疲れている子どもを寝かす前に注意すること

こんにちは。カウンセラーの竹宮と申します。

今日は「疲れている子どもを寝かせてあげる時の注意点」についてお話ししたいと思います。

不登校のお子さんを持つ保護者の方から、「この子、最近ずっと寝ているんです」「起こすとかわいそうな気がして」という声をよくいただきます。特に不登校初期、心身が限界まで消耗している子どもにとって、眠りは唯一の安心できる避難場所でもあります。

そのため、寝かせておいてあげたい気持ちは、非常によく分かります。

けれども、長期間にわたり昼も夜も寝続けてしまうと、回復の妨げになることがあるのです。
その背景には、「体内時計」と「ホメオスタシス」という、誰の体にも働いている仕組みが関係しています。

目次

眠りは、量よりも「タイミング」が重要です

子どもが一日中眠っていると、「これだけ寝ているのだから、回復しているはず」と感じるかもしれません。けれども、実際には逆に疲労が抜けにくくなることがあります。

その理由は、「体内時計」と「睡眠の恒常性」がうまく働かなくなるからです。

体内時計とは?

「体内時計(サーカディアンリズム)」とは、身体が24時間周期で活動と休息を調整するために持っている“時間管理システム”のようなものです。朝になれば目が覚め、夜になれば眠くなるのは、この体内時計が働いているおかげです。

このリズムは、光や食事、運動といった外的な刺激によって調整されています。
つまり、昼に光を浴びたり、起きて行動することで、夜に自然と眠れるようになる仕組みです。

ところが、昼間にずっと寝てしまうと、この体内時計が狂ってしまいます。

その結果、夜になっても眠気が来ない → 朝に起きられない → さらに昼に眠る、という悪循環が始まってしまうのです。

ホメオスタシスとは?

もうひとつ注目したいのが「ホメオスタシス(恒常性)」という仕組みです。これは、身体が外的な変化やストレスに対して“元のバランスに戻そうとする力”のことです。
たとえば暑ければ汗をかく、寒ければ震えるなどがその代表例です。

睡眠にもこのホメオスタシスが関係しています。
具体的には、日中に活動することで「睡眠圧」と呼ばれる眠気が蓄積され、それによって夜にしっかり眠れるという仕組みになっています。

つまり、「昼間に起きている」ことが、夜の深い眠りを生み出すカギになっているのです。

しかし、昼も夜も眠ってばかりだと、この“睡眠圧”が貯まらず、浅い眠りになりやすくなります。

寝ているのに疲れが取れない。
朝まで寝ても、すぐに昼寝をしてしまう。
そういった状態の背景には、この恒常性のバランスの崩れがあります。

「疲れているから寝かせてあげたい」の落とし穴

親御さんの「寝かせておけば、少しずつ回復するはず」という判断は、一見正しく見えます。
実際、初期の疲弊した状態では、十分に休ませる必要があります。

ですが、その状態が何日も、何週間も続くと、体は「この生活が基準」と認識してしまいます。

この時点で、体内時計もホメオスタシスも、新しい“非・健康的なリズム”で安定してしまうのです。

そして一度このズレが定着してしまうと、外からの刺激(光、活動、食事)だけでは修正が難しくなります。まるで、「起きたくても起きられない」「眠りたくても眠れない」という感覚になっていきます。

回復には「休息」と「起きるきっかけ」の両方が必要

では、どうすればよいのでしょうか。

答えは、「眠りの質を保ちつつ、体内時計とホメオスタシスを健やかに維持する」ことにあります。

「ベッド」から「ソファ」へ

朝に無理に起こす必要はありません。
しかし、目が覚めたタイミングで、ベッドからソファに移動するだけでも、大きな意味があります。

太陽の光を浴びながら、テレビを見たり、お茶を飲んだりする。
こうした小さな活動が、身体に「今は昼だよ」と教えてくれます。

起き上がれない日でも、せめてカーテンを開けて光を入れる。
そうした環境づくりが、体内時計とホメオスタシスの正常な働きを助けます。

生活リズムが整うと、気力も戻ってくる

私がこれまでに関わってきた子どもたちの中で、「自然と朝に目が覚めるようになった」子には、ある共通点があります。

それは、昼間に“何らかの活動”があることです。

ゲームでも、漫画でも、お菓子作りでもいいのです。
何かしらの形で「覚醒している時間」を日中に確保していくと、体内時計は確実に整っていきます。

そしてその結果、夜に深く眠れるようになります。
深く眠れるようになれば、脳の回復力が高まり、気持ちのエネルギーも少しずつ戻ってきます。

「昼に起きる」をどうサポートするか

不登校のお子さんにとって、「朝起きる」ことは簡単なようでいて、とても難しい課題です。
特に昼夜逆転が習慣化している場合、意思の力だけで改善するのは現実的ではありません。

