【調査結果】家庭環境と不登校の関係とは?

こんにちは。不登校支援に取り組んでいるカウンセラーの竹宮です。
今日は「家庭環境と不登校の関係」について、公立中学校を対象とした調査結果をもとに考えてみたいと思います。

最近は、不登校の原因を語るとき、「学校でのトラブル」や「先生との相性」「同級生との人間関係」など、学校側の要因に焦点が当たることが多くなっています。それ自体は大切な視点なのですが、今回はもう少し家庭側に視点を移したいと思います。

今回の調査対象となったのは、公立中学校に通う不登校の生徒150人と、不登校ではない生徒300人です。

調査の内容は、「親子が一緒に夕食を食べる頻度」と「親子で会話する頻度」など、家庭内の過ごし方についての質問です。

この結果を丁寧に見ていくと、不登校の背景にある家庭の空気感や日常の過ごし方が、影響していることが分かってきます。

調査対象:

本研究の調査対象は、東京都品川区に在住する中学生とその保護者とした。
公立中学校3校の協力を得て、不登校の生徒150名(男子68名、女子82名、平均年齢14歳)とその保護者150名、および同一中学校に在籍する不登校ではない生徒300名(男子135名、女子165名、平均年齢14歳)とその保護者300名を無作為に抽出。
不登校の定義は、年間30日以上の欠席がある生徒とした(文部科学省の定義に準拠)。調査への参加は任意であり、保護者と生徒双方の同意を得た上で実施。

データ群:
本研究で収集したデータは、主に質問紙調査によるものである。生徒および保護者に対して、以下の項目を含む質問紙を配布・回収した。

  • 生徒の基本属性(性別、学年、年齢)
  • 保護者の基本属性(性別、年齢)
  • 親子の夕食を共に摂る頻度(選択肢:ほぼ毎日、週に4~5日、週に2~3日、週に1日以下、ほとんどない)
  • 生徒の学校への出席状況(不登校の有無、欠席日数)
  • 不登校の理由に関する選択肢
  • 家庭環境に関する質問項目

目次

親子で夕食を食べる頻度と、不登校の関係

まず取り上げるのは、「親子で夕食を食べる頻度」です。

調査の設問は、こうです。

お子様が一緒に夕食を食べる頻度についてお答えください。

1. ほぼ毎日
2. 週に4~5日
3. 週に2~3日
4. 週に1日以下
5. ほとんどない

この質問に対して、不登校の生徒とそうでない生徒がどう回答したか。結果を並べると、差が大きく出ました。

夕食の頻度不登校ではない生徒 (n=300)不登校の生徒 (n=150)
ほぼ毎日180人 (60.0%)18人 (12.0%)
週に4〜5日75人 (25.0%)33人 (22.0%)
週に2~3日39人 (13.0%)45人 (30.0%)
週に1日以下6人 (2.0%)39人 (26.0%)
ほとんどない0人 (0.0%)15人 (10.0%)

カイ二乗検定の結果例:

χ2=135.7, 自由度 df=4, p<0.001

結果の解釈:

本調査の結果、中学校における不登校の生徒とそうではない生徒の間で、親御さんと一緒に夕食を食べる頻度に有意な差が見られました(χ2=135.7,df=4,p<0.001)。

不登校ではない生徒の60.0%がほぼ毎日親御さんと夕食を食べているのに対し、不登校の生徒でほぼ毎日一緒に夕食を食べているのはわずか12.0%でした。
一方、不登校の生徒の26.0%が週に1日以下しか親御さんと夕食を食べていないのに対し、不登校ではない生徒で同様の頻度なのは2.0%でした。「ほとんどない」と回答した割合も、不登校の生徒で10.0%であるのに対し、不登校ではない生徒では0%でした。
この結果は、親御さんと一緒に食事をする頻度が低いほど、不登校になりやすい傾向があることを強く示唆しています。

