不登校の子どもとの対話法

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児童心理司の藤原です。ToCo株式会社の顧問として、不登校問題に向き合うための支援プログラムの開発に携わっています。本記事では、「不登校の子どもとの対話法」をテーマに、具体的な方法と心がけるべき点について深掘りします。不登校に悩む保護者の方がこの記事を通じて、新たな視点やアプローチを得て、子どもとの関係を前向きに構築する助けとなれば幸いです。


目次


第一章:声をかけることの意義と基盤

不登校の問題に直面したとき、多くの親御さんは「どう接したらいいのかわからない」という不安や戸惑いを抱えています。特に、子どもに声をかけることすら怖いと感じ、「何を言えば傷つけないのか」「どこまで踏み込んでいいのか」と悩むケースも少なくありません。しかし、親からの声かけは、子どもの孤独感を和らげ、再び周囲とつながるきっかけを作る重要な役割を果たします。

声をかける行為は、単にコミュニケーションを取るだけでなく、子どもの心に寄り添い、安心感を与えるための大切な行動です。不登校の子どもは、外の世界との接触を断ち、心を閉ざしていることが多いため、親が積極的に「君を見ているよ」「君の味方だよ」というメッセージを伝えることが、第一歩となります。

とはいえ、声をかける際に「学校に行こう」「どうして行けないの?」といった言葉をかけると、逆に子どもを追い詰めてしまうことがあります。そのため、適切な声かけの方法を知り、子どもの気持ちを尊重する姿勢が不可欠です。

親子の会話のイメージ。

声かけの意義

声をかけることが子どもに与える影響は多岐にわたります。

  • 自己存在の肯定感: 「親は自分を気にかけている」と感じられることで、自分の存在意義を再確認できます。
  • 安心感: 自分の感情が否定されることなく受け止められると、不安や緊張が軽減されます。
  • 問題解決の土台: 自分の気持ちを言葉にする過程で、自身の悩みを整理しやすくなります。

これらの感覚が積み重なることで、子どもは親との会話を心地よく感じ、心の扉を開きやすくなります。

声かけの基盤となる姿勢

声をかける際に特に大切なのは、「子どもの感情に寄り添う姿勢」です。ただし、共感を誤った形で示すと、子どもが親に依存しすぎるリスクもあります。適切な共感とは、子どもの気持ちを理解しながらも、次の一歩をサポートする姿勢です。具体的には、以下を心がけましょう。

  1. 子どもの言葉を最後まで聞く: 話を遮らず、全体を理解する努力をしましょう。
  2. 感情を否定しない: 子どもが何を感じていても、それが自然な反応であると受け入れることが重要です。
  3. 前向きな視点を共有する: 子どもの気持ちに共感しつつ、その中に潜む希望を引き出す言葉をかけましょう。

第二章:子どもの感情を理解し受け止める

不登校の子どもたちは、心の中に様々な葛藤や不安を抱えています。それは、「学校に行けない」という結果として表れるだけでなく、日常の中で小さな行動にも影響を与えています。しかし、彼ら自身がその感情を的確に言葉にすることは難しく、親にうまく伝えられないことがほとんどです。その結果、親子の間で誤解やすれ違いが生じ、子どもの孤立感がさらに深まってしまう場合もあります。

このような状況で、親が最初にすべきことは「子どもの感情を深く理解し、受け止めること」です。子どもが何を感じ、何に悩んでいるのかを知るためには、焦らず、根気よく対話を続ける必要があります。重要なのは、子どもが感じていることを「正しい」「間違い」とジャッジするのではなく、そのままの形で受け入れる姿勢を示すことです。

親が「話を聞いてくれる」「自分を責めない」と感じられると、子どもは少しずつ心を開くようになります。

感情を引き出すための声かけ

直接的に「どうして学校に行かないの?」と問うことは、プレッシャーとなる可能性が高いです。その代わり、以下のような柔らかい表現を使うと良いでしょう。

  • 「どんなことが気になっているのかな?一緒に考えよう。」
  • 「学校のこと、もし話したくなったら教えてね。」
  • 「今日の朝はどんな気持ちだった?」

これらの言葉は、子どもに「親は自分の味方だ」と感じさせる効果があります。

【親子の会話例】

親: 「最近、学校に行くのが辛そうだね。朝起きたとき、どんな気持ちだった?」
子: 「お腹が痛かった。」
親: 「お腹が痛かったんだね。何か気になることがあったのかな?」
子: 「宿題を忘れたのが怖くて…」
親: 「宿題のことが気になっていたんだね。教えてくれてありがとう。」

このように、気持ちを丁寧に聞き出し、否定せず受け止めることで、子どもの不安を少しずつ解消できます。


第三章:自己肯定感を高めるための声かけ

不登校の子どもたちは、多くの場合「自分はダメだ」「何をやってもうまくいかない」という自己否定感に苦しんでいます。この自己否定感は、学校生活の中での失敗体験や、親や先生からの無意識のプレッシャーによって強化されることがあります。例えば、友人関係のトラブルや勉強でのつまずきがきっかけで、「自分は他の子より劣っている」と感じるようになり、そこから抜け出せなくなるケースも少なくありません。

子どもに寄り添う母親のイメージ

自己肯定感が低下すると、子どもは「どうせ何をやっても無駄だ」と考え、次第に新しいことに挑戦する意欲を失います。親として、この負のスパイラルを断ち切るためには、子どもの小さな成功や努力を見つけ、それを具体的に認めることが必要です。特に、不登校の子どもにとって「家でできた小さなこと」を褒めることは、自己肯定感を取り戻す大きな一歩となります。

努力を認める具体的な声かけ

どんなに小さな努力でも、それを肯定し、褒めることが大切です。子どもが気付いていない成長や変化を見逃さず、具体的に伝えるよう心がけましょう。

  • 「昨日は自分で起きられたね!すごいよ。」
  • 「今日は少し元気そうだね。きっと自分で頑張ったんだね。」
  • 「自分の気持ちを教えてくれてありがとう。それがすごく大事なことなんだよ。」

このように、行動や気持ちを具体的に認めることで、「自分にもできることがある」という前向きな意識を育むことができます。

【親子の会話例】

親: 「今日はちゃんと朝ごはんを食べられたね。」
子: 「うん、でも学校には行けなかった…。」
親: 「学校に行けなかったかもしれないけど、朝ごはんを食べるってすごく大事なことだよ。それだけでも一歩前進だね。」
子: 「そうかな…?」
親: 「そうだよ。毎日少しずつでいいんだから、一緒に頑張ろうね。」

子どもは親から具体的な努力を認められることで、自信を持ちやすくなります。


第四章:不安を分解する声かけ

不登校の子どもたちが抱える不安は、単純なものではありません。漠然とした「学校が怖い」「友達に会いたくない」という思いの背後には、複数の小さな不安が絡み合っています。例えば、「先生に怒られるかもしれない」「友達に嫌われている気がする」「宿題を忘れたらどうしよう」など、具体的な恐怖が積み重なり、一つの大きな不安として感じられていることが多いのです。

こうした不安をそのままにしておくと、子どもは「自分にはどうしようもない」と感じ、さらに閉じこもってしまう可能性があります。そのため、不安を「分解」して具体的な要素に切り分けることが重要です。一つひとつの要素を明確にし、「何が怖いのか」「どこから始めればいいのか」を子どもと一緒に整理することで、解決への道筋を見つけやすくなります。

不安を分解するためのフレームワーク

「感覚」「思考」「行動」のフレームワークは、親子で不安を整理する際にも役立ちます。例えば、次のように進めます。

  1. 感覚: 「何が怖いと感じる?」(身体や心の反応)
  2. 思考: 「どんなことを考えてしまう?」(頭に浮かぶ具体的なイメージ)
  3. 行動: 「そのとき、どんな行動をとっている?」(具体的な反応や行動)

これにより、不安がより具体化し、解決の糸口が見えてきます。

【親子の会話例:不安を分解する】

親: 「学校に行くのが怖いんだね。どんなところが怖いと思う?」
子: 「先生に怒られるのが怖い…。あと、友達に何か言われるのも嫌だ。」
親: 「そうなんだね。先生に怒られるのと、友達に何か言われるの、どっちが一番辛い?」
子: 「うーん、友達かな…。」
親: 「友達のことが気になるんだね。そこから少しずつ一緒に考えてみようか。」

このように、子どもの不安を分解することで、具体的な対処が可能になります。


第五章:状況に応じた声かけのアプローチ

不登校の原因や背景は、子どもによって大きく異なります。学校生活への恐怖、友人関係のトラブル、家庭内でのストレスなど、さまざまな要因が絡み合っている場合が多いです。また、同じ原因があっても、子どもの感じ方や受け止め方は一人ひとり異なるため、親が適切に対応するためには、子どもの状況を正確に理解し、それに合わせたアプローチを取る必要があります。

例えば、学校生活への恐怖心が強い子どもには、無理に学校に行かせようとするのではなく、少しずつその恐怖と向き合えるような声かけが必要です。一方で、友人関係の問題を抱える場合は、子どもがその経験を整理できるような質問や励ましが有効です。このように、状況に応じた柔軟な対応が、子どもをサポートする上で不可欠となります。

1. 学校生活への恐怖心が強い場合

学校への恐怖心が強い子どもには、無理に克服を促すのではなく、恐怖と少しずつ向き合う機会を作ることが重要です。

  • 「学校のこと、少しだけでも話してくれると嬉しいよ。」
  • 「どんなことが怖かったのか、一緒に考えてみようか?」

2. 対人関係の問題が原因の場合

友達や先生との関係が不登校の原因である場合、子どもの感情を受け止めつつ、自分の気持ちを整理できるよう手助けをします。

  • 「友達と何かあったのかな?どんなことが気になる?」
  • 「話したくなったら、いつでも教えてね。」

3. 親への依存が強い場合

親への過度な依存が背景にある場合は、子どもが少しずつ自立できるよう促します。

  • 「自分でできること、試してみるのはどう?」
  • 「少しだけ挑戦してみたら、できたことを教えてね。」

【親子の会話例1:学校生活への恐怖心が強い場合】

親: 「学校のことを思い出すと、どんな気持ちになるのかな?」
子: 「うーん…怖いし、嫌だ。」
親: 「怖いって感じるんだね。どんなところが一番怖いと思う?」
子: 「先生が怒るのが怖い…。あと、みんなに何か言われそうで…。」
親: 「先生のことと、みんなに何か言われそうなことが気になるんだね。どうしたら少しでも安心できるか、一緒に考えてみる?」
子: 「…うん、ちょっと考えてみる。」
親: 「ありがとう。少しずつでいいから、何でも話してくれると嬉しいよ。」

【親子の会話例2:対人関係の問題が原因の場合】

親: 「最近、学校で何か気になることがあった?」
子: 「友達とうまくいってない気がする…。」
親: 「そっか、友達のことが気になるんだね。どんなことがあったのか、もし話せたら教えてくれる?」
子: 「うーん…〇〇ちゃんとケンカして、仲直りしたけど気まずい…。」
親: 「〇〇ちゃんとケンカしたんだね。仲直りできたのはすごいことだけど、まだ気まずい感じがするんだね。」
子: 「うん…。どうしたらいいかわからなくて…。」
親: 「無理に解決しなくても大丈夫だよ。でも、少しずつ自分の気持ちを伝えてみるのもいいかもしれないね。何か手伝えることがあったら言ってね。」

第六章:声かけを続けることの重要性

不登校の解消には時間がかかることが多く、一朝一夕に状況が変わることはありません。そのため、親が継続的に声をかけ、子どもを支え続けることが大切です。特に、不登校が長期化している場合、親が焦りや苛立ちを感じることもありますが、それを子どもにぶつけてしまうと、逆効果になる可能性があります。

声かけを続けることは、子どもにとって「親はいつでも自分を見守ってくれている」という安心感を与えます。また、継続的な声かけを通じて、少しずつ親子間の信頼関係が深まり、子どもが再び心を開く土台を作ることができます。

母と娘の会話のイメージ

継続的な声かけのポイント

  1. 一貫性を保つ: 毎日ポジティブな言葉をかける習慣を作りましょう。
  2. 小さな変化を見逃さない: 子どもの小さな努力や変化を認めることが大切です。
  3. 否定的な言葉を避ける: 「どうしてできないの?」ではなく、「どこが難しいと思う?」といった前向きな表現を意識しましょう。

【親子の会話例1:小さな変化を見逃さない】

親: 「最近、朝は少し早く起きられるようになったね。」
子: 「うん、でも別に学校に行けるわけじゃないし…。」
親: 「学校に行けることも大事だけど、朝早く起きられるってすごいことだよ。一歩前に進んでいる感じがするな。」
子: 「そうかな…。」
親: 「そうだよ。少しずつでいいんだから、進んでいることを一緒に喜ぼうね。」

【親子の会話例2:否定的な言葉を避ける】

親: 「今日はどうしていたの?」
子: 「ゲームしてた…。」
親: 「そっか、ゲームを楽しんでたんだね。どんなゲームだったの?」
子: 「新しいやつ。少し難しかったけど、クリアできた!」
親: 「難しいのにクリアできたんだ!すごいね。それ、きっと集中して頑張ったからだよ。」
子: 「うん…。」
親: 「その集中力、他のことにも活かせたらすごいと思うな。何か挑戦してみたいことがあったら教えてね。」

第七章:親自身のケアも大切に

第七章:親自身のケアも大切に

不登校のお子さんを支える親御さんにとって、子どもの状況や気持ちを受け止めながら日々を過ごすことは、時に大きな精神的・身体的負担となることがあります。親自身が疲れ切ってしまうと、知らず知らずのうちに子どもへの接し方が硬直的になったり、焦りや苛立ちが子どもに伝わってしまうことがあります。子どもと向き合うためには、まず親自身が心に余裕を持つことが大切です。

親のケアが必要な理由

親がストレスを感じている状態では、子どもの気持ちや行動を冷静に受け止めることが難しくなる場合があります。その結果、子どもに「理解されていない」「責められている」と感じさせる可能性が生じるのです。一方で、親が自分を大切にする姿勢を持つことで、家庭全体がより落ち着いた雰囲気になり、子どもも安心して過ごせる環境が整います。

親自身をケアする姿勢が子どもに与える影響

親が自分を大切にしている姿を見せることは、子どもに「自分も大事にしていいんだ」というメッセージを伝えることにつながります。親が心の余裕を持つことで、子どももリラックスした状態で親との会話や時間を楽しむことができるようになるのです。


結論:声かけは未来を切り開くカギ

不登校のお子さんを支える親の役割は、子どもの心を温かく包み込み、社会とのつながりを取り戻すための架け橋となることです。しかし、その過程は決して平坦ではなく、時間と忍耐が必要です。

声かけがもたらす変化

親の声かけは、子どもの心に響き、孤独感を和らげると同時に、再び自分自身の力を信じるきっかけとなります。たとえ小さな一歩であっても、その積み重ねが子どもの未来を明るく照らす礎となるのです。

親自身も成長する機会として

また、不登校の経験は親自身にとっても、子どもとの絆を深め、自己成長を促す貴重な機会となるでしょう。親も子どもも無理をせず、それぞれのペースで歩んでいくことが、長い目で見て最善の結果を生むはずです。

最後に、本記事でご紹介した声かけの方法や考え方が、少しでもお役に立つことを願っています。焦らず、子どもの心に寄り添いながら、日々の対話を大切にしてください。その積み重ねが大きな一歩となるでしょう。

各章要点必要な行動
声をかける意義と基盤声をかけることは、信頼関係の構築と不登校解消の第一歩。孤立感を和らげ、自己肯定感を高める役割を持つ。子どもの感情に寄り添い、否定せず受け止める。共感を示しつつ、前向きな声かけを続ける。一貫してポジティブな態度を心がける。
感情の理解と受容子どもは感情を言葉にするのが難しいため、親が適切に感情を引き出し受け止めることが重要。プレッシャーを与えない表現が効果的。「どんなことが辛い?」など、柔らかい言葉で感情を引き出す。話を遮らず、最後まで聞き、子どもの気持ちを肯定する。安心感を与える対話を心がける。
自己肯定感を高める子どもは自己否定感を抱きがち。小さな努力や行動を具体的に認めることで、前向きな意識と自己肯定感を育てる。努力を褒める際は具体的に伝える。「朝起きられたね」など、小さな成功体験を認める。結果ではなく過程に目を向け、前向きな変化を励ます。
不安の分解不安は漠然とした大きな塊ではなく、複数の要素から成る。これを分解することで、子どもが具体的に向き合いやすくなる。「どんなところが怖い?」と不安を分解し、具体化する。フレームワーク(感覚・思考・行動)を活用して、一つずつ取り組む。子どものペースに合わせる。
状況別の対応不登校の原因は子どもごとに異なる。学校生活の恐怖、対人関係、親への依存など、それぞれに応じた柔軟な対応が必要。子どもの状況を観察し、適切な声かけを選ぶ。例えば、学校生活への恐怖心が強い場合は無理をさせず、対人関係の問題には感情を丁寧に整理するサポートをする。
声かけの継続声かけの効果はすぐには現れないが、継続することで子どもの心の支えとなる。一貫性と忍耐が重要。日々ポジティブな言葉をかける習慣を作る。小さな変化を見逃さずに認め、前向きな声かけを心がける。否定的な表現を避け、子どものペースに寄り添う。
親自身のケア親が心に余裕を持つことも重要。無理をすると、子どもへの接し方に影響が出るため、自分自身を労る習慣を持つ。一人で抱え込まず、家族や専門機関に相談する。趣味やリラックスできる時間を持つ。同じ悩みを持つ親たちとの交流を通じて孤独感を軽減する。

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不登校を「解決」する、ということ

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目次


ToCo株式会社のCEO、青山登と申します。私たちの会社は、不登校のお子さんやご家庭を支援する活動をしています。

あなたは、不登校を「解決」すると聞いて、どう感じますか?

私の子どもが不登校になった時、「不登校を解決したい」という気持ちは一切起こりませんでした。ただ、「この苦しんでいる状態を何とかしてあげたい」という思いだけがぐるぐると巡っていました。
「不登校を解決する」とは、一見すると「子どもが学校に戻ること」や「学校生活を普通に送ること」を指しているように聞こえます。けれども、不登校という状態を「何かを直す」という視点から見てしまうと大事なものが見えなくなってしまいます。

思い返せば、私は当初、自分の子どもを理解していないどころか、自分自身の行いすら分かっていませんでした。不登校が始まった当初、私は何度も「なぜこうなってしまったのか?」と自分に問いかけました。
今だから分かりますが、答えは実にシンプルで、同時に胸が締めつけられるものでした。問題の大きな原因は、他ならぬ「私自身」にあったのです。

私は当時、子どもの中学入学という大きな環境の変化に対して、親として何一つ向き合えていませんでした。新しい環境でどのような思いをしているのか、学校生活についての話を聞くこともありませんでした。「もう中学生だから、一人でやれるはずだ」と勝手に思い込み、適切なサポートを怠っていたのです。さらに、うまくいかないことがあれば「努力が足りないからだ」と、まるで根性論のような言葉をぶつけていました。その一言一言が、どれだけ子どもの心を傷つけていたのかを考えると、今でも悔やんでも悔やみきれません。

子どもの不登校をきっかけに、私は「親」という存在について深く考え直すようになりました。私は親である以上、子どもを育てる責任があります。しかし、その責任を勘違いしていました。「育てる」とは、子どもに目標を押し付け、親の価値観を無理に伝えることではありません。それは、子どもと共に歩み、共に悩み、共に成長していく過程を共有することなのです。

再登校の支援を通じて多くの家庭から学ぶ

各ご家庭の支援をさせていただく中で、考え方の軸を一つ持つようになりました。
それは、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味は、学校に戻ることではなく、不登校も含めて、子どもが抱える悩みや苦しみを共有し、親子で話し合える関係性を築くことだということです。子どもの状態がどんなものであれ、その存在を受け入れ、共に歩む姿勢こそが大切なのです。

不登校の経験は、私の価値観を変えました。それまでは、学校に通うことが当たり前で、通えない状態が「問題」とみなされる風潮に、無意識のうちに染まっていたのです。しかし、子どもの不登校と向き合う中で、「当たり前」と信じていたものがどれほどの重荷を子どもに背負わせていたのかを知りました。それは、社会や学校、さらには親である私自身の固定観念が作り上げたものに過ぎなかったのです。

ある日、私の子どもがぽつりと口にした言葉がありました。「学校に行けない自分はダメな人間だと思う」。この言葉は、私の胸に鋭く突き刺さりました。学校という一つの枠組みに収まらないことが、なぜ「ダメな人間」へと繋がってしまうのでしょうか?そして、それを子ども自身にそう感じさせてしまったのは、私だったのです。

私は親として無意識のうちに「学校に通うこと」「良い成績を取ること」「ルールを守ること」を絶対的な価値観として子どもに示してしまいがちでした。そして、それが達成できない子どもを見たとき、「努力が足りない」「何かが間違っている」と考えてしまうのです。しかし、本当にそうでしょうか? そもそも「学校に通うこと」や「社会の枠組みに適応すること」が、子ども一人ひとりの幸せを保証してくれるのでしょうか? 

私は、この問いに向き合う中で、「不登校を解決」という言葉自体に対する違和感を抱くようになりました。不登校を「解決する」という表現には、どこか「問題を直す」というニュアンスが含まれています。しかし、不登校は本当に「直すべき問題」なのでしょうか? もしもそれが子ども自身の助けを求めるサインだとしたら、その声を無視して無理やり「直す」ことは、本質的な解決ではなく、むしろ事態を悪化させるだけではないでしょうか。

私自身の子どもとの関係は、不登校という経験を経て大きく変わりました。以前の私は、親として子どもの成長を見守るどころか、自分の理想を押し付け、子どもを「型にはめる」ことにばかり意識を向けていました。しかし、子どもが学校に行けなくなり、心の中に抱えていた悩みを少しずつ打ち明けてくれるようになった時、初めて「親としての本当の役割」を考えるようになったのです。

親の役割とは

親が子どもを育てる目的は、子どもを「成功させる」ことではありません。子どもがどんな状況にあってもその存在を受け入れ、一緒に歩むことです。たとえ学校に行かなくても、将来の進路がどうであっても、子どもが自分自身を肯定できるような関係を築くことが大切なのです。

再登校支援の現場では、さまざまなご家庭の状況や子どもたちの声を耳にします。「親が自分の気持ちを理解してくれない」と感じる子どもがいれば、「子どもにどう接していいのか分からない」と悩む親御さんもいます。どちらの声にも共通しているのは、互いに相手の気持ちを知りたい、理解したいという思いがあることです。しかし、その思いが伝わらないことで、家族の中に深い溝が生じてしまうのです。

大人は時に、自分の方が「正しい」と思い込んでしまいます。特に、子どもが何か問題を抱えているように見えるとき、それを「直さなければならない」と考え、子どもの声に耳を傾ける前に解決策を押し付けてしまうのです。しかし、子どもの気持ちを聞くことなく、一方的に「正しさ」を伝えることは、子どもに「自分の気持ちは無視されている」と感じさせてしまいます。それは、親子の関係を崩壊させる大きな原因になり得るのです。

私の子どもが不登校を経て、少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになったとき、私は子どもの「言葉にできない声」に耳を傾ける姿勢を持つことの大切さに気づきました。子どもは、必ずしも自分の感情や悩みを明確な言葉で表現できるわけではありません。そのため、親である私たちが、子どもの言葉の裏にある本当の気持ちをくみ取ろうとする努力が必要なのです。

私は、ToCoの活動を通じて、これまで以上に多くの家庭や子どもたちを支援していきたいと考えています。そして、その活動を通じて、「不登校を解決する」という言葉の本当の意味を、社会全体に問いかけていきたいのです。不登校という状況が、単なる「問題」ではなく、親子の新たな可能性を見出すための現れであることを、多くの人に知っていただけたらと思っています。

「学校に行けない」の底にあるもの

不登校という状況は、表面的には「学校に行けない」という形で現れます。しかし、その背後には、子ども自身が抱えるさまざまな葛藤や悩みが存在します。親である私たちが本当に向き合うべきなのは、この表面的な「学校に行けない」という事実ではなく、子どもの内面で何が起きているのかを理解しようとする姿勢です。

私の子どもが不登校になった頃、私は「何とかしなくては」という焦りに駆られていました。子どもをカウンセリングに連れて行ったり、無理に学校に行かせようとしたりしました。しかし、これらの行動が子どもにとってどれほどの負担を強いていたのかに気付くのに、時間がかかりました。子どもは、親である私の期待や圧力に押しつぶされそうになっていたのです。

その後、私は無理に何かを変えようとするのをやめました。子どもが話したい時に話を聞き、黙っていたい時にはそっと寄り添うことを心がけるようになりました。すると、子どもは少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになりました。彼が語ったのは、自分がいかに孤独を感じ、誰にも理解されないと思っていたかということでした。そして、その孤独感の大きな原因は、私が彼を「学校に行ける普通の子ども」としてしか見ていなかったことにあると気付かされました。

親は、子どもを「普通」であることに縛りつけてはいけないと考えています。それは、子どもの個性や可能性を否定する行為と同じです。私たちは子どもを「型」に当てはめるのではなく、一人の人間として尊重し、その子どもがどんな人生を歩むべきかを共に考えるべきなのです。その過程で、子どもが学校に行くことが必要だと思えば、それを支援すれば良いですし、別の道を選ぶのであれば、その道を全力で応援することが親の役割だと思います。

不登校は、決して親や子どもの失敗ではありません。それは、これまでのやり方や価値観を見直し、新たな関係を築くためのきっかけです。私たち親がその事実に気付き、子どもと共に前に進む覚悟を持つことができれば、不登校という状況は単なる「問題」ではなく、大きな成長の機会となり得ます。

ToCoを立ち上げた理由の一つは、カウンセラーや児童心理司たちとからの学びを経て、このような視点の大切さを多くの家庭に届けたいという想いがあったからです。不登校に直面するご家庭は、孤独や不安を抱えることが多いです。しかし、同じ経験を持つ人々が繋がり、支え合うことで、その孤独感や不安感は大きく軽減されます。そして、子どもとの関係を一度見直してみることで、子どもにとっての安心できる居場所が増えることを願っています。

私たちは、親としての役割に対する考えを一度見直し、「不登校を解決する」とは何を意味するのかを問い直す必要があります。それは、親子の新しい可能性を見出し、子どもが自分らしく生きられる道を模索するプロセスなのです。ToCo株式会社を通じて、そのプロセスを支援し、多くの家庭が笑顔を取り戻すお手伝いができればと願っています。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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論文紹介:不登校の実情と対応-第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会

不登校の実情と対応-記事の見出し画像

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。今回は、不登校に関する論文、「第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会2023年 教育講演『不登校の実情と対応』(藤田光江著)」をもとに、不登校の実情や対応策について考察を加えながらお話しいたします。この文章では、特に小中学生のお子様が不登校であるお母様に向けて、具体的な視点や助けとなるアプローチをお届けします。


第1章 不登校という現実とその定義

日本では、不登校が子どもたちやその家族にとって深刻な社会的問題となっています。藤田光江氏の論文によると、文部科学省は不登校を以下のように定義しています。

「心理的、情緒的、身体的、または社会的な要因や背景により、児童生徒が30日以上学校を欠席し、登校しない、またはしたくてもできない状況」

さらに、2024年の文部科学省の統計によれば、不登校児童生徒の数は34万6482人に上りました。この数字は、不登校が「特殊なケース」ではなく、「どの家庭にも起こり得る現象」であることを示しています。この認識を持つことが、最初の一歩です。


第2章 子どもの「小さなサイン」を見逃さない

不登校は突然始まるものではなく、多くの場合、小さなサインが積み重なっていく過程があります。藤田氏の論文によれば、不登校の初期徴候として以下のような身体症状が多く見られるとされています。

「学校がある日の朝に頭痛や腹痛を訴える」「朝起きられない」「生活リズムの乱れ」などの身体的な訴え

これらは単なる体調不良ではなく、心理的な負担が身体に現れた可能性を示唆しています。また、藤田氏の分析によると、不登校のきっかけとして、子どもが「先生のこと」「友人関係」「生活の乱れ」「身体の不調」を挙げるケースが多いとされています。

これに対して保護者の方ができる第一歩は、子どもの発言や行動を注意深く観察し、サインを見逃さないことです。例えば、以下のような点に着目してください。

  • 頻繁に体調不良を訴えるタイミングや状況を記録する。
  • 学校や友人関係の話題に対する子どもの反応を観察する。
  • 食欲や睡眠の質が以前と比べて変化していないか確認する。

こうした観察は、子どもが抱える問題を早期に発見するだけでなく、後に専門家へ相談する際の重要な資料にもなります。


第3章 不登校の背景にある複雑な要因

不登校の原因は、単一の要因だけで説明できるものではありません。藤田氏の論文では、以下のような複数の要因が不登校の背景にあると指摘されています。

「心理的要因(自己評価の低下、友人関係のトラブル)」「身体的要因(起立性調節障害、慢性緊張型頭痛、過敏性腸症候群など)」が複雑に絡み合っている

例えば、起立性調節障害により朝起きるのが困難になり、それが学校への遅刻や欠席を引き起こすことがあります。また、慢性緊張型頭痛は、子どもが感じるストレスが頭痛として現れることが多いとされています。

親が最も気をつけるべきなのは、子どもの「仮病」と決めつけないことです。不登校に関連する身体症状は、子どものストレスや不安の「SOSサイン」であり、親がこれを理解し、適切に対応することが子どもを救う第一歩となります。

子どもに寄り添う母親のイメージ

第4章 専門家との連携とその活用法

不登校に直面した場合、保護者がどのタイミングでどこに相談すればよいのか迷うことが多いでしょう。藤田氏は、医療機関や学校のカウンセラー、地域の支援機関との連携の重要性を強調しています。

「初期の段階ではかかりつけ医が身体症状を確認し、器質的な疾患がない場合は心理的要因に着目する」ことが推奨される

また、学校内では養護教諭やスクールカウンセラーとの連携が、不登校の子どもを支えるうえで重要な役割を果たします。もし子どもが学校に行くこと自体を拒否する場合、地域の適応指導教室やフリースクールなどの利用が効果的とされています。

こうした専門家や支援機関を利用する際には、親が「完璧な解決策を求める」よりも、「子どもに合った小さな改善を見つける」姿勢で臨むことが大切です。小さな成功体験を積み重ねることで、子ども自身が少しずつ自信を取り戻すことにつながります。


第5章 支援的対話と子どもへの寄り添い方

不登校の子どもと接するうえで、お母様が果たす役割は非常に大きいものです。藤田氏の論文では、支援的精神療法の重要性が繰り返し強調されています。

「治療者が子どもの悩みや不安を傾聴し、その気持ちを理解しながら、子どもの存在や努力を支持することが基本である」

この姿勢は、お母様にも当てはまる重要な心構えです。具体的には、子どもの言葉を否定せず、批判せず、まずはその気持ちに寄り添うことが求められます。たとえば、次のような対話を心がけると良いでしょう。

  • 子どもが「学校に行きたくない」と言った場合:「そうなんだね。どうしてそう思うのか、話してみてくれる?」と優しく問いかける。
  • 子どもが「先生が嫌い」と言った場合:「先生にどんなことをされて嫌だったの?」と具体的な感情を引き出す。
  • 子どもが「誰にも話したくない」と言った場合:「分かったよ。話したくなったらいつでも言ってね」と受け入れる姿勢を示す。

藤田氏も述べているように、不登校の子どもに「頑張れ」という言葉をかけるのは逆効果になることが多いです。代わりに、「どんな状態でも、あなたは大切な存在だよ」というメッセージを伝えることが重要です。


第6章 行動療法と子どもの自信を引き出すアプローチ

藤田氏の論文では、行動療法の一環として「登校カレンダー」や「頭痛ダイアリー」の利用が挙げられています。

「登校カレンダーは、少しでも登校したらお気に入りのシールを貼る方法で、モチベーションの向上につながる」
「頭痛ダイアリーは身体症状を記録するだけでなく、生活リズムの把握にも役立つ」

これらの方法は、子どもが達成感を得られるような仕組みを作ることが目的です。特に、何らかの形で「成功体験」を積み重ねることが、不登校解決への大きな一歩となります。

これを家庭でも応用する方法として、以下のような工夫が考えられます。

  • 目標の分解:例えば「週1回登校する」という大きな目標を、「朝制服に着替える」「学校まで行ってみる」といった小さな行動に分解する。
  • 成功の視覚化:カレンダーやノートに、できたことを記録し、本人が目で見て成長を実感できるようにする。
  • 子どものペースを尊重:無理に進めるのではなく、子どもが自分の意思で一歩を踏み出せるように環境を整える。
Fig. 1 不登校児・不規則登校児への対応

第7章 親の葛藤と向き合うために

お母様方にとって、子どもの不登校は時に「どうしてうちの子だけが」と感じさせるものかもしれません。ですが、この苦しい状況の中で、お母様ご自身の感情に向き合うことも忘れてはいけません。藤田氏も指摘しているように、不登校の対応では、親が「子どもを治さなければ」という強迫観念にとらわれることで、かえって子どもの状態を悪化させてしまうケースが見られます。

「保護者は子どもの症状を治そうと躍起になるほど、子どもの訴えが強くなることがある」

この状況を避けるためには、親が自身の心を保つための方法を見つけることも重要です。以下のようなアプローチが役立つでしょう。

  • 信頼できる人に相談する:親自身の不安を共有できる友人や家族、専門家の存在が心の支えとなります。
  • 情報収集をしすぎない:不登校についての情報を集めすぎることで、かえってプレッシャーを感じる場合もあります。情報は必要最低限に留めましょう。
  • 自分を責めない:子どもの不登校は親の責任ではありません。この点を強く意識してください。

第8章 不登校に向き合う「長期的視点」

不登校の解決には短期的な成功を期待するのではなく、長期的な視点を持つことが求められます。藤田氏も、不登校解決の目標として次のように述べています。

「最終目標は、子どもが元気になり、打ち込める何かを見つけ、将来社会に出ていくこと」

この言葉は、不登校そのものを「解決」することがゴールではないことを示しています。むしろ、「子どもが自分らしく生きる力を育むこと」が最終的な目標と言えます。

親としてできることは、目先の「学校復帰」にこだわるのではなく、以下のような目標を念頭に置くことです。

  • 子どもが自信を取り戻すプロセスを見守る。
  • 子どもが安心できる環境を家庭内外に作る。
  • 子どもが新しい興味や関心を見つけられるよう支援する。

第9章 おわりに:親と子どもの未来のために

不登校は、一朝一夕で解決する問題ではありません。それでも、親が子どもの変化を受け入れ、小さな一歩を共に歩むことで、未来への扉が少しずつ開いていくのです。藤田氏も以下のように結論づけています。

「不登校は誰にでも起こりうることであり、子どものあるがままを受け止め、支え続けることが重要」

お母様方が子どもと共に過ごすこの時間は、確かに試練の時期かもしれません。しかし、どうか焦らず、子どもの未来を信じて寄り添い続けてください。

参考URL

教育講演-不登校の実情と対応 藤田 光江


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論文紹介:不登校児童生徒の再登校傾向に応じた教師による支援


目次


第一章:はじめに ― 不登校問題と教育現場の挑戦

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私は、ToCo株式会社という学校における不登校予防サービスを提供する企業で顧問を務めております。

不登校という現象は、単に教育の遅れを生むだけではなく、当事者の精神的・社会的な成長にも深刻な影響を及ぼす問題です。それゆえ、この課題をどう乗り越え、当事者を支援していくかは、教育界全体の喫緊の課題であると言えます。

不登校は特定の環境や性格による単純な問題ではなく、多様な要因が複雑に絡み合っています。そのため、対応策も一律ではなく、児童生徒の個別の状況に応じた柔軟な支援が求められます。本稿では、山本奬氏による論文「不登校児童生徒の再登校傾向に応じた教師による支援」[岩手大学大学院教育学研究科研究年報 第8巻 (2024. 3) 159-173]を基に、不登校の児童生徒に向き合うための具体的な知見を共有するとともに、学校現場での実践に役立てていただくことを目的としています。

山本氏の研究は、不登校児童生徒の心理的な状態や再登校に向けた準備段階を、教師の視点から詳細に分析し、支援の在り方を明らかにしたものです。この研究が重要なのは、単なる一般論に留まらず、現場の教師が直面する課題を具体的に掘り下げ、それに応じた実践可能な解決策を提案している点です。本稿では、同論文の内容を詳細に解説するとともに、その知見を教育現場でどのように活用できるのかを議論します。

本稿のまとめ

要点必要な行動
混乱と受容の評価が重要不登校児童生徒の心理状態を「混乱」と「受容」の二軸で評価し、それに基づいた支援を計画する。
受容が高い段階で支援を強化「受容」が高まった児童生徒には、意欲喚起や人間関係の再構築を通じて再登校への準備を進める。
混乱が高い場合は安全基地を提供「混乱」が高い場合は、無理に登校を促さず、保健室や別室など安心して過ごせる環境を整える。
家庭との協力が重要保護者と連携し、児童生徒の心理状態や支援計画を共有しながら、家庭内での支援体制を構築する。
再登校後も持続的支援を再登校後も心理状態をモニタリングし、フォローアップを行うことで再発を防ぐ。
教師間・学校全体で連携を取る支援チームを組織し、学級担任、養護教諭、教務主任が役割を分担しながら児童生徒をサポートする。
外部機関や地域と協力専門家や地域コミュニティと連携し、児童生徒が社会とのつながりを持てるよう支援する。

第二章:不登校児童生徒の多様性と再登校のステップ

不登校の背景には、実に多様な要因が存在します。家族関係の問題、学業の困難、人間関係のトラブル、さらには発達障害や精神的疾患など、その原因は一人ひとり異なります。さらに興味深いことに、不登校の児童生徒がその状況に至る経過も多種多様です。一部の生徒は、特定のトラウマや出来事をきっかけに突然学校へ行かなくなります。一方で、じわじわと学校生活への適応が困難になり、最終的に不登校に至るケースもあります。

山本氏は、不登校の児童生徒が学校に戻るまでのプロセスを「再登校傾向」と呼び、これを測定するための方法論を研究しています。同氏の研究によれば、再登校傾向を正確に評価するためには、以下の二つの心理的因子に注目する必要があるとされています。

  1. 混乱
    児童生徒が自身の不登校状況を認識し、将来への不安や後悔、自己否定的な感情に直面している状態を指します。たとえば、「どうして学校に行けなくなったのだろう」と考えたり、「これからどうなるのか」という恐怖感を抱く状態がこれに該当します。
  2. 受容
    自らの不登校という現実を受け入れ、それに向き合おうとする姿勢を表します。具体的には、「今の自分を認めて、できることから始めよう」と考えたり、前向きな態度を取り戻す段階が含まれます。

この二つの因子は、矛盾しているように見えるかもしれませんが、実際には児童生徒の再登校への道筋において極めて重要な役割を果たします。たとえば、「混乱」が高まり、「受容」が低い場合、児童生徒は不安定な状態にあり、支援を試みても効果が現れにくいことが示されています。一方、「混乱」が高い状態でも「受容」が伴っている場合は、再登校への可能性が高まることがわかっています。

この研究結果は、不登校児童生徒の支援における一つの重要な指針を示しています。つまり、支援を行う際には、児童生徒がどの段階にいるのかを正確に把握し、それに応じたアプローチを選択する必要があるのです。


第三章:再登校傾向を測定するための実践的アプローチ

山本氏の研究では、再登校傾向を測定するための具体的な手法が提案されています。同氏は、多くの教師を対象としたアンケート調査を実施し、不登校児童生徒の心理状態や行動特性を測定するための質問項目を開発しました。その結果、再登校傾向を評価するための14の質問項目が選定されました。

山本氏が提案する14項目の質問
1. 最近、自分の不登校について考えることが多いですか?
2. 将来のことを考えると不安になりますか?
3. 現在の状況について後悔する気持ちがありますか?
4. 「学校に行けていたら」と思うことがありますか?
5. 今の自分を受け入れようとしていますか?
6. 目の前の課題に集中しようとしていますか?
7. 不登校の原因について冷静に考えられるようになりましたか?
8. 自分が学校に戻るイメージを描けますか?
9. 不安なことを誰かに話すことができますか?
10.学校生活に対する興味や意欲が戻りつつありますか?
11. 自分自身について前向きに考えられることが増えましたか?
12. 再登校への計画を少しずつ立てられていますか?
13. 家族や周囲の人々の支えを感じていますか?
14. 将来的な自分の目標について話せるようになっていますか?

