不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さんを抱える保護者の方々にとって、日々の生活の中で「子どもの話をどう聞くか」というのは極めて大きなテーマだと思います。特に、不登校のような状況では、親と子どもの間でのコミュニケーションが希薄になりがちです。「話をしてくれない」「何を考えているかわからない」という声を、私もこれまで何度も耳にしてきました。しかし、だからこそ「傾聴」のスキルが非常に重要となります。
「傾聴」という言葉はよく使われますが、これは単に「耳を傾ける」という行為以上の深い意味を持っています。傾聴の本質は、子どもの言葉に真摯に向き合い、心の中で何が起きているのかを共に理解しようとする姿勢にあります。ここで大切なのは、「受け入れること」と「解決しようとしないこと」です。親として、問題を早く解決してあげたいという気持ちは自然なことです。しかし、傾聴の場では、解決を急がず、ただその瞬間の子どもの感情や考えに寄り添うことが重要なのです。
傾聴が生む信頼関係
傾聴の最大の効果のひとつは、子どもとの間に信頼関係を築くことです。不登校のお子さんにとって、自分の存在や感情が「親にとって重要だ」と感じられる瞬間は非常に貴重です。日々の生活の中で、「どうして学校に行けないの?」といった問いかけが繰り返されると、子どもは自分が問題視されているように感じ、心を閉ざしてしまうことがあります。しかし、「どうしたいと思っているの?」や「最近、どんなことが気になる?」というような、否定や評価を含まない問いかけがあると、少しずつ自分の気持ちを言葉にする勇気が湧いてきます。
これは単に親子関係の改善に留まらず、子どもの内面的な成長にもつながります。自分の気持ちや考えを言葉にするという行為は、対話力や思考力を育む重要なステップです。例えば、「友達と喧嘩したけど、本当は仲直りしたい」「学校に行きたい気持ちと、怖い気持ちが両方ある」といった心情を親に伝えられることで、子ども自身が自分の感情を整理し、前向きな一歩を踏み出すきっかけになるのです。
見過ごされがちな傾聴の価値
多くの方が誤解しているのは、「話を聞いても、何も解決しない」という認識です。確かに、傾聴は直接的な解決策を提示するものではありません。しかし、子どもの内面を理解するための土台を築くプロセスとして、極めて重要です。例えば、子どもが不安を抱えている理由を知ることができれば、その後の対応策を考える際のヒントになります。また、子ども自身が自分の気持ちを言葉にすることで、次第に自己理解を深め、問題解決の糸口を見つけることもあります。
傾聴は、単なる「聞く」ことではなく、親子間の対話の質を高める行為です。これを意識的に実践することで、親子関係に変化が訪れるのは間違いありません。
子どもへの傾聴が難しい理由
子どもの話を聞くことが重要だと分かっていても、実際に実践するとなると難しさを感じる保護者の方は少なくありません。その背景には、さまざまな心理的・実践的な障壁があります。本章では、特に子どもへの傾聴が難しいとされる理由を、以下の三つの観点から掘り下げて考えていきます。
1. 子どもなりの意見や論理を尊重する必要がある
まず一つ目は、子どもなりの意見や論理を尊重するという点です。親としては、どうしても子どもの言葉が稚拙に思えたり、現実的でないと感じたりすることがあります。「どうしてそんなことを考えるの?」と疑問に思うこともあるでしょう。しかし、子どもの意見を否定したり論破したりすることは、傾聴の本質から外れてしまいます。
子どもが「学校の先生が嫌いだから行きたくない」と言った場合を考えてみましょう。大人から見れば、「先生が嫌いな理由が何なのか」を具体的に聞き出し、その原因を解決すればいいのではないかと思うかもしれません。しかし、このアプローチでは子どもの心に触れることはできません。子どもが本当に伝えたいのは、「自分が感じている違和感や不安を分かってほしい」ということです。そのためには、まず「嫌い」という感情そのものを受け止める必要があります。「嫌だと思うんだね。その気持ち、もう少し教えてくれる?」と問いかけることで、子どもは少しずつ心を開いていきます。