この調査から何が見えてくるのか

ここで言いたいのは、「夕食を一緒に食べれば不登校は防げる」という単純な話ではありません。

大切なのは、その時間にどういう空気が流れているかということです。

例えば、こんな場面を想像してみてください。

仕事帰りで疲れているお母さん。
塾のある下の子の送り迎えの合間に、慌ただしく食卓に並べたお惣菜。
テレビをつけながら、それぞれが自分のスマホを見ている。
「いただきます」も「ごちそうさま」も曖昧なまま、30分後には各自の部屋に。

こういう毎日が続けば、親子の間に「一緒に暮らしていても、心が離れている」ような感覚が生まれてしまっても無理はないのです。


「家庭環境が原因」ではなく「家庭環境が大切」

このような調査結果を紹介すると、時に「親が悪いと言われているように感じる」と言われることがあります。

でも、着目すべき点はそこではありません。
むしろ、家庭というのは「一番身近で、親が手を加えやすい環境」なのです。

先生を変えることも、クラスの雰囲気を変えることも難しい。
でも、家庭の中での空気や関わり方は、少しずつでも変えることができる。

だからこそ、家庭に視点を戻すことには意味があるのです。

会話の頻度と不登校の関係

次に、「親子の会話の頻度」についての調査結果を見てみましょう。

調査の設問は、こうです。

お子様と、学校や友人関係、将来のことなどについて、日常的にどの程度会話をしていますか。

1. 毎日、よく話す
2. 週に数回、話す
3. 月に数回、話す
4. ほとんど話さない
5. 全く話さない

結果は以下の通りです。

会話の頻度不登校ではない生徒 (n=300)不登校の生徒 (n=150)
毎日、よく話す165人 (55.0%)12人 (8.0%)
週に数回、話す90人 (30.0%)30人 (20.0%)
月に数回、話す30人 (10.0%)48人 (32.0%)
ほとんど話さない12人 (4.0%)45人 (30.0%)
全く話さない3人 (1.0%)15人 (10.0%)

カイ二乗検定の結果例:

χ2=158.3, 自由度 df=4, p<0.001

結果の解釈:

本調査の結果、中学校における不登校の生徒とそうではない生徒の間で、親御さんとの日常的な会話の頻度に非常に有意な差が見られました(χ2=158.3,df=4,p<0.001)。

不登校ではない生徒の55.0%が「毎日、よく話す」と回答しているのに対し、不登校の生徒で同様に回答したのはわずか8.0%でした。一方、不登校の生徒の30.0%が「ほとんど話さない」、10.0%が「全く話さない」と回答しており、これらの割合は不登校ではない生徒のグループと比較して著しく高くなっています。
この結果は、親御さんとの会話の頻度が低いほど、生徒が不登校に陥りやすい傾向が強く示唆されるものです。親子のコミュニケーション不足が、生徒の学校生活における困難や心理的な負担に影響を与えている可能性が考えられます。

欠席から「戻れる子」と「戻れない子」の差

これらのデータを見て推測できることは、「一度学校を休んだあと、どう立て直せるか」にも家庭の関わり方が影響している可能性です。

例えば、同じように月曜日に頭痛で休んだ子が二人いたとします。

一人は、「今日は体調悪いから無理しないでね。でも明日、先生にどんなふうに言うか一緒に考えようか」と母親に言われます。

もう一人は、「また頭痛いの。いつまでこんなこと続けるの」と言われて、会話が途切れてしまいます。

もちろん、親御さんの気持ちも分かります。
でも、このちょっとした違いが、子どもが「戻れるか」「戻れなくなるか」の分岐点になることがあります。

頭を抱える小学生のイメージ

なぜ家庭の関わりが不登校に影響するのか

ここまで見てきたように、夕食や会話といった家庭内のささやかな関わりが、不登校と関連している可能性があるという調査結果が出ています。

ただし、誤解してほしくないのは、「親子関係が悪い=不登校になる」という単純な因果関係ではないということです。
人は、どんなに家庭で支えられていても、学校という外の環境で深く傷ついてしまうことがあります。反対に、家庭が少しギクシャクしていても、子どもが外でのつながりの中でうまくやっていけるケースもあります。

