スマートフォン・ゲーム依存対策の専門医が警鐘する「強制取り上げ」

こんにちは。カウンセラーの竹宮と申します。
今日は「スマートフォンやゲームに依存するお子さんへの対応」について、特に「強制的に取り上げる」という方法の是非を考えてみたいと思います。

「うちの子、スマホばかり触っていて全然勉強しません」
「ゲームばかりで昼夜逆転してしまっていて…」

このようなご相談を受ける機会はとても多いです。

そして、ほぼ決まって出てくるのがこの問いかけです。
「やっぱりスマホやゲームは、思い切って取り上げるべきなんでしょうか?」

この問いに対して、私は「依存が強い場合は避けてください」とお答えしています。

目次

よくある「取り上げ」のアドバイス

スマートフォンやゲームの「依存」という言葉には、どうしてもネガティブな響きがあります。
だからこそ、「悪いものをやめさせる」「使わせないようにする」という考えが浮かびやすいのだと思います。

たとえばこんなアドバイスを耳にしたことがあるかもしれません。

  • 「親の権限で制限すべきです」
  • 「中毒なんだから、まずは断ち切ることが最優先」
  • 「一度ゼロにしてリセットすれば、また生活が立て直せます」

どれも、ある意味では理屈が通っています。
確かに「依存症」の本来の定義においても、「使用の制限」は治療における第一段階に含まれることが多いです。
けれども、それはあくまで専門的な支援体制の中で行われるものであって、家庭の中で力ずくで実行することとは意味が違います。

強制的に取り上げることのリスク

まず、はっきりさせておきたいのは、スマホやゲームを一時的にでも強制的に取り上げることは、推奨される対応ではないということです。
これは臨床心理士や精神科医、児童精神の専門家の間では共通の認識です。

なぜか。
子どもが強く反発するからです。
そしてその反発は、単なる「怒る」といったレベルにとどまらないことがあります。

たとえば——

  • 家の中で物を壊す
  • 暴言や暴力に出る
  • 無断外出を繰り返す
  • 自傷行為をする

実際に、他の不登校支援でスマホを突然取り上げたことで、子どもが精神的に崩れてしまい、当社に相談をいただいたケースを何度も見てきました。

このような背景があるため、専門医やカウンセラーがまず選択しないのが「強制取り上げ」です。

「依存」と「逃避」は同じではない

もう一つ、大切な視点があります。
それは、スマホやゲームにのめり込んでいる子どもたちが、それ自体を本当に楽しんでいるとは限らないという点です。

実際、多くのケースでは、彼らがスマホやゲームに没頭する背景には「逃避」の要素が隠れています。

たとえば——

  • 学校に行けないことへの罪悪感
  • 人間関係での不安
  • 家の中での居場所のなさ

こうした心のしんどさを抱えたときに、ゲームやSNSは一時的に「頭を空っぽにしてくれる逃げ場」になり得ます。
まるで、ひと晩中テレビを見て現実逃避をしてしまう大人のような状態です。

つまり、ゲームやスマホは「問題」そのものではなく、「問題からの逃げ道」になっていることが多いのです。
この視点を忘れると、子どもの行動の表面だけを見てしまい、大事なサインを見落とすことになります。

「取り上げ」は、親子関係を壊すリスクがある

ここで一つ、私が実際に相談を受けたケースをご紹介します。

40代のお母さんからのご相談でした。

中学2年生の息子さんが、朝から晩までスマホゲームばかりしていて、声をかけても無視される。
何度注意しても直らないので、ついにスマホを取り上げたところ、家のドアを蹴り壊して、夜中に裸足で外に飛び出してしまった。

このお母さんは言いました。
「悪いことをしたつもりはなかったんです。何とかしたくて、それしか思いつかなかったんです…」

このような出来事は、親子関係に深い傷を残します。
一度壊れてしまった信頼は、回復に時間がかかります。
そして、その間に子どもの心はさらに孤立していきます。

「段階的な制限」とはどういうことか

では、どうすればよいのでしょうか?

専門医が実際に使う方法のひとつが「段階的制限」です。
これは言い換えると、「急激に変えない、段取りを踏んで減らしていく方法」です。

たとえば——

  • まずは使用時間を記録する
  • 次に、時間帯や内容にルールをつけていく
  • その上で、親子で共有する「目標」を決める

このようにして、段階を追って少しずつ使用時間を減らしていくのです。
ポイントは、「親が勝手に決める」のではなく、「子どもと一緒に考える」ことです。
ここに、信頼関係の修復と強化が含まれています。

認知行動療法でのアプローチ

もう一つ、重度のデジタルデバイスへの依存傾向が見られるケースで用いられるのが、認知行動療法です。

これは、「考え方のクセ(認知)」と「行動のパターン」を見直しながら、少しずつ自分の行動をコントロールしていく治療法です。
専門家のサポートのもとで行う心理療法ですが、家庭でも考え方のヒントとして使える要素はたくさんあります。

たとえば、

「スマホをしていないと不安になる」という感情が湧くのはなぜか?
「現実がつらいからゲームをしたくなる」とき、自分はどんな場面でそう感じているのか?

