子どもに反発されやすい話し方と、気を遣いすぎる話し方。
こんにちは。カウンセラーの竹宮と申します。
今日は「子どもに反発されやすい話し方と、気を遣いすぎる話し方」について書いてみたいと思います。
不登校の子どもに声をかけるとき、どう話せばいいのか分からないという相談は、とてもよく受けます。
強く言えば反発される。
かといって、下手に出すぎると無視される。
どうしても言葉を選びすぎて、かえって距離が広がってしまう。
そんな葛藤を抱えている方が多くいらっしゃいます。
今回は、「話し方」に焦点を当てて、子どもとコミュニケーションを取る際に起きやすい問題と、その背景について掘り下げていきたいと思います。
目次
- よくある声かけの難しさ
- なぜ反発されるのか
- なぜ気を遣いすぎてしまうのか
- 「普通の話し方」の中にある信頼
- 言葉の背景にある「力関係」を意識する
- 話し方のOK/NG例
- 話し方よりも、話し続けること
- まとめ:話し方を通して「関係」を育てていく
よくある声かけの難しさ
反発を招く話し方
「そろそろ起きたらどう?」
「いつまでそうしているつもり?」
「昔はもっと頑張れてたよね」
こうした言い方は、つい口から出てしまいやすいものです。
親としては励ましたつもりでも、子どもには責められたように聞こえることがあります。
特に、不登校の子どもは「自分はダメだ」と思っていることが少なくありません。
そこに「何かをしなさい」と言われると、自分を否定されたように感じ、強い反発につながってしまいます。
その結果、「何を言っても聞いてくれない」「余計に関係が悪化した」と悩むことになります。
気を遣いすぎる話し方
一方で、こんなふうに話している方もいます。
「無理にとは言わないけど、もしよかったら……」
「嫌だったら全然いいんだけど……」
「ちょっとだけ聞いてもらえると嬉しいなって思ってるけど……」
優しさや配慮が感じられる話し方ですが、これもまた別の問題を生むことがあります。
子どもによっては、「何を言いたいのか分からない」「遠回しで気を遣われている」と受け取られ、距離を感じてしまうことがあるのです。
つまり、「反発を招く話し方」と「他人行儀に聞こえる話し方」の両方に、伝わらないリスクがあります。
なぜ反発されるのか
「命令口調」はやる気を削ぐ
「やりなさい」「行きなさい」「いい加減にしなさい」といった命令形は、相手に“上下関係”を意識させます。
特に思春期の子どもは、この種の言葉に過敏に反応します。
反発は、内容に対してではなく、言い方に対して起きていることも多いです。
つまり、「やるべきこと」そのものよりも、「その言い方」によって拒否反応が生まれているのです。
これは、本人が自分のことを決める権利を守ろうとしている行動でもあります。
誰かに支配されることへの抵抗と考えると、過剰な反応も少し理解しやすくなるかもしれません。
「評価」が潜む言葉も注意が必要
「あなたならできると思ったのに」
「前はもっとちゃんとしてたのに」
「お姉ちゃんはちゃんとできてるよ」
これらは、比較や過去の自分との照らし合わせを含んでいます。
一見、励ましや期待に見える言葉ですが、子どもにとっては「ダメな今を否定された」と受け取られることがあります。
やる気を引き出したいという思いが強いほど、評価的な言葉が出やすくなります。
でも、それがかえって逆効果になることもあるという点は、意識しておく必要があります。
なぜ気を遣いすぎてしまうのか
子どもの心を傷つけたくない気持ち
多くの保護者の方が、「子どもの気持ちを考えると、何も言えなくなってしまう」と話されます。
子どもが傷つきやすくなっている。
言葉一つで何日も黙り込んでしまう。
そうした経験があると、「また傷つけたらどうしよう」という不安が先に立ち、言葉が出てこなくなります。
このとき、親は「傷つけたくない」と思っている一方で、「変わってほしい」という気持ちも強く抱えています。
この二つの気持ちが葛藤を生み、結果として“何も伝わらない話し方”になってしまうのです。
子どもの拒否反応が怖い
以前、ほんの一言で子どもが怒鳴った。
それ以来、声をかけるのが怖くなってしまった。
こうした経験をお持ちの方も多いと思います。
子どもの機嫌を損ねないように、慎重に、遠回しに、気を遣いながら話す。
その気遣いは尊重されるべきものですが、同時に、言葉が曖昧になるほど、子どもは「何を言いたいのか分からない」と感じてしまいます。
その結果、「聞き流される」「無視される」「かえって壁ができる」といった悪循環につながっていきます。
適度なフラットさが大切
では、どう話せばいいのでしょうか。
極端に強くもなく、極端に気を遣いすぎるわけでもない。
つまり、「普通の話し方」が、かえって信頼を生むことがあります。
たとえば、「そろそろご飯だよ」「明日は雨らしいね」「このドラマ面白かったよ」
こうした“どうでもいい会話”を、丁寧すぎず、雑すぎず、自然体で交わす。
このような言葉のやりとりの中に、「あなたを特別扱いしていない」「でも、ちゃんと関心を持っている」というメッセージが含まれます。
子どもが過剰に敏感になっているときほど、“普通の接し方”が効いてくるのです。
「普通の話し方」の中にある信頼
家庭内の会話が「鏡」になる
不登校状態にある子どもは、毎日が「自分との対話」の連続です。
「このままでいいのか」「親は何を思っているのか」
そんな問いが、静かに、しかし強く内側で繰り返されています。
だからこそ、家庭内でかわすちょっとした会話が、子どもにとっての“社会の予行演習”になります。
「おかえり」「お風呂先にどうぞ」「ごちそうさま」