これらの項目は、児童生徒の「混乱」と「受容」の度合いを把握するために設計されており、教師が簡便に活用できるよう工夫されています。たとえば、「最近、自分の不登校についてどのように感じていますか?」という質問に対して、5段階評価で回答を求める形式が採用されています。このような評価方法は、児童生徒の心理状態を客観的かつ定量的に把握する上で非常に有用です。

さらに興味深い点は、再登校傾向が「混乱」と「受容」のバランスによって大きく左右されるという発見です。たとえば、「混乱」が低く「受容」が高い児童生徒は、比較的スムーズに学校生活へ戻ることができる一方で、「混乱」と「受容」のいずれも低い場合は、支援の効果がほとんど見られないことが判明しています。この結果は、教師が支援方針を決定する際の重要な指針となるでしょう。


第四章:具体的な支援方法 ― 再登校傾向に基づく実践

不登校児童生徒の再登校支援において、最も重要な点は、「混乱」と「受容」の状態を正確に評価し、それに応じた支援を実施することです。本章では、山本氏の研究に基づき、それぞれの状態に適した具体的な支援方法について詳しく述べます。

1. 「混乱」が高く、「受容」が低い場合

この状態の児童生徒は、自分の不登校について深く考えることを避けているか、問題を認識しつつもその解決に向けた意欲が見られない状況にあります。こうした児童生徒に対して無理に登校を促すことは逆効果になり得ます。むしろ、次のようなアプローチが求められます。

  • 心理的安全基地の提供
    児童生徒が安心して過ごせる環境を整えることが重要です。例えば、保健室や学校内の別室、あるいは家庭での支援が考えられます。この段階では、登校を直接促すのではなく、学校や教育活動に対する恐怖心や抵抗感を和らげることを優先します。
  • 関係構築のための家庭訪問
    教師が児童生徒の家庭を訪問し、保護者と協力しながら信頼関係を築くことが有効です。ただし、この際には児童生徒のプライバシーに配慮し、訪問がプレッシャーにならないよう工夫する必要があります。
  • 自己表現の支援
    児童生徒が自分の気持ちを言葉にすることが難しい場合、絵や日記など、言語以外の手段で感情を表現できる機会を提供します。これにより、混乱の原因を少しずつ明らかにすることができます。

2. 「混乱」と「受容」が共に高い場合

この状態は、再登校への可能性が最も高い段階です。児童生徒が現状を受け入れつつ、内面的な葛藤に直面しているため、教師の適切な介入が大きな成果をもたらします。

  • 積極的な意欲喚起
    学校生活において達成感を味わえるようなタスクや役割を提供します。例えば、学級活動の小さな役割を任せたり、得意な教科の課題を出したりすることで、自信を取り戻す手助けを行います。
  • 目標の共有と段階的な計画作成
    教師と児童生徒が一緒に目標を設定し、それを達成するための具体的な計画を立てます。例えば、まずは週に1回登校する目標を設定し、その後段階的に頻度を増やす方法が有効です。
  • 友人関係の再構築
    児童生徒が信頼できる友人と再び関わる機会を作ります。例えば、グループ学習や校外活動を通じて自然な形で関係を再構築できるよう支援します。

3. 「混乱」が低く、「受容」が高い場合

この段階の児童生徒は、比較的安定しており、再登校が現実的な目標となります。ただし、学校生活への完全な適応には時間がかかる場合もあるため、慎重なアプローチが求められます。

  • 学習支援の強化
    学校での学習に遅れが生じている場合は、補習や個別指導を通じてサポートします。学力の向上は児童生徒にとって重要な自己肯定感の源となります。
  • 日常的な登校習慣の確立
    学校生活に必要なルーティンを再構築します。例えば、登校時間に合わせて家庭で準備を進める習慣をつけたり、短時間の登校から始めて徐々に時間を延ばす方法が効果的です。
  • 自己評価の促進
    児童生徒が自らの成長を実感できるような仕組みを導入します。例えば、達成した目標を振り返る「自己チェックリスト」を作成することで、再登校への自信を育むことができます。

4. 「混乱」と「受容」が共に低い場合

この段階の児童生徒は、再登校に向けた準備が整っていないため、長期的な視点での支援が必要です。この場合、無理に登校を促すのではなく、まず児童生徒の状態を安定させることが優先されます。

  • 専門機関との連携
    心理カウンセラーや医療機関と協力し、児童生徒の心理的問題を専門的にサポートします。学校だけで対応しきれないケースでは、外部の支援が欠かせません。
  • 家庭での支援の強化
    保護者に対して適切な支援方法を指導します。特に、児童生徒の感情に寄り添い、プレッシャーを与えない環境を作ることが重要です。
  • 無理のない交流機会の提供
    学校外のイベントや地域活動など、気軽に参加できる場を通じて、社会とのつながりを徐々に回復させます。
受容が高い受容が低い
混乱が高い[積極的支援段階]
・意欲喚起や目標設定を行い、再登校の計画を具体化する。
・友人関係や教師との関係を再構築する場を提供する。
・自信を育むための小さな成功体験を積ませる。
[不安定支援段階]
・心理的安全基地を提供し、無理に登校を促さない。
・家庭訪問や保護者との連携を強化し、児童生徒の状態を安定させる。
・児童生徒が自分の不安や感情を少しずつ表現できるよう支援する。
混乱が低い[安定した再登校段階]
・学習指導や日常生活のルーティンを整え、学校生活への完全な適応を目指す。
・学校内外での役割や活動を通じて、自己効力感を高める。
・教師間や学校全体で連携し、フォローアップを続ける。
[停滞段階]
・再登校の準備が整っていないため、急激な支援を避け、心理的安全を優先する。
・専門機関と連携し、児童生徒の状態を見極めた上で段階的な支援を開始する。
・家庭での過ごし方や心の安定を支援し、児童生徒が自分の状況を徐々に受け入れる環境を整える。

第五章:教育現場での実践例 ― 山本氏の提言の活用

前章では、不登校児童生徒の心理状態に応じた支援方法について述べました。本章では、それらを実際に教育現場でどのように活用するか、具体的な事例や取り組みを通じて解説します。不登校支援は一人の教師だけで完結するものではなく、学校全体として連携する必要があります。その中で、山本氏の研究がどのように役立つのか、考察を深めていきます。

1. 個別支援計画の作成

不登校児童生徒に対する支援は、個別性を尊重することが何よりも重要です。山本氏の研究を活用することで、再登校傾向を定量的に評価し、それに基づいて効果的な個別支援計画を策定できます。以下はその具体的なプロセスです。

  • 初期アセスメント
    まず、山本氏が提案する14項目の質問を活用し、児童生徒の心理状態を評価します。これにより、「混乱」と「受容」のレベルを客観的に把握します。
  • 支援目標の設定
    児童生徒の状態に応じて、短期的・中期的な目標を設定します。例えば、「毎週1回の登校を目指す」や「まずは友人とオンラインで交流する」といった具体的な目標を掲げます。
  • 支援方法の選択
    前章で述べたように、「混乱」と「受容」の状態に応じた適切な支援方法を選択します。例えば、「混乱」が高い場合は心理的安全基地を提供し、「受容」が高い場合は意欲喚起を行うといった形です。
  • 進捗のモニタリング
    定期的にアセスメントを繰り返し、支援の効果を確認します。必要に応じて計画を見直し、柔軟に対応します。

2. 教師間の連携と役割分担

不登校児童生徒を支援する際、担任教師一人だけでは対応が困難な場合があります。山本氏の提言を学校全体で共有し、役割分担を明確にすることで、支援の質を高めることが可能です。

  • 学級担任の役割
    学級担任は、児童生徒との日常的な関わりを通じて信頼関係を築きます。また、アセスメント結果に基づいて支援計画を策定し、他の教師や保護者と連携します。
  • 養護教諭の役割
    養護教諭は、心理的安全基地を提供する役割を果たします。保健室で児童生徒が安心して過ごせる環境を整え、必要に応じて心理的なケアを行います。
  • 教務主任の役割
    教務主任は、支援計画を学校全体で共有し、教員間の連携を促進します。また、外部機関との調整役を務めることもあります。
  • 学校全体での支援体制の構築
    学校内で「不登校支援チーム」を組織し、定期的にケース会議を開催することで、児童生徒一人ひとりに対する支援を継続的に行います。

3. 家庭との協力関係の構築

不登校の問題を解決するには、家庭との連携も欠かせません。山本氏の研究は、家庭環境が児童生徒の「混乱」と「受容」に大きな影響を与えることを示唆しています。以下は具体的な家庭支援の方法です。

  • 保護者への説明
    山本氏の研究結果を基に、児童生徒の心理状態をわかりやすく保護者に説明します。保護者が現状を正確に理解し、適切な対応ができるようサポートします。
  • 家庭での役割作り
    児童生徒が家庭内で自信を持てるような役割を与えます。例えば、簡単な家事を任せたり、家族との会話を増やす工夫を行います。
  • 登校準備の支援
    朝の準備や通学のサポートを保護者と協力して行います。特に、登校へのプレッシャーを軽減しつつ、少しずつ学校生活への適応を促します。

4. 成功事例から学ぶ

山本氏の研究は、多くの成功事例に基づいています。以下はその一例です。

  • ケース1:中学2年生の男子生徒
    この生徒は、学校生活への不安から不登校になりました。アセスメントの結果、「混乱」が高く「受容」が低い状態であることが判明しました。教師はまず、安全な環境を提供しつつ、少しずつ自己表現を促しました。その後、「混乱」がやや低下し「受容」が高まった段階で、意欲喚起と目標設定を行い、最終的に週3日の登校が可能となりました。
  • ケース2:小学5年生の女子生徒
    この生徒は、「受容」が高く「混乱」が低い状態にありました。教師は、学習支援を強化しつつ、クラスメイトとの交流の場を設けました。その結果、生徒は2か月後に通常の登校を再開することができました。

第六章:不登校支援の長期的視点と未来への展望

不登校問題は、短期間で完全に解決することが難しい場合が多く、支援には長期的な視点が求められます。山本氏の研究に基づくと、児童生徒の再登校傾向を適切に捉えながらも、急激な変化を期待せず、着実に前進するための支援が必要であることが示唆されています。本章では、不登校支援の持続的な取り組みや、今後の教育現場における課題と可能性について考察します。

1. 持続的支援の重要性

不登校は、一時的に学校へ戻ることができたとしても、その後再び登校が難しくなる「再発」が少なくありません。そのため、再登校後のフォローアップや持続的な支援体制が必要です。以下はその具体的な方策です。

  • 再登校後の観察期間
    児童生徒が再登校を開始した後も、定期的に「混乱」と「受容」のレベルを評価し、問題が再燃する兆候を早期に発見します。これにより、再発を未然に防ぐことが可能になります。
  • 段階的な目標設定
    再登校ができたことを「ゴール」とせず、その後の学校生活における目標を段階的に設定します。例えば、「クラスの発表会に参加する」「クラブ活動に加わる」など、児童生徒が新たなチャレンジを楽しめるよう支援します。
  • 心理的サポートの継続
    再登校後も、養護教諭やスクールカウンセラーによる定期的な面談を通じて、心理的な安定を保つためのサポートを続けます。

2. 教育現場における課題

不登校支援を行うにあたり、教育現場にはいくつかの課題が存在します。以下に代表的なものを挙げ、それぞれに対する解決策を検討します。

  • リソースの不足
    教師が不登校児童生徒への支援に割ける時間やエネルギーは限られています。この問題を解決するためには、支援スタッフの増員やToCoの不登校予防サービスなど外部機関との連携が不可欠です。また、教師が利用可能なリソース(マニュアル、研修プログラムなど)を充実させる必要があります。
  • 教師の心理的負担
    不登校支援には、教師自身の心理的な負担が伴います。支援がうまくいかない場合、教師が自責の念を抱くことも少なくありません。この課題に対処するためには、教師同士の連携を深め、困難を共有する機会を設けることが有効です。また、教師自身のメンタルヘルスを支えるプログラムの導入も必要です。
  • 保護者との連携不足
    不登校支援では、家庭との協力が欠かせませんが、保護者との意思疎通がうまくいかない場合もあります。この問題に対しては、保護者向けの説明会やワークショップを開催し、不登校に関する知識や対応方法を共有することが効果的です。

3. 社会全体での不登校支援の推進

不登校の問題は学校だけの課題ではなく、社会全体で取り組むべき問題です。山本氏の研究が示すように、再登校を促進するには、学校外のサポートが重要な役割を果たします。以下はその具体例です。

  • 地域コミュニティとの連携
    地域の支援団体やボランティアグループと協力し、児童生徒が学校外で社会とのつながりを持てるよう支援します。たとえば、学習塾や地域活動への参加を奨励することで、児童生徒の孤立感を軽減します。
  • オンライン学習の活用
    学校に通うことが難しい児童生徒に対して、オンライン学習を通じて学びの場を提供します。特に、コロナ禍以降、オンライン教育の可能性が広がっており、不登校支援にも応用できる領域が増えています。
  • 行政による支援の強化
    不登校支援のための予算を増やし、学校が専門的なリソースを利用できるようにすることが求められます。具体的には、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置を進めるべきです。

4. 山本氏の研究が示す未来への展望

山本氏の研究は、不登校支援の新たな可能性を切り開きました。「混乱」と「受容」という視点を活用することで、児童生徒の心理状態をより正確に捉え、適切な支援を提供することが可能になります。この知見を広く普及させることで、教育現場全体の不登校対応能力が向上すると考えられます。


結論として

不登校支援は、多様な要因と長期的な取り組みを要する複雑な課題です。しかし、山本氏の研究が示す知見を活用することで、教師が自信を持って児童生徒を支援するための具体的な手がかりが得られます。教育現場の皆様が、今回の論文紹介を通じて新たなヒントを得られ、児童生徒一人ひとりの成長を支える手助けとなれば幸いです。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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自閉スペクトラム症と不登校の関係・対処

自閉スペクトラム症と不登校の関係・対処-記事の見出し画像

目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さまをお持ちの親御さんにとって、この状況は決して簡単なものではなく、日々さまざまな思いや葛藤を抱えておられることでしょう。そのような中で、「自閉スペクトラム症(ASD)」という特性が、不登校の背景にどのように関与しているのかを深掘りしながら、適切な対処法についてお伝えできればと思います。

自閉スペクトラム症と不登校の複雑なつながり

自閉スペクトラム症という言葉に触れると、ある種の誤解や偏見が伴うことがあります。しかし、ASDは決して「障害」として固定的に捉えるべきではなく、一人ひとりの異なる特性としての多様性の一環と考えることが重要です。その特性が、学校生活という集団環境において、時として困難さを生むことがあります。不登校はその結果として表面化しているにすぎません。

ASDの子どもたちは、主に以下のような困難を抱えることが多いです:

  • 感覚過敏:教室内の騒音、他人の話し声、蛍光灯の明るさなどが過剰にストレスとなる。
  • 社会的コミュニケーションの課題:友達との会話がうまくいかない、先生の指示の真意が理解しづらい。
  • ルールや予測可能性のこだわり:予定外の変更や、曖昧な指示に対する過剰な不安。

これらの要因が重なり、結果として学校への不安感や拒否感を強めてしまうのです。加えて、「理解されない」という感覚が強まると、自尊心が大きく傷つき、不登校が長期化する可能性が高まります。

保護者としての最初の一歩:気づきと受け入れ

まず親御さんにお伝えしたいのは、ASDの特性に由来する不登校である可能性を冷静に見極めることです。お子さまが学校に行けない理由を探るとき、多くの親御さんは「甘え」「怠け」という観点に目が行きがちです。しかし、ASDの特性が絡んでいる場合、こうした見方は当てはまらないどころか、かえってお子さまを追い詰めてしまう結果になります。

例えば、お子さまが以下のようなサインを見せている場合、ASDの可能性を考慮することが有益です:

  • 朝起きるたびに頭痛や腹痛を訴える:これはストレスが身体的な症状として現れることが多いASDの特徴です。
  • 細かいルールや順序にこだわる:例えば、朝食の順番が違うだけでパニックになることもあります。
  • 学校に行く以前に、準備段階で極度に疲弊する:制服を着る、教科書をそろえるといった日常的な準備が大きなハードルになります。

これらの特性を理解することで、「子どもに何が起きているのか」という視点を持つことができます。そして、お子さまの行動が「学校に行きたくない」ではなく、「行けない」という状態にあることを認識することが、最初の一歩です。

再登校の第一歩を支える親のアプローチ

ASDのお子さまにとって、再登校への道のりは、短期間で解決できるものではありません。ただし、親御さんのサポート次第でそのプロセスが大きく変わることも事実です。重要なのは、以下のポイントを意識したケアを行うことです。

  1. 予測可能性を高める環境作り
    お子さまが安心して日常を過ごせるよう、生活の中で予測可能性を意識的に高めることが大切です。例えば、毎日のスケジュールを視覚的に示したり、事前に次の日の予定を詳しく伝えたりする工夫が有効です。
  2. 小さな成功体験を積み重ねる
    お子さまが「できた」という実感を持つことが再登校への第一歩です。たとえば、登校ではなく、近所の公園に出かけることから始めるのも一つの方法です。その際、無理のない範囲で「ここまでできた」という達成感を味わえる工夫をしてください。
  3. 「励まし」ではなく「具体的なサポート」を
    「頑張って」「行けるよ」という励ましは、ASDのお子さまにとって逆効果になる場合が多いです。代わりに、「今日はランドセルを背負ってみよう」「学校の門の前まで行ってみよう」といった、具体的な行動目標を一緒に考える方が実際的です。
微笑む子どものイメージ

ASD特有のサポートが必要な理由

再登校の支援において、ASDの特性に寄り添ったアプローチが必要不可欠です。フリースクールや特別支援学級などの選択肢も考えられますが、これらはASDのお子さまにとっては慎重に検討すべき場合があります。ASDの特性を持つお子さまは、新しい環境への適応に時間がかかったり、特定の刺激に過敏に反応したりすることが多いため、必ずしもこれらの選択肢がストレス軽減や不安解消に繋がるとは限らないのです。

例えば、フリースクールは自由度が高い反面、活動内容が予測しにくかったり、集団の中での柔軟な対応が求められたりするため、ASDのお子さまにとって混乱や負担を増やす場合があります。また、特別支援学級もASDのお子さま全員に適しているわけではなく、他の特性を持つ子どもとのやり取りが逆にストレスとなることもあります。

そのため、ASDのお子さまには、特性やニーズに応じた個別の支援が適しています。特化したサポートを提供できる専門機関や家庭での計画的な支援の方が、再登校への道をより確実にする可能性が高いと言えます。

不登校が長期化した場合のリスクとその回避法

不登校が長期化することによるリスクは、単に学業の遅れにとどまりません。特に自閉スペクトラム症(ASD)のお子さまの場合、長期間の不登校がさらなる心理的な負担や社会的な孤立感を生む可能性があります。この状態を放置すると、「学校への拒否感」が強まり、再登校へ必要なエネルギー(閾値)が飛躍的に上昇してしまいます。

長期化に伴う主なリスクには以下のようなものがあります:

  1. 自己評価の低下
     ASDの特性を持つお子さまは、もともと自己評価を下げやすい傾向があります。「学校に行けない自分」という感覚が長期間続くことで、「自分には価値がない」「自分は周りと違う」といった否定的な自己イメージが固定化される恐れがあります。
  2. 社会的スキルの発達の遅れ
     学校生活は学業だけでなく、他者との関わり方を学ぶ重要な場です。不登校が続くと、日常的なコミュニケーションの機会が減少し、友達や先生との接し方がますます分からなくなってしまいます。
  3. 新たな心理的問題の発生
     長期間の不登校による孤立感は、さらに不安症やうつ症状を引き起こす可能性があります。特にASDの子どもは感覚的なストレスに敏感なため、孤立による不安がより深刻化しやすい傾向があります。

リスク回避のための親の役割

これらのリスクを避けるためには、親御さんの積極的なサポートが必要不可欠です。具体的には、次のような取り組みを意識してみてください。

  1. 日常生活での「繋がり」を意識する
     たとえ学校に行けなくても、他者と接する機会を意図的に作ることが大切です。親御さん自身が積極的に子どもの話を聞き、共感を示すことも「繋がり」を育む第一歩になります。また、学校の先生との継続的な連携を意識しましょう。
  2. 子どもの「やりたいこと」に寄り添う
     ASDのお子さまは特定の興味や得意分野に没頭する傾向があります。その興味を活かして学びや社会との接点を増やすことができれば、不登校中でも成長の機会を確保できます。例えば、プログラミングやアート、読書など、興味に基づいた学びを家庭内でサポートするのも効果的です。
  3. 早期の専門支援の活用
     ASDを伴う不登校では、親御さんだけで解決しようとするのは難しい場合があります。再登校への具体的なステップについて0から取り組むのではなく、実績のあるToCoのようなプロフェッショナルの力を借りる選択肢も検討ください。支援を受けることで、お子さまが感じる安心感も高まり、親御さんご自身の負担も軽減されます。

ASDのお子さまの感情や思考パターンを理解する

もしASDのお子さまが不登校になった場合、その感情や思考パターンを深く理解することが解決の糸口となります。ASDの特性を持つお子さまの多くは、表面的な行動の裏に繊細で複雑な感情を抱えています。これを理解しないまま表面的な対処に終始すると、かえって逆効果となることも少なくありません。

「行けない」気持ちの背景にあるもの

ASDのお子さまが学校に行けない理由はさまざまですが、主に以下のような心理的な背景が考えられます:

  1. 過去の失敗体験がトラウマ化している
     例えば、授業中に自分だけ答えられなかった、友達とのやりとりで誤解が生じた、先生から厳しい指摘を受けたといった経験が、ASDのお子さまにとって非常に大きなトラウマとなることがあります。
  2. 「完璧にやらなければならない」という思い込み
     ASDの特性上、「こうあるべき」という思い込みが強い場合があります。そのため、ほんの少しのミスや変更で「自分はダメだ」という感覚に陥りやすいのです。
  3. 感覚的なストレスの蓄積
     教室の騒がしさ、体育の時間の匂い、休み時間の喧騒など、通常の子どもにとって気にならない刺激が、ASDのお子さまには大きなストレスとなっていることがあります。

これらの感情や思考パターンを理解することで、親御さんは「なぜ行けないのか」の理由をより正確に把握することができます。そして、これに基づいた具体的な対応策を取ることが可能になるのです。

「行ける」を引き出すための心がけ

ASDのお子さまにとって、再登校への道は段階的なプロセスが必要です。以下の心がけがその助けになります。

  1. 小さな一歩を大切にする
     最初の目標を「学校に行くこと」ではなく、「ランドセルを準備する」「学校の周りを歩いてみる」といった小さなステップに設定してください。その成功を褒めることで、次の一歩へのモチベーションが生まれます。
  2. 感情を否定しない
     お子さまが「怖い」「行きたくない」と言ったとき、その感情を否定せず、「そう感じているんだね」と受け止めることが重要です。それにより、お子さまが安心感を得て、「次はどうすればいいか」を一緒に考えることが可能になります。
  3. 柔軟な学び方を取り入れる
     ASDのお子さまは学校の形態に馴染みにくい場合もありますが、自宅での学びや趣味を通じた知識の吸収には興味を持つことがあります。お子さまの特性や興味を活かした活動(オンライン学習、図鑑での調べ物、実験キットの使用など)を日常生活に取り入れることで、学びの楽しさを実感でき、学校への興味を少しずつ取り戻すきっかけになります。

不登校や自閉スペクトラム症を一緒に乗り越えるためには、まずお子さまを理解し、寄り添い、専門家のサポートを受けながら段階的に取り組むことが大切です。

まとめ

要点必要な行動
ASDは不登校の背景に影響を与える特性があるお子さまの感覚過敏やコミュニケーションの課題を理解し、行動の理由を冷静に見極める。
不登校が長期化すると心理的負担が増大する早期に適切な支援を受け、子どもに無理のない範囲で社会との接点を作る。
小さな成功体験が再登校の鍵になるランドセルの準備や学校周辺を歩くなど、小さな目標を設定し、達成を一緒に喜ぶ。
親の具体的なサポートが重要抽象的な励ましではなく、具体的な行動計画や段階的なステップを共有する。

親御さんにとって、不登校の問題は非常に辛いものかもしれません。しかし、焦らず、正しいステップを踏めば必ず解決への道は開けます。そして、その道を一緒に歩む存在として、私たちToCoがいます。ぜひ、一人で抱え込まずに、いつでも私たちを頼っていただければと思います。不登校の問題に向き合い、解決に向けた一歩を共に歩めることを願っています。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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子どもへの傾聴の意味と難しさ

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目次


不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。不登校のお子さんを抱える保護者の方々にとって、日々の生活の中で「子どもの話をどう聞くか」というのは極めて大きなテーマだと思います。特に、不登校のような状況では、親と子どもの間でのコミュニケーションが希薄になりがちです。「話をしてくれない」「何を考えているかわからない」という声を、私もこれまで何度も耳にしてきました。しかし、だからこそ「傾聴」のスキルが非常に重要となります。

「傾聴」という言葉はよく使われますが、これは単に「耳を傾ける」という行為以上の深い意味を持っています。傾聴の本質は、子どもの言葉に真摯に向き合い、心の中で何が起きているのかを共に理解しようとする姿勢にあります。ここで大切なのは、「受け入れること」と「解決しようとしないこと」です。親として、問題を早く解決してあげたいという気持ちは自然なことです。しかし、傾聴の場では、解決を急がず、ただその瞬間の子どもの感情や考えに寄り添うことが重要なのです。

傾聴が生む信頼関係

傾聴の最大の効果のひとつは、子どもとの間に信頼関係を築くことです。不登校のお子さんにとって、自分の存在や感情が「親にとって重要だ」と感じられる瞬間は非常に貴重です。日々の生活の中で、「どうして学校に行けないの?」といった問いかけが繰り返されると、子どもは自分が問題視されているように感じ、心を閉ざしてしまうことがあります。しかし、「どうしたいと思っているの?」や「最近、どんなことが気になる?」というような、否定や評価を含まない問いかけがあると、少しずつ自分の気持ちを言葉にする勇気が湧いてきます。

これは単に親子関係の改善に留まらず、子どもの内面的な成長にもつながります。自分の気持ちや考えを言葉にするという行為は、対話力や思考力を育む重要なステップです。例えば、「友達と喧嘩したけど、本当は仲直りしたい」「学校に行きたい気持ちと、怖い気持ちが両方ある」といった心情を親に伝えられることで、子ども自身が自分の感情を整理し、前向きな一歩を踏み出すきっかけになるのです。

見過ごされがちな傾聴の価値

多くの方が誤解しているのは、「話を聞いても、何も解決しない」という認識です。確かに、傾聴は直接的な解決策を提示するものではありません。しかし、子どもの内面を理解するための土台を築くプロセスとして、極めて重要です。例えば、子どもが不安を抱えている理由を知ることができれば、その後の対応策を考える際のヒントになります。また、子ども自身が自分の気持ちを言葉にすることで、次第に自己理解を深め、問題解決の糸口を見つけることもあります。

傾聴は、単なる「聞く」ことではなく、親子間の対話の質を高める行為です。これを意識的に実践することで、親子関係に変化が訪れるのは間違いありません。

子どもとの対話のイメージ

子どもへの傾聴が難しい理由

子どもの話を聞くことが重要だと分かっていても、実際に実践するとなると難しさを感じる保護者の方は少なくありません。その背景には、さまざまな心理的・実践的な障壁があります。本章では、特に子どもへの傾聴が難しいとされる理由を、以下の三つの観点から掘り下げて考えていきます。

1. 子どもなりの意見や論理を尊重する必要がある

まず一つ目は、子どもなりの意見や論理を尊重するという点です。親としては、どうしても子どもの言葉が稚拙に思えたり、現実的でないと感じたりすることがあります。「どうしてそんなことを考えるの?」と疑問に思うこともあるでしょう。しかし、子どもの意見を否定したり論破したりすることは、傾聴の本質から外れてしまいます。

子どもが「学校の先生が嫌いだから行きたくない」と言った場合を考えてみましょう。大人から見れば、「先生が嫌いな理由が何なのか」を具体的に聞き出し、その原因を解決すればいいのではないかと思うかもしれません。しかし、このアプローチでは子どもの心に触れることはできません。子どもが本当に伝えたいのは、「自分が感じている違和感や不安を分かってほしい」ということです。そのためには、まず「嫌い」という感情そのものを受け止める必要があります。「嫌だと思うんだね。その気持ち、もう少し教えてくれる?」と問いかけることで、子どもは少しずつ心を開いていきます。

大切なのは、子どもの言葉の背景にある気持ちを理解しようと努めることです。例えその意見が論理的でなくても、そこに至るまでの感情を尊重することで、子どもは「自分の考えを聞いてくれる大人がいる」と感じ、安心感を得ることができます。


2. 親として適切な方向へ育てたいという思い

二つ目の理由は、親としての「正しい方向へ導きたい」という思いの強さです。これは親として当然の感情です。子どもが不登校になったり、社会的なルールから外れる行動を取ったりすると、「このままでは将来が不安だ」という気持ちが強くなるのは無理もありません。そのため、つい「こうすべきだ」「こうあるべきだ」とアドバイスを与えたり、方向性を示したりしたくなります。

しかし、このような指導的なアプローチは、傾聴の場面では逆効果になることがあります。子どもが「もう学校に行かなくてもいい」と言ったとき、親としては「そんなことを言ってはいけない」「学校には行くべきだ」と反論したくなるかもしれません。けれども、こうした言葉は子どもにとって、自分の気持ちが否定されたと感じさせる原因になります。その結果、子どもはさらに心を閉ざし、親との対話を避けるようになるのです。

親の役割は、子どもが安全に自分の気持ちを表現できる環境を整えることです。傾聴の場面では、正解を求めるのではなく、子どもの気持ちや考えに寄り添い、共に考える姿勢を持つことが求められます。


3. 子どもへの甘やかしと混同しやすい

三つ目は、傾聴と甘やかしを混同しやすいという点です。特に日本の文化では、「子どもを厳しく育てることが親の務め」という考えが根強いこともあり、子どもの話を丁寧に聞くことが「甘やかし」だと捉えられることがあります。この認識が、傾聴を実践する上での障壁となることが多いのです。

しかし、傾聴は甘やかしとは根本的に異なります。甘やかしとは、子どもの要求を全て受け入れることや、問題に対して親が代わりに責任を負うことを指します。一方、傾聴は、子どもの気持ちや考えを尊重しつつも、必要な場面では親としての適切なガイドラインを示すことを含みます。例えば、「学校に行きたくない」という言葉を聞いたとき、「行かなくてもいいよ」と安易に答えるのではなく、「そう思うんだね。その理由を教えてもらえる?」と深掘りすることで、子ども自身が自分の考えを整理する手助けをすることができます。

また、甘やかしとの混同を避けるためには、親自身が傾聴の目的を明確に理解することが大切です。傾聴は、子どもの気持ちや考えを受け入れることで、子どもの内面的な成長や自己肯定感を促す行為です。そのため、親が一方的に譲歩するものではなく、子どもの自主性を育むためのプロセスだという意識を持つことが重要です。


傾聴を実践するための具体的な方法

傾聴の重要性を理解していても、「具体的にどうやって実践すればいいのかわからない」というお悩みをよく耳にします。子どもへの傾聴は、大人同士の会話とは異なるスキルを要するため、意識的な準備や練習が必要です。本章では、傾聴を日常で実践するための具体的な方法とポイントについて詳しく解説します。


1. まずは「聞く環境」を整える

傾聴を実践する上で最初に大切なのは、「子どもが安心して話せる環境」を整えることです。環境とは、物理的な空間だけでなく、親子間の心理的な雰囲気も含まれます。以下のような工夫が効果的です。

  • 静かで落ち着ける場所を選ぶ
    テレビやスマホの音が鳴り響くリビングでは、子どもは集中して話すことができません。話を聞くときには、できるだけ静かな場所を選び、子どもと向き合う時間を確保しましょう。
  • 親の態度をフラットに保つ
    子どもが話し始めたとき、驚いたり怒ったりする反応は禁物です。どんな内容でも、「そうなんだね」とまず受け止める姿勢を見せることが大切です。
  • 時間を作る努力をする
    傾聴は、短い時間で済ませるものではありません。忙しい日々の中でも、意識的に子どもと向き合う時間を作ることが必要です。「今ちょっと忙しいから」と話を中断してしまうと、子どもは「自分の話は大したことではないのかもしれない」と感じてしまうことがあります。

2. 子どものペースを尊重する

子どもが話すスピードや内容は、大人にとって物足りなく感じることもあるかもしれません。しかし、傾聴の場では、子どものペースを尊重することが最優先です。子どもが言葉を探しながら話しているときは、焦らずに待つことが大切です。たとえ沈黙が訪れても、それを埋めようとせず、子どもが考える時間を与えましょう。

例えば、子どもが「学校で嫌なことがあった」と話し始めたとします。このとき、「どんなこと?」と急かすのではなく、「そうだったんだね」と応じて、次の言葉を引き出す時間を与えることが効果的です。相手が話すリズムに合わせることで、子どもは「急かされない」「プレッシャーを感じない」と思い、より深い話をしやすくなります。


3. 「聞き方」の技術を身につける

傾聴のスキルには、いくつかの具体的なテクニックがあります。これらを意識的に取り入れることで、子どもとの対話の質が向上します。

  • オウム返し
    子どもが言った言葉をそのまま繰り返すことで、「自分の話がちゃんと聞かれている」と感じてもらうことができます。例えば、子どもが「学校が怖い」と言ったときに、「学校が怖いんだね」と返すことで、相手がさらに深く話すきっかけを作ります。
  • 感情の代弁
    子どもが言葉にしきれない感情を代わりに表現してあげることも有効です。「友達に無視されるのが辛い」と言った場合、「無視されると悲しい気持ちになるよね」と感情に寄り添うことで、子どもが安心感を持ちます。
  • 具体的な質問を避ける
    「どうして?」「なぜ?」といった質問は、子どもにプレッシャーを与えることがあります。代わりに、「そう思ったのはどんなことがあったからかな?」と柔らかく尋ねると、子どもが話しやすくなります。
母と娘の会話のイメージ

4. 親自身の心構えを整える

傾聴を成功させるためには、親自身の心の準備も重要です。特に以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 完璧を目指さない
    傾聴は一朝一夕で身につくスキルではありません。「子どもの話をきちんと聞けなかった」と感じた日があっても、それに後悔ばかりしないで少しずつ改善していく姿勢が大切です。
  • 自分の感情をコントロールする
    子どもの話を聞く中で、親自身が感情的になってしまうことがあります。しかし、傾聴の場では、親が冷静さを保つことが必要です。もし感情が高ぶってしまった場合は、一度深呼吸をしてから話を続けると良いでしょう。
  • 期待を手放す
    傾聴の目的は、子どもに「正しい答え」を導かせることではありません。子どもが自分の感情を表現できる場を提供することそのものが、大きな成果なのです。話を聞く中で何かを得られなくても、「今日はこれで十分だった」と自分を納得させることが大切です。

傾聴がもたらす変化と効果

傾聴を日常的に実践することで、子ども自身だけでなく、親子関係や家庭全体にもさまざまなポジティブな変化が現れます。この章では、傾聴を通じて得られる具体的な効果を三つの観点からご紹介します。


1. 子どもの自己肯定感の向上

傾聴の最大の恩恵の一つは、子どもの自己肯定感を高めることです。自己肯定感とは、「自分は価値がある存在だ」と感じる力であり、子どもの精神的な安定や社会的な適応能力に直結します。特に、不登校や引きこもりの子どもたちは、自己否定感や孤立感を抱えやすい傾向があります。そのような状況で、親が真剣に話を聞いてくれるだけで、子どもは「自分の存在を認められている」と実感し、自信を取り戻すきっかけとなります。

例えば、子どもが「みんなに嫌われている気がする」と話した場合、親が「そんなことはない」と否定するのではなく、「嫌われていると感じるんだね。その理由、教えてもらえる?」と受け止めるだけで、子どもは「自分の気持ちは価値がある」と感じられます。この感覚の積み重ねが、子どもの自己肯定感を徐々に育てていくのです。


2. 親子の信頼関係の強化

傾聴を続けることで、親子の信頼関係がより深く強固になることが期待されます。不登校や引きこもりの問題を抱える家庭では、親子間のコミュニケーションが断絶されがちです。「どうして学校に行かないの?」と問い詰めたり、「もっと頑張りなさい」と励ましたりするアプローチは、子どもにとってプレッシャーとなり、親子間の距離をさらに広げることがあります。

傾聴を通じて、「親は自分を責めたり否定したりしない」「自分の話をちゃんと聞いてくれる」という安心感を子どもが得られるようになると、親子間の信頼が深まります。この信頼関係は、子どもが困難に直面した際に親に相談しやすくなる土台となります。例えば、学校復帰や社会復帰を目指す際にも、この信頼があることでスムーズに進めることができます。


3. 子どもの問題解決能力の向上

傾聴は、子どもが自分で問題解決する力を育む手助けとなります。親が話を聞いてくれる環境の中で、子どもは自分の気持ちや考えを言葉にし、整理することを学びます。この過程は、子どもが自分で問題を解決するための重要なトレーニングとなります。

例えば、「友達とケンカをしてしまった」と話す子どもに対し、親が解決策を提示するのではなく、「どうしたら仲直りできると思う?」と問いかけることで、子ども自身が行動の選択肢を考え始めます。このように、自分の感情を表現し、それをもとに行動を選ぶ力を育むことが、子どもの成長にとって重要です。


傾聴がもたらす「家庭全体」の変化

傾聴は、子どもや親子関係にとどまらず、家庭全体の雰囲気にも影響を与えます。子どもの話を丁寧に聞くことで、家庭内に「安心感」や「理解のある雰囲気」が生まれます。このような家庭環境は、子どもの精神的な安定に寄与するだけでなく、家族全員のストレスを軽減する効果もあります。

例えば、子どもの傾聴を通じて親自身が「子どもの成長を急がず見守る姿勢」を学ぶことができます。また、兄弟姉妹がいる場合、親が傾聴を実践する姿を見せることで、子どもたち同士のコミュニケーションにも良い影響を及ぼします。

仲の良い兄弟のイメージ

傾聴を妨げる障害とその克服法

傾聴を実践したいと考えていても、日々の生活の中でうまくいかないと感じることがあるかもしれません。これは、私たちが傾聴を妨げるいくつかの要因に直面しているからです。ここでは、傾聴を妨げる具体的な障害を三つに分け、それぞれの克服法について解説します。


1. 親自身の感情のコントロールが難しい

親が子どもの話を聞くとき、自分自身の感情が邪魔をすることがあります。例えば、子どもが「学校なんて意味がない」と言ったとき、親としては「何を言っているの?」とイライラしたり、不安を感じたりしてしまうことがあります。このような感情が出てくると、傾聴の基本である「相手を受け止める姿勢」が崩れてしまいます。

克服法:感情を整理する時間を持つ
まず、自分自身の感情を受け止め、冷静になる時間を作りましょう。子どもが話を始めたときに感情が湧き上がるのを感じたら、「ちょっと待ってね」と一呼吸置くことも大切です。また、日常的に自分の感情をノートに書き出すなどして整理することで、子どもとの対話の場面でも冷静さを保ちやすくなります。


2. 子どもが話すことを避ける

子どもが心を閉ざしてしまい、話したがらないことも傾聴の障害となります。特に、不登校や引きこもりの子どもは、「話をしてもどうせ理解してもらえない」と感じている場合があります。その結果、親がいくら話を聞こうとしても、「別に」「何でもない」と言われてしまうことが少なくありません。

克服法:非言語的なコミュニケーションを活用する
子どもが言葉で話すのが難しいときには、非言語的なコミュニケーションを試してみましょう。一緒に料理をしたり、ゲームをしたりする中で、少しずつ子どもが気持ちを表現しやすい状況を作ることができます。また、言葉を引き出すためにプレッシャーをかけるのではなく、「いつでも話したいときに話していいよ」と伝え、子どもが安心感を持てるようにします。


3. 時間やエネルギーの不足

忙しい日常の中で、子どもの話をじっくり聞く時間やエネルギーが取れないことも、大きな障害となります。仕事や家事に追われる中で、「傾聴したい気持ちはあるけれど余裕がない」と感じる親も多いでしょう。

克服法:短い時間でも質を高める工夫
時間が限られている場合でも、少しの工夫で傾聴の質を高めることができます。例えば、家事をしながら子どもと会話をするのではなく、数分でもいいので子どもと向き合う時間を取るようにしましょう。また、疲れているときは、「今日はちょっと疲れているけど、話を聞きたい気持ちはあるよ」と伝えることで、親の誠実さが伝わります。

傾聴の実践例とその成果

傾聴が具体的にどのように効果をもたらすのか、実際のエピソードを交えてお話ししたいと思います。不登校や引きこもりに悩む家庭の中で、傾聴を通じて親子関係が改善した事例や、子ども自身が変化を見せた事例は数多くあります。これらのエピソードを通じて、傾聴の重要性をさらに深く理解していただければと思います。