こうした自分自身の内面に目を向ける力を育てていくことで、行動は無理なく変わっていきます。
このアプローチの利点は、「取り上げること」による対立を避けながら、依存を緩やかに減らしていける点にあります。

なぜ「意識の変化」から始めることが大切か

親御さんの多くが、「行動を変えたい」と思われます。
たとえば「ゲームをやめて勉強してほしい」「スマホをやめて寝てほしい」といったように。
しかし、行動の変化だけを目的にしてしまうと、うまくいかないことが多いのです。

なぜなら、人は自分の内側が変わらない限り、外側の行動はなかなか変わらないからです。

たとえば、毎晩アイスを食べる習慣がある大人が、「ダイエットだから今日からやめる」と決めたとします。
その場で冷凍庫からアイスを捨てることはできます。
でも、心のどこかで「我慢してる」という気持ちが残っていれば、数日後にはまた買ってしまうでしょう。

それと同じことが、子どもにも起きています。

親にスマホを取り上げられても、「納得していない」「不安が残っている」状態では、
いずれまたどこかで隠れて使ったり、別の依存対象を探したりします。

だからこそ、行動の前に意識の変化が必要なのです。

「なぜやめられないのか」を一緒に探る

認知行動療法では、「自動思考」という考え方をよく使います。
これは、出来事に対して無意識に浮かんでくる考えのことです。

たとえば、スマホでSNSをチェックしている子どもがいるとします。
その子に「なんでそんなに見てるの?」と聞くと、「暇だから」と答えることが多いのですが、
実際にはその奥にこんな自動思考が隠れていることがあります。

  • 「通知を見逃したら、友だちに置いていかれるかもしれない」
  • 「返事をしないと、嫌われる気がする」
  • 「SNSに反応がないと、自分が認められてないように思えてくる」

こういった思いは、本人も意識できていないことがあります。
しかし、それがあるからこそ、スマホを手放せないのです。

このような内面に寄り添って、「どうしてそこまで不安なのか」「どんな場面でそう感じるのか」を言葉にしていくことで、
子どもは少しずつ「自分を客観的に見る力」をつけていきます。

それが、依存から回復していくための最初のステップです。

「正解の対応」よりも、「壊さない関係」を

ここで、もうひとつ強調しておきたいことがあります。

スマホやゲームの問題について、「どの対応が正解か」という問いには、実は一つの明確な答えがありません。

子どもによって、性格も、家庭の環境も、背景も違います。
その中で唯一確かなのは、「親子の信頼関係を壊さないことが、最も大切な前提になる」ということです。

この関係さえ保てていれば、方法は後からでも探せます。
逆に、一度関係が崩れてしまうと、どんなに良い方法も機能しなくなってしまいます。

寄り添いすぎず、離れすぎず

最後に、子どものゲーム依存やスマホ問題について、親として「何かしなければ」と焦る気持ちは、すごくよく分かります。
でもその焦りが強くなりすぎると、「今すぐ取り上げないと」「変わらせないと」といった極端な手段に走ってしまいやすくなります。

けれども、そこでいったん立ち止まって、こう考えてみてください。

「この子がこの行動に頼らざるを得ないほど、つらかったことは何だろう?」

この問いは、問題の本質に近づくヒントをくれます。
そして、それに向き合うには、子どもと一定の距離を保ちながら、少しずつ対話を重ねていくことが必要です。

寄り添いすぎず、離れすぎず。
それが、最も効果のある姿勢です。

まとめ

スマートフォンやゲームへの依存。
これは、単なる「悪い癖」や「意志の弱さ」ではありません。
むしろ、子どもの心が何かから身を守るために、必死で作った「避難所」であることが多いのです。

それを無理やり壊すのではなく、
「もっと安心できる居場所」を少しずつ一緒に作っていく。
その視点が、解決への近道になることもあります。

家庭の中で、すぐに完璧な対応をすることはできなくて当然です。
でも、「強制取り上げ」ではなく、「話せる関係を守る」という方向に目を向けることで、
少しずつ、子どもの中の変化が始まっていきます。

当社では、スマートフォンやゲーム依存で通常の制限が効かないお子様にも、強制取り上げではない方法で支援を行っております。もしお悩みの方は一度当社サービスをご確認ください。

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