優秀な親ほど間違えやすい子育てとは?

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。

多くの親御さんが「子どものために」と思って日々努力をされていることと思います。
特に社会で成功を収めてきた親ほど、子育てにおいてもベストを尽くそうとし、優秀さゆえに細部にまで気を配ることができるかもしれません。しかし、その「優秀さ」が時に子育てにおいて落とし穴になることがあるのです。本稿では、特に不登校の問題に直面した親御さんに向けて、「優秀な親ほど間違えやすい子育て」について考えていきたいと思います。


目次


第一章:優秀な人の落とし穴

一般的に、IQ(知能指数)やEQ(感情知能)が高い人は、社会において成功を収めやすいとされています。論理的思考力があり、問題解決能力が高く、目標達成に向けて計画的に行動することができるからです。そのため、職場や社会において高く評価され、リーダーシップを発揮する場面も多いでしょう。

しかし、こうした能力が子育てにおいて必ずしもプラスに働くとは限りません。むしろ、「優秀さ」が逆に子どもの自立を妨げたり、親子関係をこじれさせたりすることもあるのです。特に、不登校の問題が発生したとき、親の対応次第で子どもの状態が長引くこともあれば、改善することもあります。その分岐点になるのが、親が「子どもに任せられるかどうか」です。

「子どもに任せられない」親は、無意識のうちに次のような特徴を持っています。

  1. 何事も効率よく進めたい
  2. 失敗をできるだけ避けたい
  3. 共同作業よりも単独で成果を上げることが得意

これらの特徴は、ビジネスの世界では大きな武器になります。プロジェクトを効率的に管理し、問題が起こる前に先回りして対策を講じ、リスクを最小限に抑えることができる。こうした能力があるからこそ、社会で高い成果を上げられるのです。

しかし、これをそのまま子育てに適用するとどうなるでしょうか? 親がすべての問題を先回りして解決してしまうと、子どもは自分で考え、判断し、行動する機会を失ってしまいます。その結果、失敗に対する耐性が育たず、小さな困難にも対処できなくなってしまうのです。不登校になったときも、自ら状況を変える力が弱くなり、親がどれだけ手を尽くしても、子ども自身が動き出すことが難しくなってしまうのです。

「子どものために」と思ってやってきたことが、実は子どもにとっては足かせになっているかもしれません。では、「任せられない」親には、具体的にどのような傾向があるのでしょうか? 次章では、その特徴について詳しく見ていきましょう。


第二章:「任せられない」人の特徴

「子どもに任せられない」親は、一般的に以下のような特徴を持っています。

1. 何事も効率が良い

優秀な人は、限られた時間の中で最大の成果を出すことが得意です。仕事でも家庭でも、できるだけ無駄を省き、最短ルートで物事を進めようとします。例えば、朝の支度が遅い子どもに対して、「自分でやらせると時間がかかるから」と、親がランドセルの準備をしたり、洋服を着せたりすることはないでしょうか?

確かに、そうすることで朝のバタバタを防ぐことはできます。しかし、これは長期的に見れば、子どもにとっての「学びの機会」を奪っていることになります。子どもは試行錯誤しながら、自分で支度の段取りを学びます。時間がかかるのは当然なのです。でも、親がすべてを代わりにやってしまうと、子どもは「自分で考えて動く」経験を積むことができなくなります。その結果、「自分でやる」意識が育たず、何か問題が起こったときも「誰かが解決してくれる」と考えてしまうようになります。

2. 失敗が少ない

優秀な人は、過去の経験から失敗しない方法を知っています。ミスを最小限に抑えることで、成功率を高めることができるからです。しかし、子どもは失敗を通じて学ぶものです。

例えば、テストの前に「この範囲をやっておけば大丈夫」と親が予想を立て、最適な勉強方法を指示する。すると、確かに点数は上がるかもしれません。でも、その過程で「自分で考えて勉強する」力が育たなくなります。子どもは「親が言うことをやっていればいい」と思い込み、自主的に学ぶ習慣がつきません。