大切なのは、子どもの言葉の背景にある気持ちを理解しようと努めることです。例えその意見が論理的でなくても、そこに至るまでの感情を尊重することで、子どもは「自分の考えを聞いてくれる大人がいる」と感じ、安心感を得ることができます。
2. 親として適切な方向へ育てたいという思い
二つ目の理由は、親としての「正しい方向へ導きたい」という思いの強さです。これは親として当然の感情です。子どもが不登校になったり、社会的なルールから外れる行動を取ったりすると、「このままでは将来が不安だ」という気持ちが強くなるのは無理もありません。そのため、つい「こうすべきだ」「こうあるべきだ」とアドバイスを与えたり、方向性を示したりしたくなります。
しかし、このような指導的なアプローチは、傾聴の場面では逆効果になることがあります。子どもが「もう学校に行かなくてもいい」と言ったとき、親としては「そんなことを言ってはいけない」「学校には行くべきだ」と反論したくなるかもしれません。けれども、こうした言葉は子どもにとって、自分の気持ちが否定されたと感じさせる原因になります。その結果、子どもはさらに心を閉ざし、親との対話を避けるようになるのです。
親の役割は、子どもが安全に自分の気持ちを表現できる環境を整えることです。傾聴の場面では、正解を求めるのではなく、子どもの気持ちや考えに寄り添い、共に考える姿勢を持つことが求められます。
3. 子どもへの甘やかしと混同しやすい
三つ目は、傾聴と甘やかしを混同しやすいという点です。特に日本の文化では、「子どもを厳しく育てることが親の務め」という考えが根強いこともあり、子どもの話を丁寧に聞くことが「甘やかし」だと捉えられることがあります。この認識が、傾聴を実践する上での障壁となることが多いのです。
しかし、傾聴は甘やかしとは根本的に異なります。甘やかしとは、子どもの要求を全て受け入れることや、問題に対して親が代わりに責任を負うことを指します。一方、傾聴は、子どもの気持ちや考えを尊重しつつも、必要な場面では親としての適切なガイドラインを示すことを含みます。例えば、「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、「行かなくてもいいよ」と安易に答えるのではなく、「そう思うんだね。その理由を教えてもらえる?」と深掘りすることで、子ども自身が自分の考えを整理する手助けをすることができます。
また、甘やかしとの混同を避けるためには、親自身が傾聴の目的を明確に理解することが大切です。傾聴は、子どもの気持ちや考えを受け入れることで、子どもの内面的な成長や自己肯定感を促す行為です。そのため、親が一方的に譲歩するものではなく、子どもの自主性を育むためのプロセスだという意識を持つことが重要です。
傾聴を実践するための具体的な方法
傾聴の重要性を理解していても、「具体的にどうやって実践すればいいのかわからない」というお悩みをよく耳にします。子どもへの傾聴は、大人同士の会話とは異なるスキルを要するため、意識的な準備や練習が必要です。本章では、傾聴を日常で実践するための具体的な方法とポイントについて詳しく解説します。
1. まずは「聞く環境」を整える
傾聴を実践する上で最初に大切なのは、「子どもが安心して話せる環境」を整えることです。環境とは、物理的な空間だけでなく、親子間の心理的な雰囲気も含まれます。以下のような工夫が効果的です。
- 静かで落ち着ける場所を選ぶ
テレビやスマホの音が鳴り響くリビングでは、子どもは集中して話すことができません。話を聞くときには、できるだけ静かな場所を選び、子どもと向き合う時間を確保しましょう。 - 親の態度をフラットに保つ
子どもが話し始めたとき、驚いたり怒ったりする反応は禁物です。どんな内容でも、「そうなんだね」とまず受け止める姿勢を見せることが大切です。 - 時間を作る努力をする
傾聴は、短い時間で済ませるものではありません。忙しい日々の中でも、意識的に子どもと向き合う時間を作ることが必要です。「今ちょっと忙しいから」と話を中断してしまうと、子どもは「自分の話は大したことではないのかもしれない」と感じてしまうことがあります。
2. 子どものペースを尊重する
子どもが話すスピードや内容は、大人にとって物足りなく感じることもあるかもしれません。しかし、傾聴の場では、子どものペースを尊重することが最優先です。子どもが言葉を探しながら話しているときは、焦らずに待つことが大切です。たとえ沈黙が訪れても、それを埋めようとせず、子どもが考える時間を与えましょう。
