると、「自分はうまくできないからダメなんだ」と思い込んでしまいます。

親として意識すべきことは、結果ではなく、努力の過程を認めることです。

例えば、テストの点数が悪かったとしても、「この問題に挑戦したことがすごいね」「前回よりも少し解ける問題が増えたね」と、努力したことに目を向ける声かけをしましょう。これによって、子どもは「自分の頑張りには意味がある」と感じられるようになります。

② 失敗を「学びの機会」として捉える

不登校の子どもたちは、過去の失敗経験によって「もう傷つきたくない」と思い、新しいことに挑戦するのを避けることがあります。

このとき親ができるのは、「失敗を否定しないこと」です。「なぜこんなこともできないの?」と責めるのではなく、「うまくいかなかったけれど、次はどうすればいいと思う?」と、解決策を一緒に考える姿勢を持ちましょう。

また、「親自身が失敗をポジティブに捉える姿勢を見せる」ことも大切です。「今日、仕事でミスをしちゃったけど、次はこうしようと思うんだ」と話すことで、子どもも「失敗しても大丈夫なんだ」と感じることができます。

③ 「まだできない」を受け入れる習慣をつける

「できない」という言葉を「まだできない(yet)」という言葉に変えるだけで、子どもの捉え方は大きく変わります。

例えば、「算数が苦手だ」と言う子どもには、「今は苦手かもしれないけど、練習すれば得意になるかもしれないね」と伝えてみましょう。こうすることで、「できない自分」ではなく、「成長途中の自分」として、自分自身を受け入れられるようになります。

④ 小さな成功体験を積み重ねる

成長マインドセットを持つためには、「できた!」という経験を積み重ねることが重要です。

不登校の子どもにとっては、「学校に行くこと」自体のハードルが高いため、いきなり再登校を目指すのではなく、「少しずつの成功」を重ねていくことがポイントです。

例えば、
✅ 今日は朝、制服を着ることができた
✅ 学校の近くまで行ってみた
✅ 友達にLINEでメッセージを送れた

このような「小さな成功」を認めることで、子どもは「やればできる」という感覚を持つようになります。


成長マインドセットがもたらす変化

成長マインドセットを持つことで、不登校の子どもたちには次のような変化が生まれます。

  1. 「どうせ無理」が「やってみよう」に変わる
  2. 失敗を怖がらなくなり、新しいことに挑戦できる
  3. 小さな成功体験が積み重なり、自信が生まれる

この考え方が根付けば、学校復帰だけでなく、将来の仕事や人間関係の中でも、「挑戦する力」を持ち続けることができます。


まとめ

SELを家庭で育むためには、特別な教育プログラムが必要なわけではありません。親が日常の中で「感情を言葉にする」「小さな成功体験を積ませる」「共感を大切にする」「成長マインドセットを意識する」ことが、SELの能力を伸ばすカギになります。

そして、SELが育まれることで、不登校の子どもたちは「自分の気持ちを理解できるようになる」「他人との関係を築く力が身につく」「挑戦する勇気が持てる」といった変化を経験し、少しずつ社会と向き合う力をつけていきます。

焦らず、一歩ずつ。子どもが安心して成長できる環境を作ることこそ、親ができる最も大切なサポートです。

最後に、不登校の克服には「親だけで抱え込まないこと」も大切です。家族だけでは難しいと感じるときは、専門家の力を借りながら、子どもに合った支援を見つけていきましょう。ToCo株式会社では、不登校の子どもたちが少しずつ社会との接点を持てるようサポートを行っています。一人で悩まず、ぜひ相談してください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。

不登校のワクチンとなる自尊心とは?

