子どもに失望してしまう時に
こんにちは。再登校支援トーコの竹宮と申します。日々、臨床心理士として不登校のご家庭の支援を行っております。
今日は、お子様に対して「がっかりしてしまう」「恥ずかしいと感じてしまう」といった感情が生まれたとき、その背景を心理的に整理しながら、無理に感情を抑え込まずに視点を整えていく考え方について紹介します。
学校から「授業を聞こうとせずに机で手遊びをしています」「周りの生徒に手が出てしまいました」「教室までは来ましたが気分が悪いと帰ってしまいました」といった連絡が入ることがあります。また、そもそも学校に行けず、ご自宅で長い時間を過ごしているお子様の姿を見て、言葉にしづらい落胆や戸惑いを感じる場面もあるかと思います。
親御様として、そのような感情が湧くことは自然な流れです。しかしながら、その感情の扱い方を誤ると、お子様の行動を冷静に見ることが難しくなり、関わり方にも影響が出てきます。本記事では、「なぜその感情が生まれるのか」という構造を明らかにし、その上で「どのように視点を持ち直すか」を一つの流れとして整理していきます。
目次
- がっかりしてしまう感情の正体を理解する
- 一般的なアドバイスがうまく機能しない理由
- 視点を整えることで見え方が変わる
- 「恥ずかしさ」とどう向き合うか
- 「普通」という枠から少し離れる
- これからの関わり方をどう考えるか
- まとめ
がっかりしてしまう感情の正体を理解する
期待は悪いものではなく、形が重要になる
一般的に、「子どもに期待しすぎないようにしましょう」と言われることがあります。この言葉は一見適切に聞こえますが、実際には期待を持たないことは現実的ではありません。
親御様である以上、お子様に対して何らかのイメージや願いを持つことは自然なことです。
ここで問題になるのは、期待の有無ではありません。
その期待がどのような形で存在しているかです。
例えば、「授業中は席に座って話を聞くものだ」という認識は、多くの親御様の中に無意識に存在しています。これは特別な考えではなく、これまでの学校生活の中で共有されてきた一つの基準です。
しかし、お子様が実際には手遊びをしていたり、集中できていなかったりすると、その基準との間にずれが生じます。このずれが違和感となり、「どうしてできないのか」という疑問へと変わっていきます。
そして、その疑問が繰り返されることで、やがて「がっかりする」という感情に繋がっていきます。
ここで重要なのは、この感情はお子様そのものへの否定ではなく、「想定していた状態との差」に対して生じているという点です。
同じ行動であっても、「今日は教室まで行けたら十分」と考えていた場合と、「授業を最後まで受けてほしい」と考えていた場合では、評価の仕方は大きく変わります。
短く言えば、感情は行動そのものではなく、基準との関係によって生まれます。
この視点を持つことで、「なぜこんなに落ち込むのか」という疑問が少し整理されます。
「他者の目線」が感情を増幅させる
もう一つ見逃せない要素が、「周囲からどう見られるか」という視点です。
例えば、「周りの子どもに手が出てしまいました」と学校から連絡があった場合、多くの親御様はお子様の状態だけでなく、「先生や他の保護者にどう思われるか」という不安を同時に抱えます。
このとき、頭の中には複数の視線が存在しています。
先生の評価、他の保護者の印象、場合によっては地域の目などです。
これらの視線を通して状況を見ることで、「恥ずかしい」「申し訳ない」という感情が強まっていきます。
心理学では、このような状態を「他者の視点の内在化」と捉えます。簡単に言えば、本来は外側にある評価基準が、自分の中に入り込んでいる状態です。
この状態になると、「自分はどう感じているか」よりも「どう見られているか」が優先されやすくなります。
その結果、お子様の行動を必要以上に重く受け止めてしまうことがあります。
ここまでを整理すると、「がっかりする感情」は、①期待とのずれ、②他者の視点、この二つによって強くなりやすいという構造が見えてきます。
一般的なアドバイスがうまく機能しない理由
「気にしない」という対応が現実的でない理由
このような状況に対して、「あまり気にしないようにしましょう」といった助言がなされることがあります。しかし、この言葉は実際には機能しにくいことが多いです。
なぜなら、「気になってしまう状態」には明確な理由があるからです。
例えば、「教室までは行けたのに帰ってしまった」という出来事を前にしたとき、多くの親御様は「せっかくここまでできたのに」という感覚を抱きます。
この「せっかく」という感覚には、努力を評価する気持ちと同時に、「最後までできてほしかった」という期待が含まれています。
つまり、感情の中にすでに基準が組み込まれています。
