自閉症から不登校になってしまう子どもへの接し方

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。これまで多くのお子さんとご家族を支援してまいりました。不登校になっているお子さんをお持ちの方は、親として子どものことを心から案じながらも、何をどうすれば良いのか分からず、途方に暮れているかもしれません。私の言葉が少しでもお役に立てればと願いながら、ここに筆を執ります。

自閉症とは何か──特徴と学校生活での壁

まず、自閉症スペクトラム障害(ASD)について、その特徴や学校生活で感じやすいストレスを整理してみましょう。自閉症は、広範囲にわたる発達特性を持つ神経発達障害の一種です。典型的な特徴として、社会的なコミュニケーションの難しさ、興味の偏り、感覚過敏や過集中があります。

学校という場所は、多くの子どもにとって社会的なスキルを試される場であり、また集団行動が求められる環境です。特に自閉症の子どもにとっては、この「普通」が時に大きな負担となります。例えば、教室内でのざわざわした音や、昼休みに友達同士で自然に交わされる会話、教師の指示を即座に理解して行動に移すことなど、これらがすべて「苦手なこと」の要因になり得ます。

自閉症の子どもたちは、ルールやパターンを好む一方で、予期せぬ変化や曖昧な状況に対して大きな不安を感じやすい傾向があります。このため、例えば授業の変更や突発的なアクティビティがあると、パニック状態に陥ることがあります。また、同級生からの冗談や暗黙の了解を理解できずに孤立したり、逆に周囲の視線や言動に過敏に反応してストレスを感じることもあります。

以下は、自閉症の子どもの特徴と、学校でストレスになりやすい要素をまとめた表です。

特徴詳細
社会的な特徴– 他者とのコミュニケーションや集団活動が苦手。
– 冗談や暗黙の了解を理解するのが難しい。
– 対人関係で誤解されやすい。
興味・行動の特徴– 特定の物事やルールに強いこだわりを持つ。
– 興味の範囲が偏っており、他者と共有しにくい。
感覚特性– 音や光、匂い、触覚などに対して過敏または鈍感。
– 環境の変化に強いストレスを感じる。
自己調整の困難さ– 感情をコントロールするのが難しく、パニックや不安状態に陥りやすい。
– 刺激が過剰な環境では過集中や感情の爆発を起こしやすい。
学校でのストレス要因– 騒音: 教室や廊下のざわめき、ベルの音、体育館の反響音などがストレスになる。
– 授業中の変化: 急な時間割の変更や予期しないアクティビティ。
– 対人関係: 友達とのやりとりやグループ活動の難しさ。いじめや孤立感を感じることも多い。
– 評価・プレッシャー: テスト、発表、他者の注目を集める活動が大きな不安要因になる。
– 身体的な不快感: 校庭の暑さ・寒さ、椅子や机の硬さなどの環境的要因が影響することもある。
回避行動の例– 学校に行きたがらない、朝の支度に時間がかかる。
– お腹が痛い、頭が痛いなど体調不良を訴える。
– 家に閉じこもることが増える。

こうした学校生活の中での壁が、やがて大きな不安となり、不登校という結果につながることがあります。「学校に行かなければ」というプレッシャーと、「行きたくない」という心の葛藤が、朝の準備段階で涙や過剰な自己主張として現れることも珍しくありません。

学校という場が持つ意味と、不登校の背景

「学校に行くこと」は、多くの親御さんにとって、子どもの将来を左右する大事なテーマです。しかし、学校での体験が子どもの心を傷つける場になってしまう場合、その環境そのものが問題解決の障害となることもあります。「学校に行くべきだ」という社会的な圧力は確かに存在しますが、それが全ての子どもにとって良い結果をもたらすわけではありません。

自閉症の子どもの場合、学校におけるストレス要因は主に次のように分類できます:

  • 感情的なストレス──授業や課題への不安、教師やクラスメイトとの関係の緊張感。
  • 物理的な環境への不適応──騒音、照明、教室の配置。
  • 対人関係の難しさ──いじめ、孤立、誤解。

これらの要因が重なると、子どもは「学校を避けることで安心感を得る」という行動を選ぶことがあります。これは、ToCoの再登校支援プログラムで言う「負の強化」として説明されている現象です。

では、親としてどのように接するべきなのでしょうか?以下では具体的なアプローチをお伝えします。

自閉症の子どもが学校に向き合う力を持つために親ができること

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもにとって、学校生活での困難は、個別の特性や環境への適応力に深く関連しています。そのため、不登校の支援も一般的な方法ではなく、特性に配慮したアプローチが必要です。以下では、自閉症の子どもに適した具体的な支援策を解説します。


1. 子どもが安心できる環境を整える

自閉症の子どもにとって、「安心できる環境」が不安の軽減と行動の安定に繋がります。学校の環境が過剰な刺激を与える場合、家庭でまず安心感を持たせ、徐々に外部の環境に慣れさせていきます。

