親子関係はお金で買えない

こんにちは。不登校支援カウンセラーの竹宮です。
今日は、「親子関係はお金で買えない」というテーマでお話ししたいと思います。

これは一見、当たり前のように聞こえるかもしれません。ですが、実際の子育ての現場では、気づかないうちに「お金」で親子関係を支えようとしてしまっている場面が、とても多いのです。

「塾にも通わせているし」「ゲームも買ってあげた」「旅行にも連れていってるのに、どうして心を開いてくれないのだろう?」

そんな疑問を抱えている保護者の方にこそ、ぜひ読んでいただきたいと思います。

目次

「うちの子には、いろいろ与えているのに……」

カウンセリングの現場でよく耳にする声があります。

「うちの子、不登校なんですけど、特にこれといった原因も見当たらなくて。
塾も行かせてるし、習い事も続けてますし、欲しいものもそれなりに買ってあげてるんです。
でも、そっけない感じがして……」

確かに、塾や習い事、おもちゃやゲーム、家族旅行。
どれも「子どものため」を思っての行動です。それ自体が悪いわけではありません。
むしろ、子どもの将来や楽しみを考えて出した選択だと思います。

しかしながら、それらが「子どもの心を本当に見ていること」につながっているとは限らないのです。


「与える」ことと「つながる」ことは、違います

これは、心理学でいう「衛生要因」という考え方と関係しています。

衛生要因とは、生活の基盤を整えるために必要な条件のことです。
たとえば、清潔な住環境や、十分な食事、安全な場所、経済的安定などがそれに当たります。

子育てにおける塾や習い事も、この衛生要因に近い側面があります。
整えておくべきものではありますが、それだけでは心の満足やつながりは生まれにくいのです。

イメージしやすいのは、たとえば職場。
空調が効いていないとか、トイレが壊れているとか、パワハラが横行しているとか。
そんな環境では、やる気どころではありませんよね。

でも、逆に空調が快適でトイレも清潔、上司も穏やか。
だからといって、「この会社が大好き!」とはなりません。

子どもが本当に必要としているのは、「自分の気持ちをわかってくれている」という感覚です。
それは、どんなに良い環境を整えても、どんなに高価な物を買っても、手に入らないものです。


「話す時間がない」けれど「与える時間はある」不思議

例えば、あるお母さんの話です。

「うちは毎週、英語とピアノとスイミングに通っています。塾も週3日。
家ではほとんどゆっくり話す時間がないけれど、子どももがんばってるし、ちゃんと向き合っているつもりです」

このようなご家庭は少なくありません。
むしろ、「話す時間がなくても、やるべきことはちゃんとやってる」と思っている方が多いのです。

ですが、ここにひとつのすれ違いが生まれます。

子どもの立場からすると、「毎日忙しくて疲れる」「お母さんは話を聞いてくれない」
そんな風に感じてしまうことがあるのです。

親が「してあげている」と思っていることと、
子どもが「受け取りたい」と思っていることが、ズレてしまっているのですね。


「買ってあげる」=「愛している」になっていないか

私たちは、無意識に「物を与えること=愛情」と考えてしまうことがあります。

もちろん、それもひとつの愛のかたちです。
でも、愛情が「与えること」だけになってしまうと、子どもはどこかで「見てもらえていない」と感じてしまいます。

これは夫婦関係にも似ています。

たとえば、誕生日に高価なバッグをもらっても、
日々の会話や関心がなければ、「この人は私を見ていない」と思ってしまう。

子どもも同じです。

「新しいゲームを買ってもらったけど、学校のことを話すとすぐに話を変えられた」
「旅行に行ったけど、移動中ずっと親はスマホを見ていた」

こうした積み重ねが、少しずつ「心の距離」となっていきます。


「会話」が目的にならなくてもいい

では、どうすればよいのでしょうか。

「もっと会話を増やしましょう」というアドバイスは、聞き飽きているかもしれません。
それに、「話そうと思っても、子どもが何も言わないんです」という声も多く聞きます。

