新学期に向けた家庭で出来る不登校対策とは?

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は不登校予防と再登校支援を専門とし、ToCo(トーコ)株式会社の顧問として多くの家庭が抱える課題に寄り添いながら解決策を提案してきました。

新学期が近づくにつれ、不登校に関するご相談が増える傾向にあります。「うちの子は大丈夫だろうか」「また学校に行けなくなってしまうのではないか」と不安を抱える保護者の方々に向けて、家庭でできる不登校対策を詳しくお伝えしていきます。

本記事では、新学期における不登校の実態と傾向、不登校になりやすい理由、子どもの兆候の見つけ方、そして具体的に家庭で実践できる予防策について解説します。これまでの経験から導き出した実践的なアドバイスを盛り込みながら、保護者の皆さまにとって役立つ情報を提供することを目指しました。


目次


第一章:新学期における不登校の傾向と実態

新学期が始まると小中学生の不登校が急増することは、学校界隈ではよく知られている事実です。特に、夏休み明けや春休み明けのタイミングでは、不登校の子どもが一気に増える傾向にあります。では、なぜこの時期に不登校が増えるのでしょうか?

文部科学省の調査によると、小中学生の不登校の発生率は年々上昇しています。かつては「不登校=特殊なケース」と考えられていましたが、現在では決して珍しいことではなくなりました。特に新学期は、これまで普通に通っていた子どもが突然学校へ行けなくなるケースが多発する時期です。

1.1 休み明けに急増する不登校

夏休みや冬休みが終わると、一部の子どもは登校を渋るようになります。これは単なる「休みボケ」ではなく、心理的なハードルが一気に高まるためです。

長期休暇中、子どもは学校のストレスから解放され、自分のペースで過ごせます。しかし、休みが終わると、そのストレスが再び襲ってきます。「あの先生とまた顔を合わせるのか」「クラスメイトにどう思われるだろう」「勉強についていけるか不安だ」といった不安が膨れ上がり、登校が難しくなるのです。

特に、前学期の終わりに何らかのトラブルを抱えていた場合、その不安はさらに強まります。例えば、学級内の人間関係に悩んでいた子どもや、成績の低下にショックを受けた子どもは、「新学期に行くのが怖い」という感情を抱えがちです。

1.2 「4月と9月」は不登校の壁ができる時期

新学期に不登校が増える理由の一つに、「環境の変化による心理的な負担」があります。

・4月の新学期は、クラス替えや担任の変更があり、新しい環境に適応しなければなりません。「また一から友達を作らなければならない」「新しい先生とうまくやれるだろうか」という不安が、不登校につながるケースが多いです。

・9月の二学期は、夏休み中の生活リズムの乱れが影響します。長期休暇中は遅寝遅起きの習慣がついてしまい、朝早く起きて登校すること自体が負担になりやすくなります。また、学習面での遅れが気になり、授業についていけるかどうかの不安が強まる時期でもあります。

1.3 親が「うちの子は大丈夫」と思っていても油断できない

「うちの子はこれまで学校に行けていたから、新学期も問題ないだろう」と思っていると、突然不登校の兆候が現れることがあります。不登校の原因は、目に見える問題だけではなく、子どもの内面で静かに進行していることも多いのです。

例えば、前年度は何とか頑張っていた子どもが、新学期を迎えた途端に気持ちが折れてしまうケースがあります。これは、「もう頑張れない」「これ以上は無理だ」と感じる限界点が、新学期のタイミングで訪れるためです。

また、不登校経験のない子どもでも、突然「学校に行きたくない」と言い出すことがあります。これは、長期休暇中に「学校がない生活」の快適さを知り、再び学校へ戻ることが苦痛に感じるためです。

第二章:新学期に不登校になりやすい理由

では、新学期になると不登校が増える理由は具体的に何なのでしょうか?

