子どものワガママを聞くことのリスク

こんにちは。カウンセラーの竹宮と申します。
今日は「子どものワガママを聞くことのリスク」というテーマで、話をしてみたいと思います。

不登校の子どもと日々を過ごす中で、親としてどこまで応じるべきか迷う場面が増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。
たとえば、「お茶持ってきて」「テレビのリモコン取って」「お風呂はあとで」のような言葉です。
一見些細なやりとりに見えても、それが毎日のように続くと、どこかで「このままでいいのだろうか」と不安を感じるようになります。

特に「ワガママ」と見える要求に対して、「応じるのがよいのか、拒むべきなのか」判断が難しいものです。
そしてその判断が、子どもの自立心や親子関係にどう影響していくかについては、あまり深く語られていません。

今回は、「ワガママ」と呼ばれる行動の背景を丁寧に見つめ直しつつ、それにどう向き合えばよいかを心理学的な観点から整理していきます。

目次

「ワガママ」はどこからが問題になるのか

ワガママとは「言い方」ではない

まず確認しておきたいのは、ワガママかどうかは、言葉遣いでは決まりません。
「お願いだからやって」と言われても、それが本人の自立を阻む要求であれば、内容としてはワガママに分類されます。

反対に、ぶっきらぼうな言い方であっても、関係性の中でお互いに尊重し合っていれば、それは単なる一時的な甘えかもしれません。

つまり、「乱暴な言い方=ワガママ」「優しい言い方=良い子」という単純な構図では語れません。

要求に「回避」の意図があるときは注意が必要

不登校状態にある子どもが頻繁に要求を出してくるとき、よく見られるのが“回避”としてのワガママです。

たとえば、自分の意思で動くことを避けたいがために、

  • 「着替えたくない」「服持ってきて」
  • 「プリントはママがやっておいて」
  • 「部屋から出たくないから飲み物を持ってきて」

こうした要望を日常的に繰り返すことがあります。

これらがすべて悪いというわけではありません。
けれど、親がすべてを引き受けることが常態化すると、「自分で動く理由」がどんどん薄れていきます。
それが、自立心の低下を招く要因になりやすいのです。

ワガママを「受け入れる」ことが持つリスク

親が“召使い”のような役割になると、子どもは学ばなくなる

ここでよくある誤解を一つ挙げておきます。

「子どもが辛そうだから、少しでも快適に過ごせるようにしてあげたい」
この気持ちは、親としてとても自然なものです。
しかし、快適にすることと、本人の成長に必要な負荷を取り除くことは、全く別の話です。

親がすべてに応じるようになると、子どもの中に「不快なことは誰かが処理してくれる」という認識が生まれます。
それは、「やってもらうことが当然」と感じる地盤になっていきます。

この状態が続くと、いざ親が何かを頼んだときに「やだ」「なんでやらなきゃいけないの」と反発するようになります。

つまり、“親が子に合わせすぎる構造”が、長い目で見ると“親の要求を受け入れない子ども”を育ててしまうリスクを持っているということです。

「自分でできた」という実感を奪ってしまう

もう一つのリスクは、子ども自身が「できるようになっていく機会」を失うことです。

不登校の子どもは、しばしば「何をやってもうまくいかない」「できることが少ない」といった劣等感を持っています。
だからこそ、日常の中で「これは自分でできた」「ちゃんと動けた」という手ごたえを持てる瞬間は、とても重要になります。

それなのに、「お茶を持ってきて」と言ったときに、毎回持ってきてもらっていると、本人にとって“動けた実感”の機会が失われてしまいます。

“やってあげる”ことは親の優しさですが、“やらせない”ことは、子どもから成長の機会を奪うことにもなります。

ワガママにどう応じるか

要求そのものは拒否しても、気持ちには寄り添う

ここまでお読みになった方の中には、「じゃあ、全部突っぱねればいいのか」と思われた方もいるかもしれません。
それは違います。

ポイントは、「ワガママ=要求」に正面から応えるのではなく、「ワガママ=気持ち」に丁寧に応じていくことです。

たとえば、「お茶を持ってきて」と言われたときに、

「〇〇は、自分でできることを知っているよ。一緒にやろうか?」
「ママもちょっと手が離せないから、今日は〇〇にお願いしたいな」

このように、本人の“気持ち”には寄り添いつつも、“行動”についてはきちんと返していく対応が必要です。

本人の「甘えたい気持ち」や「疲れて動きたくない気持ち」は、否定しなくて大丈夫です。
大事なのは、その気持ちを“どのように表現するか”、“どう対応するか”を一緒に整えていくことです。