この状態で「気にしない」と意識しても、その基準が変わらない限り、違和感は残り続けます。
短く言えば、感情は理由なく生まれているわけではありません。
そのため、必要なのは抑え込むことではなく、背景を理解することです。
「普通」という言葉が持つ見えにくい圧力
もう一つ、親御様を追い詰めやすいのが、「普通は」「みんなはできている」という言葉です。
この表現は日常的に使われるため、違和感なく受け入れられがちです。しかし、不登校の文脈では、この言葉が強い基準として機能してしまいます。
例えば、「朝起きて学校に行くのは当たり前」という考え方があります。この基準に照らすと、それができていない状態は「問題」として捉えられやすくなります。
しかし実際には、教室で落ち着いて過ごすことや、毎日同じように登校することには個人差がありますし、体調や心理状態によっても大きく変わります。
それでも「普通」という枠で見てしまうと、その揺らぎが見えにくくなります。
結果として、お子様の状態を一面的に評価してしまうことにつながります。
ここまでの流れを整理すると、「期待」と「普通」という基準が固定されることで、現実とのずれが拡大し、感情が強まりやすくなるという構造が明確になります。
視点を整えることで見え方が変わる
行動を一つの結果として見ない
では、このような構造の中で、どのように視点を持ち直していけばよいのでしょうか。
ここで重要になるのが、「行動を一つの結果としてまとめてしまわない」という考え方です。
例えば、「教室まで行けたが帰ってしまった」という出来事を、そのまま一つの結果として捉えると、「できなかった」と評価されやすくなります。
しかし、この行動を分解してみると、「家を出た」「学校に向かった」「教室の前まで行った」「体調の変化に気づいた」「帰るという判断をした」といった複数のプロセスに分かれます。
このように見ていくと、一部は実行できていることが分かります。
わずかな違いに見えます。
ですが、この見方が評価の方向を変えます。
「すべてできたかどうか」ではなく、「どこまで進んだか」に焦点が移るからです。
小さな変化に気づけるようになると見方が変わる
さらに重要なのは、「できたかどうか」以外の軸を持つことです。
例えば、ご自宅で長時間過ごしているお子様が、これまで自室にこもりきりだったのに、最近は夕方になるとリビングに来てテレビを見ているとします。
この行動は、「学校に行く」という基準では評価されにくいものです。しかし、お子様の状態としては確かな変化です。
このような変化に気づけるようになると、「何も進んでいない」という感覚が現実に近い形へと修正されていきます。これは評価の解像度が上がるとも言えます。
「恥ずかしさ」とどう向き合うか
感情と事実を分けて捉えるという視点
先ほど「がっかりする感情」は期待とのずれと他者の視点によって強まるという構造を整理しました。その延長線上にあるのが、「恥ずかしさ」という感情です。
この感情は特に強く、親御様の行動にも影響を与えやすいものです。
例えば、学校からの連絡を受けたあとに、お子様に対して必要以上に厳しい言葉をかけてしまったり、逆にどう関わってよいか分からず距離を取ってしまったりすることがあります。
ここで一度立ち止まって整理したいのは、「感情」と「事実」は別のものであるという点です。
「恥ずかしい」と感じたとき、それは「恥ずかしい状況である」と確定しているわけではありません。あくまで、「そのように感じている状態」です。
この違いは小さく見えますが、実際の関わり方には大きく影響します。
感情を事実として扱ってしまうと、「この状況は問題だからすぐに変えなければならない」という焦りが生まれやすくなります。一方で、「今はそう感じている」と一歩引いて捉えることができると、行動の選択肢に余白が生まれます。
短く言えば、感情に飲み込まれにくくなります。この余白が、安定した関わり方を支えます。
「比較の構造」を見直すことで負担を軽くする
恥ずかしさの背景には、多くの場合「比較」が存在しています。「みんなはできているのに」という感覚です。
しかし、この比較は非常に限定的な情報に基づいています。
例えば、授業中に静かに座っている子どもたちを見て、「他の子はできている」と感じることがあります。しかし、その子どもたちも別の時間帯や別の場面では不安定になることがありますし、その全体像を見ることはできません。
つまり、比較の対象は一部に過ぎません。
それにもかかわらず、その一部を基準にしてしまうことで、お子様の状態を過度に厳しく評価してしまうことがあります。
ここで有効なのが、「比較の軸」を意識的に変えることです。
具体的には、「他の子ども」との比較ではなく、「過去のお子様」との比較に目を向けます。
例えば、以前は朝に全く起きられなかったお子様が、最近は少しだけ布団から出られるようになった。これまで声をかけても反応がなかったのに、短い返事が返ってくるようになった。