新学期に不登校が発生しやすい理由は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

2.1 環境の変化によるストレス

新学期は、子どもにとって大きな環境の変化を伴います。クラス替え、新しい担任、新しい友人関係——これらの要素は、子どもにとって大きな心理的負担となります。

特に、内向的な性格の子どもは、新しい環境への適応に時間がかかるため、新学期は極度のストレスを感じやすくなります。また、「去年うまくいったから今年も大丈夫」とは限らず、些細なきっかけで不登校になってしまうことも少なくありません。

2.2 学業の負担と自己肯定感の低下

新学期が始まると、学習内容が難しくなるため、勉強についていけなくなる子どもが増えます。「授業が分からない」「テストの点数が悪い」といった状況が続くと、子どもは自信を失い、登校を避けるようになります。

特に、「完璧主義」の傾向がある子どもは、少しの失敗でも「自分はダメだ」と思い込みやすく、不登校へとつながりやすいです。

2.3 友人関係の不安

新学期になると、「誰と一緒にいるか」という問題が再び浮上します。仲の良い友人とクラスが分かれてしまったり、新しい友人関係を築かなければならなかったりすることで、子どもは大きなストレスを抱えます。

特に、過去にいじめやトラブルを経験した子どもは、「また同じことが起きるのではないか」と恐怖心を抱き、不登校に陥るケースが少なくありません。

第三章:子どもの不登校兆候の見つけ方

新学期に向けて、不登校の兆候を見つけることは非常に重要です。多くの保護者は、子どもが「学校に行きたくない」と口にするまで気づかないことが多いですが、実はその前から様々なサインが現れています。早期に兆候を察知し、適切な対応を取ることで、不登校を未然に防ぐことが可能です。ここでは、子どもが発する「心のSOS」に気づくためのポイントをお伝えします。

3.1 身体的なサインを見逃さない

子どもが不登校になりかけているとき、まず表れるのは「体調の変化」です。これは心理的ストレスが身体的な症状として現れるためで、以下のような兆候が見られることが多いです。

  • 朝になると腹痛や頭痛を訴える
    夜は元気に過ごしているのに、登校時間が近づくと突然「お腹が痛い」「頭が痛い」と言い出す場合は要注意です。これが週に数回続く場合、不登校の前兆である可能性が高くなります。
  • 食欲の変化
    ストレスが強いと、食欲が極端に増減します。「急に食べなくなった」「好きだった食べ物を残すようになった」「お菓子ばかり食べるようになった」などの変化が見られたら、子どもが心理的なストレスを抱えている可能性があります。
  • 睡眠の乱れ
    不登校の兆候として多いのが「睡眠障害」です。夜更かしが増え、朝起きるのがつらくなると、登校がますます困難になります。また、夜中に何度も目を覚ます、悪夢をよく見る、寝る前に不安そうにするなどの様子があれば、学校へのストレスが関係している可能性が高いです。
  • 疲れやすい、だるそうにしている
    心理的な負担が大きくなると、子どもは常に「疲れた」と感じるようになります。特に、休日は元気に遊んでいるのに、平日になると「疲れた」「だるい」と言い出す場合、学校生活への不安やストレスが影響しているかもしれません。

3.2 行動の変化に注意する

子どもが不登校になりかけているとき、日常の行動に微妙な変化が現れます。特に以下のような行動は、子どもが「学校に行くのがつらい」と感じているサインかもしれません。

  • 学校の話を避ける
    以前は「今日、学校でこんなことがあったよ」と話していたのに、急に学校の話題を避けるようになった場合、何かしらの悩みを抱えている可能性があります。特に、「先生はどう?」と聞いたときに曖昧な返事をする、あるいは「別に」「普通」としか答えなくなる場合は要注意です。
  • 準備をしなくなる、忘れ物が増える
    学校へ行くことへの関心が薄れると、宿題をやらなくなったり、持ち物の準備を後回しにしたりするようになります。これまできちんとしていた子どもが、急に「忘れ物が多くなる」「宿題をやらなくなる」といった変化を見せた場合、学校への意欲が低下している可能性があります。
  • 登校時間が近づくと不機嫌になる
    朝になるとイライラしたり、些細なことで怒ったりするのも、不登校の兆候の一つです。学校へ行くことを考えるだけでストレスを感じているため、登校前に機嫌が悪くなることがよくあります。

