不登校の子どもとの対話法とは?

児童心理司の藤原です。ToCo株式会社の顧問として、不登校問題に向き合うための支援プログラムの開発に携わっています。本記事では、「不登校の子どもとの対話法」をテーマに、具体的な方法と心がけるべき点について深掘りします。不登校に悩む保護者の方がこの記事を通じて、新たな視点やアプローチを得て、子どもとの関係を前向きに構築する助けとなれば幸いです。


目次


第一章:声をかけることの意義と基盤

不登校の問題に直面したとき、多くの親御さんは「どう接したらいいのかわからない」という不安や戸惑いを抱えています。特に、子どもに声をかけることすら怖いと感じ、「何を言えば傷つけないのか」「どこまで踏み込んでいいのか」と悩むケースも少なくありません。しかし、親からの声かけは、子どもの孤独感を和らげ、再び周囲とつながるきっかけを作る重要な役割を果たします。

声をかける行為は、単にコミュニケーションを取るだけでなく、子どもの心に寄り添い、安心感を与えるための大切な行動です。不登校の子どもは、外の世界との接触を断ち、心を閉ざしていることが多いため、親が積極的に「君を見ているよ」「君の味方だよ」というメッセージを伝えることが、第一歩となります。

とはいえ、声をかける際に「学校に行こう」「どうして行けないの?」といった言葉をかけると、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。そのため、適切な声かけの方法を知り、子どもの気持ちを尊重する姿勢が不可欠です。

親子の会話のイメージ。

声かけの意義

声をかけることが子どもに与える影響は多岐にわたります。

  • 自己存在の肯定感: 「親は自分を気にかけている」と感じられることで、自分の存在意義を再確認できます。
  • 安心感: 自分の感情が否定されることなく受け止められると、不安や緊張が軽減されます。
  • 問題解決の土台: 自分の気持ちを言葉にする過程で、自身の悩みを整理しやすくなります。

これらの感覚が積み重なることで、子どもは親との会話を心地よく感じ、心の扉を開きやすくなります。

声かけの基盤となる姿勢

声をかける際に特に大切なのは、「子どもの感情に寄り添う姿勢」です。ただし、共感を誤った形で示すと、子どもが親に依存しすぎるリスクもあります。適切な共感とは、子どもの気持ちを理解しながらも、次の一歩をサポートする姿勢です。具体的には、以下を心がけましょう。

  1. 子どもの言葉を最後まで聞く: 話を遮らず、全体を理解する努力をしましょう。
  2. 感情を否定しない: 子どもが何を感じていても、それが自然な反応であると受け入れることが重要です。
  3. 前向きな視点を共有する: 子どもの気持ちに共感しつつ、その中に潜む希望を引き出す言葉をかけましょう。

第二章:子どもの感情を理解し受け止める

不登校の子どもたちは、心の中に様々な葛藤や不安を抱えています。それは、「学校に行けない」という結果として表れるだけでなく、日常の中で小さな行動にも影響を与えています。しかし、彼ら自身がその感情を的確に言葉にすることは難しく、親にうまく伝えられないことがほとんどです。その結果、親子の間で誤解やすれ違いが生じ、子どもの孤立感がさらに深まってしまう場合もあります。

このような状況で、親が最初にすべきことは「子どもの感情を深く理解し、受け止めること」です。子どもが何を感じ、何に悩んでいるのかを知るためには、焦らず、根気よく対話を続ける必要があります。重要なのは、子どもが感じていることを「正しい」「間違い」とジャッジするのではなく、そのままの形で受け入れる姿勢を示すことです。

親が「話を聞いてくれる」「自分を責めない」と感じられると、子どもは少しずつ心を開くようになります。

感情を引き出すための声かけ

直接的に「どうして学校に行かないの?」と問うことは、プレッシャーとなる可能性が高いです。その代わり、以下のような柔らかい表現を使うと良いでしょう。

  • 「どんなことが気になっているのかな?一緒に考えよう。」
  • 「学校のこと、もし話したくなったら教えてね。」
  • 「今日の朝はどんな気持ちだった?」

これらの言葉は、子どもに「親は自分の味方だ」と感じさせる効果があります。

【親子の会話例】

親: 「最近、学校に行くのが辛そうだね。朝起きたとき、どんな気持ちだった?」
子: 「お腹が痛かった。」
親: 「お腹が痛かったんだね。何か気になることがあったのかな?」
子: 「宿題を忘れたのが怖くて…」
親: 「宿題のことが気になっていたんだね。教えてくれてありがとう。」