1. 「何も言わない」子どもの心が動いた瞬間

小学5年生の男の子A君は、不登校が始まってから親とほとんど会話をしなくなりました。母親が「どうしたの?」と尋ねても、「別に」とそっけない返事ばかり。ある日、母親は「どうせ話しても無駄だ」と諦めかけていましたが、児童心理司として私がアドバイスしたのは「何も言わなくても、子どものそばに寄り添う時間を作る」ことでした。
そこで、A君の母親は毎晩A君の部屋に行き、「今日はこんなことがあったよ」と自分の日常を一方的に話す時間を取りました。そして、最後に「あなたの話もいつか聞けたら嬉しいな」とだけ伝えるのを続けました。1か月後、A君が初めて自分から「今日はゲームでこんなに強い敵を倒した」と話し始めたそうです。それを聞いた母親は涙が出るほど嬉しかったと言います。

このエピソードが示しているのは、子どもが話さないときでも親が根気よく安心感を提供し続けることが重要であるということです。「話さない=拒絶」ではなく、子どもにとっては「まだ心の準備ができていない」だけの場合が多いのです。


2. 傾聴がもたらした親子の信頼関係の再構築

中学2年生の女の子Bさんは、学校でのいじめが原因で引きこもり状態に陥っていました。母親はBさんの状況を心配し、「学校に相談したほうがいいんじゃない?」と提案しましたが、Bさんは「そんなことされたら余計に辛い」と怒りをあらわにしました。この時、母親は自分の行動が「子どものためにならない」と感じ、私に相談に来られました。
私は母親に、「まずはBさんが何を考えているのかを徹底的に聞くことに集中しましょう」と提案しました。具体的には、Bさんが自分の部屋から出てきたタイミングで「どうしてそんなに学校が嫌なのか教えてほしいな」と穏やかに話しかけてもらいました。最初は無視されたそうですが、何度か同じことを続けるうちに、Bさんがポツリと「学校が怖い」と言ったそうです。
その言葉を聞いた母親は、「怖いと思うんだね」と繰り返し、それ以上は聞かずにその場を終えました。それから少しずつ、Bさんは学校での出来事や気持ちを話すようになり、半年後には母親と一緒に学校のカウンセラーと相談することに前向きになったのです。

このケースでは、親が解決策を急がず、子どもの感情に寄り添うことが、子ども自身が行動を起こすきっかけとなった好例です。


3. 傾聴を通じて子どもが自分を見つめ直した例

高校1年生のC君は、成績優秀で生徒会長を務めていましたが、ある日突然登校を拒否しました。親は「何があったの?」と詰問しましたが、C君は「疲れた」とだけ言って部屋に閉じこもりました。親としては、学校に行くことが大切だと感じ、C君に「これ以上休んだら取り返しがつかなくなるよ」と説得を試みましたが、逆効果でした。
そこで、私が提案したのは、C君の「疲れた」という言葉を深く掘り下げるための傾聴です。母親はC君に「どうしてそんなに疲れているのかな?」と優しく尋ねるようにしました。最初は「別に」とかわされましたが、「本当に辛いときは話してね」と繰り返し伝えることで、C君が「自分の気持ちを受け入れられる場所がある」と感じ始めました。
1か月後、C君は初めて「もう何も頑張りたくない」と本音を話しました。母親はそれを受け止め、「頑張らなくていいんだよ」と伝えると、C君は涙を流しながら「そう言ってくれてありがとう」と言いました。その後、C君は徐々に自分のペースで日常を取り戻していきました。

このエピソードが示すのは、傾聴は子どもが自分の本音に気づき、受け入れるプロセスを促進する力を持つということです。


最後に:傾聴を続ける価値

ここまで述べてきた通り、傾聴は子どもの心に寄り添い、信頼関係を築き、自分自身の力で前に進むきっかけを作るための強力な手段です。しかし、それは簡単なことではありません。親自身が感情をコントロールし、時間を作り、忍耐強く続ける必要があります。

大切なのは、「完璧を目指さない」ことです。上手に聞けない日があっても、気に病まずに、次の日からまた続ければいいのです。傾聴は一瞬で効果が出るものではなく、小さな積み重ねによって、いつか大きな変化をもたらします。

どうか、今日もお子さんの気持ちに耳を傾ける時間を作ってみてください。たとえ小さな一言でも、それが親子の絆を深める大きな一歩となるのです。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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自信のない子どもの不登校

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目次


はじめに

不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。私はこれまで、多くの不登校や引きこもりに悩む子どもたち、そしてその親御さんたちと接してきました。この問題に直面しているご家庭は、決して少なくありません。お子さんが学校に行けない状況が続くと、親御さんは「何が原因なのだろう」「どうすればまた学校に行けるのだろう」と頭を抱え、場合によっては自分を責めてしまうこともあります。ですが、まず初めにお伝えしたいのは、不登校は決して親御さんだけの責任ではないということです。

今回の随筆では、不登校の背景にある「自信の問題」について焦点を当てながら、親御さんがどのようにお子さんと向き合い、支えることができるかを考えていきたいと思います。なぜ自信を失うと学校に行けなくなるのか、そしてその「自信のなさ」がどのように形成されるのか。それを知ることは、お子さんの気持ちを理解する第一歩となります。

自信のない子どもの特徴必要な対処
周囲からの評価に敏感で、些細な失敗や批判を過剰に気にする。自分を「劣っている」と思い込みがち。否定せず、子どもの感情を受け止める。小さな努力や成功を褒めて、安心感を与える。
他人と自分を頻繁に比較し、「自分には価値がない」と感じる。学校生活や友人関係で孤立を深めやすい。比較ではなく、子どもの個性や得意なことに注目する。家庭内で「そのままの自分でいい」と感じられる言葉をかける。
何事にも挑戦を避ける傾向があり、「どうせ失敗する」と考え、行動力が低下している。子どもが興味を持つことや好きなことを応援し、小さな成功体験を積ませる。プレッシャーをかけず、挑戦をサポートする。
自己否定的な思考が強く、「自分なんてどうでもいい」「家族の迷惑になっている」と思いがち。親が子どもに「あなたの存在が大切だ」と伝える。日常の中で無条件の愛情を示し、親子の信頼関係を深める努力をする。
孤独感を抱えており、「誰にも理解されない」と感じることが多い。心を閉ざしがちで、話す機会や意欲を失っている。子どもの話を否定せず傾聴する。話しやすい環境を整え、無理に答えを求めず、安心して話せる時間を作る。

第1章:子どもの自信とは何か

「自信」という言葉を聞いたとき、皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。明るく、積極的で、何事にも挑戦することを恐れない、そんな姿が思い浮かぶかもしれません。しかし、ここでお伝えしたいのは、「自信」とは決して目立つ行動や結果のことではないということです。むしろ、自信とは、自分を大切に思う気持ち、すなわち「自己肯定感」の土台の上に成り立つものです。

自信を持つということは、「自分には価値がある」「自分はこの世にいていい存在だ」と感じられることです。一方で、自信を失うと、「自分は何をやってもダメだ」「自分なんてどうでもいい存在だ」と思い込んでしまいます。このような心の状態に陥った子どもは、周囲の評価や出来事に対して非常に傷つきやすくなります。例えば、クラスで失敗をしたり、友達から何気ない一言を言われただけで、「やっぱり自分が悪いのだ」と感じてしまいがちです。こうした思考の積み重ねが、次第に学校そのものを拒絶する原因となるのです。

ある小学生の男の子が、こんなことを言っていました。「僕は学校に行くのが怖い。みんなが僕を笑っている気がするし、何か失敗したらまた怒られるから」。彼の言葉から伝わってくるのは、自分への強い不信感です。「どうせ僕なんて」と自分を否定する思いが、自信のなさをさらに深め、不登校という形で表れているのです。

子どもが自信を失う背景

では、子どもがなぜ自信を失ってしまうのでしょうか。それには、いくつかの原因が考えられます。大きな要因の一つは、「自己否定的な経験の積み重ね」です。例えば、学校生活の中でテストの点数が思うように取れなかったり、運動が苦手で体育の授業で目立ってしまったり、友達とうまく話せず孤立してしまったりすることがあります。これらの経験が繰り返されると、子どもは「自分はできない」「自分には価値がない」と思い込むようになります。

また、家庭環境も重要な要素です。親御さんが子どもを褒める機会が少なく、何気なく口にした否定的な言葉が子どもの心に深く刻まれることがあります。例えば、「どうしてこんなこともできないの?」「もっと頑張りなさい」という言葉は、親御さんの愛情の裏返しである場合が多いですが、受け取る側の子どもにとっては「自分はダメなんだ」と感じる原因になることがあります。

さらに、現代の子どもたちが置かれている環境も一因です。SNSなどを通じて、他人と自分を比較する機会が増えています。「あの子はこんなに優秀なのに、自分は何もできない」と感じ、自己否定を繰り返す子どもたちも少なくありません。こうした環境の中で、子どもたちが自信を失っていくプロセスは、親御さんが想像する以上に複雑で深刻なものです。

人間関係が自信を揺るがす要因

不登校の背景にある問題として、人間関係が大きな割合を占めています。学校という場所は、子どもたちにとって社会の縮図のような場です。そこでは友達とのつながりや、教師との関係性が日々の生活に大きな影響を与えます。しかし、子どもが自分に自信を持てない状態でいると、この人間関係の中で傷つきやすくなり、不登校につながるケースが少なくありません。

例えば、ある中学生の女の子が「友達の輪に入れない」と相談してきたことがありました。彼女は非常に繊細で、友達が楽しそうに話している中に自分が加わると、「私が入るとみんながつまらなくなってしまうのではないか」と感じてしまいます。その結果、自分から話しかけることを避け、友達からも「話したくないのかもしれない」と誤解され、次第に孤立してしまいました。こうした誤解や行き違いが積み重なり、彼女は「どうせ自分は誰からも必要とされていない」と考えるようになり、学校に行くことをやめてしまいました。

学校生活では、他者との比較が避けられない場面がほとんどです。「勉強ができる子」「運動が得意な子」といったクラス内での評価軸が自然と生まれる中で、子どもたちは「自分はその軸において劣っている」と感じることがあります。例えば、体育の時間に苦手な運動をクラス全員の前で披露しなければならない場面があると、「みんなはできるのに、どうして自分だけできないんだろう」と思い、深い恥ずかしさや自己嫌悪を抱いてしまうことがあります。

さらに、子どもたちは大人よりも他人の視線や評価に敏感です。「友達にどう思われているのか」「自分はこの集団の中でどんな存在なのか」といった不安を常に抱えながら生活しています。この不安が過剰になると、ちょっとした言葉や態度で深く傷つき、「自分はここにいてはいけない存在だ」と思い込むこともあります。このような気持ちの積み重ねが、最終的に学校に足を運ぶことを避けるきっかけとなるのです。

親が果たすべき役割:自信を育む言葉と態度

人間関係の問題が子どもの不登校の大きな要因であるとすれば、親としてどのように子どもに働きかけることができるのでしょうか。ここで鍵となるのは、「そのままの子どもを認める」という親の姿勢です。

まず重要なのは、子どもがどんな状況でも「無条件で愛されている」と感じられる環境を作ることです。不登校の子どもたちと話していると、「親に申し訳ない」「自分は家族の迷惑になっている」と感じているケースが非常に多いです。このような感情が、さらに自分を追い詰める原因となります。ですから、親御さんが「学校に行けないあなたでも大丈夫」「あなたはそのままで価値がある」と伝えることが、子どもの心を軽くする第一歩となります。

例えば、子どもが学校に行けずに家で過ごしているとき、親御さんが「どうして学校に行かないの?」と問い詰めるのではなく、「今日はどんなことをして過ごしたの?」と穏やかに話しかけるだけで、子どもは安心感を得ることができます。親が子どもの行動や選択を批判するのではなく、受け入れる姿勢を見せることで、子どもは「自分はここにいていい」と感じられるようになるのです。

また、日常の中で子どもを褒める機会を意識的に増やすことも大切です。例えば、子どもが料理を手伝ってくれたとき、「上手にできたね、ありがとう」と声をかけることで、「自分は役に立っている」という感覚を育むことができます。このような些細なやりとりが、子どもの自己肯定感を支える重要な要素となります。

ただし、ここで注意したいのは、「褒める」ことが子どもにプレッシャーを与えないようにすることです。例えば、成績が良かったときに「次も頑張って」と言うと、子どもは「頑張らなければ認められない」と感じることがあります。そうではなく、「よく頑張ったね」とその時点での努力を認める言葉がけを心がけましょう。

第2章:家庭環境が子どもの自信に与える影響

家庭は、子どもが最も長い時間を過ごす場所であり、親は子どもにとって最も近い存在です。そのため、家庭環境は子どもの自己肯定感や自信に直接的な影響を与えます。ここでは、家庭の在り方がどのように子どもの心に影響を及ぼすのか、そして親が具体的にどのように対応できるのかを考えていきます。

子どもが自己否定を感じる家庭環境とは

私がこれまで関わってきた不登校の子どもたちの中には、「家の中ではいつも否定されているように感じる」と語る子が少なくありません。もちろん、親御さんは決して悪意を持ってそうしているわけではなく、むしろ子どもに良かれと思って言ったことが、子どもには違う形で伝わってしまうことがあります。

例えば、次のような言葉は、親としては子どもの成長を願う一心で発したものであっても、子どもにとってはプレッシャーや否定と受け取られる場合があります。

  • 「どうしてこんな簡単なこともできないの?」
  • 「お兄ちゃん(お姉ちゃん)はもっと頑張っていたよ」
  • 「学校に行かないで家にいるなんて情けない」

このような言葉を聞くたびに、子どもは「自分はダメな存在だ」「自分には価値がない」と感じるようになります。特に、「他人と比較される」ことは子どもの自己否定を深める大きな要因です。「自分は誰かより劣っている」という意識が植え付けられると、子どもは何をするにも「どうせ自分はダメだ」という思考に囚われるようになります。

また、家庭内で親が忙しさやストレスから子どもとのコミュニケーションを取る時間が減ると、子どもは「自分は親にとって重要ではないのかもしれない」と感じることがあります。親が一生懸命働いて家族を支えていることは子どもも理解していますが、それでも「自分が受け入れられていない」と感じる環境は、子どもにとって深い孤独感を生む要因となります。

自信を育む家庭環境を作るために

では、親としてどのような家庭環境を作れば、子どもの自信を育むことができるのでしょうか。ここで重要なのは、「子どもが自分は大切にされている」と感じられるような接し方を心がけることです。以下に、実践的な方法をいくつか挙げます。

1. ありのままの子どもを受け入れる

子どもが失敗したり、間違えたりしたときに、それを責めるのではなく受け入れる姿勢を見せることが大切です。例えば、テストの点数が悪かったとき、「なんでこんな点数なの?」と責めるのではなく、「次はどうすれば良くなるか一緒に考えよう」と建設的な話し合いをすることで、子どもは「自分の努力を認めてもらえている」と感じます。

2. 比較ではなく、その子自身を見つめる

兄弟姉妹や同級生と子どもを比較するのではなく、子ども自身の成長に目を向けることが重要です。例えば、「あなたは〇〇が得意だね」とその子の長所に焦点を当てることで、「自分には良いところがある」と思えるようになります。

3. 子どもの話をしっかり聞く

忙しい日々の中でも、子どもの話に耳を傾ける時間を作ることは、子どもが「自分は親にとって重要な存在だ」と感じるために必要不可欠です。たとえ短い時間でも、テレビやスマートフォンを一旦手放して、子どもの目を見て話を聞くことが効果的です。

4. 肯定的なフィードバックを与える

子どもが何かに挑戦したり、小さな成功を収めたときには、「すごいね」「よく頑張ったね」と肯定的なフィードバックを与えましょう。このような言葉をかけることで、子どもは自分の行動に自信を持てるようになります。

5. 家庭内で安心できる雰囲気を作る

家庭は子どもにとって「安全基地」であるべき場所です。親が子どもの存在を否定せず、安心して過ごせる雰囲気を作ることが、子どもの心を支える土台となります。


第3章:親子の対話が育む「自信」:具体的なコミュニケーション方法

不登校の子どもが自分を否定する気持ちから抜け出し、自信を少しずつ取り戻すには、親子の対話が非常に重要です。ここでは、具体的にどのように子どもと向き合い、対話を深めていけばよいのかを、実例を交えて考えていきます。

対話の基本:否定せず、受け止める

不登校の子どもとの会話で最も大切なのは、「否定しない」ことです。子どもは学校に行けない自分をすでに責めている場合が多く、そこにさらに親からの否定的な言葉が重なると、心の逃げ場を失ってしまいます。子どもにとって、親は最後の味方であってほしいのです。

例えば、こんな会話を想像してみてください。

子ども:「学校に行きたくない。」
親:「なんで行かないの?そんなことじゃダメだよ。」

この親の言葉には、愛情が含まれているかもしれませんが、子どもにとっては「自分の気持ちを否定された」と感じる可能性が高いです。子どもは、親が自分の本音を理解してくれないと感じると、心を閉ざしてしまいます。

一方で、次のような対応を取るとどうでしょうか。

子ども:「学校に行きたくない。」
親:「そうか。学校が嫌だと思うくらい辛いんだね。」

この言葉には、子どもの感情をそのまま受け止める姿勢が含まれています。親が否定せずに子どもの言葉をそのまま受け止めることで、子どもは「自分の気持ちは大丈夫なんだ」「この人は話を聞いてくれる」と感じ、次の言葉を話しやすくなります。こうした小さな積み重ねが、子どもとの信頼関係を深め、自信を回復する土台となるのです。


傾聴の力:子どもの言葉を引き出す

不登校の子どもたちと接する中で感じるのは、彼らが自分の気持ちを言葉にすることの難しさです。彼らは「どうせ話しても分かってもらえない」と思っていたり、「自分の気持ちをどう表現すればいいのか分からない」と感じていたりします。そのため、親としては、子どもの言葉を引き出すための工夫が必要です。

1. 子どものペースに合わせる

子どもが何かを話し始めたら、途中で口を挟まず、最後まで聞くことを心がけましょう。例えば、子どもが「友達に嫌なことを言われた」と話したとき、すぐに「どんなこと?それでどうしたの?」と矢継ぎ早に質問すると、子どもはプレッシャーを感じてしまうことがあります。子どもの話のペースに合わせ、「そっか、それは嫌だったね」と共感を示すだけでも十分です。

2. 言葉に詰まったときは手助けをする

子どもが自分の気持ちを言葉にできないとき、「それって悲しい気持ちだった?それとも怒りの方が強かった?」といった具合に、いくつかの選択肢を与えることで、子どもの感情を整理する手助けができます。無理に言葉を引き出そうとせず、「話したいときに話してくれていいよ」と伝えることで、安心感を与えることも大切です。

3. 身近な話題から始める

「学校のことは話したくない」と感じている子どもには、まず日常の些細な話題から会話を始めるとよいでしょう。例えば、「今日は何時に起きたの?」「最近、好きなアニメとかある?」といった軽い質問がきっかけで、少しずつ心を開いてくれることがあります。子どもが安心して話せる場を作ることが、深い話題に進むための第一歩です。


③「解決」を急がない姿勢の重要性

親は子どもの不登校を「何とかしなければ」と考えがちです。それ自体は親として自然な感情ですが、解決を急ぐあまり、子どもに「早く学校に戻ることが正しい」とプレッシャーをかけてしまうことがあります。不登校の解決には、何よりも時間が必要です。焦らずに子どもを見守り、ゆっくりと変化を待つ姿勢を持つことが大切です。

例えば、ある中学生の男の子は、親が「いつになったら学校に行けるの?」と毎日尋ねてくることが負担になり、部屋に閉じこもってしまいました。しかし、親が「学校のことは気にしなくていいから、まずは一緒にご飯を食べよう」と声をかけるようになってから、少しずつリビングに出てくるようになりました。このケースでは、親が「学校に行くこと」ではなく「家庭内での安心感」を優先したことが功を奏したのです。


このように、親子の対話は子どもが自信を回復するための重要な鍵です。否定せずに受け止め、子どものペースに合わせて話を聞くことで、子どもは「自分の気持ちは大丈夫なんだ」と感じられるようになります。解決を急がず、子どもが話しやすい環境を作ることが、不登校という問題を乗り越える第一歩となります。

第4章:不登校期間中に家庭でできる具体的な取り組み

不登校の子どもにとって、家庭は最も安心できる場所であると同時に、自分を取り戻すための再出発の場でもあります。不登校期間中、親としてどのように家庭で子どもと向き合い、サポートを続けていけばよいのでしょうか。この章では、不登校期間中に家庭で実践できる具体的な取り組みについて詳しくお伝えします。


日常生活のリズムを整える

不登校が続くと、子どもが夜更かしをしたり昼夜逆転の生活に陥ったりすることがあります。しかし、生活リズムの乱れは、心身の健康に影響を及ぼすだけでなく、気持ちの不安定さを助長することがあります。家庭でまず心がけるべきは、無理のない範囲で日常生活のリズムを整えることです。

例えば、朝起きる時間を親が少しずつ調整していくことで、自然と朝型の生活へと戻していくことができます。ただし、「明日から早起きしなさい」というように一気に変えようとするのは逆効果です。子ども自身のペースを尊重しながら、「今日は昨日より30分だけ早く起きてみよう」と小さな目標を立てると良いでしょう。また、朝起きたときに「おはよう」と笑顔で声をかけることも、子どもの気持ちにポジティブな影響を与えます。

さらに、朝食や昼食を一緒に取ることは、親子のつながりを感じられる大切な時間です。食事の場をリラックスした雰囲気に保ち、学校や将来の話題を避けながら、子どもの好きな話題で会話を楽しむことで、家庭が安心できる居場所となります。


子どもが好きなことを応援する

不登校期間中、子どもが何か好きなことや興味を持つことに集中できる時間を与えることは、自己肯定感を回復させる上で非常に効果的です。「学校に行かないのだから勉強をしなければ」というプレッシャーをかけるよりも、まずは子どもが心から楽しめる活動を見つけ、それを応援する姿勢を持ちましょう。

例えば、ゲームやアニメが好きな子どもに対して、「そんなことばかりしていてはいけない」と否定するのではなく、「どんなところが面白いの?」と興味を持って話を聞いてみるのも一つの方法です。こうした会話の中で、子どもの趣味や興味を共有することで、親子の絆が深まり、子どもは「自分が好きなことを親が認めてくれる」と感じられるようになります。

ある不登校の男の子は、絵を描くことが好きでした。最初は親に見せることを恥ずかしがっていましたが、親が「見せてくれてありがとう。すごく上手だね」と言葉をかけ続けた結果、彼は次第に自信を持つようになり、イラストをSNSに投稿するようになりました。最終的には、同じ趣味を持つ友達とつながり、自ら外の世界に目を向け始めたのです。このように、子どもの好きなことを尊重する姿勢が、新たな人間関係や活動へのきっかけになることもあります。


学校との関係を保つ工夫

不登校期間中であっても、学校とのつながりを完全に断ち切るのは避けたほうが良いです。ただし、子どもにとって負担にならない形で、学校と適度な距離を保ちながら関係を続けることが大切です。

例えば、定期的に担任の先生と連絡を取り、学校でのイベント情報や授業の進捗状況を共有してもらうことが考えられます。ただし、この情報を子どもに無理に伝える必要はありません。子どもが興味を示したときに、自然な形で話題を提供するのが理想的です。

また、学校に直接足を運ぶことが難しい場合でも、オンライン授業やビデオメッセージなどを活用して、学校の雰囲気を少しずつ感じられる機会を作ることも効果的です。特に最近では、不登校の子どもをサポートするためのオンライン学習ツールや相談窓口が増えてきています。親がこうしたリソースを積極的に調べ、子どもに選択肢を提示することで、新たな一歩を踏み出す手助けができるでしょう。


親自身の心のケアも忘れずに

不登校の問題に直面している親御さんは、時に大きな不安や孤独感を抱えることがあります。子どもを支えようとする一方で、自分の心を置き去りにしてしまうことも少なくありません。しかし、親が心身の健康を保つことは、子どもを支える上で不可欠です。

親自身がリフレッシュするための時間を持つことや、同じ悩みを抱える親同士のコミュニティに参加することを検討してみてください。例えば、不登校の子どもを持つ親の会やオンラインフォーラムでは、共感し合いながら具体的なアドバイスを得ることができる場合があります。

また、専門家のカウンセリングを受けることも有効です。親が安心して話せる場を持つことで、子どもの問題に対しても冷静に向き合えるようになるのです。


最後に

不登校期間中は、子どもだけでなく、親にとっても試練の時間です。しかし、家庭が安心できる場所であり続けることで、子どもは少しずつ自信を取り戻し、未来に向けた一歩を踏み出す準備を整えることができます。生活リズムの見直し、子どもの興味を尊重する姿勢、学校との適切な距離感の保ち方など、親が日々できる取り組みを続けることで、不登校の問題を乗り越える可能性が広がります。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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いじめに苦しむ子どもに選択肢を

いじめに苦しむ子どもに選択肢を与えよう-記事の見出し画像

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不登校や引きこもりの問題に取り組む、児童心理司の藤原と申します。
いじめがなぜ起きるのかを考えるとき、子どもの性格や家庭環境を分析することも一つの方法ですが、これだけでは問題の全体像を捉えることはできません。いじめは、学校という特異な環境がもたらす構造的な問題でもあるのです。そして、仕組みを知ってこそ、子どもに対してどう支援すべきかも見えてきます。

第一章:いじめはなぜ起きるのか――学校の構造的問題

学校という閉じられた社会

まず理解しておかなければならないのは、学校が非常に閉鎖的な環境であるという点です。
教室やクラスという単位は、子どもにとって小さな社会そのものであり、そこでは独自の「空気」が支配しています。例えば、「誰と付き合うべきか」「誰と付き合ってはいけないか」といった暗黙のルールや、「強い立場の子どもが支配する」という力学が生まれやすい環境です。

このような空間では、子どもたちが大人のように問題を客観視し、冷静に対応することは難しいものです。成長途中の感情や価値観の中で、いじめという行動が一部の生徒たちの中で「正当化」されてしまうことが少なくありません。

人間関係の固定化

学校では、席替えの頻度やクラス替えの有無によって人間関係が固定化される場合があります。例えば、1年間同じメンバーで同じ教室に通い、席の移動がほとんどない環境では、いじめられる子どもにとって逃げ場がありません。さらに、学区に学校が1校しかない場合、転校という選択肢も現実的ではないため、逃げることができない状況に追い込まれます。

子どもが人間関係の問題を抱えた場合、「新しい環境でやり直す」という選択肢が少ないという点も、学校環境の構造的な欠陥といえるでしょう。

悩む生徒の画像

学校側の意識と対応の限界

最近では、いじめに対する学校側の意識が改善されつつあります。文部科学省のガイドラインに基づき、学校側がいじめの早期発見に努めたり、対応マニュアルを整備している場合も増えています。

しかし、現場では多忙を極める教師が十分に対応できないという現実もあります。教師は授業の準備や保護者対応、部活動の指導など、多岐にわたる業務を抱えており、いじめ問題に割ける時間やリソースが限られているのです。このような事情から、学校側がいじめを「発覚した後に対応する問題」として扱ってしまうケースもあることを理解しておく必要があります。

第二章:親が果たすべき役割――選択肢を増やすことの重要性

では、このような構造的な問題を抱える学校の中で、親としてどのように子どもを守れば良いのでしょうか。答えの一つは、子どもに「選択肢」を与えることです。

人が追い詰められるとき

人間が精神的に追い詰められるのは、選択肢がないと感じたときです。
いじめを受けている子どもにとって、学校という場が唯一の社会である場合、そこから逃げることは「自分の人生すべてを捨てる」ように感じられることがあります。このような状況では、登校することが精神的な限界を超える負担となり、不登校という形で子どもが自分を守る行動を取るのです。

しかし、親が子どもに「他の選択肢がある」と伝えることで、この絶望感を和らげることができます。実際にはハードルがあったとしても、例えば、転校、フリースクール、ホームスクーリング、オンライン学習といった多様な選択肢を一緒に検討だけで、子どもの閉塞した思いを広げることができます。

子どもと一緒に考える

選択肢を提示する際、親が一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に考えることが重要です。「どんな学校なら通えそう?」「どんな場所なら安心できる?」といった質問を通じて、子どもの声に耳を傾けることで、子ども自身が自分の未来について考えるきっかけを作ることができます。

また、子どもが「この学校を辞めたい」「転校したい」と言った場合、それを否定せず、冷静に受け止めることも大切です。親が子どもの言葉を信じて行動することで、子どもは「自分は守られている」と感じることができ、心の安定を取り戻すことができるのです。

繰り返しになりますが、転校や退学は子どもにとっても家庭にとっても大きな負担がかかる選択肢です。しかし、いじめや人間関係で苦しみ続ける子どもに、いざとなったら学校以外の道もあることを伝えて家族の共通認識としておくことは、最悪の事態を防ぐ一助となります。

第三章:学校とどう連携するか――適切なコミュニケーションの方法

ここまでで構造的な問題を整理したので、どのように対策をしていくか、に移ります。
いじめの問題を解決するためには、親と学校の間で適切な連携を取ることが欠かせません。しかし、学校とのコミュニケーションには一定の工夫が必要です。感情的になってしまうと、問題解決ではなく対立を生む可能性があるためです。
この章では、具体的な連携方法を詳しくお伝えします。

事実を整理する

学校に相談する前に、まずは子どもから聞いた情報をもとに事実を整理することが大切です。いじめの内容や状況を客観的にまとめておくことで、学校側も問題を正確に理解しやすくなります。

例えば、次のような点を記録しておくとよいでしょう。

いじめの具体的な内容
例:「○月○日に○○くんから『消えろ』と言われた」「体育の時間にわざとぶつかられた」
いじめが行われた場所や時間
例:「休み時間に教室で」「昼休みに運動場で」
子どもの感情や反応
例:「怖くて動けなくなった」「涙が止まらなかった」

このように、感情的な主張ではなく、具体的な事実を整理することで、学校側が事態を適切に把握しやすくなります。

学校への相談時のポイント

学校との連携は、まず担任教師への相談から始めるのが一般的です。最初の相談では、次のような姿勢を心がけましょう。

冷静かつ丁寧な話し方
感情的にならず、「このような問題が発生しているため、ぜひ一緒に解決策を考えたい」と建設的な姿勢で伝えます。
具体的な要望を伝える
例:「休み時間に目が届くようにしてほしい」「相手の保護者とも話し合いたいので、調整をお願いしたい」
記録を提出する
上記で整理した事実をまとめた資料を渡し、問題の共有をスムーズにします。

ただし残念ながら、先生方にも個人差があります。もし担任教師だけでは対応が難しい場合や問題と認識されなかった場合は、学年主任、教頭、校長など、学校の上層部に相談をエスカレートすることも検討してください。

学校側の対応が不十分だった場合

学校がいじめの存在を軽視したり、問題解決に消極的だったりする場合もあります。その際は、地域の教育委員会や第三者機関に相談する選択肢があります。また、最近では弁護士や子どもの権利擁護団体がいじめ問題に取り組むケースも増えており、必要であれば専門家の力を借りることも視野に入れましょう。

文部科学省:学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント

第四章:親自身の心も守る――不安との向き合い方

いじめや不登校の問題に直面すると、親であるあなた自身も大きなストレスや不安を抱えることになります。お子様のことを心配するあまり、自分自身の心の健康を見失ってしまうことも少なくありません。この章では、親としての自分自身を守る方法についてお話しします。

自分を責めない

親御さんが最初に覚えておくべきことは、「自分を責めない」ということです。子どもがいじめられたり、不登校になったりすることは、必ずしも親の育て方に問題があったわけではありません。むしろ、学校環境やいじめの構造的な問題が影響していることを忘れないでください。

「もっと早く気づくべきだった」「どうして助けてあげられなかったのだろう」と自分を責めるのではなく、「今できることは何か」を冷静に考えることが大切です。

子どもに寄り添う母親の画像

周囲のサポートを求める

不登校やいじめの問題は、親一人で抱え込むにはあまりにも大きな負担を伴います。信頼できる友人や家族に相談することで、気持ちを整理する助けになります。また、同じ悩みを持つ親同士が集まるサポートグループに参加するのも有効です。共感し合える仲間と話すことで、「自分だけではない」と感じられ、孤独感が軽減されるでしょう。

第五章:子どもの心を癒す――回復プロセスと親の役割

いじめや不登校によって傷ついた子どもの心を癒すには、時間と適切なサポートが必要です。心の傷は目に見えない分、その深さや痛みを測ることが難しく、時に回復の過程が親にとってももどかしく感じられることがあります。この章では、子どもの心の回復を促進するために、親ができる具体的なアプローチについてお話しします。

子どもに「安全な場所」を提供する

いじめを受けた子どもにとって、家庭が最も安心できる場所であることが重要です。子どもが「学校では傷ついたけれど、家では自分をそのまま受け入れてもらえる」と感じられることで、心の回復が進みます。

子どもがどのような言葉や態度を求めているのかは個人差がありますが、基本的には「話を聞く姿勢」を持つことが大切です。親として、「学校に行かないことを責めない」「無理に問題を解決しようとしない」ことを心がけてください。

例えば、子どもが「今日は何も話したくない」と言ったとしても、それを否定せず、「いつでも話したくなったら教えてね」と伝えるだけで、安心感を与えることができます。親が「子どものペース」を尊重する姿勢が、心の回復に繋がります。

子どもの自己肯定感を育む

いじめによる心の傷は、子どもの自己肯定感を大きく損ないます。「自分はダメな人間だ」「何をやっても意味がない」といった否定的な感情に陥ることがあります。このような感情を乗り越えるためには、日常生活の中で小さな成功体験を積み重ねることが重要です。

例えば、運動や音楽、料理など、子どもが得意なことや好きなことに取り組む機会を増やしてあげましょう。そして、その成果を親が積極的に認めることで、少しずつ「自分にも価値がある」という感覚を取り戻す手助けができます。

また、親が子どもに対して具体的な言葉で褒めることも効果的です。「頑張ったね」や「すごいね」といった漠然とした褒め言葉ではなく、「○○を最後までやり遂げたのはすごいね」といった、行動や成果に焦点を当てた言葉を使うことで、子ども自身が自分の努力を実感しやすくなります。

プロフェッショナルのサポートを受ける

子どもの回復を支えるためには、専門家の力を借りることも有効です。カウンセリングや心理療法は、子どもが自分の感情を整理し、新たな視点を獲得するための強力な助けとなります。

例えば、認知行動療法(CBT)は、いじめによるトラウマに苦しむ子どもに対して有効なアプローチです。この療法では、子どもが物事をどのように受け止めるか、その「認知の歪み」を修正し、より前向きな考え方を身につけることを目指します。

プロフェッショナルのサポートは、親だけでは解決が難しい問題に直面したときの大きな助けとなります。学校に設置されているスクールカウンセラーや、地域の相談窓口を積極的に利用してみましょう。

第六章:未来への歩み――不登校を乗り越えたその先

いじめや不登校は、今まさに直面しているときには深刻で解決の見えない問題のように感じられるものです。しかし、こうした状況も永遠に続くものではありません。子どもは親の想像以上に強く、柔軟に環境に適応していく力を持っています。

子どもの成長を信じる

親がまず理解しておかなければならないのは、子どもは自分のペースで成長し、自ら解決策を見つけていける力を持っているということです。不登校という経験が子どもの将来に悪影響を与えるのではないかと心配するのは当然ですが、これは一時的な状態であり、子どもの持つ可能性を信じることが重要です。

多様な進路を考える

日本の教育システムは、一定の枠に子どもを当てはめようとする傾向があります。学校に通い、成績を取り、進学するという一連の流れが当たり前とされているのです。しかし、すべての子どもがこの流れに適応できるわけではありません。いじめや不登校を経験した子どもにとっては、むしろ多様な進路を考えることが未来への希望を広げる鍵となります。

親がこれらの選択肢を理解し、子どもと一緒に考えることで、子どもが「自分にも選べる未来がある」と実感できるようになります。その上で、学校に行きたいという思いがあれば子どもの意思を尊重し、再登校に向けて支援を行っていきましょう。


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自閉症から不登校になってしまう子どもへの接し方

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不登校や引きこもりの問題に取り組む児童心理司の藤原と申します。これまで多くのお子さんとご家族を支援してまいりました。不登校になっているお子さんをお持ちの方は、親として子どものことを心から案じながらも、何をどうすれば良いのか分からず、途方に暮れているかもしれません。私の言葉が少しでもお役に立てればと願いながら、ここに筆を執ります。

自閉症とは何か──特徴と学校生活での壁

まず、自閉症スペクトラム障害(ASD)について、その特徴や学校生活で感じやすいストレスを整理してみましょう。自閉症は、広範囲にわたる発達特性を持つ神経発達障害の一種です。典型的な特徴として、社会的なコミュニケーションの難しさ、興味の偏り、感覚過敏や過集中があります。

学校という場所は、多くの子どもにとって社会的なスキルを試される場であり、また集団行動が求められる環境です。特に自閉症の子どもにとっては、この「普通」が時に大きな負担となります。例えば、教室内でのざわざわした音や、昼休みに友達同士で自然に交わされる会話、教師の指示を即座に理解して行動に移すことなど、これらがすべて「苦手なこと」の要因になり得ます。

自閉症の子どもたちは、ルールやパターンを好む一方で、予期せぬ変化や曖昧な状況に対して大きな不安を感じやすい傾向があります。このため、例えば授業の変更や突発的なアクティビティがあると、パニック状態に陥ることがあります。また、同級生からの冗談や暗黙の了解を理解できずに孤立したり、逆に周囲の視線や言動に過敏に反応してストレスを感じることもあります。

以下は、自閉症の子どもの特徴と、学校でストレスになりやすい要素をまとめた表です。

特徴詳細
社会的な特徴– 他者とのコミュニケーションや集団活動が苦手。
– 冗談や暗黙の了解を理解するのが難しい。
– 対人関係で誤解されやすい。
興味・行動の特徴– 特定の物事やルールに強いこだわりを持つ。
– 興味の範囲が偏っており、他者と共有しにくい。
感覚特性– 音や光、匂い、触覚などに対して過敏または鈍感。
– 環境の変化に強いストレスを感じる。
自己調整の困難さ– 感情をコントロールするのが難しく、パニックや不安状態に陥りやすい。
– 刺激が過剰な環境では過集中や感情の爆発を起こしやすい。
学校でのストレス要因– 騒音: 教室や廊下のざわめき、ベルの音、体育館の反響音などがストレスになる。
– 授業中の変化: 急な時間割の変更や予期しないアクティビティ。
– 対人関係: 友達とのやりとりやグループ活動の難しさ。いじめや孤立感を感じることも多い。
– 評価・プレッシャー: テスト、発表、他者の注目を集める活動が大きな不安要因になる。
– 身体的な不快感: 校庭の暑さ・寒さ、椅子や机の硬さなどの環境的要因が影響することもある。
回避行動の例– 学校に行きたがらない、朝の支度に時間がかかる。
– お腹が痛い、頭が痛いなど体調不良を訴える。
– 家に閉じこもることが増える。

こうした学校生活の中での壁が、やがて大きな不安となり、不登校という結果につながることがあります。「学校に行かなければ」というプレッシャーと、「行きたくない」という心の葛藤が、朝の準備段階で涙や過剰な自己主張として現れることも珍しくありません。

学校という場が持つ意味と、不登校の背景

「学校に行くこと」は、多くの親御さんにとって、子どもの将来を左右する大事なテーマです。しかし、学校での体験が子どもの心を傷つける場になってしまう場合、その環境そのものが問題解決の障害となることもあります。「学校に行くべきだ」という社会的な圧力は確かに存在しますが、それが全ての子どもにとって良い結果をもたらすわけではありません。

自閉症の子どもの場合、学校におけるストレス要因は主に次のように分類できます:

  • 感情的なストレス──授業や課題への不安、教師やクラスメイトとの関係の緊張感。
  • 物理的な環境への不適応──騒音、照明、教室の配置。
  • 対人関係の難しさ──いじめ、孤立、誤解。

これらの要因が重なると、子どもは「学校を避けることで安心感を得る」という行動を選ぶことがあります。これは、ToCoの再登校支援プログラムで言う「負の強化」として説明されている現象です。

では、親としてどのように接するべきなのでしょうか?以下では具体的なアプローチをお伝えします。

自閉症の子どもが学校に向き合う力を持つために親ができること

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもにとって、学校生活での困難は、個別の特性や環境への適応力に深く関連しています。そのため、不登校の支援も一般的な方法ではなく、特性に配慮したアプローチが必要です。以下では、自閉症の子どもに適した具体的な支援策を解説します。


1. 子どもが安心できる環境を整える

自閉症の子どもにとって、「安心できる環境」が不安の軽減と行動の安定に繋がります。学校の環境が過剰な刺激を与える場合、家庭でまず安心感を持たせ、徐々に外部の環境に慣れさせていきます。

具体策:

自宅での学校体験をシミュレーション
学校での流れ(例えば「朝の準備→教室に入る→授業を受ける」など)を家庭内でロールプレイし、少しずつ「学校に行く」感覚を慣れさせます。

視覚的なスケジュールの作成
学校生活や1日の予定を絵や写真、アイコンを使って視覚的に示します。「次に何が起こるか」が分かるだけで、予測不能な不安を和らげます。


2. 子どもの特性に基づいた挑戦を設計する

自閉症の子どもは、特性に応じた小さな挑戦から始め、成功体験を積むことで自己効力感を高めていきます。これは、ToCoプログラムの「安全な挑戦」設定の考え方に基づいています。

具体策:

感覚的な刺激を避ける工夫
通学時間帯をずらしたり、静かな教室や個別ブースで学べるよう学校と調整します。これにより、過度な音や人混みからのストレスを軽減できます。

得意な分野を活かす
子どもが得意とすることや興味を持つことを学校活動に関連付けます。例えば、算数が得意なら「教室で計算問題を解くだけでもOK」など、子どもが「これならできる」と思える範囲を設定します。


3. 親の言葉と行動に一貫性を持たせる

自閉症の子どもは、曖昧な指示や変化に混乱しやすい傾向があります。親が安定した態度で一貫性のある言葉を使うことが、子どもの安心感につながります。

具体策:

  • 「具体的で短い指示」を心がける
    「学校に行く準備をしなさい」ではなく、「まず靴下を履こう」「次に教科書をカバンに入れよう」と具体的に伝えます。
  • 一貫したルールを作る
    学校に行く日と行かない日でルールやスケジュールを変えすぎないようにします。一貫したスケジュールが、子どもの安心感を高めます。
母と娘の会話イメージ

これにより、子どもは親に対して信頼感を持ち、自分の気持ちを素直に話せるようになります。


4. 感覚過敏や興奮を和らげる方法を取り入れる

自閉症の子どもは感覚的な過剰反応を示すことが多いため、ストレスを和らげるツールや方法を日常に取り入れると効果的です。

具体策:

リラクゼーションの習慣化
深呼吸、ストレッチ、抱きしめられる感覚が得られる重い毛布(加重ブランケット)などを使って、リラックスできる時間を作ります。生活リズムが整うことで、子どもは次第にエネルギーを回復し、学校復帰への準備が整っていきます。

感覚調整ツールの活用
ノイズキャンセリングヘッドホンやサングラス、柔らかい素材の服など、子どもの感覚的な快適さをサポートするアイテムを取り入れます。


5. 学校との密な連携を図る

自閉症の子どもが学校に通うためには、学校側との協力体制が重要です。特に特別支援教育コーディネーターや担任の先生と連絡を密にし、個別の支援計画を作成します。

具体策:

  • 個別の支援計画(IEP)の作成
    子どもの特性に合わせた支援が行われるよう、学年や担当教員と相談して具体的な計画を立てます。
  • 登校時間や授業内容の調整
    フルタイムの通学が難しい場合、登校時間を短縮したり、得意な科目に絞るなど柔軟な対応を学校に求めます。
先生との面談イメージ

6. 子どもが落ち着ける「安心の拠点」を持たせる

学校に行く際には、子どもが一息つける安心の場所を作ることも大切です。

具体策:

  • 学校内での拠点づくり
    保健室や図書室、特別支援教室など、子どもが安心して過ごせる場所を学校と調整します。
  • 親子で話し合い「逃げ場」を設定
    子どもがストレスを感じたときに「ここに行けばいい」という逃げ道を設定しておくと、安心感が高まります。

7. 子どもの小さな進歩を具体的に認める

自閉症の子どもにとって、褒められることや成功体験が次の挑戦への原動力になります。ただし、褒め方は具体的で分かりやすいものにしましょう。

具体策:

  • 行動を言葉で細かく評価する
    「頑張ったね」ではなく、「朝、カバンを自分で準備できたね」「学校の門まで行けたのはすごいことだよ」と具体的に伝えます。
  • 進歩を記録する
    できたことを日記やシールで記録し、子どもが自分の成長を視覚的に確認できるようにします。

最後に

お母さまが子どもを想う気持ちは、どんな言葉よりも力強いものです。どんなに小さな一歩でも、それは確実に前進です。お子さんが笑顔を取り戻し、安心して学校生活を送れるようになる日を、一緒に目指していきましょう。私達も、全力であなたとお子さんを支えていきます。どうか一人で抱え込まず、必要な支援を活用しながら進んでいってください。

ToCoでは、不安障害や自閉症を持つお子さんを対象に、何十人もの再登校を支援してきた実績があります。専門家によるカウンセリングや、個々の状況に応じたプログラムの提供を通じて、親子で取り組むことができます。詳しい情報は、ToCoの公式ウェブサイトをご覧いただくか、サポート窓口までお問い合わせください。


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不安障害で不登校になってしまう子どもへの接し方

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不登校や引きこもりを専門とする児童心理司の藤原と申します。不安障害を抱えるお子さまを持つ親御さまにとって、日々の生活は心配と葛藤の連続だとお察しします。お子さまの抱える不安がどのようなものなのか、どこまで親として助けてあげられるのか、そんな疑問に向き合いながらも、答えが見つからず苦しい日々を過ごしている方も多いでしょう。

私自身、多くのケースを通じて、「何とかしてあげたい」という親御さんの切実な願いと、それに応えたい一方で、どうしても親だけでは手に負えない壁を感じる瞬間を目の当たりにしてきました。本随筆では、不安障害と不登校という問題に焦点を当て、原因とその背景を掘り下げたうえで、親として具体的にどう向き合えばよいのかを考察していきます。

不安障害とは? ~子どもが抱える見えない恐怖~

不安障害とは、単なる緊張や心配とは異なる、日常生活に深刻な影響を及ぼすレベルの強い不安感や恐怖感を伴う疾患です。不安は本来、危険や問題に直面したときに人間が備える自然な反応ですが、不安障害ではこの反応が過剰に働き、本人にとっては非常に現実的で切迫した感情として現れます。

子どもにとっての不安障害とは?