だからこそ、自然と体が“昼だ”と感じられる環境を、家の中に用意することが大切です。

環境づくりは、生活の一部でいい

特別なルールやスケジュールを作る必要はありません。
むしろ、「これをやらなきゃ」と子どもが感じてしまうと、それがプレッシャーになります。

以下のような“小さな仕掛け”が、体内時計の調整を助けます:

  • 朝、リビングに電気をつけておく(曇りの日は特に効果的)
  • カーテンを少しだけ開けておく(朝の光が自然に入るように)
  • 朝食を軽く用意し、匂いや気配で目覚めやすくする
  • ソファに毛布を置いておき、「ここに座ってもいいよ」と伝える雰囲気を出す
  • 家族が普段どおりの生活をしている様子を、さりげなく伝える

これらはどれも、「起きなさい」と言わずに、体を起きる方向に誘導する方法です。

昼の“起きている時間”が、夜の“深い眠り”をつくる

前半で少し触れましたが、私たちの体には「起きている時間が長ければ長いほど、眠気が強くなる」という特性があります。これが、睡眠におけるホメオスタシス(恒常性)の働きです。

昼間の活動が“睡眠圧”を生み出す

この「睡眠圧」は、日中に体や脳を使うことで高まっていきます。
つまり、日中に少しでも起きている時間があると、夜の眠りの質が上がるということです。

たとえそれがリビングでボーッとしているだけでも、脳は“活動中”として認識します。

だからこそ、「無理に何かをさせる」のではなく、
「起きている状態を少しでも保つ」ことが大切なのです。

こんな行動が、自然に体内時計を整えてくれます

「活動」と言っても、なにも勉強や運動のことを指しているわけではありません。
子どもが「やってもいいかな」と思えるものであれば、それで十分です。

例えば:

  • 好きな漫画を読む
  • 動画を見る
  • ペットと遊ぶ
  • 家族と一言だけ会話する
  • お菓子を食べる
  • ぬいぐるみとごろごろする

このような「軽い活動」が、体内時計にとっては非常に効果的です。
どれも、脳にとっては「覚醒状態」としてカウントされます。

「日中に眠らせない」のではなく、「日中に眠りすぎない」

ここで強調しておきたいのは、「昼に寝かせないようにする」のではなく、
「昼間ずっと眠り続けることを避ける」ことが重要だという点です。

たとえば、午前中に一度起きて、午後に昼寝をするのは構いません。
30分から1時間程度の昼寝であれば、夜の睡眠にそれほど悪影響は出ません。

問題になるのは、昼過ぎから夕方までベッドで深く眠ってしまうことです。
そうなると体内時計が夜型にズレ、睡眠の質も落ちていきます。

ですから、

  • 午前中に一度、ソファで過ごせるよう促す
  • 昼寝をするときは時間を短く(起きたら声をかける)
  • 夕方以降は明るすぎない照明にする

といった配慮が、生活リズムを整える助けになります。

リズムが整うと、自然と「前向きな気持ち」が戻ってくる

私たちはよく、子どもがやる気を出さない理由を「心の問題」と捉えがちです。
けれども、体内時計とホメオスタシスが整っていない状態では、気持ちを前向きにしようとしても、体がついてこないのです。

例えば:

  • 朝に光を浴びる
  • 昼に起きている
  • 夜に深く眠る

この3つが整ってくると、それだけで気分は明るくなりやすくなります。

そして、朝の光を感じることが「今日はちょっと外に出てみようかな」と思える日につながります。

眠りは、体の仕組みに寄り添って調整する

疲れている子どもに「寝かせてあげたい」という親心は、当然の感情です。
ただ、そのやさしさが、結果として“回復を遅らせてしまうこともある”という現実があります。

だからこそ、「体内時計」と「ホメオスタシス」という体の働きを味方につけながら、“眠り”と“起きている時間”のバランスを整える工夫が必要です。

もう一度、ポイントを整理します。

  1. 体内時計(サーカディアンリズム)は、光と活動によって整う
  2. ホメオスタシス(恒常性)は、起きている時間によって眠気を生む
  3. 「昼間にほんの少しでも起きている」ことが、夜の深い眠りにつながる

正しい知識に基づいて、無理なく、焦らず。
それが、子ども自身の力で少しずつ生活を取り戻していくプロセスに繋がります。

不登校の中には、目に見えない疲れや痛みが隠れています。
それを理解しつつも、身体の仕組みに沿った働きかけをすることで、自然と回復の力は動き始めます。

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