また、不登校の子どもの中には「失敗を極端に恐れる」タイプが多くいます。「間違えたらどうしよう」「完璧にできなかったら恥ずかしい」といった気持ちが強くなり、学校に行くこと自体がプレッシャーになってしまうのです。こうした子どもにとって、親の「失敗させない」姿勢は、さらに自信を失わせる要因になりかねません。

3. 共同作業よりも単独で成果を上げるのが得意

優秀な人の多くは、一人で完結できるスキルを持っています。誰かに頼るよりも、自分でやった方が早いし、正確だからです。しかし、子育てにおいては、この「一人でできる能力」がマイナスに働くことがあります。

例えば、子どもが何かを手伝いたがったとき、「自分でやった方が早いから」と断ったことはないでしょうか? 食器を運ぶ、料理を手伝う、掃除をする。どれも子どもにとっては成長の機会です。しかし、親が「自分でやった方が効率的」と考え、子どもに任せることをしないと、子どもは「自分がやらなくてもいいんだ」と学習してしまいます。その結果、主体性が育たず、不登校になったときにも「どうしたらいいかわからない」となってしまうのです。


第三章:「任せられない」人がしてしまいがちな子育て

「子どもに任せられない」親は、日常生活の中で無意識に以下のような行動をとってしまうことがあります。

1. 先回りして準備してしまう

不登校の子どもを持つ親の多くは、「この子の負担を少しでも減らしてあげたい」「できるだけスムーズに学校に戻れるようにしたい」と考えます。その結果、親が必要以上に手を差し伸べてしまうことがよくあります。

例えば、子どもが学校に行く準備をする前に、親がすべて整えてしまう。持ち物の準備、時間割のチェック、場合によっては先生との連絡まで、すべて親が先回りしてやってしまうのです。「子どもに任せると不安だから」「子どもが忘れ物をしてしまうと余計にストレスになるから」といった理由から、このような行動をとってしまうこともあるでしょう。

しかし、このような先回りは、結果的に子どもが「自分で考えて動く力」を奪ってしまいます。何も準備しなくてもすべてが整っている状態に慣れてしまうと、子どもは「自分でやらなくてもなんとかなる」と思ってしまい、自主的に動く意欲が低下してしまいます。

2. 子どもができないことが理解できない

「なんでこんなこともできないの?」と感じたことはありませんか?

親が優秀であるほど、子どもの「できない」という状況が理解しづらくなります。特に、自分が子どもの頃に「普通にできていたこと」に対して、我が子が苦戦しているのを見ると、「なぜ?」という疑問が湧いてくるのは当然です。

しかし、ここで忘れてはいけないのは、「親と子どもは違う」ということです。親がすんなりできたことでも、子どもにとっては大きなハードルかもしれません。また、不登校の子どもは特に、自信を失っている状態にあるため、「できない」と思い込んでいることが多くあります。

このとき、親が「なんでやらないの?」「ちょっと頑張ればできるでしょ?」と声をかけると、子どもは「できない自分」を責めてしまい、ますます動けなくなってしまいます。結果的に、不登校の状態が長引く原因になってしまうのです。

3. 子どもの手伝いを嫌がる

子どもが何かをやりたがったとき、「いや、それはまだ早い」「時間がかかるから、今はいいよ」と言ってしまったことはありませんか?