大人が「それほど怖がる必要はない」と思うような状況でも、不安障害を抱える子どもにとっては、それが「恐ろしい災難」に見えることがあります。たとえば、学校での発表、先生に注意されること、友達と話すこと、さらには登校という日常的な行動そのものが、大きなストレス源になります。

  • 身体的症状: 「お腹が痛い」「気持ちが悪い」「心臓がドキドキする」といった身体的な不調が、不安の高まりとともに現れます。これは決して「仮病」ではなく、子どもの体が不安に対して反応している結果です。
  • 思考の歪み: 「失敗したらどうしよう」「みんなに嫌われる」といった否定的な思考が、頭から離れなくなります。このような思考の繰り返しは、子どもの行動範囲を狭め、自己肯定感を奪います。
  • 回避行動: 不安の原因となる状況を避けるため、子どもは学校を休む、部屋に閉じこもるといった行動を取ります。一見すると「怠けている」と見えることもありますが、実際には不安から自分を守るための防御策なのです。

学校が「安心できない場所」になる理由

学校は多くの子どもにとって学びと成長の場ですが、不安障害を抱える子どもにとっては、多くのストレス要因が詰まった場所でもあります。どんな子どもでも多かれ少なかれ緊張やプレッシャーを感じる場面があるものですが、不安障害を抱える子どもにとっては、それが日常的に耐え難いものとなります。

1. 過剰なプレッシャー

学校では、授業中に発言を求められたり、テストで結果を示す必要があったりと、他人に評価される機会が頻繁にあります。不安障害の子どもにとって、これらの場面は「失敗できない」という極端なプレッシャーを感じさせます。

2. 人間関係の複雑さ

友人関係や先生とのやり取りもまた、強い不安を引き起こす要因となります。友達との会話で何を話せばよいのか分からない、クラス全員の前で何かをするのが怖い、といったことが積み重なります。また、些細な意見の相違や行き違いが「自分は嫌われている」と感じる原因になることもあります。

3. 環境そのものへの不安

広い体育館や騒がしい校庭、廊下を歩くだけでも、不安障害を持つ子どもには安心できない場合があります。特に、音に敏感な子どもにとっては、チャイムの音やクラスメイトの声がストレスになることもあります。

親として何ができるのか ~第一歩は「不安」を理解すること~

不安障害を抱える子どもに接する際の基本姿勢として、最も大切なのは、「不安を否定しない」ことです。「そんなことで怖がらなくてもいい」「学校なんて大したことない」という言葉は、子どもにとって自分の気持ちを理解されていないと感じさせるだけでなく、「自分はおかしいのだ」とさらに自己否定感を抱かせてしまいます。

子どもの不安を言葉で受け止める

  • 子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、ただ「分かった」と受け流すのではなく、「そう感じる理由を教えてくれる?」と優しく尋ねます。
  • 子どもが口にした言葉を繰り返すことで、「親が自分の気持ちを理解している」と感じさせることができます。
  • 例:「朝起きたときに、お腹が痛かったんだね。それは不安が原因かもしれないね。」
子どもとのハグのイメージ

安心できる小さな挑戦を作る

不安障害の対処は、一気に解決を求めるのではなく、段階的に取り組むことが基本です。たとえば、次のようなステップを提案できます。

  • 最初は家の近所を一緒に散歩する。
  • 次に、学校の前まで行ってみる。
  • 次第に学校の敷地内に入る、担任の先生と一度だけ話してみる。

これらの挑戦に成功したときは、結果ではなく努力そのものを褒めるようにします。「行けたね」ではなく、「挑戦しようとした姿勢が素晴らしい」と伝えることで、子どもは自己肯定感を少しずつ取り戻します。

生活リズムの安定がカギ

不安が高まる背景には、睡眠不足や昼夜逆転といった生活習慣の乱れがあることも多いです。朝同じ時間に起きる習慣をつける、夜遅くのスマホやゲームを控えるといった基本的な生活リズムを整えることで、子どもの心身の安定を図ることができます。


子どもの心に寄り添う具体的なアプローチ

ここでは、不安障害を抱えるお子さまとどのように対話し、どのように日々の接し方を工夫すればよいかをさらに掘り下げていきます。

1. 子どもの不安を「分解」する対話

不安を感じる状況に直面した際、その原因がどこにあるのかを一緒に探ることで、子ども自身が自分の気持ちを整理する手助けをします。ToCoのプログラムでは、不安を「感覚」「思考」「行動」の3つの要素に分ける方法を推奨しています。

具体例:
親:「学校に行こうと思ったとき、どんな気持ちだった?」
子:「怖くて、お腹が痛くなった。」
親:「そっか。怖いと感じると、体にどんなことが起きたかな?」
子:「心臓がドキドキしたし、泣きそうになった。」
親:「それで、お腹が痛いって思ったのかもしれないね。そう感じたとき、どんなことを考えた?」
子:「行ったら先生に怒られるかもって思った。」

このように、感情を細分化して話し合うことで、子どもは「自分が感じている不安の正体」に気づくきっかけを得ます。それが漠然とした恐怖から具体的な「対処できる課題」へと変わる第一歩になります。

2. 現実的な視点を教える「リフレーミング」

不安障害を持つ子どもは、「失敗したらどうしよう」「みんなに嫌われる」といった極端で否定的な考えに陥りやすい傾向があります。これを「ネガティブな自動思考」と呼びます。この思考に対して、「もっと現実的な見方をする」という練習を繰り返すことが効果的です。

具体例:
子:「宿題を忘れたら先生がすごく怒るに決まってる。」
親:「そう思うんだね。先生が怒るとしたら、どうして怒ると思う?」
子:「私が悪いから…。」
親:「そうか。でも先生は、宿題をしていないことより、どうして忘れたのかを知りたいんじゃないかな?宿題ができなかった理由を話したら、先生は怒るより助けてくれるかもしれないね。」

ネガティブな予測に固執せず、別の可能性を考えられるようになると、不安を減らしやすくなります。

3. 小さな成功体験を積み重ねる

子どもが少しでも新しい挑戦をしたとき、それを必ず認め、成功体験として積み重ねていくことが大切です。挑戦が失敗に終わったとしても、「挑戦した事実」に注目します。

具体例:
親:「今日は学校の門の前まで行けたね。それだけでもすごいことだよ。最初は怖かったと思うけど、やろうとしたその気持ちが素晴らしいよ。」

このように肯定的なフィードバックを与えることで、次への挑戦への意欲を引き出します。


再登校に向けたToCoのサポート

最後に、不安障害を抱えるお子さまをサポートするうえでの選択肢として、ToCoの再登校支援プログラムをご紹介します。ToCoでは、不登校の原因に合わせた個別のプログラムを提供しており、親子ともに無理のない形で再登校を目指せる仕組みが整っています。

笑い合う母と娘の画像

たとえば、以下のような支援を受けられます:

  • 子どもが安心して登校できるよう、小さな目標を設定し、それを専門家と共有しながら進める。
  • 親が子どもとのコミュニケーションで迷った際に、具体的なアドバイスを受けられる。
  • 学校との連携をサポートし、環境調整を進める。

これまで多くの子どもたちが、このプログラムを通じて再び学校生活を取り戻してきました。親御さんとしても、孤独に悩む必要はありません。専門家の力を借りながら、一歩ずつ進んでいける道を探してみてください。

終わりに

不安障害を抱える子どもにとって、親の存在は何よりも大きな支えです。その一方で、親御さん自身が負担を抱え込みすぎてしまうと、心が疲れてしまうこともあります。今回の内容が、少しでも親御さんの力になれば幸いです。そして、必要なときにはToCoのような専門的な支援を受けることで、親子ともに安心して前進できる道を見つけていきましょう。

子どもの未来が明るいものとなるよう、心から願っています。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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不登校が1ヶ月以上続いた場合の、家庭で出来る対処法


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児童心理司の藤原と申します。不登校や引きこもりに関する支援に携わっても変わらない思いとして、不登校は親子双方にとって非常に辛い問題だということです。不登校が「1週間」「2週間」であれば、なんとか踏ん張って対策を講じられる方も多いでしょう。しかし、これが「1ヶ月以上」になると話は変わります。子どもの生活習慣は乱れ、学校との心理的な距離は広がり、親自身も「これで良いのか」と自問自答しながら疲弊してしまいます。このような状況において、家庭でどのような対応ができるのか、具体的にお伝えしていきたいと思います。

ここでは、「生活リズムを整える」「勉強を続ける」「学校との繋がりを保つ」という3つの柱をもとに、家庭で実践可能な方法をご紹介します。一歩一歩、親子で前進していくための助けになれば幸いです。

下記が本文の内容をまとめた表となります。

目的必要な行動
生活リズムを整え、心身の安定を図る毎朝決まった時間に起きる習慣をつけ、食事や運動などのルーティンを取り入れる。家族全体で規則正しい生活を心がける。
勉強の継続を通じて学びへの意欲を育む興味のある分野から学習を始める。学校の先生と連携して無理のない課題に取り組むことで、自信と学ぶ楽しさを感じられる環境を整える。
学校との繋がりを保ちながら復帰を促す先生との定期的な連絡や学校行事への参加を通じて、学校を身近に感じさせる。短時間の訪問など段階的な関わりを取り入れる。
親子関係を通じて自己肯定感を高める子どもの気持ちに寄り添い、小さな成功を見つけて具体的に褒める。安心できる環境を作り、感情を表現しやすくする。
親自身の心身の健康を守る信頼できる人に悩みを共有する。自分の時間を持ち、心身のリフレッシュを図ることで、親としての安定感を保つ。

第1章:子どもの生活リズムを整える

不登校が1ヶ月以上続く場合、ほぼ確実に生活リズムが乱れていると言っても過言ではありません。朝起きる時間がバラバラになり、夜更かしが当たり前になることで、昼夜逆転の生活に陥るお子さんも少なくありません。この状態が長引くと、心身の健康に大きな影響を及ぼすだけでなく、学校生活への復帰がますます困難になります。

なぜ生活リズムが重要なのか?

人間の体は、「体内時計」と呼ばれるリズムに従って生活しています。この体内時計を狂わせる最大の要因が、睡眠時間の不規則化です。たとえば、夜中の1時や2時に寝て昼頃に起きる生活が続くと、体が日中活動する準備を整えられなくなります。その結果、疲れやすくなったり、イライラしやすくなったりと、心身にさまざまな不調が現れるのです。さらに、こうした状態では学校に行くどころか、日常生活を送ること自体が難しくなる場合もあります。

どのように整えるのか?

1ヶ月以上続いた乱れた生活リズムを立て直すのは、簡単なことではありません。しかし、焦らず少しずつ取り組むことで、改善の道を開けることができます。以下に具体的な方法を挙げます。

1. 起床時間を固定する まず、毎日同じ時間に起きることを目指してください。最初は30分早く起きるだけでも構いません。「今日だけは少し遅くてもいいか」となると、改善は進みません。親御さん自身も一緒に起きることで、家庭全体で生活リズムを整える努力をしましょう。

2. 朝日を浴びる 朝起きたら、カーテンを開けて日光を浴びることを習慣化しましょう。日光には、体内時計をリセットし、眠気を覚ます効果があります。また、短時間でも散歩に出ることで、気分転換と体力づくりを同時に行うことができます。

3. 夜のルーティンを作る 夜更かしを防ぐためには、夜の過ごし方を工夫することが重要です。例えば、寝る1時間前からスマホやゲームを控える、リラックスできる音楽を聴く、ストレッチをするなど、規則的なルーティンを取り入れましょう。

4. 家族で取り組む 子どもだけに生活リズムの改善を押し付けるのではなく、家族全員で取り組む姿勢を見せることが効果的です。たとえば、朝食の時間を決めて全員で食べる習慣を作ることで、お子さんも「自分だけが頑張る必要はない」と感じられるでしょう。

心理的サポートも忘れずに

生活リズムの改善に取り組む中で、親御さんが注意すべきことは、「無理にやらせない」という点です。たとえば、朝起きる時間を守れなかったときに「どうしてできないの?」と責めてしまうと、子どもはさらに自信を失い、挑戦する意欲を失ってしまいます。たとえ失敗しても、「少しずつでいいよ」「今日はここまでできたね」と肯定的な声掛けを心がけてください。

また、1ヶ月以上の不登校が続く中では、「どうしても動けない」「何もしたくない」という日があるのも自然なことです。そんなときには、無理に何かをさせるのではなく、そっと寄り添い、「次にできそうなこと」を一緒に考えてあげる姿勢が大切です。

第2章:勉強を続けることの意義と方法

1ヶ月以上の不登校が続くと、勉強に対する意欲が大幅に低下しているケースがほとんどです。お子さんの中には、「学校に行っていないから勉強しなくても良い」と考え始める子もいれば、「勉強しようと思っても何から手をつけて良いか分からない」といった混乱を抱える子もいます。また、「他の子に遅れている」というプレッシャーから、自信を喪失してしまう場合も少なくありません。

勉強を続けることは、単に学校の授業に追いつくためだけではなく、お子さんが未来への選択肢を広げ、自信を取り戻すための大切な手段です。しかし、長期間勉強から離れている場合、再び学習の習慣を取り戻すことは簡単ではありません。この章では、勉強の再開をサポートする具体的な方法とその意義についてお伝えします。

なぜ勉強を続けるべきなのか?

1ヶ月以上の不登校が続く中で、勉強をする意味を親御さん自身が見失ってしまうこともあります。「無理に勉強させてもストレスになるだけでは?」という疑問を抱えるのは当然のことです。しかし、勉強には以下のような意義があります。

1. 自信を取り戻すきっかけになる 
何かを学び、理解し、「できた!」と実感することは、お子さんの自己肯定感を高めます。不登校が長引くと、「自分はダメだ」「何をやっても無理だ」という思い込みが強くなりがちですが、勉強を通じて成功体験を積むことで、「やればできる」という感覚を取り戻すことができます。

2. 学び続ける姿勢を維持できる 
勉強は、将来の選択肢を広げるだけでなく、「学ぶこと自体が楽しい」と感じる力を育てます。一度勉強を完全にやめてしまうと、再開する際の心理的ハードルがさらに高くなるため、小さな形でも学習を続けることが重要です。

3. 学校復帰への準備となる 
学校生活に復帰した際、授業内容についていけないという不安は、お子さんにとって大きなストレスになります。不登校中に家庭での学習を進めておくことで、この不安を軽減することができます。

勉強を再開するための具体的な方法

勉強を再開させるには、お子さんの現状や気持ちに合わせた柔軟なアプローチが必要です。以下に具体的な方法を挙げます。

1. 小さな目標を設定する

いきなり学校のペースに合わせようとすると、負担が大きくなり挫折する原因になります。まずは「今日の10分だけドリルを解く」「1ページだけ読書をする」といった小さな目標を設定してください。そして、それを達成した際には必ず褒めてあげましょう。

親が「これだけやれば十分」と思うラインを明確にすることで、お子さんも安心して取り組むことができます。

2. サポートを活用する

不登校が1ヶ月以上続いている場合、学校や地域の教育支援機関と連携することが有効です。たとえば、以下のようなサポートを活用することが考えられます。

  • 先生への相談:学校の先生と連絡を取り、進級に必要な最低限の課題を調整してもらう。
  • オンライン学習:動画授業やオンライン教材を利用し、自分のペースで学べる環境を整える。
  • 学習塾や家庭教師:不登校の子どもに特化した学習塾や家庭教師を探してみるのも良い方法です。

3. 親が介入しすぎない

勉強を再開する際、親が全てを手取り足取り教えようとすると、お子さんが「自分ではできない」と感じてしまうことがあります。最初のきっかけを作った後は、少しずつ子どもが自分で考える時間を与えましょう。そして、取り組みの過程を見守りつつ、困ったときにはサポートするというスタンスを心がけてください。

心理的なハードルを下げる声掛けの工夫

勉強に対する心理的なハードルを下げるためには、親の声掛けが非常に重要です。「どうしてやらないの?」という責める言葉ではなく、「一緒にやってみよう」「少しだけ試してみない?」と優しく促すよう心がけましょう。また、「今日はこれだけできたね」「頑張ったことが素晴らしい」と結果だけでなく過程を褒めることで、お子さんのやる気を引き出せます。

第3章:学校との繋がりを保つ方法

1ヶ月以上の不登校が続くと、学校との繋がりが心理的にも物理的にも遠ざかっていきます。お子さん自身が「学校は自分には関係ない場所」と感じ始めることもありますし、親御さんも「学校に迷惑をかけているのでは?」という気持ちから、先生やクラスメイトとの関係を遠ざけがちになるかもしれません。しかし、学校との繋がりを完全に断ってしまうと、復帰の心理的ハードルが一層高くなります。この章では、無理なく学校との繋がりを保ち、復帰への道筋を整える方法をお伝えします。

なぜ学校との繋がりが重要なのか?

学校は、お子さんが同年代の友人と交流し、協力や競争を通じて社会性を育む場です。不登校が長引くと、そのような機会が失われるだけでなく、「学校は怖い場所」「自分の居場所ではない」という認識が固定化してしまうことがあります。

また、親子が学校との繋がりを維持することは、お子さんが「自分は見捨てられていない」「戻る場所がある」と感じるためにも重要です。不登校の間も、学校というコミュニティの一員であることを意識できるようにすることで、復帰への心の準備を進めることができます。

学校との繋がりを保つための具体的な方法

1. 先生との定期的な連絡を続ける

不登校が長引くと、親御さんの中には「先生に連絡するのが気まずい」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、学校とのコミュニケーションを断つと、状況を共有する機会が失われてしまいます。先生と定期的に連絡を取り合うことで、家庭での様子やお子さんの気持ちを共有し、学校側のサポートを受ける準備が整います。

具体例:

  • 月に1回程度、電話やメールで家庭での様子を報告する。
  • 担任の先生や学年主任と「今後どう進めるべきか」を相談する機会を持つ。
  • 先生からお子さん宛ての手紙やメッセージを依頼する。

2. 短時間の訪問を取り入れる

いきなり「学校に行こう」と言っても、お子さんにとっては心理的な負担が大きすぎる場合があります。その場合は、短時間の訪問や特定のエリアに限定した関わりから始めると良いでしょう。

具体例:

  • 放課後の空いた教室に親と一緒に行く。
  • 校庭や体育館で遊ぶ機会を作る。
  • 学校行事(運動会や文化祭)に顔を出す。

短い時間からでも「学校に足を運ぶ」という経験を積み重ねることで、「学校に行く」という行為自体への抵抗感を和らげることができます。

3. 友人やクラスメイトとの関係を維持する

クラスメイトとの関わりを絶たないようにすることも重要です。不登校が続く中で、友人との関係が途切れると、「学校に戻ったときに誰も自分を受け入れてくれない」という不安が強まります。可能であれば、親御さんが間に入って友人との交流をサポートしてみてください。

具体例:

  • 近所の友達を家に招き、一緒に遊ぶ機会を作る。
  • 学校外の活動(習い事やスポーツ)でクラスメイトと顔を合わせる。

友人との交流が続いていることは、お子さんにとって「学校に戻っても大丈夫」という安心感に繋がります。

4. 無理のない復帰計画を立てる

学校との繋がりを維持しながらも、復帰のタイミングや方法については、慎重に計画を立てる必要があります。一度学校に行けたからといって、それですべてが解決するわけではありません。長期的な視点で段階的に進めることを心がけましょう。

具体例:

  1. まずは1時間だけ授業に参加する。
  2. 好きな科目や得意な授業だけ出席する。
  3. 週に1回から徐々に登校日数を増やす。

お子さんのペースに合わせて計画を進めることで、負担を軽減しながら復帰を目指すことができます。

親のサポートが鍵となる

学校との繋がりを保つためには、親御さんのサポートが不可欠です。お子さんが「学校に行くのが怖い」と感じている場合は、その気持ちを否定せず、むしろ「どこが怖いのか」を一緒に考える姿勢を持ちましょう。また、親が「学校は楽しい場所だよ」と前向きに語ることも、子どもに安心感を与える重要な要素です。

第4章:親自身のケアと精神的な支え方

1ヶ月以上続くお子さんの不登校は、親御さんにとっても大きなストレスとなります。「どうしてこうなってしまったのだろう」「自分の育て方が悪かったのではないか」と自分を責める気持ちや、日々の対応に追われて疲弊する状況は、決して珍しいことではありません。ですが、親が心身ともに健康でいなければ、長期的にお子さんを支えるのは難しくなります。親御さん自身が「自分をケアする」ことに目を向けることは、お子さんの回復を促進するためにも非常に重要です。

なぜ親のケアが必要なのか?

不登校が長期化すると、家庭の雰囲気が張り詰めてしまうことがよくあります。お子さんの行動に一喜一憂し、日々の生活が「不登校の問題」に飲み込まれてしまう状態が続くと、親御さん自身が疲弊し、結果的にお子さんへの支援も行き詰まる恐れがあります。

以下は、親御さんがケアを怠った場合に起こりがちな問題です。

  • 感情的な対応が増える:「また起きられなかったの?」と、子どもを責める言葉が増え、親子関係に溝が生まれる。
  • 過干渉または放任に偏る:疲労から「どうでもいい」と放任してしまうか、逆に不安から過干渉になる。
  • 自分を責める感情が悪化する:「私がちゃんと育てていれば」と自己否定に陥り、精神的な余裕を失う。

こうした状況を防ぐためにも、親自身が心身の健康を保つことが欠かせません。

親自身をケアするための具体的な方法

1. 悩みを共有する

不登校問題を一人で抱え込む必要はありません。同じ悩みを持つ親同士の交流や、専門家への相談を活用することで、気持ちが軽くなることがあります。

具体例:

  • サポートグループに参加する:不登校の子どもを持つ親が集まるグループでは、「自分だけではない」と感じられ、共感や具体的なアドバイスを得られることがあります。
  • 専門家に相談する:児童心理司やスクールカウンセラーに現状を共有し、具体的な対応方法をアドバイスしてもらう。
  • 信頼できる友人や家族に話す:身近な人に話を聞いてもらうことで、感情の整理が進む場合もあります。

他者に悩みを打ち明けることで、問題を客観的に捉え直すきっかけが得られます。

2. 自分の時間を持つ

日々の生活が不登校対応に追われていると、親御さん自身の時間を持つことを忘れがちです。しかし、自分の趣味や楽しみの時間を確保することは、心のリフレッシュに繋がり、子どもへの支援を続ける力となります。

具体例:

  • 趣味に没頭する:読書、料理、運動など、気分転換になる活動を取り入れる。
  • 短時間でも外出する:カフェに行く、自然の中を散歩するなど、自分のための外出を計画する。
  • リラックスの時間を作る:瞑想やヨガを取り入れ、心を落ち着ける習慣を持つ。

お子さんを気にかけすぎて何もかも自分で抱え込むのではなく、少しの時間でも「自分のために使う」ことを心がけましょう。

3. 感情を整理する

お子さんの不登校に直面していると、親御さん自身も様々な感情を抱えます。「心配」「怒り」「焦り」「孤独」など、それらをため込むとストレスが増幅してしまいます。感情を外に出し、整理することが大切です。

具体例:

  • 日記をつける:日々の気持ちや考えを文章にすることで、自分自身を客観視できる。
  • 肯定的な言葉を自分にかける:「私はよく頑張っている」「一歩ずつ進んでいる」といった言葉を、自分に向けて語りかける。
  • 専門家の力を借りる:感情が整理しきれない場合、心理カウンセリングを受けることも一つの手段です。

4. 家族やパートナーとの協力体制を築く

親御さんが一人ですべてを抱え込むのは非常に困難です。家族やパートナーと協力しながら、不登校の対応を進めることを考えましょう。

具体例:

  • 役割分担をする:例えば「朝の声掛けは母親、宿題のサポートは父親」というように、家庭内で役割を明確にする。
  • 家族会議を開く:お子さんの状況や家庭での対応方針について話し合う時間を設ける。
  • お互いの気持ちを尊重する:「どうしてこの対応をしたの?」と責めるのではなく、互いの意見を受け入れる姿勢を大切にする。

家庭全体で協力し合うことで、親御さん自身の負担を軽減するだけでなく、家庭の雰囲気も穏やかになります。

親が元気であることが子どもを支える力になる

親御さんが元気でいることは、お子さんにとっての安心感に繋がります。不登校の状況においては、親が冷静で落ち着いた態度を示すことが、子どもに「自分も大丈夫」というメッセージを伝える重要な手段となります。親御さん自身のケアを優先することは決して「甘え」ではありません。それは長期的にお子さんを支えるための「準備」なのです。

おわりに

ここまで、「生活リズムを整える」「勉強を続ける」「学校との繋がりを保つ」、そして「親自身のケア」という4つの柱について詳しく解説してきました。不登校が1ヶ月以上続く中での対応は簡単なものではありませんが、一つずつ取り組むことで、状況を改善する道筋が見えてきます。

親御さんの努力や温かいサポートは、必ずお子さんに届きます。焦らず、親子で少しずつ前進していきましょう。そして、どんなに辛い日々の中でも、「今は支え合う時間」と捉え、将来の希望を共に描いていけることを願っています。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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子育ては、加点方式で


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児童心理司の藤原と申します。不登校や引きこもりの子どもたち、そしてそのご家族と日々向き合いながら、さまざまな課題や悩みに寄り添う仕事をしています。この文章を通じて、不登校に悩むお母さまたちが、子育てにおいて少しでも役立てられるヒントをお届けできればと思います。今回は「子育てと加点方式」というテーマに沿って、子育ての考え方を深掘りしていきます。

子育ては、ときに大きなプレッシャーを伴うものです。「これをしなければならない」「あれをやらないといけない」といった義務感や、「この子が将来困らないように」という切実な願いが、知らず知らずのうちに日々の言動を支配していることもあるでしょう。そして、そうした思いが強くなるとき、私たちはつい「減点方式」の視点に立ってしまうことがあります。

減点方式とは何か

まず、減点方式とは何でしょうか。この考え方は、もともと工業や製造業など、ミスが許されない分野で発展してきた評価の方法です。製品を検査する際に、欠陥がある部分を減点していくことで、品質を保証する仕組みです。たとえば航空機の製造や医療現場では、この減点方式が欠かせません。安全が最優先されるからです。

しかし、この減点方式を子育てに当てはめたとき、何が起こるでしょうか。子どもが失敗したり、不十分だったりした点を指摘し、そこを改善するように促すことで、理想的な状態に近づけようとする。この方法は一見、効率的に思えるかもしれません。けれども、子育てにおいては、こうした評価方法が親子双方に大きなリスクをもたらすことがあります。

減点方式が子どもに与える影響

減点方式の最大の問題点は、子どもの「自己肯定感」を損ないやすいという点です。自己肯定感とは、自分自身を「これでいいんだ」と認められる感覚のことです。この感覚は、幸せを感じるための基盤ともいえるものです。子どもが失敗や不足を指摘され続けると、「自分はダメだ」「自分には価値がない」という感覚を持ちやすくなります。そして、この自己肯定感の低下は、後々まで深刻な影響を及ぼす可能性があります。

たとえば、不登校の子どもたちと話していると、「どうせ何をやっても怒られる」「頑張ったって認めてもらえない」といった言葉を耳にすることが少なくありません。彼らの中には、親からの期待や指摘が積み重なり、自分自身を否定的にしか見られなくなっている子もいます。もちろん、親としては愛情をもって接してきたつもりでしょうし、子どもの成長を願う気持ちに偽りはないはずです。しかし、その思いが減点方式の形で伝わると、子どもには「自分はまだ足りない」「もっと頑張らないと愛されない」と感じさせてしまうのです。

加点方式とは何か

では、加点方式とは何でしょうか。加点方式は、減点方式とは逆に、ポジティブな側面や達成したことを評価し、それを積み重ねていく方法です。たとえば、「できなかったこと」ではなく、「できたこと」に注目する。「これが足りない」ではなく、「ここまでできている」という視点で接するのです。

この加点方式は、スポーツのコーチングなどでもよく使われます。選手の欠点ばかりを指摘するのではなく、うまくいった部分を認めることで、本人のやる気や自信を引き出します。こうした方法は、子育てにも大いに応用できるのです。

子どもに幸せを届けるための子育て

子育ての目的とは何でしょうか。それは、子どもが幸せになるための手助けをすることです。では、幸せとは何でしょうか。お金や地位といった物質的な豊かさももちろん大切です。しかし、それ以上に重要なのは、「自分自身を受け入れる力」です。どれだけ成功しても、自分を否定し続ける心では、本当の意味で幸せを感じることは難しいのです。

そのためには、子どもが自分自身を肯定できる環境をつくることが欠かせません。そして、この自己肯定感は、加点方式によってこそ育まれます。たとえば、テストで50点を取った子どもに対して、「あと50点足りないね」と言うのではなく、「50点分もよく頑張ったね」と伝えるのです。小さな違いに思えるかもしれませんが、これが子どもの心に与える影響は計り知れません。

加点方式は、親にとっても気持ちを軽くする効果があります。減点方式で子どもに接する親は、どうしても子どもの不足ばかりが目につくため、イライラしたり、失望したりすることが増えがちです。一方で、加点方式を意識することで、子どものポジティブな面を見つける喜びが増し、親子の間に温かな空気が生まれるのです。

子育てにおける歴史的背景

興味深いことに、加点方式と減点方式の考え方には、歴史的な背景があります。たとえば、江戸時代の日本では、子どもの成長を「目出度い(めでたい)」と捉える文化がありました。節目ごとに子どもの成長を祝う七五三などの行事も、その表れです。一方、産業革命以降の西洋では、効率や成果を重視する風潮が強まり、減点方式的な評価方法が広がりました。この背景には、資本主義の台頭や、労働力としての能力を重視する社会構造の変化が関係しています。

現代の日本は、この両方の影響を受けています。成果主義的な価値観が広がる一方で、伝統的な家族文化も残っています。このような状況の中で、私たちは改めて、「何のために子どもを育てるのか」という原点に立ち返る必要があるのではないでしょうか。

加点方式の具体的な実践方法

それでは、加点方式を日常の子育てにどう取り入れていくかについて、具体的にお話しします。ポイントは、「子どもの行動を細かく観察し、小さな進歩や努力を見逃さない」ということです。どんなに些細なことでも、「できたこと」「頑張ったこと」を見つけ、それを言葉にして伝えることが重要です。

たとえば、不登校の子どもが朝起きてリビングに顔を出したとします。その行動自体は、もしかすると親から見れば大したことではないように思えるかもしれません。しかし、不登校の子どもにとっては、それが大きな一歩である場合も多いのです。ここで「どうして学校に行かないの?」と尋ねるのではなく、「リビングに出てきてくれたんだね。嬉しいよ」と伝えることで、子どもは「自分の行動が認められた」と感じます。

また、子どもが何か新しいことに挑戦したときや、困難に向き合ったときも、結果にかかわらず努力を評価することが大切です。たとえば、「テストで良い点を取ること」だけを褒めるのではなく、「テスト勉強を頑張ったこと」を認める。「友達と話せた」だけではなく、「話しかけようと勇気を出した気持ち」に目を向ける。このように、結果だけではなく過程を評価する視点を持つことで、子どもの心に寄り添うことができます。

親の心の持ち方を変える

加点方式を実践するうえで、親自身の心の持ち方も大切です。減点方式に陥りがちな親の多くは、自分自身にも厳しい評価を下しがちです。「良い親でなければならない」「子どもをちゃんと育てなければならない」というプレッシャーが強く、自分自身に対しても減点方式的な見方をしていることが少なくありません。

しかし、子どもに加点方式を適用するためには、まず親自身が自分を認めることが必要です。「これだけやれた」「ここまで頑張れた」という自分自身の努力や成長を、意識して肯定的に捉える練習をしてみてください。たとえば、一日を振り返るときに、「今日も子どもとちゃんと話せなかった」と自己批判するのではなく、「今日は子どもに『おはよう』と声をかけられた」といった小さな成功体験に目を向けるのです。

子どもを褒めるイメージ

また、完璧を求めるのではなく、「少しずつ良くなっていくことを喜ぶ」という視点を持つことも大切です。不登校は決して「親の失敗」ではなく、子どもが人生の中で一時的に経験する一つの課題にすぎません。親が自分を責めすぎず、「今できることをやる」くらいの気持ちでいることで、親子の間に余裕が生まれます。

子どもの未来を信じる

不登校の子どもたちと接していると、親御さんから「この子の将来が心配です」という声をよく聞きます。その気持ちは当然のものですし、愛情の表れでもあります。しかし、過度な心配は、ときに子どもにとって重荷になってしまいます。

子どもにとって何より大切なのは、「自分を信じてもらえている」という感覚です。たとえ学校に行けていなくても、今は何もできていなくても、親が「あなたには可能性がある」「あなたならきっと大丈夫」と信じてくれることで、子どもは安心感を得ます。そして、その安心感が、次の一歩を踏み出すエネルギーになるのです。

私が以前関わった子どもの中に、2年間不登校だった男の子がいました。その子の母親は、最初の頃は非常に不安を抱えていて、どうしても減点方式的な接し方になりがちでした。しかし、母親がカウンセリングを通じて加点方式を意識するようになると、少しずつ親子の関係が変わっていきました。その子は、母親からの「最近、自分で時間割を作ろうとしてるんだね。すごいね」という声かけを受けて、自分の行動に自信を持つようになりました。最終的に彼は再登校し、今では学校生活を楽しんでいると教えていただきました。

このように、親が子どもの未来を信じ、できることを一つずつ認めていくことで、子どもの可能性は大きく広がります。

加点方式がもたらす親子関係の変化

加点方式を続けていくと、親子の関係そのものが変わっていきます。親が子どもの成功や努力を見つけ、認めることで、子どもは「自分は親に愛されている」と感じます。そしてその感覚が、子どもの自己肯定感を育みます。一方で、親にとっても、子どものポジティブな面を見つけることは、子育ての喜びを再発見する機会となります。

また、加点方式は親子の間に信頼関係を築く助けにもなります。減点方式では、どうしても指摘や注意が増え、子どもとの間に摩擦が生じやすくなります。しかし、加点方式を取り入れることで、親子の間にポジティブな会話が増え、自然と笑顔の時間が増えるのです。

親子の信頼関係は、不登校の解決だけでなく、その後の人生全般においても大きな財産となります。どんな困難に直面しても、「自分には味方がいる」「自分を認めてくれる人がいる」と思えることは、子どもにとって何よりの支えとなるのです。

最後に

子育てには正解がないとよく言われます。しかし、正解がないからこそ、自分たちに合った方法を見つけることが大切です。そしてその中で、減点方式ではなく加点方式を意識することは、親子双方にとって大きなメリットをもたらします。

