不登校を「解決」する、ということ
目次
ToCo株式会社のCEO、青山登と申します。
私たちの会社は、不登校のお子さんやご家庭を支援する活動をしています。
あなたは、不登校を「解決」すると聞いて、どう感じますか?
私の子どもが不登校になった時の気持ちは何年経っても忘れられません。
その時、「不登校を解決したい」という気持ちは一切起こりませんでした。
ただ、「子どもの苦しんでいる状態を何とかしてあげたい」という思いだけがぐるぐると巡っていました。
「不登校を解決する」とは、一見すると「子どもが学校に戻ること」や「学校生活を普通に送ること」を指しているように聞こえます。
けれども、不登校という状態を「何かを直す」という視点から見てしまうと大事なものが見えなくなってしまいます。
思い返せば、私は当初、自分の子どもを理解していないどころか、自分の行いすら分かっていませんでした。
不登校が始まった当初、私は何度も「なぜこうなってしまったのか?」と自分に問いかけました。
今だから分かりますが、答えは実にシンプルで、同時に胸が締めつけられるものでした。
問題の大きな原因は、他ならぬ「私自身」にあったのです。
私は当時、子どもの中学入学という大きな環境の変化に対して、親として何一つ向き合えていませんでした。
新しい環境でどのような思いをしているのか、学校生活についての話を聞くこともありませんでした。
「もう中学生だから、一人でやれるはずだ」と勝手に思い込み、適切な心配りを怠っていたのです。
さらに、うまくいかないことがあれば「努力が足りないからだ」と、まるで根性論のような言葉をぶつけていました。
その一言一言が、どれだけ子どもの心を傷つけていたのかを考えると、今でも後悔しています。
子どもの不登校をきっかけに、私は「親」という存在について深く考え直すようになりました。
私は親である以上、子どもを育てる責任があります。
しかし、その責任を勘違いしていました。「育てる」とは、子どもに目標を押し付け、親の価値観を無理に伝えることではありません。
それは、子どもと共に歩み、共に悩み、共に成長していく過程を共有することなのです。
再登校の支援を通じて多くの家庭から学ぶ
各ご家庭の支援をさせていただく中で、考え方の軸を一つ持つようになりました。
それは、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味は、学校に戻ることではなく、不登校も含めて、子どもが抱える悩みや苦しみを共有し、親子で話し合える関係性を築くことだということです。
子どもの状態がどんなものであれ、その存在を受け入れ、共に歩む姿勢こそが大切なのです。
不登校の経験は、私の価値観を変えました。
それまでは、学校に通うことが当たり前で、通えない状態が「問題」とみなされる風潮を、何の違和感もなく受け入れていたのです。
しかし、子どもの不登校と向き合う中で、「当たり前」と信じていたものがどれほどの重荷を子どもに背負わせていたのかを知りました。
それは、社会や学校、さらには親である私自身の固定観念が作り上げたものに過ぎなかったのです。
ある日、私の子どもがぽつりと口にした言葉がありました。
「学校に行けない自分はダメな人間だと思う」
この言葉は、私の胸に鋭く突き刺さりました。
学校という一つの枠組みに収まらないことが、なぜ「ダメな人間」へと繋がってしまうのでしょうか?
そして、それを子ども自身にそう感じさせてしまったのは、私だったのです。
私は親として無意識のうちに「学校に通うこと」「良い成績を取ること」「ルールを守ること」を絶対的な価値観として子どもに示してしまいがちでした。
そして、それが達成できない子どもを見たとき、「努力が足りない」「何かが間違っている」と考えてしまうのです。
しかし、本当にそうでしょうか?
そもそも「学校に通うこと」や「社会の枠組みに適応すること」が、子ども一人ひとりの幸せを保証してくれるのでしょうか?
私は、この問いに向き合う中で、「不登校を解決」という言葉自体に対する違和感を抱くようになりました。
不登校を「解決する」という表現には、どこか「問題を直す」というニュアンスが含まれています。
しかし、不登校は本当に「直すべき問題」なのでしょうか?
