不登校の子どもが始めやすい外出:一歩ずつ踏み出すためのヒント

1.不登校の子はどれくらい外出している?

不登校の子どもにとって、適度な外出は心身の健康維持や社会復帰に向けて非常に重要です。しかし、不登校の子どもの外出頻度は登校している子どもと比べて著しく低いことが明らかになっています。

文部科学省の調査によると、2022年度における不登校児童生徒の1週間あたりの外出回数は、0回が35.8%、1~2回が27.2%、3~4回が17.5%、5回以上が19.5%となっています。一方、登校している児童生徒の外出回数は、0回が8.2%、1~2回が16.3%、3~4回が27.0%、5回以上が48.5%と、不登校の子どもと比べて明らかに多くの回数を外出して過ごしていることがわかります。

外出回数(週)登校児童不登校児童
0回8.2%35.8%
1~2回16.3%27.2%
3~4回27.0%17.5%
5回以上48.5%19.5%
文部科学省「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」

このように、不登校の子どもの多くは、十分な外出機会を得られていない状況にあると言えます。

2.再登校に必要な外出習慣

不登校の子どもにとって、外出は単なる気分転換以上の意味を持っています。適度な外出は、以下のような効果をもたらし、再登校に向けて必要な習慣を身につけるのに役立ちます。

  • 生活リズムを整える:
    外出することで、太陽の光を浴びて体内時計をリセットすることができます。規則正しい生活リズムは、心身の健康維持だけでなく、集中力や学習意欲の向上にもつながります。
  • 運動不足を解消する:
    不登校により運動不足になりがちです。適度な運動は、ストレス解消や体力増強、睡眠の質の向上などの効果があります。
  • 社会とのつながりを維持する:
    外出することで、家族や友人、地域の人々と交流する機会が増え、社会とのつながりを維持することができます。
  • 自信をつける:
    外出を成功させることで、小さな自信を積み重ねることができます。自信は、新しいことに挑戦する勇気や、困難を乗り越える力につながります。

3.子どもが外出したくない理由

不登校の子どもが外出したくない理由は様々ですが、主な理由としては以下のようなものが挙げられます。

  • 人目が気になる:
    学校に行っていないことが周囲に知られるのが嫌
  • 体力がない:
    運動不足や体調不良で外出するのが辛い
  • 何をすればいいかわからない:
    家にいることに慣れているため、外出して何をすればいいかわからない
  • 不安や恐怖を感じる:
    人混みや騒音が苦手、電車やバスに乗るのが怖い

これらの理由に加え、不登校の原因となっているいじめや学習への不安、親子間の関係など様々な理由が考えられます。

4. 不登校の小学生におすすめの外出方法

不登校の小学生にとって、外出は心身の健康維持や再登校に向けて非常に重要です。しかし、人目が気になる、体力がない、何をすればいいかわからないなどの理由で、外出に抵抗を感じる子どもも少なくありません。

ここではおすすめの外出方法と特徴、注意点を紹介します。

4-1.公園や児童館で遊ぶ:遊びを通して社会性を育む

公園:
遊具で遊んだり、ボール遊びをしたり、自然と触れ合ったりすることで、運動不足解消や協調性を身につけることができます。
近所の子どもと一緒に遊んだり、公園で開催されるイベントに参加したりすることで、友達を作ったり、社会性を育んだりすることができます。
最近では、インクルーシブ遊具を設置している公園も増えており、障がいを持つ子どもや不登校の子どもも安心して遊ぶことができます。

児童館:
工作や折り紙、ボードゲームなど、様々な遊びを通して、創造力やコミュニケーション能力を身につけることができます。
専門のスタッフが常駐しており、子どもの様子を見ながら、適切な遊びを提案してくれます。
イベントや講座も定期的に開催されており、新しいことに挑戦したり、友達を作ったりすることができます。

4-2.買い物に行く:日常生活に必要なスキルを学ぶ

スーパー:
食材や日用品の買い物を通して、お金の使い方や買い物計画の立て方を学ぶことができます。
また店員とのコミュニケーションを通して、社会性を身につけることができます。
無理のない範囲でお使いを任せることも効果的です。

商店街:
昔ながらの商店街では店主との会話を通して、コミュニケーション能力を身につけることができます。
地域の特産品や生鮮品を知ることで、新たな発見や楽しみを見つけることができます。
またイベントや祭りへの参加きっかけにもなり、人々と交流する機会が生まれます。