では、なぜ家庭が影響するのか。

ひとつには、「安心して戻れる場所があるかどうか」という点があります。


不登校は“状態”であって、“性格”ではない

不登校になった子どもに対して、「根性が足りない」「甘えている」と感じてしまう声も一部にはあります。

けれど、私たちが関わる中でいつも感じるのは、不登校は「子どもの性格の問題」ではなく、「いまの状態がそうなっているだけ」だということです。

その状態は、環境やタイミングによって変わります。
そしてその“変化しやすい場所”のひとつが、家庭なのです。

家庭のなかで安心感が得られていると、子どもは気持ちのエネルギーを少しずつ蓄えやすくなります。
そのエネルギーが溜まってくると、ある日ふと、外に出てみようと思えることがあるのです。


会話の質と「親の無力感」

親子の会話というテーマについて、もう少し踏み込んで考えてみましょう。

多くのご家庭で、「もっと話さないと」と思う反面、「何を言っても返事がない」「聞いても無視される」「傷つけたくなくて、黙ってしまう」という悩みが出てきます。

この背景には、親御さん自身の「無力感」が潜んでいることが多いのです。

どう声をかければいいか分からない
何を話しても、逆効果になりそうで怖い
もう何度も失敗してきたから、黙っている方が楽

こういった感情が積み重なると、親子の会話は“ゼロ”ではなく“ゼロに近い状態”になっていきます。


子どもは、言葉より「気持ち」を感じている

ここで大事にしたいのは、「何を話すか」よりも「どんな気持ちで話すか」です。

お子さんは、親が自分に“期待”しているのか、“呆れている”のか、“諦めている”のかを、表情や声のトーン、沈黙の長さから敏感に感じ取ります。

だからこそ、たとえ言葉数が少なくても、次のようなメッセージは伝わりやすいのです。

「あなたの話を聞く準備はできているよ」
「無理に話さなくていいけど、私はここにいるよ」
「うまく言えなくても、伝えようとしてくれるだけで嬉しいよ」

これらは、決して特別な言葉ではありません。
でも、子どもの心に「戻る場所がある」という感覚を生み出していきます。


「正解」を求めない視点が、家庭を穏やかにする

家庭の話になると、どうしても「ちゃんと食べさせなきゃ」「ちゃんと話さなきゃ」「ちゃんと支えなきゃ」と、“正解”を探してしまう親御さんがとても多いです。

でも、ここで少し視点を変えてみてください。

「正解の家庭」は目指さなくていいのです。
目指したいのは、「安心できる家庭」、もっと言えば、「自分の気持ちをリセットできる場所」です。

疲れて帰ってきたときに、「なんでそんなことになったの」と責められるのと、「おかえり、まずご飯食べよう」と迎えられるのとでは、全く違いますよね。

それは大人も子どもも同じなのです。


家庭は、“変えやすい環境”という利点がある

今回の調査の特徴は、家庭側の要素にしっかりと焦点を当てた点です。

どうしても学校側の事情ばかりが注目されがちな中で、家庭の中での過ごし方や関わり方が、不登校とどう関わっているのかを数字として示したことに大きな意義があります。

そして家庭という環境は、学校や社会に比べて“変えやすい”という特徴があります。

すぐに変える必要はありません。
でも、少しずつ変えようと思えば、家庭は一番柔軟な場所になれるのです。


まとめ:原因探しよりも、「傾向」からヒントを

ここまでお読みいただいて、こんなふうに感じられた方もいるかもしれません。

「家庭環境が悪かったのかと思って、苦しくなった」
「あれもこれもできていなかったと責められているように思えた」

しかし、この記事の意図は原因探しではありません。
調査が示したのは、あくまでも「傾向」です。つまり、「こういう傾向があるから、そこにヒントがあるかもしれません」という話です。

そのヒントとは、家庭の中のちょっとした習慣だったり、言葉のかけ方だったり、子どもが感じる「安心」のあり方だったりします。

家庭というのは、完璧になることはできません。
子どもが少し疲れたときに、「ここに戻ってきていいんだな」と感じられる場所であること。それが何よりも大きな支えになります。

学校の問題に目が向きやすい時代だからこそ、家庭の意味をもう一度、丁寧に見つめてみても良いかもしれません。

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