このように、気持ちを丁寧に聞き出し、否定せず受け止めることで、子どもの不安を少しずつ解消できます。


第三章:自己肯定感を高めるための声かけ

不登校の子どもたちは、多くの場合「自分はダメだ」「何をやってもうまくいかない」という自己否定感に苦しんでいます。この自己否定感は、学校生活の中での失敗体験や、親や先生からの無意識のプレッシャーによって強化されることがあります。例えば、友人関係のトラブルや勉強でのつまずきがきっかけで、「自分は他の子より劣っている」と感じるようになり、そこから抜け出せなくなるケースも少なくありません。

子どもに寄り添う母親のイメージ

自己肯定感が低下すると、子どもは「どうせ何をやっても無駄だ」と考え、次第に新しいことに挑戦する意欲を失います。親として、この負のスパイラルを断ち切るためには、子どもの小さな成功や努力を見つけ、それを具体的に認めることが必要です。特に、不登校の子どもにとって「家でできた小さなこと」を褒めることは、自己肯定感を取り戻す大きな一歩となります。

努力を認める具体的な声かけ

どんなに小さな努力でも、それを肯定し、褒めることが大切です。子どもが気付いていない成長や変化を見逃さず、具体的に伝えるよう心がけましょう。

  • 「昨日は自分で起きられたね!すごいよ。」
  • 「今日は少し元気そうだね。きっと自分で頑張ったんだね。」
  • 「自分の気持ちを教えてくれてありがとう。それがすごく大事なことなんだよ。」

このように、行動や気持ちを具体的に認めることで、「自分にもできることがある」という前向きな意識を育むことができます。

【親子の会話例】

親: 「今日はちゃんと朝ごはんを食べられたね。」
子: 「うん、でも学校には行けなかった…。」
親: 「学校に行けなかったかもしれないけど、朝ごはんを食べるってすごく大事なことだよ。それだけでも一歩前進だね。」
子: 「そうかな…?」
親: 「そうだよ。毎日少しずつでいいんだから、一緒に頑張ろうね。」

子どもは親から具体的な努力を認められることで、自信を持ちやすくなります。


第四章:不安を分解する声かけ

不登校の子どもたちが抱える不安は、単純なものではありません。漠然とした「学校が怖い」「友達に会いたくない」という思いの背後には、複数の小さな不安が絡み合っています。例えば、「先生に怒られるかもしれない」「友達に嫌われている気がする」「宿題を忘れたらどうしよう」など、具体的な恐怖が積み重なり、一つの大きな不安として感じられていることが多いのです。

こうした不安をそのままにしておくと、子どもは「自分にはどうしようもない」と感じ、さらに閉じこもってしまう可能性があります。そのため、不安を「分解」して具体的な要素に切り分けることが重要です。一つひとつの要素を明確にし、「何が怖いのか」「どこから始めればいいのか」を子どもと一緒に整理することで、解決への道筋を見つけやすくなります。

不安を分解するためのフレームワーク

「感覚」「思考」「行動」のフレームワークは、親子で不安を整理する際にも役立ちます。例えば、次のように進めます。

  1. 感覚: 「何が怖いと感じる?」(身体や心の反応)
  2. 思考: 「どんなことを考えてしまう?」(頭に浮かぶ具体的なイメージ)
  3. 行動: 「そのとき、どんな行動をとっている?」(具体的な反応や行動)

これにより、不安がより具体化し、解決の糸口が見えてきます。

【親子の会話例:不安を分解する】

親: 「学校に行くのが怖いんだね。どんなところが怖いと思う?」
子: 「先生に怒られるのが怖い…。あと、友達に何か言われるのも嫌だ。」
親: 「そうなんだね。先生に怒られるのと、友達に何か言われるの、どっちが一番辛い?」
子: 「うーん、友達かな…。」
親: 「友達のことが気になるんだね。そこから少しずつ一緒に考えてみようか。」

このように、子どもの不安を分解することで、具体的な対処が可能になります。


第五章:状況に応じた声かけのアプローチ

不登校の原因や背景は、子どもによって大きく異なります。学校生活への恐怖、友人関係のトラブル、家庭内でのストレスなど、さまざまな要因が絡み合っている場合が多いです。また、同じ原因があっても、子どもの感じ方や受け止め方は一人ひとり異なるため、親が適切に対応するためには、子どもの状況を正確に理解し、それに合わせたアプローチを取る必要があります。

