先日、私の小学生の子どもが風邪で学校を休みました。最初の日は単純に体調不良でしたが、翌朝になると別の問題が浮上しました。「昨日ズル休みしたと思われているかも…」と、子どもが再び登校を渋りだしたのです。私は、普段から不登校や引きこもりの支援に携わる仕事柄、この小さな躊躇が「不登校の芽」になる可能性もあると感じました。実際、不登校の多くは些細なきっかけから始まることが少なくありません。
今回、この経験から親としても専門家としても学び得たことを、皆さまにお伝えしたいと思います。
1. 「ズル休みしたと思われたくない」その小さな不安
小学生の子どもにとって、クラスの同調圧力や「ズル休み」への周囲の評価は意外と大きな負担になります。特に「周りと同じであること」に敏感な年代のため、「自分だけ違う行動を取った」という事実が翌日以降の登校に対するハードルになりやすいのです。
子どもが「ズル休み」と見なされることに不安を抱く姿を目の当たりにした時、私はこの小さな不安が、将来的な不登校のリスク要因になると直感しました。私が勤めるToCo株式会社でも、「見守るだけ」ではその不安が消えず、不登校が固定化されるケースが多いことが分かっています。問題を早期に見極め、適切な対処をすることが大切です。
2. 思い悩んだ末の「1日休ませる」という選択
子どもの不安を取り除くためには、どうしたら良いかと悩みました。ここで私がとったのは、担任の先生と相談して、あえてもう1日休ませるという選択でした。最初は「学校に行きたくないから」と休ませてしまうと、これが一度きりでは済まなくなり、繰り返しになってしまうのではないかと心配しました。しかし、そのまま無理に登校させて、子どもが負のイメージを抱えたまま学校に行くのも逆効果です。
この選択が正しかったかどうか、私は自信を持って選択したわけではありません。しかし、親として「今の気持ちを尊重するけれども、学校から完全に逃げるわけではない」という中立的なスタンスを保つことを大切にしました。最初から簡単に休ませるとズルズルと不登校につながりやすくなりますが、今の気持ちを尊重することで、子どもも安心できる面があります。
3. 勉強することを条件に「休み=楽しい」を防ぐ
不登校の問題に関してToCoでは、休んだ際の「時間の過ごし方」に注目しています。休むといっても、完全に「自由」や「楽しい時間」にしてしまうと、「学校に行かない=好きなことができる」という認識を子どもが持ってしまう危険があります。
そこで、子どもに「病気ではないから学校と同じように勉強すること」を約束させました。具体的には、私がリモートワークをしているリビングで、隣に子どもが座り、宿題や学習ドリルを進めるようにしました。こうすることで、「学校に行く代わりにリビングで勉強する」というスタンスを取りつつ、子どもが「休み=楽しい時間」と誤解しないようにしました。これは個人的に「マシダ作戦」(≒これなら学校に行ったほうがマシダ)と名付けています。
子どもはリビングで私と一緒に机に向かい、意外と楽しそうに勉強をしていました。子どもが集中できる環境を保ち、少しでもリズムが崩れないように心がけました。このように、「休み=楽しい」という誤った認識を防ぐことが、再び学校へ戻るための小さな一歩であることを実感しました。
4. 次の日
翌朝になると、子どもは再び明るい顔で「学校に行ってくる!」と言って登校していきました。この瞬間、私はホッと胸を撫で下ろしつつ、「やはり見守るだけではなく、適切な対応が必要なのだ」ということを再確認しました。
「部屋に閉じこもらせず、リビングで勉強させる」という工夫で、「学校を休んだら家でのんびりできる」という感覚を防ぐことができました。ToCoで働く中で、こういったちょっとしたサポートが将来的な不登校リスクを減らすことに繋がると確信しています。
5. 「休む日」にもルールを作ることの重要性
今回の経験を通して改めて感じたのは、家庭での「休む日」のルールづくりの重要性です。たとえば、子どもが休んだ日は、好きなテレビを見たりゲームをしたりする時間を設けない、もしくは厳しく制限するというルールです。これにより、「学校を休むと楽しいことができる」という印象を持たせないようにします。私の場合も、子どもに「風邪は治ったけど、今日も家で勉強すること」を条件に一日を過ごしました。このような規律を家庭内で守ることで、日常のルーチンから大きく外れることなく、学校へ戻ることへの抵抗感を少しでも減らすことができたと思います。
一方で、休んだ日だからこそ少しだけ楽しい活動も入れる工夫もしました。昼食後に一緒に軽い散歩に出かけることで、自然と気分転換を図れるようにしました。このような活動は短時間で抑えつつ、「休む日も単なる遊びの時間ではない」というバランスをとることで、子どもの気持ちを落ち着けるのに役立ったのです。
6. 周囲のサポートも大切
休みが続くことで、子ども自身も「どうして自分だけが学校に行けないのだろう」と自責の念を抱きがちです。また、親としても、「自分の対応が間違っているのではないか」という不安に駆られることもあります。こういったときに、学校の先生や第三者のサポートを積極的に頼ることが重要です。私も今回のケースでは、子どもにとっての居心地の良さを第一に考えつつ、学校側の先生に相談しました。担任の先生から「もう一日休ませても構いませんよ」と言われたことで、私自身も心が軽くなり、冷静に対処できるようになりました。
学校だけでなく、同じ悩みを抱える親同士のコミュニティも心強いサポートになります。子どもが学校に通えない日々が続いたとしても、「親として、どうにかできる」という自信が少しでも持てるようなサポートを受けることが大切だと考えます。
7. 不登校の予防と家庭の対応力を高めるために
今回の一件は、にとって多くの学びをもたらしてくれました。不登校はある日突然始まるわけではありません。子どもの小さな「不安」や「気持ちの変化」を早期に察知し、親として適切に対処することで、不登校を防ぐ可能性が高まります。しかし、こうした対応は決して一筋縄ではいきません。
子どもが学校を休みたいと言い出した時、その原因がわからないと親として戸惑います。しかし、親としてできることは、「休みたい」という子どもの気持ちに共感しつつも、家庭内でしっかりとしたルールを設け、家庭と学校の両方で「一貫したメッセージ」を示すことだと痛感しました。そしてその過程で、子どもが一人で不安を抱えないように寄り添うことも重要です。
親子の絆は、こうした悩みの瞬間にこそ深まります。親が自分の気持ちを尊重しながら適切に対応してくれることがわかれば、子どもも安心して自分の気持ちを正直に伝えることができるようになります。長い目で見れば、こうした絆の積み重ねが、子どもが学校での問題や社会生活の中で困難に直面した際の心の支えとなり、自己肯定感を育てる礎になります。
家庭でできる対応を実行しながら、必要に応じて支援サービスを利用することは逃げではありません。専門家が不登校の要因を分析し、再登校へのプランを立ててくれることで、親も「見守るだけでいいのか」「どのようにサポートすべきか」といった迷いを解消しやすくなります。ToCoでは、不登校支援のエキスパートが各家庭に合わせたアドバイスを行い、親御さんが子どもを適切に支えることができるような情報やアプローチを提供しています。