4-3.図書館に行く:読書習慣を身につけ、知識を広げる

図書館:
豊富な種類の書籍や雑誌を自由に読むことで、読書習慣を身につけ、知識を広げることができます。
また親が司書と相談して、子どもの興味や読書レベルに合った本を紹介してもらうこともできます。
合わせて読書会やおはなし会などのイベントに参加することで、人との接点を持つことができます。

ブックカフェ:
本を読みながらカフェを楽しめるブックカフェでは、ゆったりとした空間で読書を楽しむことができます。
イベントやワークショップも定期的に開催されており、読書を通して新しい体験を積むことができます。

4-4.習い事に行く:新しいことに挑戦し、自己肯定感を高める

習い事:
興味のある習い事をすることで、新しいことに挑戦し、自己肯定感を高めることができます。
専門の講師から指導を受けることで、技術や知識を習得することができます。
また同じ趣味を持つ仲間と出会うことで学校以外の友達を作ることができます。

カルチャーセンター:
カルチャーセンターでは、様々なジャンルの習い事を開講しています。
短期集中型の講座も豊富なので、気軽に挑戦することができます。
体験レッスンや見学を受け付けているところも多いので、自分に合った習い事を見つけることができます。

スポーツクラブ:
スポーツクラブでは、様々なスポーツの教室を開講しています。
運動不足解消や体力向上だけでなく、チームワークや競争精神を身につけることができます。
イベントや大会も定期的に開催されており、子どもが熱中した場合は目標に向かって努力する場が広がっています。

4-5.イベントに参加する:新しい体験をし、地域の人々と交流する

地域のイベント:
地域で開催される様々なイベントに参加することで、新しい体験をしたり、地域の人々と交流することができます。
夏祭りや花火大会、運動会などの定番イベント以外にも、様々なイベントが開催されています。
イベント情報を収集するには、地域の広報誌やウェブサイト、掲示板などをチェックするのがおすすめです。

子ども向けイベント:
科学館や博物館、美術館などの施設で開催される子ども向けイベントでは、遊びながら学ぶことができます。
図書館や児童館で開催されるおはなし会や工作教室などもおすすめです。
子ども向けイベントの情報は、各施設のウェブサイトやSNSで確認することができます。

4-6.その他

ペットショップや動物園に行く:
動物と触れ合うことで、癒されたり、生きものとしての実感を得ることができます。
イベントやワークショップも開催されており、動物について詳しく学ぶ機会にも繋がります。

カフェやレストランに行く:
外食をすることで、気分転換になったり、新しい味を楽しむことができます。
子どもの好きなメニューがあるお店を選んだり、テラス席で食事を楽しんだりするのもおすすめです。

5. 不登校の中学生におすすめの外出方法

不登校の中学生にとって、外出は単なる気分転換以上の意味を持っています。適度な外出は、将来の社会復帰に向けて必要な経験やスキルを身につけることに役立ちます。

ここでは、不登校の中学生におすすめの外出方法と特徴、注意点を紹介します。

5-1.友達や家族と遊ぶ:社会的行動から人間関係を育む

ショッピング:
家族や友達と一緒にお気に入りの服や雑貨を買ったり、カフェで休憩したりすることで、楽しい時間を過ごせるだけでなく、コミュニケーション能力や社会性を養うことができます。
セールやイベントなどの情報をチェックして、現実の外の情報に興味を持って接点を持つ機会にも繋がります。

映画鑑賞:
家族や友達と映画を見たり、感想を語り合ったりすることで、共通の話題を見つけることができます。
話題の映画や、好きなジャンルの映画を選んだり、カフェなどで感想会を開くこともおすすめです。

カラオケ:
友達とカラオケで歌ったり、踊ったりすることで、ストレス解消や気分転換になります。
最新の曲や、好きなアーティストの曲に触れる機会にもなります。また、人目を気にすることなく一人でカラオケに行く選択肢もあります。

5-2.クラブ活動に参加する:新しいことに挑戦、仲間との交流、専門的な指導

地域のクラブ活動:
地域で開催されている様々なクラブ活動に参加することで、新しいことに挑戦したり、同じ趣味を持つ仲間と交流することができます。
スポーツクラブ、文化活動クラブ、ボランティア団体など、様々な種類のクラブ活動があります。
情報収集は地域の広報誌やウェブサイト、掲示板などで行えることが多いです。

