私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校予防や再登校支援を行うToCo株式会社の顧問も務めております。
本日は、「私立中学ほど不登校に注意すべき理由とは?」というテーマについてお話しします。

多くの保護者の方々は、私立中学校に通うお子様が不登校になる可能性を低く見積もりがちです。「せっかく頑張って合格したのだから、楽しく通えるはず」「優秀な子が集まっているのだから、不登校になる子は少ないだろう」──このように考えている方も多いのではないでしょうか?
しかし、実態としては、私立中学校でも不登校の問題は深刻です。

2023年度の日本の私立中学校における不登校児童数8,120人に上ります。これは、公立中学校に比べて割合としては少ないものの、「不登校になりにくい」と思われている私立中学校でも、相当数の子どもが学校に通えなくなっていることを意味します。

私立中学校での不登校は、公立中学校とは異なる要因が絡んでいることが多く、対策も異なります。本稿では、私立中学校で不登校になりやすい理由を具体的に掘り下げ、保護者がどのように対応すればよいかを詳しく解説していきます。


目次


私立中学にも不登校はある――「まさかうちの子が」とならないために

「私立だから大丈夫」という誤解

「私立に入れたのだから、不登校の心配はない」と考えていませんか?
実は、この考えが落とし穴です。多くの保護者が、私立中学校における不登校の実態を知らず、「うちの子は大丈夫」と思い込んでしまう傾向にあります。しかし、これは大きな誤解です。

私立中学校では、生徒の質が高い=不登校が少ないというイメージが先行しがちですが、現実には、むしろ私立特有の環境が子どもにとって過度なプレッシャーとなり、不登校を引き起こしてしまうことがあるのです。

例えば、私立中学校に通う生徒の多くは、小学生の頃から厳しい受験勉強を経験しています。長い期間、勉強中心の生活を送り、ようやく合格を勝ち取った子どもたちは、「入学することがゴール」となりがちです。その結果、入学後の学習環境についていけなくなり、燃え尽き症候群のような状態になってしまうこともあります。

また、私立中学校では、同じレベルの学力を持つ子どもたちが集まるため、小学生時代に「学力が武器」だった子どもが、自信を失いやすくなるという問題もあります。「小学校では成績トップだったのに、中学校に入ったら普通になってしまった……」と感じる子どもは少なくありません。このようにして、学力をアイデンティティの拠り所にしていた子どもほど、不登校になりやすい傾向があるのです。

さらに、私立中学校の校風や指導方針が、必ずしも全ての子どもに合うとは限りません。偏差値の高さだけで学校を選んだ場合、入学後に「思っていた雰囲気と違う」「人間関係がうまくいかない」といった悩みを抱え、不登校に繋がるケースもあります。

「私立でも不登校になる可能性はある」と考えることが重要

「私立だから大丈夫」と思い込んでしまうと、子どもの小さなサインを見落としやすくなります。

  • 「最近、学校の話をしなくなった」
  • 「朝、起きるのが極端につらそうになった」
  • 「成績が悪くなったわけではないのに、学校を休みたがる」

こうした変化は、子どもが学校に対してストレスを感じ始めているサインかもしれません。

不登校は、ある日突然起こるわけではなく、徐々に進行していくものです。「私立だから」という理由で安心せず、日々の子どもの様子を注意深く見守ることが大切です。


不登校になりやすい理由①「受験ゴールで燃え尽きてしまう」

受験後に「燃え尽きる」子どもたち

小学生の頃から塾に通い、毎晩遅くまで勉強し、休日もほとんど塾の授業や宿題に追われる生活。こうした努力の末、私立中学校に合格した子どもたちは、「合格」という目標を達成した途端に、エネルギーが尽きてしまうことがあります。

これは、いわゆる「燃え尽き症候群」の一種です。受験勉強のプレッシャーから解放されると同時に、「もう頑張らなくてもいい」という気持ちになり、学校生活に対する意欲を失ってしまうのです。

文部科学省の調査では、中学生の不登校の理由のトップが「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった(32.2%)」という結果になっています。このデータからも分かるように、受験がゴールとなり、その後の目標を見失ってしまうことが、不登校の原因の一つになっているのです。

対策:「受験合格」がゴールではないことを伝える

この問題に対処するには、受験の段階から「合格が最終目的ではない」ことを子どもに伝えることが重要です。

具体的には、以下のような点を意識するとよいでしょう。

  1. 「受験の先」に目を向ける習慣をつける
    受験は、あくまでも人生の通過点であり、そこからさらに成長していくためのステップの一つに過ぎません。「合格したら終わり」ではなく、「その先にどんな楽しいことが待っているか」を親子で話し合うことが大切です。
  2. 入学後の生活を具体的に想像させる
    「どんな部活に入りたいか?」「どんな友達を作りたいか?」など、合格後の生活を具体的に考えさせることで、受験だけに集中しすぎることを防げます。
  3. 成功体験を「受験」以外にも持たせる
    受験以外にも、小さな成功体験を積み重ねることで、「勉強以外にも楽しいことがある」と思えるようになります。