不登校のワクチンとなる自尊心とは-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの保護者や子どもたちと向き合ってきました。

不登校の原因はさまざまですが、その根底に共通して見られるのが「自己評価の低さ」です。子どもが「自分には価値がない」「どうせ自分なんてダメだ」と思い込んでしまうと、学校生活の中で感じるストレスが大きくなり、そのストレスを乗り越えることが難しくなります。そして、次第に学校に行くことへの抵抗感が強まり、不登校へとつながってしまうのです。

では、なぜ不登校の子どもは自己評価が低くなりやすいのでしょうか? そして、自己評価の低さを克服し、自尊心を育てるために、親としてどのように関わることができるのでしょうか? 本稿では、不登校を防ぐための「自尊心の育み方」について、具体的な方法をお伝えしていきます。

参考:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」


目次


第一章:不登校の子どもの自己評価の低さ

不登校の子どもたちは、驚くほど自己評価が低い傾向にあります。「どうせ自分なんて」「また失敗するに決まっている」「自分は何をやってもダメだ」といった言葉が口癖になっていることが多く、物事に対して消極的になりがちです。こうした思考が続くと、子どもは自分に対する信頼を失い、新しいことに挑戦する気力をなくしてしまいます。

1-1. 自己評価とは何か?

「自己評価」とは、簡単に言えば「自分の能力や価値に対する認識」のことです。たとえば、「自分は数学が得意だ」と思っている子どもは、数学の問題に自信を持って取り組めます。しかし、「自分は計算が苦手だ」と思っている子どもは、問題を見るだけで不安を感じ、解く前から「どうせできない」と決めつけてしまうことがあります。

自己評価には、二つの側面があります。

  1. 能力に対する評価:「自分は何ができるのか?」という認識。勉強ができる、スポーツが得意、人付き合いが上手など。
  2. 存在に対する評価:「自分には価値があるのか?」という認識。誰かに愛されている、必要とされている、役に立っているなど。

自己評価が低い子どもは、このどちらの側面でも否定的な考えを持ちやすくなります。たとえば、成績が下がると「自分は勉強ができないダメな人間だ」と思い込み、友達とのトラブルがあると「自分は嫌われている」と感じてしまいます。

1-2. 自己評価の低さが不登校につながる理由

自己評価の低い子どもは、学校生活でのさまざまな場面で不安を感じやすくなります。たとえば、以下のような状況が考えられます。

こうした不安が積み重なることで、学校に行くこと自体が大きなストレスになり、「学校に行きたくない」「休みたい」という気持ちが強くなっていきます。

さらに、自己評価が低い子どもは、失敗を極端に恐れる傾向にあります。「失敗=自分の価値の低下」と感じてしまうため、失敗するくらいなら何もしないほうがマシだと考えてしまうのです。その結果、新しいことに挑戦する機会が減り、さらに自己評価が低くなるという悪循環に陥ります。

1-3. 自己評価の低さから不登校になった子どもの例

Aくん(小学5年生)は、もともと勉強が得意で、クラスでも目立つ存在でした。しかし、ある日、国語の授業で意見を求められたとき、答えた内容がクラスメートに笑われてしまいました。先生は特に気にする様子もなく授業を進めましたが、Aくんにとっては大きなショックでした。

「自分の考えは間違っているのかもしれない」
「もう発言しないほうがいい」

そう思うようになったAくんは、それ以来、授業で手を挙げなくなりました。すると、テストの点数が少しずつ下がり始め、「自分は勉強ができないんだ」と思うようになりました。それが積み重なり、最終的には「学校に行きたくない」と言い出すようになったのです。

Aくんのように、ちょっとした出来事がきっかけで自己評価が低くなり、それが不登校につながるケースは非常に多いです。特に、真面目で責任感の強い子どもほど、自己評価の低下が大きな影響を及ぼしやすいのです。

1-4. 子どものサイン

子どもが自己評価を低くしているとき、以下のような言動が見られることが多くなります。

こうしたサインに気づいたら、親は早めに子どもの気持ちに寄り添い、サポートしていくことが大切です。自己評価の低さは放っておくとどんどん悪化し、不登校が長期化する原因になってしまうからです。


第二章:自己評価が低いとストレスが増え、乗り越えにくくなる

2-1. ストレスとは何か?