不登校という状況は、親にとっても子どもにとっても、決して簡単なものではありません。しかし、そこに隠れている小さな可能性や希望に目を向け、加点方式の考え方を取り入れることで、きっと前に進む道が見えてくるはずです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。この文章が少しでも保護者の方のお役に立てれば幸いです。そして、何よりもお伝えしたいのは、あなたの頑張りが、きっとお子さまに届いているということです。どうぞご自分を責めず、肩の力を抜いて、お子さまとの時間を大切にしてください。


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私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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冬休みを再登校に向けた土台作りにするための過ごし方

冬休みを再登校に向けた土台作りにするための過ごし方のイメージ

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不登校や引きこもりの支援に携わる児童心理司の藤原と申します。不登校という状況は、どのご家庭でも大きな悩みであり、時に出口の見えない迷路のように感じられることもあるかと思います。
特に冬休みという時期は、親戚が集まる行事や年末年始の特別な環境変化が重なることで、お子さんの心に新たな負担が生じやすい時期でもあります。これから、「冬休みを再登校に向けた土台作りにするための過ごし方」というテーマで、保護者の方にとって役立つ具体的な方法をお伝えします。

1. 親戚との付き合い――無理をさせないための工夫

冬休みといえば、多くの家庭で親戚が集まる行事が予定される季節です。お正月や新年会、あるいはクリスマスの集まりなど、家族や親戚が一堂に会することは、日本の伝統的な年中行事の一部であり、多くの人にとって楽しみな時間でもあります。しかし、不登校のお子さんにとって、これらの機会は楽しいどころか、場合によっては非常にストレスフルな状況になることがあります。

まず、親戚同士の集まりでは、どうしても「学校」の話題が出やすいものです。特に学校に行けていないお子さんにとっては、「最近どう?」「学校はどうしてるの?」といった何気ない質問が強いプレッシャーになりがちです。このような質問に答えられない、あるいは答えることで不安や恥ずかしさを感じる場合、親戚の集まりそのものが苦痛に感じられることがあります。また、普段あまり会わない親戚たちの前では、素の自分を出すことができず、緊張が高まってしまう子どもも少なくありません。

こうした状況を避けるためには、まず保護者の方が事前にお子さんと話し合い、集まりへの参加方法や範囲について、可能な限りお子さんの希望を尊重することが大切です。「少しの時間だけ顔を出してみる」「挨拶だけして、あとは自分の部屋で過ごす」といった選択肢を提示し、お子さんが安心して過ごせる形を一緒に考えることが重要です。
たとえ短時間でも「参加できた」という経験は、お子さんにとって自信や達成感につながる可能性があります。一方で、無理に参加させることで逆にストレスが高まり、自己否定的な気持ちが強まるリスクもあるため、無理強いは避けるべきです。

また、親戚の方々に事前にお子さんの状況を簡潔に伝えることも有効な手段です。「今は少し休んでいる時期です」「ゆっくり考える時間を持たせています」といった形で、柔らかい表現を用いながら、子どもが質問攻めに遭わないよう配慮をお願いすることができます。この際、状況を細かく説明する必要はありません。あくまで「今の状況を温かく見守ってほしい」というスタンスを伝えることが大切です。親戚の集まりでは、学校や進学に関する話題が出ることが多いため、これを未然に防ぐことは、お子さんの安心感を守るうえで非常に有効です。

さらに、親戚同士の集まり自体を短時間に抑えるという選択肢もあります。例えば、昼食や夕食の時間帯だけ参加し、その後は自宅でゆっくり過ごすように計画を立てることが考えられます。こうすることで、お子さんが長時間ストレスにさらされることを防ぎつつ、親戚との交流も一定程度維持することができます。特に、祖父母など近しい親戚に会うことは、将来的にお子さんが家族のつながりを感じるための大切な経験となる可能性があるため、全く顔を出さないよりも、短時間でも接触の機会を持つことを目指すと良いでしょう。

加えて、親戚の集まりに参加する場合、お子さんに事前の準備をサポートすることも効果的です。例えば、「話したくない質問が来たらどう返すか」を一緒に考えたり、「参加する時間帯や席の場所」について相談したりすることで、お子さん自身が少しでもコントロール感を持てるよう配慮することが大切です。「わからない時は無理に答えなくてもいいんだよ」「何かあれば、すぐにお母さんに助けを求めていいんだよ」といった言葉をかけることで、安心感を与えることができます。

このように、親戚の集まりというイベントは、不登校のお子さんにとって大きなハードルとなり得ますが、工夫次第でその負担を軽減することが可能です。保護者としては、「参加できることが良い」というプレッシャーを抱えず、あくまでお子さんの気持ちやペースを尊重しながら、柔軟に対応する姿勢が求められます。短い時間でも「自分なりに頑張った」という経験は、お子さんの心の成長に確実につながっていきます。

2. 生活リズムの調整――年明けの再登校に備えて

冬休みという期間は、普段と違う生活リズムになりやすいものです。気温の低下によって布団から出づらくなったり、年末年始の行事の影響で夜更かしや朝寝坊が続いたりするのは、どの家庭でもよく見られる現象です。しかし、不登校のお子さんにとって、生活リズムが乱れることは、再登校への壁をさらに高くしてしまう要因になりかねません。心と体の準備が整わない状態で年明けを迎えると、休み明けの登校が一層難しくなってしまう場合があります。そのため、冬休み中にできる範囲で生活リズムを整える努力が重要となります。

まず、生活リズムを整えるために最も意識したいのは、起床時間を固定することです。夜更かしを完全に防ぐことが難しい場合でも、毎朝同じ時間に起きる習慣をつけることは、全体のリズムを戻す上で効果的です。子どもにとっては、冬休み中の朝に「起きる理由」がないことが多く、気づかないうちに昼まで眠る生活になってしまうことがあります。そのため、親御さんが一緒に起きる、あるいは軽い朝のイベントを計画するなどして、「朝起きる楽しみ」をつくる工夫をすると良いでしょう。例えば、親子で簡単な朝食作りに挑戦したり、近所を散歩して冬の景色を楽しむなど、小さな目標を持つだけで、朝起きるきっかけが生まれます。

次に、日光を浴びることも重要です。冬は日の出が遅いため、朝の光を浴びる機会が減りがちですが、太陽の光を浴びることは体内時計のリセットに欠かせません。起床後すぐにカーテンを開けて部屋に朝日を取り込み、可能であれば少し外に出るだけでも効果があります。たとえ寒い時期でも、10分程度の外出で十分です。日光を浴びると、体内のメラトニンというホルモンが調整され、自然な眠気が夜に訪れるようになります。この小さな習慣の積み重ねが、夜の早寝につながります。

また、食事のリズムを整えることも、生活習慣改善の重要な一歩です。特に朝食をきちんと摂ることは、体を目覚めさせるだけでなく、昼食や夕食の時間も一定に保つ助けとなります。不登校のお子さんの場合、食事をスキップしたり不規則な時間に軽食を取ることが増えやすいですが、親御さんが一緒に朝食を楽しむよう心がけることで、習慣づけがしやすくなります。子どもが好きな朝食メニューを一緒に考えたり、簡単に作れるレシピを共有するのも効果的です。

さらに、生活リズムを整える際に重要なのは、すべてを完璧に戻そうとしないことです。不登校のお子さんにとって、長い間崩れていたリズムを一気に修正することは、かえって負担になります。「少しずつ、できる範囲で」という姿勢を持つことで、子ども自身もプレッシャーを感じずに取り組むことができます。例えば、起床時間を1日30分ずつ早める、寝る前にスマートフォンやタブレットの使用時間を少し短くする、といった小さな目標を設定するのが良いでしょう。

親御さん自身も、お子さんのペースに寄り添いながら生活リズムの調整を進めていくことが大切です。「一緒にできたこと」を見つけて声に出して褒めることで、少しずつ自信を取り戻す助けになります。このような積み重ねが、年明けに再登校への一歩を踏み出す土台となるのです。

3. 学校との連携――家庭での学習支援を取り入れる

冬休みは、生活リズムだけでなく学習習慣の維持にも気を配りたい時期です。不登校のお子さんにとって、学習面での遅れがさらに再登校を難しくする原因になることがあります。学校の授業に追いつけない不安や、自分だけが取り残されている感覚を抱えたままでは、学校への足が遠のいてしまうのも無理はありません。そこで、学校と連携して家庭でできる学習支援を取り入れることが、有効な手段となります。

最初のステップとして、学校の担任の先生やスクールカウンセラーに相談することをおすすめします。不登校の状況に応じて、学校側が家庭で使えるプリントや課題を用意してくれることがあります。これらの教材は、単なる勉強の道具としてだけでなく、「学校とのつながりを持ち続ける」手段としても役立ちます。学校での学びを家庭で少しずつ取り戻していくことで、「勉強ができた」という自信につながり、再登校への意欲も高まる可能性があります。

学習に取り組む際には、量や難易度に配慮することが重要です。無理に多くの課題をこなそうとすると、かえってお子さんの負担になり、やる気を失わせてしまうことがあります。そのため、「少しでも取り組めたらOK」という柔軟な姿勢で進めることが大切です。例えば、1日1枚のプリントから始めたり、得意な科目や簡単な問題から手をつけることで、学習へのハードルを下げることができます。完璧を求めるのではなく、「やれたこと」に焦点を当てて褒める姿勢が、親子の間に前向きな空気を生み出します。

また、親御さんが直接教えるのではなく、そばで見守る形を取ることも効果的です。お子さんが勉強に取り組む間、親が横で読書をしたり、家事をしながら様子を見守ることで、適度な安心感を与えることができます。「一緒にいるけど口出ししない」というスタンスが、お子さんの自立を促すと同時に、過剰な干渉によるストレスを防ぎます。

さらに、学習の進捗や困難な点については、定期的に学校側と共有することが大切です。家庭での努力を学校に報告することで、先生たちが今後の指導方針を立てやすくなるだけでなく、お子さん自身も「学校に見守られている」という感覚を持ちやすくなります。こうしたつながりが、再登校への道筋を整える支えとなります。

冬休みという特別な期間は、お子さんが学校に戻る準備を進める上で大切なチャンスでもあります。しかし、それを実現するには、親御さん自身も無理をせず、子どものペースに寄り添うことが何より重要です。焦らず、少しずつ進むことを目指しましょう。


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不登校の対応が母親中心になる理由

不登校の対応が母親中心になる理由のイメージ

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児童心理司の藤原と申します。不登校や引きこもりの問題を専門としており、これまで多くの子どもたちとそのご家族に向き合ってきました。

さて、今回のテーマである「不登校の対応が母親中心になる理由」について、掘り下げてお話ししていきたいと思います。不登校の子どもを持つお母さん方は、毎日心を痛めながら、どう接すれば良いのか、どう導いてあげれば良いのかと頭を悩ませていることでしょう。一方で、お父さんの役割はどうなっているのか――そんな疑問を持つ方も多いかもしれません。家族内での役割分担と、なぜ母親が中心的な存在となりやすいのかを理解していただくことで、不登校への対応に少しでも光が見えるのではないかと思います。

※今回は片親家庭は対象外として傾向分析を進めています。

1. 子どもとの「対話」は普段の積み重ねが鍵

不登校の問題が浮き彫りになるとき、多くのご家庭では「対話」が課題として挙げられます。学校に行かないという事実を前にして、子どもとどのように向き合えば良いのか、何を話せば良いのか分からなくなってしまうのです。しかし、ここで重要なのは「子どもとの対話は不登校になったとき突然始められるものではない」という点です。

子どもは、親に対して無条件に心を開いてくれるわけではありません。特に小学校高学年や中学生になると、自我が芽生え、親との距離を取りたがる時期でもあります。そういった時期に信頼関係を築くためには、日頃から何気ない会話を積み重ねておくことが必要です。「今日学校で何があった?」「友達と何を話したの?」そんな些細な一言でも、子どもにとっては「親が自分に関心を持ってくれている」と感じるきっかけになります。

しかし、ここで浮かび上がるのが「父親と子どもの会話の少なさ」です。これは多くの家庭で見られる傾向であり、データとしても裏付けられています。背景としては男性は感情を言葉にすることが苦手な傾向があり、子どもとのコミュニケーションが表面的なものになってしまうことがあります。

一方で、母親は普段から子どもとの会話を大切にしている方が多いです。朝起きたときから夜寝るまでの間に、自然と子どもと話す機会が多く、その積み重ねが信頼関係を育むのです。そのため、いざ子どもが不登校になったときも、母親は比較的スムーズに子どもの心に寄り添いやすい立場にいると言えるでしょう。

2. 不登校中の「非日常」が父親には難しい理由

不登校は家庭にとって「非日常」の出来事です。それまで当たり前だった「朝起きて学校に行く」という日常が崩れ、家族全体が不安定になります。この非日常の中で子どもと向き合うことは、実は非常に難易度の高いことなのです。

特に父親の場合、普段から子どもとの会話が少ない分、不登校という状況に直面したときにどう接すれば良いのか分からなくなることが多いです。子どもの気持ちを理解しようとしても、そもそも日常的な信頼関係が築けていないため、子どもが心を閉ざしてしまうことがあります。例えば、「どうして学校に行かないんだ?」「甘えているんじゃないか?」といった言葉が、父親の口から出てしまうことがありますが、これは子どもにとって大きなプレッシャーとなります。

一方で、母親は日常的な会話を通じて子どもの気持ちや変化に敏感です。不登校の原因が何であるか、子どもが何を考えているのかを感じ取りやすく、適切な言葉をかけることができるのです。そのため、不登校の対応が母親中心になりやすいのは、自然な流れとも言えるでしょう。

ただし、ここで誤解しないでいただきたいのは「父親の役割がない」というわけではないということです。不登校の子どもを支えるためには、父親も母親もそれぞれの得意分野を活かして適材適所で役割を果たすことが大切なのです。

3. 家族ぐるみの「役割分担」が効果的な理由

不登校の子どもを支えるためには、母親だけがすべてを抱え込むのではなく、父親を含めた家族全体での役割分担が重要になります。なぜなら、不登校への対応は一時的なものではなく、長期戦になることが多いため、母親がひとりで背負い込んでしまうと精神的にも体力的にも限界がきてしまうからです。

母親は、日頃から子どもとの会話を通して心に寄り添い、安心できる環境を作る役割を担っています。その一方で、父親は学校とのやり取りや社会的な役割を果たすことが得意な場合が多いです。例えば、担任の先生や学校のカウンセラーとの面談、学校への連絡などは、父親が中心となって動くことで、母親の負担が軽減されるだけでなく、父親自身が不登校への理解を深めるきっかけにもなります。

また、父親が学校と積極的にコミュニケーションを取ることで、子ども自身が「お父さんも自分のことを理解しようとしてくれている」と感じることができます。不登校の子どもは、時として「自分の存在は誰にも必要とされていないのではないか」という孤独感を抱えることがあります。父親が行動を通じて子どもの存在を認め、支えている姿勢を見せることは、子どもにとって非常に心強い支えとなるのです。

加えて、家庭内での役割分担は、両親の間のパートナーシップを強化する効果もあります。母親と父親がそれぞれの得意分野を活かしながら協力し合うことで、不登校の対応が「家族全体の課題」として捉えられるようになります。母親が孤立することなく、父親が不登校への理解を深めることで、家庭全体のバランスが保たれ、子どもも安心して過ごすことができるようになるのです。

4. 母親が中心になることの「現実」と向き合う

ここまで、母親が不登校の対応において中心的な役割を果たしやすい理由についてお話ししてきましたが、現実としては「母親がすべてを引き受けてしまう」という状況も少なくありません。不登校の子どもに寄り添うことは、決して簡単なことではなく、精神的にも大きな負担がかかります。

「自分の対応が間違っているのではないか」「なぜうちの子だけが学校に行けないのか」――そんな不安や焦りが、母親の心を圧迫してしまうことがあります。特に、周囲の目や世間の常識が母親に対して無言のプレッシャーをかけることも少なくありません。「お母さんの育て方が悪いのではないか」といった偏見にさらされることで、母親自身が自分を責めてしまうケースも見られます。

しかし、ここで強調しておきたいのは、「母親が一人で頑張りすぎる必要はない」ということです。不登校の問題は、決して母親一人の責任ではありません。子ども自身の心の問題、学校環境の問題、さらには社会全体の問題が複雑に絡み合って起こるものです。母親がすべてを背負い込んでしまうのではなく、父親や学校、専門家と連携しながら、少しずつ前に進んでいくことが大切です。

母親が子どもに寄り添う姿勢は、何よりも大切なものです。しかし、その姿勢が母親自身を追い詰めるものになってしまっては、元も子もありません。母親が笑顔で過ごすことが、子どもにとっても安心感につながります。だからこそ、家族全体で支え合い、母親が少しでも楽になれるような環境を作ることが、不登校の子どもを支える第一歩となるのです。

5. 父親の「役割」を再認識することの大切さ

不登校の対応が母親中心になりやすい理由として、父親の役割が見えにくくなってしまうことが挙げられます。しかし、父親が果たすべき役割は決して小さなものではありません。父親が学校や外部の専門機関とのやり取りを担当することで、母親の精神的な負担を軽減するだけでなく、家庭内での責任を分かち合うことができます。

また、父親が積極的に子どもとのコミュニケーションを取ることで、子どもが抱えている悩みや不安が見えてくることもあります。たとえ最初はうまくいかなくても、父親が真摯に向き合う姿勢を見せ続けることが、子どもとの信頼関係を築く第一歩となります。

さらに、父親の存在が家庭に安定感をもたらすことも忘れてはいけません。不登校の問題は、家庭全体に大きな影響を与えますが、父親も冷静に状況を見つめ、母親と協力しながら対応することで、家庭全体が前向きな方向へと進んでいくことができます。

6. 最後に――母親の皆さんへ

不登校の問題に向き合う母親の皆さんへ――あなたが今、毎日悩みながら子どもと向き合っていることは、決して無駄ではありません。子どもが学校に行けないことに対して、焦りや不安を感じるのは当然のことです。しかし、その中でも子どもの気持ちに寄り添い、少しずつ前に進もうとしているあなたの姿は、子どもにとって何よりも大きな支えとなっているはずです。

母親が中心的な役割を担うことは、現実として避けられない面もあります。しかし、それは決して「母親だけが頑張らなければならない」という意味ではありません。父親や学校、専門家と協力しながら、家族全体で子どもを支えていくことが、不登校の問題を乗り越えるための鍵となります。

どうか、一人で抱え込まずに、周囲の力を頼ってください。そして、あなた自身が少しでも笑顔で過ごせる時間を大切にしてください。その笑顔が、子どもにとっての希望となり、未来へとつながる第一歩となるのです。


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不登校の子どもを生み出す構造的な問題と、親としてどう立ち向かうか


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私は、児童心理司として不登校や引きこもりの問題に長年携わってきた藤原と申します。本文では、お子様の不登校に悩む保護者の皆様に向けて、子どもが不登校になる背景や構造的な問題を掘り下げ、親としてどのように立ち向かうべきかを考えていきます。

不登校という状況に直面すると、親は強い不安や自己批判にさいなまれることが少なくありません。しかし、この問題を冷静に捉え、子どもに寄り添った対応を取ることで、親子の新たな可能性を見出すことができます。これから、具体的な課題と解決策を深く掘り下げていきます。

不登校を生み出す学校という構造の問題

日本の教育システムは、長い間「画一的な学び」を前提に運営されてきました。つまり、すべての子どもが同じカリキュラムを、同じペースで学び、同じように評価される仕組みです。表向きには平等な教育のように見えますが、実際にはこの仕組みの中で多くの子どもたちが取りこぼされています。不登校という現象は、まさにその「画一化」の犠牲とも言える問題なのです。

例えば、学校の授業スタイルを考えてみましょう。多くの授業では、教師が黒板の前で説明し、生徒はそれを静かに聞くという形式が採られています。この形式が得意な子どももいますが、全員がそうとは限りません。じっと座って話を聞くことが苦手な子ども、耳で聞くよりも目で見たり、手を動かしたりして学ぶ方が得意な子ども、人前で発表することに強いストレスを感じる子どももいます。学校はこうした個々の学びの特性を十分に考慮していません。

また、評価の基準が偏っていることも問題です。たとえば、「算数100点、国語0点」の子どもは、「算数50点、国語50点」の子どもよりも問題視されがちです。特定の科目に秀でた子どもの才能が認められるどころか、不得意な科目に注目され、その子ども自身が「自分はダメだ」と感じてしまう原因となります。このような教育の仕組みが、子どもたちの自己否定感を生み出し、不登校につながっているのです。

さらに、学校という閉鎖的な環境において起こりやすい「いじめ」の問題も、不登校を引き起こす大きな要因です。いじめはしばしば表面化しにくい形で進行します。加害者だけでなく、周囲の無関心や教師の未熟な対応が、被害者の孤立感をさらに深めることがあります。このような環境で子どもが「学校は安心できる場所ではない」と感じるのは当然のことです。

社会と教育の価値観のズレが生む問題

近年、社会では「働きがい」や「個性の尊重」が重視されるようになっています。例えば、大人たちはそれぞれの能力や志向に応じた職業を選び、自分の適性を活かせる働き方を模索するようになりました。しかし、子どもたちの教育現場ではどうでしょうか。依然として「全員が同じ内容を、同じペースで学ぶ」ことが当然とされ、個性や適性など「学びがい」が軽視されています。この価値観のギャップこそが、子どもたちを苦しめている原因の一つです。

特に顕著なのは、学び方の選択肢が限られていることです。たとえば、フリースクールや通信制の学校など、従来の学校に代わる選択肢が増えてきてはいますが、それでも社会全体ではまだ少数派です。N校のような先進的な取り組みが注目されているのは、子どもたちが自分に合った学び方を選べる場を提供しているからです。従来型の学校に適応できない子どもたちが増えている背景には、このような選択肢の少なさが関係しています。

また、学校の価値が「勉強」だけにあるわけではないことも重要です。学び舎とも呼ばれるため「学校に行く=勉強をする」と考えがちですが、実際には学校で得られる最大の価値は「人間関係」です。同年代の子どもたちと触れ合い、協力し、時には衝突しながら人間関係を学ぶ場としての学校の役割は非常に大きいのです。しかし、この「人間関係」が逆にストレスとなり、不登校の原因になる場合もあります。

例えば、対人関係において自己肯定感が低い子どもは、「自分なんて誰も好きじゃない」「みんなから嫌われている」と思い込む傾向があります。このような子どもにとって、学校は非常に居心地の悪い場所となります。不登校の子どもたちの多くが、このような自己否定的な思考に悩まされています。

頭を抱える子どものイメージ

親として不登校にどう向き合うべきか

子どもが不登校になったとき、親はどう対応するべきでしょうか。最も避けなければならないのは、「学校に行くことが当たり前」という価値観を押し付けることです。子どもが学校に行けない理由は、多くの場合、「甘え」や「怠け」ではありません。不登校には、環境的な要因や心理的な要因が複雑に絡み合っています。親が「行くべきなのに行かない」という見方をしてしまうと、子どもは自分の気持ちを理解してもらえないと感じ、さらに孤立してしまう可能性があります。

子どもが不登校になったとき、まず親がするべきことは、「子どもの気持ちに寄り添うこと」です。例えば、子どもが「学校が怖い」と言ったとき、その言葉を軽視せず、なぜ怖いと感じるのかをじっくりと聞いてあげることが大切です。「どうして怖いの?」「具体的にどんな場面が嫌なの?」と問い詰めるのではなく、「怖いと感じるんだね」「それは辛いよね」と共感を示すことで、子どもは安心感を得られます。

さらに、不登校の原因の一つとして、子どもの自己肯定感の低さが挙げられます。私がこれまでカウンセリングしてきた中で、「自分は価値のない人間だ」と思い込んでいる子どもが非常に多いことに気づきました。この自己否定的な思考を和らげるためには、親が日常的にポジティブなメッセージを伝えることが有効です。「あなたは頑張っているね」「とても素敵だと思うよ」といった言葉は、子どもの心を少しずつ癒していきます。

また、不登校の子どもに「無理に学校へ戻す」ことは避けるべきです。子どもが学校に対して強い抵抗感や恐怖感を持っている場合、無理に通わせようとすると、さらに心の傷を深めてしまう可能性があります。その代わりに、子どもが安心できる環境を作り、少しずつ心の回復を促すことが重要です。

自己肯定感を高めるための具体的な取り組み

不登校の子どもの多くは、自分に自信を持てない状態に陥っています。「自分なんて、誰からも必要とされていない」「みんなが自分を嫌っている」といった考えが、子どもの行動や思考を支配してしまうのです。このような状態を改善するためには、親が自己肯定感を高めるための取り組みを意識的に行う必要があります。

まず、子どもの得意なことや好きなことを見つけ、それを伸ばしていくことが大切です。例えば、絵を描くことが好きな子どもであれば、自由に描ける時間や環境を用意し、その作品を「素敵だね」「こんな表現ができるなんてすごいね」と褒めてあげましょう。スポーツが好きな子どもには、地域のクラブ活動や親子で一緒に体を動かす時間を作るのも良いでしょう。

また、子どもの努力や小さな成果を認めることも重要です。たとえ学校に通えなくても、日々の生活の中で頑張っていることは必ずあります。「今日は朝起きられたね」「少しでも宿題に取り組んだね」といった具体的な行動を褒めることで、子どもは自分の価値を再認識することができます。

もう一つの重要なポイントは、親自身が子どもにとっての「安心感」を与える存在であることです。不登校の子どもにとって、親がイライラしたり落ち込んだりしている姿を見ることは、大きなストレスになります。もちろん、親が不安やストレスを感じることは当然です。しかし、その気持ちを子どもにぶつけるのではなく、誰かに話したり、時間を置くことで、親自身が心の安定を保つことが大切です。

親自身のストレスを軽視しないために

不登校の問題に向き合う中で、親自身が孤立しないことも非常に重要です。不登校の子どもを持つ親は、「自分の子育てが駄目だったから、こんな苦しい状況に子どもといるのではないか」と感じてしまうことがあります。この孤立感は、親自身の精神的な健康を損ない、子どもへの対応にも悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、親が自分の趣味や楽しみを見つけることも重要です。親が疲れ切ってしまっては、子どもに安心感を与えることは難しくなります。短時間でも良いので、自分の好きなことに没頭する時間を作り、リフレッシュすることを心がけましょう。

親自身が孤立から抜け出し、前向きな気持ちを持つことで、子どもとの関係もより良いものになっていきます。不登校という状況に向き合うのは決して簡単なことではありませんが、親が自分自身を大切にすることで、子どもへのサポートもより効果的なものになります。

もちろん不登校という状況は、親子にとって大きな試練であることは間違いありません。しかし、それは同時に、親子関係を見直し、より深い絆を築くチャンスでもあります。不登校に直面したとき、親が子どもを一方的に責めたり、学校に行くよう強制したりするのではなく、子どもの気持ちや考えをじっくりと理解しようとする姿勢を持つことで、新たな関係性を築くことができます。

例えば、子どもが「なぜ学校に行きたくないのか」を話し始めたら、その言葉を否定せず、最後まで耳を傾けることが重要です。たとえ子どもの言葉に納得できない部分があったとしても、「そう思うんだね」と受け止める姿勢を示すことで、子どもは安心して自分の気持ちを話せるようになります。

また、不登校をきっかけに、親子で一緒に何かを始めるのも良い方法です。例えば、家で料理を作る時間を増やしたり、庭で植物を育てたりすることで、親子が自然と会話をする機会が生まれます。このような日常の中での触れ合いは、子どもの心を癒し、親子の信頼関係を深めるきっかけになります。

子どもとの未来を築くため、親ができること

不登校という問題に直面したとき、親として重要なのは「長期的な視点を持つこと」です。多くの親は、「早く学校に戻らせなければ」「このままでは将来が心配」といった短期的な不安にとらわれがちです。しかし、不登校はその子どもの人生全体における、ほんの一時期の出来事にすぎません。親が目先の問題に焦るのではなく、子どもの成長を長い目で見守ることで、子ども自身も安心して自分のペースで進むことができるようになります。

親が心配する気持ちは当然ですが、その気持ちを子どもに押し付けるのではなく、「あなたのペースでいい」「一緒に考えていこう」という姿勢を持つことが大切です。このような親の態度が、子どもにとって最大の支えとなります。

そして、不登校が続きやすい原因となる自己否定や自尊心の低下についても、「モノの見方」を変える手助けをすることで、新しい人間関係を作る一歩になり、学校生活という場をもう一度楽しめる可能性を高めることとなります。

登校する生徒たちの画像

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スクールカウンセラーの実態・適切な頼り方

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不登校や引きこもりの支援を専門とする児童心理司の藤原と申します。ここでは、スクールカウンセラーの役割や、不登校の子どもを持つ親御さんがどのように適切に頼ればよいのかを詳しくお話しします。私がこれまでに出会った多くの親御さんや子どもたちの経験をもとに、少しでも皆さまの心が軽くなり、次の一歩を踏み出す助けになるよう願っています。


不登校の問題と親御さんの「孤独感」

不登校のお子さんを持つ親御さんは、多くの場合、非常に孤独です。周囲に相談できる人が少なく、学校からの対応にも期待が持てないと感じている方が少なくありません。「どうしてうちの子が?」という問いかけが、親としての自己否定や家庭環境への疑念につながることもあります。このような状況下で親御さんが真っ先に感じるのは、自分たちがどこかで間違えたのではないかという罪悪感です。

ですが、ここでまずお伝えしたいことがあります。不登校は、決して「親のせい」ではありません。もちろん、家庭環境や親子関係が子どもの心に影響を与えることはあります。しかし、それはあくまで一要因であり、すべてがそこに起因するわけではないのです。不登校の背景には、学校という場が持つ構造的な問題や、子ども一人ひとりの特性、さらに社会全体の変化が複雑に絡み合っています。親が感じる罪悪感は、現状を改善するためのエネルギーを奪い取るだけでなく、子どもとの関係性にも悪影響を与えかねません。

ここで大切なのは、親自身が孤独を感じないための「つながり」を持つことです。その一つとして、スクールカウンセラーの存在を知り、適切に頼る方法を考えることが重要になります。


スクールカウンセラーとは?

スクールカウンセラーという言葉を聞くと、「学校にいる専門家」「問題を聞いてくれる人」というイメージを持たれるかもしれません。しかし、実際にはその役割はもっと広範囲で多様です。スクールカウンセラーの主な使命は、子どもたちが学校生活をより良いものにするための支援を行うことです。そのため、不登校の問題だけでなく、友人関係や学習面、さらには家庭内での悩みまで、幅広い相談を受けることができます。

しかし、多くの親御さんはスクールカウンセラーにどのように頼ればよいか分からないという現状があります。子どもが学校に行かなくなってしまうと、「そもそも学校に関わる人たちに相談するのは抵抗がある」と感じるのも無理はありません。特に、過去に学校側からの対応に不満を感じた経験があると、その感情は一層強くなるでしょう。

ここで、スクールカウンセラーを「学校の一部」と見るのではなく、「外部の専門家」として捉えてみることを提案します。実際、スクールカウンセラーは学校職員ではなく、心理学や教育学の専門的な知識を持った外部委託の専門家であることがほとんどです。学校とのつながりを持ちながらも、独立した立場で親御さんや子どもの話を聞いてくれる存在です。言い換えれば、親御さんの味方として機能する場合も多いのです。

スクールカウンセラーの現状データと概要

1. 学校カバー率

  • スクールカウンセラーの配置は、日本の公立小中学校で広がっています。2024年時点で、ほぼ全ての公立小中学校に配置されている状況ですが、実際の勤務日数や時間には地域差があります。
  • 小学校では90%以上の配置率ですが、多くの場合、週4時間未満または月1回程度の勤務が一般的です。中学校では約3校中2校が週4時間以上の勤務時間を確保していますが、全体的に「広く薄く配置されている」傾向があります。
  • 高校では9割以上に配置され、週4時間以上勤務するケースが増えていますが、不定期の配置もまだ一定割合あります。

2. 誰がスクールカウンセラーになれるのか?

  • スクールカウンセラーは、主に臨床心理士、公認心理師、もしくは心理学の高度な専門知識を持つ者が担当します。また、これらの資格に基づき、子どもや親、教職員との教育相談を行います。
  • 研修が義務付けられており、各自治体や教育委員会によって、地域特性や課題に応じたスキル向上の取り組みが進められています。また、チーム学校の一環として教職員向け研修にも参加しています【。

3. 課題

  • スクールカウンセラーの配置は進んでいますが、非常勤が多く、勤務時間が限られるため、子どもや親が必要な時に相談できるとは限りません。また、一部では配置時間の不足が継続的な相談に支障をきたしているという課題も指摘されています。
  • ICTを活用したオンラインカウンセリングが進められているものの、効果的な実施には環境整備やルール作りが必要とされています。

4. 配置の目的と成果

  • スクールカウンセラーの目的は、不登校やいじめ、家庭内問題などの早期発見と対応です。調査によれば、スクールカウンセラーが関与することで、不登校やいじめの発生率が減少するなどの効果が報告されています。さらに、災害時や緊急時の心のケアも期待される役割の一つです。

日本のスクールカウンセラーの現状を考えると、全国で配置率は向上しているものの、勤務時間の制約や地域ごとの違いが課題となっています。このため、利用する際には自治体や学校ごとの実態を理解し、効果的な活用を目指すことが重要です。

スクールカウンセラーの「具体的な頼り方」

では、どのようにスクールカウンセラーを頼るべきなのでしょうか。ここでは、いくつかの具体的なステップをお伝えします。

1. 最初の一歩を躊躇しないこと
「こんな相談をしてもいいのだろうか」「話すことで余計に問題がこじれるのでは」と考える親御さんは少なくありません。しかし、スクールカウンセラーはどんな小さな相談でも受け付けています。「子どもが最近、朝起きられない」「ゲームの時間が増えて心配」といった話題でも構わないのです。むしろ、早い段階で相談をすることで、問題が深刻化する前に対処できる可能性が高まります。

2. 子どもの状態を正確に伝える
スクールカウンセラーに相談する際には、できるだけ具体的に子どもの様子を伝えることが重要です。例えば、「学校に行きたくないと言った」「何も話さなくなった」といった事実に加えて、そのときの表情や態度、親として感じた違和感も共有してください。こうした情報は、カウンセラーが子どもの気持ちや置かれている状況を理解する手助けになります。

3. 自分の気持ちも伝える
スクールカウンセラーへの相談は、必ずしも子どもに関する内容だけに限りません。親自身が感じている不安や悩みも、カウンセラーに共有することができます。「自分がどう対応すればよいのか分からない」といった漠然とした気持ちでも大丈夫です。親の気持ちを整理することで、子どもに向き合う余裕が生まれることもあります。

4. 継続的な相談を心がける
スクールカウンセラーへの相談は、一度きりで終わる必要はありません。状況が変わったり、別の問題が出てきたりした場合には、何度でも足を運んでください。継続的な相談を通じて、カウンセラーとの信頼関係が築かれ、より深いサポートが受けられるようになります。

親が抱える「期待」と「現実」のギャップ

スクールカウンセラーに相談したからといって、すぐに問題が解決するわけではありません。不登校の問題は、表面的な対応だけではなく、子どもの内面的な成長や、周囲の環境との調整が必要になるため、時間がかかることが多いのです。しかし、このプロセスにおいて重要なのは、親が「変化の兆し」を見逃さないことです。

例えば、子どもが以前よりも家で笑うようになった、少しだけでも学校の話題に触れるようになったといった小さな変化は、大きな前進を意味しています。スクールカウンセラーを頼ることで、こうした変化を共有し、次のステップへの道筋を一緒に考えることができます。

スクールカウンセラーの限界と併用するべき支援

スクールカウンセラーは頼りになる存在ですが、全ての問題を解決できるわけではありません。カウンセラー自身にも担当できる範囲や限界があります。特に、深刻な精神的問題や診断が必要な場合には、専門医やクリニックとの連携が求められます。この点を理解した上で、スクールカウンセラーを適切に利用することが大切です。

また、親御さん自身が他のサポートを併用することも検討してください。例えば、不登校の親同士で交流できる自助グループや、地域の教育支援センターなどがあります。これらは親自身の孤立感を軽減し、具体的な対策や気持ちの整理をする場として非常に有効です。

こうした支援とスクールカウンセラーを併用することで、子どもと親が孤立せず、問題解決に向けた柔軟なアプローチが可能になります。

スクールカウンセラーが教えてくれる「親の役割」

多くの親御さんは、不登校という現実に直面すると「親として何をすればいいのか」という悩みに押しつぶされそうになります。その答えを見つけるために、スクールカウンセラーの助言が役立つことがあります。実際、カウンセラーからよく伝えられるのは、「親の役割は完璧でなくていい」というメッセージです。

例えば、不登校の子どもは家庭の中で自分の居場所を見つけることが何よりも大切です。そのためには、親自身が「何とかして学校に戻らせなければ」という焦りを手放す必要があります。この焦りが子どもに伝わると、余計にプレッシャーを感じさせ、状況を悪化させることがあります。代わりに、まずは子どもの心の安全基地としての役割を果たすことを意識しましょう。

スクールカウンセラーは「学校復帰」という目標を急ぐよりも、「子どもが自分らしく成長する道筋」を一緒に模索してくれる存在です。その過程で、親として何ができるのかを考えるヒントを与えてくれます。例えば、日常生活でどのように声をかければいいのか、家庭内でどんな雰囲気を作れば子どもが安心できるのかといった具体的なアドバイスを受けることができます。


不登校は「成長の過程」であると考える

不登校は決して子どもにとって「失敗」ではありません。むしろ、子どもが自分自身と向き合い、将来を考える貴重な機会であると捉えるべきです。スクールカウンセラーの役割は、こうした「成長の過程」に寄り添い、親と子どもが共に前向きに歩むサポートをすることにあります。

例えば、ある親御さんのケースでは、子どもが学校に行けなくなってから自然と興味を持ち始めた絵を描く活動が、後に進路選択のきっかけになったという話がありました。この家庭では、スクールカウンセラーが子どもの好きなことを引き出し、それをどう生かしていけるかを一緒に考えてくれたのです。

親としては、「今は学校に行けていなくても、子どもには未来がある」と信じることが重要です。この信念を持つためには、時にはスクールカウンセラーのような専門家の視点を借りることが有効です。親一人で全てを抱え込む必要はありません。


最後に:親が「信じる力」を持つことの重要性

最後にお伝えしたいのは、親が子どもを信じる力を持つことの重要性です。不登校の子どもは、多くの場合、自分自身に対する自信を失っています。その中で、唯一無条件に信じてくれる存在が親であることは、何よりも大きな支えになります。

スクールカウンセラーは、子どもと親の間に立ち、双方が互いを理解し、信じる力を回復する手助けをします。そして、その関係性が築かれることで、子どもは再び自分のペースで前に進む力を取り戻すことができるのです。

不登校という問題は、簡単には解決できない複雑な課題です。しかし、スクールカウンセラーという味方を得ることで、その道のりを少しでも軽やかにすることができます。親御さん自身も無理をせず、時には自分を労わりながら、子どもの成長を長い目で見守っていただければと思います。

これからの道のりにおいて、少しでも明るい兆しが見えることを心より願っています。


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私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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いじめによって不登校になった場合の対処


目次


いじめが原因で不登校になった場合、学校との連携は問題解決において欠かせない要素です。しかし、現実的には、学校側の対応が不十分だったり、解決に向けた行動が遅れるケースも少なくありません。そのような中で、親としてどのように学校と向き合い、子どもにとってより良い環境を作っていくかが重要な課題となります。これから、学校との具体的な連携方法を徹底的に掘り下げて解説します。

1. 学校との信頼関係を築く:連携の第一歩

学校との連携を効果的に進めるには、親が感情的にならず、冷静で協力的な態度を保つことが何よりも大切です。学校の教師やスタッフも、問題を解決したい気持ちは同じですが、業務の多忙さや複雑な人間関係から、時に十分な対応ができないことがあります。そのため、対立的な姿勢を取るのではなく、あくまで「子どもの利益を第一に考えた協力者」として接することが必要です。

たとえば、初めて学校に相談する際は、事実を整理した上で、簡潔かつ具体的に伝えるよう心がけましょう。以下のような情報をまとめて持参すると、学校側が迅速に状況を把握しやすくなります。

  • いじめの状況に関する詳細な記録
     いじめの具体的な内容(身体的・言葉の暴力、仲間外れ、無視など)、発生した日時、場所、関わった生徒の名前や状況。
  • 子どもの変化や反応
     不登校になる前後で見られた子どもの行動や感情の変化。例えば、食欲が落ちた、夜眠れない、学校の話題を避けるなどの具体例。
  • 親が把握している背景情報
     いじめが始まるきっかけと思われる出来事、学校行事やクラス内でのトラブル、教師の関わり方に関する情報など。

これらの情報を基に、担任教諭だけでなく、必要に応じて学年主任やスクールカウンセラー、さらには学校長と話し合いの場を設けることが効果的です。特に、いじめの深刻さが明らかな場合、学校全体のサポート体制を早急に整えてもらうことが重要です。

