学校へ行かない理由を探す子どもへの接し方

こんにちは。再登校支援”トーコ”の竹宮と申します。臨床心理士として10年以上、不登校のご家庭の支援を行ってまいりました。
今回は、「学校への不安は以前より落ち着いてきたように見えるのに、登校が安定しない」「行った日は楽しそうなのに、朝になると体調不良を理由に休みたがる」といったお子さまの様子に、どう向き合えばよいのかについてお話ししたいと思います。

このテーマは、当社の再登校支援の中でもご相談が多い内容です。
保護者の方が丁寧に関わり、子どもの気持ちを尊重してきたご家庭ほど、「なぜここから先に進まないのか」という戸惑いを抱えやすい傾向があります。

これから「学校への不安が少ないのに行けない」状態について、児童心理学と認知行動療法の考え方をもとに整理していきます。
「どうすれば行くようになるか」という即効的な答えではなく、「なぜこの状態が起きているのか」という理解を深めることを目的とします。

目次

「何となく休みたがる」状態が示しているもの

登校できた日は、友達の話をしてくれる。
給食や授業の内容も自然に出てくる。
表情も明るく、学校そのものを強く拒否しているようには見えない。

それにもかかわらず、翌朝になると「お腹が痛い」「今日は休みたい」と言う。
この落差に、違和感や不安を覚える保護者の方もいらっしゃると思われます。

一般的には、「まだ学校への不安が完全には解消されていないのだろう」「無理をさせない方がよい」という解釈がなされやすい場面です。
もちろん、強い不安や恐怖が残っている場合には、その視点が必要になります。

しかし、臨床の現場で丁寧に見立てていくと、「不安が主因ではないケース」が一定数存在します。
学校での出来事や人間関係を振り返っても、明確なストレス要因が見当たらない。
それでも登校が安定しない。
この状態は、「不安の問題」というよりも、「行動のパターンが変化している状態」と捉えた方が理解しやすいことがあります。

不登校が続くことで変化する、親の関わり方

不登校の期間が続くと、親の関わり方は少しずつ変わっていきます。
これは、どのご家庭にも起こる自然な変化です。

最初は、「どうして行けないのか」「何が一番つらいのか」を理解しようとします。
やがて、「今日は行けそう?」「無理しなくていいよ」と、子どもの判断を尊重する声かけが増えていきます。

この関わり方は、子どもにとって大きな安心になります。
「分かってもらえている」「自分の気持ちを大切にしてもらえている」という感覚は、不登校の初期には特に重要です。

ただし、回復の過程が進むにつれて、この関わり方が別の認知につながることがあります。
それが、「登校するかどうかは、その日の状態や理由によって決めてよい」という誤った学習です。

認知行動療法から見る「行動が止まる仕組み」

当社の支援でも重視している認知行動療法では、「感情」「考え」「行動」は互いに影響し合うと考えます。
これは、「気持ちが整えば行動できる」という単純な関係ではない、という意味です。

行動が変わることで、考え方や感情が変化することもあります。
特に子どもの場合、この順番が非常に重要になることがあります。

登校が安定しないお子さまの多くは、「行動の前に、考えや感情を整えよう」としています。
「今日は行けそうか」
「行って意味があるか」
「嫌なことは起きないか」

この確認を毎朝行うことで、行動のハードルは徐々に高くなっていきます。
これは、行かないことで安心できてしまう「回避行動が強化されている状態」を示しています。

「理由があれば休める」という学習の積み重なり

朝、少し体がだるいと感じたとします。
その感覚を言葉にすると、親は心配します。
「それなら今日は休もうか」という判断がなされる日もあります。

この経験が繰り返されると、子どもの中で一つの行動パターンが形成されます。
理由があれば、行かなくてもよい。
理由を示せば、選択を変えられる。

もちろん子どもが怠けているわけでも、親を操作しているわけでもありません。
これは「行動の結果として何が得られたか」が学習されている状態です。

行かない選択をした結果、不安が減った。
家で安心して過ごせた。
この体験が、「行かない方が楽だ」という認知を少しずつ強めていきます。

登校している子どもは「理由を考えて行っている」わけではない

ここで、非常に重要な視点があります。
毎日登校している子どもたちは、「行った方が得だから」「意味があるから」学校に行っているわけではありません。

朝起きて、支度をして、家を出る。
この一連の行動は、ある程度自動化されています。

そして、行ってから一日を過ごす中で、「今日はこんな出来事があった」「こんなことが辛かった」「こういう工夫ができた」のような意味づけをしています。
つまり「行動が先で、認知が後」という状態です。

一方で、登校が安定しないお子さまは、この順番が逆になっています。
意味が見いだせないと動けない。
動く前に納得しようとする。

この違いが、登校の安定性に大きく影響しています。

「甘え」を問題行動として扱わないという視点

「親への甘えで登校が安定しないのではないか」と感じたとき、多くの保護者の方は戸惑います。
甘えを受け止めることは大切だと分かっている。
一方で、このままでは前に進めないのではないかという不安もある。
この二つの気持ちの間で揺れるのは、とても自然なことです。

まず整理しておきたいのは、甘えそのものは問題行動ではない、という点です。
児童心理学の観点では、甘えは「安心できる相手がいること」を前提とした健全な行動です。
むしろ、甘えが全く見られない方が、別の課題を抱えている場合もあります。

ただし、登校が安定しないケースで問題になりやすい特徴は、甘えが「行動を止めるための条件」と結びついてしまうことです。
つらさを伝えれば、行かなくて済む。
理由を示せば、選択を変えられる。
この学習が積み重なると、甘えは行動のブレーキとして機能し始めます。