ストレスとは、心や体にかかる負担のことです。人は日常生活の中でさまざまなストレスを受けますが、適度なストレスは成長の糧にもなります。しかし、過度なストレスが続くと、心が疲れ果ててしまい、行動する気力を失ってしまうのです。

特に、子どもにとって学校はストレスが発生しやすい環境です。授業、宿題、友達付き合い、先生との関係、部活動――学校生活のあらゆる場面でストレスが生じる可能性があります。

ストレスを受けやすい子と受けにくい子の違い

同じ出来事が起こっても、子どもによってストレスの感じ方は大きく異なります。たとえば、授業で答えを間違えたときの反応を見てみましょう。

  • 自己評価が高い子:「間違えちゃったけど、次は気をつけよう!」
  • 自己評価が低い子:「やっぱり自分はダメだ……もう二度と発言したくない」

自己評価が高い子は、ミスを「一時的なもの」として受け止め、前向きに考えることができます。しかし、自己評価が低い子は、「間違えた自分は価値がない」と極端に考えてしまい、深いダメージを受けてしまうのです。


2-2. 自己評価が低いとストレスを感じやすくなる理由

自己評価の低い子どもは、学校生活の中で遭遇するさまざまな出来事を「自分に対する否定」として受け止めがちです。その結果、通常なら軽く受け流せるようなことでも、大きなストレスとなってしまいます。

1. 他人の言動を過剰に気にする

自己評価が低い子どもは、周囲の評価を過剰に気にする傾向があります。友達が何気なく言った一言を「自分は嫌われている」と解釈したり、先生のちょっとした指摘を「怒られた」「見放された」と受け取ってしまうことがあります。

2. 小さな失敗を「致命的なミス」だと考える

自己評価が低い子どもは、「失敗=価値がない」と考えてしまいがちです。そのため、小さなミスでも大きなショックを受け、必要以上に落ち込んでしまいます。


2-3. 自己評価が低いとストレスを乗り越えにくくなる理由

自己評価が低い子どもは、ストレスを乗り越える力も弱くなります。なぜなら、「自分にはできる」という自己信頼がないため、困難に直面したときに「無理だ」とすぐに諦めてしまうからです。

1. 「どうせ無理」と思い込み、行動できない

自己評価が低い子どもは、新しいことに挑戦する前から「どうせできない」と決めつけてしまいます。そのため、何か問題が起こったときに、解決しようとする前に諦めてしまうことが多いのです。

2. 「自分の力で解決できる」という感覚がない

自己評価が低い子どもは、「困難な状況に直面したときに、自分の力で乗り越えられる」という感覚(自己効力感)が低くなっています。そのため、少しでも難しい問題にぶつかると、すぐに助けを求めたり、逃げてしまうことが多くなります。


では、どうすれば自己評価を高め、ストレスを乗り越えやすい子になるのでしょうか? その鍵を握るのが「自尊心」です。


第三章:自己評価と自尊心の関係

3-1. 自己評価と自尊心の違いとは?

「自己評価」と「自尊心」は似ているようで異なる概念です。簡単に言うと、

  • 自己評価:「自分は何ができるか?」(能力に対する評価)
  • 自尊心:「自分には価値があるか?」(存在に対する評価)

たとえばテストの結果を見て、自己評価に左右されやすい子は「成績の良し悪し」と「自分の価値」を連動させてしまいます。

一方で、自尊心が根付いている子は、たとえ成績が振るわなくても、生きていることの価値を失わないでいられます。

つまり、自尊心が低ければ「うまくいかないと自分には価値がない」と思い込んでしまいし、周囲の物差しによって自分の幸不幸が大きく左右されてしまいます。


3-2. 自己評価が高くても自尊心が低いとどうなるか?

ここで重要なのは、「自己評価が高い=自尊心が高い」というわけではないということです。たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。

ケース1:優等生タイプの子ども

成績優秀で、先生や親からも「すごいね」「頑張り屋だね」と褒められることが多く、自己評価は比較的高い。しかし、「良い成績を取らないと自分には価値がない」と考えている。そのため、少しでも成績が下がると「自分はダメだ」と強く落ち込み、自己否定の感情に襲われてしまう。

ケース2:スポーツが得意な子ども

運動が得意で、リレーの選手にも選ばれるほど。しかし、運動会当日、緊張で思うように走れず、チームが負けてしまいまった。「私は足が速いから価値がある」と思っていたため、失敗した途端に「私なんていらない」と極端に落ち込んでしまう。

こうした子どもたちは、一見すると自己評価が高そうに見えますが、実際には「条件付きの自己評価」になっており、根本的な自尊心が育っていないことがわかります。


3-3. 自尊心が低いとどうなるか?