例えば、子どもが「学校で嫌なことがあった」と話し始めたとします。このとき、「どんなこと?」と急かすのではなく、「そうだったんだね」と応じて、次の言葉を引き出す時間を与えることが効果的です。相手が話すリズムに合わせることで、子どもは「急かされない」「プレッシャーを感じない」と思い、より深い話をしやすくなります。
3. 「聞き方」の技術を身につける
傾聴のスキルには、いくつかの具体的なテクニックがあります。これらを意識的に取り入れることで、子どもとの対話の質が向上します。
- オウム返し
子どもが言った言葉をそのまま繰り返すことで、「自分の話がちゃんと聞かれている」と感じてもらうことができます。例えば、子どもが「学校が怖い」と言ったときに、「学校が怖いんだね」と返すことで、相手がさらに深く話すきっかけを作ります。 - 感情の代弁
子どもが言葉にしきれない感情を代わりに表現してあげることも有効です。「友達に無視されるのが辛い」と言った場合、「無視されると悲しい気持ちになるよね」と感情に寄り添うことで、子どもが安心感を持ちます。 - 具体的な質問を避ける
「どうして?」「なぜ?」といった質問は、子どもにプレッシャーを与えることがあります。代わりに、「そう思ったのはどんなことがあったからかな?」と柔らかく尋ねると、子どもが話しやすくなります。
4. 親自身の心構えを整える
傾聴を成功させるためには、親自身の心の準備も重要です。特に以下のポイントを意識すると良いでしょう。
- 完璧を目指さない
傾聴は一朝一夕で身につくスキルではありません。「子どもの話をきちんと聞けなかった」と感じた日があっても、それに後悔ばかりしないで少しずつ改善していく姿勢が大切です。 - 自分の感情をコントロールする
子どもの話を聞く中で、親自身が感情的になってしまうことがあります。しかし、傾聴の場では、親が冷静さを保つことが必要です。もし感情が高ぶってしまった場合は、一度深呼吸をしてから話を続けると良いでしょう。 - 期待を手放す
傾聴の目的は、子どもに「正しい答え」を導かせることではありません。子どもが自分の感情を表現できる場を提供することそのものが、大きな成果なのです。話を聞く中で何かを得られなくても、「今日はこれで十分だった」と自分を納得させることが大切です。
傾聴がもたらす変化と効果
傾聴を日常的に実践することで、子ども自身だけでなく、親子関係や家庭全体にもさまざまなポジティブな変化が現れます。この章では、傾聴を通じて得られる具体的な効果を三つの観点からご紹介します。
1. 子どもの自己肯定感の向上
傾聴の最大の恩恵の一つは、子どもの自己肯定感を高めることです。自己肯定感とは、「自分は価値がある存在だ」と感じる力であり、子どもの精神的な安定や社会的な適応能力に直結します。特に、不登校や引きこもりの子どもたちは、自己否定感や孤立感を抱えやすい傾向があります。そのような状況で、親が真剣に話を聞いてくれるだけで、子どもは「自分の存在を認められている」と実感し、自信を取り戻すきっかけとなります。
例えば、子どもが「みんなに嫌われている気がする」と話した場合、親が「そんなことはない」と否定するのではなく、「嫌われていると感じるんだね。その理由、教えてもらえる?」と受け止めるだけで、子どもは「自分の気持ちは価値がある」と感じられます。この感覚の積み重ねが、子どもの自己肯定感を徐々に育てていくのです。
2. 親子の信頼関係の強化
傾聴を続けることで、親子の信頼関係がより深く強固になることが期待されます。不登校や引きこもりの問題を抱える家庭では、親子間のコミュニケーションが断絶されがちです。「どうして学校に行かないの?」と問い詰めたり、「もっと頑張りなさい」と励ましたりするアプローチは、子どもにとってプレッシャーとなり、親子間の距離をさらに広げることがあります。
傾聴を通じて、「親は自分を責めたり否定したりしない」「自分の話をちゃんと聞いてくれる」という安心感を子どもが得られるようになると、親子間の信頼が深まります。この信頼関係は、子どもが困難に直面した際に親に相談しやすくなる土台となります。例えば、学校復帰や社会復帰を目指す際にも、この信頼があることでスムーズに進めることができます。
