不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。
私は、不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問として、多くの保護者や子どもたちと向き合ってきました。
不登校の原因はさまざまですが、その根底に共通して見られるのが「自己評価の低さ」です。子どもが「自分には価値がない」「どうせ自分なんてダメだ」と思い込んでしまうと、学校生活の中で感じるストレスが大きくなり、そのストレスを乗り越えることが難しくなります。そして、次第に学校に行くことへの抵抗感が強まり、不登校へとつながってしまうのです。
では、なぜ不登校の子どもは自己評価が低くなりやすいのでしょうか? そして、自己評価の低さを克服し、自尊心を育てるために、親としてどのように関わることができるのでしょうか? 本稿では、不登校を防ぐための「自尊心の育み方」について、具体的な方法をお伝えしていきます。
目次
第一章:不登校の子どもの自己評価の低さ
不登校の子どもたちは、驚くほど自己評価が低い傾向にあります。「どうせ自分なんて」「また失敗するに決まっている」「自分は何をやってもダメだ」といった言葉が口癖になっていることが多く、物事に対して消極的になりがちです。こうした思考が続くと、子どもは自分に対する信頼を失い、新しいことに挑戦する気力をなくしてしまいます。
1-1. 自己評価とは何か?
「自己評価」とは、簡単に言えば「自分の能力や価値に対する認識」のことです。たとえば、「自分は数学が得意だ」と思っている子どもは、数学の問題に自信を持って取り組めます。しかし、「自分は計算が苦手だ」と思っている子どもは、問題を見るだけで不安を感じ、解く前から「どうせできない」と決めつけてしまうことがあります。
自己評価には、二つの側面があります。
- 能力に対する評価:「自分は何ができるのか?」という認識。勉強ができる、スポーツが得意、人付き合いが上手など。
- 存在に対する評価:「自分には価値があるのか?」という認識。誰かに愛されている、必要とされている、役に立っているなど。
自己評価が低い子どもは、このどちらの側面でも否定的な考えを持ちやすくなります。たとえば、成績が下がると「自分は勉強ができないダメな人間だ」と思い込み、友達とのトラブルがあると「自分は嫌われている」と感じてしまいます。
1-2. 自己評価の低さが不登校につながる理由
自己評価の低い子どもは、学校生活でのさまざまな場面で不安を感じやすくなります。たとえば、以下のような状況が考えられます。
- 授業で発言するのが怖い:「間違えたら笑われるかもしれない」「先生に怒られるかもしれない」
- 友達との会話が苦手:「自分と話してもつまらないと思われるかもしれない」「どうせ自分なんか友達に必要とされていない」
- テストや成績に対する不安:「いい点を取れなかったら親に怒られる」「またダメだったらどうしよう」
こうした不安が積み重なることで、学校に行くこと自体が大きなストレスになり、「学校に行きたくない」「休みたい」という気持ちが強くなっていきます。
さらに、自己評価が低い子どもは、失敗を極端に恐れる傾向にあります。「失敗=自分の価値の低下」と感じてしまうため、失敗するくらいなら何もしないほうがマシだと考えてしまうのです。その結果、新しいことに挑戦する機会が減り、さらに自己評価が低くなるという悪循環に陥ります。
1-3. 自己評価の低さから不登校になった子どもの例
Aくん(小学5年生)は、もともと勉強が得意で、クラスでも目立つ存在でした。しかし、ある日、国語の授業で意見を求められたとき、答えた内容がクラスメートに笑われてしまいました。先生は特に気にする様子もなく授業を進めましたが、Aくんにとっては大きなショックでした。
「自分の考えは間違っているのかもしれない」
「もう発言しないほうがいい」
そう思うようになったAくんは、それ以来、授業で手を挙げなくなりました。すると、テストの点数が少しずつ下がり始め、「自分は勉強ができないんだ」と思うようになりました。それが積み重なり、最終的には「学校に行きたくない」と言い出すようになったのです。
Aくんのように、ちょっとした出来事がきっかけで自己評価が低くなり、それが不登校につながるケースは非常に多いです。特に、真面目で責任感の強い子どもほど、自己評価の低下が大きな影響を及ぼしやすいのです。
1-4. 子どものサイン
子どもが自己評価を低くしているとき、以下のような言動が見られることが多くなります。
- 「どうせ自分なんか」といった否定的な言葉を口にする
- 何かを始める前から「無理」と言う
- 失敗を極端に怖がる
- 他人と自分を比べて落ち込む
- 誰かに褒められても「そんなことない」と否定する
こうしたサインに気づいたら、親は早めに子どもの気持ちに寄り添い、サポートしていくことが大切です。自己評価の低さは放っておくとどんどん悪化し、不登校が長期化する原因になってしまうからです。
第二章:自己評価が低いとストレスが増え、乗り越えにくくなる
2-1. ストレスとは何か?
