不登校中にこそ考えたい、自立型幸福と依存型幸福の違い

こんにちは。カウンセラーの竹宮と申します。
今日は「不登校中にこそ考えたい、自立型幸福と依存型幸福の違い」についてお話ししたいと思います。

お子さんが学校に行かなくなった時、多くのご家庭では「どうすればまた登校できるか」「どうやって社会に戻していくか」といった目の前の課題に意識が集中します。それは自然なことですし、親として当然の気持ちです。

しかし、少し立ち止まって考えてみたいのです。
「そもそも子どもにとっての“幸せ”とは何か?」
「私たち親が望む“幸せ”と、本人の感じている“幸せ”は同じなのか?」

この問いに向き合うことが、不登校という現象の“根本”に手を伸ばす第一歩になると私は考えています。

目次

幸せには「タイプ」があるという視点

まず前提として、「幸せ」にも種類があります。
心理学では、大きく分けて「自立型幸福」と「依存型幸福」という概念があります。

自立型幸福とは?

これは「自分で選び、自分で考え、自分で納得して得られる幸福」のことです。
他人から評価されるかどうかに左右されません。

たとえば——

ある中学生の女の子が、自分の好きなイラストを描くことに夢中になり、SNSなどにも出さず、ただ自分の部屋で何時間も没頭している。
誰に見せるでもなく、評価を求めるわけでもないけれど、その時間が彼女にとって深い満足をもたらしている。

こういう状態は、自立型幸福に近いです。
本人の「内側」に源があるからです。

依存型幸福とは?

一方、依存型幸福は「他者からの承認や期待に応えることで得られる幸福」です。
いわゆる「いい子」でいようとする、成績で褒められることを目標にする、などがこれに当たります。

たとえば——

ある男の子が、塾で毎回トップを取ることに執着している。親が喜ぶから頑張っているし、周囲からも褒められる。
けれど、本人は「もう無理だ」と内心で感じている。それでもやめられない。

これは、依存型幸福の典型です。
満たされているようで、どこか苦しい。自分で選んだわけではないからです。

「学校に戻ること」は、幸福の条件ではない

不登校の相談を受けていて、保護者の方からよく言われる言葉があります。

「このままじゃ、将来が心配です」
「学校に行かないで、幸せになれるんでしょうか」

これらの気持ちはよく分かります。私自身、親として同じことを思いました。

ただ、ここで一つ考えてみてください。
学校に戻れたとして、それはどんな形の幸福につながっているのでしょうか?

もしかすると、子どもが「親を安心させるため」に登校を再開しているケースもあるかもしれません。
これは、依存型幸福の状態に近くなります。

もちろん、本人の意志で戻る場合は違います。
ただ、「とりあえず学校に行けるようになること」が最優先目標になってしまうと、子どもの“内側の声”が置き去りになる危険があるのです。

よくあるアドバイスの落とし穴

「少しずつ登校の練習をしていきましょう」
「生活リズムを整えましょう」

このようなアドバイスは非常によく目にしますし、一定の効果があるのも事実です。
ただし、これらを“万能な正解”として受け取ってしまうと、問題が生まれます。

なぜなら手段は良くても、「正解=登校再開」となると、結果が求められてしまうからです。
そして、「登校できない=失敗」という無意識の前提が作られてしまいます。

結果として、登校できない自分を「ダメだ」と感じるようになります。
それが、子どもの自己否定につながっていきます。

「自立型幸福」に必要なもの

ここで「自立型幸福」に話を戻しましょう。
これは、外から与えられるのではなく、内から育つものです。

必要なのは、「安心して、自分の好きなことや、関心を持てることに向き合える時間と環境」です。

言い換えれば、「やらなければいけないこと」よりも、「やってみたいこと」に時間を使える状態です。
そしてそれは、学校に行っているかどうかとは、まったく関係がありません。

たとえば、料理が好きで、毎日夕飯を手伝ってくれるようになった子。
好きなゲームの世界をきっかけに、動画編集に興味を持ち始めた子。
植物が好きで、ベランダで育て始めた子。