2. 学校の調査と対応策を促す:責任範囲を明確化する

学校に問題を報告した後は、いじめの調査と解決に向けた具体的な対応策を促しましょう。ここで重要なのは、学校が問題を把握しているだけでなく、実際にどのような行動を取る予定であるかを確認し、それを記録に残すことです。

例えば、学校とのやり取りでは以下の点を確認してください。

  • いじめの調査内容と進捗状況
     どのような方法でいじめを調査しているのか(加害者や被害者、第三者への聞き取り、SNSやノートの確認など)、調査の進捗状況。
  • 具体的な対応策
     いじめを防止するためにどのような措置を取るのか(加害者への指導、新しいクラス編成の検討、担任の変更など)。
  • 子どもの安全確保
     被害を受けた子どもが安心して学校生活を再開できる環境作りについて(保健室登校や特別支援教室の利用、教師のサポートなど)。

また、口頭でのやり取りだけでなく、話し合いの内容を文書にまとめるよう学校に依頼することをお勧めします。これにより、親として何が話し合われたのかを正確に把握できるだけでなく、後に問題が再発した際の証拠としても役立ちます。

3. 学校の対応が不十分な場合:教育委員会の活用

残念ながら、学校がいじめ問題に対して適切な対応を取らないケースもあります。そのような場合、教育委員会に相談することは非常に有効な手段です。教育委員会は、学校を監督する立場にある行政機関であり、学校では対応が困難な場合に具体的な指導や助言を行う役割を担っています。特に、いじめ問題や不登校のケースでは、教育委員会が親や子どもの立場を考慮し、学校に改善を促すケースが少なくありません。

1. 教育委員会に相談するタイミングを見極める

教育委員会に相談するべきかどうかを判断する際、まず考慮すべきは学校側の対応状況です。以下のような場合、教育委員会への相談を検討することが適切です。

  • 学校がいじめの事実を認めない、または調査を行わない。
  • 学校が加害者側の指導や被害者の安全確保に向けた具体的な対策を講じていない。
  • 何度も学校に相談しているにもかかわらず、対応が進展しない。
  • 学校側とのやり取りで、親が感情的になってしまい、建設的な話し合いが難しい。
  • いじめや不登校の状況が長期化し、子どもの心身の健康がさらに悪化するリスクが高まっている。

教育委員会は、親や子どもの立場に立って学校と調整を図る役割を持っています。学校の対応が不十分だと感じた場合は、ためらわずに教育委員会に相談を持ちかけましょう。

2. 教育委員会への相談の準備

教育委員会に相談する際は、学校と同様に、具体的な事実や状況を整理して伝えることが重要です。感情的な訴えだけではなく、客観的な情報を基に相談を進めることで、教育委員会側もスムーズに対応を開始できます。以下は、相談前に準備すべき項目です。

  • いじめや不登校に関する詳細な経緯の記録
     いつ、どこで、どのような状況でいじめが発生したのか、子どもの不登校が始まった時期や理由について、具体的に書き出します。
  • 学校とのやり取りの記録
     学校との話し合いの内容、対応の進捗状況、不満に感じた点や未解決の課題について、日時や内容を整理して記録します。
  • 関連する証拠資料
     いじめの証拠となるメモ、SNSでのやり取りのスクリーンショット、学校との文書やメールのやり取りなど、事実を裏付ける資料を用意します。
  • 親としての要望や希望
     具体的にどのような対応を望んでいるのか(例:いじめの解消、加害者への指導、被害者の安全確保、転校支援など)、明確にしておきましょう。

準備が整ったら、まずは電話で教育委員会に連絡し、面談や相談の日時を予約します。この際、「学校とのやり取りが進まない」「いじめが深刻で、子どもの安全が心配」といった概要を伝えるとスムーズです。

3. 教育委員会への相談時の流れ

教育委員会との面談や相談では、以下のような流れで進むことが一般的です。

追加の支援や外部機関の紹介
 場合によっては、カウンセリングやNPO団体、法律相談窓口など、外部機関のサポートを紹介されることもあります。

相談内容のヒアリング
 最初に、いじめや不登校の状況について詳細に説明します。この段階では、感情的にならず、事実に基づいた情報を冷静に伝えることが大切です。

教育委員会の対応方針の提示
 相談内容を受けて、教育委員会側が学校への指導や助言、場合によっては直接的な介入の方針を説明します。

改善プランの共有
 教育委員会が学校にどのような指導を行うのか、また親としてどのような協力が求められるのかを具体的に共有します。必要に応じて、定期的な経過報告の場を設けることもあります。


4. 学校環境の調整:クラス替えや転校の検討

いじめの解決策として、学期の変わり目にクラスを変える、あるいは転校を検討することは効果的な手段の一つです。ただし、この選択肢にはいくつかの現実的な課題があります。

クラス替えの実現性
いじめを行った子どもがクラスを移るべきだという意見は正論ですが、現実的には実現が難しい場合が多いです。そのため、親としては被害を受けた子どもが安全を確保できる形でのクラス替えを学校に要請することが現実的な対応になります。

転校の是非
転校は親にとって大きな決断ですが、時には新しい環境で子どもが気持ちをリセットすることが効果的です。ただし、転校先でのいじめリスクや新しい環境に適応するための負担も考慮する必要があります。転校を検討する際は、子ども自身の意思を尊重しながら、冷静に判断してください。


5. ケーススタディ:学校との連携が成功した実例と失敗例

親御さんが学校との連携に苦労するのは、どの家庭でも同じです。しかし、成功例から学ぶことは非常に多くあります。ここでは、いじめによる不登校の対応において、学校との連携が成功したケースと失敗したケースを比較し、どのように対応すれば効果的かを具体的に検討してみましょう。

成功例:学校と一丸となって解決に取り組んだケース

ある家庭では、中学2年生の娘さんがクラスメートからの無視や悪口を受け、不登校になりました。お母さんは早期に学校へ相談し、以下のような連携を取ることで、子どもの復帰を実現しました。

  • 学校側の対応
     担任教諭だけでなく、スクールカウンセラーや副担任も含めた「支援チーム」を編成し、定期的に状況を共有する場を設けました。また、クラス全体に対して「思いやりを持った行動を促す」という教育活動を実施し、いじめを防ぐ風土づくりを進めました。
  • 親の役割
     お母さんは、娘さんが少しずつ学校に戻る準備ができるよう、保健室登校や登校時間の調整を提案しました。また、自宅でも娘さんの不安に耳を傾け、「無理をしないで大丈夫」という安心感を与える一方で、「小さな目標を一緒に考えよう」と具体的な行動を支援しました。
  • 結果
     クラス替えのタイミングで新しい環境に移行することで、いじめが自然と収まりました。娘さんは最初は保健室登校から始め、数か月後には授業にも参加できるようになりました。

失敗例:学校側の対応が後手に回ったケース

一方、別の家庭では、小学5年生の息子さんが同級生から暴力を受けたことがきっかけで不登校になりました。お母さんは学校に相談しましたが、次のような要因が解決を妨げました。

  • 学校側の対応の遅れ
     担任教諭が「子ども同士の問題」として軽視し、適切な調査を行わなかったため、いじめの事実が明らかになるまでに時間がかかりました。また、加害児童の親との面談も消極的で、いじめが止まることはありませんでした。
  • 親の孤立
     お母さんは学校の対応に失望し、教育委員会に直接相談しましたが、具体的な改善にはつながらず、最終的に息子さんを転校させる決断をしました。転校後も環境への適応に時間がかかり、息子さんは新しい友人関係を築くのに苦労しました。
  • 教訓
     学校との連携がうまくいかない場合でも、感情的になるのではなく、記録を整え、外部機関を活用して解決を図ることが重要です。また、教育委員会やNPOを早期に活用することで、より迅速な対応を引き出せた可能性があります。

成功に導くためのポイント

上記のケースから学べることは、次の3点です。

  1. 学校との連携をスムーズにするための工夫
     学校側の関係者を巻き込むだけでなく、親自身も積極的に行動し、提案型の姿勢で連携を進める。
  2. 親としての冷静な対応
     感情的にならず、具体的な記録や解決策を提示することで、学校側の理解を得る。
  3. 複数の解決手段を同時進行で準備する
     学校だけでなく、外部機関や専門家の助けを早期に求め、対応が遅れるリスクを軽減する。

6. 学校連携における心理的負担への配慮

学校との連携を進める中で、親御さん自身が心理的な負担を感じることも少なくありません。「学校に迷惑をかけているのではないか」「子どものためにもっと何かできるのではないか」といった思いに押しつぶされそうになる親御さんも多いでしょう。

しかし、ここで大切なのは、「親が疲弊してしまうと、結果的に子どもも影響を受ける」という事実を理解することです。不登校問題に取り組む際、親の心の健康を保つことは不可欠です。

7. 学校との連携を通じて子どもに希望を届ける

学校との連携を進める目的は、単に問題を解決することではなく、子どもが再び「希望」を持てるようになる環境を整えることです。不登校を乗り越える過程は一朝一夕ではありませんが、親と学校が一丸となってサポートを続けることで、子どもは必ず一歩を踏み出せる日が訪れます。


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不登校になりかけの時に親がすべき3つの行動

不登校になりかけの時に親がすべき3つの行動のイメージ

目次


私は児童心理カウンセラーの藤原と申します。不登校や引きこもり問題に取り組む現場で、数多くの親子と向き合ってきました。不登校は、原因を探ることだけでは解決しません。子どもが不登校の状態を「日常」として受け入れてしまう前に、親としてできることに目を向けるべきです。今回は、不登校になりかけた時に、親がどのように行動すればよいのかについて、私の経験を踏まえてお話ししたいと思います。特に、不登校が長期化するリスクを減らし、子どもの可能性を守るための具体的な方法を、学校との連携を含めてお伝えします。

(前段)不登校の「予兆」に気づくために

不登校は、ある日突然起こるものではありません。多くの場合、その前兆が見られるものです。しかし、親は日常の忙しさや、子どもの言動の「当たり前さ」に紛れて、その変化を見逃してしまうことがあります。たとえば、以下のような兆候は、不登校のサインかもしれません。

  • 朝の準備が極端に遅い、または機嫌が悪い
  • 「頭が痛い」「お腹が痛い」と頻繁に身体の不調を訴える
  • 学校や友達の話題を避けるようになる
  • ゲームやスマホに依存する時間が増える
  • 授業に遅刻が増え、欠席日数が徐々に増加する

これらの行動は、ただの気まぐれではなく、心や体に不安が生じているサインであることが多いです。大切なのは、これらの変化に気づいた際に、親が慌てたり感情的になったりせず、冷静に子どもに接することです。

たとえば、朝起きられないときに「怠けている」と叱るのは逆効果です。代わりに、「どうして朝がつらいのかな?」と問いかけ、子どもの感覚や状況を理解しようと努めることが重要です。また、身体の不調を訴える場合には、医師の診察を受けることも選択肢の一つです。「本当にどこも悪くない」と医師から確認されるだけで、親が冷静になるきっかけになることもあります。

さらに、親として注意すべきは、「何が原因なのか」を問い詰めすぎないことです。不登校の原因は必ずしも一つではなく、複数の要因が絡み合っている場合がほとんどです。そして、本人でさえも「なぜ行けないのか」をはっきり言葉にできないことがあります。親が原因にばかり目を向けると、子どもを追い詰める結果になりかねません。大切なのは、子どもの状態を冷静に観察し、今すべき具体的な対処を考えることです。

行動1. 学校との「建設的な連携」を図る

不登校になりかけたとき、学校との連携が非常に重要になります。しかし、ここで注意すべきなのは、「学校を責める姿勢」を取らないことです。親が学校に対して感情的になり、「学校が悪い」と批判を続けると、結果的に子どもの問題解決の道を狭めてしまいます。

まず、担任の先生との連絡を定期的に取り合うことを心がけましょう。電話やメール、面談など、手段は問いませんが、学校での子どもの様子についてできるだけ詳細な情報を得ることが重要です。たとえば、友人関係の状況や授業中の態度、休み時間の過ごし方など、学校ならではの視点から得られる情報は、親が家庭での対応を考える上で非常に役立ちます。

さらに、家庭でできる学習支援も重要です。学校のプリントや教科書を活用し、授業内容を家庭で補うことで、子どもが学習から完全に離れることを防ぐことができます。学習が滞ると、子どもは「もう取り戻せない」という感覚に囚われてしまい、さらに学校復帰が難しくなる可能性があります。親が無理のない範囲で学習を支えることで、子どもの自信を少しずつ回復させることができます。

ただし、学校と連携する中で、親が学校の全てを信頼する必要はありません。場合によっては、学校側の対応が不十分だったり、子どもにとって適切でない場合もあるでしょう。そのような場合は、教育委員会やスクールカウンセラーに相談するなど、他のリソースを活用することも視野に入れてください。

学校との面談イメージ

行動2. 家庭での「過ごし方」を見直す

不登校が長引く一因として、家庭が「居心地の良い場所」になりすぎている場合があります。親が子どもを心配するあまり、過保護になったり、子どもの言い分を全て受け入れたりすることで、家庭が過度に快適な空間になってしまうと、子どもは学校に戻る必要性を感じにくくなります。

たとえば、子どもが学校を休んでいる間に好きなだけゲームをしたり、スマホで友達と連絡を取ったりすることを許していませんか?これでは、「学校に行かなくても楽しい」と感じてしまい、結果的に不登校の状態を助長してしまう可能性があります。

親としては、家庭でのルールを見直し、一定の緊張感を持たせることが重要です。具体的には、以下のような取り組みを試してみてください。

  • 平日の昼間はゲームやスマホを制限する
  • 朝は必ず決まった時間に起きるよう促す
  • 日中はできる限り机に向かい、学習や創作活動に時間を使わせる
  • 家事の一部を手伝ってもらうなど、家庭内での役割を持たせる

これらの取り組みを通じて、子どもが「家での時間もそれなりに責任が伴う」という感覚を持つようになります。ただし、これらを実行する際には、決して感情的にならず、愛情を持った態度で接することが大切です。叱責や批判は、子どもをさらに追い詰めるだけで逆効果です。

また、親自身が「学校に戻ることが全てではない」という柔軟な考えを持つことも重要です。不登校は、時には子どもが自分のペースで成長するための時間でもあります。焦らずに見守りながら、少しずつ前進することを目指してください。

行動3. 子どもと向き合う姿勢を整える

不登校になりかけている子どもに対して、親が最も重要視すべきなのは「共感」と「信頼」です。子どもは、親のちょっとした態度や言葉から、自分が責められているかどうかを敏感に感じ取ります。そのため、「なぜ学校に行かないのか」「どうして頑張れないのか」といった言葉は、できるだけ避けるようにしましょう。

代わりに、「学校に行けない今の気持ちを教えてくれる?」といった共感的な言葉を使うことで、子どもが少しずつ自分の気持ちを親に打ち明けやすくなります。親が子どもの話を否定せずに受け入れることで、子どもは「親は自分の味方である」と感じ、不登校という状況から抜け出すための第一歩を踏み出しやすくなります。

また、親自身が冷静であることも大切です。不登校の問題に直面すると、親も焦りや不安を抱えやすくなります。しかし、親が感情的になると、子どもにもその不安が伝わり、状況がさらに悪化する可能性があります。親が心の余裕を持ち、冷静に対応することで、子どもにとっての安心感が生まれます。

子どもにとっての「安全基地」としての役割を果たしながら、必要なときには毅然とした態度で接する。これが、不登校を防ぐための親としての重要な心構えです。

最後に

不登校になりかけの時期に、親ができることは数多くあります。冷静に兆候を見極め、学校と建設的に連携し、家庭での生活習慣を整えることで、子どもが少しずつ学校に戻る準備を整えることができます。そして何よりも大切なのは、親が子どもの最大の理解者であり、応援者であることを示すことです。


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「親」のスマホ依存が与える子どもへの影響

「親」のスマホ依存

目次


愛着形成とスマホ依存の影響

はじめまして。不登校や引きこもりを専門に支援している児童心理カウンセラーの藤原と申します。今までの数え切れない事例から、不登校や引きこもりの問題は単なる「子どもの問題」ではなく、「親子関係や家庭環境の中で形作られる問題」であることが多いと感じています。そして、現代の親子関係の課題として、近年急速に注目されつつあるのが「親のスマホ依存」です。この問題は、親の無意識のうちに進行し、結果として子どもの心に深刻な影響を与える可能性があります。

子どもの健全な成長に欠かせないのは、親との良好な愛着形成です。しかし、親がスマートフォンに多くの時間を費やすことで、この愛着形成が阻害されるケースが増えていると感じます。まず、この問題の本質に触れるために、愛着形成がどのように子どもに影響を及ぼすか、そしてそれが親のスマホ依存によってどのように変容するのかを詳しく掘り下げていきます。

愛着形成の重要性

「愛着形成」という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。これは、乳幼児期から学童期にかけて子どもが親との間で築く、信頼や安心感の基盤を指します。たとえば、子どもが泣いたときにすぐに対応してくれる親の姿を見たり、子どもが発した些細な言葉や行動に対して親が関心を持って応答する、こうした繰り返しの中で子どもは「自分は愛されている」と感じ、心が安定していきます。

しかし、この愛着形成の基盤が不十分であると、子どもは精神的な不安定さを抱えるようになります。親からの適切な反応が得られない子どもは、「自分は大切にされていないのかもしれない」という感覚に陥りやすくなります。このような状況は、子どもの自己肯定感を著しく低下させ、結果的に学校生活や人間関係において消極的になる原因を作り出します。

たとえば、カウンセリングを通じて接してきたある小学生のケースでは、親が家にいる間ずっとスマートフォンでSNSを見ているため、子どもが話しかけても「うん」や「後で」といった短い返答で終わってしまう状況が続いていました。その結果、子どもは自分の話が重要ではないと感じるようになり、学校での出来事や友達との関係について話すことも次第に避けるようになりました。最終的には、学校でのトラブルを一人で抱え込み、不登校という形で表面化したのです。

スマホ依存による親子の関係断絶

スマートフォンが親子関係に与える影響の一つに、「親子の断絶」が挙げられます。断絶とは、物理的に離れているわけではなく、心理的な距離が広がることを意味します。親がスマートフォンを使っている時間、子どもとの会話や視線の共有は明らかに減少します。その結果、子どもは「親にとってスマホの方が自分より重要だ」と感じるようになります。

心理学的な視点から言えば、子どもにとって親からの視線や反応は、心の発達に欠かせない「栄養」です。親の視線を通して子どもは「自分は価値のある存在だ」と感じることができます。しかし、親がスマホを見続けていると、この視線の共有が減少し、子どもに心理的な飢餓状態が生まれるのです。この飢餓状態が続くと、子どもはどうなるでしょうか。
子どもはまず、親の関心を引こうとあらゆる手段を試みます。しかし、それでも親がスマホに夢中で反応を示さない場合、子どもは「どうせ何をやっても無駄だ」と学習してしまいます。この状態が長引くと、子どもは外の世界や他者との関係にも消極的になり、不登校や引きこもりの原因となる可能性があります。

親が意識しない「無視」の影響

興味深い研究があります。それは、「無視」の影響が子どもの精神発達にどれだけ大きなダメージを与えるかを示したものです。無視とは、言葉や行動での否定ではなく、親が子どもに関心を示さない状態を指します。スマホ依存の親が無意識のうちに行う行動が、まさにこれに該当します。
この無視の影響を受けた子どもは、自分の存在意義に疑問を持ちやすくなります。そして、それが引き金となり、学校生活や人間関係においても消極的な態度を取るようになります。ある中学生の事例では、親がスマホゲームに夢中で会話がほとんどなかったため、子どもは家庭内での孤独感を深め、学校でも友達との関係を構築できず、最終的に不登校となりました。

スマホ依存の仕組みと親の行動変容の必要性

スマホ依存の仕組みとその強力さ

現代のスマートフォンは、私たちの生活を便利にしてくれる一方で、非常に強力な依存性を持っています。なぜこれほど多くの人がスマホを手放せなくなってしまうのか。それは、スマホやスマホアプリが「人間の脳の仕組み」に巧みに働きかける設計になっているからです。

スマートフォンが私たちに与える刺激の一つに「断続的な報酬」があります。これは、SNSの通知やスマホゲームの報酬システムによって実現されています。たとえば、SNSを開けば「いいね」やコメントといった小さな報酬が得られる可能性がありますが、そのタイミングは予測できません。この「予測できない報酬」の仕組みは、人間の脳にとって非常に魅力的です。脳内でドーパミンと呼ばれる快感を司る物質が分泌され、私たちはその刺激を求めてスマホを手に取るようになります。

さらに、スマホゲームでは「次に何か良いことが起きるかもしれない」という期待感を与え続けることで、ユーザーをゲームに引き込む仕組みが存在します。このような射幸心を煽る仕組みが、親たちを含めた多くの人をスマホに夢中にさせ、気づけば1日が終わっている、という状況を引き起こしているのです。

親がスマホ依存に陥る背景

親がスマホに頼りがちな理由の一つに、「便利さ」や「息抜きの手段」という側面があります。特に子育て中の親にとって、スマホは情報収集や友人とのつながり、ストレス発散など、多くの役割を果たす貴重なツールです。また、子育てにおいて孤立感を抱える親にとって、SNSやオンラインコミュニティは大切な居場所になることがあります。

しかし、こうした利用が「無自覚の依存」に変わると問題が生じます。たとえば、子どもが目の前にいるのに無意識にスマホを開いてしまう、子どもとの会話中に通知が来ると反射的に画面を見てしまう、という行動が積み重なると、親子の関係性に影響が出るのは避けられません。

親自身の変化が必要な理由

では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか。まず大切なのは、「親自身が変わること」です。

親がスマホ依存から抜け出すことで、子どもとの接点を増やし、家庭内のコミュニケーションを円滑にすることができます。親がスマホに費やす時間を意識して減らす努力をすることで、子どもにとって「自分は親にとって大切な存在だ」という感覚が再び生まれます。
また、親がスマホ依存を克服する姿を見せることは、子どもへの良い手本にもなります。子どもは親の行動を観察し、それを模倣する傾向があります。親が自らのスマホ依存をコントロールする姿勢を示せば、子どももその影響を受けて、スマホとの適切な付き合い方を学ぶことができるのです。

スマホ依存を克服するための具体的な方法

親がスマホ依存を克服する第一歩

スマホ依存を克服するためには、まず「自分がどれだけスマホを使っているかを知る」ことから始めるのが効果的です。現在は、多くのスマートフォンに利用時間を記録する機能がついています。この機能を活用し、1日にどれくらいの時間をスマホに費やしているのかを確認してみましょう。
例えば、1日に4~5時間をスマホに費やしているとしたら、その時間の一部を子どもとの触れ合いに充てることを考えてみてください。「子どもと一緒に過ごす時間を増やす」という明確な目標を立てることで、スマホに依存する生活から少しずつ抜け出すことができます。

具体的な取り組み例

  1. 時間帯を決める
    スマホを使用する時間帯をあらかじめ決め、ルールを作ることが有効です。たとえば、「子どもが起きている間はスマホを見ない」「子どもと食事をする際はスマホを別の部屋に置く」といった具体的なルールを設けてみましょう。
  2. スマホの通知をオフにする
    スマホの通知は依存を強化する原因の一つです。通知が来るたびに画面を見る習慣がついてしまうため、SNSやゲーム、メールの通知をオフにすることで無駄な使用を防ぐことができます。
  3. 家族でスマホの利用ルールを共有する
    家族全員でスマホの使用に関するルールを話し合い、共有することも効果的です。「夜8時以降はスマホを触らない」「家族で過ごす時間はスマホ禁止」など、家族全体で取り組むことで、親自身も習慣を守りやすくなります。
  4. 子どもと一緒に楽しむ時間を増やす
    スマホに時間を費やす代わりに、子どもと一緒に楽しめるアクティビティを増やしてみてください。たとえば、一緒に料理をする、散歩に出かける、本を読むなど、スマホ以外の選択肢を意識して取り入れることが重要です。

親子の関係再構築が不登校克服のカギ

親の行動が子どもに与える影響

親がスマホ依存を克服し、子どもとの時間を増やすことで、子どもには多くのポジティブな変化が現れます。まず、親が自分に向き合ってくれると感じることで、子どもは安心感を得られます。この安心感は、子どもの自己肯定感を高め、学校生活や人間関係における積極性を引き出す原動力となります。
また、親がスマホに頼らずに子どもと接する姿勢を示すことで、子どもは「人と向き合うことの大切さ」を自然と学ぶことができます。これは、子どもが将来社会に出たときに良好な人間関係を築く力にもつながるのです。

不登校や引きこもりの問題を解決する上で、私は一貫して「親子の関係再構築」が最も重要な要素の一つであると考えています。不登校の原因は、学業のプレッシャーや友人関係、個々の気質など様々ですが、その問題が「長期化する」要因の多くは、家庭環境に起因します。そして、その中でも特に大きな役割を果たすのが親子関係です。ここでは、親子の関係が不登校克服にどのように関わるのかを深掘りし、さらに再構築の具体的なステップについて詳しく説明します。

親子の対話

不登校を長引かせる「日常のパターン化」

まず、不登校の大きな特徴として挙げられるのは、その状態が日常のパターンとして固定化されてしまうことです。不登校が長期化する理由は、学校に行かない生活が「子どもにとって居心地が良いもの」として定着してしまう点にあります。これは、単に子どもが怠けているわけではありません。不登校の初期段階では、学校での辛い経験や心の負担から一時的に逃れようとする防衛本能が働きます。その結果、家での生活が「安全地帯」として位置づけられ、学校へ戻るモチベーションがどんどん失われていくのです。

ここで、親の行動が非常に大きな意味を持ちます。親が無意識のうちに子どもの現状を「受け入れすぎる」ことで、子どもが学校に行かない生活をさらに当たり前と感じるようになります。例えば、「家で子どもが落ち着いているなら、それで良いのではないか」と考え、子どもに特別なアプローチを取らず、ただ見守るだけの状態が続くとします。このような見守りは、一見すると子どもの自立を尊重しているようにも見えますが、実は逆効果になることもあります。

親が子どもに「挑戦する機会」を与えないまま、日常のパターンを固定化させると、子どもはそのコンフォートゾーンから抜け出す力を失ってしまいます。この状況を打破するためには、親が意識的に「関わり方」を変え、子どもとの関係を新たに築き直す必要があるのです。

親子の関係が不登校克服に及ぼす影響

不登校を克服する過程で、親子関係の再構築が重要である理由は、子どもにとって親の存在が心理的な「基盤」となるからです。どれほど学校での経験が辛かったとしても、家庭が安心感に満ちていれば、子どもはもう一度外の世界に向き合う勇気を持つことができます。一方で、家庭内に緊張感や孤独感があると、子どもはますます内向的になり、外の世界と関わることを避けるようになります。

親子関係を再構築する過程で特に重要なのは、「親が子どもの感情に寄り添う」という姿勢です。不登校の子どもたちは、学校での辛さや友人関係のトラブル、または学業へのプレッシャーなど、さまざまなストレスを抱えています。しかし、それを表に出すことが苦手な子どもも少なくありません。特に小学校高学年や中学生になると、「自分の感情を伝えるのは恥ずかしい」と感じたり、「親に心配をかけたくない」と思ったりして、気持ちを隠すケースが多いのです。

このとき、親が「どうして学校に行かないの?」と問い詰める姿勢ではなく、「今どんなことが一番つらい?」と穏やかに問いかけたり、「学校に行くことだけが全てではないよ」と子どもの気持ちを肯定したりすることで、子どもは徐々に自分の感情を開示しやすくなります。このプロセスが、子どもが不登校の状態から一歩を踏み出すための第一歩となるのです。

スマホ依存の改善が親子関係に与える影響

親子関係を再構築する上で見落とされがちなのが、親自身の行動、特に「スマートフォンの使い方」です。親がスマホを手放せない状態でいると、子どもは親の関心が自分ではなくスマホに向けられていると感じてしまいます。こうした感覚が続くと、子どもは「どうせ自分に話しかけても親はちゃんと聞いてくれない」と考え、親に対して心を閉ざしてしまうことがあります。

例えば、ある中学生のケースでは、母親が毎晩リビングでスマートフォンを見続けていることが原因で、子どもが「自分の話をしても母親は聞いてくれない」と思い込んでいました。そこで、カウンセリングを通じて母親がスマホの利用時間を減らし、夜はスマホを別室に置いて子どもとの時間を増やすようにしたところ、子どもが母親に悩みを打ち明ける機会が増え、最終的に学校復帰への意欲を見せるようになったのです。

このように、親がスマホ依存を改善することは、親子の関係を再構築し、不登校克服への道を開くための大きな一歩となります。

親子関係の再構築のための具体的なアプローチ

親子関係を再構築するためには、以下のような具体的なアプローチが効果的です。

  1. 子どもの声に耳を傾ける
    子どもが話をしたいと思ったときに、親がすぐに対応できるようにすることが大切です。親がスマホに夢中になっていると、この「タイミング」を逃してしまいます。特に夜の時間帯はスマホを手放し、子どもと会話できる環境を整えましょう。
  2. 親自身が行動で示す
    「スマホの時間を減らす」「外出して一緒に体を動かす」「子どもの趣味に付き合う」など、親が積極的に行動を変える姿を見せることで、子どもは「自分のために親が変わってくれた」と感じ、親子の信頼関係が深まります。
  3. 小さな成功体験を共有する
    子どもが家で取り組んだ些細なことでも、「よくやったね」と認めてあげることで、子どもは自己肯定感を高めることができます。また、親子で一緒に楽しめるアクティビティを増やし、共有の思い出を作ることも関係改善につながります。

親子関係が築けるとき、子どもは動き出す

親子の関係が再構築され、家庭が子どもにとって本当の意味での「安心できる場所」となったとき、子どもは外の世界に向き合う力を徐々に取り戻します。不登校の克服には時間がかかる場合もありますが、親が変わり、家庭環境が改善されれば、子どもも自然と変化していきます。

不登校を克服するための第一歩は、子どもを急かすことでも、問題を根掘り葉掘り聞き出すことでもありません。親が「一緒にいること」「向き合うこと」に意識を向け、子どもとの絆を再構築することが、何よりも効果的な解決策なのです。

最後に: スマホとの新しい付き合い方を模索する

親がスマホを使う時間を減らし、子どもと向き合う時間を増やすことは、親子関係を深めるだけでなく、子どもの心の成長に大きな影響を与えます。スマートフォンは便利なツールですが、それに依存することで失われるものも多いことを忘れてはいけません。
スマホを使う時間を見直し、子どもとの触れ合いを優先することで、親子の絆はさらに強固なものになります。そして、この絆こそが、不登校や引きこもりを克服し、子どもが自分の力で未来を切り開いていくための土台となるのです。
親が少しずつスマホとの向き合い方を変えることで、子どもたちには必ず良い影響が現れます。どうか、今日からその一歩を踏み出してみてください。

関連記事:小学生、中学生のスマホ制限・メリットとデメリット

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「ふつうの子」なんて無い


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私は児童心理カウンセラーの藤原と申します。不登校や引きこもりの子どもたちを専門にサポートをしています。これまで多くの親御さんとお話しする中で、「普通の子」に対する考え方やその先入観が、親子関係や子どもの心にどれほど大きな影響を与えるのかを目の当たりにしてきました。

本稿では、「ふつうの子」なんて無い、という題名のもと、子どもたちの個性や生きづらさを理解し、親としてどう寄り添えるかを掘り下げていきます。


「普通」を求めることの落とし穴

親として、我が子が「普通」であってほしい、特別な問題を抱えず、周囲に馴染み、順調に成長してほしいと願うのは当然のことです。学校に通い、友達と楽しく過ごし、やりたいことを見つけ、将来に向かって歩んでいく姿を思い描くのは自然なことです。しかし、その「普通」という言葉が、時に子どもの苦しみの原因になることをご存じでしょうか。

不登校や引きこもりの子どもたちと接していて感じるのは、多くの場合、子どもたちは自分を「普通ではない」と思い込んでいるということです。「他の子どもたちはみんな学校に行けているのに、どうして自分は行けないのだろう」「自分はダメな子だ」と、子どもたちは自分を責めてしまうのです。そしてその背景には、多くの場合、親や周囲の「普通であってほしい」という期待が影を落としています。

もちろん、親として「普通であってほしい」と願うこと自体が悪いわけではありません。問題は、それが子どもにとって「自分のありのままを否定されている」と感じさせてしまう点にあります。例えば、「学校に行かないなんて普通じゃないよ」「みんなやっているんだから頑張ってごらん」といった言葉は、励ましのつもりでも、子どもにとっては「自分はダメなんだ」というメッセージに聞こえることがあります。

私たちは「普通」という言葉を使う時、その背後にある基準を無意識に社会や周囲の価値観に頼っています。しかし、果たしてその基準は絶対的なものでしょうか?たとえ学校に行けなかったとしても、友達と過ごす時間が少なかったとしても、それはその子にとっての「普通」ではないのでしょうか。

子どもの「生きづらさ」を見つめる

不登校や引きこもりは、単に怠けや反抗心から来るものではありません。むしろ、その多くは子ども自身の「生きづらさ」から生じています。その生きづらさの原因は千差万別です。例えば、学校という環境が持つ画一的なルールや価値観に適応できない場合や、人間関係で傷ついた経験が心の傷となっている場合、あるいは自己評価の低さから新しいことに挑戦すること自体が怖くなってしまう場合などがあります。

これらの生きづらさは、表面からは見えにくいものです。子どもが学校に行きたくないと言ったとき、その理由を「ただ怠けているだけだ」「気分の問題だ」と決めつけるのは危険です。むしろ、「この子は何に苦しんでいるのだろう」「どんな部分が負担になっているのだろう」と子どもの心の内側に目を向けることが大切です。

ある親御さんが、学校に行けなくなった娘さんについて話してくれたことがあります。その子はとても真面目で、先生の期待にも答えようと一生懸命努力していました。しかし、その頑張りが裏目に出て、友達との関係で「自分だけが空回りしている」と感じるようになり、次第に学校への足が重くなっていったのです。親御さんは初め、娘さんが学校に行かないことを「わがまま」だと考えていましたが、よく話を聞いてみると、娘さんは「自分の努力が否定されている」と感じていたことがわかりました。

このように、子どもの心の中には、私たち大人が想像する以上に複雑な感情が渦巻いていることがあります。それを理解するには、まず「子どもは何かに苦しんでいるのではないか」という視点を持つことが必要です。

親としての役割を見直す

では、親としてどのように子どもに接すればよいのでしょうか。答えの一つは、「普通」を押し付けるのではなく、子ども自身のペースや価値観を尊重することです。

ある意味で、不登校や引きこもりは、子どもからの「サイン」と言えます。「私は今、苦しい」「助けてほしい」という声を上げる代わりに、行動でそのメッセージを伝えているのです。親としてそのサインを受け取ったとき、最も重要なのは「この子が何を伝えようとしているのか」に耳を傾けることです。

具体的には、以下のようなアプローチが有効です。

  • 子どもの話を否定せずに聞く。たとえ親としては受け入れがたい内容でも、「この子がどう感じているか」を理解しようとする姿勢が大切です。
  • 子どもの現状をそのまま認める。学校に行けていない現実を否定するのではなく、「今、学校に行けないんだね」と事実を受け入れることで、子どもは少しずつ安心感を取り戻します。
  • 親自身の価値観を見直す。「普通であること」に囚われていないか、「他の子と比べていないか」を振り返ることで、親としての心の余裕が生まれます。

親が変わることで、子どもの感じ方や行動も変わることがあります。「普通であること」ではなく、「その子らしさ」を大切にすることで、子どもは自分自身を肯定できるようになるのです。

「普通」から解放されるとき

最後に、「普通」という言葉を手放すことの大切さについてお話しします。私たちの社会は、多様性を尊重すると言いながらも、どこかで「普通」の枠にはめようとする力が働いています。それは学校という場においても同様です。しかし、「普通」に囚われ続ける限り、私たちは子どもたちが本来持っている個性や可能性を見過ごしてしまう危険性があります。

不登校や引きこもりは、決して「異常」ではありません。それは、その子にとって「自分らしく生きるための過程」であり、「自分自身を守るための手段」なのです。親としてその事実を理解し、子どもの心の声に寄り添うことで、子どもたちは自分の道を見つけ出すことができます。

「普通の子なんてどこにもいない」という言葉は、一見過激に聞こえるかもしれません。しかし、それこそが真実です。すべての子どもは、唯一無二の存在であり、誰かと比較することなく、そのままで価値のある存在です。親も子も「普通」という幻想から解放されることで、新しい視点を得ることができるのです。


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不登校の子への基本姿勢について

不登校への子への基本姿勢についての見出し

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私は児童心理カウンセラーとして10年以上、不登校や引きこもりに日々向き合っています。不登校の問題は、単に「放っておけば治る」というものではありません。むしろ、不登校が長引くほど、その状態が子どもの「日常」として定着しやすくなり、元の生活に戻ることがどんどん難しくなってしまいます。そのため、早期に適切な対処を行うことが非常に重要です。

本稿では、不登校が続いた場合に親御さんが取るべき具体的な対処法を解説します。不登校のお子さんを持つ多くの親御さんが、何をすべきか迷い、不安な気持ちを抱えながら日々を過ごしていることでしょう。その心情に寄り添いながらも、実際に役立つ方法をお伝えします。

子どもが「不登校」という状態に至るまで

まず、不登校に至る背景を理解することが大切です。多くの場合、不登校は突然始まるわけではありません。その前兆や原因となる出来事が必ず存在します。それが学業面のプレッシャーだったり、友人関係のトラブル、先生との摩擦、さらには家庭内の環境要因であったりします。しかし学校を休んでいる今、親御さんがすべきことは、その「原因」をあまり深く掘り下げすぎないことです。なぜなら、不登校のきっかけとなったストレスは、実は時間の経過とともに薄れている可能性が高いからです。

例えば、子どもが友達とのケンカが原因で学校に行かなくなった場合、最初の数日はその問題が頭の中で大きく占めているかもしれません。しかし、時間が経てば、その問題自体の影響力は薄れ、今度は「学校に戻ること」そのものへの抵抗感が大きくなります。「自分が学校を休んだことで周囲からどう見られるのか」という不安や、長い休みで勉強が遅れてしまったことへの焦りが新たな障害となるのです。

このため、まず親御さんが子どもに対してできることは、「現在、学校に戻る意思があるか」を率直に確認することです。もちろん、子どもがすぐに素直に答えるとは限りません。その場合は焦らずに、子どもの様子を見ながら丁寧に話を進めていく必要があります。

「学校に行かない」ことが当たり前になる危険性

2週間以上過ぎると、不登校は「一時的な出来事」ではなく「日常」として子どもの中に根付いてしまう危険があります。朝起きて学校に行く代わりに、遅くまで寝ている、好きなテレビやゲームをする、家族の目が届きにくい時間帯にスマートフォンを長時間使う、といった行動が日々の生活リズムとなると、そこから抜け出すことは容易ではありません。学校に行かないことが「楽」と感じられるようになると、「また学校に通い始める」という意識自体が失われてしまいます。

ゲームをする子どものイメージ

この段階で重要なのは、学校に行かないからといって、子どもの生活を過剰に快適にしないことです。例えば、子どもが学校を休む理由を「疲れた」「眠い」といった漠然としたものにする場合があります。このとき、親御さんが「疲れているなら無理しなくていいよ」「眠いなら今日は休んでいいよ」と何度も許容してしまうと、子どもにとって「学校を休む」ことが無条件で許される行動になってしまいます。

不登校中であっても、家庭内で一定の規律を保つことが非常に重要です。具体的には、以下のようなポイントに注意してください。

①起床時間と就寝時間を規則正しく保つこと:平日でも休日でも、朝は同じ時間に起きるように促してください。たとえ学校に行かなくても、生活リズムが乱れると、復帰する際に大きな障害になります。

②自由時間を制限すること:ゲームやスマホの使用時間を明確に区切り、それ以外の時間は勉強や家庭内の手伝いに充てるよう指導してください。

③将来の目標や興味を掘り下げる活動を取り入れること:学校に行けない間でも、子どもが将来の夢や興味を持つ分野について考える機会を作ることは有益です。これにより、「学校で学ぶ意味」を再認識させることができるかもしれません。

学校との連携を密に保つ

不登校が続いている場合、学校との連携が欠かせません。親御さんの中には、「学校に連絡をすると、何か責められるのでは」と感じてしまう方もいます。しかし、学校側にとっても、不登校が続く子どもへのサポートは重要な課題です。担任の先生やスクールカウンセラーなど、専門的な知識を持った方々と情報を共有し、協力することで、より適切な対応が可能になります。