このように、受験がゴールではなく、新たなスタートであることを伝え、受験後のモチベーション低下を防ぐことが、不登校を防ぐ上で重要です。

不登校になりやすい理由②「勉強面のアイデンティティが崩れる」

「小学校では優秀だったのに……」という現実

私立中学校に進学する子どもたちは、小学生時代に塾通いを経験し、学力で高い評価を得ていた子が多いです。「勉強が得意」「テストで良い点を取ることが誇りだった」「クラスで一番だった」という経験は、彼らの自尊心を形作る重要な要素となります。

しかし、私立中学校に入ると状況は一変します。今まで「学年トップ」だった子も、周囲を見渡せば同じレベルの生徒ばかり。自分の「強み」だった勉強が通用しないと気づいた瞬間、アイデンティティが崩れ、精神的に大きなダメージを受けるのです。

たとえば、こんなケースがあります。

  • 小学校時代は「勉強が得意な自分」が誇りだったのに、中学校では普通レベルになってしまった。
  • どんなに頑張っても、学年トップの座には届かない。
  • それまで親や先生に褒められてきた「成績」という評価基準がなくなり、自分が価値のない人間に思えてしまう。

これらの経験は、子どもの自己肯定感を大きく傷つけ、「どうせ自分はダメなんだ」「頑張っても意味がない」と思い込ませてしまいます。そして、勉強への意欲を失い、学校そのものに行く意味を感じられなくなるのです。

対策:「勉強ができる=価値がある」という考えを変える

この問題に対処するためには、「勉強ができること=人間として優れていること」ではないという価値観を、親子で共有することが重要です。

  1. 「努力の過程」を評価する習慣をつける
    点数や順位ではなく、「どれだけ頑張ったか」を認めるようにしましょう。たとえば、「結果よりも、コツコツ勉強したことがすごい」といった声かけを意識することで、子どもは結果に一喜一憂せず、努力そのものを大切にするようになります。
  2. 「できること」を広げる機会を作る
    勉強だけが子どもの価値ではありません。スポーツ、音楽、アート、プログラミングなど、他の分野にも目を向けることで、「自分には勉強以外にも強みがある」と気づくことができます。
  3. 「勉強ができるのは能力ではなく、適性の問題」だと伝える
    学力は、生まれ持った才能ではなく、環境や努力の積み重ねによるものです。「今まで塾の勉強が合っていただけで、中学の勉強はまた違うもの」と考えることで、「できなくなった自分=価値がない」とは思わなくなります。

このような考え方を身につけることで、「勉強が得意」というアイデンティティが揺らいでも、他の部分で自信を持つことができるようになります。


不登校になりやすい理由③「偏差値重視で校風が合わない」

「偏差値の高い学校=良い学校」ではない

私立中学校の選び方として、「偏差値の高い学校に行くことが成功」という考え方が一般的です。しかし、この価値観に従って学校を選んだ結果、子どもが不登校になってしまうケースが少なくありません。

特に、以下のようなケースでは注意が必要です。

  • 「とにかく偏差値の高い学校を目指そう」と親が決めた
  • 「友達が受験するから、自分も同じ学校に行きたい」と決めた
  • 学校の特色や校風を十分に調べず、学園祭やパンフレットの印象だけで決めた

子どもはまだ、「自分に合う環境とは何か」を正しく判断するのが難しい年齢です。親が「良い学校」と思って選んでも、子どもにとっては「合わない学校」だったということは珍しくありません。

対策:「偏差値」よりも「子どもに合う環境」を優先する

  1. 学校選びの際、実際の雰囲気を確認する
    偏差値だけでなく、学校の雰囲気を肌で感じることが重要です。最近では、学校の口コミを確認できるサイト(https://school-reviews.com/)などもあるため、事前に調査するのもおすすめです。
  2. 「どういう学校なら楽しく通えるか?」を話し合う
    「校則が厳しすぎると辛い」「競争が激しい学校は合わないかも」など、事前に子どもの性格と学校の特色が合うかを考えておくことが大切です。
  3. 入学後に「合わない」と感じたら、転校を検討するのも選択肢
    どうしても学校が合わない場合は、無理に通わせ続けるのではなく、転校を視野に入れることも一つの手です。しかし、環境の変化はデメリットが大きいため事前の学校選択がより重要です。

学校選びの段階から、「偏差値」よりも「子どもにとって相性が良いかどうか」を優先することが、不登校を防ぐための大きなポイントとなります。


私立中学校で不登校にならないために

私立中学校は、公立に比べて教育環境が整っている反面、「受験ゴールによる燃え尽き」「学力アイデンティティの喪失」「偏差値重視のミスマッチ」といった独自の不登校リスクが存在します。

では、親としては何を意識すればよいのでしょうか?

  1. 受験はゴールではなく、スタートであることを伝える
    → 受験の成功にとらわれず、その後の学校生活を楽しむことを意識させる。
  2. 勉強以外の成功体験を持たせる
    → 学業以外の分野でも「自分には価値がある」と感じられる機会を作る。
  3. 学校選びは「偏差値」よりも「相性」を重視する
    → 校風や雰囲気が子どもに合っているかをしっかり確認する。

不登校は突然起こるものではなく、小さなサインの積み重ねによって生じます。早めに気づき、適切な対応をすることで、未然に防ぐことができます。

「私立だから安心」ではなく、「私立だからこそ注意すべき点がある」と認識し、お子様の変化を見逃さないようにしましょう。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年2月時点で700名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
不登校でお悩みの方はぜひ検討ください。

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