不登校の中学生への段階的なアプローチ

こんにちは。不登校支援カウンセラーの竹宮です。

中学生で不登校になるお子さんを前にしたとき、多くの親御さんはこう思います。
「小学生の頃とは違う」「もうある程度わかっているはずなのに、なぜ動けないのか」と。

実はそれこそが、中学生の不登校の難しさの核心です。

“理解できる年齢なのに、行動に結びつかない”
“問題点も、自分がしんどいことも分かっているのに、動こうとしない”

この矛盾のなかで、子ども自身も苦しんでいます。

今日は、そんな中学生ならではの不登校に対して、どのような順序で関わればよいか。
そして、どこを押さえれば、無理なく「自分から動こうとする」きっかけを育てられるか。
段階ごとに丁寧に解説していきたいと思います。

目次

中学生の不登校理由の難しさ

まず、小学生との根本的な違いから整理しておきます。

比較項目小学生中学生
自己理解困っていても言葉になりにくい。抽象的に理解はできるが感情が追いつかない
親との距離感依存的/密着的自立したがる/反発的になる
不登校の原因勉強・身体・家庭環境など人間関係、自己否定、進路不安、価値観の衝突
支援の方向性生活の回復/安心の確保自律支援/自己再定義のサポート

中学生は、“認知の発達”と“感情の揺れ”がアンバランスな時期です。

  • わかっているけど行動できない
  • 人の目が気になるのに人と関われない
  • 何もしない自分を責めているのに、どう変えていいか分からない

このように、内側で起きている“ジレンマ”が多層的で、かつ複雑なのが特徴です。

この前提を押さえた上で、「段階的アプローチ」をご紹介していきます。


第1段階:「思考の渦」と距離を置かせる

今必要なのは、“考える力”ではなく“考えない時間”

中学生の不登校支援で最初に誤解されやすいのが、「本人は何も考えていない」「逃げているだけでは?」という見方です。
しかし実際には、その逆です。

多くの中学生は、過剰なほどに考えすぎて動けなくなっている状態にあります。

たとえば、次のようなことを頭の中で何度も反芻しています。

「このままじゃまずい。でもどうしたらいいか分からない」
「学校に行っても、また同じことが起きるかも」
「先生や友達にどう思われてるんだろう」
「自分は甘えてるのか?ちゃんとした方がいいのか?」

これは、単に“悩んでいる”のではありません。
「思考の過負荷」が起きているのです。

自分の頭の中で「どうしたらいいか」を考えているようで、実は堂々巡りの中に閉じ込められている。
考えても考えても答えが出ず、「何もできない自分」を突きつけられ続ける──
そのうち、思考そのものがストレスになります。

こうした“思考の渦”に巻き込まれているとき、いくら励ましや助言をしても届きません。
なぜなら、「すでに自分の中で何十回も考えたこと」だからです。


第2段階:「自分への語りかけ」を育てる

中学生は、自分で自分を責め続けている

中学生の不登校に多いのが、「何もされていないのに、勝手に傷ついていく」という現象です。
これは、内的な自己批判の声が強くなり、自分を追い詰めてしまう状態を指します。

  • 「何やっても意味ないし」
  • 「自分なんかいなくてもいい」
  • 「どうせまたうまくいかない」

こうした“自己への語りかけ”が、行動を鈍らせ、気力を奪っていきます。

重要なのは、「親の言葉」より「本人の内語」を変えること

この段階で親がやるべきことは、指導ではありません。

必要なのは、子どもが自分自身に対して、どんな言葉を使っているかを察し、それを少しずつ柔らかく書き換えるサポートです。

たとえば──

  • 「そう思ってるんだね」→ 自分の気持ちを否定されない体験
  • 「その考え、すごく真面目だね」→ 否定ではなく“再評価”
  • 「ちょっと視点を変えてみるのも面白いかもね」→ 視点を変える

この段階では、会話の内容ではなく“温度”が伝わることが大切です。
そうすることで、子どもの内面で「もう少し優しい言葉で、自分を語ってもいいかも」と思えるようになります。


第3段階:「選択の回復」から主体性を育てる

「動かないこと」も選択の一つ

中学生は、小学生に比べてはるかに“自分の選択”にこだわります。
「やらされている」ことに敏感で、押された瞬間に逆方向へ逃げる、という反応も典型的です。

ただ、忘れてはいけないのは、「動かないこと」も、本人にとっては“能動的な選択”であるという点です。

だからこそ、親の接し方として推奨されることは、「行動させる」ことではなく、“選択肢を提示する”ことです。

「今日、お昼ご飯どうする?自分で決めてもいいし、任せてもいいよ」
「この動画とこの本、どっちか気が向いたら声かけて」
「午前中と午後、どっちの方が体動かしやすいかな?」