ストレスとは、心や体にかかる負担のことです。人は日常生活の中でさまざまなストレスを受けますが、適度なストレスは成長の糧にもなります。しかし、過度なストレスが続くと、心が疲れ果ててしまい、行動する気力を失ってしまうのです。
特に、子どもにとって学校はストレスが発生しやすい環境です。授業、宿題、友達付き合い、先生との関係、部活動――学校生活のあらゆる場面でストレスが生じる可能性があります。
ストレスを受けやすい子と受けにくい子の違い
同じ出来事が起こっても、子どもによってストレスの感じ方は大きく異なります。たとえば、授業で答えを間違えたときの反応を見てみましょう。
- 自己評価が高い子:「間違えちゃったけど、次は気をつけよう!」
- 自己評価が低い子:「やっぱり自分はダメだ……もう二度と発言したくない」
自己評価が高い子は、ミスを「一時的なもの」として受け止め、前向きに考えることができます。しかし、自己評価が低い子は、「間違えた自分は価値がない」と極端に考えてしまい、深いダメージを受けてしまうのです。
2-2. 自己評価が低いとストレスを感じやすくなる理由
自己評価の低い子どもは、学校生活の中で遭遇するさまざまな出来事を「自分に対する否定」として受け止めがちです。その結果、通常なら軽く受け流せるようなことでも、大きなストレスとなってしまいます。
1. 他人の言動を過剰に気にする
自己評価が低い子どもは、周囲の評価を過剰に気にする傾向があります。友達が何気なく言った一言を「自分は嫌われている」と解釈したり、先生のちょっとした指摘を「怒られた」「見放された」と受け取ってしまうことがあります。
2. 小さな失敗を「致命的なミス」だと考える
自己評価が低い子どもは、「失敗=価値がない」と考えてしまいがちです。そのため、小さなミスでも大きなショックを受け、必要以上に落ち込んでしまいます。
2-3. 自己評価が低いとストレスを乗り越えにくくなる理由
自己評価が低い子どもは、ストレスを乗り越える力も弱くなります。なぜなら、「自分にはできる」という自己信頼がないため、困難に直面したときに「無理だ」とすぐに諦めてしまうからです。
1. 「どうせ無理」と思い込み、行動できない
自己評価が低い子どもは、新しいことに挑戦する前から「どうせできない」と決めつけてしまいます。そのため、何か問題が起こったときに、解決しようとする前に諦めてしまうことが多いのです。
2. 「自分の力で解決できる」という感覚がない
自己評価が低い子どもは、「困難な状況に直面したときに、自分の力で乗り越えられる」という感覚(自己効力感)が低くなっています。そのため、少しでも難しい問題にぶつかると、すぐに助けを求めたり、逃げてしまうことが多くなります。
では、どうすれば自己評価を高め、ストレスを乗り越えやすい子になるのでしょうか? その鍵を握るのが「自尊心」です。
第三章:自己評価と自尊心の関係
3-1. 自己評価と自尊心の違いとは?
「自己評価」と「自尊心」は似ているようで異なる概念です。簡単に言うと、
- 自己評価:「自分は何ができるか?」(能力に対する評価)
- 自尊心:「自分には価値があるか?」(存在に対する評価)
たとえば、テストで良い点を取ったとき、自己評価の高い子は「自分は勉強が得意だ」と考えます。一方で、自尊心の高い子は「点数が悪くても、自分には価値がある」と考えることができます。
つまり、自己評価が高くても、自尊心が低ければ「うまくいかないと自分には価値がない」と思い込んでしまいますし、逆に自尊心が高ければ「失敗しても、自分は大切な存在だ」と思えるのです。
3-2. 自己評価が高くても自尊心が低いとどうなるか?
ここで重要なのは、「自己評価が高い=自尊心が高い」というわけではないということです。たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。
ケース1:優等生タイプの子ども
成績優秀で、先生や親からも「すごいね」「頑張り屋だね」と褒められることが多く、自己評価は比較的高い。しかし、「良い成績を取らないと自分には価値がない」と考えている。そのため、少しでも成績が下がると「自分はダメだ」と強く落ち込み、自己否定の感情に襲われてしまう。
ケース2:スポーツが得意な子ども
運動が得意で、リレーの選手にも選ばれるほど。しかし、運動会当日、緊張で思うように走れず、チームが負けてしまいまった。「私は足が速いから価値がある」と思っていたため、失敗した途端に「私なんていらない」と極端に落ち込んでしまう。
こうした子どもたちは、一見すると自己評価が高そうに見えますが、実際には「条件付きの自己評価」になっており、根本的な自尊心が育っていないことがわかります。
3-3. 自尊心が低いとどうなるか?