自尊心が低いと、どんなに頑張って成果を出しても、自分を肯定できなくなります。その結果、以下のような思考に陥りがちです。

このような状態が続くと、学校での小さな出来事が大きなダメージになり、やがて不登校につながってしまうのです。


3-4. 自己評価よりも自尊心を育てることが大切

ここまでの話をまとめると、不登校を防ぐためには、自己評価を高めるだけでなく、「自尊心を育てる」ことが最も重要だと言えます。自尊心がしっかりと育っていれば、子どもはたとえ失敗しても「それでも自分には価値がある」と思えるようになり、ストレスを乗り越える力がつくのです。

では、どうすれば自尊心を育てることができるのでしょうか?


第四章:自尊心の発育は、親が鍵

子どもの自尊心を育てるためには、どのようなことが必要なのでしょうか?その鍵を握っているのは「親の関わり方」です。

親の何気ない言葉や行動が、子どもの自尊心を育てる土台を作ります。この章では、自尊心を育むために親ができる具体的な関わり方を詳しく解説していきます。


4-1. 親の関わりが自尊心を決める理由

子どもの自尊心は、生まれつき決まっているわけではありません。それは「人との関わりの中で育まれるもの」です。そして、子どもにとって最も身近な存在が「親」なのです。

子どもは、幼少期から親の言葉や態度を通じて「自分はどんな存在なのか?」を学んでいきます。

たとえば、次のような関わりをされた子どもは、それぞれ異なる自尊心を持つようになります。

  • 親が「あなたは大切な存在だよ」と伝えて育てた子 → 「自分には価値がある」と感じる
  • 親がいつも否定的な言葉を使って育てた子 → 「自分なんてダメだ」と思い込む

子どもがどのように自分を捉えるかは、親の関わり方によって大きく左右されるのです。


4-2. 子どもの自尊心を傷つける親の言動

まず、気をつけたいのは「自尊心を傷つける親の言葉や態度」です。親が悪気なく発した言葉でも、子どもは深く傷つき、「自分には価値がない」と感じてしまうことがあります。

1. 否定的な言葉を頻繁に使う

こうした言葉を頻繁に聞かされた子どもは、「自分はダメな人間だ」と思い込むようになります。特に「○○ちゃんと比べて…」という言葉は、子どもの自己評価を下げる大きな要因となります。

2. 結果だけを評価する

結果だけを評価され続けると、子どもは「良い結果を出さなければ、自分には価値がない」と思うようになります。その結果、失敗を恐れ、新しいことに挑戦する意欲を失ってしまうのです。

3. 子どもの話を途中で遮る

子どもが話しているときに、親が途中で話を遮ったり、否定的な言葉を返したりすると、「自分の話は聞いてもらえない」と感じるようになります。これが続くと、子どもは「どうせ話しても無駄だ」と思い、自分の気持ちを表現することをやめてしまうのです。


4-3. 自尊心を育てるための親の関わり方

では、子どもの自尊心を育てるためには、どのような関わり方が必要なのでしょうか?

1. 子どもの存在そのものを肯定する

子どもは、何かができるから価値があるのではなく、「存在そのものに価値がある」という感覚を持つことが大切です。そのためには、日常的に「あなたがいてくれるだけで嬉しい」というメッセージを伝えることが重要です。

たとえば、次のような言葉を使いましょう。

  • 「○○がいてくれると、お母さん(お父さん)は嬉しいよ」
  • 「大好きだよ」

こうした言葉は、子どもにとって「自分は愛されている」「自分には価値がある」という安心感につながります。そして、言葉をかけなくても、愛情を持って見つめることも大きな効果を生みます。

2. 失敗しても肯定的な声かけをする

子どもが何かに失敗したとき、どのように声をかけるかが重要です。

✔ 良い声かけの例

  • 「失敗しても大丈夫だよ」
  • 「やってみたことが素晴らしいよ」
  • 「次はどうしたらうまくいくかな?」

このように、失敗を責めるのではなく、「次につなげる考え方」を伝えることが、自尊心の成長につながります。

3. 子どもの話を最後まで聞く

子どもが話をするときは、途中で口を挟まず、最後までしっかり聞いてあげることが大切です。

「うんうん」「そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の気持ちは大切にされている」と感じるようになります。