ここで大切なことは、甘えを減らそうとすることではありません。
甘えと行動の結びつきを、少しずつほどいていくことです。

回避行動が生む行動阻害

嫌な感情や不安を避けるために、行動を控える傾向を誰もが持っています。

登校しないことで、緊張しなくて済む。
家で安心して過ごせる。
結果として、気持ちが楽になる。
この「楽になった」という体験が、回避行動を強化します。

重要な点は、回避行動は短期的には効果があるという点です。
だからこそ、繰り返されます。
しかし、長期的には行動範囲を狭め、「動けない状態」を固定化しやすくなります。

登校が安定しないお子さまの場合、「行かない選択」が不安を下げる手段として機能していることがあります。
この構造を理解しないまま、「気持ちを尊重しよう」「無理をさせないでおこう」という対応だけを続けると、結果的に回避が強化されてしまうことがあります。

感情への共感と、行動の判断を切り分ける理由

ここで必要になる視点が、「共感」と「行動の判断」を切り分けるということです。
これは、当社の支援でも一貫して大切にしている考え方です。

たとえば、朝に「お腹が痛い」と言われたとします。
このとき、「つらいね」「そう感じるんだね」と感情に共感することは、とても大切です。
子どもは、「分かってもらえた」と感じます。

しかし、その感情をそのまま行動の判断材料にすると、「感じたこと=行動を止める理由」になってしまいます。
認知行動療法では、感情は尊重しつつも、必ずしも行動を決めるものではないと考えます。

感情は揺れ動く一方で、行動の全てを決める要素ではありません。
この二つを切り分けることで、「不快な感情があっても行動できる」という経験を積むことができます。

「考えてから動く」状態が続くことの負担

登校が安定しないお子さまの多くは、毎朝「今日はどうするか」を真剣に考えています。
体調を点検し、気分を確認し、学校の予定を思い浮かべる。
一見すると、とても主体的で考えているように見えます。

しかし、この状態は子どもにとって大きな負担になります。
判断するという行為は、エネルギーを使います。
大人であっても決断が続くと疲れてしまうものです。

登校が安定している子どもたちは、この判断をほとんどしていません。
「行くものだから行く」という流れの中で行動しています。
そして、行ってから振り返って意味を見出しています。

認知行動療法では、「行動を先に置く」ことが、結果的に思考や感情を柔らかくすることがあると考えます。
考えすぎて動けない状態から抜け出すためには、考えるべきことと、考えないで動いたほうがよいことを切り分けていく工夫が必要になります。

家で過ごすことが快適である場合

特に、家で自由に過ごすことに魅力を感じやすいお子さまの場合、「行かない選択」は非常に合理的に見えます。
家は安心でき、緊張する場面も少なく、自分のペースを保てます。

この状況で、「学校に行く意味」を問い続けると、答えは出にくくなります。
比較すればするほど、家の方が快適に感じられるからです。

ここで必要なのは、「学校を楽しい場所にしよう」とすることではありません。
比較そのものを減らす視点です。
毎朝の比較を減らし、行動の流れをシンプルにすることが、結果的に登校の安定につながることがあります。

朝の時点では、細かい意味づけや確認を控えます。

登校する。
一日を過ごす。
そして、落ち着いたタイミングで振り返る。

「今日はどうだった?」
「楽しかったこと、逆に大変だったことはあった?」

この順番を守ることで、「動いてから考える」経験が増えていきます。
これは、「行動活性化」と呼ばれる「動くことで、気分や考え方が後から変わる」という行動心理です。

小さな行動を重ねることで、少しずつ「考えすぎなくても動ける」感覚が育っていきます。

親の不安が、子どもの判断を重くすることもある

ここまで読んで、「理屈は理解できるけれど、実際には不安で口を出してしまう」と感じる方もいるかもしれません。
その感覚は、とても自然です。

親の不安が強いと、どうしても確認や声かけが増えます。
その結果、子どもは「まだ不安な理由を探して伝えなくてはいけないのかな」と立ち止まりやすくなります。
親の関わり方も、子どもを取り巻く環境の大きな要素です。

完璧な対応を目指す必要はありません。
多少の揺れがあっても、大きな流れが前に進んでいれば十分です。

将来につながる視点として大切にしたいこと

理由が整わないと動けない。
納得できないと一歩踏み出せない。
この思考の癖は、大人への成長とともに固定化しやすくなります。

一方で、「完全ではなくても動いてみる」「動きながら考える」という経験を積んだ子どもは、柔軟に修正ができます。
失敗しても、やり直せます。
途中で考えを変えることもできます。

これは、特別な能力ではありません。
日々の小さな関わりの積み重ねで育つ力です。

登校が安定しないとき、親は「何が足りないのか」を探しがちです。
しかし、今回お伝えしてきたのは、「足りないもの」を補う話ではありません。

・甘えそのものは問題ではないこと
・行動と認知の順番が登校の安定に影響すること
・行動が感情や考えを変える力を持っていること

「行かない理由を探させ続けていないか」という視点を持つだけで、関わり方は少し変わります。
その小さな変化が、親子双方の負担を軽くし、結果として登校の安定につながることもあります。

焦らず、淡々と、日常を整える。
その姿勢が、子どもの行動と心の両方を支えていきます。

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「学校の話題になると暴れる」「部屋に閉じこもってスマホばかり見ている」「両親の声かけにまったく返事をしない」など様々なご家庭がありましたが、どのケースでも効果を発揮してきました。

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