自尊心が低いと、どんなに頑張って成果を出しても、自分を肯定できなくなります。その結果、以下のような思考に陥りがちです。
- 他人の評価に依存する:「誰かに認められないと自分には価値がない」
- 失敗を極度に恐れる:「うまくいかなかったら、自分の価値がなくなる」
- 完璧主義になりやすい:「100点を取らなければ意味がない」
- 挑戦を避ける:「失敗が怖いから、新しいことに手を出さない」
このような状態が続くと、学校での小さな出来事が大きなダメージになり、やがて不登校につながってしまうのです。
3-4. 自己評価よりも自尊心を育てることが大切
ここまでの話をまとめると、不登校を防ぐためには、自己評価を高めるだけでなく、「自尊心を育てる」ことが最も重要だと言えます。自尊心がしっかりと育っていれば、子どもはたとえ失敗しても「それでも自分には価値がある」と思えるようになり、ストレスを乗り越える力がつくのです。
では、どうすれば自尊心を育てることができるのでしょうか?
第四章:自尊心の発育は、親が鍵
子どもの自尊心を育てるためには、どのようなことが必要なのでしょうか?その鍵を握っているのは「親の関わり方」です。
親の何気ない言葉や行動が、子どもの自尊心を育てる土台を作ります。この章では、自尊心を育むために親ができる具体的な関わり方を詳しく解説していきます。
4-1. 親の関わりが自尊心を決める理由
子どもの自尊心は、生まれつき決まっているわけではありません。それは「人との関わりの中で育まれるもの」です。そして、子どもにとって最も身近な存在が「親」なのです。
子どもは、幼少期から親の言葉や態度を通じて「自分はどんな存在なのか?」を学んでいきます。
たとえば、次のような関わりをされた子どもは、それぞれ異なる自尊心を持つようになります。
- 親が「あなたは大切な存在だよ」と伝えて育てた子 → 「自分には価値がある」と感じる
- 親がいつも否定的な言葉を使って育てた子 → 「自分なんてダメだ」と思い込む
子どもがどのように自分を捉えるかは、親の関わり方によって大きく左右されるのです。
4-2. 子どもの自尊心を傷つける親の言動
まず、気をつけたいのは「自尊心を傷つける親の言葉や態度」です。親が悪気なく発した言葉でも、子どもは深く傷つき、「自分には価値がない」と感じてしまうことがあります。
1. 否定的な言葉を頻繁に使う
- 「何やってるの!そんなこともできないの?」
- 「いい加減にしなさい!」
- 「どうして○○ちゃんみたいにできないの?」
こうした言葉を頻繁に聞かされた子どもは、「自分はダメな人間だ」と思い込むようになります。特に「○○ちゃんと比べて…」という言葉は、子どもの自己評価を下げる大きな要因となります。
2. 結果だけを評価する
- 「100点取ったから偉いね!」
- 「テストの点が悪いと、将来困るよ」
結果だけを評価され続けると、子どもは「良い結果を出さなければ、自分には価値がない」と思うようになります。その結果、失敗を恐れ、新しいことに挑戦する意欲を失ってしまうのです。
3. 子どもの話を途中で遮る
- 「そんなことより、もっと大事な話があるのよ」
- 「いや、それは違うでしょ」
子どもが話しているときに、親が途中で話を遮ったり、否定的な言葉を返したりすると、「自分の話は聞いてもらえない」と感じるようになります。これが続くと、子どもは「どうせ話しても無駄だ」と思い、自分の気持ちを表現することをやめてしまうのです。
4-3. 自尊心を育てるための親の関わり方
では、子どもの自尊心を育てるためには、どのような関わり方が必要なのでしょうか?