例えば、学校生活への恐怖心が強い子どもには、無理に学校に行かせようとするのではなく、少しずつその恐怖と向き合えるような声かけが必要です。一方で、友人関係の問題を抱える場合は、子どもがその経験を整理できるような質問や励ましが有効です。このように、状況に応じた柔軟な対応が、子どもをサポートする上で不可欠となります。

1. 学校生活への恐怖心が強い場合

学校への恐怖心が強い子どもには、無理に克服を促すのではなく、恐怖と少しずつ向き合う機会を作ることが重要です。

  • 「学校のこと、少しだけでも話してくれると嬉しいよ。」
  • 「どんなことが怖かったのか、一緒に考えてみようか?」

2. 対人関係の問題が原因の場合

友達や先生との関係が不登校の原因である場合、子どもの感情を受け止めつつ、自分の気持ちを整理できるよう手助けをします。

  • 「友達と何かあったのかな?どんなことが気になる?」
  • 「話したくなったら、いつでも教えてね。」

3. 親への依存が強い場合

親への過度な依存が背景にある場合は、子どもが少しずつ自立できるよう促します。

  • 「自分でできること、試してみるのはどう?」
  • 「少しだけ挑戦してみたら、できたことを教えてね。」

【親子の会話例1:学校生活への恐怖心が強い場合】

親: 「学校のことを思い出すと、どんな気持ちになるのかな?」
子: 「うーん…怖いし、嫌だ。」
親: 「怖いって感じるんだね。どんなところが一番怖いと思う?」
子: 「先生が怒るのが怖い…。あと、みんなに何か言われそうで…。」
親: 「先生のことと、みんなに何か言われそうなことが気になるんだね。どうしたら少しでも安心できるか、一緒に考えてみる?」
子: 「…うん、ちょっと考えてみる。」
親: 「ありがとう。少しずつでいいから、何でも話してくれると嬉しいよ。」

【親子の会話例2:対人関係の問題が原因の場合】

親: 「最近、学校で何か気になることがあった?」
子: 「友達とうまくいってない気がする…。」
親: 「そっか、友達のことが気になるんだね。どんなことがあったのか、もし話せたら教えてくれる?」
子: 「うーん…〇〇ちゃんとケンカして、仲直りしたけど気まずい…。」
親: 「〇〇ちゃんとケンカしたんだね。仲直りできたのはすごいことだけど、まだ気まずい感じがするんだね。」
子: 「うん…。どうしたらいいかわからなくて…。」
親: 「無理に解決しなくても大丈夫だよ。でも、少しずつ自分の気持ちを伝えてみるのもいいかもしれないね。何か手伝えることがあったら言ってね。」

第六章:声かけを続けることの重要性

不登校の解消には時間がかかることが多く、一朝一夕に状況が変わることはありません。そのため、親が継続的に声をかけ、子どもを支え続けることが大切です。特に、不登校が長期化している場合、親が焦りや苛立ちを感じることもありますが、それを子どもにぶつけてしまうと、逆効果になる可能性があります。

声かけを続けることは、子どもにとって「親はいつでも自分を見守ってくれている」という安心感を与えます。また、継続的な声かけを通じて、少しずつ親子間の信頼関係が深まり、子どもが再び心を開く土台を作ることができます。

母と娘の会話のイメージ

継続的な声かけのポイント

  1. 一貫性を保つ: 毎日ポジティブな言葉をかける習慣を作りましょう。
  2. 小さな変化を見逃さない: 子どもの小さな努力や変化を認めることが大切です。
  3. 否定的な言葉を避ける: 「どうしてできないの?」ではなく、「どこが難しいと思う?」といった前向きな表現を意識しましょう。

【親子の会話例1:小さな変化を見逃さない】

親: 「最近、朝は少し早く起きられるようになったね。」
子: 「うん、でも別に学校に行けるわけじゃないし…。」
親: 「学校に行けることも大事だけど、朝早く起きられるってすごいことだよ。一歩前に進んでいる感じがするな。」
子: 「そうかな…。」
親: 「そうだよ。少しずつでいいんだから、進んでいることを一緒に喜ぼうね。」

【親子の会話例2:否定的な言葉を避ける】

親: 「今日はどうしていたの?」
子: 「ゲームしてた…。」
親: 「そっか、ゲームを楽しんでたんだね。どんなゲームだったの?」
子: 「新しいやつ。少し難しかったけど、クリアできた!」
親: 「難しいのにクリアできたんだ!すごいね。それ、きっと集中して頑張ったからだよ。」
子: 「うん…。」
親: 「その集中力、他のことにも活かせたらすごいと思うな。何か挑戦してみたいことがあったら教えてね。」