3.3 子どもの「心の声」を聞く方法

子どもが不登校の兆候を見せているとき、一番大切なのは「無理に問い詰めないこと」です。「どうして行きたくないの?」と問い詰めると、子どもは「責められている」と感じ、ますます心を閉ざしてしまいます。

代わりに、子どもが話しやすい雰囲気を作ることが大切です。例えば、学校とは関係のない話題から始め、リラックスした状態で「最近どう?」とさりげなく尋ねると、子どもは少しずつ本音を話し始めることがあります。また、親が「学校に行かせなければ」という気持ちを抑え、「あなたが大切だよ」というメッセージを伝えることが、子どもに安心感を与えるポイントです。

第四章:家庭で実践できる不登校予防

不登校を未然に防ぐためには、家庭でのサポートが非常に重要です。ここでは、具体的な予防策について詳しくお伝えします。

4.1 朝の習慣を整える

新学期に向けて最も効果的な対策の一つが、「朝の習慣を整えること」です。夏休みや春休みの間に夜更かしや寝坊の習慣がついてしまうと、学校が始まったときに登校が苦痛になりやすくなります。

具体的な対策:

  • 休み中でも「平日と同じ時間に起きる」習慣を作る
  • 朝ごはんをしっかり食べることで体内リズムを整える
  • 午後は外に出て日光を浴びる(体内時計をリセットする効果がある)

4.2 子どもの不安を和らげる

新学期が近づくと、多くの子どもが「ちゃんとやっていけるかな」「友達と仲良くできるかな」と不安を抱きます。こうした不安を和らげるために、親ができることは何でしょうか?

  • 「大丈夫だよ」と言葉で安心させる
    「新学期、楽しみだね!」とポジティブな声かけをすることで、子どもは「大丈夫なんだ」と思えるようになります。
  • 学校の話を楽しい話題にする
    「今年はどんなことが楽しみ?」と聞くと、子どもは前向きな気持ちを持ちやすくなります。
  • 小さな成功体験を積ませる
    夏休みの間に「できた!」という経験を増やしておくと、新学期に対する自信がつきます。

4.3 「行くのが当たり前」にしない

「学校に行くのが当たり前」と思わせるのではなく、「学校に行くことで楽しいことがある」と感じられる環境を作ることが大切です。そのためには、子どもの気持ちに寄り添いながらも、少しずつ登校に向けた準備を進めていくことが重要です。

第五章:家庭での具体的なサポート方法

ここまで、新学期に不登校が増える理由やその兆候、そして予防のための基本的な対応についてお伝えしてきました。しかし、「兆候に気づいたけれど、実際にどう対応すればいいのかわからない」「すでに学校を休みがちになっているけれど、どうすれば登校を促せるのか」と悩む保護者の方も多いでしょう。

そこで本章では、家庭でできる具体的なサポート方法について詳しくお伝えします。不登校を防ぐためには、子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつ前向きな変化を促していくことが重要です。

5.1 「無理に行かせる」のではなく、「行きやすい環境」を作る

不登校の兆候がある子どもに対して、「明日は絶対に学校に行きなさい!」と強制することは逆効果です。子どもは「行かなきゃいけない」というプレッシャーに押しつぶされ、ますます登校が難しくなってしまいます。

そこで大切なのは、「学校に行くこと」をゴールにするのではなく、「学校に行きやすい環境を作る」ことです。そのために、次のようなアプローチが有効です。

まずは学校の話をしすぎない
「学校はどう?」と何度も聞かれると、子どもはプレッシャーを感じます。学校について話すよりも、日常の楽しい話題を増やし、子どもが安心できる雰囲気を作ることが大切です。

「行かなくてもいい」とは言わないが、「行かないとダメ」とも言わない
「別に行かなくてもいいよ」と言ってしまうと、子どもは「もう行かなくていいんだ」と思い込んでしまいます。一方で、「行かないとダメ!」と強く言うのもプレッシャーになります。「どうしたら行きやすくなるかな?」と、子どもの気持ちを引き出すような声かけが効果的です。