1. 子どもの存在そのものを肯定する
子どもは、何かができるから価値があるのではなく、「存在そのものに価値がある」という感覚を持つことが大切です。そのためには、日常的に「あなたがいてくれるだけで嬉しい」というメッセージを伝えることが重要です。
たとえば、次のような言葉を使いましょう。
- 「○○がいてくれると、お母さん(お父さん)は嬉しいよ」
- 「大好きだよ」
こうした言葉は、子どもにとって「自分は愛されている」「自分には価値がある」という安心感につながります。そして、言葉をかけなくても、愛情を持って見つめることも大きな効果を生みます。
2. 失敗しても肯定的な声かけをする
子どもが何かに失敗したとき、どのように声をかけるかが重要です。
✔ 良い声かけの例
- 「失敗しても大丈夫だよ」
- 「やってみたことが素晴らしいよ」
- 「次はどうしたらうまくいくかな?」
このように、失敗を責めるのではなく、「次につなげる考え方」を伝えることが、自尊心の成長につながります。
3. 子どもの話を最後まで聞く
子どもが話をするときは、途中で口を挟まず、最後までしっかり聞いてあげることが大切です。
「うんうん」「そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の気持ちは大切にされている」と感じるようになります。
また、「どう思ったの?」「それで、○○はどうしたの?」と質問を投げかけることで、子ども自身が自分の気持ちを整理する力を育てることもできます。
「もううちの子は自信をなくしてしまっている」と感じている親御さんもいるかもしれません。しかし、安心してください。親の関わり方を少しずつ変えていくことで、子どもの自尊心は確実に回復していきます。
第五章:自尊心は今からでも回復できる
「うちの子はもう自尊心が低くなってしまっている」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。しかし、自尊心は何歳からでも回復させることができます。たとえ今、子どもが「自分なんて」と思い込んでいたとしても、親の関わり方次第で徐々に自尊心を取り戻すことができます。
この章では、自尊心を回復させる具体的な方法について解説していきます。
5-1. 自尊心を回復させるために親ができること
1. 「結果」ではなく「過程」を褒める
「テストで100点を取ったね、すごい!」といった結果を褒めるのではなく、努力や工夫を褒めるようにしましょう。
例:「一生懸命勉強していたね、その頑張りが素晴らしいよ」
結果だけを褒めてしまうと、子どもは「良い結果を出さなければ価値がない」と思い込んでしまいます。しかし、努力や工夫を褒めることで、「頑張ることそのものが大切だ」と学び、自尊心が回復していきます。
2. 小さな成功体験を積ませる
大きな目標ではなく、日常の小さな成功体験を積み重ねることが重要です。たとえば、
- 「今日は食器を運んでくれて助かったよ」
- 「お風呂掃除してくれたんだね、ありがとう!」
こうした些細な成功体験を通じて、「自分は役に立つ存在だ」と実感させることが大切です。
3. 子どもの話を「最後まで」聞く
子どもが話をしているとき、「でもね」「それは違うよ」と途中で遮っていないでしょうか? 自尊心が低い子どもほど、「自分の話なんて聞いてもらえない」と感じやすいため、話を最後まで聞いてあげることが大切です。
「うんうん、そうなんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、子どもは「自分の考えを大切にしてもらえている」と感じられるようになります。
5-3. 親の変化が子どもに与える影響
親がポジティブな言葉を使い、自分自身の価値を認めている姿を見せることで、子どもも自然と同じ考え方を身につけます。
たとえば、親自身が失敗したときに「もうダメだ」と言ってしまうと、子どもも「失敗=価値がない」と思ってしまいます。逆に、「まあ、失敗しても次頑張ればいいよね」と前向きな姿勢を見せると、子どもも同じように考えるようになります。
子どもの自尊心を回復させるためには、親自身がまず「ありのままの自分を認めること」も大切なのです。
第六章:自尊心を高めやすい家庭とは?
前章では、子どもの自尊心は今からでも回復できること、そして親の関わり方が大きな鍵を握ることをお話ししました。しかし、子どもは家庭という環境の中で育つため、親がどれだけ頑張っても、家庭全体の雰囲気が自尊心を育みやすいものでなければ、根本的な改善は難しくなります。
そこで、次に「自尊心を高めやすい家庭の特徴」について詳しく掘り下げていきます。普段の生活の中で取り入れられる小さな工夫から、家族関係の見直しまで、具体的なポイントを解説します。
6-1. 甘やかさず、褒めることができる家庭
自尊心を育てるためには、褒め方が非常に重要です。ただし、何でもかんでも褒めればよいわけではありません。「甘やかし」と「適切な褒め方」はまったく別のものです。
1. 甘やかしとは何か?
「甘やかし」とは、子どもが本来向き合うべき問題や課題を親がすべて取り除いてしまうことです。たとえば、
- 「宿題をやらなくてもいいよ」と言ってしまう
- できなかったことをすぐに親が手助けしてしまう
- 失敗しても、子どもに責任を負わせずに周囲のせいにする
こうした対応を続けていると、子どもは「努力しなくても何とかなる」「自分は何もしなくても親が守ってくれる」と学習し、自己肯定感が育たなくなります。
2. 正しい褒め方とは?