3. 子どもの問題解決能力の向上
傾聴は、子どもが自分で問題解決する力を育む手助けとなります。親が話を聞いてくれる環境の中で、子どもは自分の気持ちや考えを言葉にし、整理することを学びます。この過程は、子どもが自分で問題を解決するための重要なトレーニングとなります。
例えば、「友達とケンカをしてしまった」と話す子どもに対し、親が解決策を提示するのではなく、「どうしたら仲直りできると思う?」と問いかけることで、子ども自身が行動の選択肢を考え始めます。このように、自分の感情を表現し、それをもとに行動を選ぶ力を育むことが、子どもの成長にとって重要です。
傾聴がもたらす「家庭全体」の変化
傾聴は、子どもや親子関係にとどまらず、家庭全体の雰囲気にも影響を与えます。子どもの話を丁寧に聞くことで、家庭内に「安心感」や「理解のある雰囲気」が生まれます。このような家庭環境は、子どもの精神的な安定に寄与するだけでなく、家族全員のストレスを軽減する効果もあります。
例えば、子どもの傾聴を通じて親自身が「子どもの成長を急がず見守る姿勢」を学ぶことができます。また、兄弟姉妹がいる場合、親が傾聴を実践する姿を見せることで、子どもたち同士のコミュニケーションにも良い影響を及ぼします。
傾聴を妨げる障害とその克服法
傾聴を実践したいと考えていても、日々の生活の中でうまくいかないと感じることがあるかもしれません。これは、私たちが傾聴を妨げるいくつかの要因に直面しているからです。ここでは、傾聴を妨げる具体的な障害を三つに分け、それぞれの克服法について解説します。
1. 親自身の感情のコントロールが難しい
親が子どもの話を聞くとき、自分自身の感情が邪魔をすることがあります。例えば、子どもが「学校なんて意味がない」と言ったとき、親としては「何を言っているの?」とイライラしたり、不安を感じたりしてしまうことがあります。このような感情が出てくると、傾聴の基本である「相手を受け止める姿勢」が崩れてしまいます。
▶克服法:感情を整理する時間を持つ
まず、自分自身の感情を受け止め、冷静になる時間を作りましょう。子どもが話を始めたときに感情が湧き上がるのを感じたら、「ちょっと待ってね」と一呼吸置くことも大切です。また、日常的に自分の感情をノートに書き出すなどして整理することで、子どもとの対話の場面でも冷静さを保ちやすくなります。
2. 子どもが話すことを避ける
子どもが心を閉ざしてしまい、話したがらないことも傾聴の障害となります。特に、不登校や引きこもりの子どもは、「話をしてもどうせ理解してもらえない」と感じている場合があります。その結果、親がいくら話を聞こうとしても、「別に」「何でもない」と言われてしまうことが少なくありません。
▶克服法:非言語的なコミュニケーションを活用する
子どもが言葉で話すのが難しいときには、非言語的なコミュニケーションを試してみましょう。一緒に料理をしたり、ゲームをしたりする中で、少しずつ子どもが気持ちを表現しやすい状況を作ることができます。また、言葉を引き出すためにプレッシャーをかけるのではなく、「いつでも話したいときに話していいよ」と伝え、子どもが安心感を持てるようにします。
3. 時間やエネルギーの不足
忙しい日常の中で、子どもの話をじっくり聞く時間やエネルギーが取れないことも、大きな障害となります。仕事や家事に追われる中で、「傾聴したい気持ちはあるけれど余裕がない」と感じる親も多いでしょう。
▶克服法:短い時間でも質を高める工夫
時間が限られている場合でも、少しの工夫で傾聴の質を高めることができます。例えば、家事をしながら子どもと会話をするのではなく、数分でもいいので子どもと向き合う時間を取るようにしましょう。また、疲れているときは、「今日はちょっと疲れているけど、話を聞きたい気持ちはあるよ」と伝えることで、親の誠実さが伝わります。
傾聴の実践例とその成果
傾聴が具体的にどのように効果をもたらすのか、実際のエピソードを交えてお話ししたいと思います。不登校や引きこもりに悩む家庭の中で、傾聴を通じて親子関係が改善した事例や、子ども自身が変化を見せた事例は数多くあります。これらのエピソードを通じて、傾聴の重要性をさらに深く理解していただければと思います。
1. 「何も言わない」子どもの心が動いた瞬間