これらはすべて、自立型幸福の芽だと私は考えています。

「依存型幸福」が悪いわけではない

誤解してほしくないのは、依存型幸福が「ダメ」だと言いたいわけではありません。
人は誰しも、誰かに褒められることや、認められることで元気が出る生き物です。

問題なのは、それ“だけ”になってしまうことです。
つまり、「評価されなければ自分の価値がない」と思い込んでしまう状態です。

こうなると、他人の期待や目線に縛られすぎてしまい、失敗や拒絶に極端に弱くなります。

依存型幸福に慣れてしまった子どもたち

実は、多くの不登校の子どもたちは、この依存型幸福の中で長く過ごしてきた傾向があります。

「お母さんが喜ぶから」
「成績を落としたくないから」
「いい子にしていれば褒められるから」

このような動機で頑張ってきた結果、ふとしたきっかけで「燃え尽きた」ように動けなくなってしまうことがあります。

そこに、「学校に戻らなければ」というプレッシャーがさらに重なってしまうのです。

「頑張らなくてもいい時間」の価値

不登校の時期は、いわば「社会的レール」から一度外れた状態です。
この時期に、「誰かに認められなくても、自分が心地よいと思える時間」を持てることは、とても重要な意味があります。

それは、これは本人にとって、「誰にも合わせず、自分の感覚を取り戻す」ための時間でもあります。

このような時間を通じて、「自分は、他人に役立たなくても、ここにいていい」と思えるようになる。
それが、自立型幸福の土台になります。

自立型幸福が育つと、自然と外の世界ともつながる

ここで一つ、よくある誤解を整理しておきたいのですが——
「自立型幸福に向かうと、社会との接点を断つのでは?」という心配です。

たしかに、他人に合わせることを重視しなくなると、一時的に「内向き」になるように見えることがあります。
しかし実際には、自立型幸福が育つと、逆に「安心して他人と関われるようになる」傾向があります。

なぜなら、自分の軸があるからです。

自分で選んだ趣味、自分が楽しいと思える活動を通して、自然と「これを共有したい」「話してみたい」という気持ちが湧いてきます。

そしてそのときには、他人の目を過度に気にせず、自分らしく関われるようになっています。

親にとっての“揺らぎ”とどう向き合うか

とはいえ、親の側からすると「今のままでいいのか?」という不安は常にあります。
その不安が、「何かさせなければ」「動かさなければ」という焦りにつながることも少なくありません。

この葛藤は、非常に現実的なものです。

私が保護者の方と面談していて感じるのは、「子どもを信じたい」と思う気持ちと、「このままだと社会に取り残されるのでは」という不安が、常に交互に押し寄せてくることです。

ここで大切なのは、「子どものために、何かしてあげなきゃ」と思いすぎないことです。

むしろ、「子どもが今、自分を取り戻すプロセスにある」と捉えること。
そして、「親である自分も、不安な気持ちをそのままにしていい」と認めること。

親もまた、「外からの評価」ではなく、「自分にとっての納得」を大切にしていいのです。

具体的に何ができるのか?

ここまでの話を聞いて、「じゃあ、親としては何をしたらいいのか?」と感じた方もいると思います。

結論から言えば、「自立型幸福の芽を摘まないこと」です。

・本人が興味を持っていることに、口を挟みすぎない
・成果を出させようとしない(たとえば「それで食べていけるの?」という言葉は避ける)
・無理に外に連れ出そうとせず、安心できる時間と空間を守る

これは、放任とは違います。
本人の内側にある「やってみたい」という火を、消さないことに集中する姿勢です。

そして、必要以上に「意味づけ」をしないことも大切です。
「ゲームばかりしていて大丈夫?」と感じることがあっても、それが今の彼らにとって大切な“感覚の調整”になっている可能性もあるからです。

幸せの「定義」を見直すということ

子どもが不登校になると、つい「どう戻すか」という“修復的”な発想になりがちです。
でも実は、「どこに戻すか」がずれていることもあります。

・誰かの期待に応える人生
・評価されることを目指す生き方
・無理してでも「普通」に合わせる生活

これらは、一見「成功」に見えても、幸福には直結しないことがあります。

むしろ、「自分のペースで、自分が納得できる形で生きていく」ことの方が、よほど価値があるのではないかと思うのです。

その価値観に気づけるのが、不登校という“立ち止まり”の時間です。

それは、遠回りに見えて、実は本人にとって必要な時間です。

最後に

この記事では、「自立型幸福」と「依存型幸福」という切り口から、不登校の捉え方を少し違った視点で紹介しました。

もちろん、すぐに答えが出る話ではありません。
ですが、今お子さんが立ち止まっているその時間が、「ただの空白」ではなく、「幸せな未来への準備」かもしれない。
そう思えたとしたら、少しだけ気持ちが軽くなるのではないでしょうか。

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