僕が「学校に行きたくない」と言ったのは、中学2年の春だったと思います。朝起きて制服に袖を通そうとしても、学校の門をくぐるイメージが頭に浮かんでこなくて、体が重く感じて、心もどこか冷たくなっていました。親には、どんな言葉で「学校が辛い」と伝えたのか、今でもあまり覚えていません。ただ、何かが限界に達していたのです。
学校を休み始めた頃は、家族にも友達にも心配をかけている自覚がありましたが、どうしても体と心が言うことを聞かなくて、自分ではどうすることもできなかったのです。
不登校になった理由
どうして僕が学校に行けなくなったのか。周りから見ると些細なきっかけに見えたかもしれません。実際、学校で大きな事件が起きたわけでもありません。友達関係にトラブルがあったわけでもないし、いじめもありませんでした。ただ、僕自身が感じていた「孤独感」と「無力感」が少しずつ心を蝕んでいたのです。
クラスでの輪に入れないというか、みんなが楽しそうに話している輪の外にいつも自分がいる気がしていました。自分を偽ってまで、みんなに合わせようとするのも辛くて、結局、少しずつ自分を閉ざしてしまっていたのです。そしてそれが、知らないうちに僕の心を少しずつ追い詰めていきました。
家族の変化
僕が家で一日中過ごすようになってから、最初のうちは家族もどうしていいか分からなかったようでした。親も学校に行ってほしいのは分かっていたけれど、僕がどうして行けないのかが理解できなかったのだと思います。ある日、僕の部屋に入ってきた母が、ポツリと「どうして学校が嫌なの?」と聞いてきました。
でもその時の僕には、その質問に答える気力がありませんでした。自分でも本当に何が辛いのか分からないし、うまく言葉にできない。でも、親がただ「行け」と言うのではなく、僕の気持ちを理解しようとしている姿勢に少し驚いたのを覚えています。その後も母は何度も僕の気持ちを聞いてくれましたが、最初の頃は上手く話せませんでした。
僕が後から聞いた話ですが、この時、母はToCoというサービスに出会ったようです。そしてこのサービスを通して親自身も子どもへの接し方について学び、少しずつ変わっていったのだそうです。ToCoを通じて母がどう学んだのか、どんなことを知ったのかは詳しくはわかりませんが、確かに僕の気持ちを理解しようとしてくれるようになったのはその頃からでした。
ゲームとパソコンに夢中だった日々
不登校になった当初、僕の生活はゲームとパソコンにどっぷり浸かるものでした。現実から逃げるように、一日中画面の中で過ごしていました。親は「またゲームばかり」と心配していたけれど、僕にとってその時間は唯一の居場所でした。学校に行かなくてもゲームの世界では自由で、自分が何者であるかを忘れて夢中になれる場所だったのです。
しかし、だんだんとその生活も虚しさを感じるようになりました。現実から逃げ続けているだけで、何かを成し遂げているわけではない、ただ時間が過ぎていく。毎日同じことを繰り返し、何も変わらない生活に自分が何か大事なものを失っているような気がしたのです。
再登校を考え始めた理由
ゲームとパソコンだけの生活に飽きが来ていた頃、親が僕の気持ちを理解しようとしてくれたことが、少しずつ僕を変え始めていました。今まで僕の気持ちを汲んでくれなかったと感じていた親が、「学校に行く行かないは自由だ」と言ってくれたのです。その言葉に最初は戸惑いましたが、それからは自分の将来について考える時間が増えました。
再登校を選ぶのか、このまま家に居続けるのか、あるいは他にできることがあるのか。迷いが生じる中で、ある日親が僕の進路について一緒に話し合ってくれたことがありました。それまでは話し合うことすら億劫だったのですが、親が僕の選択肢を尊重してくれると感じたことで、自分の未来について真剣に考え始めたのです。
ゲームクリエイターとしての起業を決意
その時に思い浮かんだのが「ゲームクリエイターになること」でした。僕はゲームが好きでしたし、いつか自分でゲームを作りたいという漠然とした夢を持っていました。しかし、不登校で学校に行っていない自分がその夢を実現できるのか、半信半疑でした。
親がその夢を否定せずにいろいろな情報を調べて提供してくれたり、将来の道を一緒に模索してくれたりする中で、僕は少しずつ「自分でも何かできるかもしれない」と思うようになったのです。最初は小さな一歩でしたが、僕は自分の手で小さなゲームを作り始め、気づけばその作業に夢中になっていました。
不登校での経験が活きる場所
僕がゲームクリエイターとしての道を選んだ背景には、不登校での孤独な経験がありました。誰かに寄り添ってもらえない苦しみ、誰にもわかってもらえない孤独。これらの経験は、ゲームを通じて人とつながることの大切さを強く感じさせるものでした。
親が変わってくれたからこそ、自分が置かれていた状況に向き合うことができ、自分にとって本当に必要なことは何かを考え、行動に移す勇気を持てたのです。そしてその結果、ゲームクリエイターとして起業する道を選ぶことができました。
最後に
僕が起業という選択肢を選んだのは、単なる逃げではなかったと振り返っています。不登校に向き合えたからこそ、僕は自分の人生について深く考え、その先に何ができるのかを見つけることができました。再登校も可能な状態まで持ち戻しましたが、その上で別の道を選ぶ選択をしました。もちろんゲームクリエイターとしての道は簡単なものではありませんが挑戦しがいのある未来です。
最後にToCoさん、僕の人生を変えてくれてありがとうございました。母と一緒に感謝しています。
ToCo(トーコ)株式会社について
当社は、認知行動療法や海外の先行事例を基に、不登校の予防と再登校支援サービスを提供する企業です。
代表の子どもが不登校になった経験を発端として、年々増加する不登校の問題、家庭や学校が早期に対応することが難しい現状、そして不登校の予防が各家庭の属人的な努力に委ねられがちになる課題を解決するために、このサービスを立ち上げました。
特徴は、不登校のきっかけではなく不登校が続いてしまう要因について、早期発見・対処することです。導入いただいたご家庭からは、『気づいていなかった子どもの悩みに対処できた』『子どもの自立に繋がっている』とご好評をいただいており、さらに効果的なサービスになるよう日々改善を重ねています。お子様の学校へのストレスや不安を診断することで、皆様の子育ての支援に繋がるよう務めたいと考えております。