こうしたやりとりが、日常への接続の足がかりになるのです。
そのため、「普通の話し方」を繰り返すことには、単なる“気軽さ”を超えた意味があります。
それは、子どもが「関係性の中で安心していられる」ためのリズムになります。
緊張しすぎない雰囲気づくり
親が言葉をかけるとき、「何を言えば正解か」を考えすぎてしまうことがあります。
この“正解を探す雰囲気”が、子どもにとっては居心地の悪さにつながることがあります。
たとえば、毎回話しかけられるたびに、親の顔が真剣すぎる。
話す前に深呼吸をする。
間が長い。
こうした“空気の変化”が子どもの緊張を高めてしまうことがあります。
必要なのは、“ついで”のような話し方。
冷蔵庫を開けながら、「あ、プリン食べる?」と聞く。
テレビを見ながら、「それ前に見たやつだよね」と話す。
こういった“ついでの一言”は、子どもにとって非常に安心感があります。
緊張感を持ち込まず、自然な空気の中で言葉を届ける工夫が必要です。
言葉の背景にある「力関係」を意識する
「支配される恐れ」と「見捨てられる不安」
子どもが親の言葉に反発する場面には、しばしば二つの感情が交差しています。
ひとつは、「コントロールされることへの恐れ」です。
これは、自分のペースを守るための防衛反応です。
もうひとつは、「親に見捨てられるのでは」という不安です。
この不安が強いほど、親のちょっとした言葉を過剰に解釈してしまう傾向があります。
「なんで行かないの?」という一言に、「もう期待されていないのかも」と感じる。
「無理にとは言わないけど…」という一言に、「でも本当は行ってほしいんだよね」と察してしまう。
子どもは、言葉の裏にある“期待”や“評価”にとても敏感です。
だからこそ、意図せず“圧”がかからないように、話す側が丁寧に言葉を選ぶ必要があります。
対等な関係に近づくために
子どもが自分のペースで考え、選び、動き出せるようになるには、まず「支配されていない」と感じられることが重要です。
そのためには、言葉の中に“余白”を残す必要があります。
「いつでも話せるよ」
「今日じゃなくても大丈夫」
「あなたが決めていいことだよ」
こうした言葉には、「あなたを尊重している」というメッセージが込められています。
一方で、「全部あなたに任せる」という突き放しになってはいけません。
支えながら、でも操作せずに関わる。
このバランスが、信頼の土台になります。
話し方のOK/NG例
NG例:良かれと思って言いがちだけど逆効果な言葉
- 「頑張ってるのは分かるけど、そろそろ…」
→「分かる」と言いながら、実は否定している。 - 「みんな頑張ってるんだから」
→比較によって、自己価値を下げられたように感じる。 - 「前はもっとちゃんとしてたじゃない」
→過去と比べられることで、現在の自分が否定される。
こうした言葉は、表面的には正論でも、子どもの心には“拒絶”として響くことが多いです。
OK例:プレッシャーをかけず、余白を残した言葉
- 「今日も起きられたね。おはよう」
→評価ではなく、事実の共有にとどめる。 - 「これ、美味しかったよ。よかったらあとで一緒にどう?」
→提案の形にして、選択肢を子どもに渡す。 - 「私も毎日うまくいかないことあるよ」
→親も完璧ではないと伝えることで、安心感を与える。
このような言葉がけは、子どもに「決定権を預けること」と「関係を断たないこと」を同時に伝えることができます。
話し方よりも、話し続けること
言葉は「橋」ではなく「道」
よく、「言葉は両者を渡す橋のようなものだ」と言われます。
でも私は、子どもとの言葉のやりとりは、“道”に近いと思っています。
一度かけた橋は、崩れると元に戻すのが大変です。
けれども、“道”は、何度でも踏み直せるものです。
今日の声かけがうまくいかなくても、明日また歩いてみればいい。
途中で止まってしまっても、しばらく経って再開すればいい。
この“踏み直しの自由”が、親子関係にとってとても大切だと思います。
話すことで、親自身の不安も整理される
「言葉が出てこないのは、自分の不安のせいかもしれない」
そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
話すという行為は、子どものためだけでなく、自分の気持ちを整える手段でもあります。
「今日はうまく言えなかったな」
「つい、強い言い方になってしまった」
そんなふうに、言葉にした後で自分を振り返ることができるようになります。
子どもに届く言葉を探す過程は、自分自身の思いやスタンスを見つめ直すプロセスでもあるのです。
まとめ:話し方を通して「関係」を育てていく
この記事では、「子どもに反発されやすい話し方」と「気を遣いすぎる話し方」について考えてきました。
・命令口調は支配性を感じさせ、やる気を削ぐ
・過剰な気遣いは距離を感じさせ、信頼を遠ざける
・“普通”の自然体な話し方が、かえって子どもに届きやすい
・言葉の背景にある姿勢や関係性が、言葉以上に伝わっている
・言葉を正すことは、同時に自分との対話でもある
子どもとの関係は、「正しい言い方」を探すことではなく、「続けて関わる」ことの中に育っていきます。
完璧な言葉は必要ありません。
必要なのは、「あなたと話したいと思っている」という気持ちが、形になって届いていくことです。
そのために、“言葉”を急がず、“関係”を焦らず、今日もほんの一言から始めていく。
そんな積み重ねが、やがて子どもの中に、信頼と安心を根づかせていくのだと思います。
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