学校とつながりを持ち続ける
完全に学校と断絶すると、復帰のハードルが高くなります。担任の先生と連携しながら、「宿題だけ提出する」「放課後に先生と少し話す」など、少しでも学校とつながりを持ち続けることが重要です。

5.2 「朝の支度」がスムーズにできる工夫

登校を渋る子どもの多くは、「朝の準備」そのものに心理的な負担を感じています。

例えば、制服を着るだけで「学校へ行かなければならない」とプレッシャーを感じたり、ランドセルを背負うと「今日も嫌なことがあるかもしれない」と不安になったりすることがあります。

そこで、朝の支度をスムーズにするために、次のような工夫を取り入れてみてください。

朝起きる時間を一定にする
生活リズムを整えることは、不登校予防において非常に重要です。休日も含め、毎日同じ時間に起床する習慣をつけましょう。

制服を着るのを手伝う
制服を着ることが負担になっている場合は、「一緒に着替えようか?」と声をかけ、少し手伝ってあげるのも効果的です。「今日はとりあえず着替えるだけでもいいよ」と、ハードルを下げることも大切です。

朝食の時間を楽しみにする
「朝起きたら好きなパンがあるよ」「朝ごはんの後に少しゲームしよう」など、朝起きること自体をポジティブなものにする工夫をしてみましょう。

家の中の動線を変える
登校を嫌がる子どもの中には、「玄関を通ること」自体にストレスを感じている場合もあります。例えば、登校時間になったらリビングでしばらく過ごすなど、いつもと違う動線を作ることで、心理的な負担を和らげることができます。

5.3 「小さな成功体験」を積み重ねる

子どもが学校に行くことを不安に感じている場合は、「登校=大きな負担」と思い込んでいることが多いです。そこで、学校に関する「小さな成功体験」を積み重ねることで、「行けるかもしれない」と思えるようにすることが大切です。

「校門まで行ってみる」「教室の前まで行く」など、段階的に進める
「最初から1日フルで登校しなければならない」と思うと、子どもは大きなプレッシャーを感じます。「まずは校門まで行く」「保健室にだけ行ってみる」など、ハードルを低く設定することで、少しずつ慣れていくことができます。

友達と一緒に登校する機会を作る
仲の良い友達と一緒に登校することで、学校への不安が和らぐことがあります。可能であれば、登校前に近所の友達と合流できるような環境を作るのも良いでしょう。

学校以外の「成功体験」を増やす
「学校に行けなかった」という経験が積み重なると、子どもは「自分はダメだ」と思い込んでしまいます。そのため、学校以外の場で小さな成功体験を積むことも大切です。例えば、「料理を手伝った」「好きな本を1冊読んだ」「習い事で先生に褒められた」といった経験が、自信につながります。

第六章:まとめ 〜家庭での関わり方が不登校を左右する

新学期は、不登校が増えやすい時期です。しかし、子どもの小さなサインに早く気づき、適切なサポートをすることで、学校へ行くことへのハードルを下げることができます。

  • 不登校の兆候を見逃さないこと
  • 無理に行かせるのではなく、「行きやすい環境」を作ること
  • 朝の習慣を整え、心理的な負担を減らすこと
  • 小さな成功体験を積み重ねること

こうした工夫をすることで、子どもが「学校に行けるかもしれない」と思えるようになり、不登校を防ぐことができます。

不登校に悩むと、親も「どうすればいいの?」と不安になってしまいます。しかし、焦らず子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつサポートしていくことが何よりも大切です。

お子さんが新学期を迎えるにあたって、少しでも前向きな気持ちになれるよう、この記事が参考になれば幸いです。


ToCo(トーコ)について

私たちToCoは、お子様が自ら不登校から脱却するための支援を行っており、2025年2月時点で700名以上のお子様が平均3週間で再登校しています。

学校や行政機関による対策が進む中、不登校数は年々増え続けています。私たちは、不登校が続いてしまう要因を診断し、児童心理司や精神科医の専門チームが再登校までサポートします。
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