自尊心を育てるためには、結果だけでなく「努力や工夫」を褒めることが重要です。
✔ 良い褒め方の例
- 「最後まで頑張ったね!」(努力を認める)
- 「工夫してやってみたんだね」(プロセスを評価する)
- 「失敗しても挑戦したのがすごい!」(チャレンジ精神を認める)
✖ 良くない褒め方の例
- 「すごい!天才!」(漠然と褒める)
- 「なんでもできるね!」(現実的でない評価)
褒めることで自尊心は高まりますが、それが「条件付きの評価」になってしまうと逆効果です。たとえば、「100点を取ったから偉いね」と言われ続けると、「100点を取らないと自分の価値がない」と思い込んでしまいます。そうではなく、「一生懸命勉強したことが素晴らしい」といったプロセスを評価することが大切なのです。
6-2. 家族で食事を一緒に取ることの重要性
「食事を一緒に取ること」が、自尊心の発育に深く関わっていることをご存じでしょうか? 実は、家庭での食事回数が多い子どもほど自己肯定感が高いという研究結果があります。
1. 食事がもたらす安心感
食事の時間は、家族がリラックスして会話できる貴重な時間です。子どもは、「家族と一緒に食卓を囲む」ことで「自分は受け入れられている」「安心できる場所がある」と感じることができます。
たとえば、毎日「今日、学校でどんなことがあった?」と聞かれるだけでも、子どもは「自分は話を聞いてもらえる存在なんだ」と思えるようになります。こうした小さな積み重ねが、自尊心を高める要因となるのです。
2. 食事中の会話が子どもの心を開く
不登校の子どもは、「どうせ自分の話なんて誰も聞いてくれない」と思い込んでいることが少なくありません。そのため、食事の時間を活用して、少しずつ子どもの話を引き出すことが大切です。
たとえば、以下のような質問をしてみてください。
- 「今日はどんなことがあった?」
- 「最近、気になっていることはある?」
- 「学校の○○先生ってどんな先生?」
子どもが話しやすい雰囲気を作ることで、「自分の気持ちを話してもいいんだ」と感じるようになり、少しずつ自尊心が回復していきます。
6-3. 夫婦仲が険悪ではない(シングルの場合は親の安定が重要)
家庭の雰囲気が、子どもの自尊心に与える影響は計り知れません。特に、夫婦仲が険悪な家庭では、子どもが「自分のせいで喧嘩しているのでは?」と感じ、深い自己否定感を抱くことがあります。
1. 夫婦仲が険悪な場合の影響
夫婦喧嘩が多い家庭では、子どもは次のような感情を抱きやすくなります。
- 「お母さん(お父さん)が苦しそうなのは、自分のせいかもしれない」
- 「自分さえいなければ、もっと仲良くなるのかな」
- 「家庭が不安定だから、学校にも安心して行けない」
このように、家庭の不安定さが子どもの自尊心を低下させる大きな要因になってしまいます。
2. シングル家庭の場合のポイント
一方、シングル家庭では「親の安定」が子どもの安心感に直結します。親が疲れ果てていたり、不安を抱え込んでいたりすると、子どもはそれを敏感に感じ取ってしまいます。
そのため、シングル家庭の場合は「親自身が心を安定させること」が非常に重要になります。たとえば、
- 親が自分の趣味や楽しみを持つ
- 「子どもを守らなきゃ」と思いすぎず、肩の力を抜く
親が笑顔でいることが、子どもにとって最大の安心材料なのです。
6-4. 自尊心を高めるために今日からできること
ここまで、自尊心を高めやすい家庭の特徴についてお話ししてきました。最後に、今日から実践できる具体的な方法をいくつかご紹介します。
今日からできることリスト
- 毎日、子どもに「おはよう」「おやすみ」を笑顔で伝える
- 結果ではなく過程を褒める(努力や工夫を認める)
- 1日1回は子どもの話をじっくり聞く(途中で口を挟まない)
- 一緒に食事を取る時間を増やす
- 親自身も「失敗しても大丈夫」と前向きな姿勢を見せる
自尊心を高めやすい家庭とは、特別なことをする必要はありません。大切なのは「子どもが安心できる環境を作ること」です。
「うちの子はもう自信をなくしてしまっている」と感じている方も、今日から少しずつ変えていけば、必ず子どもの心に届きます。焦らず、一歩ずつ取り組んでみてください。
ToCo(トーコ)について
私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年2月時点で700名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。
学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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