もしもそれが子ども自身の助けを求めるサインだとしたら、その声を無視して無理やり「直す」ことは、本質的な解決ではなく、むしろ事態を悪化させるだけではないでしょうか。
私自身の子どもとの関係は、不登校という経験を経て大きく変わりました。
以前の私は、親として子どもの成長を見守るどころか、自分の理想を押し付け、子どもを「型にはめる」ことにばかり意識を向けていました。
しかし、子どもが学校に行けなくなり、心の中に抱えていた悩みを少しずつ打ち明けてくれるようになった時、初めて「親としての本当の役割」を考えるようになったのです。
親の役割とは
親が子どもを育てる目的は、子どもを「成功させる」ことではありません。
子どもがどんな状況にあってもその存在を受け入れ、一緒に歩むことです。
たとえ学校に行かなくても、将来の進路がどうであっても、子どもが自分自身を肯定できるような関係を築くことが大切なのです。
再登校支援の現場では、さまざまなご家庭の状況や子どもたちの声を耳にします。
「親が自分の気持ちを理解してくれない」と感じる子どもがいれば、「子どもにどう接していいのか分からない」と悩む親御さんもいます。
どちらの声にも共通しているのは、互いに相手の気持ちを知りたい、理解したいという思いがあることです。
しかし、その思いが伝わらないことで、家族の中に深い溝が生じてしまうのです。
大人は時に、自分の方が「正しい」と思い込んでしまいます。
特に、子どもが何か問題を抱えているように見えるとき、それを「直さなければならない」と考え、子どもの声に耳を傾ける前に解決策を押し付けてしまうのです。
しかし、子どもの気持ちを聞くことなく、一方的に「正しさ」を伝えることは、子どもに「自分の気持ちは無視されている」と感じさせてしまいます。
それは、親子の関係を壊す大きな原因になり得るのです。
私の子どもが不登校を経て、少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになったとき、私は子どもの「言葉にできない声」に耳を傾ける姿勢を持つことの大切さに気づきました。
子どもは、必ずしも自分の感情や悩みを明確な言葉で表現できるわけではありません。
そのため、親である私たちが、子どもの言葉の裏にある本当の気持ちをくみ取ろうとする努力が必要なのです。
私は、ToCoの活動を通じて、これまで以上に多くの家庭や子どもたちを支援していきたいと考えています。
そして、その活動を通じて、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味を、社会全体に問いかけていきたいのです。
不登校という状況が、単なる「問題」ではなく、親子の新たな可能性を見出すための現れであることを、多くの人に知っていただけたらと思っています。
「学校に行けない」の底にあるもの
不登校という状況は、表面的には「学校に行けない」という形で現れます。
しかし、その背後には、子ども自身が抱えるさまざまな葛藤や悩みが存在します。
親である私たちが本当に向き合うべきなのは、この表面的な「学校に行けない」という事実ではなく、子どもの内面で何が起きているのかを理解しようとする姿勢です。
私の子どもが不登校になった頃、私は「何とかしなくては」という焦りに駆られていました。
子どもをカウンセリングに連れて行ったり、無理に学校に行かせようとしたりしました。
しかし、これらの行動が子どもにとってどれほどの負担を強いていたのかに気付くのに、時間がかかりました。
子どもは、親である私の期待や圧力に押しつぶされそうになっていたのです。
その後、私は無理に何かを変えようとするのをやめました。
子どもが話したい時に話を聞き、黙っていたい時にはそっと寄り添うことを心がけるようになりました。
すると、子どもは少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになりました。
子どもが語ったのは、自分がいかに孤独を感じ、誰にも理解されないと思っていたかということでした。
そして、その孤独感の大きな原因は、私が「学校に行けることが普通」としてしか見ていなかったことにあると気付かされました。
親は、子どもを「普通」であることに縛りつけてはいけないと考えています。
それは、子どもの個性や可能性を否定する行為と同じです。
私たちは子どもを「型」に当てはめるのではなく、一人の人間として尊重し、その子どもがどんな人生を歩むべきかを共に考えるべきなのです。
その過程で、子どもが学校に行くことが必要だと思えば、それを支援すれば良いですし、別の道を選ぶのであれば、その道を全力で応援することが親の役割だと思います。
不登校は、決して親や子どもの失敗ではありません。
それは、これまでのやり方や価値観を見直し、新たな関係を築くためのきっかけです。
私たち親がその事実に気付き、子どもと共に前に進む覚悟を持つことができれば、不登校という状況は単なる「問題」ではなく、成長の機会となり得ます。
ToCoを立ち上げた理由の一つは、カウンセラーや精神科医、児童心理司の方々からの学びを経て、このような視点の大切さを多くの家庭に届けたいという想いがあったからです。
不登校に直面するご家庭は、孤独や不安を抱えることが多いです。
しかし、同じ経験を持つ人々が繋がり、支え合うことで、その孤独感や不安感は大きく軽減されます。
そして、子どもとの関係を一度見直してみることで、子どもにとっての安心できる居場所が増えることを願っています。
不登校の家庭が年々増加している中、私たちは、親としての役割に対する考えを一度見直し、「不登校を解決する」とは何を意味するのかを問い直す必要があるのではないでしょうか。
それは、親子の新しい可能性を見出し、子どもが自分らしく生きられる道を模索するプロセスです。
ToCoを通じて、そのプロセスを支援し、多くの家庭が笑顔を取り戻すお手伝いができればと願っています。
参考:文部科学省「不登校への対応について」
参考:文部科学省「今後の不登校への対応の在り方について」
【国内最多の登校支援実績】トーコについて
私たちトーコは、不登校に悩んでいる2,000名以上のお子様を継続登校まで支援してきました。
「2年間一度も学校に行けなかった」「両親に反抗して暴れていた」など様々なご家庭がありましたが、どのケースでも効果を発揮してきました。
それは私たちが、医学的な根拠を持って不登校要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが継続登校までサポートする強みの表れと考えています。
無料相談も実施しておりますので、不登校でお悩みの方はぜひご検討ください。