また、「どう思ったの?」「それで、○○はどうしたの?」と質問を投げかけることで、子ども自身が自分の気持ちを整理する力を育てることもできます。

「もううちの子は自信をなくしてしまっている」と感じている親御さんもいるかもしれません。しかし、安心してください。親の関わり方を少しずつ変えていくことで、子どもの自尊心は確実に回復していきます。


第五章:自尊心は今からでも回復できる

「うちの子はもう自尊心が低くなってしまっている」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。しかし、自尊心は何歳からでも回復させることができます。たとえ今、子どもが「自分なんて」と思い込んでいたとしても、親の関わり方次第で徐々に自尊心を取り戻すことができます。

この章では、自尊心を回復させる具体的な方法について解説していきます。


5-1. 自尊心を回復させるために親ができること

1. 「結果」ではなく「過程」を褒める

「テストで100点を取ったね、すごい!」といった結果を褒めるのではなく、努力や工夫を褒めるようにしましょう。

例:「一生懸命勉強していたね、その頑張りが素晴らしいよ」

結果だけを褒めてしまうと、子どもは「良い結果を出さなければ価値がない」と思い込んでしまいます。しかし、努力や工夫を褒めることで、「頑張ることそのものが大切だ」と学び、自尊心が回復していきます。

2. 小さな成功体験を積ませる

大きな目標ではなく、日常の小さな成功体験を積み重ねることが重要です。たとえば、

  • 「今日は食器を運んでくれて助かったよ」
  • 「お風呂掃除してくれたんだね、ありがとう!」

こうした些細な成功体験を通じて、「自分は役に立つ存在だ」と実感させることが大切です。

3. 子どもの話を「最後まで」聞く

子どもが話をしているとき、「でもね」「それは違うよ」と途中で遮っていないでしょうか? 自尊心が低い子どもほど、「自分の話なんて聞いてもらえない」と感じやすいため、話を最後まで聞いてあげることが大切です。

「うんうん、そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の考えを大切にしてもらえている」と感じられるようになります。


5-3. 親の変化が子どもに与える影響

親がポジティブな言葉を使い、自分自身の価値を認めている姿を見せることで、子どもも自然と同じ考え方を身につけます。

たとえば、親自身が失敗したときに「もうダメだ」と言ってしまうと、子どもも「失敗=価値がない」と思ってしまいます。逆に、「まあ、失敗しても次頑張ればいいよね」と前向きな姿勢を見せると、子どもも同じように考えるようになります。

子どもの自尊心を回復させるためには、親自身がまず「ありのままの自分を認めること」も大切なのです。


第六章:自尊心を高めやすい家庭とは?

前章では、子どもの自尊心は今からでも回復できること、そして親の関わり方が大きな鍵を握ることをお話ししました。しかし、子どもは家庭という環境の中で育つため、親がどれだけ頑張っても、家庭全体の雰囲気が自尊心を育みやすいものでなければ、根本的な改善は難しくなります。

そこで、次に「自尊心を高めやすい家庭の特徴」について詳しく掘り下げていきます。普段の生活の中で取り入れられる小さな工夫から、家族関係の見直しまで、具体的なポイントを解説します。


6-1. 甘やかさず、褒めることができる家庭

自尊心を育てるためには、褒め方が非常に重要です。ただし、何でもかんでも褒めればよいわけではありません。「甘やかし」と「適切な褒め方」はまったく別のものです。

1. 甘やかしとは何か?

「甘やかし」とは、子どもが本来向き合うべき問題や課題を親がすべて取り除いてしまうことです。たとえば、

  • 「宿題をやらなくてもいいよ」と言ってしまう
  • できなかったことをすぐに親が手助けしてしまう
  • 失敗しても、子どもに責任を負わせずに周囲のせいにする

こうした対応を続けていると、子どもは「努力しなくても何とかなる」「自分は何もしなくても親が守ってくれる」と学習し、自己肯定感が育たなくなります。

2. 正しい褒め方とは?