第七章:親自身のケアも大切に

不登校のお子さんを支える親御さんにとって、子どもの状況や気持ちを受け止めながら日々を過ごすことは、時に大きな精神的・身体的負担となることがあります。親自身が疲れ切ってしまうと、知らず知らずのうちに子どもへの接し方が硬直的になったり、焦りや苛立ちが子どもに伝わってしまうことがあります。子どもと向き合うためには、まず親自身が心に余裕を持つことが大切です。

親のケアが必要な理由

親がストレスを感じている状態では、子どもの気持ちや行動を冷静に受け止めることが難しくなる場合があります。その結果、子どもに「理解されていない」「責められている」と感じさせる可能性が生じるのです。一方で、親が自分を大切にする姿勢を持つことで、家庭全体がより落ち着いた雰囲気になり、子どもも安心して過ごせる環境が整います。

親自身をケアする姿勢が子どもに与える影響

親が自分を大切にしている姿を見せることは、子どもに「自分も大事にしていいんだ」というメッセージを伝えることにつながります。親が心の余裕を持つことで、子どももリラックスした状態で親との会話や時間を楽しむことができるようになるのです。


結論:声かけは未来を切り開くカギ

不登校のお子さんを支える親の役割は、子どもの心を温かく包み込み、社会とのつながりを取り戻すための架け橋となることです。しかし、その過程は決して平坦ではなく、時間と忍耐が必要です。

声かけがもたらす変化

親の声かけは、子どもの心に響き、孤独感を和らげると同時に、再び自分自身の力を信じるきっかけとなります。たとえ小さな一歩であっても、その積み重ねが子どもの未来を明るく照らす礎となるのです。

親自身も成長する機会として

また、不登校の経験は親自身にとっても、子どもとの絆を深め、自己成長を促す貴重な機会となるでしょう。親も子どもも無理をせず、それぞれのペースで歩んでいくことが、長い目で見て最善の結果を生むはずです。

最後に、本記事でご紹介した声かけの方法や考え方が、少しでもお役に立つことを願っています。焦らず、子どもの心に寄り添いながら、日々の対話を大切にしてください。その積み重ねが大きな一歩となるでしょう。

各章要点必要な行動
声をかける意義と基盤声をかけることは、信頼関係の構築と不登校解消の第一歩。孤立感を和らげ、自己肯定感を高める役割を持つ。子どもの感情に寄り添い、否定せず受け止める。共感を示しつつ、前向きな声かけを続ける。一貫してポジティブな態度を心がける。
感情の理解と受容子どもは感情を言葉にするのが難しいため、親が適切に感情を引き出し受け止めることが重要。プレッシャーを与えない表現が効果的。「どんなことが辛い?」など、柔らかい言葉で感情を引き出す。話を遮らず、最後まで聞き、子どもの気持ちを肯定する。安心感を与える対話を心がける。
自己肯定感を高める子どもは自己否定感を抱きがち。小さな努力や行動を具体的に認めることで、前向きな意識と自己肯定感を育てる。努力を褒める際は具体的に伝える。「朝起きられたね」など、小さな成功体験を認める。結果ではなく過程に目を向け、前向きな変化を励ます。
不安の分解不安は漠然とした大きな塊ではなく、複数の要素から成る。これを分解することで、子どもが具体的に向き合いやすくなる。「どんなところが怖い?」と不安を分解し、具体化する。フレームワーク(感覚・思考・行動)を活用して、一つずつ取り組む。子どものペースに合わせる。
状況別の対応不登校の原因は子どもごとに異なる。学校生活の恐怖、対人関係、親への依存など、それぞれに応じた柔軟な対応が必要。子どもの状況を観察し、適切な声かけを選ぶ。例えば、学校生活への恐怖心が強い場合は無理をさせず、対人関係の問題には感情を丁寧に整理するサポートをする。
声かけの継続声かけの効果はすぐには現れないが、継続することで子どもの心の支えとなる。一貫性と忍耐が重要。日々ポジティブな言葉をかける習慣を作る。小さな変化を見逃さずに認め、前向きな声かけを心がける。否定的な表現を避け、子どものペースに寄り添う。
親自身のケア親が心に余裕を持つことも重要。無理をすると、子どもへの接し方に影響が出るため、自分自身を労る習慣を持つ。一人で抱え込まず、家族や専門機関に相談する。趣味やリラックスできる時間を持つ。同じ悩みを持つ親たちとの交流を通じて孤独感を軽減する。

ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
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