いじめから子どもをどう守る?


目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。本稿では、2025年度におけるいじめの現状とその傾向を紹介し、子どもをいじめからどう守るべきかについて考察していきます。読者である皆様の多くが、小中学生のお子さんを持つ保護者であり、お子さんの不登校や学校生活に悩まれている方々だと思います。そのお悩みに寄り添い、役立つ情報をお届けできれば幸いです。

第1章: いじめの現状と増加する背景

いじめ問題に関する最新調査では、文部科学省が発表した認知件数が732,568件に上り、前年の681,948件から50,620件(7.4%)増加しました。このような増加傾向は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた一時的な減少期を経た後、過去3年間にわたる増加傾向の延長として記録されており、歴史的に見ても過去最多です。

▍ いじめの認知件数の推移

いじめの認知件数の推移グラフ
文部科学省 令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

1.1 学校におけるいじめ認知件数の傾向

学校種別で見ると、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校すべての種別でいじめの認知件数が増加しました。特に以下のデータが注目されます:

  • 小学校では、認知件数が588,930件に達し、前年の551,944件から約37,000件増加しました。
  • 中学校は122,703件と、前年から11,299件増加しました。
  • 高等学校でも認知件数は17,611件で、前年度から約2,000件増加しています。
  • 特別支援学校では3,324件のいじめが報告され、前年度の3,032件から約10%増加しています。

このデータから、小学生のいじめが全体の80%以上を占めることが分かります。これは、学校が早期対応を試みる中で、特に小学生の軽微なケースも認知する努力が進んでいることを示唆しています。

▍ いじめの1,000人当たり認知件数(都道府県別)

学校において認知したいじめの件数
文部科学省 令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

1.2 いじめの解消状況

調査では、いじめの解消率が77.5%に達していますが、これは学校や教育機関がいじめ解決に向けた取り組みを強化している一方、解消しにくいケースが一定数存在することも示しています。特にSNS上のいじめや家庭外の社会的要因が絡む場合、問題の解決が複雑化する傾向があります。

解消に向けて取り組んでいるケースも全体の22.3%と高い割合を占めており、特に中学校で23.7%、特別支援学校で26%という数字が目立ちます。この現象は、中学生や特別支援学校の生徒に対するいじめが解決困難であることを示しており、いじめ対応策のさらなる精緻化が求められます。

1.3 SNSいじめとその影響

特筆すべきは、SNSいじめの増加です。インターネットを通じたいじめ件数は過去8年間で一貫して増加傾向を示しており、2025年度には24,678件に達しました。これは、特に中学生と高校生の間で広がっている問題であり、ネットの匿名性や非対面性が被害を長期化させています。また、いじめの加害者が直接的な罪悪感を抱きにくい環境にあるため、対処が難しい状況が続いています。

いじめの態様別状況
文部科学省 令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

第2章: いじめの重大事態とその影響

いじめが解決されず、深刻化した場合には、被害者とその家族に計り知れない影響を与えます。2025年度には、いじめの重大事態が1,306件報告されており、前年の919件から42.1%増加しています。この数字は、過去最多を記録しており、学校におけるいじめ対策が依然として課題であることを浮き彫りにしています。

2.1 重大事態の定義と事例

いじめの重大事態とは、いじめにより被害児童が生命・身体・精神に深刻な被害を受けたり、学校への出席が困難になるなどの影響があった場合を指します。具体的なデータを見てみると:

  • 精神的苦痛:重大事態の62.7%に当たり、最も多い事例です。被害者の心に深い傷を残すケースが多く、特にSNSを通じたいじめが精神的苦痛を引き起こしやすいと言われています。
  • 身体的苦痛:全体の18.1%を占め、身体的な暴力を伴ういじめのケースです。
  • 生命の危機:全体の11.6%に当たり、いじめによる自傷や自殺未遂などが含まれます。

2.2 重大事態の調査と対応

重大事態の調査は、78.3%のケースで学校が主体となって行われています。しかしながら、調査報告の中で「いじめが認知されていなかった」ケースが37.5%存在することは重大な課題です。これは、いじめの兆候を早期にキャッチする仕組みが不十分であることを示しています。

特に、小中学生の重大事態では、「精神的苦痛」に関する問題が約半数を占めていますが、この問題に取り組む際には、被害者の心理的支援だけでなく、加害者の心理や家庭環境への介入も必要です。

2.3 自殺との関連性

いじめと自殺との関連性は、特に近年の重大な問題として注目されています。2025年度の調査によれば、学校関連の自殺者の中には、いじめが主要な原因とされるケースが複数報告されています。これは、学校だけでなく家庭や地域社会が協力し、包括的なサポート体制を構築する必要性を示しています。


第3章: 子どもをいじめから守るために

いじめ問題が深刻化する中で、家庭、学校、そして地域社会が連携して対策を講じることが求められます。この章では、兆候を見逃さず早期対応する方法、学校や地域との連携の重要性を、保護者が具体的に取り組める視点から解説します。

3.1 兆候を見逃さないための観察ポイント

いじめを早期に発見するためには、日常生活における子どもの微細な変化を見逃さないことが重要です。次のような兆候が見られる場合、注意を払うべきです。

  • 身体的サイン
    持ち物の破損、衣服の汚れ、身体にできた傷やあざが頻繁に見られる。
  • 感情的サイン
    突然泣き出したり怒りっぽくなるなど、情緒が不安定になる。
  • 社会的サイン
    友人関係の変化、一人で過ごす時間が増える。学校や塾の休みがちになる。
  • 学業のサイン
    成績の急激な低下、授業への集中力の欠如。宿題や課題をやりたがらない。
  • デジタルサイン
    SNSやゲームの利用が急に減ったり、スマートフォンを隠したり、特定アプリの削除が見られる。

兆候に気づいた場合、子どもに直接問いただすのではなく、「学校で何か嫌なことがあった?」と優しく声をかけることが大切です。否定せず、受け入れる姿勢を見せることで、子どもが話しやすい環境を作ります。

子どもに寄り添う母親のイメージ

3.2 学校との連携の具体策

いじめ解決には、保護者が学校と協力し、共に問題に取り組む姿勢が欠かせません。以下の手順を実践してください。

  1. 具体的な事実の共有
    子どもから聞いた内容や、写真、破損物の記録など、いじめの証拠を整理し、学校に伝えます。
  2. 冷静かつ建設的な対話
    学校の担任やスクールカウンセラーとの面談では、感情的にならずに具体的な解決策を話し合います。
  3. 教育委員会や第三者機関への相談
    必要に応じて、地域の教育委員会や心理カウンセラーなど、学校外のサポート機関を活用します。
  4. 進捗の確認と再協議
    いじめ対応の進捗状況を学校と定期的に確認し、改善が見られない場合は再度の話し合いを行います。

3.3 保護者としての心構え

いじめ問題に向き合う中で、保護者自身も大きなストレスを抱えることがあります。そのため、保護者が安心して相談できる場所やサポートグループを活用し、自身の心身の健康を保つことも重要です。また、子どもに対して「あなたの味方でいるよ」という姿勢を示し続けることで、子どもの心に安心感を与えることができます。


結論

いじめは子どもの心身に深刻な影響を与える問題ですが、適切な対応を取ることで改善の道は開けます。本稿で紹介したデータや具体的な対策が、いじめ問題に悩む保護者の方々にとって少しでも役立つことを願っています。最も大切なのは、親が子どもに寄り添い、いじめを一緒に乗り越えようとする姿勢です。どんなに小さな一歩でも、それは子どもの未来を守る大きな一歩となるはずです。


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