愛情は、言葉・態度・関係性で伝えるもの

不登校の子どもに多い誤解のひとつが、「ママが言うことを聞いてくれるときだけ、愛されていると感じる」という思い込みです。

これは、過去の経験や今の状態の中で形成されてきた認知のゆがみであり、本人が意図的にそう思っているわけではありません。

だからこそ、親の側が「愛情は“なんでもしてあげること”ではない」と伝えていく必要があります。

その方法として有効なのが、「あなたがいてくれるだけでうれしいよ」「そばにいられることがありがたいよ」といった言葉による承認です。

また、視線や表情、態度の中でも、「あなたを見ているよ」「ちゃんと分かっているよ」というサインを示していくことが大切です。

日常の中で、「愛情を伝えること」と「要求に応じること」をしっかり分けて考えることが、子どもにとっても親にとっても負担を減らしてくれます。

甘えの背景

甘えた要求には、時にメッセージが隠れている

ワガママに見える言動の中には、「ただの面倒くさがり」だけではなく、「つながっていたい」「誰かに気づいてほしい」という心の声が隠れていることもあります。

たとえば、

  • 「テレビのリモコン取って」が、「近くにいてほしい」というメッセージだったり
  • 「ご飯作って」が、「自分のことを気にかけてほしい」という表れだったりします

このようなメッセージは、表現が未熟だからこそ“命令口調”や“拒否反応”の形で現れてしまうことがあります。

ですから、表面的な言葉に過敏に反応するのではなく、「今、この子はどうしてほしいのか」「何を感じているのか」と一歩踏み込んでみる視点が大切です。

もちろん、それは“甘やかす”こととは違います。
“理解した上で、境界を引く”という態度こそが、本人の不安を和らげ、安心感を育てていきます。

やらせるのではなく、やれる力を信じる

子どもに「それは自分でやろうか」と伝えると、時に「冷たい」と感じられることがあります。
実際に「ママはもう優しくしてくれない」と言われることもあるかもしれません。

しかし、こうした言葉に惑わされる必要はありません。

「やってほしい」と言われたときに、あえてやらないのは、“できる力がある”と信じているからです。

それは、「あなたを信じている」「あなたにはできるはずだ」という、非常に前向きな関わり方です。

大切なのは、その“信じている”というメッセージが伝わるように、言葉を添えることです。

「手を出さない」のではなく、「寄り添ったうえで、自分の足で立てるように支える」
それが、長い目で見て本人を一番助ける関わり方です。

全部に応じると、親が持たない

毎日のように要求されるたびに応じていると、親の心身はすり減っていきます。
そしてその疲労が蓄積すると、ある日突然、爆発することがあります。

「もう無理」「いい加減にして」

こうした言葉が出てしまったとき、親自身も強い自己嫌悪に陥ることがあります。
そして、その自己嫌悪がまた“やりすぎる育児”へとつながり、悪循環になります。

だからこそ、最初から「これはやらない」「これは一緒にやる」という線引きをしておくことが大切です。

それは、親自身を守る行為であり、同時に、子どもの自立を助ける行為でもあります。

まとめ:ワガママの背景にある「気持ち」と「行動」を分けて考える

この記事では、「子どものワガママにどう向き合うべきか」というテーマを、心理的視点から掘り下げてきました。

・ワガママとは、言い方ではなく“中身”が問題
・要求をすべて受け入れると、自立心や自己効力感が育ちにくくなる
・親の応じすぎは、やがて反発や依存の原因になる
・要求には応じなくても、気持ちには寄り添う姿勢が大切
・愛情は、“なんでもやること”ではなく、“関係の中で伝えること”で充分に届く

不登校の子どもとの日々は、予測できないことばかりです。
だからこそ、すべてに完璧に応える必要はありません。

「この子の気持ちは受け止めるけれど、この行動には付き合わない」
そのスタンスこそが、信頼と自立を育てる基盤になります。

この記事が、日々の小さな葛藤の中で迷っている親御さんにとって、少しでも気持ちの整理の助けになれば幸いです。

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