オンラインクラブ活動:
インターネットを通じて参加できるオンラインクラブ活動も増えており、時間や場所に縛られずに活動することができます。
全国各地のメンバーと交流したり、専門的な指導を受けたりすることができます。
オンラインクラブ活動のプラットフォームやSNSで情報収集ができますが、健全な活動グループであるかの見極めは重要です。

5-3.イベントに参加する:新しい体験、地域の人との交流、社会貢献

地域のイベント:
地域で開催される様々なイベントに参加することで、新しい体験をしたり、他の学校の同年代の子どもや地域の人々と交流したりすることができます。
夏祭りや花火大会、運動会などの定番イベント以外にも、様々なイベントが開催されている自治体が増えています。

ボランティア活動:
ボランティア活動に参加することで、社会貢献意識を高めたり、新しい人と出会ったりすることができます。高齢者施設での慰問活動、環境保護活動、地域イベントの運営など、様々なボランティア活動があります。
ボランティア活動の情報は、地域のボランティアセンターやNPO法人のウェブサイトで確認することができます。
特に子どもの自尊心を高める機会になりやすいですが、対人面でのストレスが大きいため慎重に検討することを推奨します。

スポーツイベント:
スポーツイベントに参加したり、観戦したりすることで、スポーツ観戦の楽しみを味わったり、選手たちの活躍に刺激を受けることができます。
地域で開催される大会や、プロスポーツの試合など、様々なスポーツイベントがあります。自ら身体を動かすきっかけにも繋がります。

5-4.その他

カフェやレストランに行く:
外食をすることで、気分転換になったり、新しい味を楽しむことができます。
友達と一緒に行ったり、家族とゆっくり食事を楽しんだりするのもおすすめです。

旅行に行く:
旅行に行くことで、新しい景色を見たり、思い出を作ったりすることができます。
国内旅行や海外旅行など様々な旅行プランがありますが、初めは片道2時間以内で、家族と行くことをおすすめします。
キャンプやアウトドアもありますが、初回は敷居の低い場所を選ぶことが重要です。

6. まとめ

もちろん上記で紹介した小学生の外出方法が、中学生に合うこともありますし逆も同じです。大切なのは、子どもの世界を部屋の中だけにしないこと、また登校したとしても居場所をその学校だけにしないことです。
また無理強いせず、子どもが興味を持っていることや、やってみたいと思っていることから無理のない範囲で、様々な外出を経験させてあげることが大切です。
外出を通して社会とのつながりを少しずつ取り戻せるように手助けし、生活習慣の改善に繋がることを目指しましょう。

最後に、子どもの成長のために次の5つの姿勢が大切となります。ただ、すべて完璧にこなそうとすると大変なので、まずは心に留めていただければと思います。

1.子どもに寄り添い、話をよく聞く

不登校の原因は様々ですが、多くの場合、子どもは何かしら悩みを抱えています。まずは子どもの話をよく聞き、共感を示すことが大切です。子どもの気持ちを受け止め、否定したりすることは避けましょう。

2.子どもを責めない

不登校は、子どもの意志で選んでいるわけではありません。子ども自身も、学校に行きたいと思っていることがほとんどです。子どもを責めたり、プレッシャーをかけたりすると、さらに追い詰められてしまう可能性があります。

3.周囲の人に相談する

一人で抱え込まず、周りの人に相談しましょう。私どもを含め、学校や地域の相談窓口、NPO法人など、様々な支援機関があります。一人で解決しようとせず、積極的に支援を求めることが大切です。

4.小さな目標から始める

いきなり健康的でアクティブな生活を目指すのではなく、まずは家から出る、近所を散歩するなど、小さな目標から始めてみましょう。少しずつ自信をつけていき、無理のない範囲で目標を達成していくことが大切です。

5.長期的な視点で考える

外出の習慣は不登校だけではなくて今後の長い人生に影響することです。焦らずゆっくりと取り組んでいくことが大切で、少しずつ子どもに合った社会との距離感を見つけていきましょう。

不登校は、決して親御さんの責任ではありません。また、子どもの人生の全てを決定づけるものではありません。ただそれが子ども自身も望んでいない不登校であったり、惰性的に不登校が続いてしまっているのであれば外出習慣は重要な一歩となるでしょう。

参考URL

文部科学省「不登校児童生徒等のための学習指導要領解説:相談支援の充実」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
NPO法人「登校支援ネットワーク」
https://www.facebook.com/tokokyohi.futokonet/

再登校支援サービスToCoについて詳しく知りたい方はこちら。

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