例えば、料理をしたがる子どもに対して、「危ないからダメ」「面倒だからやめて」と言ってしまう。掃除を手伝いたがっても、「ちゃんとできないからやらなくていい」と止めてしまう。

これは、親自身が「自分でやった方が早い」と思っていることが原因です。しかし、子どもにとって、こうした日常の手伝いは「自分の存在意義」を感じる大切な機会です。親が「必要ない」と判断してしまうと、子どもは「自分は役に立たない存在なんだ」と思い込んでしまうことがあります。

特に、不登校の子どもは「自分の存在意義」を強く意識します。「自分なんていなくてもいいんじゃないか」「どうせ自分は何をやってもダメだ」といった自己否定の感情を抱えがちです。だからこそ、小さなことであっても「できた!」という経験を積み重ねることが重要なのです。


第四章:子どもの成長の機会を奪わないために

ここまで、「優秀な親が無意識にしてしまう子育ての落とし穴」についてお話ししてきました。それでは、どうすれば子どもが自信を持ち、少しずつ前に進めるようになるのでしょうか?

大切なのは、「できるだけ子どもに任せる」ことです。

1. 「できること」から任せてみる

いきなりすべてを子どもに任せるのは難しいかもしれません。しかし、小さなことから「自分でやる」経験を積ませていくことが重要です。

例えば、学校に行く準備を親がすべてやっていた場合、「明日の持ち物を確認するのは子どもに任せる」というステップから始めてみる。最初は忘れ物をするかもしれませんが、それも学びの一つです。大事なのは、「忘れ物をしないようにすること」ではなく、「自分で考えて準備すること」です。

2. 失敗を前提に考える

「うちの子は失敗したら立ち直れないのではないか」と不安に思うかもしれません。しかし、失敗の経験がないまま成長すると、かえって「失敗への恐怖」が強くなり、ますます動けなくなってしまいます。

親がすべきなのは、「失敗を防ぐこと」ではなく、「失敗しても大丈夫だと思える環境を作ること」です。例えば、「失敗しても親が怒らない」「何がダメだったか一緒に考える時間を作る」といった工夫が効果的です。

3. 「できないこと」ではなく「できたこと」に目を向ける

不登校の子どもは、できないことばかりに目を向けがちです。親もまた、「学校に行けていない」「宿題ができていない」といった「できていない部分」に目が行ってしまいがちです。

しかし、それでは子どもは「自分はダメな存在だ」と思い込んでしまいます。だからこそ、「できたこと」を意識的に見つけてあげることが大切です。

例えば、

  • 朝、少し早く起きられた
  • 一度も外に出なかった子が、コンビニに行く気になった
  • 親と一緒に夕飯を作ることができた

こうした小さな「できた」を積み重ねることで、子どもは少しずつ自信を取り戻していきます。

社会的に優秀な親ほど、「子どもに任せること」が苦手です。しかし、子どもが本当に成長するのは、「自分でやってみる」経験を積んだときです。親が少しずつ「任せる姿勢」を持つことで、子どももまた「自分でやってみよう」と思えるようになっていきます。

最初は不安かもしれません。でも、「子どもを信じること」が、子どもが再び前に進むための第一歩になるのです。

各章内容必要な行動
優秀な人の落とし穴優秀な親は効率的に物事を進めるが、子どもに任せることが苦手。その結果、子どもの自立を妨げることがある。子どもが自分で考える機会を作る。完璧を求めず、子どものペースを尊重する。
「任せられない」人の特徴先回りしがちで、失敗を避け、単独で成果を上げることを好む。そのため、子どもが自分で考える機会を失いがち。すぐに手を出さず、子どもが試行錯誤する時間を確保する。失敗を受け入れる姿勢を持つ。
「任せられない」人がしてしまいがちな子育て親が準備を整えすぎたり、子どもの「できない」を理解できなかったりすると、子どもは動けなくなる。できることは子どもに任せ、小さな成功体験を増やす。親の価値観を押しつけない。
子どもの成長の機会を奪わないために失敗を恐れず、小さなことでも「できた!」を積み重ねることが大切。「できたこと」に注目し、親も子どももプレッシャーを減らす。任せる勇気を持つ。
子どもに任せる勇気を持つ親が「信じる」ことで、子どもも「やってみよう」と思える。失敗も成長の一部と考え、子どもを信じる姿勢を大切にする。

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