自尊心を育てるためには、結果だけでなく「努力や工夫」を褒めることが重要です。

✔ 良い褒め方の例

  • 「最後まで頑張ったね!」(努力を認める)
  • 「工夫してやってみたんだね」(プロセスを評価する)
  • 「失敗しても挑戦したのがすごい!」(チャレンジ精神を認める)

✖ 良くない褒め方の例

  • 「すごい!天才!」(漠然と褒める)
  • 「なんでもできるね!」(現実的でない評価)

褒めることで自尊心は高まりますが、それが「条件付きの評価」になってしまうと逆効果です。たとえば、「100点を取ったから偉いね」と言われ続けると、「100点を取らないと自分の価値がない」と思い込んでしまいます。そうではなく、「一生懸命勉強したことが素晴らしい」といったプロセスを評価することが大切なのです。


6-2. 家族で食事を一緒に取ることの重要性

「食事を一緒に取ること」が、自尊心の発育に深く関わっていることをご存じでしょうか? 実は、家庭での食事回数が多い子どもほど自己肯定感が高いという研究結果があります。

1. 食事がもたらす安心感

食事の時間は、家族がリラックスして会話できる貴重な時間です。子どもは、「家族と一緒に食卓を囲む」ことで「自分は受け入れられている」「安心できる場所がある」と感じることができます。

たとえば、毎日「今日、学校でどんなことがあった?」と聞かれるだけでも、子どもは「自分は話を聞いてもらえる存在なんだ」と思えるようになります。こうした小さな積み重ねが、自尊心を高める要因となるのです。

2. 食事中の会話が子どもの心を開く

不登校の子どもは、「どうせ自分の話なんて誰も聞いてくれない」と思い込んでいることが少なくありません。そのため、食事の時間を活用して、少しずつ子どもの話を引き出すことが大切です。

たとえば、以下のような質問をしてみてください。

  • 「今日はどんなことがあった?」
  • 「最近、気になっていることはある?」
  • 「学校の○○先生ってどんな先生?」

子どもが話しやすい雰囲気を作ることで、「自分の気持ちを話してもいいんだ」と感じるようになり、少しずつ自尊心が回復していきます。


6-3. 夫婦仲が険悪ではない(シングルの場合は親の安定が重要)

家庭の雰囲気が、子どもの自尊心に与える影響は計り知れません。特に、夫婦仲が険悪な家庭では、子どもが「自分のせいで喧嘩しているのでは?」と感じ、深い自己否定感を抱くことがあります。

1. 夫婦仲が険悪な場合の影響

夫婦喧嘩が多い家庭では、子どもは次のような感情を抱きやすくなります。

  • 「お母さん(お父さん)が苦しそうなのは、自分のせいかもしれない」
  • 「自分さえいなければ、もっと仲良くなるのかな」
  • 「家庭が不安定だから、学校にも安心して行けない」

このように、家庭の不安定さが子どもの自尊心を低下させる大きな要因になってしまいます。

2. シングル家庭の場合のポイント

一方、シングル家庭では「親の安定」が子どもの安心感に直結します。親が疲れ果てていたり、不安を抱え込んでいたりすると、子どもはそれを敏感に感じ取ってしまいます。

そのため、シングル家庭の場合は「親自身が心を安定させること」が非常に重要になります。たとえば、

  • 親が自分の趣味や楽しみを持つ
  • 「子どもを守らなきゃ」と思いすぎず、肩の力を抜く

親が笑顔でいることが、子どもにとって最大の安心材料なのです。


6-4. 自尊心を高めるために今日からできること

ここまで、自尊心を高めやすい家庭の特徴についてお話ししてきました。最後に、今日から実践できる具体的な方法をいくつかご紹介します。

今日からできることリスト

  1. 毎日、子どもに「おはよう」「おやすみ」を笑顔で伝える
  2. 結果ではなく過程を褒める(努力や工夫を認める)
  3. 1日1回は子どもの話をじっくり聞く(途中で口を挟まない)
  4. 一緒に食事を取る時間を増やす
  5. 親自身も「失敗しても大丈夫」と前向きな姿勢を見せる

自尊心を高めやすい家庭とは、特別なことをする必要はありません。大切なのは「子どもが安心できる環境を作ること」です。

「うちの子はもう自信をなくしてしまっている」と感じている方も、今日から少しずつ変えていけば、必ず子どもの心に届きます。焦らず、一歩ずつ取り組んでみてください。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が不登校から脱却するための専門的な支援を行っており、1,600名以上のお子様が平均1ヶ月で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

親子に寄り添う支援で、1,600名以上の再登校をサポート。国内カウンセラーが最も推奨する不登校支援サービスはToCo(トーコ)です。