ここで大切なのは、「会話を増やすこと」が目的になると、かえって苦しくなるということです。

無理に話題をつくって、質問攻めにしてしまったり、
「ちゃんと話してよ」とプレッシャーをかけてしまったり。

そうなると、子どもはますます心を閉ざしてしまいます。


「会話しよう」ではなく「一緒に居よう」

私が提案したいのは、「会話を増やそう」ではなく、「一緒にいる時間を意識しよう」という考え方です。

それは、必ずしも言葉を交わす必要はありません。

一緒にお茶を飲む。
ソファで並んでテレビを見る。
コンビニまで一緒に歩いていく。

こういった、ささやかな「共有時間」が、実はとても大切なのです。

その時間のなかで、子どもが何か話したくなったときに、
ちゃんと耳を傾けられるような余白を、つくっておくこと。

それが、親子の心のつながりには欠かせないものだと私は考えています。

「親として当然」になっている努力が、すれ違いの原因になることも

「ちゃんと三食つくっているし、洗濯も掃除もしている。送り迎えもしているし、塾の送りも忘れない。
子どもの世話に手を抜いたことなんて、ないです」

そうおっしゃる保護者の方は、本当に多いですし、実際にそうなのだと思います。
その努力は素晴らしいですし、簡単にできることではありません。

ただ、その“当たり前の努力”が“会話や関係性の代わり”になってしまっていることがあります。

要するに、「これだけやってるんだから、わかってもらえているだろう」と思ってしまいがちです。
でも、子どもにとっては、「生活の世話」と「心のつながり」は別のものなのです。


親は“行動”で示し、子どもは“感情”で受け取る

親は、「私は十分にやっている」という“行動の目線”で見ています。

一方で、子どもは「私は大切にされているのか?」という“感情の目線”で感じています。

このズレが、大きな誤解につながることがあります。

たとえば、親が「今日もちゃんと送迎して、習い事も完璧に管理している」と思っていても、
子どもが「話しかけてもスマホを見ていて、ちゃんと聞いてくれなかった」と感じていたら、
その一日は「親子関係を支えるもの」にはなりません。

もちろん、親としてやるべきことはたくさんあります。
全部をこなすだけでも精一杯な日々だと思います。

ですが、その中に「少しの感情の交換」があるだけで、子どもの受け取り方はまったく違ってきます。

「それで、あなたはどう思ったの?」という問いの力

私はカウンセリングの中で、親御さんによくこうお話しします。

「子どもと会話をするというより、感じていることに興味を持つという姿勢が大事なのです」

たとえば、学校の話をしない子に対して、「何かあったの?」と聞いても、多くの場合は「別に」と返ってきます。
でも、「それで、あなたはどう思ったの?」というように、子どもの“感じたこと”に注目する質問をすると、意外と口を開くことがあります。

これは、「問題の解決」ではなく、「気持ちをわかってもらえること」が重視されているからです。

人は、自分の中にある感情を整理する場があるだけで、かなり落ち着けるものなのです。


「よかれと思って」が、重荷になることもある

ここで、少し視点を変えてみましょう。

親が「子どものために」と思ってやっていることの中には、
実は“子どもにとってプレッシャー”になっていることもあります。

「せっかく塾にも通わせてもらってるのに、結果を出さなきゃ」
「あれだけ習い事をやらせてもらってるのに、もう休みたいなんて言えない」

子どもは、意外と親の期待を敏感に感じ取っています。
だからこそ、「期待に応えられていない自分=ダメな子」と思ってしまうことがあるのです。

親が無意識のうちに発する「◯◯してあげてるのに」という気配。
これが、子どもの自己否定につながってしまうこともあります。


「何もしてあげられていない」と感じている方へ

一方で、逆の声もよく耳にします。

「うちは経済的に余裕がないから、塾にも通わせられないし、旅行も行けない。
子どもに何もしてあげられていない気がして、申し訳ないです」

このような気持ちを抱いている方にも、お伝えしたいことがあります。

実は、そういった「何もしてあげられていない」と感じている親御さんの方が、
子どもとの距離が近いと感じる場面も少なくありません。

なぜなら、「してあげたこと」で関係を支えていないからです。
もっと言えば、子どもも「成果」ではなく、「関係性」を重視して育っているからです。

会話が少なくても、感情のやり取りができていれば、子どもは「わかってもらえている」と感じるものです。


「何かしてあげる」ではなく「どう一緒にいるか」

ここまで、「お金をかけること」と「親子のつながり」は別のものである、という話をしてきました。

最後に、ひとつ視点をまとめてみたいと思います。

親子関係は、「何をしてあげたか」でつくられるのではなく、
「どのように一緒にいたか」で育まれていきます。

高価な教材や、華やかな旅行よりも、
一緒に歩いた30分の方が、子どもの心に残ることがあります。

そして、それは特別な時間でなくてかまいません。
何かを成し遂げる必要も、問題を解決する必要もありません。

「あなたのことをちゃんと見ているよ」「一緒にいることがうれしいよ」

その空気が、ゆっくりと子どもの心に届いていきます。


まとめ:距離を縮めるのに必要なこと

親子の関係性は、「投資」で成立するものではありません。

もちろん、ある程度の生活の安定や、環境づくりは大切です。
でも、それが心の距離を埋めてくれるわけではないのです。

むしろ、日常の中の「何気ない会話」や「安心感」が、関係性をゆっくりと育ててくれます。

「何かをしてあげる」ことに追われているとき、
一度立ち止まって、「今、自分はどんな空気を子どもと共有しているか」と考えてみてください。

その視点の変化が、きっと親子の関係を柔らかくしてくれると思います。

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