このような問いは、表面的には些細でも、“自分の意思で選ぶ”という経験の積み重ねになります。

この体験こそが、次の「社会との再接続」に向かう準備になります。


第4段階:「社会の中での自分」を再定義させる

「元の場所に戻る」には、“つながりの感覚”が必要

「再登校」が目標である場合、その実現のためにどのような準備が必要かを逆算して関わることが、支援として非常に重要になります。

ただし注意したいのは、「学校に戻る」という行為は、本人にとって“元に戻る”というより、新たな自分として、もう一度関わることに近いという点です。

つまり、ただ席に戻るのではなく、「自分の立ち位置を再定義し、つながり直す」ための再登校です。

この視点に立つと、再登校は本人にとって“新しい社会参加”の一つとして捉える必要があります。
その準備段階として、「安心できる形で社会と接点を持つ」ことが不可欠です。


再登校の前に必要な“社会との回路”を回復する

不登校状態が長引くほど、子どもの中には「社会から離れてしまった感覚」が根づきやすくなります。

この感覚は、「自分はクラスに戻っても違和感しかない」「周りに馴染めないに決まっている」といった思い込みに変化し、再登校の足を引っ張ります。

そこで重要なのが、「自分の行動が、誰かとの関係の中で意味を持つ」体験です。
つまり、社会の中で“つながる感覚”を、安心できる形で思い出すことです。

たとえば──

  • 親との家事分担で「助かるよ」と言われる
  • 店員さんに「ありがとう」と伝えて微笑まれる
  • 母親の仕事資料を整理する手伝いをする

これらはすべて、「自分が誰かの中に存在している」という実感の回復です。
この小さな社会参加の積み重ねが、「もう一度学校に戻ってもいいかもしれない」という気持ちにつながります。


第5段階:「自分の価値観とつながる」

最後の壁は、「自分が何を大切にして生きたいか」への問いです

この段階では、ただ登校や学習を再開すればいいわけではありません。
むしろ、「自分はどういう価値観で、何を優先して生きたいか」というテーマに向き合う必要が出てきます。

たとえば、

  • 「今、自分が求めているのは、安心?挑戦?」
  • 「なぜあの先生の言葉に傷ついたのか?自分はどんな扱いを大事にしたいのか?」
  • 「“成功”って、何を指しているんだろう?」

こうした問いは、本人の中に答えが出るまでに時間がかかります。
ですが、この問いを避け続けると、「とりあえず登校したけど、また崩れる」という再発のリスクが高まります。

親ができるのは、「価値を押しつけない余白を残すこと」

この段階では、子どもが自分で価値を選べるように、“問いと材料”だけをそっと置くことが大切です。

  • 「今の自分に必要なものって何だと思う?」
  • 「自分の正しさと、相手の正しさって、同時に成り立つのかな?」
  • 「この人の生き方、ちょっといいなって思う?」

問いかけに答えが返ってこなくても構いません。
親が“焦らずに価値観の土壌を信じて待てるかどうか”が、この段階の支援の肝になります。


中学生には「分かっていて動けない自分」を受け入れられる支援が必要

中学生の不登校は、決して“甘え”ではありません。
そして、単なる“やる気のなさ”でもありません。

  • 自分を責めている
  • 自分の言葉がうまく伝わらない
  • 自分が何者か、わからなくなっている

このような“自我の揺らぎ”に耐えきれず、一時停止している状態だと捉えるべきです。


【中学生・不登校への段階的アプローチまとめ】

  1. 思考の渦と距離を置かせる
     → 頭の中で考えすぎて動けなくなっている状態を、外に向かわせる
  2. 自分への語りかけを変える
     → 内面の声をやわらげ、自己否定のループから抜け出す
  3. 選択の回復から主体性を育てる
     → 「選んでもいい」「自分が決めていい」を日常で取り戻す
  4. 社会の中での自分を再定義させる
     → 元に戻ることより、“新しい役割”でつながる
  5. 自分の価値観とつながる
     → 「どう生きたいか」の問いに、ゆっくり向き合う余白を用意する

また別の機会に、「反抗期との見分け方」「受験との向き合い方」「家庭内の雰囲気調整」など、中学生特有のテーマも掘り下げていきたいと思います。

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