学校との連携で特に効果的なのは、「家庭で進められる勉強やプリント」の提供を依頼することです。勉強の遅れは、子どもが学校復帰をためらう大きな理由の一つです。たとえ子どもが「学校には行きたくない」と言い続けている場合でも、家で少しずつ勉強を進めることで、復帰のハードルを下げることができます。

また、学校側にお願いしたいのは、勉強以外のサポートも含めて具体的な提案をもらうことです。例えば、週に一度だけでも先生と子どもが電話で話をする、オンラインで授業を受けるといった方法が考えられます。これにより、子どもが学校とのつながりを失わずに済みます。

不登校中の甘やかしは長期化を招く

不登校中に「居心地の良い生活」を提供することは、長期化を招く大きな原因となります。「学校に行けないなら、せめて家では快適に」という親心は理解できますが、その結果として、子どもが「不登校であることのメリット」を感じるようになれば、復帰がますます困難になります。

例えば、子どもが「家にいれば好きなことができる」と考えるようになると、学校に戻る意欲を持つ理由が失われてしまいます。これは単なる甘えではなく、人間として当然の心理です。「楽な方を選ぶ」傾向は誰にでもあります。そのため、親御さんが毅然とした態度で、家での生活にも一定のルールを設けることが大切です。

その一方で、甘やかさないことが「叱ること」に直結してはいけません。不登校の子どもに厳しく接するだけでは、かえって心を閉ざしてしまう危険があります。ここで重要なのは、「子ども自身に不登校を解決する力がある」と信じ、その力を引き出すサポートをすることです。

親の心構えが子どもを支える

不登校の解決には時間がかかる場合があります。しかし、その間も親御さん自身が不安や焦りに負けず、冷静に対処することが大切です。親の態度は、子どもにとって大きな影響を与えます。「この子の未来は大丈夫」と信じる気持ちを持ち続けることで、子どもも「自分は受け入れられている」と安心感を持つことができます。

最後にお伝えしたいのは、不登校は子どもの人生における「失敗」ではないということです。不登校の期間を通じて、子どもは何かを学び、親も成長する機会を得ることができます。大切なのは、親子で一緒に問題に向き合い、最善の解決策を模索することです。

関連記事:不登校を長期化させないための5つの行動

関連記事:不登校が1ヶ月以上続いた場合の、家庭で出来る対処法



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不登校の子どもにおすすめ:散歩の効用

散歩の効用イメージ

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不登校や引きこもりの問題に直面すると、多くの親御さんは頭を悩ませ、時には途方に暮れることもあるでしょう。「どうすれば、子どもが再び元気を取り戻してくれるのか」「学校に行けるようになるために、親として何をすべきなのか」といった問いが、心の中で堂々巡りすることも少なくないはずです。不登校の要因や背景はさまざまで、単純な解決策はありません。しかし、私が児童心理カウンセラーとして数多くの親子と向き合ってきた経験から言えるのは、ただ手をこまねいて見守るだけでは、問題が改善されることはほとんどないということです。不登校の解決には、子ども自身が新しい刺激を受けたり、小さな成功体験を積み重ねたりすることが必要不可欠です。そして、そのための第一歩となるものとして「散歩」という行動を提案したいと思います。

散歩は、特別なスキルや道具を必要としません。それどころか、今すぐにでも始められる、とてもシンプルな行動です。しかし、その中には、心と身体にポジティブな変化をもたらす多くの可能性が秘められています。本稿では、散歩の持つ三つの大きな効用について詳しくお話ししながら、不登校の子どもとその親御さんが日々の中で取り入れられる実践的なヒントをご紹介していきます。


1. 散歩は「身体のデトックス」になる

まず、散歩の最も基本的な効用である「身体のデトックス効果」についてお話しします。不登校の子どもたちは、自室で過ごす時間が圧倒的に多くなり、運動不足に陥るケースが非常に多いです。動く機会が少ない生活が続くと、心と身体のバランスが崩れ、さらにエネルギーを消耗しやすい悪循環に陥ってしまいます。このような状態にある子どもたちにとって、散歩は、身体を整え、活力を取り戻すための第一歩となるのです。

運動不足が身体に与える影響は、想像以上に深刻です。例えば、長時間座ったり寝転んだりして過ごす生活が続くと、血液の循環が滞り、筋肉が硬くなることがあります。その結果、肩こりや頭痛、倦怠感などの身体症状が現れることがあります。さらに、不登校の子どもたちに共通する悩みとして挙げられるのが「昼夜逆転」の問題です。日中は体を動かさないためエネルギーが消耗されず、夜になっても眠れない。そのため、睡眠のリズムが乱れ、朝起きることができなくなるというサイクルが生まれます。これは、運動不足と深い関係があります。

散歩には、このような身体の不調を改善する力があります。歩くという動作は、私たちの心拍数を自然に上げ、血液の循環を促進します。これにより、体内に溜まった老廃物や余分な水分が排出されやすくなり、むくみやだるさの解消につながります。さらに、散歩は身体の緊張を和らげ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させる効果もあります。これにより、気分が穏やかになり、不安感や落ち込みが軽減されるのです。日々のストレスや不安を抱える不登校の子どもにとって、散歩は心身をリセットするための重要な手段となります。

また、散歩を日課として取り入れることで、昼夜逆転の改善にもつながります。朝の光を浴びながら歩くことで、体内時計が整えられ、自然な形で眠りのリズムを取り戻すことができます。これにより、夜には自然と眠気を感じ、朝スムーズに起きられるようになるでしょう。たとえ数分の短い散歩であっても、毎日続けることで子どもの身体に大きな変化が現れます。

「うちの子は外に出たがらない」という声もよく耳にします。たしかに、最初の一歩を踏み出すことは容易ではありません。その場合は、親御さん自身がまず散歩を始めてみることをお勧めします。子どもがついて来ないとしても構いません。「お母さん、少し歩いてくるね」と声をかけるだけでも、子どもにとっては刺激になります。家族が外に出る姿を目にすることで、子ども自身が徐々に興味を持ち、やがて「少しだけなら」と一緒に歩いてみようと思える日が来るかもしれません。

親御さんが散歩に誘うときには、プレッシャーをかけないことが大切です。「外に出ないとだめだよ」と叱るような言い方ではなく、「ちょっとだけ空気を吸ってみない?」という軽い提案にとどめると良いでしょう。また、最初から長時間歩く必要はありません。近所の道を5分ほど一緒に歩くことから始めても十分です。散歩が楽しいと思えるようになれば、次第にその距離や時間を増やしていくことができます。

このように、散歩には不登校の子どもが抱える運動不足や身体の不調を改善し、心身のバランスを取り戻す力があります。毎日少しずつでも散歩を取り入れることで、子どもたちの身体が元気を取り戻し、学校生活への準備が整っていくのです。

2. 「人の営みを見聞きする」ことで視野が広がる

散歩には、ただ身体を動かす以上の意味があります。それは、外の世界に触れることで「人の営みを見聞きする」機会を得られるという点です。不登校の子どもたちは、日常的に自宅や自室に閉じこもることで、世界との接点を失ってしまうことが少なくありません。その結果、自分の悩みが世界のすべてであるかのように感じ、選択肢や可能性を狭めてしまうことがあります。しかし、散歩というシンプルな行動が、外界との接触を取り戻し、自分の悩みを相対化するための大切なきっかけとなるのです。

たとえば、近所の公園を歩いてみると、そこにはいろいろな人々の営みが広がっています。小さな子どもと遊ぶ親子、ジョギングに汗を流す中高年の人たち、飼い犬と楽しそうに散歩する人――それぞれが自分の時間を過ごし、それぞれの日常を生きています。こうした風景に触れるだけでも、自分が抱える問題が、決して特別なものではないと気づくことができます。自室で一人、自分の考えや悩みの渦に巻き込まれていると、どうしても視野が狭くなりがちです。しかし、散歩を通じて多様な人々の姿を目にすることで、「自分の苦しみだけが世界のすべてではない」と感じられるようになるのです。

ある中学生の男の子の例をご紹介しましょう。その子は、成績のプレッシャーから学校に行けなくなり、半年以上自室で過ごしていました。両親は心配するあまり、何とか外に連れ出そうと必死でしたが、本人は「無理」「どうせ意味がない」と拒否を繰り返していました。そこで、母親が始めたのは、毎朝一人で近所を散歩することでした。子どもを誘うのではなく、自分自身が散歩を習慣にしたのです。朝日を浴びながら歩いて帰ってくる母親の姿を目にして、やがて男の子は「少しだけなら」と一緒に歩くようになりました。

散歩を始めて数週間が経った頃、彼はこう言ったそうです。「散歩していると、他の人たちがみんな何かしているのが分かる。仕事に行く人や、子どもを連れたお母さんとか。みんなそれぞれ悩みとか大変なことがあるんだろうけど、頑張っているんだよね。」この言葉から分かるのは、彼が外の世界に目を向け、自分だけが苦しいわけではないと感じられるようになったということです。

また、散歩中に聞こえてくる人々の会話や生活音も重要なポイントです。たとえば、近所の商店街を歩いていると、お店の人とお客さんの何気ないやり取りや、道行く人の楽しそうな笑い声が耳に入ります。こうした何気ない日常の音は、心の中に新しい風を吹き込む効果があります。不登校の子どもたちは、部屋の中で同じ空気や音に囲まれて過ごすことが多く、それが閉塞感を助長することがあります。しかし、散歩を通じて多様な人々の声や行動を耳にすると、「世界は広い」「まだ自分の知らないことがたくさんある」ということに気づけるのです。

もちろん、初めて散歩に出るときには、子どもにとってハードルが高い場合もあります。その場合は、静かな住宅街や人通りの少ない道を選ぶとよいでしょう。無理に賑やかな場所に連れ出す必要はありません。少しずつ慣れてきたら、公園や商店街など、人々の営みが感じられる場所を散歩コースに加えてみてください。また、子どもが自ら「ここに行ってみたい」と言い出したら、その希望を尊重することも大切です。

さらに、親御さん自身も、散歩を通じて新しい発見を楽しむ姿勢を見せることが重要です。「あそこの花壇がきれいだね」「あのパン屋さん、いい匂いがするよ」など、何気ない話題を子どもと共有することで、散歩の時間が特別なものになっていきます。散歩の途中で気に入ったお店を見つけて、そこで一緒に買い物をしたり、軽くお茶をするのも良いでしょう。そのような小さな楽しみを通じて、外の世界へのポジティブなイメージが育まれていきます。

人の営みを見聞きすることは、不登校の子どもたちにとって、自分の悩みを相対化し、前向きな気持ちを取り戻すための大切なステップです。「外の世界には、自分とは違う生き方をしている人たちがいる」という事実に気づくことで、心の中に余白が生まれ、悩みの渦から少しずつ抜け出すことができるのです。

3. 自然の大きな流れを感じる

散歩のもう一つの大きな効用は、「自然の大きな流れを感じる」という点にあります。不登校や引きこもりの子どもたちにとって、日々の生活は狭い範囲に閉じこもりがちです。家や自室で過ごす時間が長くなるほど、四季の移り変わりや自然の美しさといったものから遠ざかり、「時間がただ過ぎていくだけ」と感じることが増えてしまいます。その結果、閉塞感や無力感が深まり、「今」という瞬間を楽しむことが難しくなります。しかし、自然と触れ合う機会を持つことで、そうした感覚が変わり始めるのです。散歩は、そのための最も身近で手軽な方法の一つです。

自然には、私たちの気持ちを癒し、悩みを和らげる力があります。たとえば、春の散歩では、新緑や満開の桜を目にすることで、冬の間閉じこもっていた命が再び動き始める様子を感じることができます。夏には木陰の涼しさや蝉の鳴き声が、暑さの中にも心地よい静けさを与えてくれます。秋には紅葉の鮮やかな色彩に目を奪われ、冬には冷たい空気の中に漂う凛とした静けさを感じることができます。これらの四季折々の景色は、日常の忙しさや閉塞感から私たちの意識を解き放ち、「今、この瞬間」を五感で味わう時間を提供してくれます。

私が関わったある不登校の中学生の女の子の話です。彼女は、友人関係の悩みから学校に行けなくなり、一日の大半を自室で過ごしていました。部屋のカーテンも閉め切り、季節の変化を感じることもない生活が続いていました。そんな彼女が、母親と一緒に近所の小さな公園を散歩することから、少しずつ心を開いていきました。最初は渋々歩いていましたが、春になると「桜がきれいだね」と言葉を発するようになり、夏には「木陰が涼しくて気持ちいい」と笑顔を見せることも増えました。

その変化のきっかけになったのは、自然の美しさや大きな流れを感じ取ったからだと彼女自身が後に語っています。「自然って、どんなに辛いことがあっても勝手に変わっていくんだよね。私が悩んでても、桜は咲くし、葉っぱは色づく。それを見てたら、悩みすぎるのも馬鹿らしくなるっていうか、今を楽しんでいいんだなって思えた」と言っていました。この言葉は、自然が私たちに与えてくれる力の大きさを物語っています。

また、自然に触れることで、人生の一回性を感じ取ることもできます。私たち人間もまた、自然の一部であり、限りある時間の中で生きています。木々が芽吹き、葉を茂らせ、やがて落葉していくサイクルは、私たちの人生にも重なる部分があるでしょう。どんなに苦しい時期があっても、それは永遠には続かず、必ず次の季節がやってくるのです。このことに気づくと、今の悩みが少し小さく感じられるようになります。

特に不登校の子どもたちは、未来を悲観しがちです。「自分はもうダメだ」「これから何も変わらない」という閉じた思考に陥ることが多いのですが、自然の変化を感じることで、そうした考えに風穴が開くことがあります。目の前に広がる景色が変わり続けることを実感するうちに、「自分の人生もまた、今の状態がずっと続くわけではない」と思えるようになるのです。この気づきは、不登校というトンネルから抜け出すための大きな力となります。

親御さん自身もまた、自然の中で過ごす時間を通じて、子どもとの絆を深めることができます。たとえば、散歩中に見つけた花や虫について話し合ったり、「あの雲の形が面白いね」といった何気ない会話を楽しむことができます。そのようなやり取りを通じて、親子の関係が穏やかになり、子どもにとって安心感を与える場面が増えていきます。そして、親が自然を楽しむ姿を見せることが、子どもにとって外の世界への興味を育むきっかけにもなります。

散歩の魅力は、特別な道具や環境を必要とせず、今いる場所で始められることにあります。たとえ近所の小さな道でも、そこには季節の変化や自然の豊かさが溢れています。子どもが外出に消極的であれば、親御さんが先に始めてみるだけで十分です。「一緒に見に行こう」という誘い方ではなく、親自身が楽しそうに自然を感じている姿を見せることで、子どもが自発的に興味を持つようになることが多いのです。

自然と触れ合う時間は、不登校の子どもたちが「今」を感じ、未来に希望を持つための大切な一歩となります。散歩を通じて、ぜひ自然の大きな流れを感じてみてください。その中で、親子ともに新しい発見や喜びを見つけることができるはずです。

結び

散歩は、不登校や引きこもりに悩む子どもたち、そしてその親御さんにとって、シンプルながらも大きな力を持つ行動です。「身体のデトックス」「人の営みを見聞きする」「自然の大きな流れを感じる」という三つの効用を通じて、心と身体に新たな風を送り込み、閉じこもった状況から一歩を踏み出すきっかけを作ることができます。

散歩は、すぐに効果が現れる魔法ではありません。しかし、親子で一歩ずつ外の世界に触れることで、少しずつ心がほぐれ、次の行動に向かうエネルギーが生まれていきます。どうか焦らず、無理をせず、散歩を日々の生活の中に取り入れてみてください。その小さな一歩が、やがて大きな変化をもたらす種になっていきます。


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親の言葉が子どもに伝わらない訳

親の言葉が子どもに伝わらない訳のイメージ

目次


親として、日々子どもに向き合う中で「どうして伝わらないのだろう」と悩む瞬間は、どんな家庭でも一度は訪れるものです。特に、不登校や引きこもりといった問題を抱える子どもを持つ親御さんにとって、この「伝わらない」という壁は非常に重く感じられることでしょう。「学校に行ってほしい」「少しでも前向きになってほしい」「なんとか状況を改善したい」という思いを込めて言葉をかけているにもかかわらず、その言葉が届いていないように感じられる――その苦しさは私も日々、多くの親御さんから聞いています。

私自身、不登校や引きこもりを専門とする児童カウンセラーとして、親子間のコミュニケーション問題に深く関わってきました。この「言葉が伝わらない」という問題には、多くの原因が複雑に絡み合っています。そして、原因を正確に理解しないまま言葉を投げかけても、状況が好転することは少なく、むしろ親子間の溝を深める結果を招くことさえあります。本稿では、親の言葉が子どもに伝わらない「3つの理由」を掘り下げ、親子のコミュニケーションの質を改善するためのヒントをお伝えします。


理由1:言葉は「そのまま」伝わるものではない

私たちは普段、言葉を交わす際に「相手にそのままの意味で伝わるだろう」と考えがちです。特に、親が子どもに声をかけるときには、その言葉が意図通りに受け取られ、理解されることを当然視してしまうことがあります。けれども、実際には「そのまま伝わる」ことは非常に稀であるという現実をまず理解する必要があります。

言葉のズレ:同じ言葉が異なる意味を持つ

具体例を挙げてみましょう。親が「明日の準備はできたの?」と尋ねたとします。この言葉の中に、親としてはさまざまな意図が込められています。明日の授業のための教科書やノート、筆記用具、そして宿題がきちんと揃っているかどうか――そうした「準備」の全体像が当然のように含まれているはずです。しかし、子どもにとっての「明日の準備」とは、単に「明日学校があることを知っている」程度の認識であったり、カバンを部屋の片隅に置いただけで「準備ができた」と感じてしまうことがあるのです。

親と子どもの間で、このようなすれ違いが起こるのはなぜでしょうか。それは、私たち一人ひとりが「スキーマ」と呼ばれる独自の認識の枠組みを持っているからです。スキーマとは、過去の経験や知識、価値観に基づいて作られる思考のフィルターのようなものです。親と子どもでは、これまでの経験の質や量が大きく異なるため、同じ言葉を聞いてもその解釈が大きくずれることがあります。

スキーマの違いがすれ違いを生む

たとえば、親が「計画を立てなさい」と言った場合を考えてみます。親にとっての「計画」とは、目標を定め、その目標に向けた具体的な行動を段取りよく組み立てることを意味します。一方で、子どもにとって「計画を立てる」とは、「やりたいことをとりあえず頭の中で思い浮かべる」程度の曖昧なものかもしれません。このズレは、子どもの経験値や思考の幅がまだ狭いことに起因しています。

特に不登校や引きこもりの子どもたちは、自分の失敗体験やトラウマから、否定的なスキーマを形成していることが少なくありません。「自分はどうせダメだ」「何をやっても意味がない」という思い込みが強い場合、親がどれだけ励ましや助言をしても、その言葉が肯定的に受け取られることは難しくなります。むしろ、「また怒られるかもしれない」「無理なことを押し付けられる」という恐れの感情が先に立ち、親の言葉が意図した以上にネガティブに受け取られることもあります。

このようなスキーマの違いを理解せずに、ただ「もっとしっかり準備しなさい」「ちゃんと聞いてくれないから伝わらないんだ」と感情的になると、親子間の信頼関係が損なわれる可能性があります。逆に、この違いを理解し、子どもの認識の枠組みに合わせて言葉を選び直すことで、伝わる確率を大きく高めることができるのです。

伝わるためのヒント

言葉がそのまま伝わらないという現実を踏まえた上で、親御さんが意識すべきことがあります。それは、具体的でシンプルな言葉を使い、子どもの認識の枠組みを少しずつ広げていくことです。たとえば、「明日の準備をしなさい」と言うのではなく、「宿題が終わっているか確認してみよう」「明日の授業で使う教科書はカバンに入れた?」といったように、具体的な行動を一つずつ確認する形に変えるだけで、子どもが受け取る情報は大きく変わります。

また、子どもが「準備ができている」という答えを返したときには、「どんな準備をしたのか教えてくれる?」と尋ねることで、子どもの認識を明確にすることができます。このように、具体的で丁寧なコミュニケーションを心がけることが、親の言葉を伝える第一歩となるのです。


理由2:情報の優先順位が違うという現実

親御さんが「重要だから聞きなさい」と一生懸命に伝えているにもかかわらず、子どもはその瞬間にスマホや漫画、ゲームに夢中になっていてまるで話を聞いていない。こんな場面は、多くの家庭で日常的に見られる光景ではないでしょうか。このとき、親御さんは「どうしてこんなに大事な話をスルーできるの?」と感じるかもしれませんが、子どもにとってはその瞬間に夢中になっていることが、親の言葉よりも重要だと感じられているのです。

子どもの優先順位を理解する

なぜ子どもは、親の言葉よりも目の前の楽しみに没頭してしまうのでしょうか?この背後には、子どもの脳の発達段階が関係しています。特に思春期の子どもたちの脳は、感情や欲求を司る部分が非常に活発に働いています。これは、目の前の楽しいことや関心を引くものに対して非常に敏感であることを意味します。反対に、理性や長期的な視点で物事を考える力はまだ未熟なため、「今が楽しければいい」という考え方に引っ張られやすくなります。

たとえば、親が「今のうちに勉強しておけば、将来いい大学に行けるよ」と伝えても、子どもにとって「将来」という概念があまり現実味を帯びていない場合、そのアドバイスはほとんど意味を持たないのです。それよりも、今手にしているスマホゲームや友達とのLINEのほうが、圧倒的に現実的で魅力的に感じられるのです。

親の言葉を優先順位に組み込む工夫

子どもが目の前のことに夢中になり、親の言葉が届かないのは、彼らにとってその言葉が「現時点での優先順位の低い情報」として扱われているからです。この場合、単に大きな声で繰り返したり、子どもが気に入らないことを禁止したりしても、根本的な解決にはなりません。むしろ、親の言葉が「叱責」や「圧力」として認識され、子どもの中でさらに拒絶感を高めてしまうこともあります。

では、どうすれば親の言葉を子どもの優先順位の中に組み込むことができるのでしょうか?その鍵は、「親の言葉を子どもの世界とつなげること」にあります。

たとえば、親が「宿題をやりなさい」と伝えるとき、ただ命令するのではなく、「宿題が終わったら一緒にゲームをしよう」「終わったら夕飯にあなたの好きなデザートを出すね」といった具体的な動機付けを加えることで、子どもの中で宿題の優先順位を上げる工夫ができます。このように、子どもが自然と「やってみよう」と思える状況を作ることが重要です。

叱責よりも共感を優先する

不登校や引きこもりの子どもたちは、そもそもストレスや不安感を抱え、心が疲弊している場合が多いです。そのような状況で親から「なんでやらないの?」「ちゃんと聞きなさい!」と叱られると、子どもはますます心を閉ざし、言葉が届きにくくなります。

ここで大切なのは、まず共感を示すことです。たとえば、子どもが宿題をやらない場合、「どうしてやらないの?」と詰め寄るのではなく、「今日は宿題をやるのがしんどいのかな?」と子どもの気持ちを理解しようとする姿勢を見せることが大切です。こうすることで、子どもは親の言葉を「自分を責めるもの」としてではなく、「自分を理解しようとしているもの」として受け取りやすくなります。

遊びの時間を活用した伝え方

また、親子で一緒に楽しめる時間を増やすことも効果的です。たとえば、ゲームや散歩、料理など、子どもが好きな活動を通じて自然にコミュニケーションを取ることで、親の言葉が「強制的な指示」ではなく「信頼できるアドバイス」として受け入れられやすくなります。

ある不登校の子どもとその親のケースを紹介しましょう。この親御さんは、子どもが学校に行かないことで最初は毎日叱っていました。しかし、親が態度を改め、子どもと一緒に好きなアニメを観たり、料理をする時間を増やした結果、子どもとの関係が改善し、少しずつ学校の話題も受け入れられるようになりました。このように、信頼関係を築くための「一緒に楽しむ時間」は、親の言葉が伝わるための土台になるのです。


理由3:子どもは「自分の世界」に閉じこもる

親の言葉が伝わらない理由の中で、最も厄介なのが「子どもが自分の世界に閉じこもってしまう」状況です。特に不登校や引きこもりの子どもたちは、自分にとって安心できる世界の中で心を守り、外界との接触を避けようとする傾向があります。この「自分の世界」の中にいる子どもたちに言葉を届けるには、単純なコミュニケーションでは足りません。子どもがどのようにしてその世界に閉じこもるようになったのかを理解し、そこに寄り添いながらアプローチする必要があります。

なぜ「自分の世界」に閉じこもるのか?

子どもが自分の世界に閉じこもる理由はさまざまです。学校でのいじめや友人関係のトラブル、学業のプレッシャー、あるいは親とのコミュニケーション不足が原因となることが多いです。このような問題が重なると、子どもは次第に「どうせ自分なんて」と自分を否定する思考に陥り、現実から目を背けるようになります。

特に不登校の子どもたちは、学校という「現実の社会」に直面することが大きな負担となっている場合が多いです。親としては「学校に行きなさい」「友達ともっと話しなさい」と伝えたくなるものですが、そうした言葉は子どもにとって「安全な自分の世界」を脅かすものとして受け取られてしまいます。その結果、親の言葉をさらに拒絶し、ますます自分の世界に閉じこもってしまうのです。

子どもの世界に「入り込む」ために

子どもが自分の世界に閉じこもっている場合、親がその世界の外から言葉をかけても届きにくいことが多いです。ここで重要なのは、親が子どもの世界に「入り込む」ことです。子どもの趣味や興味に寄り添い、それを通じてコミュニケーションを図ることで、徐々に外の世界とのつながりを作っていくのです。

たとえば、子どもがゲームに夢中になっている場合、親がそのゲームの内容を理解し、一緒にプレイすることで会話のきっかけを作ることができます。あるいは、子どもが好きなアニメや漫画について話を聞くことで、「親が自分の世界を理解しようとしてくれている」と感じることができます。このように、親が子どもの世界を受け入れる姿勢を見せることが、次のステップへの足掛かりとなるのです。

小さな成功体験を積み重ねる

自分の世界に閉じこもる子どもたちは、外の世界に対して強い不安感を抱いています。この不安を軽減するためには、小さな成功体験を積み重ねることが効果的です。たとえば、「今日は一緒に学校の近くまで散歩してみない?」といった簡単な提案を通じて、子どもが少しずつ外の世界に触れる機会を作ることができます。

また、子どもが「できた!」と実感できる瞬間を意識的に作ることも重要です。親が一方的にアドバイスするのではなく、「これができたら一緒にお祝いしよう」という形で達成感を共有することで、子どもが外の世界への興味を持つきっかけを与えられます。

自分の世界から抜け出すには時間が必要

最後に強調したいのは、子どもが自分の世界から抜け出すには、必ず時間が必要だということです。親として焦る気持ちは理解できますが、無理に引っ張り出そうとすればするほど、子どもはその世界にしがみつくようになってしまいます。

大切なのは、親が「子どもは必ず変わることができる」という信念を持ち続けることです。そして、子どものペースを尊重しながら、少しずつ外の世界への橋渡しをしていくことが、長期的な解決への道筋となるのです。


親の心構えが「伝える力」を変える

ここまで、子どもに言葉が伝わらない理由と、その背後にあるスキーマや優先順位の違い、自分の世界に閉じこもる心理について解説してきました。しかし、子どもに言葉を届けるために最も大切な要素は、実は「親自身の心構え」です。親の姿勢や考え方が変わることで、同じ言葉であってもその伝わり方が大きく変わるのです。

親として、子どもの未来を案じ、なんとかして良い方向に導こうとすることは当然のことです。しかし、焦りや不安が前面に出ると、その気持ちが言葉に表れ、かえって子どもを追い詰めてしまうことがあります。ここでは、親の心構えを整えるための具体的な方法について考えていきます。

「すぐに伝わる」ことを期待しない

親が言葉を伝える際によく陥りがちな誤解の一つが、「言葉はすぐに伝わるべきだ」という考えです。しかし、子どもが不登校や引きこもりの状態にある場合、その状況に至るまでにさまざまな心の葛藤や問題が積み重なっています。したがって、一度の声かけや説得で状況が変わることを期待するのは現実的ではありません。

ある親御さんの例を挙げます。このお母さんは、不登校になった中学生の息子に対し、「学校に行くことが大事なんだ」と繰り返し説得を試みました。しかし、息子は頑なに耳を塞ぎ、話を聞こうとしませんでした。その後、カウンセリングを通じて、お母さんは「伝わるには時間がかかる」ということを理解し、声かけを少しずつ柔らかいものに変えていきました。結果として、息子は少しずつ心を開き、最終的には親子で学校復帰への道を話し合えるようになったのです。

親の言葉がすぐに伝わらないことは、決して親としての努力が足りないという意味ではありません。むしろ、言葉が届くためには、子どもがその言葉を受け入れる準備が整う時間を待つことが重要です。「時間をかけていい」という意識を持つことが、親自身の心の余裕にもつながるのです。

子どもの視点に立つ努力をする

親の立場から見ると、「なぜこんな簡単なことがわからないの?」と思う場面も少なくないでしょう。しかし、ここで一度、子どもの視点に立って物事を考えてみることが大切です。子どもにとって、親からの言葉がどのように聞こえているのか、どのように感じられているのかを想像してみてください。

たとえば、親が「学校に行くことは将来のために必要だ」と伝える場合、その言葉は親の立場から見れば当然のことです。しかし、学校生活で傷ついた経験を持つ子どもにとっては、「その言葉がまた自分を苦しい場所に戻そうとしている」と感じられるかもしれません。このズレを意識しないまま言葉を重ねると、子どもは「親は自分の気持ちを理解していない」と感じ、ますます距離を取ろうとするでしょう。

ここで大切なのは、「自分が子どもの立場だったらどう感じるか」を意識することです。そして、子どもの感じ方に寄り添いながら、「一緒に考えよう」「どうしたら少しでも楽になる?」といった言葉をかけることで、子どもが安心して心を開けるようになります。

「親が変わる」姿を見せる

子どもにとって、親は最も身近な存在であり、同時に「自分をどう見ているのか」を知るための大きな鏡でもあります。そのため、親自身が変わる姿を見せることが、子どもにとって大きな影響を与えます。

たとえば、親が日々イライラしていたり、感情的になりやすい状況にある場合、子どもはその姿を見て「自分のせいで親がこんなに苦しんでいる」と罪悪感を抱くことがあります。一方で、親が落ち着いており、子どもと向き合う時間を大切にしている姿を見せると、子どもは「自分がどんな状況でも親は自分を受け入れてくれる」と感じられるようになります。

また、親が趣味や楽しみを見つけ、笑顔で過ごす姿を見せることも重要です。不登校や引きこもりの子どもを持つ親は、子どもに対する心配や責任感から自分自身を追い詰めがちです。しかし、親が「自分を大切にする」ことを実践している姿を見せることで、子どもも「自分を大切にしていいんだ」と感じられるようになります。

失敗を恐れない心の余裕を持つ

最後に、親の心構えとして最も大切なのは、「失敗してもいい」という心の余裕を持つことです。不登校や引きこもりの解決には、必ず試行錯誤が伴います。親として一生懸命に取り組んでも、思ったような結果が出ないことも多いでしょう。しかし、それは失敗ではなく、改善への一歩なのです。

たとえば、ある親御さんが、子どもとのコミュニケーションを改善するために毎晩声をかけ続けていましたが、子どもはなかなか反応を示しませんでした。それでも親御さんはあきらめず、別のタイミングや方法で声をかけることを試しました。最終的に、子どもが「親が自分を見捨てずに向き合い続けてくれる」という安心感を得たことで、少しずつ前向きな行動が見られるようになったのです。

親としての努力は、たとえ結果がすぐに見えなくても、必ず子どもに影響を与えています。「失敗してもいい」「またやり直せばいい」と考えることで、親自身も無理なく向き合い続けることができるでしょう。


親子で共に進む道を作る

親の言葉が子どもに伝わるためには、子どものスキーマや心理状態を理解し、共感をもって接することが不可欠です。しかし、何よりも重要なのは、親自身が心の余裕を持ち、子どもの成長を信じながら向き合う姿勢です。

「伝わらない」という現象は、決して親としての失敗ではありません。それは、子どもが自分なりのペースで物事を考え、成長している証でもあります。親子で一歩ずつ進む道を共に作りながら、言葉を通じて信頼関係を深めていきましょう。その先に、親の思いがしっかりと届き、子どもが自分の未来に向けて歩み出す瞬間がきっと訪れるはずです。


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不登校は、つらい

不登校はつらいことのイメージ

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不登校。それは、親にとっても子どもにとっても、日常を大きく揺るがす出来事です。「学校に行けなくなった」という事実に直面すると、多くの親御さんは動揺し、心のどこかで「どうしてこんなことに」と自問自答を繰り返すのではないでしょうか。特に母親である方々は、その責任感の強さから、「自分の育て方が悪かったのではないか」と自分を責めることが多いと感じます。

周囲の人からは「学校くらい行かせたらいいのに」「甘やかし過ぎなんじゃないの」といった無責任な言葉を投げかけられることもあるかもしれません。けれども、そういった表面的な理解のない言葉は、かえって親御さんの心を深く傷つけ、孤立感を増幅させるものです。

私は、これまで不登校や引きこもりの相談を専門に扱ってきた児童心理カウンセラーとして、数多くの親御さんとお話しし、子どもたちと向き合ってきました。その経験から、不登校という現象が単純な問題ではないことを痛感しています。そして、不登校のつらさは、一歩引いて「社会の問題」として見ることで、少しずつ明確な解決の糸口が見えてくることをお伝えしたいと思っています。

本稿では、不登校がもたらす親御さんの苦しみとその本質に触れながら、「つらい」と感じることを否定せず、次のステップに進むための道筋を示していきます。


①「脱落者のように見える子ども」という苦しみ

不登校の子どもを持つ親御さんの中には、無意識のうちに「わが子が社会から脱落してしまったのではないか」と感じる方も多いのではないでしょうか。周囲の子どもたちが当たり前のように学校に通い、部活動や習い事を楽しむ姿を見るたびに、胸を締めつけられる思いを抱えている方もいらっしゃるでしょう。

特に日本社会では、「学校に行くことが子どもの仕事」とされる考え方が根強くあります。そのため、学校に通えなくなった子どもは、「ルールから外れた存在」として見られがちです。親御さん自身も、どこかで「学校に行かせられない自分の責任」と感じ、世間からの目を過剰に気にすることがあります。

しかし、ここで考えたいのは、果たして学校に通うことだけが子どもにとっての一つの正解なのでしょうか。年間30万人以上の子どもが不登校になる現代の日本では、学校というシステムがすべての子どもに適応していないという現実があります。それは子ども個人の能力や性格に問題があるのではなく、むしろ現代の学校が、多様な子どもたちに対応しきれていない「構造的な問題」だと言えます。

「脱落者」というラベルを貼ることは、子どもの未来を狭めてしまうだけです。学校以外の環境や学び方、成長の仕方は無数に存在します。学校に戻ることを目標にするにしても、「学校が唯一の道」と思ってしまうことは強迫観念や子どもへのプレッシャーに繋がる恐れがあります。

ただし、学校が現在の日本の中では最も効率的で経済的な教育の場であることは事実です。矛盾しているようですが、フリースクールなどの安易な言葉に飛びつくことは、必ずしも最適な道とは限りません。

②「親の教育不足」と見られる苦しみ

不登校を経験すると、多くの親御さんが「自分の育て方が悪かったのではないか」と責められるような感覚にとらわれます。友人や親戚、学校の先生、時には近所の人たちからも、「どうして学校に行かないの?」と聞かれることもあります。その言葉に直接的な悪意がなかったとしても、それを耳にするたびに、親としての自信を削り取られるような気持ちになるものです。

特に母親に向けられる「教育不足」という視線は、非常に根強いものがあります。「もっと厳しく育てるべきだったのかもしれない」「自分の甘さが子どもをこうさせたのではないか」という思いが頭をよぎることは、決して珍しいことではありません。しかし、この考え方こそが、親御さんを精神的に追い詰め、不登校の解決をより困難にしてしまう要因の一つなのです。

ここで知っていただきたいのは、不登校が家庭の教育方針だけで決まるものではないということです。学校での人間関係、学習内容の過密さ、社会のストレスなど、子どもを取り巻く環境は非常に複雑です。不登校を引き起こす原因は、一つではなく、多くの場合、さまざまな要因が絡み合っています。

不登校の原因を解き明かすためには、親御さん自身が「教育不足」という枠組みから解放される必要があります。不登校は、特定の親の失敗ではなく、現代社会の課題そのものなのです。そのため、親御さんがまず自分を責めることをやめ、冷静な視点で問題を捉えることが、不登校克服の第一歩となります。

③「生活が子どもで占められる」という現実

不登校になると、子どもが学校に通っている時間に当たり前のようにできていたことが、すべて変わります。仕事をしている親御さんは、出勤時間の調整や在宅勤務への切り替えを迫られることもあるでしょう。専業主婦の方でも、子どもの不登校が家事やプライベートな時間に大きな影響を与えることは避けられません。

さらに、子どもが落ち込んでいるときには、どのように接して良いのか分からず、家全体の雰囲気が重苦しくなりがちです。子どもの気持ちを考えすぎるあまり、親御さん自身も精神的に疲弊してしまうことが少なくありません。「もうどうしていいか分からない」という状態に陥る方も多いのが実情です。

このような状況で、親御さんが自分の生活や感情をすべて子どもに合わせることは、必ずしも良い結果を生むとは限りません。むしろ、親が自分の生活を犠牲にし続けることで、かえって家庭全体のバランスが崩れてしまう場合もあります。子どもも、親の疲れた顔を見るたびに罪悪感を感じ、さらに心を閉ざしてしまう可能性があります。

このようなときに大切なのは、親御さん自身が心と生活の余裕を取り戻すことです。信頼できる家族や友人に相談する、カウンセリングを受ける、時には短時間でも一人の時間を作るなど、親自身が自分のケアを怠らないことが重要です。「親もつらい」という気持ちを周囲に認めてもらいながら、少しずつ問題に向き合うためのエネルギーを蓄えていくことが必要なのです。


つらさを認めたうえで、動き出す

ここまで、不登校の家庭が抱えるさまざまなつらさについてお話ししてきました。外から見えにくいこれらの苦しみを軽視することなく、まずは「つらいものだ」と認めることが大切です。周囲からの無責任な言葉に耳を貸さず、自分の感情を否定しないでください。

しかし、不登校の現実に向き合うとき、ただ嘆くだけでは何も変わりません。1週間、1ヶ月、1年と時間が過ぎる中で、状況が少しずつ悪化してしまうケースも少なくありません。そのため、つらさを受け入れたうえで、親子で一緒に少しずつ動き出すことが重要です。

たとえば、子どもが学校に通うことを最終目標とするのではなく、「どんな環境なら安心して過ごせるのか」を一緒に考えてみることが効果的です。フリースクールやオンライン学習など、選択肢を広げることで、子ども自身も「自分にはまだ道がある」と感じられるようになります。

また、学校側との話し合いも欠かせません。担任の先生やスクールカウンセラーと連携しながら、子どもの状態に合わせた対応を模索していくことが、長期的な解決につながります。

不登校は、決して簡単に解決できる問題ではありません。しかし、親御さんが自分を責めるのをやめ、周囲の支援を受け入れながら、子どもの個性に合った解決策を模索していくことで、少しずつ前進していくことができます。

「つらい」という感情を否定せず、そのうえで、親子で新しい道を歩む決意を持つ。それが、不登校という試練を乗り越えるための大切な一歩です。


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自閉症と診断された子どもへの不登校対策

自閉症と診断された子どもに向けた不登校対策の見出し

目次


自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された子どもたちは、その独特な感性や考え方ゆえに、学校生活において困難を抱えることが少なくありません。その結果、不登校という形でその困難が表面化することがあります。しかし、不登校は単なる「学校に行きたくない」という一言で片付けられるものではありません。その背後には、本人が抱える深い不安、自己肯定感の低下、さらには環境とのミスマッチが潜んでいます。

私は児童心理カウンセラーとして、これまで多くの不登校の子どもたちと向き合ってきました。その中で感じるのは、ただ「見守るだけ」では、子どもが抱える問題の根本に気づかないまま、時間だけが過ぎてしまうこともあるということです。特に自閉症の特性を持つ子どもたちの場合、その特性に応じた適切なアプローチが不可欠です。
本稿では、自閉症と診断された子どもが不登校に陥った場合に、親ができること、そして環境として提供できるサポートについて具体的に述べていきます。

自閉症の特性が学校生活に与える影響

自閉症スペクトラム障害の特性は、社会性の発達の違い、コミュニケーションの苦手さ、そして感覚過敏や興味の偏りなど、多岐にわたります。これらの特性は、学校という集団生活において顕著に影響を及ぼします。