具体策:

自宅での学校体験をシミュレーション
学校での流れ(例えば「朝の準備→教室に入る→授業を受ける」など)を家庭内でロールプレイし、少しずつ「学校に行く」感覚を慣れさせます。

視覚的なスケジュールの作成
学校生活や1日の予定を絵や写真、アイコンを使って視覚的に示します。「次に何が起こるか」が分かるだけで、予測不能な不安を和らげます。


2. 子どもの特性に基づいた挑戦を設計する

自閉症の子どもは、特性に応じた小さな挑戦から始め、成功体験を積むことで自己効力感を高めていきます。これは、ToCoプログラムの「安全な挑戦」設定の考え方に基づいています。

具体策:

感覚的な刺激を避ける工夫
通学時間帯をずらしたり、静かな教室や個別ブースで学べるよう学校と調整します。これにより、過度な音や人混みからのストレスを軽減できます。

得意な分野を活かす
子どもが得意とすることや興味を持つことを学校活動に関連付けます。例えば、算数が得意なら「教室で計算問題を解くだけでもOK」など、子どもが「これならできる」と思える範囲を設定します。


3. 親の言葉と行動に一貫性を持たせる

自閉症の子どもは、曖昧な指示や変化に混乱しやすい傾向があります。親が安定した態度で一貫性のある言葉を使うことが、子どもの安心感につながります。

具体策:

  • 「具体的で短い指示」を心がける
    「学校に行く準備をしなさい」ではなく、「まず靴下を履こう」「次に教科書をカバンに入れよう」と具体的に伝えます。
  • 一貫したルールを作る
    学校に行く日と行かない日でルールやスケジュールを変えすぎないようにします。一貫したスケジュールが、子どもの安心感を高めます。
母と娘の会話イメージ

これにより、子どもは親に対して信頼感を持ち、自分の気持ちを素直に話せるようになります。


4. 感覚過敏や興奮を和らげる方法を取り入れる

自閉症の子どもは感覚的な過剰反応を示すことが多いため、ストレスを和らげるツールや方法を日常に取り入れると効果的です。

具体策:

リラクゼーションの習慣化
深呼吸、ストレッチ、抱きしめられる感覚が得られる重い毛布(加重ブランケット)などを使って、リラックスできる時間を作ります。生活リズムが整うことで、子どもは次第にエネルギーを回復し、学校復帰への準備が整っていきます。

感覚調整ツールの活用
ノイズキャンセリングヘッドホンやサングラス、柔らかい素材の服など、子どもの感覚的な快適さをサポートするアイテムを取り入れます。


5. 学校との密な連携を図る

自閉症の子どもが学校に通うためには、学校側との協力体制が重要です。特に特別支援教育コーディネーターや担任の先生と連絡を密にし、個別の支援計画を作成します。

具体策:

  • 個別の支援計画(IEP)の作成
    子どもの特性に合わせた支援が行われるよう、学年や担当教員と相談して具体的な計画を立てます。
  • 登校時間や授業内容の調整
    フルタイムの通学が難しい場合、登校時間を短縮したり、得意な科目に絞るなど柔軟な対応を学校に求めます。
先生との面談イメージ

6. 子どもが落ち着ける「安心の拠点」を持たせる

学校に行く際には、子どもが一息つける安心の場所を作ることも大切です。

具体策:

  • 学校内での拠点づくり
    保健室や図書室、特別支援教室など、子どもが安心して過ごせる場所を学校と調整します。
  • 親子で話し合い「逃げ場」を設定
    子どもがストレスを感じたときに「ここに行けばいい」という逃げ道を設定しておくと、安心感が高まります。

7. 子どもの小さな進歩を具体的に認める

自閉症の子どもにとって、褒められることや成功体験が次の挑戦への原動力になります。ただし、褒め方は具体的で分かりやすいものにしましょう。

具体策:

  • 行動を言葉で細かく評価する
    「頑張ったね」ではなく、「朝、カバンを自分で準備できたね」「学校の門まで行けたのはすごいことだよ」と具体的に伝えます。
  • 進歩を記録する
    できたことを日記やシールで記録し、子どもが自分の成長を視覚的に確認できるようにします。

最後に

お母さまが子どもを想う気持ちは、どんな言葉よりも力強いものです。どんなに小さな一歩でも、それは確実に前進です。お子さんが笑顔を取り戻し、安心して学校生活を送れるようになる日を、一緒に目指していきましょう。私達も、全力であなたとお子さんを支えていきます。どうか一人で抱え込まず、必要な支援を活用しながら進んでいってください。

ToCoでは、不安障害や自閉症を持つお子さんを対象に、何十人もの再登校を支援してきた実績があります。専門家によるカウンセリングや、個々の状況に応じたプログラムの提供を通じて、親子で取り組むことができます。詳しい情報は、ToCoの公式ウェブサイトをご覧いただくか、サポート窓口までお問い合わせください。

ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するにサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。

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