すぐに疲れてしまう子どもへの接し方

こんにちは。カウンセラーの竹宮と申します。
今日は「すぐに疲れてしまう子どもへの接し方」についてお話ししたいと思います。

不登校のご相談を受ける中で、「うちの子、何をしてもすぐ疲れるんです」という声はとてもよく耳にします。
たとえば、朝ごはんを食べるだけでぐったりしてしまったり、家から一歩も出ていないのに夕方には布団にくるまって動けなくなっていたり。
病気というほどでもないけれど、活力が湧かない。やる気がないというより、エネルギーが足りていないような様子があると、心配になります。

こうした「疲れやすい子ども」の背景には、単なる体力の問題ではない、もっと繊細で複雑な事情があります。
今日はその実態を、心理学の観点から解きほぐしていきたいと思います。

目次

「疲れやすい子」によくある日常パターン

1. 毎日がランダムで先が読めない

まずお伝えしたいのは、「何もしていないように見えて、実はとてもエネルギーを消耗している子がいる」ということです。

たとえば、朝起きたときに「今日は何をするの?」と親に聞く子。予定を立てないと落ち着かない子がいます。
逆に「予定を立てようとすると不安になる」ために、先のことを考えたくない子もいます。

どちらにせよ、本人の中では「先が見えない」状況が続いていて、これが想像以上に精神的な負担になっているのです。

見通しが立たない生活は、大人にとってもストレスです。たとえば、知らない路線で乗り換える時、突然学校から連絡があった時など、予測や判断で大きくエネルギーを使わされます。それが積み重なると、何もしていないのに疲れてしまう感覚がわかると思います。

2. タスクのスイッチが多すぎる

もう一つ、疲れやすい子どもによく見られる特徴として、「一日の中で何度も気持ちを切り替える必要がある」ことが挙げられます。

たとえば、

  • 午前中にプリントを2枚やったら、次はオンラインで動画を見る。
  • お昼ごはんを食べたら、今度は散歩をする。
  • 終わったと思ったら、また読書タイム。

こうした活動自体は、それほど負担に思えないかもしれません。しかし、タスクが切り替わるたびに、「次は何をするか」「今は終わりでいいか」「どこまでやったか」といった判断が必要になります。
これが「認知的スイッチング」と呼ばれるもので、脳にかなりのエネルギー消費をもたらします。

大人でも、5分おきにやることを切り替えたら非常に疲れますよ。ひとつのことに集中できず、終わった感じも得られず、何をしたのかよく分からない。これが毎日続けば、子どもは当然、疲弊してしまいます。

3. 小さな決断が多すぎる

意外と見落とされがちなのが、日常の「細かい判断」の積み重ねです。

たとえば、

  • 朝食をパンにするかごはんにするか。
  • 洋服はTシャツか長袖か。
  • プリントは先に算数か国語か。
  • 勉強する場所はリビングか、自分の部屋か。

こうした小さな決断も、一つひとつに「意志力」を使っています。これは心理学で「決断疲れ(decision fatigue)」と呼ばれており、選択肢が多いほど脳が疲れるという理論に基づいています。

習慣的に生活していると、こうした判断は自動的に処理され、エネルギーを節約できます。しかし、生活にルーティンがないと、日常のすべてが「判断」の連続になってしまいます。

疲れやすさの正体は「意志力の使いすぎ」

ここで一度、整理しましょう。

「疲れやすい子」の多くは、体力がないのではなく、「意志力」を過剰に使ってしまっている状態にあります。
意志力とは、物事を判断したり、行動を選んだり、我慢をしたりするための精神的エネルギーのことです。
心理学者のロイ・バウマイスターが提唱した概念で、筋肉のように使えば消耗し、回復するには休息が必要だとされています。

つまり、「やる気がない」わけではないのです。
使い果たしているから、もう出せない。そう考えると、子どもがダラダラしているように見える行動にも、理解が及ぶかもしれません。

習慣は、子どもを守る「防御壁」

1. 習慣がエネルギーを節約する

疲れにくくなるためには、意志力の消耗を抑える必要があります。
その鍵となるのが「習慣」です。

たとえば、歯磨きをするとき、毎回「右から磨こうか、左からにしようか」と悩む人は少ないと思います。無意識のうちに身体が動きます。
これは、行動が習慣化されている証拠です。

同じように、朝起きたらまずカーテンを開ける、トイレに行ったら手を洗う、朝食のあとにプリント1枚、といった「一連の流れ」をルール化しておくことで、脳は余計な判断を省略できます。

2. 子どものルーティンを整えるコツ

とはいえ、いきなり厳密なタイムスケジュールを作る必要はありません。むしろ、細かすぎる予定は逆効果です。

重要なのは、「動線」に沿った自然な流れを作ることです。
たとえば、こんな具合です。

  • 朝ごはんを食べたら、テーブルの上に置いてあるプリント1枚だけ手に取る。
  • 終わったら鉛筆を片付けて、親に見せる。
  • 見せ終わったら本棚に移動して、好きな本を読む。