例えば、授業中に周囲の子どもたちが笑い合う声や教室に響くざわめきが、耳を覆いたくなるほどのストレスを引き起こすことがあります。さらに、教員や友人とのコミュニケーションにおいて、表情やニュアンスを読み取ることが難しい場合、誤解される場面も少なくありません。こうした日々のストレスや挫折感が積み重なった結果、「もう学校に行きたくない」と子ども自身が心を閉ざしてしまうのです。

特に、小学生や中学生という多感な時期には、周囲からの評価や仲間意識が重要な意味を持ちます。しかし、自閉症の特性を持つ子どもたちは、自分をうまく表現できず、その結果「変わった子」「空気が読めない子」として距離を置かれてしまうこともあります。親としては、こうした子どもの状況を的確に把握し、「何が学校で起こっているのか」を一緒に探る必要があります。

親が最初にすべきこと:「見守る」から「理解する」へ

不登校に陥った子どもを前に、多くの親御さんが最初に抱く感情は、驚きや混乱です。そして、「子どもを信じて、学校に行けるようになるまで見守ろう」と思う方も多いでしょう。しかし、不登校が始まったばかりの段階で、ただ見守るだけでは状況が悪化することがあります。

自閉症の特性を持つ子どもたちは、自分の気持ちを言葉にするのが得意ではありません。そのため、不登校という行動の裏に隠された原因を言語化することが難しいのです。このとき、親が「ただ待つ」のではなく、「なぜこの子は学校に行きたくないのか」を具体的に考える姿勢を持つことが重要です。

例えば、子どもの口から「友達が怖い」といった言葉が出た場合、それを表面的な問題として捉えず、深掘りして考える必要があります。「友達が怖い」という言葉の裏には、次のような理由が隠れていることがあります。

  • 過去に些細なことでからかわれた経験がトラウマになっている。
  • 友達と会話する際に、適切なタイミングで話を切り出せず、孤立感を感じている。
  • そもそも友達の言葉の意味を正確に理解できず、誤解が生じている。

こうした理由を特定することで、適切な支援策を講じることが可能になります。

学校との連携:情報共有と環境調整の重要性

自閉症の特性を持つ子どもが不登校になった場合、学校との密な連携が欠かせません。しかし、ここで一つ強調したいのは、「学校任せ」にしないということです。学校側も、自閉症の特性に関する専門的な知識を十分に持っているとは限らないため、親が積極的に情報を提供し、協力を求める必要があります。

例えば、以下のような情報を学校と共有することで、子どもにとって安心できる環境を整えることができます。

  • 子どもの感覚過敏や特定の状況で感じるストレスについて。
  • 子どもが安心して過ごせるスペースや時間について。
  • コミュニケーションが苦手な場面での適切なサポート方法。

また、学校の環境を調整するために、以下のような工夫が有効です。

  1. リフレッシュルームの活用
     感覚過敏を持つ子どもにとって、休憩できる専用のスペースを設けることは非常に効果的です。こうしたスペースで一定時間リセットできることで、教室に戻るエネルギーが回復します。
  2. 特別支援教室の利用
     場合によっては、特別支援教室で学ぶことで、学習のペースを調整したり、少人数環境で安心感を得られることもあります。
  3. 個別対応プランの作成
     学校側と協力して、子どもにとって無理のないスケジュールや目標を設定することが重要です。

家庭での支援:安心感と挑戦のバランス

家庭は子どもにとって最も安心できる場所であるべきですが、同時に、適度な挑戦を与える場でもあるべきです。ここで重要なのは、「安心感」と「挑戦」のバランスを取ることです。

例えば、不登校が続いている子どもに対して、「次の日曜日に一緒に近所の公園に行こう」というような小さな目標を提案することが考えられます。このような目標を達成することで、子どもが「自分にもできる」という自己肯定感を少しずつ取り戻していくことができます。

また、自閉症の特性を持つ子どもにとっては、日々の生活リズムを整えることも非常に重要です。不規則な生活は、不安感を増幅させ、不登校の状況を悪化させる原因となり得ます。例えば、以下のような工夫を取り入れると良いでしょう。

  • 毎日同じ時間に起床し、食事を摂る習慣を作る。
  • 1日のスケジュールを視覚的に示し、次に何をするのかを明確にする。
  • 不安を感じたときにリラックスできる方法(深呼吸やお気に入りの音楽を聞くなど)を一緒に探す。
子どもとのハグのイメージ

カウンセリングの活用:第三者の視点からのアプローチ

最後に、不登校が長期化している場合や、親子だけでは解決が難しいと感じた場合には、カウンセリングを活用することをお勧めします。カウンセラーは、第三者の視点から問題を整理し、子どもや親にとっての適切な解決策を提案します。

カウンセリングの中では、子どもが自分の感情を表現しやすい方法(絵や言葉、行動など)を用いることができます。また、親自身が抱える不安や葛藤についても話すことができ、子どもとの向き合い方を見直すきっかけになることもあります。

おわりに

自閉症と診断された子どもが不登校になる背景には、多くの要因が絡み合っています。その中で、親が子どもの特性を理解し、適切な環境を整えることが、最も重要な第一歩です。そして、そのプロセスにおいては、「ただ見守る」だけではなく、積極的に動き出す勇気が求められます。

不登校という状況はつらい状況ですが、それをきっかけに子どもの特性や本質を深く知ることで、親子関係がより強固なものになる可能性も秘めています。一緒に解決策を見つけていくことで、子どもにとって安心できる未来を築いていく可能性を諦めないでください。


ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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不登校になった子どもへの具体的な声のかけ方

不登校になった子どもへの具体的な声のかけ方

目次


はじめに:不登校を「親としてどう向き合うか」

「うちの子、学校に行かなくなったんです。」
こう語り始める親御さんの声を、私はこれまで何度も耳にしてきました。その声には、不安や焦り、そしてどこか自分を責めるような響きが含まれています。しかし、子どもが不登校になる背景には必ずしも単純な理由だけがあるわけではありません。そしてその解決も、単純な「これをすればいい」というものではないのです。

私たちの提供する「ToCo」のサービスでは、「不登校の子どもが抱える本当の理由を掘り下げること」から始めます。ここで大切なのは、親がその理由を知り、それに適切に向き合う姿勢を持つことです。「学校に行かなくてもいい」とただ見守るだけでは、多くの場合、不登校が長期化してしまいます。一方で、急かしたり、強引に解決しようとするアプローチも子どもを追い詰める結果となります。

本稿では、不登校になった子どもへの具体的な声のかけ方について、心理カウンセラーとしての視点を交えてお話しします。「どんな言葉をかけたらいいのか」「どんな対応が子どもにとって助けになるのか」という具体的なヒントを見つけていただければ幸いです。


1. 「不登校は子どものサイン」:見えている現象の裏側に目を向ける

不登校は、子どもが自分の内面で何かに苦しんでいるサインです。それが明確に表れる形として「学校に行きたくない」があります。ですが、親御さんにとってこの状況は非常にわかりにくいことがあります。例えば、子どもが「学校が嫌い」と言ったとしても、それが人間関係の問題なのか、勉強のプレッシャーなのか、はたまた家庭内の何かが影響しているのか、一筋縄ではいかないことが多いのです。

「どうして行きたくないの?」は禁句

「どうして学校に行きたくないの?」と聞きたくなる気持ちは、とてもよくわかります。しかし、この問いかけは、子どもにとって重荷になりやすいものです。「どうして」と問われることで、子どもは理由を説明しなければならないと感じます。ですが、本人もその理由を整理できていないことがほとんどです。さらに、親が答えを求める姿勢は、子どもに「説明できない自分はおかしい」という自己否定感を生むことさえあります。

ここでのポイントは、子どもの「行きたくない」という言葉を否定せずに受け止めることです。

会話例1:「行きたくないんだね」と受け止める

子ども:「学校行きたくない。」
親:「そうなんだね、行きたくないんだね。」
子ども:「うん…。」
親:「どんな感じなのか、少しだけ教えてもらえたら嬉しいな。でも話したくなかったらそれでも大丈夫だよ。」

このように「受け止める」「無理に聞き出そうとしない」ことで、子どもが少しずつ心を開ける状態を作り出します。


2. 子どもの「心の声」を見逃さない

不登校に至る子どもたちの心の中には、さまざまな葛藤があります。それをすべて言葉で表現するのは難しいため、親としては子どもの行動や表情、態度から「心の声」を読み取ることが求められます。

表面だけを見ると逆効果になる場合も

例えば、子どもが毎日ゲームをしていたり、YouTubeを見続けているとき、親は「怠けている」「好き勝手している」と感じるかもしれません。ですが、その背景には「現実から逃げたい」「自分を守るために何かに没頭している」という心情が隠れていることが多いです。

会話例2:無関心ではなく、優しい観察を

子どもがゲームに夢中になっている。
親:「今のゲーム、すごく面白そうだね。どんなところが楽しいの?」
子ども:「これ、ストーリーがすごいんだよ。」
親:「そうなんだ。どんな話か教えてくれる?」
子ども:「うん、これはね…」

このように、子どもの興味を否定せず、共感を持って接することで「自分は受け入れられている」という安心感を育むことができます。


3. 「否定」よりも「共感」でつなぐ

親は時に、子どもの言動を否定したくなることがあります。「学校に行かないなんて、ダメだ」「ちゃんと頑張らないと」といった言葉は、親自身の焦りや不安から生まれます。ですが、これらの言葉は子どもにとって大きなダメージを与える可能性があります。

子どもを「丸ごと受け入れる」姿勢

不登校の子どもたちは、自分を責めている場合が多いです。「行けない自分はダメだ」と思い込んでいることも少なくありません。そんなとき、親が子どもを否定する言葉をかけると、子どもの自己否定感をさらに強める結果となります。

会話例3:共感しながら希望を伝える

子ども:「どうせ学校行っても無理だし。」
親:「そう思っているんだね。無理だって感じてるの、すごく辛いよね。」
子ども:「うん…。」
親:「でもね、お母さんは、あなたには無理じゃない時が来るって信じてるよ。今はちょっと休んでもいいけど、一緒に少しずつ考えていこうね。」


4. 「具体的な小さな一歩」を一緒に考える

不登校の解決には、「具体的な小さな一歩」を踏み出すことが重要です。いきなり「明日から学校に行こう」と言うのではなく、「今日は1時間だけ登校してみる」「学校の近くを一緒に歩いてみる」といった小さなステップを提案することで、子どもが挑戦しやすくなります。


会話例4:選択肢を提案する

子ども:「学校なんてもう嫌だ。」
親:「そう感じるんだね。今すぐ行けなくてもいいけど、ちょっとだけ学校の近くまで行ってみるとか、一緒にやってみない?」
子ども:「うーん、ちょっとだけなら…。」
親:「ありがとう。一緒に頑張ってみようね。」


5. 「待つ」ことと「進む」ことのバランス

不登校の子どもへの対応で重要なのは、「待つこと」と「進むこと」のバランスを取ることです。「いつか子どもは自分で立ち直る」と信じて完全に放任するのは危険ですが、一方で親が焦って無理に解決を急ぐと、子どもの心にさらなる負担をかけてしまいます。このバランス感覚を保つためには、親自身が冷静さを失わないことが不可欠です。

「待つ」ことの意味

「待つ」というのは、子どものペースを尊重することです。子どもが自分の感情を整理し、自分なりのペースで前を向けるようにするには、十分な時間が必要です。「学校に行きたくない」と言っている子どもに対し、親がすぐに結論を急いでしまうと、子どもはますます壁を感じてしまいます。

会話例5-1:安心感を伝えつつ見守る

子ども:「もう学校のことは考えたくない。」
親:「そう感じるんだね。今は無理しないで、学校のことを考えない時間を作るのも大事だよ。お母さんは、あなたがどんなペースでも応援しているからね。」
子ども:「うん…。」

子どもが何も話さなかったり、素っ気ない態度を取ったとしても、親が根気強く同じ姿勢を貫くことで、子どもは「話しても大丈夫なんだ」と感じるようになります。

「進む」ことの意味

一方で、ただ「待つ」だけではなく、小さな一歩を促すことも大切です。不登校の原因がどんなものであれ、最終的には社会との接点を回復することが目標となります。そのためには、適切なタイミングで子どもを促し、小さな挑戦を後押しする必要があります。

会話例5-2:進む選択肢を一緒に考える

子ども:「学校なんてもう行かなくてもいいよね?」
親:「そう感じているんだね。でもね、学校だけが選択肢じゃないけど、少しずつ何かに挑戦することは大事だと思うんだ。一緒に何ができるか考えてみようか?」


6. 不登校の背景にある「心の声」を掘り下げる

子どもが不登校になる背景には、いくつもの要因が絡み合っています。それを解きほぐすためには、「心の声」に耳を傾ける姿勢が必要です。ここで大切なのは、「親の価値観」ではなく、「子どもの価値観」を理解することです。

心の声を探るポイント

  1. 子どもの行動に隠されたメッセージ
     子どもの言動には必ず理由があります。例えば、急に食欲がなくなったり、反対に過剰に食べるようになった場合、それはストレスの表れかもしれません。
  2. 子どもの趣味や興味に目を向ける
     不登校中に子どもが夢中になることは、心の支えである場合が多いです。それを否定するのではなく、理解しようとする姿勢が大切です。
  3. 家庭内での雰囲気を見直す
     家庭の中で安心感を持てているかどうかも重要です。親の喧嘩や過剰な期待が、知らず知らずのうちに子どもに影響を与えていることもあります。

会話例6:心の声を探る問いかけ

子ども:「何もしたくない。」
親:「そうなんだね。何もしたくないときって、どんな気持ちになる?」
子ども:「うーん…。なんか、ずっとモヤモヤしてる感じ。」
親:「そうか、モヤモヤしてるんだね。その感じ、もう少しだけ教えてもらってもいいかな?」

このように、子どもの言葉を否定せず、さらに掘り下げて聞くことで、子ども自身が自分の気持ちを整理するきっかけを作ることができます。


7. 親自身のケアも忘れない

子どもが不登校になると、親自身も多大なストレスを抱えるものです。「自分の育て方が悪かったのでは」「どうしたら解決できるのか」と悩み、精神的に追い詰められることがあります。ですが、親が心身ともに疲れてしまっては、子どもを支えることは難しくなります。

親ができるセルフケアのポイント

  1. 一人で悩まない
     信頼できる第三者や専門家に相談することは、心の負担を軽くします。
  2. 自分を責めない
     不登校は誰のせいでもありません。親自身を責める気持ちは、結果的に子どもにも伝わってしまいます。
  3. リラックスできる時間を作る
     趣味や散歩など、自分をリフレッシュさせる時間を意識的に持つことで、冷静に子どもに向き合う力が生まれます。

おわりに:未来はいつでも作り直せる

不登校は、子どもと親にとって大きな試練です。しかし、それは子どもが自分の人生を見つめ直し、より良い未来を築くための重要な時間でもあります。親としては、焦らず、寄り添い、そして必要なときには専門家の力を借りながら、一歩ずつ進んでいきましょう。


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不登校を引きこもりにしないための家庭で出来る5つの工夫

不登校を引きこもりにしないための、家庭で出来る5つの工夫

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不登校の子どもを持つ親御さんにとって、その状況は大きな試練です。特に、子どもが家からも出なくなり、いわゆる「引きこもり」状態になることを恐れている方も多いのではないでしょうか。私たちが提供する「ToCo」サービスでも、最初にご相談をいただく際には、「どうすればこの状態を悪化させないで済むのか」といった切実な声をよく耳にします。

私自身、児童心理カウンセラーとしてこれまで数多くのケースを見てきましたが、引きこもりを防ぎ、不登校からの回復を支援するには、子どもの「自尊心」を回復させることが最も重要であると確信しています。ただ待つだけでは、不登校の状態は長引きやすく、子どもにとっても親にとっても辛い日々が続いてしまいます。そこで、今回は家庭で実践できる5つの工夫をお伝えします。どれも特別な道具や環境を必要とせず、今日から始められるものばかりです。


工夫①「食事を一緒にする」

食卓は、家族が顔を合わせる貴重な場です。特に不登校の子どもにとって、自室に閉じこもる生活が続くと、家族とのつながりすら希薄になりがちです。そのような時こそ、毎日の食事を「一緒にすること」が力を発揮します。

食事には、単なる栄養補給以上の意味があります。目の前に並ぶ食べ物が、子どもの心の壁を少しずつ崩していくことがあるのです。たとえば、子どもが好きな料理を一緒に作ってみるのも良いでしょう。「今日の献立は何がいい?」と尋ねたり、料理を手伝ってもらったりするだけでも、自然な形で会話が生まれます。特に、不登校であることに対するプレッシャーや批判を感じさせずに話しかけることがポイントです。

親が意識すべき点は、子どもを「責める」ような雰囲気を作らないことです。「どうして学校に行かないの?」などの質問は、子どもにとってストレスになります。それよりも、「今日のカレー、おいしくできたね」「このお味噌汁、体が温まるね」といった何気ない会話が、子どもとの関係を温める第一歩になります。

工夫②「手伝いをさせる」

不登校が続くと、子どもは「自分なんて何もできない」という無力感に苛まれることがあります。この気持ちは、引きこもりを引き起こす大きな要因のひとつです。ここで重要なのが、家庭の中での「役割」を与えることです。その最もシンプルな形が「手伝いをさせる」という工夫です。

例えば、食卓の準備や片付け、洗濯物を干すといった簡単な家事をお願いしてみましょう。「お手伝いをしてくれてありがとう」と感謝を伝えることが何より大切です。この小さな行動の積み重ねが、子どもにとって「自分は役に立っている」という感覚を育て、自尊心を回復させる助けになります。

また、「上手にできるかどうか」にはこだわらないでください。たとえ不器用であっても、何かをやろうとする意欲を称賛する姿勢が、子どもの心を動かします。「お皿を洗ってくれたんだね、すごい!」といった言葉がけ一つで、子どもの自己評価は少しずつ上向きになります。

工夫③「一緒に外に出る」

引きこもりの予防において、外の空気を吸うことは非常に効果的です。しかし、「外に出なさい」と命令するだけでは、子どもはますます抵抗感を強めてしまいます。だからこそ、「一緒に外に出る」工夫が必要です。

まずは短時間、身近な場所から始めましょう。例えば、「近くのスーパーに一緒に行こう」といった軽い提案が良いです。このとき、子どもが嫌がった場合には無理強いしないことが肝心です。重要なのは、外出を「楽しさ」と結びつけることです。季節の変化を感じられる公園散歩や、子どもの興味を引く場所を訪れるのも効果的です。

また、子どもが少しでも外出できたら、その努力を褒めてあげてください。「今日は一緒に外に出られて嬉しかった」と感謝を伝えることで、次への意欲が湧いてきます。外に出る習慣がつくと、徐々に社会とのつながりも取り戻すことができます。

参考記事:不登校の子どもが始めやすい外出:一歩ずつ踏み出すためのヒント

工夫④「小さなことを褒める」

子どもが不登校になると、親としてはつい「もっと頑張ってほしい」「学校に戻ってほしい」と大きな期待をかけてしまいがちです。しかし、子どもはそのプレッシャーに耐えられず、かえって心を閉ざしてしまうことがあります。だからこそ、小さなことでも積極的に褒める習慣を持つことが大切です。

たとえば、子どもが朝起きられたら、「早起きできて偉いね」と声をかける。宿題の1ページでも手を付けたら、「やろうとしたことがすごいね」と称賛する。このような具体的な褒め言葉が、子どもに「できる自分」を意識させ、自信を取り戻すきっかけになります。

注意すべき点は、結果だけを褒めるのではなく、過程に目を向けることです。「最後までやり遂げられなくても、やろうとしたことが素晴らしい」といった声がけが、子どもに安心感を与えます。

工夫⑤「子どもを避けない」

不登校や引きこもりの問題が長引くと、親自身が子どもにどう接すればいいのか分からなくなり、距離を取ってしまうケースがあります。しかし、これが子どもにとっては「自分は愛されていない」という誤解につながり、さらに孤立を深めてしまいます。

「子どもを避けない」とは、積極的に干渉することではありません。むしろ、子どもの存在を受け入れ、穏やかに寄り添う姿勢を持つことです。たとえば、子どもが話しかけてきたら、手を止めて話を聞く。視線を合わせて、「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを伝えることが重要です。

また、親自身の感情の安定も大切です。親がイライラしていると、子どもにもその不安定さが伝わり、ますます心を閉ざしてしまいます。適度にリラックスする時間を持ち、自分を労わることも忘れないでください。


工夫狙い必要な行動
食事を一緒にする家族とのつながりを取り戻し、安心感を与える。一緒に食卓を囲み、子どもの好きな料理を作り、自然な会話を心がける。
手伝いをさせる子どもの役立つ感覚を育み、自尊心を回復させる。簡単な家事を依頼し、「ありがとう」「助かったよ」と感謝を伝える。
一緒に外に出る外の空気に触れ、閉じこもりを防ぐきっかけを作る。近所の散歩やスーパーなど、短時間で気軽な外出から始め、楽しさを伝える。
小さなことを褒める小さな成功体験を積み重ね、自己肯定感を高める。行動の結果より過程を重視し、具体的な言葉で子どもの努力を称賛する。
子どもを避けない子どもに愛されている実感を与え、孤立を防ぐ。穏やかに寄り添い、子どもが話しかけてきたら手を止めて耳を傾ける。

結論:子どもの「心の回復」は家庭から

不登校や引きこもりを防ぐための家庭での工夫は、どれも難しいものではありません。ただし、それを継続するには、親の根気と子どもへの深い理解が必要です。子どもの自尊心を少しずつ回復させ、社会とのつながりを取り戻すために、今回ご紹介した5つの方法をぜひ試してみてください。

「ToCo」では、不登校の背景にある原因を共に探り、一人ひとりに合った支援を提案しています。ただ見守るだけでは解決しない問題に対し、親子で前向きな一歩を踏み出すお手伝いをしています。一緒に子どもの未来を切り開いていきましょう。


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不登校になった子どもとの対話法


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初めて不登校を宣告された時、どのような気持ちになったでしょうか。驚き、不安、あるいは怒り、さまざまな感情が頭を巡り、「どうしてわが子が?」と心が混乱するかもしれません。しかし、不登校はけっして特別なことではありません。多くの子どもが抱えるこの問題に、真摯に向き合い、理解し、支えていくために、まずはお母さまが落ち着きを取り戻し、「対話」という一つの方法でお子さんの気持ちに寄り添う準備を始めていただきたいと思います。

不登校のお子さんとどう対話をしていけば良いのか。何を語り、どう受け止めれば良いのか。お子さんが心を閉ざしてしまっている時期に、どうやって扉を開いてもらえるのか。本稿では、「対話」を通じて、不登校のお子さんに寄り添うための考え方と具体的なアプローチについてお話ししていきます。


第1章:不登校という現象を理解する

まず、不登校とはどういうものなのかを理解することが重要です。不登校は単に「学校に行かない」という行動だけを指すものではなく、子どもの内面に深く根ざした感情や、生活全般にわたる変化を含んでいます。近年では、不登校の原因は一つに限らず、いじめや家庭環境、学校の環境、発達特性、自己肯定感の低下など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることがわかってきています。

子どもが不登校になる理由を一概に決めつけず、「なぜ行かないのか」ではなく、「なぜ行けないのか」と考えることが大切です。不登校には、子どもが自分の内面や周囲の環境に対して真剣に向き合おうとしているサインが含まれています。「学校に行かない」という行動の背後にある子どもの苦悩や葛藤を、お母さまが丁寧に理解することが第一歩となります。

第2章:子どもに寄り添う心の姿勢

不登校のお子さんに寄り添う上で最も重要なのは、「寄り添う姿勢」をお母さま自身が身につけることです。これを理解するには、まず「聞く」ことから始めなければなりません。

不登校の子どもが最も求めているものは、無理に引き戻そうとする「解決」ではなく、自分の気持ちをわかってもらえる「安心感」です。多くの親は、子どもが学校に行けるようにとアドバイスや励ましの言葉を投げかけますが、そうした言葉がかえって子どもを追い詰めてしまう場合も少なくありません。子どもが本当に求めているのは、学校に行かない自分でも愛され、受け入れられるという信頼です。そのためには、まずお母さまが子どもの気持ちに寄り添い、「何も否定せずに聞く」という姿勢を持つことが必要です。

第3章:子どもとの対話の基本 – 聞く力

お母さまにとって、「聞く」という行為は単なる聞き流しではなく、子どもの話をじっくりと受け止め、共感することが求められます。ここで重要なのは、「質問しないこと」です。質問は、どうしても相手に回答を求める形になり、子どもが防御的になりやすい傾向があります。代わりに、相づちや表情、うなずきで子どもが話しやすい空気を作ってあげると良いでしょう。

例えば、子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、すぐに「どうして?」と理由を尋ねるのは避けましょう。「そうなんだね。行きたくないって感じるんだね。」と、相手の言葉をそのまま受け入れるだけで十分です。自分の気持ちを否定されず、受け止めてもらえると感じられると、少しずつ子どもは心を開いてくれるようになります。

第4章:対話のゴールを「共感」に設定する

不登校のお子さんと対話する際、解決を急がず、共感をゴールに設定することが大切です。多くの親は、つい「解決」を目指しがちですが、子どもが今の状況から立ち直るためには、まず自分の感情や思いを誰かに共感してもらうことが必要です。

共感するためには、「感じている気持ちを認める」ことから始めましょう。たとえ学校に行かない理由が曖昧であったとしても、その気持ちをそのまま受け止め、「辛かったんだね」「無理しないでね」といった言葉をかけてあげることで、子どもは自分が理解されていると感じるようになります。理解される経験が増えると、子どもは次第に安心感を持ち、不登校に関しての考え方や感情も柔らかく変化していきます。

第5章:言葉でなく「存在」で支える

不登校の子どもにとって、親がそばにいてくれること自体が大きな支えになります。日常生活の中で、言葉を交わすことに抵抗がある場合も多いため、無理に話しかけようとせず、ただ一緒に過ごす時間を大切にすることが大切です。特に、子どもがリラックスして過ごせる時間帯や場所で一緒に過ごすことで、自然と子どもが心を開きやすくなります。

例えば、一緒に食事をしたり、テレビを見たり、散歩に出かけたりすることで、親子の距離が縮まる場合があります。話しかけなくても、お母さまがそばにいること自体が、子どもにとって「安心」を与える要素となります。

第6章:お母さまの心のケアも忘れずに

不登校の子どもを支えるためには、お母さま自身の心のケアも重要です。不安や焦りが募ると、どうしてもその感情が子どもに伝わり、無意識のうちにプレッシャーをかけてしまうこともあります。自分を追い詰めず、気持ちの整理をするためにも、友人や専門家に相談したり、自分の時間を大切にすることが不可欠です。

第7章:信じる力

最後に、不登校のお子さんに対して必要なのは、「信じる力」です。子どもは親が信じてくれることで自分を信じられるようになります。不登校という状況は確かに不安ですが、お母さまが子どもの成長を信じ、今は休息が必要だと受け入れることで、子どもも安心して自分を見つめ直すことができます。

学校に戻るか戻らないかは結果にすぎません。重要なのは、その過程でお母さまがいかに子どもを信じ、支え、待つことができるかです。この信頼があれば、子どもはやがて自分の道を見つけて歩き出すでしょう。


結論

不登校の子どもとの対話は決して簡単なものではありません。しかし、お母さまが一歩ずつ対話の姿勢を育み、共感と理解を持って寄り添うことで、子どもも安心して自分を開くことができます。不登校はある意味、子どもが成長し、自分の気持ちや考えを整えるための大切な期間です。お母さまが支え、信じることで、子どもはまた自分らしい道を歩み始めることでしょう。お子さまとお母さまが、対話を通じてお互いに理解を深め合い、新たな絆を育んでいけることを心より願っています。

キーワード要点必要な行動
不登校の理解不登校は多くの要因が絡んで生じる。行動だけでなく、子どもの内面の苦悩を理解することが大切。子どもが「行かない」理由ではなく「行けない」理由を丁寧に考え、無理に解決を急がない。
寄り添う姿勢子どもが安心感を持つには、否定せずに気持ちを受け止める「寄り添う姿勢」が重要。子どもの話を遮らず受け入れ、無理に励ますよりも「安心できる存在」であることを意識する。
聞く力聞くことは単なる傾聴ではなく、質問を避け、相づちやうなずきで話しやすい環境を作るのが基本。質問せず、共感の態度で「うんうん」「そうなんだ」と受け止め、子どもが話しやすくなる空気をつくる。
共感をゴールに解決を急がず、子どもの気持ちに共感することが最優先。理解される安心感が成長につながる。「辛かったね」「無理しないで」などの共感の言葉を使い、子どもが安心できる対話を目指す。
存在で支える言葉でなく、そばにいるだけで子どもに安心感を与えることができる。無理に話しかけなくても良い。一緒に食事や散歩などをする時間を増やし、自然と子どもが話せるタイミングを待つ。
お母さまのケアお母さま自身のケアも重要。焦りや不安が子どもに伝わらないよう、心のケアを意識する。周囲や専門家に相談し、自分の心をケアしながら子どもと向き合う余裕を持つ。
信じる力お母さまが子どもを信じることで、子どもも自分を信じられるようになる。子どもの成長を信じることで自立を見守る姿勢を大切にする。

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再登校の鍵は「子ども・親・学校」のリボンモデル


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不登校という問題に直面するご家庭へ

不登校は単なる「学校に行かない」という現象ではありません。そこには家庭環境や学校との関係も深く関わっています。不登校が続くと、子どもがどこにも属していないような疎外感に陥り、将来への不安も強まります。そんな子どもに寄り添いながら、どうにかして学校へと繋ぎ戻してあげたい——私もそうだったので、そう願うの親御様の気持ちは、よくわかります。

しかし、子どもをただ「再登校させたい」と願っても、残念ながら物事は簡単に進みません。不登校の解決は、親と子ども、そして学校という三者がそれぞれの役割を果たしながら進む必要があるからです。この三者の役割を「リボンモデル」として考えることで、再登校への道筋が少しずつ見えてくるのです。

リボンモデルの基盤: 子ども・親・学校の三つの役割

リボンモデルとは、子ども、親、そして学校がそれぞれ手を繋ぎ合いながら再登校への支援を行う考え方です。三者がしっかりと結ばれることで、子どもが再び学校と関わりを持ち、自ら一歩を踏み出すための足場ができるのです。ここで大切なのは、親が「子どもと学校の橋渡し役」となること。特に不登校の初期段階や子どもが学校に対して恐れや不安を抱えている場合には、親が果たすべき役割が大きくなるのです。

親の役割: 橋渡し役としての重要性

不登校の子どもを支えるうえで、母親が特に重要な役割を果たす場面が多くあります。不登校になっている子どもにとって、親は最も安心できる存在であり、家庭は唯一の安全基地です。しかし、この安全基地があることで、逆に外の世界への挑戦が弱まってしまうこともあります。子どもは家にいることで「自分はこの場所にいればいいんだ」と安心し、次第に学校や社会との関わりを避けてしまうのです。

そこで、母親には、子どもの安心感を守りながらも、少しずつ外の世界へと目を向けさせる役割が求められます。ただし、無理に押し出すような支援は逆効果です。子どもの気持ちを受け入れながらも、学校への橋渡し役となることで、再登校への小さな一歩を踏み出させるきっかけをつくるのです。

子どもと学校を繋ぐ親という役割

「親が橋渡し役になる」というのは、実際にどのような行動を指すのでしょうか?まず大切なのは、学校側が子どもの状況を把握できるよう、親が情報を伝えることです。学校の先生たちは子どもの個別の事情を深く理解しているわけではなく、また、親からの要望や相談がなければ、軽々しく手を出すことができません。そのため、親が学校に対して「今、子どもはどんな状況にあるか」「どんな支援が必要か」を伝えることが必要です。

ここで誤解してはいけないのは、「すべてを学校任せにしてしまう」ことです。不登校になっている子どもは、学校に対してすでに恐怖や不安を抱いていることが多く、何のサポートもなく「行ってみよう」と促されても、心理的なハードルは高いのです。そのため、親が橋渡し役として子どもと学校の間に立ち、必要な助力を整えていくことが不可欠です。

例えば、以下のようなサポートが考えられます。

  • 学校に登校する際の特別な配慮を依頼する
  • 子どもが負担を感じにくいよう、短時間からの登校や一部授業への参加を交渉する
  • 学校内で信頼できる教職員を選び、個別に面談を設ける機会を作る

このように、親が間に立ち、学校に子どもの状況を伝え、必要なサポートを取り付けることで、子どもが安心して学校へ向かえる環境が整います。

親がそっと離れるタイミング

子どもが再登校を果たす準備が整ったならば、次に親が心がけるべきことは「そっと距離を置く」ということです。橋渡し役としてしっかりとリボンを結び、それぞれのサポート体制が整えば、いよいよ子ども自身が学校と向き合う時間がやってきます。

親が過剰に関わり続けると、子どもは自分で問題に向き合う機会を失いがちです。特に小中学生の時期は、自立の一歩を踏み出すための貴重な時間です。この段階で親が一歩引くことは、子どもの成長と自立を促すために重要な役割を果たします。

もちろん、再登校が始まっても、順調にいかない日もあります。そんな時こそ、母親が自分の心を落ち着かせ、見守る姿勢を保つことが大切です。子どもが再び不安に襲われた際に、帰れる場所として家庭が存在していることこそが、子どもにとっての心の支えとなるのです。

学校とのコミュニケーションを大切にする

リボンモデルにおいて、学校もまた重要な存在です。しかし、学校側は家庭内の状況について詳細を知る機会が少なく、どのように対応すればよいか分からないケースも多くあります。そのため、学校に対しても適切な情報共有と依頼が必要です。

例えば、以下のようなポイントで学校と連携を深めることが大切です。

  • 子どもの状況を定期的に伝える
  • 再登校に向けた段階的なプランを共有し、学校からのフィードバックも受ける
  • 子どもの要望や苦手な点について具体的に伝える

こうしたコミュニケーションを通じて、学校側もどのように支援すれば良いかが見えてきます。親が積極的に情報を伝えることで、学校側も子どもの状況を理解し、無理のない形での登校支援が可能になります。


結論: リボンを繋げるのは親だけ

不登校は、親だけでも学校だけでも解決が難しい複雑な問題です。しかし、親が橋渡し役となり、子ども・親・学校の三者が力を合わせることで、少しずつでも再登校への道筋が見えてきます。親が安心感を与え、学校が受け皿となり、子どもが自分のペースで歩き出せる環境を作り上げることが大切です。

リボンモデルによって結ばれた絆は、単なる不登校の解決にとどまらず、子どもの成長と自立、そして将来への基盤となる大切な力を育むことに繋がります。不登校の問題に直面しているからこそ、今一度、家庭と学校の間を結び直し、子どもが自分の道を歩む手助けをしていきましょう。

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ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
また、皆様の中には数十万円の費用を請求される昨今の不登校サービスに困惑された方もいるかもしれません。私たちのサービスは費用と効果は比例しないことを実績で示しながら、業界最安値での提供を続けております。ぜひ、サービス詳細をご覧ください。

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【体験者寄稿】不登校に向き合ったから起業を選べた

ToCo体験者寄稿「不登校に向き合ったから起業を選べた」

目次


僕が「学校に行きたくない」と言ったのは、中学2年の春だったと思います。朝起きて制服に袖を通そうとしても、学校の門をくぐるイメージが頭に浮かんでこなくて、体が重く感じて、心もどこか冷たくなっていました。親には、どんな言葉で「学校が辛い」と伝えたのか、今でもあまり覚えていません。ただ、何かが限界に達していたのです。

学校を休み始めた頃は、家族にも友達にも心配をかけている自覚がありましたが、どうしても体と心が言うことを聞かなくて、自分ではどうすることもできなかったのです。

不登校になった理由

どうして僕が学校に行けなくなったのか。周りから見ると些細なきっかけに見えたかもしれません。実際、学校で大きな事件が起きたわけでもありません。友達関係にトラブルがあったわけでもないし、いじめもありませんでした。ただ、僕自身が感じていた「孤独感」と「無力感」が少しずつ心を蝕んでいたのです。

クラスでの輪に入れないというか、みんなが楽しそうに話している輪の外にいつも自分がいる気がしていました。自分を偽ってまで、みんなに合わせようとするのも辛くて、結局、少しずつ自分を閉ざしてしまっていたのです。そしてそれが、知らないうちに僕の心を少しずつ追い詰めていきました。

家族の変化

僕が家で一日中過ごすようになってから、最初のうちは家族もどうしていいか分からなかったようでした。親も学校に行ってほしいのは分かっていたけれど、僕がどうして行けないのかが理解できなかったのだと思います。ある日、僕の部屋に入ってきた母が、ポツリと「どうして学校が嫌なの?」と聞いてきました。

でもその時の僕には、その質問に答える気力がありませんでした。自分でも本当に何が辛いのか分からないし、うまく言葉にできない。でも、親がただ「行け」と言うのではなく、僕の気持ちを理解しようとしている姿勢に少し驚いたのを覚えています。その後も母は何度も僕の気持ちを聞いてくれましたが、最初の頃は上手く話せませんでした。

僕が後から聞いた話ですが、この時、母はToCoというサービスに出会ったようです。そしてこのサービスを通して親自身も子どもへの接し方について学び、少しずつ変わっていったのだそうです。ToCoを通じて母がどう学んだのか、どんなことを知ったのかは詳しくはわかりませんが、確かに僕の気持ちを理解しようとしてくれるようになったのはその頃からでした。

ゲームとパソコンに夢中だった日々

不登校になった当初、僕の生活はゲームとパソコンにどっぷり浸かるものでした。現実から逃げるように、一日中画面の中で過ごしていました。親は「またゲームばかり」と心配していたけれど、僕にとってその時間は唯一の居場所でした。学校に行かなくてもゲームの世界では自由で、自分が何者であるかを忘れて夢中になれる場所だったのです。

しかし、だんだんとその生活も虚しさを感じるようになりました。現実から逃げ続けているだけで、何かを成し遂げているわけではない、ただ時間が過ぎていく。毎日同じことを繰り返し、何も変わらない生活に自分が何か大事なものを失っているような気がしたのです。

再登校を考え始めた理由

ゲームとパソコンだけの生活に飽きが来ていた頃、親が僕の気持ちを理解しようとしてくれたことが、少しずつ僕を変え始めていました。今まで僕の気持ちを汲んでくれなかったと感じていた親が、「学校に行く行かないは自由だ」と言ってくれたのです。その言葉に最初は戸惑いましたが、それからは自分の将来について考える時間が増えました。

再登校を選ぶのか、このまま家に居続けるのか、あるいは他にできることがあるのか。迷いが生じる中で、ある日親が僕の進路について一緒に話し合ってくれたことがありました。それまでは話し合うことすら億劫だったのですが、親が僕の選択肢を尊重してくれると感じたことで、自分の未来について真剣に考え始めたのです。

ゲームクリエイターとしての起業を決意

その時に思い浮かんだのが「ゲームクリエイターになること」でした。僕はゲームが好きでしたし、いつか自分でゲームを作りたいという漠然とした夢を持っていました。しかし、不登校で学校に行っていない自分がその夢を実現できるのか、半信半疑でした。

親がその夢を否定せずにいろいろな情報を調べて提供してくれたり、将来の道を一緒に模索してくれたりする中で、僕は少しずつ「自分でも何かできるかもしれない」と思うようになったのです。最初は小さな一歩でしたが、僕は自分の手で小さなゲームを作り始め、気づけばその作業に夢中になっていました。

不登校での経験が活きる場所

僕がゲームクリエイターとしての道を選んだ背景には、不登校での孤独な経験がありました。誰かに寄り添ってもらえない苦しみ、誰にもわかってもらえない孤独。これらの経験は、ゲームを通じて人とつながることの大切さを強く感じさせるものでした。

親が変わってくれたからこそ、自分が置かれていた状況に向き合うことができ、自分にとって本当に必要なことは何かを考え、行動に移す勇気を持てたのです。そしてその結果、ゲームクリエイターとして起業する道を選ぶことができました。

最後に

僕が起業という選択肢を選んだのは、単なる逃げではなかったと振り返っています。不登校に向き合えたからこそ、僕は自分の人生について深く考え、その先に何ができるのかを見つけることができました。再登校も可能な状態まで持ち戻しましたが、その上で別の道を選ぶ選択をしました。もちろんゲームクリエイターとしての道は簡単なものではありませんが挑戦しがいのある未来です。

最後にToCoさん、僕の人生を変えてくれてありがとうございました。母と一緒に感謝しています。



ToCo(トーコ)株式会社について

私たちToCoは、平均15日で再登校まで支援するサービスを提供しています。代表自身の経験をもとに、不登校に悩むご家庭が抱える対応の難しさ、登校が断続的になりやすい課題を解決するため、このサービスを立ち上げました。
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