このような変化は小さく見えるかもしれません。
ですが、お子様の中では確かな変化です。
この変化に気づけるようになると、「できていない」という印象だけでは捉えきれない側面が見えてきます。
そして、その見方の変化が、恥ずかしさとの距離を自然に広げていきます。
「普通」という枠から少し離れる
「当たり前」は固定されたものではない
前半でも触れたように、「普通は」「当たり前」という言葉は、親御様の中で基準として強く働きやすいものです。
例えば、「朝起きて学校に行くのは当たり前」という考え方は、多くの場面で共有されています。しかし、この基準はすべての状況にそのまま当てはまるものではありません。
お子様が強い不安や緊張を抱えている場合、その「当たり前」を維持すること自体が大きな負担になります。
それでもなお、その基準を前提にしてしまうと、「できていない現実」との間に大きな差が生まれます。
この差が、親御様の焦りや失望を強める要因になります。
ここで重要なのは、「当たり前」は状況によって変わるという視点です。
固定されたものではありません。
そして、お子様の状態によっても変化するものです。
このように捉え直すことで、「なぜできないのか」という問いが、「今はどの状態にあるのか」という問いへと変わっていきます。
この違いは大きいです。問いが変わると、見えるものも変わります。
枠を緩めることで現実が見えやすくなる
「普通」という枠を少し緩めると、それまで見えにくかった行動や変化が見えてきます。
例えば、これまで一日中自室にこもっていたお子様が、夕方になるとリビングに来てテレビを見ている場面を考えてみます。
「学校に行く」という基準から見れば、この行動は大きな前進とは言えないかもしれません。しかし、そのお子様にとっては環境を変える一歩である可能性があります。
このような行動をどう捉えるかによって、その後の関わり方は変わります。
見方が変わると、声のかけ方も変わります。
その積み重ねが、お子様の反応にも影響していきます。
小さな変化ですが、方向性を決める意味では重要な差になります。
これからの関わり方をどう考えるか
感情を整えることが目的ではない
ここまで、「がっかりする感情」や「恥ずかしさ」の背景を整理し、それに対する視点の持ち方をお伝えしてきました。
ここで誤解しやすい点があります。
それは、「感情をきれいに整えることが目的ではない」ということです。
親御様の感情は、その時々で揺れ動くものです。状況によっては、強く落ち込むこともあれば、焦りを感じることもあります。
それ自体を無くす必要はありません。
むしろ大切なのは、「感情が動いている中で、どの視点を選ぶか」という点です。
同じ出来事であっても、「できなかった」という見方と、「ここまではできた」という見方では、その後の関わり方は変わります。
そして、その関わり方の違いが、少しずつお子様の行動に影響を与えていきます。
「今この時点から何を重ねるか」に戻る
最後に改めてお伝えしたいのは、「今この時点から何を重ねていくか」という視点です。
過去の出来事や、「こうあるべき」という理想に意識が引き戻されることは自然に起こります。しかし、そのたびに現在の行動に視点を戻すことが重要になります。
例えば、「今日は学校に行けなかった」という事実があったとしても、その一日の中でどのような行動があったのかを丁寧に見ていくことは可能です。
少しでも生活のリズムが整っていた時間があったのか。会話が成立した場面はあったのか。自分から動こうとした瞬間はなかったか。
このように具体的に見ていくことで、「何もできていない」という印象から離れやすくなります。
そして、その見方が次の関わり方を支えます。
大きな変化を目指す必要はありません。
現実に即した小さな行動を積み重ねること。
それが結果として、お子様の変化につながっていきます。
まとめ
お子様に対して「がっかりしてしまう」「恥ずかしいと感じてしまう」という感情は、期待とのずれや他者の視点、「普通」という基準によって強まります。
これらを無理に無くそうとするのではなく、その構造を理解することが重要です。
その上で、行動を分解して捉えたり、変化に目を向けたりすることで、評価の軸を調整していきます。また、感情と事実を分けて捉え、比較の対象を見直すことで、感情との距離を取ることができます。
この一連の流れによって、感情に振り回されすぎずに状況を見ることが可能になります。
完璧な対応を目指す必要はありません。
少しずつ見方を整えていくこと。
その積み重ねが、親御様にとっても、お子様にとっても、無理のない変化につながっていきます。
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