このように、行動と行動の間をつなげてあげると、子どもは迷わず次のステップに進めます。考える回数が減るので、エネルギーの節約になります。

「変化」ではなく「安定」が育てるエネルギー

1. 「刺激が足りないから飽きている」は誤解

子どもが「飽きっぽい」「集中力がない」と言われるとき、「もっと変化を与えないと」と考えてしまいがちです。毎日違う教材を試したり、アプリを使ってゲーム感覚にしたり、親が一生懸命に工夫しすぎてしまうことがあります。

しかしながら、子どもにとって本当に安心するのは、「予測できる日常」です。

たとえば、カレーの味がいつもと違っただけで、「これ嫌い」と言う子がもいます。
本人も理由は説明できないけれど、無意識のうちに「いつも通り」であることを求めているのです。

変化は、新鮮さと引き換えに「警戒」を呼び込みます。これは、感受性の強い子ほど顕著です。

「新しいことにチャレンジするためには、日常が安定していることが前提」
これは、子どもを支える上で、とても大事な視点です。

2. 小さな「安心」が疲労感を減らす

子どもが一日に何度も「疲れた」と言うと、親としては「まだ何もしてないのに?」と戸惑うかもしれません。でもそれは、子どもの中に「安心できる基盤」がない状態かもしれません。

具体的には、次のような基盤を意識すると、疲れが和らぐことがあります。

  • 毎日同じ時間に起きる(休日も大きくは変えない)
  • 朝食のパターンを固定する(パンと牛乳など)
  • 使う学習道具の場所を決める
  • 勉強前に同じ音楽を流す

どれも簡単なことのようですが、子どもにとっては「考えなくてもいいこと」が増えるだけで、頭の中の負荷が大きく減ります。

「がんばる」よりも「迷わない」状態をつくる

1. 声かけがプレッシャーになることも

「今日はちょっと頑張ろうか」
「自分のペースでやってみようね」

このような声かけは、一見するとやさしく思えるかもしれません。

ですが、実はこれも子どもにとっては「考える材料」を増やしています。

  • 「ちょっとってどれくらい?」
  • 「自分のペースって、どこまでやればいいの?」
  • 「失敗したらまた怒られるかな?」

特に気遣いの強い子は、大人の言葉の裏にある意図を読み取ろうとして、余計に消耗します。言葉をやさしくしても、指示のあいまいさが残っていれば、それは「判断を委ねられる」形になります。

疲れやすい子には「選ばせるより、整える」ことが必要です。

2. 親が「どこまで」決めてあげるか

意志力を温存するには、「考える前に動ける仕組み」をつくることが重要です。
これは、自立を妨げることではありません。むしろ、将来的に自分で判断できる力を育てるために、まずは「判断しなくて済む」環境を整えるのです。

たとえば、

  • プリント置き場が用意されている。
  • 「これやったら10時に休憩ね」と最初に伝えておく。
  • 「今は〇〇をする時間」と、スケジュールボードに書いておく。

こうした工夫は、子どもの中の「迷い」を減らします。「決めること」が減ると、自然に疲れにくくなります。

親の「気疲れ」をどう和らげるか

ここまで読まれた方の中には、「子どもの疲れには理由があるのはわかった。でも、それに合わせるこちらも正直しんどい」という思いを抱かれた方もいるかもしれません。

それも、ごく自然な反応です。むしろ、親が疲れていないほうが不自然です。

親は子どもの状態に一喜一憂し、少しでも前に進んでほしいと願い、結果が見えない中で対応し続けなければならない。これは想像以上のストレスです。だからこそ、親自身も「毎日判断をし続ける」状態を減らす必要があります。

1. 親のルーティンも、同じくらい大切

たとえば、毎朝「今日はどうする?」と子どもに聞くのではなく、「今日はこういう流れで行こうか」と、決め打ちで伝える。
夜寝る前に「明日は〇〇のあとにお昼ごはん」と、予定を共有しておく。こうすることで、親も翌日の対応に迷わなくなります。

また、「今日は何ができたか」よりも、「今日も同じ時間に起きられたね」「ごはんはちゃんと食べたね」といったルーティンへの注目が、親の気持ちを安定させます。達成目標が曖昧だと、進んだかどうかが見えず、不安になります。だからこそ、毎日の「型」を持つことが、実は親自身の心の支えにもなるのです。

「元気になる」ことを急がなくていい理由

子どもが「疲れやすい」状態にあると、「早く元気になってほしい」「もっと活動的になってほしい」と焦る気持ちはよくわかります。けれど、それは「燃料が尽きた車に、無理に走らせようとする」ようなものです。

むしろ、まずは「なぜ疲れているのか」を丁寧に見つめることが必要です。
そして、「疲れにくくするには、どう環境を整えられるか」を考えること。

元気とは、無理に引き出すものではありません。自然と回復する力を持っているのが子どもです。だからこそ、「判断を減らす」「習慣を整える」といった工夫が、子どもの自己回復力を支えるベースになります。

最後に一つだけ、忘れないでほしいことがあります。
それは、「疲れやすさ」は弱さではなく、「繊細さ」の裏返しでもあるということ。
子どもの内面には、まだ言葉にできないだけで、日々たくさんの感情と選択が積み重なっています。そこに少しだけ理解の光を当ててあげるだけで、親子の関係も、日々の過ごし方も、ほんの少しずつ、変わっていきます。

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