小学5年生の男の子A君は、不登校が始まってから親とほとんど会話をしなくなりました。母親が「どうしたの?」と尋ねても、「別に」とそっけない返事ばかり。ある日、母親は「どうせ話しても無駄だ」と諦めかけていましたが、児童心理司として私がアドバイスしたのは「何も言わなくても、子どものそばに寄り添う時間を作る」ことでした。
そこで、A君の母親は毎晩A君の部屋に行き、「今日はこんなことがあったよ」と自分の日常を一方的に話す時間を取りました。そして、最後に「あなたの話もいつか聞けたら嬉しいな」とだけ伝えるのを続けました。1か月後、A君が初めて自分から「今日はゲームでこんなに強い敵を倒した」と話し始めたそうです。それを聞いた母親は涙が出るほど嬉しかったと言います。
このエピソードが示しているのは、子どもが話さないときでも親が根気よく安心感を提供し続けることが重要であるということです。「話さない=拒絶」ではなく、子どもにとっては「まだ心の準備ができていない」だけの場合が多いのです。
2. 傾聴がもたらした親子の信頼関係の再構築
中学2年生の女の子Bさんは、学校でのいじめが原因で引きこもり状態に陥っていました。母親はBさんの状況を心配し、「学校に相談したほうがいいんじゃない?」と提案しましたが、Bさんは「そんなことされたら余計に辛い」と怒りをあらわにしました。この時、母親は自分の行動が「子どものためにならない」と感じ、私に相談に来られました。
私は母親に、「まずはBさんが何を考えているのかを徹底的に聞くことに集中しましょう」と提案しました。具体的には、Bさんが自分の部屋から出てきたタイミングで「どうしてそんなに学校が嫌なのか教えてほしいな」と穏やかに話しかけてもらいました。最初は無視されたそうですが、何度か同じことを続けるうちに、Bさんがポツリと「学校が怖い」と言ったそうです。
その言葉を聞いた母親は、「怖いと思うんだね」と繰り返し、それ以上は聞かずにその場を終えました。それから少しずつ、Bさんは学校での出来事や気持ちを話すようになり、半年後には母親と一緒に学校のカウンセラーと相談することに前向きになったのです。
このケースでは、親が解決策を急がず、子どもの感情に寄り添うことが、子ども自身が行動を起こすきっかけとなった好例です。
3. 傾聴を通じて子どもが自分を見つめ直した例
高校1年生のC君は、成績優秀で生徒会長を務めていましたが、ある日突然登校を拒否しました。親は「何があったの?」と詰問しましたが、C君は「疲れた」とだけ言って部屋に閉じこもりました。親としては、学校に行くことが大切だと感じ、C君に「これ以上休んだら取り返しがつかなくなるよ」と説得を試みましたが、逆効果でした。
そこで、私が提案したのは、C君の「疲れた」という言葉を深く掘り下げるための傾聴です。母親はC君に「どうしてそんなに疲れているのかな?」と優しく尋ねるようにしました。最初は「別に」とかわされましたが、「本当に辛いときは話してね」と繰り返し伝えることで、C君が「自分の気持ちを受け入れられる場所がある」と感じ始めました。
1か月後、C君は初めて「もう何も頑張りたくない」と本音を話しました。母親はそれを受け止め、「頑張らなくていいんだよ」と伝えると、C君は涙を流しながら「そう言ってくれてありがとう」と言いました。その後、C君は徐々に自分のペースで日常を取り戻していきました。
このエピソードが示すのは、傾聴は子どもが自分の本音に気づき、受け入れるプロセスを促進する力を持つということです。
最後に:傾聴を続ける価値
ここまで述べてきた通り、傾聴は子どもの心に寄り添い、信頼関係を築き、自分自身の力で前に進むきっかけを作るための強力な手段です。しかし、それは簡単なことではありません。親自身が感情をコントロールし、時間を作り、忍耐強く続ける必要があります。
大切なのは、「完璧を目指さない」ことです。上手に聞けない日があっても、気に病まずに、次の日からまた続ければいいのです。傾聴は一瞬で効果が出るものではなく、小さな積み重ねによって、いつか大きな変化をもたらします。
どうか、今日もお子さんの気持ちに耳を傾ける時間を作ってみてください。たとえ小さな一言でも、それが親子の絆を深める大きな一歩となるのです。
ToCo(トーコ)株式会社について
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